JP4180211B2 - 分岐ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電安定性に優れた分岐ポリアセタール樹脂組成物に関する。更に詳しくは、押出・成形条件の変化においても安定した導電性を有するポリアセタール樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。しかし、ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。そのような要求特性として、導電安定性の一層の向上が要望されている。
【0003】
一般にポリアセタール樹脂をベースとした導電性材料は、カーボンブラック、カーボン繊維等の導電性カーボン系物質を配合して用いることは公知である。例えば、特公昭61−31736号公報、特開平6−212052号公報及び特公平7−2891号公報では、カーボンブラック、カーボン繊維等のカーボン系物質の配合等に関する開示がされている。しかしながら、導電性は押出機での組成物製造時の混練条件や成形機での混練条件、例えばシリンダー温度、スクリュー回転数等の高低によっては、カーボン系物質の分散状態等の相違により、成形品の体積抵抗値に高低を生ずる場合もあり、各条件を常に統一して成形することが再現良く安定した導電性能を得る上で重要であるが、このために充分注意を払うのは製造工程上極めて煩雑・非効率的である。従って、押出・成形条件がある程度変化しても極めて安定した導電性を有するポリアセタール樹脂を提供することは、品質安定という観点から極めて重要であり、産業界、特に電気・電子分野からの要望が大きい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の如き課題を解決し、導電安定性に優れたポリアセタール樹脂材料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、ポリアセタール樹脂の分子骨格或いは樹脂物性にまで踏み込んで詳細な検討を行った結果、目的達成に有効なポリマー骨格の変性とかかるポリマーへの有効な配合成分との組合せを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
即ち本発明は、オキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、下記一般式(I)で示される分岐単位を有する分岐ポリアセタール共重合体(A) 100重量部に、カーボンブラック及びカーボン繊維より選ばれる1種又は2種以上の導電性カーボン系物質(B)0.1 〜30重量部を配合してなる分岐ポリアセタール樹脂組成物である。
【0007】
【化5】
【0008】
(式中、m、nは各々0〜5の整数を表し、かつm+nは1〜5である。Rは分子量が40〜1000の1価の有機基を表す。)
このように、特定分岐単位の導入によって変性した分岐ポリアセタール共重合体に導電性カーボン系物質を配合することによって、ポリアセタール樹脂の導電安定性が顕著に改善されることは全く予期せぬ驚くべきことである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明において基体樹脂として用いる分岐ポリアセタール共重合体(A)は、オキシメチレン基(-CH2-O-)を主たるくり返し単位とし、下記一般式(I)で示される分岐単位を有するものであり、かかる分岐単位の存在は、本発明の目的を達成するための重要な要素の1つである。
【0010】
【化6】
【0011】
(m,nは各々0〜5の整数を表し、かつm+nは1〜5である。Rは分子量が40〜1000の1価の有機基を表す。)
一般式(I)で示される分岐単位において、分岐基であるRは分子量が40〜1000の1価の有機基である。Rの分子量が40未満では導電安定性向上は期待できず、分子量が1000を超えると結晶化度低下の問題がある。好ましくは、Rの分子量は50〜500 である。また、導電安定性向上と他の諸物性の維持の観点から、一般式(I)で示される分岐単位の割合は、オキシメチレン単位(-CH2O-) 100重量部に対して 0.001〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.01〜3重量部である。
【0012】
本発明において用いられる分岐ポリアセタール共重合体(A)は、その製造方法を特に限定されるものではないが、トリオキサン(a) 100重量部、単官能グリシジル化合物(b) 0.001〜10重量部及びトリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c)0〜20重量部を共重合して得られたものが好ましく、かかるモノマー成分からなる分岐ポリアセタール共重合体(A)は製造が容易で、得られた共重合体の性質が優れるという特徴を有する。ここで用いられるトリオキサン(a)とは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。重合に用いるトリオキサン(a)は、水、メタノール、蟻酸などの不純物を極力含まないものが好ましい。
【0013】
次に、単官能グリシジル化合物(b)とは、分子中にグリシジル基を1個有する有機化合物を総称したものであり、例えば、グリシドール、脂肪族アルコール又は芳香族アルコール或いはこれらの(ポリ)アルキレングリコール付加物とグリシドールとからなるグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸或いはこれらの(ポリ)アルキレングリコール付加物とグリシドールとからなるグリシジルエステルが代表例として挙げられる。かかる単官能グリシジル化合物(b)は、本発明において使用する分岐ポリアセタール共重合体(A)の分岐構成成分として用いられる。
【0014】
単官能グリシジル化合物(b)としては、前記一般式(II)、(III) 及び(IV)で示されるグリシジルエーテル化合物が好ましく、具体例としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、 sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、脂肪族アルコール又は芳香族アルコールの(ポリ)エチレングリコール付加物とグリシドールとからなるグリシジルエーテル等が挙げられる。また、グリシジルエステル化合物の具体例としては、グリシジルアセテート、グリシジルステアレート等が挙げられる。このような単官能グリシジル化合物の中で、好ましいのは、芳香環を有するものである。中でも、前記一般式(II)及び(III) であって、オルト位に置換基R1又はR3を有するものが好ましい。かかる置換基としては、炭素数4以上のものが好ましく、特に好ましくは芳香環を有するものである。具体例としては、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0015】
本発明で使用する分岐ポリアセタール共重合体(A)の製造にあたり、単官能グリシジル化合物(b)の共重合量は、(a)成分のトリオキサン 100重量部に対して 0.001〜10重量部であり、好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは 0.1〜5重量部である。(b)成分の共重合量がこれより過少では、導電安定性改善効果が得られず、逆に過大になると結晶性の低下による強度、剛性等の低下の問題、流動性低下による成形性の問題が生じるおそれがある。
【0016】
また、単官能グリシジル化合物(b)として、分子量が 100〜1000のものを用いるのが好ましい。単官能グリシジル化合物(b)の分子量が大き過ぎると、その共重合によって生じる分岐ポリアセタール共重合体(A)の分岐鎖が長くなり、樹脂の結晶性等を乱してその基本的性質である摺動特性に対しても好ましくない影響が生じるおそれがある。逆に(b)成分の分子量が小さ過ぎると、本発明の目的である導電安定性向上に対する効果が極めて小さなものとなる。
【0017】
本発明において用いられる分岐ポリアセタール共重合体(A)は、さらにトリオキサンと共重合可能な環状エーテル/ホルマール化合物(c)を共重合成分として加え、共重合したものが好ましい。かかる環状エーテル/ホルマール化合物(c)は、分岐ポリアセタール共重合体(A)を製造する際の重合反応を安定化させると共に、生成した分岐ポリアセタール共重合体(A)の熱安定性を高めるためには、極めて有効である。トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。中でも、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。本発明で使用する分岐ポリアセタール共重合体(A)において、環状エーテル/ホルマール化合物(c)の共重合量は、(a)成分のトリオキサン 100重量部に対して0〜20重量部であり、好ましくは0.05〜15重量部、特に好ましくは 0.1〜10重量部である。環状エーテル/ホルマール化合物(c)の共重合割合が過少では、共重合反応が不安定になると共に、生成する分岐ポリアセタール共重合体の熱安定性が劣るものとなり、逆に環状エーテル/ホルマール化合物(c)の共重合割合が過大になると、剛性、強度等の機械的物性が低下し不十分なものになる。
【0018】
本発明において使用する分岐ポリアセタール共重合体(A)は、基本的には上記のトリオキサン(a)、単官能グリシジル化合物(b−1)及び環状エーテル/ホルマール化合物(c)を、必要に応じて適量の分子量調節剤を添加して、カチオン重合触媒を用いて塊状重合を行う等の方法で得られる。
【0019】
分子量調整剤としては、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテル等のアルコキシ基を有する低分子量アセタール化合物、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エステル化合物などが例示される。その中でも、アルコキシ基を有する低分子量アセタール化合物が特に好ましい。また、これらの分子量調整剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、何ら限定されるものではない。
【0020】
また、カチオン重合触媒としては、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の無機及び有機酸、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレート等の複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド等のアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等が挙げられる。その中でも特に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物が好ましい。これらの触媒は有機溶剤等で予め希釈して用いることもできる。
【0021】
本発明で使用するポリアセタール共重合体(A)を製造するにあたり、重合装置は特に限定されるものではなく、公知の装置が使用され、バッチ式、連続式等、いずれの方法も可能である。また、重合温度は65〜 135℃に保つことが好ましい。重合後の失活は、重合反応後、重合機より排出される生成反応物、あるいは、重合機中の反応生成物に塩基性化合物、あるいは、その水溶液等を加えて行う。
【0022】
重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物としては、アンモニア、或いは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のアミン類、或いは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物塩類、その他公知の触媒失活剤が用いられる。また、重合反応後、生成物にこれらの水溶液を速やかに加え、失活させることが好ましい。かかる重合方法及び失活方法の後、必要に応じて更に、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。
【0023】
上記のようにして得られ、本発明で使用するポリアセタール共重合体(A)の重合度等については特に制約はなく、その使用目的や成形手段に応じた重合度等の調整が可能であるが、成形用に供する場合、温度 190℃、荷重2.06kgにおいて測定されるメルトインデックス(MI)が1〜 100g/10分であることが好ましく、特に好ましくは2〜90g/10分である。また、粘度を調整するために、ジグリシジル化合物等の架橋剤を少量共重合することもできる。
【0024】
なお、上記のポリアセタール共重合体(A)の製法、モノマー構成において、単官能グリシジル化合物(b)に代えて分岐形成可能な環状ホルマール化合物を用いることも可能であり、上記同様に、好ましいポリアセタール共重合体(A)が得られる。分岐形成可能な環状ホルマール化合物としては、4−メチル−1,3−ジオキソラン、4−エチル−1,3−ジオキソラン、4−イソプロピルジオキソラン、4−フェニル−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、上記の如き分岐ポリアセタール共重合体(A)に、カーボンブラック及びカーボン繊維より選ばれる1種又は2種以上の導電性カーボン系物質(B)を配合したことを特徴とする。
【0026】
上記導電性カーボン系物質とは、一般にポリアセタール樹脂に対する導電性の付与を目的として使用されるカーボンブラック及びカーボン繊維を総称する。本発明で使用するカーボンブラックは、一般に導電性カーボンブラックと称される市販のカーボンブラックで良く、その一例を示せば、ケッチェンブラックECX(ライオン社製)がある。カーボンブラックとしては、一般にストラクチャー構造が発達し、粒子径が小さく、細孔度が高く、表面積の大きなものが望ましい。
【0027】
また、本発明で使用するカーボン繊維としては、アクリル繊維、レーヨン繊維、リグニン繊維、石油系或いは石炭系ピッチ等の繊維を原料として焼成されたもので、炭素質、黒鉛質、耐炎質等の何れのタイプでも使用できる。その中でも、アクリル繊維、及びピッチを原料とするものが好ましい。また、該カーボン繊維は、特定量のポリウレタン等を併用して配合されたものでもよい。この場合、溶融押出等により組成物として配合しても有効であるが、好ましくは予めカーボン繊維の表面にポリウレタン等を添加付着させ、更にこれをバインダーとして収束させたものが望ましい。カーボン繊維の直径は4〜20μm 程度が好ましく、特に5〜15μm が好ましい。その一例を示せば、カーボンファイバーHTA−C6US(東邦レーヨン社製)がある。
【0028】
これらのカーボンブラック及びカーボン繊維より選ばれる導電性カーボン系物質(B)の使用量はその1種又は2種以上を併せて、分岐ポリアセタール共重合体(A)100 重量部に対して0.1 〜30重量部であることが好ましい。0.1 重量部よりも少ない量では導電性能が乏しく好ましくなく、また30重量部よりも多い場合は組成物の押出性や成形加工性が低下し好ましくない。
【0029】
本発明における、分岐ポリアセタール共重合体(A)とカーボンブラック及びカーボン繊維より選ばれる導電性カーボン系物質(B)とからなる樹脂組成物が優れた導電安定性を発現する機構については定かではないが、ポリアセタール共重合体に特定分岐構造を導入したことによる溶融時の分子の絡み合い効果、特定分岐構造による樹脂の結晶構造の乱れ・不均一性、特定分岐構造の非晶部への影響等が、カーボン系物質(B)の樹脂中での分散をコントロールするが故と推測される。これは、特定の分岐ポリアセタール共重合体(A)とカーボンブラック及びカーボン繊維より選ばれる導電性カーボン系物質(B)という選択的な組合せにより初めて生じる効果である。
【0030】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて選択される各種の安定剤を配合するのが好ましい。安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。更に、本発明の目的・効果を阻害しない限り、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、離型剤、界面活性剤、或いは、有機高分子材料、無機または有機の繊維状、粉体状、板状の充填剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【0031】
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられている公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、押出機により練り込み押出してペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1または2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の分岐ポリアセタール樹脂組成物は導電安定性に優れ、自動車部品や電気・電子機器等に好適に使用される。又、その他、各種機械部品等にも幅広く使用できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、評価は次の方法で行った。
〔導電安定性の評価〕
30mm2軸押出機で条件調整(後述)をしながら得られた各々のペレットを用い、体積抵抗率の安定性評価を行った。安定性の尺度は、各条件変化による体積抵抗率の変化比率R' (230 ℃、120rpm)/R(200 ℃、120rpm)、及びR''(200 ℃、180rpm)/R(200 ℃、120rpm)にて表した。これらの値が1に近いほど、体積抵抗率の安定性が高いことを示す。
【0034】
尚、体積抵抗率は、厚さ3mm、直径120 φの円板状の成形片を成形し、レジスティビティ・チャンバ(主電極:φ50、ガード電極:内径φ70/外径φ80、対向電極:φ103 )にセットし、これをテスター又は超高抵抗計にて抵抗値を測定することにより算出した。また、成形品は測定前に電極形状に合わせ、導電性ペースト(藤倉化成製ドータイトS−1)を塗布し、一昼夜空調処理(23℃、50%RH)を行った。
実施例1〜7
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、トリオキサン(a)、単官能グリシジル化合物(b)、環状エーテル/ホルマール化合物(c)を表1に示す割合で加え、更に分子量調節剤としてメチラールを連続的に供給し、触媒の三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートのジブチルエーテル溶液をトリオキサンに対して三フッ化ホウ素換算で0.005 重量%となる様に混合した均一混合物を連続的に添加供給し塊状重合を行った。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリアセタール共重合体を得た。
【0035】
次いで、この粗ポリアセタール共重合体 100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を4重量%、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を 0.3重量%添加し、2軸押出機にて 210℃で溶融混練し不安定部分を除去した。得られたポリアセタール共重合体は、ヘキサフルオロイソプロパノールd2 を溶媒とする 1H−NMR測定により、その構造及び共重合組成を確認した。
【0036】
上記の方法で得た分岐ポリアセタール共重合体100 重量部に、表1に示すカーボン系物質(B)を添加し、更に安定剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.03重量部及びメラミン0.15重量部を添加し、30mm2軸押出機にて、シリンダー温度を200 乃至230 ℃、スクリュー回転数を120 乃至180rpm、で条件調整をしながら、溶融混練し、各々ペレットを調製し、次いでこのペレットを用い、導電安定性を評価した。結果を表1に示す。
比較例1〜5
単官能グリシジル化合物(b)を使用せずに調製され分岐構造を持たないポリアセタール共重合体を基体樹脂とした場合、及びカーボン系物質(B)の配合が過少或いは過多の場合について、実施例と同様にしてペレット状の組成物を調製し評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
(b)成分
b1:フェニルグリシジルエーテル
b2:o−フェニルフェノールグリシジルエーテル
b3:ブチルグリシジルエーテル
(c)成分
c1:1,3−ジオキソラン
c2:エチレンオキシド
(B)成分
B1:ケッチェンブラックECX(ライオン社製)
B2:カーボンファイバーHTA−C6US(東邦レーヨン社製)
Claims (3)
- オキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、下記一般式(I)で示される分岐単位を有する分岐ポリアセタール共重合体(A)100重量部に、カーボンブラック及びカーボン繊維より選ばれる1種又は2種以上の導電性カーボン系物質(B)0.1〜30重量部を配合してなる分岐ポリアセタール樹脂組成物であって、
該分岐ポリアセタール共重合体(A)は、トリオキサン(a) 100 重量部、下記一般式( IV )で示されるグリシジルエーテル化合物から選ばれた単官能グリシジル化合物(b) 0.001 〜 10 重量部及びトリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c) 0.1 〜 20 重量部を共重合して得られたものである分岐ポリアセタール樹脂組成物。
- 単官能グリシジル化合物(b)が、 100 〜 1000 の分子量を有するグリシジルエーテル化合物である請求項1記載の分岐ポリアセタール樹脂組成物。
- トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(c)が、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール及び1,4−ブタンジオールホルマールから選ばれたものである請求項1又は2記載の分岐ポリアセタール樹脂組成物。
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