JP4989824B2 - ニトリルの混合物を含む芳香組成物 - Google Patents

ニトリルの混合物を含む芳香組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(9E)−ウンデセノニトリル、(9Z)−ウンデセノニトリル及び10−ウンデセノニトリルの混合物を含む芳香組成物、それらの使用、及びこの混合物を含む香料入り消費財製品を調製する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヘスペリジン様及び花様の香りを有するアルデヒド類は重要な香料成分である。そのようなアルデヒドの例は、例えば、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、10−ウンデカナール及びシトラールである。しかしながら、これらのアルデヒドは、酸化性条件下、又は、5より低いか9より高いpHを有する溶液下で容易に影響を受ける。これらの条件下では、上述のアルデヒド類は化学的に変性するため芳香特性を失い、及び/又は、追加のあまりよくない香りを発生する。
【0003】
下記のようなニトリル:
(9E)−ウンデセノニトリル(1);
Figure 0004989824
(9Z)−ウンデセノニトリル(2);及び
Figure 0004989824
10−ウンデセノニトリル(3);
Figure 0004989824
は既に文献に記載されている。Zhuらは、ハロゲン化アリル媒体を用いた官能化有機亜鉛化合物の酸化付加による(9E)−ウンデセノニトリル(1)の合成を記載している(Zhu Lら、J. Org. Chem. 1991、56、1445)。Tetrahedron,1999,55,63には、ピリジノリンの合成における中間体として、(9Z)−ウンデセノニトリル(2)が記載されている。Miyauraらは、パラジウム触媒による交差カップリング反応の出発物質として、10−ウンデセノニトリル(3)を使用した(Miyaura Nら、 J. Am. Chem. Soc. 1989、 111、 314)。さらに、WO99/26601には、3−メチル−5−フェニルペンタンニトリル及び3−メチル−5−シクロヘキシルペンタンニトリルの混合物が開示されている。
【0004】
デカノニトリル、ドデカノニトリル、テトラヒドロゲラノニトリル、ゲラノニトリル(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエンニトリル)、及びLemonile(登録商標)(3,7−ジメチル−2(3),6−ノナジエンニトリル)などのその他のニトリルの使用が、香料において確立されている。これらの化合物は、強い酸、塩基及び/又は酸化性条件下での影響がアルデヒド類より少ないため、上述のアルデヒド類の香りと似た、花のようなアルデヒド様及びヘスペリジン様の香りを発する。しかしながら、これらのニトリルにつきもののきつい、金属様の臭気が現れるため、それらが使用される組成物に「合成的」で「きたない、脂肪臭のする」様相を賦与する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の1つの目的は、新鮮で生き生きした、花様の、果実様の、かつ暖かい香りを有し、そして、活性な(aggressive)アルカリ性条件下での高い安定性を有する芳香組成物を提供することである。
【0006】
さらに、本発明の1つの目的は、新鮮で生き生きした、花様の、果実様の、かつ暖かい香りを有し、そして、活性な(aggressive)酸性条件下での高い安定性を有する芳香組成物を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、新鮮で生き生きした、花様の、果実様の、かつ暖かい香りを有し、そして、活性な(aggressive)酸化性条件下での高い安定性を有する芳香組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(9E)−ウンデセノニトリル、(9Z)−ウンデセノニトリル及び10−ウンデセノニトリルの混合物を含む芳香組成物に関するものである。
【0009】
驚くべきことに、(9E)−ウンデセノニトリル、(9Z)−ウンデセノニトリル及び10−ウンデセノニトリルの混合物が、よくバランスのとれた新鮮で生き生きした、花様の、果実様の、かつ暖かい香りを有し、そして、ニトリルの典型的なグリース臭及び脂肪臭の特性を有しないことが見出された。これらの混合物は、ニトリル組成物にとっては新しい、非常にすばらしい自然でラクトン様の様相も示す。これに加えて、本発明の混合物は、攻撃的な(hostile)媒体中において驚くほどの香り安定性を示す。本発明の混合物は、活性な酸性、アルカリ性及び/又は酸化性条件下での卓越した安定性、優れた広がりと心地よい香り、そして、特に他のニトリルのグリース臭及び脂肪臭の特性を有しないことによって特徴付けられる。多くの点で本発明の組成物は、現在の標準化合物であるデカノニトリルよりもより良好であり、従ってより好まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に従う芳香組成物と同様、本発明の芳香組成物中に含まれる混合物を、単独で、又は、多くの天然及び/又は合成由来の芳香成分と組合せて使用してよい。天然の芳香成分の範囲には、揮発性の成分に加え、適度に揮発性、そして、ごく僅かに揮発性の成分も含まれる。合成芳香成分は、実際にあらゆる種類の芳香物質に属している。そのような天然及び合成成分は、例えば、「天然物由来の香料及び芳香材料(Perfume and Flavor Materials of Natural Origin)」、S.Arctander編,Elizabeth社,N.J.,1960年、及び、「香料及び芳香化学物質(Perfume and Flavor Chemicals)」、S.Arctander編,Vol.I&II,Allured Publishing社,Carol Stream,米国,1994年に列挙されている。
【0011】
本発明に従う芳香組成物に含まれる混合物には、追加の芳香成分が添加され得る。芳香成分は、嗅覚に訴える特性を有する物質と定義される。そのような追加の芳香成分は、1つ又はいくつかの成分からなることができる。本発明の組成物は、新鮮でヘスペリジン様の香り(レモン、マンダリンなど)、果実様の香り(桃、アプリコットなど)、花様の香り(スズラン、バラ、アイリス、ジャスミン、イランラン、水仙など)、及び生の野性的な香り(ガルバヌム、タゲット(tagete)、ラベンダー、チチジャコウソウなど)のような追加の芳香成分と特に良好に調和する。
【0012】
(9E)−ウンデセノニトリルは、本発明に従う芳香組成物に含まれるこれらの混合物における主要化合物であり、混合物中に30重量%より多く含まれる。好ましくは、この混合物は、約30重量%と約80重量%の間、より好ましくは、約40重量%と約60重量%の間の(9E)−ウンデセノニトリルを含む。好ましい態様において、10−ウンデセノニトリルはこの混合物中における少量成分であり、混合物中の40重量%より少なく含まれる。好ましくは、この混合物は、約0.01重量%と約30重量%の間、より好ましくは、5重量%と20重量%の間の10−ウンデセノニトリルを含む。
【0013】
本発明の組成物は、その卓越した香りと応用性のために、あらゆる香料分野、特に、機能性香料分野における使用に優れている。本発明に従う芳香組成物及び追加成分も含む、非攻撃的(non−hostile)又は攻撃的(hostile)媒体を使用する消費財製品が好ましい。非攻撃的媒体を使用する消費財製品には、アルコール溶液、シャンプー、ヘアコンディショナー、バスオイル、空気清浄剤、化粧品及びスキンケア製品が含まれる。活性な(aggressive)アルカリ性媒体を用いる消費財製品には、石けん、洗濯用洗剤、漂白剤、自動食器洗い器用粉末及び洗浄用粉末が含まれる。活性な(aggressive)酸性媒体を用いる消費財製品には、繊維軟化剤、脱臭剤、発汗防止剤及びクエン酸、塩酸、スルホン酸又はリン酸を含有するクリーナーが含まれる。活性な(aggressive)酸化性媒体を用いる消費財製品には、髪染め用顔料と漂白剤が含まれる。
【0014】
単独又は他の芳香成分と組合される本発明の芳香組成物の量は、製品の性質と望まれる香りの強さに依存して変わる。これらの因子は当業者に公知である。本発明の組成物は、製品中に0.01重量%から1重量%の範囲で存在するのが好ましい。
【0015】
上記の例から明らかなように、本発明の組成物は、液体、ゲル、噴霧体、棒状、スティック状及び粉末を含む種々の形態の、漂白剤、洗濯用洗剤、食器洗い器用洗剤、錆落とし剤、洗浄剤、繊維軟化剤、石けん、一般用及び特殊用クリーナーを含む、家庭用及び商業用の各種洗浄剤製品に使用され得る。
【0016】
本発明に従う芳香組成物は、対応するアルデヒド類の混合物からのワンポット反応によるか、又は、純粋な対応するアルデヒド類から得られる精製ニトリル(1)〜(3)の混合によって得ることができる。必須ではないが、ワンポット反応を開始する前に、アルデヒド混合物を精製することも可能である。
【0017】
(9E)−ウンデセノニトリル、(9Z)−ウンデセノニトリル及び10−ウンデセノニトリルの混合物、他の所望する芳香成分、液状及び/又は固体状成分及び媒体を混合することにより、機能性香料用の香料入り消費財製品が調製される。
【0018】
【実施例】
本発明を、以下の実施例において例示目的でさらに記載する。
【0019】
例1
(E,Z)−9−ウンデセノニトリル
a)(E,Z)−9−ウンデセナール オキシム
ヒドロキシルアミン・塩酸塩(125.2g、1.8モル)と酢酸ナトリウム(118.0g、1.44モル)の水(480ml)溶液に、アルデヒドIsoC11〔(E,Z)−9−ウンデセナール、201.6g、1.2モル、Givaudan SA社(Vernier、スイス)製〕を迅速に添加し、次いでメタノール(170ml)を添加した。この混合物を60℃で3時間加熱し、室温まで冷却し、そして、ヘキサン(600ml)で希釈した。この有機溶液を、飽和NaHCO3溶液(300ml)で1回、水(各500ml)で2回洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮して結晶性固体(225g)を得、それを次の工程で直接使用した。収率:定量的。
【0020】
b)(E,Z)−9−ウンデセノニトリル
反応フラスコに無水酢酸(612g、6モル)を投入し、120℃に加熱した。(E,Z)−9−ウンデセナールオキシム(225g、1.2モル)のトルエン(890ml)溶液を2.5時間かけてゆっくりと添加した。この反応混合物を還流温度下に4時間保持し、室温まで冷却し、そして、ヘキサン(600ml)で希釈した。この有機溶液を、水(各800ml)で3回、5NのNaOH(各300ml)で3回、そして、塩水(各600ml)で3回洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮して黄色を帯びた油(217g)を得た。25cmのWidmerカラム(87℃/0.05mbar)を用いて蒸留し、無色の油の形で(E,Z)−9−ウンデセノニトリル(124.8g;63%、2工程)を得た。この生成物は(9E)−ウンデセノニトリルを56%、(9Z)−ウンデセノニトリルを26%及び10−ウンデセノニトリルを8%含んでいた。
【0021】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):1.22−1.40(m、6H);1.40−1.50(m、2H);1.58−1.70(m、5H);1.93−2.14(m、2H);2.33(t、J=7.1Hz、2H);5.33−5.48(m、2H)。
MS〔m/z(EI)〕:165(M+、1)、136(48)、122(61)、69(41)、55(100)、41(56)。
【0022】
例2
液体漂白剤中での本発明の香料物質の安定性
水酸化ナトリウムを添加することによってpHを約11.5から12.0に調整した、5重量%の次亜塩素酸ナトリウムと95重量%の水からなる液体漂白溶液に、実施例1に従って得られた本発明の香料物質の混合物を0.15%で添加した(試料I)。対照実験として、デカノニトリルを用いて類似混合物を調製した(試料IV)。次いで、14人の香料パネリストが両溶液の香りを評価した。次に、両溶液を2つに分けて、4℃で1ヶ月保存(それぞれ試料IIとV)及び37℃で1ヵ月保存(それぞれ試料IIIとVI)した。次に、全ての溶液の香りを再度14人の香料パネリストが評価した。さらに、全ての試料の遊離塩素含有量を、当業者に公知の標準的な手順に従った滴定法、例えば、Fritzら、定量分析化学(Quantitative Analytical Chemistry)、第二版(1969)、101−118、239−284に記載されているような方法によって求めた。
【0023】
下表のデータから、試験された本発明の化合物の混合物が、標準化合物デカノニトリルの安定性と匹敵して、化学的に受容できるほど安定であることが分かる。また、本混合物が香りの点でも安定であり、同量のデカノニトリルと比べて、香りがはるかにより強くそしてより広がることもこれらのデータから明らかである。14人の香料パネリスト全員が、柑橘類系でグリ−ス臭/脂肪臭のデカノニトリルよりも、すばらしく柑橘類系、花様/果実様の香りであるため、本発明の混合物を含む溶液の方を好んだ。
【0024】
【表1】
Figure 0004989824
【0025】
【表2】
Figure 0004989824
【0026】
Figure 0004989824
【0027】
【発明の効果】
新鮮で生き生きした花様、果実様、かつ暖かい香りを有する(E,Z)−9−ウンデセノニトリルの存在により、芳香に豊かさ、ふくよかさ、及び強い拡散力が賦与される。それは、この調和のとれたバラ様の響きをうまく増大させ、果実様/桃様の風合いを加え、そして、その特性は「アルデヒド Iso C11」を偲ばせ、古典的な「花様アルデヒドの香り」の伝統を維持しながら、芳香をより香しいものにする。

Claims (3)

  1. (9E)−ウンデセノニトリル、(9Z)−ウンデセノニトリル及び10−ウンデセノニトリルの混合物を含む芳香組成物。
  2. 請求項1に記載の芳香組成物を含む消費財製品。
  3. 請求項1に記載の芳香組成物を含む香料。
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