JP4982004B2 - 防着板装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応性イオンプレーティング装置等の真空装置に設けられる防着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、反応性イオンプレーティング装置などの蒸着装置で、蒸発源からの蒸発物が真空室内の壁面に付着して汚染することを防止するため、図1及び図2に示すように、真空室a内の蒸発源bの上方に防着板cを設けることが行われている。これらの図に示したものは、反応性イオンプレーティング装置で、ホローカソード電子銃dにより回転式の蒸発源b内の蒸発材料を加熱蒸発させ、その蒸発物をガス導入管fから導入した反応性ガスと反応させて上方の基板eに付着させて成膜し、該防着板cの汚れが大きくなった時点でこれの清掃が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
該防着板cは、被膜形成目的物である基板eよりも蒸発源bから近い位置に設けられるため、蒸発物は大きな成膜速度で付着することになる。そのため防着板cに付着した蒸発物は144時間ほどの短時間で40mm程度に厚膜化し、その後剥離するようになり、剥離した蒸発物が蒸発源b内へ混入して異常放電を発生させ、放電持続が困難になるという問題があった。この厚膜化した付着蒸着物を清掃すれば、この問題は解消できるが、短時間で清掃を行うことで運転効率が低下する不都合を伴う。
【0004】
また、図示の装置で基板eにMgOの成膜を行うべく蒸発源bにMgを用意し、蒸発するMgを基板近傍に導入した酸素ガスと反応させて基板eにMgO膜を形成するイオンプレーティングの場合、防着板cには発火性のMgが付着するため、防着板cの清掃等のメンテナンスを行うべく真空室内を大気に開放した際、Mg付着物が発火する恐れがあってメンテナンス作業に注意を払う必要があった。特に同図示のように、防着板cのホローカソード電子銃dの部分だけをMg蒸気の流通用に開口したものは、防着板cの蒸発源bに近い部分には、酸素の供給が非常に少ないことから、非常に速い堆積速度でMgが付着し、短時間で剥離が発生して好ましくない。
【0005】
本発明は、防着板に付着する蒸発物の付着量を減少させて付着物の剥離がなく、特にMgO膜の成膜に適した防着板装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、真空室内に設けた蒸発源の上方に、蒸発物の目的方向以外への飛散を防止する防着板を備えた装置に於いて、該防着板は、蒸発源から蒸発する蒸発物が真空室内壁に付着することを防止するために、蒸発源と蒸着対象物との間において、上下方向に延在した部分と、上下方向に延在した部分の上端部から蒸着対象物の目的箇所以外へ蒸発物が付着することを防止するために蒸発源と蒸着対象物との間の蒸着対象物側に第1の開口部を備えるとともに、前記上端部が真空室内壁に接続されるように延在した部分と、上下方向に延在した部分の下端部側において、蒸発源と蒸着対象物との間の蒸発源側に第2の開口部を備えるとともに、蒸発源の上側の第2の開口部に向かって延在した部分とを備え、防着板の上下方向に延在する部分の真空室内壁側及び防着板の下端部を蒸発源の上側の第2の開口部に向かって延在した部分の蒸発源側にヒーターを取り付けたことを特徴とすることにより、上記の目的を達成するようにした。該ヒーターには、その温度を調節する温度調節装置を接続し、該防着板には、該温度調節装置に接続された熱電対その他の温度検出手段を取り付けることが好ましい。この構成は、真空室内に、回転式の蒸発源、該蒸発源の蒸発材料を加熱するホローカソード電子銃その他の加熱手段、該蒸発源に対向した基板、及び反応性ガス導入口を設け、該蒸発源の上方に、該基板の方向以外へ向かう蒸発物の飛散を防止する金属製の防着板を設けた反応性イオンプレーティング装置に適用することで、防着板には薄いMgO膜が付着するだけでメンテナンスも安全にしかも簡単に行える。
【0007】
【発明の実施の形態】
図面に基づき本発明の実施の形態を説明すると、図3及び図4は反応性イオンプレーティング装置に適用した例を示し、符号1は真空ポンプ14により真空排気された真空室、符号2は該真空室1の上方に設置された長手の基板で、該基板2の下方に回転軸3により回転される回転式の蒸発源4を2基設けた。該蒸発源4内に収容したMg等の蒸発材料は、4本のホローカソード電子銃5から成る加熱手段の電子ビームが陽極である蒸発源4に入射することにより加熱蒸発される。該基板2の成膜面の近傍には、反応性ガスを導入するガス導入口6を設け、蒸発源4から蒸発する蒸発物と該反応性ガスとが反応した膜が該基板2に形成されるようにした。
【0008】
該蒸発源4の上方には、ホローカソード電子銃5のビームが通過できる程度の開口7と、基板2の蒸着面に相当する大きさの蒸着開口8を備えた金属製の防着板9を設け、これにより蒸発源4からの蒸発物13が該開口7を介して目的方向である基板2の蒸着面以外の方向、即ち真空室1の室壁や構造物の方向へ飛散して付着することが防止される。
【0009】
こうした構成は、従来のものと特に変わりがないが、該防着板9に付着する蒸発物が厚膜化することにより前記した問題を生じるので、本発明では、該防着板9にヒーター10を取り付けると共に該ヒーター10に温度調節装置11を接続し、該防着板9の温度を付着した蒸発物が蒸発する温度に制御した。該防着板9には該温度調節装置11に接続した熱電対12等の温度検出手段を設け、これで温度検出しながら該防着板9の温度を一定に制御するようにした。該ヒーター10は、防着板9の背面、即ち真空室1の壁面側10aに設けるようにし、該ヒーター10としてはシースヒーターその他の電気ヒーターが使用される。
【0010】
図3及び図4に示すイオンプレーティング装置に於いて、蒸発源4にMgの蒸発材料を収容して真空室1内を10-2Paに排気すると共にガス導入口6から酸素の反応性ガスを導入し、ホローカソード電子銃5の電子ビームによりMg蒸発物を蒸発させる。また、該ヒーター10を作動させ、防着板9をMgの再蒸発が可能な温度である500℃一定に加熱しておく。蒸発物は開口7及び蒸着開口8を介して基板2に到達し、酸素ガスと反応してMgO膜が基板2の蒸着面に形成される。蒸発物は目的とする基板2以外の方向にも拡散し、蒸発源4の直上の防着板9aの下面及び上下方向の防着板9bの蒸発物通過側の面にも付着するが、該防着板9が加熱されているので付着したMg蒸発物は再蒸発する。蒸発源4の直上の防着板9aの下面は、前記したように最も厚く蒸発物の付着が見られる場所で、これが剥離すると異常放電を発生することになるが、防着板9をヒーター10で加熱しておくことで144時間の連続成膜でも、該防着板9の下面には3mmの厚さでしか付着せず、剥離が全く生じなかった。しかもその付着した薄いMg膜は、開口7から回り込むわずかな酸素ガスにより酸化され、メンテナンスのために該真空室1内を大気に曝しても発火することがなく、ガスバーナーで10秒間加熱したが発火しなかった。尚、図1に示した従来の反応性イオンプレーティング装置の防着板に付着したMg膜は、ガスバーナーを10秒間当てると発火した。
【0011】
ホローカソード電子銃5の加熱手段の代わりに、トランスバース式電子銃、差動排気系を有するピアス式電子銃、或いは浦本式プラズマガン等を使用してもよい。また、反応性イオンプレーティング装置に限らず、付着膜の剥離による異常放電やメンテナンス時の発火の生じる蒸着装置に本発明は好都合に適用できる。
【0012】
【発明の効果】
以上のように本発明によるときは、真空蒸着装置に設けた防着板にヒーターを取り付けると共に該ヒーターにその温度を調節する温度調節装置を接続したので、蒸着中に防着板に付着する付着物の厚さを薄くしてこれの剥離による異常放電を防止することができ、メンテナンスも容易になり、特にMgOの反応性イオンプレーティングに適用して長時間に亘り蒸着し且つ安全にメンテナンスすることができる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の防着板装置の截断側面図
【図2】図1の側面図
【図3】本発明の実施の形態を示す截断側面図
【図4】図3の側面図
【符号の説明】
1 真空室、2 基板、4 蒸発源、5 ホローカソード電子銃(加熱手段)、6 ガス導入口、9 防着板、10 ヒーター、11 温度調節装置、12 熱電対、13 蒸発物、

Claims (3)

  1. 真空室内に設けた蒸発源の上方に、蒸発物の目的方向以外への飛散を防止する防着板を備えた装置に於いて、
    該防着板は、蒸発源から蒸発する蒸発物が真空室内壁に付着することを防止するために、
    蒸発源と蒸着対象物との間において、上下方向に延在した部分と、
    上下方向に延在した部分の上端部から蒸着対象物の目的箇所以外へ蒸発物が付着することを防止するために蒸発源と蒸着対象物との間の蒸着対象物側に第1の開口部を備えるとともに、前記上端部が真空室内壁に接続されるように延在した部分と、
    上下方向に延在した部分の下端部側において、蒸発源と蒸着対象物との間の蒸発源側に第2の開口部を備えるとともに、蒸発源の上側の第2の開口部に向かって延在した部分とを備え、
    防着板の上下方向に延在する部分の真空室内壁側及び防着板の下端部を蒸発源の上側の第2の開口部に向かって延在した部分の蒸発源側にヒーターを取り付けたことを特徴とする防着板装置。
  2. 上記ヒーターにその温度を調節する温度調節装置を接続し、上記防着板に、該温度調節装置に接続された熱電対その他の温度検出手段を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の防着板装置。
  3. 真空室内に、回転式の蒸発源、該蒸発源の蒸発材料を加熱するホローカソード電子銃その他の加熱手段、該蒸発源に対向した基板、及び反応性ガス導入口を設け、該蒸発源の上方に、該基板の方向以外へ向かう蒸発物の飛散を防止する金属製の防着板を設けた反応性イオンプレーティング装置に於いて、
    該防着板は、蒸発源から蒸発する蒸発物が真空室内壁に付着することを防止するために、
    蒸発源と蒸着対象物との間において、上下方向に延在した部分と、
    上下方向に延在した部分の上端部から蒸着対象物の目的箇所以外へ蒸発物が付着することを防止するために蒸発源と蒸着対象物との間の蒸着対象物側に第1の開口部を備えるとともに、前記上端部が真空室内壁に接続されるように延在した部分と、
    上下方向に延在した部分の下端部側において、蒸発源と蒸着対象物との間の蒸発源側に第2の開口部を形成するようにして、蒸発源の上側の第2の開口部に向かって延在した部分とを備え、
    防着板の上下方向に延在する部分の真空室内壁側及び防着板の下端部を蒸発源の上側の第2の開口部に向かって延在した部分の蒸発源側にヒーターを取り付けたことを特徴とする反応性イオンプレーティング装置に於ける防着板装置。
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