本発明の一実施形態について図1〜図14(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。
〔実施の形態1〕
まず、図1〜図3(b)に基づき、本発明の一実施形態である近接場光発生素子(磁界発生素子)100Aの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態(実施の形態1)である近接場光発生素子100Aの概要構成を示す正面図である。
また、図1中のxyz直交座標が示す各方向については、水平方向(紙面に対して左右の方向)をx方向(対向方向)とし、鉛直方向(紙面に対して上下の方向)をy方向とし、紙面に対して垂直な方向をz方向(延在方向)としている。なお、基板(図示せず)の面内方向はx方向である。
また、図2(a)は、近接場光発生素子100Aの右側面図であり、図2(b)は、同上面図であり、図2(c)は、同斜視図である。
図1〜図2(c)に示すように、近接場光発生素子100Aは、図示しない基板上に接続層101が形成され、接続層101の上に、第1の薄膜(第1領域)102と、第2の薄膜(第2領域)103とが空隙部を挟んで、お互いに分離されて形成されている。また、本実施の形態の空隙部は、z方向に延在しているが、図1の紙面に対して右斜めまたは左斜めに延在していても構わない。
接続層101、第1の薄膜102、及び第2の薄膜103の各部位は、スパッタリング法により所定の材質の薄膜を形成することで構成される。前記薄膜は、スパッタリング法の他にも、液相成長法(LEP)、CVD法(chemical vacuum deposition)、気相成長法(MCVD:modified chemical vapor deposition)、分子線エピタキシー法(MBE:molecular beam epitaxy)その他蒸着法など、薄膜を形成できる各種方法を用いて形成することができる。
始めに基板上に接続層101の膜を形成する。次いで接続層101の上に第1の薄膜102や第2の薄膜103の膜を形成する。第1の薄膜102や第2の薄膜103の間に存在する空隙部は、リソグラフィー法などを用いて膜が取り除かれることにより形成することができる。
これらの膜の材質を、すべて導電性を有する材質とすれば、第1の薄膜102と第2の薄膜103との間に接続層101を介した電流路を設けることができる。よって、この電流路に電流を流すことで、第1の薄膜102と第2の薄膜103との間にある空隙部の近傍に磁界を発生させることができ、磁気記録を行うことができる。
また、図1〜図2(b)に示すように、接続層101、第1の薄膜102、および第2の薄膜103の、z方向の負側(図1の紙面に対して奥側)の位置にはレーザー光を出射するリッジ104が形成されている。
リッジ104は、レーザー発光素子が積層された基板において、リッジとする部分の周囲に対してエッチングなどにより削り込むことで形成することができる。リッジ104の周囲に絶縁層などを堆積することで、リッジ104は、接続層101、第1の薄膜102、および第2の薄膜103と電気的に絶縁される。
リッジ104からは、第1の薄膜102と第2の薄膜103との間にある空隙部に向かってレーザー光(偏光:図示せず)が図1の紙面に対して奥から手前の方向(zの正方向)に照射される。言い換えると、近接場光発生素子100Aは、リッジ104から第1の薄膜102および第2の薄膜103のそれぞれのz方向(延在方向)における一方の端面である入射端面側からレーザー光を入射させることにより、それぞれのz方向における他方の端面である出射端面側から、近接場光を発生させるものである。なお、レーザー光は、矢印aで示される方向(対向方向)の振動を主成分とする偏光である。
第1の薄膜102は、第2の薄膜103とは、各々を構成する材質の誘電率における実部係数が異なっており、第1の薄膜102を構成する材質の誘電率における実部係数は、第2の薄膜103を構成する材質の誘電率における実部係数よりも大きい。
前記の状況において、リッジ104から第1の薄膜102と第2の薄膜103との間にある空隙部に向かって入射したレーザー光は、上述したように、矢印aで示されるx方向(対向方向:第1の薄膜および第2の薄膜の空隙部側の入射面に平行な方向)の振動(p偏光,TM偏光)を主成分とする偏光であるため、レーザー光が当たる第1の薄膜102においては、レーザー光が入射するのとは反対側の端面、すなわち出射端面の近傍の、側面105(第1領域)において、プラズモンが励起され、近接場光が発生する。第2の薄膜103においても同様に、出射端面近傍の側面106(第2領域)においてプラズモンが励起され、近接場光が発生する。
なお、図1では、側面105が、第1の薄膜102と別の部材のように記載しているが、これは、側面105の位置を強調するためのものである。すなわち、側面105は、第1の薄膜102の一部の領域(第1領域)のことである。また、同様に、側面106は、第2の薄膜103の一部の領域(第2領域)のことである。なお、以下、同様な説明は省略する。
ここで、プラズモンとは、伝導電子気体の集団的な素励起であるプラズマ振動の量子である。すなわち、レーザー光の照射によって生じた伝導電子気体のプラズマ振動によって、電磁波(近接場光)が発生する。
また、後述する第1の薄膜および第2の薄膜の空隙部側の表面に生じるプラズモンの発生効率の観点からは、偏光は、対向方向(第1の薄膜および第2の薄膜の空隙部側の入射面に対して平行な方向)の振動(p偏光またはTM偏光)を主成分とするものが好ましい。
なお、近接場とは、物質の表面及び界面近傍で生じる表面電磁波である表面プラズモン(厳密には、表面プラズモンポラリトンであるが、単に、表面プラズモンと呼ばれることが多い)や、孤立微粒子や微細金属針先端などに局所的に励起される局所表面プラズモン(厳密には、局所表面プラズモンポラリトンであるが、単に、局所表面プラズモンと呼ばれることが多い)などを総称したものである。
なお、本実施の形態においては、第1の薄膜102と、第2の薄膜103とがそれぞれ、全体的に同じ材質の場合について説明する。しかしながら、このような形態に限らず、第1の薄膜102の少なくとも前記出射端面附近の近接場光が発生する側面105(第1領域)における誘電率の実部係数と、第2の薄膜103の少なくとも前記出射端面附近の近接場光が発生する側面106(第2領域)における誘電率の実部係数とが異なっていれば良い。
さて、既述したように、第1の薄膜102を構成する材質の誘電率における実部係数は、第2の薄膜103を構成する材質の誘電率における実部係数よりも大きくなっているため、近接場光の発生効率が低くなる。
ここで、第1の薄膜102の側面105を構成する材質の誘電率における実部係数、及び第2の薄膜103の側面106を構成する材質の誘電率における実部係数は、定性的には、該材質の構成に照射される光の電場によって発生する分極の大きさを表している。
そして、近接場光は、この分極を介して発生する。そのため、側面105および側面106の誘電率に差を設けることで、各領域において発生する近接場光の強度に差を設けることが出来る。すなわち、「誘電率の実部係数が負」の領域は、金属的に振舞うため、近接場光(表面プラズモン)を発生しやすい。
一方「誘電率の実部係数が正」の領域は、絶縁体的に振舞うため、近接場光(表面プラズモン)を発生しにくい。よって、側面105及び側面106の各領域に「誘電率の実部係数が正」の材料と、「誘電率の実部係数が負」の材料とを組み合わせて用いると、各領域において発生する近接場光の強度により大きな差を設けることが出来る。
ここで、図3(a)及び図3(b)に基づき、一方の薄膜の近接場光の発生効率を低くする理由について説明する。
図3(a)及び図3(b)は、本発明の一実施形態である近接場光発生素子100Aの光に対する応答の原理を説明するための模式図である。
まず、近接場光と磁界とを発生させる構造としては、図3(a)に示すような、狭窄部を持つ構造が採用される。これは金属膜などで作られ、磁界用電流(図3(a)の磁界用電流H参照)を流すことにより、その周囲に磁界を発生させることができる。また、図3(a)中央の空隙部に紙面に垂直な方向に偏光を入射させることで近接場光を発生させることができる。
しかしながら、このような2つの薄膜で空隙部を挟み込むような構造では、入射する偏光が、光源の影響により、たまたま、矢印Pの方向に振動する偏光であった場合、近接場光は空隙部の両側で発生してしまうことになる(近接場光l−L及び近接場光l−R)。この近接場光と磁界を用いて情報記録媒体に記録を行うと、隣接する2箇所で同時に近接場光アシスト磁気記録が行われる懸念が生じる。
一方、近接場光発生素子100Aでは、図3(b)に示すように構造の一部を近接場光が生成されにくい物質に置き換え(紙面に対して左側の斜線部:第1の薄膜102に相当)、一方の近接場光が生成されにくくなるようにする。(なお、近接場光l−Lを破線で示しているのは、近接場光の発生効率が低いことをイメージしやすいように図示したものである)。この状態で、強い方の近接場光では記録されるが弱い方の近接場光では記録されない条件を持つ情報記録媒体を用いれば、上記の懸念を解消することができる。
また、本実施形態の近接場光発生素子100Aは、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜は、導電性を有しており、導電性を有する方の薄膜と電気的に接続する接続層101が設けられており、導電性を有する方の薄膜および接続層101間に電流を流すことにより磁界を発生させても良い。
前記構成によれば、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜は、導電性を有しており、導電性を有する方の薄膜と電気的に接続する接続層101が設けられており、導電性を有する方の薄膜および接続層101間に電流を流すことが可能となっている。よって、導電性を有する方の薄膜および接続層101間に電流を流すことで、近接場光だけではなく磁界も発生させることがきる。よって、本実施形態の近接場光発生素子100Aにより発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。また、近接場光発生素子100Aを用いて情報記録媒体(情報記録媒体)に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
また、本実施形態の近接場光発生素子100Aは、第1の薄膜102および第2の薄膜103は、共に導電性を有しており、第1の薄膜102および第2の薄膜103の両方と電気的に接続する接続層101が設けられており、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜および接続層101間に電流を流すことにより磁界を発生させても良い。
前記構成によれば、第1の薄膜102および第2の薄膜103は、共に導電性を有しており、第1の薄膜102および第2の薄膜103の両方と電気的に接続する接続層101が設けられており、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜および接続層101間に電流を流すことが可能となっている。よって、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜および接続層101間に電流を流すことで、近接場光だけではなく磁界も発生させることがきる。よって、本実施の形態の近接場光発生素子100Aにより発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。また、近接場光発生素子100Aを用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
さて、次に、図4(a)〜図5(h)に基づき、本実施形態の他の例である近接場光発生素子100Bについて説明する。
図4(a)は、近接場光発生素子100Bの構成を示す正面図であり、図4(b)は、同斜視図である。近接場光発生素子100Bは、図4(a)に示すように、第1の薄膜102と第2の薄膜103との間にある空隙部の下部に接続層101が存在せずに開放されたような形態であり、このような形態も本発明の範疇に含まれる。この形態においては、第1の薄膜102と第2の薄膜103とは、それぞれが別々に接続層101A及び接続層101Bの上から張り出した状態で形成されている。なお、第1の薄膜102の下にある接続層101Aと、第2の薄膜103の下にある接続層101Bも互いに空隙部を挟んで隔てられている。
以下、このような形態を持つ近接場光発生素子100Bにおける接続層101、接続層101A、及び接続層101B、並びに第1の薄膜102、及び第2の薄膜103の形成方法の一例について図5(a)〜図5(h)を用いて説明する。図5(a)〜図5(h)は、近接場光発生素子100Bの接続層101、接続層101A、及び接続層101B、並びに第1の薄膜102、及び第2の薄膜103の形成方法の各工程の一例を示す模式図である。なお、ここでは、近接場光発生素子100Aのリッジ104に相当する部分は省略する。また、以下、複数のレジスト層を用いるが、他の要素と区別しやすくするため、レジスト層には、斜線を付す。
図5(a)に示すように、基板(図示せず)の上に第1のレジスト層107のパターンを形成し、さらに接続層101を形成する。第1のレジスト層107に要求される条件は、接続層101、第1の薄膜102、および第2の薄膜103のいずれとも独立して選択的に除去できることである。
次ぎに、図5(b)に示すように、第1のレジスト層107よりも紙面に対して上にある接続層101をケミカルポリッシングなどで研削する。研削する方法は、特にケミカルポリッシングに限られない。
引き続き、図5(c)に示すように、接続層101および第1のレジスト層107の上に、第2のレジスト層108のパターンを形成し、さらに第1の薄膜102を形成する。ここで、第2のレジスト層108に要求される条件は、接続層101、第1の薄膜102、第2の薄膜103、および第1のレジスト層107のいずれとも独立して選択的に除去できることである。
次ぎに、図5(d)に示すように、第2のレジスト層108を除去する。なお、このとき、第1の薄膜102のうち第2のレジスト層108の上にある部分も、同時に除去される。
引き続き、図5(e)に示すように、第1のレジスト層107の上に、第2のレジスト層108のパターンを形成し、さらに第2の薄膜103を形成する。なお、本工程で形成される第2のレジスト層108は、図5(c)で示される工程と異なり、第1のレジスト層107の上にのみ形成する。
次ぎに、図5(f)に示すように、第2のレジスト層108よりも上にある第2の薄膜103をケミカルポリッシングなどで研削する。研削する方法は、特にケミカルポリッシングに限られない。
引き続き、図5(g)に示すように、第2のレジスト層108を除去する。それから、図5(h)に示すように、第1のレジスト層107を除去して、近接場光発生素子100Bが、完成する。
また、本実施形態の近接場光発生素子100Bは、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜は、導電性を有しており、導電性を有する方の薄膜と電気的に接続する接続層101(接続層101Aまたは接続層101B)が設けられており、導電性を有する方の薄膜と、接続層101、接続層101A、および接続層101Bのいずれかとの間に電流を流すことにより磁界を発生させても良い。
前記構成によれば、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜は、導電性を有しており、導電性を有する方の薄膜と電気的に接続する接続層101が設けられており、導電性を有する方の薄膜と、接続層101、接続層101A、および接続層101Bのいずれかとの間に電流を流すことが可能となっている。よって、導電性を有する方の薄膜および接続層101、接続層101A、および接続層101Bのいずれかとの間に電流を流すことで、近接場光だけではなく磁界も発生させることがきる。よって、本実施形態の近接場光発生素子100Bにより発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。また、近接場光発生素子100Bを用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
また、本実施形態の近接場光発生素子100Bは、第1の薄膜102および第2の薄膜103は、共に導電性を有しており、
第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜は、電気的に接続する接続層101A(または接続層101B)が設けられており、接続層101A(または接続層101B)と電気的に接続された薄膜および接続層101A(または接続層101B)間に電流を流すことにより磁界を発生させても良い。
前記構成によれば、第1の薄膜102および第2の薄膜103は、共に導電性を有しており、第1の薄膜102および第2の薄膜103の一方の薄膜は、電気的に接続する接続層101A(または接続層101B)が設けられており、接続層101A(または接続層101B)と電気的に接続された薄膜および接続層101A(または接続層101B)間に電流を流すことが可能となっている。よって、接続層101A(または接続層101B)と電気的に接続された薄膜および接続層101A(または接続層101B)間に電流を流すことで、近接場光だけではなく磁界も発生させることがきる。よって、本実施形態の近接場光発生素子100Bにより発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。また、近接場光発生素子100Bを用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
次ぎに、図6(a)および図6(b)に基づき、前記の方法を応用して作成した本実施形態のさらに他の例である近接場光発生素子100Cについて説明する。
図6(a)は、近接場光発生素子100Cの構成を示す正面図であり、図6(b)は、同斜視図である。
前記の方法を応用すれば、図6(a)および図6(b)に示すように、接続層101を第1の薄膜102と第2の薄膜103の下方ではなく、上方に設けることもできる。接続層101、前記第1の薄膜102、および第2の薄膜103がなす形状が、図1に示す構造では略U型であるなら、図6(a)および図6(b)に示す構造では略∩型になる。
次ぎに、図7(a)〜図8に基づき、前記薄膜を構成する材質と、前記出射端面で発生する近接場光の強度について検証するため、シミュレーションを行った結果を示す。図7(a)は、実施の形態1に関して、各要素の寸法などを適当に調整した、近接場光発生素子200Aのシミュレーションに用いた構造を、出射端面側から見た模式図であり、図7(b)は、同y方向の正側から見た模式図である。図7(a)および図7(b)中の水平方向をx方向とし、鉛直方向をy方向とし、紙面に対して垂直な方向をz方向とした。また、図8は、近接場光発生素子200Aに関して、近接場光発生のシミュレーションの結果を示す図である。
シミュレーションでは、第1の薄膜202(第1領域)及び第2の薄膜(第2領域)203よりもz方向の負側に位置する光源(図示せず)から、z方向にレーザー光が、第1の薄膜202と対向する第2の薄膜203の間にある空隙部に向かって入射される。各部の寸法は、A=1000[nm]、B=1000[nm]、C=400[nm]、H=500[nm]、D=400[nm]、およびW=200[nm]である。
実際に形成する際の寸法としては、長さWは、入射する光の波長を上限とする寸法であることが好ましく、100[nm]以下であると更に好ましい。長さWが光の波長よりも大きいと、入射されたレーザ光が透過するようになるとともに、近接場光が生成されにくくなる。なお、製造上の観点からは、10nm以上が好ましい。
さらに、第1の薄膜202の材質は、第2の薄膜203の材質に比べ、誘電率における実部係数を大きく設定している。近接場光発生素子200Aでは、第1の薄膜202をSi(珪素)で構成し、接続層201および第2の薄膜203をAl(アルミニウム)で構成した。
本実施の形態では、接続層201は、第2の薄膜203と同じ材質で構成したが、本発明が取りうる他の形態としては、磁界を発生させない形態、すなわち、近接場光のみを情報の記録再生に用いる場合には、接続層201が、第1の薄膜202および第2の薄膜203の両方と電気的に絶縁されていても良い。また、近接場光および磁界を発生させる形態の場合には、第1の薄膜202および第2の薄膜203のうち導電性を有する方が、接続層201と電気的に接続されていれば良い。
また、波長が400[nm]の光に対する誘電率は以下の通りである。
第1の薄膜202の誘電率εSi=31.2+3.2j
接続層201および第2の薄膜203の誘電率εAl=−23.4+4.8j
なお、ここでjは虚数単位を表す。
上記の材質で構成することにより第1領域において発生する近接場光の強度と第2領域において発生する近接場光の強度の比率(いずれか小さい方の強度の、いずれか大きい方の強度に対 する比率)が最も小さくなる。
図7(b)はy方向の正側(図7(a)における上側)から前記構造を見た模式図であるが、z方向の負側から正側に向かう方向、すなわち図7(b)の紙面に対して上から下に向かう方向(延在方向)にレーザー光が入射される。
次ぎに、図9(a)および図9(b)に基づき、近接場光発生素子200Aとは異なる近接場光発生素子200Bについて説明する。図9(a)は、実施の形態1に関して、第1の薄膜202または第2の薄膜203が有する側面が、1つの平面ではなく、複数の面からなる凹凸を有する面である構造を、出射端面側から見た模式図であり、図9(b)は、同y方向の正側から見た模式図である。
近接場光発生素子200Aでは、空隙部を直方体としてシミュレーションを実施したが、図9(a)や図9(b)で示す近接場光発生素子200Bのような、多面体、すなわち、第1の薄膜202あるいは第2の薄膜203が有する側面が、1つの平面ではなく、複数の面からなる凹凸を有する面であってもよい。
しかしながら、実部係数が小さい方の誘電率を有する材質からなる薄膜、すなわち、第2の薄膜203に備えられた側面は、X方向と直交する平面であることが好ましい。
前記構成によれば、入射端面から出射端面までの距離が同じであれば、入射する光が空隙部の側面を伝播する距離を最短にできるため、入射する光が有するエネルギーの損失を最小にできるので、出射端面近傍を含む側面において近接場光が発生される効率を最大にすることができる。
レーザー光の光源の位置は点204で示され、座標数値は(x、y、z)=(0、0、−10)[nm]である。すなわち、前記光源は、xy面内において前記構造の中心、かつ、z方向において構造から10[nm]離れた位置にある。レーザー光に関する設定については、波長は400[nm]、電界強度は1.0[V/m]、およびx方向(対向方向)の成分を有する方向に振動する偏光とした。
近接場光発生素子200Aのシミュレーションの結果を図8に示す。図8は、(x、z)=(−100、410)および(x、z)=(100、410)[nm]の位置において、y座標を横軸に取り、前記座標における近接場光の強度を縦軸に取って表している。
図8のグラフ1(実線)は、(x、z)=(−100、410)においてy座標に対応する近接場光の強度を表しており、図7(b)中では点205で表される位置にある。点205の位置は、Siで構成された第1の薄膜202の側面に沿って、出射端面(z=400[nm])から10[nm]だけ離れた位置(z=410[nm])である。
出射端面から10[nm]だけ離れた面における強度分布を観測したのは、本実施形態を近接場光発生素子として用いて近接場光記録を行うことを考え、前記素子を記録媒体上を10[nm]程度の浮上高で浮上させて行うことを念頭に置いたからである。本実施形態を近接場光および磁界発生素子として用いて近接場光アシスト磁気記録(再生)を行う際も同様である。
図8のグラフ2(破線)は、(x、z)=(100、410)においてy座標に対応する近接場光の強度分布を表しており、図7(b)中では点206で表される位置での強度分布である。点206の位置は、Alで構成された第2の薄膜203の側面に沿って、出射端面(z=400[nm])から10[nm]だけ離れた位置(z=410[nm])である。
図8によれば、第1の薄膜202(Si)の側面(x=−100[nm])に発生する近接場光の強度は、第2の薄膜203(Al)の側面(x=100[nm])に発生する近接場光の強度よりも低いことがわかる。
なお、両者ともy=300[nm]でほぼ最大値を取り、前記座標における第1の薄膜202(Si)の側面に発生する近接場光の強度は、第2の薄膜203(Al)の側面に発生する近接場光の強度の47.1[%]にまで低下していた。
前記の結果も示す通り、第1の薄膜202の側面に発生する近接場光の強度を、第2の薄膜の側面に発生する近接場光の強度に対して低下させ、両者の間に2倍以上の差を設けることができる。
以上の例のように、第1の薄膜202(一部の領域(第1領域)でも良い)および第2の薄膜203(一部の領域(第2領域)でも良い)の一方が、非金属で構成され、他方が金属で構成されていることが好ましい。
前記構成によれば、金属と、誘電率における実部係数が金属と比べて大幅に異なる非金属を少なくとも出射端面附近の第1領域(または第2領域)に用いることで、第1の薄膜202の出射端面附近の第1領域で発生する近接場光の強度と第2の薄膜203の出射端面附近の第2領域で発生する近接場光の強度の差を大きくすることができる。
なお、本実施形態で磁界を発生させる場合、例えば、図7(a)の説明にて言及した寸法において100[mA]の電流を流すことで400[Oe]の磁界を発生させることができる。
前記の例では、接続層201は、第2の薄膜203と同じ材質で構成したが、本発明が取りうる他の形態としては、接続層201が第1の薄膜202や第2の薄膜203と電気的に絶縁していてもよい。前記構成の場合は、磁界は発生させずに近接場光だけを発生させる素子を実現することになる。
前記構造を有する近接場光発生素子を用いて近接場光記録媒体に記録トラックを形成する場合、第1の薄膜202の側面に発生する近接場光では記録できないが、第2の薄膜の側面に発生する近接場光では記録できるように、入射する光の強度や近接場光記録媒体の記録可能条件を設計すれば、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。同時に磁界を発生させて近接場光アシスト磁気記録を行う場合も同様である。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態(実施の形態2)について図10〜図12(b)に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10は、本発明の他の実施形態(実施の形態2)である近接場光発生素子400の概要構成を示す正面図である。
近接場光発生素子400は、図10に示すように、接続層401の上に、第1の薄膜(第1領域)402と、第2の薄膜(第2領域)403とが、空隙部を挟んで、お互いに分離されて形成されている点は、実施の形態1の場合と同じである。
実施の形態2の近接場光発生素子400が、実施の形態1と異なっている点は、さらに、第1の薄膜402に隣接して、第1の薄膜402よりも高い導電率を有する材質から成る高導電体405が形成されている点である。
前記の各部位は、実施の形態1と同様に、スパッタリング法などによる膜の形成やリソグラフィー法などによる整形を用いて形成することができる。また、前記薄膜は、実施の形態1で説明した方法同様、スパッタリング法の他にも、CVD法や蒸着法など、薄膜を形成できる各種方法を用いて形成することができる。
実施の形態1と同様に、第1の薄膜402を構成する材質は、第2の薄膜403を構成する材質に比べ、誘電率における実部係数を大きく設定している。
なお、本実施の形態においては、第1の薄膜402と、第2の薄膜403とがそれぞれ、全体的に同じ材質の場合について説明する。しかしながら、このような形態に限らず、第1の薄膜402の少なくとも前記出射端面附近の近接場光が発生する側面(第1領域:図示せず)における誘電率の実部係数と、第2の薄膜103の少なくとも前記出射端面附近の近接場光が発生する側面(第2領域:図示せず)における誘電率の実部係数とが異なっていれば良い。
前記構成によれば、リッジ404からx方向の成分を有する方向(対向方向)に振動する偏光であるレーザー光がz方向(延在方向)に沿って入射されると、出射端面の近傍において、第1の薄膜402の側面に発生する近接場光の強度を、第2の薄膜403の側面に発生する近接場光の強度に対して低下させ、両者の間に差を設けることができる。
ところで、第1の薄膜402で使おうとする材質は、一般に導電率が低いことが多い。誘電率における実部係数が大きい材質は、金属よりも、半導体や絶縁体に多いためである。ここで、半導体や絶縁体を第1の薄膜402に用いた上で、各部に電流を流して第1の薄膜402と対向する第2の薄膜403の間にある空隙部に磁界を発生させようとする場合について考える。
このような場合、素子全体の導電率は増加してしまうが、第1の薄膜402の大きさが素子全体の大きさに占める割合を小さくした上で、第1の薄膜402に隣接する形で第1の薄膜402よりも高い導電率を有する材質から成る高導電体405を形成すれば、素子全体の電気抵抗を低減させることができる。
高導電体405としては、例えば、Al(アルミニウム)や、Ag(銀)、Cu(銅)、およびAu(金)を用いることができる。第1の薄膜402よりも高い導電率を有する材質であればよい。同様に、接続層401や第1の薄膜402でも一部または全部を高導電体405に置き換えてもよい。
前記の素子に電流を流して磁界を発生させ、記録素子自体を磁界印加手段とする場合に、記録素子を構成する材質の一部を導電率の高い材質に置き換えることにより、電気抵抗を低減することができる。前記電気抵抗を低減することにより、一定電圧下でも電流が増大し、磁界も増大させることができる。また、前記電気抵抗による熱損失を低減でき、記録素子に関する発熱量や消費電力を抑えることができる。
次ぎに、図11(a)〜図12(b)に基づき、前記薄膜を構成する材質と、前記出射端面で発生する近接場光の強度について検証するため、シミュレーションを行った結果を示す。
図11(a)は、実施の形態2に関して、各要素の寸法などを適当に調整した、近接場光発生素子500Aのシミュレーションに用いた構造を、出射端面側から見た模式図であり、図11(b)は、同y方向の正側から見た模式図である。また、図11(c)は、実施の形態2に関して、近接場光発生素子500Aの第1の薄膜(第1領域)502の寸法を一部変更した、近接場光発生素子500Bのシミュレーションに用いた構造を、y方向の正側から見た模式図である。図11(a)〜11(c)中の水平方向をx方向とし、鉛直方向をy方向とし、紙面に対して垂直な方向をz方向とした。
さて、図11(b)はy方向の正側(図11(a)における上側)から前記の構造を見た模式図であるが、z方向の負側から正側に向かう方向、すなわち図11(b)中の紙面に対して上から下に向かう方向(延在方向)にレーザー光が入射される。
第1の薄膜502および第2の薄膜(第2領域)503よりもz方向の負側に位置する光源(図示せず)から、z方向にレーザー光が、第1の薄膜502と対向する第2の薄膜503の間にある空隙部に向かって入射される。
各部の寸法は、A=1000[nm]、B=1000[nm]、C=400[nm]、H=500[nm]、D=400[nm]、W=200[nm]、およびE=100[nm]である。
材質に関しては、第1の薄膜502をSiで構成し、接続層501、第2の薄膜503、および高導電体505をAlで構成した。ここで、実施の形態1において同様の近接場光の発生シミュレーションに用いた構造を見た模式図である図7(b)と比較すると、第1の薄膜202が空隙部に近い部分100[nm]を残してAlに置き換えられた構造になっている。
図11(c)は、近接場光発生素子500Aの第1の薄膜502の寸法を一部変更した、近接場光発生素子500Bの構造をy方向の正側(図11(a)における上側)から見た模式図である。
図11(b)の場合と異なり、F=100[nm]としたので、Siで構成されているのは出射端面附近の100[nm]だけで、他の接続層501、第2の薄膜503、および高導電体505は、近接場光発生素子500Aと同様に、Alで構成した。
なお、本実施の形態においても、実施の形態1(図9(a)および図9(b)参照)と同様に、第1の薄膜502あるいは第1の薄膜502が有する側面が、1つの平面ではなく、複数の面からなる凹凸を有する面であってもよい。
レーザー光の光源の位置は点504で示され、座標数値は(x、y、z)=(0、0、−10)[nm]である。レーザー光に関する設定については、波長は400[nm]、電界強度は1.0[V/m]、およびx方向(対向方向)の成分を有する方向に振動する偏光とした。
次ぎに、図11(b)のシミュレーションの結果を図12(a)に、図11(c)のシミュレーションの結果を図12(b)に示す。図12(a)および図12(b)は、実施の形態1において述べたのと同様の理由から、出射端面(z=400[nm])から10[nm]だけ離れた面(z=410[nm])における近接場光の強度分布を表している。
図12(a)、および図12(b)ともに、グラフ1(実線)は、(x、z)=(−100、410)においてy座標に対応する近接場光の強度を表しており、図11(b)、図11(c)中では点506で表される位置にある。
また、グラフ2(破線)は、(x、z)=(100、410)においてy座標に対応する近接場光の強度分布を表しており、図11(b)、および図11(c)中では点507で表される位置での強度分布を表している。
いずれの場合も、第1の薄膜502(Si)の側面(x=100[nm])に発生する近接場光の強度は、第2の薄膜503(Al)の側面(x=−100[nm])に発生する近接場光の強度よりも低いことがわかる。
両者ともy=300[nm]でほぼ最大値を取り、前記の座標における第1の薄膜502(Si)の側面に発生する近接場光の強度は、図12(a)の結果では第2の薄膜503(Al)の側面に発生する近接場光の強度の48.4[%]、図13(b)の結果では39.3[%]にまで低下していた。
また、本実施形態では高導電体505と第2の薄膜503の間に電流を流すことができ、第1の薄膜402および第2の薄膜403で囲まれた空隙部を囲むように電流を流すことが可能になる。従って、前記電流により発生する磁界を、前記空隙部における接続層501近傍に集中させることができる。なお、前記のような、形態の変更も、リソグラフィー法などによる整形を用いて実現することができる。
以上のように、本実施形態の近接場光発生素子400(近接場光発生素子500Aまたは近接場光発生素子500B)は、第1の薄膜402(第1の薄膜502)以外の部分である高導電体405(高導電体505)の導電率が、第1の薄膜402(第1の薄膜502)の導電率よりも高くなっているか、または第2の薄膜403(第2の薄膜503)以外の部分である高導電体405(高導電体505)の導電率が、第2の薄膜403(第2の薄膜503)の導電率よりも高くなっていても良い。
前記構成によれば、近接場光発生素子400(近接場光発生素子500Aまたは近接場光発生素子500B)に電流を流して磁界を発生させ、記録素子(近接場光発生素子400,近接場光発生素子500A,または近接場光発生素子500B)自体を磁界印加手段とする場合に、第1の薄膜402(第1の薄膜502)以外の部分である高導電体405(高導電体505)の導電率が、第1の薄膜402(第1の薄膜502)の導電率よりも高くなっているか、または第2の薄膜403(第2の薄膜503)以外の部分である高導電体405(高導電体505)の導電率が、第2の薄膜403(第2の薄膜503)の導電率よりも高くなるように近接場光発生素子400(近接場光発生素子500Aまたは近接場光発生素子500B)を構成する材質の一部を導電率の高い材質に置き換えることにより、電気抵抗を低減することができる。電気抵抗を低減することにより、一定電圧下でも電流が増大し、磁界も増大させることができる。また、電気抵抗による熱損失を低減でき、近接場光発生素子400(近接場光発生素子500Aまたは近接場光発生素子500B)に関する発熱量や消費電力を抑えることができる。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について図13(a)〜図13(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1および2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1および2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
ここでは、本発明の一実施形態(実施の形態3)である近接場光照射装置(光照射装置)600およびその構成要素である近接場光発生装置(近接場光発生素子)608について説明する。
まず、図3(a)は、本実施の形態3に関する近接場光発生装置608の構成を示す模式図である。また、図13(b)は、前記近接場光発生装置608(近接場光発生素子605)を用いた近接場光照射装置600の模式図であり、図13(c)は近接場光照射装置600の、各構成の関わり合いを示すブロック図である。
図13(b)および図13(c)に示すように、近接場光照射装置600は、照射情報入力部601、照射状況出力部602、照射情報処理部603、照射制御部(照射制御手段)604、被照射物の位置制御部606、および近接場光発生装置608を備える構成である。
また、近接場光発生装置608は、近接場光発生素子605および近傍の光源607を備える。
なお、本実施形態では、少なくとも照射制御部604と近接場光発生素子605とが必要であるが、必要に応じて他の機能を担う各種手段、例えば、照射情報処理部603も併せて用いることができる。
前記構成によれば、光源607と、少なくとも光源607による光照射を制御する照射制御部604を備える近接場光照射装置600、例えば、リソグラフィ露光装置などにおいて、前記近接場光発生素子または前記磁界発生素子のいずれかが発生する近接場光を、光源607に用いることができる。
また、照射制御部604による制御に基づき、前記近接場光発生素子および前記磁界発生素子のいずれかの素子により、近接場光が隣接する2箇所で同時に照射されることを防ぎながら、近接場光を用いた光照射を行うことができる。
近接場光発生素子605は、実施の形態1または実施の形態2で述べた各接続層、各第1の薄膜、各第2の薄膜、および各高導電体の組み合わせで構成される構造体である。すなわち、各構成要素の組み合わせについては、実施の形態1および実施の形態2で述べた範囲で、必要に応じて選択することが好ましい。
光源607から偏光を、近接場光発生素子605に、図13(a)中の矢印で示す方向に入射(照射)させることにより、近接場光発生素子605の出射端面(図13(a)における下側の面)において近接場光を発生させることができる。光源607はレーザーリッジやレーザーチップなどが好ましいが、他の光源であってもよい。
次ぎに、近接場光照射装置600の各構成の動作について説明する。
まず、図13(c)に示すように、照射情報入力部601から照射情報処理部603へ照射情報が入力される。照射情報は、例えば、近接場光発生素子605によって照射する近接場光の強度、照射する時間、被照射物609において照射する位置、などである。他にも近接場光の照射に関する情報が含まれていてもよい。
照射状況出力部602は、照射情報入力部601から照射工程に関する現在の状況を示す情報が出力される。状況を示す情報とは例えば、入力待ちなのかどうか、あるいは照射工程に入っていればその進捗状況などである。
照射情報処理部603は、入力された照射情報に基づき、被照射物の位置制御部606に対して、被照射物609に関する目標位置情報を与える。ここで、目標位置情報とは、ある照射工程において、被照射物609があるべき(目標とすべき)位置の情報である。目標位置情報には、近接場光発生装置608に対しての距離も含む。
被照射物の位置制御部606は、目標位置情報に基づき、被照射物609の位置を制御する。同時に、被照射物の位置制御部606は、被照射物609の現在位置情報を照射情報処理部603に返す。
前記の処理により、照射情報処理部603は、被照射物609の位置が目標位置に到達したかどうか、到達していなければ被照射物609の位置と目標位置がどの程度の差を有するか認識することができ、被照射物の位置制御部606によって被照射物609が目標位置に到達するように制御することができる。
被照射物の位置制御部606は、被照射物609ではなく、近接場光発生装置608の位置を制御する形態であってもよいし、近接場光発生装置608と被照射物609との双方の位置を制御する形態であってもよい。被照射物の位置制御部606には、複数の位置制御精度を持つ手段で構成することができるが、被照射物の位置制御部606の内にはマイクロメートル未満の単位で位置制御を行うことができる手段が含まれることが要件となる。
被照射物609が目標位置に到達すると、照射情報処理部603は照射制御部604に対して照射制御情報を与える。照射制御情報は、前記照射情報のうち、近接場光発生素子605で発生させて被照射物609に対して照射する近接場光の強度、照射する時間、などに関する情報である。
照射制御情報を与えられた照射制御部604は近接場光発生素子605の近傍の光源607に対してレーザー光などを照射する照射制御命令を与え、近接場光発生素子605から被照射物609に対する近接場光の照射が行われる。
前記の工程により、近接場光を用いた光照射を行うことができる。近接場光は実施の形態1で述べた近接場光発生素子により照射されるが、素子内の第1の薄膜の側面に発生する近接場光の強度を、第2の薄膜の側面に発生する近接場光の強度に対して低下させ、両者の間に差を設けることができるため、被照射物609に対して、隣接する2箇所で同時に近接場光が照射されることを防ぐことができる。
例えば、本実施形態を露光装置などに応用した場合、被照射物609において、第1の薄膜202の側面に発生する近接場光では露光による反応が起きないが、第2の薄膜の側面に発生する近接場光では露光による反応が起きるように、露光条件を設定する。前記の設定を行うことにより、被照射物609に対して、隣接する2箇所で同時に照射されることを防ぎながら、近接場光を用いた露光工程を行うことができる。
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態(実施の形態4)について図14(a)〜図14(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜3と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜3の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
以下では、図14(a)〜図14(c)に基づき、本発明の実施の形態4に関する近接場光および磁界発生素子(磁界発生素子,近接場光発生素子)704が発生する近接場光を、前記近接場光の発生源と磁界の発生源とに用いて磁気記録または磁気再生を行う光磁気記録再生装置(記録再生装置)700について、説明する。図14(a)は本発明の実施の形態4において用いられる近接場光および磁界発生装置(磁界発生素子,近接場光発生素子)705の概略図である。
図14(b)および図14(c)に示すように、光磁気記録再生装置700は、磁気記録および再生制御部701、照射制御部(照射制御手段)702、近接場光および磁界発生装置705、磁気再生部706、近接場光および磁界発生素子の位置制御部707、情報記録媒体(情報記録媒体)708、および情報記録媒体の位置制御部709を備えるものである。
また、近接場光および磁界発生装置705は近接場光および磁界発生素子704と近傍の光源703と磁気再生部706から成る。
近接場光および磁界発生素子704には、実施の形態1または実施の形態2で述べた各接続層、各第1の薄膜、各第2の薄膜、および各高導電体の組み合わせで構成される構造体である。各構成要素の組み合わせについては、実施の形態1および実施の形態2で述べた範囲で、必要に応じて選択することが好ましい。
近接場光および磁界発生素子704において磁界を発生させて記録を行う場合は、接続層が近接場光および磁界発生素子704の構成に含まれることが好ましい。接続層が近接場光および磁界発生素子704の構成に含まれない場合は、別途に磁界発生手段が装置に備えられていることが好ましい。
また、その場合は、近接場光および磁界発生素子704が、近接場光を照射して磁気再生部706により磁気再生のみを行う装置として実施することもできる。光源703から偏光を近接場光および磁界発生素子704に、図14(a)中の矢印で示す方向に入射することにより、前記近接場光および磁界発生装置705の出射端面(図6(a)における下側の面)において近接場光を発生させることができる。前記光源703はレーザーリッジやレーザーチップなどが好ましいが、他の光源であってもよい。
前記磁気再生部706は、現在のGMRヘッドのスライダの先端附近に備えられている磁気再生素子と同様の技術を用いて、近接場光および磁界発生装置705の先端附近に備えることができる。本実施形態では磁気再生部706が無い形態もとることができる。磁気再生部706が無い場合の形態は、磁気記録のみを行う装置になる。
図14(b)は本発明の第4の実施形態に関する近接場光および磁界発生素子704を用いて磁気記録または磁気再生を行う光磁気記録再生装置700の模式図であり、図14(c)は、光磁気記録再生装置700の、各構成の関わり合いを示すブロック図である。
磁気記録および再生制御部701は、近接場光および磁界発生素子の位置制御部707に対して、近接場光および磁界発生装置705の目標位置情報を与える。目標位置情報とは、記録媒体において記録を行う位置の情報である。
目標位置情報には、情報記録媒体708に対しての距離も含む。近接場光および磁界発生素子の位置制御部707は、目標位置情報に基づき、近接場光および磁界発生装置705の位置を制御する。近接場光および磁界発生素子の位置制御部707には、複数の位置制御精度を持つ手段で構成することができるが、近接場光および磁界発生素子の位置制御部707内にはマイクロメートル未満の単位で位置制御を行うことができる手段が含まれることが要件となる。高い精度で位置制御を行うことができる手段としては、例えば、ピエゾアクチュエータなどが用いられ、ナノメートル単位で位置制御を行うことができる。
同時に、近接場光および磁界発生素子の位置制御部707は、近接場光および磁界発生装置705の現在位置情報を近接場光および磁界発生素子の位置制御部707に返し、現在位置情報に基づき、近接場光および磁界発生素子の位置制御部707が近接場光および磁界発生装置705を目標位置に到達するように制御することができる。
同様に、情報記録媒体708も情報記録媒体の位置制御部709により位置制御が行われる。情報記録媒体708を、ステージ上に載せている場合は、xyz方向の位置制御が行われるが、情報記録媒体708が、ディスク状媒体であって、情報記録媒体の位置制御部709が、エアースピンドルなどである場合は、情報記録媒体の位置制御部709は位置は制御せず回転数の制御に止まる。
近接場光および磁界発生装置705が目標位置に到達すると、磁気記録および再生制御部701は照射制御部702に対して照射制御情報を与える。照射制御情報は、近接場光および磁界発生装置705で発生させて記録媒体に対して照射する近接場光の強度、照射する時間などに関する情報である。
照射制御情報を与えられた照射制御部702は、近接場光および磁界発生素子704近傍の光源703に対してレーザー光などを照射する照射制御命令を与え、近接場光および磁界発生素子704から記録媒体に対する近接場光の照射が行われる。
記録に際しては、近接場光の照射と併せて磁界の印加も行う必要がある。磁気記録および再生制御部701は、近接場光および磁界発生素子704に対して記録電流を流す。
本実施の形態では、近接場光および磁界発生素子704として、実施の形態1で述べた近接場光発生素子が使われるが、第1の薄膜102と第2の薄膜103の間に接続層101を介した電流路を設けることができ、前記の電流路に電流を流すことで、第1の薄膜102と第2の薄膜103との間にある空隙部の近傍に磁界を発生させることができる。
前記のように、情報記録媒体708に対して、適切な近接場光の照射と磁界の印加を行うことにより、磁気記録を行うことができる。この時、近接場光および磁界発生素子704内の第1の薄膜の側面に発生する近接場光の強度を、第2の薄膜の側面に発生する近接場光の強度に対して低下させ、両者の間に差を設けることができるため、情報記録媒体708に対して、隣接する2箇所で同時に近接場光が照射されることを防ぐことができる。
ここで、第1の薄膜の側面に発生する近接場光および磁界では記録できないが、第2の薄膜の側面に発生する近接場光および磁界では記録できるように、入射する光の強度や、情報記録媒体708の記録可能条件を設計すれば、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防ぐことができる。
磁気再生を行う場合は、磁気記録を行う場合と同様に、近接場光および磁界発生装置705が目標位置に到達するように、近接場光および磁界発生素子の位置制御部707によって制御される。
近接場光および磁界発生装置705が目標位置に到達すると、磁気記録および再生制御部701は、磁気再生手段706に対して再生電流を流す。磁気再生部706に再生電流を流すことにより、磁気再生部706は、磁気再生部706が、情報記録媒体708に記録された磁気情報を検出し、再生信号として磁気記録および再生制御部701に対して与える。
再生時に、記録媒体に対して、近接場光および磁界発生素子704から近接場光を照射し、加熱する必要がある場合は、記録時と同様に、磁気記録および再生制御部701から照射制御部702を介して光源703から、近接場光および磁界発生素子704に光が照射され、近接場光および磁界発生素子704から情報記録媒体708に対する近接場光の照射が行われる。
前記のように、情報記録媒体708に対して、近接場光の照射を伴う磁気再生も行うことができる。この時、近接場光および磁界発生素子704内の第1の薄膜の側面に発生する近接場光の強度を、第2の薄膜の側面に発生する近接場光の強度に対して低下させ、両者の間に差を設けることができるため、情報記録媒体708に対して、隣接する2箇所で同時に近接場光が照射されることを防ぐことができる。
ここで、第1の薄膜の側面に発生する近接場光および磁界では再生できないが、第2の薄膜の側面に発生する近接場光および磁界では再生できるように、入射する光の強度や情報記録媒体708の再生可能条件を設計すれば、隣接する記録トラックの磁気情報が再生されるクロストークを防ぐことができる。
以上のように本実施形態の光磁気記録再生装置700は、光源703と、光源703による光照射による熱を情報記録媒体に加えることで記録または再生を行う光磁気記録再生装置700において、前記近接場光発生素子、および前記磁界発生素子のいずれかが発生する近接場光を光源703に用いることが好ましい。
前記構成によれば、光照射による熱を利用して磁気記録もしくは磁気再生を行うか、または光照射による情報記録媒体の情報記録面の物理的特性の変化を利用して近接場光記録若しくは光再生を行う光磁気記録再生装置700において、前記近接場光発生素子または前記磁界発生素子が発生する近接場光を、光照射の光源703に用いることができる。
また、これにより、例えば、前記近接場光発生素子または前記磁界発生素子が発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。さらに、前記近接場光発生素子または前記磁界発生素子を用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防ぎながら磁気記録を行うことができる。また、記録トラックを近接場光により加熱することにより、情報記録媒体の温度を上昇させ、磁化を増大させて再生することができる。
また、本実施形態の光磁気記録再生装置700は、光源703による光照射を制御する照射制御部702を備え、照射制御部702は、第1領域および第2領域の一方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できず、他方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できるように、光源703による光照射を制御することが好ましい。
前記構成によれば、照射制御部702は、第1領域および第2領域の一方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できず、他方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できるように、光源による光照射を制御するようになっている。
それゆえ、例えば、前記近接場光発生素子または前記磁界発生素子を用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防ぎながら磁気記録を行うことができる記録再生装置を提供することができる。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、近接場光照射装置600または光磁気記録再生装置700の各ブロック、特に照射情報処理部603、および照射制御部604、ならびに、磁気記録および再生制御部701および照射制御部702は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、近接場光照射装置600または光磁気記録再生装置700は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、前記プログラムを格納したROM(read only memory)、前記プログラムを展開するRAM(random access memory)、前記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである近接場光照射装置600または光磁気記録再生装置700の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、前記近接場光照射装置600または光磁気記録再生装置700に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
前記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやコンパクトディスク−ROM/MO/MD/デジタルビデオデイスク/コンパクトディスク−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、近接場光照射装置600または光磁気記録再生装置700を通信ネットワークと接続可能に構成し、前記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、前記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
なお、本発明の近接場光発生素子は、基板上に形成された第1の薄膜と、基板上に形成された第2の薄膜とが、空隙部を挟んで基板の面内方向に対向し、前記対向の方向をX方向、空隙部が延在する方向をZ方向とすると、前記空隙部に対してX方向の振動を主成分とする偏光をZ方向の一方の端面(入射端面)から入射し、他方の端面(出射端面)において、近接場光を発生させる近接場光発生素子において、前記第1の薄膜の少なくとも出射端面附近を構成する材質の誘電率における実部係数が、前記第2の薄膜の少なくとも出射端面附近を構成する材質の誘電率における実部係数とは異なっていても良い。
前記構成によれば、前記近接場光発生素子により近接場光を発生する際に、一方の薄膜の出射端面附近は、誘電率の差異によって、他方の薄膜の出射端面附近に対して近接場光の発生効率を低下させることができ、2つの薄膜の出射端面附近に同じ程度の近接場光が発生することを防げる。
また、前記近接場光発生素子を用いて近接場光記録媒体に記録トラックを形成する場合、一方の薄膜の出射端面において、前記発生効率が低下した近接場光では記録できないが、他方の薄膜の出射端面附近において発生する近接場光では記録できるように、入射する光の強度や近接場光記録媒体の記録可能条件を設計すれば、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
また、本発明の近接場光発生素子は、前記第1の薄膜の側面および前記第2の薄膜の側面において、実部係数が小さい方の誘電率を有する材質からなる側面は、X方向と直交する面を有していても良い。
前記構成によれば、入射端面から出射端面までの距離が同じであれば、入射する光が空隙部の側面を伝播する距離を最短にできるため、入射する光が有するエネルギーの損失を最小にできるので、出射端面近傍を含む側面において近接場光が発生される効率を最大にすることができる。
また、本発明の近接場光発生素子は、前記近接場光発生素子において、前記第1の薄膜の少なくとも出射端面附近が非金属で構成され、前記第2の薄膜の少なくとも出射端面附近が金属で構成されていても良い。
前記構成によれば、金属と、誘電率における実部係数が金属と比べて大幅に異なる非金属を少なくとも出射端面附近に用いることで、第1の薄膜の出射端面附近で発生する近接場光の強度と第2の薄膜の出射端面附近で発生する近接場光の強度の差を大きくすることができる。
また、本発明の近接場光および磁界発生素子は、前記近接場光発生素子において、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜の少なくとも一方の薄膜は導電性を有し、前記第1の薄膜または前記第2の薄膜のいずれか、あるいは、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜のいずれもと電気的に接続する接続層が設けられ、少なくとも一方の薄膜と接続層に電流を印加することにより、磁界を発生させても良い。
前記構成によれば、近接場光だけではなく磁界も発生させることがきる。よって、前記素子が発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。前記近接場光および磁界発生素子を用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
また、本発明の近接場光および磁界発生素子は、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜の少なくとも一方の薄膜において、出射端面附近とそれ以外の部分とは異なる材質からなり、出射端面附近の材質に対し、出射端面附近以外の部分の材質は導電率が高くても良い。
前記構成によれば、素子に電流を印加して磁界を発生させ、記録素子自体を磁界印加手段とする場合に、素子を構成する材質の一部を導電率の高い材質に置き換えることにより、電気抵抗を低減することができる。前記電気抵抗を低減することにより、一定電圧下でも電流が増大し、磁界も増大させることができる。また、前記電気抵抗による熱損失を低減でき、素子に関する発熱量や消費電力を抑えることができる。
また、本発明の光照射装置は、光源と、少なくとも前記光源による照射を制御する手段を備える光照射装置(例えばリソグラフィ露光装置など)において、前記近接場光発生素子および近接場光および磁界発生素子のいずれかが発生する近接場光を光源に用いても良い。
前記構成によれば、光源と、少なくとも光源による照射を制御する装置を備える光照射装置、例えばリソグラフィ露光装置などにおいて、前記近接場光発生素子または近接場光および磁界発生素子が発生する近接場光を、光源に用いることができる。
また、照射制御装置による制御に基づき、前記近接場光発生素子および近接場光および磁界発生素子のいずれかの素子により、近接場光が同時に2箇所に照射されることを防ぎながら、近接場光を用いた光照射を行うことができる。
また、本発明の磁気記録再生装置は、光照射による熱を情報記録媒体に加えることで磁気記録または磁気再生を行う磁気記録再生装置において、前記近接場光発生素子および近接場光および磁界発生素子のいずれかが発生する近接場光を、前記光照射の光源に用いていても良い。
前記構成によれば、光照射による熱を利用して磁気記録または磁気再生を行う装置において、前記近接場光発生素子または近接場光および磁界発生素子が発生する近接場光を、前記光照射の光源に用いることができる。
また、これにより、前記素子が発生する近接場光および磁界を用いた近接場光アシスト磁気記録を行うことができる。前記素子を用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防ぎながら磁気記録を行い、また、前記記録トラックを近接場光により加熱することにより、情報記録媒体の温度を上昇させて前記媒体の磁化を増大させ、磁気再生を行う装置に備えられた磁気再生手段により再生することができる。
以上、本発明の近接場光発生素子などによれば、当該近接場光発生素子により近接場光を発生する際に、一方の薄膜の出射端面附近は、誘電率の差異によって、他方の薄膜の出射端面附近に対して近接場光の発生効率を低下させることができ、2つの薄膜の出射端面附近に同じ程度の近接場光が発生することを防げる。
また、前記近接場光発生素子を用いて近接場光記録媒体に記録トラックを形成する場合、一方の薄膜の出射端面において、前記発生効率が低下した近接場光では記録できないが、他方の薄膜の出射端面附近において発生する近接場光では記録できるように、入射する光の強度や近接場光記録媒体の記録可能条件を設計すれば、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防げる。
なお、本発明の記録再生装置は、前記光源による光照射を制御する照射制御手段を備え、該照射制御手段は、前記第1領域および第2領域の一方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できず、他方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できるように、前記光源による光照射を制御しても良い。
前記構成によれば、照射制御手段は、第1領域および第2領域の一方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できず、他方の領域から発生した近接場光の光強度では記録できるように、光源による光照射を制御するようになっている。
それゆえ、例えば、近接場光発生素子または磁界発生素子を用いて情報記録媒体に記録トラックを形成すると、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防ぎながら磁気記録を行うことができる記録再生装置を提供することができる。
また、本発明の照射制御プログラムは、前記記録再生装置における前記照射制御手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムであっても良い。
また、本発明の記録媒体は、前記照射制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても良い。
また、本発明の記録再生装置における照射制御方法は、基板上に、第1の薄膜と第2の薄膜とが、空隙部を挟んで前記基板の面内方向に対向して形成されており、前記対向する方向を対向方向、前記空隙部が延在する方向を延在方向とするとき、前記空隙部に対して、前記対向方向の振動を主成分とする偏光を、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜のそれぞれの延在方向における一方の端面である入射端面側から入射させることにより、それぞれの延在方向における他方の端面である出射端面側から、近接場光を発生させると共に、前記第1の薄膜の少なくとも前記出射端面附近の第1領域における誘電率の実部係数と、前記第2の薄膜の少なくとも前記出射端面附近の第2領域における誘電率の実部係数とは、異なっている近接場光発生素子と、該近接場光発生素子によって発生した近接場光による光照射を制御する照射制御手段とを備え、該光照射による熱を情報記録媒体に加えることで記録または再生を行う記録再生装置における照射制御方法であって、前記照射制御手段が、前記第1領域および第2領域の一方の領域から発生した近接場光では前記記録または再生を行なうことができず、他方の領域から発生した近接場光では前記記録または再生を行なうことができるように、前記偏光を制御する偏光制御ステップと、前記偏光制御ステップで、制御された偏光を、前記入射端面側から入射させることにより、前記第1領域および前記第2領域のそれぞれから近接場光を発生させる近接場光発生ステップとを有していても良い。
前記方法によれば、照射制御手段が、第1領域および第2領域の一方の領域から発生した近接場光では記録または再生を行なうことができず、他方の領域から発生した近接場光では記録または再生を行なうことができるように、偏光を制御する偏光制御ステップと、偏光制御ステップで、制御された偏光を、入射端面側から入射させることにより、第1領域および第2領域のそれぞれから近接場光を発生させる近接場光発生ステップとを有する。
それゆえ、当該近接場光発生素子により近接場光を発生する際に、一方の薄膜の出射端面附近の領域(第1領域または第2領域)は、誘電率の差異によって、他方の薄膜の出射端面附近の領域(第2領域または第1領域)に対して近接場光の発生効率を低下させることができ、2つの薄膜の出射端面附近の第1領域および第2領域に同じ程度の近接場光が発生することを防げる。
また、近接場光発生素子を用いて情報記録媒体に記録トラックを形成する場合、一方の薄膜の出射端面附近の領域(第1領域または第2領域)において、発生効率が低下した近接場光では記録できないが、他方の薄膜の出射端面附近の領域(第1領域または第2領域)において発生する近接場光では記録できるように、入射する光の強度や情報記録媒体の記録可能条件を設計すれば、同時に2本の記録トラックが形成されることなく、確保すべき所定のトラック間隔を確保できなくなったり、隣接する記録トラックに重ねて記録してしまうことを防ぐことができる。