JP4786004B2 - 制電性包装材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機高分子制電層を有する多層構造体から形成され、静電気の発生及び帯留防止性に優れた特性を有する包装袋、包装容器等の包装材(本明細書中において、単に「制電性包装材」という。)に関するものである。本発明の制電性包装材は静電気を嫌う一般的包装用途のみならず、特定用途、例えば、磁気メディア、光メディア、光磁気メディア等の記録媒体や電子通信工業で用いられるパーツ類、受動素子、能動素子、それらの集積化されたIC、LSI、VLSIやLCD、プラズマディスプレー等の制電性包装材、更に、これら部品を実装し、組み立てて製品又は半製品とするまでの各運送、搬送、保管、組立工程において専用に用いられる制電性包装材、例えばキャリアテープ、トレイ、マガジン、バルクケースのような物品を包装するための制電性包装材及び更にそれらをまとめて包装する制電性包装材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂フィルム又はシート(本明細書中において、単に「熱可塑性樹脂フィルム」という。)は、従来から耐熱性、寸法安定性、機械的強度等に優れるため、包装用フィルム、工業用フィルムとして、多量かつ広い範囲に使われている。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等は、耐熱性は劣るが、成形性の良さ、安価である等の理由で包装材料として一般的に用いられている。合成樹脂は一般的に誘電性であるため、合成樹脂からなる構造形成体の表面に静電気が発生しやすく、ほこり等が表面に付着しやすくなり、包装材料が他物品に吸引されたり、また内容物が吸引されて取り出せなくなる等のトラブル、更には放電が起こる等の危険もあり、改良の必要があった。更に、昨近の電子技術の進歩により包装材料に一層のクリーン度が要求されるとともに、半導体素子の静電気による破壊などが問題となっている。
【0003】
一般的にはフィルム状の包装材料の帯電防止剤として界面活性剤が用いられるが、界面活性剤では塵、ほこり等の付着を抑制するのに充分な表面抵抗(1010Ω/□以下)が得られないのみならず、帯電防止能が周囲の湿気や水分の影響を受け変化しやすい。特に、界面活性剤により低下したフィルムの表面の電気抵抗が、低湿度下では大幅に増大して所望の帯電防止能が得られなくなる欠点がある。このことは、工程中に洗浄等による高湿度雰囲気やキュアー等による低湿度雰囲気、そして最終的に乾燥した環境下におかれることが多い電子材料の包装材料として極めて不都合なことである。
【0004】
このような理由のもと、低湿度環境下で静電気障害のない包装材を形成するためのフィルムが求められつつあり、そのためには低湿度下で1010Ω/□以下の表面抵抗値を与える帯電防止剤の出現が望まれている。このような低表面抵抗値を与える素材として、カーボンブラックを混合した樹脂を用いることが多い。
【0005】
しかし、このものは透明性に劣り、内容物や下地層の目視検査や光センシングによる検査には適さない。透明で制電性のある材料としてはITOやSnO2の蒸着膜やそれらの粉末を混合した樹脂を用いることが考えられるが、包装材料として用いるには製造工程が複雑であるという欠点があった。
【0006】
同様の特性を示す材料として、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子が知られているが、いずれも、特定の有機溶媒には可溶であるが、水や水/アルコール混合溶媒系には不溶または分散不可であるため、芳香環にスルホン酸基を結合させる方法等が行われ、かつ単独では充分な膜特性が出ないため、水溶性または水分散性樹脂を混合する方法が行われてきた。しかし、ポリアニリン又はその誘導体との相溶性の良い樹脂を用いた場合は所定の表面抵抗値が出ず、反対に所定の表面抵抗値が出る場合は、表面が白濁してフィルム本来の透明性を損なうという問題が生じていた。
【0007】
一方において、包装材料に充分な制電性を持たせるために包装材料の最表面に制電層を設けなければならないという制約があり、耐擦傷性や生ずる導電粉末による内容物の汚染、機能劣化の問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の制電性包装材の有する問題点を解決し、熱可塑性樹脂フィルムからなる構造形成体の優れた点を保持し、低湿度下でも充分な制電性を有し、かつ、積層構成の自由度が高く、容易に入手することができる多層構造体から形成されてなる制電性包装材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の制電性包装材は、スルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有共重合ポリエステルとを必須成分とし、24℃・14%RH雰囲気下で測定した表面抵抗が1×1010Ω/□以下である一方の外側に位置する有機高分子制電層と、互いに異なる二種類のポリエステルからなる二層のポリエステル層とを有する多層構造体から形成されてなり、前記互いに異なる二種類のポリエステルからなる二層のポリエステル層のうちの他方の外側に位置し、内容物に直接接する層がスルホン酸基非含有のポリエチレンテレフタレートの原料モノマーのうち酸性分にイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステルからなるヒートシール易接着性層であることを特徴とする。
【0010】
上記の構成からなる本発明の制電性包装材は、熱可塑性樹脂フィルムからなる構造形成体の優れた点を保持し、低湿度下でも充分な制電性を有し、かつ、積層構成の自由度が高く、容易に入手することができる多層構造体から形成されてなる制電性包装材である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の制電性包装材の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明においては、ポリアニリン又はその誘導体とイオン性基含有共重合ポリエステルとを必須成分とし、24℃・14%RH雰囲気下で測定した表面抵抗が1×1010Ω/□以下である有機高分子制電層と、互いに異なる二種類のポリエステルからなる二層のポリエステル層とを有する多層構造体から形成されてなる包装袋又は包装容器である制電性包装材であることによりその目的が達成される。更に、有機高分子制電層として、スルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有共重合ポリエステルを必須成分とする重合体を用いることが極めて有効である。
【0013】
次に、本発明の制電性包装材を形成する多層構造体の構成成分について説明する。本発明における有機高分子制電層を形成するのに用いるポリアニリン又はその誘導体としてはいかなるものも用い得るが、制電性の点でドープ状で積層することができるものであることが好ましい。この場合、ポリアニリンとスルホン化ポリアニリンの混合物でも良く、それぞれの単体でも良い。ポリアニリンの誘導体としては実用的には、スルホン化ポリアニリンを用いるのが典型的であるので「ポリアニリン又はその誘導体」を代表する例として、スルホン化ポリアニリンの例で説明するが、これに限定されるものではい。そのなかで典型的なスルホン化ポリアニリンとしては、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸を主成分とするアニリン系共重合体スルホン化物が挙げられる。本発明の有機高分子制電層として特にアミノアニソールスルホン酸を主成分とするスルホン化ポリアニリンが好適である。さらに、本発明において、ポリエステル層上に積層するのに、塗布性、延展性、塗布体の硬度の特性を向上させる点において、スルホン酸基含有共重合ポリエステル、特に、5−スルホイソフタル酸単位を4〜10モル%含むスルホン酸基含有共重合ポリエステルを併用することはさらに好適である。
【0014】
ここで、アミノアニソールスルホン酸類の具体例として、2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−5−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−5−スルホン酸、3−アミノアニソール−6−スルホン酸、4−アミノアニソール−2−スルホン酸、4−アミノアニソール−3−スルホン酸等を挙げることができる。アニソールのメトキシ基がエトキシ基、iso−プロポキシ基等のアルコシキ基に置換された化合物を用いることも可能である。
【0015】
しかし、2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−5−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−6−スルホン酸が好ましく用いられる。アミノアニソールスルホン酸を主成分とするスルホン化ポリアニリンが本発明を構成する有機高分子制電層の1成分に用いられる。
【0016】
本発明において用いるスルホン化ポリアニリンは、スルホン酸基が芳香環に対して70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%含有する重合体である。また、スルホン酸基を含む芳香環と含まない芳香環が混在したり、交互に並んだりしても、本発明の目的には問題はない。
【0017】
上記スルホン化ポリアニリンのスルホン酸基含有率が70%未満であると該共重合体の水、アルコールまたはそれらの混合溶媒系等への溶解性又は分散性が充分でないことがあり、そのような場合は結果として基体への塗布性及び延展性が悪くなり、得られる塗布膜の制電性が低下する傾向になる。本発明に用いられるスルホン化ポリアニリンの数平均分子量は通常300〜500000程度であり、1000以上であるのが前記溶媒への溶解性及び塗布膜の強度の点で好ましい。
【0018】
有機高分子制電層を形成するためのポリアニリン又はその誘導体の使用割合は通常、溶媒100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜2重量部である。該スルホン化ポリアニリンの使用割合が0.01重量部未満では、溶液の長期保存性が充分ではなく、ポリエステル層表面のコート層にピンホールが発生しやすくなりピンホールが発生した場合はコート面の制電性が著しく劣る。また、使用割合が10重量部を越えるとスルホン化ポリアニリンの水又は水/有機溶媒系への溶解性、分散性及びコート層形成時の塗布性が悪くなる傾向があり、好ましくない。
【0019】
前記溶媒は、ポリエステル層で代表される熱可塑性樹脂フィルムを溶解又は膨潤させないならば、いかなる有機溶媒も使用可能であるが、水又は水/アルコール等の有機溶媒との混合溶媒を用いる方が、使用環境面で好ましいのみならず、熱可塑性樹脂フィルムへの塗布性及び制電性が向上する場合もある。使用するのに好ましい有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、メチルプロピレングリコール、エチルプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類などが好ましく用いられる。これらは、水と任意の割合で混合して用いられる。この例として、具体的には、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/イソプロパノール、水/メチルプロピレングリコール、水/エチルプロピレングリコールなどを挙げることができる。用いられる割合は水/有機溶媒=1/10〜10/1が好ましい。
【0020】
本発明で有機高分子制電層を形成するのに用いるイオン性基含有共重合ポリエステルとは、スルホン酸基、カルボキシル基等のイオン性基、あるいはそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸等を主鎖又は側鎖に有する共重合ポリエステルである。共重合の様式はランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよく、特に限定されない。
【0021】
上記イオン性基含有共重合ポリエステルの中の、スルホン酸基及びそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合した共重合ポリエステル(本明細書中において、単に「スルホン酸基含有共重合ポリエステル」という)とは、ジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分の一部にスルホン酸基及びそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合したポリエステルが典型的なものであるが、中でも、スルホン酸基及びそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有した芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分に対して4〜10モル%の割合で用いて調整した共重合ポリエステルが、本発明を構成する有機高分子制電層の表面硬度が高いという点では好ましい。このようなジカルボン酸の例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が好適である。
【0022】
他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などが挙げられる。本発明を構成する有機高分子制電層の表面硬度の向上の点から、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましい。
【0023】
スルホン酸基含有共重合ポリエステルを製造するためのグリコール成分としては、エチレングリコールが主として用いられ、この他に、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが用いることができ、中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどを共重合成分として用いると、スルホン化ポリアニリンとの相溶性が向上するという点で好ましい。
【0024】
この他、共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合などを含有するジカルボン酸成分、グリコール成分を含んでも良い。さらに、得られる本発明を構成する有機高分子制電層を熱可塑性樹脂フィルムに塗布して得られる塗膜の表面硬度を向上させるために、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多カルボキシ基含有モノマーを5モル%以下の割合で上記ポリエステルの共重合成分として用いることも可能である。5モル%を越える場合には、得られるスルホン酸基含有共重合ポリエステルが熱的に不安定となり、ゲル化しやすく、本発明を構成する有機高分子制電層の成分として好ましくない。
【0025】
前記スルホン酸基含有共重合ポリエステルは、例えば、上記ジカルボン酸成分、上記グリコール成分、および必要に応じて、上記カルボキシル基含有モノマーを用いて、常法により、エステル交換反応、重縮合反応などを行うことにより得られる。得られたスルホン酸基含有共重合ポリエステルは、例えば、n−ブチルセロソルブのような溶媒とともに加熱撹拌され、さらに撹拌しながら徐々に水を加えることにより、水溶液又は水分散液とされて用いることができる。
【0026】
本発明において、前記イオン性基含有共重合ポリエステルの含有割合は、得られる有機高分子制電層の制電性および機械的特性から、ポリアニリン又はその誘導体100重量部に対して50〜2000重量部が好ましく、さらに好ましくは100〜1500重量部、最も好ましくは200〜1000重量部である。
【0027】
本発明を構成する有機高分子制電層は、有機高分子制電層を形成する重合体を溶媒に溶解又は分散させて、所望の熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗布して得ることができる。ここで用いることができる溶媒は、熱可塑性樹脂フィルムを溶解又は膨潤させないならば、いかなる有機溶媒も使用可能である。水、又は水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、使用環境面で好ましいだけでなく、本発明を構成する有機高分子制電層の制電性が向上する場合もある。
【0028】
上記有機溶媒しては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルプロピレングリコール、エチルプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類などが好ましく用いられる。これらの有機溶媒は、水と任意の割合で混合して用いることができる。
【0029】
混合溶媒の例としては、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/イソプロパノール、水/メチルプロピレングリコール、水/エチルプロピレングリコールなどが挙げられる。その混合割合は、水/有機溶媒=1/10〜10/1が好ましい。
【0030】
溶媒の使用割合は特に制限されないが、通常、有機高分子制電層を形成する重合体の合計量100重量部に対して、1000〜2000重量部である。溶媒の使用量が極端に多い場合は、有機高分子制電層の造膜性が悪くなる恐れがある。この場合、有機高分子制電層にピンホールが発生しやすくなり、制電性が著しく低下、すなわち帯電防止性が低下する恐れがある。一方、溶媒の使用量が極端に少ない場合は、このスルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有共重合ポリエステルとの上記溶媒への溶解性または分散性が不十分となり、得られる有機高分子制電層の表面が平坦になりにくくなる恐れがある。
【0031】
本発明を構成する有機高分子制電層をポリエステル層などの熱可塑性樹脂フィルム上に積層するには、上記成分のみでも、造膜性及び延展性が優れており、得られる有機高分子制電層の表面硬度も良好であるが、上記溶媒に可溶な界面活性剤及び/又は他の高分子化合物をさらに併用することにより、濡れ性の悪い熱可塑性樹脂フィルムヘの塗布性も向上することができる。
【0032】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。
【0033】
本発明において用いられる界面活性剤を用いる場合、その量は、有機高分子制電層を形成する重合体の合計量100重量部に対して、通常、0.001〜1000重量部である。
【0034】
上記界面活性剤が1000重量部を越えると形成した有機高分子制電層の反対面に有機高分子制電層中の界面活性剤が裏移りして、2次加工工程等で問題を生ずるような可能性がある。
【0035】
本発明の制電性包装材を構成する有機高分子制電層に含有させることができる高分子化合物としては、前記のイオン性基含有共重合ポリエステルに加えて、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂、水酸基又はカルボン酸基を含んだ水溶性又は水分散性共重合ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどのアクリル酸エステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのエステル樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリクロロメチルスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルフェノールなどのスチレン樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール類、ノボラック、レゾールなどのフェノール樹脂などを用いることができる。中でも上記スルホン化ポリアニリンとの相溶性の点から、および、ポリエステルなどからなる熱可塑性樹脂フィルムとの接着性の点から、水酸基又はカルボン酸基を含んだ水溶性又は水分散性共重合ポリエステル及びポリビニルアルコール類が好ましい。また、いかなる高分子化合物を用いる場合にも、低軟化点のものを選ぶことにより有機高分子制電層に熱接着性を付与することができる。
【0036】
上記高分子化合物の量は、好ましくは、ポリアニリン又はその誘導体とイオン性基含有共重合ポリエステルとの合計量100重量部に対して、0〜1000重量部、さらに好ましくは、0〜500重量部である。上記高分子化合物の量が1000重量部を超えて用いる場合には、スルホン化ポリアニリンの導電性が現れず、有機高分子制電層の帯電防止機能が発揮されない。
【0037】
本発明の制電性包装材の有機高分子制電層には、上記に示した他に、種々の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、TiO2、SiO2、カオリン、CaCO3、Al2O3、BaSO4、ZnO、タルク、マイカ、複合粒子などの無機粒子;ポリスチレン、ポリアクリレート又はそれらの架橋体で構成される有機粒子などが挙げられる。制電性のさらなる向上を目的として、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)の粉末、それらを被覆した無機粒子(TiO2、BaSO4など)、カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維などのカーボン系導電性フィラーなどを添加することも可能である。上記添加剤の含有量は、スルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有共重合ポリエステルとの合計量100重量部に対して、4000重量部以下の割合であることが好ましい。4000重量部を越える場合には、有機高分子制電層の粘度アップにより塗布ムラの原因となるおそれがある。
【0038】
ポリステル層などの熱可塑性樹脂フィルムの表面に有機高分子制電層を積層する方法としては、スプレーコート法、グラビアロールコーティング法、リバースロールコーティング法、ナイフコータ法、ディップコート法、スピンコート法などがあるが、本発明の構成成分である有機高分子制電層を形成するのに適したコート法は特に制限はない。フィルムヘの塗布を製膜工程内で同時に行うインラインコード法と製膜ロール製造後独立して行うオフラインコート法があり、また、印刷技術を用いて積層することもできるが、用途に応じて好ましい方法を選ぶことが可能で、特に制限はない。本発明で用いるスルホン化ポリアニリンは250℃以上の高温では不安定であるが、200℃で約3分間も熱安定性が良好であるので、共存する高分子化合物及び添加剤の種類にもよるが、通常短時間の200℃加熱ならば制電性に悪影響を与えない。むしろ、制電性の向上の点では、200℃付近で30秒以内加熱することが好ましい。本発明の構成成分である有機高分子制電層は、下記に示される積層用原料とともに共押出積層することもできる。
【0039】
本発明の制電性包装材を形成する、互いに異なる2種類のポリエステル層とは、その構成する酸性分又はグリコール成分の1成分以上が異なるか又は構成する成分の組成比が異なる及び/又は添加剤が異なる2種類のポリエステルがそれぞれに層を構成している状態をさす。この場合、各層のポリエステルは更に複数のポリエステルの混合物であってもよい。このことにより、各ポリエステル層に別々の機能、例えば、機械的強度、UVカット性、ガスバリアー性、熱接着性、印刷性、易接着性、易剥離性、隠蔽性、収縮性を機能分担して具有することができる。
【0040】
ここでポリエステルは、主たる酸性分はテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、主たるグリコール成分はエチレングリコール又はテトラメチレングリコールからなるのが通常であるが、他の酸性分、グリコール成分が主成分であるポリエステルであっても何らさしつかえない。また、共重合することができる酸性分としてはイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などを任意に用いることができる。また、共重合することができるグリコール成分としてはテトラメチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどを任意に用いることができる。更に前述したイオン性基含有共重合ポリエステルを用いることもできる。また、ポリエステルに添加できる添加剤はいかなるものも含有し得る。
【0041】
また、本発明の制電性包装材に用いるポリオレフィン層としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン等の単独重合体又は共重合体の無延伸、一軸延伸又は二軸延伸フィルムであって、その材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどを例示することができる。
【0042】
また、本発明の制電性包装材に用いるその他の材料としては、ポリアミド、ポリパラフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリスチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、フッ素系樹脂、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の単一又は混合物があげられる。これらの材料をシート、フィルム化する方法には特に制限はなく、溶融押出成形、流延法、射出成形法等により作られ、必要に応じてステンター法、ロール延伸法、ブロー延伸法、圧延法等により一軸又は二軸に配向を与えることができる。また、非相溶性の原料の場合はこの工程で空洞含有物とすることができる。更に配向条件によっては熱収縮性を付与することもできる。熱可塑性樹脂フィルムの厚みとしては規定はないが、5〜1000μm、好ましくは25〜750μm程度である。なお、熱可塑性樹脂フィルム中には滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、UV吸収剤等、乾燥剤等の添加剤を含んでも良い。
【0043】
本発明を構成する多層構造体にさらに他の層(本明細書中において、単に「基材」という)に積層して用いる場合は、基材としてアルミニウム箔、紙、銅箔、金箔、無機薄膜、さらに他の無延伸、1軸延伸又は2軸延伸フィルム、シート等を用いることができる。また、有機高分子制電層はポリエステル層の内面に位置して基材に面してもよく、また逆に、基材側と反対に位置して多層構造体の表面に配してもよい。ここで、ポリエステル層を1、ポリオレフィン層を2、有機高分子制電層を3、基材を4としたとき、次のような組み合わせが典型的なものとして例示される。
【0044】
1/1/3、1/3/1、1/2/3、2/1/3、1/3/2、1/4/1/3、1/1/4/3、4/1/1/3、1/1/3/4、4/1/3/1、1/4/3/1、4/1/2/3、1/4/2/3、1/2/4/3、1/2/3/4、4/2/1/3、2/1/4/3、2/1/3/4、4/1/3/2、1/4/3/2、1/3/4/2、1/3/2/4
【0045】
なお、これらの組み合わせにおいて、1ポリエステル層が2層用いられるときは、互いに異なる二種類のポリエステルからなる層であり、一方が単独重合ポリエステル、他方が共重合ポリエステルである場合の他、共に共重合ポリエステルであって共重合割合が異なるポリエステルからなる二層であるのが典型的である。
【0046】
本発明において、多層構造体と基材との積層方法は特に限定はなく、適当な方法を選択して利用できる。例えば、共押出積層法、インラインコート法、オフラインコート法、エクストルージョンラミネート法、ホットメルトラミネート法、ドライラミネート法、ウエットラミネート法等を適宜利用し、必要に応じ、アンカーコート、プライマーコート、コロナ処理、火炎処理、UV照射処理等を併用することができる。更に、積層後にも先述の適当な方法にて積層体に様々な配向を与えることができる。また、積層する工程はいかなる段階でも良く、有機高分子制電層を設ける前であっても後であっても良い。
【0047】
本発明の、包装袋、包装容器などの制電性包装材は、包装材として使用するために多層構造体の任意の層の間に意匠用、表示用、検査用の印刷層を有する積層体であってもよい。また、有機高分子制電層が印刷層を兼ねても良い。包装袋を作るためには常套手段によりヒートシールすることが行われる。ヒートシール方法としてはバーシール法、回転ロールシール法、インパルスシール法、溶媒シール法、溶断シール法、熱溶融シール法、超音波シール法、高周波シール法等があり、任意の方法を選択することが可能である。得られる包装袋の形態としては、ピロー包装袋、三方シール袋、四方シール袋等目的に応じて任意の形態を選択することができる。また、包装容器を作るための方法としては制限はなく、代表的なものとして熱成形法、例えばブロー成形法、ドレープ成形法、真空成形法があり、また、折り曲げ加工を利用することもできる。得られる包装容器の形態としては、トレイ、マガジン、バルクケース、キャリアテープ、ボトル、カップ、カートン状物、箱、ブリスターパッケージ等がある。また、それら容器を封止する蓋材、シート材も本発明の技術により製造できるものがある。例えば、キャリアテープ用剥離シート、カバーテープやトレイ、カップの蓋などがあげられる。
【0048】
本発明の制電性包装材は上記のように製袋時、封止時に熱による軟化又は溶媒による膨潤を利用してシールするのが通常である。この処理に適するように有機高分子制電層中のイオン性基含有共重合ポリエステルの組成を決めておくこともできる。例えば、脂肪族モノマーを用いてガラス転移点や融点を下げたり、イソフタル酸やネオペンチルグリコールの共重合比を変えて結晶性を低下させる等することにより熱接着性を向上させることができ、同時に溶媒による膨潤も起こり易くなる。また、溶媒の溶解度パラメターと共重合ポリエステルの同パラメターとを膨潤するのに適当な関係になるようモノマーの種類及び共重合比を決めることができる。また、有機高分子制電層にシール能が不足している場合は、あらかじめシールする部分のみ有機高分子制電層の上に専用のシーラントや接着又は粘着用材料を設けることもできる。また、有機高分子制電層の下にシーラントの役割をする層を設け、あらかじめシールする部分のみ有機高分子制電層を開口しておくこともできる。更に、シール処理により有機高分子制電層が破壊されるようにしておき、その下にシーラント層を一面にわたって設けておくこともできる。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例、比較例及び参考例を例示して本発明の具体化方法を詳細に説明する。各例に共通して用いた評価方法は次のとおりである。
【0050】
1−1.拭き取り法による有機高分子制電層の厚み測定
操作は25℃、50%RHの恒温恒湿室内で行う。有機高分子制電層を設けたフィルム又はテストピースを3日間放置後、除電器にて10秒除電し、10−5gまで計れる電子天秤にて重量測定をする。その後、酢酸エチル、アセトン、メタノール等の溶媒をベンコット(旭化成工業社製)につけ、有機高分子制電層を拭き取り3日間放置する。再び除電器にて10秒除電し同様に電子天秤にて秤量し、拭き取り前後の重量減少量(g)を100倍し、1m2あたりの有機高分子制電層の重量(g/m2)を算出する。おおよそ、有機高分子制電層の密度は約1.00とし、有機高分子制電層の厚みを下式により求める。(ここで用いられるフィルム又はテストピースとはPETフィルムやシリカプレート等である。)
【0051】
有機高分子制電層の厚み(μm)=1.00×{1m2あたりの有機高分子制電層の重量(g/m2)} ・・・・・(式1)
【0052】
1−2.厚みあたりの吸光度法による有機高分子制電層の厚み測定
同一組成の有機高分子制電層を幾つか厚みを変えて透明なフィルム又はテストピース上に設け、分光光度計にて有機高分子制電層を特性吸収帯に於る厚みあたりの吸光度を求める。それらの試料を拭き取り法による有機高分子制電層の厚み測定を行い、拭き取り法による有機高分子制電層の厚み〜厚みあたりの吸光度のプロットを行い、直線部分を外挿した計量線を作成し、有機高分子制電層厚みが未知の試料に関し、特性吸収の厚みあたりの吸光度によりその厚みを予想する。この方法は拭き取り法が適さないサンプルに補助的に用いられる。なお、厚みあたりの吸光度測定時のチャートに干渉によるベースライン振動が表れた場合は、平均をとるようなスムージングを行う。
【0053】
2.表面抵抗の測定
有機高分子制電層を形成した時点で24℃・14%RH雰囲気下で1日放置した後、サンプル表面をタケダ理研社製表面抵抗測定器で印加電圧500V、24℃・14%RH雰囲気の条件下で測定した。
【0054】
3.帯電減衰時間の測定
米国ETS社製スタティックディケイメーターを用い、23℃・15%RH雰囲気で電極間にサンプルをはさみ、5.0kvの電圧を印加し、加電圧が5.0kvになったところで電極をアースし、アースしてから加電圧が0.05kvになるまでの減衰時間t99を測定した。
【0055】
(実施例1)
(a)スルホン酸基含有ポリエステル及び水分散液の調整
まずスルホン酸基含有ポリエステルを次の方法により合成し、次いで、その分散液を調整した。ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート46モル%、ジメチルイソフタレート47モル%及び5−スルホイソフタル酸ナトリウム7モル%を使用し、グリコール成分としてエチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%を用いて、常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行った。得られたスルホン酸基含有ポリエステルのガラス転移点は69℃であった。このスルホン酸基含有ポリエステル300部とn−ブチルセロソルブ150部とを加熱撹拌して、粘ちょうな溶液とし、さらに撹拌しつつ水550部を徐々に加えて、固形分30重量%の均一な淡白色の水分散液を得た。
【0056】
(b)スルホン化ポリアニリン溶液の調整
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100モルを23℃で4モル−リットルのアンモニア水溶液に撹拌溶解し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100モルの水溶液を滴下した。滴下終了後23℃で10時間さらに撹拌した後、反応生成物を濾別洗浄、乾燥し、粉末状の共重合体を13gを得た。この共重合体の体積固有抵抗値は12.3Ωcmであった。上記重合体3重量部を0.3モル/リットルの硫酸水溶液100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調整した。この時のスルホン化ポリアニリンのスルホン酸基の含有量は100%であった。
【0057】
(c)有機高分子制電層形成用塗布液の調整
スルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有ポリエステルの固形分比が30/70、さらに、界面活性剤エマルゲン810(花王社製)をスルホン化ポリアニリンとの比が8/100になるように混合し、更に水とイソプロパノールの等量混合液中に加え、総固形分濃度1重量%の塗布液を調整した。
【0058】
(d)多層構造体の作成
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンテレフタレートの原料モノマーのうち酸性分の22モル%にイソフタル酸を共重合し、平均粒径2.5μmのシリカ粒子を500ppm添加した共重合ポリエステルを用意した。次いで、2機の押し出しバレルを有し、マルチマニホールドダイスを有する多層押出機にて280〜290℃の温度で押し出し積層し、回転する冷却ロール(20℃)に巻き付けて急冷しPETシートの耳部を残して共重合ポリエステルが積層された積層体を得た。このときPET層の厚みは110μm、共重合ポリエステル層の厚みは31μmであった。このシートを85℃に加熱して回転速度の相異なる2組のニップロール間でシート進行方向に3.4倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムをステンター方式にて95℃に加熱しながら3.6倍延伸し、5%弛緩させつつ230℃の熱風で熱固定し巻き取った。得られたフィルムのPET層の厚みは10μm、共重合ポリエステル層は2.6μmであった。次に、このフィルムのPET層側に(c)で調整した塗布液をバーコート法にて塗布し70℃で熱風乾燥し、多層構造体を得た。
【0059】
(e)特性評価
(d)で得られた多層構造体の有機高分子制電層の厚み、表面抵抗、帯電減衰時間を測定した。結果を表1に示す。また、明るい白色光のともる部屋の中で、(d)で得られた多層構造体を透かしてカラーコード表示の金属皮膜抵抗器や数値表示の積層セラミックコンデンサを見ることでそれぞれの定数を確認することができた。この結果を表1に示す。
【0060】
(f)包装袋、包装容器の作成
(d)で得られた多層構造体を、その共重合ポリエステル層を内側にしてヒートシール法にて三方シールした。包装袋として実用性の高いものとなった。
【0061】
(参考例1)
実施例1の(d)多層構造体の作成において、フィルムのPET層側に(c)で調整した塗布液を塗布乾燥した後、共重合ポリエステル面にあらかじめヒートシールする部分を除いて(c)で調整した塗布液をバーコート法にて塗布し70℃で熱風乾燥した。その他は実施例1と同様の手順を踏んだ。
【0062】
(実施例2及び参考例2)
それぞれ実施例1及び参考例1の(c)の有機高分子制電層形成用塗布液の調整においてスルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有ポリエステルの固形分比を10/90にした以外は実施例1及び参考例1と同様の方法を用いた例である。
【0063】
(比較例1、2)
それぞれ実施例1及び参考例1の(c)の有機高分子制電層形成用塗布液の調整においてスルホン化ポリアニリンのかわりにドデシルベンゼンスルホン酸塩を用いた以外は実施例1及び参考例1と同様の方法を用いた例である。
【0064】
(参考例3)
二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡ポリエステルフィルム、厚さ25μm、東洋紡績社製)表面に実施例1の(c)で得た塗布液をバーコート法により塗布し70℃で熱風乾燥した。この塗布面の反対側の面にポリエチレンフィルム(LIX−2、厚さ40μm、東洋紡製社製)をドライラミネート法により、接着剤(主剤:AD590、硬化剤:RT86、東洋モートン社製)を介してラミネートして、多層構造体を得た。このものは実施例1の(f)の方法でポリエチレン面を内側として製袋することができた。
【0065】
(参考例4)
実施例1の(c)で得た塗布液をポリエチレンフィルム(LIX−2、厚さ40μm、東洋紡製社製)の表面にバーコート法によって後にシールする部分を残して塗布し、70℃で熱風乾燥した。次いで、これとは別に、二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡ポリエステルフィルム、厚さ25μm、東洋紡績社製)表面に実施例1の(c)で得た塗布液をバーコート法により塗布し70℃で熱風乾燥した。当該ポリエチレンフィルムの塗布面と反対面と、当該二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布面と反対面とを、ドライラミネート法により、接着剤(主剤:AD590、硬化剤:RT86、東洋モートン社製)を介してラミネートして、制電性積層体を得た。このものは、ポリエチレン面を内側として実施例1の(f)の方法で製袋することができた。
【0066】
(比較例3、4)
それぞれ参考例3及び4において制電層形成用塗布液として実施例1の(c)のスルホン化ポリアニリンのかわりにドデシルベンゼンスルホン酸塩を用いて作成した塗布液を用いて形成した以外参考例3及び4と同様の方法を用いた例である。
【0067】
(参考例5)
二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡ポリエステルフィルム、厚さ25μm、東洋紡績社製)表面に実施例1の(c)で得た塗布液をバーコート法により塗布し、70℃で熱風乾燥した。この塗布面上にポリエチレンフィルム(LIX−2、厚さ40μm、東洋紡製社製)をドライラミネート法により、接着剤(主剤:AD590、硬化剤:RT86、東洋モートン社製)を介してラミネートして、多層構造体を得た。このものは、ポリエチレン層面を内側として実施例1の(f)の方法で製袋することができた。なお、表面抵抗の測定はポリエチレンフィルムをラミネートしていないものを用いた。
【0068】
(参考例6)
参考例5において、二軸延伸ポリエステルフィルムを用いるかわりにイソフタル酸を酸性分の10モル%共重合した厚さ0.7mmの無定形共重合PETシートを用い、実施例1の(f)の方法のかわりに熱成形法である真空成形法を用い、フランジ部付のトレイとその蓋を作った。このものはフランジの部分を通常の方法により容易にシールすることができた。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】
本発明の制電性包装材によれば、低湿度下においても制電性に優れるため、湿気を嫌う物品を包装したり、乾燥、寒冷地での包装用として用いることができ、更に乾燥工程や乾燥保管を必要とする電子部品等の半製品の搬送用、包装用として好適である。加えて、その有機高分子制電層の電気抵抗率の低さゆえ有機高分子制電層の厚みを減じても充分な制電性が得られる。
【0072】
更に、制電性を必要とする表面に直接制電層が表出していなくとも制電性が発揮されるため包装包材を構成する積層構成の自由度が増し、特に、電子工業の半導体材料分野に於いては内容物に直接接する層に汚染物質を含まない構成を取ることができ、応用が期待される。
Claims (1)
- スルホン化ポリアニリンとスルホン酸基含有共重合ポリエステルとを必須成分とし、24℃・14%RH雰囲気下で測定した表面抵抗が1×1010Ω/□以下である一方の外側に位置する有機高分子制電層と、互いに異なる二種類のポリエステルからなる二層のポリエステル層とを有する多層構造体から形成されてなり、前記互いに異なる二種類のポリエステルからなる二層のポリエステル層のうちの他方の外側に位置し、内容物に直接接する層がスルホン酸基非含有のポリエチレンテレフタレートの原料モノマーのうち酸性分にイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステルからなるヒートシール易接着性層であることを特徴とする制電性包装材。
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