JP4988785B2 - 基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば炭化ケイ素(SiC)基板の熱処理などに用いられる基板熱処理装置を用いた基板の製造方法に関する。更に詳しくは、基板を真空中で均一且つ急速に加熱することが可能な基板熱処理装置を用いた基板の製造方法に関する。
基板熱処理装置としては、真空室の下部に加熱プレートを設け、上部に環状の冷却ユニットを設け、この加熱プレートと冷却ユニットの間に昇降可能に、熱伝導率のよい材料で構成した基板ホルダを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この基板熱処理装置による熱処理は、基板を載置した基板ホルダを下降させ、基板ホルダの下面を加熱プレートに接触させて、基板ホルダを介して基板を加熱した後、基板ホルダを上昇させ、基板ホルダの周縁を冷却ユニットに接触させて、基板ホルダを介して基板を冷却することで行われるものである。また、基板を加熱プレートと非接触で加熱する基板加熱処理装置として、基板を高温で加熱処理する気密状態の反応室と、冷却部とが設けられた基板加熱処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−318076号公報 特開2005−299990号公報
しかしながら、特許文献1に記載された基板熱処理装置及び熱処理方法の場合、加熱が基板ホルダを介して熱伝導により行われるものとなっている。このため、基板と基板ホルダの接触状態が一様でないと加熱にムラを生じる問題がある。例えば、注入や熱工程などを経てきた基板に反りが生じていると、基板が基板ホルダに接触する場所と接触しない場所が生じ、加熱後のアニール特性の面内均一性を劣化させるという問題を生じる。また、冷却は基板ホルダの周縁から行われるので、全体を均一に降温させることができないばかりか、中心部まで冷却するのに時間がかかる問題もある。
特許文献2の基板熱処理装置では、輻射熱により基板を高温加熱するが、基板をより効率的に均一に加熱することが望まれる。また、基板を高温加熱する場合であっても、チャンバ壁まで温度が伝わらないことが必要であるが、特許文献2の基板処理装置では、冷却は、冷却部の壁で行われるので、冷却部のスペースを大きくとる必要があり、装置が大型化してしまうという問題もある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、基板を真空中で均一且つ急速に加熱することができる基板の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、加熱した基板全体を速やかに冷却することが可能な基板の製造方法を提供することを第2の目的とする。また、本発明は、小型化が可能な基板熱処理装置を用いた基板の製造方法を提供することを第3の目的とする。
上記目的の少なくとも一つを解決する本発明にかかる基板の製造方法は、基板が載置される基板ステージと、前記基板ステージの下側に間隔をあけて配置された輻射板と、前記輻射板の下側に間隔をあけて配置された反射板とを備えた基板ホルダユニットと、前記基板ステージの上方に設けられており、前記基板ステージと対向する放熱面を備え、前記基板ステージの上に載置された基板に対して非接触状態で、該放熱面からの輻射熱で前記基板を加熱する加熱ユニットと、前記基板ホルダユニットと、前記加熱ユニットが設けられているチャンバとを有する基板熱処理装置を用意する工程と、
基板を前記基板ステージ上に載置する工程と、
載置した前記基板に対して熱処理を行う工程と
を有することを特徴とする。
本発明に係る基板の製造方法での基板の加熱は、加熱ユニットの放熱面からの輻射熱により、基板とは非接触状態で行われる。加熱ユニットの放熱面は基板を載置する基板ステージと対向しており、その輻射熱は、基板の反りの有無に拘わらず均一に照射することができるので、基板が多少反っていても均一に加熱することができる。
また、基板ステージがカーボン又はカーボン被覆材料で構成されており、基板ステージの少なくとも表面が輻射率の高いカーボンとなっていることから、基板は、同時に輻射加熱される基板ステージからの輻射熱も受けることになる。つまり、基板の加熱は、加熱ユニットの放熱面からの輻射熱が主となって行われるが、基板ステージからの輻射熱も副次的に加えられることから、迅速な昇温が可能となる。
また、基板ステージの少なくとも表面が輻射率の高いカーボンとなっていることから、冷却時には輻射熱を吸収することで、基板ステージ全体を均一且つ迅速に温度降下させることができ、それに伴い、基板を迅速且つ均一に冷却することができる。
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
本発明の一例に係る基板熱処理装置であって、基板の搬入又は搬出時の状態を示す断面模式図である。 基板の加熱時の状態を示す断面模式図である。 基板の冷却時の状態を示す断面模式図である。 図1における基板ホルダユニット周りの拡大断面図である。 図2における基板ホルダユニット周りの拡大断面図である。 基板ステージの説明図である。 基板ステージの説明図である。 基板ステージの説明図である。 実施例3で作製したp+n接合ダイオードの断面図である。 実施例3で作製したp+n接合ダイオードの電流密度−電圧特性のアニール温度依存性を示す図である。 昇降軸12の内部構造を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
図1は、本発明の一例に係る基板熱処理装置である。図1は、基板の搬入又は搬出時の状態を示す断面模式図、図2は、基板の加熱時の状態を示す断面模式図、図3は、基板の冷却時の状態を示す断面模式図である。また、図4は、図1における基板ホルダユニット周りの拡大断面図、図5は、図2における基板ホルダユニット周りの拡大断面図、図6は、基板ステージの説明図である。なお、図1〜図6A,B,Cにおいて、同じ符号は同じ部材又は部位を示す。
図1〜図3にそれぞれ示されるように、本例の基板熱処理装置は、基板ホルダユニットAと、加熱ユニットBと、シャッタ装置Cとを真空チャンバD内に設けたものとなっている。
基板ホルダユニットAは、最上段に基板ステージ1を備えている。加熱ユニットBは、基板ステージ1の上方に設けられており、基板ステージ1と対向する放熱面2を備えている。基板ホルダユニットAは、昇降装置Eにより昇降可能なもので、基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2との近接と離間は、昇降装置Eの動作により制御することが可能である。加熱ユニットBは、基板ホルダユニットAが図2に示されるように上昇し、基板ステージ1上の基板3と放熱面2が近接された時に、基板3と非接触状態で、放熱面2からの輻射熱で基板3を加熱するものとなっている。
図1の基板ホルダユニットAは下降位置にあり、図2の基板ホルダユニットAは上昇位置にある。図1の基板ホルダユニットA周りを拡大したのが図4であり、図2の基板ホルダユニットA周りを拡大したのが図5である。基板ホルダユニットAについては、主にこの図4及び図5で説明し、図1〜図3の基板ホルダユニットAについては主な部材の符号のみを付す。
図4及び図5に示されるように、基板ホルダユニットAは、最上部に基板ステージ1、基板ステージの下に4枚の輻射板4、輻射板4の下に2枚の反射板5、そして最下部に冷却パネル6を備えたものとなっている。
基板ステージ1は、基板3を載置するもので、上面中央部が基板3が置かれる基板載置部7となっている。図4に示される基板3は、後述するリフトピン8で持ち上げ支持された状態となっているが、基板ホルダユニットAの上昇により基板ステージ1がリフトピン8より上方へ移動すると、図5に示されるように基板載置部7上に移し取られて載置されることになる。
基板ステージ1は、輻射率が高く、輻射熱を効率良く吸収し、吸収した熱を効率良く放射することができ、しかも高熱に耐えられる材料で構成されている。具体的にはカーボン又はカーボン被覆材料で構成された板状をなしている。基板ステージ1を構成するカーボンとしては、ガラス状カーボン、グラファイト、熱分解カーボンを挙げることができる。また、カーボン被覆材料としては、セラミックスにこれらのカーボンの1種又は2種以上の被覆を施した材料を挙げることができる。
基板ステージ1は、熱容量を抑えて、冷却時間を短縮するために薄いことが好ましい。基板ステージ1の厚さは、構成材料や次に述べる基板載置部7の窪み量によっても相違するが、強度と冷却時間の短縮を両立させる観点から、2〜7mmであることが好ましい。
基板ステージ1の中央部に設けられている基板載置部7は、凹部として設けられており、基板ステージ1の基板載置部7部分の厚さよりその周辺部の厚さが大きくなっていることが好ましい。このようにすると、後述する加熱ユニットBによる基板3の加熱時に、放熱面2からの輻射熱が基板3の外側へ拡散するのを抑制できると共に、基板ステージ1における基板載置部7の外周縁部の熱容量を大きくし、基板3の外周縁部からの放熱を抑制することができる。そして、弱くなりやすい基板3周縁部の加熱を補って、より均一に基板3全体を加熱することが可能となる。基板載置部7を凹部として設け、基板ステージ1の基板載置部7部分の厚さよりその周辺部の厚さが大きくする態様としては、図6A〜Cに示される態様がある。図6Aは基板載置部7となる基板ステージ1の上面のみに比較的深い凹部を形成した態様を示す図である。図6Bは基板載置部7となる基板ステージ1の上面と対応する下面の両者に凹部を形成し、下面側の凹部を上面側の凹部より深くした態様を示す図である。図6Cは、図6Bとは上下の凹部の深さを逆にした態様を示す図である。
基板ステージ1の基板載置部7の周囲には、図5に示されるように基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2とが接近した時に、内側に加熱ユニットBの放熱面2を受け入れる環状壁部9が突設されている。この環状壁部9は、基板ステージ1と同様のカーボン又はカーボン被覆材料で構成されていることが好ましい。環状壁部9を設けておくことにより、加熱ユニットBの放熱面2からの輻射熱が周囲に逃げるのを抑制することができ、放熱面2による基板3の加熱効率を向上させることができる。
基板ステージ1と冷却パネル6との間には、それぞれ間隔をあけて、4枚の輻射板4と、2枚の反射板5とが設けられている。
輻射板4は、基板ステージ1と同様に、カーボン又はカーボン被覆材料で構成された板状をなすもので、基板ステージ1の下側に間隔をあけて配置されている。この輻射板4は、基板ステージ1の下面と対向して設けられており、基板3の加熱時に、基板ステージ1の下面から放射される熱を捕らえ、捕らえた熱を基板ステージ1に対して輻射する。これによって基板ステージ1の熱放射による温度低下を抑制することができるので、急速加熱が行いやすくなる。
基板ステージ1の温度を効率よく高温にするために輻射板4を設けることが好ましい。輻射板4を設置する場合、その枚数は1枚でも、図示される4枚以外の複数枚でもよい。輻射板を複数枚備えていると、比較的薄い輻射板4で、上記のように迅速な温度上昇を得ることができるため好ましい。また、比較的薄い輻射板を用いることができるため、各輻射板4の熱容量を抑えて冷却時間を短縮することができる。輻射板4の厚さは、構成材料や枚数によっても相違するが、加熱時の迅速な温度上昇と冷却時間の短縮を両立させる観点から、1〜3mmであることが好ましい。
輻射板4の下側(輻射板4が1枚の場合の当該輻射板4又は輻射板4が複数枚の場合の最下部の輻射板4の下側)には、それぞれ間隔をあけて、2枚の反射板5が設けられている。反射板5は、モリブテン、タングステンなどの高融点金属で構成されており、少なくとも輻射板4側の(上面)には鏡面仕上げが施されている。反射板5は基板ステージ1、輻射板4から放射される熱を反射するものである。
反射板5を輻射板4の下側に1枚又は複数枚備えていると、更に基板ステージ1、輻射板4からの熱放射による温度低下を抑制しやすくなり、一層急速加熱が行いやすくなる。また、反射板5を設けることにより、反射板5で基板ステージ1、輻射板4の熱放射をさえぎることができるので、チャンバの温度上昇を防ぐことができて好ましい。
上記反射板5を設ける場合、反射板5の下側(反射板5が1枚の場合の当該反射板5又は反射板5が複数枚の場合の最下部の反射板5の下側)に間隔をあけて冷却パネル6を設けることができる。この冷却パネル6は、例えば水冷機構などの冷却手段で冷却されるパネル体で、基板ステージ1、輻射板4及び反射板5の下面に対向して設けることで、基板3の冷却時に、上方に位置するこれらの部材の均一且つ迅速な冷却を促すことができる。図9は、冷却パネル6が接続された昇降軸12の内部構造を示す斜視図である。昇降軸12の内部には、温度測定器16と接続する温度測定孔15が設けられている。更に、昇降軸12の内部には、冷却パネル6の冷却手段に冷媒を供給し、冷却手段から冷媒を回収する、冷媒循環用の流路29が複数設けられている。
また、後でも述べるように、図5に示される基板3の加熱時には、冷却パネル6で冷却すると、基板ホルダユニットAの温度を一定に制御するができ、輻射加熱による基板ステージの温度の再現性を向上させるのに役立つ。
冷却パネル6を設ける場合、前記のように、反射板5を設けて、基板3の加熱を阻害しないようにすると共に、冷却パネル6の外壁を、鏡面仕上げを施したステンレス鋼やアルミニウム合金などで構成し、熱吸収を抑制しておくことが好ましい。
冷却パネル6を設ける場合、最下部の反射板5(反射板5が1枚の場合の当該反射板5)の周縁から、冷却パネル6の周囲にスカート部10を延出させておくことが好ましい。このスカート部10を設けることにより、冷却パネル6の周側面からの吸熱を抑制し、基板3の加熱に影響を及ぼすことを防止することができる。
基板ステージ1、輻射板4、反射板5は、それぞれアルミナセラミックスやジルコニウムオキサイドセラミックスなどの耐熱・断熱性材料を介在させて、連結ネジ11で冷却パネル6上に支持されている。また、冷却パネル6は、昇降装置E(図1参照)の昇降軸12の先端部に接続されている(図9参照)。後述するように、昇降装置Eは冷却パネル6を昇降軸12の軸方向に上下に昇降させるもので、冷却パネル6の上下動に伴い、冷却パネル6の上方に構成されている基板ホルダユニットAが昇降されるものとなっている。
基板ホルダユニットAには、基板ホルダユニットAを構成している基板ステージ1、輻射板4、反射板5及び冷却パネル6を貫通するリフトピン用貫通孔13が複数箇所形成されている。リフトピン用貫通孔13は、特に基板ステージ1の基板載置部7内を通る位置に形成されている。また、リフトピン用貫通孔13の位置に対応して、真空チャンバDの底部に複数本のリフトピン8が立設されている。
図4においては、リフトピン用貫通孔13を介して、真空チャンバDの底部に立設された複数本のリフトピン8が基板ステージ1上に突出している。リフトピン8は、基板載置部7上の基板3を先端で持ち上げ支持可能な位置と本数となっており、図4の状態から基板ホルダユニットAが上昇して基板ステージ1がリフトピン8より上方へ移動すると、基板3は基板載置部7上に移行されることになる。また、基板載置部7上に基板3が載置された状態で基板ホルダユニットAが下降し、リフトピン8がリフトピン用貫通孔13を介して基板ステージ1上に突出すると、基板載置部7上の基板3がリフトピン8の先端で持ち上げ支持され、図4の状態となる。
基板ステージ1の基板載置部7の中央部直下には、輻射板4、反射板5及び冷却パネル6を貫通して、測定孔14が形成されている。この測定孔14は昇降軸12の中心に形成された測定孔15と一連に連なっている。この測定孔14,15は、図1に示される温度測定器16により、石英製の熱赤外線透過窓を介して基板ステージ1からの放射熱を測定するためのものである。温度測定器としては、放射温度計を用いることができる。
加熱ユニットBは、放熱面2と、この放熱面2を加熱するためのヒーター28を備えたもので、ヒーターとしては、電子衝撃加熱方式のヒーター、高周波誘導加熱方式のヒーター、抵抗加熱方式のヒーターなどを用いることができる。放熱面2は、耐熱性黒色表面で、例えばガラス状カーボン、熱分解カーボン、アモルファスカーボンなどのカーボンコーティングにより得ることができる。放熱面2をこのようなカーボンコーティング面とすると、真空中での脱ガスとパーティクルの発生も抑えることができる。
シャッタ装置Cは、図1〜図3に示されるように、基板ホルダユニットAが降下し、基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2とが離間された時に、シャッタ17を基板ステージ1と放熱面2の間に進退させることができるものとなっている。シャッタ装置Cは、シャッタ17を進退させるためのシャッタ駆動装置18を備えている。
シャッタ17は、熱隔壁として機能する。シャッタ17は、図1及び図3に示されるように、基板ホルダユニットAが下降し、基板ステージ1と放熱面2とが離間されている時に、基板ステージ1と放熱面2との間に進出し、放熱面2から基板ステージ1側へ熱が照射されるのを遮る。また、基板ホルダユニットAの上昇時には、シャッタ駆動装置18で回転移動され、基板ステージ1と放熱面2との間から図2に示される位置(図1では破線で示す)へ後退される。シャッタ17は、基板ホルダユニットAが上昇した後、再びシャッタ17が邪魔にならない位置まで下降するまでの間、後退位置に維持される。
シャッタ装置Cは、シャッタ17の進出時に、基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3の冷却を促進できるよう、例えば水冷機構など、シャッタ17の冷却手段を有していることが好ましい。冷却手段で冷却する場合、シャッタ17は、ステンレス鋼やアルミニウム合金で構成することができる。また、進出時に加熱ユニットBの放熱面2と対向する側の面(上面)は、鏡面仕上げを施した反射面とし、放熱面2からの熱を遮断しやすくしておくことが好ましい。進出時に基板ホルダユニットAの基板ステージ1と対向する側の面(下面)は、耐熱性黒色表面である吸熱面とし、基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3の冷却を迅速に行えるようにしておくことが好ましい。吸熱面は、黒色アルマイトなどの黒色材料で壁面を構成する他、ガラス状カーボン、熱分解カーボン、アモルファスカーボンなどのカーボンコーティングによっても得ることができる。
シャッタ17で積極的に基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3を冷却する場合、基板ホルダユニットAの降下位置を2段階に設定しておくことが好ましい。つまり、基板ステージ1及び基板3がシャッタ17の下面と近接する冷却位置と、基板ステージ1及び基板3とシャッタ17の下面との間に、基板3を出し入れするのに十分な間隔が得られる搬入出位置の二段階とすることが好ましい。冷却位置は、図3に示される基板ホルダユニットAの位置である。また、搬入出位置は、図1に示される基板ホルダユニットAの位置である。
シャッタ17の冷却手段は、基板3の加熱温度領域によっては省略することもできる。この場合、シャッタ17はモリブテン、タングステンなどの高融点金属で構成することが好ましい。また、冷却手段を設けない場合でも、放熱面2からの熱の遮断と、基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3の冷却促進とを図るために、放熱面3との対向面は反射面とし、基板ステージ1との対向面は吸熱面としておくことが好ましい。
真空チャンバDは、アルミニウム合金などで構成された筐体で、壁内に水冷機構の水冷用流路19が設けられている。また、基板3の搬入、搬出時に開閉されるスリットバルブ20と、内部を真空雰囲気に排気するために排気系に接続される排気口21を備えている。水冷用流路19に冷却水を流すことにより、真空チャンバDの筐体の温度が過度に上昇するのを防ぐことができる。
真空チャンバDは、下側の第一室22と、第一室22の上方に連なった第二室23を備えている。加熱ユニットBは、上方に位置する第二室23に放熱面2を下に向けて設けられている。基板ホルダユニットAは、第一室22と第二室23間を昇降可能なもので、上昇時に、図2に示されるように、第一室22と第二室23間を冷却パネル6部分で塞いだ状態で、基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2とを接近させるものとなっている。このようにして基板3の加熱を行うと、第二室23で生じた熱がその下方の第一室22へ漏れにくくなり、加熱後に基板ホルダユニットAを第一室22へ降下させて行われる冷却をより迅速に行うことができる。また、真空チャンバDの内面、特に第二室23の内面は、加熱効率を向上させることができるよう、鏡面仕上げを施しておくことが好ましい。
昇降装置Eは、上端が基板ホルダユニットAの冷却パネル6に接続された昇降軸12と、昇降軸12の下端部分に取り付けられた昇降アーム24と、昇降アーム24が螺合するボールネジ25とを備えている。また、ボールネジ25を正逆両方向に回転させることができる回転駆動装置26と、昇降軸12と真空チャンバD間の摺動部を覆い、真空チャンバD内の気密性を高めると共に、昇降軸12の上下動に伴って伸縮する蛇腹状カバー27も備えている。この昇降装置Eは、回転駆動装置26でボールネジ25を正又は逆回転させることで、このボールネジ25と螺合している昇降アーム24を上昇又は下降させ、それに伴って昇降軸12を上下にスライドさせて、基板ホルダユニットAを昇降させるものである。
なお、上記では真空チャンバ説明したが、真空チャンバを用いない場合には、アルゴンガスなどの不活性ガスでチャンバ内を充填しておく必要がある。
次に、上記基板熱処理装置の駆動状態について説明する。
まず、図1に示されるように、スリットバルブ20を開放して、基板3を真空チャンバD内へ搬入する。基板3の搬入は、例えば以下に述べるように、ロボットで基板3を真空チャンバD内に持ち込み、図1及び図4に示されるように、基板3をリフトピン8上に載せて支持させることで行うことができる。
真空チャンバDのスリットバルブ20部分は、通常、ロボットを収容したトランスファ室(図示されていない)を介してロード/アンロードロック室(図示されていない)に連結されている。基板3は、まずロード/アンロードロック室にセットされる。室内の荒引き排気後、トランスファ室との間が開放され、更に排気を進めた後、スリットバルブ20が開放され、トランスファ室のロボットにより、ロード/アンロードロック室から基板3をピック・アンド・プレイスによりリフトピン8に載せる。
このとき、ロボットのアームの先端部分は、高温でも耐え得るように、カーボン又はセラミック製が好ましい。また、ロボットのアームが、加熱ユニットBの放熱面2からの輻射熱により煽られることを防ぐために、シャッタ17は基板ステージ1と放熱面3の間に進出していることが好ましい。
ロボットのアームが逃げ、スリットバルブ20が閉まり、真空チャンバD内を独立した真空室とした後、シャッタ17を後退させ、基板ホルダユニットAを上昇させる。基板3を基板ステージ1の基板載置部7ですくい取った後、更に基板ホルダユニットAを上昇させて、図2及び図5に示されるように、基板ホルダユニットAの基板ステージ1と、加熱ユニットBの放熱面2とを近接させる。この時、少なくとも基板3は放熱面2と非接触状態であることが必要である。基板ステージ1は放熱面2と接触状態にすることも可能であるが、基板ステージ1と基板ステージ1上の基板3の両者とも放熱面2とは非接触状態であることが好ましい。放熱面2と基板3の大きさ、加熱温度、加熱ユニットBの加熱力などにもよるが、放熱面2と基板3の間隔は1〜25mmとすることが好ましい。
次いで加熱ユニットBのヒーター28をオンにし、放熱面2からの輻射熱で基板3を加熱する。例えば加熱温度が1900℃の場合、温度測定器16で測定される基板ステージ1の温度が1900℃になるまで加熱を継続し、1900℃に達した後、所定のアニール時間(例えば1分程度)が経過するまでこの温度を保持する。
上記アニール時間経過後、加熱ユニットBのヒーター28をオフにし、自然冷却を開始する。これと共に、基板ホルダユニットAを前記した冷却位置まで降下させ、シャッタ17を、基板ホルダユニットAの基板ステージ1と、加熱ユニットBの放熱面2との間に進出させ、冷却を促進する。そして、基板3が取り出すのに支障のない温度(例えば200℃)にまで冷却された後、基板ホルダユニットAを前記した搬入出位置まで降下させる。冷却位置から搬入出位置までの降下の間に、基板3はリフトピン8上に移し取られ、取り出しやすい状態となる。基板ホルダユニットAが搬入出位置まで降下した後、スリットバルブ20を開き、トランスファ室(図示されていない)のロボットで基板3を取り出す。
以上説明した例においては、基板ホルダユニットAが昇降できるようになっているが、基板ホルダユニットAと加熱ユニットBの両者を昇降可能としたり、その一方である加熱ユニットBのみを昇降可能とすることもできる。加熱ユニットBの昇降は、本例における昇降装置Eを真空チャンバD上に上下逆にして設け、昇降軸12を加熱ユニットBに接続することで行うことができる。
基板ホルダユニットAと加熱ユニットBの両者を昇降可能とした場合、本例における第二室23を上下方向に拡大し、冷却時の両者の隔離距離を大きくとれるようにすることができる。つまり、図2で説明した位置で加熱を行った後、基板ホルダユニットAを下降させると共に、加熱ユニットBを上昇させ、基板3の冷却時に、基板ステージ1及びその上の基板3と放熱面2とを距離を大きくし、冷却効率を向上させることができる。加熱ユニットBのみを昇降可能とした場合、リフトピン8を省略するか、別途これを上下動させるための機構が必要となると共に、上述した冷却位置での冷却が行いにくい不便はあるが、上述した例の基本的な利益は得ることが可能である。
本発明に係る基板熱処理装置は、表面にウエル領域(不純物領域)を有する基板3の熱処理に最適である。このような基板3としては、犠牲酸化、フッ酸処理を行ったバルクSiC基板上にSiO2などを成膜し、リソグラフィとドライエッチングによりマスクを設け、イオン注入装置などにより、不純物とするアルミニウムイオンを注入したものが挙げられる。ウエル領域は、SiC基板内に選択的に形成することができる。アルミニウムイオンの注入は、例えばTMA(テトラメチルアルミニウム)をソースとして、プラズマにて励起し、引き出し電極と分析管で、注入するAlイオンを引き出してイオン注入することで行うことができる。また、アルミニウムをソースとし、プラズマにて励起し、引き出し電極と分析管で、注入するアルミニウムイオンを引き出してイオン注入することでも行うことができる。
本発明に係る基板熱処理装置を用い、表面に注入領域を有する基板3を、注入領域側の面を加熱ユニットBの放熱面2側に向けて基板ステージ1上に載置し、放熱面2からの輻射熱で基板2を加熱して熱処理を施す。このようにして熱処理を行うと、非常に表面荒れの少ないアニール処理が可能となる。注入領域とは、トランジスタの形成や、コンタクトやチャンネルなどの形成について行われる不純物の注入によって形成される領域をいう。
(実施例1)
4H−SiC(0001)基板上にCVDにてP型SiCエピタキシャル層を厚さ10μmで形成し、その上に窒素イオンを、室温で、ボックスプロファイルになるように、多段で、注入量4×1019イオン/cm3、深さ220nmで注入した。このようにして得た基板サンプルに、図1〜図5に示されるような本発明に係る基板熱処理装置を用いて熱処理を施した。
基板サンプルは、窒素イオンの注入面を上側(加熱ユニットBの放熱面2側)に向けて基板ステージ1上に載置し、加熱ユニットBの放熱面2と、基板サンプルの窒素イオンの注入面との間隔を5mmとして、10−4Paの減圧雰囲気下1分間加熱してアニール処理した。加熱時の放熱面2の温度は1900℃とした。
処理後の窒素イオンの注入面のシート抵抗値と、AFMにより測定した、表面荒れの大きさを示すRMS値とを表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同じ基板サンプルを、加熱手段を内蔵した、従来の板状の基板ホルダ上に、窒素イオンの注入面を上側(基板ホルダとは反対側)にして載置し、実施例1と同様の減圧下で1分間加熱して同様にアニール処理した。加熱時の基板ホルダの温度は1900℃とした。
処理後の窒素イオンの注入面のシート抵抗値と、AFMを用いてダンピング方法により測定した(測定範囲:4μm×4μm)、表面荒れの大きさを示すRMS値とを表1に示す。
(比較例2)
実施例1と同じ基板サンプルを、窒素イオンの注入面を下側(基板ホルダユニットAの基板ステージ1側)に向けて基板ステージ1上に載置した。加熱ユニットBの放熱面2と、サンプルの窒素イオンの注入面との間隔は5mmとし、実施例1と同様の減圧下で1分間加熱して実施例1と同様にアニール処理した。加熱時の放熱面2の温度は1900℃とした。
処理後の窒素イオンの注入面のシート抵抗値と、AFMにより測定した、表面荒れの大きさを示すRMS値とを表1に示す。
Figure 0004988785
表1から、本発明の基板加熱処理装置を用いた熱処理によると、従来の一般的な装置による熱処理に比して、シート抵抗値、表面荒れ共に改善されていることが分かる。また、比較例2ではシート抵抗値が609Ω/□と高くなり、窒素イオンの注入面の温度が充分に上昇していないことが分かる。
(実施例2)
4H−SiC(0001)基板上にCVDにてn型SiCエピタキシャル層を厚さ10μmで形成し、その上にアルミニウムイオンを、500℃で、ボックスプロファイルになるように、多段で、注入量2×1018イオン/cm3、深さ800nmで注入した。このようにして得た3インチSiC基板を基板サンプルとし、図1〜図5に示されるような本発明に係る基板熱処理装置を用いて熱処理を施した。
基板サンプルは、アルミニウムイオンの注入面を上側(加熱ユニットBの放熱面2側)に向けて基板ステージ1上に載置し、加熱ユニットBの放熱面2と、サンプルの窒素イオンの注入面との間隔を5mmとして、10−4Paの減圧雰囲気下1分間加熱してアニール処理した。加熱時の放熱面2の温度は1900℃とした。
処理後、CV法を用いてキャリアの活性化率を評価したところ、85%という理想的な高い値を示し、基板サンプル面内での活性化率のばらつきも5%以内と非常に小さいことが分った。AFMを用いてダンピング方法により測定した(測定範囲:4μm×4μm)RMS値が0.6nmであり、1nm以下でしかもステップバンチングもなく平坦なことが分った。また、アニール処理後の基板サンプルは、熱衝撃による割れやスリップなどの結晶性へのダメージも観測されなかった。このときの1枚当りの処理時間は、載置から加熱、冷却、基板取り出しまでの時間を含め12分であり、従来のロボット搬送を用いない装置と比較して、スループットが約10倍に改善された。
(実施例3)
図1〜図5に示されるような本発明に係る基板熱処理装置を用いてアニール処理を行い、図7に示すような断面形状を持つ、イオン注入によるp+ n接合ダイオードを作製した。
オフ角4°を持つn+型4H−SiC(0001)基板上に5μmのnエピタキシャル層を犠牲酸化し、フッ酸処理した。その後、イオン注入装置で、注入温度500℃、深さ350nmで、注入濃度3×1020/cm3となるように、注入エネルギー30keVから170keVの範囲で窒素を多段に注入した。このようにして得たSiC基板を基板サンプルとし、図1〜図5に示されるような本発明に係る基板熱処理装置を用いて熱処理を施した。
基板サンプルは、イオン注入面を上側(加熱ユニットBの放熱面2側)に向けて基板ステージ1上に載置し、加熱ユニットBの放熱面2と、サンプルの窒素イオンの注入面との間隔を5mmとして、10−4Paの減圧雰囲気下1分間加熱してアニール処理した。加熱時の放熱面2の温度は1700℃、1800℃及び1900℃とした。
アニール処理を行った基板サンプルの表面平坦性を評価するために、アニール処理前と、上記各温度でのアニール処理後のサンプルについて、AFMのダンピングモードにて、測定領域4μm×4μmの範囲でRMS値を測定した。測定したRMS値を表2に示す。
次いで、アニール処理を施した各サンプルについて、犠牲酸化を行い、フッ酸洗浄を行い、表面変質層の除去を行った。更に、酸化珪素のパターニングを行った後、CF4+Ar混合ガスにて、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置を用い、SiC層を直径100μm、深さ1μmエッチングすることで、メサを形成した。
次に、真空蒸着装置を用いて、チタン(Ti)を20nm、アルミニウム(Al)を100nm成膜し、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中のアニール炉で、900℃にて3分間アニールすることでオーミック電極を形成した。
得られたダイオードの特性の評価のため、室温にて「Keithley社製の4200」を用いて、電流密度−電圧特性を測定した。
Figure 0004988785
表2に示す通り、各基板サンプルのアニール処理後の表面平坦性は、1900℃にて1分間のアニールを行った後でも、RMSnmとほぼ同程度の小さい値を示しており、非常に平坦であることが分った。
図8にアニール温度が1700℃、1800℃、1900℃のときのp+nダイオードの電流密度−電圧特性を示す。
順方向電圧0Vから2Vにおいて、アニール温度が1700℃と1800℃では大きなリーク電流密度が測定された。また、逆方向電圧領域では、アニール温度1700℃と1800℃では10−4アンペア台という大きなリーク電流密度が測定された。
一方、アニール温度1900℃においては、逆方向電圧領域では、殆どリーク電流密度が測定されず、順方向電圧領域でも10−6アンペア台という非常に小さなリーク電流密度しか測定されなかった。これは、pn接合界面のイオン注入による結晶欠陥が、アニール温度1900℃という高温処理によって消失したものと考えられる。
このように、本発明の基板熱処理装置を用いることで、非常に良好なp+-n接合ダイオードの製作が可能となった。このようなpn接合は、pn接合ダイオードばかりではなく、電界効果型トランジスタ(MOS−FET)、接合型トランジスタ(J−FET)、MES−FET、バイポーラ型トランジスタ(BJT)にも利用されており、これらSiCを用いた電子デバイスの特性を改善し、大幅な生産性の改善が図られることにつながる。
このように本発明によれば、効率よく短時間で基板を均一に高温に加熱し、短時間で冷却でき、ロボットアームへのダメージなく基板を搬送することができ、2000℃付近の超高温プロセスにおいても、実用的なスループットを実現できるようなった。
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
本願は、2007年9月3日提出の日本国特許出願特願2007−227449を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。

Claims (5)

  1. 基板が載置される基板ステージと、前記基板ステージの下側に間隔をあけて配置された輻射板と、前記輻射板の下側に間隔をあけて配置された反射板とを備えた基板ホルダユニットと、前記基板ステージの上方に設けられており、前記基板ステージと対向する放熱面を備え、前記基板ステージの上に載置された基板に対して非接触状態で、該放熱面からの輻射熱で前記基板を加熱する加熱ユニットと、前記基板ホルダユニットと、前記加熱ユニットが設けられているチャンバとを有する基板熱処理装置を用意する工程と、
    基板を前記基板ステージ上に載置する工程と、
    載置した前記基板に対して熱処理を行う工程と
    を有することを特徴とする基板の製造方法。
  2. 前記基板は、表面に注入領域を有する基板であって、前記注入領域側の面を前記加熱ユニットの放熱面側に向けて前記基板ステージ上に載置されることを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
  3. 前記基板は、SiC基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の製造方法。
  4. 前記SiC基板は、SiCエピタキシャル層を表面層として有することを特徴とする請求項3に記載の基板の製造方法。
  5. 前記基板熱処理装置は、前記反射板の下側に冷却パネルを更に具備し、
    前記基板に対して熱処理を行う工程では、前記基板の加熱時に前記基板ステージを前記冷却パネルで冷却する冷却工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
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