以下、本発明の包装用積層フィルム、包装用袋体、該フィルムの製造方法を詳細に説明する。
(1)包装用積層フィルムの構成
本発明で使用する包装用積層フィルムは、帯電防止剤層、ガスバリア性積層フィルム層、ポリオレフィン層およびヒートシール層とを積層した包装用積層フィルムであって、前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、該無機酸化物の蒸着膜上に一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設け、前記帯電防止剤層がヒートシール予定部近傍にのみ部分的に積層された積層フィルムであることを特徴とする、包装用積層フィルムである。
ヒートシール層は、帯電防止剤含有ヒートシール層であってもよい。
また、前記ガスバリア性積層フィルム層とヒートシール層との間のいずれかの層間に、印刷層や中間フィルム層を積層していてもよい。また、前記帯電防止剤層は、前記ガスバリア性積層フィルム層の全面ではなく、ヒートシール予定部近傍にのみ積層されるものであってもよい。
本発明では、上記構成層以外に、他の層を含んでいてもよい。このような他の層としては、各層をドライラミネート積層法で積層するためのラミネート用接着剤層や、ヒートシール層を溶融押出し法で積層する場合の、プライマー層やアンカーコート層、その他、アンダーコート剤層や表面処理によって形成された表面処理層などがある。
したがって、本発明の包装用積層フィルムとしては、
例えば、(a)帯電防止剤層/<基材フィルム/無機酸化物の蒸着膜/ガスバリア性塗布膜>/アンカーコート層/ポリオレフィン層/ヒートシール層、(b)帯電防止剤層/<基材フィルム/無機酸化物の蒸着膜/ガスバリア性塗布膜>/印刷層/アンカーコート層/ポリオレフィン層/ヒートシール層、(c)帯電防止剤層/<基材フィルム/コロナ処理層/無機酸化物の蒸着膜/ガスバリア性塗布膜>/ラミネート用接着剤層/中間フィルム層/アンカーコート層/ポリオレフィン層/ヒートシール層、
(d)帯電防止剤層/<基材フィルム/無機酸化物の蒸着膜/ガスバリア性塗布膜>/印刷層/アンカーコート層/ポリオレフィン層/中間フィルム層/ヒートシール層などが例示できる。なお、ガスバリア性積層フィルム層を構成する基材フィルム/無機酸化物の蒸着膜/ガスバリア性塗布膜は、基材フィルムが帯電防止剤層と接触するものであって、ガスバリア性積層フィルム層が帯電防止剤層と接触するものであってもよい。なお、ヒートシール層は、帯電防止剤含有ヒートシール層であってもよい。
図1(a)に、帯電防止剤層(10)とガスバリア性積層フィルム層(20)とポリオレフィン層(30)および帯電防止剤含有ヒートシール層(40)とを積層した包装用積層フィルムであって、ガスバリア性積層フィルム層(20)がコロナ処理層(25)を含み、前記ポリオレフィン層(30)が、アンカーコート層(31)を介してガスバリア性塗布膜(27)と接触して積層される態様を示し、
図1(b)に、帯電防止剤層(10)とガスバリア性積層フィルム層(20)とポリオレフィン層(30)および帯電防止剤含有ヒートシール層(40)とを積層した包装用積層フィルムであって、更に、表面処理層(51)を介して前記ガスバリア性塗布膜(27)上に印刷層(50)が設けられた態様を示し、
図1(c)に、帯電防止剤層(10)とガスバリア性積層フィルム層(20)、印刷層(50)とポリオレフィン層(30)および帯電防止剤含有ヒートシール層(40)とを積層した包装用積層フィルムであって、前記ポリオレフィン層(30)上に中間フィルム層(60)が設けられた態様を示す。
本発明の特徴として、帯電防止剤層は、前記ガスバリア性積層フィルム層の一部にのみ積層されるものであってもよい。例えば、包装用積層フィルムから手のひら大の包装用袋体を製造する場合の包装用袋体の平面図を図2(a)に示す。表面には、製品名や商品名が記載され、側部および底部の三方がヒートシールされ、上部は内容物の充填後にヒートシールされるよう開封されている。前記帯電防止剤層は、底部および上部のヒートシール予定部(70)の少なくとも一部の近傍にのみ部分コーティング(80)されている。この包装用袋体に内容物を充填した場合の包装用袋体の側面図を図2(b)に示す。底部および上部のヒートシール部近傍にのみ帯電防止剤層が積層され、包装用袋体中央部には帯電防止剤層が存在しない。このため、包装用袋体を複数個重ねた場合にも、帯電防止剤層同士が接触することがなく、重ねた場合の崩れを防止することができる。
このような態様で、帯電防止剤層を積層するには、包装用積層フィルムの製造時において、部分的に帯電防止剤層をコーティングすればよく、例えば包装用積層フィルムから前記包装用袋体の表面、裏面を図2(c)に示すように型取する場合には、そのヒートシール予定部の底部および上部近傍に帯電防止剤層を設けるため、帯状に部分コーティングすればよい。このような帯電防止剤層の部分コーティングによって、ヒートシール時および開封時の帯電防止剤層の機能を損なうことなく、かつ帯電防止剤層による過度の滑り性を抑制することができる。
(2)帯電防止剤層
本発明で使用する帯電防止剤層は、ヒートシール時や開封時の内容物の付着を防止するために配合するものであり、例えば、カチオン性アクリル樹脂、アルキル第4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンエーテル系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系界面活性剤などを用いることができる。帯電防止剤層の厚みは、0.2〜1.0μmであり、1.0μmを越えても、1.0μmのときの帯電防止効果と殆ど同じであるので、帯電防止剤の無駄である。また、0.2μm未満では、帯電防止効果が欠けるので好ましくなく、不適である。
(3)基材フィルム層
ガスバリア性積層フィルムを構成する基材フィルム層としては、無機酸化物の蒸着膜やガスバリア性塗布膜を設けるに足る機械的、物理的、化学的強度を有し、特に無機酸化物の蒸着膜を形成する条件に耐え、無機酸化物の蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得る樹脂フィルムを使用することが好ましい。
このような基材フィルム層としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂からなるフィルムを使用することができる。特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムが好ましい。
上記樹脂は、上記樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
本発明において、基材フィルムの膜厚としては、6〜100μm位、より好ましくは、9〜50μm位が好ましい。
なお、上記樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数10%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を任意に使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
(4)表面処理
本発明において、上記の基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を形成するが、予め基材フィルム層に表面処理をおこなってもよい。これによって無機酸化物の蒸着膜やガスバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
また、本発明で使用する各種層の表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理することもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。すなわち、後記する物理的気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。更に、本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
なお、本発明においては、前記基材フィルム層以外の他の樹脂フィルムの表面にも、無機酸化物の蒸着膜、ガスバリア性塗布膜、印刷層その他の層やフィルムとの密着性を向上させるために、前記いずれかの表面処理をおこなってもよい。
(5)無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルム層の一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図3を用いて説明する。
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム層201を繰り出し、更に、該基材フィルム層201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム層201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム層201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルム層を一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルム層の上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、図3中、符号235は真空ポンプを表す。
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルム層の搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルム層の上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルム層の表面が清浄化され、基材フィルム層の表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルム層との密接着性が高いものとなる。更に、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルム層の原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルム層の一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
更に、本発明では、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルム層との界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルム層と酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
本発明では、無機酸化物の蒸着膜として、無機酸化物の蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
一方、本発明では、物理気相成長法によっても無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルム層の一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルム層の一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図4を参照して説明する。
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム層201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム層201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム層201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、その上に無機酸化物の蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。
金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明では、白の反射濃度が0.1〜0.3の窓あき部を有することが特徴であり、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、無機酸化物の蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
上記の異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルム層の上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルム層の上に、先に、物理気相成長法により、無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
(6)ガスバリア性塗布膜
本発明で使用するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の基材フィルム層の融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
また、前記ガスバリア性組成物を上記基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜180℃、かつ、上記基材フィルム層の融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理し、ガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。
本発明においてケイ素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1 nM(OR2)mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OC2H5)4、テトラプロポキシシランSi(0C3H7)4、テトラブトキシシランSi(OC4H9)4等を例示することができる。
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH3)3、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC2H5)3、ジメチルジメトキシシラン(CH3)2Si(OCH3)2、ジメチルジエトキシシラン(CH3)2Si(OC2H5)2、その他等を使用することができる。本発明では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
本発明では、上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH3)4、テトラエトキシジルコニウムZr(OC2H5)4、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−0C3H7)4、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC4H9)4、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH3)4、テトラエトキシチタニウムTi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−0C3H7)4、テトラnブトキシチタニウムTi(OC4H9)4、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH3)4、テトラエトキシアルミニウムAl(OC2H5)4、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC3H7)4、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC4H9)4、その他等を使用することができる。
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲である。10質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、基材フィルム層を被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲である。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルム層を被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは20〜200質量部の配合割合である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
前記ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
本発明で使用するガスバリア性組成物は、前記一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得たガスバリア性組成物である。上記ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
本発明で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
また、ゾル−ゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
また、上記ガスバリア性組成物において用いられる「酸」としては、上記ゾル−ゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
更に、上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
本発明において、ガスバリア性積層フィルムは、以下の方法で製造することができる。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
次いで、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した基材フィルム層を20℃〜180℃、かつ基材フィルム層の融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、前記無機酸化物の蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成したバリア性フィルムを製造することができる。
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたバリア性フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してバリア性フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したバリア性フィルムを製造することができる。
更に、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層しても、本発明に係るバリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムの製造法について、アルコキシドとしてアルコキシシランを使用し、より詳細に説明する。
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が加水分解の触媒として作用する。次いで、ゾル−ゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。また、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。
上記反応において、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成される。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、基材フィルム層、または、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルム層、または前記無機酸化物の蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
なお、本発明では、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルに調節した場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れる。
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
(7)アンカーコート剤
本発明では、例えばポリオレフィン層を押出し形成する際に、前記ガスバリア性塗布層上にアンカーコート剤を介してポリオレフィン層を形成することができる。使用するアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができ、バリア性フィルムとヒートシール層との密接着性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックの発生を防止し、ラミネート強度を向上させることができる。上記アンカーコート剤からなるアンカーコート剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
(8)ポリオレフィン層
本発明で使用するポリオレフィン層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの炭素数2〜5のオレフィンの重合体である。該ポリオレフィン層は、アンカーコート剤上に溶融して積層されることが好ましく、更にポリオレフィン層の上に中間フィルム層を積層する場合でも、接着層などの介在なしに中間フィルム層を積層することができ、製造が簡便となる。
該ポリオレフィン層の厚さは10〜30μmであると機械的強度、生産適性などの点で好ましい。ポリオレフィン層の存在によって、包装用積層フィルムにこしを付与することができ、自立可能な包装用積層フィルムとなる。
(9)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。
なお、本発明で使用するヒートシール層は、帯電防止剤含有ヒートシール層であってもよい。ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。
(10)中間フィルム層
本発明では、前記ガスバリア性積層フィルム層とヒートシール層との間のいずれかの層間に、中間フィルム層を設けることができる。使用しうる中間フィルム層としては、本発明の包装用積層フィルムの用途に足る機械的、物理的、化学的強度に優れ、特に耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性などに優れる樹脂を広く使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂などの一種以上を好適に使用することができる。本発明においては、特にポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。包装用袋体は、更に外装され市販される場合があり、外装体内で自立できることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂であれば機械的、化学的強度に優れ、かつこのような腰を付与することができる。
本発明において、中間フィルム層の厚さは、強度、耐突き刺し性、剛性などが確保できれば特に限定はないが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜40μmである。
(11)ラミネート用接着剤
本発明では、上記ポリオレフィン層の上にラミネート用接着剤を介して中間フィルム層をドライラミネート積層法を用いて積層してもよい。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができる。
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
(12)印刷層
本発明では、前記ガスバリア性積層フィルム層とヒートシール層との間のいずれかの層間に、印刷層を含むことができる。印刷方法に限定はなく、例えばグラビア印刷で印刷層を形成することができる。
印刷層としては、樹脂と溶媒から通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。
このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。
また、溶剤によってインキの乾燥性が異なる。印刷インキに使用される主な溶剤は、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAであり、速く乾燥させるために沸点の低い溶剤を用いるが、乾燥が速すぎると印刷物がかすれたり、うまく印刷できない場合があり、沸点の高い溶剤を適宜混合することができる。これによって、細かい文字もきれいに印刷できるようになる。着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがあり、グラビアインキでは顔料を使用する。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものを好適に使用することができる。
上記は、グラビア印刷で説明したが、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。また、印刷は、裏印刷でも、表印刷でもよい。
(13)帯電防止剤層を含む他の積層フィルム
本発明は、帯電防止剤層の部分コーティングに特徴があり、従来公知の帯電防止剤層を含む他の積層フィルムにも応用することができる。このような帯電防止剤層を含む他の積層フィルムとしては、最外層に帯電防止剤層を有し、少なくとも基材フィルム層、ガスバリア性フィルム層およびヒートシール層とを含む積層フィルムであり、前記帯電防止剤層が、帯電防止剤層の下層、例えば基材フィルム層の一部にのみ部分コーティングされるものである。
このような積層フィルムとして、最外層の帯電防止剤層の下層に、基材フィルム層、ガスバリア性フィルム層、およびヒートシール層とを含むものがあり、ヒートシール層には帯電防止剤が含有されていてもよい。このような基材フィルムとしては、ポリプロピレンなどのポリオレフィンがある。また、ガスバリア性フィルム層としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体などがある。この延伸ポリプロピレンなどの基材フィルム層には印刷層を施してもよく、印刷層にラミネーション接着剤層を介してエチレン−ビニルアルコール共重合体などのガスバリア性フィルム層を積層し、次いでアンカーコート剤を介してポリエチレンなどのポリオレフィンを溶融押出しし、更に、帯電防止剤を配合するエチレン酢酸ビニール共重合樹脂などのヒートシール層を積層してもよい。ただし、これに限定されず、帯電防止効果を目的として帯電防止剤を配合する積層フィルムであって、帯電防止剤による滑り性を部分的に低減する用途を有する他の積層フィルムに広く応用することができる。
(14)包装用積層フィルムの製造方法
本発明の包装用積層フィルムは、予め基材フィルム層(21)の一方の面に、無機酸化物の蒸着膜(23)を設け、更に、該無機酸化物の蒸着膜(23)の面上に、表面処理層(25)を介して前記ガスバリア性塗布膜(27)を設けたガスバリア性積層フィルム(20)を製造し、この基材フィルム層(21)側に帯電防止剤層(10)を積層し、次いでガスバリア性積層フィルム(20)のガスバリア性塗布膜(27)側にアンカーコート層(31)を介してポリオレフィン層(30)を溶融押出しし、前記ポリオレフィン層(30)上に、例えばヒートシール層として帯電防止剤含有ヒートシール層(40)を積層して調製することができる。
更に、ガスバリア性積層フィルム(20)のガスバリア性塗布膜(27)側にプラズマ処理などの表面処理(51)を行った後に印刷層(50)を設け、該印刷層(50)上にアンカーコート層(31)を介してポリオレフィン層(30)を溶融押出しし、前記ポリオレフィン層(30)上に帯電防止剤含有ヒートシール層(40)を積層して調製してもよい。
更に、溶融押出ししたポリオレフィン層(30)の上に、中間フィルム層(60)を積層し、該中間フィルム層(60)上に帯電防止剤含有ヒートシール層(40)を積層して調製してもよい。なお、前記ガスバリア性積層フィルム(20)として、市販品を使用してもよい。
(15)部分コーティング方法
本発明では、前記ガスバリア性積層フィルム(20)に帯電防止剤層を部分コーティングする場合には、グラビア印刷法、ロールコート法などのコーティング方法を用いることで所定箇所にのみ帯電防止剤をコーティングすることができる。
部分コーティング箇所には特に限定はなく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、帯電防止剤による過度の滑りを抑制するため、相互に接触する箇所への塗布を避けて、部分コーティングする方法などがある。具体的には、削り節などの食品を収納する包装用袋体を製造する場合に、ヒートシール部での帯電防止効果を確保するため、ヒートシール部近傍にのみ帯電防止剤層(10)が積層されるように、帯電防止剤を部分コーティングする。また、包装用積層フィルムを三方ヒートシールして包装用袋体を製造する工程では、包装用袋体内に内容物が充填されていないため、ヒートシール時の内容物の噛み込みが発生しない。このため、製品開封時の帯電防止効果のみを目的とする場合には、ヒートシール部のうち開封箇所近傍にのみ帯電防止剤を被覆してもよい。なお、包装用袋体の開封箇所は、包装用袋体の上部に限定されず、側部でも底部でもよい。
このような帯電防止剤層の部分コーティングは、長尺の包装用積層フィルムで行ってもよく、包装用袋体製造用に切断した後に行ってもよい。ただし、長尺の包装用積層フィルムで行う方が効率的である。
長尺の包装用積層フィルムに部分コーティングする場合には、例えば図2(c)に示すように、帯電防止剤の塗布箇所をパターニングして部分コーティングする。
なお、図2(a)に示す、削り節用の三方シールによる包装用袋体の場合において、ヒートシール予定部の底部および上部に部分コーティングする場合には、例えば、ヒートシール予定幅がフィルム端部から10mmである場合には、フィルム端部から8〜30mmであることが好ましく、より好ましくは10〜25mm、特に好ましくは12〜20mmである。この範囲は、用途や開封のための切り込みの位置などによって適宜選択することができ、帯状に塗布する場合に限定されず、上記範囲内で帯電防止剤をドット状、格子状、不定形状に塗布するものであってもよい。
なお、前記したように、帯電防止剤層を含む他の積層フィルムに帯電防止剤層の部分コーティングを応用することができる。例えば、最外層に帯電防止剤層を有し、少なくとも基材フィルム層、ガスバリア性フィルム層およびヒートシール層とを含む積層フィルムとして、帯電防止剤層/延伸ポリプロピレン層/印刷層/ラミネーション接着剤層/エチレン−ビニルアルコール共重合体/アンカーコート剤層/ポリオレフィン層/帯電防止剤含有ヒートシール層を例示して、帯電防止剤層が部分コーティングされたものを製造する。この場合には、延伸ポリプロピレン層に印刷層を施し、またはあらかじめ印刷層が形成された延伸ポリプロピレン層に、延伸ポリプロピレン層の印刷面とは反対面に帯電防止剤層を、前記した方法で部分コーティングする。次いで、前記印刷層面にドライラミネート接着剤を塗布し、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムを積層し、次いで、アンカーコートを塗布した後にポリエチレンなどのポリオレフィンを溶融押出し、帯電防止剤含有ヒートシール層をラミネートして製造することができる。なお、本発明は、帯電防止剤層を部分コーティングする工程を含むものであれば、積層フィルムの構成は上記に限定されるものではない。
(16)包装用袋体
本発明の包装用袋体は、上記包装用積層フィルムのヒートシール層を対向するように重ね合わせ、端部を袋状にヒートシールして製造することができる。なお、本発明では、本発明の包装用積層フィルムを使用する以外は、従前の積層フィルムを用いる場合と同様にして、包装用袋体を製造することができる。
例えば、包装用袋体には、商品名、内容量、賞味期限などの情報が印刷されることが多い。このような内容を印刷層に有する包装用積層フィルムの表面および裏面が、包装用積層フィルムに図2(c)に示すように割り当てられている場合、ヒートシール層同士が向き合うように該フィルムを印刷流れ方向に沿って中央で二つに折り返し、かつ表面と裏面とを対向させ、所定のヒートシール予定箇所を三方ヒートシールし、所定箇所で切断する。
なお、包装用袋体は、全てを切断せずに二連結または3連結以上した形状としてもよく、更に連結部にミシン目などを設けて切断しやすくしてもよい。
本発明の包装用積層フィルムは、上記三方シールに限定されるものでなく、その他、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態、その他等の内容物に合った種々の形態からなる包装用袋体を製造し得る。なお、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
また、本発明の包装用袋体には、例えば図2(a)に示すように、容易に開封できるように、切り込み部(90)を設けてもよい。このような切り込みは使用するフィルムの延伸方向などを勘案して適宜選択することができる。
本発明の包装用袋体に収納できる内容物としては、カツオ、サバなどの削り節、煮干類、だしなどの風味調味料類、ふりかけ、茶漬け、シラス、ゴマ、しいたけなどの茸類、くるみ、ピーナッツなどのナッツ類、ポテトチップスなどオン菓子類、乾燥ワカメなどの海草類、裂きイカ、乾燥ホタテなどの魚介類、粉末コーヒーなどの食品、顆粒状、粉体状の医薬品、静電気でショートする回路、磁気記録体などの電子部品、粉末洗剤などがある。