JPWO2002024227A1 - 腫瘍細胞増殖抑制剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は、核内受容体HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する物質、該物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤、および該腫瘍細胞増殖抑制剤を用いる腫瘍細胞増殖抑制方法に関する。
Description
技術分野
本発明は、核内受容体HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤に関する。
背景技術
脂溶性ホルモンや活性型ビタミンD、レチノイン酸などの生体内で生物活性を持つ低分子の多くは細胞内に存在する核内受容体と称するタンパク質を通して機能を発揮している。これらの核内受容体タンパク質の多くは、ステロイドやビタミンといったリガンドと複合体を形成することにより、リガンド特異的な標的遺伝子の転写を調節する転写因子として機能する〔Mol.Endocrinolgy.,10,1489(1996)〕。構造の類似性から核内受容体であると予想される数多くのタンパク質をコードする遺伝子が発見され報告されているが、その中には、生体内リガンドが不明なオーファン受容体が数多く含まれている。
その一部には、細胞内に過剰発現するだけで機能を発揮し、構成的に転写活性を有するものが存在する。構成的転写活性化活性を示す核内受容体の一つであるHNF4αタンパク質は、成人の肝、腎、小腸、および膵臓で発現している。マウスでのHNF4αタンパク質のホモ欠失体は胎生致死であり、さらに脂質代謝、糖代謝およびアミノ酸代謝に関与する遺伝子群の発現を調節することが知られている〔Mol.Cell.Biol.,13,1708(1992)、J.Biol.Chem.,268,16831(1993)〕。
一方、HNF4αタンパク質と大腸癌の発症および増殖との関連性は示唆されている(WO99/00116)が、HNF4αタンパク質の癌細胞増殖への作用を直接示す報告はなく、特に大腸癌組織でのHNF4αタンパク質の高産生および大腸癌細胞でのHNF4αタンパク質の産生量の変化に伴う細胞増殖能の変化については報告されていない。またHNF4αタンパク質に作用するリガンドとして長鎖脂肪酸アシルCoA(パルミトイル−CoA、ミリストイル−CoA、ドデカノイル−CoA、ステアロイル−CoA、オレオイル−CoA、リノレオイル−CoA、リオレノイル−CoA、エイコサペンタエノイル−CoA、ドコサヘキサエノイル−CoA)が報告されているが〔Nature,392,512(1998)〕、これらリガンドによる癌細胞の増殖への作用については解析が行われていない。
発明の開示
本発明者らは、正常組識では産生していないHNF4αタンパク質の産生量が大腸癌由来の細胞株および大腸癌組識で上昇しており、該タンパク質の産生レベルを抑制することにより腫瘍細胞の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(20)に関する。
(1) HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤。
(2) HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質が、HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質である、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(3) HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質が、HNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドである、上記(2)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(4) HNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドが、HNF4αタンパク質をコードするDNA(以下、HNF4αDNAと略す)のアンチセンスヌクレオチドである、上記(3)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(5) アンチセンスヌクレオチドが、5〜60塩基のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドである、上記(4)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(6) アンチセンスヌクレオチドが、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAである、上記(4)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(7) アンチセンスヌクレオチドが、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドである、上記(4)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(8) 配列番号7で表される塩基配列を有するDNA。
(9) 配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するDNA。
(10) 上記(8)または(9)のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
(11) 上記(10)の組換え体DNAを有効成分として含有する、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(12) HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質が、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質である、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(13) HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質が、転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質である、上記(12)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(14) 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質が、HNF4αタンパク質のリガンド結合部位の一部またはすべてを欠失したHNF4αタンパク質である、上記(13)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(15) 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質が、HNF4αタンパク質の転写促進部位またはDNA結合部位のみを有するHNF4αタンパク質である、上記(13)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(16) 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを有効成分として含有する、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(17) 組換え体DNAに用いられるベクターがウイルスベクターである、上記(11)または(16)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(18) HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質が、HNF4α受容体のアンタゴニストである、上記(12)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(19) 腫瘍細胞増殖抑制剤が、大腸癌細胞の増殖抑制剤である、上記(1)〜(7)、(11)〜(18)いずれか1つの腫瘍細胞増殖抑制剤。
(20) 上記(1)〜(7)、(11)〜(19)いずれか1つの腫瘍細胞増殖抑制剤を腫瘍細胞に作用させることを特徴とする腫瘍細胞増殖抑制方法。
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤は、HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質を有効成分として含有する。
本発明において、HNF4αタンパク質とは、HNF4α受容体を構成するタンパク質、該タンパク質のアイソフォームおよび該タンパク質の相同タンパク質をいう。
HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞としては、HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞であれば、いずれの腫瘍細胞でもよい。該腫瘍細胞の例としては、例えば、大腸癌細胞があげられる。
該腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質としては、例えば(1)HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質、(2)HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質があげられる。
HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質としては、例えば(a)転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質、(b)HNF4αタンパク質のアンタゴニストがあげられる。
以下に、これらの物質について説明する。
(1)HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質
HNF4αDNAとしては、例えば、ヒトHNF4α1、ヒトHNF4α2、ヒトHNF4α4、およびラット、マウス、アフリカツメガエル由来のHNF4αがあげられる。好ましくはHNF4α2〔Mol.Cell.Biol.,16,925(1996)、Gene,147,269(1994)〕があげられる。
HNF4αDNAは、Mol.Cell.Biol.,16,925(1996)、Gene,147,269(1994)等において開示された塩基配列よりHNF4αDNAに特異的なプライマーまたはプローブを作製し、該プライマーあるいはプローブを用いてヒトの肝臓、腎臓、膵臓あるいは小腸由来のcDNAライブラリー等をスクリーニングすることにより、容易にクローニングすることができる。
cDNAライブラリー作製法としては、〔Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング 第2版と略す)〕、Current Protocols in Molecular Biology,John Wilcy & Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばスーパースクリプト・プラスミド・システム・フォー・cDNA・シンセシス・アンド・プラスミド・クローニング〔SuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning;Gibco BRL社製〕やZAP−cDNA Synthesis Kit〔Stratagene社製〕を用いる方法などがあげられる。更に、市販のcDNAライブラリー、例えばLife Technologies社製のヒト白血球cDNAライブラリー等を利用することもできる。
cDNAライブラリーを作成するためのクローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、ZAP Express〔Stratagene社製、Strategies,5,58(1992)〕、pBluescript II SK(+)〔Nucleic Acids Rcsearch,17,9494(1989)〕、λzap II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning,A Practical Approach,1,49(1985)〕、λTriplEx(クロンテック社製)、λBlueMid(クロンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔Mol.Cell.Biol.,3,280(1983)〕、pUC18〔Gene,33,103(1985)〕等をあげることができる。
cDNAを組み込んだベクターを導入する大腸菌としては、大腸菌に属する微生物であればいずれも用いることができる。具体的には、Escherichia coli XL1−Blue MRF〔Stratagene社製、Strategies,5,81(1992)〕、Escherichia coli C600〔Genetics,39,440(1954)〕、Escheri chia coli Y1088〔Science,222,778(1983)〕、Escherichia coli Y1090〔Science,222,778(1983)〕、Escherichia coli NM522〔J.Mol.Biol.,166,1(1983)〕、Escherichia coli K802〔J.Mol.Biol.,16,118(1966)〕、Escherichia coli JM105〔Gene,38,275(1985)〕等を用いることができる。
クローニングの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング 第2版等に詳細に記載されている。具体的には、ハイブリダイゼーションを用いる方法、あるいはPCRを用いる方法等があげられる。
クローニングされたHNF4αDNAの塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463(1977)〕あるいは373A・DNAシークエンサー〔PERKIN ELMER社製〕等の塩基配列分析装置を用いて決定することができる。
該DNA断片、または全長cDNAを、発現ベクター、遺伝子導入ベクター等のベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクター、遺伝子導入ベクター等の組換え体DNAを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入する。宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞および植物細胞等を用いることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明のポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等をあげることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Kluyveromyces属、Trichosporon属、Schwanniomyces属、Pichia属、Candida属等に属する微生物、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius、Candidautilis等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods Enzymol.,194,182(1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)〕、酢酸リチウム法〔J.Bacteriology,153,163(1983)〕、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法等をあげることができる。
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107〔特開平3−22979、Cytotechnology,3,133(1990)〕、pAS3−3(特開平2−227075)、pCDM8〔Nature,329,840(1987)〕、pcDNAI/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogecn社製)、pAGE103〔J.Biochcm.,101,1307(1987)〕、pAGE210等をあげることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルスに(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)等をあげることができる。
動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology,3,133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕、Virology,52,456(1973)等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)、Bio/Technology,6,47(1988)等に記載された方法によって、HNF4αタンパク質を産生することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させることにより、昆虫細胞にHNF4αタンパク質を産生させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社製)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh5(Invitrogen社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遣伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等をあげることができる。
HNF4αタンパク質の発現方法は、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング 第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質産生等を行うことができる。
上記方法により得られる形質転換細胞は、HNF4αタンパク質を発現するので、本発明に用いられるHNF4αタンパク質の発現を阻害する物質のスクリーニングに用いることができる。
具体的には、被検物質を形質転換体に接触させ、HNF4αDNAの転写活性、HNF4αタンパク質の発現量を測定するなどして、HNF4αDNAの転写またはHNF4αタンパク質への翻訳を抑制する活性を有する被検物質を、HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質として選択することができる。
被験物質としては、合成化合物、天然に存在する蛋白質、人工的に合成された蛋白質、ペプチド、糖質、脂質、これらの修飾体、誘導体を、また哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒト等)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物を、更に、微生物の発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等をあげられる。
上記HNF4α発現阻害物質を形質転換体に接触させる方法としては、該形質転換体を培養液に添加する方法があげられる。
該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
該形質転換体を培養する培地として、該形質転換体が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該形質転換体が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターを導入した形質転換体を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)〕、EagleのMEM培地〔Science,122,501(1952)〕、ダルベッコ改変MEM培地〔Virology,8,396(1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(Pharmingen社製)、Sf−900 II SFM培地(Life Technologies社製)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社製)、Grace’s Insect Medium〔Nature,195,788(1962)〕等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
このようにして培養された形質転換体中でのHNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現量は、例えば、HNF4αDNAまたは該DNAより得られるオリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法(モレキュラー・クローニング 第2版)またはPCR法〔PCR Protocols,Academic Press(1990)〕、Real Time PCR法〔Junko Stevens,実験医学(増刊),15,46−51(1997)〕により、測定することができる。また、HNF4αタンパク質の発現量は、例えば、HNF4αタンパク質と特異的に結合する抗体を用い、ウエスタンブロッティング法(モレキュラー・クローニング 第2版)により、測定することができる。
上記スクリーニングで得られるHNF4αタンパク質の発現を阻害する物質としては、例えば、HNF4αDNAのアンチセンスDNA、アンチセンスRNA等のアンチセンスヌクレオチドがあげられる。
本発明のアンチセンスヌクレオチドとしては、HNF4αDNAの有する塩基配列(センス配列)に相補する塩基配列を有し、かつセンス配列の転写・翻訳を阻害するヌクレオチドであればいずれでもよい。
本発明のアンチセンスヌクレオチドは、HNF4αDNAの塩基配列に基づいて、アンチセンスプライマーを作製し、HNF4αDNAを鋳型にしてPCRを行うことによって得ることができる。また、化学合成によっても調製することができる。化学合成は、チオホスファイト法を利用した島津製作所社製のDNA合成機、フォスフォアミダイト法を利用したPERKIN ELMER社製のDNA合成機model392等を用いて行うことができる。本発明のアンチセンスヌクレオチドの例としては、例えば、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
また、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドも本発明のアンチセンスヌクレオチドに含まれる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチドは、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAをプローブとして、例えばコロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、ストリンジェントな条件下で、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いて、ハイブリダイゼーションを行うことにより得られる。
ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件とは、0.7〜1.0mol/lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄する条件があげられる。
ハイブリダイズ可能なDNAとして、例えばBLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63−98(1990)〕等を用いて計算したときに、配列番号7で表される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
本発明のアンチセンスヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドであってもよい。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、HNF4αDNAまたは該DNAの断片を用いて、モレキュラー・クローニング 第2版等に記載の方法により、あるいは該DNAの塩基配列情報よりDNA合成機により、HNF4αDNAの部分配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドとして、調製することができる。
該オリゴヌクレオチドとしては、例えばHNF4αDNAの有する塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するDNA、該DNAと相補する塩基配列を有するDNAをあげることができる。
更に、これらオリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)も本発明のオリゴヌクレオチドとして利用することができる。
該オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる〔Nucleic Acids Res.,27,1788(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,96,10010−10015(1999)〕。
該アンチセンスヌクレオチドを適当な発現ベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベクターを造成し、後述する方法により、該組換え体ベクターを腫瘍細胞に導入することにより、該腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。発現ベクターとしては例えば、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)等の発現ベクターがあげられる。該発現ベクターは、ウイルスベクターであってもよい。(2)HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質
HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質の選択方法としては、被験物質を上記のHNF4αタンパク質を発現する形質転換体と接触させ、HNF4αタンパク質の転写活性化活性を以下に示す方法で測定することにより、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質を選択する方法があげられる。
HNF4αタンパク質の転写活性化活性は以下の方法により測定できる。
ヒト子宮頚癌由来のHeLa細胞をデキストランをコートしたチャコール処理済み5%牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を含むフェノールレッド不含の最少必須培地(日本水産社製)で培養し、10cmペトリディッシュで50%コンフルエントになった時点で、0.5μgの上記で作成したHNF4αDNA発現ベクター、1μgのHNF4α応答配列−ルシフェラーゼレポータープラスミド、3μgのβ−ガラクトシダーゼ発現ベクターにDNA量が20μgになるようにpBluscribe+プラスミド(ストラタジーン社製)を混合したDNA混合物をリン酸カルシウム法にて導入する。また、コントロールとして、HNF4αDNA発現ベクターを含まないDNA混合物を導入する。
遺伝子導入後24時間培養し、培地交換を行ってさらに24時間培養した後、細胞をかきとり、常法によりβ−ガラクトシダーゼ活性を測定してDNAの細胞導入効率を確認する。導入効率を揃えるために細胞抽出液10単位を用いて、ルシフェリンおよびATPを反応させ、Micro Lumat LB96P(EG&GBERTHOLD社製)にてルシフェラーゼ酵素活性測定することにより、HNF4αタンパク質の転写活性化活性を測定することができる。
HNF4αタンパク貿による転写の活性化を阻害する物質としては、例えば転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質、HNF4α受容体のアンタゴニストがあげられる。
(a)転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質
転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質としては、例えばリガンド結合部位の一部またはすべてを欠失したHNF4αタンパク質、転写促進部位またはDNA結合部位のみを有するHNF4αタンパク質等、人為的に作製したHNF4αタンパク質の改変タンパク質、あるいは生体内に存在するHNF4αタンパク質が有する転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質のアイソフォーム等があげられる。
転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質の具体例としては、例えばラットHNF4αタンパク質が有するアミノ酸配列のうち、第355位以降が欠失したラットHNF4欠失変異タンパク質があげられる〔Mol.Cell.Biol.,15,2135(1995)〕。
核内受容体は、その構造上の特徴から、A領域〜F領域より構成されており、そのうちA/B領域は転写促進に、C領域はDNA結合に、そしてE領域はリガンドとの結合に関与することが判明している〔Cell.,83,841(1995)〕。上記ラットHNF4欠失変異タンパク質は、E/F領域の一部のアミノ酸が欠失したものである。
したがって、転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質としては、上記以外にも、C領域のみを保持するHNF4αタンパク質の欠失変異体、あるいはA/B領域のみを保持するHNF4αタンパク貿の欠失変異体も含まれる。
転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質は、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害するため、HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する。
該タンパク質は、HNF4αDNAの構造遺伝子部位に、例えば部位特異的突然変異誘発〔Methods in Enzymology,100,448(1983)〕やPCR法〔Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edt.,15章,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、PCR A Practical Approach,IRL Press 200−210(1991)〕等の手法により変異を導入することにより、作製することができる。また、生体内に存在するアイソフォームの場合は、上記の如くHNF4αDNA特異的なプライマーあるいはプローブを用い、ヒトの肝臓、あるいは腎臓等のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、クローニングすることができる。
該タンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベクターを造成し、後述する方法により、該組換え体ベクターを腫瘍細胞に導入することにより、該腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。発現ベクターとしては例えば、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)等の発現ベクターがあげられる。該発現ベクターとしては、ウイルスベクターを用いてもよい。
(b)HNF4α受容体のアンタゴニスト
HNF4α受容体のアンタゴニストを腫瘍細胞に作用させることによって、HNF4αタンパク質の過剰産生している腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。該アンタゴニストは、大腸癌由来の細胞であるHCT116(ATCC:CCL−247)およびSW480(ATCC:CCL−228)に被験物質を接触させ、該大腸癌細胞のHNF4αDNAの転写の活性化を阻害する物質をスクリーニングすることにより得ることができる。
被験試料としては、合成化合物、天然に存在する蛋白質、人工的に合成された蛋白質、ペプチド、糖質、脂質、これらの修飾体、誘導体を、また哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒト等)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物を、更に、微生物の発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等をあげることができる。
該転写活性化活性の測定は、上記(a)に記載の方法に従って行うことができる。
上記の方法により取得される、HNF4α受容体のアンタゴニストは、治療薬として単独で用いることが可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として用いることが望ましい。
該治療薬の投与方法としては、治療に際して最も効果的な方法を使用することが望ましく、経口投与または、口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与による方法を用いることができる。
該治療薬の剤形としては、軟膏剤、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、テープ剤等をあげることができる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等をあげることができる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造することができる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用い製造することができる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、例えば、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製することができる。
座剤は、例えば、カカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製することができる。
噴霧剤は、上記で取得されたアンタゴニストをそのまま噴霧剤として用いることが可能であるが、受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製した噴霧剤が好ましい。
担体として、具体的には乳糖、グリセリン等を例示することができる。
上記で取得されたアンタゴニスト、および担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤を調製することが可能である。
これらの非経口剤においても、経口剤で添加剤として例示した成分を添加することができる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
(3)ヌクレオチド以外のHNF4αタンパク質の転写活性化活性を阻害する物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤
上記(1)のスクリーニングで得られるHNF4αタンパク質の発現を阻害する物質がヌクレオチド以外の物質である場合には、該阻害物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤は、上記(2)(b)で得られるHNF4α受容体のアンタゴニストを有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤と同様な方法で得ることができる。
(4)HNF4αDNAのアンチセンスヌクレオチドまたは転写を活性化する機能を欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAを有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤
上記(1)で得られるアンチセンスヌクレオチドまたは上記(2)(a)で得られる転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAは、腫瘍細胞増殖抑制剤の有効成分として使用することができる。
本発明のアンチセンスヌクレオチドまたは転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAを有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤(以下、本発明の遺伝子治療剤と略す)は、該DNAを上記(1)に示した発現ベクターに組み込んで得られる組換え体DNAおよび遺伝子治療剤に用いる基剤を調合することにより製造することができる〔Nature Genet.,8,42(1994)〕。
本発明の遺伝子治療剤に用いる基剤としては、通常注射剤に用いる基剤であればどのようなものでもよく、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物等の塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコース等の糖溶液、グリシン、アルギニン等のアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液等があげられる。また常法に従い、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、ゴマ油、ダイズ油等の植物油またはレシチンもしくは非イオン界面活性剤等の界面活性剤等の助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製してもよい。これらの注射剤を、粉末化、凍結乾燥等の操作により、用時溶解用製剤として調製することもできる。本発明の遺伝子治療剤は、液体の場合はそのままで、個体の場合は必要により滅菌処理をした上記の基剤に遺伝子治療の直前に溶解して治療に使用することができる。
本発明の遺伝子治療剤を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法、あるいは非ウイルス性の遺伝子導入方法〔Gene Ther.,10,826(2000)、Gene Ther.,10,844(2000)〕等、いずれの方法も適用することができる。
ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス、またはRNAウイルスに、HNF4αDNAのアンチセンス鎖またはHNF4α変異タンパク質をコードするDNA等の本発明に用いられるDNAを組み込んで導入する方法があげられる。このうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が、特に好ましい。
非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等があげられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
本発明の遺伝子治療剤を実際に医薬として作用させるには、DNAを直接体内に導入するin vivo法、およびヒトからある種の細胞を取り出し体外でDNAを該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある〔Semin Oncol.,25,661(1998)、Int.J.Hematol.,71,203(2000)〕が、in vivo法が好ましく用いられる。
本発明の遺伝子治療剤をin vivo法により投与する場合は、疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、一般的には注射剤等とされ、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。また、リポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)の形態にした場合は、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤とすることができる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
(5)腫瘍細胞増殖抑制活性の測定方法
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤について、腫瘍細胞増殖抑制活性の測定は、以下の方法で行う。
まず、本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤を、上記(1)で得られるHNF4αタンパク質を産生している細胞または既存のHNF4αタンパク質を産生している細胞に作用させる。
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤を該細胞に作用させる方法としては、該腫瘍細胞増殖抑制剤が遺伝子治療剤である場合は該遺伝子治療剤を該細胞に導入する方法を、該腫瘍細胞増殖抑制剤が遺伝子治療剤以外である場合は、該腫瘍細胞増殖抑制剤を細胞に接触させる方法を、それぞれ用いることができる。
次に、該細胞を培地で培養し、生細胞数を測定する。生細胞数はミトコンドリア内に存在する脱水素酵素活性を指標にする。該脱水素酵素活性は、テトラゾリウム塩であるXTT(Sodium3’−[1−(phenylaminocarbonyl)−3,4−tetrazolium]−bis−(4−methoxy−6−nitro)benzene sulfonic acid hydrate)を代謝して水溶性のフォルマザン色素を形成する。この酵素反応は生細胞においてのみ行われることから、色素の吸光度を測定することで生細胞の定量を行うことができる。
作用させる細胞としては、例えば大腸癌由来の細胞であるHCT116(ATCC:CCL−247)およびSW480(ATCC:CCL−228)があげられる。細胞へのDNAの導入法としては、例えばリポフェクション法〔Science.,260,1510(1993)、J.Biol.Chem.,266,18162(1991)〕があげられる。
以上の測定方法により、作製した腫瘍細胞増殖抑制剤の中から、腫瘍細胞の細胞株に対してすぐれた増殖抑制作用を示すものを容易に選択することができる。
(6) 本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤を用いた腫瘍細胞増殖抑制方法
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤は、上記(2)または(4)に示す投与量および投与方法により投与することで、腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下の参考例および実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 種々の癌由来の培養細胞株でのHNF4αDNAの発現
(1)種々の癌由来の培養細胞株の培養とmRNAおよび単鎖DNAの調製
ヒト大腸癌由来のLS180細胞株、WiDr細胞株、SW480細胞株、ヒト肝癌由来のHepG2細胞株、ヒト腎癌由来のACHN細胞株、ヒト乳癌由来のT47D細胞株、ヒト胃癌由来のAZ521細胞株、MKN74細胞株、ヒト膵臓癌由来のBXPC−3細胞株、PANC−1細胞株、ヒト皮膚癌由来のSKMEL−26細胞株、ヒト前立腺癌由来のDU145細胞株、LNCaP細胞株およびヒト子宮頚癌由来のHeLaS3細胞株を10%牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を含む最少必須培地(日本水産社製)中で、直径100mmの培養皿にコンフルエントの状態近くになるまで培養した。同様に、ヒト大腸癌由来のHCT116細胞株は10%牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を含むマッコイ改変培地(ギブコ社製)中で培養した。
培養後、培地を除去し、リン酸緩衝液生理食塩水(以下PBSと略称する)で洗浄した。得られた細胞から、市販のRNイージープラントミニキット(キアゲン社製)を用いて全RNAを回収し、それぞれ約100μgの全RNAを得た。 市販の単鎖DNA合成キット(ギブコ社製)を用いて、以下の方法により、全RNAから単鎖DNAを取得した。まず、上記で得られた全RNAを5μg含む滅菌水11μlにオリゴdTプライマー1μlを加えて混合した後、70℃にて10分間加熱した。該混合液に該キットに添付の反応緩衝液を最終反応量20μlとなるように添加した。さらに逆転写酵素を加え、42℃にて1時間加温してmRNAのみ逆転写反応を行い、単鎖DNAを取得した。
(2)PCR法による発現の検出(第1図)
得られた単鎖DNAを鋳型に、PCR法によりHNF4αDNAの増幅を行った。なお、内部標準としてアクチン遺伝子を用い、該遺伝子の増幅も同時に行った。該PCRにおいて、HNF4αDNAのみを増幅することのできるオリゴヌクレオチドDNA(配列番号1および2)、およびアクチン遺伝子のみを増幅することのできるオリゴヌクレオチドDNA(配列番号3および4)を市販のDNA合成機(パーセプティブバイオシステム社製)により合成した。これらのオリゴヌクレオチドDNAをプライマーとして、HNF4αDNAおよびアクチン遺伝子断片の増幅を以下の方法で行った。
上記で得られた単鎖DNA溶液を50倍に希釈したもの2μlにプライマーを各4pmol加えて混合した。該混合液に最終反応量が20μlになるように、ExTaqキット(宝酒造)に添付の10×PCR反応緩衝液およびdNTP溶液を適量加え、94℃で5分間静置した。静置後、0.1μlのポリメラーゼを加え、94℃−1分間、52℃−1分間、72℃−1分30秒間を1サイクルとして、HNF4αDNAの増幅には28サイクル、アクチン遺伝子の増幅には18サイクル行った。
PCR反応産物を2%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色を行った。UVランプ下で確認したところ、ヒト大腸癌由来のLS180細胞株、WiDr細胞株、SW480細胞株、HCT116細胞株において、HNF4αDNAの増幅DNA断片が確認された。該遺伝子の発現量は、既に発現が報告されているヒト肝癌由来のHepG2細胞株と同程度であった。その他の癌細胞株では該遺伝子の発現が検出されないことから、HNF4αタンパク質をコードするRNAの発現は大腸由来の癌細胞に特異的であることが明らかとなった。
実施例2 HNF4αDNAのアンチセンス鎖の発現による大腸癌細胞株の増殖抑制
(1)HNF4αDNAのアンチセンス鎖発現ベクターの造成(第2図)
上記実施例1(2)の操作でHCT116細胞株より得られた単鎖DNAを鋳型として以下の方法で、HNF4αDNAの翻訳可能領域部をPCR法にて増幅して、クローニングを行った。
配列番号5および6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドDNAをDNA合成機(パーセプティブバイオシステム社製)により合成した。これらのオリゴヌクレオチドDNA各10pmolをHCT116細胞株より得られた単鎖DNA5μlに加えて混合した。得られた混合液に、最終反応量50μlになるようにLA−PCRキット(宝酒造社製)添付の10×PCR反応緩衝液およびdNTP溶液を添加し、94℃で5分間静置した。さらにポリメラーゼを加え、94℃−1分間、50℃−1分間、72℃−3分間を1サイクルとして、25サイクル繰り返した。
該反応により増幅したHNF4αDNA断片を、アガロース電気泳動法により分離し、精製した。得られたHNF4αDNA断片はプライマー末端に制限酵素HindIII、BamHI(宝酒造)切断部位を有している。該DNA断片をこれらの制限酵素で処理し粘着末端とした。一方、市販の培養細胞発現用プラスミドpcDNA3.1(+)(インビトロジェン社製)をHindIII、BamHIで切断した。該切断プラスミド断片と該DNA断片とを市販のライゲーションキット(宝酒造)を用いて連結し、HNF4αDNAのアンチセンス鎖(配列番号7)を発現可能なプラスミドを作成した。
(2)大腸癌細胞株の増殖抑制活性の検出(第3図)
上記で作成したプラスミドを大腸癌由来の細胞株HCT116およびSW480に導入した。得られた細胞を、上記実施例1(1)で示した培地で、6穴プレート(住友ベークライト)にて培養した。1穴あたり5×104個の細胞になる様に播種し、一晩培養した。上記(1)で作成したアンチセンス鎖発現プラスミドおよびpcDNA3.1プラスミドの混合比率を、それぞれ5:0、4:1、3:2、2:3、1:4、0:5となるように混合した後、リポフェクション法により該DNA混合物を3μgずつ培養細胞に導入した。該DNA混合物を導入した細胞を3日間培養した後、以下の方法で生細胞数を測定した。
細胞増殖測定キット(XTT)添付のXTT標識試薬と電子カップリング試薬を50:1の比率で混合した後、該混合液を培地の半分量、培養皿に添加し適当な3時間培養した。呈色した培養液の吸光度を480nmの波長にて測定した。その結果、アンチセンス鎖発現プラスミド量に比例して細胞増殖が抑制されていることを確認した(第3図A)。また、アンチセンス鎖の発現が、各細胞株でのHNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現に及ぼす影響を調べた。
pcDNA3.1プラスミドもしくはアンチセンス鎖発現プラスミド3μgをHCT116およびSW480細胞に導入し、24時間後細胞よりRNAを回収し上記で示したPCR法により検出したところ、HNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現量はアンチセンス鎖を発現した細胞で低下していることを確認した(第3図B)。
産業上の利用可能性
本発明により、核内受容体HNF4αタンパク質またはその変異体をコードするDNAを有効成分として含有する新規な抗腫瘍遺伝子治療剤が提供される。また、HNF4αDNAの発現抑制剤もしくはHNF4αタンパク質機能阻害剤を有効成分とする抗腫瘍剤が提供される。とりわけ本発明の抗腫瘍遺伝子治療剤および抗腫瘍剤は大腸癌由来の細胞において効果を発揮するものであるため、HNF4αタンパク質を過剰産生した大腸癌に対する治療剤として有用である。
配列表フリーテキスト
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図 1図は、各種ヒト癌細胞株でのHNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現パターンを示す図である。大腸癌細胞株4種(LS180、WiDr、SW480、HCT116)および肝癌細胞株HepG2において、HNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現することが示されている。
第2図 2図は、HNF4αDNAのアンチセンスRNAを発現させるためのプラスミド構築を示す図である。ベクターは、pcDNA3.1(+)を用いた。
第3図 3図Aは、HNF4αDNAのアンチセンス鎖の発現による大腸癌細胞株HCT116およびSW480の増殖抑制を示す図である。該アンチセンス鎖の発現量に依存して細胞増殖が抑制されることが示されている。第3図Bは、HNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現量が該アンチセンスRNAの発現によって減少することを示す図である。
本発明は、核内受容体HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤に関する。
背景技術
脂溶性ホルモンや活性型ビタミンD、レチノイン酸などの生体内で生物活性を持つ低分子の多くは細胞内に存在する核内受容体と称するタンパク質を通して機能を発揮している。これらの核内受容体タンパク質の多くは、ステロイドやビタミンといったリガンドと複合体を形成することにより、リガンド特異的な標的遺伝子の転写を調節する転写因子として機能する〔Mol.Endocrinolgy.,10,1489(1996)〕。構造の類似性から核内受容体であると予想される数多くのタンパク質をコードする遺伝子が発見され報告されているが、その中には、生体内リガンドが不明なオーファン受容体が数多く含まれている。
その一部には、細胞内に過剰発現するだけで機能を発揮し、構成的に転写活性を有するものが存在する。構成的転写活性化活性を示す核内受容体の一つであるHNF4αタンパク質は、成人の肝、腎、小腸、および膵臓で発現している。マウスでのHNF4αタンパク質のホモ欠失体は胎生致死であり、さらに脂質代謝、糖代謝およびアミノ酸代謝に関与する遺伝子群の発現を調節することが知られている〔Mol.Cell.Biol.,13,1708(1992)、J.Biol.Chem.,268,16831(1993)〕。
一方、HNF4αタンパク質と大腸癌の発症および増殖との関連性は示唆されている(WO99/00116)が、HNF4αタンパク質の癌細胞増殖への作用を直接示す報告はなく、特に大腸癌組織でのHNF4αタンパク質の高産生および大腸癌細胞でのHNF4αタンパク質の産生量の変化に伴う細胞増殖能の変化については報告されていない。またHNF4αタンパク質に作用するリガンドとして長鎖脂肪酸アシルCoA(パルミトイル−CoA、ミリストイル−CoA、ドデカノイル−CoA、ステアロイル−CoA、オレオイル−CoA、リノレオイル−CoA、リオレノイル−CoA、エイコサペンタエノイル−CoA、ドコサヘキサエノイル−CoA)が報告されているが〔Nature,392,512(1998)〕、これらリガンドによる癌細胞の増殖への作用については解析が行われていない。
発明の開示
本発明者らは、正常組識では産生していないHNF4αタンパク質の産生量が大腸癌由来の細胞株および大腸癌組識で上昇しており、該タンパク質の産生レベルを抑制することにより腫瘍細胞の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(20)に関する。
(1) HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤。
(2) HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質が、HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質である、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(3) HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質が、HNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドである、上記(2)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(4) HNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドが、HNF4αタンパク質をコードするDNA(以下、HNF4αDNAと略す)のアンチセンスヌクレオチドである、上記(3)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(5) アンチセンスヌクレオチドが、5〜60塩基のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドである、上記(4)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(6) アンチセンスヌクレオチドが、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAである、上記(4)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(7) アンチセンスヌクレオチドが、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドである、上記(4)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(8) 配列番号7で表される塩基配列を有するDNA。
(9) 配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するDNA。
(10) 上記(8)または(9)のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
(11) 上記(10)の組換え体DNAを有効成分として含有する、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(12) HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質が、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質である、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(13) HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質が、転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質である、上記(12)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(14) 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質が、HNF4αタンパク質のリガンド結合部位の一部またはすべてを欠失したHNF4αタンパク質である、上記(13)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(15) 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質が、HNF4αタンパク質の転写促進部位またはDNA結合部位のみを有するHNF4αタンパク質である、上記(13)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(16) 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを有効成分として含有する、上記(1)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(17) 組換え体DNAに用いられるベクターがウイルスベクターである、上記(11)または(16)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(18) HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質が、HNF4α受容体のアンタゴニストである、上記(12)の腫瘍細胞増殖抑制剤。
(19) 腫瘍細胞増殖抑制剤が、大腸癌細胞の増殖抑制剤である、上記(1)〜(7)、(11)〜(18)いずれか1つの腫瘍細胞増殖抑制剤。
(20) 上記(1)〜(7)、(11)〜(19)いずれか1つの腫瘍細胞増殖抑制剤を腫瘍細胞に作用させることを特徴とする腫瘍細胞増殖抑制方法。
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤は、HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質を有効成分として含有する。
本発明において、HNF4αタンパク質とは、HNF4α受容体を構成するタンパク質、該タンパク質のアイソフォームおよび該タンパク質の相同タンパク質をいう。
HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞としては、HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞であれば、いずれの腫瘍細胞でもよい。該腫瘍細胞の例としては、例えば、大腸癌細胞があげられる。
該腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質としては、例えば(1)HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質、(2)HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質があげられる。
HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質としては、例えば(a)転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質、(b)HNF4αタンパク質のアンタゴニストがあげられる。
以下に、これらの物質について説明する。
(1)HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質
HNF4αDNAとしては、例えば、ヒトHNF4α1、ヒトHNF4α2、ヒトHNF4α4、およびラット、マウス、アフリカツメガエル由来のHNF4αがあげられる。好ましくはHNF4α2〔Mol.Cell.Biol.,16,925(1996)、Gene,147,269(1994)〕があげられる。
HNF4αDNAは、Mol.Cell.Biol.,16,925(1996)、Gene,147,269(1994)等において開示された塩基配列よりHNF4αDNAに特異的なプライマーまたはプローブを作製し、該プライマーあるいはプローブを用いてヒトの肝臓、腎臓、膵臓あるいは小腸由来のcDNAライブラリー等をスクリーニングすることにより、容易にクローニングすることができる。
cDNAライブラリー作製法としては、〔Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング 第2版と略す)〕、Current Protocols in Molecular Biology,John Wilcy & Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばスーパースクリプト・プラスミド・システム・フォー・cDNA・シンセシス・アンド・プラスミド・クローニング〔SuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning;Gibco BRL社製〕やZAP−cDNA Synthesis Kit〔Stratagene社製〕を用いる方法などがあげられる。更に、市販のcDNAライブラリー、例えばLife Technologies社製のヒト白血球cDNAライブラリー等を利用することもできる。
cDNAライブラリーを作成するためのクローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、ZAP Express〔Stratagene社製、Strategies,5,58(1992)〕、pBluescript II SK(+)〔Nucleic Acids Rcsearch,17,9494(1989)〕、λzap II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning,A Practical Approach,1,49(1985)〕、λTriplEx(クロンテック社製)、λBlueMid(クロンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔Mol.Cell.Biol.,3,280(1983)〕、pUC18〔Gene,33,103(1985)〕等をあげることができる。
cDNAを組み込んだベクターを導入する大腸菌としては、大腸菌に属する微生物であればいずれも用いることができる。具体的には、Escherichia coli XL1−Blue MRF〔Stratagene社製、Strategies,5,81(1992)〕、Escherichia coli C600〔Genetics,39,440(1954)〕、Escheri chia coli Y1088〔Science,222,778(1983)〕、Escherichia coli Y1090〔Science,222,778(1983)〕、Escherichia coli NM522〔J.Mol.Biol.,166,1(1983)〕、Escherichia coli K802〔J.Mol.Biol.,16,118(1966)〕、Escherichia coli JM105〔Gene,38,275(1985)〕等を用いることができる。
クローニングの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング 第2版等に詳細に記載されている。具体的には、ハイブリダイゼーションを用いる方法、あるいはPCRを用いる方法等があげられる。
クローニングされたHNF4αDNAの塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463(1977)〕あるいは373A・DNAシークエンサー〔PERKIN ELMER社製〕等の塩基配列分析装置を用いて決定することができる。
該DNA断片、または全長cDNAを、発現ベクター、遺伝子導入ベクター等のベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクター、遺伝子導入ベクター等の組換え体DNAを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入する。宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞および植物細胞等を用いることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明のポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等をあげることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Kluyveromyces属、Trichosporon属、Schwanniomyces属、Pichia属、Candida属等に属する微生物、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius、Candidautilis等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods Enzymol.,194,182(1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)〕、酢酸リチウム法〔J.Bacteriology,153,163(1983)〕、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法等をあげることができる。
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107〔特開平3−22979、Cytotechnology,3,133(1990)〕、pAS3−3(特開平2−227075)、pCDM8〔Nature,329,840(1987)〕、pcDNAI/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogecn社製)、pAGE103〔J.Biochcm.,101,1307(1987)〕、pAGE210等をあげることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルスに(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)等をあげることができる。
動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology,3,133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕、Virology,52,456(1973)等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)、Bio/Technology,6,47(1988)等に記載された方法によって、HNF4αタンパク質を産生することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させることにより、昆虫細胞にHNF4αタンパク質を産生させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社製)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh5(Invitrogen社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遣伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等をあげることができる。
HNF4αタンパク質の発現方法は、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング 第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質産生等を行うことができる。
上記方法により得られる形質転換細胞は、HNF4αタンパク質を発現するので、本発明に用いられるHNF4αタンパク質の発現を阻害する物質のスクリーニングに用いることができる。
具体的には、被検物質を形質転換体に接触させ、HNF4αDNAの転写活性、HNF4αタンパク質の発現量を測定するなどして、HNF4αDNAの転写またはHNF4αタンパク質への翻訳を抑制する活性を有する被検物質を、HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質として選択することができる。
被験物質としては、合成化合物、天然に存在する蛋白質、人工的に合成された蛋白質、ペプチド、糖質、脂質、これらの修飾体、誘導体を、また哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒト等)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物を、更に、微生物の発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等をあげられる。
上記HNF4α発現阻害物質を形質転換体に接触させる方法としては、該形質転換体を培養液に添加する方法があげられる。
該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
該形質転換体を培養する培地として、該形質転換体が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該形質転換体が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターを導入した形質転換体を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)〕、EagleのMEM培地〔Science,122,501(1952)〕、ダルベッコ改変MEM培地〔Virology,8,396(1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(Pharmingen社製)、Sf−900 II SFM培地(Life Technologies社製)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社製)、Grace’s Insect Medium〔Nature,195,788(1962)〕等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
このようにして培養された形質転換体中でのHNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現量は、例えば、HNF4αDNAまたは該DNAより得られるオリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法(モレキュラー・クローニング 第2版)またはPCR法〔PCR Protocols,Academic Press(1990)〕、Real Time PCR法〔Junko Stevens,実験医学(増刊),15,46−51(1997)〕により、測定することができる。また、HNF4αタンパク質の発現量は、例えば、HNF4αタンパク質と特異的に結合する抗体を用い、ウエスタンブロッティング法(モレキュラー・クローニング 第2版)により、測定することができる。
上記スクリーニングで得られるHNF4αタンパク質の発現を阻害する物質としては、例えば、HNF4αDNAのアンチセンスDNA、アンチセンスRNA等のアンチセンスヌクレオチドがあげられる。
本発明のアンチセンスヌクレオチドとしては、HNF4αDNAの有する塩基配列(センス配列)に相補する塩基配列を有し、かつセンス配列の転写・翻訳を阻害するヌクレオチドであればいずれでもよい。
本発明のアンチセンスヌクレオチドは、HNF4αDNAの塩基配列に基づいて、アンチセンスプライマーを作製し、HNF4αDNAを鋳型にしてPCRを行うことによって得ることができる。また、化学合成によっても調製することができる。化学合成は、チオホスファイト法を利用した島津製作所社製のDNA合成機、フォスフォアミダイト法を利用したPERKIN ELMER社製のDNA合成機model392等を用いて行うことができる。本発明のアンチセンスヌクレオチドの例としては、例えば、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
また、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドも本発明のアンチセンスヌクレオチドに含まれる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチドは、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAをプローブとして、例えばコロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、ストリンジェントな条件下で、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いて、ハイブリダイゼーションを行うことにより得られる。
ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件とは、0.7〜1.0mol/lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄する条件があげられる。
ハイブリダイズ可能なDNAとして、例えばBLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63−98(1990)〕等を用いて計算したときに、配列番号7で表される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
本発明のアンチセンスヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドであってもよい。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、HNF4αDNAまたは該DNAの断片を用いて、モレキュラー・クローニング 第2版等に記載の方法により、あるいは該DNAの塩基配列情報よりDNA合成機により、HNF4αDNAの部分配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドとして、調製することができる。
該オリゴヌクレオチドとしては、例えばHNF4αDNAの有する塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するDNA、該DNAと相補する塩基配列を有するDNAをあげることができる。
更に、これらオリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)も本発明のオリゴヌクレオチドとして利用することができる。
該オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる〔Nucleic Acids Res.,27,1788(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,96,10010−10015(1999)〕。
該アンチセンスヌクレオチドを適当な発現ベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベクターを造成し、後述する方法により、該組換え体ベクターを腫瘍細胞に導入することにより、該腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。発現ベクターとしては例えば、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)等の発現ベクターがあげられる。該発現ベクターは、ウイルスベクターであってもよい。(2)HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質
HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質の選択方法としては、被験物質を上記のHNF4αタンパク質を発現する形質転換体と接触させ、HNF4αタンパク質の転写活性化活性を以下に示す方法で測定することにより、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質を選択する方法があげられる。
HNF4αタンパク質の転写活性化活性は以下の方法により測定できる。
ヒト子宮頚癌由来のHeLa細胞をデキストランをコートしたチャコール処理済み5%牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を含むフェノールレッド不含の最少必須培地(日本水産社製)で培養し、10cmペトリディッシュで50%コンフルエントになった時点で、0.5μgの上記で作成したHNF4αDNA発現ベクター、1μgのHNF4α応答配列−ルシフェラーゼレポータープラスミド、3μgのβ−ガラクトシダーゼ発現ベクターにDNA量が20μgになるようにpBluscribe+プラスミド(ストラタジーン社製)を混合したDNA混合物をリン酸カルシウム法にて導入する。また、コントロールとして、HNF4αDNA発現ベクターを含まないDNA混合物を導入する。
遺伝子導入後24時間培養し、培地交換を行ってさらに24時間培養した後、細胞をかきとり、常法によりβ−ガラクトシダーゼ活性を測定してDNAの細胞導入効率を確認する。導入効率を揃えるために細胞抽出液10単位を用いて、ルシフェリンおよびATPを反応させ、Micro Lumat LB96P(EG&GBERTHOLD社製)にてルシフェラーゼ酵素活性測定することにより、HNF4αタンパク質の転写活性化活性を測定することができる。
HNF4αタンパク貿による転写の活性化を阻害する物質としては、例えば転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質、HNF4α受容体のアンタゴニストがあげられる。
(a)転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質
転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質としては、例えばリガンド結合部位の一部またはすべてを欠失したHNF4αタンパク質、転写促進部位またはDNA結合部位のみを有するHNF4αタンパク質等、人為的に作製したHNF4αタンパク質の改変タンパク質、あるいは生体内に存在するHNF4αタンパク質が有する転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質のアイソフォーム等があげられる。
転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質の具体例としては、例えばラットHNF4αタンパク質が有するアミノ酸配列のうち、第355位以降が欠失したラットHNF4欠失変異タンパク質があげられる〔Mol.Cell.Biol.,15,2135(1995)〕。
核内受容体は、その構造上の特徴から、A領域〜F領域より構成されており、そのうちA/B領域は転写促進に、C領域はDNA結合に、そしてE領域はリガンドとの結合に関与することが判明している〔Cell.,83,841(1995)〕。上記ラットHNF4欠失変異タンパク質は、E/F領域の一部のアミノ酸が欠失したものである。
したがって、転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質としては、上記以外にも、C領域のみを保持するHNF4αタンパク質の欠失変異体、あるいはA/B領域のみを保持するHNF4αタンパク貿の欠失変異体も含まれる。
転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質は、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害するため、HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する。
該タンパク質は、HNF4αDNAの構造遺伝子部位に、例えば部位特異的突然変異誘発〔Methods in Enzymology,100,448(1983)〕やPCR法〔Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edt.,15章,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、PCR A Practical Approach,IRL Press 200−210(1991)〕等の手法により変異を導入することにより、作製することができる。また、生体内に存在するアイソフォームの場合は、上記の如くHNF4αDNA特異的なプライマーあるいはプローブを用い、ヒトの肝臓、あるいは腎臓等のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、クローニングすることができる。
該タンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベクターを造成し、後述する方法により、該組換え体ベクターを腫瘍細胞に導入することにより、該腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。発現ベクターとしては例えば、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)等の発現ベクターがあげられる。該発現ベクターとしては、ウイルスベクターを用いてもよい。
(b)HNF4α受容体のアンタゴニスト
HNF4α受容体のアンタゴニストを腫瘍細胞に作用させることによって、HNF4αタンパク質の過剰産生している腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。該アンタゴニストは、大腸癌由来の細胞であるHCT116(ATCC:CCL−247)およびSW480(ATCC:CCL−228)に被験物質を接触させ、該大腸癌細胞のHNF4αDNAの転写の活性化を阻害する物質をスクリーニングすることにより得ることができる。
被験試料としては、合成化合物、天然に存在する蛋白質、人工的に合成された蛋白質、ペプチド、糖質、脂質、これらの修飾体、誘導体を、また哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒト等)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物を、更に、微生物の発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等をあげることができる。
該転写活性化活性の測定は、上記(a)に記載の方法に従って行うことができる。
上記の方法により取得される、HNF4α受容体のアンタゴニストは、治療薬として単独で用いることが可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として用いることが望ましい。
該治療薬の投与方法としては、治療に際して最も効果的な方法を使用することが望ましく、経口投与または、口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与による方法を用いることができる。
該治療薬の剤形としては、軟膏剤、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、テープ剤等をあげることができる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等をあげることができる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造することができる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用い製造することができる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、例えば、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製することができる。
座剤は、例えば、カカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製することができる。
噴霧剤は、上記で取得されたアンタゴニストをそのまま噴霧剤として用いることが可能であるが、受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製した噴霧剤が好ましい。
担体として、具体的には乳糖、グリセリン等を例示することができる。
上記で取得されたアンタゴニスト、および担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤を調製することが可能である。
これらの非経口剤においても、経口剤で添加剤として例示した成分を添加することができる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
(3)ヌクレオチド以外のHNF4αタンパク質の転写活性化活性を阻害する物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤
上記(1)のスクリーニングで得られるHNF4αタンパク質の発現を阻害する物質がヌクレオチド以外の物質である場合には、該阻害物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤は、上記(2)(b)で得られるHNF4α受容体のアンタゴニストを有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤と同様な方法で得ることができる。
(4)HNF4αDNAのアンチセンスヌクレオチドまたは転写を活性化する機能を欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAを有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤
上記(1)で得られるアンチセンスヌクレオチドまたは上記(2)(a)で得られる転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAは、腫瘍細胞増殖抑制剤の有効成分として使用することができる。
本発明のアンチセンスヌクレオチドまたは転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAを有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤(以下、本発明の遺伝子治療剤と略す)は、該DNAを上記(1)に示した発現ベクターに組み込んで得られる組換え体DNAおよび遺伝子治療剤に用いる基剤を調合することにより製造することができる〔Nature Genet.,8,42(1994)〕。
本発明の遺伝子治療剤に用いる基剤としては、通常注射剤に用いる基剤であればどのようなものでもよく、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物等の塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコース等の糖溶液、グリシン、アルギニン等のアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液等があげられる。また常法に従い、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、ゴマ油、ダイズ油等の植物油またはレシチンもしくは非イオン界面活性剤等の界面活性剤等の助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製してもよい。これらの注射剤を、粉末化、凍結乾燥等の操作により、用時溶解用製剤として調製することもできる。本発明の遺伝子治療剤は、液体の場合はそのままで、個体の場合は必要により滅菌処理をした上記の基剤に遺伝子治療の直前に溶解して治療に使用することができる。
本発明の遺伝子治療剤を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法、あるいは非ウイルス性の遺伝子導入方法〔Gene Ther.,10,826(2000)、Gene Ther.,10,844(2000)〕等、いずれの方法も適用することができる。
ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス、またはRNAウイルスに、HNF4αDNAのアンチセンス鎖またはHNF4α変異タンパク質をコードするDNA等の本発明に用いられるDNAを組み込んで導入する方法があげられる。このうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が、特に好ましい。
非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等があげられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
本発明の遺伝子治療剤を実際に医薬として作用させるには、DNAを直接体内に導入するin vivo法、およびヒトからある種の細胞を取り出し体外でDNAを該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある〔Semin Oncol.,25,661(1998)、Int.J.Hematol.,71,203(2000)〕が、in vivo法が好ましく用いられる。
本発明の遺伝子治療剤をin vivo法により投与する場合は、疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、一般的には注射剤等とされ、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。また、リポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)の形態にした場合は、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤とすることができる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
(5)腫瘍細胞増殖抑制活性の測定方法
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤について、腫瘍細胞増殖抑制活性の測定は、以下の方法で行う。
まず、本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤を、上記(1)で得られるHNF4αタンパク質を産生している細胞または既存のHNF4αタンパク質を産生している細胞に作用させる。
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤を該細胞に作用させる方法としては、該腫瘍細胞増殖抑制剤が遺伝子治療剤である場合は該遺伝子治療剤を該細胞に導入する方法を、該腫瘍細胞増殖抑制剤が遺伝子治療剤以外である場合は、該腫瘍細胞増殖抑制剤を細胞に接触させる方法を、それぞれ用いることができる。
次に、該細胞を培地で培養し、生細胞数を測定する。生細胞数はミトコンドリア内に存在する脱水素酵素活性を指標にする。該脱水素酵素活性は、テトラゾリウム塩であるXTT(Sodium3’−[1−(phenylaminocarbonyl)−3,4−tetrazolium]−bis−(4−methoxy−6−nitro)benzene sulfonic acid hydrate)を代謝して水溶性のフォルマザン色素を形成する。この酵素反応は生細胞においてのみ行われることから、色素の吸光度を測定することで生細胞の定量を行うことができる。
作用させる細胞としては、例えば大腸癌由来の細胞であるHCT116(ATCC:CCL−247)およびSW480(ATCC:CCL−228)があげられる。細胞へのDNAの導入法としては、例えばリポフェクション法〔Science.,260,1510(1993)、J.Biol.Chem.,266,18162(1991)〕があげられる。
以上の測定方法により、作製した腫瘍細胞増殖抑制剤の中から、腫瘍細胞の細胞株に対してすぐれた増殖抑制作用を示すものを容易に選択することができる。
(6) 本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤を用いた腫瘍細胞増殖抑制方法
本発明の腫瘍細胞増殖抑制剤は、上記(2)または(4)に示す投与量および投与方法により投与することで、腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下の参考例および実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 種々の癌由来の培養細胞株でのHNF4αDNAの発現
(1)種々の癌由来の培養細胞株の培養とmRNAおよび単鎖DNAの調製
ヒト大腸癌由来のLS180細胞株、WiDr細胞株、SW480細胞株、ヒト肝癌由来のHepG2細胞株、ヒト腎癌由来のACHN細胞株、ヒト乳癌由来のT47D細胞株、ヒト胃癌由来のAZ521細胞株、MKN74細胞株、ヒト膵臓癌由来のBXPC−3細胞株、PANC−1細胞株、ヒト皮膚癌由来のSKMEL−26細胞株、ヒト前立腺癌由来のDU145細胞株、LNCaP細胞株およびヒト子宮頚癌由来のHeLaS3細胞株を10%牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を含む最少必須培地(日本水産社製)中で、直径100mmの培養皿にコンフルエントの状態近くになるまで培養した。同様に、ヒト大腸癌由来のHCT116細胞株は10%牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を含むマッコイ改変培地(ギブコ社製)中で培養した。
培養後、培地を除去し、リン酸緩衝液生理食塩水(以下PBSと略称する)で洗浄した。得られた細胞から、市販のRNイージープラントミニキット(キアゲン社製)を用いて全RNAを回収し、それぞれ約100μgの全RNAを得た。 市販の単鎖DNA合成キット(ギブコ社製)を用いて、以下の方法により、全RNAから単鎖DNAを取得した。まず、上記で得られた全RNAを5μg含む滅菌水11μlにオリゴdTプライマー1μlを加えて混合した後、70℃にて10分間加熱した。該混合液に該キットに添付の反応緩衝液を最終反応量20μlとなるように添加した。さらに逆転写酵素を加え、42℃にて1時間加温してmRNAのみ逆転写反応を行い、単鎖DNAを取得した。
(2)PCR法による発現の検出(第1図)
得られた単鎖DNAを鋳型に、PCR法によりHNF4αDNAの増幅を行った。なお、内部標準としてアクチン遺伝子を用い、該遺伝子の増幅も同時に行った。該PCRにおいて、HNF4αDNAのみを増幅することのできるオリゴヌクレオチドDNA(配列番号1および2)、およびアクチン遺伝子のみを増幅することのできるオリゴヌクレオチドDNA(配列番号3および4)を市販のDNA合成機(パーセプティブバイオシステム社製)により合成した。これらのオリゴヌクレオチドDNAをプライマーとして、HNF4αDNAおよびアクチン遺伝子断片の増幅を以下の方法で行った。
上記で得られた単鎖DNA溶液を50倍に希釈したもの2μlにプライマーを各4pmol加えて混合した。該混合液に最終反応量が20μlになるように、ExTaqキット(宝酒造)に添付の10×PCR反応緩衝液およびdNTP溶液を適量加え、94℃で5分間静置した。静置後、0.1μlのポリメラーゼを加え、94℃−1分間、52℃−1分間、72℃−1分30秒間を1サイクルとして、HNF4αDNAの増幅には28サイクル、アクチン遺伝子の増幅には18サイクル行った。
PCR反応産物を2%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色を行った。UVランプ下で確認したところ、ヒト大腸癌由来のLS180細胞株、WiDr細胞株、SW480細胞株、HCT116細胞株において、HNF4αDNAの増幅DNA断片が確認された。該遺伝子の発現量は、既に発現が報告されているヒト肝癌由来のHepG2細胞株と同程度であった。その他の癌細胞株では該遺伝子の発現が検出されないことから、HNF4αタンパク質をコードするRNAの発現は大腸由来の癌細胞に特異的であることが明らかとなった。
実施例2 HNF4αDNAのアンチセンス鎖の発現による大腸癌細胞株の増殖抑制
(1)HNF4αDNAのアンチセンス鎖発現ベクターの造成(第2図)
上記実施例1(2)の操作でHCT116細胞株より得られた単鎖DNAを鋳型として以下の方法で、HNF4αDNAの翻訳可能領域部をPCR法にて増幅して、クローニングを行った。
配列番号5および6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドDNAをDNA合成機(パーセプティブバイオシステム社製)により合成した。これらのオリゴヌクレオチドDNA各10pmolをHCT116細胞株より得られた単鎖DNA5μlに加えて混合した。得られた混合液に、最終反応量50μlになるようにLA−PCRキット(宝酒造社製)添付の10×PCR反応緩衝液およびdNTP溶液を添加し、94℃で5分間静置した。さらにポリメラーゼを加え、94℃−1分間、50℃−1分間、72℃−3分間を1サイクルとして、25サイクル繰り返した。
該反応により増幅したHNF4αDNA断片を、アガロース電気泳動法により分離し、精製した。得られたHNF4αDNA断片はプライマー末端に制限酵素HindIII、BamHI(宝酒造)切断部位を有している。該DNA断片をこれらの制限酵素で処理し粘着末端とした。一方、市販の培養細胞発現用プラスミドpcDNA3.1(+)(インビトロジェン社製)をHindIII、BamHIで切断した。該切断プラスミド断片と該DNA断片とを市販のライゲーションキット(宝酒造)を用いて連結し、HNF4αDNAのアンチセンス鎖(配列番号7)を発現可能なプラスミドを作成した。
(2)大腸癌細胞株の増殖抑制活性の検出(第3図)
上記で作成したプラスミドを大腸癌由来の細胞株HCT116およびSW480に導入した。得られた細胞を、上記実施例1(1)で示した培地で、6穴プレート(住友ベークライト)にて培養した。1穴あたり5×104個の細胞になる様に播種し、一晩培養した。上記(1)で作成したアンチセンス鎖発現プラスミドおよびpcDNA3.1プラスミドの混合比率を、それぞれ5:0、4:1、3:2、2:3、1:4、0:5となるように混合した後、リポフェクション法により該DNA混合物を3μgずつ培養細胞に導入した。該DNA混合物を導入した細胞を3日間培養した後、以下の方法で生細胞数を測定した。
細胞増殖測定キット(XTT)添付のXTT標識試薬と電子カップリング試薬を50:1の比率で混合した後、該混合液を培地の半分量、培養皿に添加し適当な3時間培養した。呈色した培養液の吸光度を480nmの波長にて測定した。その結果、アンチセンス鎖発現プラスミド量に比例して細胞増殖が抑制されていることを確認した(第3図A)。また、アンチセンス鎖の発現が、各細胞株でのHNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現に及ぼす影響を調べた。
pcDNA3.1プラスミドもしくはアンチセンス鎖発現プラスミド3μgをHCT116およびSW480細胞に導入し、24時間後細胞よりRNAを回収し上記で示したPCR法により検出したところ、HNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現量はアンチセンス鎖を発現した細胞で低下していることを確認した(第3図B)。
産業上の利用可能性
本発明により、核内受容体HNF4αタンパク質またはその変異体をコードするDNAを有効成分として含有する新規な抗腫瘍遺伝子治療剤が提供される。また、HNF4αDNAの発現抑制剤もしくはHNF4αタンパク質機能阻害剤を有効成分とする抗腫瘍剤が提供される。とりわけ本発明の抗腫瘍遺伝子治療剤および抗腫瘍剤は大腸癌由来の細胞において効果を発揮するものであるため、HNF4αタンパク質を過剰産生した大腸癌に対する治療剤として有用である。
配列表フリーテキスト
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図 1図は、各種ヒト癌細胞株でのHNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現パターンを示す図である。大腸癌細胞株4種(LS180、WiDr、SW480、HCT116)および肝癌細胞株HepG2において、HNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現することが示されている。
第2図 2図は、HNF4αDNAのアンチセンスRNAを発現させるためのプラスミド構築を示す図である。ベクターは、pcDNA3.1(+)を用いた。
第3図 3図Aは、HNF4αDNAのアンチセンス鎖の発現による大腸癌細胞株HCT116およびSW480の増殖抑制を示す図である。該アンチセンス鎖の発現量に依存して細胞増殖が抑制されることが示されている。第3図Bは、HNF4αタンパク質をコードするmRNAの発現量が該アンチセンスRNAの発現によって減少することを示す図である。
Claims (20)
- HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制剤。
- HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質が、HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質である、請求項1記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- HNF4αタンパク質の発現を阻害する物質が、HNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドである、請求項2記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- HNF4αタンパク質をコードするDNAの発現を阻害するヌクレオチドが、HNF4αタンパク質をコードするDNAのアンチセンスヌクレオチドである、請求項3記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- アンチセンスヌクレオチドが、5〜60塩基のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドである、請求項4記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- アンチセンスヌクレオチドが、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAである、請求項4記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- アンチセンスヌクレオチドが、配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク質の発現を阻害するヌクレオチドである、請求項4記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 配列番号7で表される塩基配列を有するDNA。
- 配列番号7で表される塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHNF4αタンパク賀の発現を阻害するDNA。
- 請求項8または9記載のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
- 請求項10記載の組換え体DNAを有効成分として含有する、請求項1記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- HNF4αタンパク質の過剰産生により増殖する腫瘍細胞の増殖を抑制する活性を有する物質が、HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質である、請求項1記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質が、転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質である、請求項12記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質が、HNF4αタンパク質のリガンド結合部位が一部またはすべてを欠失したHNF4αタンパク質である、請求項13記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質が、HNF4αタンパク質の転写促進部位またはDNA結合部位のみを有するHNF4αタンパク質である、請求項13記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 転写を活性化する機能が欠損したHNF4αタンパク質をコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを有効成分として含有する、請求項1記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 組換え体DNAに用いられるベクターがウイルスベクターである、請求項11または16記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- HNF4αタンパク質による転写の活性化を阻害する物質が、HNF4α受容体のアンタゴニストである、請求項12記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 腫瘍細胞増殖抑制剤が、大腸癌細胞の増殖抑制剤である、請求項1〜7、11〜18いずれか1項に記載の腫瘍細胞増殖抑制剤。
- 請求項1〜7、11〜19いずれか1項に記載の腫瘍細胞増殖抑制剤を腫瘍細胞に作用させることを特徴とする腫瘍細胞増殖抑制方法。
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