まず、本発明に係る実施の形態について述べる前に、その前提となる補助質量300による振動対策についての解析を行なう。つまり、補助質量300と緩衝部材350とによる動吸収器による振動対策では、付加する補助質量300の大きさによって効果が制限されており、大きな制振効果を得るためには、補助質量300を大きく設定する必要がある。以下に、その理由を述べる。
図41は、補助質量300による制振装置910のモデル図である。筐体1は、メインフレーム機構100と緩衝支持手段である緩衝支持部材200、補助質量300、緩衝手段である緩衝部材350を保持している。メインフレーム機構100は緩衝支持部材200を挟んで筐体1に支持されており、補助質量300は緩衝部材350を挟んでメインフレーム機構100に保持されている。
メインフレーム機構100は、ディスクを回転させるスピンドルモータと、ディスクに情報を記録する、あるいはディスクの情報を読み取る情報ピックアップ、さらにそれを保持するフレーム類を具備した機構ユニットでその総質量は質量m1である。また、緩衝支持部材200は、筐体1に対してメインフレーム機構100を支持し、さらに筐体1に作用する外部からの振動の伝達を緩衝する機能を持つ。また、緩衝部材350は、メインフレーム機構100に対し補助質量300を保持し、さらに後述する共振特性になる物性値となっている。
さらに、力F0は、外部からの振動に起因する筐体1からメインフレーム機構100へ緩衝支持部材200を介して伝達する力であり、力F1は偏重心ディスクの回転に起因する力であり、伝達力F1_2はメインフレーム機構100から補助質量300に緩衝部材350を介して伝達する力である。
図42は、図41を質点系モデルとして表現した図である。図42において、メインフレーム機構100は質量m1(kg)で表記している。緩衝支持部材200は粘弾性モデルで表記しており、バネ200aの弾性係数はk1(N/m)、オイルダンパ200bの粘性係数はc1(N・s/m)である。補助質量300は質量m2(kg)で表記している。緩衝部材350は粘弾性モデルで表記しており、バネ350aの弾性係数はk2(N/m)、オイルダンパ350bの粘性係数はc2(N・s/m)である。
位置x1はメインフレーム機構100を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置を示し、位置x2は補助質量300を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置を示す。筐体1はGNDとして定義され、力F0(N)は緩衝支持部材200を介してメインフレーム機構100に作用する力として定義される。さらに力F1(N)は、同じくメインフレーム機構100に作用する力で、偏重心ディスクの回転に起因するものである。
図42に示した振動モデルに対し、各質点の運動方程式は次の式(1)、式(2)で表される。
図43は上記2つの運動方程式(1)(2)をブロック図で表現したものである。
図43において、メインフレーム機構100共振系の基本モデルである機能ブロック110は、加減算器700b、加算器700cと、メインフレーム機構100の質量m1の逆数を表す機能ブロック100aと、積分器701a、701bと、緩衝支持部材200の弾性係数k1を表す機能ブロック200aと、緩衝支持部材200の粘性係数c1を表す機能ブロック200bとで表現される。
力F0と力F1とは加減算器700aで加算され、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310から出力される伝達力F2_1は減算され、その後加減算器700bに出力される。ここで、力F1_2はメインフレーム機構100から補助質量300に伝達される力の総和であり、力F2_1は逆に補助質量300からメインフレーム機構100に伝達される力すなわちメインフレーム機構質量100に対する制振力の総和である。
加算器700cでは、メインフレーム機構100を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置x1をk1倍した値と、メインフレーム機構100の速度d(x1)/dtをc1倍した値を加算する。加減算器700bでは、加算器700cの出力と加減算器700aの出力を加算する。加減算器700bの出力は、メインフレーム機構100の質量m1の逆数を表す機能ブロック100aにおいて1/m1倍され、積分器701aに出力される。積分器701aでは入力された値を積分し、速度d(x1)/dtを得る。速度d(x1)/dtは積分器701bに入力され、メインフレーム機構100を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置x1を得る。
メインフレーム機構100の位置と速度とを補助質量300に伝達する力に変換する機能ブロック210は、加算器700dと、緩衝部材350の弾性係数k2を表す機能ブロック350aと、緩衝部材350の粘性係数c2を表す機能ブロック350bとで表現される。加算器700dでは、メインフレーム機構100を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置x1をk2倍した値と、メインフレーム機構100の速度d(x1)/dtをc2倍した値を加算する。加算器700dの出力は、加減算器700eに出力される。
補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310は、加減算器700e、加算器700fと、補助質量300の質量m2の逆数を表す機能ブロック300aと、積分器701c、701dと、緩衝部材350の弾性係数k2を表す機能ブロック350aと、緩衝部材350の粘性係数c2を表す機能ブロック350bとで表現される。
加算器700fでは、補助質量300を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置x2をk2倍した値と、補助質量300の速度d(x2)/dtをc2aの出力を加算する。加減算器700fの出力は、加減算器700eで減算され、加算器700dの出力は加減算器700eで加算される。加減算器700eの出力は、補助質量300の質量m2の逆数を表す機能ブロック300aにおいて1/m2倍され、積分器70c1に出力される。積分器701cでは入力された値を積分し、速度d(x2)/dtを得る。速度d(x2)/dtは積分器701dに入力され、補助質量300を質点として定義した場合の筐体1を基準とした位置x2を得る。
ここで、力F1_2ならびに力F2_1は、次の式(3)、式(4)で表される。
ここで、メインフレーム機構100共振系の基本モデルである機能ブロック110は図43のメインフレーム機構100の質量m1の逆数100aを含む破線で囲った領域であり、メインフレーム機構100の共振系の基本モデルを示す。さらに補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310は、補助質量300の質量m2の逆数を表す機能ブロック300aを含む破線で囲った領域であり、補助質量300の共振系に印加される力に対してメインフレーム機構100に作用する力の伝達特性モデルを示す。また機能ブロック210は、緩衝部材350がメインフレーム機構100の位置と速度とを補助質量300に伝達する力に変換する変換特性を示す。この機能ブロック210の出力は、メインフレーム機構100の共振系の基本モデルである機能ブロック110から補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310へ伝達する力の総和である伝達力F1_2(N)となる。さらに補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310からメインフレーム機構100の共振系の基本モデルである機能ブロック110へ伝達力F2_1が伝達される関係となっている。
図44は、図43を等価変換にて伝達関数表示したブロック図である。加減算器700aで力F0、力F1が加算され、伝達力F2_1が減算される。加減算器700aの出力は、メインフレーム機構100共振系の基本モデルである機能ブロック110で1/(m1s2+c1s+k1)倍され位置x1を出力する。機能ブロック210では、入力値である位置x1を(c2s+k2)倍して伝達力F1_2を出力する。補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310では、入力値である伝達力F1_2をm2s2/(m2s2+c2s+k2)倍して伝達力F2_1を出力する。
図45は、図44の機能ブロックにおいて、メインフレーム機構100共振系の基本モデルである機能ブロック110の伝達特性をG1(s)、補助質量300の共振系の基本モデルである機能ブロック310の伝達特性をG2(s)とした場合のブロック図である。
伝達特性G1(s)、G2(s)は次の式(5)、式(6)で表される。
このため図45において、メインフレーム機構100共振系の基本モデルである機能ブロック110ではG1(s)倍され、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310ではG2(s)倍されている。
図45ならびに式(6)より、伝達特性G2(s)すなわち補助質量300の共振系の基本モデルである機能ブロック310の伝達特性は、入力が伝達力F1_2、出力が伝達力F2_1の動特性をもつ伝達関数モデルとなっている。また、伝達特性G1(s)すなわちメインフレーム機構100の共振系の基本モデルである機能ブロック110の伝達特性の入力を力Ftotalとする。この力Ftotalは次の式(7)で表される。
ここで、伝達力F2_1は前述の通り、メインフレーム機構100に対する制振力である。
図45を再考すれば、メインフレーム機構100の共振系の基本モデルである機能ブロック110は、補助質量300の付加によって、力F0や力F1の印加に対し、制振力である伝達力F2_1が機能し振動が抑えられることが理解できる。従って、制振性能を向上させるためには、少なくとも伝達力F2_1を大きく設定することが必要である。
ここで、機能ブロック210ならびに補助質量300の共振系の基本モデルである機能ブロック310の機能は、メインフレーム機構100の共振系の基本モデルである機能ブロック110の所定の周波数帯域の外乱に対する感度を下げることにある。本発明の例では、偏重心ディスクが回転する際に発生する遠心力である力F1に対して有効に機能するような設定例とする。前述のように力F1は、ディスク回転速度の2乗に比例するので、装置のディスク回転数の最大値で最大となる。従って、装置におけるディスク最高回転周波数fmax(Hz)において力F1は最大となる。従って、メインフレーム機構100の共振系の基本モデルである機能ブロック110の外乱に対する感度の周波数特性を、ディスク最高回転周波数fmaxにおいて低感度にすれば良い。
所定の周波数において、最小のエネルギで最大の制振特性を得る最適解は、補助質量300の共振系の基本モデルである機能ブロック310の共振周波数が低感度となるようにに設定することで得られる。このとき、補助質量300の共振系の基本モデルである機能ブロック310の共振周波数f0(Hz)は次の式(8)で表される。
一方、共振周波数f0は、次の式(9)で表される。
式(9)から弾性係数k2は、次の式(10)で表される。
また、補助質量300の共振系の基本モデルである機能ブロック310のQ値をQ2とすれば、粘性係数c2は次の式(11)で表される。なお、Q値は共振周波数f0に対する共振振幅のピーク値の3dB低下での曲線の幅△fの比f0/△fで与えられる。
式(11)に式(10)を代入すると、次の式(12)を得る。
式(6)に、式(10)、式(12)を代入すると、次の式(13)を得る。
式(13)によれば、伝達特性G2(s)はディスク最高回転周波数fmaxと補助質量300の共振系の基本モデルのQ値であるQ2とをパラメータとする関数であり、この2つのパラメータによってのみ一意的に決定することがわかる。伝達特性G2(s)の共振周波数を決定するパラメータであるfmaxはディスクの最高回転周波数であるから装置の仕様で設定される定数となり、補助質量300共振系の質量m2に依存しない特性となる。
補助質量300の共振系の効果を大きくするためには、制振力として機能する伝達力F2_1を大きくする必要があるが、伝達特性G2(s)については、補助質量300の質量m2を大きく変更しても特性改善はしないことがわかる。したがって、補助質量300共振系の効果を大きく改善するためには、伝達特性G2(s)の入力信号である伝達力F1_2を大きく設定するしかないことが理解できる。
伝達特性G2(s)の入力信号である伝達力F1_2の定義は、式(3)で示したとおりであり、メインフレーム機構100の共振系の基本モデルの位置x1をk2倍したものと速度をc2倍したものの和で定義されている。式(3)に、式(10)と式(12)を代入してまとめると次の式(14)を得る。
図46は、図45を式(14)で変換した場合のブロック図である。このため図46において、筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置x1は機能ブロック210でm2H(s)倍され伝達力F1_2を得る。
式(14)から、伝達力F1_2は補助質量300の質量m2とH(s)との積となっている。H(s)は式(15)に示すようにディスク最高回転周波数fmaxと補助質量300の共振系の基本モデルのQ値であるQ2をパラメータとし、補助質量300の質量m2に依存しない関数となっている。従って、式(14)から伝達力F1_2は補助質量300の質量m2に比例する量で表されるので、大きな制振効果を得るためには、少なくとも補助質量300の質量m2を大きく設定する必要がある。以上、数式にて説明したが、以下に解析にて上記の妥当性の確認を行う。
図47は、メインフレーム機構100の質量m1が85(g)、弾性係数k1が168000(N/m)、粘性係数c1が11.74(N・s/m)とし、さらに補助質量300の質量m2が50(g)、補助質量300の共振系の基本モデルの共振周波数f0に対する共振振幅のピーク値を20(dB)、装置におけるディスク最高回転周波数fmaxを65(Hz)とした場合の、外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。これは、「メインフレーム機構100に印加される外力」に対する「メインフレーム機構100の加速度」の感度特性を示し、ゲインが低いほど外力に対し低感度となる。つまり、外力に対してメインフレーム機構100の加速度が小さな変動で済むため、装置にとって好ましい特性であることを示す。
図47には、比較のため補助質量300の共振系がある場合と無い場合との両方の特性を記している。偏重心ディスクの回転に起因する力F1が最大になるディスク最高回転周波数fmax(Hz)において両者を比較すると、補助質量300の共振系が無い場合のゲインは約22dBであり、補助質量300の共振系がある場合は約5dBとなる。つまり、外乱による力に対して約17dBの感度を改善していることがわかる。
図48は、図47と同様の設定条件で、補助質量300の質量m2の値を図47の設定値に対し5分の1倍と5倍に設定した場合の特性を示している。なお、比較のため、図47の特性も記載してある。図48から、補助質量300の質量m2が軽いほど、ディスク最高回転周波数fmax(Hz)における感度の低減効果が小さく、逆に補助質量300の質量m2が重いほど感度の低減効果が大きいことがわかる。これは数式で説明した結果と同じであり、本解析結果より考察の妥当性が検証された。
以上の結果から、大きな制振効果を得るためには、少なくとも質量の大きい補助質量300が必要である。これは前述のように、装置の小型化・軽量化の要求に対して相反する要求であり、大きな制振効果を優先すれば、装置が大型化するとともに重量も重くなる問題があった。
この発明は、上述のような課題を解消するためになされたものである。ここで式(14)を再考すれば、伝達力F1_2は補助質量300の質量m2と比例関係にあるので、伝達力F1_2を大きく設定することと補助質量300の質量m2を大きく設定することは等価である。したがって、伝達力F1_2が検出可能で、さらにこの検出信号を増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加すれば、補助質量300の質量m2を大きく設定した場合と等価となるため、補助質量300の質量m2を重くした場合と同様の制振効果を得ることができる。このことを、以下に、ブロック図を用いて再考する。
図49は、図46に対して、伝達力F1_2が検出可能で、かつ検出結果をα倍して補助質量300の質量m2に力の次元で加算した場合のブロック図である。図49において、検出された伝達力F1_2を増幅する機能ブロック501は増幅係数がαである。これを等価変換すると、図50となる。図50において、機能ブロック502は入力値である伝達力F1_2を(α+1)倍して出力する。
図50によると、伝達力F1_2が検出可能で、さらにこの検出信号を増幅係数αで増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加すれば、補助質量300の質量m2が(α+1)倍したことと等価であることを示している。理想的には増幅係数αは任意の値に設定できるため、増幅係数αを大きく設定すれば補助質量300の質量m2の値によらず、大きな制振効果を得ることが可能となる。
図51は、図47と同様の設定条件で、さらに伝達力F1_2が検出可能で、かつ、この検出信号を増幅係数αで増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加した条件において、増幅係数αの値を−0.8、零、4に設定した場合の解析結果を示している。なお、この増幅係数αの値は、(α+1)倍した値が0.2、1、5と、図47の補助質量300の質量m2の倍率と等しくなるように設定した。すなわち、増幅係数αが−0.8の場合は補助質量300の質量m2が0.2倍、増幅係数αが零の場合は補助質量300の質量m2が1倍、増幅係数αが4の場合は補助質量300の質量m2が5倍の場合に対応させて設定している。図47と図51を対比すると、図47における補助質量300の質量m2を5分の1に設定した特性は、図51における増幅係数αを−0.8に設定した特性と全く等しい特性となっている。また図47における補助質量300の質量m2の変更が無い特性は、当然であるが図51における増幅係数αが零に設定した特性と全く等しくなっている。また、図47における補助質量300の質量m2を5倍に設定した特性は、図51における増幅係数αを4に設定した特性と全く等しい特性となっている。このことから、伝達力F1_2が検出可能で、さらにこの検出信号を増幅係数αで増幅して力の次元で補助質量300の質量m2に印加すれば、補助質量300の質量m2が(α+1)倍したことと等価であることが解析的に実証された。
上記より、補助質量300の共振系がコンパクトなサイズならびに小さい質量においても高性能な制振性能を得るには、以下の2つの機能手段を実現すれば良い。まず第1に補助質量300に対して能動的に駆動を可能とする手段、第2にメインフレーム機構100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2を検出する手段である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の能動的に動作する補助質量300による制振装置900のモデル図である。図1において、伝達力検出手段400は、メインフレーム機構100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2を検出する手段であり、増幅器500は伝達力検出手段400の検出出力を後述する増幅係数αにて増幅する機能を持つ。補助質量駆動手段360は、メインフレーム機構100に設置され、その可動部に補助質量300を接続した構成になっており、増幅器500の出力信号に基づいた信号にてドライバ510によって駆動される。なお、伝達力検出手段400、増幅器500、ドライバ510、補助質量駆動手段360の総合ゲインは増幅係数αになるように増幅器500の増幅率が決定される。
なお、図1は機能別に表現したため、補助質量300と補助質量駆動手段360と緩衝部材350は別要素として表現されているが、実際は補助質量駆動手段360の固定部の一部はメインフレーム機構100の一部であり、さらに緩衝部材350は同じく補助質量駆動手段360における可動部と固定部とを連結する要素であり、さらに補助質量駆動手段360の可動部の質量は補助質量300の一部である。
図2は、補助質量駆動手段360の機能を実現する具体例を示す斜視図である。図3は、図2で示した補助質量駆動手段360の例の構造を示す斜視分解図である。図6は補助質量駆動手段360をメインフレーム機構100に取り付けた具体例を示す斜視図である。なお、図6に示すメインフレーム機構100を、電源、回路基板等の周知の部品とともに筐体1に収めることでディスク装置とすることができる。
図2、図3において、補助質量駆動手段360のベース部材361は、図示しないメインフレーム機構100に固定されている。駆動用コイル362は、補助質量駆動手段360のベース部材361に固定された2つの駆動用コイル保持部材363aならびに363bに保持されて、補助質量駆動手段360のベース部材361に対して位置決め固定される。
さらに駆動用コイル362は、駆動用コイル保持部材363aに固定された駆動コイルの配線ターミナル364に配線され、さらにフレキシブルケーブル用コネクタ365を介してフレキシブルケーブル366に電気的接続されている。フレキシブルケーブル366には、ドライバ510からの駆動信号が送られる。既に説明したベース部材361、駆動用コイル362、駆動用コイル保持部材363a、363b、配線ターミナル364、フレキシブルケーブル用コネクタ365、フレキシブルケーブル366は、それぞれが接続され一体になっており、可動部分はない。
永久磁石367は着磁方向がそれぞれ逆になった2つの領域を有した一体に形成されたもので、図3中では理解を容易にするために367a、367bと区別して表示している。この永久磁石367はヨーク368bに対向するようにヨーク368a上に固定され、これらが全体として磁気回路として機能する。以下、永久磁石367、ヨーク368a、368bを一体とした要素を、単に可動磁気回路390と呼ぶ。
図2では図1で示した緩衝部材350が板バネで作製されている。可動磁気回路390はその板バネ350の一端が接続され、さらに板バネ350の他端は補助質量駆動手段360のベース部材361に接続されている。本例では、緩衝部材350である板バネの固定には、結合ネジ369を用いている。可動磁気回路390は、平行に配置した2枚の板バネからなる緩衝部材350によって補助質量駆動手段360のベース部材361に揺動が可能なように支持される構成となっている。従って、可動磁気回路は、図2の白矢印で表示したように、緩衝部材350である板バネのたわみ方向にのみ移動可能な構成となっている。
図4は、可動磁気回路390の断面図である。永久磁石367aはヨーク368a側がS極、ヨーク368b側がN極に着磁されており、永久磁石367bはヨーク368a側がN極、ヨーク368b側がS極に着磁されている。可動磁気回路390のヨーク368a、368bに対し、永久磁石367はヨーク368a上に固定され、ヨーク368bに対して磁気ギャップを有して対向する構造となっている。さらに、この磁気ギャップに駆動用コイル362が配置される構成となっている。図5は、図4で示した可動磁気回路390の磁束の流れを示した説明図である。図5中矢印が磁束の流れを示している。
磁気ギャップにおいて、永久磁石367a側の領域(領域Aという。)では磁束がヨーク368a側からヨーク368b側に流れているのに対して、永久磁石367b側の領域(領域Bという。)では磁束がヨーク368b側からヨーク368a側に流れており、磁束の方向が領域Aと領域Bとでは逆になっている。
図4に示すように、駆動用コイル362は、領域Aと領域Bとの磁気ギャップに配置される。駆動用コイル362に電流が流れると、フレミングの左手の法則によって力が発生し、その方向は図4の矢印の方向となる。図4では、永久磁石367a側の駆動用コイル362は図4の手前側から奥側に電流が流れ、永久磁石367b側の駆動用コイル362は図4の奥側から手前側に電流が流れているため、駆動用コイル362は図4中右側に力を受ける。駆動用コイル362は補助質量駆動手段360に位置決め固定されているため、可動磁気回路390が図4中左側に移動する。
次に補助質量駆動手段360のメインフレーム機構100への具体的な取り付け方を説明する。図6において、図6(a)はメインフレーム機構100を下面側から見た斜視図で、図6(b)はメインフレーム機構100を上面側からみた斜視図である。
メインフレーム120は、緩衝支持部材200を介して四隅に配置された支柱128により図示しない筐体1に位置決め固定されている。メインフレーム120にはディスク129を回転させるためのターンテーブル122を有するスピンドルモータ121が取り付けられている。
スピンドルモータ121は、メインフレーム120に設けられた図示しない穴部にはめ込むように取り付けられる。スピンドルモータ121のメインフレーム120への固定は、スピンドルモータ121に設けられたフランジ部をメインフレーム120にねじ止めして行なう。このため、スピンドルモータ121をメインフレーム120に固定した状態では、メインフレーム120の上面側にはスピンドルモータ121の回転側のターンテーブル122が配置され、メインフレーム120の下面側にはスピンドルモータ121の固定側であるケースが配置される。
また、メインフレーム120にはディスク129に情報を書き込みまたはディスク129の情報を読み取る情報ピックアップ600がシャフト123とリードスクリュー124に移動可能に取り付けられている。リードスクリュー124の一方の端部にはリードスクリュー124を回転させるためのステッピングモータ125が取り付けられている。
情報ピックアップ600に設けられた雌ねじ部126は、雄ねじであるリードスクリュー124と噛み合っている。リードスクリュー124が回転することで、情報ピックアップ600はディスク129のラジアル方向であるトラッキング制御を行う方向に移動する。また、情報ピックアップ600に設けられたU字形状をした凹部127は、その凹部でシャフト123を挟み込み、シャフト123に移動可能にガイドされている。
補助質量駆動手段360はスピンドルモータ121の固定側であるケースに取り付けられている。これは、ディスク129を保持しているスピンドルモータ121の振動を直接的に抑制するためである。また、図2に示す矢印方向は、ディスク129のラジアル方向で、情報ピックアップ600のトラッキング制御を行う方向となっている。これは、補助質量300として機能する可動磁気回路390の移動方向が、偏重心ディスクの発生力が悪影響を及ぼす情報ピックアップ600のトラッキング制御を行う方向に選択されるようにするためである。
以上の構成によって、補助質量300を電気信号によって能動的に駆動動作させる機能手段が実現できる。
上記の構成により、補助質量駆動手段360は一般的な磁気駆動型のアクチュエータの構成であるため、非常に安価かつコンパクトに実現可能である。また、補助質量駆動手段360は、上記のような磁気駆動型に限定されるものではなく、圧電素子による駆動方式やその他の方式でも良い。バネ部材も板バネに限定されるものではなく、コイルバネやその他の方式でも良い。
たとえば図7に、二つの薄い圧電素子を用い、一つが収縮すると他が拡張する圧電変換器であるバイモルフ素子(bimorph)を利用した補助質量駆動手段360の構成例を示す。図7において、バイモルフ370が補助質量300とベース部材361とを接続しており、補助質量駆動手段360と緩衝部材350との機能を兼ねている。このため、磁気駆動型に比べると、より簡便でコンパクトな構成となっている。
以下に、メインフレーム機構100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2を検出する手段を実現する具体的な実施例を示す。
実施の形態1では、メインフレーム機構100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2を検出する手段である伝達力検出手段400は、筐体1とメインフレーム機構100との相対位置信号を検出する相対位置検出器と、その検出した信号から伝達力F1_2を算出する部分から構成されている。
図8は、能動的に動作を行う補助質量300による制振装置901のモデル図である。図8において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。位置x1は筐体1とメインフレーム機構100との相対位置である。伝達力検出手段401は入力信号が位置x1である特徴を持つ。
実施の形態1の特徴である筐体1とメインフレーム機構100との相対位置である位置x1に基づいた伝達力検出手段401の説明を以下に行う。伝達力F1_2の定義式は、式(3)で示したとおりである。ここで、式(3)の右辺の第1項の係数である粘性係数c2の値を考察する。補助質量300の質量m2を図47で考察した値の十分の一である5(g)、他の設定条件は同じとした場合、弾性係数k2の値は式(10)より次の式(16)、粘性係数c2の値は式(12)より次の式(17)となる。
ここで、メインフレーム機構100の質量m
1が85(g)、弾性係数k
1が168000(N/m)、粘性係数c
1が11.74(N・s/m)とし、補助質量300の共振系の基本モデルの共振周波数f
0に対する共振振幅のピーク値を20(dB)、装置におけるディスク最高回転周波数f
maxは65(Hz)とした。
式(16)と式(17)を比較すれば、粘性係数c2は弾性係数k2に対し小さな値となっている。式(3)の伝達力F1_2の定義式において、粘性係数c2は位置x1の速度の係数であるため、高周波になれば速度が大きくなるため無視できなくなるが、低周波域においては無視することが可能となる。この場合、式(3)で示した、伝達力F1_2の定義式は次の式(18)となる。
図9は、力F1(N)に対するメインフレーム機構100から補助質量300に伝達される伝達力F1_2の検出特性を示した図である。図9には2つの事例がプロットされている。1つは伝達力検出手段401の検出特性が全帯域にて誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態における特性、もう一つは、実施の形態1の設定条件において粘性係数c2を無視し、筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置x1のみによる、式(18)に基づいた伝達力F1_2検出特性である。
伝達力F1_2検出特性は、巨視的には2次のローパス特性となっている。カットオフ周波数は、メインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数となっている。ディスク最高回転周波数fmax(Hz)において、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の影響が確認できる。理想状態における特性と、式(18)に基づいた検出特性を比較すると、100Hz以上の高域において、理想状態の特性は式(18)に基づいた検出特性に対し、若干位相進み特性となっている。
これは、理想状態では伝達力F1_2は式(3)に従うため、低域は筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置x1が支配的に、高域は筐体1とメインフレーム機構100との相対速度d(x1)/dtが支配的になる。従って、高域において、伝達力F1_2の検出特性は、進み特性になる。理想状態の検出特性と、実施の形態1の式(18)に基づく検出特性は、制御したい帯域であるディスク最高回転周波数fmax(Hz)以下の帯域においてほぼ同じ特性となっていることが確認できる。
図10は、図9の本実施例の式(18)に基づく検出特性とし、さらに増幅係数αの値を9に設定した場合の、力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。
従来の補助質量300のみの特性である図47(補助質量共振系有りの特性)に対し、補助質量300の値が5(g)と10分の1と小さな値にもかかわらず、上記図47と同等の特性となっている。特に偏重心による外乱加速度が最大となるディスク最高回転周波数fmax(Hz)のゲインは上記図47に対してほぼ等しい値となっており、小型・軽量の補助質量300においても、大きな制振効果を得ることが可能となる。
図11は、筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置x1を検出する相対位置検出器の機能の具体的な一例を示したものである。図11において、図11右下の座標図に示すように、x軸方向はディスクのタンジェンシャル方向、y軸方向はディスクのラジアル方向、z軸方向はディスクのfocus方向(ディスク面に対し鉛直方向)である。この相対位置検出器は、筐体1とメインフレーム機構100とのディスクのラジアル方向、すなわち情報ピックアップ600のトラッキング制御方向(図10のy軸方向)の相対位置を検出する機能を持つとともにz軸方向の移動については不感な特性を持つ。
まず、相対位置検出器の構成について説明する。永久磁石372は、磁石ホルダ371に位置決め固定され、さらに磁石ホルダ371はメインフレーム機構100に位置決め固定されている。すなわち、永久磁石372はメインフレーム機構100に対し位置決め固定されている。ホール素子373a、373bは、回路基板等で作製されたホール素子保持部材374に位置決めされて保持されており、さらにホール素子保持部材374は筐体1に位置決め固定されている。すなわち、ホール素子373a、373bは筐体1に対し位置決め固定されている。
本例では、メインフレーム機構100に位置決め固定された永久磁石372の位置移動量を、筐体1に位置決め固定されたホール素子373a、373bによって磁束密度の変化として検出する構成となっている。永久磁石372は、例えば図11のように、x軸方向に着磁され、かつy軸方向の中心位置で、その着磁方向が逆転する特性とする。永久磁石372は一体で形成されているが、図10では理解を容易にするために、この着磁方向の違いを372a、372bとして区別して記載している。ホール素子373a、373bは、永久磁石372の着磁方向が切り替わるy軸位置に設置される。
次に相対位置検出器の動作について説明する。まず、永久磁石とホール素子の位置関係とホール素子の出力との関係を説明するため、永久磁石372とホール素子373aを例にとって説明する。永久磁石372とホール素子373aは一定の隙間をもって対向するように配置されている。上述のようにホール素子373aの中心は、永久磁石372の着磁方向の切り替わるy軸位置に位置している。
この永久磁石372とホール素子373の構成により、永久磁石372がy軸方向に移動するとホール素子373aの位置における磁束の方向と磁束の強さがほぼ線形に変化してホール素子373aの出力が変化する。一方、永久磁石372がz軸方向に変移しても磁束の変化が無い構成となっているため、永久磁石372のz軸方向の移動については不感となり、ホール素子373aの出力は変化しない。従ってホール素子373aの磁束検出出力は永久磁石372のy軸方向の変位として扱うことができるとともに、z軸方向すなわちフォーカス方向の変位については不感な特性となる。
偏重心ディスクの回転によって、発生する外乱は遠心力である。このため、偏重心ディスク回転に起因する外乱によるメインフレーム機構100の位置変動は図11の上部の矢印で示すように円運動となる。従って永久磁石372はy軸方向だけでなくx軸方向にも移動する。ホール素子373aが単独であれば永久磁石372のx軸方向の移動により、ホール素子373aの位置における磁束密度が変化するため、そのy方向の検出感度特性が変化する。
例えば、ホール素子373aと永久磁石372との相対位置が近づけばy方向の検出感度は大きくなり、離れればy方向の検出感度は小さくなる。このx軸方向の変移によるy方向の検出感度の変動を抑えるため、図11のように一対のホール素子373aならびに373bを所定の間隔にて対向して並立させ、さらに両者の間に永久磁石372を挿入する構成とした。
この構成では、例えば永久磁石372がx軸方向のホール素子373a側に移動した場合、ホール素子373aと永久磁石372のx軸方向の相対位置が近づくためy軸方向の検出感度は上昇する。逆にホール素子373bは永久磁石372とのx軸方向の相対位置が離れるためy軸方向の検出感度は低下する。したがって、ホール素子373aと373bの検出出力の平均をとることで、永久磁石372のx軸方向の変移による検出感度の変動をほぼ無効とすることができる。ホール素子373aと373bの検出出力の平均は、例えば両検出信号を2分の1して加算する方法などで容易に実現できる。
次に相対位置検出器を動作させる回路構成について説明する。図12は相対位置検出器の回路構成を示したブロック図である。ホール素子373aの2つの端子は、一方が差動アンプ1001aの入力端子のマイナス側に接続され、他方は差動アンプ1001aの入力端子のプラス側に接続されている。差動アンプ1001aの出力端子は直流成分除去フィルタ1002aに接続されている。同様に、ホール素子373bの2つの端子は、一方が差動アンプ1001bの入力端子のマイナス側に接続され、他方は差動アンプ1001bの入力端子のプラス側に接続されている。差動アンプ1001bの出力端子は直流成分除去フィルタ1002bに接続されている。
直流成分除去フィルタ373a、373bは、直流成分のオフセットが制御の弊害となるため除去するために使用している。直流成分除去フィルタ1002aと1002bの他の端子は加算アンプ1003aの入力端子に接続されている。加算アンプ1003aの出力端子はアッテネータ1003に接続され、入力値を0.5倍した後永久磁石372のy方向の変位信号として出力される。
図13は相対位置検出器の出力特性を示した特性図である。横軸がホール素子のy軸方向の位置で、縦軸がホール素子の出力値を示している。一点鎖線(1)はホール素子と永久磁石との距離が1mm、小さな破線(2)はホール素子と永久磁石との距離が1.5mm、大きな破線(3)はホール素子と永久磁石との距離が2mmである。一点鎖線(1)と大きな破線(3)とを平均した値を実線で示している。
図13の特性図より、一点鎖線(1)と大きな破線(3)とを平均した値を示した実線は、ホール素子と永久磁石との距離が1.5mmの出力値を示した小さな破線(2)とほぼ同等の値を示している。このことより、永久磁石のx軸方向の変移による検出感度の変動をほぼ無効とすることができることがわかる。
上記のような構成によって、筐体1とメインフレーム機構100との1軸方向(本例ではy軸)のみの相対位置変動の検出が可能となる。永久磁石372やホール素子373a、373bは安価な素子であるため、本検出系は安価で、かつ高性能な特性を実現できる。
なお、一対のホール素子373a、373bと永久磁石372を使用した相対位置検出器は、一軸方向の相対位置変位量を検出する検出器として広く利用することができる。つまり、実施の形態1では、一対のホール素子373a、373bと永久磁石372を使用した相対位置検出器を筐体1とメインフレーム機構100との相対位置の検出に使用しているが、メインフレーム機構100と補助質量300との相対位置を検出するために使用することも可能である。
以上、実施の形態1によれば、メインフレーム機構100に緩衝部材350を介して補助質量300を取り付け、伝達力検出手段400により検出されたメインフレーム機構100から補助質量300への伝達力F1_2を基に増幅器500、ドライバ510を介して補助質量駆動手段360により補助質量300に伝達力F1_2を増幅した力を与えることで、小さな補助質量300で大きな補助質量300と同等の制振効果を得ることができる。
また、伝達力検出手段401は、筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置信号である位置x1を検出している。その位置x1に緩衝部材350の弾性係数k1を積算して伝達力F1_2を求め、増幅器500により増幅係数αで増幅し、ドライバ510により補助質量駆動手段360を駆動して補助質量300に力αF1_2を与えている。このように、伝達力F1_2をメインフレーム機構100の相対位置である位置x1のみから求めていため、伝達力F1_2の算出が容易にできる。
また、筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置x1を検出する相対位置検出器は、一対のホール素子373a、373bを対向して並立させ、その間に永久磁石372配置した構成としている。これにより、フォーカス方向の変位については不感な特性を持ち、ディスク129のタンジェンシャル方向の信号はキャンセルすることでディスク129のラジアル方向の変位信号のみ検出することができる。
以上より、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段400、401が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御するため、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置900、901を実現することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では伝達力検出手段401は伝達力F1_2を筐体1とメインフレーム機構100との相対的な位置x1から求めている。実施の形態2では、伝達力検出手段402は、補助質量300とメインフレーム機構100との相対的な位置(x2―x1)と補助質量駆動手段360の駆動信号との2つの信号から伝達力F1_2を推定する構成とする。
図14は、実施の形態2の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置902のモデル図である。図14において、図1と図8で説明した制振装置900、901の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
位置(x2―x1)はメインフレーム機構100と補助質量300との相対位置である。伝達力検出手段402は、実施の形態1と異なり、入力信号がメインフレーム機構100と補助質量300との相対的な位置信号と補助質量駆動手段360の駆動信号の2つの信号である特徴を持つ。
実施の形態2の特徴である伝達力検出手段402の説明を以下に行う。図15は、図14を質点系モデルとして変換した図である。図15において、図42で説明した制振装置910の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
力F2は補助質量駆動手段360が発生する力(N)である。力F2の定義は、補助質量駆動手段360が発生する補正量であるから、図49における検出された伝達力F1_2を増幅する機能ブロック501の出力に相当し、その定義は次の式(19)となる。
図15をブロック図表現すると、図16となる。図16において、図43で説明した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。図16では図43と比較して、補助質量300を能動的に補正動作させるために印加される力F2が、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310の入力として加減算器700eに加算されている。
図17は、図16の補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310の部分を抜き出し、さらにメインフレーム機構100を仮想的に接地した場合のブロック図である。図17において、伝達力検出手段402は外乱推定器である。
図17において、外乱推定器である伝達力検出手段402は、補助質量駆動手段360が発生する補正量である力F2と補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310の出力であるメインフレーム機構100と補助質量300との相対的な位置(x2―x1)を入力して伝達力F1_2の推定値を出力している。
補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310から見た場合、
ドライバ510が出力する制御入力信号を、補助質量駆動手段360が発生する補正量である力F2とし、さらにメインフレーム機構100から補助質量300に緩衝部材350を介して伝達する力である伝達力F1_2を外乱として定義することができる。
図17に示すとおり、補助質量300の共振系の伝達特性モデルである機能ブロック310は、一般的な1自由度の共振系である。これを制御対象とすれば、制御対象に供給する制御入力信号と制御対象の状態量である位置信号とを演算することによって制御対象に印加される外乱である伝達力F1_2を推定することができる。この機構を一般的に外乱推定器という。
実施の形態2によれば、制御入力は補助質量駆動手段360が発生する補正量としての力F2、制御対象の位置は補助質量300とメインフレーム機構100との相対位置(x2−x1)、外乱は伝達力F1_2となる。外乱推定器である伝達力検出手段402の伝達力F1_2の推定出力を、伝達力F1_2の検出値として採用することで、伝達力検出手段402を実現することができる。
外乱推定器は既知の概念であるため、ここでは説明を省略する。外乱推定器は、同一次元型と最小次元型の2種が存在し、どちらを選択しても良いが、ここでは演算負荷が軽い最小次元型とする。
図18は、伝達力検出手段402の構成を最小次元型の外乱推定器で実現した場合の外乱入力である力F1(N)に対する伝達力F1_2の検出特性を示している。なお、最小次元型の外乱推定器の極配置は、帯域1kHzの2次のバターワース極に設定した。図18には2つの事例がプロットされている。1つは伝達力検出手段402の検出特性が全帯域にて誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態における特性、もう一つは、実施の形態2に基づいた伝達力F1_2の検出特性である。
理想状態における特性と、実施の形態2の検出特性を比較すると、約100Hz以上の高域において、理想状態の特性は実施の形態2の検出特性に対し、若干位相進み特性となっているが、制御したい帯域であるディスク最高回転周波数fmax(Hz)以下の帯域において略同じ特性となっていることが確認できる。
図19は、伝達力検出手段402の検出特性を図18の実施の形態2に基づく特性とし、さらに増幅係数αの値を9に設定した場合の、外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性の解析結果を示している。
補助質量300のみの特性である図47(補助質量共振系有りの特性)に対し、補助質量300の値が5(g)と10分の1と小さな値にもかかわらず、図47と同等の特性となっている。特に偏重心による外乱加速度が最大となるディスク最高回転周波数fmax(Hz)のゲインは図47に対してほぼ等しい値となっており、小型・軽量の補助質量300においても、大きな制振効果を得ることが可能となることがわかる。
図20は、実施の形態2における伝達力検出手段402の相対位置信号を検出する相対位置検出器として、補助質量300とメインフレーム機構100との相対位置(x2−x1)を検出する機能の具体的な一例を示す。この図は図2の構成に、補助質量300とメインフレーム機構100との相対位置(x2−x1)を検出する機能を増設した構成となっている。
図20において、伝達力検出手段402の相対位置x2−x1を検出する相対位置検出器は、板バネで構成された緩衝部材350の曲げ方向の歪が検出されるように緩衝部材350に貼られた歪ゲージ380にて構成される。補助質量300とメインフレーム機構100との相対位置(x2−x1)は、板バネで構成された緩衝部材350のたわみ量と比例するので、この板バネで構成された緩衝部材350のたわみによる歪量を板バネで構成された緩衝部材350に貼られた歪ゲージ380で検出することができる。このたわみによる歪量は歪ゲージ380の抵抗値の変化として検出することができる。この抵抗値変化は微小であるが、検出にはブリッジ回路などを用いて行えば良い。歪ゲージ380の端子は配線ターミナル381に接続されている。
上記のような構成により、補助質量300とメインフレーム機構100との相対位置(x2−x1)を検出する機構は検出精度が精確でありながら小型でかつ安価に実現することができる。
なお、図7で示したようなバイモルフを用いた圧電駆動型のアクチュエータの形態においても、同様に歪ゲージを貼ることで補助質量300とメインフレーム機構100との相対位置(x
2−x
1)を検出する機能を実現することができることはいうまでも無い。さらに図7の構成のアクチュエータにおいては、バイモルフの一部を角度センサとする領域を設けることで、駆動機能と位置検出機能を一体に共用する構成も可能である。(例えば、特許文献4参照)
特開2001−156352号公報(第3−4頁、第1図)
以上より、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段402が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御するため、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置902を実現することができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、伝達力検出手段403は、伝達力F1_2をメインフレーム機構100の加速度情報から推定する構成とする。図21は、実施の形態3の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置903のモデル図である。図21において、伝達力検出手段403の入力信号はメインフレーム機構100の加速度信号であることに特徴を持つ。図1と図8、図14で説明した制振装置900、901、902の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
メインフレーム機構100の加速度は式(20)で表される。
実施の形態3の特徴である伝達力検出手段403の説明を以下に行う。図22は、実施の形態3の伝達力検出手段403をブロック図に変換した図である。図22において、入力信号であるメインフレーム機構100の加速度を積分器701で2度積分し、位置x1が出力される。その位置x1に緩衝部材350の弾性係数k2を表す機能ブロック350aによりk2を積算して伝達力F1_2を出力する。
つまり、入力であるメインフレーム機構100の加速度信号は積分すれば速度に、さらに積分すれば位置に変換される。従って積分器701を2回通過した信号は、メインフレーム機構100の位置x1に相当する信号となる。
メインフレーム機構100の筐体1を基準とした位置x1が検出できれば、実施の形態1で説明したシステムが適用できる。つまり位置x1の信号を緩衝部材350の弾性係数k2を表す機能ブロック350aを通すことで式(18)に示すようなメインフレーム機構100の筐体1を基準とした位置x1をk2倍した量である伝達力F1_2を検出値として得ることが可能となる。
ただし、ここで得られる位置x1は、積分器701の出力であるから、その積分器701の初期値が不定であるために絶対位置が不定となる。従ってここでは図示しないが、実施の形態3における伝達力検出機能400には、直流成分を除去する機能が信号経路に挿入され、直流成分が除去された伝達力F1_2の推定値を用いる。また積分器を2つ持つのではなく、単に有限な直流成分をもった2次積分手段によって機能実現することができる。
図23は、伝達力検出手段403を図22で示した機能ブロックにて実現した場合の外乱入力である力F1(N)に対する伝達力F1_2の検出特性を示した図である。図23には2つの事例がプロットされている。1つは伝達力検出手段403の検出特性が全帯域にて誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態における特性、もう一つは、実施の形態3に基づいた伝達力F1_2検出特性である。この図の特性は、実施の形態1において図9で示した検出特性と同様の特性となっていることがわかる。
図24は、伝達力検出手段403の検出特性を図23の実施の形態3に基づく特性とし、さらに増幅係数αの値を9に設定した場合の、外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。これも実施の形態1で示した図10と同様の特性となっており、有効に作用することがわかる。このため、詳細な機能や効果も実施の形態1で示した図10の場合と同様である。
なお、実施の形態3におけるメインフレーム機構100の加速度を検出する手段は、一般的に実用化されている加速度センサにて実現できる。
以上より、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段403が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御するため、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置903を実現することができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、伝達力検出手段404を、メインフレーム機構100の一部である情報ピックアップ手段として機能する情報ピックアップ600とその位置追従制御手段として機能する位置追従制御器601に対して設けられた外乱を推定する手段によって構成とする。図25は、実施の形態4の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置904のモデル図である。図25において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
情報ピックアップ600は、光ディスク装置の場合、対物レンズを光ディスクの情報記録面上に形成された情報トラックに対し、合焦動作し、かつトラッキング動作を行う機能を持つ。情報ピックアップ600の位置追従制御器601は、情報ピックアップ600を回転する光ディスクの情報トラックに対し位置追従制御を行うものである。
上記のような装置において、情報ピックアップ600に作用する外乱による力を、専用のセンサを用いずに検出することは可能である。例えば、以下の特許文献5に記載された外乱推定器は、情報ピックアップ600の位置追従制御器601における偏差信号である信号erならびに情報ピックアップ600の位置追従制御器601における情報ピックアップ600の駆動信号である信号drの2つの信号から情報ピックアップ600に作用する外乱による力を推定しており、専用のセンサを用いていない。
特許第3949609号(第3−11頁、第1−5図)
この専用のセンサを用いない外乱推定器は、情報ピックアップ600の動特性を内部モデルに持つ外乱推定器で構成されている。専用のセンサを用いない外乱推定器の推定値は、情報ピックアップ600すなわちメインフレーム機構100に作用する外乱による力であるから、実施の形態3で示したメインフレーム機構100の加速度と比例した信号である。従って、以下は実施の形態3と同様に、前記専用のセンサを用いない外乱推定器の外乱による力の推定値を、2次積分すれば伝達力F1_2の推定値を得ることができる。2次積分を行う手段については、実施の形態3と同様である。
図26は、図25で示した伝達力検出手段404の外乱入力である力F1(N)に対する伝達力F1_2の検出特性を示した図である。図26には2つの事例がプロットされている。1つは伝達力検出手段404の検出特性が全帯域にて誤差無く精確に検出可能と仮定した理想的状態における特性、もう一つは、実施の形態4に基づいた伝達力F1_2検出特性である。図26の特性は、実施の形態3において図23で示した検出特性に対し、さらに専用のセンサを用いない外乱推定器の外乱検出特性を加味した特性となっている。専用のセンサを用いない外乱推定器における検出特性を決定するのは極配置である。この解析例では外乱推定器は最小次元型とし、極配置はカットオフ周波数600Hzの2次のバターワース極に指定している。
理想状態における特性と、実施の形態4の検出特性を比較すると、約100Hz以上の高域において、理想状態の特性は実施の形態4の検出特性に対し、若干位相進み特性となっているが、制御したい帯域であるディスク最高回転周波数fmax(Hz)以下の帯域において略同じ特性となっていることが確認できる。
図27は、伝達力検出手段404の検出特性を図26の実施の形態4に基づく特性とし、さらに増幅係数αの値を9に設定した場合の、外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性の解析結果を示した図である。
実施の形態3で示した図24と比較すると、80〜90Hzの感度が若干高くなっているが、それ以外の帯域における特性はほぼ同一となっており、有効に作用することがわかる。このため、実施の形態3の場合と同様に、詳細な機能や効果も実施の形態1で示した図10の場合と同様である。
以上より、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段404が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御するため、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置904を実現することができる。
実施の形態5.
上述した従来例の制振装置910や実施の形態で示した制振装置900、901、902、903、904は、ディスク最高回転周波数fmax(Hz)における外乱の影響をキャンセルするように機能する。しかしながら、図48、図51に示すように、ディスク最高回転周波数fmaxに対して低周波側ならびに高周波側に不要な感度ピークをもつ問題があった。実施の形態5では、これまでに説明した実施の形態に対し、ディスク最高回転周波数fmaxにおける外乱の影響をキャンセルする効果を維持しつつ、前記の不要な2つの感度ピークを効果的に抑制する方法について説明する。
実施の形態5では、実施の形態1で示した図1の制振装置900に、位相補償器800を適用した例を説明する。図28は、実施の形態5の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置905のモデル図である。図28において、図1で説明した制振装置900の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
実施の形態5では、補助質量300を能動的に動作させることを特徴としているので、任意の周波数帯における動特性を位相補償フィルタにて改善することができる。前記不要な2つの感度ピークのうち低周波側の感度ピークは、メインフレーム機構100の共振周波数で発生する。この低周波側の周波数を周波数f1(Hz)とする。これは、伝達力検出手段400の出力の周波数f1(Hz)を含む低い帯域の位相を遅らせることで改善することができる。さらに前記不要な2つの感度ピークのうち高周波側の感度ピークは、伝達力検出手段400の出力の、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の共振周波数f0(実施の形態5ではディスク最高回転周波数fmax)以上の帯域の位相を進ませることで改善することができる。
ここで、位相補償器800の具体的な一例を示す。伝達力検出手段405の出力の所定帯域の位相を変化させる手段は、位相補償器800としてアナログ電気回路やディジタルフィルタによって実現できる。
図29は、メインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の低周波側の共振周波数f1を含む低い帯域の位相を遅らせ、さらに、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の共振周波数であるディスク最高回転周波数fmax以上の帯域の位相を進ませる機能を有した、位相補償器800の周波数特性の一例を示した図である。
図29のような特性を実現する位相補償器800の具体的な例として、オペアンプを用いたアナログ回路の一例を図30に示す。図30において、抵抗R1とコンデンサC1とは直列に接続され、これらと並列に抵抗R2が接続されている。コンデンサC1の他端はオペアンプOP1のマイナス側の入力端子に接続されている。オペアンプOP1のプラス側の入力端子は接地されている。抵抗R3とコンデンサC2は直列に接続され、抵抗R4はこれらに並列に接続されている。抵抗R4の抵抗R3側の端部はオペアンプOP1のマイナス側の入力端子に接続されている。抵抗R4のコンデンサC2側の端部はオペアンプOP1の出力端子に接続されている。
抵抗R1、R2ならびにコンデンサC1が上述のディスク最高回転周波数fmax以上の帯域の位相を進ませるパラメータである。また、抵抗R3、R4ならびにコンデンサC2が上述のメインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の低周波側の共振周波数f1を含む低い帯域の位相を遅らせるパラメータとなっている。各抵抗、コンデンサの値を図示した値に設定つまり、抵抗R1は2.7kΩ、抵抗R2は15kΩ、抵抗R3は16kΩ、抵抗R4は91kΩ、コンデンサC1は0.056μF、コンデンサC2は0.82μFとすれば、図31に示すような周波数特性となり、図29の特性とほぼ等しい特性を得ることが出来る。
図32は、実施の形態1で説明した構成と同様の設定条件において、さらに図28で示した伝達力検出手段400と増幅器500との間に図29で示した周波数特性の位相補償器800を挿入し、増幅係数αの値を1、9、49に設定した場合の解析結果を示す。なお、この増幅係数αの値は、(α+1)倍した値が2、10、50となり、補助質量300が能動的に動作しない受動型の場合の相当質量が10(g)、50(g)、250(g)となるように設定した。これは図48で示した補助質量300の質量m2の倍率と等しくなる。すなわち、増幅係数αが1の場合は補助質量300の質量m2が0.2倍、増幅係数αが9の場合は補助質量300の質量m2が1倍、増幅係数αが49の場合は補助質量300の質量m2が5倍の場合に対応させて設定している。
図48と図32を対比すると、図48におけるディスク最高回転周波数fmaxの両サイドの不要な2つの感度ピークが、図32ではほぼ零に抑制されていることが確認できる。一方、ディスク最高回転周波数fmax付近の帯域における感度低下の効果は、劣化なく図48とほぼ同等の抑制特性を維持している。図32に示すように、この特性は増幅係数αの大小に関係なく実現することが可能である。
なお、実施の形態5では、補助質量300と緩衝部材350とからなる共振系の共振周波数f0(実施の形態5ではディスク最高回転周波数fmax)以上の帯域の位相を進ませることで高周波側の感度ピークを改善しているが、共振周波数f0を含まない帯域、つまり共振周波数f0より大きい帯域の位相を進ませることで高周波側の感度ピークを改善することも可能である。
以上の結果から、実施の形態5では、伝達力検出手段405の出力を位相補償器800にて位相補償する構成によって、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段400が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御し、かつ所定の帯域における不要な感度上昇を無くすことが可能となり、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置905を実現することができる。
実施の形態6.
実施の形態6では、実施の形態1の図8で説明した制振装置901に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例について説明する。図33は、実施の形態6の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置906のモデル図である。図33において、図8で説明した制振装置901の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
位相補償器800は、伝達力検出手段401と増幅器500の間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出手段401の検出信号である伝達力F1_2に対し、実施の形態5で示した特性になるように位相補償する機能を持つ。
図34は、実施の形態1の図10に示した外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度d2(x1)/dt2の周波数特性に対し、実施の形態6による位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図34には2つの事例がプロットされている。1つは図10で示した特性、もう一つは、図10で示した系に対し実施の形態6の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800が無いと、メインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)に発生するゲインピークと、80〜90Hzに発生するゲインピークが存在する。実施の形態6における位相補償器800を適用すれば、この2つのゲインピークを効果的に抑制できることが確認できる。
以上の結果から、実施の形態6では、伝達力検出手段401の出力を位相補償器800にて位相補償する構成によって、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段401が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御し、かつ所定の帯域における不要な感度上昇を無くすことが可能となり、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置906を実現することができる。
実施の形態7.
実施の形態7では、実施の形態2の図14で説明した制振装置902に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例について説明する。図35は、実施の形態7の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置907のモデル図である。図35において、図14で説明した制振装置902の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
位相補償器800は、伝達力検出手段402と増幅器500の間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出手段402の検出信号である伝達力F1_2に対し、実施の形態5で例示した特性になるように位相補償する機能を持つ。
図36は、実施の形態2における図19に示した外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性に対し、実施の形態7による位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図36には2つの事例がプロットされている。1つは図19で示した特性、もう一つは、図19で示した系に対し実施の形態7の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800が無いと、メインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)に発生するゲインピークと、80〜90Hzに発生するゲインピークが存在する。実施の形態7における位相補償器800を適用すれば、この2つのゲインピークを効果的に抑制できることが確認できる。
以上の結果から、実施の形態7では、伝達力検出手段402の出力を位相補償器800にて位相補償する構成によって、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段402が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御し、かつ所定の帯域における不要な感度上昇を無くすことが可能となり、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置907を実現することができる。
実施の形態8.
実施の形態8では、実施の形態3の図21で説明した制振装置903に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例について説明する。図37は、実施の形態8の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置908のモデル図である。図37において、図21で説明した制振装置903の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
位相補償器800は、伝達力検出手段403と増幅器500の間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出手段403の検出信号である伝達力F1_2に対し、実施の形態5で示した特性になるように位相補償する機能を持つ。
図38は、実施の形態3の図24に示した外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性に対し、実施の形態8による位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図38には2つの事例がプロットされている。1つは図24で示した特性、もう一つは、図24で示した系に対し実施の形態8の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800が無いと、メインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)に発生するゲインピークと、80〜90Hzに発生するゲインピークが存在する。実施の形態8における位相補償器800を適用すれば、この2つのゲインピークを効果的に抑制できることが確認できる。
以上の結果から、実施の形態8高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段403が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御し、かつ所定の帯域における不要な感度上昇を無くすことが可能となり、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置908を実現することができる。
実施の形態9.
実施の形態9では、実施の形態4の図25で説明した制振装置904に、実施の形態5で説明した位相補償器800を適用した事例について説明する。図34は、実施の形態9の能動的に動作を行う補助質量300による制振装置909のモデル図である。図39において、図25で説明した制振装置904の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
位相補償器800は、伝達力検出手段404と増幅器500の間に挿入される。位相補償器800は、伝達力検出手段404の検出信号である伝達力F1_2に対し、実施の形態5で示した特性になるように位相補償する機能を持つ。
図40は、実施の形態4の図27に示した外乱入力である力F1(N)に対するメインフレーム機構100の加速度の周波数特性に対し、実施の形態9による位相補償器800を適用した解析結果を示した図である。なお、位相補償器800の周波数特性は図29で示した特性とした。
図40には2つの事例がプロットされている。1つは図27で示した特性、もう一つは、図27で示した系に対し実施の形態9の位相補償器800を適用した特性である。位相補償器800が無いと、メインフレーム機構100と緩衝支持部材200とからなる共振系の共振周波数付近の帯域(20Hz付近)に発生するゲインピークと、80〜90Hzに発生するゲインピークが存在する。実施の形態9における位相補償器800を適用すれば、この2つのゲインピークを効果的に抑制できることが確認できる。
以上の結果から、実施の形態9では、伝達力検出手段404の出力を位相補償器800にて位相補償する構成によって、高い検出精度でありながら簡便で小型の伝達力検出手段404が検出する検出信号に基づいて小さく軽い補助質量300を補助質量駆動手段360が制御し、かつ所定の帯域における不要な感度上昇を無くすことが可能となり、安価で小型軽量かつ高性能な制振装置909を実現することができる。