JP4980219B2 - インターカレート型擬似ヌクレオチド(ipn)を含有するインターカレーティング核酸(ina)を含む増幅ブロッカー - Google Patents

インターカレート型擬似ヌクレオチド(ipn)を含有するインターカレーティング核酸(ina)を含む増幅ブロッカー Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、核酸検出アッセイ、特に、DNA増幅のブロッカーを使用する改良されたアッセイに関する。本発明はまた、DNA増幅の新規のブロッカー、および核酸中の5−メチルシトシン塩基の特異的かつ高感度の検出に適した方法に関する。
背景技術
特定の核酸分子の検出のために、現在、いくつかの手順が利用可能である。これらの手順は一般的に、標的核酸と、長さが短いオリゴヌクレオチド(20塩基以下)〜数キロベース(kb)の配列までの範囲であり得る核酸プローブとの間の、配列に依存するハイブリダイゼーションに依存する。
核酸配列の集団からの特異的な配列の増幅のために最も広く使用されている方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である(ディーフェンバッハ C(Dieffenbach C)およびデヴェクスラー G(Dveksler G)編、「PCR Primer:A Laboratory Manual.」コールドスプリングハーバー出版(Cold Spring Harbor Press)、Plainview、ニューヨーク州)。この増幅方法では、オリゴヌクレオチド、すなわち、増幅される領域のいずれか一端の、一般に長さが15〜30のヌクレオチドの相補鎖が、変性させた一本鎖DNA上でのDNA合成を開始するために使用される。変性、プライマーハイブリダイゼーション、および耐熱性DNAポリメラーゼを使用するDNA鎖合成の連続するサイクルによって、プライマー間の配列の指数関数的な増幅が可能になる。RNA配列は、逆転写酵素を使用して最初にRNAをDNAにコピーし、cDNAコピーを生成することによって増幅することができる。増幅されたDNA断片は、ゲル電気泳動、ブロッティング、標識されたプローブを用いるハイブリダイゼーション、その後の(例えば酵素関連のアッセイによる)同定を可能にする標識されたプライマーの使用、標的DNAとハイブリダイゼーションするとシグナルを生じる蛍光標識されたプライマー(例えばBeaconおよびTaqManシステム)の使用を含めて、様々な手段によって検出することができる。
PCRと同様に、特定のヌクレオチド配列の検出および増幅のための様々な他の技術も開発されている。一例は、リガーゼ連鎖反応である(バラニー F(Barany F)、「Genetic disease detection and DNA amplification using cloned thermostable ligase.」、「プロナス(Proc.Natl.Acad.Sci.)USA」88:189〜193(1991年))。
直接的な検出については、標的核酸は、最も一般的には、ゲル電気泳動によってサイズに基づいて分離され、固体支持体に移され、その後、標的配列と相補的なプローブとのハイブリダイゼーションが行われる(サザンおよびノーザンブロッティング)。このプローブは、天然の核酸または類似体(ペプチド核酸(PNA)またはロックト核酸(locked nucleic acid)(LNA)など)であり得る。プローブは、直接的に(例えば32Pを用いて)標識してもよいし、間接的な検出手順を使用してもよい。間接的な手順は通常、「タグ」(ビオチンまたはジゴキシゲニンなど)のプローブへの組み込みに依存するものであり、プローブは、酵素関連の基質転換または化学ルミネセンスなどの手段によって、その後検出される。
核酸の直接的な検出のための広く使用される別の方法は、「サンドイッチ」ハイブリダイゼーションである。この方法では、捕捉プローブを、固体支持体に固定し、溶液中の標的核酸を、固定したプローブとハイブリダイゼーションさせる。結合しなかった標的核酸を洗い落とし、結合された核酸を、標的配列にハイブリダイゼーションする第2のプローブを使用して検出する。検出は、上で概説した通りの直接的または間接的な方法を使用することができる。「分岐DNA」シグナル検出システムは、サンドイッチハイブリダイゼーション原理を使用する例である(ウルデア MS(Urdea MS)ら、「Branched DNA amplification multimers for the sensitive,direct detection of human hepatitis viruses.」、「Nucleic Acids Symp Ser.」1991年;(24):197〜200)。
核酸配列の直接的な検出のために核酸ハイブリダイゼーションを使用する、急速に成長している分野は、DNAアレイの分野である(ヤングRA(Young RA)、「Biomedical discovery with DNA arrays.」、「Cell」102:9〜15(2000年);ワトソン(Watson)、「A New tools.」、「A new breed of high tech detectives.」、「Science」289:850〜854(2000年))。このプロセスでは、個々の核酸種(オリゴヌクレオチドから、cDNAクローンなどのより長い配列までの範囲であり得る)が、固体支持体に格子パターンで固定される。その後、標識された核酸集団が、アレイとハイブリダイゼーションされ、アレイにおける各スポットとのハイブリダイゼーションのレベルが定量化される。最も一般的には、ハイブリダイゼーションのために、放射能または蛍光で標識された核酸(例えばcDNA)を使用するが、他の検出システムも使用することができる。
現在では、例えば、前立腺癌中のGSTP1遺伝子プロモーターにおいて発見されたような、DNAのメチル化変化を検出する最適な方法は、DNAの亜硫酸水素塩(bisulphite)修飾の後の、当該配列のPCR増幅に依存する。亜硫酸水素塩処理されたDNAにおいては、シトシンがウラシルに転換される(したがって、PCRでは、チミンとして増幅される)のに対して、メチル化されたシトシンは非反応性であり、シトシンのままである(フロマー M(Frommer M)、マクドナルド LE(McDonald LE)、ミラー DS(Millar DS)、コリス CM(Collis CM)、ワット F(Watt F)、グリッグ GW(Grigg GW)、モロイ PL(Molloy PL)、およびポール CL(Paul CL)、「A genomic sequencing protocol which yields a positive display of 5−methyl cytosine residues in individual DNA strands.」、「PNAS」89:1827〜1831(1992年);クラーク SJ(Clark SJ)、ハリソン J(Harrison J)、ポール CL(Paul CL)、およびフロマー M(Frommer M)、「High sensitivity mapping of methylated cytosines.」「Nucleic Acids Res.」22:2990〜2997(1994年))。このように、亜硫酸水素塩処理の後では、5−メチルシトシン塩基を含有するDNAは、相当するメチル化されていないDNAとは配列が異なる。プライマーは、そのメチル化状態を決定するために対象ゲノムの領域を非選択的に増幅するために選択してもよいか、あるいは特定のシトシンがメチル化された配列を選択的に増幅するために設計してもよい(ハーマン JG(Herman JG)、グラフ JR(Graff JR)、ミオハネン S(Myohanen S)、ネルキン BD(Nelkin BD)、およびベイリン SB(Baylin SB)、「Methylation−specific PCR:a novel PCR assay for methylation status of CpG islands.」「PNAS」93:9821〜9826(1996年))。
シトシンメチル化の検出のための代替法は、制限酵素(その切断は、部位特異的なDNAメチル化によってブロックされる、あるいはブロックされない)を用いる消化、それに続くサザンブロッティング、および対象領域のハイブリダイゼーション探索を含む。この手法は、有意な割合(一般に>10%)のDNAが、該部位でメチル化され、かつ、検出可能な十分なDNA(約1〜5μg)が存在するという状況に限られる。制限酵素(その切断が、部位特異的なDNAメチル化によってブロックされる)での消化の後に、制限酵素部位(1つまたは複数)と隣接するプライマーを使用するPCR増幅が続く。この方法は、より少量のDNAを利用することができるが、DNAメチル化以外の理由によって完全な酵素消化が行われなくなることによって、偽陽性のシグナルがもたらされる可能性がある。
本発明の発明者は、今回、メチル化特異的なPCR(MSP)反応に伴う問題を大いに低下させることが可能な、メチル化された核酸の高感度かつ特異的な検出に適したインターカレーティング核酸(INA)を利用する方法を開発した。INAの予想外の特性が、本発明を実施するために利用される。
発明の開示
第1の態様では、本発明は、核酸の増幅をブロックする、あるいは低下させることが可能な2つ以上の内部インターカレート型擬似ヌクレオチド(internal intercalating pseudonucleotide;IPN)を含有するインターカレーティング核酸(intercalating nucleic acid;INA)を含む増幅ブロッカーを提供する。
INAは、2〜10個、好ましくは2〜6個の内部に位置するIPNを有する、約15〜50、より好ましくは約18〜35の長さのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であることが好ましい。しかし、10個を超えるIPNを有するようなさらに長いINAも使用できることが理解されよう。オリゴヌクレオチドの3’または5’末端から2番目以上の塩基に位置するIPNが、DNAポリメラーゼに対する優れたブロッキング活性を提供することが、本発明の発明者によって判明した。伸張を中断するためにオリゴヌクレオチドに加えられる3’‐ジデオキシ塩基の追加などの他の阻害戦略とは異なり、本発明によるブロッカーは、機能させるための化学基を3’または5’に位置させることを必要としない。
好ましくは、INAは、オリゴヌクレオチドの3’または5’末端にはIPNを含有しない。
IPNは、好ましくは1−(4,4’―ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトから選択される。好ましくは、インターカレート型擬似ヌクレオチドは、(S)−1−(4,4’―ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトまたは(R)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトから選択される。より好ましくは、IPNは、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトである。
本発明の例に使用されるIPNの例は、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトであった。しかし、他の化学的な形のIPNも使用できることが理解されよう。
本発明によるブロッカーは、PCRおよび等温増幅方法などのいずれの形の増幅に使用するにも適している。PCRは、現在、ヘルスサイエンス・インダストリーにおいて使用される好ましい方法であるので、本発明の発明者は、PCRを使用する本発明の例を提供する。しかし、本発明がPCRまたは他の任意の形の増幅に制限されないことが理解されよう。
第2の態様では、本発明は、核酸増幅をブロックする、あるいは低下させるための、本発明の第1の態様によるブロッカーの使用を提供する。
第3の態様では、本発明は、核酸分子の標的領域のメチル化状態を検出するための方法であって、
改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理すること、
本発明の第1の態様による第1のブロッカー(ここで、第1のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖上のメチル化されていない標的領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
本発明の第1の態様による第2のブロッカー(ここで、第2のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖の下流の相補的第2鎖上の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖の相補的第2鎖上の第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供すること、および
増幅反応を実施すること(ここで、標的領域がメチル化されている場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域がメチル化されていない場合、増幅産物が存在しないこととなる)
含む方法を提供する。
第4の態様では、本発明は、核酸分子の標的領域のメチル化状態を検出するための方法であって、
改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理すること、
本発明の第1の態様による第1のブロッカー(ここで、第1のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖上のメチル化された標的領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
本発明の第1の態様による第2のブロッカー(ここで、第2のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖の下流の相補的第2鎖上の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖の相補的第2鎖上の第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供すること、および
ポリメラーゼ増幅反応を実施すること(ここで、標的領域がメチル化されていない場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域がメチル化されている場合、増幅産物が存在しないこととなる)含む方法を提供する。
好ましい形態では、この方法は、
本発明の第1の態様による第3および第4のブロッカー(ここで、第3および第4のブロッカーは、第1および第2のブロッカー領域の内部の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、および
第3および第4のブロッカー領域の外部かつ第1および第2のプライマー領域の内部の領域に相補的な第3および第4のプライマーを提供すること、をさらに含む。
別の好ましい形態では、この方法は、
核酸分子上の1つまたは複数の領域を指向する、本発明の第1の態様による1つまたは複数のさらなるブロッカーを提供することをさらに含む。
核酸分子上のこの領域は、改変された核酸鋳型上の1つまたは複数の領域に相当することが好ましい。
前記の方法は、
第1と第2のプライマー領域の間の領域に相補的な第1鎖または第2鎖を指向する、本発明の第1の態様による3つ以上のブロッカーを提供することをさらに含みうる。
第5の態様では、本発明は、核酸分子の標的領域の転換状態を検出するための方法であって、
改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理すること、
本発明の第1の態様による第1のブロッカー(ここで、第1のブロッカーは、核酸分子の第1鎖上の転換されていない標的領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
本発明の第1の態様による第2のブロッカー(ここで、第2のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖の下流の相補的第2鎖上の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖の相補的第2鎖上の第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供すること、および
増幅反応を実施すること(ここで、標的領域が転換されている場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域が転換されていない場合、増幅産物が存在しないこととなる)を含む方法を提供する。
第6の態様では、本発明は、核酸分子の標的領域の転換状態を検出するための方法であって、
改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理すること、
本発明の第1の態様による第1のブロッカー(ここで、第1のブロッカーは、核酸分子の第1鎖上の転換された標的領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
本発明の第1の態様による第2のブロッカー(ここで、第2のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖の下流の相補的第2鎖上の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖の相補的第2鎖上の第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供すること、および
増幅反応を実施すること(ここで、標的領域が転換されていない場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域が転換されていた場合、増幅産物が存在しないこととなる)を含む方法を提供する。
第7の態様では、本発明は、核酸分子の標的領域の状態を検出するための方法であって、
改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理すること、
本発明の第1の態様による第1のブロッカー(ここで、第1のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖上の所望でない状態である標的領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
本発明の第1の態様による第2のブロッカー(ここで、第2のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖の下流の相補的第2鎖上の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖の相補的第2鎖上の第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供すること、および
増幅反応を実施すること(ここで、標的領域が、所望の状態である場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域が、所望でない状態である場合、増幅産物が存在しないこととなる)を含む方法を提供する。
第8の態様では、本発明は、核酸分子の標的領域の状態を検出するための方法であって、
改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理すること、
本発明の第1の態様による第1のブロッカー(ここで、第1のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖上の所望の状態である標的領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
本発明の第1の態様による第2のブロッカー(ここで、第2のブロッカーは、改変された核酸鋳型の第1鎖の下流の相補的第2鎖上の領域に相補的である)を増幅反応に提供すること、
改変された核酸鋳型の第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供すること、および
改変された核酸鋳型の第1鎖の相補的第2鎖上の第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供すること、
増幅反応を実施すること(ここで、標的領域が所望でない状態である場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域が所望の状態である場合、増幅産物が存在しないこととなる)を含む方法を提供する。
好ましくは、当該状態は、メチル化、突然変異、または一塩基多型である。
第9の態様では、本発明は、核酸増幅をブロックする、あるいは低下させるための方法であって、
2つ以上の内部のIPNを含有するINA分子を含むブロッカー(ここで、ブロッカーは、対象核酸配列に相補的である)を核酸増幅反応に提供すること、および
そのブロッカーが、対象核酸配列に結合し、対象配列で、あるいはその近くで、増幅をブロックする、あるいは低下させるような増幅反応を実施することを含む方法を提供する。
第10の態様では、本発明は、核酸増幅をブロックする、あるいは低下させる方法であって、
本発明の第1の態様によるブロッカー(ここで、ブロッカーは、対象核酸配列に相補的である)を核酸増幅反応に提供すること、および
そのブロッカーが、対象核酸配列に結合し、対象配列で、あるいはその近くで、増幅をブロックまたは低下させるような増幅反応を実施することを含む方法を提供する。
好ましい形態では、増幅アッセイは、PCRの形のポリメラーゼ増幅である。
核酸分子は、DNAまたはRNAであり得る。好ましくは、核酸分子は、DNAである。
ある好ましい形態では、「メチル化状態」は、メチル化されていることである。
別の好ましい形態では、「メチル化状態」は、メチル化されていないことである。
好ましくは、潜在的メチル化部位は、当分野でCpGダブレットと称される、3’側にグアニン(G)が隣接するシトシン(C)である。
改変のための薬剤は、重亜硫酸塩、酢酸塩、またはクエン酸塩から好ましくは選択される。より好ましくは、この薬剤は、重亜硫酸ナトリウム、すなわち、水が存在する場合にシトシンをウラシルに改変する試薬である。
重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)は、シトシンの5,6−二重結合と容易に反応して、スルホン化されたシトシン反応中間体(これは、脱アミノ化を受けやすい)を形成し、水が存在する場合には、亜硫酸ウラシルをもたらす。必要に応じて、亜硫酸基を、弱アルカリ性条件下で除去し、ウラシルを形成させることができる。したがって、場合によっては、すべてのシトシンが、ウラシルに転換されることとなる。しかし、メチル化されたシトシンは、メチル化による保護に起因して、修飾試薬によって転換することができない。
ある好ましい形態では、1つまたは複数のブロッカーは、核酸分子上の1つまたは複数の潜在的メチル化部位を指向する。
別の好ましい形態では、ブロッカーは、核酸分子上の潜在的メチル化部位と結合しない。
より一般的な形態では、本発明の発明者は、DNAの領域にプローブ/ブロッカーをハイブリダイゼーションさせることによって、ポリメラーゼがDNAの伸長に沿って移動するのをブロックすることができることを見出した。これによって、以下における、ある種の配列の増幅が抑制される:PCR(サイキ(Saiki)他、(1998年)、「Primer−directed enzymatic amplification Of DNA with a thermostable DNA polymerase.」、「Science」239:487〜491)、あるいは、これに限定されないが、リガーゼ連鎖反応(LCR、バラニーF.(1991年)「Genetic disease detection and DNA amplification using cloned thermostable ligase.」、「プロナス(Proc.Natl.Acad.Sci.)USA」88:189〜193)、および鎖置換型(Strand Displacement)増幅(SDA、ウォーカー(Walker)他、(1992年)、「Isothermal in vitro amplification of DNA by a restriction/DNA polymerase system」、「プロナス(Proc.Natl.Acad.Sci.)USA」89:392〜396)、核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)(NASBA、キーヴィティス(Kievitis)他、(1991年)、「NASBA TM isothermal enzymatic in vitro nucleic acid amplification optimised for the diagnosis of HIV−1.」、「J.Virol.Methods」35:273〜286)、転写ベースの増幅(Transcription Based Amplification)(TAS)、クウォ(Kwoh)他(1989年)、「Transcription−based amplification system and detection of amplified human immunodeficiency virus type 1 with a bead−based sandwich hybridization format.」、「プロナス(Proc Natl Acad Sci) USA.」4:1173〜7、ヘリカーゼ連鎖反応(HCR)、ヴィンセント(Vincent)およびコン(Kong)、(2004年)「Helicase−dependent isothermal DNA amplification.」、「EMBO Reports」5(8):1〜6、ローリングサークル増幅(RCA、ファイヤA.(Fire A.)およびシューS.Q.(Xu S.Q.)(1995年)「Rolling replication of short DNA circles.」、「プロナス(Proc.Natl.Acad.Sci) USA」92:4641〜4645)、自律配列複製(Self Sustained Sequence Replication)(3SR、グアテッリ(Guatelli)他、(1990年)「Isothermal,in viro amplification of nucleic acids by a multienzyme reaction modelled after retroviral replication.」、「プロナス(Proc.Natl.Acad.Sci.)USA」87:1874〜1878)を含めた等温方法などの他の増幅プロセス。3’ジデオキシヌクレオチドの追加など、改変された3’オリゴヌクレオチド配列を使用することによって、ポリメラーゼ伸張が停止することが示されている。予想外にも、IPN分子は、オリゴヌクレオチドの末端の3’端に配置される必要はなく、実際INAの内部に配置することができ、それでもポリメラーゼの伸張をブロックすることができることが判明している。
DNAポリメラーゼは、そのINAプライマーが、その内部に位置する複数のIPNを有する場合、所与のゲノム領域にハイブリダイゼーションさせたINAプライマーの置換/分解に大きな困難を抱えていることが明らかになっている。INA内のIPNは、ポリメラーゼの進行に対するブロッカーとして効率的に作用する。INAのこの予想外の特性は、領域内のメチル化されていない配列を増幅からブロックし、メチル化された配列のみを増幅することが可能であることを意味する。さらに、ジデオキシヌクレオチドの3’末端付加などのポリメラーゼ伸張を防止する他の方法と異なり、本発明の発明者は、ブロッキング効果をもたらすために、IPN分子は、内部に配置することができ、3’である必要はないことを発見した。このように、メチル化された配列とメチル化されていない配列の混合集団において、すべてのバックグラウンドを排除することが可能である。
本発明はまた、「リアルタイム」検出アッセイにも適用することができる。
その最も単純な形態では、本発明は、ヒトまたは動物または植物または微生物の、最低でも2つの状態で存在するゲノムの任意の所望の領域を差別的に増幅するためのINAブロッカーの使用に関する。こうした2つの状態は、同じゲノム座位での変化形であるが、ヒトまたは動物または植物または微生物のサンプルのレベルでは、通常、細胞の混合集団(ある集団に特定のゲノム状態が存在し、別の集団に異なるゲノム状態が存在する)に埋没している。「乾草の山の中の針」に例えると、本発明は、針の増幅を可能にし、且つ乾草の山を構成するすべての干し草の増幅の妨害を可能にする。
実際の分子用語では、これは、以下を意味する:針が、癌細胞に存在する特定のメチル化されたゲノム配列であるのに対して、通常の細胞が、同じ座位でメチル化されていない配列を有する場合、本発明は、メチル化されていない配列の求められていない増幅をブロックすることによって、メチル化された配列の増幅および視覚化を可能にする。逆もまた適用可能である。通常の細胞がメチル化されたゲノム配列を有し、癌細胞が、メチル化されていない配列を有する場合、本発明はまた、メチル化された配列をブロックすることによって、メチル化されていない配列の増幅および視覚化を可能にする。
本発明の魅力は、所望されていない実体の巨大な海における、低レベルの実体の検出を可能にすることである。疾患において、ノイズ比に対するシグナルという言い方においては、何千もの通常の細胞(ノイズ)の中に、数個の癌細胞(シグナル)があることは、よくあることである。本発明によるブロッカー技術は、2つのことを行う;それは、ノイズを抑制することと、さらに、こうした2つのタイプの細胞のゲノムからシグナルを増幅することである。
本発明の発明者は、下の例中に示される5つの遺伝子についてのデータを提示するが、本発明は、ゲノムのその部分が2つの状態のうちの1つで存在する場合、ヒトまたは動物または植物または微生物のゲノムのいずれの部分に対しても(それが翻訳領域であっても非翻訳領域であっても)普遍的であり、これらに適用可能である。本発明は、SNPおよび遺伝子突然変異の検出などの任意の状況のために使用することができるが、これは、ゲノム標的のメチル化状態について見る際に、非常に有用な用途をもつ。
この明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」、あるいは(「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変化形は、所定の要素、整数、またはステップ、あるいは要素、整数、またはステップの群を包含するが、他のどんな要素、整数、またはステップ、あるいは要素、整数、またはステップの群も排除しないことを意味することが理解されよう。
本願明細書に含まれている、文書、行為、材料、装置、論文などに関するいずれの議論も、単に本発明のための状況を提供するためのものに過ぎない。こうした事項のいずれかまたはすべては、従来の技術の基礎の部分を形成する、あるいは、この明細書の各請求項の優先権主張日より前に、それがオーストラリアに存在したというように、本発明に関連する分野における共通の一般知識であったと認めるべきではない。
本発明をより明確に理解できるように、以下の図面および例を参照して、好ましい実施形態を述べることとする。
材料および方法
INA/IPN定義
インターカレーティング核酸(INA)は、独特のクラスのDNA結合分子である。INAは、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体と、インターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)モノマーからなる。INAは、相補的なDNAに対して非常に高い親和性を有し、内部に配置されたIPNについて最高10度(degree)、端部に位置するIPNについて最高11度という安定度である。INA自体は、相補的なRNAよりもDNAとハイブリダイゼーションするのを好む選択的な分子である。INAは、オリゴヌクレオチドプライマーよりも約25倍効率的にRNAに結合することが示されている。一方、従来のオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド類似体、およびPNAは、RNAともDNAともと等しい親和性を有する。したがって、INAは、まさに真の選択的なDNA結合剤である。さらにINAは、他の天然のDNA分子よりも、相補的なDNAに対して、より高い特異性および親和性を有する。
さらに、IPNは、AT−リッチ環境で、最もよくDNAを安定させ、これによって、エピゲノミクスリサーチの分野で得に有用なものとなる。IPNは一般に、INA分子内へのバルジまたは末端挿入物として配置される。IPNは、核酸二重鎖中で核酸塩基と相互スタッキング(co−stacking)が可能である、本質的に平面状の(ヘテロ)ポリ芳香族化合物である。
INA分子はまた、エキソヌクレアーゼ攻撃に対して耐性であることも示されている。これにより、こうした分子は、phi29などの酵素を使用する増幅のためのプライマーとして特に有用となる。phi29は、特有のエキソヌクレアーゼ活性を有するので、酵素分解を妨げるために、増幅のための鋳型として使用されるプライマーは、その3’末端で特に改変されなければならない。しかし、INA分子は、さらに改変することなく加えることができる。
INAは、従来のPCR増幅反応に使用することができ、従来のプライマーとして機能することができる。しかし、INAは、DNA鋳型に対する、より高い特異性を有し、これによって、鋳型が限定され、反応の感受性が限界であるような状況で使用するのに理想的となる。INAは、AT−リッチ環境で、最もよくDNAを安定させ、これによって、亜硫酸水素塩処理されたDNA配列の増幅に特に有用となる。これは、亜硫酸水素塩転換の後、すべてのシトシン残基がウラシルに、その後、PCRまたは他の増幅の後に、チミンに転換されるという事実に起因する。したがって、亜硫酸水素塩処理されたDNAは、非常にTリッチである。INA中のIPN分子の数を増大させることによって、INA/DNA二重鎖の安定度が増す。INA中のIPNが多いほど、DNA/INA二重鎖の融解温度は高くなる。予想外にも、ヌクレオチド分子中に複数のIPNが配置された場合、INAは、その相補的なDNAに対する非常に高い特異性を有するが、IPNの包含により、増幅反応中のPCRポリメラーゼ伸張の阻害がもたらされる。したがって、INAが、複数のIPNを伴って設計されている場合、これは、PCR増幅反応中にブロッキング試薬として作用する(これは、従来のオリゴヌクレオチドを使用すると起こらない)。
本出願人は、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの類似体に組み込まれた場合にインターカレーティング核酸(INA)を形成し、オリゴヌクレオチドに対する補足体、あるいはオリゴヌクレオチドの置換体としての新規の有用な特性を有する、あるクラスのインターカレータ擬似ヌクレオチドを以前に開発している(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット、および国際公開第03/052134号パンフレット)。オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの類似体を改変して1つまたは複数のインターカレータ擬似ヌクレオチド(IPN)を含ませ、核酸増幅のブロッカーを形成することができることが判明している。
インターカレータ擬似ヌクレオチドは、好ましくは1−(4,4’―ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトから選択される。好ましくは、インターカレータ擬似ヌクレオチドは、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイト、または(R)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトから選択される。
オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの類似体は、DNA、RNA、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、MNA、アルトリトール核酸(ANA)、ヘキシトール核酸(HNA)、インターカレーティング核酸(INA)、シクロヘキサニル核酸(CNA)、ならびにこれらの混合物およびそれらのハイブリッド、ならびにそれらのリン原子改変体(ホスホロチオネート、メチルホスホレート(methyl phospholate)、ホスホラミダイト、ホスホロジチエート(phosphorodithiate)、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、リン酸トリエステル、およびホスホボラノエート(phosphoboranoate)など)から選択することができる。天然に存在しないヌクレオチドには、これらに限定されないが、DNA、RNA、PNA、INA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、α−L−リボ−LNA、α−L−キシロ−LNA、β−D−キシロ−LNA、α−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、α−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、β−D−リボピラノシル−NA、α−L−リクソピラノシル(Lyxopyranosyl)−NA、2’−R−RNA、α−L−RNAまたはα−D−RNA、β−D−RNA内に含まれるヌクレオチドが含まれる。さらに、これらに限定されないが、メチルイミノメチル、フォルムアセテート(formacetate)、チオフォルムアセテート(thioformacetate)、およびアミドを含む連結基などのヌクレオチドへの結合のために、リンを含有しない化合物を使用することができる。特に、核酸および核酸類似体は、1つまたは複数のインターカレータ擬似ヌクレオチドを含むことができる。
好ましくは、ブロッカーは、ブロッキングINAを形成する2つ以上の内部のIPNを含有するDNAオリゴヌクレオチドである。
IPNが、メチル化された部位の特定の検出のためにINA分子中に配置される場合、本発明者は、潜在的CpG部位の間にIPNを配置することを回避することが有用であることを発見した。これは、CpG部位がIPNを使用して分割される場合に、得られるINAの特異性が低下させられるという事実に起因する。
ゲノム核酸
ゲノム核酸は、植物、動物、微生物(細菌、真菌、酵母、およびウイルスなど)から得られるDNAまたはRNAであり得る。好ましくは、核酸は、DNAであり、より好ましくは、動物または人間由来のゲノムDNA、あるいは動物またはヒト細胞の感染性の因子の核酸である。
DNAの亜硫酸水素塩処理
核酸の有効な亜硫酸水素塩処理のための例示的なプロトコルを以下で説明する。このプロトコルは、処理される実質的にすべてのDNAを維持することをもたらす。この方法はまた、本明細書ではヒトゲノムシグネチャー(Human Genetic Signatures)(HGS)法とも称する。サンプルまたは試薬の体積または量は、変わり得ることを理解されたい。
亜硫酸水素塩処理のための好ましい方法は、米国特許出願第10/428310号明細書またはPCT/AU2004/000549(参照により本明細書に組み込む)に出ている。
2μgのDNA(望ましければ、適切な制限酵素であらかじめ消化しておいてもよい)に、2μl(1/10体積)の3M NaOH(50mlの水に6g、新たに作製)を加えて、最終体積を20μlにした。亜硫酸水素塩試薬が、一本鎖分子と好都合に反応するので、このステップで、二本鎖DNA分子を一本鎖の形に変性させる。この混合物を、37℃で15分間保温した。室温より上の温度での保温を使用して、変性の効率を向上させることができる。
保温の後、208μl 2M メタ重亜硫酸ナトリウム(416ml 10N NaOHを加えた20mlの水中に7.6g;BDH AnalaR #10356.4D;新たに作製)と、12μlの10mMキノール(50mlの水中に0.055g、BDH AnalR #103122E;新たに作製)を、連続して加えた。キノールは還元剤であり、試薬の酸化の低下を助ける。他の還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、キノン(ヒドロキノン)または他の適切な還元剤など)も、使用することができる。このサンプルを、200μlの鉱油で覆った。鉱油で覆うことは、試薬の蒸発および酸化を妨げるが、不可欠ではない。その後、サンプルを、55℃で終夜保温した。あるいは、サンプルを、以下の通りにサーマルサイクラー中に循環させることもできる:以下の通りに約4時間または終夜保温する:ステップ1、PCR機械中で55℃/2時間循環させる;ステップ2、95℃/2分。ステップ1は、約37℃〜約90℃までの任意の温度で実施することができ、長さは、5分〜8時間まで変動し得る。ステップ2は、約70℃〜約99℃までの任意の温度で実施することができ、長さは、1秒〜60分、あるいはさらに長く変動し得る。
メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理の後、オイルを除去し、DNA濃度が低い場合には、1μl tRNA(20mg/ml)または2μlグリコーゲンを加えた。こうした添加物は、任意選択であり、特にDNAが低い濃度で存在する場合に、標的DNAと共沈殿することによって得られるDNAの収量を向上させるために使用することができる。核酸の量が<0.5μgである場合、より効果的な核酸の沈殿のための担体としての添加物の使用が、一般に所望される。
イソプロパノール精製処理は、以下の通りに実施した:サンプルに800μlの水を加えて混合し、次いで1mlイソプロパノールを加えた。水または緩衝液は、反応容器中の亜硫酸水素塩の濃度を、この塩が対象標的核酸と共に沈殿しないようなレベルに低下させる。希釈は一般に、塩濃度が、本明細書で開示する通りの所望の範囲内で希釈される限り、約1/4〜1/1000である。
サンプルを再び混合し、4℃で最低でも5分間放置した。サンプルを、微量遠心管内で10〜15分間回転させ、ペレットを70% ETOHで2回洗浄し、その都度ボルテックス処理した。この洗浄処理によって、核酸と共に沈殿したいずれの残存する塩も除去される。
ペレットを乾燥させ、次いで、適切な体積(例えば50μl)のT/E(10mMトリス/0.1mM EDTA)、pH 7.0〜12.5中に再懸濁させた。pH 10.5の緩衝液が、特に有効であることが判明している。サンプルを、核酸を懸濁するために必要とされる通り、37℃〜95℃で1分〜96時間保温した。
ブロッカー生成
INAブロッカーの生成のための適切な方法は、クリステンセンUB(Christensen UB)、ペダーセン EB(Pedersen EB)「Intercalating nucleic acids containing insertions of 1−O−(1−pyrenylmethyl)glycerol: stabilisation of dsDNA and discrimination of DNA over RNA.」、「Nucleic Acids Res.」2002年11月15日;30(22):4918〜25(参照により本明細書に組み込む)に出ている。
ブロッカー
本明細書では、「ブロッカー」は、核酸増幅をブロックする、あるいは低下させることが可能な2つ以上の内部インターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)である。
本明細書では、「メチルブロッカー」は、その未処理のゲノム状態で元々メチル化されていた、転換された核酸の領域を標的にするように設計されたブロッカーである。
本明細書では、「非メチルブロッカー」は、その未処理のゲノム状態でメチル化されていなかった、転換された核酸の領域を標的にするように設計されたブロッカーである。
本明細書では、「転換ブロッカー」は、転換された核酸の領域を標的にするように設計されたブロッカーである。
本明細書では、「非転換ブロッカー」は、ゲノム核酸の領域(すなわち、重亜硫酸塩または他の処理によって転換されていない領域)を標的にするように設計されたブロッカーである。
GSTP1遺伝子のための実例において使用されるINAブロッカーの例は、以下の通りである:
Figure 0004980219
ここで、Yは、IPNを示す。好ましくは、IPNは、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトの形である。
MBは、メチル化ブロッカーである
UBは、非メチル化ブロッカーである
NCBは、非転換ブロッカーである
記述子「Y」は、配列中のIPNの配置を表し、これは、配列の塩基数に含まれる。
PCRプライマー
例のために使用されるプライマーは、以下の通りであった:
Figure 0004980219
第1ラウンドINAブロッキングPCR
GSTP1−1/2+適切なブロッカー1/2
第2ラウンドINAブロッキングPCR
GSTP1−3/4+適切なブロッカー3/4。
DNAの従来の亜硫酸水素塩修飾および所与のゲノム領域に対する産物の視覚化
これは、亜硫酸水素塩を用いるDNAサンプルの処理、それに続くPCR増幅ステップを含む。研究者は、PCRステップの産物(すなわちゲル上のバンドの視覚化)からは、DNAがこのステージでメチル化されたかどうか知ることはできず、サンプル中に存在するその特定の遺伝子領域について、亜硫酸水素塩処理されたDNAが存在するかどうか知るに過ぎない。PCRおよび視覚化の後、産物は、特定の部位が酵素によって切断されるかどうか(したがって、それがメチル化されているか否か)見るために、制限酵素によって消化させることをさらに必要とする、あるいは、その特定の組織サンプルにおいて、遺伝子領域がメチル化されたかどうか決定するために、DNAバンドまたはフラグメントが配列決定される必要がある。PCRバンドを配列決定することによって、例えばその領域中のCpGダブレット中の各Cが、メチル化されたか否かが示されることとなる。この方法は、10%超のサンプルがメチル化されている場合、メチル化が、配列決定装置上で大胆かつ型通りに検出されるだけなので、感受性が不足している。特定の組織サンプルでは、例えば、そのサンプル中の細胞の90%が、研究中の領域にメチル化されていないDNAを有し、10%が、メチル化されたDNAを有する場合、上述した従来方法は、メチル化プロファイリングの正確な決定に対する感受性が不足しているであろう。さらに、この従来技術の方法は、非常に労働集約的であり、実施するのに時間がかかる。
メチル化特異的PCR(MSP)
MSPは、メチル化を調査する団体によって広く採用されているが、MSPは、文献中で実証されている、いくつかの非常に重大な限界または欠点を有する。こうした限界または欠点としては、以下が挙げられる:
I.この方法は、特に、腫瘍の不均一性に起因して、大抵の癌組織でそうであるように、正常細胞と癌細胞の混合集団中に、メチル化されたDNA領域をもつ少数の癌細胞が存在する場合に、偽陽性シグナルが非常に生じやすい。説明を簡単にするために、通常の細胞は、メチル化されていない状態の、その同等の領域を有するとする。亜硫酸水素塩で処理される場合、偽陽性シグナルは、DNAが局所的に転換されなかった結果として生じる。したがって、PCRプライマーは、DNAの転換されなかった領域(図3、4、および5のD部分を参照のこと)を増幅するので、メチル化された反応であると考えられるものが得られるが、実際には、これは、単に亜硫酸水素塩処理によって転換され損なった遺伝子領域を有する。INAブロッカーは、転換されなかったDNA領域の増幅をブロックすることとなる非転換INAブロッカーを含むことが可能であるので、この問題をこうむらない。INAブロッカー技術を使用して、正のシグナルが得られる場合、このシグナルは、十分に転換されたDNAの結果である。したがって、偽陽性PCRシグナルは、本発明によるブロッカーを使用することによって排除される。
II.この領域が、従来の亜硫酸水素塩処理(高感度手法でない)の後に、あらかじめ配列決定されない限り、研究者は、標的にされているCpG部位が、そもそもメチル化されたかどうかわからない。したがって、ある特定のCpG部位は、メチル化されていない、あるいはメチル化中である可能性があり、その領域が配列決定されない限り、その特定のCpGに対して設計されたMSPプライマーは、その特定の遺伝子のメチル化の程度の推定の下で偽陰性反応を生じるであろう。さらに、本発明によるINAブロッカー技術は、PCRプライマーを、CpGジヌクレオチドを含有しない領域に対して設計することができるので、この限界を解決する。したがって、PCRプライマーは、遺伝子がメチル化されているかどうかに関係なく結合する。
III.配列が、例えば、配列の第1の部分中に、小さい領域のみのメチル化を含有し、配列の全長に延長しない場合、これは、MSPを用いると誤った否定的結果を生ずるだろう。これは、第1のMSPプライマーが、相補的なCpG部位に結合することとなるが、第2の領域はメチル化されていないので、第2のMSPプライマーは結合しないこととなるという事実に起因する。上で既に述べた通り、PCRプライマーを、領域(メチル化されたかに関係なく増幅することとなる)に対して設計することができるので、該ブロッカーは、この問題を有さない。
IV.MSPは、その反応が、PCR酵素が、メチル化されたCまたはメチル化されていないT塩基である3’末端塩基からプライミングする能力に依存するので、最適化するのが非常に困難である。したがって、異なる遺伝子領域に対する異なるMSP反応は、MSPプライマーと転換された標的領域(Tm最適条件)との間のハイブリダイゼーション温度が非常に異なる可能性がある。ある遺伝子領域が、非常に高密度のCpGアイランドを含有し、他の遺伝子領域が、かなり少ないCpGアイランドを有する場合、CpGアイランドからの遺伝子領域は、Tmが70℃である可能性があるのに対し、他の遺伝子領域は、Tmが50℃である可能性がある。したがって、MSP反応が高い厳密性で実施される場合、Tmが70℃である遺伝子が、PCR産物を産生するのに対して、Tmが50℃であるMSP反応は、増幅産物を産生しないこととなる。したがって、各ウェルが、異なるTm最適条件を有することとなり、また、増幅するかしないかが予測不可能な方式で変化することとなるので、(それぞれ、96ウェルの同じプレートの、または384ウェルのPCRプレートの別々のウェルで)複数のMSP反応を実施することは不可能に近く、他端から感知しうる結果を得るであろう。さらに、本発明によるブロッカー技術におけるPCRプライマーは、CpGを欠く遺伝子の領域に対して設計することができるので、複数の異なる遺伝子のTm最適条件は、比較的高密度のCpGアイランドよりも制御がかなり容易である。PCRプライマーのためのプライミング部位として働くCpGジヌクレオチドを欠く、そのアイランド内の小さい領域を発見することは、通常可能である。
V.MSPは、プライマーごとにある特定のCpG部位でのメチル化の存在を検出するだけであるので、MSP反応は、遺伝子領域ごとに2つの部位について報告するだけである。これは常に、文書で十分に裏付けられた批判であった。研究者は、PCRプライマー間の領域のメチル化状態については何もわからない。ブロッカーINAは、平均して3〜4のCpG部位を含有することができるので、遺伝子あたり4つのブロッカーを使用すれば、本発明を使用して、メチル化状態について12〜16のCpG部位からの平均を調べることができる。
結果
ブロッカー戦略
本発明をまず、以下の増幅アッセイによって説明する。
図1では、PCRプライマー#1およびブロッカー#1は、対象ゲノム領域由来の亜硫酸水素塩処理されたDNAとハイブリダイゼーションする。その後、Taqポリメラーゼは、PCRプライマー#1から、酵素が停止する位置のトップ(top)DNA鎖に結合したブロッカー#1に到達するまで延長する。何らかの理由で、酵素がブロッカー#1を迂回する場合、酵素は、DNAのトップ鎖を複製し、相補的な鎖を産生し、PCRプライマー#2に対する結合部位がもたらされる。したがって、PCRプライマー#2の内部の配列に相補的な第2のブロッカーが加えられる。これによって、ゲノム領域がその後確実に増幅しないようになる。
DNAは、ここでは本質的に、3つの塩基ゲノムからなるので、亜硫酸水素塩処理されたDNAの性質に起因して、(特にPCRによる)増幅効率は低下させられる。したがって、最大の感受性を得るために、2ラウンドのPCRを実施することができる。2回のPCRによって、反応の感受性が少なくとも5桁向上し、それによって、この方法は、細胞の小さい亜集団(例えば臨床サンプルにおける癌細胞と正常細胞の混合集団中の非常に少ない数の癌細胞)において起こるDNAメチル化変化の検出に理想的な方法となる。これに関しては、PCRプライマー#1およびプライマー#2の内部の第3および第4のPCRプライマー(PCRプライマー#3およびPCRプライマー#4)が、2つのさらなるブロッカー(ブロッカー#3およびブロッカー#4)と共に加えられる。このように、各PCRプライマーは、そのPCRプライマーの内部の配列に相補的であるブロッカー配列を有する。
したがって、対象各ゲノム領域のために、合計4つのPCRプライマーが合成される。メチル化されたDNA配列の存在の検出が必要とされる場合、メチル化されていないDNAの増幅をブロックするために、4つの非メチル化ブロッキング配列が使用されるであろう。さらに、配列が亜硫酸水素塩処理によって十分に転換されるのを確実にする(ある種の亜硫酸水素塩処理反応に伴う潜在的問題)ために、さらなる4つの非転換配列を使用して、部分的にのみ転換を受けたDNAの領域の増幅をブロックすることができる。これに関しては、各PCR(または他の増幅)反応において、2つのPCRプライマー、2つの非メチル化ブロッカー、および2つの非転換ブロッカーが存在することとなるであろう。
逆に、メチル化されていないDNA配列の存在の検出が必要とされる場合、メチル化されたDNAの増幅をブロックするために、4つのメチル化ブロッキング配列を使用することができるであろう。さらに、亜硫酸水素塩処理によって配列が十分に転換されることを確実にするために、さらなる4つの非転換配列を使用して、部分的にのみ転換を受けたDNAの領域の増幅をブロックすることができるであろう。さらに、各PCR反応においては、2つのPCRプライマー、2つのメチル化ブロッカー、および2つの非メチル化ブロッカーが存在することとなるであろう。
周知のことだが、ブロッカーは、核酸の任意の増幅をブロックするために使用することができる。
ブロッカー特異的な増幅
図2は、説明のために、通常の、また、亜硫酸水素塩処理された人工のDNA配列、CpGを含有しない領域を標的にするPCRプライマー#1およびプライマー#2、ならびにその適切な標的領域にハイブリダイゼーションする4つのブロッカー配列(2つはメチル化、2つは非メチル化)の配列を示す。
転換されていないDNA(野生型)に対するPCRプライマーおよびINAブロッカーのハイブリダイゼーション
図3では、PCRプライマー#1は、B、C、およびDにのみハイブリダイゼーションし、配列類似性が不十分であるので、転換されていない配列Aにはハイブリダイゼーションしない。メチルブロッカーは、亜硫酸水素塩処理されたメチル化された配列Bのみと結合することとなり、配列類似性が不十分であるので、転換されていない、メチル化されていない、あるいは局所的に転換されていないDNA配列には結合しない。その後、Taqポリメラーゼは、B、C、およびDで示される配列の延長を開始する。しかし、Bの場合、酵素は、メチルブロッカーまではたどり着くこととなるが、メチルブロッカーを通過することができないので、産物は形成されない。Cの場合、TpG部位のミスマッチ塩基に起因して、ブロッカーは結合されないので、Taqは、所望のPCRフラグメントを産生することとなる。Dの場合も、配列類似性が不十分であるので、ブロッカーは結合されず、したがって、PCR産物は得られるが、この産物は、転換されていない配列を含有する。
転換されたメチル化されたDNA配列に対するPCRプライマーおよびブロッカーのハイブリダイゼーション
図4では、PCRプライマー#1は、B、CおよびDにのみハイブリダイゼーションし、配列類似性が不十分であるので、転換されていない配列Aにはハイブリダイゼーションしない。非メチルブロッカーは、亜硫酸水素塩処理されたメチル化されていない配列Cのみと結合し、やはり配列類似性が不十分であるので、転換されていない、メチル化された、あるいは局所的に転換されていないDNA配列には結合しない。その後、Taqポリメラーゼは、B、C、およびDに示される配列の延長を開始する。Cの場合、酵素は、非メチルブロッカーまではたどり着くこととなるが、非メチルブロッカーを通過することができないので、産物は形成されない。Bの場合、CpGのミスマッチ塩基に起因して、ブロッカーは結合されないので、Taqは、所望のPCRフラグメントを産生することとなる。Dの場合も、配列類似性が不十分であるので、ブロッカーは結合されず、したがって、PCR産物は得られるが、この産物は、転換されていない配列を含有する。
局所的に転換されていないDNA配列に対するPCRプライマーおよびブロッカーのハイブリダイゼーション
図5では、PCRプライマー#1は、B、C、およびDにのみハイブリダイゼーションし、配列類似性が不十分であるので、転換されていない配列Aにはハイブリダイゼーションしない。非転換ブロッカーは、転換されていない配列Aおよび局所的に転換されていない配列Dと結合し、やはり配列類似性が不十分であるので、メチル化されたあるいはメチル化されていないDNA配列には結合しない。その後、Taqポリメラーゼは、B、C、およびDで示される配列の延長を開始する。Dの場合、酵素は、非転換ブロッカーまではたどり着くこととなるが、非転換ブロッカーを通過することができないので、産物は形成されない。BおよびCの場合、CpGおよびTpG部位の配列ミスマッチ塩基に起因して、ブロッカーは結合されないので、Taqは、所望のPCRフラグメントを産生することとなる。
したがって、非転換ブロッカーは、局所的に転換されていない配列の増幅(従来のMSPに関する主要な問題)を妨げるために、適切なブロッカーおよびプライマーと共に、図3および図4で説明した条件に加えることができる。
方法論の比較
図6は、従来の亜硫酸水素塩PCR、メチル化特異的PCR(MSP)、およびINAブロッカー技術を使用するアガロースゲル上で観察されるバンド形成パターンの概略図を示す。
従来の亜硫酸水素塩PCRを用いると、サンプルがメチル化配列を含有するにせよしないにせよ(正常の組織対癌組織)、バンドが見えるであろう(両方のパネルのレーン1)。この特定の方法は、サンプル中の亜硫酸水素塩処理されたDNAの存在を検出するだけであり、(通常ジデオキシ配列決定によって)メチル化状態を決定するために、さらに処理しなければならない。
メチル化されたDNA配列の検出ためにMSPを使用すると、正常の組織は、非メチル化であるであろうから、正常の組織サンプルからのレーン2では、バンドは見られないであろう。しかし、癌組織サンプルのレーン2には、バンドが見られるであろう。メチル化されていない配列を対象とするMSPプライマーを使用すると、正常の組織サンプル(レーン3)ではバンドが観察されるが、癌組織サンプル(レーン3を参照のこと)では観察されないであろう。
メチル化ブロッカーを使用するINAブロッカー技術を用いると、正常の組織(レーン4)ではバンドが観察されるが、癌組織(レーン4を参照)では観察されないであろう。非メチル化ブロッカーを使用すると、癌組織(レーン5)ではバンドが観察されるが、正常の組織(レーン5を参照)では観察されないであろう。
亜硫酸水素塩処理されたゲノムDNAサンプルに適用されるブロッカー技術
図7は、非メチル化ブロッカーがPCR反応混合物に加えられた場合、亜硫酸水素塩修飾されたDNA HeLa細胞株、臨床サンプル由来のT細胞、および乳癌細胞株T47D2を用いると、正のPCRシグナルが生じることを示す。
Figure 0004980219
全血からのT細胞、B細胞、およびCD34+細胞の精製
サンプルは、Royal North Shore Hospital、シドニー、オーストラリアで、白血球搬出法を受けている患者から得られた。サンプルは、従来の倫理委員会(Ethics Committee)の承認を受けて得られた。白血球は、Ficoll Paque plus(アマシャムバイオサイエンス(Amersham Biosciences)#17−1440−03;Piscataway、ニュージャージー州)を使用して、メーカーの指示書に従って濃縮した。T細胞、B細胞、およびCD34+細胞は、CELLection CD2 Dynabeads(ダイナル(Dynal)#116.03;Lake Success、ニューヨーク州)、Dynabeads CD19 (Pan B) Dynal#111.43、およびDynal CD34 Progenitor Cell selection system(ダイナル(Dynal)#113.01)を使用して、それぞれ製造指示書に従って、白血球集団から単離した。
使用した配列およびプライマーを、表2に示す。
PCRプレミックスは、以下の通りに準備した:
Figure 0004980219
Figure 0004980219
Figure 0004980219
Figure 0004980219
図1に記載した原理に従って、2ラウンドのPCR増幅を、Hybaid PX2サーモサイクラー中で実施した。亜硫酸水素塩処理されたゲノムDNA 1μlを、第1ラウンドのPCR反応チューブの各々に加えた。PCRは、以下の通りに実施した。
Figure 0004980219
第1ラウンドのPCRが完了した後、第1ラウンドのPCR反応混合物1μlを、第2ラウンドの増幅チューブに移し、上のPCRプログラムを繰り返した。
その後、PCR反応混合物10μlを、2%アガロースゲル上で分析した。
こうしたサンプルの従来の亜硫酸水素塩ゲノム配列決定によって、HeLa細胞株DNAは、この特定のゲノム領域について完全にメチル化されていたことが示された。T細胞DNAは、メチル化されていないことが示されたが、従来の亜硫酸水素塩ゲノム配列決定の解析能は、わずか10%である。制限酵素Taq 1(TCGAを切断する)およびBstU1(CGCGを切断する)を使用する、増幅された産物の制限消化によって、アンプリコン中のメチル化が示された。これは、本発明のINAブロッカー技術が、低レベルでメチル化された配列の検出での従来の亜硫酸水素塩ゲノム配列決定よりも明らかに優れていることを示す。さらに、T47D2 DNAが、従来の亜硫酸水素塩配列決定によって配列決定された場合、配列の前半がメチル化されていたのに対し、後半はメチル化されていなかったことが明らかになった。図7Aおよび7Bで分かるように、非メチル化ブロッカーおよびメチル化ブロッカーを使用して、バンドが検出された。MSPが使用されるならば、第2のMSP PCRプライマーのためのプライミング部位がメチル化されず、したがって、プライマーは結合しないであろうから、この特定のサンプルは、偽陽性バンドを生じるであろう。
メチル化INAブロッカーを使用すると、すべての結果は、従来の亜硫酸水素塩配列決定によって得られる結果と一致した。
臨床試験結果
図8および表3は、細胞株または臨床サンプルの11の異なるサンプル由来の4つのゲノム領域(CDKN2B、CXCL−2、GSN、およびHIC−1)に関するブロッカー実験の結果を示す。使用したブロッカーおよび実験プロトコルは、以下の通りである:
対象各遺伝子領域のためのPCRプレミックスは、以下の通りに準備した:
Figure 0004980219
図1に記載する原理に従って、Hybaid PX2サーモサイクラー中で、2ラウンドのPCR増幅を実施した。亜硫酸水素塩処理されたゲノムDNA1μlを、各々の第1ラウンドのPCR反応チューブの各々に加えた。PCRは、以下の通りに実施した。
Figure 0004980219
第1ラウンドのPCRが完了した後、第1ラウンドのPCR反応混合物1μlを、第2ラウンドの増幅チューブに移し、上のPCRプログラムを繰り返した。
その後、PCR反応混合物10μlを、2%アガロースゲル上で分析した。
Figure 0004980219
ゲノム領域CDKN2BおよびCXCL−2は、顆粒球において弱いバンドとして示される少量のメチル化を除いて、ほとんどすべてのサンプルにおいてメチル化されていないことが判明した。これらの結果は、選択されたサンプルに対する個別の増幅、それに続くPCR産物の直接的配列決定によって確認した。直接的なDNA配列決定では、CDKN2BまたはCXCL−2 PCRフラグメントのいずれにおいてもメチル化が示されなかった。直接的な配列決定の感受性は、増幅された材料の10%超がメチル化されない限り、配列はメチル化されていないものとして読み取られるような程度である。したがって、顆粒球サンプルにおけるCXCL−2の弱いバンドの存在は、ブロッカーアッセイによって検出される、このサンプルにおける非常に低レベル(<10%)のメチル化の指標となる。
GSNゲノム領域について配列決定されたすべてのサンプルにおいて、混合メチル化パターンが観察され、これは、ブロッカーアッセイの結果と一致していた。このゲノム領域のメチル化パターンは、PCRアンプリコンの長さ全体を通して多様であり、多くの場合、すべてのCpGジヌクレオチドがメチル化されるというわけではなかった。あるいは、メチル化されていない配列とメチル化された配列の混合物が、個々のCpG部位で観察された。
BL13、Hela、およびLNCaP細胞株について、Hypermethylated In Cancer (HIC−1)遺伝子のメチル化が観察され、CpG部位は、100%メチル化を示していた。興味深いことに、正常のSMC(サンプル6)細胞株は、HIC−1遺伝子のメチル化を示さない唯一の細胞株であった。白血病の緩解中の患者由来の顆粒球およびT細胞(サンプル9および10)は、ブロッカーアッセイによって混合メチル化を示し、圧倒的多数についてPCRアンプリコンがメチル化されていないように見えたが、これは、直接的な配列決定手法の感受性の欠如にも起因する可能性がある。
これらの結果から、本発明によるブロッカーアッセイは、ヒトゲノムの様々な領域のメチル化パターンを検出するための強力なツールであることがわかる。
当業者であれば、広く述べた通りの本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態で示す通りの本発明に対する非常に多くの変形および/または改変を行うことができることが理解できるであろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点で、例示的であり限定的でないと考えられるべきである。
2ラウンドのDNA増幅で使用されるプライマーおよびブロッカーの位置の概要を提供する、INAブロッカー戦略の例示的詳細を示す。 メチル化された、あるいはメチル化されていないDNA配列を使用する2ラウンドのDNA増幅で使用されるプライマーおよびブロッカーの位置の概要を提供する、INAブロッカー戦略を機能させる方法の例示的詳細を示す。これは、例として説明目的で使用されており、これらのブロッカーおよびプライマー配列は、現実のアッセイでは一般に使用されないであろう。ゲノムDNA配列(配列番号17);亜硫酸水素塩処理されたメチル化された配列(配列番号18);亜硫酸水素塩処理されたメチル化されていない配列(配列番号19);PCRプライマー#2(配列番号20);PCRプライマー#1(配列番号21);メチルブロッカー#2(配列番号22);メチルブロッカー#1(配列番号23);非メチルブロッカー#2(配列番号24);非メチルブロッカー#1(配列番号25)。 PCRプライマーおよびメチル化INAブロッカーの、様々な亜硫酸水素塩処理DNAタイプへのハイブリダイゼーションを示す例である。A.転換されていない配列(配列番号26);B.亜硫酸水素塩処理されたメチル化された配列(配列番号27);C.亜硫酸水素塩処理されたメチル化されていない配列(配列番号28);D.局所的に転換されていない配列(配列番号29);PCRプライマー#1(配列番号30);メチルブロッカー#1(配列番号31)。 PCRプライマーおよび非メチル化INAブロッカーの、様々な亜硫酸水素塩処理されたDNAタイプへのハイブリダイゼーションを示す例である。A.転換されていない配列(配列番号26);B.亜硫酸水素塩処理されたメチル化された配列(配列番号27);C.亜硫酸水素塩処理されたメチル化されていない配列(配列番号28);D.局所的に転換されていない配列(配列番号29);PCRプライマー#1(配列番号30);非メチルブロッカー#1(配列番号32)。 PCRプライマーおよび非転換INAブロッカーの、様々な亜硫酸水素塩処理DNAタイプへのハイブリダイゼーションを示す例である。A.転換されていない配列(配列番号26);B.亜硫酸水素塩処理されたメチル化された配列(配列番号27);C.亜硫酸水素塩処理されたメチル化されていない配列(配列番号28);D.局所的に転換されていない配列(配列番号29);PCRプライマー#1(配列番号30);非転換ブロッカー#1(配列番号33)。 従来のPCR、MSP技術、あるいは図3、4、および5で概説したINAブロッカーとプライマーの組み合わせを使用する、アガロースゲル電気泳動で視覚化された、予測される増幅産物を示す。結果は、定義された一組の既知のDNAマーカーに対する様々な増幅/検出方法を使用して、ゲル上で検出される予測される増幅産物の位置およびサイズの例によって示される。 INAブロッカー技術の、亜硫酸水素塩処理されたゲノムDNAサンプルへの適用に関するデータを示す。プロモーター領域のメチル化状態を評価するために、GSTP1プロモーター領域に対するINAブロッカーおよびPCRプライマーが、(表3に記述される)9つのゲノムDNAサンプルに適用されている。 表2に記述する11のゲノムDNAサンプルに適用されるブロッカーおよびPCRプライマーを使用する、CDKN2B、CXCL−2、GSN、およびHIC−1遺伝子の近くの4つのゲノム領域の増幅結果および推定されるメチル化状態を示す。結果は、表3に記述する11のゲノムDNAサンプルに適用されるブロッカーおよびPCRプライマーを使用するものであり、CDKN2B、CXCL−2、GSN、およびHIC−1座位の近くのヒトゲノム領域からの増幅産物を示す。

Claims (19)

  1. 核酸分子の標的領域のメチル化状態を検出するための方法であって、
    改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で前記核酸分子を処理することと、
    2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む第1の増幅ブロッカーであって、前記改変された核酸鋳型の第1鎖上のメチル化されていない標的領域に相補的である第1のブロッカー、を増幅反応に提供することと、
    2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む第2の増幅ブロッカーであって、前記改変された核酸鋳型の前記第1鎖メチル化されていない標的領域の下流に相補的な第2鎖上の領域に相補的である第2のブロッカー、を増幅反応に提供することと、
    前記改変された核酸鋳型の前記第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供することと、
    前記改変された核酸鋳型の前記第1鎖に相補的な前記第2鎖上の前記第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供することと、
    増幅反応を実施することと、を含み、ここで、標的領域がメチル化されている場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域がメチル化されていない場合、増幅産物が存在しないこととなる、方法。
  2. 核酸分子の標的領域のメチル化状態を検出するための方法であって、
    改変された核酸鋳型を形成する条件下で、シトシン塩基を改変するが、5−メチルシトシン塩基は改変しない薬剤で核酸分子を処理することと、
    2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む第1の増幅ブロッカーであって、前記改変された核酸鋳型の第1鎖上のメチル化された標的領域に相補的である第1のブロッカー、を増幅反応に提供することと、
    2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む第2の増幅ブロッカーであって、前記改変された核酸鋳型の前記第1鎖メチル化された標的領域の下流に相補的な第2鎖上の領域に相補的である第2のブロッカー、を増幅反応に提供することと、
    前記改変された核酸鋳型の前記第1鎖上の標的領域の上流の核酸領域に相補的な第1のプライマーを提供することと、
    前記改変された核酸鋳型の前記第1鎖に相補的な前記第2鎖上の前記第2のブロッカー領域の下流の核酸領域に相補的な第2のプライマーを提供することと、
    増幅反応を実施することと、を含み、ここで、標的領域がメチル化されていない場合、増幅産物が存在することとなり、標的領域がメチル化されている場合、増幅産物が存在しないこととなる、方法。
  3. 2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む第3の増幅ブロッカーであって、前記第1および第2のブロッカー領域の内側の領域において、第1鎖に相補的である第3のブロッカー
    2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む第4の増幅ブロッカーであって、前記第1および第2のブロッカー領域の内側の領域において、第2鎖に相補的である第4のブロッカーと、を増幅反応に提供することと、
    前記第3のブロッカー領域の外側かつ前記第1のプライマー領域の内側の領域において、前記第1鎖に相補的である第3のプライマーと、
    記第4のブロッカー領域の外側かつ前記第2のプライマー領域の内側の領域において、前記第2鎖に相補的である第4のプライマーと、を提供することと、をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記核酸分子上の1つまたは複数の領域を指向する、2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む1つまたは複数のさらなる増幅ブロッカーを提供することをさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記核酸分子上の領域が、前記改変された核酸鋳型上の1つまたは複数の領域に相当する請求項4に記載の方法。
  6. 前記第1鎖または第2鎖を指向し、前記第1と第2のプライマー領域の間の領域に相補的であり、2つ以上のインターカレート型擬似ヌクレオチド(IPN)を含有するインターカレーティング核酸(INA)を含む、3つ以上のブロッカーを提供することをさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記標的領域が、3’側にグアニン(G)が隣接するシトシン(C)である請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記改変のための薬剤が、重亜硫酸塩、酢酸塩、またはクエン酸塩から選択される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記薬剤が、重亜硫酸ナトリウムである請求項に記載の方法。
  10. 前記核酸分子がDNAまたはRNAである請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記核酸分子がDNAである請求項10に記載の方法。
  12. 前記INAが、2〜6の内部に位置するIPNを有する、長さが15〜50のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記INAが、2〜6の内部に位置するIPNを有する、長さが18〜35のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である請求項12に記載の方法。
  14. 前記IPNが、オリゴヌクレオチドの3’または5’末端から2番目以上の塩基に位置する請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記INAが、オリゴヌクレオチドの3’または5’末端のいずれにもIPNを含有しない請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記IPNが、1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトから選択される請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記IPNが、(S)−1−(4,4’―ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイト、または(R)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトから選択される請求項16に記載の方法。
  18. 前記IPNが、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトである請求項17に記載の方法。
  19. 前記増幅アッセイがPCRである請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
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