JP4969832B2 - 成膜装置、パネルの製造方法 - Google Patents

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本発明はMgO膜を成膜する技術にかかり、特に、PDP表示装置に用いられるパネルの保護膜に適したMgO膜を形成する技術に関する。
PDP表示装置のパネルの保護膜は蒸着法やスパッタリング法によって形成したMgO膜が用いられている。MgO膜には耐スパッタ性の高い緻密な特性が求められる。
蒸着法による製造工程を説明すると、例えば、蒸発源に粒状MgOを配置し、酸素ガスを含む反応性ガスを真空槽内に導入し、酸素ガス雰囲気中で粒状MgOにプラズマを照射してMgO蒸気を発生させ、酸素ガスによって膜中に酸素を補うと共に、導入した水素とMgO蒸気を反応させ、MgOの膜質を改質し、パネルの表面に緻密なMgO膜を形成している。
特開平9−295894号公報 特開平10−168570号公報
保護膜としては、屈折率が高く、且つ、耐スパッタ性の高い膜が求められるが、面方位(1 1 1)のピーク強度が大きいMgO膜はその条件を満たしており、緻密で屈折率が高いMgO膜を形成する技術が求められている。しかし、通常の蒸着法では屈折率が高く、(1 1 1)強度の高いMgO膜を得る事は困難である。
水(H2O)を導入してMgOを成膜すると、導入したH2Oのほとんどが解離蒸発したMgと反応し、H2が大量に生成される。
本発明は、真空排気可能な真空槽と、MgOが配置され、MgO蒸気を前記真空槽内に放出する蒸発源と、前記MgO蒸気の到達によってMgO膜が形成される成膜対象物を保持する保持手段と、前記蒸発源と前記保持手段の間に配置され、前記MgO蒸気の前記成膜対象物表面への到達範囲を制限する制限板と、前記真空槽内に酸素を導入する酸素導入部と、前記真空槽内に水を導入する水導入部とを有し、前記制限板は、前記蒸発源と前記水導入部との間に配置され、前記水導入部は、気体の前記水を、前記MgO膜成長中の前記成膜対象物に向かって噴出されるように構成された成膜装置である。
また、本発明は、前記蒸発源に配置されたMgOに電子ビームを照射する電子ビーム発生装置を有する成膜装置である。
また、本発明は、前記保持手段を移動させる移動機構を有し、前記MgO蒸気は前記移動中の前記成膜対象物表面に到達するように構成された成膜装置である。
また、本発明は、真空槽内にPDP表示装置のパネルを配置し、前記真空槽内に酸素と水を導入しながら、前記真空槽内でMgO蒸気を発生させ、前記パネルの表面にMgO膜を形成するパネルの製造方法であって、前記真空槽内に前記MgO蒸気を放出する蒸発源と、前記蒸発源から放出された前記MgO蒸気の広がりを制限する制限板とを配置し、気体の前記水を、前記制限板と前記パネルの間から、前記MgO膜成長中の前記パネルに向かって噴出させるパネルの製造方法である。
また、本発明は、酸素分圧に対するH2の分圧の比が、0.2以上1.5以下になる様に水を導入するパネルの製造方法である。
また、本発明は、前記真空槽内の全圧が4.0×10-2Pa以上1.5×10-1Pa以下にされたパネルの製造方法である。
気体の水を導入することにより、屈折率が高く、(1 1 1)ピーク強度の大きいMgO膜を得ることができる。
屈折率が高い膜は緻密で耐久スパッタ性に優れている。(1 1 1)ピーク強度の大きい膜は2次電子を放出しやすい。
本発明の成膜装置をPDPパネルの製造方法と共に説明する。
図1の符号1は本発明の成膜装置の一例であり真空槽12を有している。
真空槽12の内部は成膜室14と材料室15とに分けられている。材料室15は成膜室14の下方に配置され、材料室15の天井と成膜室14の底面とは接続されている。
材料室15の内部の底壁上であって、材料室15と成膜室14とが接続された部分の真下位置には蒸発源23が配置されている。蒸発源23は、坩堝を有しており該坩堝内には粒状のMgOが配置されている。
材料室15には電子銃(電子ビーム発生装置)24が設けられており、材料室15内部を真空雰囲気にし、電子銃24を動作させると電子線が粒状のMgOに照射され、MgOの蒸気が放出されるように構成されている。
真空槽12内の材料室15と成膜室14とが接続された部分には制限板18が配置されている。制限板18の、蒸発源23の真上位置には開口17が形成されており、蒸発源23内のMgOから鉛直上方に放出されたMgOの蒸気は、開口17を通って成膜室14に侵入するように構成されている。
成膜室14の内部には成膜対象物を保持する保持手段21が配置されている。
保持手段21は搬送機構に取りつけられている。図1と図2の中で、符号16の一点鎖線は搬送機構を模式的に示している。
保持手段21は搬送機構16によって成膜室14内を移動し、蒸発源23の真上位置を通過又は静止できるように構成されている。
真空槽12の外部には搬出入室11が配置されている。この搬出入室11はゲートバルブ24を介して成膜室14に接続されている。
この成膜装置1を用いMgO膜を形成する工程について説明する。
搬出入室11と真空槽12には真空排気系22a、22bが接続されており、ゲートバルブ24を閉じ、真空槽12内を予め真空排気しておく。
その状態で成膜対象であるパネルを保持手段21にのせ、搬出入室11内に搬入し、大気との間の扉を閉じ、搬出入室11内を所定圧力まで真空排気する。
次に、搬送機構16によって保持手段21をゲートバルブ24に近づけ、ゲートバルブ24を開け、搬送機構16で搬出入室11から成膜室14に移載する。
次いで、搬送機構16を動作させ、パネルを保持した状態の保持手段21を蒸発源23の上方位置に向けて移動させる。
なお、材料室15と成膜室14には、ヒータ29が配置されており、搬出入室11内部に位置するとき、及び蒸発源23の上方位置へ移動中に、パネルは予め加熱する。
材料室15内には酸素ガスを導入する酸素ガス導入口26が設けられている。また、制限板18の成膜室14側の面には、気体の水を導入する水導入口27が設けられている。
水導入口27は保持手段21の移動経路上に向けられており、保持手段21に保持されたパネルが蒸発源23の上方を通過中、又は上方位置で静止するときには水導入口27から導入される気体の水は、パネルに向かって噴出されるように構成されている。なお、開口17は一個乃至複数個を設けることができ、開口17の周囲にパイプを配置し、このパイプに列設された複数の孔によって水導入口27を構成させることもできる。
図2の符号10は、気体の水が吹き付けられているパネルを示している。
酸素ガス導入口26からは、予め材料室15の内部に向けて酸素ガスが導入されており、成膜室14と材料室15は、一定分圧の酸素ガス雰囲気に置かれている。
酸素ガスと気体の水が導入されている状態で電子銃24を動作させ、蒸発源23内のMgOに電子線28を照射し、MgOの蒸気を放出させると、制限板18の開口17を通過したMgO蒸気がパネル10の表面に到達し、パネル10の表面にMgO膜が形成される。パネル10は大きいため、通常はパネル10を移動させながらMgOの蒸気を到達させ、パネル10の全面にMgOの蒸気を到達させる。
このとき、真空槽12内に導入された酸素ガスにより、成長するMgOの薄膜中に酸素原子が補充され、欠陥の無い膜が形成される。さらに、導入された水は解離蒸発したMgと反応し、MgOを形成するとともにH2が発生する。O2とH2の圧力比及び全圧が所定の範囲内において、(1 1 1)ピークの強い緻密なMgO膜が得られる。MgO成膜中も、ヒータ29によってパネル10を加熱し、所定温度に昇温させておく。
所定膜厚のMgO膜が形成された後、パネル10は搬出入室11に戻され、未処理のパネルが保持手段に乗せられ、MgO膜の成膜処理が行われる。
図3の符号40はPDP表示装置のリアパネルであり、上記MgO膜が形成されたパネル10は、リアパネル40と張り合わされるフロントパネルである。
(フロント)パネル10は、透明なガラス基板31表面に複数の電極(維持電極又は表示電極)35が平行に配置されており、電極35間及び電極35の表面には絶縁膜32が配置され、絶縁膜32によって各電極35間が絶縁されている。
本発明の(フロント)パネル10では、絶縁膜32上には、上記(1 1 1)ピークの強いMgO膜で構成された保護膜33が形成されている。
リアパネル40は、基板41上に複数の電極(アドレス電極)45が平行に配置されており、フロントパネル10と同様に、電極45間及び電極45の表面には絶縁膜42が配置され、この絶縁膜42によって各電極45間が絶縁されている。
絶縁膜42上の電極45間の位置には、細長の隔壁46が電極45に沿って配置されており、隣接する隔壁46の間の空間で放電空間47が形成されている。(フロント)パネル10の保護膜33は、隔壁46と接触し、放電空間47が蓋された状態にされている。
放電空間47の側面及び底面には蛍光層48が配置されている。(フロント)パネル10の電極35とリアパネル40の電極45は、互いに直交する方向に延設されており、電極35、45間に電圧を印加すると、電極35、45の交叉位置にある放電空間47内に部分的にプラズマが生じ、そのプラズマによって蛍光層48が発光し、(フロント)パネル10を透過して外部に光が放出されるように構成されている。
保護膜33を構成するMgOはスパッタされにくい材料であり、放電空間47に生成されたプラズマからフロントパネル10の電極35を保護する。
上記成膜装置1を用い、成膜条件を変えてMgO膜を形成した。
図4は、成膜対象物であるパネル10の温度と、(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の関係を示すグラフである。真空槽12内の全圧(成膜圧力)は4.0×10-2Paであり、気体の水は導入しなかった。
このグラフから、屈折率を高くするためにはパネルの温度を上昇させればよいが、(1 1 1)ピーク強度は逆に低下してしまうので、パネル温度を制御するだけでは最適なMgO膜は得られない。
下記表1は、真空槽12内の全圧(成膜圧力)、及びH2O導入量と、(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の測定結果であり、図5は、H2Oを導入しなかったときの、真空槽12内の全圧(成膜圧力)と、(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の関係を示すグラフである。このときのパネル温度は200℃である。
Figure 0004969832
図5のグラフから、(1 1 1)ピーク強度を高くするためには、成膜圧力を高くすれば良いが、屈折率は逆に低下してしまうので、成膜圧力を制御するだけでは最適なMgO膜は得られない。
図6は、酸素分圧POに対する水素の分圧Phの比R(R=Ph/PO)と、(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の関係を示すグラフである。真空槽12の内部は高真空状態まで真空排気した後、酸素ガスと気体の水を導入して蒸着しているので、導入した気体以外の残留気体の影響は無い。尚、導入した水はその大半が解離蒸発したMgと基板や防着板の表面で反応し、水素が発生する。従って、酸素分圧POと水の分圧Pwを合計した圧力が、真空槽12の全圧である。
このときのパネル温度は250℃であった。
このグラフから、気体の水の導入量が多くなると、屈折率が向上することが分かる。また、気体の水を適量導入することにより、(1 1 1)ピーク強度も向上することが分かる
本発明の成膜装置を説明するための図 その成膜装置でのMgO膜形成工程を説明するための図 PDPパネルを説明するための図 パネル温度と(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の関係を示すグラフ 成膜圧力と(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の関係を示すグラフ 酸素ガス圧力に対する水素の圧力の比と(1 1 1)ピーク強度及び屈折率の関係を示すグラフ
符号の説明
1……成膜装置
10……パネル
12……真空槽
17……開口
18……制限板
21……保持手段
23……蒸発源
26……酸素ガス導入口
27……気体の水の導入口

Claims (6)

  1. 真空排気可能な真空槽と、
    MgOが配置され、MgO蒸気を前記真空槽内に放出する蒸発源と、
    前記MgO蒸気の到達によってMgO膜が形成される成膜対象物を保持する保持手段と、
    前記蒸発源と前記保持手段の間に配置され、前記MgO蒸気の前記成膜対象物表面への到達範囲を制限する制限板と、
    前記真空槽内に酸素を導入する酸素導入部と、
    前記真空槽内に水を導入する水導入部とを有し、
    前記制限板は、前記蒸発源と前記水導入部との間に配置され、
    前記水導入部は、気体の前記水を、前記MgO膜成長中の前記成膜対象物に向かって噴出されるように構成された成膜装置。
  2. 前記蒸発源に配置されたMgOに電子ビームを照射する電子ビーム発生装置を有する請求項1記載の成膜装置。
  3. 前記保持手段を移動させる移動機構を有し、前記MgO蒸気は前記移動中の前記成膜対象物表面に到達するように構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の成膜装置。
  4. 真空槽内にPDP表示装置のパネルを配置し、
    前記真空槽内に酸素と水を導入しながら、前記真空槽内でMgO蒸気を発生させ、前記パネルの表面にMgO膜を形成するパネルの製造方法であって、
    前記真空槽内に前記MgO蒸気を放出する蒸発源と、前記蒸発源から放出された前記MgO蒸気の広がりを制限する制限板とを配置し、
    気体の前記水を、前記制限板と前記パネルの間から、前記MgO膜成長中の前記パネルに向かって噴出させるパネルの製造方法。
  5. 酸素分圧に対するH2の分圧の比が、0.2以上1.5以下になる様に水を導入する請求項4記載のパネルの製造方法。
  6. 前記真空槽内の全圧が4.0×10-2Pa以上1.5×10-1Pa以下にされた請求項5記載のパネルの製造方法。
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