JP5875851B2 - 薄膜製造方法、薄膜製造装置 - Google Patents

薄膜製造方法、薄膜製造装置 Download PDF

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本発明は、有機ELディスプレイ、有機EL照明デバイス、有機太陽電池、蒸着重合膜など有機膜があるデバイスの作製に関する。
従来の有機膜の成膜では、図8(a)に示すようなマスク110を基板上に配置し、蒸気やスパッタリング粒子等の成膜粒子に、マスク110が有する開口109を通過させ、基板表面に到達させて、基板上にパターニングされた有機膜を形成しているが、マスク110の遮蔽部分となるマスク本体111に成膜粒子が付着し、同図(b)に示すように、マスク110の表面には、有機膜から成る付着膜114が形成されてしまう。
この付着膜114は、開口109の大きさの精度を悪化させたり、剥離してパーティクルになるため、定期的なクリーニングが行われている。
しかしながら、付着膜114を反応性ガスと化学反応させ、反応生成物を真空排気によって除去するクリーニング方法や、付着膜114にレーザー光を照射し、付着膜114を蒸発させて除去するレーザクリーニング方法では、付着膜114を完全に除去することはできず、同図(c)に示すように、付着膜114の残渣物115が残ってしまう。
他方、残渣物115が生じないように、例えばレーザー光の強度を強くしてマスク110に照射すると、マスク110の温度が上昇し、マスク110が変形してしまう。
また、残渣物115の蒸発物や、反応性ガスとの反応生成物は真空槽内の残留ガスとなり、基板表面に形成する薄膜中に混入すると、薄膜の品質を悪化させる。
さらに、マスク110を用いて基板表面に無機物膜の薄膜を形成すると、無機物膜とマスク本体111との密着性が強く、反応性ガスやレーザー光では除去できず、マスク110を薄膜製造装置の外部に搬出して、除去作業を行わなければならないという問題がある。
特開2003−313654号公報 特開2008−88483号公報 特開平7−145472号公報
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、マスクに付着した付着膜を除去し、マスクを再使用できる技術を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、犠牲層蒸気供給装置で生成された犠牲層用微粒子をマスク本体の前面に到達させ、薄膜蒸気供給装置で生成される薄膜用微粒子によって形成される薄膜よりも低温で蒸発する有機薄膜から成る第一の犠牲層を前記マスク本体の前記前面に形成して第一のマスクを構成させ、前記第一のマスクの背面に第一の基板を配置し、真空雰囲気中で、前記薄膜蒸気供給装置で生成された前記薄膜用微粒子のうち、一部に前記第一のマスクの貫通孔を通過させ、前記第一の基板の表面に到達させて前記第一の基板の表面にパターニングされた第一の薄膜を形成し、他の一部を前記第一の犠牲層に付着させた後、前記薄膜蒸気供給装置で生成され、前記第一のマスクに付着した前記薄膜用微粒子によって形成された付着膜に、真空雰囲気中でレーザー光を照射し、前記第一の犠牲層を蒸発させて前記付着膜を前記マスク本体から剥離させて落下させ、前記マスク本体の前記前面を露出させ、前記犠牲層蒸気供給装置で生成された前記犠牲層用微粒子を前記マスク本体の前記前面に到達させ、前記薄膜蒸気供給装置で生成される薄膜用微粒子によって形成される薄膜よりも低温で蒸発する前記有機薄膜から成る第二の犠牲層を前記マスク本体の前記前面に形成して第二のマスクを構成させ、前記第二のマスクの前記背面に第二の基板を配置し、真空雰囲気中で、前記薄膜蒸気供給装置で生成された前記薄膜用微粒子の一部に前記第二のマスクの貫通孔を通過させ、前記第二の基板の表面に到達させて前記第二の基板の表面にパターニングされた第二の薄膜を形し、他の一部を前記第二の犠牲層に付着させる薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記薄膜用微粒子と前記犠牲層用微粒子とを、同じ放出装置から放出させる薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記レーザー光は、前記放出装置が配置され、前記第一、第二の薄膜と、前記第一、第二の犠牲層が形成される真空槽内で、前記第一のマスクに照射する薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記第二の犠牲層は、前記マスク本体の裏面に冷却板を配置し、前記マスク本体に前記冷却板を密着させた状態で形成する薄膜製造方法である。
また、本発明は、所定枚数の基板に前記薄膜用微粒子を到達させてパターニングされた薄膜を形成した後、前記付着膜に前記レーザー光を照射する薄膜製造方法である。
また、本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置された放出装置と、前記真空槽内でマスク本体と、前記マスク本体の面に第一の犠牲層が形成された第一のマスクと、前記マスク本体に第二の犠牲層が形成された第二のマスクとを保持するマスクホルダと、前記真空槽内で基板を保持する基板ホルダと、基板表面に形成する薄膜の原料の薄膜用微粒子を前記放出装置に供給する薄膜蒸気供給装置と、前記マスク本体前記前面に形成する前記第一、第二の犠牲層の原料の犠牲層用微粒子を前記放出装置に供給する犠牲層蒸気供給装置と、前記マスクホルダに保持された前記マスク本体にレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、を有し、前記放出装置と前記基板は、前記マスク本体を間にして対面できるようにされた薄膜製造装置である。
また、本発明は、前記レーザー光照射装置は、前記レーザー光を射出するレーザー光源と、前記レーザー光源が射出した前記レーザー光を反射させる反射装置とを有し、前記反射装置は反射させる前記レーザー光の進行方向を変化させ、反射した前記レーザー光を前記マスクホルダに保持された前記第一のマスクに照射するように構成され、前記反射装置と、前記マスクホルダに保持された前記第一のマスクとは、相対的に移動するように構成された薄膜製造装置である。
また、本発明は、真空槽と、薄膜を形成する薄膜用微粒子を生成する薄膜蒸気供給装置と、前記真空槽内でマスク本体を保持するマスクホルダと、基板を保持して前記マスク本体の裏面に密着させる基板ホルダと、を有し、前記真空槽内に放出され、前記マスク本体の貫通孔を通過した前記薄膜用微粒子が前記基板に到達すると前記基板の表面にパターニングされた前記薄膜が形成される薄膜製造装置であって、前記薄膜用微粒子によって形成される前記薄膜よりも低温で蒸発する有機薄膜を形成する犠牲層用微粒子を生成する犠牲層蒸気供給装置と、レーザー光を射出するレーザー光照射装置と、前記薄膜用微粒子によって形成された付着膜であって、前記犠牲層用微粒子によって前記マスク本体に形成された前記有機薄膜である犠牲層に付着した前記付着膜に前記レーザー光が照射され、前記犠牲層が蒸発して剥離された前記付着膜が落下するトレイと、が設けられた薄膜製造装置である。
本発明によれば、マスクに付着した薄膜をマスクを変形させずに除去してマスク本体を露出させ、新しいマスク本体に犠牲層を形成して再使用することができる。
また、反応性ガスを用いずにクリーニングを行うことができるので、真空槽内はダメージを受けないで済む。
また、マスクを大気雰囲気に曝さずに薄膜を除去できるので、真空槽内に不純物が侵入しない。
(a)〜(e):本発明の成膜方法を説明するための図 (a)、(b):本発明の薄膜製造装置の構造を説明するための図 (a)、(b):本発明の工程を説明するための図(1) (a)、(b):本発明の工程を説明するための図(2) (a)、(b):本発明の工程を説明するための図(3) (a)、(b):本発明の工程を説明するための図(4) マルチチャンバー式の本発明の薄膜製造装置 (a)〜(c):従来のマスクの状態を説明するための図
図2(a)、(b)の符号2は、本発明の薄膜製造装置の一例であり、図2(a)はその内部構造を説明するための平面図であり、図2(b)は内部側面図である。
薄膜製造装置2は真空槽21を有している。
真空槽21の外部には、真空排気装置22が配置されており、真空排気装置22を動作させると、真空槽21内が真空排気され、真空槽21内に真空雰囲気が形成されるように構成されている。
真空槽21の壁面には、搬出入口18が設けられており、後述するように、この搬出入口18を通過させて、基板や冷却板を真空槽21内に搬出入することができる。
真空槽21の内部の天井側には、マスクホルダ20と基板ホルダ19とが、下方からこの順序で設けられており、マスクホルダ20にマスクを保持させ、基板ホルダ19に基板を保持させると、基板はマスクの真上に位置するようにされている。
真空槽21の内部の底面側には、放出装置24が配置されており、マスクホルダ20に保持されたマスクは、放出装置24の上方に位置するようにされている。
真空槽21の外部には、蒸発装置23が配置されている。
蒸発装置23は、薄膜蒸気供給装置31を有している。薄膜蒸気供給装置31の内部には、基板表面に形成される薄膜の材料が配置されており、薄膜蒸気供給装置31はこの材料を加熱し、この材料の蒸気を生成するように構成されている。
放出装置24は薄膜蒸気供給装置31に接続されており、薄膜蒸気供給装置31が生成した蒸気は、放出装置24に供給される。
放出装置24は、内部が中空にされた筺体42を有しており、放出装置24の鉛直上方を向く表面の部分の筺体42には、複数の放出孔41が形成されている。
放出装置24の筺体42の中空の部分と、真空槽21の内部で放出装置24の外部の雰囲気とは、放出孔41によって接続されており、放出装置24に供給された蒸気は、薄膜形成のための微粒子として、筺体42の中空部分に充満し、複数の放出孔41から真空槽21の内部に放出される。
真空槽21内には、移動装置16が配置されている。移動装置16には、台59が取り付けられており、放出装置24は台59上に取り付けられ、移動装置16によって、水平面内で直線的に往復移動できるように構成されており、放出装置24は、マスクホルダ20に保持されるマスクの真下位置を、直線的に横断する。
放出装置24には、放出装置24が静止しているときと、移動しているときとの両方で、薄膜蒸気供給装置31から薄膜材料の蒸気が供給されるように構成されており、従って、放出装置24は、移動しながら放出孔41から真空槽21内に蒸気を放出させることができる。
薄膜製造装置2によって、基板表面に薄膜を形成する際には、マスクホルダ20と基板ホルダ19とに、マスクと基板を保持させ、放出装置24によって、薄膜材料の蒸気を放出させながら、マスクの下方位置を移動させる。
本発明に用いられるマスクを図1(b)の符号10に示す。
マスク10は、金属で構成された板状のマスク本体11を有している。図1(a)はマスク本体11の断面図である。マスク本体11には一乃至複数の貫通孔9が形成されており、マスク本体11の片面には、有機薄膜から成る犠牲層12が形成されている。なお、マスク10はセラミックス等の絶縁物質で構成させてもよい。
この犠牲層12をマスク本体11に形成する工程を説明する。
先ず、真空槽21内の真空雰囲気を維持しながら、真空槽21に接続されたマスクストッカー室(不図示)から図1(a)のマスク本体11を搬入し、図3(a)、(b)に示すように、薄膜製造装置2内のマスクホルダ20に保持させる。犠牲層12の形成前のマスク本体11を搬入するときから、少なくともマスク本体11へ犠牲層12を形成するまでの間は、真空排気装置22による真空排気を継続し、真空槽21内の真空雰囲気を維持する。
蒸発装置23は、基板に薄膜を形成する薄膜蒸気供給装置31に加え、犠牲層12の形成に用いる犠牲層蒸気供給装置32を有している。
犠牲層蒸気供給装置32の内部には、犠牲層12を形成する有機化合物の材料が配置されており、犠牲層蒸気供給装置32はこの材料を加熱し、この材料の蒸気を生成する。犠牲層12の材料は、C、HあるいはC、H、N元素で形成した化合物で構成され、この化合物は、例えば、NPB、CPB、ペンタセン、ペンゾ[b]アントラセン、アントラセン、ナフタリン等である。
薄膜製造装置2は、切替装置33を有している。切替装置33は真空槽21の外部に配置されており、薄膜蒸気供給装置31と犠牲層蒸気供給装置32はこの切替装置33を介して放出装置24に接続されている。
切替装置33は、放出装置24を、薄膜蒸気供給装置31と犠牲層蒸気供給装置32のうち、いずれか一方又は両方に接続し、又は、接続を遮断するように構成されており、切替装置33によって放出装置24に薄膜蒸気供給装置31が接続されているときは、上述したように、薄膜蒸気供給装置31から放出装置24に基板表面に形成する薄膜の材料蒸気が供給され、放出装置24の内部に薄膜の材料蒸気が充満する。
他方、切替装置33によって、放出装置24に犠牲層蒸気供給装置32が接続されているときは、犠牲層蒸気供給装置32から放出装置24に犠牲層12の材料蒸気が供給され、放出装置24の内部に犠牲層12の材料蒸気が充満する。
マスクホルダ20にマスク本体11を配置した後、搬出入口18から真空槽21内に冷却板を搬入し、冷却板を基板ホルダ19上に配置し、基板ホルダ19を降下させて冷却板をマスク本体11上に密着させる。図3(a)、(b)の符号17はマスク本体11上に配置された冷却板を示しており、冷却板17の表面は、貫通孔9の底面に露出されている。
放出装置24は、マスク本体11の斜め下方位置に移動させ、マスク本体11の真下には位置しないようにしておき、切替装置33によって、犠牲層蒸気供給装置32を放出装置24に接続し、犠牲層蒸気供給装置32から放出装置24に犠牲層12の材料蒸気を供給し、放出孔41から犠牲層12の材料蒸気を微小粒子として放出させる。
なお、犠牲層蒸気供給装置32や薄膜蒸気供給装置31と、放出装置24とを接続する配管には、加熱装置29が密着して取り付けられており、加熱装置29によって配管が温められ、配管の内部を通過する蒸気が析出することはない。
薄膜蒸気供給装置31の場合と同様に、放出装置24には、放出装置24が静止しているときと、移動しているときとの両方に、犠牲層蒸気供給装置32から犠牲層12の材料蒸気が供給されるように構成されており、放出装置24を、予めマスクホルダ20に保持されたマスク本体11の真下位置から離間させておき、放出装置24の放出孔41から犠牲層12の蒸気を放出させながら、放出装置24の移動を開始し、図4(a)、(b)に示すように、放出装置24とマスクホルダ20とを、放出装置24を移動させながら対面させる。
各貫通孔9は、マスク本体11の前面側の開口が大径で、裏面側の開口が小径にそれぞれ形成されており、貫通孔9の内周側面は、放出装置24が移動する経路に面するように傾けられている。
図1(b)に示すように、放出装置24が材料蒸気を放出しながら、マスク本体11の真下位置を通過すると、放出装置24から放出された材料蒸気は、放出装置24の真上のマスク本体11が配置された位置に到達し、蒸気の一部は、マスク本体11の前面と貫通孔9の内周側面とに付着し犠牲層12を成長させ、他の一部は、貫通孔9の底面に露出する冷却板17の表面に付着し、その部分に薄膜を成長させる。
放出装置24に、一乃至複数回マスク本体11の真下位置を通過させ、犠牲層12が所定膜厚に形成されると、マスク本体11と犠牲層12とを有するマスク10が得られる。
材料蒸気は高温であり、材料蒸気が付着すると、マスク10が加熱されるが、裏面に密着された冷却板17によって吸熱され、マスク10の昇温が大きくならないようにされている。
なお、冷却板17の大きさは、貫通孔9が配置された範囲よりも大きくなっており、各貫通孔9内に進入した材料蒸気のうち、裏面側の開口に向かった材料蒸気は、冷却板17に付着し、真空槽21内の、マスク本体11の裏面側には侵入しないようになっている。なお、貫通孔9は犠牲層12によって閉塞されない。
犠牲層12が形成された後、犠牲層蒸気供給装置32内での材料蒸気の生成を停止し、冷却板17を搬出入口18から真空槽21の外部に搬出すると、薄膜製造装置2内で、マスク10を用いて基板表面に薄膜を形成できる状態になる。
基板表面への薄膜形成工程を説明すると、真空槽21の上方には、冷却装置8が設けられており、犠牲層12の形成後、真空槽21内の真空雰囲気を維持した状態で、搬出入口18から真空槽21内に搬送ロボットのハンド上に乗せた基板を搬入し、冷却装置8とマスク10との間の位置で一旦静止させ、基板と基板ホルダ19とを接近させ、基板を基板ホルダ19上に配置する。なお、基板表面への薄膜形成中も、真空排気装置22によって真空槽21内を継続して真空排気している。
このとき、基板ホルダ19上の基板とマスクホルダ20上のマスク10とは離間しており、位置合わせ装置56によって、基板ホルダ19とマスクホルダ20とを相対的に移動させることで、基板とマスク10とを水平方向に相対的に移動させ、基板とマスク10との位置合わせを行う。
位置合わせ後、基板ホルダ19とマスクホルダ20とを上下方向に相対的に移動させ、基板をマスク10の裏面に密着させる。
図5(a)、(b)の符号13は、基板ホルダ19上で、マスク10に密着された基板を示している。
この状態では、基板13の表面の一部がマスク10の裏面と接触し、基板13の表面の他の一部は、マスク10の貫通孔9の底面に露出される。
冷却装置8は基板13に接触させ、放出装置24は予めマスクホルダ20上のマスク10の真下位置から離間させておき、薄膜蒸気供給装置31内で基板13表面に形成する薄膜の材料蒸気を生成し、切替装置33により、薄膜蒸気供給装置31を放出装置24に接続し、放出装置24に薄膜の材料蒸気の供給を開始し、放出孔41から供給された材料蒸気を放出しながら放出装置24にマスク10の下方を通過させる。
放出孔41は、放出される蒸気が、放出装置24の移動方向とは垂直な方向の一定範囲に帯状に到達するように配置されており、放出された薄膜の材料蒸気は真上方向に進行し、マスク10が配置された位置に到達し、一部は貫通孔9を通過して貫通孔9の底面に露出した基板13の表面に付着して基板13表面に薄膜を成長させ、他の一部はマスク10の放出装置24に向く前面と、貫通孔9の内周側面とに付着する。
マスク10の放出装置24に向く前面と、貫通孔9の内周側面とには犠牲層12が予め形成されているから、マスク10に到達した材料蒸気は犠牲層12表面に付着する。
マスク10は、マスク本体11の前面に犠牲層12が形成された後は、マスクホルダ20に対して移動されておらず、マスク本体11の表面のうち、犠牲層12の形成の際に、マスクホルダ20などの真空槽21内の部材によって隠蔽されていて、マスク本体11表面が露出する部分は、基板13の表面に薄膜を形成する際に真空槽21内に露出することはなく、従って、薄膜は、マスク本体11の表面に接触して形成されないようになっている。
図1(d)は、基板13表面に薄膜を形成した後の、基板13とマスク10の断面図であり、同図の符号15は、貫通孔9の底面に露出した基板13の表面に形成された薄膜を示しており、同図の符号14は、犠牲層12の表面に形成された薄膜を示している。
基板13は、表面に所定の厚みで薄膜15が形成された後、搬出入口18から真空槽21の外部に搬出し、未成膜の基板を搬出入口18から真空槽21内に搬入し、上記手順と同じ手順で薄膜を形成する。
このように薄膜を基板表面に形成する工程を複数回繰り返すと、マスク10上の犠牲層12の表面に形成された薄膜14が厚くなるため、所定枚数の基板に薄膜を形成すると、クリーニングを行い、マスク10の薄膜14を除去する。
ここでは、マスク10のクリーニングは、マスク本体11に犠牲層12を形成し、かつ、基板13の表面に薄膜15を形成した真空槽21の内部で行われる。
第一例の薄膜製造装置2は、クリーニングに用いるレーザー光照射装置25を有している。
レーザー光照射装置25は、レーザー光を生成して射出するレーザー光源50と、射出されたレーザー光を反射し、マスク10に照射する反射装置51とを有している。
レーザー光源50は、真空槽21の内部又は真空槽21の外部に配置されており、真空槽21の外部に配置される場合は、射出したレーザー光は真空槽21に設けられた透明窓部を通過して、真空槽21の内部に入射するようにすればよい。
この例では、反射装置51は、放出装置24と共に台59に取り付けられており、移動装置16によって台59が移動されると、反射装置51は、放出装置24と一緒に、マスクホルダ20上のマスク10の真下位置を移動する。なお、反射装置51と放出装置24とは、別々に移動できるようにしてもよい。
反射装置51とレーザー光源50とは、反射装置51が移動する際にも、レーザー光源50から反射装置51にレーザー光が照射されるように配置されており、ここでは、反射装置51は、受光鏡52と射出鏡53とを有しており、レーザー光源50から射出されたレーザー光は、先ず、受光鏡52に入射して射出鏡53に向かって反射され、射出鏡53に入射してマスク10に向かって反射され、マスク10に入射すると、レーザー光の入射によって、マスク10の表面に、直径1mm程度のレーザスポットが形成される。
射出鏡53には、角度制御装置54が設けられており、角度制御装置54によって、射出鏡53の、レーザー光の入射方向に対する反射面の角度が変更され、レーザスポットは、マスク10上を反射装置51の移動方向とは垂直な方向に移動する。
従って、反射装置51の移動と、射出鏡53の角度の変更によって、レーザスポットは、マスク10の前面の露出している部分に隈無く照射することができる。
マスク10の表面には、基板13に成膜した薄膜15と同じ材料の薄膜14が形成されており、レーザー光はこの薄膜14に照射されてレーザスポットを形成すると、レーザスポットの部分と、その周囲の部分が加熱され、薄膜14と、薄膜14の下層の犠牲層12とが昇温する。
犠牲層12は、薄膜14よりも低温で蒸発するように設定されており、レーザー光によって犠牲層12が昇温して蒸発すると、犠牲層12表面に位置していた薄膜14はマスク10から落下し、薄膜14がマスク本体11の前面及び貫通孔9の内周側面から剥離され、剥離した部分では、マスク本体11の表面が露出する。
マスク10から薄膜14を剥離させる工程を説明すると、レーザー照射する前に、予め、反射装置51をマスク10の下方位置から離間させておき、先ず、冷却装置8を降下させ、マスクホルダ20上のマスク10の裏面に密着させる。
この状態は、図5(a)、(b)に示してあり、次いで、反射装置51の移動を開始させる。
反射装置51が移動し、マスク10の外側からマスク10の下方位置に入るところで、レーザー光源50からレーザー光を射出させ、反射装置51で反射してマスク10の表面に照射し、照射された部分とその周囲の犠牲層12を蒸発させ、薄膜14を剥離させる。
図6(a)、(b)は、マスク10にレーザー光60を照射している状態である。
角度制御装置54によって、マスク10の前面と貫通孔9の内周面とを含む表面上のレーザー光60の照射位置は、反射装置51の移動方向とは垂直な方向に移動されており、マスク10の表面上で帯状の範囲に照射されると共に、反射装置51の移動によって、マスク10の前面上で、帯状の範囲が、帯が伸びる方向とは垂直な方向に移動し、マスク10の反射装置51と対面する範囲にレーザー光60が照射され、マスク10の前面と貫通孔9の内周側面に付着する薄膜14を剥離させ、マスク本体11の表面を露出させる。
冷却装置8は昇降装置6に取り付けられており、上下移動可能に構成されており、レーザー光がマスク10に照射される際には、予め冷却装置8が降下され、冷却装置8の底面は、マスク10の裏面と密着されており、レーザー光が照射されて加熱されるマスク10から、冷却された冷却装置8に熱が流れて、マスク10が冷却されるようになっている。
冷却装置8には、真空槽21の外部に配置された冷却媒体源7が接続されており、冷却媒体源7によって冷却された冷却媒体が冷却媒体源7と冷却装置8の間を循環して流れるようにされており、冷却装置8に移動した熱は、冷却媒体源7によって冷却媒体から除去されるようになっている。
犠牲層12と薄膜14とが除去されたマスク本体11は、放出装置24から材料蒸気の放出によって、新しい犠牲層12が形成されると、基板表面への薄膜の形成に用いることができるようになる。
なお、マスク10の下方の、真空槽21の底面上には、図示しないトレイが予め配置されており、マスク10から落下した薄膜14は、トレイ上に落下して、真空槽21の内部から取り出すことができるようにされている。
マスク10にレーザー光60を照射して、犠牲層12を蒸発させる際、反射装置51の移動に後続して放出装置24を移動させるようにすれば、反射装置51によって犠牲層12が蒸発され、マスク本体11の前面及び貫通孔9の内周側面が露出された後、後続する放出装置24が犠牲層12を形成する材料蒸気を放出しながら、露出された前面及び内周側面の真下位置に到達すると、マスク本体11の前面と貫通孔9の内周側面に新しい、犠牲層12が形成される。
犠牲層12が形成されているときに、反射装置51にレーザー光が入射され、反射されてマスク10表面に照射されており、マスク10上の犠牲層12と薄膜14とが除去されている。この場合、マスク10の犠牲層12と薄膜14を除去しながら、同じマスク10の露出されたマスク本体11の表面に新しい犠牲層12を形成することになり、作業効率が高い。
以上により、マスク本体11を真空槽21の外部に搬出することなく、マスク本体11への犠牲層の形成と、犠牲層を有するマスクを用いた基板表面への薄膜の形成と、マスクに付着した薄膜の除去とを繰り返し行うことができる。
なお、上記実施例の薄膜製造装置2では、放出装置24を移動させていたが、マスクや基板と同程度の面積の範囲に放出孔が配置された放出装置を用い、放出装置を静止させて、犠牲層や薄膜を形成してもよい。その場合の薄膜製造装置の反射装置は、上記実施例の薄膜製造装置の反射装置と同じ移動をするようにしておくと、犠牲層や薄膜を形成する真空槽の内部で、マスク上の犠牲層と、犠牲層に付着した薄膜を除去することができる。
また、図7の符号3に示した第二例の薄膜製造装置のように、搬送ロボット70が配置された搬送室69に、レーザー光照射装置を有するクリーニング室63と、マスク上に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜形成室64と、マスクに設けられた犠牲層を除去し、露出されたマスク本体の表面に新しい犠牲層を形成するクリーニング室63と、搬出入室68と、エッチング室や薄膜製造室である他の処理室65〜67が接続されている。
各室63〜69の内部は真空排気されており、薄膜形成室64には、薄膜蒸気供給装置38と、犠牲層蒸気供給装置39とが接続されており、薄膜形成室64内で搬送ロボット70によって基板を搬入し、上記第一例の薄膜製造装置2で説明した工程と同じ工程で、薄膜蒸気供給装置38から基板に形成する薄膜の材料蒸気を放出させ、基板の表面に薄膜を形成し、処理室65〜68のうちの搬出入室から外部に搬出し、新しい基板を搬入する。基板の搬出前に他の処理室65〜68で真空処理を行っても良い。
薄膜が付着されたマスクは、搬送ロボット70によって、薄膜形成室64からクリーニング室63に移動させ、クリーニング室63の内部でマスクにレーザー光を照射し、犠牲層を蒸発させ、犠牲層表面の薄膜を除去し、マスク本体を露出させる。
マスク本体は、クリーニング室63から薄膜形成室64内に移動させ、上記第一例の薄膜製造装置2で説明した工程と同じ工程で、犠牲層蒸気供給装置39から犠牲層の材料蒸気を放出させマスク本体に犠牲層を形成する。
搬出入室68以外の各室63〜67、69は、内部の真空雰囲気が維持されており、マスクやマスク本体が、薄膜形成とクリーニングと犠牲層形成とが行われる間に大気に曝されることはない。
以上は、蒸着法によって基板表面に有機薄膜を形成したが、本発明で薄膜形成に用いる微粒子は蒸気に限定されるものでは無く、スパッタリング粒子や、他の微粒子であっても、犠牲層を有機薄膜で形成すると、レーザー照射によって蒸発させることができるので、犠牲層の表面上の無機薄膜を除去することができる。
犠牲層として用いる有機薄膜は、80℃〜300℃の温度範囲で1×10-2Pa以上の蒸気圧有する有機化合物であれば、基板表面に薄膜を形成するときにマスクが昇温しても犠牲層は蒸発せず、且つ、レーザー光を照射することで蒸発させやすい。
レーザー光をマスクに溶射して犠牲層を蒸発させる際、Arガス、Heガス、Neガス等の希ガス雰囲気中やN2ガス雰囲気中にマスクを配置してもよい。
また、レーザー光の波長は、犠牲層の吸収率が高い波長に設定しておくと、犠牲層を蒸発させやすい。
2、3……薄膜製造装置
9……貫通孔
10……マスク
11……マスク本体
12……犠牲層
13……基板
14……薄膜
15……薄膜
17……冷却板
19……基板ホルダ
20……マスクホルダ
24……放出装置
31、38……薄膜蒸気供給装置
32、39……犠牲層蒸気供給装置
25……レーザー光照射装置

Claims (8)

  1. 犠牲層蒸気供給装置で生成された犠牲層用微粒子をマスク本体の前面に到達させ、薄膜蒸気供給装置で生成される薄膜用微粒子によって形成される薄膜よりも低温で蒸発する有機薄膜から成る第一の犠牲層を前記マスク本体の前記前面に形成して第一のマスクを構成させ、
    前記第一のマスクの背面に第一の基板を配置し、真空雰囲気中で、前記薄膜蒸気供給装置で生成された前記薄膜用微粒子のうち、一部に前記第一のマスクの貫通孔を通過させ、前記第一の基板の表面に到達させて前記第一の基板の表面にパターニングされた第一の薄膜を形成し、他の一部を前記第一の犠牲層に付着させた後、
    前記薄膜蒸気供給装置で生成され、前記第一のマスクに付着した前記薄膜用微粒子によって形成された付着膜に、真空雰囲気中でレーザー光を照射し、前記第一の犠牲層を蒸発させて前記付着膜を前記マスク本体から剥離させて落下させ、前記マスク本体の前記前面を露出させ、
    前記犠牲層蒸気供給装置で生成された前記犠牲層用微粒子を前記マスク本体の前記前面に到達させ、前記薄膜蒸気供給装置で生成される薄膜用微粒子によって形成される薄膜よりも低温で蒸発する前記有機薄膜から成る第二の犠牲層を前記マスク本体の前記前面に形成して第二のマスクを構成させ、
    前記第二のマスクの前記背面に第二の基板を配置し、真空雰囲気中で、前記薄膜蒸気供給装置で生成された前記薄膜用微粒子の一部に前記第二のマスクの貫通孔を通過させ、前記第二の基板の表面に到達させて前記第二の基板の表面にパターニングされた第二の薄膜を形し、他の一部を前記第二の犠牲層に付着させる薄膜製造方法。
  2. 前記薄膜用微粒子と前記犠牲層用微粒子とを、同じ放出装置から放出させる請求項1記載の薄膜製造方法。
  3. 前記レーザー光は、前記放出装置が配置され、前記第一、第二の薄膜と、前記第一、第二の犠牲層が形成される真空槽内で、前記第一のマスクに照射する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の薄膜製造方法。
  4. 前記第二の犠牲層は、前記マスク本体の裏面に冷却板を配置し、前記マスク本体に前記冷却板を密着させた状態で形成する請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の薄膜製造方法。
  5. 所定枚数の基板に前記薄膜用微粒子を到達させてパターニングされた薄膜を形成した後、前記付着膜に前記レーザー光を照射する請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の薄膜製造方法。
  6. 真空槽と、
    前記真空槽内に配置された放出装置と、
    前記真空槽内でマスク本体と、前記マスク本体の面に第一の犠牲層が形成された第一のマスクと、前記マスク本体に第二の犠牲層が形成された第二のマスクとを保持するマスクホルダと、
    前記真空槽内で基板を保持する基板ホルダと、
    基板表面に形成する薄膜の原料の薄膜用微粒子を前記放出装置に供給する薄膜蒸気供給装置と、
    前記マスク本体前記前面に形成する前記第一、第二の犠牲層の原料の犠牲層用微粒子を前記放出装置に供給する犠牲層蒸気供給装置と、
    前記マスクホルダに保持された前記マスク本体にレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、
    を有し、
    前記放出装置と前記基板は、前記マスク本体を間にして対面できるようにされた薄膜製造装置。
  7. 前記レーザー光照射装置は、前記レーザー光を射出するレーザー光源と、前記レーザー光源が射出した前記レーザー光を反射させる反射装置とを有し、
    前記反射装置は反射させる前記レーザー光の進行方向を変化させ、反射した前記レーザー光を前記マスクホルダに保持された前記第一のマスクに照射するように構成され、
    前記反射装置と、前記マスクホルダに保持された前記第一のマスクとは、相対的に移動するように構成された請求項記載の薄膜製造装置。
  8. 真空槽と、
    薄膜を形成する薄膜用微粒子を生成する薄膜蒸気供給装置と、
    前記真空槽内でマスク本体を保持するマスクホルダと、
    基板を保持して前記マスク本体の裏面に密着させる基板ホルダと、
    を有し、
    前記真空槽内に放出され、前記マスク本体の貫通孔を通過した前記薄膜用微粒子が前記基板に到達すると前記基板の表面にパターニングされた前記薄膜が形成される薄膜製造装置であって、
    前記薄膜用微粒子によって形成される前記薄膜よりも低温で蒸発する有機薄膜を形成する犠牲層用微粒子を生成する犠牲層蒸気供給装置と、
    レーザー光を射出するレーザー光照射装置と、
    前記薄膜用微粒子によって形成された付着膜であって、前記犠牲層用微粒子によって前記マスク本体に形成された前記有機薄膜である犠牲層に付着した前記付着膜に前記レーザー光が照射され、前記犠牲層が蒸発して剥離された前記付着膜が落下するトレイと、
    が設けられた薄膜製造装置。
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