JP3853449B2 - 薄膜形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成技術にかかり、特に、金属材料物質と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜を形成する際に、安全性の高い薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されている表示装置はCRTがその大部分を占めているが、近年では、液晶ディスプレイやPDP(Plasma Display Panel:フ゜ラス゛マテ゛ィスフ゜レイハ゜ネル)が占める割合が増加している。
【0003】
液晶表示装置は製造が容易であり安価であることから、携帯用コンピュータ等の携帯用電子機器に広く採用され、現在大量生産されるに至っている。しかしながら視野角が狭く、応答速度が遅く、また、大型化が困難であるという欠点があるため、最近では、ハイビジョン等の大型ディスプレイ分野については、PDP表示装置が注目されている。
【0004】
PDPの発光原理は、マトリックス状に形成された電極間に放電を生じさせ、密閉された希ガスをプラズマ化し、そのプラズマから発生した紫外線を蛍光体に照射して可視光を発生させることにあるが、誘電体や電極膜が発生したプラズマによってスパッタリングされやすという欠点がある。そのため、希ガスが封入される部分の表面には、スパッタイールドが小さく、透明な誘電体の保護膜を形成する必要があるとされている。
【0005】
そのような保護膜には、PDPの発光特性から、二次電子放出係数が高いことが求められており、一般には酸化マグネシウム薄膜(MgO薄膜)が使用されている。MgO薄膜は極めてスパッタイールドが低いため、MgOをスパッタリングターゲットとしたスパッタリング法では、高速成膜は行えない。
【0006】
そこで従来技術によるMgO薄膜の形成では、MgO結晶を蒸発源とし、(Mg+O)蒸気を発生させ、蒸発源に対向配置された基板表面にその(Mg+O)蒸気を付着させ、MgO薄膜を形成する蒸着装置が用いられていた。
【0007】
しかしながら電子ビームを照射してMgO結晶を加熱し、(Mg+O)蒸気を発生させようとすると、絶縁物であるMgO結晶がチャージアップし、放電特性が不安定になるという問題がある。不安定な放電の下で形成されたMgO薄膜にはムラや欠陥が多く、不良品が多発してしまう。
【0008】
そこで本発明の発明者等は、以前、金属マグネシウムを蒸発源としたイオンプレーティング法によるMgO薄膜形成装置を提案した。その薄膜形成装置を図3の符号102に示して説明すると、この薄膜形成装置102は真空槽111を有しており、真空槽111内には、蒸発源120と基板ホルダー124とが配置されている。蒸発源120内には金属マグネシウムから成る金属材料123が納められており、基板ホルダー124には基板115が保持されている。
【0009】
真空槽111内にはホロカソード117が設けられており、真空槽111内を真空排気した後、ホローカソード117に負電圧、蒸発源120に正電圧を印加し、ホローカソード117先端からアルゴンガスを噴出させると、最初は蒸発源120近傍にアルゴンガスプラズマが生成し、やがてホローカソード117内には大量の熱電子が発生し得る。ホローカソード117内から発する熱電子が正電圧に引きつけられ、蒸発源120内の金属材料123に入射すると、金属材料123が加熱され、金属材料物質(Mg)の蒸気が真空槽111内に放出される。
【0010】
基板ホルダー124には、円筒形のチムニー(ガス拡散防止装置)125が設けられており、基板115はチムニー125内に配置されている。チムニー125内にはガス散布装置104が配置されており、ガス管126からガス散布装置104内に酸素ガスを導入し、チムニー125内に散布しておくと、基板115表面の酸素ガス分圧が高い状態で、金属材料物質の蒸気が基板115表面に到達し、金属材料物質と酸素ガスの反応生成物が基板115表面に堆積し、MgO薄膜を形成することができる。
【0011】
このような薄膜形成装置102によれば、酸素ガスは、チムニー125内で大半が消費され、チムニー125外へは流出しないので、蒸発源120付近の酸素ガス分圧は低くなり、高温に曝される蒸発源120やホローカソード117の酸化・消耗が少なく、また、金属材料123が酸化されないことから、電子ビームを安定して照射することができる。
酸素分圧については、例えば、下記表1、
【0012】
【表1】
【0013】
の成膜条件でMgO薄膜の形成を行った場合、チムニー125内の酸素分圧は1.0×10-2Torrであったのに対し、チムニー125の外部においては、その1/100に当たる1.0×10-4Torr以下であった。
【0014】
ところで、チムニー125内の酸素分圧を上述の酸素分圧(1.0×10-2Torr)以下の圧力にした場合、得られるMgO薄膜の組成は化学量論比と異なり、酸素欠損になってしまうことが判明している。ところが、チムニー125外部の酸素分圧は、MgO薄膜が酸素欠損になる酸素分圧の値よりも低く、チムニー125外部に配置された部材には、酸素ガスとは未反応の状態の金属材料物質(金属Mg)が多量且つ高速に付着してしまう。
【0015】
実際に表1の成膜条件で、基板115表面に0.5μmのMgO薄膜を形成した後、真空槽111内に大気を導入してみると、ホローカソード117の支持部品や真空槽111内壁等の、チムニー125外に位置し、酸素ガスとは未反応の状態の活性な金属Mg膜が堆積したところが大気中の酸素あるいは水蒸気と反応して一部から出火し、作業上の危険性が問題となっていた。
【0016】
このような出火を防止するためには、チムニー125の外部でも、チムニー125の内部と同等の酸素分圧にして、金属Mg膜ではなく、MgO薄膜が形成されるようにすればよいが、チムニー125外部の酸素分圧を高くした場合、高温に曝される蒸発源120やホローカソード117を構成する部材が酸化消耗によって著しく劣化するため、MgO薄膜を連続して長期に形成することはできなくなる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたもので、その目的は、真空槽内に活性な金属薄膜が形成されることによる発火の危険性をなくし、成膜対象物表面に、長期に連続して反応生成物の薄膜を形成できる技術を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ガス散布装置とガス拡散防止装置と薄膜形成のための材料源とが真空槽内に配置され、前記ガス拡散防止装置の内部に前記ガス散布装置と成膜対象物とを配置し、前記ガス散布装置から前記ガス拡散防止装置内に反応性ガスを散布し、前記反応性ガスの分圧が前記ガス拡散防止装置の内部で高く、外部で低い状態で、前記材料源内に配置された金属材料から前記真空槽内に金属材料物質を放出させ、前記金属材料物質と前記反応性ガスとを反応させ、その反応生成物を含む薄膜を前記成膜対象物表面に形成する薄膜形成装置であって、前記真空槽内に放出された金属材料物質が付着する部材を加熱する加熱装置が設けられ、前記ガス拡散防止装置の外部にシャワーノズルが設けられ、前記シャワーノズルから前記真空槽壁面に向けて、前記金属材 料物質と反応する安定化ガスを噴霧できるように構成されたことを特徴とする薄膜形成装置である。
また、請求項2記載の発明は、ガス散布装置と、ガス拡散防止装置と、薄膜形成のための材料源とが真空槽内に配置され、前記ガス拡散防止装置の内部に前記ガス散布装置と成膜対象物とを配置し、前記ガス散布装置から前記ガス拡散防止装置の内部に反応性ガスを散布し、前記反応性ガスの分圧が前記ガス拡散防止装置の内部で高く、外部で低い状態で、前記材料源内に配置された金属材料から前記真空槽内に金属材料物質を放出させ、前記金属材料物質と前記反応性ガスとを反応させ、その反応生成物を含む薄膜を前記成膜対象物表面に形成する薄膜形成装置であって、少なくとも両端に開口部分が設けられた筒状の防着板が、一方の開口部分を前記材料源の方向に向け、他方の開口部分を前記成膜対象物方向に向けて設けられ、前記防着板を加熱する加熱装置が設けられ、前記ガス拡散防止装置の外部にシャワーノズルが設けられ、前記シャワーノズルから前記真空槽壁面に向けて、前記金属材料物質と反応する安定化ガスを噴霧できるように構成されたことを特徴とする薄膜形成装置である。
この請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の薄膜形成装置については、請求項3記載の発明のように、前記加熱装置は加熱する対象物を、前記金属材料物質の再蒸発温度以上の温度に加熱できるように構成することが望ましい。
【0019】
上述した本発明の構成によれば、ガス拡散防止装置の内部にガス散布装置と成膜対象物とを配置し、それらを薄膜形成のための材料源と共に真空槽内に配置し、ガス散布装置からガス拡散防止装置内に反応性ガスを散布すると共に、材料源内に配置された金属材料から真空槽内に金属材料物質を放出させると、反応性ガスの分圧は、ガス拡散防止装置の内部で高く、外部で低い状態が作られる。従って、放出された金属材料物質と反応性ガスとが効率よく反応し、その反応生成物を含む薄膜を成膜対象物表面に形成することができる。
【0020】
その際、真空槽内のガス拡散防止装置の外部に設けられた部材のうちには、放出された金属材料物質が、反応性ガスとは未反応の状態で付着し易い部分がある。
特に、金属材料が金属マグネシウム等の大気と反応しやすい物質であった場合には、薄膜形成を行った後、真空槽内に大気を導入したときに、堆積した金属薄膜が大気中の酸素や水分と反応し、発火してしまう。
【0021】
そこで、そのような金属材料物質が付着しやすい部材のうち、熱容量が小さいものには加熱手段を設け、一旦部材に付着した金属材料物質を加熱により再蒸発させるようにすると、未反応の状態の金属材料物質は堆積しなくなり、発火を防止することができる。
【0022】
但し、真空槽自体は熱容量が大きく、未反応の金属薄膜が堆積しやすい部分であっても加熱することが困難である。そこで、真空槽内にシャワーノズルを設け、金属材料物質と反応して不活性な物質を生成する安定化ガスを、シャワーノズルから真空槽壁面に向けて噴霧させると、散布されたところの真空槽壁面には、金属材料物質と安定化ガスとが反応して生成した反応生成物が堆積するので、活性な金属薄膜は形成されず、真空槽内に大気を導入した場合でも、真空槽の壁面は発火しなくなる。
【0023】
真空槽壁面に向けて散布された安定化ガスは、未反応の金属材料物質で消費されてしまうので、高温になる部材側には拡散せず、消耗や劣化を早めることはない。
なお、このように、安定化ガスを散布する部分は、未反応の金属材料物質が到達しやすい部分だけでよく、必ずしも真空槽の壁面全部に散布する必要はない。
【0024】
また、金属材料物質が真空槽内で材料源から成膜対象物へ向かう経路の周囲に防着板を設け、真空槽の壁面に金属材料物質を到達させないようにすることもできる。この場合、防着板を、少なくとも両端に開口部分を設けた筒状に成形し、その一方の開口部分を材料源方向に向け、他方の開口部分を成膜対象物方向に向けて真空槽内に設け、その防着板に加熱装置を設け、防着板の内周面に付着した未反応の金属材料を再蒸発させるようにすると、防着板の内周面から発火することがなくなる。
【0025】
以上説明した加熱装置は、真空装置内の部材や防着板等の加熱対象物を、金属材料物質の真空雰囲気下での再蒸発温度以上の温度に加熱できるようにしておくと効果的である。その温度は、例えば金属マグネシウムの場合、300℃〜700℃程度である。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1を参照し、符号2は、本発明の一実施形態の薄膜形成装置であり、真空槽11内に搬入された成膜対象物表面にイオンプレーティング法によって薄膜形成を行う装置である。
【0027】
この薄膜形成装置2では、真空槽11内の底壁側には、符号20で示した薄膜形成のための材料源(以下、薄膜材料源と略す)が配置され、天井側に基板ホルダー24が配置されている。
【0028】
薄膜材料源20は、銅ハース21と、銅ハース21上に設けられた炭素るつぼ22と、炭素るつぼ22内に納められた、金属マグネシウムから成る金属材料23とで構成されており、真空槽11内部では、ホローカソード17が、その先端部分18を金属材料23に向けて配置されている。
【0029】
基板ホルダー24の表面には、円筒形状のチムニー(ガス拡散防止装置)25が設けられており、チムニー25内の基板ホルダー24表面上には、薄膜材料源20に対向してガラス基板から成る成膜対象物15が配置されている。
【0030】
チムニー25内には、成膜対象物15表面付近に位置するようにガス散布装置4が配置されており、そのガス散布装置4は、ガス管26によって、真空槽11に固定されている。
【0031】
ガス散布装置4は、成膜対象物15の径よりも大径のリング状パイプで構成されており、そのリング状パイプのうちの成膜対象物15側に向けられた面には、孔が複数列設されている。
【0032】
真空槽11外部には、直流電源19と、図示しないガスボンベと真空ポンプとが配置されており、その真空ポンプを起動して、排気口10から真空槽11内を真空排気した後、ガス管26によってガス散布装置4内に酸素ガス(反応性ガス)を導入すると、ガス散布装置4の孔から成膜対象物15に向けて酸素ガスが散布される。
【0033】
その酸素ガスは、チムニー25と基板ホルダー24とによって周辺への拡散が防止されており、チムニー25内の成膜対象物15表面の酸素ガス分圧が高く、チムニー24外の酸素ガス分圧が低くなるようにされている。
【0034】
その状態で、直流電源19を起動して、銅ハース21に正電圧、ホローカソード17に負電圧を印加し、ガスボンベ内に充填されたアルゴンガスをホローカソード17先端から金属材料13に向けて噴出すると、薄膜材料源20上にアルゴンガスによるホローカソード放電が発生する。ホローカソード17内の熱電子が正電圧が印加された薄膜材料源20に引きつけられ、金属材料23に照射されると、その金属材料23は高温に加熱され、真空槽11内に金属材料物質の蒸気(Mg蒸気)が放出される。
【0035】
その蒸気がチムニー25内に到達すると、チムニー25内から拡散しようとする酸素ガスをチムニー25内に押し戻すと共に、成膜対象物15表面の分圧が高い状態の酸素ガスと効率よく反応し、成膜対象物15表面に反応生成物を堆積させる。
【0036】
この例では、金属材料物質と反応性ガスとの反応生成物はMgOであり、その堆積の際、基板ホルダー24の裏面に設けられたヒーター28に通電し、成膜対象物15を所定温度に加熱しておくと、成膜対象物15表面に膜質の良いMgO薄膜16を形成することができる。
【0037】
このように、金属材料物質の蒸気がチムニー25内に到達すると、チムニー25内の酸素ガスは金属材料物質の蒸気と反応し、反応生成物となって消費されてしまうので、チムニー25外へ流出する酸素ガスの量は少ない。
【0038】
従って、チムニー25から離れたところでは、酸素ガス分圧は低くなっているが、一般に、薄膜材料源20から放出された金属材料物質の蒸気は様々な方向に向かうため、チムニー25の外部にも到達してしまう。
【0039】
蒸発源20とホローカソード17は、チムニー25の外部にあり、しかもガス散布装置4から離れた位置にあるため、酸素ガス分圧は低く、それらの部材表面には、酸素ガスとは未反応の状態の金属材料物質の蒸気が到達し、堆積してしまう。
【0040】
この薄膜形成装置2では、真空槽11内のホローカソード17は、その先端部分18を除いて円筒形状の赤外線ヒーター51(加熱装置)で覆われており、また、銅ハース21の周囲と底面は、容器状の赤外線ヒーター52(加熱装置)で覆われている。各赤外線ヒーター51、52は、加熱対象物を真空雰囲気下での金属材料物質(この例では金属マグネシウム)の再蒸発温度以上に加熱できるように構成されており、ホローカソード17と銅ハース21とがその温度に加熱されると酸素ガスと未反応の金属材料物質の蒸気が付着した場合でも、再蒸発によって離脱してしまうので、活性な金属材料物質が堆積することがない。また、赤外線ヒーター51、52自身についても、再蒸発温度以上の温度になるので、未反応の金属材料物質が堆積することはない。
【0041】
金属材料物質の真空雰囲気内での再蒸発温度としては、例えば300℃〜700℃の温度範囲が挙げられる。金属材料がマグネシウムの場合、赤外線ヒータ51、52の温度は600℃程度に設定されている。
【0042】
他方、真空槽11の壁面のうち、金属材料物質の蒸気が未反応の状態で到達し、堆積しやすい部分の近傍には、シャワーノズル61〜63が配置されており、各シャワーノズル61〜63に列設された孔71〜73から真空槽11の壁面に向けて、金属材料物質と反応し、不活性な反応生成物を生成する安定化ガスを噴霧できるように構成されている。ここでは、安定化ガスとして酸素ガスをシャワーノズル61〜63から流量 40slmで噴霧した。
【0043】
真空槽11壁面に酸素ガスが噴霧された状態では、真空槽11壁面付近に飛来した金属材料物質の蒸気や、表面に到達した金属材料物質の蒸気は酸素ガスと反応するので、真空槽11壁面には、その反応生成物である金属酸化物(ここではMgO)が堆積され、酸素ガスと未反応の状態で活性な金属材料物質は堆積されない。
【0044】
以上説明したように、本発明の薄膜形成装置2によれば、真空槽11内に配置された部材のうち、金属材料物質の蒸気が付着しやすい部分は赤外線ヒーター51、52によって加熱されているので、一旦付着した未反応の金属材料物質は再蒸発によって除去される。また、真空槽11の壁面のうち、未反応な状態の金属材料物質が付着する部分にはシャワーノズル61〜63が設けられ、安定化ガス(この例では酸素ガス)の噴霧によって、不活性な反応生成物が堆積されるので、活性な金属材料物質は堆積しない。
いずれにしろ、未反応の状態の活性な金属材料物質は堆積せず、真空槽11内を大気に曝しても、酸素や水分と反応する物質がないため、出火することはない。
【0045】
なお、上記薄膜形成装置2では、ホローカソード17の先端部分18は加熱していないが、その部分は金属材料23を加熱する際に2000℃程度の高温になるため、赤外線ヒーターで加熱しなくても付着した金属材料物質は再蒸発により除去される。
【0046】
次に、図2の符号3に、本発明の他の実施形態の薄膜形成装置を示す。この薄膜形成装置3は、真空槽61内に搬入された成膜対象物表面にスパッタリング法によって薄膜形成を行う装置であり、上述の薄膜形成装置2と同様に、真空槽61内の底壁側に薄膜材料源70が配置され、天井側に基板ホルダー74が配置されている。
【0047】
薄膜材料源70は、ターゲットホルダー71と、ターゲットホルダー71上に設けられた金属マグネシウムから成るスパッタリングターゲット73とで構成されており、ターゲットホルダー71は、真空槽61外に配置された直流電源69の負電位側に接続されている。
【0048】
基板ホルダー74表面には、円筒形状のチムニー(ガス拡散防止装置)75が設けられており、チムニー75内の基板ホルダー74表面上には、スパッタリングターゲット73に対向して成膜対象物65が配置されている。また、基板ホルダー74の裏面にはヒーター78が設けられている。
【0049】
チムニー75内には、上述のガス散布装置4と同じ構造のガス散布装置54が配置されており、ガス管76内に導入された酸素ガスを、ガス散布装置54の孔から成膜対象物65表面に向けて散布できるように構成されている。
【0050】
真空槽61内には、少なくとも両端に開口部分が設けられた中空円錐台形状の筒状の防着板7が配置され、小さい方の開口部分を薄膜材料源70の方向に向け、大きい方の開口部分を成膜対象物65の方向に向けて固定されている。この防着板7により、薄膜材料源70から放出された薄膜材料物質の粒子が成膜対象物65に到達する経路の周囲が防着板7で覆われ、防着板7外部には到達しないように構成されている。
【0051】
防着板7内にはガス導入管67の先端部分68が突き出されており、真空槽61内を真空排気した後、スパッタリングガス(Arガス)をガス導入管67内に導入すると、先端部分68から防着板7内に、スパッタリングガスが噴出される。その状態で直流電源69を起動し、接地電位に置かれた真空槽61に対して薄膜材料源70側に負電圧を印加すると、スパッタリングターゲット73表面近傍にスパッタリングガスプラズマが発生し、スパッタリングターゲット73がスパッタリングされる。
【0052】
その表面から、スパッタリングターゲット73を構成する金属材料物質の粒子が放出され、チムニー75内に到達すると、チムニー75内から拡散しようとする酸素ガスをチムニー75内に押し戻し、チムニー75内の酸素ガス分圧が高くなる。
【0053】
このとき、ヒーター78によって成膜対象物65を所定温度に加熱しておくと、成膜対象物65表面に到達した金属材料物質は、分圧が高い状態の酸素ガスと効率よく反応し、成膜対象物65表面に、反応生成物から成るMgO薄膜66が形成される。
【0054】
このとき、酸素ガスはチムニー75内で散布されており、チムニー75内の酸素ガスは金属材料物質で押し戻され、また、金属材料物質との反応で消費されてしまうため、チムニー75外の酸素ガス分圧は低くなっているため、防着板7の内周面には酸素ガスと未反応の金属材料物質が付着し、堆積してしまう。
【0055】
この薄膜形成装置3では、防着板7の周囲には抵抗加熱体(加熱装置)8が巻き回されており、抵抗加熱体8に通電して発熱させ、防着板7を金属材料物質の再蒸発温度に加熱すると、一旦防着板7の内周面に付着した金属材料物質は再蒸発によって除去される。
【0056】
他方、真空槽61の壁面や防着板7の外部に位置する部材には、金属材料物質は防着板7で遮蔽され、到達しないので、未反応の状態の金属材料物質が付着することはない。
【0057】
いずれにしろ、未反応の金属材料物質は堆積しないので、真空槽61内に大気を導入しても発火することはない。例えば、成膜対処物65表面に所定膜厚(0.5μm)のMgO薄膜66を形成した後、真空槽61内に大気を導入してみたところ、真空槽61内部は発火しなかった。
【0058】
なお、この薄膜形成装置3では、赤外線ヒーターを用いなかったが、防着板7の内側に抵抗発熱体8では加熱できない部材がある場合には、その部材に赤外線ヒーターを配置して再蒸発温度以上の温度に加熱することもできる。
【0059】
他方、上述の薄膜形成装置2には防着板7を設けなかったが、赤外線ヒーターによる加熱が困難な場所には防着板を設け、その防着板を加熱して金属材料物質を再蒸発させるようにしてもよい。
【0060】
以上説明した金属材料物質はマグネシウムであったが、本発明の薄膜形成装置は、未反応の状態で大気に曝されると発火する金属一般に効果的である。また、また、シャワーノズル61〜63からは反応性ガスとして酸素ガスを噴霧させたが、本発明はそれに限定されるものではなく、金属材料物質と反応し、大気中で発火しない反応生成物にできるガスであれば安定化ガスとして広く用いることができる。
【0061】
【発明の効果】
金属材料を薄膜形成材料にできるので、反応生成物の薄膜を安定に形成できるようになり、特性の良い薄膜を形成することができる。また、成膜対象物表面の反応性ガスの分圧を高くできるので、薄膜形成速度が速くなる。
【0062】
高温に加熱される部材を反応性ガスに曝さなくても済むので、部品の消耗が少なくなり、薄膜の連続形成を行えるようになる。この場合にも、真空槽内には、未反応の状態で活性な金属薄膜が形成されないので、真空槽内に大気を導入しても発火する危険性はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオンプレーティング法による本発明の薄膜形成装置を示す図
【図2】スパッタリング法による本発明の薄膜形成装置を示す図
【図3】従来技術の薄膜形成装置を示す図
【符号の説明】
2、3……薄膜形成装置 4、54……ガス散布装置 51、52、8……加熱装置 61〜63……シャワーノズル 7……防着板 11、61……真空槽 15、65……成膜対象物 20、70……薄膜形成のための材料源 25、75……ガス拡散防止装置(チムニー)
Claims (3)
- ガス散布装置とガス拡散防止装置と薄膜形成のための材料源とが真空槽内に配置され、
前記ガス拡散防止装置の内部に前記ガス散布装置と成膜対象物とを配置し、前記ガス散布装置から前記ガス拡散防止装置内に反応性ガスを散布し、前記反応性ガスの分圧が前記ガス拡散防止装置の内部で高く、外部で低い状態で、前記材料源内に配置された金属材料から前記真空槽内に金属材料物質を放出させ、
前記金属材料物質と前記反応性ガスとを反応させ、その反応生成物を含む薄膜を前記成膜対象物表面に形成する薄膜形成装置であって、
前記真空槽内に放出された金属材料物質が付着する部材を加熱する加熱装置が設けられ、
前記ガス拡散防止装置の外部にシャワーノズルが設けられ、
前記シャワーノズルから前記真空槽壁面に向けて、前記金属材料物質と反応する安定化ガスを噴霧できるように構成されたことを特徴とする薄膜形成装置。 - ガス散布装置と、ガス拡散防止装置と、薄膜形成のための材料源とが真空槽内に配置され、
前記ガス拡散防止装置の内部に前記ガス散布装置と成膜対象物とを配置し、前記ガス散布装置から前記ガス拡散防止装置の内部に反応性ガスを散布し、前記反応性ガスの分圧が前記ガス拡散防止装置の内部で高く、外部で低い状態で、前記材料源内に配置された金属材料から前記真空槽内に金属材料物質を放出させ、
前記金属材料物質と前記反応性ガスとを反応させ、その反応生成物を含む薄膜を前記成膜対象物表面に形成する薄膜形成装置であって、
少なくとも両端に開口部分が設けられた筒状の防着板が、一方の開口部分を前記材料源の方向に向け、他方の開口部分を前記成膜対象物方向に向けて設けられ、
前記防着板を加熱する加熱装置が設けられ、
前記ガス拡散防止装置の外部にシャワーノズルが設けられ、
前記シャワーノズルから前記真空槽壁面に向けて、前記金属材料物質と反応する安定化ガスを噴霧できるように構成されたことを特徴とする薄膜形成装置。 - 前記加熱装置は加熱する対象物を、前記金属材料物質の再蒸発温度以上の温度に加熱できるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34658096A JP3853449B2 (ja) | 1996-12-10 | 1996-12-10 | 薄膜形成装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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