JP4972847B2 - コラーゲン蓄積抑制剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コラーゲン蓄積抑制剤等に関する。
【0002】
【従来の技術】
肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥る疾患)、炎症後の過形成痕跡、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは強皮症、動脈硬化、高血圧、関節リウマチなどの疾患や異状においては、コラーゲン等の細胞外マトリックスの過度の集積により組織が線維化して硬化し、その結果、臓器・組織の機能低下や瘢痕形成等に至る。このような細胞外マトリックスの過度の集積は、コラーゲン等の生合成と分解のバランスが破綻し産生が亢進することにより導かれる。実際、線維化した組織においては、コラーゲン遺伝子、特にI型コラーゲン遺伝子の発現量が上昇していることが観察されている[J.Invest.Dermatol.,94,365,(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,6642,(1991)]。そして、種々の動物線維症モデルにおいて、インターフェロンγの投与により、組織におけるI型コラーゲン遺伝子の発現量が低下し、コラーゲン量が低下して組織の線維化が改善されることが報告されている[Exp.Lung Res.,21,791−808,(1995),Kidney Int.,47,62−69,(1995),J.Hepatol.,28,471−479,(1998),J.Hepatol.,26,894−903,(1997)]。また、線維化した組織においては、サイトカインの1種であるTGFβの量が上昇していることも観察されている[J.Invest.Dermatol.,94,365,(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,6642,(1991)]。TGFβは、I型コラーゲン遺伝子の発現量を増加させ、コラーゲンの産生亢進、ひいては、組織の線維化に関与していることが示されている[Lab.Invest.,63,171,(1990)、J.Invest.Dermatol.,94,365,(1990)]。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、組織におけるI型コラーゲン遺伝子の過剰発現を抑制し、よってコラーゲンの産生亢進を抑え、細胞外マトリックスの過度の集積に伴う種々の疾患や異状の予防、治療に有用な方法や薬剤の開発が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる状況の下、鋭意検討した結果、特定のアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質が、I型コラーゲン遺伝子の転写を抑制し、その結果としてコラーゲンの蓄積を抑制することを見出した。当該知見を基づき、コラーゲン過剰蓄積疾患(例えば線維症)等の予防又は治療のための医療分野において有用となる、コラーゲン蓄積抑制剤、コラーゲン蓄積抑制方法、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法等を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤(以下、本発明蓄積抑制剤(I)と記すこともある。)
<アミノ酸配列(以下、当該アミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列をアミノ酸配列(I)と記すこともある。)>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
2.アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質をコードする核酸を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤(以下、本発明蓄積抑制剤(II)と記すこともある。);
3.コラーゲン蓄積抑制のための、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質の使用;
4.コラーゲン蓄積抑制のための、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質をコードする核酸の使用;
5.I型コラーゲン遺伝子の転写抑制のための、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質の使用;
6.I型コラーゲン遺伝子の転写抑制のための、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質をコードする核酸の使用;
7.哺乳動物細胞に、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質をコードする外来遺伝子を、当該外来遺伝子が前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を有することを特徴とする哺乳動物におけるコラーゲン蓄積抑制方法(以下、本発明蓄積抑制方法(I)と記すこともある。);
8.哺乳動物細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、前記外来遺伝子を提供することを特徴とする前項7記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
9.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が、DNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であることを特徴とする前項8記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
10.DNA結合蛋白質がAP−1又はSmadであることを特徴とする前項9記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
11.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子がTGF−βであることを特徴とする前項8記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
12.コラーゲン過剰蓄積に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法;
13.線維症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法;
14.哺乳動物細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法(以下、本発明蓄積抑制方法(II)と記すこともある。);
15.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が、DNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であることを特徴とする前項14記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
16.I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法(以下、本発明蓄積抑制方法(III)と記すこともある。);
17.I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法;
18.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が、DNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であることを特徴とする前項17記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
19.I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法であって、
(1)アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質を発現する細胞に、被験物質を接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、上記のDNA結合蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、
(3)第二工程により測定された移行量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する第三工程、及び
(4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程
を有することを特徴とする探索方法(以下、本発明探索方法(I)と記すこともある。);
20.前記細胞が、前記DNA結合蛋白質の細胞核内への移行量と相関関係を有する指標値を提供可能とする外来性マーカー蛋白質を発現する細胞であることを特徴とする前項19記載の探索方法;
21.I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法であって、
(1)I型コラーゲン遺伝子を有し、かつ、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質をコードする外来遺伝子を当該外来遺伝子が細胞で発現する位置に置かれるように提供されてなる細胞に、異なる2種以上の被験物質を独立して接触させる第一工程
(2)前記第一工程後に、コラーゲン蓄積量を独立してモニターする第二工程、
(3)第二工程により独立してモニターされたコラーゲン蓄積量を互いに比較することにより得られる差異に基づき前記物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する第三工程、
(4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程、
を有することを特徴とする探索方法(以下、本発明探索方法(II)と記すこともある。);
22.第一工程が、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下でなされることを特徴とする前項21記載の探索方法;
23.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が、DNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であることを特徴とする前項22記載の探索方法;
24.I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法であって、
(1)(a)転写開始に必要な塩基配列を含む、I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子と、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質とを含有する細胞と、(b)転写開始に必要な塩基配列を含み、かつアミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質との結合能力を有さない塩基配列を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子と、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質とを含有する細胞とにそれぞれ、被験物質を独立して接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量を独立してモニターする第二工程、及び
(3)第二工程により独立してモニターされた発現量を互いに比較することにより得られる差異に基づき前記物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する第三工程、及び
(4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程
を有することを特徴とする探索方法(以下、本発明探索方法(III)と記すこともある。);
25.第一工程が、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下においてなされることを特徴とする前項24記載の探索方法;
26.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子がDNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であることを特徴とする前項25記載の探索方法;
27.請求項19〜26記載の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤(以下、本発明蓄積抑制剤(III)と記すこともある。)
28.一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩。
Figure 0004972847
(式中、R1、R2およびR3は、同一または相異なり、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。);
29.一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤;
Figure 0004972847
(式中、R1、R2およびR3は、同一または相異なり、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。);
30.サンショウ(Zanthoxylum piperitum De Candolle)およびその同属植物、ならびにボダイジュ(Tilia cordata Mill)およびその同属植物からなる群から選択される植物の少なくとも1つの部位またはその処理物を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤;
31.I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、アミノ酸配列(I)を有するDNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法(以下、本発明蓄積抑制方法(IV)と記すこともある。);
32.コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子がDNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であることを特徴とする前項31記載のコラーゲン蓄積抑制方法;
等を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明蓄積抑制剤(I)は、コラーゲン蓄積抑制(特にI型コラーゲン遺伝子の転写抑制)のために使用される。
本発明蓄積抑制剤(I)において用いられるDNA結合蛋白質とは、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する蛋白質である(以下、本蛋白質と記すこともある。)。
<アミノ酸配列>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列
【0006】
ここで、前記(b)〜(e)のアミノ酸配列と、配列番号1で示されるアミノ酸配列との相違は、一部のアミノ酸の欠失、置換、修飾、付加等である。これらは、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、器官、組織間の差異等により天然に生じる変異や、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって遺伝子に人為的に導入される変異等により生じ得る。
かかるアミノ酸の欠失、付加もしくは置換(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う手法としては、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1個、具体的には1若しくは数個(ここで「数個」とは、2〜約10個程度である。)、又はそれ以上である。かかる改変を受けるアミノ酸の数は、本蛋白質にI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を見出すことのできる範囲であれば良い。
また、アミノ酸の置換としては、例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似したアミノ酸への置換をあげることができる。このような置換としては、具体的には例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシン等のグループ内での置換が挙げられる。
【0007】
本発明において「配列同一性」とは、2つの塩基配列または2つのアミノ酸配列間の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいては、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム[Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)]を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、例えば、市販の配列解析ソフトウェア、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや、公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定することができる。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
本発明における配列同一性は、例えば、アミノ酸配列基準の場合には80%以上であることが好ましく、また塩基配列基準の場合には90%以上であることが好ましい。上記条件を満たす限りにおいて、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号第52番から第130番までのアミノ酸配列における配列同一性が実質的にほぼ100%であり、第1番から第51番までのアミノ配列における配列同一性が50%以上であるような配列同一性であってもよい。
【0008】
前記(e)にある「ストリンジェントな条件」としては、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーションにおいて、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15Mクエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSC(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSC(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
尚、本蛋白質のうち、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質は、ヒト由来のYB−1(GenBank Accession No.M24070)として知られている。
【0009】
このような蛋白質は、以下のように探索すればよい。
例えば、まず(1)I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、被験蛋白質を接触させる第一工程、及び(2)前記第一工程後に、コラーゲン蓄積量を測定する第二工程を有する方法によりコラーゲン蓄積量を分析する。この際に、被験蛋白質として異なる2種以上の蛋白質を各々独立して用いた区におけるコラーゲン蓄積量を比較しその差異を調べる。その結果、得られる差異に基づき前記被験蛋白質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能力を評価する。このようにして評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力に基づき被験蛋白質を選抜することにより、I型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質を探索することができる。上記第二工程におけるコラーゲン蓄積量を分析する代わりに、後述の本発明物質探索方法(III)のように、コラーゲン蓄積量の指標となるレポーター遺伝子の発現量をモニターすることで、被験蛋白質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能力を評価することにより、I型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質を探索してもよい。
上記の方法において、前記異なる2種以上の被験蛋白質のうち少なくとも一つの蛋白質を、I型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有さない蛋白質とすることで、他の被験蛋白質が有するI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を評価してもよい。また、前記異なる2種以上の蛋白質のうち少なくとも一つの蛋白質が有するI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を基準として、他の被験蛋白質が有するI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を評価してもよい。
【0010】
本蛋白質は、SDS-PAGEでの分子量として約4万以上約6万以下の分子量であることが好ましく、特に約5万程度の分子量(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質と同等)が適している。ただし、例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち連続する約50アミノ酸以上からなるアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列を有する蛋白質である場合には、SDS-PAGEでの分子量として約1万以上約4万以下の分子量であることが好ましく、特に約2万程度の分子量(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号第1番から第129番までのアミノ酸配列からなる蛋白質に相当)が適している。
【0011】
本蛋白質の調製方法(本蛋白質をコードする核酸の調製方法を含む)について以下に説明する。
まず、本蛋白質をコードする核酸(以下、本遺伝子と記すこともある。)、例えば、(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAであり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAであり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA
等を、通常の遺伝子工学的方法(例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載されている方法)に準じて取得する。次いで、得られた本遺伝子を用いることにより、通常の遺伝子工学的方法に準じて本蛋白質を製造・取得する。このようにして本蛋白質を調製することができる。
【0012】
具体的には、まず、ヒト等の組織、細胞やこれらに由来する培養細胞などからRNAを調製する。例えば、正常ヒト胎児皮膚繊維芽細胞等を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の強力な蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販の試薬としては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)、トリゾル試薬(Gibco BRL)等がある。
得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素を作用させることにより一本鎖cDNAを合成する。次いで、該一本鎖cDNAを鋳型とし、本蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又は配列番号26で示される塩基配列)に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)を行うことにより、本遺伝子を増幅し、取得することができる。
また、上記の一本鎖cDNAを鋳型としてDNAポリメラーゼを作用させることにより二本鎖のcDNAを合成する。得られた二本鎖cDNAを、例えばプラスミドpUC118やファージλgt10などのベクターに挿入することによりcDNAライブラリーを作製する。このようにして得られるcDNAライブラリーや市販のcDNAライブラリーから、例えば、本蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又は配列番号26で示される塩基配列)の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法や、本蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又は配列番号26で示される塩基配列)に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるPCRにより、本遺伝子を取得することもできる。
PCRに用いるプライマーとしては、例えば、約20bpから約50bp程度の長さでかつGまたはC塩基の割合が約40%から約60%程度の塩基配列を、上記のような本蛋白質をコードする塩基配列から選択し、該塩基配列に基いてオリゴヌクレオチドを設計し、合成するとよい。具体的には、例えば、ヒト由来の本遺伝子を取得するには、フォワードプライマーとして配列番号5で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることができ、リバースプライマーとして配列番号6で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることができる。
得られた本遺伝子の塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol., 94, 441, 1975、Sanger,F, & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 5463, 1977等に記載される)により確認することができる。
このようにして、コラーゲン蓄積抑制(特にI型コラーゲン遺伝子の転写抑制)のために使用される本発明蓄積抑制剤(II)の有効成分となる本蛋白質をコードする核酸を調製することができる。
【0013】
本遺伝子は、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。
ベクターとしては、具体的には、大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えばプラスミドpUC119(宝酒造(株)製)や、ファージミドpBluescriptII(ストラタジーン社製)等をあげることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合には、プラスミドpACT2(Clontech社製)などをあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合には、pRC/RSV、pRC/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシア社製)、EBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルスなどをあげることができる。昆虫類動物細胞(以下、昆虫細胞と記す。)を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。
【0014】
本遺伝子の上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のようなベクターに組み込むことにより、本遺伝子を宿主細胞で発現させることの可能な発現ベクターを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本遺伝子が宿主細胞に導入された際に、宿主細胞においてプロモーターの制御下に発現されるように、当該プロモーターと本遺伝子とを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ-pL、λ-pR)等をあげることができる。また、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期もしくは後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合には、ADH1プロモーターなどをあげることができる。
一般的には、宿主細胞で機能可能なプロモーターと本遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAを、宿主細胞で利用可能なベクターに組込んで、これを宿主細胞に導入する。宿主細胞において機能可能なプロモーターをあらかじめ保有するベクターを使用する場合には、ベクター保有のプロモーターと本遺伝子とが機能可能な形で結合するように、該プロモーターの下流に本遺伝子を挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRC/RSV,pRC/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、該クローニング部位に本遺伝子を挿入し動物細胞へ導入することにより、本遺伝子を発現させることができる。また、前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、該プラスミドまたはその誘導体のADH1プロモーターの下流に本遺伝子を挿入すれば、本遺伝子を例えばCG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で発現させることが可能な発現ベクターが構築できる。マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子など)を含むベクターを用いると、本遺伝子が導入された形質転換体を当該マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選択する際に便利である。
【0015】
本遺伝子が組み込まれたベクター(以下、本ベクターと記すこともある。)を宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることにより本ベクターを宿主細胞へ導入することができる。また、哺乳類動物細胞または昆虫細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法またはリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法により前記細胞に本ベクターを導入することができる。酵母菌を宿主細胞とする場合には、例えば、リチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)などを用いて導入することができる。本ベクターが導入された形質転換体を選抜するには、例えば、本ベクターと同時に下記のようなマーカー遺伝子を宿主細胞に導入し、導入されたマーカー遺伝子の性質に応じた方法で本ベクターが導入された宿主細胞を培養すればよい。例えば、当該マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子(薬剤耐性付与遺伝子)である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、本ベクターが導入された宿主細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤との組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせ等をあげることができる。また、当該マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、該栄養素を含まない最少培地を用いて、本ベクターが導入された細胞を培養すればよい。
【0016】
上述のようにして得られた本ベクターが導入された形質転換体(以下、本形質転換体と記すこともある。)を培養することにより本遺伝子にコードされる本蛋白質を産生させることができる。
例えば、本形質転換体が微生物である場合には、形質転換体は、通常、一般微生物における培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養される。培地のpHは約6〜約8程度が一般的である。培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(試験管振とう式培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等)などが可能である。培養温度は、微生物が生育する範囲で適宜変更できるが、例えば、約15℃〜約40℃の培養温度で培養するのが一般的である。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1〜約5日間である。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型の発現ベクターを用いた場合には誘導時間は1日以内が望ましく、通常数時間程度である。
また、本形質転換体が哺乳類や昆虫類等の動物細胞である場合には、形質転換体は、通常、一般の培養細胞における培養に使用される培地を用いて培養することができる。本形質転換体の選択に選抜薬剤を用いた場合には、当該選抜薬剤の存在下に培養するのが望ましい。哺乳類動物細胞の場合には、例えば、終濃度が10%となるようFBSが添加されたD−MEM培地(ニッスイ社製等)を用い、37℃、5%CO2存在下等の条件下で数日毎に新しい培養液に交換しながら培養すればよい。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば0.25(w/v)%程度のトリプシンPBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、得られた細胞の懸濁液を数倍に希釈して新しいぺトリディッシュに播種し継代を続ける。昆虫類動物細胞の場合も同様に、例えば10(v/v)%FBSおよび2(w/v)%Yeastlateを含むGrace's medium等の昆虫細胞用培地を用いて約25℃〜約35℃の培養温度で培養すればよい。
本形質転換体を培養することにより産生された本蛋白質は、蛋白質の通常の単離、精製の方法を適宜組み合わせて回収することができる。例えば、培養終了後、本形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、必要に応じて、集められた該細胞を適宜バッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕する。得られた破砕液から、遠心分離、メンブレンフィルターろ過等により不溶物を除去して無細胞抽出液を調製し、これをイオン交換,疎水,ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、本蛋白質を精製することができる。この際、本蛋白質が結合するDNAが有する塩基配列(例えば、後述の実施例に記載されるようなYB−1結合配列)を含む約20塩基から約200塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドをプローブとしたDNA結合アッセイなどにより、本蛋白質を含む画分を見分けることもできる。また、本蛋白質を、そのN末端側やC末端側に、例えば6〜10個のヒスチジンが並んだアミノ酸配列が融合された形で発現させると、金属キレート樹脂を用いたキレートクロマトグラフィーによって1段階で精製が可能となる。
このようにして、本発明蓄積抑制剤(I)の有効成分となる本蛋白質を調製することができる。
【0017】
本発明蓄積抑制剤(I)は、その有効量を経口的又は非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本発明蓄積抑制剤(I)は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。前記形態の本発明蓄積抑制剤(I)を非経口的に投与する方法としては、例えば、注射(皮下、静脈内等)、経皮投与、直腸投与等を挙げることができる。前記の適当な投与剤型は薬学的に許容される、例えば、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等の通常の担体に本蛋白質を配合することにより製造することができる。必要に応じて、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、保存剤、着色剤、香料、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤等の補助剤を添加してもよい。また注射剤型で用いる場合には、薬学的に許容される、例えば、水溶性溶剤、非水溶性溶剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定剤等の担体に本蛋白質を配合することにより製造することができる。必要に応じて、防腐剤、懸濁化剤、乳化剤等の補助剤を添加してもよい。また、非経口的に投与する場合には、本発明蓄積抑制剤(I)を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤・ローション剤の形態や軟膏剤、ゲル状経皮吸収剤等の通常の半固体剤の形態で使用することができる。さらに担体として徐放性ポリマー等を用いた徐放性製剤(例えば、本発明蓄積抑制剤(I)をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませた製剤。当該ペレットを治療すべき組織中に外科的に移植するような形態で使用される。)の形態で使用してもよい。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明蓄積抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
本発明蓄積抑制剤(I)の適用可能な疾患としては、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥る疾患)、炎症後の過形成痕跡、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは強皮症、動脈硬化、高血圧、関節リウマチ等のコラーゲン過剰蓄積疾患(例えば線維症)等をあげることができる。
【0018】
本発明蓄積抑制剤(II)の有効成分となる、本蛋白質をコードする核酸(即ち、本遺伝子)は、前述の如く調製すればよい。また、例えば、当該核酸を含有する組換えベクターの形態で使用されることもある。ベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連性ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、SV40ベクター、ポリオーマウイルスベクター、乳頭腫ウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター及びワクシニアウイルスベクター等のウイルスベクターをあげることができる。アデノウイルスベクターを使用する場合には、例えばQUANTUM社製のAdEasy Kitを用い、本遺伝子をTransfer Vectorのマルチクローニングサイトに組み込み、得られた組換えベクターを直線化した後に、pAdEasy vectorと共に大腸菌にトランスフォームし、相同組換え体DNAをヒト293A細胞に組み込むことにより、本遺伝子を含有する組換えウイルスを産生させ、これを回収し、使用することもできる。
また、ヒトサイトメガウイルスのプロモーター/エンハンサー領域を有するプラスミドDNA等のような非ウイルス系のベクターを用いることもできる。本遺伝子を線維化組織部位に直接注入する場合のように、非ウイルスベクターを用いて本遺伝子を局所的に送達するシステムにおいては、プラスミドDNAの使用は有益である。体外に取り出された細胞に発現ベクターを導入して体内に戻す方法、すなわち、ex vivo法を使えば、あらゆる既知の導入方法が利用可能である。例えば、a)直接注入、b)リポソームを介する形質導入、c)リン酸カルシウム法・エレクトロポレーション法・DEAE−デキストラン法による細胞トランスフェクション、d)ポリブレンを介した送達、e)プロトプラスト融合、f)マイクロインジェクション、g)ポリリシンを使った形質導入などによって、非ウイルスベクターを導入することができる。
【0019】
本発明蓄積抑制剤(II)は、その有効量を非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、非経口的に投与する方法としては、例えば、上述のような注射(皮下、静脈内等)等を挙げることができる。前記の適当な投与剤型は薬学的に許容される、例えば、水溶性溶剤、非水溶性溶剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定剤等の担体に本遺伝子(ベクター型もしくはウィルス型、又はプラスミド型の本遺伝子の形態を含む)を配合することにより製造することができる。必要に応じて、防腐剤、懸濁化剤、乳化剤等の補助剤を添加してもよい。また、非経口的に投与する場合には、本発明蓄積抑制剤(II)を溶液等の通常の液剤の形態で使用することができる。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明蓄積抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は、患者細胞において前述の本発明蓄積抑制剤(I)を投与した場合における本蛋白質の細胞内レベルと等しい、本蛋白質の細胞内レベルをもたらす有効成分量を投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
本発明蓄積抑制剤(II)の適用可能な疾患としては、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥る疾患)、炎症後の過形成痕跡、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは強皮症、動脈硬化、高血圧、関節リウマチ等のコラーゲン過剰蓄積疾患(例えば線維症)等をあげることができる。
【0020】
本発明は、哺乳動物細胞に、本蛋白質をコードする外来遺伝子を、当該外来遺伝子が前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を有することを特徴とする哺乳動物におけるコラーゲン蓄積抑制方法[本発明蓄積抑制方法(I)]も提供している。
哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物由来の細胞を挙げることができる。当該細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、前記哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。
従って、哺乳動物がヒトである場合には、一般にいう遺伝子治療が施されたヒトの細胞から各種実験に使用されるような株化細胞までを意味し、また哺乳動物が非ヒト動物である場合には、一般にいう遺伝子治療が施された非ヒト動物の細胞から各種実験に使用されるようなモデル動物の細胞や株化細胞までを意味する。後者の場合には、ラット、マウス等を好ましい動物種として挙げることができる。
本蛋白質をコードする外来遺伝子の調製方法は、前述の「本蛋白質の調製方法(本蛋白質をコードする遺伝子の調製方法を含む)」において説明されたものと同等な方法に準じて調製すればよい。
このように調製された外来遺伝子を用いて後述のように形質転換細胞を調製することにより、当該外来遺伝子が哺乳動物細胞で発現する位置に置かれるように提供された形質転換細胞を得ることができる。
本発明蓄積抑制方法(I)において「発現する位置に置かれた」とは、DNA分子が、その塩基配列からの転写及び翻訳を指向する(即ち、例えば、本蛋白質をコードするRNAおよび本蛋白質の産生を促進するような)塩基配列と隣接した位置に置かれていることを意味する。
本蛋白質の遺伝子の発現レベルは、本蛋白質の遺伝子が導入されていない細胞と比較してコラーゲン蓄積を抑制するために十分である量であればよい。この場合、本蛋白質をコードする外来遺伝子は、本蛋白質の全体又は一部をコードする外来遺伝子であってもよい。
上記のコラーゲン蓄積抑制方法において、本蛋白質をコードする外来遺伝子がゲノムに組み込まれた形質転換細胞を作製することによりコラーゲン蓄積を抑制してもよい。
【0021】
上記のコラーゲン蓄積抑制方法において、本蛋白質をコードする外来遺伝子を哺乳動物細胞に導入するために用いられる遺伝子構築物(以下、本遺伝子構築物と記載することもある。)及び遺伝子移入到達手段には、当該外来遺伝子が導入される哺乳動物細胞に対して親和性を有する、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター又はその他のウイルスベクターを用いることができる。具体的には例えば、ミラー(Miller),Human Gene Therapy 15〜14,1990;フリードマン(Friedman),Science 244:1275〜1281,1989;エグリティス(Eglitis)およびアンダーソン(Anderson),BioTechniques 6:608〜614,1988;トルストシェフ(Tolstoshev)およびアンダーソン(Anderson),current opinion in Biotechnology 1;55〜61,1990;シャープ(Sharp),The Lancet 337:1277〜1278,1991;コルネッタ(Cornetta)ら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311〜322,1987;アンダーソン(Anderson),Science 22-:401〜409,1984;モーン(Moen),Blood Cells 17:407〜416,1991;ミラー(Miller)ら、Biotechniques 7:980〜990,1989;Le Gai La Salleら、Science 259:988〜990,1993;およびジョンソン(Johnson),Chest 107:77S〜83S,1995等に記載される公知のベクターをあげることができる。ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N.Engl.J.Med 323:370,1990;アンダーソン(Anderson)ら、米国特許第5,399,346号等に記載されるレトロウイルスベクターは特に開発が進んでおり、臨床の場でもすでに使用されている。
また、そのままではコラーゲン過剰蓄積が起こると予想される細胞内に本蛋白質をコードする外来遺伝子(DNA)を導入するためには、非ウイルス的手法も用いることができる。例えば、フェルグナー(Felgner)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413,1987;オノ(Ono)ら、Neurosci.Lett.117:259,1990;ブライアム(Brigham)ら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;シュタウビンガー(Staubinger)ら、Meth.Enz.101:512,1983)、アシアロソヌコイド・ポリリジン抱合(ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.263:14621,1988;ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.264:16985,1989等に記載されるリポフェクション、ウォルフ(Wolff)ら、Science 247:1465,1990等に記載されるマイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法及びプロトプラスト融合法、リポソーム法等があげられる。
本遺伝子構築物において、当該外来遺伝子は、本蛋白質の遺伝子を構成的に発現させるようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター等が挙げられる。また、当該外来遺伝子は、本蛋白質の遺伝子の発現を環境刺激により調節するようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、外来遺伝子は、組織特異的もしくは細胞型特異的なプロモーター、又は化学的信号もしくは薬物等の外来性の信号もしくは薬物の導入により活性化されるプロモーターを用いて発現させてもよい。尚、このようなプロモーターをマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用することもできる。
【0022】
上記のコラーゲン蓄積抑制方法を遺伝子治療の手段として応用する場合には、上記の適用手段のいずれについても、本遺伝子構築物は、コラーゲン過剰蓄積が予想される部位に対して適用される(例えば、注入によって)ことがよい。また、コラーゲン過剰蓄積等の現象が予想される部位の近傍の組織又はコラーゲン過剰蓄積が起こると予想される細胞に供給される血管に対してそれを適用してもよい。また、本蛋白質をコードする遺伝子を導入しようとする動物にとって外因性又は内因性の培養可能な細胞に、本蛋白質の遺伝子をトランスフェクションし、次いで、トランスフェクションされた細胞を血清学的に標的組織に対して注入することもできる。
理想的には、かかる遺伝子治療の手法により、少なくとも正常細胞における本蛋白質の細胞内レベルと同等の、本蛋白質の細胞内レベルがもたらされるとよい。
【0023】
以下に、一例として、哺乳動物が形質転換非ヒト動物である場合の本発明蓄積抑制方法(I)についてより詳細に説明する。
形質転換非ヒト動物の作製における本遺伝子の導入法としては、例えば、マイクロインジェクション法、レトロウイルスを用いる方法、胚性未分化細胞(ES細胞)を用いる方法等を挙げることができる。このうち、マイクロインジェクション法が最も汎用されている。マイクロインジェクション法とは、マイクロマニピュレーターを用いて、顕微鏡下で受精卵の前核内部に外来遺伝子を含んだ溶液を注入する方法である。
まず、本遺伝子を受精卵に注入する。その際、遺伝子を高い確率で染色体へ組込むためには、本遺伝子の単離に用いたベクター領域を可能な限り除去すること、mRNAの不安定化に寄与するAUに富む領域を除くこと、直鎖状にすることが好ましい。また、本遺伝子に対してイントロンを予め挿入しておくことが好ましく、当該イントロンとしては、例えば、β−グロビンイントロン等を挙げることができる。
受精卵は、目的に応じた系統の非ヒト動物から採取する。例えば、マウスの場合には、近交系のC57BL/6マウスやC3Hマウス、あるいはC57BL/6マウスと他系統のマウスとの交雑系(例えば、(C57BL/6xDBA/2)F1等)、非近交系のICRマウスを用いることができる。受精卵は、通常、妊馬血清ゴナドトロピンとヒト絨毛性ゴナドトロピンとの両者の腹腔内投与により過剰排卵を誘発させた雌マウスと雄マウスとを交尾させた後、前記雌マウスから採取する。尚、採取した受精卵は培養用ドロップに入れ、CO2ガスインキュベーターで培養・維持することにより、本遺伝子の注入操作まで保管することができる。
本遺伝子の注入はマイクロマニピュレーターをセットした倒立顕微鏡下で行なう。用いられる受精卵としては、雄性前核が雌性前核より大きくなる頃から両前核が融合するまでの発達段階にあるものを用いるとよい。まず受精卵を固定し、当該受精卵の雄性前核内に本遺伝子を含有するDNA溶液を注入する。当該DNA溶液は必要に応じて複合体として調製する。複合体形成に用いられる物質としては、リポソーム、リン酸カルシウム、レトロウイルス等を挙げることができる。DNA溶液の注入は雄性前核が膨らむことにより確認できる。DNA注入量としては、例えば、約200〜約3,000コピーの本遺伝子を含む量を挙げることができる。
【0024】
このようにして、本遺伝子が注入された受精卵は胚盤胞になるまで前記と同様にして培養した後、仮親の子宮に移植する。好ましくは本遺伝子の注入操作後ただちに仮親の卵管に移植するとよい。仮親としては、マウスの場合には、精管切断手術を施した雄マウスと交尾させて偽妊娠状態にしたICR雌マウスを用いるとよい。具体的には、まず当該ICR雌マウス背側の腎臓付近の皮膚と筋層を切開して卵巣・卵管・子宮を引き出し、卵巣膜を破いて卵管口を探し出す。次いで本遺伝子の注入操作後に生き残った受精卵を該卵管口から移入し、卵巣・卵管・子宮を腹腔内に戻した後、筋層を縫合し、皮膚をクリップでとめる。約20日後に仔が生まれる。
得られた仔の体組織の一部、例えば尾の一部、を切り取り、当該部位から抽出されたDNAのサザンブロッティング等により本遺伝子の存在有無を確認する。このようにして、本遺伝子が非ヒト動物に導入されたことを確認できる。あるいは他の方法、例えばPCRなどの確認方法を利用してもよい。
【0025】
このようにして構築された形質転換非ヒト動物を、本蛋白質を発現する細胞として後述のような本発明探索方法に利用する場合において、当該形質転換非ヒト動物への被験物質の投与は、通常の方法を用いればよい。例えば、被験物質を飼料や飲水に混合する方法や、直接投与する方法(例えば静脈内投与や、筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与)が挙げられる。また、必要に応じて、被験物質を投与する前に予備飼育を行ってもよい。投与量および投与期間は、動物の種類、週齢、採用される投与方法等により適宜選択することができるが、例えば、げっし類動物等の非ヒト動物に対する腹腔内投与の場合には、約0.1mg/kg−体重/日〜約10mg/kg−体重/日、げっし類動物等の非ヒト動物に対する経口投与の場合には、約1mg/kg−体重/日〜約100mg/kg−体重/日の被験物質を2〜4週間程度投与すればよい。
【0026】
上記方法のうち、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が細胞の外に存在する条件下において、当該細胞に前記外来遺伝子を提供することもできる。このような条件としては、例えば、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が細胞外に、下記のようなコラーゲン過剰蓄積に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内、例えば、線維症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内、における当該因子の存在量と同等な量存在するような条件をあげることができる。
ここで、「コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子」とは、細胞が有するコラーゲン合成機構において、コラーゲン遺伝子の転写を活性化させるように作用する物質を意味し、例えば、DNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子を挙げることができる。
上記のDNA結合蛋白質としては、例えば、AP−1、Smad等を挙げることができる。このような蛋白質は、通常、細胞内に存在しており、細胞外からの刺激等が引き金になって活性型(リン酸化状態)に変化することでコラーゲン遺伝子の上流領域に存在する発現調節領域に結合する。この結合によりコラーゲン遺伝子の転写が活性化される。
具体的には、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子としてTGF−βを挙げることができる。
【0027】
本発明は、コラーゲン過剰蓄積に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞、例えば、線維症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、本蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法も提供する。
コラーゲン過剰蓄積に起因する疾患としては、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥る疾患)、炎症後の過形成痕跡、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは強皮症、動脈硬化、高血圧、関節リウマチ等のコラーゲン過剰蓄積疾患(例えば線維症)等をあげることができる。
ここで「本蛋白質を投与する」には、本蛋白質を前述のような本発明蓄積抑制剤(I)の形態にして直接的に投与してもよいし、また前述のような本発明蓄積抑制方法(I)の形態にて、目的とする細胞に本遺伝子を導入して発現させ本蛋白質を産生させることにより投与してもよい。尚、後者の場合には、本蛋白質の細胞内レベルが、例えば、前者の場合における本蛋白質の細胞内レベルと同等となるように投与すればよい。
【0028】
本発明は、哺乳動物細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、本蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法[本発明蓄積抑制方法(II)]も提供している。
ここで、「哺乳動物細胞」や「コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件」とは、前述の本発明蓄積抑制方法(I)において説明されたものと同様である。
本発明は、I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、本蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法[本発明蓄積抑制方法(III)]も提供している。
ここで、I型コラーゲン遺伝子を有する細胞とは、I型コラーゲン遺伝子を有し、コラーゲン遺伝子の転写、当該転写によって生じるmRNAの翻訳、当該翻訳によって生じるコラーゲン蛋白質の複合体形成、当該複合体形成によって生じる成熟型コラーゲンの分泌等の一連のコラーゲン合成機構が機能する細胞である。
当該細胞に本蛋白質を投与するには、本蛋白質を前述のような本発明蓄積抑制剤(I)の形態にして直接的に投与してもよいし、また前述のような本発明蓄積抑制方法(I)の形態にて、目的とする細胞に本遺伝子を導入して発現させ本蛋白質を産生させることにより投与してもよい。尚、後者の場合には、本蛋白質の細胞内レベルが、例えば、前者の場合における本蛋白質の細胞内レベルと同等となるように投与すればよい。。
上記方法において、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下に、本蛋白質を投与することもできる。尚、「コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件」とは、前述の本発明蓄積抑制方法(I)において説明された条件と同様である。
【0029】
本発明は、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質の探索方法であって、
(1)本蛋白質を発現する細胞に、被験物質を接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、本蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、
(3)第二工程により測定された移行量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する第三工程、及び
(4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程
を有することを特徴とする探索方法[本発明探索方法(I)]も提供している。
本蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値を測定するには、例えば、被験物質と接触した後の細胞から、通常の方法に準じて細胞核画分を分離し、分離された細胞核画分内に存在する本蛋白質の量又はその量と相関関係を有する指標値を測定すればよい。また、例えば、被験物質と接触した後の細胞を蛍光顕微鏡等にて観察することにより、細胞核内に存在する(蛍光標識された)本蛋白質の量又は本蛋白質の量と相関関係を有する(蛍光)指標値を測定してもよい。
【0030】
本蛋白質の細胞核内への移行量を測定する場合において用いられる細胞としては、例えば、ヒト由来の本蛋白質を発現する細胞を好ましいものとして挙げることができる。また本蛋白質の細胞核内への移行量と相関関係を有する指標値を測定する場合において用いられる細胞としては、本蛋白質の細胞核内への移行量と相関関係を有する指標値を提供可能とする外来性マーカー蛋白質を発現する細胞を挙げることができる。使用可能な外来性マーカー蛋白質としては、具体的には、本蛋白質とGreen Fluorescent Protein(以下、GFPと記す。)との融合蛋白質等が挙げられる。
例えば、本蛋白質のアミノ酸配列とGFPのアミノ酸配列とを有する蛋白質を発現する細胞を調製する。まず、本蛋白質のアミノ酸配列をコードしかつ終止コドンを含まないDNA、及び、開始コドンを除くGFPのアミノ酸配列を有するDNAを、それぞれの塩基配列に基づいて作製されたオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行うこと等により調製する。調製されたDNAを、本蛋白質のアミノ酸配列の下流にGFPのアミノ酸配列が読み枠が連続する形でコードされ、かつラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター等のプロモーターと発現可能な形で接続されるように、ベクターに挿入する。例えば、前記プロモーターを有しかつその下流に遺伝子挿入部位とGFPのアミノ酸配列をコードする塩基配列とを有する市販のベクターを利用してもよい。このようにして得られる本蛋白質のアミノ酸配列とGFPのアミノ酸配列とを有する蛋白質を発現させるためのベクターを、繊維芽細胞等の細胞に導入することにより、当該蛋白質を発現する細胞を取得する。
得られた細胞を培養して、これに被験物質を接触させた後、蛍光顕微鏡でFITCフィルターを用いて観察することにより、核内の蛍光の有無を検出する。被験物質と接触させた細胞における核内の蛍光量が、溶媒のみと接触させた細胞(対照区)の核内の蛍光量よりも多い場合には、当該被験物質が、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能(この場合には、転写抑制能である。)を有すると評価することができる。
【0031】
本発明は、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質の探索方法であって、
(1)I型コラーゲン遺伝子を有し、かつ、本蛋白質をコードする外来遺伝子を当該外来遺伝子が細胞で発現する位置に置かれるように提供されてなる細胞に、異なる2種以上の被験物質を独立して接触させる第一工程
(2)前記第一工程後に、コラーゲン蓄積量を独立してモニターする第二工程、
(3)第二工程により独立してモニターされたコラーゲン蓄積量を互いに比較することにより得られる差異に基づき前記物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する第三工程、
(4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程、
を有することを特徴とする探索方法[本発明探索方法(II)]も提供している。
「I型コラーゲン遺伝子を有し、かつ、本蛋白質をコードする外来遺伝子を当該外来遺伝子が細胞で発現する位置に置かれるように提供されてなる細胞」とは、、I型コラーゲン遺伝子を有し、コラーゲン遺伝子の転写、当該転写によって生じるmRNAの翻訳、当該翻訳によって生じるコラーゲン蛋白質の複合体形成、当該複合体形成によって生じる成熟型コラーゲンの分泌等の一連のコラーゲン合成機構が機能する細胞に、前述の本発明蓄積抑制方法(I)で用いられる形質転換細胞のように、本蛋白質をコードする外来遺伝子が発現されるような形質転換を施すことによって得られる細胞である。当該細胞では、細胞内で発現された本蛋白質によりコラーゲン遺伝子の転写が抑制されるために、上記のような一連のコラーゲン合成機構が正常に機能しない。そこで、被験物質の作用によって当該細胞が有する一連のコラーゲン合成機構が正常に機能するように回復する変化を、コラーゲン蓄積量をモニターすることによって調べれば、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索に利用できる。
上記方法のうち、第一工程が、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下でなされてもよい。尚、「コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件」とは、前述の本発明蓄積抑制方法(I)において説明された条件と同様である。
【0032】
本発明は、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質の探索方法であって、
(1)(a)転写開始に必要な塩基配列を含む、I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を含有する細胞と、(b)転写開始に必要な塩基配列を含み、かつ本蛋白質との結合能力を有さない塩基配列を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を含有する細胞との両細胞に、被験物質を独立して接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量を独立してモニターする第二工程、及び
(3)第二工程により独立してモニターされた発現量を互いに比較することにより得られる差異に基づき前記物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する第三工程、及び
(4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程
を有することを特徴とする探索方法[本発明探索方法(III)]も提供している。
【0033】
「(a)転写開始に必要な塩基配列を含み、I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子」は、例えば、上流から順に、I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域(即ち、本蛋白質との結合能を有する塩基配列)、転写開始に必要な塩基配列及びレポーター蛋白質をコードする塩基配列が位置するように、これらの塩基配列を有するDNAを機能可能な形で連結することにより調製することができる。
当該レポーター遺伝子に用いられる「I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域の塩基配列」としては、例えば、配列番号2で示される塩基配列、ヒトコラーゲンα2(I)鎖遺伝子(COL1A2)のプロモーター領域の−161から−125まで(転写開始点を+1とする。)の塩基配列(配列番号3で示される塩基配列)等をあげることができる。かかる塩基配列と本蛋白質とが結合すると、該塩基配列を有する上記レポーター遺伝子の転写が抑制される。
そして、「I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域」の下流に「転写開始に必要な塩基配列」が位置する塩基配列として、例えば、ヒトコラーゲンα2(I)鎖遺伝子(COL1A2)の5’上流領域(例えば、転写開始点を1として、−161番目の塩基〜+57番目の塩基を含む領域(GenBank Accession NoJ03464、Matrix Biol.,16:447,1998)の塩基配列を挙げることができる。当該塩基配列を有するDNAと、レポーター蛋白質をコードする塩基配列を有するDNAとを連結することによりI型コラーゲン遺伝子の発現調節領域、転写開始に必要な塩基配列及びレポーター蛋白質をコードする塩基配列を含むレポーター遺伝子(以下、本蛋白質による転写調節を受けるレポーター遺伝子と記すこともある。)のDNAを調製することができる。
【0034】
「(b)転写開始に必要な塩基配列を含み、かつ本蛋白質との結合能力を有さない塩基配列を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子」は、例えば、上流から順に、本蛋白質との結合能を示さない塩基配列、転写開始に必要な塩基配列及びレポーター蛋白質をコードする塩基配列が位置するように、これらの塩基配列を有するDNAを機能可能な形で連結することにより調製することができる。
当該レポーター遺伝子に用いられる「本蛋白質との結合能を示さない塩基配列」としては、例えば、前記の「I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域の塩基配列が有する本蛋白質との結合能が消失するように、当該塩基配列の一部が置換されるか又は欠失した塩基配列等を挙げることができる。具体的には、例えば、配列番号25で示される塩基配列、配列番号4で示される塩基配列等をあげることができる。尚、所定の塩基配列を有するDNAと本蛋白質との結合能は、前記配列を有する標識されたDNAと本蛋白質との複合体の形成の有無を検出するゲルシフトアッセイ等の通常の方法により調べることができる。「転写開始に必要な塩基配列」としては、例えば、TATAボックスをあげることができる。具体的には、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)の5’上流領域の塩基配列等があげられる。かかる塩基配列を有するDNAは、化学合成するか、PCRにより増幅しクローニングすること等により調製することができる。
そして前述と同様の方法により、本蛋白質との結合能を示さない塩基配列、転写開始に必要な塩基配列及びレポーター蛋白質をコードする塩基配列を含むレポーター遺伝子(以下、本蛋白質による転写調節を受けないレポーター遺伝子と記すこともある。)のDNAを調製することができる。
【0035】
「レポーター遺伝子」にコードされるレポーター蛋白質としては、当該蛋白質が有する酵素活性等に基づき当該蛋白質又はレポーター遺伝子の発現量の測定が可能となるような蛋白質が好ましい。例えば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ等をあげることができる。このようなレポーター蛋白質をコードするDNAは、例えば、これらのDNAを含む市販のプラスミドのDNAを制限酵素消化して目的とするDNAを単離すること等により得ることができる。
【0036】
次に、上記のようにして得られる「本蛋白質による転写調節を受けないレポーター遺伝子」を含むDNA及び「本蛋白質による転写調節を受けるレポーター遺伝子」を含むDNAを、それぞれプラスミド等のベクターに組込んで、これをリポフェクション法、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等の通常の方法によって細胞に導入し、これらのレポーター遺伝子がそれぞれ導入されてなる細胞を選抜する。ベクターとしては、大腸菌等の遺伝子工学的技術に適した微生物内で機能可能な複製起点及び薬剤耐性遺伝子を有するプラスミド等があげられる。このとき、これらのレポーター遺伝子が導入された細胞の選抜を容易にするために、薬剤耐性遺伝子等の選抜マーカー遺伝子を同時に導入してもよい。使用可能な薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ)遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等があげられる。
本発明探索方法(III)に使用可能な細胞としては、例えば、本蛋白質を含有する哺乳動物由来の細胞をあげることができ、好ましくは、ヒト組織由来の細胞をあげることができる。より具体的には、ヒト皮膚由来の繊維芽細胞等のYB−1遺伝子内在性細胞があげられる。また、ヒトglioblastoma細胞等の本蛋白質遺伝子非内在性細胞は、該細胞に、例えば本蛋白質をコードするDNAを導入し発現させて使用すればよい。尚、本蛋白質をコードするDNAは、上述のレポーター遺伝子を含むDNAと同時に細胞へ導入されてもよいし、別々に導入されてもよい。例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する本蛋白質をコードするDNAは、該DNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドを、例えば配列番号26で示される塩基配列に基づいて設計して作製し、作製されたオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行うことなどにより調製することができる。かかるPCRにおいて鋳型としては、例えば、市販のヒト由来cDNAを使用することができる。得られた本蛋白質をコードするDNAを、例えば、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター、シミアンウィルス(SV40)の初期もしくは後期プロモーター等のプロモーターと発現可能な形で接続されるようにベクターに挿入して細胞に導入し、本蛋白質を発現する細胞を取得する。ベクターとしては、例えば、上記のようなプロモーターを有しその下流に遺伝子挿入部位を有する市販の発現用ベクター等を使用することができる。
【0037】
次に、このようにして得られた細胞(両細胞)に、被験物質を(独立して)接触させる。当該工程において、当該細胞と接触させる被験物質の濃度は、例えば、約0.1μM〜約100μMであればよく、1μM〜50μMが好ましい。当該細胞と被験物質とを接触させる時間は、例えば、1時間以上5日間程度であり、好ましくは数時間から4日間程度が挙げられる。
この工程後に、レポーター遺伝子の発現量を(独立して)モニターする。レポーター遺伝子の発現量のをモニターする方法は、使用されるレポーター遺伝子にコードされるレポーター蛋白質の種類にもよるが、一般的には、測定対象の細胞に細胞溶解剤を添加することにより調製された細胞抽出液に含まれるレポーター蛋白質の量を測定すればよい。例えば、使用されたレポーター蛋白質が酵素活性を有する場合には、当該酵素に特異的な基質と当該酵素を含む細胞抽出液とを反応させた後、残存する基質の量又は反応産物の量を、その発光量、蛍光吸光度、吸光度等を指標にしてレポーター蛋白質の量を測定する。具体的には、例えば、レポーター蛋白質としてルシフェラーゼを用いた場合には、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンと細胞抽出液とを反応させると、細胞抽出液中のルシフェラーゼ量に比例した強度で発光する。従って、この発光強度をルミノメーター等の測定装置で測定することにより、細胞抽出液中のルシフェラーゼ量、又は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現量を知ることができる。
次に、上記のようにしてモニターされた
(i)被験物質と本蛋白質の転写調節を受けるレポーター遺伝子を有する細胞とを接触させてなるレポーター遺伝子の発現量、と
(ii)被験物質と本蛋白質の転写調節を受けないレポーター遺伝子を有する細胞とを接触させてなるレポーター遺伝子の発現量
との両者を互いに比較することにより得られる差異に基づき被験物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を評価する。前者発現量が後者発現量よりも低い場合または高い場合には、当該被験物質はI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能(低い場合には、本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子、高い場合には、本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の負の調節因子)を有する物質であると評価すればよい。
このように評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜すればよい。
【0038】
また、より精密な探索方法が要求される場合には、例えば、下記のような方法が適している。まず本蛋白質の転写調節を受けないレポーター遺伝子を有する細胞について、被験物質と接触させた場合における当該レポーター遺伝子の発現量の測定値と、溶媒のみと接触させた場合(対照区)における当該レポーター遺伝子の発現量の測定値とを比較する。両者の値が実質的に同等、具体的には例えば両者の比が約0.9〜約1.1程度の範囲内であれば、当該被験物質をI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を検定するために仮選択する。当該比が、例えば約0.9未満となる場合には、被験物質が細胞毒性を有する可能性等が考えられ、一方、例えば約1.1を超えるような場合には、被験物質が遺伝子の転写調節系に対して本蛋白質を介さずに作用している可能性等が考えられる。但し、被験物質を選択するために適した当該比の範囲は、検定に使用される細胞の性質や測定の条件によって異なり、前述の例示数値に限定されるものではない。
次いで、本蛋白質の転写調節を受けるレポーター遺伝子を有する細胞について、上記のようにして仮選択された被験物質と接触させた場合における当該レポーター遺伝子の発現量の測定値と、溶媒のみと接触させた場合(対照区)における当該レポーター遺伝子の発現量の測定値とを比較する。被験物質と接触させた細胞におけるレポーター遺伝子の発現量の測定値が、溶媒のみと接触させた細胞(対照区)の測定値よりも低い場合には、当該被験物質が本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子であると評価することができる。一方、被験物質と接触させた細胞におけるレポーター遺伝子の発現量の測定値が、溶媒のみと接触させた細胞(対照区)の測定値よりも高い場合には、当該被験物質が本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の負の調節因子であると評価することができる。
上記方法のうち、第一工程が、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下においてなされてもよい。尚、「コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件」とは、前述の本発明蓄積抑制方法(I)において説明された条件と同様である。
【0039】
また上記方法のうち、第一工程が、本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子が前記細胞内に存在する条件下においてなされる方法であってもよい。ここで本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子とは、細胞が有するコラーゲン合成機構において、コラーゲン遺伝子の転写を抑制させるように作用する物質を意味し、例えば、本蛋白質自身を挙げることができる。
【0040】
このような前記の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤[本発明蓄積抑制剤(III)]を提供可能とした。
本発明蓄積抑制剤(III)では、有効成分として、一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩を用いることができる。
Figure 0004972847
(式中、R1、R2およびR3は、同一または相異なり、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。)
上記一般式(I)において、
1、R2またはR3で示されるアルキル基としては、例えば、炭素数1から6のアルキル基等があげられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、3−メチルペンチル基、1,3−ジメチルブチル基等があげられる。
1、R2またはR3で示されるアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基等があげられる。
上記一般式(I)で示される化合物は、例えば、サンショウの果皮のエタノール抽出物を、シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィー、逆相カラムを用いたカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等に供して分画するか、又は、かかる天然物から精製された化合物から通常の化学合成方法に準じて導くことにより、得ることができる。得られる化合物は、マスペクトル又はNMRスペクトル等を測定することにより、その化学構造を確認することができる。
上記の本発明蓄積抑制剤(III)では、一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されている。
【0041】
また本発明蓄積抑制剤(III)では、有効成分として、サンショウ(Zanthoxylum piperitum De Candolle)およびその同属植物、ならびにボダイジュ(Tilia cordata Mill)およびその同属植物からなる群から選択される植物の少なくとも1つの部位またはその処理物を用いることもできる。
植物の部位としては、例えば、地上部、地下部、葉、樹皮、木部、根、花部、果実、果皮、種子等をあげることができる。具体的には、サンショウの果皮、ボダイジュの花部等をあげることができる。
上記の植物部位の処理物としては、例えば、乾燥物、抽出物、水蒸気蒸留物、圧搾物、破砕物、磨砕物、部分精製物、精製物等をあげることができる。これらは、植物から、例えば、生薬調製等に用いられる通常の方法に準じて得ることができる。具体的には、サンショウの果皮を、常温又は加温下に、水、エーテル、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、1,3−ブチレングリコール等の溶媒又はこれらの混合溶媒で抽出する。また、ボダイジュの花部を水、エーテル、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、1,3−ブチレングリコール等の溶媒又はこれらの混合溶媒で抽出する。このようにして得られる抽出物自身を有効成分として用いることもできる。さらに、当該抽出物を、例えば、シリカゲル、アルミナ、セルロースパウダー等を用いたカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等に供して分画するか、又はこれらの方法を組み合わせて分画することにより得られる部分精製物または精製物を有効成分として用いることもできる。
上記の本発明蓄積抑制剤(III)では、上記の有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されている。
【0042】
本発明は、I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、本蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法[本発明蓄積抑制方法(IV)]も提供している。
ここで、「I型コラーゲン遺伝子を有する細胞」とは、前述の本発明蓄積抑制方法(III)において説明された細胞と同様であり、また「コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件」とは、前述の本発明蓄積抑制方法(I)において説明された条件と同様である。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
実施例1 (本発明コラーゲン蓄積抑制剤の有効成分である本蛋白質の調製例)(1)本蛋白質をコードする外来遺伝子を発現するベクターの調製
ヒト胎児皮膚線維芽細胞(Clontech、カタログ番号CC−2509)1x107細胞を37℃、5% CO2雰囲気下で一晩培養した。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、トリゾル試薬(Gibco BRL、カタログ番号15596−018)1mlを添加して当該細胞を懸濁させた。得られた細胞懸濁液を室温にて5分間静置した後、当該細胞懸濁液にクロロホルム 0.2mlを添加して15秒間攪拌し、4℃で15,000rpm、15分間遠心分離した。水層を回収した後、これにイソプロパノール 0.5mlを加えて室温で5分間静置し、4℃で15,000rpm、10分間遠心分離した。回収された沈殿物に70% エタノール 1mlを加えて攪拌した後、4℃で12,000rpm、5分間遠心分離した。回収された沈殿物を風乾した後、これをTE溶液[組成:10mM トリス塩酸(pH8.0)、1mM エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(以下、EDTAと記す。)(pH8.0)]20μlに溶解した(得られた溶解液を、以下、全RNA溶液と記す。)。次に、THERMOSCRIPTRT−PCR System(Gibco BRL、カタログ番号11146−024)を用いて以下のように逆転写反応を行った。まず全RNA溶液 2μl、Oligo(dT)20 1μl及びDEPC−Treated Water 7μlを混合し、この混合液を65℃、5分間保温した後、直ちに氷冷した。次に当該混合液に、5xcDNA Synthesis Buffer 4μl、RNaseOUT 1μl、DTT 1μl、DEPC−Treated Water 1μl、10mM dNTP Mix 2μl及びTHERMOSCRIPT RT1μlを添加して55℃、1時間保温し、続いて85℃、5分間保温した。さらに、当該混合液にRNase H 1μlを加えて37℃、20分間保温した。得られた混合液1μl、配列番号5で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)1μl、配列番号6で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)1μl、蒸留水29μl、TaKaRa LA Taq(宝酒造、カタログ番号RR002A)に含まれるbuffer5μl、Mg2+溶液 5μl、dNTP mixture 5μl、及びLA Taq 0.5μlを混合した後、得られた混合液を94℃、5分間保温した。続いて94℃、1分間、次いで60℃、1分間、さらに72℃、2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行い、さらに72℃、7分間保温した。保温後の混合液を1%Agarose L(ニッポンジーン、カタログ番号317−01182)ゲルを用いた電気泳動に供した。約1kbのDNAを含むゲル部分を切り出した後、これを65℃、5分間保温した。得られたゲル溶解液に等容量のフェノールを添加して混合した後、15,000rpm、3分間遠心分離した。回収された上清に等容量のクロロホルムを添加して混合した後、15,000rpm、3分間遠心分離し、再び上清を回収した(以下、該操作をフェノール・クロロホルム処理と記す。)。回収された上清にその1/9容量の3M 酢酸ナトリウム、2倍容量のエタノールを加えて−80℃、30分間放置した後、15,000rpm、15分間遠心分離し、沈澱を回収した。回収された沈殿に冷80%エタノール1mlを加えた後、15,000rpm、5分間遠心分離し、再び沈澱を回収した。回収された沈澱に蒸留水40μl、10xH Buffer(宝酒造)5μl、BamHI(15U/μl、宝酒造、カタログ番号1060A)2.5μl、XhoI(15U/μl、宝酒造、カタログ番号1093A)2.5μlを添加し、この混合液を37℃、3時間保温した。そして当該混合液を1%アガロースゲル電気泳動に供した。約1kbのDNA含むゲル部分を切り出した後、これを前記と同様にしてフェノール・クロロホルム処理した後、エタノール沈殿することによりDNAを回収した。回収されたDNAをTE溶液20μlに溶解して目的とするDNA(本蛋白質をコードする外来遺伝子:以下、本DNAと記すこともある。)溶液を得た。
【0045】
ベクターDNAは以下のように調製された。ベクターpET−28a(+)(Novagen、カタログ番号69864−3)5μg、10xK Buffer(宝酒造)5μl、BamHI 2.5μl及びXhoI 2.5μlを混合し、さらに全容量が50μlになるように蒸留水を添加した。得られた混合液を37℃、3時間保温した後、当該混合液を1%アガロースゲル電気泳動に供した。ベクターDNAを含むゲル部分を切り出した後、これを前記と同様にしてフェノール・クロロホルム処理した後、エタノール沈殿することによりベクターDNAを回収した。回収された沈澱に、蒸留水44μl、Alkaline Phosphatase Buffer5μl及びAlkaline Phosphatase(宝酒造、カタログ番号2120A)1μlを加えて65℃、30分間保温した後、この混合液に1%ドデシル硫酸ナトリウム1μl、0.2M EDTA 2.5μl及び1%プロテイナーゼK(和光純薬、カタログ番号)1μlを加えて55℃、30分間保温した(以下、該操作をBAP処理と記す。)。さらに当該混合液に蒸留水を450μl添加し、これをフェノール・クロロホルム処理した後、エタノール沈殿することによりDNAを回収した。回収されたDNAをTE溶液20μlに溶解してベクターDNA(以下、本ベクターDNAと記すこともある。)を得た。
【0046】
次に、得られた本DNA溶液5μl、得られた本ベクターDNA溶液1μl、及びDNA Ligation kit Ver2(宝酒造、カタログ番号6022)の酵素溶液6μlを混合した後、得られた混合液を16℃、一昼夜保温した。当該混合液に大腸菌BL21−GOLD(DE3)(TOYOBO、カタログ番号SC230132)100μlを加えて氷中に30分間放置し、次いで42℃、45秒間保温した後、得られた大腸菌を30μg/ml硫酸カナマイシン(Gibco、カタログ番号15160−054)を含むLBプレート(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1% 塩化ナトリウム、1.5%バクトアガー)に播種し、37℃、一昼夜放置した。出現したシングルコロニーを単離することにより後述で用いられる、本蛋白質をコードする外来遺伝子を発現するベクターを含有する大腸菌(以下、本蛋白質発現ベクター含有大腸菌と記すこともある。)を得た。一方、当該シングルコロニーを30μg/ml 硫酸カナマイシンを含むLB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%塩化ナトリウム)2mlで37℃、12時間培養した。得られた培養液から、AUTOMATIC DNA ISOLATION SYSTEM PI−50(KURABO)を用いて、プラスミドDNAを調製した。このようにして、本蛋白質をコードする外来遺伝子を発現するベクターを得た。
【0047】
(2)本蛋白質の調製
実施例1(1)で得られた本蛋白質発現ベクター含有大腸菌を、30μg/ml 硫酸カナマイシンを含むLB培地200mlに接種し、OD600値が0.4〜0.6になるまで、37℃で振とう培養した。得られた培養液に、終濃度が0.5mMとなるようイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(以下、IPTGと記す。)を加えて、さらに3時間、37℃で振とう培養を続けた。得られた培養液を遠心分離(5,000rpm、10分間、4℃)することにより回収された沈澱(菌)に、氷冷した10ml Binding buffer[5mM イミダゾール、0.5M NaCl、5mM MgCl2、10% グリセロール、20mM Tris−HCl(pH7.5)]を加えて懸濁させた後、この菌懸濁液の粘性がなくなるまで超音波処理を行った。そして超音波処理された菌懸濁液を遠心分離(12,000rpm、30分間、4℃)し、上清を回収した。次に、回収された上清をニッケル−NTA−アガロースカラム(QIAGEN)に供した。次に、当該カラムには、カラム体積の2倍量のBindingbufferを通流し、続いて5倍量のWashing buffer[20mM イミダゾール、0.5M NaCl,5mM MgCl2、10% グリセロール、20mM Tris−HCl (pH7.5)]を通流した後、Elute buffer[200mM イミダゾール、0.5M NaCl、5mM MgCl2、10% グリセロール、20mM Tris−HCl(pH7.5)]を通流することにより、目的とする蛋白質をカラムから溶出させ、その溶出液を回収した。尚、回収された溶出液の一部をドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと記す。)−13%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルを銀染色した結果、本蛋白質に相当する電気泳動位置に単一バンドが確認された。
回収された溶出液の大部分を、4℃で透析[透析液:10mM HEPES−KOH(pH7.9)、40mM KCl、0.4mM EDTA、4% グリセロール、0.5mM ジチオスレイトール(DTT)、0.5mM フェニルメチルスルフォニルフロリド(PMSF)、2μg/ml ロイペプチン、2μg/ml ペプスタチン A]した後、セントリコン30(Amicon)で濃縮することにより本蛋白質を得た。
【0048】
実施例2 (本蛋白質が有する、I型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力)(1)(a)I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域を有するDNA(結合型プローブ)及び(b)本蛋白質との結合能力を有さない塩基配列を有するDNA(非結合型プローブ)の調製
配列番号3で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを混合し、このオリゴヌクレオチド混合物を5分間煮沸した後そのまま室温に放置した。次いで、前記オリゴヌクレオチド混合物の10pmol DNA相当量、T4キナーゼバッファー 2μl 、T4 キナーゼ 1μl、及びγ−32P−ATP(>3000Ci/mmol、第一化学薬品、カタログ番号NEG−502A)6μlに蒸留水を加えて全量を20μlとした後、これを37℃、1時間保温した。当該混合液をクイックスピンカラムG−25(Boehringer、カタログ番号1273949)に供した。当該カラムを遠心分離(2,500rpm、5分間)した後、溶出液を回収した。回収された溶出液を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することにより32P標識された2本鎖DNAを含むゲル部分を回収した。回収されたゲル部分に蒸留水を加えて37℃、一昼夜放置した後、32P標識されたDNA(以下、該DNAを結合型プローブと記す。)を抽出した。このようにして結合型プローブを調製した。
一方、配列番号3で示される塩基配列の塩基番号5で示される塩基及び塩基番号6で示される塩基が置換された塩基配列(配列番号7で示す。)からなるオリゴヌクレオチドと、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを混合し、以後、前記結合型プローブの調製と同様な操作を行い、32P標識されたDNA(以下、非結合型プローブと記す。)を抽出した。このようにして非結合型プローブを調製した。
【0049】
(2)ゲルシフトアッセイ
実施例1(2)で調製された本蛋白質 200ng及びPoly dI−dC1μgに、上記(1)で調製された2種のプローブのいずれか一方(各50,000cpm)をそれぞれ添加し、この混合物を氷中で30分間放置した。次に、それぞれの混合液の全量を6% ポリアクリルアミドゲル電気泳動(150V、4℃、150分間)に供した。電気泳動終了後、ゲルをメタノールと酢酸と水の3:1:6(v/v/v)混合液に浸して固定した。固定されたゲルをゲルドライヤーで乾燥した後、X線フィルムに露光した。結合型プローブ添加試験区では、本蛋白質の電気泳動位置に放射活性のシグナルが検出された。一方、非結合型プローブ添加試験区では、本蛋白質の電気泳動位置には放射活性のシグナルは検出されなかった。
以上の確認結果に基づき、後述のプライマー設計を行った。すなわち、後述の結合型レポーターベクター作成には、配列番号10で示されるオリゴヌクレオチド及び配列番号11で示されるオリゴヌクレオチドを利用し、一方、後述の非結合型レポーターベクター作成には、配列番号12で示されるオリゴヌクレオチド及び配列番号11で示されるオリゴヌクレオチドを利用した。
【0050】
(3)レポーター遺伝子を有するベクターの調製
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞をPBSで洗浄した後、トリゾル試薬1mlを添加して当該細胞を懸濁させる。得られる細胞懸濁液を室温で5分間放置した後、当該細胞懸濁液にクロロホルム0.2mlを添加し15秒間振とう混合する。室温でさらに3分間放置した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分間)する。中間層及び有機層を回収した後、これにエタノール0.3mlを加えて混合し、この混合物を室温で3分間放置した後、遠心分離(3,000rpm、4℃、5分間)する。回収される沈殿物に0.1M クエン酸ナトリウム1mlを加えて室温で30分間放置した後、これを遠心分離(3,000rpm、4℃、5分間)して沈澱物を回収する。この操作をもう1度繰り返す。得られる沈殿物に75%エタノール2mlを加えて室温で20分間放置した後、この混合物を遠心分離(3,000rpm、4℃、5分間)する。沈殿物を5分間真空乾燥した後、超純水に溶解する。
得られる溶解液と、配列番号8で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号9で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを用いてPCRを行う。PCR反応溶液を94℃、5分間保温した後、94℃、1分間次いで55℃、2分間さらに72℃、3分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行う。PCR反応終了後、PCR反応溶液を1%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約2.5kbのDNAを回収した。回収されるDNAをフェノール・クロロホルム処理した後、エタノール沈殿してDNAを回収する。回収されるDNAを超純水に再び溶解し、BamHI2.5μl及びHindIII(ニッポンジーン、カタログ番号311−01163)2.5μlを加え、37℃、3時間保温した後、この混合液を1%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約2.5kbのDNAを回収する。回収されたDNAをエタノール沈殿することにより目的とするDNAを得た(以下、プロモーターDNAと記す。)。
一方、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(以下、CATと記す。)をコードする塩基配列を有するベクターp8−CAT[J.Biol.Chem.,265,13351−13356(1990)]をBamHIとHindIIIで消化した後、上記と同様にアガロースゲル電気泳動に供することにより、約5kbのDNAを回収した。回収されたDNAをエタノール沈殿することによりDNAを回収した。回収されたDNAをBAP処理し、次いでフェノール・クロロホルム処理した後、エタノール沈殿することによりDNAを回収した(以下、CATベクターDNAと記す。)。
【0051】
次いで、前記プロモーターDNAと、CATベクターDNAとを混合し、この混合物にDNA Ligation kit Ver2酵素溶液を添加して16℃で一昼夜保温する。当該混合物に大腸菌5Hdα(TOYOBO、カタログ番号DNA−903)を加えて氷中に30分間放置し、次いで42℃、45秒間保温した後、得られた大腸菌を50μg/ml アンピシリンナトリウム(ナカライ、カタログ番号027−39)を含むLBプレートに播種し、37℃、一昼夜放置する。出現したシングルコロニーを50μg/ml アンピシリンナトリウムを含むLB培地2mlに接種して37℃、12時間培養した後、得られた培養液からAUTOMATIC DNA ISOLATION SYSTEM PI−50(KURABO)を用いてプラスミドDNAを調製する。得られたプラスミドDNAの塩基配列をDNAシークエンサーで分析し、目的とする塩基配列を保有していることを確認する。当該プラスミドDNA100ngを鋳型とし、配列番号10で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号11で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを各々10pmol添加して、PCRを行う。PCR反応溶液を、94℃、5分間保温した後、94℃、1分間次いで55℃、1分間さらに72℃、1分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行う。PCR反応終了後、PCR反応溶液を1%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約0.22kbのDNAを回収する。回収されるDNAをBamHI及びHindIIIで消化した後、1%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約0.22kbのDNAを回収する。回収されるDNAを、CATベクターDNAとライゲーションした後、ライゲーション化DNAを大腸菌5Hdαに導入する。得られる形質転換体からプラスミドDNAを調製することにより、ヒトI型コラーゲンα2鎖遺伝子のプロモーター領域の−161〜+57(転写開始点を+1とする。)の塩基配列の下流に、CATをコードする塩基配列が接続されてなるプラスミド(以下、結合型レポーターベクターと記す。)を得る。当該プラスミドの塩基配列を自動DNAシークエンサーにより分析し確認する。
【0052】
次に、結合型レポーターベクターをBamHI及びHindIIIで消化した後、この消化物を3%アガロースゲル電気泳動に供することにより、CATをコードする塩基配列を有するDNAを回収した。
一方、配列番号12で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号11で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを各々10pmol添加し、結合型レポーターベクター100ngを鋳型としてPCRを行なった。PCR反応溶液を、94℃、5分間保温した後、94℃、1分間次いで55℃、1分間さらに72℃、1分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。PCR反応終了後、PCR反応溶液を1%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約0.22kbのDNAを回収した。回収されたDNAをBamHI2.5μl及びHindIII2.5μlで消化した後、この消化物を3%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約0.22kbのDNAを回収した。回収されたDNAとCATベクターDNAとをライゲーションした後、ライゲーション化DNAを大腸菌5Hdαに導入した。得られた形質転換体からプラスミドDNAを調製することにより、結合型レポーターベクターに含まれるヒトI型コラーゲンα2鎖遺伝子(COL1A2)の発現調節領域の−160と−159との位置(転写開始点を+1とする。)のシトシンが、グアニンに置換されてなるプラスミド(以下、該プラスミドを非結合型レポーターベクターと記す。)を得た。当該プラスミドの塩基配列を、自動DNAシークエンサー(ABI PRISM、377 DNA Sequencer)により確認した。
【0053】
(4)レポーター遺伝子の発現量測定
実施例1(1)と同様にして、本蛋白質をコードするDNAを、発現ベクターpRc/RSV(Invitrogen、カタログ番号28−0051)のHindIII切断部位とXbaI切断部位との間にクローニングし、得られたベクターをYB−1/RSV(本蛋白質発現ベクター)と名付けた。
ヒトglioblastoma細胞 AG−373[American Type Culture Collection(ATCC)、カタログ番号HTB−17]1x106細胞を60mmディッシュ(BECTON DICKINSON、カタログ番号3002)に播種し、10%非働化牛胎児血清(以下、FBSと記す。Gibco、カタログ番号21140−079)、8.9mg/lL−アラニン、15mg/l L−アスパラギン・H2O、13.3mg/lL−アスパラギン酸、14.7mg/l L−グルタミン酸、7.5mg/lグリシン、11.5mg/l L−プロリン及び10.5mg/l L−セリンが添加されたMEM培地(GIBCO BRL、カタログ番号11095−072)(以下、該培地をMEM(+)と記す。)にて37℃、5%CO2存在下で一晩培養した後、培地をFBSを含まないMEM培地(以下、該培地をMEM(−)と記す。)に置換した。
MEM(−)100μlに、結合型レポーターベクター2μg又は非結合型レポーターベクター 2μgのいずれかと、YB−1/RSV 4μg又はpRc/RSV 4μgのいずれかとを加え、この混合液を室温で40分間放置した(溶液1)。また、MEM(−)100μlにLipofectine(Gibco、カタログ番号18292−011)20μlを加え、この混合液を室温で40分間放置した(溶液2)。次に、溶液1と溶液2とを混合し、室温で10分間放置した後に、MEM(−) 2mlを加え、よく混合した。当該混合液を前記glioblastoma細胞に添加した後、当該細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で6時間培養した。その後、ディッシュから培養上清を除いて細胞をMEM(−)で2回洗浄し、MEM(+)4mlを添加し、37℃、5%CO2雰囲気下でさらに40時間培養した。
【0054】
培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、細胞溶解剤(東洋インキ、カタログ番号PD10)200μlを加え、セルスクレイパー(Nalgen、カタログ番号179693)を用いて細胞を器壁から剥がした。剥がされた細胞を細胞溶解剤に懸濁した後、この細胞懸濁液を遠心分離(15,000rpm、4℃、5分間)し、上清を回収した。回収された上清(蛋白質量に換算して20μg)に、10mM アセチル−CoA(シグマ、カタログ番号A2056)10μl及びD−threo−[dichloroacetyl−1−14C]chloramphenicol(アマシャム、カタログ番号CFA754)2μlを添加し、この混合液を37℃で5時間保温した。次いで、この混合液に酢酸エチル100μlを加えて混合した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、5分間)し、上層を回収した。回収された上層を窒素気流下に蒸発乾固させた後、残渣を酢酸エチル30μlに溶解した。この溶解液の全量をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにて展開した(薄層プレート:Silica gel TLC plate 20x20cm、MERCK、カタログ番号1.05715、展開溶媒:クロロホルムとメタノールの95:5(v/v)混合液)。薄層プレート上の放射活性を、バイオ・イメージングアナライザーBAStation(富士フィルム)を用いて定量した。次式に従って、CAT活性を算出した。
CAT活性(%)=アセチルクロラムフェニコールの放射活性/全放射活性
結果を表1に示す。本蛋白質発現ベクターであるYB−1/RSVと結合型レポーターベクターとが導入された細胞では、発現ベクター(本蛋白質非発現ベクター)であるpRc/RSVと結合型レポーターベクターとが導入された細胞に比し、CAT活性が低下していた。一方、本蛋白質発現ベクターと非結合型レポーターベクターとが導入された細胞及び発現ベクター(本蛋白質非発現ベクター)と非結合型レポーターベクターとが導入された細胞の両者では、かかる活性低下は認められなかった。
【0055】
【表1】
Figure 0004972847
*CAT相対活性は、発現ベクターpRc/RSVと結合型レポーターベクターとが導入された細胞のCAT活性を1.0とした、各区のCAT活性を示す。
【0056】
実施例3 (本蛋白質をコードする外来遺伝子導入によるコラーゲン蓄積抑制方法)
(1)プローブ作製
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞の全RNA 1μgとOligo(dT)20とを用いて、実施例1(1)と同様に逆転写反応を行なった。得られたcDNA溶液1μlと、配列番号13で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)と配列番号14で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)各々1μlを用いて、実施例1(1)と同様にPCRを行った。PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供することにより約2kbのDNAを回収した。回収されたDNAをTE溶液10μlに溶解して目的とするDNA溶液を得た。得られたDNA溶液9μl、pGEM T−easyベクター溶液(Promega、カタログ番号A1360)1μl、DNA Ligation kit Ver2の酵素溶液 10μlを混合してライゲーションした。このライゲーション化DNAを大腸菌5Hdαに導入した。得られた形質転換体を、アンピシリンナトリウムを含むLBプレートに播種してコロニーを形成するまで培養した。出現したシングルコロニーを回収し、再び培養した後、当該形質転換体から、ヒトI型コラーゲンα2鎖のコーディング領域の2021番目の塩基から4051番目の塩基までの塩基配列を含むプラスミドを単離した。また、上記2種のオリゴヌクレオチドに代えて配列番号21で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)と配列番号22で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)各々1μlを用いて、上記と同様な操作を行い、ヒトI型コラーゲンα1鎖のコーディング領域の2342番目の塩基から3735番目の塩基までの塩基配列を含むプラスミドを単離した。
単離された各プラスミドをXhoI及びSacIで消化した後、アガロースゲル電気泳動に供することによりそれぞれ約1.0kb、約1.3kbのDNAを回収した。回収されたDNAをそれぞれ約10ng/μlとなるようTE溶液に溶解して目的とするDNA溶液を得た。得られたDNA溶液1μlにTE溶液 44μlを加えて混合し、この混合物を95℃、5分間保温した後、氷中に置いた。次いで当該混合物を、ランダムプライムラベリングシステム(Rediprime II、Amersham Pharmacia、カタログ番号RPN1633)1チューブに加え、さらに[α−32P]dCTP(Amersham Pharmacia、カタログ番号RPNAA0005)5μlを添加して混合した。この混合物を37℃にて1時間保温した後、当該混合物をG−50カラム(Amersham Pharmacia、カタログ番号27−5335−01)に供した。当該カラムを2000g、2分間遠心分離した後、溶出液を回収した。回収された溶出液を95℃、5分間保温した後、氷中に置いた。このようにして調製されたDNAをノザンブロット解析用プローブとして用いた。
【0057】
(2)I型コラーゲン遺伝子の転写量(mRNA量)測定
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞 5x107細胞を100mmディッシュ(BECTON DICKINSON、カタログ番号3003)に播種し、D−MEM(+)で37℃、5%CO2雰囲気下において一晩培養した。翌日、培地をD−MEM(−)に置換した。
D−MEM(−) 300μlにYB−1/RSV又はpRc/RSVのいずれか150ngを加え、この混合液を室温で45分間放置した(溶液1)。また、D−MEM(−) 300μlにLipofectine 20μlを加え、この混合液を室温で40分間放置した(溶液2)。次に、溶液1と溶液2とを混合して得られた混合液を室温で10分間放置した後、この混合液にD−MEM(−)5.4mlを加えた。得られた混合液に、前記ヒト胎児皮膚線維芽細胞を添加した。当該混合液(細胞を含む)を37℃、5%CO2雰囲気下で6時間培養した後、ディッシュから上清を除いてD−MEM(−)で2回洗浄した。次いで、ディッシュにD−MEM(0.1%)10mlを添加して37℃、5%CO2雰囲気下で1時間培養した後、当該細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であるTGFβ 5μg/ml水溶液を10μl添加(培地中のTGFβ濃度:5ng/ml)し、37℃、5%CO2雰囲気下でさらに40時間培養した。尚、TGFβ無添加試験区では、TGFβに代えて蒸留水10μlを用いた。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、当該細胞から実施例1(1)と同様に全RNAを調製した。
【0058】
全RNA10μg、ホルムアミド(ナカライテスク、カタログ番号163−45)10μl、ホルマリン(和光、カタログ番号064−00406)4μl、10x MOPS[3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(ナカライテスク、カタログ番号234−38)41.854g、酢酸ナトリウム 6.804g、EDTA 3.722gを蒸留水に溶解し、pH7.0に調整して全量を1Lとした。]3μlを混合し、この混合液を65℃、10分間保温した後、直ぐに氷中に置いた。得られた混合液を100Vにて60分間電気泳動した(ゲル:アガロース 1.5g、10xMOPS 15ml、蒸留水 110mlを加温してアガロースを溶解し、ホルマリン 25mlを加えて作製した。電気泳動バッファー:1x MOPS)。電気泳動後のゲルにHybond−Nフィルター(Amersham Pharmacia、カタログ番号RPN303N)を密着させ、加圧しながら、これを20xSSC(塩化ナトリウム 175.32g、クエン酸ナトリウム 88.22gを蒸留水に溶解して1Lとした。)中で一晩放置することによりRNAをフィルターに転写した。RNAが転写されたフィルターを80℃、2時間保温した後、このフィルターを、ハイブリダイゼーションバッファー(ホルムアミド 25ml、20x SSC 12.5ml、0.5M リン酸ナトリウム(pH6.5)5ml、サケ精子DNA溶液(Gibco BRL、カタログ番号15632−011)0.2ml、5x デンハルト溶液(和光、カタログ番号043−21871)4ml、蒸留水 3.3ml)40ml中で42℃、5時間保温した。次に、ハイブリダイゼーションバッファーを除去した後、このフィルターに新しいハイブリダイゼーションバッファー 10mlを加え、さらに106cpm/mlとなるように、上記(1)で調製されたノザンブロット解析用プローブ(ヒトI型コラーゲンα2鎖のコーディング領域の2631番目の塩基から3654番目の塩基までの塩基配列を有する。)を添加し、42℃、一晩保温した。次いで、プローブ溶液を除去した後、このフィルターに0.1% SDSが添加された2xSSC 100mlを加え、室温で10分間保温した。さらにこの操作を2回繰り返した。得られたフィルターに、0.1% SDSが添加された0.1xSSC 100mlを加え、50℃、20分間の保温を3回繰り返した後、当該フィルターを風乾した。風乾されたフィルター上の放射活性をBAStationを用いて定量した。上記のハイブリダイゼーションが行われたフィルターを、次いで、沸騰した0.1xSSC中で10分間保温した後、さらに、ハイブリダイゼーションバッファー中で42℃、5時間保温した。このフィルターに、ノザンブロット解析用プローブ(ヒトI型コラーゲンα1鎖のコーディング領域の2381番目の塩基から3685番目の塩基までの塩基配列を有する。)を添加し、上記と同様なハイブリダイゼーションを行なった。
一方、全RNA 10μgを、0.5μg/ml エチジウムブロマイド(Gibco BRL、カタログ番号15582−018)を含む前記のゲルを用いて電気泳動した後、28S リボゾームRNAの蛍光強度をLUMINESCENT IMAGE ANALYZER LAS−1000 plus(富士フィルム)及びImage Gauge ver 3.12(富士フィルム)を用いて定量した。次式に従い、28S リボゾームRNA量に対する各遺伝子のmRNAの量を算出した。
mRNA量=約5kbに相当する電気泳動位置の放射活性/28S リボゾームRNAの蛍光強度
結果を表2に示す。本蛋白質をコードする外来遺伝子導入によるコラーゲン蓄積抑制がmRNAレベルにおいて確認できた。さらに、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が細胞外に存在する条件下でも上記効果は十分に確認できるものであることが判った。
【0059】
【表2】
Figure 0004972847
*I型コラーゲン(α1鎖又はα2鎖)遺伝子の転写量(mRNA量)相対値は、pRc/RSVが導入された細胞にTGFβ無添加試験区のI型コラーゲン遺伝子の転写量(mRNA量)をそれぞれ1.0とした、各区のI型コラーゲン遺伝子の転写量(mRNA量)を表す。
【0060】
実施例4 (本蛋白質投与によるコラーゲン蓄積抑制方法)
(1)細胞抽出物の調製
実施例3(2)と同様にして、正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞に、本蛋白質発現ベクターであるYB−1/RSV又は本蛋白質非発現ベクターpRc/RSVを導入した後、この形質転換体にコラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であるTGFβを添加し、37℃、5%CO2雰囲気下で40時間培養した。尚、TGFβ無添加試験区では、TGFβに代えて同量の蒸留水を用いた。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、培養された細胞が存在するディッシュにRIPAバッファー(50mM トリス塩酸(pH7.5)、150mM 塩化ナトリウム、1% NP−40、0.5% デオキシコール酸、0.1% SDS、1mM PMSF、2,5mM EDTA、1mM Na3VO4、20μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン、50mM フッ化ナトリウム)0.5mlを加えた後、細胞をディッシュから剥がした。このようにして細胞懸濁液を得て、これを22G注射針に通した後、氷中で1時間静置した。そして当該細胞懸濁液を4℃で15,000rpm、10分間遠心分離し、上清を回収した(以下、該上清を細胞抽出物と記す。)。細胞抽出物の蛋白質濃度は、DCプロテインアッセイ(Bio−Rad、カタログ番号500-0113)を用いて定量した。すなわち、96穴プレートに、細胞抽出物5μl、reagentA 25μl及びreagentB 200μl加えて振とう混合し、この混合液を室温で15分間静置した後、当該混合液の655nmにおける吸光度を測定した。
【0061】
(2)I型コラーゲン蛋白質量の測定
細胞抽出物25μgに同容量のSDSサンプルバッファー(100mM Tris−HCl(pH7.5)、20%グリセロール、4%SDS、2%メルカプトエタノール、0.01%ブロモフェノールブルー)を加え、この混合物を95℃、5分間保温した。当該混合物の全量をSDS−13%ポリアクリルアミド電気泳動(40mA定電流、電気泳動バッファー:0.25Mトリス、1.92Mグリシン、1%SDS)に供した。電気泳動終了後、ゲルにニトロセルロース膜(Amersham、カタログ番号RPN303E)を密着させて転写(250mA定電流、転写バッファー:20%メタノール、0.25Mトリス、1.92Mグリシン、1%SDS)を行なった。転写後の膜を5%スキムミルク(和光、カタログ番号)に浸し、4℃で終夜振とうした。次に、当該膜を0.1% Tween 20を含むPBS(以下、該溶液をPBS−Tと記す。)に浸して室温で10分間振とうする操作を2回行なった後、ウサギ抗ヒトI型コラーゲン抗体(Polysciences社、カタログ番号23706)の1000倍希釈液(PBS−Tで希釈)に当該膜を浸し、室温で1時間振とうした。次いで当該膜を、PBS−Tに浸して室温で15分間振とうする操作を3回行った後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体の5000倍希釈液(PBS−Tで希釈)に当該膜を浸し、室温で1時間振とうした。さらに当該膜をPBS−Tに浸して室温で15分間振とうする操作を3回行った後、Western blot detection kit(Amersham、カタログ番号RPN2106)を用いて発色させ、この発色をBIOMAX MRフィルム(kodak、カタログ番号8912560)に感光させた。感光したフィルムを現像した後、このフィルムをLUMINESCENT IMAGE ANALYZER LAS−1000 plus(富士フィルム)を用いて白色光によるデジタイズ(透過)でデジタル画像化した後、Image Gauge ver 3.12(富士フィルム)を用いて黒化度を定量した。得られた値から、I型コラーゲン蛋白質量の相対値を算出した。
結果を表3に示す。本蛋白質をコードする外来遺伝子導入によるコラーゲン蓄積抑制が蛋白質レベルにおいて確認できた。さらに、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が細胞外に存在する条件下でも上記効果は十分に確認できるものであることが判った。
【0062】
【表3】
Figure 0004972847
*I型コラーゲン蛋白質量相対値は、pRc/RSVが導入された細胞にTGFβ無添加試験区のI型コラーゲン蛋白質量を1.0とした、各区のI型コラーゲン蛋白質量を表す。
【0063】
実施例5 (I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質の探索方法:本蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値の測定によるI型コラーゲン遺伝子の転写調節能の評価)
(1)本蛋白質のアミノ酸配列と外来性マーカー蛋白質(GFP)のアミノ酸配列とを有する蛋白質の発現ベクター作製
YB−1/RSV 100ng、配列番号15で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド10pmol、配列番号16で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド10pmol、KOD−Dash(TOYOBO、カタログ番号RR002A)に含まれるbuffer 5μl、Mg2+溶液 5μl、dNTPmixture 5μl、KOD−Dash 1μl及び蒸留水を混合して全量50μlのPCR反応液を調製し、このPCR反応液を用いてPCRを行った。PCRの条件は、94℃で2分間保温した後、94℃、15秒間、次いで60℃、30秒間、さらに68℃、1分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行うというものであった。PCR後、PCR反応液をHindIII及びPmlIで消化した後、エタノール沈殿することによりDNAを回収した(沈澱として得られたDNAを、以下、YB−1DNAと記す。)。一方、pCMX−hGR−GFP(Ogawa,Umezono,J.Histochem.Cytochem.1999、31巻、303−308頁)をHindIII、PmlIで消化した後、この消化物をアガロースゲル電気泳動することによりhGRを含まない約5kbのDNAを分離し、これを回収した。回収されたDNAをBAP処理した後、エタノール沈殿することによりDNAを回収した(沈澱として得られたDNAを、以下、GFPベクターDNAと記す。)。YB−1DNAとGFPベクターDNAとをライゲーションした後、このライゲーション化DNAを大腸菌DH5αに導入した。得られた形質転換体を、アンピシリンを含むLBプレートに播種してコロニーを形成するまで培養することにより大腸菌クローンを得た。そして、当該大腸菌クローンを再び培養し、培養された大腸菌から通常の方法によりプラスミドDNAを調製した。得られたプラスミドDNAの塩基配列を分析し、本蛋白質のアミノ酸配の下流にGFPのアミノ酸配列が読み枠が連続する形でコードされた塩基配列を有するプラスミドを選択した。選択されたプラスミドをpCMX−YB−1−GFPと名付けた。
【0064】
(2)発現ベクターの導入及び蛍光顕微鏡観察
ヒト線維芽細胞 5x106細胞を6ウエルプレート(BECTON DICKINSON、カタログ番号3046)に播種し、D−MEM(+)で37℃、5%CO2雰囲気下において一晩培養した。
D−MEM(−)100μlにpCMX−YB−1−GFP 1μgとPlus reagent 10μl(Gibco BRL、カタログ番号11514−015)を加え、これを室温に15分間放置した(溶液1)。また、D−MEM(−) 100μlにLipofectamine 6μl(Gibco BRL、カタログ番号18324−012)を加え、これを室温に15分間放置した(溶液2)。
次に、溶液1と溶液2とを混合し、この混合液をさらに室温で15分間放置した後、当該混合液にD−MEM(−)1mlを加え、さらに上記のように培養された細胞を添加した。当該混合液(細胞を含む)を37℃、5%CO2雰囲気下で6時間培養した後、プレートから上清を除いてD−MEM(−)で2回洗浄した。次いでプレートにD−MEM(+)2mlを添加して37℃、5%CO2雰囲気下で36時間培養した後、当該細胞に、50μg凍結乾燥物/ml培地となるように実施例9記載のボダイジュエキス試料又はサンショウエキス試料を接触させ、さらに37℃、5%CO2雰囲気下で4時間培養した。培養後、プレートをPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡(NIKON、DIAPHOT−TMD)でFITCフィルター下に倍率100倍にて観察した。尚、陰性対照区では、上記試料に代えてDMSO(終濃度0.1%)を用い、また、陽性対照区では、上記試料に買えてIFN−γ(終濃度100U/ml)を用いた。ボダイジュエキス試料又はサンショウエキス試料が接触された細胞では、陽性対照区における細胞と同様に、蛍光は細胞質内では検出されなかったが、しかし核内では検出された。陰性対照区における細胞では、蛍光は細胞質内では検出されたが、しかし核内では検出されなかった。
その結果、本蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値の測定によるI型コラーゲン遺伝子の転写調節能の評価することにI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質(ボダイジュエキス試料又はサンショウエキス試料を選抜可能であることが確認できた。
【0065】
実施例6 (本蛋白質をコードする外来遺伝子利用によるI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質の探索方法)
(1)プローブ作製
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞の全RNA1μgと配列番号13で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド10pmolとを用いて、実施例1(1)と同様に逆転写反応を行なった。得られたcDNA溶液1μlと、配列番号13で示されるオリゴヌクレオチド及び配列番号14で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド各々10pmolとを用いて、実施例1(1)と同様にPCRを行った。PCR反応液を94℃にて5分間保温した後、94℃にて1分間次いで55℃にて1分間さらに72℃にて2.5分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。PCR反応液終了後、PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供することにより約2kbのDNAを回収した。回収されたDNAをTE溶液(10μl)に溶解して目的とするDNA溶液を得た。得られたDNA溶液9μl、pGEM T−easyベクター溶液(Promega、カタログ番号A1360)1μl、DNA Ligation kit Ver2の酵素溶液10μlを混合してライゲーションした後、このライゲーション化DNAを大腸菌5Hdαに導入した。得られた形質転換体をアンピシリンナトリウムを含むLBプレートに播種してコロニーを形成するまで培養した。出現したシングルコロニーを回収し、再び培養した後、当該形質転換体から、ヒトI型コラーゲンα2鎖のコーディング領域の2021番目の塩基から4051番目の塩基までの塩基配列を含むプラスミドを単離した。単離されたプラスミドをEcoRI及びXhoIで消化した後、アガロースゲル電気泳動に供することにより約1.4kbのDNAを回収した。回収されたDNAを約10ng/μlとなるようTE溶液に溶解して目的とするDNA溶液を得た。得られたDNA溶液1μlにTE溶液44μlを加えて混合し、この混合物を95℃、5分間保温した後、氷中に置いた。次いで、当該混合物をランダムプライムラベリングシステム(RediprimeII、Amersham Pharmacia、カタログ番号RPN1633)1チューブに加え、さらに[α−32P]dCTP(Amersham Pharmacia、カタログ番号RPNAA0005)5μlを添加して混合した。この混合物を37℃で1時間保温した後、当該混合物をG−50カラム(Amersham Pharmacia、カタログ番号27−5335−01)に供した。当該カラムを2000g、2分間遠心分離した後、溶出液を回収した。回収された溶出液を95℃、5分間保温した後、氷中に置いた。このようにして調製されたDNAをノザンブロット解析用プローブとして用いた。
【0066】
(2)コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子(TGFβ)非存在下でのI型コラーゲン遺伝子の転写量(mRNA量)測定
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞 5x107細胞を100mmディッシュに播種し、D−MEM(+)で37℃、5%CO2雰囲気下において一晩培養した。該細胞に、実施例7(2)で調製されたサンショウエキス試料を、50μg凍結乾燥物/ml培地となるように添加し、さらに24時間培養した。尚、陰性対照区では、サンショウエキス試料に代えてDMSO(培地中の濃度が0.1%となるよう添加)を用いた。陽性対照区では、サンショウエキス試料に代えてIFN−γ(培地中の濃度が100U/mlとなるように添加)を用いた。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、当該細胞から実施例1(1)と同様に全RNAを調製した。
【0067】
全RNA10μg、ホルムアミド(ナカライテスク、カタログ番号163−45)10μl、ホルマリン(和光、カタログ番号064−00406)4μl、10xMOPS[3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(ナカライテスク、カタログ番号234−38)41.854g、酢酸ナトリウム6.804g、EDTA3.722gを蒸留水に溶解し、pH7.0に調整して全量を1Lとした。]3μlを混合し、この混合液を65℃、10分間保温した後、直ぐに氷中に置いた。得られた混合液を100Vにて60分間電気泳動した(ゲル:アガロース1.5g、10xMOPS 15ml、蒸留水110mlを加温してアガロースを溶解し、ホルマリン 25mlを加えて作製した。電気泳動バッファー:1x MOPS)。電気泳動後のゲルにHybond−Nフィルター(Amersham Pharmacia、カタログ番号RPN303N)を密着させ、加圧しながら、これを20xSSC(塩化ナトリウム175.32g、クエン酸ナトリウム88.22gを蒸留水に溶解して1Lとした。)中で一晩放置することにより、RNAをフィルターに転写した。RNAが転写されたフィルターを80℃、2時間保温した後、このフィルターをハイブリダイゼーションバッファー(ホルムアミド25ml、20xSSC 12.5ml、0.5Mリン酸ナトリウム(pH6.5)5ml、サケ精子DNA溶液(Gibco BRL、カタログ番号15632−011)0.2ml、5xデンハルト溶液(和光、カタログ番号043−21871)4ml、蒸留水3.3ml)40ml中で42℃、5時間保温した。次に、ハイブリダイゼーションバッファーを除去した後、このフィルターに新しいハイブリダイゼーションバッファー10mlを加え、さらに106cpm/mlとなるように、上記(1)で調製されたノザンブロット解析用プローブを添加し、42℃、一晩保温した。次いで、プローブ溶液を除去した後、このフィルターに0.1% SDSが添加された2xSSC 100mlを加え、室温で10分間保温した。さらにこの操作を2回繰り返した。得られたフィルターに、0.1%SDSが添加された0.1xSSC 100mlを加え、50℃、20分間の保温を3回繰り返した後、当該フィルターを風乾した。風乾されたフィルター上の放射活性をBAStationを用いて定量した。
一方、全RNA10μgを、0.5μg/ml エチジウムブロマイド(Gibco BRL、カタログ番号15582−018)を含む前記ゲルを用いて電気泳動した後、28S リボゾームRNAの蛍光強度をLUMINESCENT IMAGE ANALYZER LAS−1000 plus(富士フィルム)及びImage Gauge ver 3.12(富士フィルム)を用いて定量した。次式に従い、28S リボゾームRNA量に対するI型コラーゲンα2鎖mRNAの量を算出した。
I型コラーゲンα2鎖mRNA量=5.8kbに相当する電気泳動位置の放射活性/28S リボゾームRNAの蛍光強度
結果を表4に示す。サンショウエキス試料には、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能が存在していることが判明した。このように、当該方法によりI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜できることが確認できた。
【0068】
【表4】
Figure 0004972847
*I型コラーゲン遺伝子の転写量(α2鎖mRNA量)相対値は、陰性対照添加試験区におけるI型コラーゲン遺伝子の転写量(α2鎖mRNA量)を1.0とした、各区におけるI型コラーゲン遺伝子の転写量(α2鎖mRNA量)を表す。
【0069】
(3)コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子(TGFβ)存在下でのI型コラーゲン遺伝子の転写量(mRNA量)測定
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞 5x107を100mmディッシュに播種し、D−MEM(+)で37℃、5%CO2雰囲気下において一晩培養した。該細胞の培養液を1% FBSを含むD−MEM培地に交換して1時間培養した後、実施例7(2)で調製されたサンショウエキス試料を、50μg凍結乾燥物/ml培地となるように添加し、さらに1時間培養した。その後、当該細胞の培養液に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であるヒトTGFβ(PEPRO TECH、カタログ番号E279)を培地中の濃度が10ng/mlとなるように添加し、さらに23時間培養した。尚、陰性対照区では、サンショウエキス試料に代えてDMSO(培地中の濃度が0.1%となるよう添加)を用いた。陽性対照区では、サンショウエキス試料に代えてIFN−γ(培地中の濃度が100U/mlとなるように添加)を用いた。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、当該細胞から実施例1(1)と同様に全RNAを調製した。得られた全RNA10μgを上記(2)と同様にノザンブロット解析に供し、28S リボゾームRNA量に対するヒトI型コラーゲンα2鎖mRNA量を求めた。
結果を表5に示す。その結果、サンショウエキス試料には、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が細胞外に存在する条件下でも、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を充分に確認できることが判明した。このように、当該方法によりI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜できることが確認できた。
【0070】
【表5】
Figure 0004972847
I型コラーゲン遺伝子の転写量(α2鎖mRNA量)相対値は、陰性対照添加であって、かつ、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子(TGFβ)存在試験区におけるI型コラーゲン遺伝子の転写量(α2鎖mRNA量)を1.0とした、各区におけるI型コラーゲン遺伝子の転写量(α2鎖mRNA量)を表す。
【0071】
実施例7 (I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域結合レポーター遺伝子利用によるI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を調節する物質の探索方法)
(1)転写開始に必要な塩基配列を含む、I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子の調製
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞(Clontech、カタログ番号CC−2509)1x108細胞を37℃、5% CO2雰囲気下で一晩培養した。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、PBS3mlを加えセルスクレイパー(Nalgen、カタログ番号179693)を用いて細胞を器壁から剥がした。剥がした細胞を遠心分離(1,500rpm、4℃、15分間)により集め、これをPBS 20mlに懸濁して再度遠心分離した。得られた沈殿に、DNA Extraction Kit(Stratagene、カタログ番号200600)のSolution2を11ml、pronaseを4.8μlそれぞれ加えて60℃にて1時間振とうした後、この混合液を氷中に10分間放置した。次に、当該混合液に上記キットのSolution3を4ml加えて混合した後、これを氷中に5分間放置した。遠心分離(3,000rpm、4℃、15分間)し、上清を回収した。回収された上清に、当該上清1ml当たりRNaseを2μl加え、37℃で15分間放置した。この混合液に、2倍容量のエタノールを加えて混合することにより、出現した白い糸状の物質(ゲノムDNA)を回収した。回収されたゲノムDNAを70%エタノールで洗浄した後、風乾した。風乾されたゲノムDNAを10mM Tris−HCl/1mM EDTA(pH 8.0)(以下、TEと記す。)500μlに溶解した。
溶解されたゲノムDNA 1μgと、配列番号16で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号17で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)各1μl、蒸留水 29μl、TaKaRa LA Taq(宝酒造、カタログ番号RR002A)に添付されたbuffer 5μl、Mg2+溶液 5μl、dNTP mixture 5μl及びTaKaRa LA Taq(宝酒造、カタログ番号RR002A)0.5μlを混合した。得られた反応溶液を94℃、5分間保温した後、94℃、1分間次いで60℃、1分間さらに72℃、1分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。当該反応溶液を2%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約0.5kbのDNAを回収した。回収されたDNAをフェノール・クロロホルム処理した後、エタノール沈殿することによりDNAを回収した。回収されたDNAを超純水に溶解し、この溶解液にNheI 2.5μl及びHindIII 2.5μlを加え、37℃で3時間保温した後、当該溶解液を2%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約0.5kbのDNAを回収した。回収されたDNAをエタノール沈殿することにより再びDNAを回収した(以下、コラーゲンプロモーターDNAと記す。)。
【0072】
一方、ホタルルシフェラーゼをコードする塩基配列を有するベクターpGL3(プロメガ、カタログ番号E1751)をNheI及びHindIIIで消化した後、上記と同様にアガロースゲル電気泳動に供することにより、約5kbのDNA(以下、LucベクターDNAと記す。)を回収した。回収されたDNAをエタノール沈殿することにより再びDNAを回収した。回収されたDNAに蒸留水44μl、Alkaline Phosphatase(宝酒造、カタログ番号2120A)に添付されたBuffer5μl及びAlkaline Phosphatase(宝酒造、カタログ番号2120A)1μlを加えて、この混合液を65℃で30分間保温した。次に、当該混合液を2回フェノール・クロロホルム処理した(以下、該操作をBAP処理2と記す。)。
次いで、前記コラーゲンプロモーターDNA 約20ng及びLucベクターDNA 約20ngを混合した後、この混合液にDNA Ligation kit Ver2酵素溶液を同量添加して16℃で一昼夜保温した。当該混合液に大腸菌5Hdα(TOYOBO、カタログ番号DNA−903)を加えて氷中に30分間放置し、次いで42℃、45秒間保温した後、得られた大腸菌を50μg/ml アンピシリンナトリウム(ナカライ、カタログ番号027−39)を含むLBプレートに播種し、37℃、一昼夜放置した。出現したシングルコロニーを50μg/ml アンピシリンを含むLB培地2mlで37℃、12時間培養した。得られた培養液からAUTOMATIC DNA ISOLATION SYSTEM PI−50(KURABO)を用いてプラスミドDNAを調製した。調製されたプラスミドDNAの塩基配列をDNAシークエンサーで分析した結果、ヒトI型コラーゲンα2鎖遺伝子のプロモーター領域の−342〜+57(転写開始点を+1とする。)の塩基配列の下流に、ホタルルシフェラーゼをコードする塩基配列が接続されてなる塩基配列を保有していることが確認された(以下、COL−Lucと記す。)。
【0073】
(2)本蛋白質発現ベクターの調製
実施例1(1)で調製された全RNA溶液とTHERMOSCRIPT RT−PCR System(Gibco BRL、カタログ番号11146−024)とを用いて逆転写反応を行なった。即ち、まず全RNA溶液 1μg、Oligo(dT)20 1μl及びDEPC−Treated Waterを計10μlになるように加えて混合し、この混合液を65℃、5分間保温した後、直ちに氷冷した。次に当該混合液に、5xcDNA Synthesis Buffer 4μl、RNaseOUT 1μl、DTT 1μl、DEPC−TreatedWater 1μl、10mM dNTP Mix 2μl及びTHERMOSCRIPT RT 1μlを添加して55℃、1時間保温し、続いて、85℃、5分間保温した。さらに当該混合液にRNase H 1μlを加えて37℃、20分間保温した。得られた溶液 1μl、配列番号19で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)1μl、配列番号20で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(10pmol/μl)1μl、蒸留水29μl、TaKaRa LA Taq(宝酒造、カタログ番号RR002A)に含まれるbuffer 5μl、Mg2+溶液5μl、dNTP mixture 5μl及びLA Taq 0.5μlを混合した後、得られた混合液を94℃、5分間保温した。続いて、94℃、1分間次いで60℃、1分間さらに72℃、2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行い、さらに72℃、7分間保温した。保温後の混合液を4℃に保存した。保存された混合液を1%AgaroseLゲルを用いた電気泳動に供した。約1kbのDNAを含むゲル部分を切り出した後、これを65℃、5分間保温した。得られたゲル溶解液をエタノール沈殿することによりDNAを回収した。回収されたDNAに蒸留水 40μl、10xH Buffer 5μl、HindIII(宝酒造、カタログ番号1060A)2.5μl 、XbaI(宝酒造、カタログ番号1093A)2.5μlを添加して37℃、3時間保温した。この混合液を1%アガロースゲル電気泳動に供することにより、約1kbのDNAを回収した。回収されたDNAをエタノール沈殿し、得られた沈殿(DNA)をTE溶液20μlに溶解した。
一方、pRc/RSV(Invitrogen、カタログ番号28−0051)をHindIII及びXbaIで消化した後、この消化物にBAP処理し、さらにエタノール沈殿した。得られた沈殿(DNA)と、上記で得られた約1kbのDNAとをライゲーションした。このようにしてYB−1/RSVを構築した。
【0074】
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列からなる本蛋白質の発現ベクターの調製
YB−1/RSVを鋳型として、配列番号23で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号24で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて上記(2)と同様にPCRを行なうことにより、ヒトYB−1のN末端から1番目のアミノ酸から129番目のアミノ酸までのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA(以下、YBdel DNAと記す。)を調製した。YBdel DNAをHindIII及びXbaIで消化した後、上記(2)と同様にして、HindIII及びXbaIで消化したpRc/RSVのDNAとライゲートした。得られたプラスミドをYBdel/RSVと名付けた。
【0075】
(4)レポーター遺伝子の発現量測定
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞 1x106細胞を60mmディッシュに播種し、10%FBSを含むDulbecco’s−MEM(日水製薬、カタログ番号05919)培地(以下、該培地をD−MEM(+)と記す。)中で37℃、5%CO2雰囲気下において一晩培養した。次いで培地を、FBSを含まないDulbecco’s−MEM培地(以下、該培地をD−MEM(−)と記す。)に置換した。
D−MEM(−) 100μlに、YB−1/RSVまたはpRc/RSVのいずれか50ngと、COL−Luc 4μgとを加え、この混合液を室温で45分間放置した(溶液1)。また、D−MEM(−) 100μlにLipofectine(Gibco、カタログ番号18292−011)6μlを加え、この混合液を室温で40分間放置した(溶液2)。次に、溶液1と溶液2とを混合し、室温で10分間放置した後、この混合液にD−MEM(−)1.8mlを加え、混合した。当該混合液を前記正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞に添加した後、当該細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で6時間培養した。その後、ディッシュから培養上清を除いて細胞をD−MEM(−)で2回洗浄し、0.1%FBSを含むDulbecco’s−MEM培地[以下、D−MEM(0.1%)と記す。]4mlを添加し37℃、5%CO2雰囲気下で1時間培養した。当該細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子であるTGFβ(Pepro Tech、カタログ番号)5μg/ml水溶液を4μl添加(培地中のTGFβ濃度:5ng/ml)し、37℃、5%CO2雰囲気下でさらに40時間培養した。尚、TGFβ無添加試験区では、TGFβに代えて蒸留水4μlを用いた。培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、細胞溶解剤(東洋インキ、カタログ番号PD10)150μlを加えセルスクレイパー(Nalgen、カタログ番号179693)を用いて細胞を器壁から剥がした。得られた細胞懸濁液を回収した後、この細胞懸濁液を遠心分離(15,000rpm、4℃、5分間)し、上清を回収した。回収された上清各15μlを96ウエルプレートに移した後、MICROLUMAT LB96P(EG&G BERTHOLD社製)を用いて、Lucアッセイ溶液(20mM Tricine(pH7.8)、2.67mM MgSO4、0.1mM EDTA、33.3mM DTT、270μM Coenzyme A、530μMATP、470μM Luciferin)50μlを当該プレートに自動分注した後、各ウェル内の発光量を測定した(Delay:1.6秒、Meas.Interval:5秒)。
一方、回収された上清5μlを、予め96ウエルプレートに分注された5倍希釈Protein Assay溶液(Bio−Rad、カタログ番号500−0006)200μlに加えて振とう混合した後、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad、Benchmark)を用いて各ウェル内の595nmの吸光度を測定した。陰性対照区では、該上清に代えて細胞溶解剤5μlを用いた。上記の測定で得られた値を基にし、次式に従ってプロモーター活性を算出した。
プロモーター活性=[Luc活性(上清添加試験区)−Luc活性(細胞溶解剤添加試験区)]/[595nm吸光度(上清添加試験区)−595nm吸光度(細胞溶解剤添加試験区)]
結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
Figure 0004972847
プロモーター相対活性は、pRc/RSVが導入された細胞にコラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子(TGFβ)無添加試験区におけるプロモーター活性を1.0とした、各区におけるプロモーター活性を示す。
【0077】
(5)レポーター遺伝子の発現量を指標とした被験物質のI型コラーゲン遺伝子の転写調節能
被験物質としてサンショウエキス及びボダイジュエキスを使用した。
サンショウエキス[一丸ファルコス製、ファルコレックス(一丸ファルコス登録商標)サンショウ]2ml及びシナノキエキス[一丸ファルコス製、ファルコレックス(一丸ファルコス登録商標)ボダイジュ]2mlをそれぞれ凍結乾燥した後、得られた凍結乾燥物50mg当り1mlのジメチルスルフォキサイド(以下、DMSOと記す。)を加えて混合することにより、サンショウエキス試料及びボダイジュエキス試料を得た。
正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞 1x106を60mmディッシュに播種し、D−MEM(+)培地中で37℃、5%CO2雰囲気下において一晩培養した後、培地をD−MEM(−)培地に置換した。一方、D−MEM(−) 100μlに、実施例2(3)で調製された結合型レポーターベクターのDNA 2μg又は非結合型レポーターベクターのDNA 2μgのいずれかを加え、この混合液を室温で40分間放置した(溶液1)。また、D−MEM(−) 100μlにLipofectine(Gibco、カタログ番号18292−011)4.5μlを加え、この混合液を室温で40分間放置した(溶液2)。次に、溶液1と溶液2とを混合し、室温で10分間放置した後、この混合液にD−MEM(−)2mlを加え、混合した。当該混合液を前記正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞に添加した後、当該細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で6時間培養した。その後、ディッシュから培養上清を除いて細胞をD−MEM(−)で2回洗浄し、D−MEM(+)4mlを添加し37℃、5%CO2雰囲気下で1時間培養した。
上記のサンショウエキス試料又はボダイジュエキス試料をそれぞれ1mg凍結乾燥物/ml DMSOとなるよう希釈した。得られた希釈液4μlをそれぞれ、レポーターベクターが導入された上記の正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞に添加し(培地中の試料濃度:1μg凍結乾燥物/ml、培地中のDMSO濃度:0.1%)、37℃、5%CO2雰囲気下でさらに40時間培養した。陰性対照区では、試料に代えてDMSO4μl(培地中のDMSO濃度が0.1%となるように添加)を用いた。陽性対照区では、試料に代えてインターフェロン−γ(以下、IFN−γと記す。Roche、カタログ番号1040596)を培地中のIFN−γ濃度が100U/mlとなるように添加)を用いた。
培養された細胞をPBSで2回洗浄した後、実施例2(4)と同様にCAT活性を測定した。
結果を表7に示す。いずれの試料もレポーター遺伝子の発現量を低下させることが判明した。即ち、ボダイジュエキス及びサンショウエキスは、I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を充分に有することが確認できた。このようにI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜できることが確認できた。
【0078】
【表7】
Figure 0004972847
*CAT相対活性は、結合型レポーターベクターが導入された細胞に陰性対照添加試験区におけるCAT活性を1.0とした、各区のにおけるCAT活性を示す。
【0079】
実施例8 (コラーゲン蓄積抑制剤:I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質)
(1)サンショウから抽出精製された化合物
(1−1)サンショウからの化合物の抽出精製
サンショウ果皮3kgに100%エタノール25kgを加えて10日間浸漬した後、濾紙でろ過し、濾液を回収した。回収された濾液を減圧濃縮した後、この濃縮液から上清を分取し、そのうち2gをエタノールと水の1:1(v/v)混合液3mlと混合した。この混合液をシリカゲルTLCプレート(メルク社製、Art.5744,20x20cm,0.5mm厚)(20枚)に塗布し、クロロホルムとメタノールの混合液8:1(v/v)で展開した。Rf値0〜0.05の画分をかき取り、メタノールと水の9:1(v/v)混合液50mlで溶出した。溶出液を窒素気流下に蒸発乾固した後、残渣をメタノールと水の1:1(v/v)混合液1mlに溶解した。この溶解液をシリカゲルTLCプレート(10枚)に塗布し、クロロホルムとメタノールと水の30:10:1(v/v/v)混合液で展開した。Rf値0.7の画分をかき取り、メタノール30mlで溶出した。溶出液から溶媒を減圧下に蒸発させた後、残渣をメタノール1mlに溶解した。この溶解液をYMC−Pack ODS AMカラム(YMC社製、10mmI.D.x25cm)を用いた高速液体クロマトグラフィー(溶出液:メタノールと水の1:1(v/v)混合液)に供した。保持時間29分の画分を分取し、分取された溶出液から溶媒を窒素気流下に留去させることにより化合物A(0.5mg)を得た。
【0080】
(1−2)抽出精製された化合物の物性分析
化合物Aの物性を分析した。
【0081】
1H−NMRスペクトル
1H−NMR(CD3OD)δ:1.14(3H,d,J=6.3Hz),1.17(6H,s),2.29−2.40(4H,m),3.25(2H,s),3.65−3.68(1H,m),3.95(1H,dd,J=5.5Hz,6.2Hz),5.44(1H,dt,J=5.4Hz,10.4Hz),5.76(1H,dd,J=6.5Hz,15.3Hz),6.00−6.07(2H,m),6.58(1H,dd,J=10.9Hz,15.7Hz),6.79(1H,d,J=15.1Hz)
【0082】
質量分析スペクトル
FAB−MS:298[M+H]+,HRMS:298.2019[M+H]+
分子式;C1628NO4
【0083】
構造式
Figure 0004972847
【0084】
(1−3)化合物Aが有するI型コラーゲン遺伝子の転写調節能
実施例7(5)と同様にして、結合型レポーターベクターが導入された正常ヒト胎児皮膚線維芽細胞を用いて、化合物Aが有するI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を検定した。当該細胞に、培地中の化合物Aの最終濃度が8μMとなるように調製された化合物Aのメタノール溶液(被験物質)を接触させた。尚、陰性対照区では、化合物Aのメタノール溶液に代えて該溶液と同量のメタノールを用いた。その結果、化合物Aを接触させた区におけるCAT相対活性(陰性対照区のCAT活性を1.0としたときの試験区のCAT活性)は0.7であり、化合物AがI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有することが確認できた。つまり、化合物Aはコラーゲン蓄積抑制剤の有効成分となりえることが判明した。
【0085】
実施例9 (本蛋白質依存的コラーゲン抑制経路の正因子投与によるコラーゲン蓄積抑制方法:肝線維症モデルマウスを用いた被験物質のコラーゲン蓄積抑制能検定)
(1)試料調製
サンショウエキス[一丸ファルコス製、ファルコレックス(一丸ファルコス登録商標) サンショウ]の凍結乾燥物及びシナノキエキス[一丸ファルコス製、ファルコレックス(一丸ファルコス登録商標)ボダイジュ]の凍結乾燥物それぞれに、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)を150mg凍結乾燥物/mlとなるように加えて混合することにより、それぞれサンショウエキス試料、ボダイジュエキス試料を調製とした。またコラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子として、四塩化炭素(和光、カタログ番号030−15731)に等量のコーンオイル(ナカライテスク、カタログ番号256−06)を加えて均一になるまで混合した、四塩化炭素溶液を用いた。
【0086】
(2)試料投与
7週齢雄Balb/cマウス(日本チャールズリバー、体重25〜30g)に、上記(1)により調製されたサンショウエキス試料又はボダイジュエキス試料を0.5g凍結乾燥物/kg体重(100μl/30g体重)となるように経口ゾンデ(フチガミ器械、カタログ番号6202)を用いて毎日1回、4週間連続して経口投与した。サンショウエキス試料又はボダイジュエキス試料の投与開始1週間後から開始して1週間毎に4回、四塩化炭素溶液を3.5ml/kg体重となるように経口投与した(以下、該投与群を各々サンショウ群、ボダイジュ群と記す。)。また、これらエキス試料に代えて生理食塩水を100μl/30g体重となるよう、毎日1回、4週間連続経口投与し、かつ、四塩化炭素溶液の代えてコーンオイルのみを3.5ml/kg体重となるように経口投与した群(以下、該投与群を未処理群と記す。)と、エキス試料に代えて生理食塩水を100μl/30g体重となるよう、毎日1回、4週間連続経口投与し、かつ、四塩化炭素溶液を1週間ごとに計4回経口投与した群(以下、該投与群をコントロール群と記す。)とを設けた。尚、各群マウス2匹を用いた。サンショウエキス試料又はボダイジュエキス試料の最終投与から1週間後、マウスをエーテル麻酔した後に肝臓中葉を摘出した。摘出された肝臓中葉は直ちに液体窒素に浸せきされた。
【0087】
(3)コラーゲン蓄積抑制能検定
ホウ酸バッファーは、6.18gのホウ酸と22.5gのKClを蒸留水に溶かし、水酸化カリウムでpH8.7に調整した後に全量を100mlにすることにより調製された。クロラミンT溶液は、クロラミンT(ナカライテスク、カタログ番号080−05)1.41gを2−メトキシエタノール(ナカライテスク、カタログ番号153−10)25mlに溶解することにより調製された。p−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液は、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(ナカライテスク、カタログ番号128−16)12gをエタノール20mlに溶かし、この溶液に氷冷しながら濃硫酸2.74ml−エタノール20ml混合液をゆっくり加えて混合にすることにより調製された。ヒドロキシプロリン標準液は、ヒドロキシ−L−プロリン(ナカライテスク、カタログ番号188−17)3mgを蒸留水1mlに溶解(3mg/ml)にすることにより調製された。
上記(2)により得られた肝臓中葉約50mgをネジ付きガラス製試験管13x100mm(IWAKI、カタログ番号TST−SCR13−100)に取り、6N HCL 1mlを加えて110℃にて20時間加水分解した。得られた加水分解液に5M水酸化カリウム 1mlを加えた後、この溶液をフィルター(0.22μm、MILLIPORE、カタログ番号SLGP R25LS)でろ過し、ろ液を回収した。回収されたろ液1mlに蒸留水1mlを加えて、以下の試料溶液とした。またヒドロキシプロリン標準液0、1、2又は4μl(それぞれヒドロキシプロリン0、3、6又は12μgに相当する。)を蒸留水2mlに加え、これを標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液それぞれに、KCL 1.5g、10%アラニン水溶液(pH 8.7)0.25ml及びホウ酸バッファー0.5mlを加えて混合し、この混合液を室温で30分間放置した。混合液にクロラミンT溶液0.5mlを加えて、さらに25分間放置した。当該混合液に3.6Mチオ硫酸ナトリウム(ナカライテスク、カタログ番号320−06)1.5ml及びトルエン2.5mlを加えた後、キャップをして5分間撹拌した。混合液を1500rpm、5分間遠心分離した後、上層のトルエンを吸引除去した後、残りの下層を回収した。回収された溶液を100℃、30分間保温した。当該溶液を流水で冷却した後、再びトルエン2.5mlを加えて5分間撹拌した。混合液を1500rpm、5分間遠心分離した後、トルエン層を回収した。回収されたトルエン層1.25mlにp−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液 0.5mlを加えて室温で30分間放置した後、この混合液について560nmの吸光度を測定した。ヒドロキシプロリン標準液の値(ヒドロキシプロリン0μgをブランクとする。)から検量線を作成することにより次式を得た。
ヒドロキシプロリン量(μg)=17.416x[(試料の吸光度)−(ブランクの吸光度)]−0.1619 R2=0.9954
この式を用いて各試料溶液中のヒドロキシプロリン量を求めることにより肝臓中1g当たりに存在するヒドロキシプロリン量を算出した。結果を表8に示す。
その結果、サンショウエキス試料投与群及びボダイジュエキス試料投与群ではコラーゲン蓄積抑制効果が確認できた。つまり、サンショウエキス及びボダイジュエキスはコラーゲン蓄積抑制剤の有効成分となりえることが判明した。
【0088】
【表8】
Figure 0004972847
*ヒドロキシプロリン相対量は、未処理群のヒドロキシプロリン量を1.0として、各群のヒドロキシプロリン量を示す。
【0089】
【発明の効果】
本発明により、組織におけるI型コラーゲン遺伝子の過剰発現を抑制し、よってコラーゲンの産生亢進を抑え、細胞外マトリックスの過度の集積に伴う種々の疾患や異状の予防、治療に有用な方法や薬剤の開発が可能となる。
【0090】
[配列表フリーテキスト]
配列番号2
結合性配列を作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号3
結合性配列を作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号4
非結合性配列を作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
非結合性配列を作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号8
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号17
コラーゲンプロモーターDNAを増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号18
コラーゲンプロモーターDNAを増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号19
発現ベクターを作製するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号20
発現ベクターを作製するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号21
コラーゲンα1プローブを作製するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号22
コラーゲンα1プローブを作製するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号24
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号25
非結合性配列を作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
【0091】
【配列表】
Figure 0004972847
Figure 0004972847
Figure 0004972847
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Claims (20)

  1. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  2. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質をコードする核酸を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とするコラーゲン蓄積抑制剤。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  3. コラーゲン蓄積抑制のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質の使用(但し、ヒトに対する使用を除く)
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  4. コラーゲン蓄積抑制のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質をコードする核酸の使用(但し、ヒトに対する使用を除く)
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋
    白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  5. I型コラーゲン遺伝子の転写抑制のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質の使用(但し、ヒトに対する使用を除く)
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋
    白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  6. I型コラーゲン遺伝子の転写抑制のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質をコードする核酸の使用(但し、ヒトに対する使用を除く)
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  7. 非ヒト哺乳動物細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質をコードする外来遺伝子を、当該外来遺伝子が前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を有することを特徴とする非ヒト哺乳動物におけるコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  8. 非ヒト哺乳動物細胞に、TGF−βが前記細胞外に存在する条件下において、前記外来遺伝子を提供することを特徴とする請求項7記載のコラーゲン蓄積抑制方法。
  9. コラーゲン過剰蓄積に起因する疾患と診断されうる非ヒト哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とする非ヒト哺乳動物に対するコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  10. 線維症に羅患していると診断されうる非ヒト哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とする非ヒト哺乳動物に対するコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  11. 非ヒト哺乳動物細胞に、TGF−βが前記細胞外に存在する条件下において、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  12. I型コラーゲン遺伝子を有する非ヒト細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  13. I型コラーゲン遺伝子を有する非ヒト細胞に、TGF−βが前記細胞外に存在する条件下において、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を投与する工程を有することを特徴とするコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  14. I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法であって、
    (1)下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質を発現する細胞に、被験物質を接触させる第一工程、
    (2)前記第一工程後に、上記のDNA結合蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、
    (3)第二工程により測定された移行量又はその量と相関関係を有する指標値を、溶媒対照と比較して、前記物質が有するDNA結合蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値が、溶媒対照が有するDNA結合蛋白質の細胞核内への移行量又はその量と相関関係を有する指標値よりも大きければ、前記物質がI型コラーゲン遺伝子の転写抑制能を有すると評価し、小さければ、前記物質がI型コラーゲン遺伝子の転写抑制能を有さない評価する第三工程、及び
    (4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程
    を有することを特徴とする探索方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  15. 前記細胞が、前記DNA結合蛋白質の細胞核内への移行量と相関関係を有する指標値を提供可能とする外来性マーカー蛋白質を発現する細胞であることを特徴とする請求項14記載の探索方法。
  16. I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法であって、
    (1)I型コラーゲン遺伝子を有し、かつ、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質をコードする外来遺伝子を当該外来遺伝子が細胞で発現する位置に置かれるように提供されてなる細胞に、被験物質と陰性対照とを独立して接触させる第一工程
    (2)前記第一工程後に、コラーゲン蓄積量を独立してモニターする第二工程、
    (3)第二工程により独立してモニターされたコラーゲン蓄積量を陰性対照と比較して、前記物質を接触させてモニターされたコラーゲン蓄積量が、陰性対照を接触させてモニターされたコラーゲン蓄積量より大きければ、前記物質がI型コラーゲン遺伝子の転写抑制能を有さないと評価し、小さければ、前記物質がI型コラーゲン遺伝子の転写抑制能を有すると評価する第三工程
    (4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程、
    を有することを特徴とする探索方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  17. 第一工程が、TGF−βが前記細胞外に存在する条件下でなされることを特徴とする請求項16記載の探索方法。
  18. I型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質の探索方法であって、
    (1)(a)転写開始に必要な塩基配列を含む、I型コラーゲン遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子と、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質とを含有する細胞と、(b)転写開始に必要な塩基配列を含み、かつ下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質との結合能力を有さない塩基配列を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子と、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質とを含有する細胞とにそれぞれ、被験物質を独立して接触させる第一工程、
    (2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量を独立してモニターする第二工程、
    (3)第二工程により独立してモニターされた発現量を比較して、上記(a)のレポーター遺伝子の発現量が、上記(b)のレポーター遺伝子の発現量より大きければ、前記物質がI型コラーゲン蓄積抑制経路の負の調節因子と評価し、小さければ、前記物質がI型コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子と評価する第三工程、及び
    (4)前記第三工程で評価されたI型コラーゲン遺伝子の転写調節能に基づきI型コラーゲン遺伝子の転写調節能を有する物質を選抜する第四工程
    を有することを特徴とする探索方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
  19. 第一工程が、TGF−βが前記細胞外に存在する条件下においてなされることを特徴とする請求項18記載の探索方法。
  20. I型コラーゲン遺伝子を有する細胞に、コラーゲン蓄積促進経路の正の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するDNA結合蛋白質依存的コラーゲン蓄積抑制経路の正の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする非ヒト哺乳動物に対するコラーゲン蓄積抑制方法。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつI型コラーゲン遺伝子の転写を抑制する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、
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    白質のアミノ酸配列、
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