JP3777436B2 - ボロン膜の形成方法及びボロン膜形成装置 - Google Patents

ボロン膜の形成方法及びボロン膜形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜の形成方法に係り、とりわけ、高強度でかつ高品質なボロン膜を形成することができる、ボロン膜の形成方法及びボロン膜形成装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、「ボロン膜」とはボロン材料を主成分とする膜をいい、「ボロン材料」とはボロン又はその化合物をいう。
【0003】
【従来の技術】
ボロンやボロン化合物(窒化ボロン等)を主成分として含むボロン膜は、原子核実験用の材料や、切削工具や機械部品等の被膜材料、半導体用薄膜材料のような幅広い産業用途で用いられている。
【0004】
このような産業用途で用いられるボロン膜には、一般に高強度であることが要求されている。例えば、原子核実験用の材料として用いられる、ボロンを主成分とするボロン膜は、自立膜として自身の重量を支持する必要があり、高い強度が必要とされている。また、切削工具や機械部品等の被膜材料として用いられる、窒化ボロンを主成分とするボロン膜も、十分な耐摩耗性を持つ必要があり、高い強度が必要とされている。
【0005】
ここで、ボロン膜の形成方法としては、薄膜の形成方法として一般的に用いられている各種の方法を用いることができる。しかしながら、ボロン膜の強度を向上させるためには、ボロン膜の緻密さが重要であり、このような観点からボロン膜の形成方法を検討する必要がある。
【0006】
すなわち、例えば、CVD法等の蒸着法は、材料の堆積速度が速いという点で薄膜の形成方法として一般的な方法(特許文献1参照)であるが、ボロン膜の形成方法としては、基板上に形成される堆積物の緻密さが十分でなく、脆くかつ表面も粗い膜しか形成されないという問題がある。また、特許文献1に記載された方法では、ホウ素(ボロン)源ガスとして毒性及び発火性のある化合物ガス(ジボラン:毒物及び劇物取締法で毒物指定され、特に発火性が強い)を用いている。このため、安全性に欠け、環境汚染を生じる可能性がある。
【0007】
これに対し、スパッタリング法は、堆積される材料分子の運動エネルギーが高く、基板上に形成される堆積物の緻密さを向上させることができる。特に、このようなスパッタリング法のうち、電子ビームによって励起された高密度のプラズマを用いてターゲットをスパッタする方法(特許文献2および3参照)では、ボロンを主成分として含むターゲットのスパッタ率を向上させることができ、基板上へのボロン材料の堆積を効率よく短時間に行うことができる。
【0008】
ところで、このようなスパッタリング方法では、ターゲットに衝突させるイオンを加速するためにターゲットに電圧を印加する必要がある。ここで、ターゲットを構成するボロンという元素は常温では絶縁体であり、ターゲットを導体にするにはその温度を上げる必要がある。
【0009】
このような方法としては、従来、スパッタリング用の装置にヒータやレーザ照射装置等の加熱装置を組み込み、ターゲットにレーザを照射したり、ターゲットに熱を与えたりする方法が提案されている(非特許文献1)。
【0010】
【特許文献1】
特開昭63−83273号公報
【特許文献2】
特開平3−75975号公報
【特許文献3】
特開平5−35537号公報
【非特許文献1】
Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 33 (1994) pp. 5959-5966
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方法ではいずれも、スパッタリング用の装置に別途加熱装置を組み込む必要があり、全体の装置構成が複雑になるという問題がある。
【0012】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、安全性が高く、高強度でかつ高品質なボロン膜を簡易な装置構成で効率よく形成することができる、ボロン膜の形成方法及びボロン膜形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の解決手段として、ボロンを主成分とするターゲットをスパッタして基板上にボロン材料を堆積させる、ボロン膜の形成方法において、処理容器内に収容されたターゲットに向けて電子ビームを照射し、当該ターゲットを加熱する加熱工程と、前記加熱工程により加熱された前記ターゲットに電圧を印加し、前記電子ビームによってプラズマ化された前記処理容器内の雰囲気ガスに含まれるイオンを加速して当該ターゲットをスパッタすることにより、基板上にボロン材料を堆積させるスパッタリング工程とを含むことを特徴とする、ボロン膜の形成方法を提供する。
【0014】
なお、上述した第1の解決手段においては、前記スパッタリング工程において、前記ターゲットに電圧を印加してから所定の時間が経過するまで前記基板上にボロン材料が堆積されないよう前記基板を遮蔽しておき、当該所定の時間が経過した時点で前記基板の遮蔽状態を解くことが好ましい。
【0015】
また、上述した第1の解決手段においては、前記スパッタリング工程において、ボロン材料が堆積される前記基板を冷却状態に保つことが好ましい。
【0016】
さらに、上述した第1の解決手段においては、前記処理容器内の前記雰囲気ガスを窒素を含むガスとすることにより、前記基板上に堆積されるボロン材料が窒化ボロンを含むようにしてもよい。ここで、窒素を含むガスとしては、窒素ガスや、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス等を用いることができる。
【0017】
本発明は、第2の解決手段として、ボロンを主成分とするターゲットをスパッタして基板上にボロン材料を堆積させる、ボロン膜形成装置において、ボロン材料が堆積される基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に収容されたターゲットと、前記処理容器内に収容された前記ターゲットに向けて電子ビームを照射し、当該ターゲットを加熱する一方で、当該処理容器内の雰囲気ガスをプラズマ化する電子ビーム源と、前記ターゲットにバイアス電圧を印加する電源と、前記ターゲットの温度を検出する検出装置と、前記電源及び前記検出装置に接続された制御装置であって、前記検出装置の検出結果に基づいて前記ターゲットが所定の温度まで加熱されたことが判断された時点で、前記電源により前記ターゲットにバイアス電圧を印加するよう制御し、前記電子ビームによってプラズマ化された前記処理容器内の雰囲気ガスに含まれるイオンを加速して当該ターゲットをスパッタすることにより、前記基板上にボロン材料を堆積させる制御装置とを備えたことを特徴とする、ボロン膜形成装置を提供する。
【0018】
なお、上述した第2の解決手段においては、前記基板上にボロン材料が堆積されることを防止するためのシャッター機構をさらに備え、前記制御装置は、前記ターゲットにバイアス電圧を印加してから所定の時間が経過した後に前記基板上にボロン材料が堆積されるよう前記シャッター機構を制御することが好ましい。
【0019】
また、上述した第2の解決手段においては、ボロン材料が堆積される前記基板を冷却する冷却機構をさらに備えることが好ましい。
【0020】
本発明の第1及び第2の解決手段によれば、処理容器内の雰囲気ガスを電子ビームによってプラズマ化することにより得られた高密度のプラズマを用いて、ボロンを主成分とするターゲットをスパッタしているので、基板上へのボロン材料の堆積を高い緻密さで効率よく短時間に行うことができる。また、ターゲットを絶縁体から導体にするために必要となるターゲットの加熱を、処理容器内の雰囲気ガスをプラズマ化するための電子ビームを用いて行っているので、スパッタリング用の装置に別途加熱装置を設ける必要がない。このため、高強度でかつ高品質なボロン膜を簡易な装置構成で効率よく形成することができる。また、雰囲気ガスとして毒性や発火性のあるガスを用いる必要がないため、安全性が高く、環境汚染の心配もない。
【0021】
また、本発明の第1及び第2の解決手段によれば、ターゲットをスパッタして基板上にボロン材料を堆積させる際に、基板を冷却するようにすることにより、最終的に形成されたボロン膜を基板から容易に剥離することができる。このため、自立膜としての破損のないボロン膜を容易に得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
まず、図1により、本実施の形態に係るボロン膜の形成方法を実現するためのボロン膜形成装置の全体構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、ボロン膜形成装置10は、処理容器11と、処理容器11内に電子ビームを照射する電子ビーム源12とを備えている。
【0024】
このうち、処理容器11の上壁にはガス流入管11aが取り付けられ、処理容器11の下壁にはガス排出管11bが取り付けられている。なお、ガス流入管11aにはアルゴンガス(雰囲気ガス)を供給するためのガス供給源(図示せず)が接続され、ガス排出管11bには真空ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0025】
また、処理容器11内には、基板30を載置する銅製のテーブル18が設置されている。なお、テーブル18には水冷式の冷却機構19が組み込まれている。また、テーブル18の近傍にはシャッタ機構17が設置されている。図1に示すように、シャッタ機構17は、遮蔽板17aと、遮蔽板17aを支持する支持部材17bと、支持部材17bを水平方向に移動させる移動装置17cとを有し、移動装置17cにより、支持部材17bを水平方向に移動させることにより、遮蔽板17aを、基板30の上方に位置する遮蔽位置(図1に図示されている位置)と、基板30の上方から外れた開放位置とのいずれかに位置付けることができるようになっている。
【0026】
さらに、処理容器11の側壁にはボロンを主成分とするターゲット13が取り付けられており、電子ビーム源12により照射された電子ビームによってプラズマ化された処理容器11内のアルゴンガスによりターゲット13をスパッタすることにより、基板30上にボロン材料としてボロンを堆積させることができるようになっている。なお、ターゲット13は、基板30上へのボロン材料の堆積を効率よく行うため、基板30へ向けて所定の角度だけ傾けられて配置されている。
【0027】
ここで、電子ビーム源12は、処理容器11内に収容されたターゲット13に向けて電子ビームを照射するものであり、処理容器11の側壁に設けられた電子ビーム引込口11cを介して引き込まれた電子ビームによって、ターゲット13を加熱する一方で、処理容器11内のアルゴンガスをプラズマ化することができるようになっている。なお、電子ビーム源12としては、電子ビーム励起プラズマ(EBEP)装置等で一般的に用いられている電子ビーム源を用いることができる。
【0028】
なお、ターゲット13には電流計20とともに電源14が接続されており、所定の温度まで加熱されることで導電性を持つに至ったターゲット13に電圧を印加することにより、電子ビームによってプラズマ化された処理容器11内のアルゴンガスに含まれるイオンを加速してターゲット13に衝突させることができるようになっている。
【0029】
さらに、ターゲット13の近傍には、ターゲット13の温度を検出する温度センサ(検出装置)15が配設されている。なお、温度センサ15としては、サーミスタや熱電対等の接触式の温度センサの他、放射温度計等の非接触式の温度センサを用いることができる。なお、非接触式の温度センサを用いる場合には、温度センサを処理容器11の外部に配設することが可能となるので、設置コストや耐久性等の面で有利である。
【0030】
そして、電源14及び温度センサ15には制御装置16が接続されており、制御装置16において、温度センサ15の検出結果に基づいてターゲット13が所定の温度まで加熱されたことが判断された時点で、電源14によりターゲット13にバイアス電圧を印加するよう制御することができるようになっている。また、制御装置16にはシャッタ機構17(移動装置17c)が接続されており、制御装置16において、ターゲット13にバイアス電圧を印加してから所定の時間が経過した後に基板30上にボロン材料が堆積されるようシャッター機構17(移動装置17c)を制御することができるようになっている。
【0031】
次に、図2により、ターゲット13の詳細について説明する。
図2に示すように、ターゲット13は、円柱状のターゲット本体21と、ターゲット本体21を支持するターゲット支持材22とを有している。このうち、ターゲット本体21はボロンを主成分とする材料からなり、一方の端面に電子ビームが照射されるようになっている。また、ターゲット支持材22は、金属に比べてスパッタ率が小さいグラファイト等の導体からなり、電源14に接続された電流導入端子23に接続されている。
【0032】
ここで、ターゲット本体21は電子ビームの照射によって加熱されるが、十分な温度にまで加熱されるのは電子ビームが照射される側の端面(表面)のみである。このため、ターゲット本体21の内部及び電子ビームが照射される側の端面とは反対側の端面(裏面)の温度は通常低いままであり、十分な導電性を持たない。しかしながら、図2に示すような構成では、ターゲット本体21が、導体であるターゲット支持材22に包まれており、かつターゲット支持材22がターゲット本体21の裏面側から表面側の縁部まで延びるような形状をとっているので、図2に示すような位置関係でターゲット本体21の裏面側に電流導入端子23が配置されるような場合であっても、ターゲット支持材22を介して電流導入端子23によりターゲット本体21に対して効率よくバイアス電圧を印加することができる。
【0033】
なお、ターゲット支持材22には、碍子等の高融点絶縁物からなるターゲット支持材用被覆材24が設けられていることが好ましく、これにより、ターゲット支持材22の材料である炭素等が基板30上に堆積されないようにすることができる。また同様に、電流導入端子23にも、碍子等の高融点絶縁物からなる電流導入端子用被覆材25が設けられていることが好ましく、これにより、電流導入端子23の材料である銅等が基板30上に堆積されないようにすることができる。
【0034】
次に、図1に示すボロン膜形成装置10により行われる、ボロン膜の形成方法について説明する。
まず、処理容器11のガス排出管11bに接続された真空ポンプ(図示せず)を動作させ、処理容器11内を排気して所定の圧力(10−5〜10−7Torr)の真空状態を形成する。この状態で、処理容器11のガス流入管11aに接続されたガス供給源(図示せず)からアルゴンガスを供給し、処理容器11内に所定の温度(室温程度)でかつ所定の圧力(10−3〜10−4Torr)のアルゴンガスが満たされるようにする(工程101)。
【0035】
次に、電子ビーム源12を動作させ、処理容器11の側壁に設けられた電子ビーム引込口11cを介して、ターゲット13(ターゲット本体21)に向けて所定のエネルギー(100〜500eV)の電子ビームを所定のビーム径(20〜30mm)で照射し、ターゲット13を加熱する(工程102)。なお、この時点では、ターゲット13には、電源14によりバイアス電圧が印加されていない。また、基板30の上方にはシャッタ機構17の遮蔽板17aが位置付けられている。なお、本工程においても、処理容器11内に引き込まれた電子ビームによって処理容器11内のアルゴンガスがプラズマ化され、電子ビームの照射によって形成される負電位によってターゲット13のターゲット本体21がスパッタされる。しかし、ボロンのスパッタ率は他の元素のスパッタ率に比べて小さいので、電源14によりバイアス電圧が印加されていない状態では、スパッタリングの程度はきわめて小さい。
【0036】
その後、制御装置16により、温度センサ15の検出結果に基づいてターゲット13が所定の温度(700〜1000℃)まで加熱されたことが判断された時点で、電源14によりターゲット13に所定のバイアス電圧(V=200〜400V)を印加するよう制御し、電子ビームによってプラズマ化された処理容器11内のアルゴンガスに含まれるイオンを加速して当該ターゲット13に衝突させる(工程103)。なおこのとき、ターゲット13には所定の電流(I=0.5〜1.0A)が流れる。
【0037】
そして、制御装置16による制御の下で、電源14によりターゲット13にバイアス電圧を印加してから所定の時間(2〜3分)が経過するまで基板30上にボロン材料が堆積されないようシャッタ機構17の遮蔽板17aで基板30を遮蔽しておき、所定の時間が経過した時点でシャッタ機構17の遮蔽板17aを基板30の上方から外して遮蔽状態を解く(工程104)。
【0038】
これにより、基板30上へのボロン材料の堆積が開始される。その後、所定の時間(30〜60分)に亘って、アルゴンガスの供給、電子ビームの照射及びバイアス電圧の印加を継続し、基材30上に所望の膜厚のボロン膜を形成する(工程105)。
【0039】
なお、工程101〜105においては、処理容器11内に設置されたテーブル18を水冷式の冷却機構19を用いて冷却し、テーブル18及びその上に載置されている基板30を所定の温度(20〜30℃)に保つようにしておく。
【0040】
このように本実施の形態によれば、処理容器11内のアルゴンガスを電子ビームによってプラズマ化することにより得られた高密度のプラズマを用いて、ボロンを主成分とするターゲット13をスパッタしているので、基板30上へのボロン材料の堆積を高い緻密さで効率よく短時間に行うことができる。また、ターゲット13を絶縁体から導体にするために必要となるターゲット13の加熱を、処理容器11内のアルゴンガスをプラズマ化するための電子ビームを用いて行っているので、スパッタリング用の装置に別途加熱装置を設ける必要がない。このため、高強度でかつ高品質なボロン膜を簡易な装置構成で効率よく形成することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、ターゲット13をスパッタして基板30上にボロン材料を堆積させる際に、基板30を冷却機構19により冷却するようにしているので、最終的に形成されたボロン膜を基板30から容易に剥離することができる。このため、自立膜としての破損のないボロン膜を容易に得ることができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態においては、雰囲気ガスとしてアルゴンガスを用いているが、これに限らず、窒素ガスや、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、ネオンガス等の他の任意のガスを用いることができる。ここで、雰囲気ガスとして例えば窒素を含むガス(窒素ガスや、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス等)を用いる場合には、処理容器11内において、ターゲット13をスパッタすることで発生したボロンと雰囲気中の窒素とが基板30上で化合し、ボロン材料として窒化ボロンが堆積される。
【0043】
また、上述した実施の形態においては、ターゲット13をスパッタして基板30上にボロン材料を堆積させる際に、基板30を冷却機構19により冷却するようにしているが、最終的に形成されるボロン膜の基板30からの剥離性を考慮しなくともよい場合(例えば、基板30上にあらかじめ剥離剤(水溶性の高い食塩等)を蒸着させておくような場合)には、このよう冷却処理は必ずしも必要ではない。
【0044】
さらに、上述した実施の形態においては、ターゲット13が所定の温度まで加熱された時点で電源14によりターゲット13にバイアス電圧を印加するようにしている。しかしながら、ボロンを主成分とするターゲット本体21は、温度が低い間であれば絶縁体のままであり、バイアス電圧に応じた電圧がかからない。このため、ターゲット13を構成するターゲット本体21以外の部材(ターゲット支持材22)からの材料のスパッタが問題にならない場合(例えば、ターゲット支持材22が高融点絶縁物からなるターゲット支持材被覆材24で覆われているような場合)であれば、電源14によるバイアス電圧の印加のタイミングは任意にとることができ、例えば、ターゲット13に電子ビームを照射し始める時点からターゲット13にバイアス電圧を印加しておくことも可能である。なお、このような場合には当然、上述したような電源14の制御(温度センサ15及び制御装置16に基づく電源14の制御)を行う必要はない。
【0045】
【実施例】
次に、上述した実施の形態の具体的実施例について述べる。
本実施例においては、処理容器内に収容されるターゲットとして、純度が99%のボロンからなるターゲット本体(直径φ40mmで厚さ5mmの円柱体)を、グラファイトからなるターゲット支持材(厚さ3mm)で包んだものを用いた。なお、ターゲット支持材のうち電子ビームが照射される側の端面は、ターゲット本体の端面の一部を露出させるよう直径φ30mmで開口させた。
【0046】
また、基板としては、厚さ1mmのパイレックスガラスを用いた。このような基板を水冷式の冷却機構により冷却された銅製のテーブル上に載置し、基板の温度を30℃程度に保つようにした。なお、基板上にはマイクロ天秤により重量を測定した10mm×10mmの炭素製のチップを配置した。
【0047】
ここで、基板は水平に配置し、ターゲットは基板への指向性を高めるため基板へ向けて垂直方向から約20度だけ傾けて配置した。なお、ターゲットと基板との間の距離は約3cmとした。
【0048】
そして、このようなターゲットおよび基板を収容する処理容器を備えたボロン膜形成装置において、次のような手順でボロン膜を形成した。
【0049】
まず、処理容器内を排気して5×10−6Torrの真空状態を形成した後、アルゴンガスを供給し、処理容器内に1mTorr(室温)のアルゴンガスが満たされるようにした。
【0050】
次に、電子ビーム源により、ターゲットに向けて100eVの電子ビームを約30mmのビーム径で照射し、この照射された電子ビームによって、処理容器内のアルゴンガスをプラズマ化するとともに、ターゲットを加熱した。
【0051】
その後、ターゲットを約1000℃まで加熱した時点で、電源によりターゲットに−280Vのバイアス電圧(V)を印加し、電子ビームによってプラズマ化された処理容器内のアルゴンガスに含まれるイオンを加速して当該ターゲットに衝突させた。なおこのとき、ターゲットには0.6Aの電流(I)が流れた。
【0052】
そして、電源によりターゲットにバイアス電圧を印加してから数分が経過するまでシャッタ機構の遮蔽板で基板を遮蔽しておき、所定の時間が経過した時点でシャッタ機構の遮蔽板を基板の上方から外して遮蔽状態を解いた。
【0053】
これにより、基板上へのボロン材料の堆積が開始された。その後、1時間に亘って、アルゴンガスの供給、電子ビームの照射及びバイアス電圧の印加を継続し、基材上に所望の膜厚のボロン膜を形成した。
【0054】
(評価結果)
基板上に配置しておいた10mm×10mmの炭素製のチップを取り出し、その重量を測定したところ、ボロン材料の堆積量は0.14mg/cmであり、ボロン膜の膜厚は0.6μmであることが分かった。なお、堆積率は0.17nm/sであった。
【0055】
また、基板からボロン膜を剥離するため、ボロン膜付きの基板を水に浮かせたところ、基板からボロン膜がきれいに剥離された。
【0056】
その後、水面に浮いたボロン膜をすくい取り、安静な場所で保管して水分を蒸発させ、最終的なボロン膜(自立膜)を形成した。
【0057】
このようにして形成されたボロン膜の成分分析を電子ビームプローブマイクロアナライザー(EPMA)により行ったところ、ボロンが39%、炭素が33%、窒素が21%、酸素が7%含まれていることが分かった。
【0058】
なお、本実施例で得られたボロン膜では、不純物の量が比較的多いが、炭素については、グラファイトからなるターゲット支持材を碍子で覆うことにより減少させることが可能である。また、窒素および酸素については、処理容器内を排気する際の真空度を上げることにより減少させることが可能である。
【0059】
また、本実施例で得られたボロン膜の膜厚は0.6μmであるが、堆積率や基板の温度等を最適化することにより内部応力を低減させることにより、より厚いボロン膜を得ることが可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、高強度でかつ高品質なボロン膜を簡易な装置構成で効率よく形成することができる。また、雰囲気ガスとして毒性や発火性のあるガスを用いる必要がないため、安全性が高く、環境汚染の心配もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るボロン膜の形成方法を実現するためのボロン膜形成装置の一例を示す図。
【図2】図1に示すボロン膜形成装置で用いられるターゲットの詳細を示す断面図。
【図3】本発明の一実施の形態に係るボロン膜の形成方法を説明するための工程図。
【符号の説明】
10 ボロン膜形成装置
11 処理容器
11a ガス流入管
11b ガス排出管
11c 電子ビーム引込口
12 電子ビーム源
13 ターゲット
14 電源
15 温度センサ(検出装置)
16 制御装置
17 シャッタ機構
17a 遮蔽板
17b 支持部材
17c 移動装置
18 テーブル
19 冷却機構
20 電流計
21 ターゲット本体
22 ターゲット支持材
23 電流導入端子
24 ターゲット支持材用被覆材
25 電流導入端子用被覆材
30 基板

Claims (7)

  1. ボロンを主成分とするターゲットをスパッタして基板上にボロン材料を堆積させる、ボロン膜の形成方法において、
    処理容器内に収容されたターゲットに向けて電子ビームを照射し、当該ターゲットを加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程により加熱された前記ターゲットに電圧を印加し、前記電子ビームによってプラズマ化された前記処理容器内の雰囲気ガスに含まれるイオンを加速して当該ターゲットをスパッタすることにより、基板上にボロン材料を堆積させるスパッタリング工程とを含むことを特徴とする、ボロン膜の形成方法。
  2. 前記スパッタリング工程において、前記ターゲットに電圧を印加してから所定の時間が経過するまで前記基板上にボロン材料が堆積されないよう前記基板を遮蔽しておき、当該所定の時間が経過した時点で前記基板の遮蔽状態を解くことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記スパッタリング工程において、ボロン材料が堆積される前記基板を冷却状態に保つことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記処理容器内の前記雰囲気ガスは窒素を含むガスであり、前記基板上に堆積されるボロン材料は窒化ボロンを含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. ボロンを主成分とするターゲットをスパッタして基板上にボロン材料を堆積させる、ボロン膜形成装置において、
    ボロン材料が堆積される基板を収容する処理容器と、
    前記処理容器内に収容されたターゲットと、
    前記処理容器内に収容された前記ターゲットに向けて電子ビームを照射し、当該ターゲットを加熱する一方で、当該処理容器内の雰囲気ガスをプラズマ化する電子ビーム源と、
    前記ターゲットにバイアス電圧を印加する電源と、
    前記ターゲットの温度を検出する検出装置と、
    前記電源及び前記検出装置に接続された制御装置であって、前記検出装置の検出結果に基づいて前記ターゲットが所定の温度まで加熱されたことが判断された時点で、前記電源により前記ターゲットにバイアス電圧を印加するよう制御し、前記電子ビームによってプラズマ化された前記処理容器内の雰囲気ガスに含まれるイオンを加速して当該ターゲットをスパッタすることにより、前記基板上にボロン材料を堆積させる制御装置とを備えたことを特徴とする、ボロン膜形成装置。
  6. 前記基板上にボロン材料が堆積されることを防止するためのシャッター機構をさらに備え、
    前記制御装置は、前記ターゲットにバイアス電圧を印加してから所定の時間が経過した後に前記基板上にボロン材料が堆積されるよう前記シャッター機構を制御することを特徴とする、請求項5に記載の装置。
  7. ボロン材料が堆積される前記基板を冷却する冷却機構をさらに備えたことを特徴とする、請求項5又は6に記載の装置。
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