以下、実施形態に係るトノカバー装置20について説明する。図1は車両10に設けられたトノカバー装置20を示す斜視説明図であり、図2は同トノカバー装置20を示す側面説明図であり、図3は同トノカバー装置20の内部構成を示す側面説明図である。また、図4〜図6はバックドア14を閉じた状態から開いた状態にする際の変化を示す説明図であり、図4はバックドア14を完全に閉じた状態、図5はバックドア14を途中まで開いた状態、図6がバックドア14を完全に開いた状態をそれぞれ示している。
このトノカバー装置20は、バックドア14で開閉される荷室12を有する車両10に設けられる。すなわち、車両10の後方に、乗員室と連なる荷室12が設けられており、この荷室12の後方開口は、バックドア14により開閉可能とされる。本トノカバー装置20は、このような車両10の荷室12に組込まれる。
トノカバー装置20は、一対のレール部30と(図3参照)、一対のスライダ部60と、トノカバー部としてのトノボード部70と、トノボード駆動機構部40(図3参照)とを備えている。
このトノカバー装置20の基本的構成及び基本的動作について説明すると、一対のレール部30は、荷室12の両側壁部13に設けられており、上記一対のスライダ部60は一対のレール部30を移動可能に配設されている。なお、ここでは、レール部30は、側壁部13の一部であるピラー内に組込まれている。また、トノボード部70は、折畳み可能に構成されており、その前部が荷室12前方部分に支持されると共に、その後部が上記一対のスライダ部60に取付けられている。また、トノボード駆動機構部40は、上記レール部30に組込まれ、バックドア14の開閉に連動して上記一対のスライダ部60を移動させるように構成されている。
そして、バックドア14を完全に閉じた状態では、一対のスライダ部60が一対のレール部30の後端部に位置しており、トノボード部70が面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている(図1〜図4参照)。この状態で、バックドア14が開動作すると、トノボード駆動機構部40の駆動により、一対のスライダ部60が一対のレール部30の前方に向けて移動する(図5参照)。そして、バックドア14が完全に開いた状態になると、一対のスライダ部60が一対のレール部30の前端部に位置し、トノボード部70が折畳まれるようにして荷室12の上方を開放させた状態になる(図6参照)。また、この状態からバックドア14を閉じると、一対のスライダ部60が一対のレール部30の後方に移動し、バックドア14を完全に閉じると上記のようにトノボード部70が荷室の上方を覆った状態に復帰する。
以下、各部構成についてより具体的に説明する。
<トノボード部>
まず、トノボード部70について説明する。図7はトノボード部70を示す平面図であり、図8はトノボード部70を示す側面図であり、図9はトノボード部70の要部を示す断面図である。
図1〜図9に示すように、トノボード部70は、複数の板状部72a、72b、72c、72dと、少なくとも1つの屈曲部74とを有している。
複数の板状部72a、72b、72c、72dは、荷室12の上方を覆うことが可能な平板状部分を、車両10前後方向において複数に分割したような板状部材に形成されている。つまり、各板状部72a、72b、72c、72dは、その幅寸法が荷室12の幅寸法と略同じ或はそれよりも小さく、かつ、それぞれの車両10前後方向における寸法は荷室12の車両10前後方向の長さ寸法よりも小さい横長な板状部材に形成されている。このような板状部72a、72b、72c、72dは、樹脂板や木板、金属板等で構成される。ここでは、荷室12の上方を覆うことが可能な平板状部分を4つに分割している。より具体的には、当該平板状部分を、車両10前後方向において2分割し、その後方部分をさらに2分割し、当該後方部分における前方部分をさらに2分割することで、合計4つに分割し、その前側から後方に向けた各部分を、それぞれ板状部72a、72b、72c、72dとしている。なお、最も後方の板状部72dは、荷室12の形状にあわせて、後方に向けて順次幅狭になる板形状に形成されている。
なお、上記の分割態様は一例であり、当該例に限られない。各板状部72a、72b、72c、72dの車両前後方向における長さは上記例に限らず任意であるし、また、分割状とする数も、2つ又は3つに分割され、或は、5つ以上に分割された構成であってもよい。
また、屈曲部74は、上記各板状部72a、72b、72c、72d同士を屈曲可能に連結するように構成されている。ここでは、屈曲部74は、板状部72a、72b間と、板状部72b、72c間と、板状部72c、72d間とに合計3つ設けられている。
ここでは、屈曲部74は、次の構成により、各板状部72a、72b、72c、72d同士を屈曲可能に連結している。すなわち、板状部72a、72b、72c、72dの一方表面及び他方表面のそれぞれに対して、各板状部72a、72b、72c、72d同士を連結するように連続して、布部材73が密着状に配設される。また、布部材73が配設された状態で、各板状部72a、72b、72c、72d間には隙間が設けられており、当該隙間に樹脂や金属等で形成された細長板状部材74aが配設される。そして、当該細長板状部材74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間で、一対の布部材73同士が縫合等されて、線状に相互接合される。これにより、各板状部72a、72b、72c、72d間に、各板状部72a、72b、72c、72d間の布部材73部分及び細長板状部材74aと線状接合部分73aとで構成される屈曲部74が構成される(図9参照)。このような屈曲部74は、細長板状部材74aを挟んだ2箇所で屈曲できるため、各板状部72a、72b、72c、72dの厚みによる影響を抑制して、180゜に近い角度に屈曲させることができるという利点がある。もっとも、屈曲部74自体は、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲できる構成であればよく、その他種々のヒンジ構造等を含む屈曲可能な構成を採用することができる。
また、トノボード部70の前部、即ち、もっとも前方の板状部72aにトノボード支持軸部71が設けられている。より具体的には、板状部72aの下側面であって車両前後方向における前半部の両側部に一対の軸支部71aが設けられると共に、当該一対の軸支部71aに棒状の軸部71bが支持されている。この軸部71bの両端部は、板状部72aの両側より突出しており、荷室12の両側壁部13に設けられた軸受部13aに回転可能に軸支されるようになっている(図2参照)。そして、軸部71bの両端部を軸受部13aで支持することによって、トノボード部70の前部が荷室12の車両10前方部分で回転可能に支持されている。
また、荷室12の両側壁部13であって軸受部13aよりも後方部分には、トノボード部70の両側部を受けるトノボード受部13bが設けられている(図2参照)。そして、トノボード部70のうちトノボード支持軸部71よりも後方部分の両側部が、トノボード受部13bに載置状に支持されるようになっている。そして、トノボード部70は、軸部71b周りに、その後方部分を上方に持上げるようにして回転可能とされている。
また、トノボード部70の後部、ここでは、最も後方の板状部72dの後端部には、その両側外方向に突出する連結支持部76が設けられている。ここでは、連結支持部76は、後述するシート巻取部79の両端部より外方に突出して設けられている。そして、この連結支持部76が、スライダ部60に連結取付されている。
そして、一対のスライダ部60が一対のレール部30に沿って車両後方に移動することで、トノボード支持軸部71の後方に連結支持部76が位置する状態では、トノボード部70は、略水平姿勢で面一状に展開する。より具体的には、トノボード部70は、その両側部が上記トノボード受部13bで載置状に支持されつつ、バックシートの背もたれ部分の上端部から後方に向けて延びる姿勢で面一状に展開して、荷室12の上方を覆う(図1〜図4参照)。
また、一対のスライダ部60が一対のレール部30に沿って車両前方に移動することで、トノボード支持軸部71の斜め上後方に連結支持部76が位置する状態では、トノボード部70は、その後方部分をその前方部分上に折畳むようにして荷室12の上方を開放させる。より具体的には、最も前方の板状部72aに対してその後方の板状部72bを上方に持上げるように屈曲させると共に、その後方の板状部72c、72dを重ねるように折畳んで、前方の板状部72a、72b上に配設するようにして、荷室12の上方、特に、荷室12の上方後方部分を開放させるようにしている。
ここで、トノボード部70の後方部分を前方部分上に折畳むようにする場合には、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲部74で180゜で折曲げて完全に密着するように重ねる態様だけでなく、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲部74で180゜よりも小さい角度で折曲げたような場合をも含む。例えば、略Z字状に折曲げられたような形態をも含む。このような折曲げ形態は、板状部72a、72b、72c、72dの分割態様、形状、大きさ等によって適宜決定され得る。要するに、トノボード部70の後方部分を前方部分上に折畳むようにする場合には、板状部72a、72b、72c、72dが屈曲部74で屈曲されていずれかの後方部分がそれよりも前方にある部分よりも上方に位置し、荷室12の上方が部分的(特に、後方部分)に開放されるようになる全ての折畳み態様が含まれる。
なお、本実施形態では、トノカバー部として、複数の板状、72b、72c、72dを屈曲自在に連結した上記トノボード部70を用いているが、必ずしもその必要はない。例えば、荷室12の車両前方部分に設けられたシート巻取部からトノシートが引出し及び巻取り自在とされると共に、そのトノシートの先端部が上記一対のスライダ部60に連結された構成とされていてもよい。この場合、一対のスライダ部60が車両10の後方に移動することで、トノシートが引出されて荷室12上方を覆い、一対のスライダ部60が車両前方に移動することで、トノシートが巻取られて荷室12上方を開放させることになる。要するに、トノカバー部としては、板状又はシート状に拘らず、前部が荷室12の車両前方部分に支持されると共に、後部が一対のスライダ部60に取付けられ、当該一対のスライダ部60の車両10前後方向の移動に伴い、荷室12上方を覆い或は荷室12上方を開放させることができる種々の構成を採用することができる。
また、ここでは、上記トノボード部70の後端部には、後部トノカバー部77が設けられている。この後部トノカバー部77は、シート部材78と、当該シート部材78を引出し及び巻取可能なシート巻取部79とを備えている。シート部材78の先端部は、バックドア14に着脱可能に取付けられる。そして、バックドア14が閉じられた状態では、上記トノボード部70の後端部とバックドア14との間の空間を覆っている(図1〜図4参照)。この状態からバックドア14が開かれることで、シート部材78がシート巻取部79から引出され、トノボード部70の後端部とバックドア14との間に引張られた状態で配設される(図6参照)。この状態からバックドア14を閉じると、シート部材78がシート巻取部79で巻取られ、トノボード部70の後端部とバックドア14との間の空間を覆った状態に復帰する。
この後部トノカバー部77は必ずしも必要ではなく省略されていてもよい。
<レール部、トノボード駆動機構部及びスライダ部>
次に、レール部30、トノボード駆動機構部40及びスライダ部60について説明する。図10はレール部30、トノボード駆動機構部40及びスライダ部60を示す斜視図であり、図11は図10のXI−XI線断面図、図12は図10のXII−XII線断面図、図13は図10のXIII−XIII線断面図、図14はスライダ部60を示す説明図、図15及び図16はスライダ部60の動作を示す説明図、図17はトノボード駆動機構部40及びスライダ部60部分を示す分解斜視図、図18はトノボード駆動機構部40部分を示す分解斜視図である。図19〜図21はレール部30に沿ってスライダ部60が移動する状態を示す説明図であり、図19はスライダ部60がレール部30の後端部に位置する状態、図20はスライダ部60がレール部30の中間部に位置する状態、図21はスライダ部60がレール部30の前端部に位置する状態をそれぞれ示している。
図2及び図3、図10〜図13、図19〜図21に示すように、一対のレール部30は、両端が開口すると共に一側壁部に長尺状の開口32aが形成された略角筒状のレール本体部32を、それぞれ有している。そして、上記スライダ部60のスライダ移動体62が当該レール本体部32内をその長手方向に沿って往復移動可能に設けられている。
また、レール本体部32には、適宜ブラケット34がネジ止等で取付けられており、当該ブラケット34を介して、本レール部30が荷室12の側壁部13に取付けられる。
また、レール本体部32の両端部には、後述するプーリー体48を収納するプーリー収容部38a、38bが取付けられており、当該プーリー体48はプーリー収容部38a、38b内に収容支持されることによって、レール本体部32の両端部で回転自在に支持される。
このレール部30は、車両10後方から車両前方に向けて上向きに傾斜する姿勢で、側壁部13に取付けられている。より具体的には、レール部30のレール本体部32の一端部を、上記のように面一状に展開させたトノボード部70の後端部の位置に配設すると共に、レール本体部32の他端部を、レール本体部32の一端部から車両10の斜め上前方に配設した斜め姿勢で、レール部30が側壁部13に取付けられている(図3参照)。
なお、レール部30は、必ずしも上記斜め姿勢で取付けられている必要はなく、例えば、車両10の前後方向に沿って設けられていてもよい。つまり、レール部30に沿ってスライダ部60が移動することで、トノボード部70が展開及び折畳まれればよいのであるから、レール部30は、車両10前後方向成分を有する姿勢で荷室12の両側壁部13に配設されていればよい。
また、一対のスライダ部60は、図10、図13〜図17、図19〜図21に示すように、一対のレール部30を移動可能に構成されている。より具体的には、スライダ部60は、上記レール本体部32内を移動可能なスライダ移動体62と、上記連結支持部76の端部を支持可能な可動支持部68とを有している(図15及び図16では可動支持部68を省略しその取付用の片だけ図示している)。
スライダ移動体62は、後述する第2ワイヤ45に連結されレール本体部32内を摺接移動可能なホルダ部63と、前記ホルダ部63にレール部30の長手方向に沿って相対移動可能に支持された内部移動体64と、内部移動体64をレール部30の長手方向に沿った方向においてホルダ部63に対する所定の初期位置に向けて付勢するランナ付勢部としてのコイルバネ65とを有している。
ホルダ部63は、中間支持部63aを介して間隔をあけて支持された一対の支持端部63bと、支持端部63b間に設けられた棒状の内部スライダ支持部63cとを有している。このホルダ部63は、レール本体部32内で移動自在とされると共に、レール本体部32の両端部で当該両端部に設けられたプーリー収容部38a、38bに当接してその外端方向への移動が規制されている。つまり、このホルダ部63自体は、レール本体部32に沿って両端のプーリー収容部38a、38bに当接するまでが移動可能範囲となっている。
また、上記内部スライダ支持部63cが内部移動体64に形成された孔部に挿通されることで、内部移動体64が支持端部63b間で往復移動可能に支持されている。
また、内部スライダ支持部63cのうち内部スライダ支持部63cが挿通される孔部の両端部にコイルバネ65を挿入可能なコイルバネ挿入孔部が形成されている。そして、コイルバネ65が内部スライダ支持部63cに外嵌めされ、当該コイルバネ65が一端部を上記コイルバネ挿入孔部に挿入した状態で車両10前方側の支持端部63bと内部移動体64との間に介在している。このコイルバネ65は、内部移動体64を車両10後側の支持端部63bに向けて付勢している。つまり、内部移動体64が車両10後側の支持端部63bに当接した位置が、ホルダ部63に対する内部移動体64の初期位置である(図14及び図15参照)。これにより、内部移動体64をレール部30に沿った一定位置に配設した状態で、前記コイルバネ65を縮小変形させつつ、ホルダ部63をレール本体部32に沿ってさらに後方側に移動させることができるようになっている(図16参照)。
可動支持部68は、内部移動体64と一体化されており、当該内部移動体64と共にレール部30の長手方向に沿って移動可能に構成されている。可動支持部68と内部移動体64とが一体化された構成により、ホルダ部63にレール部30の長手方向に沿って移動可能に支持されたランナRが構成されている。また、可動支持部68は、上記開口32a及びピラーに形成された開口を通じて荷室12内に突出すると共に、当該可動支持部68には、連結支持部76の端部を嵌め込むようにして支持可能な凹部68aが形成されている。そして、荷室12内で、当該連結支持部76が凹部68aに回転可能に支持されている。
この可動支持部68及び内部移動体64は、レール本体部32のうち車両10後方側に設けられた規制片34aによって、ホルダ部63がレール本体部32のうち車両10の最後方位置に達するよりも手前で当該規制片34aに当接して停止するように位置規制されている。つまり、規制片34aは、レール部30のうち車両10の後方側端部で、ランナRに当接してその移動範囲を規制するストッパとして機能している。そして、スライダ部60がレール部30に沿って車両10方向に移動する際、可動支持部68及び内部移動体64が規制片34aによって位置規制された後、ホルダ部63がさらに車両10後方に移動できるようになっている。
また、上記内部移動体64のうちホルダ部63の内面を向く部分に、板バネ収容凹部64aが形成されており、この板バネ収容凹部64a内に、ランナ摺動付勢部としての板バネ64sが収容配置されている。板バネ64sは、細長板状のバネ片の略中央部を略U字状に曲げた形状とされており、その略中央部の凸状湾曲部をホルダ部63の内面に向けた姿勢で板バネ収容凹部64a内に収容されている。そして、当該板バネ64sの凸状湾曲部の外面をホルダ部63の内面に所定の弾性力で押付けることで、ランナRの一部である内部移動体64をレール部30の一部であるレール本体部32の内面に向けて付勢している。これにより、レール部30におけるスライダ部60のがたつきが抑制されると共に、レール本体部32内において対向する内面間距離が変動してもスライダ部60がレール部30に安定して摺動するようになっている。
トノボード駆動機構部40は、第1巻胴部43と、第2巻胴部44と、第2ワイヤ45と、ワイヤ巻回付勢部としての渦巻ばね50とを有している。
上記第1巻胴部43と、第2巻胴部44と、第2ワイヤ45とは、バックドア14の開動作を受けてスライダ部60を車両前方に移動させる伝達機構として動作可能に構成されている。
すなわち、第1巻胴部43及び第2巻胴部44とは、同軸上で一体回転可能に連結されており、レール部30の長手方向中間部で、巻胴部収容ハウジング46を介して回転可能に支持されている。
第1巻胴部43は、略円盤状に形成されており、第1ワイヤ54を巻回可能に構成されている。ここで、第1ワイヤ54は、巻回可能な線状部材であり、その一端部はバックドア14に連結されるようになっている。バックドア14を開くと当該第1ワイヤ54の一端部が荷室12の開口外方に向けて引張られ、バックドア14を閉じると第1ワイヤ54に余剰長が生じるようになっている。また、第1ワイヤ54の他端部は第1巻胴部43に連結されており、バックドア14を閉じることによって生じる第1ワイヤ54の余剰長部分が第1巻胴部43に巻回可能に構成されている。なお、ここでは、第1ワイヤ54は、荷室12の側壁部13の一部であるピラー内を通って配設されている。
第2巻胴部44は、第1巻胴部43と連動して回転可能に構成されている。ここでは、第1巻胴部43は、第2巻胴部44と同軸上に一体連結されることで、当該第2巻胴部44と一体回転可能に構成されているが、その他、別々に回転可能に支持され、ギヤや無端環状ベルト等を介して連動回転可能とされた構成であってもよい。
第2ワイヤ45は、ここでは2本用いられており、それぞれレール部30の両端側に回転自在に支持されたプーリー体48に巻掛けられるようにして連結されている。また、それぞれの第2ワイヤ45の一端部は、レール本体部32の側方を通ってその長手方向中間部で上記第2巻胴部44に巻付けられると共に、それぞれの他端部がレール本体部32内を通って上記スライダ部60の一対の支持端部63bにそれぞれ連結固定されている。そして、上記第2巻胴部44の回転に連動して、第2ワイヤ45がレール部30周りを回転するように動き、これに伴ってスライダ部60を引張るようにしてレール部30に沿って移動させる。なお、このような構成は、第2ワイヤ45として、1本のワイヤを用いることによっても実現できる。
なお、上記プーリー体48を収容する一方のプーリー収容部38aには、2つのプーリー体48を離反方向に付勢するプーリー付勢部としてのコイルバネSが組込まれている。すなわち、図19〜図21に示すように、当該プーリー収容部38aは、レール本体部32の一端部に固定されるプーリー取付部38pと、プーリー体48を回転自在に支持すると共に該プーリー取付部38pに対してレール本体部32の長手方向に沿って移動自在に取付けられたプーリー支持部38qと、プーリー支持部38qをプーリー取付部38pに対して離反方法に付勢するコイルバネSとを備えている。そして、このコイルバネSにより、2つのプーリー体48が離反方向に付勢されている。
これにより、コイルバネSの付勢力に抗して2つのプーリー体48を近接移動させることで、第2ワイヤ45を容易にプーリー体48に巻掛けることができる。また、第2ワイヤ45をプーリー体48に巻掛けた後は、コイルバネSの付勢力により2つのプーリー体48を離反方向に付勢することで、プーリー体48や第2ワイヤ45の誤差等を吸収して第2ワイヤ45を展張状態に引張って、第2ワイヤ45と第2巻胴部44との間での滑りをなくして伝達効率を向上できるようにしている。
また、渦巻ばね50は、バックドア14の開動作を受けて第1ワイヤ54が第1巻胴部43から引出されて当該第1巻胴部43が回転することで、第1巻胴部43を、第1ワイヤ54を巻取る方向及びスライダ部60をレール部30の後方に付勢する方向への付勢力を蓄えるように構成されている。ここでは、渦巻ばね50の内周端部が第1巻胴部43の中心軸部に固定されると共に、渦巻ばね50の外周端部が巻胴部収容ハウジング46に固定されている。そして、第1ワイヤ54が引出されるように第1巻胴部43が回転すると、これに連動してスライダ部60を車両10前方に移動させつつ、渦巻ばね50が縮径するように弾性変形し、反対方向への回転力、即ち、スライダ部60を車両後方に移動させる付勢力を蓄える。そして、バックドア14が閉じられると、当該蓄えられた力を開放して、第1巻胴部43を反対方向に回転させて第1ワイヤ54を巻取ると共に、これに連動して第2巻胴部44を同方向に回転させてスライダ部60を車両10後方に移動させる。
なお、上記第1巻胴部43の最外周部とこれを囲む巻胴部収容ハウジング46の内周面との隙間は、第1ワイヤ54の径の1/2以下に設定されている。また、第2巻胴部44の最外周部とこれを囲む巻胴部収容ハウジング46の内周面との隙間は、第2ワイヤ45の径の1/2以下に設定されている。これにより、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ45が第1巻胴部43や第2巻胴部44に巻回される際等に当該第1巻胴部43や第2巻胴部44から外れることを防止している。
なお、上記渦巻ばね50は、バックドア14が閉じられた状態、即ち、スライダ部60が車両後方に移動してトノボード部70が面一状に展開した状態でも、縮径するように弾性変形しており、第1巻胴部43を、第1ワイヤ54を巻取る方向に付勢すると共に、第2巻胴部44を、スライダ部60をレール部30の後方に向けて移動させる方向に付勢している。
かかるトノボード駆動機構部40は、バックドア14の開動作により第1ワイヤ54が引出されることで、第1巻胴部43及び第2巻胴部44を回転させて、スライダ部60を車両10前方に移動させる。また、バックドア14の閉動作により渦巻ばね50の付勢力により、第1巻胴部43及び第2巻胴部44を上記とは逆方向に回転させて、第1ワイヤ54を巻取ると共にスライダ部60を車両10後方に移動させる。
なお、スライダ部60がレール部30に沿って後方に移動する際には、当該スライダ部60には、スライダ部60自体の荷重やトノボード部70の荷重等も作用する。このため、渦巻ばね50による付勢力は、それらの荷重をも考慮して、トノボード部70を展開できる程度の付勢力に設定される。それらの荷重を考慮すると、渦巻ばね50に要求される付勢力はそれほど大きくする必要はない。
なお、上記第1ワイヤ54の一端部は、ワイヤ固定部55を介してバックドア14に連結固定されている。
ワイヤ固定部55は、細長形状のハウジング55aと、ワイヤ端固定具55cと、付勢部材としてのコイルバネ55eとを備えており、バックドア14に取付固定されたドア側固定具55bを介してバックドア14に連結固定される(図18参照)。上記細長形状のハウジング55aと、ワイヤ端固定具55cと、コイルバネ55eとは、ワイヤ繰出部として機能する。
ワイヤ端固定具55cは、棒状部分の一端部に棒状部分よりも太径の頭部が設けられた構成とされ、その他端部に第1ワイヤ54の一端部が連結固定されている。また、ワイヤ端固定具55cの棒状部分にコイルバネ55eが外嵌めされている。また、ハウジング55aは、中空筺状に形成され、その内部に、ワイヤ端固定具55cが移動可能、かつ、コイルバネ55eが伸縮可能に配設されている。そして、第1ワイヤ54を引張ると、コイルバネ55eが縮んで、その縮んだ分だけ第1ワイヤ54がワイヤ固定部55から引出される。また、第1ワイヤ54を引張る力を解除すると、コイルバネ55eが伸びて、その伸びた分だけ第1ワイヤ54がワイヤ固定部55内に引戻されるようになっている。また、上記ドア側固定具55bは、バックドア14にネジ止等で取付固定可能に構成されており、本ワイヤ固定部55は、ハウジング55aの一端部をドア側固定具55bに係止することで、当該ドア側固定具55bを介してバックドア14に連結されている。
そして、バックドア14の実際の開角度(バックドア14が開かれる角度の上限、本明細書において以下同様)に応じて、本ワイヤ固定部55から第1ワイヤ54を繰出せるようになっている。これについては、後で詳述する。
なお、第1ワイヤ54を繰出し及び引戻し可能にする構成は上記例に限られない。例えば、コイルバネのバックドア14側端部がハウジング55aに連結され、コイルバネの他端が第1ワイヤ54に連結され、当該コイルバネが伸びることによって第1ワイヤ54を繰出し、当該コイルバネが縮むことによって第1ワイヤ54を引戻す構成であってもよい。
<全体動作>
以上のように構成されたトノカバー装置20の全体動作について説明する。まず、第1ワイヤ54の過不足が無いと想定して、基本的な動作について説明する。
図22はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに30゜回転して開いた状態を示す斜視図であり、図23は同状態を示す側面図であり、図24はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに60゜回転して開いた状態を示す斜視図であり、図25は同状態を示す側面図であり、図26はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに90゜回転して完全に開いた状態を示す斜視図であり、図27は同状態を示す側面図である。
まず、バックドア14が閉じた状態では、図1〜図4、図19に示すように、スライダ部60は、レール部30の後端位置にあり、トノボード部70は面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている。また、トノカバー部77もトノボード部70の後方に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている。また、第1ワイヤ54は、第1巻胴部43に巻回された状態となっている。さらに、この初期状態でも、渦巻ばね50の初期付勢力によって、スライダ部60のホルダ部63は、コイルバネ65の付勢力に抗してレール部30の後方側に付勢されており、内部移動体64は、一対の支持端部63bの略中間部に位置している(図19参照)。この初期状態では、スライダ部60は後方に付勢されている。この付勢力により、スライダ部60及びトノボード部70のがたつきが抑制されている。なお、この状態において、内部移動体64は初期位置に位置するように設定されていてもよい。
この状態で、利用者の操作等によってバックドア14が開動作すると、図22及び図23に示すように、第1ワイヤ54が第1巻胴部43から引出され、当該引出しに伴い第1巻胴部43及び第2巻胴部44が回転する。これにより、第2ワイヤ45が一対のプーリー体48周りに回転し、スライダ部60がレール部30に沿って車両10前方側に移動する。これにより、スライダ部60及び当該スライダ部60に連結支持されたトノボード部70の後端部及びトノカバー部77のシート巻取部79が上記初期位置より上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード部70は、後方の板状部72b、72c、72d間の屈曲部74で屈曲される。この際、トノボード部70の後端部は、上方に持上げられつつ前方に移動するので、比較的小さい力でかつ円滑に、トノボード部70の後方部分をその前方部分上に配設するように、当該トノボード部70を屈曲させることができる。また、トノカバー部77のシート部材78における第2カバー部78bがシート巻取部79から徐々に引き出される。
さらに、大きくバックドア14が開動作すると、図24及び図25に示すように、第1ワイヤ54がさらに大きく引出され、スライダ部60がレール部30に沿ってさらに車両10前方側に移動する。これにより、トノボード部70の後端部及びトノカバー部77のシート巻取部79がさらに上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード部70は、後方の板状部72b、72c、72d間の屈曲部74でさらに大きく屈曲され、略Z字状に折畳まれるようになる。また、トノカバー部77の第2カバー部78bはシート巻取部79からさらに引き出される。
なお、図22〜図25に示すようにスライダ部60がレール部30の長手方向中間部に移動した状態では、図20に示すように、規制片34aによる可動支持部68及び内部移動体64の位置規制が解除されるので、内部移動体64は、コイルバネ65の付勢力によって、後方の支持端部63b側に付勢された状態となる。
そして、バックドア14が完全に開くと、図26及び図27に示すように、第1ワイヤ54がさらに大きく引出され、スライダ部60がレール部30に沿って移動し、レール部30の車両10前端位置に移動する。これにより、トノボード部70の後端部及びトノカバー部77のシート巻取部79がさらに上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード部70は、上記状態から、前方の板状部72aとそれよりも後方の板状部72b間の屈曲部74でも屈曲され、トノボード部70は、その後方部分をその前方部分上に折畳むようにして荷室12の上方、特に、上方後部を開放させる。また、トノカバー部77はシート巻取部79からより一層引き出される。
これにより、利用者は、荷室12の上方後方から荷室12内にアクセスして、当該荷室12内に荷物を出し入れできるようになる。
なお、この状態で、トノボード部70前部のトノボード支持軸部71周りに回転させるようにして、トノボード部70の後方部分を持上げるようにすることができる。これにより、荷室12の上方をより大きく開口させることができ、当該荷室12に対してより円滑に荷物の出し入れを行えるようになっている。
また、この状態では、トノボード部70の後端部は、一対のレール部30の上端部まで上がるだけである。トノボード部70は複数箇所で屈曲されているから、その最上端部は、従来のようにトノボードを二つ折りした場合よりも十分に低い。従って、トノボード部70の最上端部である後端部と荷室12の天井面との間に十分な空間を設けることができる。従って、上記シート部材78の先端部をバックドア14から取り外せば、トノボード部70と荷室12の天井面との間の空間を利用して、リヤシートと荷室12の開口との間で荷物の受渡しを容易に行うことができる。
そして、上記状態から、バックドア14を閉じると、渦巻ばね50に蓄力された力が解放され、渦巻ばね50の付勢力により第1巻胴部43及び第2巻胴部44が回転する。そして、第1巻胴部43の回転により第1ワイヤ54が巻回される。また、第2巻胴部44の回転により、第2ワイヤ45が一対のプーリー体48周りを周回状に移動し、スライダ部60がレール部30に沿って車両10後方側に移動する。これにより、スライダ部60及び当該スライダ部60に連結支持されたトノボード部70の後端部及びトノカバー部77のシート巻取部79が下降しつつ後方に移動する。そして、スライダ部60がレール部30の後端位置に達すると、トノボード部70は面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態に上記初期状態に復帰する。
次に、製造上の部品誤差或は組付上の誤差等が原因で、バックドア14の開角度にずれが生じた場合について説明する。ここでは、バックドア14の開角度については、設計上の開角度に対して±5゜程度の誤差が生じ得るとする。
バックドア14が設計上の開角度よりも+5゜大きく開く場合を考える。この場合、バックドア14が完全に開かれた状態で必要とされる第1ワイヤ54の引出し長は、必要と考えられた第1ワイヤ54の引出し長よりも大きくなる。このため、図28に示すように、スライダ部60がレール本体部32の前端側で停止した状態で、第1巻胴部43からの第1ワイヤ54の引出しが停止され、バックドア14の開動作が抑制され、バックドア14を完全に開くことができないといった事態が生じ得る。
逆に、バックドア14が設計上の開角度よりも−5゜小さい場合を考える。この場合、上記とは逆に、バックドア14を完全に開いた状態で必要とされる第1ワイヤ54の引出し長は、必要と考えられた第1ワイヤ54の引出し長よりも小さくなる。このため、バックドア14を完全に開いた状態で、第1ワイヤ54が余ってしまい弛みを生じてしまうといった事態が生じうる。
ちなみに、第1ワイヤ54の誤差等が原因で、バックドア14を完全に閉じた状態で第1巻胴部43から引出されたままの状態で残る第1ワイヤ54の引出し長が、バックドア14を完全に閉じた状態で必要と考えられていた第1ワイヤ54の引出し長よりも大きくなってしまうこともあり得る。つまり、バックドア14を完全に閉じた状態でも第1ワイヤ54を十分に巻取ることができず、余剰長を余したままになってしまう。この場合、図29に示すように、バックドア14を完全に閉じた状態でも、スライダ部60がレール本体部32の長手方向中間部で停止してしまい、トノボード部70を完全に展開させることができなくなってしまうといった事態が生じうる。この場合、渦巻ばね50に対して初期付勢力を付与しておけば、トノボード部70を完全に展開させることができる。しかしながら、この場合でも、トノボード部70を完全に展開した後、第1ワイヤ54にさらに余長が生じていた場合には当該余長を巻取ることができないという事態が生じ得る。
以下では、上記の各場合に生じ得る第1ワイヤ54の過不足を解消する動作について説明する。
図30は、トノボード部70(可動支持部68及び内部移動体64を有するランナR)の作動域と、ホルダ部63の実作動域と、ワイヤ固定部55からの第1ワイヤ54の引出し量との関係を概念的に示す説明図である。なお、説明を簡単にするため、製造誤差及び組付け誤差等が無い場合には、バックドア14が閉じた状態で内部移動体64は初期位置に位置するように設定されていると考える。
図30(a)は製造誤差及び組付誤差が無い場合を示している。前提として、トノボード部70の作動域は、可動支持部68及び内部移動体64を有するランナRの作動域と一致しており、つまり、トノボード部70は、レール本体部32の前方ではホルダ部63がプーリー収容部38bに当接するまで移動でき、レール本体部32の後方では可動支持部68及び内部移動体64を有するランナRが規制片34aに当接するまで移動できる。また、ホルダ部63の作動可能位置は、レール部30の後方で上記トノボード部70の作動域よりも大きく、つまり、レール本体部32の前方及び後方で当該ホルダ部63がプーリー収容部38a、38bに当接するまでの範囲で規定される。なお、ホルダ部63の作動可能位置は、その他レール本体部32に設けた突起部分又はその他別途設けた位置規制部材によって規定されていてもよい。
このように、製造誤差及び組付誤差が無い場合(バックドア14の開角度が設計上の開角度に対してずれが無い場合)において、ワイヤ固定部55は次のように設定されている。すなわち、ワイヤ端固定具55cは、コイルバネ55eを適宜長収縮させた状態にすることで、ハウジング55a内における移動範囲の中間(より好ましくは移動範囲の略中央)に位置するように設定されている。かかる設定は、第1ワイヤ54の長さ調節等によって行われている。
また、同様に製造誤差及び組付け誤差が無い場合、ホルダ部63の実作動域はトノボード部70の作動域と略一致する。つまり、レール本体部32の前方では、トノボード部70が所定の状態まで折畳まれるようにランナRが前方に移動して停止した状態で、バックドア14が丁度完全に開いた状態となる。また、レール本体部32の後方では、トノボード部70が完全に展開されるようにランナRが後方に移動して停止した状態で、バックドア14が丁度完全に閉じ、また、第1ワイヤ54が弛み無く巻取られた状態であるとする。
図30(b)はバックドア14の開角度が設計上の開角度よりも+5゜大きい場合を示している。この場合、レール本体部32の前方において、トノボード部70が所定の状態まで折畳まれるようにランナRが前方に移動して停止した状態で、バックドア14が完全に開く前の状態となる。この場合、ワイヤ固定部55は、バックドア14の開角度が設計上の開角度に対してずれが無い場合と比較して、第1ワイヤ54をさらに繰出し長L1b繰出すことができる。これにより、ランナRを停止させた状態のままで(トノボード部70の作動域前端に達した状態のままで)、さらにバックドア14を大きく開くことができ、当該バックドア14を完全に開くことができる。つまり、バックドア14の実際の開閉範囲が設計上の開閉範囲よりも大きい場合には、コイルバネ55eをより大きく収縮させることで第1ワイヤ54を大きく繰出して不足長分を補うことができる。これにより、第1ワイヤ54自体及び第1ワイヤ54の連結先となる部分の破壊等を有効に防止できる。
図30(c)はバックドア14の開角度が設計上の開角度よりも−5゜小さい場合を示している。この場合には、バックドア14の開き角度が設計上の開き角度よりも小さいので、第1ワイヤ54が余ることになる。そこで、この場合には、コイルバネ55eを大きく伸びた状態のままにすることで、第1ワイヤ54を引込んだ状態(バックドア14の開角度が設計上の開角度である場合よりも、第1ワイヤ54を、長さL1a分引込んだ状態)として弛みとなる余剰長分を解消する。これにより、第1ワイヤ54の弛みを有効に防止できる。
つまり、バックドア14が最も大きく開かれた状態でない場合、ワイヤ固定部55は、コイルバネ55eが伸びて、第1ワイヤ54を引込んだ状態となっている。そして、バックドア14が最も大きく開かれる際には、コイルバネ55eを伸しつつ、第1ワイヤ54を繰出す。そこで、バックドア14の設計上の開角度に対して、第1ワイヤ54の繰出し長を、その最大引出し可能長の中央値程度に設定しておくことで、バックドア14の実際の開角度が+(プラス)及び−(マイナス)のいずれにずれた場合でも対応できるようにしている。
また、上記したように、バックドア14を完全に閉じた状態で、第1ワイヤ54に弛みが生じてしまうことがある。そこで、渦巻ばね50に所定の初期付勢力を付与しておくことで、トノボード部70をその作動域後端に達した状態とすることができる。そして、トノボード部70がその作動域後端に達し、ランナRを規制片34aに当接させた状態から、さらに、渦巻ばね50の付勢力によって第2巻胴部44を回転させることによって、ホルダ部63を内部移動体64よりも後方に距離L2相対移動させることができる。これにより、第1巻胴部43及び第2巻胴部44を回転させて第1ワイヤ54の巻取りを行うことができる。これにより、トノボード部70を完全に展開させつつ、第1ワイヤ54の余剰長を巻取ることができる。また、この状態では、ランナRは規制片34aに向けて付勢されている。このため、走行時等におけるがたつきを有効に防止できる。なお、この状態からバックドア14を開くと、ランナRはホルダ部63に対して初期位置に復帰すべく相対移動する。
以上のように構成されたトノカバー装置20によると、トノボード部70が完全に展開して荷室12を完全に覆った状態になり、ランナRが規制片34aに当接して停止した状態で、渦巻ばね50の付勢力により、ランナRに対してホルダ部63を車両10後方に相対移動させるようにして、第1巻胴部43及び第2巻胴部44を回転させることができる。そして、第1巻胴部43の回転により第1ワイヤ54を巻取ることができる。これにより、バックドア14の開角度と第1ワイヤ54の引出し長を吸収するように、第1ワイヤ54の余剰長を解消することができ、トノカバー装置20を安定してなるべく問題なく動作させることができる。
また、バックドア14を開く際に、第1ワイヤ54から引出すことができる第1ワイヤ54の引出し長が不足している場合には、ワイヤ固定部55から第1ワイヤ54を繰出すことができる。これにより、バックドア14の開角度と第1ワイヤ54の引出し長とのずれを吸収して、トノカバー装置20を問題無く動作させることができる。
なお、上記図30(b)及び図30(c)に示す動作は、長期使用により組付誤差が生じた場合や第1ワイヤ54が伸びたような場合にも行われる。この点からすると、長期に亘ってトノカバー装置20をうまく動作させることができ、耐久性向上にも貢献する。
{変形例}
図31は変形例に係るワイヤ固定部155を示す断面説明図であり、図32及び図33は第1ワイヤ54の繰出し状態を示す断面説明図であり、図34〜図36はワイヤ固定部155による連結解除状態を示す断面説明図である。
すなわち、第1ワイヤ54の一端部は、本ワイヤ固定部155を介してバックドア14に連結固定される。このワイヤ固定部155は、ワイヤ繰出部としての機能に加えて、連結解除部としての機能を有している。
より具体的には、ワイヤ固定部155は、上記した細長形状のハウジング55aと、ワイヤ端固定具55cと、弾性部材としてのコイルバネ55eとを備えると共に、連結ハウジング156aと、連結バネ156bと、連結突部156cとを備えている。
上記ハウジング55aとワイヤ端固定具55cとコイルバネ55eとは、上記実際形態で説明したのと同様構成であり、第1ワイヤ54の繰出し及び引戻しを行うワイヤ繰出し部として機能する。すなわち、図32に示すように、通常状態では、コイルバネ55eが伸長状態となっており、ワイヤ端固定具55cは第1ワイヤ54をハウジング55a内に引戻す方向に付勢され、当該引戻し方向に位置している。この状態で、図33に示すように、第1ワイヤ54が引張られると、コイルバネ55eが縮んで、その縮んだ分だけ第1ワイヤ54が繰出される。また、第1ワイヤ54を引張る力を解除すると、コイルバネ55eが伸びて、その伸びた分だけ第1ワイヤ54が引戻される。
また、上記連結ハウジング156aと連結バネ156bと連結突部156cとは、連結解除部として機能する。すなわち、図31〜図34に示すように、連結ハウジング156aは、上記ハウジング55aのバックドア14側端部に外嵌め可能なキャップ状に形成されている。また、連結突部156cは、上記ハウジング55aのバックドア14側端部から突出するように設けられており、その長手方向中間部が幅狭でかつ先端部側で幅広になる形状に形成されている。また、連結バネ156bは、細長板状のバネ片を、上記連結突部156cに外嵌め可能な略U字状に屈曲すると共に、その両側片の長手方向中間部を、連結突部156cの幅狭の幅狭部分に合わせて内向きに湾曲させた形状とされている。また、上記連結ハウジング156aは、バックドア14に取付固定されるドア取付用ブラケット156dに連結取付可能に構成されており、本連結ハウジング156aは当該ドア取付用ブラケット156dを介してバックドア14に取付固定されている。なお、連結バネ156bによる連結突部156cの保持力は、コイルバネ55eによる付勢力よりも大きく、従って、第1ワイヤ54が引張られた際には、コイルバネ55eが先に伸長変形するようになっている。
そして、通常の使用状態では、図34に示すように、連結バネ156bの両側片の内向き湾曲部分を連結突部156cの幅狭部分に嵌め合わせるようにして、当該連結バネ156bを連結突部156cに外嵌めするようにして、連結ハウジング156aがハウジング55aの端部に外嵌めされている。この状態で、第1ワイヤ54が引張られると、上記コイルバネ55eが伸長することで、第1ワイヤ54が繰出される。第1ワイヤ54が大きく引張られることで第1ワイヤ54の繰出し限度に達し、連結突部156cを連結バネ156bから引抜く力が所定値より大きくなると、図35に示すように、連結バネ156bの両側片を押開くようにして連結突部156cが連結バネ156bの両側片間から脱する。そして、図36に示すように、連結突部156cが連結バネ156bから抜出て、第1ワイヤ54の一端部とバックドア14との連結状態が解除される。
この変形例によると、バックドア14を開く際に、例えば、第1ワイヤ54が周囲の部材に引っ掛かる等して、当該第1ワイヤ54が所定の引出し量よりもさらに大きく引張られて大きな張力が作用すると、第1ワイヤ54とバックドア14との連結状態が解除され、バックドア14を大きく完全に開くことができる。
なお、所定値より大きい張力が加わった場合に第1ワイヤ54とバックドア14との連結状態を解除する構成は上記例に限定されず、その他、種々の構成を採用することができる。もっとも、上記の構成によって、連結状態解除後、連結突部156cを連結バネ156bに嵌め込むことによって、再度連結状態に戻すことができる。
なお、本変形例において、ワイヤ繰出部としての機能部分を省略してもよい。
図37〜図39は、レール部230の両端部に規制片234a、234bを設けると共に、ランナ付勢部によってランナRをホルダ部63の略中央の初期位置に向けて付勢するようにした例を示しており、図37(a)はスライダ部260がレール部230の略中間部に位置する状態、図37(b)はスライダ部260を側方からみた状態、図38はスライダ部260がレール部230の前端側に位置する状態、図39はスライダ部260がレール部230の後端側に位置する状態をそれぞれ示している。なお、図37〜39においてスライダ部260及びレール部230を概念的に示している。
上記スライダ部260は、図では概念化しているものの、基本的には、上記実施形態で説明したスライダ部60と同様構成であり、同様構成部分は上記と同一符号で示している。相違点は、ランナ付勢部としての2つのコイルバネ265a、265bを用い、各コイルバネ265a、265bを、ランナRを挟むようにして内部スライダ支持部63cの両端側に外嵌めして、各コイルバネ265a、265bを、ランナRと2つの支持端部63bの各間に配設して、ランナRを支持端部63bの略中央部に初期位置として付勢している点である。
また、レール部30の後端側には、上記実施形態における規制片34aと同様の規制片234aが設けられており、レール部30の前端側には、当該規制片234aと略同様態様(略対称の位置)規制片234bが設けられている。
そして、バックドア14を閉じる際には、図39及び上記実施形態で説明したように、ランナRを規制片234aに当接停止させた状態で、ホルダ部63をさらに後方に移動させることで、第1ワイヤ54を巻取ることができる。
一方、バックドア14を開く際に、バックドア14を完全に開く手前で、トノボード部70が荷室12後方を開放させた所定の状態になり、図39に示すように、ランナRが規制片234bに当接停止してしまった場合でも、ホルダ部63をさらに前方に移動させることができる。このため、ホルダ部63をさらに前方に移動させつつ第1ワイヤ54を引出して、バックドア14を開くことができる。かかる構成によっても、バックドア14の開角度と第1ワイヤ54の引出し長とのずれを吸収して、トノカバー装置20をなるべく問題なく動作させることができる。
なお、ランナRをホルダ部63に対して前方側に付勢し、レール部30の前端側だけに規制片234bを設けた構成であってもよい。
また、上記スライダ部60,260及びトノボード駆動機構部40による第1ワイヤ54の長さ調整構成と、ワイヤ固定部55,155による第1ワイヤ54の長さ調整構成とは、それぞれ独立して機能し得る。両者を併用した場合において、どちらが優先的に第1ワイヤ54の引戻し等或は巻取り等を行ってもよい。どちらを優先的に機能させるかは、コイルバネ55eや渦巻ばね50の付勢力によって適宜設定することができる。