JP4987181B2 - レニウムタングステン線、それを用いたプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤ、蛍光表示管用フィラメントおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レニウムタングステン線、それを用いたプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤ、蛍光表示管用フィラメントおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体検査用のプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤ、蛍光表示管用フィラメントなどは、アルミニウム、シリコンあるいはカリウムをドープしたドープタングステン線や、レニウムを添加してなるレニウムタングステン線が使用されている。これらの用途では、一般の電球用に使用されるフィラメントと違い、室温〜1000℃程度の比較的低温で使用されるのが普通である。これらについて用途別に詳細に述べる。
【0003】
近年、半導体検査用のプローブピンは、IC等の半導体素子の高集積化に伴う端子の狭ピッチ化に対応するために極細線化されてきており、約60μm程度のものも提供されている。しかし、プローブピンは、半導体の電気特性の検査のために必要な針圧を繰り返し確保する必要があることから、そのように極細線化が進んでも強度および耐久性を確保する必要性がある。そこで、材質的には、例えば管球用ドープタングステン線をより高い加工率で、さらに例えばアニール温度を下げるなどして加工硬化させたり、材質自体を高ヤング率、高強度のレニウムタングステン線にすることなどが行われている。
【0004】
高強度と共に、コロナ放電特性等のワイヤの表面形状が影響を及ぼすチャージワイヤについては、ドープタングステンを用いその線径を60〜120μm程度に細くすることでコロナ放電を起こしやすくしている。この場合、金や白金等でメッキあるいクラッドなどの表面処理を行って異常放電による断線等を防いで長寿命化を図ることも行われている。
【0005】
また、蛍光表示管用のフィラメントにおいては、8〜20μm程度の非常に細いドープタングステンが使用されている。車載用などで耐振性が特に求められる場合や、エンドクールゾーンを向上させるため、あるいは消費電力の低減を図るために、電気抵抗の高く、高強度のレニウムタングステン線が用いられるようになってきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のレニウムタングステン線は極細線化に伴う強度低下が著しくて、用途によっては強度および耐久性が十分でない場合があった。
【0007】
レニウムタングステン線の製造をより低温で行ったり、製造途中でのアニールを施さずに加工硬化させる等、製造条件の改良によってある程度強度を向上させることも可能であるが、伸線中にクラックが発生したり、断線などの問題が発生することがあって、本発明者らが知る限りでは満足できるレニウムタングステン線は得られていなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高強度かつ耐久性が特に優れたレニウムタングステン線、それを用いたプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤ、蛍光表示管用フィラメントおよびその製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明のレニウムタングステン線は、レニウムを20〜40重量%、残部がタングステンよりなるレニウムタングステン線であって、前記レニウムタングステン線の断面形状が長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係であり、その引張強度が3000N/mm2以上であること、あるいはその硬度がマイクロビッカス硬度で650以上であること、あるいはその引張強度が3000N/mm2以上でかつその硬度がマイクロビッカス硬度で650以上であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のレニウムタングステン線の製造方法は、タングステン粉末にレニウム粉末を20〜40重量%添加混合し、得られた混合粉末を成形後焼結し、熱間で圧延加工および/または転打加工を施し、その後線引加工を行い線材を得た後、得られた線材に対し冷間加工により断面形状を長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係とし、その引張強度を3000N/mm2以上とすること、あるいはその硬度をマイクロビッカス硬度で650以上とすること、あるいはその引張強度を3000N/mm2以上としかつその硬度をマイクロビッカス硬度で650以上とすることを特徴とするものである。
【0011】
一般に、線材の強度は、同一の線材ならば主としてその断面積によって定まり、その強度は極細線化に伴う断面積の減少によって低下するものと考えられている。本発明は、主として、線材の断面を扁平形状にして線材の断面積の減少を抑え、さらにその引張強度または/および硬度を特定の値以上とすることによって、前記したような線材に対する極細線化の要求に応えようとするものである。
【0012】
しかしながら、極細線のレニウムタングステン線を扁平のものとして得ることは難しく、強度および耐久性等の機械的特性および電気的特性に関し満足できるものがなく、そして工業的に実施可能な安定的な製造法も見あたらなかった。例えば、扁平形状のレニウムタングステン線を得るには、円形状ではなく扁平状の吐出口を有するダイスを用いて伸線を行うことが考えられる。しかし、そのような扁平形状にダイスを加工することは非常に難しくて0.1×0.1mm程度が限界であり、本発明のような極細線の製造には不向きである。
【0013】
また、線材を作製した後に圧延などを行うことなどが考えられるが、線材に十分な延性がない場合にはクラックが発生してしまうため、延性を向上させるために素材自体を事前にアニールして軟化しておく必要がある。しかし、アニールによって室温での強度が著しく低下するという欠点がある。
【0014】
本発明の製造方法は、極細線化に対して、扁平形状でかつ十分な機械的特性を有するレニウムタングステン線を歩留まり良く得ることができる製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明は、上記扁平形状で、その引張強度または/および硬度が特定の値以上のレニウムタングステン線を用いることにより従来に比し優れた特性のプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤおよび蛍光表示管用フィラメントを得るものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
<レニウムタングステン線>
本発明によるレニウムタングステン線は、レニウムを20〜40重量%、残部がタングステンよりなるレニウムタングステン線である。
【0017】
レニウムの含有量があまり少ないと、扁平状に塑性加工する際に、線引きにより得られた線材のファイバー組織に沿ってクラックが入りやすくなるために好ましくない。また、レニウムの含有量があまり多いと、伸線時にクラックが入りやすくなるので好ましくない。なお、この伸線時のクラックは、σ層と呼ばれるレニウムとタングステンの難加工層が析出しやすくなることによって生じるものと現在推測される。
【0018】
従って、レニウムの含有量は、20〜40重量%、好ましくは20〜30重量%、特に好ましく22〜28重量%、である。なお、レニウムの量は、線材の具体的用途、線径、要求強度、耐久性、製造方法、加工性、製造コスト等を考慮して、上記範囲内で適宜定めることができることは言うまでもない。
【0019】
残部は、実質的にタングステンからなる。なお、本発明は、本発明の趣旨に反しない限り、具体的用途に応じて、本発明の効果、目的の達成に有利に作用する第三成分あるいは不可避的に存在することになる他の成分が共存するものを排除しない。本発明では、従来この種のレニウムタングステン線に任意に配合されてきた、例えばカリウム、アルミニウム、シリコンの少なくとも1種を10〜100ppmなどを必要に応じて含むことができる。
【0020】
そして、本発明によるレニウムタングステン線の断面形状は、長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係である。
【0021】
これは、長径Xと短径Yがあまり小さいと本発明の断面形状を扁平形状にする効果が小さくなるためであり、逆に、X/Yの比があまり大きいと扁平形状への塑性加工を行う際にクラックが発生しやすくなる。
【0022】
本発明の「扁平形状」の典型例は、長径Xおよび短径Yが断面のほぼ中央部分に位置し、断面が長径X方向および短径Y方向のいずれにおいてもほぼ対称な形をしているもの、即ち、例えば楕円形、である。しかし、本発明によるレニウムタングステンは、そのような楕円形の断面形状を有するものに限定されず、長径X/短径Yの値が上記範囲内に存在するものであれば、任意の断面形状(多角形等)のものでありうる。また、長径X/短径Yの値および断面形状は、レニウムタングステン線の全ての部分において一定である必要はない。
【0023】
本発明のレニウムタングステン線は、上記扁平形状であり、かつ引張強度を3000N/mm2以上とすること、あるいはその硬度をマイクロビッカス硬度で650以上とすること、あるいは引張強度を3000N/mm2以上としかつその硬度をマイクロビッカス硬度で650以上としたものである。
【0024】
ここで、その引張強度または/およびその硬度が、あまりに小さいと十分な機械的強度を得ることができず、扁平形状にすることによる断面積の減少を抑えたことによる効果を十分得ることができなくなる。このため、本発明の引張強度は、3000N/mm2以上とした。この引張強度は、好ましくは3500N/mm2以上であり、さらに好ましくは4000N/mm2以上である。また、前記理由で本発明の硬度は、マイクロビッカス硬度で650以上とした。この硬度は、好ましくは750以上であり、さらに好ましくは850以上である。すなわち、本発明によるレニウムタングステン線おいては、引張強度は少なくとも3000N/mm 2 であり、マイクロビッカス硬度は少なくとも650である。
【0025】
本発明における引張強度および硬度は、そのレニウムタングステン線の用途、形状によりいずれか1種以上の特性を選択することが可能である。
【0026】
ここで、本発明の引張強度は次の方法により測定することができる。
すなわち、評点間距離を50mmとして引張速度10mm/分で引張り荷重を加えたときの最大荷重を断面積で割ったものである。そして、その断面積は、線材を樹脂に埋め込み断面が露出するよう研磨し、その断面を電子顕微鏡で1000倍に拡大し、画像解析で面積を出す。
【0027】
また、本発明の硬度は次の方法により測定することができる。
すなわち、一般的なマイクロビッカス硬度計を使用し、加重500gf(4.9N)で15秒の荷重条件で硬度を測定するものである。
なお、引張強度および硬度のいずれも少なくとも10試料測定した際の平均値である。
【0028】
本発明の長径Xおよび短径Yは、少なくとも長径Xが90〜93μm、短径Yが30〜32μmのいずれかの範囲であることが好ましい。
【0029】
これは、長径と短径の各値があまりに大きいと本発明の扁平形状と機械的強度を規定する効果が小さくなり、逆にその各値があまり小さいと本発明の形状への加工が困難になるため、その値は上記範囲が好ましい。
【0030】
<レニウムタングステン線の製造方法>
以下、本発明におけるレニウムタングステン線の製造方法の一例を詳述する。
【0031】
混合工程 この工程は、レニウム粉体とタングステン粉体とをレニウムが20〜40重量%となるように混合する工程である。レニウム粉体は、粒径が0.5〜5μm、特に1〜3μm、のものが好ましい。タングステン粉体は、粒径が1〜5μm、特に2〜4μm、のものが好ましい。両粉体の添加方法および混合方法は、合目的的な任意のものを採用可能である。
【0032】
本発明では、好ましくは、例えばタングステン粉体にレニウム粉体を20〜30重量%となるように添加して、適当な混合装置(例えばボールミル)を用いて均一に混合することができる。
【0033】
成形工程 上記の混合工程により得られた混合粉末を、成形圧力1〜3ton/cm2で成形し、縦および横が各15〜25mm、長さが500〜700mmの成形体を得る。
焼結工程 上記成形工程により得られた成形体を、取り扱いが容易にするため1300〜1400℃で仮焼結を行い、その後通電焼結により約2800〜3100℃で本焼結を行い焼結体を得る。
熱間圧延工程 本発明のレニウムタングステンは難加工材のため、1500〜1600℃の熱間圧延を行い、直径10mm程度まで減面加工を行う。この熱間加工の中間工程において、加工歪除去のためにアニールを適宜行うことが好ましい。
転打工程 上記熱間圧延工程により得られた圧延材を、1300〜1400℃に加熱しながら直径2mm程度まで減面加工を行う。この転打加工の中間工程においても、加工歪除去のためにアニールを適宜行うことが好ましい。
線引工程(第1回目) 転打加工により得られた線材を、加工温度1200〜1000℃で直径0.4mm程度まで線引加工を行う。さらに直径0.4mm以降の細線にするために線引加工を、900〜600℃で行う。一般に、照明用に用いられる場合は、例えば直径0.2mmおよび80μm付近で中間アニールを行い、引張強さを2000〜2600N/mm2に低下させ線引時のクラックの発生を減少させているが、本発明においては、このような照明用の場合に比較しアニール温度を下げることで所望の引張強度を得ている。
電解加工工程(第1回目) 上記線引工程において得られた(中間工程の)線材に対し電解加工を施し、表面の歪みや欠陥を取り除く。これは、従来に比しアニール温度を下げることで加工歪が線材に蓄積し、かつ表面欠陥が発生しやすく、線引時にクラックが発生しやすくなるためである。この電解加工の電解液は、電解できるものであれば何等限定されるものではないが、10%の水酸化ナトリウム水溶液などを使用することができる。
線引加工工程(第2回目) 電解加工された線材を、加工温度600〜500℃で所定の線径まで線引加工を行う。
電解加工工程(第2回目) さらに第1回目と同様に電解加工を行う。
塑性加工工程 得られた線材を、冷間で圧延または油圧プレス等で所定の断面形状に扁平化させ、本発明のレニウムタングステン線を得る。
【0034】
一般に、タングステン線を製造する場合には、線引加工の中間段階において電解加工を一回しか行わないのが普通であるが、本発明による扁平形状を有するレニウムタングステン線を製造する場合には、電解加工を複数回(少なくとも線引加工の中間段階および線引加工後:最低2回)行うことが必須となる。このように電解加工を最低2回行うことは、最終の塑性加工でクラックを発生させないことと、断面形状を安定させる意味で重要である。この電解加工工程を経ることで、表面の欠陥を著しく低減させ、かつ塑性加工前のレニウムタングステン線の径を安定化させることができる。
【0035】
第1回目の電解加工は、具体的には、電解加工率〔(電解前後の線の断面積の差/電解前の断面積)×100%〕が5%以上、好ましくは7%以上、になるまで行う。電解加工率が5%未満の場合は、表面の酸化物の除去が不十分な場合があり、表面欠陥が除去できない可能性があり好ましくない。電解加工率の上限は10%程度が好ましい。
【0036】
第2回目の電解加工は、具体的には電解加工率が10%以上、好ましくは15%以上、になるまで行う。
以上の工程の実施により、本発明による扁平形状を有するレニウムタングステン線が製造される。
【0037】
<用途>
本発明による扁平形状を有するレニウムタングステン線は、見かけ上の線幅が同一である場合、円形断面を有するものに比べて断面面積が大きいこと(具体的には、断面の短径の配置方向に直交する方向から見たときの見かけ上の線幅が、従来の円形断面を有する線材と同一である場合、従来の円形断面を有する線材よりも断面面積が大きいこと)、さらにはクラックの発生が有効に防止されていることから、強度、耐久性が高く、そして電気的特性が良好なものである。
【0038】
従って、このような本発明によるレニウムタングステン線はその優れた機械的および電気的特性により、そのまま、あるいは必要に応じて適当な後処理ないし加工を行った後、各種の用途に使用することができる。例えば半導体検査用のプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤ、蛍光表示管用フィラメントなどとして好適なものである。
【0039】
具体的には、本発明のよるレニウムタングステン線を半導体導体検査用のプローブピンとして用いるときには、単位長さ当りのプローブピンの設置本数が増大するように、隣接して設けられたピン同志の短径Yの方向が一列状に配向するようにすることによって、端子が狭ピッチで設けられた単導体素子の検査を行うことができる。
【0040】
また、コロナ放電用チャージワイヤや蛍光表示管用フィラメントとして用いるときには、扁平形状の曲率が小さい方(即ち、長径X方向)を電極側とすることで、良好なコロナ放電あるいは電子放出が可能になる。
【0041】
【実施例】
以下の実施例は、本発明をより詳細に示すものである。
【0042】
<実施例1>
レニウム粉末(粒径:1〜3μm)を26重量%含むタングステン粉末(粒径2〜4μm)を、下記条件で、(1)成形、(2)焼結、(3)熱間圧延、(4)転打、(5)線引き(第1回目)、(6)電解加工(第1回目)、(7)線引き(第2回目)、(8)電解加工(第2回目)、(9)塑性加工して、扁平形状を有するレニウムタングステン線を製造した。
【0043】
▲1▼成形工程 上記レニウム粉末及びタングステン粉末をボールミルにより混合し、得られた混合粉末を成形圧力1.5ton/cm2で成形し、縦および横が各20mm、長さが600mmの成形体を得た。
▲2▼焼結工程 上記成形工程により得られた成形体を、取り扱いが容易にするため1300℃で仮焼結を行い、その後通電焼結により約2900℃で本焼結を行い焼結体を得た。得られた焼結体は、縦および横が16.7mm、長さが500mmで、比重が18であった。
▲3▼熱間圧延工程 得られた焼結体を1550℃の水素雰囲気中で加熱した後、熱間圧延を行い、直径10mmの棒材を得た。この熱間加工の中間工程(直径13mm)において、水素雰囲気中で通電アニール(約2000℃)を行った。
▲4▼転打工程 上記熱間加工工程により得られた棒材を大気中、1300〜1400℃に加熱しながら転打加工を行い直径2mmの棒材(線材)を得た。この転打加工の中間工程(直径6mm)において、水素雰囲気中で高周波加熱によるアニール(約2000℃)を行った。
▲5▼線引工程(第1回目) 上記転打加工により得られた線材を、加工温度1200℃から線径が細くなるに従い1000℃程度まで下げつつ直径0.4mmまで線引加工を行った。さらに直径0.4mmから68μmまで線引を行った。この線引工程の中間サイズである直径0.2mmで中間アニールを実施し、引張強さを2800N/mm2程度とした。
▲6▼電解加工工程(第1回目) 上記線引工程において得られた(中間工程の)線材に対し10%の水酸化ナトリウム水溶液中で連続で電解加工を行い、直径66μmの線材を得た。
▲7▼線引加工工程(第2回目) 電解加工された線材を、さらに加工温度600〜500℃で直径64μmまで線引加工を行った。
▲8▼電解加工工程(第2回目) さらに第1回目に電解加工を行い、直径60μmの線材を得た。
▲9▼塑性加工工程 得られた線材を、冷間圧延により断面形状を扁平化させ、本発明のレニウムタングステン線を得た。
【0044】
▲9▼の冷間加工後のレニウムタングステン線は、長径Xが90〜93μm、短径Yが30〜32μm、X/Yが2.8〜3.1のものであった。
【0045】
得られたレニウムタングステン線の引張強度を引張試験機により測定した後、長さ15mmに切断し、下記に示すテーパ長、曲げ角度としてプローブピンを製造した。得られたプローブピンの硬度をマイクロビッカス硬度計によって測定した。そして、このプローブピンを用いて下記の通りのAlパッドとの接触による変形試験を行った。
得られた結果は、表1に示される通りである。
【0046】
変形試験
テーパ長 : 2.5mm
曲げ角度 : 100度
パッド押し当て荷重 : 1gf
接触回数 : 1万回
<比較例7>
レニウムの配合量を18重量%にした以外は、実施例1と同様にして、扁平形状を有するレニウムタングステン線を製造した。実施例1と同様に引張強さおよび硬度の測定および変形試験を行った。
得られた結果は、表1に示される通りである。
【0047】
<実施例2>
レニウムの配合量を35重量%にした以外は、実施例1と同様にして、扁平形状を有するレニウムタングステン線を製造した。実施例1と同様に引張強さおよび硬度の測定および変形試験を行った。
得られた結果は、表1に示される通りである。
【0048】
<比較例1〜5>
表1に示されるように、レニウムの配合量、電解加工および圧延加工の回数を換えた以外は実施例1と同様にして、レニウムタングステン線を製造した。そして、実施例1と同様に硬度測定試験および変形試験を行った。但し、比較例2では、塑性加工(扁平加工)前の段階で、1600℃で30分間のアニール処理を行った。
得られた結果は、表1に示される通りである。
【0049】
【表1】
この表1に示されるように、レニウムの配合量が多い比較例5では、線引工程(即ち、伸線のための線引加工工程)においてクラックが発生した。レニウムの配合量が少ない比較例1、3、4では、線引工程によって伸線することが可能であったが、伸線を塑性加工する際の圧延加工性は不良であった。比較例2のように、アニールを行って引張強度を1500N/mm2にまで落としたものは、塑性加工(扁平加工)が可能であるが変形量が大きいことが判る。
実施例1〜2は、高い引張強度を保持しながら塑性加工が可能であり、変形量も非常に少なく優れた特性を示した。
【0050】
<実施例3>
レニウムを20重量%含むタングステン粉末を、実施例1と同様の、(1)成形、(2)焼結、(3)熱間圧延、(4)転打、(5)線引き、(6)電解加工、(7)線引き、(8)電解加工、(9)塑性加工を行って、扁平形状を有するレニウムタングステン線を製造した。
【0051】
各加工段階におけるレニウムタングステン線の直径は、▲5▼の線引き加工後では68μmであり、▲6▼の電解加工後では66μmであり、▲7▼の線引き加工後では64μmであり、▲8▼の電解加工後では60μmであった。▲9▼の冷間加工後のレニウムタングステン線は、長径Xが90〜93μm、短径Yが30〜32μm、X/Yが2.8〜3.1のものであった。
得られたレニウムタングステン線の引張強度を引張試験機により測定した結果、3500N/mm2であった。
【0052】
得られた扁平形状を有するレニウムタングステン線の表面に厚さ0.3μmの金めっきを施した。この金めっきレニウムタングステン線をコロナ放電電極として、印加電圧7kVをかけて、シリコンオイルの強制雰囲気の中、初期コロナ電流値が50%となる時間を測定したところ、その時間は1200時間であった。
【0053】
<比較例6>
実施例3において、(9)の冷間加工工程を省略した以外は実施例3と同様にして、直径60μmの扁平化されていないレニウムタングステン線を製造した。実施例3と同様に、得られたレニウムタングステン線の表面に金メッキを施したものを、コロナ放電電極として用い、同様に初期コロナ電流値が50%となる時間を測定したところ、その時間は600時間であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によるレニウムタングステン線は、極細線化に伴う強度低下が著しく抑制されて優れた強度、耐久性および電気的特性を有するものである。
【0055】
このような本発明によるレニウムタングステン線はその優れた機械的および電気的特性により、例えば半導体検査用のプローブピン、コロナ放電用チャージワイヤ、蛍光表示管用フィラメントなどとして好適なものである。
Claims (11)
- レニウムを20〜40重量%、残部がタングステンよりなるレニウムタングステン線であって、前記レニウムタングステン線の断面形状が長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係であり、その引張強度が3000N/mm2以上であることを特徴とする、レニウムタングステン線。
- レニウムを20〜40重量%、残部がタングステンよりなるレニウムタングステン線であって、前記レニウムタングステン線の断面形状が長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係であり、その硬度がマイクロビッカス硬度で650以上であることを特徴とする、レニウムタングステン線。
- レニウムを20〜40重量%、残部がタングステンよりなるレニウムタングステン線であって、前記レニウムタングステン線の断面形状が長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係であり、その引張強度が3000N/mm2以上、その硬度がマイクロビッカス硬度で650以上であることを特徴とする、レニウムタングステン線。
- 少なくとも長径Xが90〜93μm、短径Yが30〜32μmのいずれかの範囲であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレニウムタングステン線。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレニウムタングステン線を使用してなるプローブピン。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレニウムタングステン線を使用してなるコロナ放電用チャージワイヤー。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレニウムタングステン線を使用してなる蛍光表示管用フィラメント。
- タングステン粉末にレニウム粉末を20〜40重量%添加混合し、得られた混合粉末を成形後焼結し、熱間で圧延加工および/または転打加工を施し、その後線引加工を行い線材を得た後、得られた線材に対し冷間加工により断面形状を長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係とし、その引張強度を3000N/mm2以上とすることを特徴とする、レニウムタングステン線の製造方法。
- タングステン粉末にレニウム粉末を20〜40重量%添加混合し、得られた混合粉末を成形後焼結し、熱間で圧延加工および/または転打加工を施し、その後線引加工を行い線材を得た後、得られた線材に対し冷間加工により断面形状を長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係とし、その硬度をマイクロビッカス硬度で650以上とすることを特徴とする、レニウムタングステン線の製造方法。
- タングステン粉末にレニウム粉末を20〜40重量%添加混合し、得られた混合粉末を成形後焼結し、熱間で圧延加工および/または転打加工を施し、その後線引加工を行い線材を得た後、得られた線材に対し冷間加工により断面形状を長径Xと短径Yの比(X/Y)で2.8〜3.1の関係とし、その引張強度を3000N/mm2以上およびその硬度をマイクロビッカス硬度で650以上とすることを特徴とする、レニウムタングステン線の製造方法。
- 少なくとも線引加工の中間段階および線引加工後に電解研磨処理を施すことを特徴とする、請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載のレニウムタングステン線の製造方法。
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