JP4957680B2 - 非水電解質二次電池用の多孔性保護膜層付き電極、及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
詳しくは、電極活物質及び第1樹脂を含有する電極合剤層を有する電極と、該電極合剤層の表面に配置された化学結合された無機フィラー及び第2樹脂を含有する多孔性保護膜層とを備える非水電解質二次電池用の多孔性保護膜層付き電極、及び非水電解質二次電池に関する。
それに伴い、このような電子機器に使用される電池に対しても高エネルギー密度化が強く要求されるようになっており、経済性、高性能化、小型化、軽量化などの総合的なバランスの良さから、非水電解質二次電池の研究・開発が盛んに行われている。
この二次電池は、電池電圧が高く、自己放電も少ないといった長所を有し、高いエネルギー密度を実現できる。
そして、各スラリーを各集電体となる金属箔に塗布し、負極活物質層、正極活物質層を形成する。
更に、集電体に負極活物質層、正極活物質層をそれぞれ形成して成る負極、正極を、その間にセパレータを介して互いを隔離し、その状態で電池缶内に収納する。
このような非水電解液二次電池においては、作製時に混入した異物や脱落後に再度付着した活物質などが内部ショートを引き起こすという問題が生じている。
その結果、集電体上に電極活物質及び第1樹脂材料を含有するスラリーを塗布し、乾燥して、電極合剤層を形成し、この上に無機フィラー材料及び第2樹脂材料を含有するスラリーを塗布し、乾燥して、多孔性保護膜層を形成することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
そして、第2樹脂が、カルボキシメチルセルロースとゴム状樹脂とを含有し、無機フィラーと第2樹脂が含有するカルボキシメチルセルロースとの間に形成される下記一般式(1)又は(2)
−O−…(1)
−O−Si−…(2)
で表される構造を含む化学結合を有し、
第1樹脂と無機フィラーとの間に形成される下記一般式(3)又は(4)
−O−…(3)
−O−Si−…(4)
で表される構造を含む化学結合を有している。
そして、第2樹脂が、カルボキシメチルセルロースとゴム状樹脂とを含有し、無機フィラーと第2樹脂が含有するカルボキシメチルセルロースとの間に形成される下記一般式(1)又は(2)
−O−…(1)
−O−Si−…(2)
で表される構造を含む化学結合を有し、
第1樹脂と無機フィラーとの間に形成される下記一般式(3)又は(4)
−O−…(3)
−O−Si−…(4)
で表される構造を含む化学結合を有している。
(1−1)非水電解質二次電池の構成
図1は、本発明の第1の実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略断面図である。なお、この非水電解質二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものである。
同図に示すように、この非水電解質二次電池は、外装部材の一部であって、ほぼ中空円柱状の電池缶31の内部に、巻回電極体20を有している。巻回電極体20は、負極21と正極22とがセパレータ24を介して対向して位置し、巻回されているものである。
なお、セパレータ24は、非水電解質の一例である非水電解液を含有している。また、巻回電極体20と非水電解質を合わせたものを電池素子20Aということにする。
以下、図2を参照しながら、二次電池を構成する負極21、正極22、セパレータ24、非水電解質について順次説明する。
負極21は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体21Aの両面に負極合剤層21Bが設けられた構造を有している。また、負極合剤層21Bの表面には、多孔性保護膜層21Cが設けられている。
なお、図示はしないが、負極集電体21Aの片面のみに負極合剤層21Bを設けるようにしてもよい。
また、負極合剤層21Bは、負極活物質及び第1樹脂を含んで構成されており、必要に応じて、例えば気相成長炭素繊維等の導電剤を含んでいてもよい。
更に、多孔性保護膜層21Cは、無機フィラー及び第2樹脂を含んで構成されており、必要に応じて、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を含んでいてもよい。
ここで、負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料を挙げることができる。
このような金属酸化物としては、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニアなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
−O−…(3)
−O−Si−…(4)
で表される構造を含む化学結合が形成されていることが、多孔性保護膜層の割れや剥離を抑制ないし防止する観点から望ましい。
−O−…(1)
−O−Si…(2)
で表される構造を含む化学結合を有している。第2樹脂としては、このような化学結合を有しているものであれば、特に限定されるものではなく、例えばポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、カルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどのゴム状樹脂との混合物を挙げることができる。
多孔性保護膜層としては、例えば、無機フィラー材料を第2樹脂材料及び界面活性剤と共に溶媒に分散させて成る多孔性保護膜層形成用スラリーを調製し、この多孔性保護膜層形成用スラリーを負極合剤層上に塗布して成るコーティング膜を用いることができる。
保護膜として多孔性のものを用いるのは、電極本来の機能、即ち電解液中の電解質イオンとの反応が損なわれないようにするためである。
また、多孔性保護膜層の厚さが20μmを超える場合には、多孔性保護膜層が電極と電解液中のイオンとの反応を妨げ、電池性能が劣化することがある。
正極22は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体22Aの両面に正極活物質及び第1樹脂を含有する正極合剤層22Bが設けられた構造を有している。
なお、図示はしないが、正極集電体22Aの片面のみに正極合剤層22Bを設けるようにしてもよい。
また、正極合剤層22Bは、正極活物質及び第1樹脂を含んで構成されており、必要に応じて、例えばケッチェンブラック等の導電剤を含んでいてもよい。
ここで、正極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料を挙げることができる。
具体的には、一般式LiMO2(但し、MはCo、Ni、Mn、Fe、Al、V、Tiのうち少なくとも1種類を含有する。)で表されるリチウムと遷移金属から成る複合金属酸化物や、リチウムを含んだ層間化合物等を用いることが好ましい。
また、この他にLiaMXb(Mは遷移金属から選ばれる1種、XはS、Se、PO4から選ばれ、0<a、bは整数である。)を用いることもできる。
特に、正極活物質としては、LixMIO2又はLiyMII2O4で表されるリチウム複合酸化物を用いれば、高電圧を発生させることができ、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。
これらの組成式においてMIは1種類以上の遷移金属元素を表しており、好ましくはコバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうちの少なくとも1種である。
MIIは1種類以上の遷移金属元素を表しており、好ましくはマンガン(Mn)である。また、x及びyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05以上1.10以下の範囲内である。
このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNizCo1−zO2(但し、0<z<1)又はLiMn2O4等が挙げられる。
セパレータ24としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン製の多孔質膜を好適に用いることができる。
ポリオレフィン製の多孔質膜は、電気化学的安定性に優れているためショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができる。例えば、ポリプロピレンは150〜170℃の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができる。一方、ポリエチレンは100〜160℃の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができる。
また、セパレータは、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造としてもよい。
例えば、基材層と、該基材層の正極側に対向する面や両面に設けられる表面層とを有した構造であって、基材層をポリエチレン、表面層をポリプロピレンで構成したものとすることができる。更には、表面層をポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂製の多孔質膜で構成することもできる。
セパレータの厚みは、例えば10μm以上300μm以下の範囲内が好ましく、15μm以上30μm以下の範囲内がより好ましい。セパレータの厚みが薄いとショートが発生してしまうことがあり、セパレータの厚みが厚いと、正極材料の充填量が低下してしまうからである。
非水電解質の一例である非水電解液は、非水溶媒に電解質塩として例えばリチウム塩が溶解されたものである。
非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等の有機溶媒が好ましく、これらのうちのいずれか1種又は2種以上が混合して用いられている。
リチウム塩としては、例えば、LiCl、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、N(CnF2n+1SO2)2Li等があり、これらのうちのいずれか1種又は2種以上が混合して用いられている。中でも、LiPF6を主として用いることが好ましい。
上述の構成を有する非水電解質二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
例えば、負極活物質と第1樹脂材料とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンや水などの溶媒に分散させて負極合剤層形成用スラリーとする。
ここで、第1樹脂材料としては、例えばポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、カルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどのゴム状樹脂との混合物などの通常型樹脂、これらの架橋型樹脂を適用できる。架橋型樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデンなどの樹脂にヒドロキシル基やカルボキシル基などを共重合させた樹脂を、後述する無機フィラー材料やシランカップリング剤などと反応させて、上述した一般式(3)又は(4)で表される構造を含む化学結合を形成する構造単位を導入したものを挙げることができる。ここで用いられるバインダーは具体的にはポリフッ化ビニリデン樹脂をマレイン酸変性させたものなどが使用できる。なお、架橋型樹脂のうち加熱により上述した一般式(3)又は(4)で表される構造を含む化学結合を形成するものが熱架橋型樹脂である。
ここで、無機フィラー材料としては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニアを適用できる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
また、第2樹脂材料としては、上述した第1樹脂と同様の架橋型樹脂、特に熱架橋型樹脂を適用できる。
更に、シランカップリング剤は無機フィラーの表面を処理するために添加するものであり、第1樹脂材料や第2樹脂材料と反応性を有する官能基が外側に配向し反応することで、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を形成し、良好な接着性を保つことができる。結果として第1樹脂材料や第2樹脂材料及び無機フィラー材料と反応する極性基を有するものであれば特に限定されることなく、従来公知のシランカップリング剤を適用できる。例えば、エポキシ基、スルフィド基、メルカプト基、アミノ基を有するシランカップリング剤を具体例として挙げることができる。シランカップリング剤の添加量として0.1〜1.0質量%が好ましい。あまり添加量が多すぎる場合には、加水分解により発生するアルコールにより、系の安定性が低下するおそれがある。また、アミノ基を有するシランカップリング剤はゾル溶液を安定化させることができる観点から望ましい。シロキサン結合を形成することで、耐薬品性や可とう性の向上が期待され、多孔性保護膜層の割れや剥離の抑制ないし防止効果の向上が期待される。
なお、Si−Oの結合はFT−IRを用いて1110〜830cm−1の吸収スペクトルで確認できる。
更にまた、多孔性保護膜層形成用スラリーは、コロイド粒子の表面がヒドロキシル基などにより電気二重層を形成し、粒子間の反発により安定化されている。このようなコロイド溶液にすることにより、スラリーの性状を安定化することができ、長期保存性が向上する。また、ヒドロキシル基によりコロイド粒子と第2樹脂材料との親和性を向上させることで粒子間結着力が向上する。無機フィラー材料の水分散コロイド溶液としては、粒子径が20〜200nmの比較的、大粒径のゾルを使用することが望ましい。粒径がこれより小さいと、負極合剤層表面に目詰まりが発生することがあり、成膜時の多孔性保護膜層の透気度の低下により、電解液の浸透性が低下し、電池の放電容量維持率が低下する可能性がある。また、粒径がこれより大きいと、コロイド溶液の安定性が悪くなり、粒子の沈降や凝集が起こる可能性がある。
かかる工程においては、乾燥させる際に、例えば100℃以上で加熱することにより、上述した一般式(1)又は(2)で表される構造を含む化学結合が形成される。また、第1樹脂材料としても架橋型樹脂、特に熱架橋型樹脂を適用していた場合には、上述した一般式(3)又は(4)で表される構造を含む化学結合が形成される。
また、かかる工程においては、多孔性保護膜形成用スラリー中の第2樹脂材料が無機フィラー材料同士の接触界面又は無機フィラー材料と負極合剤層との接触界面近傍で化学結合し、安定した強固な多孔性保護膜層が得られる。
これにより、正極を作製する。
これにより、図1に示した非水電解質二次電池が完成する。
(2−1)非水電解質二次電池の構成
図4は、本発明の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す斜視図である。なお、この非水電解質二次電池は、いわゆるラミネート型といわれるものである。
この非水電解質二次電池は、負極リード16及び正極リード17が取り付けられた電池素子20Aを外装部材の一例であるラミネートフィルムフィルム33の内部に収容したものであり、小型化、軽量化及び薄型化が可能となっている。
負極リード16及び正極リード17は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、ステンレス等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状又は網目状とされている。
アルミラミネートフィルムは、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子20Aとが対向するように配設されており、各外縁部が融着又は接着剤により互いに密着されている。 ラミネートフィルムと負極リード16及び正極リード17との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム34が挿入されている。
密着フィルム34は、負極リード16及び正極リード17に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン又は変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されている。
電池素子20Aは、負極21と正極22とを非水電解質層23及びセパレータ24を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープにより保護されている。
正極22は、正極集電体22Aの片面又は両面に正極合剤層22Bが設けられた構造を有しており、負極合剤層21Bと正極合剤層22Bとが対向するように配置されている。この正極合剤層22の片面又は両面に多孔性保護膜22Cが設けられている。
この実施形態では、多孔性保護膜が負極合剤層の表面及び正極合剤層の表面の両方に設けられている場合を例として説明するが、多孔性保護膜を負極合剤層の表面及び正極合剤層の表面の一方に設けるようにしてもよい。
ゲル状の非水電解質層23は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。
非水電解液(即ち、非水溶媒及び電解質塩等)の構成は、上述の第1の実施形態による非水電解質二次電池と同様である。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。
特に、電気化学的な安定性を考慮すると、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド等が好ましい。
上述の構成を有する非水電解質二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、負極及び正極のそれぞれに、非水溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶媒とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶媒を揮発させて非水電解質層を形成する。
その後、負極集電体の端部に負極リードを溶接等により取り付けると共に、正極集電体の端部に正極リードを溶接等により取り付ける。
次に、非水電解質層が形成された負極と正極とをセパレータを介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープを接着して電池素子を形成する。
最後に、例えば、ラミネートフィルムの間に電池素子を挟み込み、ラミネートフィルムの外縁部同士を熱融着等により密着させて封入する。
その際、負極及び正極リードとラミネートフィルムとの間には密着フィルムを挿入する。
これにより、図4に示した非水電解質二次電池が得られる。
まず、上述したようにして負極及び正極を作製し、負極及び正極に負極リード及び正極リードを取り付けたのち、負極と正極とをセパレータを介して積層して巻回し、最外周部に保護テープを接着して、電池素子の前駆体である巻回電極体を形成する。
次に、この巻回電極体をラミネートフィルムに挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、ラミネートフィルムの内部に収納する。
次に、非水溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む非水電解質層形成用組成物を用意し、袋状に形成したラミネートフィルムの内部に注入する。
次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の非水電解質層を形成する。
以上により、図4に示した非水電解質二次電池が得られる。
具体的には、以下の各例に記載したような操作を行い、図1に示したような非水電解質二次電池を作製し、その性能を評価した。
<多孔性保護膜層付き負極の作製>
まず、負極活物質として黒鉛の一例である粒状人造黒鉛粉末(BET比表面積0.58m2/g)を95.5質量部と、第1樹脂材料としてポリフッ化ビニリデンを3質量部と、導電剤として気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製:VGCF)を1.5質量部とを混合し、負極合剤を調製した。この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤層形成用スラリーを調製した。
次いで、この負極合剤層形成用スラリーを、負極集電体である帯状銅箔(厚さ12μm)の両面に塗布し、乾燥し、プレス機にて圧縮成形することで帯状の負極を作製した。
更に、無機フィラー材料としてコロイダルシリカ(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を82.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌して混合し、多孔性保護膜層形成用スラリーを調製した。
しかる後、この多孔性保護膜層形成用スラリーを、作製した負極の負極合剤層上に多孔性保護膜層の厚さが3μmとなるように塗布し、恒温槽にて100℃で乾燥し、多孔性保護膜層を形成して、多孔性保護膜層付き負極を作製した。更に、帯状銅箔にニッケル製のリードを取り付けた。
次に、正極活物質としてLiCoO2を95.5質量部と、第1樹脂材料としてポリフッ化ビニリデンを3質量部と、導電剤としてケッチェンブラックを1.5質量部とを混合し、正極合剤を調製した。この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤層形成用スラリーを調製した。
次いで、この正極合剤層形成用スラリーを、厚さ15μmの帯状のアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥し、プレス機にて圧縮成形することで帯状の正極を作製した。更に、帯状銅箔にアルミニウム製のリードを取り付けた。
次に、作製した帯状負極と帯状正極を、厚さ18μmの帯状の微多孔性ポリプロピレンフィルムを介して、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に積層して4層構造の積層電極体を作製した。この積層電極体をその長さ方向に沿って負極を内側にして渦巻型に多数回巻回し、更に最外周に位置するセパレータの端部をテープで固定し、巻回電極体を作製した。この巻回電極体は、外径が約17.4mmであった。
次いで、作製した巻回電極体を、ニッケルメッキを施した鉄製の電池缶内に収納し、巻回電極体の上下両面に絶縁板を設置した。
次いで、負極の集電を行うために、ニッケル製負極リードを帯状銅箔から導出して電池缶に溶接した。また、正極の集電を行うために、アルミニウム製リードを帯状アルミニウム箔から導出して電池蓋に溶接した。
更に、巻回電極体が収納された電池缶の中に、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等容量混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解した非水電解液を4.4g注入して、巻回電極体に含浸させた。
しかる後、絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめることで電池蓋を固定し、電池内に気密性を保持させ、本例の非水電解液二次電池を得た(円筒型、直径18mm、高さ65mm)。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてコロイダルアルミナ(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を82.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてコロイダルジルコニア(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を82.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてコロイダルシリカ(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を81.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部とシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてコロイダルアルミナ(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を81.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部とシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてコロイダルジルコニア(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を81.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部とシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
負極合剤層の表面に多孔性保護膜層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてアルミナ(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を82.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
多孔性保護膜層付き負極の作製に際し、無機フィラー材料としてアルミナ(平均粒径0.1μm)を15質量部と、第2樹脂材料としてカルボキシメチルセルロースを1.2質量部及びスチレンブタジエンゴムを1質量部と、イオン交換水を81.7質量部とを手撹拌して混合し、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを0.1質量部とシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を1質量部を添加し、3000rpmで30分間撹拌し、混合して得られる多孔性保護膜層形成用スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の非水電解質二次電池を得た。
(多孔性保護膜層の割れ及び剥離の観察)
以上のようにして作製した各非水電解質二次電池について、40℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで14時間行い、次いで、500mAの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行うという充放電を200サイクル行った。
200サイクル後の非水電解質二次電池を解体し、多孔性保護膜層の割れ及び剥離の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
得られた結果を表1に示す。なお、表1中、多孔性保護膜層に割れや剥離が存在したものの結果を「×」、割れや剥離が存在しなかったものの結果を「○」とした。また、図6に、実施例1における多孔性保護膜層のSEM写真を示す。更に、図7に比較例2における多孔性保護膜層のSEM写真を示す。
以上のようにして作製した各電池について、電池内に微小Ni金属片を入れ、物理的内部ショートの発生率を以下のようにして調べた。まず、電池作製後に直ちに初充電を行い、1週間放置した。
1週間放置後、開路電圧を測定し、この電圧が基準以下の電圧である場合を「内部ショート有り」と判断し、この判断の結果に基づき内部ショート発生率[%](=(内部ショート有りと判断された電池の個数/評価した電池の総個数)×100)を求めた。
得られた結果を表1に併記する。
また、本発明の範囲に属する実施例1〜6は、本発明外の比較例1〜3と比較して、内部ショート発生率が低下していることが分かる。
なお、実施例1〜3においては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニアなどが有するヒドロキシル基とスチレンブタジエンゴムが末端に有するヒドロキシル基やカルボキシメチルセルロースが有するヒドロキシル基とが反応して上述した一般式(1)で表される構造を含む化学結合を形成しているために割れや剥離が防止できたものである。また、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニアなどが有するヒドロキシル基とポリフッ化ビニリデンが末端に有するヒドロキシル基とが反応して上述した一般式(3)で表される構造を含む化学結合を形成している場合には、これによってより割れや剥離が防止できたと推定される。
また、実施例4〜6においては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニアなどが有するヒドロキシル基と、シランカップリング剤と、スチレンブタジエンゴムが末端に有するヒドロキシル基やカルボキシメチルセルロースが有するヒドロキシル基とが反応して上述した一般式(2)で表される構造を含む化学結合を形成しているために割れや剥離が防止できたものである。また、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニアなどが有するヒドロキシル基と、シランカップリング剤と、ポリフッ化ビニリデンが末端に有するヒドロキシル基とが反応して上述した一般式(4)で表される構造を含む化学結合を形成している場合には、これによってより割れや剥離が防止できたと推定される。なお、上述した一般式(1)又は(3)で表される構造を含む化学結合を形成している場合もあり得る。
高分子固体電解質に含有される導電性高分子化合物として具体的には、シリコンポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー、又はこれらの化合物の複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が挙げられる。特に上記フッ素系ポリマーとしては、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−テトラフルオロエチレン)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−トリフルオリエチレン)等が挙げられる。
Claims (5)
- 集電体と該集電体の表面に配置された電極活物質及び第1樹脂を含有する電極合剤層とを有する電極と、
上記電極合剤層の表面に配置された無機フィラー及び第2樹脂を含有する多孔性保護膜層と、
を備え、
上記第2樹脂が、カルボキシメチルセルロースとゴム状樹脂とを含有し、
上記無機フィラーと上記第2樹脂が含有するカルボキシメチルセルロースとの間に形成される下記一般式(1)又は(2)
−O−…(1)
−O−Si−…(2)
で表される構造を含む化学結合を有し、
上記第1樹脂と上記無機フィラーとの間に形成される下記一般式(3)又は(4)
−O−…(3)
−O−Si−…(4)
で表される構造を含む化学結合を有している、非水電解質二次電池用の多孔性保護膜層付き電極。 - 上記無機フィラーが、ヒドロキシル基を有するコロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、またはコロイダルジルコニアである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用の多孔性保護膜層付き電極。
- 上記ゴム状樹脂が、スチレンブタジエンゴムである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用の多孔性保護膜層付き電極。
- 上記スチレンブタジエンゴムが、ヒドロキシル基を有し、
上記無機フィラーと、上記スチレンブタジエンゴムとの間に形成される上記一般式(1)又は(2)で表される構造を含む化学結合を有する、請求項3に記載の非水電解質二次電池用の多孔性保護膜層付き電極。 - 集電体と該集電体の表面に配置された電極活物質及び第1樹脂を含有する電極合剤層とを有する電極と、
上記電極合剤層の表面に配置された無機フィラー及び第2樹脂を含有する多孔性保護膜層と、
非水電解質と、
セパレータと、
を備え、
上記第2樹脂が、カルボキシメチルセルロースとゴム状樹脂とを含有し、
上記無機フィラーと上記第2樹脂が含有するカルボキシメチルセルロースとの間に形成される下記一般式(1)又は(2)
−O−…(1)
−O−Si−…(2)
で表される構造を含む化学結合を有し、
上記第1樹脂と上記無機フィラーとの間に形成される下記一般式(3)又は(4)
−O−…(3)
−O−Si−…(4)
で表される構造を含む化学結合を有している、非水電解質二次電池。
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