以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1には、この発明の実施の形態である露光装置が利用されるカラー画像形成装置が示されている。なお、この種のカラー画像形成装置においては、減法混色を用いてカラー画像を形成することから、通常、Yすなわちイエロー(黄)、Mすなわちマゼンタ(深紅)、Cすなわちシアン(青紫)、およびBすなわちブラック(黒、墨入れ用)の色成分に色分解された4種類の画像データと、Y,M,CおよびBのそれぞれに対応して各色成分ごとに画像を形成するさまざまな装置が4組ずつ利用されることから、以下に説明する際に、参照符号に、Y,M,CおよびBを付加することで、色成分ごとの画像データとそれぞれに対応する装置を識別することとする。
図1に示されるように、画像形成装置100は、周知の減法混色法に基づいて色分解された色成分のそれぞれに対応する画像を形成する第1ないし第4の画像形成部50Y,50M,50Cおよび50Bを有している。
各画像形成部50(Y,M,CおよびB,以下、第1ないし第4の全ての画像形成部およびそれぞれの画像形成部を構成する要素に対する共通な説明については、参照符号に「*」を付加して、代表して説明する)は、図2および図5を用いて後段に説明する露光装置1のうちの黒(ブラック)画像の露光に利用される第1ミラー33B、イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの画像の露光に利用される第3ミラー37Y,37Mおよび37Cにより露光装置1から外部に出射された画像光としての4組のレーザビームL*のそれぞれに対応する位置に、50Y,50M,50Cおよび50Bの順で直列に配置されている。
露光装置1の各ミラー37Y,37M,37Cおよび33Bにより、各感光体ドラム58*に案内されるレーザビームL*は、図2を用いて後段に詳述する8個の半導体レーザ素子から出射され、各ミラー37Y,37M,37Cおよび33Bに対応されるそれぞれの感光体ドラム58*の外周面の所定の位置に、各帯電装置60*と各現像装置62*との間から照射される。
各感光体ドラム58*に照射されたレーザビームL*すなわち色成分に色分解された画像情報は、それぞれの感光体ドラム58に組み合わせて配置された現像装置62*からトナーが供給されることで可視化され、用紙カセット70から給紙ローラ72およびアライニングローラ74を通ってまたは詳述しない手差し部からアライニングローラ74を通って、図示しないモータにより矢印の方向に回転されるベルト駆動ローラ56およびテンションローラ54に掛け渡された搬送ベルト52に、帯電ローラ76により印加される電界により静電吸着されて搬送ベルトとともに移動される被転写材である記録用紙Pに、転写装置64*により、順に転写される。なお、各感光体ドラム58*に残存した転写残りトナーは、クリーナ66*により除去される。また、各感光体ドラム58*上に残った残存電位は、除電装置68*により、除去される。
このようにして、各現像装置64*により可視化され、搬送ベルト52により搬送される用紙Pに転写された4色(または黒一色)の画像は、定着装置80により、用紙Pに、熱定着される。
なお、黒画像形成装置50Bと組み合わせられる黒現像装置62Bは、黒一色の非カラー画像が形成される頻度を考慮して、他の現像装置よりも多くのトナーを収容可能に形成されている。
次に、図1に示した画像形成装置に利用される露光装置を詳細に説明する。
図2は、図1に示した画像形成装置100に組み込まれる露光装置1の光路を展開して平面方向(以下に説明する偏向装置の回転軸と直交する方向)から見た状態を、図3は、図2に示した平面方向と直交する方向(同偏向装置の回転軸と平行な方向)において、偏向装置の反射点から結像位置(像面)までの間に配置される光学部材を通過する光ビームに関し、偏向装置による偏向角が0°の位置で見た状態を、それぞれ示している。
露光装置1は、図1に示した画像形成装置100の4組の画像形成部50*のそれぞれにより形成される色分解された色成分毎の画像に対応する4色分の画像データに対応するレーザビームを発生する2個×4色=8個のレーザ素子3Yaおよび3Yb,3Maおよび3Mb,3Caおよび3Cb,3Baおよび3Bbと、回転可能に形成された複数の反射面5aを含み、個々の反射面5aを所定の速度で回転することにより、それぞれのレーザ素子を出射されたレーザビームを所定の位置に設けられた像面すなわち図1に示した4組の画像形成部50*の4つの感光体ドラム58*に向けて所定の線速度で偏向する偏向装置5、各レーザ素子3*aおよび3*bと偏向装置5との間に設けられ、各レーザビームL*aおよびL*bのそれぞれの断面ビームスポット形状を所定の形状に整えるとともに、各レーザビームを2本×4組のレーザビーム群として配列する偏向前光学系7*、および偏向装置5により偏向(反射)されたレーザビームを感光体ドラム58*に結像させる偏向後光学系9を有している。なお、多くの場合、偏向装置5によりそれぞれのレーザビームが偏向(連続的に、直線状に反射)される方向が主走査方向(反射面5aが回転される方向に平行な方向)、この主走査方向に直交し、偏向装置5の反射面5aが回転される際の回転軸の軸方向に平行な方向が副走査方向と呼ばれる。
各レーザ素子から放射された8本のレーザビームは、それぞれのレーザ素子に近接して設けられた8個のコリメータレンズ11Ya,11Yb,11Ma,11Mb,11Ca,11Cb,11Baおよび11Bb(偏向前光学系7*)によりコリメートされる。なお、偏向後光学系9のレンズの適切な選択により全てのコリメータレンズは、有限焦点レンズに置き換えられることもある。また、表3および表4を用いて後段に説明するように、各コリメータレンズは、有限焦点レンズに類似した特性を示す。
各コリメータレンズによりコリメートされた8本のレーザビームは、それぞれ絞り13Ya,13Yb,13Ma,13Mb,13Ca,13Cb,13Baおよび13Bb(偏向前光学系7*)により所定の断面ビーム形状が与えられ、ハーフミラー15Y,15M,15Cおよび15B(偏向前光学系7*)により互いに対をなす2本のレーザビームLYaおよびLYb、LMaおよびLMb、LCaおよびLCb、LBaおよびLBb相互に、偏向装置5で偏向される方向と直交する方向である副走査方向に関して所定の間隔に整列される。
ここで、レーザ素子の個数と色成分の数を整理すると、色成分の数を「M」、各色成分毎のレーザ素子の個数を「Ni(iは正の整数で最大値がM)」とすると、N1(Y)=N2(M)=N3(C)=N4(B)2×M組(Mは正の整数で,M=4)と表すことができる。すなわち、8本のレーザビームは、ハーフミラー15*により整列されることにより、主走査方向から見た状態で4組(各2本)のΣNi本のレーザビーム群として取り扱うことが可能となる。
ハーフミラー15Yにより副走査方向に所定の間隔で整列された2本のレーザビームLYa,LYbは、シリンダレンズ17Y(偏向前光学系7Y)により少なくとも副走査方向側について収束性が与えられたのちレーザ合成ミラー19Y(偏向前光学系7Y)で反射されて偏向装置5の反射面5aに案内される。
同様に、ハーフミラー15Mにより副走査方向に所定の間隔で整列された2本のレーザビームLMa,LMbは、シリンダレンズ17M(偏向前光学系7M)により少なくとも副走査方向側について収束性が与えられたのちレーザ合成ミラー19M(偏向前光学系7M)で反射され、レーザ合成ミラー19Yにより折り返されるレーザビームLYa,LYbに対して主走査方向から見た状態で概ね重なるよう、かつ副走査方向からみた状態でレーザビームLYa,LYbよりも内側(偏向装置5の反射面5aの副走査方向長さの中心寄り)を通るよう位置合わせされ、ハーフミラー19Yを通って偏向装置5の反射面5aに案内される。
また、ハーフミラー15Cにより副走査方向に所定の間隔で整列された2本のレーザビームLCa,LCbは、シリンダレンズ17C(偏向前光学系7C)により少なくとも副走査方向側について収束性が与えられたのちレーザ合成ミラー19C(偏向前光学系7C)で反射され、レーザ合成ミラー19Mにより折り返されるレーザビームLMa,LMbに対して主走査方向から見た状態で概ね重なるように位置合わせされ、レーザ合成ミラー19Mおよび19Yとは副走査方向にずれた光路を通って偏向装置5の反射面5aに案内される。
さらに、ハーフミラー15Bにより副走査方向に所定の間隔で整列された2本のレーザビームLBa,LBbは、シリンダレンズ17B(偏向前光学系7B)により少なくとも副走査方向側について収束性が与えられたのち折り返しミラー19B(偏向前光学系7B)で反射され、レーザ合成ミラー19Cにより折り返されたレーザビームLCa,LCbに対して主走査方向から見た状態で概ね重なるよう、かつ副走査方向からみた状態でレーザビームLCa,LCbよりも外側で偏向装置5の反射面5aの副走査方向長さの中心を対称軸としてレーザビームLYa,LYbのそれぞれと軸対称となるように位置合わせされ、レーザ合成ミラー19C,19M,19Yとは副走査方向にずれた空間を順に通って偏向装置5の反射面5aに案内される。
なお、それぞれのレーザ素子3*aないし3*bと、コリメータレンズ11*aないし11*bと、絞り13*aないし13*は、図示しないレンズホルダに一体に組み込まれ、例えばアルミニウム合金等により形成された保持部材21上を光軸方向に沿って移動可能に形成されている。また、各ハーフミラー15*は、反射面角度調整機構つきの図示しないミラーホルダにより、各シリンダレンズ17*は、焦点距離調整機構つきの図示しないレンズマウントにより、各レーザ合成ミラーミラー19*は、角度調整機構つき図示しないミラーマウントにより、それぞれ独立に保持され、同保持部材21の所定の位置に一体的に配置される。
偏向装置5の各反射面5aの回転により順次偏向された8本(4組)のレーザビームは、主走査方向と平行な方向が円弧状に形成された第1ないし第3の結像レンズ23,25および27(偏向後光学系9)を順に通過されることにより、それぞれのレンズで所定の結像特性が与えられ、結像状態(光軸方向の焦点位置のずれ)および結像位置(主走査方向および副走査方向焦点位置)、断面ビーム径およびその形状、収差状態等が最適に設定されて、像面(感光体ドラム58*の外周面)に案内される。なお、第3の結像レンズ27の所定の領域であって、各感光体ドラム58*の非画像領域に対応する部分に到達可能な領域を通過したレーザビームの一部は、水平同期信号を得るために、水平同期ミラー29により水平同期検出器31に向けて折り曲げられる。また、像面に案内される各レーザビーム(黒用のレーザビームLBa,LBbを除く)は、図1から明らかなように、第1ないし第3のミラー33Y,35Yおよび37Y,33M,35Mおよび37M、33C,35Cおよび37C(偏向後光学系9)のそれぞれにより順次折り曲げられ(黒用のレーザビームLBa,LBbは、第1ミラー33Bにのみ折り曲げられ)、防塵フィルタ39*(偏向後光学系9)を通って像面に照射される。
像面すなわち各画像形成部50*の感光体ドラム58*に照射された色成分毎のレーザビームL*aおよびL*bは、先に説明したように、それぞれの感光体ドラム58に対応する帯電装置60*により予め帯電されている(感光体ドラム58*の)表面電位を選択的に変化させる。この表面電位の変化は、静電潜像として、所定時間、維持され、対応する現像装置62*から現像剤であるトナーが供給されることにより可視化される(現像される)。
このように、4組(8本)のレーザビームを媒体として複写された画像データすなわちトナー像は、カセット70から給送され、搬送ベルト52により第1の画像形成部50Yの側から第4の画像形成部50Bに向けて搬送される用紙Pに順に転写され、定着装置84によって、用紙Pに定着される。
このとき、それぞれの画像形成部50*の各現像装置62により形成された4色のトナー像(トナー)は、定着装置84から供給される熱により溶融されるので、トナーに固有の色とそれぞれのトナーが混じり合うことにより生じる中間色および濃淡(黒)が最適に再現され、カラー(黒)画像となる。
以下、カラー(黒)画像が定着された用紙Pは、画像形成装置100の外部に順に排出され、ストックされる。
次に、偏向前光学系7および偏向後光学系9のそれぞれに含まれる光学要素のそれぞれの光学特性について詳細に説明する。なお、それぞれのレンズあるいは光学要素の光学特性は、表1ないし表3を用いて後段に示す通りである。
コリメータレンズ11Ya,11Yb,11Ma,11Mb,11Ca,11Cb,11Baおよび11Bbのそれぞれは、ガラス製の非球面レンズである。なお、それぞれのコリメータレンズの光学特性は、単体では同一であり、焦点距離は、例えば57.06mmである。また、レンズの材料として、ガラス材料は、好ましくは、FK5,SF60,FSK1等である。
絞り13Ya,13Yb,13Ma,13Mb,13Ca,13Cb,13Baおよび13Bbのそれぞれは、厚さ0.1mmのステンレス鋼の薄板に、所定の大きさおよび形状の開口部を設けたもので、各レーザ素子に取付誤差が生じた場合であっても光量変動が最小となるように、コリメータレンズの後ろ側焦点に配置されている。
ハーフミラー15Y,15M,15Cおよび15Bのそれぞれは、厚さが5mmで透過率97%のガラス製の平行平板の少なくとも一方の面に、透過率が51。5%となるよう、所定の厚さの金属薄膜が例えば蒸着により堆積されたもので、レーザ素子3Ya,3Ma,3Caおよび3Baのそれぞれから放射されたレーザビームを透過させ、レーザ素子3Yb,3Mb,3Cbおよび3Bbのそれぞれから放射されたレーザビームを反射することにより、各色成分に対応する2本のレーザビームを、副走査方向に所定の間隔となるよう合成する。
シリンダレンズ17Y,17M,17Cおよび17Bのそれぞれは、副走査方向(レーザビームが進行する方向をX軸、レーザビームが進行する方向に直交する平面のうち主走査方向をY軸、主走査方向に直交する副走査方向をZ軸として示すとき、Z軸方向)にのみパワー(曲率表示で0.02338)が与えられたガラス製のレンズである。なお、ガラス材料としては、好ましくは、BK7等が利用される。
レーザ合成ミラー19Y,19M,19Cおよび19Bのそれぞれは、厚さが5mmのガラス製の平行平板の少なくとも一方の面に、反射率が85%以上となるよう、所定の厚さの金属薄膜が例えば蒸着により堆積されたもので、ハーフミラー15Y,15M,15Cおよび15Bのそれぞれにより4組に合成され、シリンダレンズ17Y,17M,17Cおよび17Bを通って所定の断面ビーム径が与えられたレーザビームLY,LM,LCおよびLBのそれぞれを、実質的に1本のレーザビームと見なすことができる状態で副走査方向に所定の間隔(レーザビーム相互が互いに接しない間隔を所定の場所、例えば合成ミラー19、分離用ミラー33*で確保できる程度の間隔)となるようさらに合成して偏向装置5に向けて折り返すものである。
偏向装置5は、回転可能に形成された多面鏡の外周面に設けられた例えば8面の反射面を所定の速度で主走査方向に沿って回転することで、レーザ合成ミラー19Y,19Mおよび19Cのそれぞれにより一まとめに合成された各レーザビームを、以下に説明する偏向後光学系9に、順に入射させる。
第1ないし第3の結像レンズ23,25および27は、それぞれガラスにより形成され、副走査方向に関しては、3枚のレンズにより与えられる収束性が合成されることにより、像面すなわち各感光体ドラム58*の外周面の所定の位置に、各レーザ素子からの4組のレーザビームと色成分とを対応させて分離するとともに所定の形状および断面ビーム径のレーザビームを提供する。また、それぞれのレンズは、主走査方向に関しては、3枚のレンズにより与えられる収束性が合成されることにより、各感光体ドラム58*の外周面の所定の位置に、それぞれのレーザビームと各色成分とを対応させるとともに、各感光体ドラム58*の長手(軸)方向の位置と偏向装置5の各反射面5aの回転角とを比例させながら所定の形状および断面ビーム径のレーザビームを提供する。なお、いづれのレンズもガラスレンズであり、通常は、レンズ面は研磨により形成されるが、第1の結像レンズ23についてのみ、後段に詳述するように、2面のレンズ面とも成形加工により形成される。
第1ないし第3のミラー33Y,33M,33C,33B,35Y,35M,35C,37Y,37Mおよび37Cのそれぞれは、通常のフロートガラスの一方の面に、反射面を構成する金属層が、例えば蒸着により所定厚さに形成されたものである。なお、それぞれのミラーは、詳述しないミラー保持部材により、主走査方向、副走査方向およびレーザビームが進行する光軸方向のそれぞれの方向に関して独立に位置および角度が調整可能に形成されている。
防塵フィルタ39*は、それぞれ、例えば厚さ2mmのフロートガラスであり、必要に応じて、任意の色に着色されてもよい。なお、画像形成装置100内部を浮遊するトナーの自己融着をさけるために、樹脂材料は、避けられる。
ところで、既に説明したように、特開平7−256926号公報に開示されているような露光装置を用いると、例えば黒のみの画像の出力可能枚数を増大することが要求された場合、黒画像用のトナーの容量を増大することにより対応可能となるが、多くの量のトナーを収容可能とするために、露光装置の大きさが増大されることになる。なお、特開平7−256926号公報に開示されている露光装置では、偏向装置5と像面の間の距離が短いため、トナーの収容量を増大することは困難である。
以下、露光装置の大きさを増大することなく現像装置のトナー収容量を増やすことのできる結像光学系の構成について説明する。
図4は、結像光学系9の第1ないし第3の結像レンズ23,25および27のそれぞれの条件の与え方を最適化する例を説明する概略図である。
結像光学系9の第1ないし第3の結像レンズ23,25および27はそれぞれ入射面と出射面の2面のレンズ面を有するから、偏向装置5に近い側から、第1面ないし第6面と名称を与え、それぞれのレンズ面の形状および加工時の加工軸(回転対称軸)の向きとレンズの材質について詳細に説明する。
第1の結像レンズ23は、偏向装置5に面する側すなわち入射面(第1面)がトーリック面に、出射面(第2面)が特定の回転対称軸のみでは加工されない自由曲面に定義されたレンズである。また、曲率の方向は、第1面および第2面のそれぞれにおいて、主走査方向および副走査方向のいづれの方向に関しても、偏向装置5側に凹である。なお、第1面における回転対称軸(加工時の加工軸)の方向は、副走査方向に一致されている。また、第1面の母線の円弧の中心は、偏向装置5側に定義されている。なお、レンズの材質は、例えばアッベ数「νd」が、νd=64.2である光学ガラス(BK7)である。
第2の結像レンズ25は、第1の結像レンズ23(偏向装置5)に面する側すなわち入射面(第3面)が回転対称軸が副走査方向に定義された円筒面で、出射面(第4面)が平面に定義されたレンズである。なお、レンズの材質は、例えばνd=25.46である光学ガラス(SF60)である。
第3の結像レンズ27は、第2の結像レンズ25(偏向装置5)に面する側すなわち入射面(第5面)が円筒面に、出射面(第6面)がトーリック面に定義されたレンズである。また、曲率の方向は、第5面が偏向装置5側に凸で、第6面が偏向装置5側に凹である。なお、第5面および第6面のそれぞれの回転対称軸の方向は、いづれも副走査方向に定義されている。また、レンズの材質は、νd=64.2の光学ガラス(BK7)である。
上述した各レンズ面の形状および加工時の加工軸(回転対称軸)の向きとレンズの材質は、図4に示されるように、さまざまな条件の組み合わせに対し、以下に説明する評価関数が最小となる条件を選択することにより求められたもので、加工コストおよび加工に要求される時間等も考慮した結果から導き出された条件の1つである。
すなわち、主走査方向のデフォーカス量、副走査方向のデフォーカス量、面倒れ(偏向装置の各反射面の角度の誤差によるレーザビームの副走査方向の反射角のずれ)補正量、各レーザビームの主走査方向の相対位置ずれ、各レーザビームの副走査方向の相対位置ずれ、fθ特性およびレーザ素子の発光波長の波長変動による位置ずれ量のそれぞれに関し、目標値(基準値)からのずれを求め、そのずれの2乗和を評価関数として、評価関数が最小となる条件を求めることにより第1ないし第6のレンズ面(第1ないし第3の結像レンズの各レンズ面)を最適化できる。なお、第1の結像レンズ23の入射面を第1のレンズ面とし、第3の結像レンズ27の出射面を第6のレンズ面とする。従って、第2のレンズ面は、第1の結像レンズ23の出射面、第3のレンズ面は、第2の結像レンズ25の入射面、第4のレンズ面は、第2の結像レンズ25の出射面、第5のレンズ面は、第3の結像レンズ27の入射面に、それぞれ対応される。
詳細には、第1ないし第6の各レンズ面を、
4 :回転対称軸を持たない自由曲面
cv:主走査、副走査方向断面形状が共に円弧の面
により入射面および出射面のそれぞれが定義
されているレンズ(「cv」で2面)
(fは、レンズ面の最適化を示す識別子)
のそれぞれに分類し、図4(a)に、レンズ面構成として示すように、第1ないし第6のレンズ面の順に、
44cvcv ・・・ (11)
cvcv44 ・・・ (12)
cv44cv ・・・ (13)
cvcvcv ・・・ (14)
と条件を変化させながら、回転対称軸を持たない自由曲面を配列すべきレンズ位置(レンズ面番号)を最適化すると、(11)で示される第1の結像レンズ23の各レンズ面(第1のレンズ面および第2のレンズ面)のそれぞれを自由曲面とする例において、評価関数の数値の小さな条件が存在することが認められる。なお、図4(a)に示されるように、自由曲面を配列すべきレンズ面が第1レンズ面および第2レンズ面に定義されることは、サイズが小さく、研磨による加工が適さない第1の結像レンズ23の加工、すなわち成形加工に好都合であり、かつ成形加工に要求されるサイクルタイムを短縮できる利点が生じる。
図4(b)は、図4(a)に示した条件から求められる最適なレンズ面の配置において、第1の結像レンズ23の入射面と出射面を既に説明した自由曲面とし、第2および第3の結像レンズ25,27のそれぞれの第3ないし第6のレンズ面の形状をより最適化する例を示している。
すなわち、第2の結像レンズ25の入射面である第3のレンズ面、第2の結像レンズ25の出射面である第4のレンズ面、第3の結像レンズ27の入射面である第5のレンズ面および第3の結像レンズ27の出射面である第6のレンズ面のそれぞれに関し、
d :回転対称軸が副走査方向に定義された円筒面
c :回転対称軸が主走査方向に定義された円筒面
s :球面
u :回転対称軸が副走査方向に定義されている
トーリック面で、母線形状は円弧
のいづれかの条件に分類し、図4(a)に示したと同様に、第1ないし第6のレンズ面の順に、
4−4−d−c−d−u ・・・ (21)
4−4−d−d−d−u ・・・ (22)
4−4−d−c−s−u ・・・ (23)
4−4−d−d−s−u ・・・ (24)
4−4−d−c−c−u ・・・ (25)
4−4−d−d−c−u ・・・ (26)
と条件を変化させながら、第3のレンズ面ないし第6のレンズ面のそれぞれの面の形状を最適化すると、(5)および(6)もしくは(7)の例において、評価関数の数値が小さくなる条件が存在することが認められる。なお、評価関数の大きさは、図4(a)の例とは異なるので、評価関数の数値のみによる比較はできない。
すなわち、図4(b)に示されるように、少なくとも第3のレンズ面(第2の結像レンズの入射面)については、回転対称軸が副走査方向に定義された円筒面が好ましく、第5のレンズ面(第3の結像レンズの入射面)については、母線の形状が円弧で回転対称軸が副走査方向に定義されているトーリック面または球面のいづれかが好ましいことが認められる。
図4(c)は、図4(b)により求められた第3および第5のレンズ面の条件を生かしながら、すでに求められた第1および第2のレンズ面の条件を、コストおよび製造のしやすさの点で異なる条件に変更可能か否かを考慮した結果を示し、第1または第2のレンズ面のいづれか一方に関し
t :回転対称軸が主走査方向に定義されている
トーリック面で、母線形状は円弧
p :平面
の条件を新たに付与しながら、図4(a)に示したと同様に、第1ないし第6のレンズ面の順に、
u−4−d−c−d−u ・・・ (31)
u−4−d−d−d−u ・・・ (32)
4−4−d−c−s−u 「SF10」
・・・ (33)
u−4−d−p−d−u ・・・ (34)
4−4−d−c−d−u ・・・ (35)
t−4−d−c−s−u ・・・ (36)
u−4−d−c−s−u ・・・ (37)
t−4−d−c−d−u ・・・ (38)
d−4−d−c−s−u ・・・ (3a)
s−4−d−c−s−u ・・・ (3b)
c−4−d−c−s−u ・・・ (3c)
4−t−d−c−d−u ・・・ (3d)
u−4−d−p−c−u ・・・ (3e)
u−4−d−p−s−u ・・・ (3f)
u−4−d−d−p−u ・・・ (3g)
u−4−d−p−p−u ・・・ (3h)
と条件を変化させながら、第3のレンズ面ないし第6のレンズ面のそれぞれの面の形状を最適化すると、(31)ないし(33)の例において、評価関数の数値が小さくなる条件が存在することが認められる。なお、評価関数の大きさは、図4(a)あるいは図4(b)の例とは異なるので、評価関数の数値のみによる比較はできない。
ところで、評価関数の数値の大きさとしては(31)の例に比較して大きくなるが、第1または第2のレンズ面に母線の形状が円弧で回転対称軸が主走査方向に定義されているトーリック面を用いる例(38)あるいは(3d)についても、例えば製造のしやすさの点で、僅かではあるが有意性が認められる。すなわち、第1の結像レンズ23の入射面(第1のレンズ面)と、第3の結像レンズ27の出射面(第6のレンズ面)のそれぞれを、母線形状が球面で回転対称軸が副走査方向に向けられているガラス製のトーリック面を使用すると、評価関数の大きさは、小さくなる。なお、この条件において、第1のレンズ面を自由曲面とすることで、さらに光学特性が向上できるが第1の結像レンズ23を成形加工するための金型コストが増大するため、第1のレンズ面は、トーリック面とする。従って、第1の結像レンズ23の入射面(第1面)をトーリック面、出射面(第2面)を自由曲面、第2の結像レンズ25の入射面(第3面)を、加工が容易な円筒面、出射面(第4面)を、平面、第3の結像レンズ27の入射面(第5面)を、円筒面および出射面(第6面)を、トーリック面とすることにより、コストおよび製造の容易さを確保しながら、要求される所定の光学特性を得ることができる。なお、第3の結像レンズ27に関し、入射面(第5面)の形状としては、副走査方向に関しては、偏向装置5に向けて凸および凹もしくは平面のいづれの条件も設定可能であるが、主走査方向に関しては、偏向装置5に向けて凸である必要が生じる。ここで、副走査方向の形状を偏向装置5に向けて凹とするならば、評価関数は、50%程度増大(劣化)することが認められる。このため、第6面(第3の結像レンズ27の出射面)の形状を、回転対称軸の方向が偏向装置5の反射面の回転軸の方向と平行な副走査方向に向けられているトーリック面として第5面(第3の結像レンズ27の入射面)の副走査方向の形状を、偏向装置5に向かって凸とすることにより、評価関数の大きさを小さくできる。
図4(d)は、図4(c)により求められた「平面」を含むレンズ面の構成において、レンズの材質を変更することにより、さらに最適化した結果を示すもので、レンズの材質を図4(c)において利用した「SF10」を、
u−4−d−p−d−u 「SF6」
・・・ (41)
u−4−d−p−d−u 「SF60」
・・・ (42)
u−4−d−p−d−u 「SF11」
・・・ (43)
u−4−d−p−d−u 「SF14」
・・・ (44)
u−4−d−p−d−u 「SF13」
・・・ (45)
と変化させたところ、「SF60」または「SF6」を用いることにより、より評価関数の数値が小さくなる条件が存在することが認められる(表4参照)。
より詳細には、各レンズに用いるガラス材料のアッベ数「νd」を変化させて検討した結果、基本とした「SF10」におけるνdがνd=28.83であるに対して、νd=27.76であるSF13、νd=25.46であるSF6、νd=25.46であるSF60、νd=25.70であるSF12、νd=26.55であるSF14のそれぞれのガラス材料を用いることにより、各レーザ素子から放射されるレーザビームの発光波長が、例えば最大で15nm程度変動したとしても、像面におけるレーザビームが到達する位置(ビーム到達位置)の変動量を10μm以下に抑えることができる。なお、上述したように「SF6」および「SF60」を用いると、より効果が顕著となることはいうまでもない。
これにより、実際に露光装置を組み立てる際に、温度の変化により発生するレーザ素子の発光波長の変動量の大きさを考慮する必要がなくなる。
以上説明したように、偏向後光学系9の第1ないし第3の結像レンズ23,25および27のそれぞれの入射面および出射面の形状を、
第1面(第1の結像レンズ23の入射面) →
主走査方向の母線の形状が偏向装置5に向けて凹で、回転対称軸の向きが副走査方向で回転中心が偏向装置5寄りのトーリック面、
第2面(第1の結像レンズ23の出射面) →
主走査方向の母線の形状が偏向装置5に向けて凹で、副走査方向の断面形状が偏向装置5に向けて凹の自由曲面、
第3面(第2の結像レンズ25の入射面) →
主走査方向の母線の形状が偏向装置5に向けて凹で、回転対称軸の向きが副走査方向で回転中心が偏向装置5寄りの円筒面、
第4面(第2の結像レンズ25の出射面) → 平面、
第5面(第3の結像レンズ27の入射面) →
主走査方向の母線の形状が偏向装置5に向けて凸で、回転対称軸の向きが副走査方向で回転中心が像面寄りの円筒面、
第6面(第3の結像レンズ27の出射面) →
主走査方向の母線の形状が偏向装置5に向けて凹で、回転対称軸の向きが副走査方向で回転中心が偏向装置5寄りのトーリック面、
と定義することにより、偏向後光学系9の全ての結像レンズをガラス製のレンズとして、現像装置あるいはトナー収容部の大きさの増大を許容可能な露光装置を提供できる。
表1ないし表3は、以上説明した偏向前光学系7*および偏向後光学系9*の第1の実施の形態における各光学要素の光学的数値データを示す。なお、表1は、偏向後光学系9の第1ないし第3の結像レンズ23,25および27のそれぞれのレンズ面の形状(Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの曲率)、レンズ相互間の距離、それぞれのレーザビームに対する位置、材質等を示し、表2は、第1のレンズ23の出射面(偏向装置5から遠い側の面(自由曲面))の曲率を示している。また、表3は、コリメータレンズまたは有限焦点レンズ13について、ガラスの材質を変化した場合について示したものである。
表3は、表1に記載された第1の実施の形態においてコリメータレンズまたは有限焦点レンズのガラスの材質を変化した結果を示し、それぞれのガラスの材質に対して、20°Cおよびこれに対して温度が40°C上下した場合の、
s1(物点−物点側主点間距離)、
s2(像面側主点−結像面間距離)、
φ(20°Cにおけるレンズパワー)、
n(温度の変化による屈折率の変化、レーザ素子の波長変動を含む)、
ガラスの材質の線膨張係数、
d(レンズ厚)、
c1(入射面の近軸での曲率)、
c2(出射面の近軸での曲率)、
φ′(各温度におけるレンズパワー)、
s1h(入射面−物点側主点間距離)、
s2h′(出射面−像面側主点間距離)、および
シリンダレンズ入射面−像面間距離、
のそれぞれと、以下に説明する(A)式の値を示している。
なお、表3では、コリメータレンズまたは有限焦点レンズを保持する部材に、最も一般的なアルミダイキャスト材料であるADC12を想定しており、ADC12の線膨張係数は、2.1×10-5である。
また、表1に示したシリンダレンズ入射面−像面位置の値が、表3の右から2番めの値(シリンダレンズ入射面−像面間距離の欄)の表記と一致することが好ましい。
より詳細には、表3から明らかなように、ガラスの材質がFK5,SF60,FSK1である場合には、偏向後光学系によるデフォーカスの傾向と反対の方向へデフォーカスを動かす(シフトする)ことになり、コリメータレンズまたは有限焦点レンズと偏向後光学系を組み合わせることにより、光学性能が向上する。しかし、一般に用いられているガラスの材質であるBK7では、温度が上昇した場合に、像面側主点−結像面間距離が減少し、偏向後光学系によるデフォーカスの傾向と一致してしまうため、全体としてのデフォーカスは、大きい側に、加算されることになる。
このことを、レンズの材質、特性の面から検討すると、例えば特開平3−179420号公報に開示されているように、単レンズを用いた場合に、温度が上昇しても像面での近軸結像点距離が変化しない条件は、
Lo2/fo×[{1/(1−no)}×
{(∂no/∂t)+(∂no/∂λ)×(∂λ/∂t)+αo}]
−α1×Lo=0 ・・・(A)
t;温度、
L1;像面側主点−結像点間距離、
Lo;物点−物点側主点間距離、
fo;レンズの近軸焦点距離、
no;レンズの屈折率、
∂no/∂t;レンズの材質の屈折率の温度上昇による変化率、
∂no/∂λ;レンズの材質の屈折率の波長変化による変化率、
∂λ/∂t;発光源の温度変化による波長変化率、
αo;レンズの材質の線膨張係数、
α1;保持部材の材質の線膨張係数、
により表すことができる。
この場合、偏向後光学系において、温度の変化により結像点移動が生じた場合には、その移動を削減することができない。
また、図4を用いて上述したように、偏向後光学系において、温度が上昇した時に、結像点を偏向装置側へシフトさせる構成であることが判明した。従って、これをキャンセルするためには、レンズ単体で、温度が上昇した場合に、結像点が遠くへ移動する特性が必要となる。
このため、(A)式の値を、表3および表4に示したように計算し、望ましい値を比較すると、(A)式の左辺が以下に示すように、
7.4×10-4 > Lo2/fo×[{1/(1−no)}×
{(∂no/∂t)+(∂no/∂λ)×(∂λ/∂t)+αo}]
−α1×Lo > 8×10-5
の範囲内の値を満足する場合に、好ましい結果が得られることが認められた。
なお、図4を用いて上述した光学特性を有する露光装置1すなわち周囲の温度が上昇した場合、すなわち表3および表4を用いて説明したように、各レンズのガラスの材質を特定するとともに、各コリメータレンズ11*の出射面側の主点から、各コリメータレンズのみを用いた場合に各レーザビームが収束される位置(感光体ドラム)までの距離が温度の上昇に伴って増大される構成を用いることにより、周知の露光装置において、温度上昇時に、各半導体レーザ素子から放射されるレーザビームの波長の増大および各レンズの膨張に起因して各レンズの屈折率が見かけじょう減少し、また各レンズを保持するハウジングや支持部材の膨張により各レンズ間距離が変化されることで、それぞれのレーザビームL*が結像される位置が感光体ドラム58*の外周面よりも偏向装置5側に移動される現象に対し、温度上昇の影響をキャンセルでき、感光体ドラム58*上での各レーザビームL*のビームスポット径の変動を抑えることができる。
また、図4に示した設計手順に従って結像レンズ(偏向後光学系9の3枚)のレンズ面の形状を最適化することにより、副走査方向の広い範囲において、光学特性を補正できる。これにより、各レーザ素子から感光体ドラムに向かうレーザビームの光路の設計の自由度が増大し、例えば使用頻度の高い黒用現像装置64Bに供給するトナー量を増大するために黒用現像装置64Bの周囲の空間を増大することができる。さらに、黒現像装置64B向けにセットされるトナーの量を増大しながら、同一の露光装置を用いてカラー用の露光装置を提供できる。
またさらに、偏向後光学系9の第1ないし第3の結像レンズ23,25および27のアッベ数を、第1の結像レンズから順に、νd1,νd2およびνd3として、
60<νd1,νd2<28およびνd3<65
に定義することにより、任意の半導体レーザ素子相互間で個体差により、波長が15nm程度の範囲で変動した場合であっても、それぞれのレーザビームが結像される位置の変動量を10μm程度に抑止することができる。
さらにまた、図2,図3および表1および表4に示した結像レンズ23,25および27(偏向後光学系9)によれば、それぞれの結像レンズを偏向装置側へシフトすることができ、結果として、主走査方向の光学特性の補正が広い範囲で可能となる。これにより、例えば使用頻度の高い黒用現像装置64Bに供給するトナー量を増大するために黒用現像装置64Bの周囲の空間を増大することができる。このことは、同時に、画角の大きな高速度の露光が可能な大型の露光装置およびその露光装置を用いる高速で大型のデジタル複写装置もしくはプリンタ装置への適用を可能とする。
なお、上述した結像レンズ23,25および27のレンズ面の組み合わせは、研磨による加工が他のレンズに比較して困難であって、多くの場合、成型加工により形成される偏向装置寄りのレンズ(第1の結像レンズ23)の加工に有益であり、このため、第1の結像レンズ23の成型時のサイクルタイムの低減とそれに伴うコストの低減を可能とする。
図5は、偏向装置5と像面との間を通過するレーザビームL*の副走査方向の特性を示す概略図である。なお、図5は、特性を明確にするために、副走査方向の軸線に沿って拡大した模式図である。また、図5において、横軸は、光路長を示し、O点は、偏向装置5の多面鏡5a上の反射点を示し、LY,LM,LCおよびLBは、対応する感光体ドラム58*に向かうレーザビームを、LYp,LMp,LCpおよびLBpは、各レーザビームの中心である主光線を表している。
図5に示されるように、偏向装置5の多面鏡5aの任意の反射面で反射された2本×4組=8本のレーザビームL*は、副走査方向断面に関し、任意の反射面と第1の結像レンズ23との間で相互に交差されて、像面に案内される。
詳細には、図5において、水平方向の軸線を偏向前光学系から偏向装置による反射を伴って像面に向かう露光装置1の系の光軸(各レーザビームL*の副走査方向の位置を定義するための基準)、紙面左側を偏向前光学系、紙面右側を像面とし、垂直方向の軸線を偏向装置5の任意の反射面とすると、例えば偏向装置5の任意の反射面に、系の光軸の上方(垂直方向の軸線の(+)側)から入射したレーザビームは、反射面の近傍で系の光軸と交差したのち第1の結像レンズ23の副走査方向の下端側に入射する。同様に、例えば偏向装置5の任意の反射面に、系の光軸の下方(垂直方向の軸線の(−)側)から入射したレーザビームは、反射面の近傍で系の光軸と交差したのち第1の結像レンズ23の副走査方向の上端側に入射する。また、図5に示されるように、偏向装置5の反射面に案内されるそれぞれのレーザビームは、レーザ素子3*a,*bのそれぞれの発光点の位置が最適に設定されることにより、副走査方向すなわち垂直方向の軸線(+)側から、例えば黒(LB)、シアン(LC)、マゼンタ(LM)およびイエロー(LY)の順に整列されているので、それぞれのレーザビームL*が第1の結像レンズ23に入射する順は、垂直方向の軸線(+)側から、イエロー(LY)、マゼンタ(LM)、シアン(LC)および黒(LB)となる。
なお、図5に示したように、各レーザビームが系の光軸と交差する位置が第1の結像レンズ23と偏向装置5の反射面との間に定義されることにより、感光体ドラム58*のそれぞれに向けられる各レーザビームL*は、各レーザビーム毎に収束されながら、感光体ドラム58*の所定の位置に案内される。すなわち、各感光体ドラム58*が同一面にあると想定した結像位置(所定像面)における副走査方向のレーザビーム相互の間隔を小さくすることができる。このことは、共役な関係にある位置すなわち第1の結像レンズ23と偏向装置5の反射面との間でそれぞれのレーザビームL*の副走査方向の間隔が小さいことを示し、結果として、偏向装置5の反射面の厚さ(副走査方向高さ)を低減できることを示している。
これにより、偏向装置5の多面鏡5aを形成する際に、多面鏡5aを回転軸の方向に複数枚積層した状態で同一工程で加工可能な多面鏡5aの枚数が増大でき、偏向装置のコストが低減される。また、多面鏡5aの厚さが薄くなることにより風損(回転時の空気抵抗に起因する回転力のロス)が低減可能で、同一のパワーのミラーモータを用いる場合には、消費電力および発熱を抑止できる。その一方で、ミラーモータが小型化でき、この場合には、モータ駆動回路のコストが低減できる。
図6ないし図22は、図5を用いて説明した第1の結像レンズ23と偏向装置5との間で交差する各レーザビームL*を提供可能な露光装置1により得られるさまざまな結像特性を示すグラフである。なお、図6ないし図22のそれぞれにおいて、曲線a(実線)は、周囲温度が20°C時の、曲線b(破線)は、周囲温度が70°C時の、および曲線c(一点鎖線)は、周囲温度が−30°C時のそれぞれの特性(表3および表4を用いて説明した常温=20°C±40°C)を示すものとする。また、それぞれの図において、横軸は、主走査方向の距離を示す。
図6ないし図8は、各レーザビームの主走査方向結像位置の変動を示し、図6は、マゼンタ用レーザビーム、図7は、シアン用レーザビーム、および図8は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図6ないし図8から、全ての温度条件において、主走査方向のほとんどの位置(A3サイズの用紙の短辺方向に印字可能であるから、−160mmないし160mmの範囲)において、主走査方向のデフォーカス量の変動量が、250μmから−300μmの範囲内に抑えられることが認められる。
図9ないし図11は、各レーザビームの副走査方向結像位置の変動を示し、図9は、マゼンタ用レーザビーム、図10は、シアン用レーザビーム、および図11は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図9ないし図11から、全ての温度条件において、主走査方向のほとんどの位置(A3サイズの用紙の短辺方向に印字可能であるから、−160mmないし160mmの範囲)において、副走査方向のデフォーカス量の変動量が、500μmから−400μmの範囲内に抑えられることが認められる。
図12ないし図14は、偏向装置5の多面鏡5aの各反射面の角度精度のばらつき(面倒れ)が1分である場合に各レーザビームが結像される位置が補正される程度を示し、図12は、マゼンタ用レーザビーム、図13は、シアン用レーザビーム、および図14は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図12ないし図14に示されるように、全ての温度条件において、主走査方向の全領域で、面倒れの影響が1μm以下に抑えられることが認められる。
図15ないし図17は、シアン用レーザビームが偏向装置5の多面鏡5aにより各レーザビームが反射される角度(多面鏡5aの振り角)が0°である場合に、常温(20°C)時の副走査方向の各レーザビームの相対位置を示し、図15は、マゼンタ用レーザビーム、図16は、シアン用レーザビーム、および図17は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームのそれぞれに対応される。
図15ないし図17から、図2および図3に示した露光装置1により、カラー画像を露光する際の副走査方向の色ずれ量は、各色成分単独で、全温度条件において、最大で10μm以下に、各色成分相互間で、最大で24μm以下に、それぞれ補正されることが認められる。
図18および図19は、図15ないし図17に示した条件における主走査方向の各レーザビームの相対位置を示し、図18は、マゼンタ用レーザビームおよび図19は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームのそれぞれに対応される。
図18および図19から明らかなように、図2および図3に示した露光装置1により、カラー画像を露光する際の主走査方向の色ずれ量は、各色成分単独で、全温度条件において、最大で1μm以下に、各色成分相互間で、最大で10μm以下に、それぞれ補正されることが認められる。
図20ないし図22は、各レーザビームのfθ特性の基準値からずれを示し、図20は、マゼンタ用レーザビーム、図21は、シアン用レーザビーム、および図22は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図20ないし図22に示されるように、全ての温度条件において、主走査方向の全領域で、fθ特性のずれの大きさが、±150μm以内に抑えられることが認められる。
表4、表5および表6は、以上説明した偏向前光学系7*および偏向後光学系9*の第2の実施の形態における各光学要素の光学的数値データを示す。なお、表5は、偏向後光学系9の第1ないし第3の結像レンズ23,25および27のそれぞれのレンズ面の形状(Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの曲率)、レンズ相互間の距離、それぞれのレーザビームに対する位置等を示し、表6は、第1のレンズ23の出射面(偏向装置5から遠い側の面(自由曲面))の曲率を示している。また、表4は、表5に示した偏向後光学系に対し、最適なコリメータレンズまたは有限焦点レンズを選択する際に、ガラスの材質を変化させて検討した結果を示し、実質的に、表3に示した第1の実施の形態と同様の結果が得られている。
表5および表6に示した光学的数値データにより特定される露光装置1の第2の実施の形態においては、結像光学系(偏向後光学系)9*の第1の結像レンズ23の特徴は、偏向装置5側に面する面が回転対称軸の方向が副走査方向に向けられたトーリック面であり、像面(感光体ドラム)側に面する面は、回転対称軸が存在しない自由曲面である。また、レンズ面の凹凸の方向(母線を定義する円弧の中心が凸になる向き)は、偏向装置5側の面については、偏向装置側、像面(感光体ドラム)側に面する面については、主走査方向および副走査方向のそれぞれの方向ともに、偏向装置側に対して凹である。なお、レンズの材質としては、アッベ数νdが64.2であるBK7を用いている。
また、第2の結像レンズ25の特徴は、偏向装置5側に面する面が回転対称軸が副走査方向に向けられた円筒面であり、像面側に面する面は、回転対称軸が主走査方向に向けられた円筒面である。なお、レンズ面の凹凸の方向は、偏向装置5側の面については、偏向装置側に凹、像面(感光体ドラム)側に面する面については、偏向装置側に関しては直線である。また、レンズの材質としては、アッベ数νdが25.46であるSF6を用いている。
一方、第3の結像レンズ27の特徴は、偏向装置側に面する面が球面であり、像面側に面する面は、回転対称軸が副走査方向に向けられたトーリック面である。なお、偏向装置5側に面する面の主走査方向形状(母線の凹凸の向き)は、偏向装置5に向かって凸で、像面側に面する面の回転対称軸の向きは、偏向装置側で、母線の円弧の中心も偏向手段側である。また、レンズの材料としては、アッベ数νdが64.2であるBK7である。
図23は、表5および表6に示した第2の実施の形態において、偏向装置5と像面との間を通過するレーザビームL*の副走査方向の特性を示す概略図である。なお、図23は、特性を明確にするために、図5と同様に、副走査方向の軸線に沿って拡大した模式図である。また、図23において、横軸は、光路長を示し、O点は、偏向装置5の多面鏡5a上の反射点を示し、LY,LM,LCおよびLBは、対応する感光体ドラム58*に向かうレーザビームを、LYp,LMp,LCpおよびLBpは、各レーザビームの中心である主光線を表している。
図23に示されるように、偏向装置5の多面鏡5aの任意の反射面で反射された2本×4組=8本のレーザビームL*は、副走査方向断面に関し、任意の反射面と第1の結像レンズ23との間で相互に交差されて、像面に案内される。
詳細には、図23において、水平方向の軸線を偏向前光学系から偏向装置による反射を伴って像面に向かう露光装置1の系の光軸(各レーザビームL*の副走査方向の位置を定義するための基準)、紙面左側を偏向前光学系、紙面右側を像面とし、垂直方向の軸線を偏向装置5の任意の反射面とすると、例えば偏向装置5の任意の反射面に、系の光軸の上方(垂直方向の軸線の(+)側)から入射したレーザビームは、反射面の近傍で系の光軸と交差したのち第1の結像レンズ23の副走査方向の下端側に入射する。同様に、例えば偏向装置5の任意の反射面に、系の光軸の下方(垂直方向の軸線の(−)側)から入射したレーザビームは、反射面の近傍で系の光軸と交差したのち第1の結像レンズ23の副走査方向の上端側に入射する。また、図23に示されるように、偏向装置5の反射面に案内されるそれぞれのレーザビームは、レーザ素子3*a,*bのそれぞれの発光点の位置が最適に設定されることにより、副走査方向すなわち垂直方向の軸線(+)側から、例えば黒(LB)、シアン(LC)、マゼンタ(LM)およびイエロー(LY)の順に整列されているので、それぞれのレーザビームL*が第1の結像レンズ23に入射する順は、垂直方向の軸線(+)側から、イエロー(LY)、マゼンタ(LM)、シアン(LC)および黒(LB)となる。
なお、図23に示したように、各レーザビームが系の光軸と交差する位置が第1の結像レンズ23と偏向装置5の反射面との間に定義されることにより、感光体ドラム58*のそれぞれに向けられる各レーザビームL*は、各レーザビーム毎に収束されながら、感光体ドラム58*の所定の位置に案内される。すなわち、各感光体ドラム58*が同一面にあると想定した結像位置(所定像面)における副走査方向のレーザビーム相互の間隔を小さくすることができる。このことは、共役な関係にある位置すなわち第1の結像レンズ23と偏向装置5の反射面との間でそれぞれのレーザビームL*の副走査方向の間隔が小さいことを示し、結果として、偏向装置5の反射面の厚さ(副走査方向高さ)を低減できることを示している。
これにより、偏向装置5の多面鏡5aを形成する際に、多面鏡5aを回転軸の方向に複数枚積層した状態で同一工程で加工可能な多面鏡5aの枚数が増大でき、偏向装置のコストが低減される。また、多面鏡5aの厚さが薄くなることにより風損(回転時の空気抵抗に起因する回転力のロス)が低減可能で、同一のパワーのミラーモータを用いる場合には、消費電力および発熱を抑止できる。その一方で、ミラーモータが小型化でき、この場合には、モータ駆動回路のコストが低減できる。
図24ないし図40は、図23を用いて説明した第1の結像レンズ23と偏向装置5との間で交差する各レーザビームL*を提供可能な露光装置1により得られるさまざまな結像特性を示すグラフである。なお、図24ないし図40のそれぞれにおいて、曲線a(実線)は、周囲温度が20°C時の、曲線b(破線)は、周囲温度が70°C時の、および曲線c(一点鎖線)は、周囲温度が−30°C時のそれぞれの特性を示すものとする。また、それぞれの図において、横軸は、主走査方向の距離を示す。
図24ないし図26は、各レーザビームの主走査方向結像位置の変動を示し、図24は、マゼンタ用レーザビーム、図25は、シアン用レーザビーム、および図26は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図24ないし図26から、全ての温度条件において、主走査方向のほとんどの位置において、主走査方向のデフォーカス量の変動量が、250μmから−300μmの範囲内に抑えられることが認められる。
図27ないし図29は、各レーザビームの副走査方向結像位置の変動を示し、図27は、マゼンタ用レーザビーム、図28は、シアン用レーザビーム、および図29は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図27ないし図29から、全ての温度条件において、主走査方向のほとんどの位置において、副走査方向のデフォーカス量の変動量が、500μmから−400μmの範囲内に抑えられることが認められる。
図30ないし図32は、偏向装置5の多面鏡5aの各反射面の角度精度のばらつき(面倒れ)が1分である場合に各レーザビームが結像される位置が補正される程度を示し、図30は、マゼンタ用レーザビーム、図31は、シアン用レーザビーム、および図32は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図30ないし図32に示されるように、全ての温度条件において、主走査方向の全領域で、面倒れの影響が1μm以下に抑えられることが認められる。
図33ないし図35は、シアン用レーザビームが偏向装置5の多面鏡5aにより各レーザビームが反射される角度(多面鏡5aの振り角)が0°である場合に、常温(20°C)時の副走査方向の各レーザビームの相対位置を示し、図33は、マゼンタ用レーザビーム、図34は、シアン用レーザビーム、および図35は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームのそれぞれに対応される。
図33ないし図35から、表5および表6に示した光学特性が与えられた露光装置1により、カラー画像を露光する際の副走査方向の色ずれ量は、各色成分単独で、全温度条件において、最大で12μm以下に、各色成分相互間で、最大で24μm以下に、それぞれ補正されることが認められる。
図36および図37は、図33ないし図35に示した条件における主走査方向の各レーザビームの相対位置を示し、図36は、マゼンタ用レーザビームおよび図37は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームのそれぞれに対応される。
図36および図37から明らかなように、上述した第2の実施の形態が適用された露光装置1により、カラー画像を露光する際の主走査方向の色ずれ量は、各色成分単独で、全温度条件において、最大で1μm以下に、各色成分相互間で、最大で10μm以下に、それぞれ補正されることが認められる。
図38ないし図40は、各レーザビームのfθ特性の基準値からずれを示し、図38は、マゼンタ用レーザビーム、図39は、シアン用レーザビーム、および図40は、イエロー用レーザビームおよび黒用レーザビームに対応される。
図38ないし図40に示されるように、全ての温度条件において、主走査方向の全領域で、fθ特性のずれの大きさが、±150μm以内に抑えられることが認められる。
以上説明したように、この発明の露光装置は、周囲温度が上昇することによりコリメータレンズよりも後段に配置される多くの光学要素によるレーザビームの結像位置が変動する場合において、コリメータレンズよりも後段に配置される各光学要素により生じる結像位置の変動量と、レーザ素子とコリメータレンズ単体により生じる結像位置の変動量をキャンセルすることができ、像面でのビーム径の変動を低減できる。
また、この発明の露光装置は、副走査方向および主走査方向のそれぞれの方向の画角を広く確保でき、また、光路を選択する際の自由度が向上されているので、例えば黒画像のために黒トナーの容量の増大を可能とする。
さらに、この発明の露光装置は、偏向後光学系の3枚の結像レンズのアッベ数を、偏向装置に近い側から順に60以上、28以下および65以下としたので、複数のレーザ素子から放射されるそれぞれのレーザビームの波長に所定範囲内(15nm程度)の個体差が存在する場合でも、個々の各レーザビームが所定のビーム径に収束される位置の変動を10μm以下に抑制できる。
以上説明したようにこの発明の露光装置は、周囲温度が上昇に伴って生じるレーザビームの結像位置の変動に関し、コリメータレンズよりも後段(像面側)に配置される各光学要素により生じる結像位置の変動量を、半導体レーザ素子とコリメータレンズ単体により生じる結像位置の変動量によりキャンセルすることができ、像面でのビーム径の変動を低減できる。
また、この発明の露光装置は、副走査方向および主走査方向のそれぞれの方向の画角を広く確保でき、また、光路を選択する際の自由度が向上されているので、例えば黒画像のために黒トナーの容量の増大を可能とする。