JP4965960B2 - タンデム編成方法および横編機 - Google Patents

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Description

本発明は、複数のキャリッジで複数の編地を同時に編成するタンデム編成方法および横編機に関する。
従来から、横編機では、針床の長手方向にキャリッジを往復走行させ、キャリッジに搭載されるカム機構で針床に並設される編針を選択的に駆動して編地の編成を行っている。間隔を開けた複数のキャリッジでそれぞれ並行して編地を編成するように、編地の編幅に対応する範囲を往復走行させれば、複数の編地を効率よく同時に編成することができることも知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照。)。
そのような複数の編地を編成する針床の範囲全体をキャリッジが往復走行し、各編地を編成する範囲で編糸を切換えるようにしても複数の編地を同時に編成することは可能である。しかしながら、キャリッジの往復走行のストロークが大きくなるので、キャリッジを複数用いて並行して編地を編成する方法の方が生産効率が高くなる。以下、このように並行して編地を編成する方法を「タンデム編成方法」として説明する。なお、特許文献1に開示されている平形編機では、1つの針床に対して4組のカム機構が用いられる。タンデム編成時は、2つのキャリッジにそれぞれ2組のカム機構を搭載して、それぞれのキャリッジを2カム機として使用する。2つのキャリッジを連結させれば、針床の全幅近くを使用する編幅の大きい編地を4カム機として編成することもできる。同様に、2つのキャリッジを有していれば、6カム機では3カム機としてのタンデム編成、8カム機では4カム機としてのタンデム編成がそれぞれ可能となる。
横編機では、編針に基本的なニットの編成動作を行わせるばかりではなく、タックやミスを組合せて、多様な組織柄を編成することができる。組織柄を自由に編成するためには、編成に使用する各編針について、少なくともニット、タックおよびミスの3種類の編成動作のいずれかを選択可能にする必要がある。キャリッジが針床に沿って走行する際のような一瞬間に各編針を選択可能な動作は何らかのON/OFFとなる2種類であるので、3種類の編成動作の選択などの完全な選針は、2段階の選択を組合せて可能となる(たとえば、特許文献3参照。)。
キャリッジに搭載されるカム機構は、編針を編成駆動するカムの組合せであるロックと、ロックで編針が受ける作用を予め選択する選針機構とを含む。特許文献3には、ロックの前後両側に1段階の選針機構となる選針部材を設ける構成が開示されている。キャリッジの走行方向後側に位置する選針部材によって、既に編成を終了した編針について選針を行い、編針を2群に選針する。この選針は、「予備選針」と呼ばれる。引続くキャリッジの反転移行時に、予備選針によって分けられた2群のうち1つの群の編針を、キャリッジの走行方向前側に位置する選針部材によってさらに2つの群に選別して、編針を3つのポジションに選針することができる。以下、予備選針の状態の編針に対して行う選針を、「本選針」と称することとする。すなわち、同一の選針部材が予備選針を行い、さらに反転して戻る際に本選針を行う。
図11は、予備選針と本選針とを分けて行うことを前提とするタンデム編成での編地の編成領域を示す。横編機1では、針床2を、全体でたとえば2286mm(90インチ)の範囲を編成に使用することができるものとする。2つのキャリッジ3a,3bを用いてタンデム編成を行うと、編成領域4a,4bでそれぞれたとえば939.8mm(37インチ)の編幅La,Lbまでの編地を編成することができる。ただし、編成領域4a,4bの中間に、幅Lcとして406.4mm(16インチ)の編地を編成しない領域を設ける必要がある。この領域は、キャリッジ3a,3bが編成領域4a,4bを抜けても、他方の編成領域3b,3a内に侵入しないようにする抜け代として必要となる。予備選針を行うカム機構5a,5bは、カムロック6の両側に選針機構7L,7Rをそれぞれ備えている。
図11(a)は、各キャリッジ3a,3bが対応する編成領域4a,4bの右側に位置し、キャリッジ3a,3bが図の左方向に走行すると、編成領域4a,4bでそれぞれ編地の編成を開始する直前の状態を示す。各編成領域4a,4bの編針は、キャリッジ3a,3bによる先行の右行時に、後行側となる選針機構7Lで予備選針された状態となっている。左側のキャリッジ3aは、右側の編成領域4bには侵入していないので、予備選針状態を壊してしまうことはない。キャリッジ3a,3bが走行方向を反転して、左行を開始すると、各編成領域4a,4bの編針は、図の右側から選針機構7Lによる本選針の作用を受け、カムロック6で選針状態に応じて駆動される。カムロック6に対して後行側となる選針機構7Rは、次のカムロック6に対する予備選針を行う。選針機構7L,7Rでの予備選針や本選針のための制御は、コントローラ8が予め設定される編成データに基づいて行う。
図11(b)は、各キャリッジ3a,3bが左行を終了して、右行を開始する直前の状態を示す。左行時にカムロック6に対して後行側となる選針機構7Rは、右行時に先行側となり、カムロック6に対して後行側での予備選針と先行側での本選針との2段階の選針を行う。カムロック6中には、走行方向の両側に対をなすように設けられ、走行方向に応じて交互に出没させるカムも含まれる(たとえば、特許文献4参照。)。特許文献4には、セレクトジャック下げカムを走行方向に応じて出没させる構成が開示されている。
特許第2753602号公報 特開昭61−63754号公報 特公昭61−20670号公報 特開平5−156553号公報
図11に示すように、2段階の選針を予備選針と本選針とに分けて行う選針機構7L,7Rをキャリッジ3a,3bに備える横編機1では、タンデム編成時に編成領域4a,4b間に抜け代となる領域を設け、キャリッジ3a,3bの走行を抜け代となる領域に留め、予備選針状態が壊されないようにしている。このため、タンデム編成で編成可能な編地の編幅La,Lbが制限されてしまう。
特許文献1および特許文献2に開示されているタンデム編成では、キャリッジの他方の編地への侵入が許容され、編地間の間隔が狭くなって、同一の針床からより広幅の編地が編成可能となると期待される。ただし、特許文献1,2には、選針をどのように行うかは記載されていない。特許文献1の第5頁左欄(第9欄)第15行〜第23行には、キャリッジが隣接する編地に対応する編針空間の内側に位置しても、キャリッジのカムシステムが編針に対して作用しないようにされており、その結果、キャリッジが連行するヤーンガイドの糸が編針によって捕えられることがない旨、記載されている。このような記載は、キャリッジの走行方向に応じて最先頭となる選針機構のみで2段階の完全な選針が可能であることが前提となっているものと理解される。キャリッジが自己に割当てられる領域に侵入する際に最先頭となる選針機構のみで完全な選針が可能なので、キャリッジが自己に割当てられる領域を抜ける際に編針が糸を捕えない位置に退避させておくことができる。編針が糸を捕えない位置に退避している領域に、他の領域に割当てられるキャリッジが侵入しても、侵入したキャリッジの選針機構では編針の退避状態を保つようにすれば、侵入による影響を生じさせないようにすることができる。
ただし、このような完全な選針は、特許文献3に示すような2段階の選針を、連続してまとめて行うこととなる。このために、選針機構の幅が大きくなる。選針機構は、キャリッジに対して往復走行する両側に設けるので、キャリッジの幅が大きくなる。キャリッジ幅が大きくなると、編成時には編成領域とキャリッジの幅とを含めたストロークの範囲を走行する必要があり、走行ストロークが大きくなって、生産性が低下してしまう。
本発明の目的は、キャリッジ幅を大きくすることなく、タンデム編成時に他のキャリッジの編成領域にも侵入可能で、編成領域の幅を大きくすることができるタンデム編成方法および横編機を提供することである。
本発明は、横編機で編針駆動用のカム機構を搭載して針床の長手方向に沿って往復走行するキャリッジを複数使用し、重複しないように設定される針床の領域を各キャリッジに割当てて、該複数の編地を同時に編成するタンデム編成方法において、
各キャリッジが搭載するカム機構は、2段階の選針に応じて編針を編成駆動するためのカムの組合せであるカムロックと、カムロックに対して走行方向の両側に備えられ、1段階の選針が可能な選針機構とを備え、
各選針機構は、編針に作用して2つの選針状態を選択可能なアクチュエータと、作用状態と不作用状態とが切換え可能で、作用状態でアクチュエータによる選択に応じて編針の位置を切換えるように作用し、不作用状態では編針へ作用しないカムとを含み、
該キャリッジに割当てられている領域から脱出する際に最後尾となる選針機構で編針の1段階目の選針となる予備選針を行って予備選針状態を残し、該選針機構は該キャリッジが走行方向を反転して該領域に再度侵入する際に最先頭の選針装置となって、予備選針状態の編針に対して2段階目の選針となる本選針を行うようにしておき、
タンデム編成中には、針床に対して割出される各キャリッジの位置に基づく判断で、
該キャリッジに割当てられている領域と判断されれば、編成動作として、先行側となる選針機構では、カムを作用状態として、アクチュエータで本選針を行い、
他のキャリッジに割当てられている領域への侵入時に、先行側となる選針機構では、アクチュエータとカムとを不作用状態とし、
他のキャリッジに割当てられている領域への侵入後の脱出時に、予備選針状態が変更されている場合には、最後尾となる選針機構でカムを不作用状態として、アクチュエータにより予備選針状態を復元させる補償選針を行う、
ことを特徴とするタンデム編成方法である。
さらに本発明は、編針駆動用のカム機構を搭載して針床の長手方向に沿って往復走行するキャリッジを複数使用して、重複しないように設定される針床の領域を各キャリッジに割当てて、該複数の編地を同時に編成するタンデム編成が可能な横編機において、
各キャリッジが搭載するカム機構は、2段階の選針に応じて編針を編成駆動するためのカムの組合せであるカムロックと、カムロックに対して走行方向の両側に備えられ、1段階の選針が可能な選針機構とを備え、
各選針機構は、編針に作用して2つの選針状態を選択可能なアクチュエータと、作用状態と不作用状態とが切換え可能で、作用状態でアクチュエータによる選択に応じて編針の位置を切換えるように作用し、不作用状態では編針へ作用しないカムとを含み、
タンデム編成中に、各キャリッジの針床に対する位置を割出す割出し手段と、
割出し手段によって割出される各キャリッジの位置に基づき、
該キャリッジに割当てられている領域では、編成動作として、先行側となる選針機構で、カムを作用状態として、アクチュエータで本選針を行うように制御し、
他のキャリッジに割当てられている領域では、侵入時に、先行側となる選針機構で、アクチュエータとカムとを不作用状態とするように制御する制御手段とを
さらに含むことを特徴とする横編機である。
また本発明で、前記制御手段は、前記他のキャリッジに割当てられている領域では、
脱出時に、予備選針状態が変更されている場合には最後尾となる選針機構でカムを不作用状態として、アクチュエータにより予備選針状態を復元させる補償選針を行うように制御する、
ことを特徴とする。
また本発明で、前記御手段は、前記他のキャリッジに割当てられている領域に侵入してから脱出前に、ラッキングによる針床の移動があれば、さらにキャリッジを該領域に侵入させるように移動してからの脱出時、またはラッキングによる針床の移動中に、前記補償選針の動作を行うように制御する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、複数の編地を同時に編成するタンデム編成を行う際に、キャリッジが他のキャリッジに割当てられる領域に侵入することを許容するので、領域間の間隔を狭くすることができ、領域の幅を大きくすることができる。各キャリッジの両側に備えられる選針機構は、割当てられる領域から脱出する際の予備選針と走行方向反転後に割当てられる領域への侵入時の本選針とを分けて行うので、選針に要する幅は1段の選針に対応するものでよく、キャリッジ幅を2段の選針に対応するものよりも小さくすることができる。キャリッジ幅が小さくなるので、キャリッジが走行するストローク幅も小さくすることができる。キャリッジが割当て外の領域に侵入して、編針の予備選針状態を変更させても、そのキャリッジが侵入した領域から脱出する際に補償選針を行って、侵入した領域での編針の予備選針状態を復元させるので、予備選針されている領域での編地の編成に支障を生じないようにすることができる。
さらに本発明によれば、横編機でのタンデム編成時に、一つのキャリッジが他のキャリッジに割当てられる領域に侵入することを許容して、領域間の間隔を狭くすることができ、編成可能な編地の幅を大きくすることができる。制御手段は、キャリッジの割当て外の領域では、先行側となる選針機構のアクチュエータとカムとが不作用状態となるように制御するので、キャリッジが割当て外の領域にカムの位置まで侵入しても、予備選針状態への影響を避けることができる。各キャリッジの両側に備えられる選針機構のアクチュエータは、割当てられる領域から脱出する際の予備選針と走行方向反転後に割当てられる領域への侵入時の本選針とを分けて行うので、の選針に対応する選針機構で、キャリッジ幅を2段階の選針機構を用いる場合よりも小さくすることができる。
また本発明によれば、キャリッジが割当て外の領域に侵入して脱出する際に、針機構のアクチュエータで、侵入する領域の編針の予備選針状態変更されても予備選針状態に復元する補償選針を行う。キャリッジが割当て外の領域に侵入しても、脱出すれば、その領域での予備選針状態が復元されるので、キャリッジの侵入は、予備選針状態が変更されるような深い位置まで許容される。
また本発明によれば、他のキャリッジに割当てられている領域に侵入してから脱出前に、ラッキングによる針床の移動が行われても、キャリッジがさらに侵入するように移動、またはラッキングによる床板の移動で補償選針を行い、予備選針状態を壊さないようにすることができる。
図1は、本発明の実施の一形態としての横編機11の概略的な構成を簡略化して示す。横編機11は、基本的に図11に示す横編機1と同等の仕様を有し、針床12を、全体でたとえば2286mm(90インチ)の範囲を編成に使用することができるものとする。針床12は、前後一対で設けられ、各キャリッジ13a,13bは、前後一対の針床に対応する部分がそれぞれ連結されて一体的に走行する。タンデム編成時には、編成領域14a,14bでそれぞれたとえば1066.8mm(42インチ)の編幅La,Lbまでの編地を編成することができる。これは、編成領域14a,14bの中間にはキャリッジ13a,13bの抜け代を設ける必要が無く、幅Lcとして152.4mm(6インチ)のスペース14cを設ければよいからである。このスペース14cは、キャリッジ13a,13bに搭載されるカム機構のカムやプレッサ、キャリッジ13a,13bに付属するステッチプレッサなどの切換えやセットを、キャリッジ13a,13bの走行速度が最大時にも可能にするために設ける。一時的に走行速度を低速にすれば、要するスペース14cも狭くし、さらに編成可能な編幅を増大させることができる。各キャリッジ13a,13bに搭載されるカム機構15a,15bは、カムロック16の両側に選針機構17L,17Rをそれぞれ備えている。カムロック16および選針機構17L,17Rの可動部分は、予め設定される編成データとキャリッジ13a,13bの走行位置などに基づいて、コントローラ18によって制御される。
図1(a)は、各キャリッジ13a,13bが対応する編成領域14a,14bの右側に位置し、キャリッジ13a,13bが図の左方向に走行すると、編成領域14a,14bでそれぞれ編地の編成を開始する直前の状態を示す。各編成領域14a,14bの編針は、キャリッジ13a,13bの先行する右行時に、後行側となる選針機構17Lで予備選針された状態となっている。左側のキャリッジ13aは、右側の編成領域14bに侵入しているので、予備選針状態を壊してしまうおそれがある。キャリッジ13a,13bが走行方向を反転して、左行を開始すると、編成領域14bでキャリッジ13aが侵入している範囲の編針は、キャリッジ13aが脱出する際の補償選針によって、予備選針状態が復元される。各編成領域14a,14bの編針は、図の右側から選針機構17Lによる本選針の作用を受け、カムロック16で選針状態に応じて駆動される。カムロック16に対して後行側となる選針機構17Rは、次のカムロック16に対する予備選針を行う。選針機構17L,17Rでの補償選針、および予備選針や本選針のための制御は、コントローラ18が予め設定される編成データに基づいて行う。
図1(b)は、各キャリッジ13a,13bが左行を終了して、右行を開始する直前の状態を示す。左行時にはカムロック16に対して後行側である選針機構17Rが右行時には先行側となり、カムロック16に対して左行時の予備選針と右行時の本選針との2段階の選針を行う。ただし、左側の編成領域14aには、右側のキャリッジ13bが侵入している。この侵入による影響は、脱出時の補償選針で解消され、予備選針状態が復元される。
以上のようなタンデム編成時の選針は、各キャリッジ13a,13bが必要とする選針データの範囲をそれぞれに割当てられる編成領域14a,14b外へも拡張しておくことで可能になる。図11に示すような従来法では、各キャリッジ13a,13bがそれぞれ割当てられている編成領域14a,14bのみで左端1本目から右端1本目までの編針に関する選針データを用いる。編成データは少なくなるけれども、中間幅12cを広くとって、各キャリッジ13a,13bがそれぞれ割当てられている左側の編成領域14aおよび右側の編成領域14bの範囲を超えて、他の編成領域14bや編成領域14aに侵入しないように、中間幅12cを拡げておく必要がある。左右のキャリッジ13a,13bが針床12の左端1本目から右端1本目までの選針データ、特に編成領域14aおよび編成領域14bを含む選針データをそれぞれ用いるようにすれば、補償選針が可能となる。
図2は、図1の横編機11の針床12に並設される編針20の構成の一例を示す。編針20は、横編機11の針床12でキャリッジ13a,13bの走行方向に垂直な方向に並設されている針溝内に、前後の針床12が対向する歯口に対して進退する摺動変位が可能な状態で収容される。編針20では、ニードル本体21の後部にニードルジャック22を係合させている。ニードルジャック22は、キャリッジ13a,13bのカム機構15a,15bの作用を受ける編成動作用バット23と目移し動作用バット24とを、それぞれ有する。ニードルジャック22で、編成動作用バット23の後背部には、セレクトジャック25が作用する。セレクトジャック25に作用するセレクタ26は、選針機構17L,17Rによる選針作用を受ける位置決めのための上下のバット26a,26bの間に、たとえば破線で示す8つのうちの1つの位置に、選針用バット26cを有する。選針機構17L,17Rのアクチュエータによる選針用バット26cへの押圧の有無の組合せで、セレクタ26が選択される。選択状態のセレクタ26は、針溝内で浮上しており、上下のバット26a,26bに選針用のカムが作用しうる状態となる。選針用バット26cが押圧されてセレクタ26が針溝内に沈むと非選択状態となる。
ニードル本体21の先端部には、フック28が設けられ、歯口に進出して編糸の供給を受ける。フック28は、べら29で開閉される。ニードル本体21のフック28から少し後退した位置には、編目移し時に編目移し側で編目ループを保持する羽根30が設けられる。編針20としては、このようなべら針ばかりではなく、スライダでフックを開閉させる複合針を用いることもできる。
図3は、図1のキャリッジ13bに搭載されるカムロック16および選針機構17L,17Rの一例を、図1に対して裏側となるカム面側から見た状態で示す。キャリッジ13aの構成も基本的に同等である。1基のキャリッジ13bには、カムロック16および選針機構17L,17Rがたとえば2組搭載されている。中央線13cで分けられる1組のカムロック16は、渡し受け両用目移しカム31、固定ニードルレイジングカム32、可動ニードルレイジングカム33、ステッチカム34、ニードルガイドカム35,36を含む。選針機構17L,17Rは、下げ用セレクタガイドカム37a,37b,37c、上げ用セレクタガイドカム38a,38b、セレクタレイジングカム39a,39b、選針アクチュエータ40a,40bまたはアクチュエータ40c,40d、タックプレッサ41、ハーフプレッサ42、固定プレッサ43およびセレクタ浮上カム44を含む。図では上方が歯口側であり、渡し受け両用目移しカム31と可動ニードルレイジングカム33とは、いずれか一方がキャリッジ13bの地板から突出すると、他方は突出しないように、交互に切換えられる。度山カムであるステッチカム34は、後行側が編針20を歯口から引込む量である度目を調整するために、傾斜下方向に移動させることができる。タックプレッサ41およびハーフプレッサ42は、それぞれ出没させる制御が可能である。
図では右方への移動となるキャリッジ13bの左行時には、右側のカムロック16では、予備選針済みの編針を選針アクチュエータ40aで本選針する。予備選針は、セレクトジャック25のバット27の位置を、タックプレッサ41およびハーフプレッサ42が設けられる位置のHポジションか、固定プレッサ43が設けられる位置のBポジションかに分ける選針を行う。Bポジションでは、セレクタ26が針溝内に沈められ、本選針の対象外となる。予備選針で選針されている編針のセレクタ26は針溝内で浮いているので、選針アクチュエータ40aによる本選針で選針されれば、セレクタ26の下のバット26bがセレクタレイジングカム39aの作用で歯口側に押上げられる。図2に示すように、セレクタ26の先端はセレクトジャック25のバット27の背後に位置しているので、セレクタ26が押上げられると、セレクトジャック25は、Hポジションよりも歯口側のAポジションまで押上げられる。セレクトジャック25のバット27がAポジションまで押上げられると、タックプレッサ41およびハーフプレッサ42の押圧作用を受けない位置となる。
編針20に対して、キャリッジ13bがさらに左行すると、編針20のセレクタ26は、上のバット26aが下げ用セレクタガイドカム37bで歯口から遠ざかるように押下げられ、尾部がセレクタ浮上カム44の位置を通る。セレクタ浮上カム44によってセレクタ26は、一律に針溝内で浮上する。この間、Bポジションに選針されているセレクトジャック25のバット27は固定プレッサ43に押圧され、ニードルジャック22は針溝内に沈むので、編成動作用バット23はカムロック16の作用を受けない。Aポジションに選針されているセレクトジャック25のバット27の案内経路上にはプレッサが配置されていないので、バット27はプレッサによる押圧を受けない。Hポジションに選針されているセレクトジャック25のバット27の案内経路上には、可動式のタックプレッサ41およびハーフプレッサ42が配置されている。バット27は、タックプレッサ41とハーフプレッサ42との作用または不作用に応じて、針溝内に沈むかまたは沈まないかの選択がそれぞれ行われる。すなわち、タックプレッサ41またはハーフプレッサ42が作用すると、その区間でバット27が針溝内に沈み、ニードルジャック22も針溝内に沈む。Hポジションでニードルジャック22が針溝内に沈まない場合と、Aポジションの場合とは、ニードルジャック22は針溝内で浮いた状態を保ち、編成動作用バット23および目移し動作用バット24はカムロック16の作用を受けて編成動作が行われる。編成動作の際の度目は、後行側のステッチカム34の位置で調整される。
各カムロック16では、走行方向の両側にセレクタレイジングカム39a,39b;39c,39dを備える。従来からの横編機では、両側のセレクタレイジングカム39a,39b;39c,39dは、走行方向に応じて、それぞれ先行側が突出するとともに後行側が没入するように連動する。ただし、本実施形態の横編機11では、キャリッジ13bの両端のセレクタレイジングカム39a,39dは、変位駆動用カムとして、それぞれ単独で出没制御可能にしておく。横編機11でのタンデム編成時に、キャリッジ13a,13bがそれぞれ割当てられている編成領域14a,14bと異なる編成領域14b,14aに侵入する場合のみ、先頭側となるセレクタレイジングカム39aまたはセレクタレイジングカム39dを突出させずに没入させる。たとえば、図1(a)のように左行を開始する際には、先頭側となるキャリッジ13aの選針機構17Lに備えられるセレクタレイジングカム39aを没入させる。図1(b)のように右行を開始する際には、キャリッジ13bの選針機構17Rに備えられるセレクタレイジングカム39dを没入させる。横編機11でも他の場合は、先行側となるセレクタレイジングカム39a,39dは突出させる。
下げ用セレクタガイドカム37bで押下げられたセレクタ26は、選針アクチュエータ40bと選針アクチュエータ40cとによって、中央線13cの左側のカムロック16に対する選針が行われる。選針アクチュエータ40bで選択状態となるセレクタ26は、上げ用セレクタガイドカム38bで中央線13cの両側に設けられる突起に従って押上げられ、セレクトジャック25をHポジションまで押上げる。ただし、セレクトジャック25のバット27は、中央線13cの位置にあるニードルガイドカム36の突起で、いったんBポジションまで押下げられ、次のセレクタガイドカム38bの突起で再度Hポジションまで押上げられる。中央線13cの左側の選針アクチュエータ40cでは、選択状態のセレクタ26に対してさらに選針を行う。この選針の結果、選針されて針溝内で浮上しているセレクタ26は、下のバット26bが突出しているセレクタレイジングカム39cの作用を受けて、セレクトジャック25を、バット27がAポジションに位置するように押上げる。選針アクチュエータ40bで選択状態となっても、選針アクチュエータ40cでは選択されず、セレクタ26が針溝内で沈む状態となると、セレクタレイジングカム39cの作用を受けず、セレクトジャック25のバット27はHポジションを保つ。最後尾となる選針アクチュエータ40dが編針を通過する際には、次にキャリッジ13bが右行して編成動作を行うための予備選針が行われる。
キャリッジ13bの右行時には、最先頭となる選針アクチュエータ40dで中央線13cの左側のカムロック16に対する本選針を行い、さらに最後尾となる選針アクチュエータ40aが中央線の右側のカムロック16に対する予備選針を行う。
図4は、図1に示すようなタンデム編成を行う場合に、コントローラ18がキャリッジ13bの各部を制御する概略的な手順を示す。なお、選針アクチュエータ40aおよび選針アクチュエータ40bを、アクチュエータaおよびアクチュエータbとそれぞれ表記する。ステップa0から手順を開始し、ステップa1では、キャリッジ13bに対する編成領域14bのような、対応領域編成か否かを判断する。対応領域編成であると判断されるときは、ステップa2で、図3について説明したような編成用の制御を行う。図1(a)では、キャリッジ13bが左行して編成領域14bの編成を開始するので、ステップa2のように通常編成用の設定が行われる。
図1(a)のキャリッジ13aや、図1(b)に至る前のキャリッジ13bでは、ステップa1で対応領域編成ではないと判断され、さらにステップa3に移行して侵入時と判断される。図1(a)に至る前のキャリッジ13aでも侵入時と判断される。侵入時には、ステップa4に移行して、最先頭の選針アクチュエータ40aを不作用とし、セレクタ26の予備選針状態を維持させる。セレクタレイジングカム39aは没入させる。通常編成時には、先行側のセレクタレイジングカム39aは突出させて、選針アクチュエータ40aで選針されたセレクタ26を押上げてセレクトジャック25をバット27がAポジションとなるように選針するけれども、侵入時はこの選針を行わせない。タックプレッサ41およびハーフプレッサ42も突出させ、ニードルジャック22の編成動作用バット23がカムロック16の作用を受けないようにする。両側のステッチカム43も、たとえば度目0の位置など、編成動作用バット23を引下げる量が小さい休止位置に設定する。侵入した編成領域の編針20のセレクタ26がセレクタ浮上カム44の位置まで達すると、針溝内でセレクタ26が沈んでいる非選針状態は解消されてしまう。さらに、後行側の選針アクチュエータ40bの位置にセレクタ26が達すると、予備選針状態は壊れているので、全てが非選針状態となるように選針アクチュエータ40bを作用させる。以降の選針アクチュエータ40c,40dは全て作用させ、セレクトジャック25のバット27はBポジションとする。
ステップa4が終了すると、または、ステップa3で侵入時ではないと判断すると、ステップa5に移行し、脱出時であるか否かを判断する。たとえば、図1(a)のキャリッジ13aや図1(b)のキャリッジ13bについては、脱出時と判断する。脱出時には、ステップa6に移行する。脱出時には、最後尾となる選針アクチュエータ40aで予備選針状態を復元する補償選針を行う。たとえば、キャリッジ13bは編成領域14aについては本来選針動作を行わないけれども、脱出時には、編成領域14aを受持つキャリッジ13aによる予備選針と同様な選針を行う。侵入時にセレクタ浮上カム44の位置まで達しないセレクタ26については、セレクタレイジングカム39aを没入させて影響を受けないようにしているので、予備選針の状態を保って選針アクチュエータ40aを再通過させることができる。セレクタ26がセレクタ浮上カム44の位置に達して浮上させられると、選針アクチュエータ40aによる選針が可能となる。したがって、セレクトジャック25のバット27がBポジションまたはHポジションとなる振分けで元の予備選針状態に戻す補償選針を行っておくことによって、キャリッジ13bが編成領域14aから脱出して、キャリッジ13aが図1(b)の左側から走行してくると、右側の選針機構17Rでは本選針を行うことができる。
ステップa6が終了すると、ステップa1に戻る。ステップa5で脱出時ではないと判断すると、ステップa7で編成終了か否かを判断し、終了でなければステップa1に戻り、終了であればステップa8で編成を終了する。
図5は、図1のキャリッジ13bに搭載されるカムロック16および選針機構17L,17Rの他の例を示す。このような構成は、たとえば特許文献4に開示されている。図5で図3に対応する部分には同一の参照符を付して重複する説明を省略する。図5の例では、ニードルガイドカム45,46、下げ用セレクタガイドカム47a,47b,47c、上げ用セレクタガイドカム48a,48bの突出状態が図3のニードルガイドカム35,36、下げ用セレクタガイドカム37a,37b,37c、上げ用セレクタガイドカム38a,38bと、それぞれ相違する。また、カムロック16の幅が、図3に比較して図5の方が相対的に小さくなっている。さらに、ニードルガイドカム45,46には、出没制御可能なセレクトジャック下げカム49a,49bが設けられている。セレクトジャック下げカム49a,49bは、通常編成時、カムロック16に対して先行側を没入させ、後行側を突出させる。
図6は、図5の構成で、図1に示すようなタンデム編成を行う場合に、コントローラ18がキャリッジ13bの各部を制御する概略的な手順の一例を示す。ステップb0〜ステップb8の各ステップは、図4のステップa0〜ステップa8の各ステップにそれぞれ対応する。ステップb2の対応領域編成の通常編成用の設定では、セレクトジャック下げカム49a,49bに対する交互の出没制御を図4のステップa2に追加している。ステップb4およびステップb6でも、ステップa4およびステップa6に、セレクトジャック下げカム49a,49bに対する交互の出没制御を追加している。ただし、ステップb6の脱出時は、走行方向が反転するので、先行するセレクトジャック下げカム49bを没にして、後行するセレクトジャック下げカム49aを出にする。侵入時にステップb4でセレクトジャック下げカム49bを突出させることによって、セレクトジャック25のバット27をHポジションからBポジションに下げる。この影響は、ステップb6の補償選針で復元することができる。図5の中央線13cよりも左側のセレクトジャック下げカム49c,49bも、先行側を没、後行側を出に制御する。
図7は、セレクトジャック下げカム49a,49b,49c,49dが個別に出没制御可能な場合の手順を示す。ステップc0〜ステップc8の各ステップは、図6のステップb0〜ステップb8の各ステップにそれぞれ対応する。セレクトジャック下げカム49a,49b,49c,49dが個別に出没制御可能であれば、ステップc4およびステップc6でセレクトジャック下げカム49a,49bを全て没に制御する。さらに、セレクトジャック下げカム49c,49dも没にしておく。これによって、Hポジションに予備選針されているセレクトジャック25の選針位置を維持することができる。
図8は、針床12を振るラッキングを伴うタンデム編成方法の一例を示す。横編機11では、一対の針床12が歯口を挟んで前後に設けられる。針床12が前後に設けられる場合、前後で針床12の位置を相対的にずらすラッキングの機能が備えられる。ラッキングが可能な両側の針床12を使用して編成を行うことによって、多様な編地組織を編成することができる。図1と同様に、左右のキャリッジ13a,13bを、左側の編成領域14aと右側の編成領域14bの編地とに、それぞれ割当てて編地を編成する。
図8(a)は、図1(a)と同様に、各キャリッジ13a,13bが走行方向を反転する際に、一旦停止している状態を示す。各キャリッジ13a,3bの最後尾となる選針アクチュエータ40aは、編成領域14a,14bの編針に対して、それぞれ予備選針を実行している。各キャリッジ13a,13bの左端は、編成領域14a,14bの右端よりも右側まで移動しなければならない。針床12をラッキングで右方に振る場合は、左側の編成領域14aの右端と左のキャリッジ13aの左端との間隔Dを、ラッキング分を見込んで拡げておく必要がある。すなわち、図8(b)に示すように、針床12を右方に振るラッキングを行っても、左側の編成領域14aの右端がキャリッジ13aを追越さないように、図8(a)では間隔Dをあけておく。
図8(a)のように、左側のキャリッジ13aは右側のキャリッジ13bに割当てられる編成領域14bの左側に侵入する。編成領域14bの編針は、右側のキャリッジ13bが右方に抜ける際に、最後尾となるアクチュエータ40aで予備選針された状態であるけれども、左側のキャリッジ13aの侵入で予備選針の状態が潰されてしまう擾乱領域14dを生じる。
擾乱領域14dについては、キャリッジ13aが左方に抜ける際に最後尾となる選針アクチュエータ40dで元の予備選針状態を復元する。ただし、右方へのラッキングで、図8(b)に示すように、擾乱領域14dがキャリッジ13aに対して相対的に右方に移動すると、キャリッジ13aが走行方向を反転して左方に走行するだけでは、擾乱領域14dの右側に予備選針状態への復元が困難な領域が生じる。
図8(c)に示すように、ラッキングが完了したら、壊された擾乱領域14dの予備選針状態を復元可能な位置まで、キャリッジ13aをさらに右行させて進める。キャリッジ13aの右端が図8(a)と同様に擾乱領域14dの右端から離れるようにしてから、図8(d)に示すように、キャリッジ13aの走行方向を反転させ、キャリッジ13aを左行させる。キャリッジ13aの最後尾の選針アクチュエータ40dで予備選針状態を復元する補償選針を行わせれば、擾乱領域14dを解消させて、予備選針状態に戻すことができる。キャリッジ13bは、キャリッジ13aに連動する。図1(b)に示すようなキャリッジ13a,13bの左行時でも、右側のキャリッジ13bが左側の編成領域14aに侵入して予備選針状態を擾乱させるおそれがある範囲で、同様な処理を行えば、ラッキングが行われても、予備選針状態を復元することができる。
図9は、横編機11で以上のようなラッキング後の動作を可能にするコントローラ18の概略的なシステム構成を示す。横編機11では、前後の各針床12に対して、それぞれキャリッジ13a,13bが設けられている。各キャリッジ13a,13bに搭載される選針アクチュエータ40a,40b,40c,40dによる編針の選針は、各キャリッジ13a,13bの針床12に対する位置を割出して行われる。キャリッジ13a,13bは、針床12に対する位置を直接検出するのではなく、横編機11のフレームに針床12と平行に別途設ける選針ゲージから位置センサ50で検出している。選針ゲージについては、たとえば、再表2003−091490号公報などに開示されている。ラッキングを、キャリッジ13a,13bが針床12に対して静止しているときに行う場合、ラッキングで針床12がキャリッジ13a,13bに対して移動しても、位置センサ50で検出する位置は変らない。キャリッジ13a,13bの針床12に対する位置は、位置センサ50で横編機11のフレームを基準として検出する位置を、ラッキングの振り幅で補正すれば求めることができる。
コントローラ18は、横編機11の前後の各針床12に2つずつ設けられるキャリッジ13a,13bを、前キャリッジ制御部51と後キャリッジ制部52とでそれぞれ制御する。各針床のキャリッジ13a,13bの横編機11のフレームに対する位置は、選針ゲージに編針のピッチに対応して設けられる凹凸や明暗の縞等を磁気的または光学的に検出する位置センサ50の出力に基づいて、キャリッジ位置2相信号検出部53が検出する。前後の針床12のラッキングでの振り量は、横編機11のフレームに対する針床12の位置の変化として、前ラッキングエンコーダ54および後ラッキングエンコーダ55でそれぞれ検出する。前後の針床12のキャリッジ13の選針アクチュエータ40a,40b,40c,40dは、前アクチュエータON/OFF出力部56および後アクチュエータON/OFF出力部57がそれぞれ駆動する。
前キャリッジ制御部51と後キャリッジ制御部52の内部は、基本的に同等の構成を有するので、前キャリッジ制御部51についてのみ説明し、後キャリッジ制御部52については省略する。前キャリッジ制御部51には、ソフトウエア処理部60として、単位変換部61、キャリッジ速度算出部62、速度補正部63および選針データ記憶部64が含まれる。ハードウエア処理部70としては、キャリッジ位置カウンタ71、加算器72、出力位置判定器73およびアクチュエータON/OFF設定器74が含まれる。
選針データ記憶部64に記憶される選針データは、針床12全体に対するものとなる。この選針データは、横編機11の編成動作を全体的に制御するCPU80から出力される。CPU80は、編地データ記憶部81および編機パラメータ記憶部82に予め記憶されているデータを組合せて編成データ83として入力し、編成コース毎に選針データを出力する。編地データ記憶部81には、編成すべき編地の形状や模様、使用する編糸などに関するデータが予め作成されて記憶される。編パラメータ記憶部2には、横編機11で編成を行うために必要なパラメータが記憶される。CPU80が出力するコース毎のデータに基づいて、キャリッジ駆動部84がキャリッジ13を駆動する方向、速度、走行範囲を制御する。前後の針床12のラッキングの振りは、CPU80が出力するデータに基づいて、ラッキング駆動部85が前後の針床12のラッキング機構をそれぞれ駆動して行われる。
前後の針床12に対するキャリッジ13a,13bの位置は、加算器72の出力として、CPU80に入力される。単位変換部61、キャリッジ速度算出部62、速度補正部63、キャリッジ位置カウンタ71および加算器72は、針床12に対するキャリッジ13の位置を割出す。CPU80は、針床12に対するキャリッジ13a,13bの位置に基づき、ラッキングによる針床12の移動中にも、編針の選択を行うように制御することができる。
図10は、ラッキング中にも選針を行うタンデム編成選針方法の一例を示す。図10(a)では、図8(a)と同様に、右側の編成領域14bに左側のキャリッジ13aが侵入して、擾乱領域14dが発生している状態を示す。
図10(b)は、キャリッジ13a,13bを停止のまま針床12を右方に振るラッキングを行った状態を示す。ラッキングの振りについては図8(b)と同様である。図10(b)では、擾乱領域1dがキャリッジ13aに対して右方に振られ、相対的にキャリッジ13aが左行して擾乱領域1dからの脱出を開始する場合と同様になることを利用して、補償選針の一部を実行する。すなわち、キャリッジ13aの右端の選針アクチュエータ40dは最後尾となり、擾乱領域14dの編針に対して予備選針状態を復元する補償選針を行う。この結果、擾乱領域14dの右側部分は、右側の編成領域14bとしての予備選針状態に戻る。
図10(c)に示すように、キャリッジ13a,13bが走行方向を反転して、左行を開始すると、右側の編成領域14bでキャリッジ13aが侵入して予備選針状態が乱されている擾乱領域14dの編針は、キャリッジ13aが脱出する際の補償選針によって、予備選針状態が復元される。各キャリッジ13a,13bが編成領域14a,14bに右方から侵入する際の左端の選針アクチュエータ40aによる選針は、予備選針状態に対する本選針となる。図10のように、ラッキングによる振りも利用して選針を行うようにすれば、図8(c)に示すようなキャリッジ13a,13bの追加の走行を避けることができ、編成効率を高めることができる。
なお、図10(b)に示すようなラッキングによる針床12の移動中に、図10(c)に示すようなキャリッジ13a,13bの反転走行を開始させることもできる。また、図10(a)でキャリッジ13a,13bが右行して停止する前に、ラッキングを開始することもできる。各キャリッジ13a,13bの針床12に対する位置は、位置センサ50の検出値と、前ラッキングエンコーダ54および後ラッキングエンコーダ55でそれぞれ検出するラッキングの振り量とで、割出すことができる。キャリッジ13a,13bの走行とラッキングの振りとが組合されても、針床12に対するキャリッジ13a,13bの位置が判るので、ラッキングをキャリッジ13a,13bの走行中に行って、編成効率の向上を図ることができる。
以上のように、図1に示す横編機11では、各キャリッジ13a,13bの両側に設ける各選針機構17L,17Rで、最後尾での予備選針と走行方向反転後の最先頭での本選針とに分けて2段階のそれぞれ選針を行うので、走行方向に応じて先頭側で連続して2段階の選針を行う場合に比較し、選針機構17L,17Rの要する設置スペースを増大させないようにすることができる。選針機構17L,17Rの設置スペースが増大しないので、キャリッジ13a,13bの針床12の長手方向の幅も増大することなく、往復走行するストロークの増大も避けることができる。また、2基のキャリッジ13a,13bによってタンデム編成を行っているけれども、3基以上のキャリッジを用いてもよいことはもちろんである。
本発明の実施の一形態として、タンデム編成を行う横編機11の概略的な構成を簡略化して示すブロック図である。 図1の横編機11の針床12に並設される編針20の構成の一例を示す側面図である。 図1のキャリッジ13bに搭載されるカムロック16および選針機構17L,17Rの一例を、図1に対して裏側となるカム面側から見た状態で示すカム配置図である。 図1に示すようなタンデム編成を行う場合に、コントローラ18がキャリッジ13bの各部を制御する概略的な手順を示すフローチャートである。 図1のキャリッジ13bに搭載されるカムロック16および選針機構17L,17Rの他の例を示すカム配置図である。 図5の構成で、図1に示すようなタンデム編成を行う場合に、コントローラ18がキャリッジ13bの各部を制御する概略的な手順の一例を示すフローチャートである。 図5の構成で、図1に示すようなタンデム編成を行う場合に、コントローラ18がキャリッジ13bの各部を制御する概略的な手順の他の例を示すフローチャートである。 図1の横編機11によるタンデム編成で、ラッキングを行う場合の動作の一例を簡略化して示す図である。 図1の横編機11で、ラッキングを伴うタンデム編成の動作を可能にするコントローラ18の概略的なシステム構成を示すブロック図である。 図1の横編機11によるタンデム編成で、ラッキングを行う場合の動作の他の例を簡略化して示す図である。 従来からの予備選針を行う横編機1で、タンデム編成を行う概略的な構成を簡略化して示すブロック図である。
符号の説明
11 横編機
12 針床
13a,13b キャリッジ
14a,14b 編成領域
16 カムロック
17L,17R 選針機構
18 コントローラ
20 編針
25 セレクトジャック
26 セレクタ
39a,39b,39c,39d セレクタレイジングカム
40a,40b,40c,40d 選針アクチュエータ
49a,49b,49c,49d セレクトジャック下げカム

Claims (4)

  1. 横編機で編針駆動用のカム機構を搭載して針床の長手方向に沿って往復走行するキャリッジを複数使用し、重複しないように設定される針床の領域を各キャリッジに割当てて、該複数の編地を同時に編成するタンデム編成方法において、
    各キャリッジが搭載するカム機構は、2段階の選針に応じて編針を編成駆動するためのカムの組合せであるカムロックと、カムロックに対して走行方向の両側に備えられ、1段階の選針が可能な選針機構とを備え、
    各選針機構は、編針に作用して2つの選針状態を選択可能なアクチュエータと、作用状態と不作用状態とが切換え可能で、作用状態でアクチュエータによる選択に応じて編針の位置を切換えるように作用し、不作用状態では編針へ作用しないカムとを含み、
    該キャリッジに割当てられている領域から脱出する際に最後尾となる選針機構で編針の1段階目の選針となる予備選針を行って予備選針状態を残し、該選針機構は該キャリッジが走行方向を反転して該領域に再度侵入する際に最先頭の選針装置となって、予備選針状態の編針に対して2段階目の選針となる本選針を行うようにしておき、
    タンデム編成中には、針床に対して割出される各キャリッジの位置に基づく判断で、
    該キャリッジに割当てられている領域と判断されれば、編成動作として、先行側となる選針機構では、カムを作用状態として、アクチュエータで本選針を行い、
    他のキャリッジに割当てられている領域への侵入時に、先行側となる選針機構では、アクチュエータとカムとを不作用状態とし、
    他のキャリッジに割当てられている領域への侵入後の脱出時に、予備選針状態が変更されている場合には、最後尾となる選針機構でカムを不作用状態として、アクチュエータにより予備選針状態を復元させる補償選針を行う、
    ことを特徴とするタンデム編成方法。
  2. 編針駆動用のカム機構を搭載して針床の長手方向に沿って往復走行するキャリッジを複数使用して、重複しないように設定される針床の領域を各キャリッジに割当てて、該複数の編地を同時に編成するタンデム編成が可能な横編機において、
    各キャリッジが搭載するカム機構は、2段階の選針に応じて編針を編成駆動するためのカムの組合せであるカムロックと、カムロックに対して走行方向の両側に備えられ、1段階の選針が可能な選針機構とを備え、
    各選針機構は、編針に作用して2つの選針状態を選択可能なアクチュエータと、作用状態と不作用状態とが切換え可能で、作用状態でアクチュエータによる選択に応じて編針の位置を切換えるように作用し、不作用状態では編針へ作用しないカムとを含み、
    タンデム編成中に、各キャリッジの針床に対する位置を割出す割出し手段と、
    割出し手段によって割出される各キャリッジの位置に基づき、
    該キャリッジに割当てられている領域では、編成動作として、先行側となる選針機構で、カムを作用状態として、アクチュエータで本選針を行うように制御し、
    他のキャリッジに割当てられている領域では、侵入時に、先行側となる選針機構で、アクチュエータとカムとを不作用状態とするように制御する制御手段とを
    さらに含むことを特徴とする横編機。
  3. 前記制御手段は、前記他のキャリッジに割当てられている領域では、
    脱出時に、予備選針状態が変更されている場合には最後尾となる選針機構でカムを不作用状態として、アクチュエータにより予備選針状態を復元させる補償選針を行うように制御する、
    ことを特徴とする請求項2記載の横編機。
  4. 記制御手段は、前記他のキャリッジに割当てられている領域に侵入してから脱出前に、ラッキングによる針床の移動があれば、さらにキャリッジを該領域に侵入させるように移動してからの脱出時、またはラッキングによる針床の移動中に、前記補償選針の動作を行うように制御する、
    ことを特徴とする請求項3記載の横編機。
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