JP2634487B2 - イオンプレーティングによる耐摩耗性被膜形成法 - Google Patents

イオンプレーティングによる耐摩耗性被膜形成法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、イオンプレーティング、特に昇華性金属の
窒化物の耐摩耗性被膜を高速で形成するイオンプレーテ
ィングによる耐摩耗性被膜形成法に関する。
従来の技術 PVD法(Physical Vaper Depositon Prosess)は、仕
上げ加工が不要な円滑な仕上り面で被膜を均一に形成で
きる表面処理法として知られている。イオンプレーティ
ング法は、加熱された被膜金属元素の蒸発源から蒸発し
た原子をグロー放電又は高周波プラズマで部分的にイオ
ン化し、基板に原子を付着させる方法であり、減圧空間
に窒素やアセチレンをリークさせると金属の窒化物が蒸
着される。この方法は活性化反応性蒸着法と呼ばれ、真
空蒸着ほど高真空でないため、膜の均一性、つき回りが
よく、イオンで基板をたたく効果によって密着性もよ
い。イオンプレーティング法は、摺動部材又は切削工具
等の表面に耐摩耗性の厚膜を形成する重要な表面処理法
として利用されている。
イオンプレーティング法は、金属窒化物の金属化合物
又はこれらの複合物の被膜を容易に形成できる利点があ
る。更に、この被膜は真空蒸着法で形成された被膜に比
べて、母材との密着性が格段に優れ、スパッタリング法
よりも被膜生成速度が非常に速い利点がある。
発明が解決しようとする課題 ところで、従来のイオンプレーティング法では、溶解
又はホットアイソスタティック成形法(HIP法)で形成
した塊(インゴット)を蒸発材として用いるため、本来
蒸発速度が速いCr、Mn等の昇華性金属でも、蒸発速度が
遅くなり生産性が低下する欠点がある。また、高価な蒸
発材となって、素材表面に金属の厚膜を形成すると、コ
スト高を招来するのが現状である。
そこで、本発明は、迅速にかつ効率よく耐摩耗性被膜
を被着体に形成するイオンプレーティングによる耐摩耗
性被膜形成法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段 本発明によるイオンプレーティングによる耐摩耗性被
膜形成法は、粉体状、小粒体状又は小塊体状のクロム
(Cr)又はマンガン(Mn)の蒸発材(16)を真空槽(1
1)内のルツボ(15)中に配置する工程と、蒸発材(1
6)から一定距離離間して被着体(12)を真空槽(11)
内に配置する工程と、電子ビームにより蒸発材(16)を
蒸発させ被着体(12)に被膜を形成する工程とを含む。
このイオンプレーティングによる耐摩耗性被膜形成法
は、更に蒸発材(16)の上方に配置したHCD型電子銃(1
7)の電子ビーム管(17a)から電子ビームを蒸発材(1
6)に向かって照射して、蒸発材(16)を高速に加熱蒸
発させ、イオン化させると同時に、真空槽(11)内に窒
素ガス(N2ガス)を導入する工程と、イオン化された蒸
発材の原子を真空槽(11)内の窒素ガスと結合させかつ
負の電圧を印加した被着体(12)にイオン化した蒸発材
(16)を高速に付着させて、クロム(Cr)又はマンガン
(Mn)と窒素(N)を主成分とする耐摩耗性の被膜を被
着体(12)の表面に形成する工程とを含む。本発明の実
施例では、真空槽(11)内を10-2〜10-4torrの真空度に
保持する工程を含んでもよい。
作用 表面積の大きい粉体状、小粒体状又は小塊体状のクロ
ム(Cr)又はマンガン(Mn)の蒸発材(16)をルツボ
(15)内に配置し、蒸発材(16)の上方に配置した電子
ビーム管(17a)から電子ビームを蒸発材(16)に向か
って照射して、蒸発材(16)を加熱するので、電子ビー
ムが蒸発材(16)に向かって正確に放出され、蒸発材
(16)が効率よくかつ高速でイオン化される。また、イ
オン化された蒸発材の原子は、真空槽(11)内の窒素ガ
スと結合し、負の電圧が印加された被着体(12)に迅速
に付着する。これにより、クロム(Cr)又はマンガン
(Mn)と窒素(N)を主成分とする硬質の被膜が被着体
(12)に高速に形成される。
実 施 例 以下、本発明によるイオンプレーティングによる耐摩
耗性被膜形成法の実施例を第1図〜第2図について説明
する。
第1図は、本発明によるイオンプレーティングによる
耐摩耗性被膜形成法に使用するイオンプレーティング装
置10を示す。イオンプレーティング装置10は真空槽11と
保持具13により真空槽11の内部に回転可能に保持された
被着体の母材12と、保持具13の上方に設置され且つ母材
12を所定温度に加熱するヒータ14と、保持具13の下方に
設置された水冷銅式のルツボ15と、真空槽11の側壁に取
付けられたHCD(Hollow Cathode Discharge)型の電子
銃17と、雰囲気ガス(N2ガス)を真空槽11内に供給する
導入管18とを有する。真空槽11は10-2〜10-4torrの真空
度に保持する図示しない真空ポンプにより減圧される。
母材12は、外径85mm、厚さ2mmのSUS304によるステンレ
ス製パイプで形成され、母材12の表面を被覆すべき昇華
性金属Cr又はMnの粉体状、小粒体状又は小塊体状からな
る蒸発材16がルツボ15の内部に収容される。ルツボ15は
直径70mmで深さ100mmのカップ状に形成される。本実施
例では、例えば縦横1mm×1mmで、長さ5mm程度の大きさ
を有する市販の小塊状金属クロム又は小片電解クロムを
蒸発材16として用いる。電子銃17は、蒸発材16の上方に
配置した電子ビーム管17aを有し、電子ビーム管17aで発
生する電子ビームは蒸発材16に向かって下方に照射され
る。電子銃17から射出された電子ビームを蒸発材16に照
射する集束コイル19がルツボ15の上方に配置される。
第1図に示すイオンプレーティング装置10の作動の際
に、真空槽11内は真空ポンプにより減圧され10-2〜10-4
torrの真空度に保持され、母材12はヒータ14により加熱
されると共に、保持具13の駆動により回転される。保持
具13の回転中、母材12は400℃の温度に保持される。こ
の状態で、38V−500Aの低電圧−大電流出力で電子銃17
から蒸発材16に電子ビームが照射される。導入管18から
窒素ガスを1×10-3torrの分圧で供給し、30〜120分の
被覆処理時間で被覆を行った。蒸発材16が粉体状、小粒
体状又は小塊体状のため、電子銃17による蒸発材16の加
熱表面積を大きくできるので、集束コイル19に低い電流
が流れても、昇華性金属の大量蒸発が可能である。ま
た、電子銃17から電子ビームを粉体状、小粒体状又は小
塊体状の蒸発材16に照射して、蒸発材16が飛散するスプ
ラッシュが発生しても、蒸発した原子が母材12に通常に
付着し続け、実用上の問題を何ら生じない。
本実施例では、表面積の大きい粉体状、小粒体状又は
小塊体状のクロム(Cr)又はマンガン(Mn)の蒸発材16
をルツボ15内に配置しかつ蒸発材16に正の電圧を印加
し、蒸発材16の上方に配置した電子ビーム管17aから電
子ビームを蒸発材16に向かって下方に照射して、蒸発材
16を加熱するので、電子ビームが蒸発材16に向かって正
確に放出され、蒸発材16が効率よくかつ高速でイオン化
される。また、イオン化された蒸発材原子は、真空槽16
内の窒素ガスと結合し、負の電圧が印加された被着体12
に迅速に付着する。これにより、クロム(Cr)又はマン
ガン(Mn)と窒素(N)を主成分とする硬質の被膜が被
着体12に高速に形成される。
他面、直径70mm×長さ100mmの大きさを有する溶解材
で形成されたクロムインゴットを使用して従来のイオン
プレーティング法により母材12上に被膜を形成し、前記
実施例により蒸発材16を使用して母材12上に形成された
被膜の膜圧と、従来のイオンプレーティングにより得ら
れた被膜の膜厚との比較試験を行った。比較試験の結果
を第2図に示す 第2図は横軸の被覆処理時間に対して母材12のパイプ
外周に被覆されるCr−N膜の厚さ(ミクロン)を縦軸に
示す。図中、実線は粉体又は小粒体のクロム蒸発材16を
用いた本発明の方法による膜厚を示し、破線はクロムイ
ンゴットを用いた従来のイオンプレーティング法による
膜厚を示す。第2図から明らかなように、本発明による
イオンプレーティング法では、従来の方法の約2倍の速
さで被覆を形成できることが理解できよう。特に本発明
による方法は膜厚が大きい程、被膜の形成時間を著しく
短縮でき有利である。
発明の効果 前記のように、本発明による方法は、従来のイオンプ
レーティング法よりも格段に高速でかつ効率的に耐摩耗
性被覆を形成でき、生産コストの削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明によるイオンプレーティングによる耐
摩耗性被膜形成法に使用するイオンプレーティング装置
の概略図、第2図は本発明のイオンプレーティングによ
る耐摩耗性被膜形成法と従来のイオンプレーティング法
により形成した被膜の膜厚形成速度を示すグラフであ
る。 10……イオンプレーティング装置、11……真空槽、12…
…母材、13……母材保持具、14……ヒータ、15……ルツ
ボ、16……蒸発材、17……電子銃、17a……電子ビーム
管、18……導入管、19……集束コイル、

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粉体状、小粒体状又は小塊体状のクロム
    (Cr)又はマンガン(Mn)の蒸発材(16)を真空槽(1
    1)内のルツボ(15)中に配置する工程と、蒸発材(1
    6)から一定距離離間して被着体(12)を真空槽(11)
    内に配置する工程と、電子ビームにより蒸発材(16)を
    蒸発させ被着体(12)に被膜を形成する工程とを含むイ
    オンプレーティングによる耐摩耗性被膜形成法におい
    て、 蒸発材(16)の上方に配置したHCD型電子銃(17)の電
    子ビーム管(17a)から電子ビームを蒸発材(16)に向
    かって照射して、蒸発材(16)を高速に加熱蒸発させ、
    イオン化させると同時に、真空槽(11)内に窒素ガス
    (N2ガス)を導入する工程と、 イオン化された蒸発材の原子を真空槽(11)内の窒素ガ
    スと結合させかつ負の電圧を印加した被着体(12)にイ
    オン化した蒸発材(16)を高速に付着させて、クロム
    (Cr)又はマンガン(Mn)と窒素(N)を主成分とする
    耐摩耗性の被膜を被着体(12)の表面に形成する工程と
    を含むことを特徴とするイオンプレーティングによる耐
    摩耗性被膜形成法。
  2. 【請求項2】真空槽(11)内を10-2〜10-4torrの真空度
    に保持する工程を含む請求項1に記載のイオンプレーテ
    ィングによる耐摩耗性被膜形成法。
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