まず、本発明に係る実施の形態について述べる前に、その前提となる補助質量300による振動対策についての解析を行なう。つまり、補助質量300と緩衝部材350とを備える動吸収器による振動対策は、付加する補助質量300の大きさによって制振効果が制限されている。この振動対策が大きな制振効果を得るためには、補助質量300を大きく設定する必要がある。以下に、その理由を述べる。
図41は、補助質量300を用いた制振装置910のモデル図である。筐体1は、メインフレーム部100、緩衝支持部材200、補助質量300および緩衝部材350を支持している。メインフレーム部100は緩衝支持部材200を介して筐体1に支持されている。補助質量300は緩衝部材350を介してメインフレーム部100に支持されている。緩衝支持部材200は緩衝支持部であり、緩衝部材350は緩衝部である。
メインフレーム部100は、スピンドルモータ、情報ピックアップおよびフレーム類などを具備した部ユニットで、その総質量は質量m1である。スピンドルモータはディスクを回転させる機能を有する。情報ピックアップはディスクに情報を記録する、あるいはディスクの情報を読み取る機能を有する。フレーム類はスピンドルモータおよび情報ピックアップなどを保持する機能を有する。また、メインフレーム部100は緩衝支持部材200を介して筐体1に支持されている。緩衝支持部材200は、筐体1に作用する外部からの振動がメインフレーム部100に伝達することを緩衝する機能を持つ。また、補助質量300は緩衝部材350を介してメインフレーム部100に支持されている。緩衝部材350は後述する共振特性となる物性値を有している。
さらに、力F0[N]は、外部からの振動に基づいて発生する力で、緩衝支持部材200を介して筐体1からメインフレーム部100へ伝達する力である。力F1[N]は偏重心ディスクの回転に基づいて発生する力である。伝達力F1_2[N]は、緩衝部材350を介してメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。
図42は、図41を質点系モデルとして表現した図である。図42において、メインフレーム部100は質量m1[kg]で表記している。緩衝支持部材200は粘弾性モデルで表記している。緩衝支持部材200のバネ200aの弾性係数はk1[N/m]、緩衝支持部材200のオイルダンパ200bの粘性係数はc1[N・s/m]である。補助質量300は質量m2[kg]で表記している。緩衝部材350は粘弾性モデルで表記している。緩衝部材350のバネ350aの弾性係数はk2[N/m]、緩衝部材350のオイルダンパ350bの粘性係数はc2[N・s/m]である。
位置x1[m]はメインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の振動方向の位置を示す。位置x2[m]は補助質量300を質点m2として定義した場合の筐体1を基準とした質点m2の振動方向の位置を示す。筐体1はGNDとして定義されている。力F0[N]は緩衝支持部材200を介してメインフレーム部100に作用する力として定義される。力F1[N]は、偏重心ディスクの回転に基づいてメインフレーム部100に作用する力である。
図42に示した振動モデルに対し、各質点の運動方程式は次の式(1)、式(2)で表される。
図43は上記2つの運動方程式(1)(2)をブロック図で表現したものである。図43において、機能ブロック110は、メインフレーム部100共振系の基本モデルである。機能ブロック110は、加減算器700b、加算器700c、機能ブロック100a、積分器701a,701b、機能ブロック200aおよび機能ブロック200bで表現される。機能ブロック100aはメインフレーム部100の質量m1の逆数で表される。機能ブロック200aは緩衝支持部材200の弾性係数k1で表される。機能ブロック200bは衝支持部材200の粘性係数c1で表される。
力F0の値と力F1の値とは加減算器700aで加算され、伝達力F2_1の値は減算され、その後加減算器700bに出力される。伝達力F2_1の値は機能ブロック310から出力される。機能ブロック310は補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。ここで、力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達される力の総和である。逆に、力F2_1は補助質量300からメインフレーム部100に伝達される力である。すなわち力F2_1はメインフレーム部質量100に対する制振力の総和である。
加算器700cは、位置x1の値をk1倍した値と、メインフレーム部100の速度d(x1)/dtをc1倍した値とを加算する。位置x1は、メインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の位置を示す。加減算器700bは、加算器700cの出力値と加減算器700aの出力値とを加算する。加減算器700bの出力値は、機能ブロック100aで1/m1倍され、積分器701aに出力される。機能ブロック100aはメインフレーム部100の質量m1の逆数で表される。積分器701aは、入力された値を積分し、速度d(x1)/dtを出力する。速度d(x1)/dtは積分器701bに入力され、位置x1の値を出力する。位置x1はメインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の位置を示す。
機能ブロック210は、メインフレーム部100の位置と速度とを補助質量300に伝達する力に変換する。機能ブロック210は、加算器700d、機能ブロック350aおよび機能ブロック350bで表現される。機能ブロック350aは緩衝部材350の弾性係数k2で表される。機能ブロック350bは緩衝部材350の粘性係数c2で表される。加算器700dは、位置x1の値をk2倍した値と、メインフレーム部100の速度d(x1)/dtをc2倍した値とを加算する。位置x1はメインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の位置を示す。加算器700dの出力値は、加減算器700eに出力される。
機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。機能ブロック310は、加減算器700e、加算器700f、機能ブロック300a、積分器701c,701d、機能ブロック350aおよび機能ブロック350bで表現される。機能ブロック300aは補助質量300の質量m2の逆数で表される。機能ブロック350aは緩衝部材350の弾性係数k2で表される。機能ブロック350bは緩衝部材350の粘性係数c2で表される。
加算器700fは、位置x2の値をk2倍した値と、補助質量300の速度d(x2)/dtをc2倍した値とを加算する。位置x2は補助質量300を質点m2として定義した場合の筐体1を基準とした質点m2の位置を示す。加算器700fの出力値は、加減算器700eで減算される。加算器700dの出力値は、加減算器700eで加算される。加減算器700eの出力値は、機能ブロック300aで1/m2倍され、積分器701cに出力される。機能ブロック300aは、補助質量300の質量m2の逆数で表される。積分器701cは入力された値を積分し、速度d(x2)/dtを出力する。速度d(x2)/dtは積分器701dに入力され、補助質量300を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置x2の値を出力する。位置x2は、補助質量300を質点m2として定義した場合の筐体1を基準とした質点m2の位置を示す。
ここで、力F1_2ならびに力F2_1は、次の式(3)、式(4)で表される。
ここで、機能ブロック110は、メインフレーム部100共振系の基本モデルである。機能ブロック110は、図43の機能ブロック100aを含む破線で囲った領域である。機能ブロック100aはメインフレーム部100の質量m1の逆数で表される。さらに機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。機能ブロック310は、機能ブロック300aを含む破線で囲った領域である。機能ブロック300aは補助質量300の質量m2の逆数を表わされる。機能ブロック310は、補助質量300の共振系に印加される力に基づいてメインフレーム部100に作用する力の伝達特性モデルを示す。また機能ブロック210は、緩衝部材350がメインフレーム部100の位置と速度とを補助質量300に伝達する力に変換する変換特性を示す。この機能ブロック210の出力値は、伝達力F1_2[N]の値となる。伝達力F1_2[N]は、機能ブロック110から機能ブロック310へ伝達する力の総和である。機能ブロック110は、メインフレーム部100の共振系の基本モデルである。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。伝達力F2_1は、機能ブロック310から機能ブロック110へ伝達される力である。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。機能ブロック110は、メインフレーム部100の共振系の基本モデルである。
図44は、図43を等価に変換して伝達関数で表示したブロック図である。加減算器700aで力F0の値と力F1の値とが加算され、伝達力F2_1の値が減算される。加減算器700aの出力値は、機能ブロック110で1/(m1s2+c1s+k1)倍され位置x1の値を出力する。機能ブロック110は、メインフレーム部100共振系の基本モデルである。機能ブロック210は、位置x1の値を(c2s+k2)倍して伝達力F1_2の値を出力する。位置x1の値は、機能ブロック210の入力値である。機能ブロック310は、伝達力F1_2の値をm2s2/(m2s2+c2s+k2)倍して伝達力F2_1の値を出力する。伝達力F1_2の値は機能ブロック310の入力値である。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。
図45は、図44に示された機能ブロックのうち、機能ブロック110の伝達特性はG1(s)と表し、機能ブロック310の伝達特性はG2(s)と表したブロック図である。機能ブロック110は、メインフレーム部100共振系の基本モデルである。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の基本モデルである。
伝達特性G1(s)、G2(s)は次の式(5)、式(6)で表される。
このため図45において、機能ブロック110では入力信号がG1(s)倍され、機能ブロック310では入力信号がG2(s)倍される。機能ブロック110は、メインフレーム部100共振系の基本モデルである。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。
機能ブロック310は、補助質量300の共振系の基本モデルである。伝達特性G2(s)は、機能ブロック310の伝達特性である。図45ならびに式(6)より、伝達特性G2(s)は、入力が伝達力F1_2の値で、出力値が伝達力F2_1の動特性をもつ伝達関数モデルとなっている。また、機能ブロック110の入力を力Ftotalの値とする。機能ブロック110は、メインフレーム部100の共振系の基本モデルである。伝達特性G1(s)は、機能ブロック110の伝達特性である。この力Ftotalは次の式(7)で表される。
前述の通り、伝達力F2_1は、メインフレーム部100に対する制振力である。また、機能ブロック110は、メインフレーム部100の共振系の基本モデルである。図45を再考すれば、機能ブロック110は、補助質量300を付加することで、力F0の値および力F1の値の印加に対し、制振力である伝達力F2_1が機能することを表している。つまり、機能ブロック110は、補助質量300を付加することで、メインフレーム100の振動が抑えられることが表している。従って、制振性能を向上させるためには、少なくとも伝達力F2_1の値を大きく設定することが必要である。
ここで、機能ブロック210および機能ブロック310の機能は、機能ブロック110の所定の周波数帯域の外乱に対する感度を下げることである。なお、機能ブロック310は、補助質量300の共振系の基本モデルである。機能ブロック110は、メインフレーム部100の共振系の基本モデルである。本発明に示す実施の形態は、力F1に対して有効に機能するように設定された実施の形態である。力F1は、偏重心ディスクが回転する際に発生する遠心力である。前述のように力F1は、ディスク回転速度の2乗に比例するので、ディスクの回転数の最大値で最大となる。つまり、ディスク最高回転周波数fmax[Hz]で力F1は最大となる。従って、機能ブロック110の外乱に対する感度の周波数特性が、ディスク最高回転周波数fmaxで低感度となるように設定されれば、制振効果を向上させることができる。機能ブロック110は、メインフレーム部100の共振系の基本モデルである。
所定の周波数において、最小のエネルギで最大の制振特性を得る最適解は、機能ブロック310の共振周波数が低感度となるように設定することで得られる。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の基本モデルである。このとき、機能ブロック310の共振周波数f0[Hz]は次の式(8)で表される。
一方、共振周波数f0は、次の式(9)で表される。
式(9)から弾性係数k2は、次の式(10)で表される。
また、機能ブロック310の共振におけるQ値をQ2とすれば、粘性係数c2は次の式(11)で表される。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の基本モデルである。なお、Q値は静的加重時の変位に対する共振周波数変位振幅比で与えられる無次元量である。
式(11)に式(10)を代入すると、次の式(12)を得る。
式(6)に、式(10)、式(12)を代入すると、次の式(13)を得る。
式(13)によれば、伝達特性G2(s)はディスク最高回転周波数fmaxとQ値Q2とをパラメータとする関数である。Q2は、補助質量300の共振系の基本モデルのQ値である。伝達特性G2(s)は、この2つのパラメータによってのみ一意的に決定することがわかる。最高回転周波数fmaxは伝達特性G2(s)の共振周波数を決定するパラメータである。fmaxはディスクの最高回転周波数であるから装置の仕様で設定される定数となる。このため、fmaxは補助質量300共振系の質量m2に依存しない特性である。
伝達力F2_1は、制振力として機能する。そのため、補助質量300の共振系の効果を大きくするためには、伝達力F2_1を大きくする必要がある。しかし、伝達特性G2(s)の特性は、補助質量300の質量m2を大きく変更しても改善しない。伝達力F1_2の値は、伝達特性G2(s)の入力信号である。したがって、補助質量300の共振系の制振効果を大きく改善するためには、伝達力F1_2の値を大きく設定するしかないことが理解できる。
伝達力F1_2の値は、伝達特性G2(s)の入力信号である。伝達力F1_2の定義は、式(3)で示したとおりである。つまり、伝達力F1_2は、位置x1の値をk2倍したものと速度をc2倍したものとの和で定義される。位置x1はメインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の位置を示す。式(3)に、式(10)と式(12)を代入してまとめると次の式(14)を得る。
図46は、図45を式(14)で変換した場合のブロック図である。このため図46で示すように、位置x1の値は機能ブロック210でm2H(s)倍され伝達力F1_2の値として出力される。位置x1は、筐体1とメインフレーム部100との相対的な位置である。
式(14)から、伝達力F1_2は補助質量300の質量m2とH(s)との積となっている。式(15)に示すように、H(s)はディスク最高回転周波数fmaxとQ値Q2とをパラメータとしている。つまり、H(s)は、補助質量300の質量m2に依存しない関数となっている。Q2は、補助質量300の共振系の基本モデルのQ値である。従って、式(14)から伝達力F1_2は補助質量300の質量m2に比例する量で表される。つまり、大きな制振効果を得るためには、少なくとも補助質量300の質量m2を大きく設定する必要がある。以上、数式にて説明したが、以下に解析にて上記の妥当性の確認を行う。
図47は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。図47(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図47(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図47中、曲線D1は補助質量100の共振系がない場合の特性を示し、曲線D2は補助質量100の共振系がある場合の特性を示している。力F1[N]は、外乱入力である。メインフレーム部100の質量m1を85[g]とし、弾性係数k1を168000[N/m]とし、粘性係数c1を11.74[N・s/m]とし、補助質量300の質量m2を50[g]とし、共振周波数f0に対する共振振幅のピーク値を20[dB]とし、ディスク最高回転周波数fmaxを65[Hz]としている。f0は、補助質量300の共振系の基本モデルの共振周波数である。図47の縦軸はゲインを示し、図47の横軸は周波数を示している。縦軸のゲインは、「メインフレーム部100に印加される外力」に対する「メインフレーム部100の加速度」の感度特性を示し、ゲインが低いほど外力に対し低感度となる。つまり、ゲインが低いほど外力に対してメインフレーム部100の加速度が小さな変動で済むため、装置にとって好ましい特性であることを示す。
図47には、比較のため補助質量300の共振系がある場合と無い場合との両方の特性を記している。力F1は、偏重心ディスクの回転に基づいて発生する力である。力F1が最大になるディスク最高回転周波数fmax[Hz]において両者を比較する。補助質量300の共振系が無い場合のゲインは約22dBである。補助質量300の共振系がある場合は約5dBである。つまり、外乱による力に対して約17dBの感度が改善している。
図48は、図47と同様の設定条件で、補助質量300の質量m2の値を図47の設定値に対し5分の1倍と5倍とに設定した場合の特性を示している。図48(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図48(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図48中、曲線E1は質量m2を変更しない場合の特性を示し、曲線E2は質量m2を5分の1倍に設定した場合の特性を示し、曲線E3は質量m2を5倍に設定した場合の特性を示している。なお、比較のため、図47の特性も記載してある。図48から、補助質量300の質量m2が小さいほど、ディスク最高回転周波数fmax[Hz]における感度の低減効果が小さく、逆に補助質量300の質量m2が大きいほど感度の低減効果が大きいことがわかる。これは数式で説明した結果と同じであり、本解析結果より考察の妥当性が検証された。
以上の結果から、大きな制振効果を得るためには、少なくとも質量の大きい補助質量300が必要である。これは前述のように、装置の小型化・軽量化の要求に対して相反する要求である。大きな制振効果を優先すれば、装置が大型化するとともに重量も重くなる問題があった。
この発明は、上述のような課題を解消するためになされたものである。ここで式(14)を再考すれば、伝達力F1_2は補助質量300の質量m2と比例関係にあるので、伝達力F1_2を大きく設定することと補助質量300の質量m2を大きく設定することとは等価である。したがって、伝達力F1_2の値を検出し、この検出信号を増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加することは、補助質量300の質量m2を大きく設定したことと等価となる。つまり、伝達力F1_2の値を増幅して補助質量300の質量m2に印加することは、補助質量300の質量m2を大きくした場合と同様の制振効果を得ることができる。このことを、以下に、ブロック図を用いて再考する。
図49は、図46に、伝達力F1_2の値を検出する機能と、伝達力F1_2の値の検出結果をα倍して補助質量300の質量m2に力の次元で印加する機能とを加えたブロック図である。図49において、機能ブロック501は、検出された伝達力F1_2の値を増幅する。機能ブロック501の増幅係数はαである。機能ブロック501を等価変換すると、図50となる。図50において、伝達力F1_2の値は機能ブロック502の入力値である。機能ブロック502は伝達力F1_2の値を(α+1)倍して出力する。
図50は、伝達力F1_2の値を検出し、この検出信号を増幅係数αで増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加することが、補助質量300の質量m2を(α+1)倍したことと等価であることを示している。理想的には増幅係数αは任意の値に設定できるため、増幅係数αを大きく設定すれば補助質量300の質量m2の値によらず、大きな制振効果を得ることが可能となる。
図51に示す解析結果は、図47と同様の設定条件に、伝達力F1_2の値を検出し、この検出信号を増幅係数αで増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加する条件を加えている。図51(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図51(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図51中、曲線B4は増幅係数αを−0.8に設定した曲線である。増幅係数αの値は−0.8、零および4に設定している。なお、この増幅係数αの値は、(α+1)倍した値が0.2、1および5と、図47の補助質量300の質量m2の倍率と等しくなるように設定した。すなわち、増幅係数αが−0.8の場合は補助質量300の質量m2が0.2倍の場合に、増幅係数αが零の場合は補助質量300の質量m2が1倍の場合に、増幅係数αが4の場合は補助質量300の質量m2が5倍の場合に対応させて設定している。図47と図51とを対比すると、図47における補助質量300の質量m2を5分の1に設定した特性は、図51における増幅係数αを−0.8に設定した特性と全く等しい特性となっている。また図47における補助質量300の質量m2の変更が無い特性は、当然であるが図51における増幅係数αが零に設定した特性と全く等しくなっている。また、図47における補助質量300の質量m2を5倍に設定した特性は、図51における増幅係数αを4に設定した特性と全く等しい特性となっている。このことから、伝達力F1_2の値を検出し、この検出信号を増幅係数αで増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加すれば、補助質量300の質量m2が(α+1)倍したことと等価であることが解析的に実証された。
上記より、補助質量300の共振系をコンパクトなサイズとし、さらに補助質量300を小さい質量としても、以下の2つの機能手段により、高い制振性能が実現される。第1に、補助質量300に対して能動的に駆動できる機能手段、第2に、メインフレーム部100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2の値を検出する機能手段である。
ここで、本発明の基本原理についてまとめる。ディスク装置は、振動の発生源を有する。本発明に係るディスク装置の場合、振動の発生源はメインフレーム部100上で偏重心ディスクが回転して発生する不要な遠心力F1である。この遠心力F1は、ディスク回転数の2乗に比例する。このため、遠心力F1は、ディスク回転数が最高になった場合に最大値となる。したがって、ディスク装置は、ディスクの最高回転周波数で発生する不要な遠心力F1を有効に抑制する機能を必要とする。
DVD(Digital Versatile Disk)などでは、情報ピックアップが、トラックの線速度を一定として信号を検出する。このため、ディスクの外周では回転数が小さく、内周では回転数が大きい。遠心力F1は、ディスク回転数の2乗に比例するので、情報ピックアップのトラッキング誤りは、ディスクの内周の信号を読み取る際、またはディスクの内周に信号を書き込む際に発生する。つまり、情報ピックアップのトラッキング誤りは、ディスクの内周以外では発生頻度が低く、特に問題とならない。このことから、本発明の目的は、ディスクの内周での情報ピックアップのトラッキング誤りを低減することである。
動吸振器は、特定の周波数帯の外乱振動に対する機構的な対策として従来から知られている。動吸振器の制振効果は、動吸振器の共振周波数を抑制したい周波数に設定すると最も高くなる。ディスク装置の場合、その抑制したい周波数はディスクの最高回転周波数である。動吸振器の共振周波数を特定した場合、制振性能は補助質量300の大きさと比例する。従って動吸振器を用いた装置は、大きな制振効果を得るために、補助質量300を大きく設定する必要がある。
アクティブ動吸振器は、動吸振器に制御器およびアクチュエータを加えて、制振性能を向上させるものである。つまり、アクティブ動吸振器は、動吸振器の補助質量300を能動的に駆動する制振装置である。大きな補助質量300と等価の信号で補助質量300を駆動することで、アクティブ動吸振器は、小さな補助質量300で大きな制振効果を得ることができる。上述のように、この補助質量300を駆動する信号は、メインフレーム100から補助質量300に伝達する伝達力F1_2の値を増幅した信号である。
式(3)は、この伝達力F1_2が、メインフレーム100と筐体1との相対位置x1に動吸振器の共振系の周波数特性を乗じた関数となることを示している。従って、メインフレーム100と筐体1との相対位置x1を測定し、式(3)の右辺の括弧内の伝達特性を持つフィルタを電気的に作製することで伝達力F1_2の値を求めることができる。この伝達力F1_2の値を増幅し、補助質量300を駆動すれば、補助質量300は、大きな補助質量と等価となり、制振装置は、大きな制振効果を得ることができる。以下に示す実施の形態で、伝達力F1_2の値を求める具体例を示す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に示す能動的に動作する補助質量300を用いた制振装置900のモデル図である。図1において、伝達力検出部400は、伝達力F1_2の値を検出する機能を有する。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達される力である。増幅器500は伝達力検出部400が検出した出力値を後述する増幅係数αで増幅する機能を有する。補助質量駆動部360は、メインフレーム部100に備えられ、可動部に補助質量300を接続した構成になっている。補助質量駆動部360は、増幅器500の出力信号に基づいてドライバ510によって駆動される。なお、増幅器500の増幅率は、伝達力検出部400、増幅器500、ドライバ510および補助質量駆動部360の総合ゲインが増幅係数αとなるように決められる。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。
なお、図1は機能別に表現したため、補助質量300、補助質量駆動部360および緩衝部材350は別要素として表現されている。しかし、実際は補助質量駆動部360の固定部の一部はメインフレーム部100の一部である。また、緩衝部材350は同じく補助質量駆動部360の可動部と固定部とを連結する要素である。また、補助質量駆動部360の可動部の質量は補助質量300の一部である。
図2は、補助質量駆動部360の機能を実現する具体的な実施の形態を示す斜視図である。図3は、図2で示した補助質量駆動部360の構造を示す斜視分解図である。図6は、補助質量駆動部360をメインフレーム部100に取り付けた具体的な実施の形態を示す斜視図である。なお、ディスク装置は、図6に示すメインフレーム部100を、電源、回路基板等の周知の部品とともに筐体1に収めることで作製される。
図2、図3において、補助質量駆動部360のベース部材361は、図示しないメインフレーム部100に固定されている。駆動用コイル362は、2つの駆動用コイル保持部材363a,363bに保持されている。駆動用コイル保持部材363a,363bは、補助質量駆動部360のベース部材361に固定されている。これにより、駆動用コイル362は、補助質量駆動部360のベース部材361に対して位置決めされて固定される。
さらに駆動用コイル362は、駆動コイル362の配線ターミナル364に配線される。配線ターミナル364は、駆動用コイル保持部材363aに固定されている。駆動用コイル362は、フレキシブルケーブル用コネクタ365を介してフレキシブルケーブル366に電気的に接続されている。フレキシブルケーブル366には、ドライバ510からの駆動信号が送られる。既に説明したベース部材361、駆動用コイル362、駆動用コイル保持部材363a,363b、配線ターミナル364、フレキシブルケーブル用コネクタ365およびフレキシブルケーブル366は、それぞれが接続され一体となっており、可動部分はない。
永久磁石367は着磁方向がそれぞれ逆になった2つの領域を有した一体に形成されたものである。図3中では理解を容易にするために367a,367bと区別して表示している。この永久磁石367はヨーク368bと対向してヨーク368a上に固定されている。これら永久磁石367およびヨーク368a,368bが全体として磁気回路として機能する。以下、永久磁石367およびヨーク368a,368bを一体とした要素を、単に可動磁気回路390と呼ぶ。
図2では図1で示した緩衝部材350が板バネで作製されている。可動磁気回路390はその板バネ350の一端が接続されている。板バネ350の他端は、補助質量駆動部360のベース部材361に接続されている。本実施の形態1では、板バネで作製された緩衝部材350は、結合ネジ369を用いてヨーク368aおよびベース部材361に固定されている。可動磁気回路390は、平行に配置した2枚の板バネ(緩衝部材350)を介して補助質量駆動部360のベース部材361に揺動が可能なように支持されている。従って、図2の白矢印で可動磁気回路390の移動方向を表示したように、可動磁気回路390は板バネ(緩衝部材350)のたわみ方向に主に移動できる。
図4は、可動磁気回路390の断面図である。永久磁石367aはヨーク368a側がS極に着磁され、ヨーク368b側がN極に着磁されている。永久磁石367bはヨーク368a側がN極に着磁され、ヨーク368b側がS極に着磁されている。永久磁石367はヨーク368a上に固定されている。永久磁石367は磁気ギャップを介してヨーク368bと対向している。駆動用コイル362はこの磁気ギャップに配置されている。図5は、図4で示した可動磁気回路390の磁束の流れを示した説明図である。図5中矢印が磁束の流れを示している。
磁気ギャップにおいて、永久磁石367a側の領域(領域Aという。)では磁束がヨーク368a側からヨーク368b側に流れている。一方、永久磁石367b側の領域(領域Bという。)では磁束がヨーク368b側からヨーク368a側に流れている。磁束の方向が領域Aと領域Bとでは逆になっている。
図4に示すように、駆動用コイル362は、領域Aと領域Bとの磁気ギャップに配置される。駆動用コイル362に電流が流れると、フレミングの左手の法則によって力が発生する。その方向は図4の矢印の方向となる。矢印の方向は、図4の左右方向で、永久磁石367aと永久磁石367bとが並んでいる方向である。図4では、永久磁石367a側の駆動用コイル362は図4の手前側から奥側に電流が流れている。永久磁石367b側の駆動用コイル362は図4の奥側から手前側に電流が流れている。このため、駆動用コイル362は図4中右側に力を受ける。駆動用コイル362は補助質量駆動部360に位置決めされて固定されているため、可動磁気回路390は図4中左側に移動する。
次に補助質量駆動部360のメインフレーム部100への具体的な取り付け方を説明する。図6において、図6(A)はメインフレーム部100を下面側から見た斜視図である。図6(B)はメインフレーム部100を上面側からみた斜視図である。
メインフレーム120は、緩衝支持部材200を介して四隅に配置された支柱128により図示しない筐体1に位置決めされて固定されている。スピンドルモータ121はメインフレーム120に取り付けられている。また、スピンドルモータ121は、ディスク129を回転させるためのターンテーブル122を有している。
スピンドルモータ121は、メインフレーム120に設けられた図示しない穴部にはめ込むように取り付けられる。スピンドルモータ121に設けられたフランジ部をメインフレーム120にねじ止めして、スピンドルモータ121はメインフレーム120に固定される。このため、スピンドルモータ121をメインフレーム120に固定した状態では、メインフレーム120の上面側には、ターンテーブル122が配置される。ターンテーブル122はスピンドルモータ121の回転側の部品である。また、メインフレーム120の下面側には、ケースが配置される。ケースはスピンドルモータ121の固定側の部品である。
情報ピックアップ600は、ディスク129に情報を書き込みまたはディスク129の情報を読み取る機能を有する。情報ピックアップ600は、シャフト123とリードスクリュー124とに取り付けられている。情報ピックアップ600は、シャフト123にガイドされて移動することができる。シャフト123とリードスクリュー124とはメインフレーム120に取り付けられている。リードスクリュー124の一方の端部にはステッピングモータ125が取り付けられている。ステッピングモータ125は、リードスクリュー124を回転させる機能を有する。
情報ピックアップ600に設けられた雌ねじ部126は、雄ねじであるリードスクリュー124と噛み合っている。リードスクリュー124の回転により、情報ピックアップ600はトラッキング制御を行う方向に移動する。トラッキング制御を行う方向とは、ディスク129のラジアル方向である。また、情報ピックアップ600に設けられたU字形状をした凹部127は、その凹部でシャフト123を挟み込んでいる。これにより、情報ピックアップ600はシャフト123にガイドされて移動することができる。
補助質量駆動部360はケースに取り付けられている。ケースはスピンドルモータ121の固定側である。これは、ディスク129を保持しているスピンドルモータ121の振動を直接的に抑制するためである。また、図2に示す矢印方向は、ディスク129のラジアル方向で、情報ピックアップ600のトラッキング制御を行う方向となっている。これは、可動磁気回路390の移動方向が、情報ピックアップ600のトラッキング制御を行う方向に選択されるようにするためである。なぜなら、偏重心ディスクの発生力は情報ピックアップ600のトラッキング制御を行う方向に悪影響を及ぼすからである。また、可動磁気回路390は補助質量300として機能する。
以上の構成によって、補助質量300を電気信号によって能動的に駆動動作させる機能が実現できる。
上記の構成により、補助質量駆動部360は一般的な磁気駆動型のアクチュエータの構成であるため、安価でかつコンパクトに実現することができる。また、補助質量駆動部360は、上記のような磁気駆動型に限定されるものではない。つまり、補助質量駆動部360は、圧電素子による駆動方式やその他の方式でも良い。バネ部材も板バネに限定されるものではなく、コイルバネやその他の方式でも良い。
たとえば図7はバイモルフ素子(bimorph)を利用した補助質量駆動部360の構成例である。バイモルフ素子は、二つの薄い圧電素子を用い、一つの圧電素子が収縮すると他の圧電素子が拡張する圧電変換器である。図7において、バイモルフ370が補助質量300とベース部材361とを接続している。バイモルフ370は、補助質量駆動部360と緩衝部材350との機能を兼ねている。このため、この構成は、磁気駆動型に比べると、より簡便な構成でコンパクトな構成となっている。
以下に、伝達力F1_2の値を検出する手段を実現する具体的な実施の形態を示す。伝達力F1_2は、メインフレーム部100から補助質量300に伝達される力である。
実施の形態1では、伝達力検出部400は、相対位置検出器と、その相対位置検出器が検出した信号を基に伝達力F1_2の値を算出する部分から構成されている。伝達力検出部400は、メインフレーム部100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2の値を検出する。相対位置検出器は、筐体1とメインフレーム部100との振動方向の相対位置を示す信号を検出する。
図8は、能動的に動作を行う補助質量300による制振装置901のモデル図である。図8において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。位置x1は筐体1とメインフレーム部100との相対位置である。伝達力検出部401は入力信号が位置x1である特徴を持つ。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
実施の形態1の特徴である位置x1に基づいた伝達力検出部401の説明を以下に行う。位置x1は、筐体1とメインフレーム部100との振動方向の相対位置である。伝達力F1_2の定義式は、式(3)で示したとおりである。ここで、式(3)の右辺の第1項の係数である粘性係数c2の値を考察する。補助質量300の質量m2を図47で考察した値の十分の一である5[g]として、他の設定条件は同じとした場合、弾性係数k2の値は式(10)より次の式(16)となり、粘性係数c2の値は式(12)より次の式(17)となる。
ここで、メインフレーム部100の質量m
1は85[g]として、弾性係数k
1は168000[N/m]として、粘性係数c
1は11.74[N・s/m]とする。共振周波数f
0に対する共振振幅のピーク値は20[dB]として、ディスク最高回転周波数f
maxは65[Hz]とした。共振周波数f
0は、補助質量300の共振系の基本モデルの共振周波数である。
式(16)と式(17)とを比較すれば、粘性係数c2は弾性係数k2に対し小さな値となっている。式(3)の伝達力F1_2の定義式において、粘性係数c2は筐体1に対するメインフレーム100の速度の係数である。ラプラス演算子でsは微分を意味し、1/sは積分を意味する。そのため、式(3)において、sx1は位置x1の値を微分して求められる速度を表す。よって、c2は速度の係数となる。このため、粘性係数c2は高周波になれば速度が大きくなるため無視できなくなるが、低周波域においては無視することが可能となる。この場合、式(3)で示した、伝達力F1_2の定義式は次の式(18)となる。
図9は、力F1[N]に対する伝達力F1_2の検出特性を示した図である。図9(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図9(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図9中、曲線A1は理想状態における伝達力F1_2の値の検出特性を示す。曲線A2は位置x1の値に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性を示す。伝達力F1_2は、メインフレーム部100から補助質量300に伝達される力である。図9には2つの事例がプロットされている。1つの事例は伝達力検出部401の検出特性が全帯域にわたって誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態の特性である。もう一つの事例は、実施の形態1の設定条件で粘性係数c2を無視し、筐体1とメインフレーム部100との相対的な位置x1の値のみによる伝達力F1_2の値の検出特性である。つまり、式(18)に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性である。
伝達力F1_2の値の検出特性は、巨視的には2次のローパス特性となっている。カットオフ周波数は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数となっている。ディスク最高回転周波数fmax[Hz]で、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の影響が確認できる。理想状態における特性と、式(18)に基づいた検出特性とを比較すると、100Hz以上の高域において、理想状態の特性は式(18)に基づいた検出特性に対し、若干位相が進み特性となっている。
これは、理想状態では伝達力F1_2は式(3)に従うため、低域は筐体1とメインフレーム部100との相対的な位置x1が支配的になる。一方、高域は筐体1とメインフレーム部100との相対速度d(x1)/dtが支配的になる。従って、高域において、伝達力F1_2の値の検出特性は、進み特性になる。理想状態の検出特性と、実施の形態1の式(18)に基づく検出特性は、制御したい帯域であるディスク最高回転周波数fmax[Hz]以下の帯域においてほぼ同じ特性となっていることが確認できる。
図10は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。図10(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図10(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。検出特性は図9に示した本実施の形態の式(18)に基づく特性とし、さらに増幅係数αの値を9に設定している。
図10の特性は、補助質量300の値が5[g]の場合の特性である。図47(補助質量共振系有りの特性)の特性に対し、図10の特性は、従来の補助質量300の10分の1(5[g])と小さな値にもかかわらず、上記図47の特性と同等の特性となっている。なお、図47(補助質量共振系有りの特性)の特性は、従来の補助質量300のみの特性である。特にディスク最高回転周波数fmax[Hz]のゲインは、上記図47に対してほぼ等しい値となっている。つまり、制振装置901は、小型で軽量の補助質量300を用いても、大きな制振効果を得ることが可能となる。ディスク最高回転周波数fmax[Hz]は、ディスクの偏重心による外乱加速度が最大となる周波数である。
図11は、位置x1の値を検出する相対位置検出器の機能の具体的な一例を示したものである。位置x1は、筐体1とメインフレーム部100との振動方向の相対的な位置である。図11において、図11右下に座標図を示す。x軸方向はディスクのタンジェンシャル方向であり、y軸方向はディスクのラジアル方向であり、z軸方向はディスクのフォーカス方向(ディスク面に対し鉛直方向)である。この相対位置検出器は、筐体1とメインフレーム部100とのディスクのラジアル方向(図10のy軸方向)の相対位置を検出する機能を持つ。一方、相対位置検出器は、メインフレーム部100のz軸方向成分の移動については感度を有さない。ディスクのラジアル方向は、情報ピックアップ600のトラッキング制御方向である。
まず、相対位置検出器の構成について説明する。永久磁石372は、磁石ホルダ371に位置決めされて固定されている。磁石ホルダ371はメインフレーム部100に位置決めされて固定されている。すなわち、永久磁石372はメインフレーム部100に対し位置決めされて固定されている。ホール素子373a,373bは、回路基板等で作製されたホール素子保持部材374に位置決めされて保持されている。ホール素子保持部材374は筐体1に位置決めされて固定されている。すなわち、ホール素子373a,373bは筐体1に対し位置決めされて固定されている。
永久磁石372は、メインフレーム部100に位置決めされて固定されている。また、ホール素子373a,373bは、筐体1に位置決めされて固定されている。本例では、相対位置検出器は、永久磁石372の移動量を、ホール素子373a,373bを用いて磁束密度の変化として検出する構成となっている。永久磁石372は、例えば図11に示すように、x軸方向に着磁され、かつy軸方向の中心位置で、その着磁方向が逆転する特性とする。永久磁石372は一体で形成されているが、図10では理解を容易にするために、この着磁方向の違いを372a,372bとして区別して表している。ホール素子373a,373bは、永久磁石372の着磁方向が切り替わるy軸方向の位置に配置される。
次に相対位置検出器の動作について説明する。まず、永久磁石とホール素子との位置関係に対するホール素子の出力変化を説明するため、永久磁石372とホール素子373aとを例にとって説明する。永久磁石372とホール素子373aとは一定の隙間をもってx軸方向に対向して配置されている。上述のようにホール素子373aの中心は、永久磁石372の着磁方向の切り替わるy軸の位置に位置している。
この永久磁石372とホール素子373との構成により、永久磁石372がy軸方向に移動すると、永久磁石372に対するホール素子373aの位置変化に対応してホール素子373aの位置での磁束の強さがほぼ線形的に変化する。このため、ホール素子373aの出力値が線形的に変化する。一方、永久磁石372がz軸方向に変移してもホール素子373aの位置での磁束の変化が無い。つまり、ホール素子373aは、永久磁石372のz軸方向成分の移動については感度を有さず、ホール素子373aの出力値は変化しない。従ってホール素子373aの磁束検出の出力値は、永久磁石372のy軸方向成分の変位として扱うことができる。また、ホール素子373aは、z軸方向成分の変位については感度を有さない。z軸方向は情報ピックアップのフォーカス方向である。
偏重心ディスク回転に基づいて発生する外乱によって発生するメインフレーム部100の位置の変動について検討する。偏重心ディスクの回転によって、発生する外乱は遠心力である。このため、メインフレーム部100の位置の変動は図11の上部の矢印で示すように円運動となる。従って永久磁石372はy軸方向だけでなくx軸方向にも移動する。ホール素子373aが単独であれば、永久磁石372のx軸方向成分の移動により、ホール素子373aの位置での磁束密度が変化するため、そのy方向の検出感度特性が変化する。
例えば、ホール素子373aが永久磁石372に近づけばy方向の検出感度は大きくなる。一方、ホール素子373aが永久磁石372から離れればy方向の検出感度は小さくなる。このx軸方向成分の変移によるy方向の検出感度の変動を抑えるため、相対位置検出器は図11のように一対のホール素子373a,373bを所定の間隔で対向して平行に配置させ、さらにホール素子373aとホール素子373bとの間に永久磁石372を挿入する構成とした。
この構成では、例えば永久磁石372がx軸方向のホール素子373a側に移動した場合、ホール素子373aと永久磁石372のx軸方向成分の相対距離が小さくなるためy軸方向成分の検出感度は上昇する。逆にホール素子373bは永久磁石372とのx軸方向成分の相対距離が大きくなるためy軸方向成分の検出感度は低下する。したがって、ホール素子373a,373bの検出出力の値の平均をとることで、永久磁石372のx軸方向成分の変移による検出感度の変動をほぼ無効とすることができる。ホール素子373a,373bの検出出力の値の平均は、例えば両検出信号を2分の1して加算する方法などで容易に実現できる。
次に相対位置検出器を動作させる回路構成について説明する。図12は相対位置検出器の回路構成を示したブロック図である。ホール素子373aの2つの端子は、一方の負の出力が差動アンプ1001aの入力端子のマイナス側に接続され、他方の正の出力は差動アンプ1001aの入力端子のプラス側に接続されている。差動アンプ1001aの出力端子は直流成分除去フィルタ1002aに接続されている。同様に、ホール素子373bの2つの端子は、一方の正の出力が差動アンプ1001bの入力端子のマイナス側に接続され、他方の負の出力は差動アンプ1001bの入力端子のプラス側に接続されている。差動アンプ1001bの出力端子は直流成分除去フィルタ1002bに接続されている。ホール素子373aが検出した信号は、直流成分除去フィルタ1002aに出力される。ホール素子373bが検出した信号は、直流成分除去フィルタ1002bに出力される。
直流成分除去フィルタ373a,373bは、直流成分のオフセットが制御の弊害となるため、直流成分のオフセットを除去するために使用している。直流成分除去フィルタ1002a,1002bの他の端子は加算アンプ1003aの入力端子に接続されている。加算アンプ1003aの出力端子はアッテネータ1003に接続されている。加算アンプ1003aとアッテネータ1003とで平均回路1003bを構成している。アッテネータ1003は、入力値を0.5倍した値を永久磁石372のy軸方向成分の変位信号として出力する。
図13は相対位置検出器の出力特性を示した特性図である。横軸はホール素子のy軸方向成分の位置であり、縦軸はホール素子の出力値である。一点鎖線(1)はホール素子と永久磁石との距離が1mmであり、小さな破線(2)はホール素子と永久磁石との距離が1.5mmであり、大きな破線(3)はホール素子と永久磁石との距離が2mmである。一点鎖線(1)と大きな破線(3)とを平均した値を実線で示している。
図13の特性図より、実線は、ホール素子と永久磁石との距離が1.5mmの出力値を示した小さな破線(2)とほぼ同等の値を示している。このことより、相対位置検出器は、永久磁石のx軸方向成分の変位に基づいた検出感度の変動をほぼ無効とできることがわかる。実線は、一点鎖線(1)と大きな破線(3)とを平均した値を示している。
上記のような構成によって、相対位置検出器は、筐体1とメインフレーム部100との1軸方向成分(本例ではy軸方向成分)のみの相対位置の変動を検出することができる。永久磁石372およびホール素子373a,373bは安価な素子であるため、本検出系の相対位置検出器は安価で、かつ高性能な特性を実現できる。
なお、一対のホール素子373a,373bと永久磁石372とを使用した相対位置検出器は、一軸方向成分の相対位置変位量を検出する検出器として広く利用することができる。つまり、実施の形態1では、一対のホール素子373a,373bと永久磁石372とを使用した相対位置検出器は、筐体1とメインフレーム部100との相対位置の検出に使用されているが、メインフレーム部100と補助質量300との相対位置を検出するために使用されることも可能である。
以上、実施の形態1に係る制振装置900,901は、メインフレーム部100に緩衝部材350を介して補助質量300を備えている。制振装置900の伝達力検出部400は、メインフレーム部100から補助質量300への伝達力F1_2の値を検出する。伝達力検出部400は、伝達力F1_2の値を、増幅器500に出力する。増幅器500は、伝達力F1_2の値を増幅してドライバ510に出力する。ドライバ510は、補助質量駆動部360を駆動して、伝達力F1_2の値を増幅した力を補助質量300に与える。これにより、制振装置900は、小さな補助質量300で大きな補助質量300と同等の制振効果を得ることができる。
また、制振装置901の伝達力検出部401は、位置x1の値を検出している。位置x1は、筐体1とメインフレーム部100との振動方向の相対的な位置である。伝達力F1_2は、位置x1の値に緩衝部材350の弾性係数k1を積算して求められる。伝達力F1_2の値は、増幅器500により増幅係数αで増幅され、ドライバ510出力される。ドライバ510は、補助質量駆動部360を駆動して補助質量300に力αF1_2を与える。このように、伝達力F1_2の値を位置x1の値のみから求めていため、伝達力F1_2の値の算出が容易にできる。位置x1は、筐体1とメインフレーム部100との振動方向の相対位置である。
相対位置検出器は、筐体1とメインフレーム部100との振動方向の相対的な位置x1の値を検出する。相対位置検出器は、一対のホール素子373a,373bを対向して平行に配置している。永久磁石372は、一対のホール素子373a,373bの間に配置されている。これにより、相対位置検出器は、フォーカス方向成分の変位については感度を有さない。また、相対位置検出器は、ディスク129のタンジェンシャル方向成分の信号はキャンセルすることで、ディスク129のラジアル方向成分の変位信号のみ検出することができる。
また、図2、図3で示した補助質量駆動部360は、駆動用コイル362の配線が固定側の駆動用コイル保持部材363aに取り付けられているため、コイル線が繰り返し屈曲されることで破損することを避けることができる。また、図11で示した相対位置検出器も、ホール素子373を保持するホール素子保持部材を固定側の筐体1に取り付けることで、配線に用いる線材が繰り返し屈曲されることで破損することを避けることができる。
以上より、伝達力検出部400,401は、高い検出精度でありながら簡便な構成で小型である。制振装置900,901は、伝達力検出部400,401が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動部360が駆動する。これにより、制振装置900,901は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態2.
実施の形態1に係る伝達力検出部401は、伝達力F1_2の値を筐体1とメインフレーム部100との相対的な位置x1の値から求めている。実施の形態2に係る伝達力検出部402は、補助質量300とメインフレーム部100との相対的な位置(x2―x1)の値および補助質量駆動部360の駆動信号の2つの信号から伝達力F1_2の値を推定する構成とする。
図14は、実施の形態2に係る能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置902のモデル図である。図14において、図1と図8とで説明した制振装置900,901の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
位置x1は筐体1とメインフレーム部100との相対位置である。位置x2は筐体1と補助質量300との相対位置である。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。位置(x2―x1)はメインフレーム部100と補助質量300との振動方向の相対位置である。実施の形態1と異なり、伝達力検出部402の入力信号は、メインフレーム部100と補助質量300との相対的な位置信号および補助質量駆動部360の駆動信号の2つの信号である。
実施の形態2の特徴である伝達力検出部402の説明を以下に行う。図15は、図14を質点系モデルとして変換した図である。補助質量共振系30は、補助質量300および緩衝部材350で構成される。メインフレーム部共振系10は、メインフレーム部100および緩衝支持部材200で構成される。図15において、図42で説明した制振装置910の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
力F0[N]は、外部振動に基づくメインフレーム部100に作用する外乱による力である。力F1[N]は偏重心ディスクの回転に基づく外乱による力である。力F2[N]は補助質量駆動部360が発生する力である。力F2の定義は、補助質量駆動部360が発生する補正量である。このことから、力F2の値は、図49における検出された伝達力F1_2の値を増幅する機能ブロック501の出力値に相当し、その定義は次の式(19)となる。
図15をブロック図として表現すると、図16となる。図16において、図43で説明した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。図43と比較して図16は、力F2の値が機能ブロック310の入力値として加減算器700eに加算されている点で異なっている。力F2は、補助質量300を能動的に補正動作させるために印加される力である。また、機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。
図17は、図16の機能ブロック310の部分を抜き出し、さらにメインフレーム部100を仮想的に接地した場合のブロック図である。図17において、伝達力検出部402は外乱推定器である。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。
図17において、伝達力検出部402は、外乱推定器である。伝達力検出部402は、力F2の値と位置(x2―x1)の値を入力して伝達力F1_2の値の推定値F´1_2を出力している。なお、力F2は、補助質量駆動部360が発生する補正量である。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。位置(x2―x1)は、メインフレーム部100と補助質量300との振動方向の相対的な位置で、機能ブロック310の出力値である。
機能ブロック310から見た場合、ドライバ510が出力する制御信号は力F2と定義され、伝達力F1_2は外乱として定義される。なお、機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。力F2は、補助質量駆動部360が発生する補正量である。伝達力F1_2は、メインフレーム部100から補助質量300に緩衝部材350を介して伝達する力である。
図17に示すとおり、機能ブロック310は、一般的な1自由度の共振系である。この1自由度の共振系を制御対象とすれば、制御対象に供給する制御信号と制御対象の状態量である位置信号とを演算することによって、伝達力F1_2の値は、推定される。伝達力F1_2は、制御対象に印加される外乱である。この機構を一般的に外乱推定器という。機能ブロック310は、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである。
実施の形態2によれば、制御信号は2つある。制御信号のひとつは、補助質量駆動部360が発生する補正量としての力F2の値となる。もう一つの制御信号は、補助質量300とメインフレーム部100との振動方向の相対位置(x2−x1)の値となる。伝達力検出部は、この2つの制御信号に基づいて外乱を推定する。外乱は伝達力F1_2となる。外乱推定器である伝達力検出部402は伝達力F1_2の値を推定して出力する。伝達力検出部402は、その推定値F´1_2として出力された伝達力F1_2の値を検出値とすることで、伝達力F1_2の値を検出する機能を実現することができる。
外乱推定器は既知の概念であるため、ここでは説明を省略する。外乱推定器は、同一次元型と最小次元型の2種が存在し、どちらを選択しても良い。ここでは演算負荷が軽い最小次元型とする。
図18は、力F1[N]に対する伝達力F1_2の検出特性を示している。図18(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図18(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図18中、曲線A1は理想状態における伝達力F1_2の値の検出特性を示す。曲線A3は外乱推定器の推定値に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性を示す。力F1[N]は、外乱入力である。ここで、伝達力検出部402は最小次元型の外乱推定器で実現している。最小次元型の外乱推定器の極配置は、帯域1kHzの2次のバターワース極に設定した。図18には2つの事例がプロットされている。1つの事例は伝達力検出部402の検出特性が全帯域で誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態の特性である。もう一つの事例は、実施の形態2に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性である。
理想状態の特性と、実施の形態2の検出特性とを比較する。約100Hz以上の高域で、理想状態の特性は実施の形態2の検出特性に対し、若干位相が進み特性となっている。しかし、ディスク最高回転周波数fmax[Hz]以下の帯域ではほぼ同じ特性となっていることが確認できる。ディスク最高回転周波数fmax[Hz]以下の帯域は制御したい帯域である。
図19は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性の解析結果を示している。図19(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図19(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。伝達力検出部402の検出特性は図18の実施の形態2に基づく特性とし、増幅器500の増幅係数αの値は9に設定している。力F1[N]は、外乱入力である。
補助質量300のみの特性である図47(補助質量共振系有りの特性)で示した特性に対し、図19で示す特性は、従来の補助質量300の10分の1(5[g])と小さな値にもかかわらず、上記図47の特性と同等の特性となっている。なお、図47(補助質量共振系有りの特性)の特性は、従来の補助質量300のみの特性である。特にディスク最高回転周波数fmax[Hz]のゲインは、上記図47に対してほぼ等しい値となっている。つまり、制振装置902は、小型で軽量の補助質量300を用いても、大きな制振効果を得ることが可能となる。ディスク最高回転周波数fmax[Hz]は、ディスクの偏重心による外乱加速度が最大となる周波数である。
図20は、実施の形態2に係る伝達力検出部402の相対位置信号を検出する相対位置検出器の斜視図である。この相対位置検出器は、補助質量300とメインフレーム部100との相対位置(x2−x1)の値を検出する機能を有する。図20の構成は、図2の構成に補助質量300とメインフレーム部100との相対位置(x2−x1)の値を検出する機能を増設している。
図20において、相対位置検出器は、板バネ(緩衝部材350)に歪ゲージ380が貼られている。歪ゲージ380は、板バネ(緩衝部材350)の曲げ方向成分の歪を検出する。なお、相対位置検出器は、伝達力検出部402の入力信号となる振動方向の相対位置(x2−x1)の値を検出する。補助質量300とメインフレーム部100との相対位置(x2−x1)の値は、板バネで構成された緩衝部材350のたわみ量の値と比例する。板バネ(緩衝部材350)に貼られた歪ゲージ380は、板バネ(緩衝部材350)のたわみ量を検出することができる。このたわみによる歪量は歪ゲージ380の抵抗値の変化として検出することができる。この抵抗値変化は微小であるが、検出にはブリッジ回路などを用いて行えば良い。歪ゲージ380の端子は配線ターミナル381に接続されている。
上記のような構成により、相対位置検出器は、検出精度が精確でありながら小型でかつ安価に実現することができる。相対位置検出器は、補助質量300とメインフレーム部100との振動方向の相対位置(x2−x1)の値を検出する。
なお、相対位置検出器は、図7で示したようなバイモルフを用いた圧電駆動型のアクチュエータの形態を使用しても実現できる。つまり、バイモルフを用いた相対位置検出器は、歪ゲージを貼ることで補助質量300とメインフレーム部100との相対位置(x2−x1)の値を検出する形態と同様の機能を実現することができる。さらに図7の構成のアクチュエータは、バイモルフの一部を角度センサとする領域を設けることで、駆動機能と位置検出機能を一体に共用する構成も可能である。例えば、特開2001−156352号公報の第3ページから第4ページおよび第1図に記載されたアクチュエータが挙げられる。
以上より、伝達力検出部402は、簡便な構成で小型でありながら高い検出精度を有する。制振装置902は、伝達力検出部402が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動部360が駆動する。このため、制振装置902は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態3.
実施の形態3に係る伝達力検出部403は、伝達力F1_2の値をメインフレーム部100の加速度情報から推定する。図21は、実施の形態3の能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置903のモデル図である。図21において、伝達力検出部403の入力信号は、メインフレーム部100の加速度信号である。図1、図8および図14で説明した制振装置900,901,902の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
メインフレーム部100の加速度は式(20)で表される。
実施の形態3に係る制振装置903の特徴である伝達力検出部403の説明を以下に行う。図22は、実施の形態3の伝達力検出部403をブロック図に変換した図である。図22において、伝達力検出部403は、まず、メインフレーム部100の加速度の値を入力し、積分器701で2度積分して位置x1の値を求める。伝達力検出部403は、機能ブロック350aで位置x1の値にk2を積算して伝達力F1_2の値を出力する。機能ブロック350aは、緩衝部材350の弾性係数k2を表す。
つまり、入力値であるメインフレーム部100の加速度信号は積分すれば速度に変換され、さらに積分すれば位置の値に変換される。従って積分器701を2回通過した信号は、メインフレーム部100の位置x1の値に相当する信号となる。
筐体1を基準としたメインフレーム部100の位置x1の値が検出できれば、実施の形態1で説明したシステムが適用できる。つまり位置x1の値の信号を機能ブロック350aに通すことで、伝達力F1_2の値を検出値として得ることが可能となる。機能ブロック350aは、緩衝部材350の弾性係数k2を表す。伝達力F1_2は、式(18)に示すようなメインフレーム部100の筐体1を基準とした位置x1の値をk2倍した量である。
ただし、ここで得られる位置x1の値は、積分器701の出力値である。しかし、その積分器701の初期値が不定であるために絶対位置の値が不定となる。従ってここでは図示しないが、実施の形態3に係る伝達力検出部403は、直流成分を除去する機能が信号経路に挿入され、直流成分が除去された伝達力F1_2の推定値を用いる。また伝達力検出部403は、積分器を2つ持つのではなく、単に有限な直流成分をもった2次積分手段によって同様の機能を実現できる。
図23は、伝達力検出部403を図22で示した機能ブロックで実現した場合の力F1[N]に対する伝達力F1_2の検出特性を示した図である。図23(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図23(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図23中、曲線A1は理想状態における伝達力F1_2の値の検出特性を示す。曲線A4は加速度情報に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性を示す。ここで、力F1[N]は外乱入力である。図23には2つの事例がプロットされている。1つの事例は伝達力検出部403の検出特性が全帯域で誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的な状態の特性であり、もう一つの事例は、実施の形態3に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性である。この図の特性は、実施の形態1において図9で示した検出特性と同様の特性となっていることがわかる。
図24は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。図24(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図24(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。伝達力検出部403の検出特性を図23の実施の形態3に基づく特性とし、増幅器500の増幅係数αの値は9に設定している。力F1[N]は外乱入力である。これも実施の形態1で示した図10と同様の特性となっており、制振装置903が有効に作用することがわかる。このため、詳細な機能や効果も実施の形態1で示した図10の場合と同様である。
なお、実施の形態3におけるメインフレーム部100の加速度を検出する手段は、一般的に実用化されている加速度センサで実現できる。
以上より、伝達力検出部403は、簡便な構成で小型でありながら高い検出精度を有する。制振装置903は、伝達力検出部403が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動部360が駆動する。このため、制振装置903は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態4.
実施の形態4に係る伝達力検出部404は、情報ピックアップ600と位置追従制御器601とを用いた外乱を推定する手段によって構成される。情報ピックアップ600は、メインフレーム部100の一部である。位置追従制御器601は情報ピックアップ600の位置追従制御部として機能する。図25は、実施の形態4の能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置904のモデル図である。図25において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
情報ピックアップ600は、光ディスク装置の場合、対物レンズを光ディスクの情報記録面上に形成された情報トラックに対し、合焦動作を行う機能とトラッキング動作を行う機能を持つ。情報ピックアップ600の位置追従制御器601は、情報ピックアップ600の位置を回転する光ディスクの情報トラックの位置に追従して移動させる位置追従制御を行うものである。
上記のような情報ピックアップ600は、情報ピックアップ600に作用する外乱による力の値を、専用のセンサを用いずに検出することが可能である。例えば、特許第3949609号の第3ページから第11ページおよび第1図から5図に記載された外乱推定器は、信号erと信号drとの2つの信号から情報ピックアップ600に作用する外乱による力の値を推定しており、専用のセンサを用いていない。信号erは、情報ピックアップ600の位置追従制御器601の偏差信号である。信号drは、情報ピックアップ600の位置追従制御器601の情報ピックアップ600の駆動信号である。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
この専用のセンサを用いない外乱推定器は、情報ピックアップ600の動特性を内部モデルに持つ外乱推定器で構成されている。専用のセンサを用いない外乱推定器の推定値は、実施の形態3で示したメインフレーム部100の加速度と比例した信号である。なぜなら、情報ピックアップ600に作用する力は、メインフレーム部100に作用する外乱による力であるからである。従って、実施の形態3と同様に、伝達力検出部404は、専用のセンサを用いない外乱推定器の外乱による力の推定値を、2次積分すれば伝達力F1_2の推定値を得ることができる。2次積分を行う手段については、実施の形態3と同様である。
図26は、力F1[N]に対する伝達力F1_2の検出特性を示した図である。図26(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図26(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図26中、曲線A1は理想状態における伝達力F1_2の値の検出特性を示す。曲線A5は情報ピックアップ600の外乱推定器の外乱推定値出力に基づいた伝達力F1_2の値の検出特性を示す。力F1[N]は、図25で示した伝達力検出部404の外乱入力である。図26には2つの事例がプロットされている。1つの事例は伝達力検出部404の検出特性が全帯域にて誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態の特性である。もう一つの事例は、実施の形態4に基づいた伝達力F1_2の値検出特性である。図26の特性は、実施の形態3の図23で示した検出特性に、専用のセンサを用いない外乱推定器の外乱検出特性を加味した特性となっている。専用のセンサを用いない外乱推定器の検出特性を決定するのは極配置である。この解析例では外乱推定器は最小次元型とし、極配置はカットオフ周波数600Hzの2次のバターワース極に指定している。
理想状態の特性と、実施の形態4の検出特性とを比較する。約100Hz以上の高域で、理想状態の特性は実施の形態4の検出特性に対し、若干位相が進み特性となっている。しかし、ディスク最高回転周波数fmax[Hz]以下の帯域ではほぼ同じ特性となっていることが確認できる。ディスク最高回転周波数fmax[Hz]以下の帯域は制御したい帯域である。
図27は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。図27(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図27(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。伝達力検出部404の検出特性を図26の実施の形態4に基づく特性とし、増幅器500の増幅係数αの値は9に設定している。力F1[N]は外乱入力である。
実施の形態3で示した図24の特性と比較すると、伝達力検出部404の特性は、80〜90Hzの感度が若干高くなっているが、それ以外の帯域における特性はほぼ同一となっており、制振装置904が有効に作用することがわかる。このため、実施の形態3の場合と同様に、伝達力検出部404は、詳細な機能や効果も実施の形態1で示した図10の場合と同様である。
以上より、伝達力検出部404は、簡便な構成で小型でありながら高い検出精度を有する。制振装置904は、伝達力検出部404が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動部360が駆動する。このため、制振装置904は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態5.
上述した従来例の制振装置910や実施の形態で示した制振装置900,901,902,903,904は、ディスク最高回転周波数fmax[Hz]での外乱の影響をキャンセルするように機能する。しかしながら、図48および図51に示すように、ディスク最高回転周波数fmaxに対して低周波側ならびに高周波側に不要な感度ピークをもつ問題があった。実施の形態5では、これまでに説明した実施の形態に対し、ディスク最高回転周波数fmaxでの外乱の影響をキャンセルする効果を維持しつつ、前記の不要な2つの感度ピークを効果的に抑制する方法について説明する。
実施の形態5は、実施の形態1で示した図1の制振装置900に、位相補償器800を適用した例である。図28は、実施の形態5の能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置905のモデル図である。図28において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
実施の形態5に係る制振装置905は、補助質量300を能動的に動作させることを特徴としている。制振装置905は、位相補償フィルタを用いて任意の周波数帯の動特性を改善することができる。前記の不要な2つの感度ピークのうち低周波側の感度ピークは、メインフレーム部100の共振周波数で発生する。この低周波側の周波数を周波数f1[Hz]とする。この低周波側の感度ピークは、伝達力検出部400の出力値の周波数f1[Hz]を含む低い帯域の位相を遅らせることで改善することができる。さらに前記不要な2つの感度ピークのうち高周波側の感度ピークは、共振周波数f0(実施の形態5ではディスク最高回転周波数fmax)以上の帯域の位相を進ませることで改善することができる。共振周波数f0(実施の形態5ではディスク最高回転周波数fmax)は、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の共振周波数である。また、共振周波数f0は伝達力検出部400の出力である。
ここで、位相補償器800の具体的な一例を示す。伝達力検出部405の出力値の所定帯域の位相を変化させる手段は、アナログ電気回路やディジタルフィルタを用いた位相補償器800によって実現できる。
図29は、位相補償器800の周波数特性の一例を示した図である。図29(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図29(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。位相補償器800は、低周波側の共振周波数f1を含む低い帯域の位相を遅らせ、さらに、ディスク最高回転周波数fmax以上の帯域の位相を進ませる機能を有している。共振周波数f1は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の低周波側の共振周波数である。ディスク最高回転周波数fmaxは、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の共振周波数である。
図30は、図29の特性を実現する位相補償器800の具体的な例としてのオペアンプを用いたアナログ回路である。図30において、抵抗R1とコンデンサC1とは直列に接続されている。抵抗R1およびコンデンサC1と並列に抵抗R2が接続されている。コンデンサC1の他端はオペアンプOP1のマイナス側の入力端子に接続されている。オペアンプOP1のプラス側の入力端子は接地されている。抵抗R3とコンデンサC2とは直列に接続されている。抵抗R4は抵抗R3およびコンデンサC2と並列に接続されている。抵抗R4の抵抗R3側の端部はオペアンプOP1のマイナス側の入力端子に接続されている。抵抗R4のコンデンサC2側の端部はオペアンプOP1の出力端子に接続されている。
抵抗R1,R2およびにコンデンサC1が上述のディスク最高回転周波数fmax以上の帯域の位相を進ませるパラメータである。また、抵抗R3,R4およびコンデンサC2が上述の低周波側の共振周波数f1を含む低い帯域の位相を遅らせるパラメータとなっている。共振周波数f1は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の低周波側の共振周波数である。各抵抗の値およびコンデンサの値を図30に示した値に設定すると、位相補償器800は、図31に示すような周波数特性となり、図29の特性とほぼ等しい特性を得ることが出来る。つまり、抵抗R1は2.7kΩと設定し、抵抗R2は15kΩと設定し、抵抗R3は16kΩと設定し、抵抗R4は91kΩと設定し、コンデンサC1は0.056μFと設定し、コンデンサC2は0.82μFと設定する。図31の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]および位相[度]である。図31中、曲線P1はゲイン特性を示し、曲線P2は位相特性を示す。
図32は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性の解析結果を示している。図32(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図32(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図32中、曲線B1はαを1に設定した曲線であり、曲線B2はαを9に設定した曲線であり、曲線B3はαを49に設定した曲線である。補助質量300の質量m2は5gである。伝達力検出部400と増幅器500とは、実施の形態1で説明した構成と同様の設定条件とし、さらに図28で示した伝達力検出部400と増幅器500との間に図29で示した周波数特性の位相補償器800を挿入している。増幅器500の増幅係数αの値は1、9および49に設定している。なお、この増幅係数αの値は、(α+1)の値が2、10および50となるように設定されている。つまり、受動型の場合の相当質量が10[g]、50[g]および250[g]となるように設定した。受動型とは、補助質量300が能動的に動作しない構成を示す。これらの1、9および49の増幅係数αの値は図48で示した補助質量300の質量m2の倍率と等しくなるように設定されている。すなわち、増幅係数αの値は増幅係数αが1の場合は補助質量300の質量m2が0.2倍の場合に、増幅係数αが9の場合は補助質量300の質量m2が1倍の場合に、増幅係数αが49の場合は補助質量300の質量m2が5倍の場合に対応して設定されている。
図48と図32とを対比すると、図48でのディスク最高回転周波数fmaxの両サイドの不要な2つの感度ピークが、図32ではほぼ零に抑制されていることが確認できる。一方、ディスク最高回転周波数fmax付近の帯域における感度低下の効果は、劣化することなく図48とほぼ同等の抑制特性を維持している。図32に示すように、この特性は増幅係数αの大小に関係なく実現できる。
なお、実施の形態5では、共振周波数f0(実施の形態5ではディスク最高回転周波数fmax)以上の帯域の位相を進ませて高周波側の感度ピークを改善している。しかし、共振周波数f0を含まない帯域の位相を進ませることで高周波側の感度ピークを改善することも可能である。共振周波数f0を含まない帯域とは、共振周波数f0より大きい帯域である。また、共振周波数f0(実施の形態5ではディスク最高回転周波数fmax)は、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の共振周波数である。
実施の形態5に係る制振装置905は、位相補償器800を用いて伝達力検出部405の出力を位相補償する構成である。位相補償器800は、所定の帯域における不要な感度上昇を抑えることが可能である。また、伝達力検出部400は、高い検出精度でありながら簡便な構成で小型である。補助質量駆動部360は、伝達力検出部400が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を駆動する。以上より、制振装置905は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態6.
実施の形態6に係る制振装置906は、実施の形態1の図8で説明した制振装置901に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例である。図33は、実施の形態6に係る能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置906のモデル図である。図33において、図8で説明した制振装置901の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。位置x1は、メインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の位置を示す。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
位相補償器800は、伝達力検出部401と増幅器500との間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出部401の検出信号に対し、位相補償する機能を持つ。位相補償する機能とは、実施の形態5で示した特性となるようにする機能である。伝達力検出部401の検出信号は伝達力F1_2の値である。
図34は、力F1[N]に基づくメインフレーム部100の加速度d2(x1)/dt2の周波数特性に対し、実施の形態6に係る位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。図34(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図34(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図34中、曲線C1は位相補償器800の位相補償がない場合の特性を示し、曲線C2は位相補償器800の位相補償ある場合の特性を示している。補助質量300の質量m2は5gである。増幅係数αは9である。力F1[N]は、実施の形態1の図10に示した外乱入力である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図34には2つの事例がプロットされている。1つの事例は図10で示した特性である。もう一つの事例は、図10で示した系に対し実施の形態6の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800を持たない制振装置の周波数特性は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)と80から90Hzまでの帯域とにゲインピークが存在する。実施の形態6に係る位相補償器800を適用すれば、これらの2つのゲインピークを効果的に抑制できる。
実施の形態6に係る制振装置906は、位相補償器800を用いて伝達力検出部401の出力を位相補償する構成である。位相補償器800は、所定の帯域における不要な感度上昇を抑えることができる。伝達力検出部401は、高い検出精度でありながら簡便な構成で小型である。伝達力検出部401が検出する検出信号に基づいて、補助質量駆動部360は、小さく軽い補助質量300を駆動する。以上より、制振装置906は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態7.
実施の形態7に係る制振装置907は、実施の形態2の図14で説明した制振装置902に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例である。図35は、実施の形態7の能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置907のモデル図である。図35において、図14で説明した制振装置902の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。位置x1は、メインフレーム部100を質点m1として定義した場合の筐体1を基準とした質点m1の振動方向の位置を示す。位置x2は補助質量300を質点m2として定義した場合の筐体1を基準とした質点m2の振動方向の位置を示す。位置(x2―x1)は、補助質量300とメインフレーム部100との振動方向の相対的な位置を示す。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
位相補償器800は、伝達力検出部402と増幅器500との間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出部402の検出信号に対し、位相補償して実施の形態5で例示した特性とする機能を持つ。伝達力検出部402の検出信号は、伝達力F1_2の値である。
図36は、力F1[N]に基づくメインフレーム部100の加速度の周波数特性に対し、実施の形態7による位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。図36(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図36(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図36中、曲線C1は位相補償器800の位相補償がない場合の特性を示し、曲線C2は位相補償器800の位相補償ある場合の特性を示している。力F1[N]は、実施の形態2における図19に示した外乱入力である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図36には2つの事例がプロットされている。1つの事例は図19で示した特性である。もう一つの事例は、図19で示した系に対し実施の形態7の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800を持たない制振装置の周波数特性は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)と80から90Hzまでの帯域とにゲインピークが存在する。実施の形態7に係る位相補償器800を適用すれば、これらの2つのゲインピークを効果的に抑制できる。
実施の形態7に係る制振装置907は、伝達力検出部402の出力を位相補償器800にて位相補償する構成である。位相補償器800は、所定の帯域における不要な感度上昇を抑制すことができる。伝達力検出部402は、高い検出精度でありながら簡便な構成で小型である。伝達力検出部402が検出する検出信号に基づいて、補助質量駆動部360は、小さく軽い補助質量300を駆動する。以上より、制振装置907は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態8.
実施の形態8に係る制振装置908は、実施の形態3の図21で説明した制振装置903に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例である。図37は、実施の形態8に係る能動的に動作を行う補助質量300を用いた制振装置908のモデル図である。図37において、図21で説明した制振装置903の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
位相補償器800は、伝達力検出部403と増幅器500との間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出部403の検出信号に対し、位相補償する機能を持つ。位相補償する機能とは、実施の形態5で示した特性になるようにする機能である。伝達力検出部403の検出信号は、伝達力F1_2の値である。
図38は、力F1[N]に対するメインフレーム部100の加速度の周波数特性に対し、実施の形態8による位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。図38(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図38(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図38中、曲線C1は位相補償器800の位相補償がない場合の特性を示し、曲線C2は位相補償器800の位相補償ある場合の特性を示している。力F1[N]は、実施の形態3の図24に示した外乱入力である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図38には2つの事例がプロットされている。1つの事例は図24で示した特性である。もう一つの事例は、図24で示した系に対し実施の形態8の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800を持たない制振装置の周波数特性は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)と80から90Hzまでの帯域とにゲインピークが存在する。実施の形態8に係る制振装置908は、位相補償器800を適用してこれらの2つのゲインピークを効果的に抑制できる。
実施の形態8に係る制振装置908は、位相補償器800を用いて伝達力検出部401の出力を位相補償する構成である。位相補償器800は、所定の帯域における不要な感度上昇を抑えることができる。伝達力検出部403は、高い検出精度でありながら簡便な構成で小型である。以上より、制振装置908は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。補助質量駆動部360は、伝達力検出部403が検出する検出信号に基づいて、小さく軽い補助質量300を駆動する。以上より、制振装置908は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態9.
実施の形態9に係る制振装置909は、実施の形態4の図25で説明した制振装置904に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例である。図34は、実施の形態9に係る能動的に動作を行う補助質量300を用いて制振装置909のモデル図である。図39において、図25で説明した制振装置904の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。信号erは、情報ピックアップ600の位置追従制御器601の偏差信号である。信号drは、情報ピックアップ600の位置追従制御器601の情報ピックアップ600の駆動信号である。伝達力F1_2はメインフレーム部100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。
位相補償器800は、伝達力検出部404と増幅器500との間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出部404の検出信号に対し、位相補償する機能を持つ。位相補償する機能とは、実施の形態5で示した特性となるようにする機能である。伝達力検出部404の検出信号は、伝達力F1_2の値である。
図40は、力F1[N]に基づくメインフレーム部100の加速度の周波数特性に対し、実施の形態9に係る位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。図40(A)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はゲイン[dB]である。図40(B)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は位相[度]である。図40中、曲線C1は位相補償器800の位相補償がない場合の特性を示し、曲線C2は位相補償器800の位相補償ある場合の特性を示している。力F1[N]は、実施の形態4の図27に示した外乱入力である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図40には2つの事例がプロットされている。1つの事例は図27で示した特性である。もう一つの事例は、図27で示した系に対し実施の形態9の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800を持たない制振装置の周波数特性は、メインフレーム部100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)と80から90Hzまでの帯域とにゲインピークが存在する。実施の形態9に係る位相補償器800を適用すれば、これらの2つのゲインピークを効果的に抑制できることが確認できる。
実施の形態9に係る制振装置909は、位相補償器800を用いて伝達力検出部404の出力を位相補償する構成である。位相補償器800は、所定の帯域における不要な感度上昇を抑えることができる。伝達力検出部404は、高い検出精度でありながら簡便な構成で小型である。伝達力検出部404が検出する検出信号に基づいて、補助質量駆動部360は、小さく軽い補助質量300を駆動する。以上より、制振装置909は、安価で小型軽量かつ高い制振性能を実現することができる。
実施の形態10.
本発明は、以上の実施例に限定されるものではなく、周期振動が発生する装置について有効に機能する。一例として、空調装置の室外機が発生する振動に対して、本発明を適用した事例について説明する。図52に、本発明を空調装置の室外機に対して適用したブロック図を示す。図52において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
図52において、地面2001は、本発明の筐体1に相当する。さらに空調装置の室外機2100は、本発明のメインフレーム部100に相当する。また、緩衝支持部材2200は、本発明の緩衝支持部材200に相当する。伝達力F1_2は空調装置の室外機2100から補助質量300に伝達する力である。α×F1_2は補助質量駆動部360が補助質量100に対して発生する力である。αは増幅係数である。空調装置の室外機2100は、緩衝支持部材2200を介して地面2001に設置されている。緩衝支持部材2200は空調装置の室外機が発生する振動が地面2001に伝達することを防止する。このように、図52に示す空調装置の室外機に対する本発明の適用例は、図1に示した本発明の実施例と等価であるから、同様に制振効果を発揮する。
ただし、この事例の場合、補助質量350と緩衝部材300とから構成される動吸振器の共振周波数は、空調装置の室外機が発生する振動のうち、最も問題となっている周波数に設定される。
上記のように、本発明は光ディスク装置のみならず、自励振動が発生する様々な装置に対し応用が可能で、同様の制振効果を得ることができる。