[実施の形態1]
本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の電磁界発生素子(以下単に「本素子」と称する)の概略を示す説明図である。本素子100は、基板160上に帯状の導体110が埋め込まれて積層されており、この導体110に電流i(図8参照)を流せるように、基板160の一方の側面には電極112aが、他方の側面には電極112bがそれぞれ形成されている。
導体110表面の両側縁部は、堤状に盛り上がった(突出した)堤状構造となっており、以下、この堤状構造を成す盛り上がった部分を堤状部(堤状構造部)141・142と称する。該導体110には電流iを狭窄するための狭窄部130が形成されている。なお、ここでは、導体110の表面の縁部の両側を盛り上げてなる堤状部141・142を、導体110の全長に形成したが、狭窄部130付近のみその縁部を盛り上げて堤状部141・142を形成しても良く、また、狭窄部130における片側縁部にのみ形成されていても良い。
ここで、導体110および電極112a・112bは、電気伝導率が高い金属またはカーボンナノチューブで構成されている。特に、高周波応答性を考える上で、導体110および電極112a・112bは、非磁性金属であるAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ti、W、Ir、Pdなどで構成されていることが望ましい。
一方、基板160は、Si、Ge等のIV属半導体、GaAs、AlGaAs、GaN、InGaN、InSb、GaSb、AlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnS、ZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2、CeO2等の酸化物絶縁体、SiNなどの窒化物絶縁体、ガラス、プラスチックなどで構成されている。
また、導体110と基板160との密着性を向上させるために、導体110と酸化物絶縁体もしくは窒化物絶縁体で構成される基板160との間には、Zn、Ti、Cr、Alなどから構成される密着層(中間金属層)が形成されているほうが望ましい。これにより、導体110の基板160からの剥がれが抑えられ、本素子100の素子強度が向上する。
図2は、本素子100の図1に示すCxに沿った断面図である。上記基板160には、光源であるレーザ発生源161、光導波路(伝播手段)117、光学素子(伝播手段)115、光検出器162が備えられている。光学素子115は、基板160の裏面を加工して、三角柱状に掘り込まれて形成されている。この光学素子115の傾斜面115sには、誘電体薄膜が多層にコーティングされているか、あるいは金属膜が形成されている。
レーザ発生源161からの光Piは、光導波路117内を通過して、光学素子115の傾斜面115sによって反射され、狭窄部130を中心に10μmの範囲内で導体110と基板160との界面に伝搬される。光学素子115によって分岐されて伝搬方向が変換されなかった光Piは、光検出器162によって検出される。光検出器162がレーザ発生源161からの光Piを検出することで、図示しない制御部がレーザ発生源161からの光Piが所望の出力になるように制御を行う。
また、光学素子115は、光Piを分岐する以外に、狭窄部130近傍に光をより多く集光できるように、光学素子115の傾斜面115sは湾曲していてもよい。
また、レーザ発生源161と光学素子115との間に配された光導波路117は、基板160よりも屈折率の高い物質で構成されていることが好ましい。これにより、基板160裏面側での光Piの広がりを抑え、光学素子115の所望の位置に光Piを照射し、狭窄部130での光Piの照射領域の広がりを抑えることができる。
また、図1及び図2に示すように、レーザ発生源161と基板160とを一体化形成することで、光源としてのレーザ発生源161の光Piにより、狭窄部130周辺に近接場NFを発生させることができ、本素子100の信頼性向上および生産性向上を実現することができる。
さらに、基板160の表面には、図1に示すように周辺よりも突出した突出部111が形成されている。この突出部111の基準面(突出面)111aと狭窄部130の堤状部141・142の先端との距離T(図3参照)が50nm以下に近接するように、狭窄部130には堤状部141・142が設けられている。突出部111と狭窄部130の堤状部141・142との位置関係は、図3に示すように、突出部111から堤状部141・142がさらに突出していてもよい。ただし、この場合、堤状部141・142は上述した基板160の材質と同様の材質でコーティングされている。
ここで、突出部111とは、基板160の裏面を下部に配置した時に、上部に最突出している領域の平均高さを基準とする水平面に平行な面が突出した部位をいう。換言すれば、突出部111とは、図3に示すように、情報記録媒体350に本素子100を対向させた場合に、情報記録媒体350に対する本素子100の対向面側の略平行かつ近接する面を有する部分の構造をいう。なお、本素子100に対向させるものは、情報記録媒体350に限らず、他の対象物であってもよい。
突出部111の基準面111aの表面粗さ(Ra)は、10nm以下である。また、基板160裏面と水平面とのなす角θは、図4に示すように、0°≦θ<90°であれば、水平面に対して傾いていても良い。
また、導体110は、基板160に必ずしも埋め込まれている必要はなく、図5に示すように、基板160、突出部111、導体110の順に積層されていてもよい。この場合には、上記の突出面111aは、導体110における情報記録媒体350と対向する面と定義する。また、この場合も、堤状部141・142は、上述した基板160の材質と同様の材質でコーティングされている。
なお、上記では、電極112a・112bは、基板160の側面に形成されているとしたが、これに限られず、図6に示すように、基板160にz方向に沿って貫通した穴を形成し、基板160裏面から基板160表面に延びた電極113a・113bを形成してもよい。図7は、図6に示す本素子100のCx軸に沿った断面図である。これにより、配線がプリントされたフレキシブルケーブルとの接合が容易になり、デバイスとしてアセンブルする場合の作業効率が向上する。
次に、帯状の導体110に形成されている狭窄部130の構成および狭窄部130で発生する磁界について、図8ないし図12を用いて説明する。
図8は、図1に示す本素子100の電流iの流れと、磁界Bの発生とを模式的に示した本素子100の突出部111付近の簡略図である。図9は、図8に示す狭窄部130の周辺を拡大した図である。図10は、図9に示す狭窄部130の周辺を更に拡大した図である
狭窄部130は、図9に示すように、帯状の導体110の一部をその線長方向(x方向)と直交する方向(y方向)に窄めて、導体110の線幅Wを他の部分よりも細くした部分であって、帯状をなす導体110の一方の縁(内周縁)が他方の縁(外周縁)近傍にまで入り込み、該外周縁が外側へ張り出したような略半円形状である。上記線幅Wとは、狭窄部130において、導体110が最も狭くなっている箇所の内周縁と外周縁との縁間距離をいう。
狭窄部130の内周長さは、内周縁に接する円(図10に示す円129a)の直径Gs、すなわち、この円の中心120から導体110の内周縁までの距離rの2倍の長さとしている。
狭窄部130は、図9に示すように、帯状の導体110の一部を、その線長方向(x方向)と直交する方向(y方向)に窄めて、導体110の線幅Wを部分的に他の部分よりも細くした部分であって、帯状をなす導体110の一方の縁(内周縁)が他方の縁(外周縁)近傍にまで入り込み、該外周縁が外側へと張り出したような、略半円形状である。
ここで、線幅Wとは、狭窄部130において導体110が最も狭い箇所(最も狭窄されている箇所)の導体110の外周縁と内周縁との縁間距離である。また、狭窄部130の内周長さGsとは、狭窄部130の内周縁に接する円129aの直径の長さ2rである。換言すれば、狭窄部130の内周長さGsは、この円129aの中心120から導体110の内周縁(より正確には、堤状部142の内周縁)までの距離rの2倍の長さである。また、狭窄部130の外周長さLとは、狭窄部130の線幅がWで電流iが流れている領域の略半円上の外周縁に接する円の直径の長さである。
また、狭窄部130の導体110の厚さは、レーザ発生源161から出射される光Piの波長以下に設定されている。
そして、堤状部141・142の高さTd(図2参照)と幅Wdとはともに100nm以下である。堤状部141・142の高さTdは、堤状部141・142近傍の導体110中央部の平面を基準として定義している。また、狭窄部130が図9に示すように、略半円形状によって形成されている場合、狭窄部130の外周長さLは、狭窄部130の線幅Wの箇所で電流が流れている領域の略半円上の外周縁に接する円の直径と定義している。
図8に示すように、破線で示された電流iが導体110に流れると、電流iの電流経路は、狭窄部130の周縁に沿ったように略U字状となる。そして、狭窄部130の周囲には、流された電流iの大きさに比例して右ねじの法則から磁界Bが発生する。図8に示す実線矢印は、発生する磁界Bの向きを示している。
導体110に電極112a側から電極112b側へ電流iが流れれば、狭窄部130の外周縁近傍ではz軸正方向の磁界Bが、狭窄部130中央部の突出部111の表面ではy軸負方向の磁界Bが、狭窄部130の内周縁近傍ではz軸負方向の磁界Bが発生する。
磁界Bの強さHは、突出部111に近接している導体110の堤状部141・142近傍において、突出部の基準面111aに導体110が近接している分だけ磁場が増強される。電流iの電流経路が略U字状であるところ(狭窄部130)では、この略U字状の導体110の内周縁に近接する円129a(図9、図10参照)の中心120b付近に磁束線が収束され、磁界Bが増強される。
略U字状の導体110の内周縁に近接する円129aの中心120bまたは中心120bの近傍における磁界Bの強さHは、内周長さGs、線幅W、電流i(I)を用いて、以下の式により導かれる。
たとえば、狭窄部130の内周長さGsを1μm、狭窄部130の線幅Wを1μmとし、電流i(I)が100mAである場合に、狭窄部130の内周縁に接する円129aの中心120b近傍における磁界Bの強さHは、17.3kA/m(=218Oe)である。
狭窄部130の内周縁に接する円129aの中心120b付近での磁界B分布は、狭窄部130の内周縁の形状に相似した分布になり、導体110の内周縁近傍では磁界Bの強さの同じ等磁界強度曲線が略半円状になる。
また、略U字状の導体110の外周縁近傍では、内周縁に比べ磁束線が発散するため磁界Bが弱められ、狭窄部130の内周縁に近接する円129aの中心120付近に選択的に強い磁界Bを発生することができる。
また、上記の式から分かるように、狭窄部130の線幅Wを小さくすれば、狭窄部130近傍で強い磁界Bを発生させる事ができる。これにより、狭窄部130の線幅Wは、1μm以下にすることが望ましい。しかしながら、導体110に流れる電流iが大きい場合、狭窄部130が電気抵抗により破壊される場合がある。
この破壊を防止するために、例えば電流iが100mA程度であれば、狭窄部130の断面積は、6400nm2程度より大きくし、狭窄部130の外周長さLは、長くなると電流iが流れた時に発生するジュール熱で狭窄部130が発熱融解してしまうので、20μm以下にすることが望ましい。
次に、導体110に設けられる狭窄部130の形状のその他の変形例について、狭窄部130の平面図である図13ないし図20を用いて説明する。つまり、狭窄部130の形状は、上記で説明したものに限られず、以下の図13ないし図20に示すような形状でもよい。なお、堤状部141・142及び導体110は平面図であるが、図においてハッチングにて示す。
上記の狭窄部130の形状は、例えば図13に示す狭窄部130aのように、導体110の内周縁と外周縁とがともに略矩形状であってもよい。狭窄部130aの外周長さLaは、導体110の線幅がWaで電流iが流れている領域のx方向の長さである。図20は、図13に示す狭窄部130aを更に拡大した平面図である。
図20に示すように、狭窄部130aの内周長さGsaは、狭窄部130aの内周縁の三辺120c・120d・120eに接する円129bの直径Gsa、すなわち、この円129bの中心120aから導体110の内側縁までの距離raの2倍の長さとする。
このような略矩形状の狭窄部130aを有する導体110に電流iを流した場合、狭窄部130aの内周縁の三辺120c・120d・120eに接する円129bの中心120aにおいて磁束線が収束される。狭窄部130aに接する円129bの中心120a付近での磁界分布は、狭窄部130aの矩形状に相似した分布になるため、上記した狭窄部130と比べてその形状が矩形である狭窄部130aの磁界分布は、上記狭窄部130の磁界分布よりも矩形的になる。
また、上記狭窄部130の形状は、図14に示すように、導体110の内周縁が略矩形状で、かつ導体110の外周縁が略直線状であってもよい。図14に示す狭窄部130bの線幅Wbは、図13に示す線幅Waと同様に定義する。また、狭窄部130bの内周長さGsbは、狭窄部130bの内周縁の三辺120c・120d・120eに内接する円129bの直径、すなわち、この円129bの中心120aから導体110の内周縁までの距離raの2倍の長さであり、狭窄部130bの外周長さLbも内周長さGsbと同じである。
また、上記狭窄部130の形状は、図15に示すように、導体110の内周縁が略半円状であり、かつ導体110の外周縁が略直線状であってもよい。図15に示す狭窄部130cの線幅Wcは、図13に示す線幅Waと同様に定義する。狭窄部130cの内周長さGscは、狭窄部130cの内周縁に接する円129aの直径、すなわち、円129aの中心120bから導体110の内周縁までの距離r(図10参照)の2倍の長さであり、狭窄部130cの外周長さLcも内周長さGscと同じものとする。
また、上記狭窄部130の形状は、図16に示すように、導体110の堤状部142側の縁と堤状部141側の縁との両側縁それぞれが略矩形状であり、この両略矩形状の狭窄部130dの両側縁に接する円129b・129b’の中心間を結ぶ直線がy軸と平行になっていてもよい。
狭窄部130dの堤状部141側の内周長さGsd1は、狭窄部130dの内周縁の三辺120c’・120d’・120e’に内接する円129b’の直径2ra(図20参照)と同じ長さである。同様に、狭窄部130dの堤状部142側の内周長さGsd2は、狭窄部130dの内周縁の三辺120c・120d・120eに内接する円129bの直径2ra(図20参照)と同じ長さである。狭窄部130dの線幅Wdは、図13に示す線幅Waと同様に定義する。
狭窄部130dの外周長さLd(不図示)は、内周長さGsd1・Gsd2のうち小さい方と同じものとする。なお、内周長さGsd1と内周長さGsd2との値は、互いに同じであっても異なっていても良い。内周長さGsd1と内周長さGsd2との長さを変えることで、狭窄部130dの堤状部141側と堤状部142側とで発生する磁界Bの強度比を制御することができる。なお、狭窄部130dの堤状部141側と堤状部142側とで発生する磁界Bの向きは略反平行(お互いに逆向き)である。
また、上記狭窄部130の形状は、図17に示すように、導体110の堤状部142側の縁と堤状部141側の縁との両側縁それぞれが略半円形状であり、かつこれら両略半円形状の狭窄部130eの両側縁に接する円129a・129a’の中心間を結ぶ直線がy軸と平行になっていてもよい。
狭窄部130eの堤状部141側の内周長さGse1は、この狭窄部130eの堤状部141側の内周縁に接する円129a’の直径2r(図10参照)の長さに等しい。同様に、狭窄部130の堤状部142側の内周長さGse2も上記内周長さGse1と同様に定義している。なお、狭窄部130eの線幅Weは、図13に示す線幅Waと同様に定義する。
また、狭窄部130eの外周長さLe(不図示)は、外周長さGse1・Gse2のうち小さい方と同じものとする。なお、内周長さGse1と内周長さGse2との値は、互いに同じであっても異なっていても良い。内周長さGse1と内周長さGse2との長さを変えることで、狭窄部130の堤状部141側と堤状部142側とで発生する磁界Bの強度比を制御することができる。尚、狭窄部130eの堤状部141側と堤状部142側とで発生する磁界Bの向きは略反平行(お互いが逆向き)である。
また、上記狭窄部130の形状は、図18に示すように、導体110の堤状部141側と堤状部142側との両側が略矩形状であり、かつこれら両略矩形状の狭窄部130fの両側縁に接する円129b’・129bの中心間を結ぶ直線がy軸と平行になっていなくてもよい。
狭窄部130fの堤状部141側の内周長さGsf1は、狭窄部130fの内周縁の三辺120c’・120d’・120e’に内接する円129b’の直径の長さと等しい。同様に、狭窄部130fの堤状部142側の内周長さGsf2は、狭窄部130fの内周縁の三辺120c・120d・120eに内接する円129bの直径の長さと等しい。なお、狭窄部130fの線幅Wfは、図13に示す線幅Waと同様に定義する。
また、狭窄部130fの外周長さLfについては、線幅Wfで電流が流れている領域の長さと定義する。内周長さGsf1・Gsf2を変えることで、狭窄部130fの堤状部142側の円129bの中心120aとと堤状部141側の円129b’の中心120a’とで発生する磁界Bfの強度比を制御することができる。なお、狭窄部130fの堤状部142側の円129bの中心120aと堤状部141側の円129b’の中心120a’とで発生する磁界Bの向きは略反平行(お互いが逆向き)である。また、内周長さGsf1とGsf2との値は、同じであっても良い。
また、上記狭窄部130の形状は、図19に示すように、導体110の堤状部142側の縁と堤状部141側の縁との両側縁それぞれが略半円形状であり、かつこれら両略半円形状の狭窄部130gの両側縁に接する円129a・129a’の中心間を結ぶ直線がy軸と平行になっていてもよい。狭窄部130gの堤状部141側の内周長さGsg1は、狭窄部130gの内周縁に接する円129a’の直径とする。
同様に、狭窄部130の堤状部142側の内周長さGsg2は、狭窄部130gの内周縁に接する円129aの直径とする。また、狭窄部130gの線幅Wgは、図13に示す線幅Wと同様に定義する。狭窄部130gの外周長さLgについては、前記線幅Wgで電流が流れている領域の長さと定義する。
内周長さGsg1・Gsg2の長さを変えることで、狭窄部130の堤状部142側の円129aの中心120bと堤状部141側の円129a’の中心120’とで発生する磁界Bの強度比を制御することができる。なお、狭窄部130の堤状部142側の円129aの中心120bと堤状部141側の円129a’の中心120’とで発生する磁界Bの向きは略反平行(お互いが逆向き)である。また、内周長さGsg1とGsg2の値は、同じであっても異なっていても良い。
次に、光源としてのレーザ発生源161からの光Piが導体110の狭窄部130近傍に照射された場合の表面プラズモンDspの励起及び近接場NFの発生について図11、図12を用いて説明する。
図11は、図1に示す本素子100の軸Cyに沿った断面図であり、図12は、図11に示す本素子100における狭窄部130の周辺を拡大した図である。図12は、導体110の狭窄部130に光Piが照射もしくは伝搬している様子を示している。レーザ発生源161(図1参照)からの光Piは、プリズムなどの光学素子115によって反射され、狭窄部130を中心に10μmの範囲内で導体110に光が伝搬され、照射する。
狭窄部130に光Piが照射されることで、基板160と導体110との界面110aに、電界ベクトルVeが界面110aに対して略垂直である表面プラズモンDspが励起される。これにより狭窄部130に、近接場NFが発生する。ここで、近接場NFとは、物質の表面および界面110a近傍で生じる表面電磁波である表面プラズモンDsp(表面プラズモンポラリトン)や孤立微粒子や微細金属針先端などに局所的に励起される局所表面プラズモンDlsp(局所表面プラズモンポラリトン)などを総称したものである。
なお、図12では、説明の便宜上、近接場NFは、狭窄部130の堤状部142側に発生しているように図示されているが、実際には、狭窄部130の堤状部141側にも発生している。但し、狭窄部130の内周側に発生する近接場NFと、狭窄部130の外周側に発生している近接場150とは、強度が異なっている。また、堤状部141または堤状部142のいずれか一方のみの堤状部を設ける場合には、堤状部141を設けるよりも堤状部142を設けた方が磁界強度が強く、後述する近接場NFが増強するので、狭窄部130には少なくとも堤状部142を設けることが好ましい。
導体110の狭窄部130と基板160との界面110aは、突出部111の基準面111aに対して直角でない角度を有することが望ましい。すなわち、導体110図12に示すように、狭窄部130を構成する導体110の縁部の界面110aに、光Piを照射/伝搬させる際、光Piの光軸に対して平行からずれた面を形成している。
これにより、導体110における光Piから表面プラズモンDspに変換される導体110と基板160との界面110aの面積が増加し、狭窄部130を構成する導体110の縁部に形成された堤状部142に伝搬する表面プラズモンDspの強度が増加する。
また、堤状部142にて所望強度の近接場NFを得るためには、表面プラズモンDspに変換される導体110と基板160との界面110aに光Piが入射すればよいので、レーザ発生源161と所望の電磁界発生領域150との光軸位置合わせが簡略化され、本素子100の信頼性向上および生産性向上を実現する。
また、導体110が基板160に埋め込まれて形成されているため、導体110と基板160との間に緻密性の高い界面110aが形成され、界面110a内方向での表面プラズモンDspの散乱を抑制し、表面プラズモンDspの伝搬効率が上がり、狭窄部130を構成する導体110の縁部の堤状部142において、レーザ発生源161からの光Piの強度に対しての近接場NF発生効率が高くなる。
堤状部142に光Piが照射/伝搬された場合、堤状部142において局所的な表面プラズモンDlspが励起される。励起された局所的な表面プラズモン(以下、単に「局所表面プラズモン」と称する)Dlspは、界面110aを伝搬してきた表面プラズモンDspと結合し、電磁界発生領域150で近接場NFを増強する。
これは、電界が金属表面もしくは金属と誘電体の界面110aに対して略垂直になるため、金属の突起構造において電界集中が生じ、これにより、堤状部141・142で表面プラズモンDspが増強される。また、突起構造がナノメートルサイズになると、バルクの時とは異なり、突起構造表面もしくは界面110aにおいて、局所表面プラズモンDlspが励起されるからである。
また、上記で導体110と基板160との密着性を向上させるために、導体110と酸化物絶縁体もしくは窒化物絶縁体で構成される基板160との間に密着層があるほうが望ましいと記載したが、導体110と基板160の間に第二の金属膜118を形成することで、導体110から堤状部142とは反対方向に伝搬する表面プラズモンDspの成分を、第二の金属膜118層により再度堤状部142に向けて反射することもできる。
これにより、第二の金属膜118で反射した表面プラズモンDspが堤状部142において増強される。第二の金属膜118を構成する金属としては、導体110を構成する金属よりもプラズマ振動数が高い金属が望ましい。
また、導体110と基板160との間に軟磁性層119を形成すると、導体110に流された電流iにより狭窄部130で発生する磁束が、軟磁性層119によって収束されるため、狭窄部130近傍での磁束密度が増加し、強い磁界Bを得ることができる。また、軟磁性層119がフェライトなどの軟磁性絶縁体であれば、軟磁性層119での磁界Bの変化によって生じる渦電流を抑えることができるので、高周波域での磁場損失を低減することができ、狭窄部130近傍において強い磁界Bを得ることができる。
また、軟磁性層119が導電性物質、すなわち、導電性金属層である場合、導体110層から軟磁性119層への電流iの注入をブロックするための絶縁層(不図示)を軟磁性層119と導体110との間に形成する。これにより、導体110から導電性の軟磁性層119への電流iの流入を抑えることで、狭窄部130近傍での磁界Bの低減を抑えることができる。つまり絶縁層によって軟磁性層119への漏れ電流iが防止されるので、狭窄部130での電流密度の低減が抑えられ、磁場損失を低減することができ、導電性金属層によって強い磁界Bが得られる。絶縁層の膜厚としては100nm以下が望ましい。
上述した通り、基板160の表面には、周辺よりも突出した突出部111が形成されており、この突出部111の基準面と堤状部141・142の先端との距離が50nm以下に近接するように狭窄部130の堤状部141・142が配置されている。
これによれば、近接場NF発生領域(電磁界発生領域150)を対向する試料面、もしくは媒体面に対して選択的に近接することで、素子内部での散乱光または漏れ光(迷光)による選択領域以外での近接場NF発生を抑制でき、所望の試料面もしくは媒体面の領域からの近接場NFとの相互作用に伴う散乱光Psもしくは反射光Prを、選択的に検出することができる。
狭窄部130近傍の導体110と基板160との界面110aで表面プラズモンDspを励起するためには、光Piは、界面110aに対して光Piの電界ベクトルVeが略垂直なp波が望ましい。
図21ないし図23は、レーザ発生源161と光学素子115と光検出器162との位置関係を示す図で、図1に示す本素子100をz軸正方向から透過的に見た図である。図21では、基板160に形成された導体110が2点鎖線で、Cx軸、Cy軸を1点鎖線で示されている。
上述の通り、本素子100は、基板160において、導体110が形成されている面に対向する面には、レーザ発生源161と、光Piを反射して導体110の狭窄部130に照射/伝搬させるための光学素子115と、光Piの出力を検出するための光検出器162とを備えている。
ここで、レーザ発生源161は、TEモードの光を発生している。レーザ発生源161からの光Piは、光学素子115によって反射され、z軸正方向に伝搬方向が変換される。
このとき、狭窄部130の形状が略矩形(図13等参照)であるとすると、光Piの偏光は、ほぼ保持されるので、伝搬される光Piは、狭窄部130の内周縁の辺120dに略垂直な電界ベクトルVeを持ち、この内側縁の辺120dを縁とする界面110a(図12参照)において選択的に表面プラズモンDspを励起することができる。これにより、内周縁の辺120dに近接する堤状部142に選択的に近接場NFが発生することになる。なお、レーザ発生源161、光学素子115、光検出器162の配置は上記の配置に限られず、以下に示すような配置でもよい。
図22では、レーザ発生源161と光学素子115と光検出器162との配置が、図21に示す配置から時計回りに90°回転した場合の位置関係を示している。この位置関係の場合、レーザ発生源161からのTEモードの光Piは、光学素子115によってz軸正方向に伝搬方向が変換されるが、光Piは、狭窄部130の内周縁の辺120c・120eに略垂直な電界ベクトルVe’を持ち、この内周縁の辺120c・120eを縁とする界面110a(図12参照)において選択的に表面プラズモンDspを励起することができる。これにより、内周縁の辺120c、120eに近接する堤状部142に選択的に近接場NFが発生することになる。
図23では、図21に示すレーザ発生源161と光学素子115と光検出器162とによって決定された一つの光軸に対して、狭窄部130の軸Cxがなす角ηで配置された場合の位置関係を示している。本素子100を形成する際に、なす角ηを制御することで、狭窄部130に入射する光Piの偏光方向を変え、この電界ベクトルVeに略垂直な任意な内周縁の辺120c・120d・120eを縁とする界面110a(図12参照)において選択的に表面プラズモンDspを励起することができる。これにより、内周縁の任意の辺120c・120d・120eに近接する堤状部142に選択的に近接場NFが発生することになる。
表面プラズモンDspが基板160と導体110との界面110aに対向した突出部111近傍に励起されるための狭窄部130の厚さは、表面プラズモンDspの侵入長dより小さい必要がある。ここで、表面プラズモンDspの侵入長dとは、光照射の境界面での電界成分を1として、電界成分がe−1〜0.368になる界面110aからの長さである。
表面プラズモンDspが生じる複素屈折率の条件および表面プラズモンDspの侵入長dは、金属(ここでは導体110)の複素屈折率Nmetal、金属に接する層(ここでは基板160)の複素屈折率Ni、照射される光(ここでは光Pi)の波長λおよび入射角φによって表される。ここで、金属の複素屈折率Nmetalは、実部である金属の屈折率をnmetalおよび虚部である金属の消衰係数をkmetalとすると、Nmetal=nmetal+ikmetal(iは、虚数単位)で表され、金属に接する層の複素屈折率Niは、実部である屈折率をniおよび虚部である消衰係数をkiとすると、Ni=ni+iki(iは、虚数単位、niは、ki≦ni≦0)で表される。
表面プラズモンDspが生じる複素屈折率の条件は、基板160が光Piに対して透明であるので消衰係数ki=0とした上で、以下の通りとなる。
表面プラズモンDspの侵入長dは、表面プラズモンDspが生じる複素屈折率の条件が成立する場合に、以下の式で表される。
たとえば、光Piの波長λ=780nm、光Piの入射角φ=85°、基板160の屈折率ni=2.3(例えば、ZnS)である場合、導体110がAu、Agのように金属の屈折率nmetalが1より小さく金属の消衰係数kmetalが3より大きい金属では、表面プラズモンDspの侵入長d=約450nmであり、導体110がTi、Pt、Al、Pdのように金属の屈折率nmetalが1より大きく金属の消衰係数kmetalが3より大きい金属では、表面プラズモンDspの侵入長d=約770nmとなり光Piの波長程度となる。
また、光Piの波長λ=400nm、光Piの入射角φ=85°の場合、導体110がAu、Agでは、表面プラズモンDspの侵入長d=約230nmであり、Ti、Pt、Al、Pdでは、表面プラズモンDspの侵入長d=約395nmとなる。ここで、導体110に電流iが流されることによって、狭窄部130が破壊されないように、狭窄部130の線幅Wは狭窄部130の断面積が約6400nm2より大きくなるような線幅Wとする。
たとえば、最小線幅Wについては、狭窄部130の断面積が矩形であって、光Piの波長λ=780nm、光Piの入射角φ=85°、基板160の屈折率ni=2.3(例えば、ZnS)である場合、導体110がAu、Agであるときには、狭窄部130の線幅Wは約15nm、導体110がPt、Al、Pdであるときには、狭窄部130の線幅Wは約9nmとなる。また、光Piの波長λ=400nm、光Piの入射角φ=85°の場合、導体110がAu、Agであるときには、狭窄部130の線幅Wは約28nm、導体110がTi、Pt、Al、Pdであるときには、狭窄部130の線幅Wは約17nmとなる。
狭窄部130の厚さが、上述の表面プラズモンDspの侵入長d以下に設定され、光Piが狭窄部130に照射されると、狭窄部130と基板160との界面110a、および狭窄部130と基板160との界面110aに対向した界面110bにおいて表面プラズモンDspが励起され、狭窄部130と基板160との界面110aに対向した突出部111近傍で近接場NFが発生することになる。
さらに、少なくとも狭窄部130において、導体110と基板160との界面110aに近傍の突出部111が、基板160と同じ屈折率niをもつ材質のコーティング層131でコーティングされると、狭窄部130の両界面110a・110b、すなわち、基板160との界面110aおよびコーティング層131との界面110b、で励起される表面プラズモンDspの位相のズレが少なくなり、両界面110a・110bで励起される表面プラズモンDspが効率良く共鳴するので、コーティング層131の突出部111から、より強い近接場NFが発生される。
以上のように、本素子100によれば、電流iが導体110を流れると、狭窄部130近傍の突出部111の面に対して略垂直な磁界Bが発生し、狭窄部130に光Piが基板160側から照射/伝搬されることにより、狭窄部130と基板160との界面110aに表面プラズモンDspが励起され、これにより狭窄部130の突出部111の電磁界発生領域150(図12参照)において、突出部111の面に対して略垂直な電界ベクトルVeを持つ近接場NFが発生される。
上述の構成によれば、従来技術のように所望の位置での磁界発生をヨーク延長部によって行わなくて済むので、ヨーク延長部を用いた場合のような磁界の減衰または遅延が少ないので、高周波磁気記録再生に適した本素子100を提供できる。
また、導体110に電流を流し、狭窄部130に光Piを照射することにより、狭窄部130近傍において磁界Bおよび近接場NFが発生するので、磁界Bと近接場NFとをほぼ同じ位置で発生させることができ、所望の位置で磁界Bおよび近接場NFを得ることができる本素子100を、簡単な構成の導体110を用いることによって提供することができる。
あるいは、本素子100では、狭窄部130近傍において、磁界B発生と近接場NF発生とをほぼ同じ位置で行うことができるので、磁界B発生を行う/行わないまたは近接場NF発生を行う/行わないといった制御も可能となる。
次に、基板160に形成された突出部111とこの突出部111に設けられる狭窄部130とのその他の変形形態について、図1に示す狭窄部130のy方向から見た線Cxに沿った断面の拡大図である図24ないし図31を用いて説明する。なお、既に述べた部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
上記の説明では、透明な基板160を想定しているが、図24ないし図26に示すように不透明な基板を用いてもよい。図24に示す不透明な基板160aに形成された狭窄部130に、レーザ発生源161からの光Piを伝搬させるためには、不透明な基板160aの一部に穴180が形成されて光Piが狭窄部130に伝搬するような構造が必要である。
不透明な基板160aの穴180は、溶液によるエッチングもしくはRIE(リアクティブイオンエッチ)により形成される。形成された穴180は、透明な絶縁体で埋められていることが望ましく、穴180に埋め込まれた絶縁体がヒートシンクとして働き、狭窄部130で温度上昇を抑えることができる。
例えばSi基板の場合、穴180の穴側壁180aには、不透明な基板160aが酸化されSiO2膜が形成される。穴側壁180aに形成されたSiO2膜よりも屈折率の高いZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2等の透明な酸化物絶縁体によって穴180が埋められていれば、この穴180が導波路となり効率よく光Piを狭窄部130に伝播させることができる。なお、不透明な基板160aが酸化物質でできている場合は、穴側壁180aに形成された酸化膜は不透明な基板160aと同化してしまう。
図25に、別の穴180の形成方法として、不透明な基板160aに対して選択異方性エッチングを用いた場合の形状を示す。不透明な基板160aの選択異方性エッチングを用いて突出部111の基準面111aに対して、穴側壁180bの側面が90°以上傾いた穴180を形成することもできる。また、導体110を形成する場合にも選択異方性エッチングを用いることで、導体110と不透明な基板160aとの界面110aで、突出部111の基準面に対して、90°以上傾いた界面110aを形成するができる。これにより、光Piの受光面積が増加する。
また、図26に示すように、穴180に金属微粒子182を形成してもよい。穴180に溶液に溶かした金属微粒子182を塗付、乾燥を行い、穴180の穴側壁180cに金属微粒子182を形成する。もしくは、スパッタ成膜により金属膜を形成することで、穴180の穴側壁180cに金属微粒子182を形成する。金属微粒子182では、穴180に伝搬してきた光Piによって局所的に表面プラズモンDlspが励起され、それぞれの金属微粒子182で励起された局所表面プラズモンDlspが結合して、局所的に表面プラズモンDlspを増強しながら狭窄部130に伝搬できる。このときの金属微粒子182のサイズは100nm以下が望ましい。
金属微粒子182の構成物質は、電気伝導率が高い金属で構成されている。特に、高周波応答性を考える上で非磁性金属であるAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ti、W、Ir、Pdなどが望ましい。また、金属微粒子182はそれぞれつながっていても良い。この場合、表面プラズモンDspとして伝搬する。
図27ないし図31は、狭窄部130周辺の断面構造を更に拡大したものである。図27は、RIEを用いた基板160のエッチングの後、導体110を埋め込み形成した図である。この場合、導体110と基板160との界面110aは突出部111の基準面111aに対して略垂直である。
図28は、基板160に、例えばSi(001)基板を用いて異方性エッチングにより、突出部111の基準面に対して90度以上傾いた界面110aを形成し、この後、導体110を埋め込み形成した図である。基板160と導体110との界面110aではSiO2が形成され、図28に示すように狭窄部130の近傍には、酸化されずに残ったSiの微小片185が存在する。
狭窄部130に伝搬される光Piは、微小片185によって伝搬経路が制限され、導体110と基板160(酸化膜)との界面110aでのみ表面プラズモンDspとして伝搬する。図29は、図28の状態から、熱酸化法により(Si)基板160への酸素拡散を促進し、微小片185を全て酸化物186にした図である。この場合、狭窄部130に形成された堤状部141・142に直接、光Piが伝搬され、堤状部141・142に局所的な表面プラズモンDlspを励起することができる。
図30、31に導体110と基板160との界面110aに金属微粒子182を形成した場合の狭窄部130周辺の断面図を示す。上述した、突出部111の基準面111aに対して略垂直からずれた界面110aを有する構造に対して、導体110の形成前に、溶液に溶かした金属微粒子182を塗付、乾燥を行い、金属微粒子182を形成する。もしくは、スパッタ成膜または金属イオン打ち込み法により金属膜(不図示)を形成することで、導体110と基板160との界面110a近傍に金属微粒子182形成する。
金属微粒子182では、伝搬してきた光Piによって局所的に表面プラズモンDlspが励起され、それぞれの金属微粒子182で励起された局所表面プラズモンDlspが結合して、局所表面プラズモンDlspを増強しながら狭窄部130に形成された堤状部141・142に伝搬できる。
このときの金属微粒子182のサイズは100nm以下が望ましい。また、金属微粒子182はそれぞれつながっていても良く、この場合、表面プラズモンDspとして伝搬する。金属微粒子182の構成物質は、電気伝導率が高い金属で構成されている。特に、高周波応答性を考える上で非磁性金属であるAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ti、W、Ir、Pdなどが望ましい。
[実施の形態2]
本発明の第2の実施の形態について、図32および図33を用いて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1で述べた部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態にかかる情報記録再生ヘッド200は、図32に示すように、本素子100に電磁界検出器としての光検出器163を備えている。具体的には、光学素子115と狭窄部130とを結ぶ光軸上の光学素子115に対して狭窄部130とは反対側に、光検出器163が配置されている。
情報記録再生ヘッド200において光Piが狭窄部130に照射されると、狭窄部130で反射された反射光Prもしくは散乱された散乱光Psは、光学素子115を介して光検出器163が検出される。この光検出器163が、反射光Prもしくは散乱光Psの強度変化を検出することで狭窄部130に形成した堤状部142近傍での外部電気分極Poutを検出することができる。すなわち、狭窄部130の近傍に外部電気分極Poutが存在する場合、外部電気分極Poutと、堤状部141・142の近接場NFとが相互作用するので、その結果、狭窄部130からの反射光Prもしくは散乱光Psの強度変化が生じる。
従って、光検出器163によって狭窄部130からの反射光Prもしくは散乱光Psの強度変化を検出することで、外部電気分極Poutの情報を検出することができる。図33は、図32で示した情報記録再生ヘッド200の変形形態を示す断面図である。図32に示す情報記録再生ヘッド200と同様に、光検出器163が基板160の突出部111が形成されている面とは反対側の面に形成されている。
基板160が透明な基板であれば、光検出器163によって、狭窄部130からの散乱光Psを検出することができる。また、レーザ発生源161と光学素子115との間には、光Piの偏光を揃えるための偏光子164が形成されている。また、光検出器162・163と光学素子115の間にも偏光子165・166が形成されている。
レーザ発生源161から出たTEモードの光Piは、偏光子164を通過して、光学素子115によって狭窄部130の方向に伝搬方向が変換される。伝搬方向が変換されない光Piは、偏光子165によってTEモードの光だけを通し、光検出器162によって光Piの出力を検出する。
このとき光学素子115の光Piの反射面である傾斜面115sにAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ti、W、Ir、Pd等の金属膜のコーティングを施す。光Piの偏光方向が傾斜面115sに垂直な成分を持つ散乱光Psもしくは反射光Prは、反射膜表面の傾斜面115sで表面プラズモンDspを励起するため減衰する。
これにより、レーザ発生源161へTMモードの戻り光が抑えられるため、レーザ発生源161は安定発振することができる。また、狭窄部130からの散乱光Psのもしくは反射光Prの所望の偏光軸を検出できるように、偏光子166の偏光軸を散乱光Psのもしくは反射光Prの所望の偏光軸と同一に設定する。これにより、光検出器163によって、散乱光Psのもしくは反射光Prの強度変化を検出することで狭窄部130に形成した堤状部141・142近傍での外部磁気分極Moutによる偏光回転角を検出することができる。
すなわち、狭窄部130の近傍に外部磁気分極Moutが存在する場合、外部磁気分極Moutと堤状部141・142の近接場NFとが相互作用するので、その結果、狭窄部130からの散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向が回転する。従って、光検出器163によって狭窄部130からの磁気光学効果により偏光軸の回転や楕円偏光になった散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化を検出することで、外部磁気分極Moutの情報を検出することができる。
上述の情報記録再生ヘッド200を用いることで、近接場NFおよび磁界Bが発生された本素子100の狭窄部130からの散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化および強度変化を検出することで狭窄部130近傍での外部電気分極Pout及び外部磁気分極Moutを検出することができる。
すなわち、狭窄部130の近傍に外部電気分極Pout及び外部磁気分極Moutが存在する場合、外部電気分極Pout及び外部磁気分極Moutと狭窄部130の近接場NFとが相互作用するので、散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化および強度変化する。
光検出器163によって、散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化および強度変化を検出することで、狭窄部130近傍の外部電気分極Pout及び外部磁気分極Moutを検出することができる。
たとえば、磁気記録媒体に記録された記録マークの電気分極Poutおよび磁気分極Moutと近接場NFとの相互作用が狭窄部130からの散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化および強度変化として光検出器163で検出されるので、磁気記録媒体の情報を読み取ることができる。また、本実施例における外部電気分極Poutの検出は、上述した方法と同様に、レーザ発生源161のレーザ発振の閾値電流の変化を測定することによって、外部電気分極Poutの存在が検出される。
ここでの偏光子164・165は、光の導波路表面にAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ti、W、Ir、Pd等の金属薄膜を形成したものである。金属膜としては、光Piもしくは散乱光Psの波長λに対して、複素誘電率の虚部が大きな金属が良く、Al等が望ましい。膜厚は先に述べた侵入長d程度が望ましい。偏光子166は、面内方向にλ/4以下の間隔で膜厚が侵入長dよりも厚い金属細線を形成したグリッドを形成する。金属細線としては、Al等が望ましい。この偏光子166によってグリッドに垂直な電界成分をもつ散乱光Psのもしくは反射光Prが通過してくる。
[実施の形態3]
本発明の他の実施の形態について、図34ないし図36を用いて説明すれば、以下の通りである。なお、実施形態1及び2で述べた部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
ここでは、上述したレーザ発生源161と、光Piの伝搬方向を変換する光学素子115と、狭窄部130からの散乱光Psもしくは反射光Prを検出するための光検出器とが同一のレーザ素子基板基板上に形成された場合を示す。
情報記録再生ヘッド300は、図34に示すように、p型、n型にそれぞれドープされたクラッド層161a・161cに挟まれた活性層161bを有するレーザ素子基板160bの活性領域161dの両端部には、レーザ発振を実現するための分布型ブラッグ反射器(DBR)115cが形成されている。p型、n型にそれぞれドープされたクラッド層161a・161cには、図示しない電流を注入するための電極が形成されている。
活性層161bとしては多層量子井戸構造で構成されていてもよい。p型、n型にそれぞれドープされたクラッド層161a・161cと、活性層161bと、分布型ブラック反射器115cとを総称してレーザ発生源161とする。
また、レーザ素子基板160bには、誘電体薄膜導波路層である活性層161bが形成されており、レーザ発生源161から出射された光Piが該誘電体薄膜導波路層である活性層161bによって、レーザ素子基板160b面内を伝搬する(図35参照)。
また、誘電体薄膜導波路層である活性層161b上には不等間隔曲線群115aにて形成され、光Piを誘電体薄膜導波路層外部の活性層161bの狭窄部130近傍に収束させる集光グレーティングカップラ315が形成されている。また、該集光グレーティングカップラ315を介して、狭窄部130からの散乱光Psもしくは反射光Prを検出する光検出器163a・163b・163c・163dが形成されている。
また、上記情報記録再生ヘッド300は、レーザ発生源161と集光グレーティングカップラ315との間に形成され、狭窄部130からの散乱光Psもしくは反射光Prの伝搬方向を光Piの中心光軸に対してそれぞれ30度以下の角度に対称に二分割して集光するビームスプリッタ315aを備えている。
レーザ発生源161から出射された光Piは、集光グレーティングカップラ315によって光Piを誘電体薄膜導波路層である活性層161b外部の狭窄部130近傍に収束させる。狭窄部130からの散乱光Psもしくは反射光Prは、突出部111に形成されている堤状部141・142で該堤状部141・142の近傍に存在する外部電気分極Poutおよび外部磁気分極Moutによって、電界強度が変化または電界の偏光方向が傾いた散乱光Psもしくは反射光Prが発生する。
狭窄部130からの散乱光Psもしくは反射光Prは集光グレーティングカップラ315を介して、レーザ素子基板160b面内方向に伝搬方向が変換される。誘電体薄膜導波路層である活性層161bを伝搬する狭窄部130からの散乱光Psもしくは反射光Prはビームスプリッタ315aにより複数の光検出器163a・163b・163c・163dによって検出される。
光Piの偏光方向に対して、散乱光Psもしくは反射光Prの偏光方向が傾くと、集光グレーティングカップラ315は不等間隔曲線群115aで構成されているため、散乱光Psもしくは反射光Prの傾いた偏光成分の一部が、TEモードの光として誘電体薄膜導波路層である活性層161bを伝搬する。
この際、ビームスプリッタ315aの集光点は、散乱光Psもしくは反射光Prの偏光方向が傾いているので、光Piの光軸中心線に平行でない方向に伝搬するため、ビームスプリッタ315aの標準の集光点(散乱光Psもしくは反射光Prの偏光方向が傾いていない場合の集光点)からはずれる。
このため、光検出器163a・163b・163c・163dから生成される信号a・b・c・dが非対称となるので、光検出器163a・163b・163c・163dの信号を図36に示す回路によって得られる出力信号B、Cによって検出信号比が得られ、偏光角を検出することができる。従って、それぞれの光検出器163a・163b・163c・163dの回路を介した出力信号から、堤状部142でその近傍に存在する外部電気分極Poutおよび外部磁気分極Moutの情報を検出することができる。
次に、本実施の形態の情報記録再生ヘッド300が情報記録媒体350に対して、記録または再生する動作について、図37を用いて説明する。図37は、本実施の形態の情報記録再生ヘッド300および情報記録媒体350の断面図であり、図38は、本実施の形態の情報記録再生ヘッド300および情報記録媒体350を情報記録再生ヘッド300側から見た平面図である。図37に示す情報記録媒体350は、基板350bおよび記録面350aで構成されており、ハードディスクドライブに用いられている一般的な磁気記録媒体であり、例えば、CoCrPt系磁気記録媒体、希土類遷移金属磁気記録媒体あるいはFePt系磁気記録媒体などである。または、RhFe系などの反強磁性物質で構成された磁気記録媒体でも良い。
まず、記録時の動作について説明する。情報記録再生ヘッド300のレーザ発生源161から光Piが再生レベルより強く設定されている記録レベルで導体110に設けられた狭窄部130に照射されると、電磁界発生領域150で近接場NFが発生する。堤状部142で発生した近接場NFが情報記録媒体350の表面に近接した場合は、堤状部142と情報記録媒体350の表面との間で近接場NFの増強される。これは、堤状部142が突起した構造になっているため、電界集中が起こりやすくなるためであり、従って、導体110表面が平坦に構成された場合に比べ、近接場NFの強度分布の拡がりを抑えることができる。情報記録媒体350の記録面350aに照射され、情報記録媒体350の記録面350aに昇温エリア360が発生し、昇温エリア360内に記録温度以上のエリアが発生する。また、導体110に電流iが図38に示すようにA方向に流されると、導体110に設けられた狭窄部130において、磁界Bが発生するので、昇温エリア360内の記録温度以上のエリアと磁界Bとが重なったエリアにおいて、近接場NFによる光アシスト磁気記録が実現される。
次に、再生時の動作について説明する。情報記録再生ヘッド300のレーザ発生源161から光Piが再生レベルで導体110に設けられた狭窄部130に照射されると、記録マーク370による電気分極Poutおよび磁気分極Moutと情報記録再生ヘッド300の電磁界発生領域150の近接場NFとの相互作用が狭窄部130からの散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化および強度変化として光検出器163で検出されるので、記録マーク370の情報を得ることができる。
あるいは、光Piが再生レベルで狭窄部130に照射されなくとも、記録マーク370の磁気分極Moutに対して導体110に設けられた狭窄部130が横切ると、導体110に誘導電流が発生する。この誘導電流の変化を検出することによって、記録マーク370の磁気情報を得ることができる。また、磁気抵抗素子などの磁気センサによって、磁気分極情報を検出してもよい。
情報記録媒体350の図38において破線Cで示すラジアル方向(トラック方向)と情報記録再生ヘッド300の導体110の図38において破線Dで示す電流方向(x軸方向)とのなす角度Φ(図38参照)が例えば0°の場合、電磁界発生領域150は、ラジアル方向に対して細長く成るため、狭トラックにおいても情報記録が可能になる。なお、情報記録媒体350の図38において破線Cで示すラジアル方向と情報記録再生ヘッド300の導体110の図38において破線Dで示す電流方向(x軸方向)とのなす角度Φは、任意の角度でもよい。
上述のように、本実施の形態では、情報記録媒体350の微小領域の昇温エリア360を昇温することにより、記録または再生する近接場NFによる光アシスト磁気記録再生であって、狭窄部130で発生する近接場NFにより効率よく情報記録媒体350を昇温することができ、狭窄部130近傍で発生する強い磁界Bによる磁気記録が可能であり、また、近接場NFによって昇温された情報記録媒体350に記録されている記録トラック371上の記録マーク370による電気分極Poutおよび磁気分極Moutと情報記録再生ヘッド300の電磁界発生領域150の近接場NFとの相互作用が狭窄部130からの散乱光Psのもしくは反射光Prの偏光方向変化および強度変化として光検出器163で検出されるので、記録マーク370の情報を得ることができる。
従って、従来技術のようにヨーク延長部による所望の位置での磁界発生を行わなくて済み、ヨーク延長部での磁界の減衰または遅延が少ないので、高周波磁気記録再生に適した情報記録再生ヘッドを提供できる。あるいは、光の回折限界を越えた微小領域での近接場による光アシスト磁気記録再生のための情報記録再生ヘッドを実現することができる。また、強い近接場NFを得ることができるので、高保磁力を有する情報記録媒体350に対する記録または再生を行う情報記録再生ヘッド300を提供することができる。
[実施の形態4]
本発明の第4の実施の形態について、図39から図41を用いて説明すれば、以下の通りである。なお、前記実施の形態1ないし3で述べた部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図39は、本実施の第4形態の情報記録再生装置400の主要部の構成を示す斜視図である。図39に示すように、本実施の形態の情報記録再生装置400は、情報記録再生ヘッド300がスライダー380aに取りつけられており、回転する情報記録媒体350の記録面350aを滑走する。
情報記録再生ヘッド300と情報記録媒体350の記録面350aとの距離(フライングハイト)は、100nm以下に設定されている。また、スライダー380aはアーム380bによって支持され、移動手段であるアクチュエータ380cによって情報記録媒体350の記録トラック371(図38参照)を走査する。
図40は、情報記録再生装置400の記録再生系の構成を示す概略ブロック図である。上位装置から記録または再生を制御する記録再生制御端子452と、上位装置から記録データが入力される入力端子451と、上位装置へ再生データを出力する出力端子462と、を有し、記録再生制御端子452は、記録または再生を制御する記録再生制御部458に接続され、入力端子451は記録データを記録信号化するデータ記録部453に接続され、出力端子462は再生信号を符号化するデータ再生部461に接続される。
記録再生制御部458は、データ記録部453、データ再生部461、レーザ発光部455のレーザ駆動電流を制御するレーザ駆動部454、データ記録部453からの記録信号から記録磁界を発生させる磁界発生部457の電流を制御する電流制御部459に接続される。
光検出部456は、記録再生制御部458からの指示により、レーザ発光部455からの反射光Prもしくは散乱光Psを受光し、情報記録媒体420と近接場NFとの相互作用による偏光方向変化および強度変化を検出し、検出結果をデータ再生部461に出力する。
電流制御部459は、データ記録部453からの記録信号、および記録再生制御部458からの指示により、磁界発生部457に対して記録データに応じた電流を発生させる。電流検出部460は、記録再生制御部458からの指示により、レーザ発光部455により発生される近接場NFによって情報記録媒体420の昇温エリアの磁気信号を読み取り、データ再生部461に再生信号を出力する。
次に記録、再生時の動作について説明する。記録時は、記録再生制御部458からの指示で、レーザ駆動部454が再生時より大きい駆動電流でレーザ発光部455を駆動し、レーザ発光部455は再生時より強い光Piを磁界発生部457に照射する。また、記録再生制御部458からの指示により、データ記録部453は、入力端子451からの記録データを記録信号に変換して電流制御部459へ出力し、電流制御部459が記録信号に応じた電流を磁界発生部457へ出力することにより、磁界発生部457は記録磁界を発生させる。光Piにより磁界発生部457で励起された表面プラズモンDspによる近接場NFが情報記録媒体420を記録時に必要な温度に昇温させ、磁界発生部457による記録磁界により、情報記録媒体に記録マークが記録される。
再生時は、記録再生制御部458からの指示で、レーザ駆動部454が記録時より小さい駆動電流でレーザ発光部455を駆動し、レーザ発光部455は記録時より弱い光Piを磁界発生部457に照射する。光Piにより磁界発生部457で励起された表面プラズモンDspによる近接場NFが発生する。情報記録媒体420の記録マークの電気分極Poutおよび磁気分極Moutと近接場NFとが相互作用する。
記録再生制御部458からの指示で、光検出部456は、情報記録媒体420の記録マークからの反射光Prもしくは散乱光Psを受光して情報記録媒体420の記録マークの情報を検出し、データ再生部461に再生信号を出力する。また、記録再生制御部458からの指示で、情報記録媒体420の記録マークの磁気信号が磁界発生部457により変換された電流を電流検出部460が検出してデータ再生部461に検出信号を出力する。データ再生部461は、記録再生制御部458からの指示で、電流検出部460の検出信号および光検出部456の再生信号より、再生データに変換し、出力端子462に再生データ出力させる。
上述のように、本発明の実施の形態では情報記録媒体420の所望の位置に情報記録再生ヘッド300を移動することができ、情報記録媒体420の所望の位置において、情報記録媒体420の微小領域を昇温することにより、記録または再生する近接場NFによる光アシスト磁気記録再生であって、狭窄部130で発生する近接場NFにより効率よく情報記録媒体を昇温することができ、狭窄部130近傍で発生する強い磁界による磁気記録が可能であり、また、近接場NFによって昇温された情報記録媒体に記録されている記録マークによる電気分極もしくは磁気分極情報を記録マークからの反射光Prもしくは散乱光Psを受光して検出することにより、情報記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
従って、従来技術のようにヨーク延長部による所望の位置での磁界発生を行わなくて済むので、ヨーク延長部を用いた場合のような磁界の減衰または遅延が少ないので、高周波磁気記録再生に適した情報記録再生装置400を提供できる。あるいは、光の回折限界を越えた微小領域での近接場NFによる光アシスト磁気記録再生のための情報記録再生装置400を実現することができる。また、強い近接場NFを得ることができるので、高保磁力を有する情報記録媒体に対する記録または再生を行う情報記録再生装置400を提供することができる。
次に、情報記録再生装置400の他の構成について図41を用いて説明する。情報記録再生装置400は、情報記録再生ヘッド300として半導体レーザ素子に狭窄部130を有した導体110が一体形成された情報記録再生ヘッド200を用いた形態である。図41は、情報記録再生装置400の記録再生系の構成を示す概略ブロック図である。なお、前述した部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
前述の情報記録再生装置400との違いについて説明すると、レーザ発光部455におけるレーザ発振の閾値電流変化を検出するレーザ閾値電流検出部473がレーザ発光部455に接続されており、レーザ閾値電流検出部473は、情報記録媒体420の電気分極を検出し、データ再生部461に再生信号を出力する。また、レーザ閾値電流検出部473は、記録再生制御部458の指示により制御される。
この場合、図示しないが、光検出部456よりレーザ強度を検出し、記録再生制御部458を介してレーザ駆動部454によりレーザパワーが一定になるように、レーザ発光部455が制御される。
従って、本実施の形態においては、情報記録再生ヘッドの構成を簡素化できるので、安価に信頼性の高い情報記録再生装置400を提供することができる。
[実施の形態5]
本発明の他の実施の形態について、図42ないし図49を用いて説明すれば、以下の通りである。なお、前記実施形態1ないし4で述べた部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態では、近接場アシスト磁気記録の実証結果について説明する。
本実施形態の電磁界発生素子100は、SiO2から成る基板160上に、導体(Metal)110が埋め込まれて形成されている。さらに、導体110は、基板160上にTi(厚さ50nm)とAu(厚さ300nm)とがこの順で埋め込まれて構成されている。また、電磁界発生素子100表面は、厚さが5nmのSiNでコーティングされている。
なお、コーティングの密着性を改善するために、上記のAu(厚さ300nm)の表面には厚さが5nmの密着層Tiが蒸着されている。コーティングに用いる物質は、上述した酸化物絶縁体、窒化物絶縁体でもよく、さらに、カーボン、ダイアモンドライクカーボン、窒化カーボン、または窒化ホウ素などでもよい。
図42は、本実施形態の電磁界発生素子100に形成されている狭窄部130周辺の原子間力顕微鏡による表面観察像である。狭窄部130周辺(狭窄部130の両側縁部)には、高さTdが50nm、幅Wdが50nmの堤状部141、142が形成されており、狭窄部130の内側縁に接する円(不図示)の半径は、100nmである。なおこの円の中心付近を同図において参照符号Pで示す。
図43は、狭窄部130で発生する発生磁界の結果を示す、グラフである。電流i(I)に垂直になるような導体110の断面の外周の長さLとすると、狭窄部130の導体110の表面では、磁界の強さHは、H=I/Lとなり、電流i(I)が100mA、外周長さLが2.8μmの場合、Hは35.7kA/m(=447Oe)である。
導体110の狭窄部130の断面形状と相似形をした、閉曲線L(長さL)上での磁場の強さHは、同曲線上はすべて同じである。また、閉曲線の長さLが長くなるにしたがってH=1/Lの関係のため、磁場の強さHが減少する。導体110の表面から数10nmの範囲内での磁場の強さHは、導体110の表面での磁界強度とほぼ等しい。また、図42に示したように、狭窄部130は半円状の形状をしていることから、狭窄部130の内側縁に接する円の中心付近(P点付近)での磁場の増強が行われる。
図44は、電磁界発生素子100の狭窄部130を電磁界シミュレーションによる近接場の発生状態を計算するためのモデルを示す斜視図である。狭窄部130の周辺には、高さTdが50nm、幅Wdが50nmの堤状部142が設定されている。波長が650nmで偏向方向がy軸に平行になる光源を、電磁界シミュレーションモデルの底面に配して計算を行った。
図45(a)は、この堤状部142の上部に沿った面(XY面)の電界分布を示している一方、図45(b)は、導体110の切断面(ZY面;狭窄部130において最も狭窄されている部分に沿った面)のの電界分布を示している。これらの図から分かる通り、堤状部142に電界Eが集中しており、堤状部142周辺で近接場NFが増強されている。なお、これらの図中の破線は、電界発生素子100の外周部を表している。
図46(a)は、電磁界発生素子100の狭窄部130からの近接場NF(Near field)の発生状態を、近接場顕微鏡像によって観察した結果を示す、説明図である。図46(b)は、図46(a)をさらに拡大した説明図である。これらの図に示す通り、実際の観察結果からも、堤状部142周辺で近接場NFが増強されていることが確認できる。
図47は、情報記録再生装置400の概略構成を示す、模式図である。情報記録再生装置400は、電磁界発生素子100の狭窄部130にレーザ光を集光するためのレーザ発生源161(図1)と、光学素子115(図1)と、狭窄部130から反射光を検出するための光検出器163(図32)とを一体化した光学ヘッド250を備え、該光学ヘッド250と情報記録媒体350との間に情報記録再生ヘッド300が配置されている。
光学ヘッド250と情報記録再生ヘッド300とは、互いに相対位置が調整できる機構が備えられていてもよい。光学素子115は、レーザ光の偏向方向を制御できることが望ましい。
レーザ光の波長を650nm、光学素子115の集光レンズの開口数NAを0.65に設定した場合に、情報記録媒体350としてTbFeCo媒体を用いたときの情報記録の一実施例を示す。ここで用いるTbFeCo媒体の保磁力は2kOeであり、磁化は200emu/ccであり、膜厚は50nmに設定している。
情報記録媒体350の回転速度は200rpm(線速0.9m/s)に設定している。これらの設定値は、情報記録の一実施例に過ぎず、情報記録媒体350の磁気特性と膜構成、ならびに線速およびレーザ光の波長とパワー、集光レンズの開口数、情報記録再生ヘッド300の電磁界発生部100の狭窄部130周辺の構造、狭窄部130に流す電流値などのパラメータにより、最適化される必要がある。
図48は、磁気力顕微鏡による情報記録媒体350の磁気像観察結果を示す、説明図である。ここでは、5mWのレーザ光の照射、および狭窄部130への投入電流を100mAとし、狭窄部130からレーザスポットをずらした状態で情報記録媒体350に直接光を集光した状態で情報を記録を行っている。
レーザスポット径に対応した約1μmのトラック幅で磁気ビット像が確認でき、電磁界発生部100から磁界が発生していることが確認できる。
図49は、8mWのレーザ光を狭窄部130に集光した場合の磁気力顕微鏡による情報記録媒体350の磁気像観察結果を示す、説明図である。トラック幅が50nmの近接場アシスト磁気記録が達成されている。通常の光では、図48に示したトラック幅約1μmの磁気記録になるが、このように本発明に記載の電磁界発生素子100を搭載した情報記録再生ヘッド300を用い、狭窄部130にレーザ光を集光することで、光の波長限界を超えた微小サイズの近接場アシスト磁気記録が実現できる。情報再生時の動作原理については、上記実施形態に記載した通りであるので、その説明を省略する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。