JP4979856B2 - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性が高く、流動性や成形性にも優れたポリアセタール樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。しかし、ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。そのような要求特性として、ポリアセタール樹脂が本来有する優れた特性を維持したまま、剛性の一層の向上が要求される場合がある。このような要求に対し、単に剛性を向上させるだけの目的であれば、ポリアセタール樹脂に繊維状フィラー等を充填する方法が一般的であるが、この方法では繊維状フィラー等の充填による成形品の外観不良等の問題、更に靱性低下の問題がある。また、ポリアセタールコポリマーにおいては、共重合させるコモノマー量を減少させることにより、摺動性や外観を実質的に損なうことなく剛性を向上させることが知られている。しかしながら、コモノマー減量の手法においては、靱性が低下するのみならず、ポリマーの熱安定性も低下する等の問題が生じ、必ずしも要求に応え得るものではなかった。
【0003】
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明者は、ポリアセタール樹脂のポリマー骨格自体の変性とかかるポリマーを基体とする樹脂組成物の設計及び添加物の最適化が、課題解決の重要な鍵を握るものと推測し、これまでにもいくつかの提案を行ってきた(例えば、特願平11−352249号、特願平11−352101号、特願平11−177269号、特願平11−177268号)。
【0004】
上記手法によれば、ポリアセタール樹脂が本来有する優れた諸特性を損なうことなく剛性を向上させることができるが、要求特性の高度化は、更なる剛性向上を求める傾向にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の如き課題を解決し、ポリアセタール樹脂が有する優れた外観、熱安定性等の諸特性を維持しつつ剛性を一層改善したポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、検討した結果、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂に、特定の分子量範囲のポリオキシメチレン重合体を配合することにより、更に高剛性が達成されることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
即ち本発明は、(A) 分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂100 重量部に対して、(B) オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする数平均分子量1000〜10000 のポリオキシメチレン重合体1〜100 重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明で用いるポリアセタール樹脂(A) は、分岐又は架橋構造を有することを特徴とするものである。かかるポリアセタール樹脂(A) の製造方法は特に限定されるものではなく、一旦分岐又は架橋構造を有しないポリアセタール樹脂を得た後に、分岐剤又は架橋剤を用いて分岐又は架橋構造を導入することも可能であるが、トリオキサン(a) 100 重量部、トリオキサンと共重合可能な環状エーテル基を1分子中に1個以上有し、共重合することで分岐又は架橋構造を形成しうる化合物(b) 0.0005〜2重量部及びトリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c) 0〜20重量部を共重合することにより製造したものが好ましい。このようにして得られる分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A) は、その調製が容易であると共に、分岐や架橋の程度を比較的容易に調整することができ、更に分岐構造や架橋構造の分布の均一性のため、安定した特性が得られる。
【0009】
ここで用いられるトリオキサン(a) とは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。
【0010】
また、トリオキサンと共重合可能な環状エーテル基を1分子中に1個以上有し、共重合することで分岐又は架橋構造を形成しうる化合物(b) とは、環状エーテルの水素の一部が他の1価の有機基で置換された構造や、2以上の環状エーテル単位が2価或いは3価以上の有機基で結合した構造を有する化合物を総称するものである。かかる化合物が環状エーテル基以外の官能基を持たない場合、1分子中に環状エーテル基を1個有する化合物は分岐構造の形成に、1分子中に環状エーテル基を2個以上有する化合物は架橋構造の形成に用いられる。環状エーテル基としては、特にその構造が限定されるものではないが、エポキシ基、シクロヘキセンオキシド基、オキセタン基、ジオキソラン基等が好ましい例として挙げられ、特に好ましくはエポキシ基である。
【0011】
このような化合物(b) の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、脂肪族アルコール又は芳香族アルコールの(ポリ)エチレングリコール付加物とグリシドールとからなるグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルステアレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0012】
好ましくは、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルである。
【0013】
これらの化合物(b) は単独で又は2種以上を併用して、トリオキサン(a) との共重合に供することができ、これにより分岐又は架橋構造を形成することができる。かかる化合物(b) は、トリオキサン(a) 100 重量部に対し0.0005〜2重量部の範囲となるように使用する。好ましくは0.001 〜1重量部の範囲、特に好ましくは0.003 〜0.5 重量部の範囲で使用するのがよい。かかる化合物(b) の使用量が0.0005重量部より少ない場合には、目的とする特性を有するポリアセタール樹脂(A) 及び樹脂組成物を得るのが難しく、また2重量部よりも多い場合には得られるポリアセタール樹脂(A) 及びその組成物の成形加工性、耐衝撃性、特性が低下し、何れも好ましくない。
【0014】
また、トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c) としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、2−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−フェノキシメチルオキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、キシリレンジオキセタン等が挙げられる。中でも、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールが好ましい。
【0015】
これら環状エーテル化合物(c) の使用量は、得られるポリアセタール樹脂の剛性、耐薬品性等を考慮すると、トリオキサン(a) 100 重量部に対して1種又は2種以上で合わせて0〜20重量部、好ましくは0.01〜15重量部の範囲、特に好ましくは0.1 〜10重量部である。
【0016】
本発明で用いるポリアセタール樹脂(A) は分岐又は架橋構造を有することを特徴とするものである。かかるポリアセタール樹脂(A) の製造においては、上記成分の他に、一般的には適量の分子量を調整する成分を併用して、末端基量を調整する。分子量を調整する成分としては、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ち、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテル等のアルコキシ基を有する化合物が例示される。
【0017】
本発明で用いるポリアセタール樹脂(A) は、これら分子量調整剤の使用量を調整することにより、生成するポリアセタール共重合体の総末端基量を15〜150mmol/kgに調整したものが好ましく、特に好ましくは総末端基量を20〜100mmol/kgに調整したものである。総末端基量が過少の場合には、流動性が著しく悪く、射出成形等の加工が非常に困難になる。また、総末端基量が過多の場合には、溶融粘度が著しく低下し、押出し等による製造工程においてペレット化することが不可能となったり、又、著しい靱性の低下が生じ、好ましくない。
【0018】
また、末端基については、 1H−NMRにより検出されるヘミホルマール末端基量が0〜4mmol/kg であることが好ましく、特に好ましくは0〜2mmol/kg である。ヘミホルマール末端基量が4mmol/kg を越える場合には、成形時にポリマー分解に伴う発泡等の問題が生じるおそれがある。ヘミホルマール末端基量を上記範囲に制御するためには、重合に供するモノマー、コモノマー総量中の不純物、特に水分を20ppm 以下にするのが好ましく、特に好ましくは10ppm 以下である。
【0019】
上記の如きモノマー成分及びコモノマー成分からなるポリアセタール樹脂(A) を製造するにあたり、触媒としては一般にカチオン重合触媒が用いられる。具体的には、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の無機及び有機酸、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレート等の複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド等のアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等の1種又は2種以上が挙げられる。その中でも特に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物が好ましい。これらの触媒はそのままでも、また有機溶剤等で予め希釈して用いることもでき、その調製方法は特に限定されない。
【0020】
本発明で使用するポリアセタール樹脂(A) の製造方法は特に限定されるものではないが、一般的には液状化したトリオキサン(a) 、トリオキサンと共重合可能な環状エーテル基を1分子中に1個以上有し、共重合することで分岐又は架橋構造を形成しうる化合物(b) 及びトリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c) を、主としてカチオン重合触媒を用いて重合させ、固体粉塊状のポリマーを得る塊状重合により行う。重合装置は特に限定されるものではなく、公知の装置が使用され、バッチ式、連続式等、いずれの方法も可能である。また、重合温度は65〜 135℃に保つことが好ましい。
【0021】
重合後の触媒の失活は、重合反応後、重合機より排出される生成反応物、あるいは、重合機中の反応生成物に塩基性化合物或いはその水溶液等を加えて行う。重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物としては、アンモニア、或いは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のアミン類、或いは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物塩類、その他公知の触媒失活剤が用いられる。また、重合反応後、生成物にこれらの水溶液を速やかに加え、失活させることが好ましい。かかる重合方法及び失活方法の後、必要に応じて更に、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。更に、不安定末端部の分解除去または安定物質による不安定末端の封止等、必要により公知の方法に安定化処理を行い、必要な各種安定剤を配合する。ここで用いられる安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。
【0022】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記の如き分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A) に、オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする数平均分子量1000〜10000 のポリオキシメチレン重合体(B) を配合したことを特徴とするものである。
【0023】
配合されるポリオキシメチレン重合体(B) は、数平均分子量が1000未満でも10000 を超えても、ポリアセタール樹脂組成物の剛性向上に対して十分な効果を発現しない。より好ましくは、数平均分子量2000〜7000のポリオキシメチレン重合体(B) を配合する場合である。このように分子量が低く、その配合はポリアセタール樹脂の機械的物性に好ましくない影響を与えることが予想される重合体であるにもかかわらず、特定の分子量範囲に限って、かかる重合体の配合により剛性が向上することは、予想もできない驚くべきことであった。
【0024】
かかるポリオキシメチレン重合体(B) は、オキシメチレン基のみの繰り返し単位からなるホモポリマー、オキシメチレン基を主体とし他の構成単位を含むコポリマーの何れであっても良いが、熱安定性等の観点からコポリマーであることが好ましい。また、構成単位としてはオキシメチレン基(-CH2O-)を80 mol%以上有するものが好ましく、より好ましくは90 mol%以上有するものである。かかるコポリマーにおいて、オキシメチレン基以外の構成単位は特に限定されるものではないが、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等の炭素数2〜6のオキシアルキレン基であることが好ましい。
【0025】
このようなポリオキシメチレン重合体(B) の製造方法は特に限定されるものではなく、一般的に知られるポリアセタール樹脂の製造方法に準じて行われる。例えば、ポリオキシメチレン重合体(B) がコポリマーの場合、一般的には液状化したトリオキサン、環状エーテル化合物、分子量を調整する成分を、主としてカチオン重合触媒を用いて重合させ、固体粉塊状のポリマーを得る塊状重合により行う。環状エーテル化合物としては、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、ブチルエーテルホルマール等が挙げられる。分子量を調整する成分としては、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ち、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテル等のアルコキシ基を有する化合物が例示される。
【0026】
本発明においては、これら分子量調整剤の使用量を調整することにより、一般的にはその使用量を増やすことにより、分子量が低く且つ特定分子量範囲のポリオキシメチレン重合体を得ることができる。これにより得られるポリオキシメチレン重合体の総末端基量を200 〜2000mmol/kg であるのが好ましく、特に好ましくは総末端基量を300 〜2000mmol/kg に調整したものである。
【0027】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物において配合されるポリオキシメチレン重合体(B) は、分岐又は架橋構造を有するものでもよい。かかる分岐又は架橋構造の導入は、前記ポリアセタール樹脂(A) において分岐又は架橋構造を導入するための成分として記載した化合物(b) を用いて行うことができる。
【0028】
ポリオキシメチレン重合体(B) の製造条件、即ち製造装置、重合後の触媒の失活手法、不安定末端部の分解除去または安定物質による不安定末端の封止等は、ポリアセタール樹脂(A) の場合で述べた手法を用いることができる。
【0029】
本発明におけるポリオキシメチレン重合体(B) の配合量は、ポリアセタール樹脂(A) 100 重量部に対し1〜100 重量部であり、好ましくは5〜40重量部である。この配合量が過少でも過大でも、高剛性・高弾性率の樹脂組成物は得られない。
【0030】
更に、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的・効果を阻害しない限り、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは、有機高分子材料、無機または有機の繊維状、粉体状、板状の充填剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【0031】
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられている公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、押出機により練り込み押出してペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1または2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、評価は次の方法で行った。
〔曲げ弾性率〕
射出成形機を用いて試験片を成形し、ASTM法に準じて測定を行った。
〔末端基分析〕
物性評価に用いたポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールd2 に溶解し、 1H−NMR測定を行った。各末端に対応するピーク面積より定量し、総末端基量及びヘミホルマール末端基量を求めた。
〔メルトインデックス〕
メルトインデックス(MI)は、温度190 ℃、荷重2.06kgで測定した。
実施例1〜13
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、トリオキサン(a) 、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物(b) 、環状エーテル化合物(c) を表1に示す割合で加え、更に分子量調整剤としてメチラール、同時に触媒の三フッ化ホウ素をトリオキサンに対して0.005 重量%を重合機に連続的に供給しながら塊状重合を行った。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリアセタール共重合体を得た。
【0033】
次いで、この粗ポリアセタール共重合体 100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を4重量部、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を 0.3重量部添加し、2軸押出機にて 210℃で溶融混練し不安定部分を除去した。得られたポリアセタール共重合体は、ヘキサフルオロイソプロパノールd2 を溶媒とする 1H−NMR測定により、その共重合組成を確認した。
【0034】
一方、ポリオキシメチレン重合体(B) については、外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、トリオキサン、環状エーテル化合物、エポキシ基含有化合物及び分子量調整剤としてメチラールを表3に示す割合で加え、同時に触媒の三フッ化ホウ素をトリオキサンに対して0.005 重量%を重合機に連続的に供給しながら塊状重合を行った。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥により、ポリオキシメチレン重合体(B) を得た。
【0035】
得られたポリオキシメチレン重合体について、同様に共重合組成および末端基量を測定し、末端基量より数平均分子量を算出した。
【0036】
上記の方法で得たポリアセタール樹脂(A) 100 重量部に、更に安定剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.03重量部及びメラミン0.15重量部を添加し、上記の方法で得たポリオキシメチレン重合体(B) を表1に示す割合で配合し、2軸押出機にて210 ℃で溶融混練し、ペレット状のポリアセタール樹脂組成物を得た。前述の方法で物性を評価した結果を表1に示す。
比較例1〜9
表2に示すように、ポリオキシメチレン重合体(B) を配合しない場合、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物(b) を使用せずに調製されたポリアセタール樹脂(A) を配合した場合等について、実施例と同様にしてペレット状の組成物を調製し評価した。結果を表2に示す。
(b) 成分(一部のポリオキシメチレン重合体(B) のコモノマー成分としても使用した)
BGE:n−ブチルグリシジルエーテル
EHGE:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
BDGE:ブタンジオールジグリシジルエーテル
TMPTGE:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル
GTGE:グリセロールトリグリシジルエーテル
PETGE:ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル
(c) 成分
DO:1,3−ジオキソラン
EO:エチレンオキシド
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
Claims (9)
- (A) 分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂100 重量部に対して、(B) オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする数平均分子量1000〜10000 のポリオキシメチレン重合体1〜100 重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物であって、
ポリアセタール樹脂(A) が、
トリオキサン(a) 100 重量部、
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)0.003〜0.10重量部又はグリセロールトリグリシジルエーテル(GTGE)0.003〜0.09重量部(b) 及び
トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c) 0.1〜10重量部を共重合して得られるものである、ポリアセタール樹脂組成物。 - 環状エーテル化合物(c) の共重合割合がトリオキサン(a) 100 重量部に対して0.01〜15重量部である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 環状エーテル化合物(c) が、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂(A) の総末端基量が15〜150mmol/kgである請求項1〜3の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂(A) の総末端基量が20〜100mmol/kgである請求項1〜3の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂(A) のヘミホルマール末端基量が4mmol/kg 以下である請求項1〜5の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリオキシメチレン重合体(B) が、構成単位としてオキシメチレン基(-CH2O-)を80 mol%以上有するものである請求項1〜6の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリオキシメチレン重合体(B) が、オキシメチレン基(-CH2O-)の他に炭素数2〜6のオキシアルキレン基を有するものである請求項1〜7の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリオキシメチレン重合体(B) が、分岐又は架橋構造を有するものである請求項1〜8の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
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