JP4978444B2 - 鋼板巻立て耐震補強用鋼板の隙間調整方法 - Google Patents

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本発明は、地震時等において、高速道路や鉄道等のコンクリート製橋脚や梁桁等が破壊したり破損したりすることを防止するためにコンクリート橋脚や梁桁、柱等を補強するために行う耐震補強用鋼板巻立て工事の当該補強鋼板を橋脚や梁桁、柱等に取付けを行う技術分野に関するものである。
高速道路や鉄道等のコンクリート製の橋脚や梁桁等の地震による倒壊等の発生や倒壊発生には至らないまでもコンクリート躯体のクラック発生による強度不足などの状態が発生すると、その災害規模は大きい。この種の災害は、阪神大震災等に見られるように、高速道路や鉄道等の被害が大きく、物資輸送のみならず、その交通にも大きな障害が現れ、復旧作業にはおびただしい費用と長期間を要するという大きな問題がある。
従来、これに対処するために、橋脚、梁桁等のコンクリート構造物に対する補強工事方法が種々研究開発され、現行の補強工事方法としては、高速道路や鉄道等の橋脚や梁桁等のコンクリート構造物1の強度不足部位に図8に示すように、補強鋼板2(2a、2b)を巻立てし、該補強鋼板2とコンクリート構造物1との隙間6に無収縮モルタル5等の凝固性の補強剤を圧入充填し、既設のコンクリート構造物の補強を図る耐震補強鋼板巻立て工法が採用されている。
この耐震補強鋼板巻立て工法では、コンクリート構造体1の補強部位に補強鋼板2を巻立てする際には、当該コンクリート構造体1と補強鋼板2を強固に接着する必要がある。そのため、隙間に圧入充填される無収縮モルタル5等の必要最小限の厚みを確保することが必要であり、当該コンクリート構造体1の外表面と当該補強鋼板2の内表面との隙間の最小値が図面上指示される。しかし、当該コンクリート構造体1の外表面は、金属表面と違いその表面の形状寸法が凹凸やうねりにより一定な仕上がり面となっていないのが通常である。特に、耐震補強の対象である既設のコンクリート構造体1は、長年の風雨にさらされているためそのコンクリート表面は相当に侵食されて凹んだり、欠けたりしている場合が多い。従って、耐震補強後の該補強鋼板2の表面をフラットな平面に仕上げようとすると、該コンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との間には不可避的に不等間隔の隙間6が形成されるものである。
前記鋼板巻立て耐震補強工事においては、橋脚や梁桁等のコンクリート構造体1に巻立てする補強鋼板2を無収縮モルタル5等の凝固性補強剤を圧力充填するに先立って、該補強鋼板2をコンクリート構造体1に巻立て状態を維持するために該コンクリート構造体1の外表面に所定の隙間6で取り付ける必要があり、そのために図8に示すように、コンクリート構造体1に巻立てされた補強鋼板2を適宜部位における補強鋼板取付皿ボルト3によりコンクリート構造体1に取り付けして固定した状態にし、その後に図9に示した圧入穴17を介して無収縮モルタル5等の凝固性補強剤を圧入充填するようにしていた。
当該補強鋼板取付皿ボルト3を介して補強鋼板2をコンクリート構造体1に対して取り付けを行うに際しては、所定の補強強度を確保するために、図4に示すように、コンクリート構造体1の外表面と該補強鋼板2の内表面との所定の隙間6を確保することが重要であり、そのために、従来は、図4に示すように、補強鋼板取付皿ボルト3の所定の皿ボルト取り付け位置にあけておいた補強鋼板2の皿ボルト穴8の周りに2ないし、3本の所定の長さのスペース棒11を補強鋼板の内表面に溶接して、必要な隙間6を確保する方法をとっていた。
しかし、先にも説明したように、コンクリート構造体1の外表面は、金属表面と違いその表面の形状寸法が凹凸やうねりにより一定な仕上がり面となっていないのが普通である。従って、耐震補強後の該補強鋼板2の表面を一定の寸法に押さえフラットな表面を得ようとすると、該コンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との間の隙間6の寸法は各取付皿ボルト位置で同一ではなく、従来は、事前にその必要隙間を実測し、その実測にあわせて、スペース棒11の長さを個々に調整加工して取り付けることが必要であり、その調整加工と取付の手間は非常に多大で、工事工程上および工事コスト上大きな問題であった。
また、工期削減のために同一の厚みや長さを採用した場合は、図7に示すように補強鋼板2の溶接面が不揃いとなり、突合せ溶接開先の目違いが発生し重大な溶接欠陥となってしまい、そのような工事を行うことは認められないため、どうしても上記のスペーサーの微調整が必須であるということが工事上大きな問題であった。しかし、重要な補強工事の工事品質を確保するためには必須の工程であり、この隙間6の微調整を簡単に行う方法の開発が重要課題であった。
さらに、多数のスペーサー棒11が各々違った寸法となるため、その溶接取付位置の間違いも発生し易く、溶接部の取り外しと再溶接取付などの工事の手戻りが発生する可能性が高くなるという問題も発生していた。
本発明は、上記の補強工事品質確保上の重要課題を解決するためになされたものであって、コンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との隙間6を所定の寸法に容易に微調整可能として所定の隙間を確保し、補強鋼板2の溶接面の目違いgを発生させない隙間6を精度良く簡単に微調整する補強鋼板の隙間調整方法を提供することを目的としている。
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1に記載の本発明の方法は、コンクリート製の橋脚や梁桁、柱等に対する耐震補強用の鋼板巻立て工事に伴う補強鋼板2の該コンクリート製の橋脚や梁桁、柱等への取付に際し、コンクリート構造体1の表面と補強鋼板2の内表面との隙間6を微調整するためのボルト4用と最終的に固定するためのボルト10用の兼用ねじ穴9を補強鋼板2の補強鋼板取付用皿ボルト穴8の周辺近くに2個ねじ穴加工し、そのねじ穴9に取り付けた隙間調整用ボルト4を調整してコンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との隙間6を必要寸法に微調整し、取付皿ボルト3を締め付け固定後もう一方のねじ穴9に隙間固定用ホロセットボルト10をセットし、調整した隙間を固定し、その後、隙間調整用ボルト4を取り外し隙間固定用ホロセットボルト10に交換して締め付けることを特徴とする鋼板巻立て耐震補強工事用の補強鋼板の隙間調整方法である。
また、請求項2に記載された本発明の方法は、上記隙間調整用ボルトのねじ穴9を補強鋼板取付皿ボルト穴8の周囲近くに3個取り付け加工することにより、コンクリート構造体1表面と補強鋼板2の内表面との隙間6の寸法精度を向上させ、補強鋼板2の取付面の安定化を図ることを特徴とする請求項1の耐震補強用鋼板巻立て工事用の補強鋼板の隙間調整方法である。
以上で説明したように、本発明の方法によると、長期間の風雨にさらされた老朽化した既設のコンクリート製の橋脚や梁桁、柱等の鋼板巻立て工法による耐震補強工事に際して、従来困難を極めたコンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との不揃いな隙間6の調整作業に対しても、補強鋼板2にあけた隙間調整ネジ用ねじ穴9にセットした隙間調整ボルト4を微調整することにより、容易にかつ精度良く短時間で所定の隙間6で高精度に補強鋼板2をコンクリート構造体1に取付することが可能になり、その後のその隙間6への無収縮モルタル5等の凝固性補強剤の圧入充填をスムーズに行え、高品質の耐震補強工事が短工期で可能となる。
本発明による補強鋼板2の隙間調整方法を使用することにより、図7に示すような従来微調整が困難であった補強鋼板2a、2b同士の突合せ溶接部の開先12の目違いgの発生も解消され、図6のように正確な突合せ溶接部の開先12が得られ、目違い発生に起因する溶接不良による溶接のやり直し発生もなく、かつ溶接部の強度も向上し工事品質も著しく向上することが出来る絶大な効果が得られる。
このように、本発明は、工事作業品質面、工事コスト面、補強強度性能面からの効果が著しく大きく、世の中に多数設置されている橋梁や鉄道などのコンクリート製の橋脚や梁桁、柱等の地震に対する安全性の向上が、高品質の工事品質により確保されることにより、世の中に多大な貢献をするものである。
以下、本発明の好ましい実施形態について、図1から図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例の隙間調整ボルト4と補強鋼板取付皿ボルト3との取り合いを示す断面図である。図2は、図1の実施例の場合の補強鋼板2上にあけられた補強鋼板取付皿ボルト穴8と隙間調整ボルト4用と隙間固定用ホロセットボルト10用兼用ネジ穴9との平面的な取り合いを示す平面図である。図3は、最終的に補強鋼板取付皿ボルト3がコンクリート構造体1に埋め込まれたアンカー7にねじ込まれて補強鋼板2がコンクリート構造体1に取付固定され、隙間固定用のホロセットボルト10が取付られて、補強鋼板が溶接された後にコンクリート構造体1と補強鋼板2との隙間6に無収縮モルタル5が圧入充填された状態を示す断面図である。
図1で、1は、耐震補強の対象となるコンクリート構造体であり、2は耐震補強用の補強鋼板であり、この補強鋼板2には事前に工場において補強鋼板2をコンクリート構造体1に取り付けるための補強鋼板取付皿ボルト3用の皿ボルト穴8と、コンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との隙間6を調整する隙間調整ボルト4用のねじ穴9が必要個数穴あけ及びネジ加工されている。この隙間調整用ボルト4用のねじ穴9は、隙間固定用のホロセットボルト10用の穴と兼用になっている。
以下に、本発明により鋼板巻立て工法により橋脚の耐震補強工事を行う作業を図1、図3、図6、図9に基づき説明する。
まず、鋼板の取付位置を計測して、橋脚のコンクリート構造体1の表面にマーキングし、図示していない仮止め位置に、図示していない仮止めアンカーを打ち込み、その後補強鋼板2をクレーン等により取り込み、仮組みして橋脚に仮止めする。
次に、橋脚に仮止めされた補強鋼板2の隙間調整用ボルトねじ穴9に隙間調整用ボルト4を取付け、コンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との隙間6を先に測定した各箇所の隙間数値に合わせて調整し、図示していない仮止めアンカーで補強鋼板2の位置を仮固定する。すべての補強鋼板2の位置決め仮固定が出来た時点で、鋼板溶接部16を仮付け溶接する。なお、必要な隙間6の数値の実測および微調整時の寸法確認は、隙間固定用ホロセットボルト用のねじ穴9から、直スケール19等を差し込んで行う。
すべての補強鋼板2の仮付け溶接完了後、図1のように鋼板2にあけた補強鋼板取付用皿ボルト穴8の位置でコンクリート構造体1に取付皿ボルト3用のアンカー7を打ち込み、補強鋼板2を補強鋼板取付皿ボルト3で仮固定する。
すべての補強鋼板2が補強鋼板取付皿ボルト3で仮固定された後、再度皿ボルト3および隙間調整ボルト4を微調整して、図6のように補強鋼板2の突合せ溶接部の開先12の間隔と鋼板溶接部の目違いgが限りなくゼロとなるように正確に微調整する。
次に、もう一方のねじ穴9に隙間固定用のホロセットボルト10を取付けて先に調整した隙間を固定する。その後、取付皿ボルト3の周囲の隙間調整ボルト4を1本づつ外して、隙間固定用ボルト10と交換してねじ穴9に取付け、必要な隙間6を強固に保持する。
次に、補強鋼板2の本溶接を行う。本溶接完了後補強鋼板2の上下端部や必要なシール部をシール材にてシールする。その後、無収縮モルタル圧入充填用穴17から無収縮モルタル5を隙間6に圧入充填する。
最後に必要な現場塗装を行い、鋼板巻立て耐震補強工事は完了する。
以上で説明したように、鋼板巻立て耐震補強工事において、コンクリート構造体1の外表面と補強鋼板2の内表面との隙間6を本発明の方法により調整することにより、従来、その正確な調整が難しく長時間を要していた鋼板巻立て耐震補強工事が短時間で正確な工事施工ができ、高品質で高強度の耐震補強工事の実施が可能となる。
本発明の一実施例の隙間調整ボルトと取付皿ボルトの取り合いを示す断面図 本発明の一実施例の鋼板上の皿ボルト穴と隙間調整ボルト用ねじ穴の取り合いを示す平面図 本発明の一実施例の隙間調整後のホロセットボルトに交換後に隙間部に無収縮モルタルを充填した状態を示す断面図 従来の方法により隙間調整用のスペーサー棒の取付状態と隙間に無収縮モルタルを充填した状態を示す断面図 従来の方法の隙間調整用のスペーサー棒と皿ボルト穴との位置関係を示すA−A方向から見た平面図 補強鋼板の理想的な突合せ溶接部の取り合いを示す断面図 隙間調整が不良の場合の補強鋼板の突合せ溶接部の目違いgの発生状況を示す断面図 鋼板巻立て工法により耐震補強した橋脚の例を示す斜視図 補強鋼板の部分拡大を示す正面図
符号の説明
1 コンクリート構造体
2 補強鋼板
2a コーナー部補強鋼板
2b 平坦部平板補強鋼板
3 補強鋼板取付用皿ボルト
4 隙間調整用ボルト
5 隙間に充填された無収縮モルタル
6 コンクリート構造体と補強鋼板との隙間
7 補強鋼板取付皿ボルト用アンカー
8 補強鋼板取付皿ボルト用ボルト穴
9 隙間調整ボルト用、隙間固定ホロセットボルト用兼用ネジ穴
10 隙間固定用ホロセットボルト
11 隙間調整用スペーサー棒
12 補強鋼板突合せ溶接開先部
13 補強鋼板突合せ溶接部裏当て鋼板
14 床版
15 橋脚
16 補強鋼板突合せ溶接部
17 無収縮モルタル注入穴
18 補強鋼板吊ピース
19 実際の隙間を測定するためのスケール
g 補強鋼板溶接部の目違い

Claims (2)

  1. コンクリート製の橋脚や梁桁、柱等に対する鋼板巻立て耐震補強工事に伴う補強鋼板の該コンクリート製の橋脚や梁桁、柱等への取付けに際し、コンクリート構造体の表面と補強鋼板の内表面との隙間を微調整するためのボルト用と最終的に固定するためのボルト用の兼用ねじ穴を、補強鋼板の補強鋼板取付用皿ボルト穴の周辺近くに2個ねじ加工しておき、そのねじ穴の一つに取り付けた隙間調整用ボルトを調整してコンクリート構造体の外表面と補強鋼板の内表面との隙間を必要寸法に微調整して、補強鋼板取付皿ボルトを締め付け固定し、さらにもう一方のねじ穴にホロセットボルトをセットし先に調整した隙間を固定し、その後、隙間調整用ボルトを取り外し、隙間固定用ホロセットボルトに交換して締め付けることを特徴とする鋼板巻立て耐震補強工事用の補強鋼板の隙間調整方法。
  2. 上記間隔調整用および固定用兼用のねじ穴を補強鋼板取付皿ボルト穴の周りに3個取り付けることにより、3点支持構造を形成し、補強鋼板取付皿ボルトの締め付け時のコンクリート構造体の外表面と補強鋼板の内表面との隙間精度を向上させ、補強鋼板の取付面の安定化を図ることを特徴とする請求項1記載の鋼板巻立て耐震補強工事用の補強鋼板の隙間調整方法。
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