JP4956193B2 - 改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼおよび当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法に関する。
ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアンヒドリンの製造反応を触媒する酵素である。すなわち、ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアニドドナーの存在下、カルボニル化合物からシアノヒドリン(α−ヒドロキシニトリル)の合成反応に用いられる酵素触媒である。シアンヒドリンは、さまざまな化合物に変換することが可能であり、有機合成中間体として有用である。また、光学活性シアンヒドリンは、α−ヒドロキシ酸、α−ヒドロキシケトン、β−アミノアルコールなどの合成に使用でき、医薬品、化学品等分野で使用される重要な種々の光学活性中間体を合成する上で極めて有用である。したがって、ヒドロキシニトリルリアーゼを大量に生産する方法の開発が望まれている。
シアンヒドリン合成を触媒するヒドロキシニトリルリアーゼは、(S)選択性および(R)選択性の2つのグループに分けられる。その中で(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、酸性条件下においてケトンまたはアルデヒドとシアン化合物から(S)−シアンヒドリンを生成する反応を触媒する。この反応の代表例として、ベンズアルデヒドとシアン化合物である青酸から、(S)−マンデロニトリル(mandelonitrile)を生成する反応がある。また、(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、安価な基質から医薬および化成品中間体として利用価値の高い光学活性体を生産することのできる生体触媒としても使用されており、多くの分野において極めて有用である。光学活性シアンヒドリンの工業的生産にヒドロキシニトリルリアーゼを利用するために、菌体あたりまたはタンパク質あたりの活性が高く立体選択性の高いヒドロキシニトリルリアーゼを大量に生産する方法の開発が望まれている。
ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアン配糖体(cyanogenic glucoside)を有する植物においてのみ存在することが知られている。例えば、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼとしてアーモンド(Prunus amygdalus)などのバラ科植物由来のものなどが知られている。また、(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼとして、モロコシ(Sorghum bicolor)などのイネ科植物由来、キャッサバ(Manihot esculenta)やパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)などのトウダイグサ科植物由来、キシメニア(Ximenia americana)などのボロボロノキ科植物由来のものなどが知られている。しかし、これらの植物体からは微量のヒドロキシニトリルリアーゼしか抽出することができなかった。
そこで、医薬、化学的に有用なヒドロキシニトリルリアーゼを大量に得るために、遺伝子工学的な方法でヒドロキシニトリルリアーゼを得る試みがされてきた(1〜9)。しかしながら、形質転換体を用いて異種タンパク質を発現させる場合には、同種タンパク質についての研究によって得た結果(発現量や生化学的活性など)をそのままあてはめることができない場合がある。すなわち、形質転換体を用いて異種タンパク質を発現させる場合には、形質転換体の挙動や発現量、目的タンパク質の生化学的活性などを予め予測することは容易ではない。
また、発現させようとするタンパク質の種類によっては、形質転換体宿主内で正常なタンパク質の折りたたみが行われず、いわゆる封入体が形成されてしまうことがある。そして、この封入体中のタンパク質は本来の活性が失われた不活性型タンパク質となることが多く知られている。ヒドロキシニトリルリアーゼにおいても、例えば、大腸菌形質転換体を37℃で培養して発現させたヒドロキシニトリルリアーゼの99%は不活性な封入体の形で不溶性画分中に見出されることが報告されている(1)。また、大腸菌で製造した粗酵素液の酵素活性が0.545unit/mgproteinであること(2−4)、大腸菌(宿主M15[pREP4])で製造した粗酵素液の液活性が0.5U/mlであること(14)、粗酵素液の比活性が0.20U/mg protein(宿主Top10’,28℃)および0.61U/mg protein(宿主XL1−blue,22℃)であること(15,16)が報告されている。しかし、上記の酵素活性は、いずれも十分であるとはいえない。
これらの問題点を解決する手段として、例えば、ヒドロキシニトリルリアーゼを発現する大腸菌形質転換体を低温で培養することにより、封入体の形成を抑制して、活性を有するヒドロキシニトリルリアーゼ収率を向上させようとしている(8)。しかしながら、この技術では、培養時間が長時間に及ぶうえ、低温を維持するため、電力、冷却水など大量のユーティリティーを使用しなければならないという問題点がある。ヒドロキシニトリルリアーゼの工業的製造を考えた場合、これらの問題点は、大幅な製造コストアップの要因となる。
ところで、近年の組換えDNA技術の進歩により、タンパク質の構成アミノ酸の1個以上を欠失、付加、挿入、もしくは他のアミノ酸で置換した変異体を作製することが比較的容易に可能となっている。特に、タンパク質が酵素である場合、これら変異体は、欠失、付加、挿入または置換されるアミノ酸残基の個所および置換されるアミノ酸の種類によっては、変異の導入されていない酵素と比較して、安定性、有機溶媒耐性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、基質特異性、基質親和性などの性能が向上することが知られている。これら性能の向上は、触媒としての酵素の安定化、反応工程の簡略化、反応収率の向上等を通じて、酵素反応を利用した工業的生産における大幅な生産コスト低減をもたらすことがある。従って、多くの酵素において様々な性能が向上した有用な改良酵素の創製が行われている。
ヒドロキシニトリルリアーゼにおいても、構成するアミノ酸の1つまたは複数個を欠失、付加、挿入または置換した変異体の報告がなされている。例えば、変異ヒドロキシニトリルリアーゼが芳香族アルデヒド、とくに3−フェノキシベンズアルデヒドに対する親和性を向上したことが報告されているが(9,10)、大幅なヒドロキシニトリルリアーゼ製造収率の向上には至っていない。また、128番目のトリプトファンを他のアミノ酸に置換した変異体および81番目のシステインをアラニンに置換した変異体を作製し、大腸菌M15株を宿主とする形質転換体を得て、100μMのIPTGを含有するTB媒体中、培養温度37℃を20℃に冷却した培養条件において、該変異体を発現するM15株形質転換体のいくつかは、細胞あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを発現するM15株形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性よりも高いことが報告されている(6)。しかしながら、同文献中、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを発現するM15株形質転換体のヒドロキシニトリルリアーゼ活性は、同培養条件によって得られた野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを発現するJM109株形質転換体のものの1/2程度であり、発現能力の高い宿主において変異体の効果を必ずしも実証しているとは言えない。また、中国産キャッサバ(Manihot esculenta)亜種由来ヒドロキシニトリルリアーゼにおける113番目のアミノ酸であるグリシンをセリンに置換した変異ヒドロキシニトリルリアーゼの比活性が向上したことが報告されている(11)。しかし、一般的なキャッサバ(Manihot esculenta)由来ヒドロキシニトリルリアーゼの113番目のアミノ酸はセリンであり、該アミノ酸がヒドロキシニトリルリアーゼ活性に重要であることを示しているに過ぎない。
ところで、大腸菌(E.coli)細胞抽出液中のタンパク質の40%は、翻訳時には存在するN末端のメチオニンが、プロセッシングを受けていることが報告されている(17)。このプロセッシングは、メチオニンアミノペプチダーゼと呼ばれる酵素によって触媒される(18)。大腸菌細胞内に存在する内在性タンパク質が、メチオニンアミノペプチダーゼによるプロセッシングを受け易いか否かは、内在性タンパク質の2番目のアミノ酸の種類によって決定され、2番目のアミノ酸の側鎖が大きいほどプロセッシングを受け難いことが報告されいる(12)。また、「タンパク質のN末端アミノ酸の種類によって、大腸菌細胞内におけるそのタンパク質の安定性が決定される」というN末端則が報告されている(13)。N末端側によれば、タンパク質のN末端がアルギニン、リジン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの場合、細胞内におけるタンパク質の安定性は低く、速やかに分解される。これらの知見に基づき、目的タンパク質の2番目のアミノ酸を、側鎖が大きく(すなわち、メチオニンアミノペプチダーゼによるプロセッシングを受け難い)、かつ、アルギニン、リジン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン以外のものにすれば、形質転換体宿主内での目的タンパク質の安定性向上を期待できる可能性も考えられる。しかし、上記の結果(12,13)は、宿主内在性のタンパク質、またはいくつかのモデルタンパク質の解析によって得られたものであり、異種タンパク質であるヒドロキシニトリルリアーゼが必ずしも上述の法則に従うとは限らない。その理由は、前述したように、形質転換体を用いて異種タンパク質を発現させる場合には、形質転換体の挙動や発現量、目的タンパク質の生化学的活性などを予め予測することは容易ではないからである。
以上のように、顕著に性能が向上したヒドロキシニトリラーゼを取得しようとするこれまでの試みは必ずしも成功しているとは言い難く、さらなる有用ヒドロキシニトリラーゼ変異体の創出が切望されていた。
参考文献
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(2)特開2000−189159号公報
(3)特開2000−189160号公報
(4)特開2000−245486号公報
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(6)国際公開第0148178号パンフレット
(7)特開2004−194550号公報
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(13)Alexander Varshavsky,Proc.Natl.Acad.USA 93(1996),12142−12149
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(16)Meinhard Hasslacher et al,Protein Expression and Purification 11(1997),61−71
(17)Waller,J.P.et al,J.Mol.Bio.7(1963),483−496
(18)Ben−Bassat,A.et al,J.Bacteriol.169(1987),751−757
本発明は、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼおよび当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために誠意研究を行った結果、野生型ヒドキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、少なくとも1つのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換することにより、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性を大幅に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)以下の(A)〜(G)から選択されるいずれかの改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(A)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(B)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(C)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(D)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基および第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(E)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(F)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(G)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(2)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼがキャッサバまたはパラゴムノキ由来である(1)記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(3)第2番目のアミノ酸残基が、リジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン、スレオニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、セリンおよびグルタミン酸からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸に置換された(1)または(2)記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(4)第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が、以下の(a)および/または(b)の性質を有するアミノ酸に置換された(1)〜(3)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(a)分子中に含まれる窒素原子数が1または2のアミノ酸である
(b)中性アミノ酸である
(5)第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニンおよびトリプトファンからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸に置換された(1)〜(4)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(6)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中の第175番目から第224番目の領域に存在する少なくとも1つのリジン残基が、他のアミノ酸に置換された(1)〜(5)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(7)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中の第175番目から第224番目の領域に存在する少なくとも1つのリジン残基が、以下の(a)および/または(b)の性質を有するアミノ酸に置換された(1)〜(6)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(a)分子中に含まれる窒素原子数が1または2のアミノ酸である
(b)中性アミノ酸である
(8)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中の第175番目から第224番目の領域に存在する少なくとも1つのリジン残基が、プロリンに置換された(1)〜(7)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(9)配列番号1で示されるアミノ酸配列中の、第176番目、第199番目および第224番目のリジン残基からなる群から選択される少なくとも一つのリジン残基が他のアミノ酸に置換された(1)〜(8)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(10)配列番号102で示されるアミノ酸配列中の、第175番目、第198番目および第223番目のリジン残基からなる群から選択される少なくとも一つのリジン残基が他のアミノ酸に置換された(1)〜(8)のいずれか一項に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、(A)〜(G)記載の置換部位のアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなる改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子。
(13)(12)記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む組換えベクター。
(14)(13)記載の組換えベクターを宿主に導入してなる形質転換体。
(15)(14)記載の形質転換体を培養して得られる培養物。
(16)(15)記載の培養物から採取される改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(17)(15)記載の培養物から改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを採取することを特徴とする改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法。
(18)ケトン化合物またはアルデヒド化合物と、シアン化合物とを、(1)〜(11)および(16)のいずれかに記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼで処理し、得られる処理物からシアンヒドリンを採取することを特徴とするシアンヒドリンの製造方法。
(19)(18)記載の方法により得られたシアンヒドリンを加水分解することを特徴とするヒドロキシカルボン酸の製造方法。
図1は、実施例1における植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の作製法を示す模式図である。
図2は、実施例3における大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の作製法を示す模式図である。
図3は、実施例6において、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、空ベクター導入形質転換体(JM109/pKK233−2(+Sse))、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体(JM109/pOXN103)、および2番目のアミノ酸を置換したヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体(pOXN103V2K、pOXN103V2N、pOXN103V2I、pOXN103V2R、pOXN103V2Q、pOXN103V2P、pOXN103V2T、pOXN103V2Y、pOXN103V2L、pOXN103V2M、pOXN103V2S、pOXN103V2E、pOXN103V2A、pOXN103V2G、pOXN103V2D)の発現量をSDS−PAGEにより比較解析した図である。矢印はヒドロキシニトリルリアーゼタンパク質のバンドを示す。
図4は、実施例8において、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pUMESDsy、pUMESDsyを鋳型とした1回目のError prone PCRで得られたランダム変異体発現形質転換体JM109/pUMESDsy−H103L、およびpUMESDsy−H103Lを鋳型に用いた2回目のError prone PCRで得られたランダム変異体発現形質転換体(19−E8、36−E10)からそれぞれ調製した細胞抽出液可溶性画分(S)および不溶性画分(I)のSDS−PAGE分析結果の図である。
図5は、実施例9において、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pUMESDsy、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pUMESD、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにH103L変異を導入した改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pUMESDsy−H103L、および植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにH103L変異を導入した改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体pUMESD−H103Lからそれぞれ調製した細胞抽出液可溶性画分(S)および不溶性画分(I)のSDS−PAGE分析結果の図である。
図6(A)は、実施例10において、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ(His)およびそのアミノ酸配列の第103番目のヒスチジン残基を他のアミノ酸に変異させた9種類のアミノ酸置換体のヒドロキシニトリルリアーゼ活性を示す図である。(B)は、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ(His)およびそのアミノ酸配列の第103番目のヒスチジン残基を他のアミノ酸に変異させた10種類のアミノ酸置換体のヒドロキシニトリルリアーゼ活性を示す図である。
図7は、実施例12において、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pOXN103、V2I変異が導入された植物コドン改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pOXN103V2I、H103L変異が導入された植物コドン改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pOXN103H103L、V2I変異およびH103L変異が導入された植物コドン複合改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pOXN103V2I+H103Lについて、30℃および37℃でフラスコ培養を行って得られた細胞抽出液各画分(T:全画分、P:不溶性画分、S:可溶性画分)のSDS−PAGE分析結果の図である。
図8は、実施例12において、V2I変異が導入された植物コドン改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体C600/pOXN103V2I、および、V2I変異とH103L変異が導入された植物コドン複合改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体C600/pOXN103V2I+H103Lのジャー培養評価における菌濃度、活性(比活性、液活性)およびSDS−PAGE(T:全画分、P:不溶性画分、S:可溶性画分)の結果を示す図である。
図9は、実施例13において、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのH103残基をコードするコドンの違いによる発現量への影響を調べたSDS−PAGE分析結果を示す図である。
図10は、実施例14において、精製した野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ(MeHNL)およびH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ(MeHNL−H103M)のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
図11は、実施例15および実施例16において、リジン残基置換変異体の可溶性画分由来タンパク質10μgをSDS−PAGEにより分析した結果を示す図である。
以下に本発明の実施の形態について説明するが、本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。なお、本明細書において引用した文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
本発明は、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、少なくとも1つのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換することにより、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性を大幅に向上させることができることに基づくものである。
(I)ヒドロキシニトリルリアーゼ活性
本発明において、「ヒドロキシニトリルリアーゼ活性」とは、ケトンまたはアルデヒドとシアン化化合物とからシアンヒドリンを生成する反応を触媒する活性(以下、「合成活性」と呼ぶ)、およびその逆反応を触媒する活性(以下、「分解活性」と呼ぶ)のいずれをも意味する。本発明においては、合成活性は、ベンズアルデヒドからの(S)−マンデロニトリルの生成量を測定することにより算出することができる。マンデロニトリルの生成は、例えばHPLCで定量することができる。また、分解活性は、基質であるマンデロニトリルからのベンズアルデヒドの生成量を測定することにより算出することができる。ベンズアルデヒドの生成量は、例えば、クエン酸ナトリウム緩衝液に、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼとラセミ体マンデロニトリル(racemic mandelonitrile)を添加したときの波長280nmにおける吸光値の増加を追跡することで定量することができる。
本発明は、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の一部のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換した改良型ヒドロキシニトリルリアーゼに関するものである。本発明における改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、後に説明するように、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が野生型ヒドロキシニトリルリアーゼよりも高くなることを特徴とする。ここで言う形質転換体あたりの活性向上の本質的な原因としては、変異導入に起因するものであれば如何なるものでもよく、例えば、酵素タンパク質あたり比活性自体の向上、活性型コンフォメーション形成能の向上、形質転換体中(特に可溶性画分)における発現量増加などが挙げられる。さらには、金属イオン耐性、有機溶媒耐性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性等の耐性向上も挙げられる。したがって、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、変異導入によって形質転換体あたりの活性が向上したヒドロキシニトリルリアーゼであればよく、酵素タンパク質あたりの非活性自体の向上したヒドロキシニトリルリアーゼ、活性型コンフォメーション形成能が向上したヒドロキシニトリルリアーゼ、または形質転換体あたりの発現量が向上したヒドロキシニトリルリアーゼなどを含むものである。
ここで、「形質転換体あたりの活性」は、形質転換体の培養装置あたり、培養液あたり、形質転換体量(湿潤または乾燥)あたり、(粗)酵素溶液あたり、可溶性画分あたり、または酵素溶液中のタンパク質量あたりのヒドロキシニトリルリアーゼの活性などを意味する。活性が高い(低い)は、酵素液中のタンパク質量などの単位重量あたりまたは酵素溶液などの単位溶液量あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性(比活性、液活性)が、対照よりも高い(低い)ことを意味する。
本明細書において「比活性」は、単位タンパク質量あたりまたは単位菌体質量あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性を意味する。
本明細書において「液活性」は、単位溶液量あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性を意味する。
(II)ヒドロキシニトリルリアーゼ
(II−1)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ
本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼに変異を導入することによって改良したものあり、その由来は特に限定されるものではないが、例えば植物由来のものが好ましい。ここで、「野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ」とは、自然界の生物(例えば植物)より分離されうるヒドロキシニトリルリアーゼを指し、該酵素を構成するアミノ酸配列において、意図的または非意図的なアミノ酸の欠失、挿入、もしくは他のアミノ酸による置換がなく、天然由来の特性を保持したままのヒドロキシニトリルリアーゼを意味する。本発明において、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼは、(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼまたは(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼであるが、(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼが好ましい。由来植物としては、例えばキャッサバ(Manihot esculenta)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、モロコシ(Sorghum bicolor)、アーモンド(Prunus amygdalus)、キシメニア(Ximenia americana)などが挙げられ、好ましくはキャッサバまたはパラゴムノキである。例えば、キャッサバ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列はGenBank/EMBL accession number Z29091に公開されており、配列番号1で表される。また、パラゴムノキ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列はGenBank/EMBL accession number U40402に公開されており、配列番号102で表される。
本明細書では、主にキャッサバ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを例に挙げて説明するが、前述のように、ヒドロキシニトリルリアーゼの由来は限定されず、キャッサバ由来以外のヒドロキシニトリルリアーゼにおいても、本発明で示した変異の位置または変異するアミノ酸種若しくは塩基配列を適応することによって、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が向上する。野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの中には、異なる生物種由来であってもアミノ酸配列上の相同性が高いものがあり、その例としては、例えば、キャッサバ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼとパラゴムノキ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼが挙げられ、両者間のアミノ酸配列相同性は74%である(特表平11−508775号公報)。本発明において、高い相同性は、例えば60%以上の相同性をいい、好ましくは75%以上の相同性であり、特に好ましくは90%以上の相同性である。また、アミノ酸配列全長にわたる相同性が低い場合でも、タンパク質の二次構造(例えばαヘリックスやβシートの構造や位置等)、三次構造あるいは四次構造の類似性が高いものも存在する。本発明で使用するキャッサバまたはパラゴムノキ以外に由来する野生型ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記の相同性、類似性についての特徴を有するヒドロキシニトリルリアーゼであることが好ましい。
(II−2)改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
本発明における「改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ」とは、主として遺伝子組み換え技術を利用して野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された変異を有し、かつ、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が野生型ヒドロキシニトリルリアーゼよりも高くなることを特徴とするヒドロキシニトリルリアーゼと定義される。「改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ」は、本発明の範囲に含まれる。
本発明において「改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ」は、好ましくは、以下の(A)〜(G)のいずれかの特徴を有し、かつ、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを導入した形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性よりも高くなったものがあげられる。
(A)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(B)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(C)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(D)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基および第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(E)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(F)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(G)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目のアミノ酸残基、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
上記(A)、(D)、(E)または(G)において、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの第2番目のアミノ酸残基(例えばバリン)を置換するアミノ酸は、置換後のアミノ酸を含むポリペプチドの形質転換体あたりの活性が、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの形質転換体あたりの活性よりも向上する限り、野生型以外のアミノ酸であれば特に限定されるものではない。第2番目のアミノ酸残基を置換するアミノ酸は、例えばキャッサバ由来のヒドロキシニトリルリアーゼではバリン以外の19種のアミノ酸から選択され、パラゴムノキ由来のヒドロキシニトリルリアーゼではアラニン以外の19種のアミノ酸から選択される。第2番目のアミノ酸残基を置換するアミノ酸は、好ましくはリジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン、スレオニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、セリン、グルタミン酸、アラニン、グリシンまたはアスパラギン酸であり、より好ましくはリジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン、スレオニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、セリンまたはグルタミン酸であり、さらに好ましくはリジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン、スレオニン、チロシン、ロイシン、メチオニンまたはセリンであり、特に好ましくは、リジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニンまたはグルタミンである。
これまでに、細胞内におけるタンパク質の安定性に関連する知見として、第2番目のアミノ酸とホルミルメチオニンプロセッシングの関係またはN末端則が報告されている。「第2番目のアミノ酸とホルミルメチオニンプロセッシングの関係」とは、タンパク質の2番目のアミノ酸の種類によって、メチオニンアミノペプチダーゼによるプロセッシングの受け易さが決定され、2番目のアミノ酸の側鎖が大きいほどプロセッシングを受け難いというものである。「N末端側」とは、タンパク質のN末端がアルギニン、リジン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの場合、細胞内におけるタンパク質の安定性は低く、速やかに分解されるというものである。これらの関係または法則によれば、例えば配列番号1における2番目のアミノ酸残基がバリンである場合とイソロイシンである場合を比較して、タンパク質の安定性に有意な差はないとされていた。しかし、本発明の1つの特徴は、上記のように2番目のアミノ酸を他のアミノ酸に変異することによって、発現量が向上し、結果として形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が向上する点にある。従って、本発明は、既存の前記関係または法則により説明できるものではなく、まったく新しい原理に起因するものと考えられる。
上記(B)、(D)、(F)または(G)において、野性型ヒドロキシニトリルリアーゼの第103番目のヒスチジン残基を置換するアミノ酸は、置換後のアミノ酸を含むポリペプチドの形質転換体あたりの活性が、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの形質転換体あたりの活性よりも向上する限り、ヒスチジン以外のアミノ酸であれば特に限定されるものではない。第103番目のヒスチジン残基を置換するアミノ酸は、以下(a)および(b)のいずれか一方または両方の性質を有するアミノ酸が好ましい。
(a)分子中に含まれる窒素原子数が1または2のアミノ酸である
(b)中性アミノ酸である
ここで、(a)分子中に含まれる窒素原子数が1または2のアミノ酸とは、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンを指す。また、(b)の中性アミノ酸とは、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸以外のアミノ酸を指すものとし、具体的には、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、チロシン、グリシン、プロリンが挙げられる(生化学辞典(東京化学同人))。第103番目のヒスチジン残基を置換するアミノ酸は、上記(a)および/または(b)の性質を有するアミノ酸であれば限定されないが、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニンまたはトリプトファンなどが好ましく、さらに好ましくは、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システインまたはトリプトファンである。
また、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第103番目の近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼも、本発明に含まれる。キャッサバまたはパラゴムノキ以外の由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼでは、キャッサバまたはパラゴムノキの第103番目のヒスチジン残基に相当するヒスチジン残基が、第103番目の近傍に存在する場合がある。この場合は、第103番目の近傍に存在するヒスチジン残基を上記のように他のアミノ酸に変異すればよい。
本発明において「第103番目の近傍」のヒスチジン残基とは、第93番目〜第113番目、好ましくは第98番目〜第108番目、より好ましくは第100番目〜第106番目のヒスチジン残基である。
キャッサバまたはパラゴムノキ由来のヒドロキシニトリルリアーゼの第103番目のヒスチジン残基に相当するヒスチジン残基の位置は、例えば、キャッサバまたはパラゴムノキ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列と、対象となるヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列とをアライメントすることによって知ることができる。アミノ酸配列のアライメントは、例えば、日本DNAデータバンクホームページのClustalW(http://www.ddbj.nig.ac.jp/search/clustalw−j.html)によって行うことができる。
上記(C)、(E)、(F)または(G)において、他のアミノ酸残基に置換されるリジン残基は、置換後のアミノ酸を含むポリペプチドの形質転換体あたりの活性が、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの形質転換体あたりの活性よりも向上する限り、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中に存在するリジン残基であれば特に限定されるものではない。他のアミノ酸残基に置換される好ましいリジン残基の箇所としては、野性型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中の第175番目から第224番目の領域に存在する少なくとも1つのリジン残基が挙げられ、より好ましくは、例えばキャッサバ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいては第176番目、第199番目および第224番目のリジシ残基から選ばれる1つ以上が、パラゴムノキ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいては第175番目、第198番目および第223番目のリジン残基から選ばれる1つ以上がそれぞれ挙げられる。
また、これらリジン残基を置換するアミノ酸は、以下(a)および(b)のいずれか一方または両方の性質を有するアミノ酸が好ましい。
(a)分子中に含まれる窒素原子数が1または2のアミノ酸である
(b)中性アミノ酸である
ここで、(a)の分子中に含まれる窒素原子数が1または2のアミノ酸とは、上述したとおりである。また(b)の中性アミノ酸とは、上述したとおりである。これらリジン残基を置換する最も好ましいアミノ酸は、プロリンである。
すなわち、上記(A)〜(C)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの好ましい態様として、例えば具体的にはそれぞれ以下のようなものが挙げられる。
(A)配列番号1または配列番号102に示す野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目に位置するバリン残基またはアラニン残基が、リジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン、スレオニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、セリン、グルタミン酸のいずれかのアミノ酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(B)配列番号1または配列番号102に示す野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第103番目に位置するヒスチジン残基が、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニン、トリプトファンのいずれかのアミノ酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
(C)配列番号1に示す野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第176番目、第199番目または第224番目のリジン残基のいずれか一つ、第176番目および第199番目のリジン残基、第176番目および第224番目のリジン残基、第199番目および第224番目のリジン残基、または第176番目、199番目および第224番目のリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ、配列番号102に示す野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第175番目、第198番目または第223番目のリジン残基のいずれか一つ、第175番目および第198番目のリジン残基、第175番目および第223番目のリジン残基、第198番目および第223番目のリジン残基、または第175番目、第198番目および第223番目のリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
また、(D)〜(G)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記(A)〜(C)いずれか2つまたは3つすべての態様を有する改良型ヒドロキシニトリルリアーゼとして表される。例えば、(D)は(A)と(B)との組み合わせであるから、配列番号1または配列番号102に示す野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、第2番目に位置するバリン残基またはアラニン残基が、リジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン、スレオニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、セリン、グルタミン酸のいずれかのアミノ酸に置換され、かつ、第103番目に位置するヒスチジン残基が、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニン、トリプトファンのいずれかのアミノ酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを意味する。
ここで、配列番号1はキャッサバ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列を示し、配列番号102はパラゴムノキ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列を示す。
また、配列番号1または配列番号102において、第125番目のフェニルアラニン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ、第205番目のスレオニン残基がセリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ、または第235番目のアスパラギン残基がグリシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼも本発明に含まれる。
さらに、(A)〜(G)のような特徴を有し、すなわち、上記置換の態様は維持しつつ、さらに、(A)〜(G)記載の置換部位のアミノ酸を除く、1個または数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が野生型ヒドロキシニトリルリアーゼよりも高くなるポリペプチドも、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの範囲である。当該ポリペプチドは、例えば、以下の態様が含まれる。
(A)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の第2番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、置換された第2番目のアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
(B)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、置換された第103番目またはその近傍のアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
(C)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、リジンが置換されたアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
(D)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の第2番目のアミノ酸残基および第103番目またはその近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、置換された第2番目および第103番目またはその近傍のアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
(E)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の第2番目のアミノ酸残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、置換された第2番目のアミノ酸およびリジンが置換されたアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
(F)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の第103番目またはその近傍のヒスチジン残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、置換された第103番目またはその近傍のアミノ酸およびリジンが置換されたアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
(G)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列の第2番目のアミノ酸残基、第103番目またはその近傍のヒスチジン残基および当該配列中に存在する少なくとも1つのリジン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列において、置換された第2番目のアミノ酸、置換された第103番目またはその近傍のアミノ酸およびリジンが置換されたアミノ酸を除く、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するポリペプチド
なお、本明細書中、アミノ酸のアルファベット表記は通常の3文字または1文字で表すことがあり、数字の前に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を、数字の後に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を指すことがある。例えば、176番目のリジンがプロリンに置換された場合は、「K176P」と表示することがある。他の場合も同様である。
(III)ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子
(III−1)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子
野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの中には、その遺伝子配列が明らかにされているものがあり、例えば上述のキャッサバ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの遺伝子配列は配列番号2で表される(GenBank,accession number Z29091)。本発明において、これを「植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子」と記述することがある。また、上述のパラゴムノキ由来の野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの遺伝子配列は配列番号103で表される(GenBank,accession number U40402)。
植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を取得する方法の一つとしては、植物から該遺伝子のmRNAを含む全RNAまたはmRNA等を抽出し、常法(例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Press(1989)))に従ってcDNAを合成する方法が挙げられる。すなわち、公知の植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子配列情報をもとにプライマーを設計し、該プライマーを用いてPCR法でヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子を増幅することにより植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を得ることができる。また、公知の遺伝子配列情報を基に、合成オリゴDNAを組み合わせたPCR法(assembly PCR)などを利用して、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子全長を化学的に合成することも可能である。例えば、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子をいくつかの領域(例えば、50塩基程度)に分割し、隣り合う領域とのオーバーラップ(例えば、20塩基程度)を両端に有する複数のオリゴヌクレオチドを設計および合成する。該オリゴヌクレオチドをPCR法で互いにアニールさせて植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を増幅することができる。
ところで、近年では、遺伝子組換え技術を用い、他の生物を宿主として用いて目的のタンパク質を生産させることが可能であるが、その際、宿主において使用頻度の高いコドンを採用することにより、目的タンパク質の発現量が向上する例が多く知られている。ここで、コドン使用頻度とは、塩基配列からアミノ酸配列への情報変換過程において使用されるコドンの頻度を意味し、コドンとは、mRNA中の3個のヌクレオチドの並び方を意味する。上記情報変換過程では、上記3塩基が1単位となって1つのアミノ酸に翻訳される。64種類のコドンは20種類のアミノ酸に対応するため、遺伝暗号の縮重が存在し、1つのアミノ酸は1〜6種類の同義コドンを持つ。例えばバリンのコドンは、GUU、GUC、GUA、GUGの4種類が存在する。一つのアミノ酸に対して複数のコドンがある場合、生物はその複数のコドンを均等な割合で用いるのでなく、生物毎に特徴のある割合で特定のコドンを偏って用いている。このような生物毎のコドン使用頻度(コドンユーセージ)は一部データベース化されており、コドンユーセージデータベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/)で調べることができる。
使用頻度が「高い」とは、複数のコドンが存在するときは最低のコドン使用頻度よりも高いことを意味し、最も高い使用頻度である必要はない。また、コドンが1つしか存在しない場合(例えばメチオニンおよびトリプトファン)は、使用頻度とは無関係に使用される。但し、宿主における発現効率を考慮すると、宿主における高発現遺伝子で使用頻度の高いコドンまたは宿主において最も使用頻度の高いコドンを使用することが好ましい。より具体的には、例えば宿主として大腸菌K12株を用いる場合、表1で示されるコドンユーセージ表から使用頻度の最も高いコドンを知ることができる(表2)。従って、宿主として大腸菌K12株を用いる場合に、遺伝子工学技術を用いて発現させようとする目的遺伝子のコドンを表2に示すコドンに変換することができる。例えば、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子、すなわち、上述したようにキャッサバから該遺伝子のmRNAを含む全RNAまたはmRNA等を抽出し、cDNAを合成する方法によって得られるキャッサバ由来のヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子で使用されているバリンのコドンが「GTA」であるとすると、「GTA」を大腸菌K12株におけるバリンの最頻用コドンである「GTG」に変換することができる。
Figure 0004956193
Figure 0004956193
コドンを変換する領域は、コード配列(CDS)内であれば限定されるものではなく、CDSの全てのコドンに対して変換することも、部分的に1または複数箇所を変換することもできる。本発明におけるキャッサバ由来野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの場合、コドンを変換するアミノ酸の数は、アミノ酸258残基の内、1以上であれば良く、好ましくは1〜100、さらに好ましくは10〜70残基である。
このように、宿主に適したコドンで構成され、かつ野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を、本発明においては「宿主コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子」と呼び、特に宿主が大腸菌である場合には、「大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子」と呼ぶことがあり、上述の「植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子」と区別することができる。「ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子」の接頭に「○○コドン」が付随しない場合は、植物コドン、大腸菌コドンの別を限定しないか、あるいはいずれをも意味するものとする。
宿主コドンヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子は、例えば変換しようとするコドンの数が比較的少ない場合は、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子をベースに、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載の部位特異的変位誘発法を利用して調製することができる。特に近年では、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて比較的容易に行うことができる。この他、上述したように、合成オリゴDNAを組み合わせたPCR法(assembly PCR)により、多くのコドンを宿主最頻用に変換した宿主コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を全合成することも可能である。大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子は、例えば、後の実施例で述べる配列番号3で表される塩基配列からなる大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子が挙げられる。
(III−2)改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子
本発明における改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子とは、(II−2)で述べた改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ酵素タンパク質をコードする遺伝子を意味する。本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子には、例えば、配列番号1(キャッサバ由来)または配列番号102(パラゴムノキ由来)のアミノ酸配列で表される野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいて、(II−2)の(A)〜(G)において上述したようなアミノ酸置換変異を有する改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子が含まれ、そのベースとなる野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのコドンは、植物コドン、宿主コドンいずれでもよい。本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子として、例えば以下のような態様が挙げられる。
(A)
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをAAAまたはAAGに置換したもの、好ましくは4、5番目の塩基G、TをそれぞれA、Aに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がリジンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをAACまたはAATに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをAACに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアスパラギンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをATA、ATCまたはATTに置換したもの、好ましくは4、6番目の塩基G、AをそれぞれA、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がイソロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをAGA、AGG、CGA、CGC、CGGまたはCGTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをCGTに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアルギニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをCAAまたはCAGに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをCAGに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がグルタミンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをCCGに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをACA、ACC、ACGまたはACTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをACCに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がスレオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをTACまたはTATに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをTACに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がチロシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをTTA、TTG、CTA、CTC、CTGまたはCTTに置換したもの、好ましくは4、6番目の塩基G、AをそれぞれC、Gに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをATGに置換したもの、すなわち、4、6番目の塩基G、AをそれぞれA、Gに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がメチオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをAGC、AGT、TCA、TCC、TCGまたはTCTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTAをAGCに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がセリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをGAAまたはGAGに置換したもの、好ましくは5番目の塩基TをAに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がグルタミン酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをGCA、GCC、GCGまたはGCTに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、AをそれぞれC、Tに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアラニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをGGA、GGC、GGGまたはGGTに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、AをそれぞれG、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がグリシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において4〜6番目の塩基GTAをGACまたはGATに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、AをそれぞれA、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアスパラギン酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをAAAまたはAAGに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTGをAAAに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がリジンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをAACまたはAATに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTGをAACに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアスパラギンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをATA、ATCまたはATTに置換したもの、好ましくは4、6番目の塩基G、GをそれぞれA、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がイソロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをAGA、AGG、CGA、CGC、CGGまたはCGTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTGをCGTに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアルギニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをCAAまたはCAGに置換したもの、好ましくは4、5番目の塩基G、TをそれぞれC、Aに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がグルタミンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは4、5番目の塩基G、TをそれぞれC、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをACA、ACC、ACGまたはACTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTGをACCに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がスレオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをTACまたはTATに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTGをTACに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がチロシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをTTA、TTG、CTA、CTC、CTGまたはCTTに置換したもの、好ましくは4番目の塩基GをCに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをATGに置換したもの、すなわち、4番目の塩基GをAに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がメチオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをAGC、AGT、TCA、TCC、TCGまたはTCTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GTGをAGCに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がセリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをGAAまたはGAGに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、GをそれぞれA、Aに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がグルタミン酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをGCA、GCC、GCGまたはGCTに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、GをそれぞれC、Tに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアラニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをGGA、GGC、GGGまたはGGTに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、GをぞれぞれG、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がグリシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において4〜6番目の塩基GTGをGACまたはGATに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基T、GをぞれぞれA、Cに置換したもの(第2番目に位置するバリン残基がアスパラギン酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをAAAまたはAAGに置換したもの、好ましくは4、5番目の塩基G、CをそれぞれA、Aに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がリジンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをAACまたはAATに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをAACに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がアスパラギンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをATA、ATCまたはATTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをATCに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がイソロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをAGA、AGG、CGA、CGC、CGGまたはCGTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをCGTに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がアルギニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをCAAまたはCAGに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをCAGに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がグルタミンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは4、6番目の塩基G、AをそれぞれC、Gに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをACA、ACC、ACGまたはACTに置換したもの、好ましくは4、6番目の塩基G、AをそれぞれA、Cに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がスレオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをTACまたはTATに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをTACに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がチロシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをTTA、TTG、CTA、CTC、CTGまたはCTTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをCTGに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをATGに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がメチオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをAGC、AGT、TCA、TCC、TCGまたはTCTに置換したもの、好ましくは4〜6番目の塩基GCAをAGCに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がセリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをGAAまたはGAGに置換したもの、好ましくは5番目の塩基CをAに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がグルタミン酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをGGA、GGC、GGGまたはGGTに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基C、AをそれぞれG、Cに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がグリシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において4〜6番目の塩基GCAをGACまたはGATに置換したもの、好ましくは5、6番目の塩基C、AをぞれぞれA、Cに置換したもの(第2番目に位置するアラニン残基がアスパラギン酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)
(B)
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをATGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がメチオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをTTA、TTG、CTA、CTC、CTGまたはCTTに置換したもの、好ましくは308、309番目の塩基A、CをそれぞれT、Gに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをATA、ATCまたはATTに置換したもの、好ましくは307、308番目の塩基C、AをそれぞれA、Tに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がイソロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをGTA、GTC、GTGまたはGTTに置換したもの、好ましくは307、308番目の塩基C、AをそれぞれG、Tに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がバリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをTGCまたはTGTに置換したもの、好ましくは307、308番目の塩基C、AをそれぞれT、Gに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がシステインに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをCAAまたはCAGに置換したもの、好ましくは309番目の塩基CをGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がグルタミンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをAGC、AGT、TCA、TCC、TCGまたはTCTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CACをTCGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がセリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをACA、ACC、ACGまたはACTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CACをACGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がスレオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをGCA、GCC、GCGまたはGCTに置換したもの、好ましくは307、308番目の塩基C、AをそれぞれG、Cに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がアラニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2または配列番号103において307〜309番目の塩基CACをTGGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がトリプトファンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをATGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がメチオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをTTA、TTG、CTA、CTC、CTGまたはCTTに置換したもの、好ましくは308、309番目の塩基A、TをそれぞれT、Cに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをATA、ATCまたはATTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CATをATCに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がイソロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをGTA、GTC、GTGまたはGTTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CATをGTCに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がバリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをTGCまたはTGTに置換したもの、好ましくは307、308番目の塩基C、AをそれぞれT、Gに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がシステインに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをCAAまたはCAGに置換したもの、好ましくは309番目の塩基TをGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がグルタミンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをAGC、AGT、TCA、TCC、TCGまたはTCTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CATをAGCに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がセリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをACA、ACC、ACGまたはACTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CATをACCに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がスレオニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをGCA、GCC、GCGまたはGCTに置換したもの、好ましくは307〜309番目の塩基CATをGCCに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がアラニンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において307〜309番目の塩基CATをTGGに置換したもの(第103番目に位置するヒスチジン残基がトリプトファンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)
なお、(II−2)で述べた、第103番目の近傍のヒスチジン残基が他のアミノ酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ、すなわち、キャッサバまたはパラゴムノキ由来のヒドロキシニトリルリアーゼの第103番目のヒスチジン残基に相当するヒスチジン残基が変異した改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子も、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子に含まれる。
(C)
配列番号2において526〜528番目の塩基AAGをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは526〜528番目の塩基AAGをCCCに置換したもの(第176番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において595〜597番目の塩基AAGをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは595〜597番目の塩基AAGをCCCに置換したもの(第199番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において670〜672番目の塩基AAAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは670〜672番目の塩基AAAをCCTに置換したもの(第224番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において526〜528番目の塩基AAAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは526〜528番目の塩基AAAをCCCに置換したもの(第176番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において595〜597番目の塩基AAAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは595〜597番目の塩基AAAをCCCに置換したもの(第199番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号3において670〜672番目の塩基AAAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは670〜672番目の塩基AAAをCCTに置換したもの(第224番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において523〜525番目の塩基AAGをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは523〜525番目の塩基AAGをCCCに置換したもの(第175番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において592〜594番目の塩基AAGをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは592〜594番目の塩基AAGをCCCに置換したもの(第198番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号103において667〜669番目の塩基AAAをCCA、CCC、CCGまたはCCTに置換したもの、好ましくは667〜669番目の塩基AAAをCCTに置換したもの(第223番目に位置するリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)
また、(D)〜(G)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子は、上記(A)〜(C)いずれか2つまたは3つすべての態様を有する改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子で表される。
例えば、(D)は(A)と(B)との組み合わせであるから、(D)の遺伝子として、配列番号2において4、5番目の塩基G、TをそれぞれA、Aに置換され、かつ、307〜309番目の塩基CACをATGに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を例示することができる。
また、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子は、上記(A)〜(G)の態様にさらに以下の置換を伴っていてもよい。
配列番号2において373〜375番目の塩基TTTをCTTに置換したもの(第125番目に位置するフェニルアラニン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、
配列番号2において436〜438番目の塩基ACCをACAに置換したもの、
配列番号2において613〜615番目の塩基ACCをTCCに置換したもの(第205番目に位置するフェニルアラニン残基がロイシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)、または
配列番号2において703〜705番目の塩基GATをGGTに置換したもの(第235番目に位置するアスパラギン酸がグリシンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする)
さらに、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子としては、上記(A)〜(G)で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が野生型ヒドロキシニトリルリアーゼよりも高くなるタンパク質をコードするDNAも含まれる。このようなDNAは、例えば、上記(A)〜(G)で表される塩基配列からなる改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子DNA若しくはその相補配列、またはこれらの断片をプロープとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリーおよびゲノムライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用することも、市販のcDNAライブラリーおよびゲノムライブラリーを利用することも可能である。
「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300〜2000mM、温度が40〜75℃、好ましくは塩濃度が600〜900mM、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードするDNAを得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))等を参照することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、例えば、上記(A)〜(G)で表される塩基配列に対して少なくとも40%以上、好ましくは60%、さらに好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNAまたはその部分断片が挙げられる。
本発明において、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の調製を行う方法は変異を導入する既知の如何なる方法でもよく、通常は、公知の方法で行なうことができる。例えば、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を基に、市販のキットを利用して部位特異的な置換を生じさせる方法や、遺伝子DNAを選択的に開裂し、次いで選択されたオリゴヌクレオチドを除去・付加し連結する方法等が挙げられる。
これらの部位特異的変異誘発法は「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987−1997))、Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−92(1985)、Kramer and Fritz Method.Enzymol.154:350−67(1987)、Kunkel,Method.Enzymol.85:2763−6(1988)等に記載されている。近年では、Kunkel法やGapped duplex法を基にした部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ(株)社製)等を用いて行うことができる。また、目的とする変異導入箇所が、対象遺伝子配列において消化・連結が容易な制限酵素部位の近隣に存在する場合、目的変異を導入したプライマー(合成オリゴDNA)を用いてPCRを行うことで、目的変異が導入された遺伝子DNA断片を容易に得ることができる。さらには、合成オリゴDNAを組み合わせたPCR法(assembly PCR)で伸長させて合成遺伝子として得ることもできる。
また、ハイドロキシルアミンや亜硝酸等の変異源となる薬剤を接触・作用させる方法、紫外線照射により変異を誘発する方法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いてランダムに変異を導入する方法などのランダムな変異導入法によっても、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子から改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を得ることができる。
(IV)組換えベクター、形質転換体
(IV−1)組換えベクター
上記の方法によって得た本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を宿主で発現させるために、遺伝子の上流に転写プロモーターを、下流にターミネーターを挿入して発現カセットを構築し、このカセットを発現ベクターに挿入することができる。あるいは、当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を導入する発現ベクターに転写プロモーターとターミネーターがすでに存在する場合には、発現カセットを構築することなく、ベクター中のプロモーターとターミネーターを利用してその間に当該変異遺伝子を挿入すればよい。ベクターに当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を挿入するには、制限酵素を用いる方法、トポイソメラーゼを用いる方法等を利用する。また、挿入の際に必要であれば、適当なリンカーを付加してもよい。なお、本発明においては、このような組み込み操作を、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の調製操作と兼ねて行うこともできる。すなわち、他のアミノ酸をコードする塩基配列に置換した塩基配列を有するプライマーを用い、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子がクローニングされた組換えベクターを鋳型としてPCRを行い、得られた増幅産物をベクターに組み込むことができる。
プロモーターの種類は宿主において適切な発現を可能にするものであれば特に限定されるものではないが、例えば、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター、ラクトースオペロンのlacプロモーター、ラムダファージ由来のPLプロモーターおよびPRプロモーターや、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)等が挙げられる。また、tacプロモーター、trcプロモーターのように改変、設計された配列も利用できる。
ターミネーターは必ずしも必要ではなく、その種類も特段限定されるものではなく、例えばρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター、rrnBターミネーター等が挙げられる。
また、アミノ酸への翻訳にとって重要な塩基配列として、SD配列やKozak配列などのリボソーム結合配列が知られており、これらの配列を変異遺伝子の上流に挿入することもできる。原核生物を宿主に用いるときにはSD配列を、真核細胞を宿主に用いるときにはKozak配列をPCR法などにより付加してもよい。SD配列としては、大腸菌由来または枯草菌由来の配列などが挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。たとえば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作製して利用してもよい。
一般に、ベクターには目的とする形質転換体を選別するための因子(選択マーカー)が含まれる。選択マーカーとしては、薬剤耐性遺伝子や栄養要求性相補遺伝子、資化性付与遺伝子などが挙げられ、目的や宿主に応じて選択されうる。例えば大腸菌で選択マーカーとして用いられる薬剤耐性遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明において使用されるベクターは、上記の変異遺伝子を保持するものであれば特に限定されず、それぞれの宿主に適したベクターを使用することができる。ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。例えば、大腸菌を宿主とする場合には、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpTrc99A(Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)、pUC19(タカラバイオ、日本)、pKK233−2(Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)、pET−12(Novagen社、ドイツ)、pET−26b(Novagen社、ドイツ)などを用いることができる。また、必要に応じてこれらベクターを改変したものも用いることができる。また、発現効率の高い発現ベクター、例えばtrcプロモーター、lacオペレーターを有する発現ベクターpTrc99AまたはpKK233−2などを用いることもできる。
上記の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む組換えベクターは、本発明の範囲に含まれる。
(IV−1)形質転換体
本発明の組換えベクターを宿主に形質転換または形質導入することで、形質転換体または形質導入体(以下、これらをまとめて「形質転換体」ともいう)を作製する。当該形質転換体も本発明の範囲に含まれる。
本発明において使用する宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを発現することができる限り特に限定されるものではない。宿主としては、例えば大腸菌、枯草菌などの細菌、酵母(Pichia、Saccharomyces)、カビ(Aspergillus)、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等が挙げられる。
細菌を宿主とする場合、本発明においては、特に大腸菌を好ましい宿主として用いることができる。大腸菌としては、例えば、大腸菌K12株やB株、あるいはそれら野生株由来の派生株であるJM109株、XL1−Blue株、C600株などを挙げることができる。特に、上述したようなラクトースオペロンのlacプロモーターおよびその派生プロモーターを発現プロモーターとして用いる場合、lacIレプレッサー遺伝子を有する宿主を用いれば発現が誘導型となり(IPTG等で誘導)、lacIレプレッサー遺伝子を有しない宿主を用いれば発現は構成型となるので、必要に応じた宿主を利用することができる。これら菌株は、例えば、アメリカン・タイプカルチャー・コレクション(ATCC)などから容易に入手可能である。枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7、Vero、CHO細胞、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
植物細胞を宿主とする場合は、タバコBY−2細胞等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
(V)培養物および改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法
本発明においで、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記形質転換体を培養し、得られる培養物から採取することにより製造することができる。
本発明は、当該培養物から改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを採取することを特徴とする、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法をも含む。
本発明において、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、または細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養して得られる培養物は、本発明の範囲に含まれる。
本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。目的の改良型ヒドロキシニトリルリナーゼは、上記培養物中に蓄積される。
本発明の形質転換体を培養する培地は、宿主が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じ、培養中の発泡を防ぐために消泡剤を添加してもよい。また、ビタミン等を必要に応じて適宜添加してもよい。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養中、ベクターおよび目的遺伝子の脱落を防ぐために選択圧を掛けた状態で培養してもよい。すなわち、選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合に相当する薬剤を培地に添加してもよく、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合に相当する栄養因子を培地から除いてもよい。また、選択マーカーが資化性付与遺伝子である場合は、相当する資化因子を必要に応じて唯一因子として添加することができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含むベクターで形質転換した大腸菌を培養する場合、培養中に、必要に応じてアンピシリンを培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、LAA等を培地に添加することができる。
形質転換体の培養条件は、目的の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの生産性および宿主の生育が妨げられない条件であれば特段限定されるものではないが、通常、培養温度は10℃〜45℃、好ましくは10℃〜40℃、さらに好ましくは15℃〜40℃、さらにより好ましくは20℃〜87℃で行い、必要に応じて、培養中に温度を変更してもよい。培養時間は5〜120時間、好ましくは5〜100時間、さらに好ましくは10〜100時間、さらにより好ましくは15〜80時間程度行う。pHの調整は、無機または有機酸、アルカリ溶液等を用いて行い、大腸菌であれば6〜9に調整する。培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられる。
特に大腸菌形質転換体を培養する場合には、振盪培養または通気攪拌培養(ジャーファーメンター)により好気的条件下で培養することが好ましい。特に大腸菌形質転換体を培養するには、通常の固体培養法で培養してもよいが、可能な限り液体培養法を採用して培養するのが好ましい。培養に用いる培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ポリペプトン、コーンスティープリカー、大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄若しくは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、更に必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。なお、培地の初発pHは7〜9に調整するのが適当である。また、培養は、5℃〜40℃、好ましくは10℃〜37℃で5〜100時間行う。通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養、流加培養等により実施するのが好ましい。特に、工業的規模での改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ生産を行う場合は、通気攪拌培養を利用することができる。さらに、通気攪拌培養の操作方式としては限定されることなく、回分式(batch culture)、半回分式(fed−batch culture, semi−batch culture)および連続式(continuous culture)のいずれで行ってもよい。特に、高濃度培養により、装置あたり、時間あたり、費用あたり、または操作あたりの生産を高めたい場合には、半回分式培養を行うことができる。半回分式で用いられる流加(fed)培地成分は、初発(batch)培地成分と同一の組成のものを用いても、組成を変更してもよいが、初発培地と比較して培地成分濃度はより高濃度であることが好ましい。流加培地の体積は特段限定されることはないが、通常、初発培地の1/2以下の体積を添加させることができる。流加培地を添加していく方法(feeding mode)としては、例えば、定流的流加法(constant)、指数的流化法(exponential)、段階的増加流化法(stepwise increase)、比増殖速度制御流化法(specific growth−rate control)、pHスタット流化法(pH−stat)、DOスタット流化法(DO−stat)、グルコース濃度制御流化法(glucose concentration control)、酢酸濃度モニタリング流化法(acetate concentration monitoring)、ファジー神経回路流化法(fuzzy neural network)などが挙げられるが(Trends in Biotechnology(1996),14,98−105)、所望のヒドロキシニトリルリアーゼ生産性が得られれば特段限定されるものではない。なお、半回分式培養実施時の培養終了時期は、流化培地の投入終了後に限定される必要はなく、必要に応じて培養を継続し、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が最も高い時点で培養終了とすることができる。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地またはこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が挙げられる。培養は、通常、5%CO存在下、37℃で1〜30日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。形質転換(導入)体が植物細胞または植物組織である場合は、培養は、通常の植物培養用培地、例えばMS基本培地、LS基本培地等を用いることにより行うことができる。培養方法は、通常の固体培養法、液体培養法のいずれをも採用することができる。
形質転換体が植物細胞または植物組織である場合は、培養は、通常の植物培養用培地、例えばMS基本培地、LS基本培地等を用いることにより行うことができる。培養方法は、通常の固体培養法、液体培養法のいずれをも採用することができる。
上記培養条件で培養すると、本発明の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを上記培養物中、すなわち、培養上清、培養細胞、培養菌体、または細胞若しくは菌体の破砕物の少なくともいずれかに蓄積させることができる。
培養後、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼが菌体内または細胞内に生産される場合には、菌体または細胞を破砕することにより、目的の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを採取することができる。
破砕前に、必要であれば、遠心分離や膜ろ過などの固液分離操作により、培地除去および洗浄を行うことができる。
遠心分離は、菌体または細胞を沈降させる遠心力が供給できるものであれば特段限定されることはなく、円筒型や分離板型などを利用することができる。遠心力としては、例えば、500G〜20,000G程度で行うことができる。
また、本工程に利用しうる膜ろ過は、目的とする固液分離を達成できれば、精密ろ過(MF)膜、限外ろ過(UF)膜いずれでもよいが、通常、精密ろ過(MF)膜を用いることが好ましい。精密ろ過は、例えば流動方向に基づけば、デッドエンド方式やクロスフロー(タンジェンシャルフロー)方式に分類でき、圧力の加え方に基づけば、重力式、加圧式、真空式、遠心力式などに分類でき、操作様式に基づけば、回分式と連続式などに分類することができるが、固液分離操作を行うことができるものであれば、そのいずれをも利用することができる。MF膜の材質としては、高分子膜、セラミック膜、金属膜、およびそれらの複合型に大別でき、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性および固液分離操作時の該活性回収率を低下させるものでなければ特段限定されるものではないが、特に高分子膜、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、混合セルロースエステル、銅アンモニア法再生セルロースエステル、ポリイミド、ナイロン、テフロンなどの使用が好ましい。膜の孔径としては、菌体または細胞を捕捉し、濃縮操作が可能であればよく、通常、0.1〜0.5μm程度のものを用いることができる。
本発明において「活性回収率」とは、固液分離などの操作を行う際、操作前の活性を100%として、操作後に回収された活性の相対比(%)を意味する。
上記の遠心分離および膜ろ過による固液分離操作時には、必要に応じて、水または緩衝液、等張液を添加して希釈洗浄を行うこともできる。用いられる緩衝液は、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性および固液分離操作時の該活性回収率を低下させるものでなければ特段限定されるものではなく、例えば、塩濃度は5〜500mM、好ましくは5〜150mM程度であり、pHは4〜8程度のものであればよい。緩衝液成分としては、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩などのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などの塩類を挙げることができる。具体的には、例えば、5mMリン酸カリウム緩衝液(pH6〜7)、20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5〜6)などが挙げられる。また、等張液としては例えば、0.7〜0.9%塩化ナトリウム溶液などが挙げられる。その他、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを安定しうる物質、例えば、フラボノイド類等を添加してもよい(Food Technology and Biotechnology(2001),39(3),161−167)。
菌体または細胞の破砕方法としては、超音波処理、フレンチプレスやホモジナイザーによる高圧処理、ビーズミルによる磨砕処理、衝撃破砕装置による衝突処理、リゾチーム、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等が挙げられ、いずれかの方法を単独または必要に応じ組み合わせて利用することができる。工業的規模で菌体または細胞の破砕を行う場合は、操作性、回収率、コスト等を勘案し、主に高圧処理や磨砕処理、衝突処理を利用することが好ましく、場合によってはこれら物理的破砕操作に酵素処理などを組み合わせてもよい。各破砕処理方法において、菌体または細胞からの改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ回収率が十分高いものであれば、操作条件は特段限定されることはない。十分高い改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ回収率とは、例えば、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%、もっとも好ましくは99%以上である。
ビーズミルによる磨砕処理を行う場合、用いられるビーズは、例えば、密度2.5〜6.0g/cm、サイズ0.1〜1.0mmのものを通常80〜85%程度充填することにより破砕を行うことができ、運転方式としては回分式、連続式いずれをも採用することができる。菌体または細胞濃度も特段限定されないが、例えば、細菌であれば6〜12%程度、酵母であれば14〜18%程度とすればよい。
高圧処理を行う場合、処理圧力は、菌体または細胞からの改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ回収率が十分高いものであれば特段限定されないが、例えば、40〜150MPa程度の圧力で破砕を行うことができる。菌体または細胞濃度も特段限定されないが、例えば、20%以下程度であればよい。必要に応じて、装置を直列に配置したり、複数ステージ構造の装置を用いることにより、多段階処理を行い、破砕および操作効率を向上させることも可能である。通常、処理圧力10MPaあたり2〜3℃の温度上昇が生じることから、必要に応じて冷却処理を行うことが好ましい。
衝突処理の場合、例えば、被破砕菌体または細胞スラリーを予め噴霧急速凍結処理(凍結速度:例えば1分間当たり数千℃)などによって凍結微細粒子(例えば50μm以下)にしておき、これを高速(例えば約300m/s)の搬送ガスによって衝突板に衝突させることで菌体または細胞を破砕することができる。
上記のような菌体または細胞破砕処理の結果、細胞内の核酸が流出することにより、処理液の粘度が上昇してハンドリングが困難になる場合、あるいは、後段の残渣分離工程での活性回収率向上に効果がある場合は、必要に応じて、核酸除去または核酸分解により、処理液の粘度低減や残渣分離工程での活性回収率の向上を期待することができる。細胞破砕液中の核酸を除去または分解する方法としては、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性または該活性回収率を低下させず、かつ、核酸を除去または分解することができる方法であればいかなる方法でも良いが、例えば、生化学実験講座5巻200〜201頁に記載されているように、細胞破砕液にプロタミン硫酸あるいはストレプトマイシンを添加することにより核酸を沈澱させる方法、核酸分解酵素で核酸を分解する方法、デキストラン−ポリエチレングリコールを用い液々分離を行う方法などが挙げられる。また、物理的破砕処理をさらに追加することも有効である場合がある。これら方法のうち、特に、工程の煩雑化を避けつつ迅速に核酸を分解したい場合には、核酸分解酵素で核酸を分解する方法を採ることができる。核酸分解酵素処理に用いる核酸分解酵素は、少なくともデオキシリボ核酸(DNA)に作用し、核酸分解反応触媒能力を有し、DNA重合度を下げるものであればいかなるものでもよく、該形質転換体細胞内に本来存在する核酸分解酵素を利用してもよいが、別途、外因性の核酸分解酵素を添加してもよい。別途添加する核酸分解酵素としては、例えば、ウシ脾臓由来DNaseI(タカラバイオ、日本)、ブタ脾臓由来DNaseII(和光純薬、日本)、Serratia marcescens由来核酸分解酵素Benzonase(登録商標)Nuclease(タカラバイオ、日本)、Nuclease from Staphylococcus aureus(和光純薬、日本)などが挙げられる。添加する酵素量は酵素の種類やユニット数(U)の定義により異なるが、当業者であれば適宜設定することができる。必要に応じて、核酸分解酵素に要求されるマグネシウムなどの補因子を添加しても良い。処理温度は用いる核酸分解酵素によって異なるが、常温生物種由来の核酸分解酵素であれば、例えば、20〜40℃の温度が用いられる。
得られた破砕液から菌体または細胞破砕残渣を除去する必要がある場合は、例えば、遠心分離やろ過(デッドエンド方式あるいはクロスフロー方式)などにより除去することができる。
遠心分離操作は、前述の通り行うことができる。菌体または細胞破砕残渣が微細であり、容易に沈降し難い場合は、必要に応じて、凝集剤を使用して残渣沈殿効率を上げることもできる。有機高分子凝集剤は、イオン性に基づけば、カチオン系凝集剤、アニオン系凝集剤、両性系凝集剤、ノニオン系凝集剤を挙げることができ、原料面に基づけば、アクリル系、ポリエチレンイミン、縮合系ポリカチオン(ポリアミン)、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、キトサンなどを挙げることができるが、本発明において使用する凝集剤は、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性または該活性回収率を低下させず、かつ、残渣分離効率を向上させることができるものであればいずれの凝集剤でも良い。アクリル系凝集剤の成分となるアクリル系水溶性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、アクリルアミド2メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、ジメチルアミノエチル−メタクリレート、メタクリロイロキシエチル−トリメチルアンモニウム−クロライド、メタクリロイロキシエチル−ベンジルジメチル−アンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル−アクリレート、アクリロイロキシエチル−トリメチルアンモニウム−クロライド、ジメチルアミノプロピル−アクリルアミド、アクリルアミドプロピル−トリメチルアンモニウム−クロライド、ポリアミジン−クロライドなどが挙げられ、これらモノマーの単一重合物、多様な組成による共重合物または高分子変性物がアクリル系凝集剤として挙げられる。特に代表的なカチオン系高分子凝集剤としては、ポリアミノアルキルメタアクリレート類,ポリアムノアルキルメタアクリレートとアクリルアミドの共重合物類,ポリアクリルアミドのマンニツヒ変性物類,ポリジメチルジアリルアンモニウム塩類,ポリビニルイミダゾリン類,ポリアクリルアミド類,アミン系重縮合物類などがあげられ、すでに多くの商品が市販されている。その主なものとしては,例えば,サンポリ−K−601,K−602(主成分ポリアミン,三共化成),クリフロツクLC−599(主成分ポリアミンおよびポリアミド,栗田工業),ハイモロツクM−166,M−566,M−966,(主成分アクリルアミド変性物,協立有機工業),ユニフロツカ−UF−301,UF−304,UF−305,(主成分ポリアクリルアミド,ユニチカ),UF−330,UF−340,(主成分アミノメタアクリル酸エステル,ユニチカ),UF−505(主成分ジシアンアミン,ユニチカ),リユーフロツクC−110(主成分ポリアミン,大日本インキ化学),ピユリフロツクC−31(主成分ポリアミン,ダウケミカル)が挙げられる。また、ダイヤニトリックス社(日本)製K−400シリーズ、KM−200シリーズ、KM−1200シリーズ、KAM−200シリーズ、KD−200シリーズ、KP−000シリーズ、KP−100シリーズ、KP−200シリーズ、KP−300シリーズ、KP−500シリーズ、KP−1200シリーズ、KA−000シリーズ、KA−200シリーズ、KA−300シリーズ、KA−400シリーズ、KA−600シリーズ、KA−700シリーズ、KA−800シリーズなども挙げられる。これら凝集剤は単独もしくは二種以上を併用して使用できる。本発明において使用する凝集剤は、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性または該活性回収率を低下させず、かつ、残渣分離効率を向上させることができるものであれば上述のいずれの凝集剤でも良いが、具体的には、例えば、ダイヤニトリックス社(日本)製K−401、K−403B、K−405、K−408、K−409、K−415、KP201H、KP309、KP7000などが挙げられる。凝集剤の添加量としては、凝集剤の種類や菌体または破砕液の液状によっても異なるが、例えば、破砕した微生物乾燥重量%濃度の1/50〜1/2の濃度、好ましくは1/20〜1/5濃度である。添加方法としては、例えば、凝集剤を予め水に溶解した後、菌体または細胞破砕液に添加して少なくとも5分から24時間、好ましくは30分から10時間程度、静置または撹拌すればよい。そのときの温度としては、例えば、0℃〜60℃、特に0℃〜50℃、さらに0℃〜40℃が好ましい。また、pHの調整が必要な場合には、適宜、無機塩終濃度が5〜200mMとなるよう添加して緩衝液化することもできるし、必要に応じて、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを安定化する物質を添加してもよい。
ろ過により残渣分離を行う場合、目的とする残渣分離を達成できれば、精密ろ過(MF)膜、限外ろ過(UF)膜いずれの膜を使用してもよいが、通常、精密ろ過(MF)膜を用いることが好ましい。精密ろ過膜は、前述の通り、残渣分離操作を行うことができるものであれば、いずれをも利用することができる。膜の孔径としては、菌体または細胞残渣を捕捉し、かつ、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性がろ液側に回収できるものであればよく、例えば、0.1〜0.5μm程度のものを用いることができる。さらに、ろ過助剤、必要に応じて凝集剤を用いれば、孔径0.5μm以上の膜あるいはろ紙を利用することもできる。ろ過助剤としては、珪藻土やセルロースパウダー、活性炭などが挙げられる。凝集剤は上述のとおりである。
残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを含む粗酵素溶液とすることができる。その後、必要に応じて、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、各種クロマトグラフィー(例えばゲル濾過クロマトグラフィー(例えばSephadexカラム)、イオン交換クロマトグラフィー(例えばDEAE−Toyopearl)、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー(例えばbutyl Toyopearl)、陰イオンクロマトグラフィー(例えばMonoQカラム)等)、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動等を単独でまたは適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中からヒドロキシニトリルリアーゼを単離精製することができる。
なお、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼが菌体内または細胞内に生産される場合、菌体や細胞そのものを上述のように遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま目的の酵素反応などに使用することも可能である。その場合、必要に応じて、培養後の細胞をアクリルアミド等のゲルで包含したもの、グルタルアルデヒドで処理したもの、アルミナ、シリカ、ゼオライト、珪藻土等の無機担体に担持したもの等、処理物として利用することもできる。
一方、本発明の形質転換体が遺伝子組換え体であり、かつ、製造工程での形質転換体の環境への漏出、製品への混入、または使用後の取り扱い等で、二次的に微生物汚染を引き起こす可能性が危惧する場合には、必要に応じて不活化処理を行うことができる。不活化方法としては、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性または該活性回収率を低下させず、かつ、形質転換体を不活化できる方法であればいかなる方法でも良く、例えば、熱処理、菌体破砕処理、薬剤処理などの方法を単独または組み合わせて利用できる。例えば、菌体破砕処理の前または後に、薬剤処理を行うことで、不活化を行うことができる。使用する薬剤としては、形質転換体の宿主種類により異なるが、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化メチルステアロイル、臭化セチルトリメチルアンモニウム等の陽イオン系界面活性剤、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類が挙げられる。また、エタノール等のアルコール類、2−メルカプトエタノール等のチオール類、エチレンジアミン等のアミン類、システイン、オルニチン、シトルリン等のアミノ酸類なども挙げられる。薬剤の濃度は、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性または該活性回収率を低下させず、かつ、不活化できる濃度であればよいが、例えば、該形質転換体宿主が大腸菌で塩化ベンゼトニウムおよびグルタルアルデヒドを用いる場合、それぞれ終濃度0.05〜0.5%程度が好ましい。また、不活化処理の際、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの安定性等を向上させる目的で、例えば、フラボノイド類等を添加してもよい。処理温度は、0〜50℃、好ましくは0〜40℃で行われる。また、pHは、4〜8程度が好ましい。
一方、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼが菌体外または細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、上述したような遠心分離やろ過等により菌体または細胞を除去する。その後、必要に応じて硫安沈澱による抽出等により前記培養物中から改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを採取し、さらに必要に応じて透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を単独または適宜組み合わせて用いることにより、精製することもできる。
形質転換体が植物細胞または植物組織である場合は、セルラーゼ、ペクチナーゼ等の酵素を用いた細胞溶解処理、超音波破砕処理、磨砕処理等により細胞を破壊する。その後、必要であれば、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、各種クロマトグラフィー(例えばゲル濾過クロマトグラフィー(例えばSephadexカラム)、イオン交換クロマトグラフィー(例えばDEAE−Toyopearl)、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー(例えばbutyl Toyopearl)、陰イオンクロマトグラフィー(例えばMonoQカラム)等)、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動等を単独でまたは適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中からヒドロキシニトリルリアーゼを単離精製することができる。
以上のようにして得られた改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、本発明の範囲に含まれる。得られた改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの生産収率は、例えば、培養装置あたり、培養液あたり、菌体湿重量または乾燥重量あたり、酵素液中タンパク質重量あたりなどの単位で、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を測定することにより算出することができるが、特段限定されるものではない。改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ活性は、上述した分解活性または合成活性いずれの値をも適用することができる。また、SDS−PAGEなどの分析手段によっても間接的に算出することができる。SDS−PAGEは当業者であれば公知の方法を用いて行うことができる。さらには、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼに対する抗体を作製し、ウェスタンブロットやELISA法などの免疫学的手法によっても算出することが可能である。
また、本発明においては、上記改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子または改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む組換えベクターから改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを採取することも可能である。すなわち、本発明においては、生細胞を全く使用することなく無細胞タンパク質合成系を採用して、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを産生することが可能である。無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管などの人工容器内でタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。この場合、上記の宿主に対応する生物は、下記の細胞抽出液の由来する生物に相当する。ここで、上記細胞抽出液は、真核細胞由来または原核細胞由来の抽出液、例えば、小麦胚芽、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は濃縮されたものであっても濃縮されないものであってもよい。細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。さらに本発明において、無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTM System(プロメガ)、合成装置のPG−MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)などが挙げられる。
上記のように無細胞タンパク質合成によって得られる改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、例えば前述のように適宜クロマトグラフィーを選択して、精製することができる。
(VI)シアンヒドリンの製造方法およびヒドロキシカルボン酸の製造方法
上述のように製造された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、酵素触媒として物質生産に利用することができる。例えば、ケトン化合物またはアルデヒド化合物、およびシアン化合物に、上述の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを接触させることにより、光学活性なシアンヒドリンを製造することができる。酵素触媒としては、上述のように適当な宿主内で改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子が発現するように遺伝子導入を行い、宿主を培養した後の培養物、またはその処理物を利用することができる。処理物としては、例えば、培養後の細胞をアクリルアミド等のゲルで包含したもの、グルタルアルデヒドで処理したもの、アルミナ、シリカ、ゼオライト、珪藻土等の無機担体に担持したもの等が挙げられる。
基質として使用されるケトン化合物またはアルデヒド化合物およびシアン化合物は、酵素の基質特異性、酵素の基質に対する安定性等を考慮して選択される。例えば、キャッサバ(Manihot esculenta)由来のヒドロキシニトリルリアーゼであれば、好適な基質は、アルデヒド化合物とシアン化合物である。アルデヒド化合物としては、ベンズアルデヒドが好ましい。また、シアン化合物としては、青酸が好ましい。
シアンヒドリンの合成反応における金属イオンによる影響は、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼよりもH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの方が少ない。また、ニッケルイオンの存在によっては、シアンヒドリンの合成は影響を受けにくい。
生体触媒の使用形態、反応様式は、生体触媒の種類等により適宜選択される。生体触媒の使用形態としては、上述の培養物、精製酵素をそのまま使用しても良いし、それらを適当な担体に保持し固定化酵素として使用することもできる。
反応方法および反応終了後のシアンヒドリンの採取方法は、基質、酵素触媒の特性により適宜選択される。酵素触媒は、その活性が失活しない限り、リサイクル使用することが好ましい。失活の防止、リサイクルを容易にすることに鑑み、酵素触媒は処理物の形態で使用されることが好ましい。
本発明において「光学活性」は、一方の鏡像異性体が他方の鏡像異性体よりも多く含まれている物質の状態、またはいずれか一方の鏡像異性体から成っている物質の状態を意味する。
採取された光学活性シアンヒドリンは、さらに硫酸、塩酸等の鉱酸により加水分解反応を実施することによって、光学活性なヒドロキシカルボン酸に変換することも可能である。該加水分解反応は、従来の一般的な方法と同様に鉱酸を用いて実施することが好ましい。ここで用いる鉱酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、過塩素酸等が挙げられ、中でも塩酸が好ましい。加水分解工程で用いる溶媒は、通常は水を用いるが、必要に応じて、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの極性溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、または、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒を共存させても差し支えない。これらの溶媒は単一で用いても混合して用いても構わない。鉱酸の使用量は、加水分解工程に供する反応混合物中に含有される光学活性シアンヒドリンに対して0.5〜20当量であることが好ましく、0.9〜10当量であることがより好ましく、1〜5当量が特に好ましい。この範囲内で鉱酸を使用すると、経済的に有利で、かつヒドロキシカルボン酸の回収率が向上する点で好ましい。加水分解工程の反応温度は−5℃〜溶媒の沸点以下が好ましく、10〜90℃の範囲が特に好ましい。この温度範囲内であると、加水分解反応の反応速度の点および不純物を低減できるという点から好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の取得
(1)PCRによる植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の作製
GenBank accession number Z29091記載の塩基配列を元に、配列番号2によって表されるキャッサバ(Manihot esculenta)由来のヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子をPCR法により合成した。
具体的には、20種のオリゴヌクレオチドF01〜F10およびR01〜R10(配列番号4〜23)を設計および合成した。GenBank accession number Z29091記載のキャッサバ(Manihot esculenta)由来ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子とその5’および3’非翻訳領域を含む塩基配列(センス鎖)およびその相補配列(アンチセンス鎖)(1,041塩基長)に相補的となるように20種のオリゴヌクレオチドF01〜F10およびR01〜R10を設計した。ここで、F01の5’末端にはBamHIを含む11塩基(斜体で表す)を、R01の5’末端にはKpnIを含む9塩基(斜体で表す)を付加し、最終的にはキャッサバ由来ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む1,041塩基対が増幅されるように設計した。これらのオリゴヌクレオチドは、隣のオリゴヌクレオチドと、それぞれ約20塩基ずつ重なるように設計した。例えば、F01とF02とは、F01の下線部とF2の下線部とが重なるように設計した。図1に20種のオリゴヌクレオチドF01〜F10およびR01〜R10(配列番号4〜23)の位置関係を模式的に表した。
Figure 0004956193
Figure 0004956193
凍結乾燥されたオリゴヌクレオチドを蒸留水で再懸濁し、100pmol/μlとした。20種のオリゴヌクレオチド溶液のそれぞれから1μlずつ集めてミックスオリゴを作製した。この混合液をPCR−mix(Pwo 10×緩衝液、dNTP mix、Pwo DNAポリメラーゼ)(Boehringer Mannheim)に加えた。表3にPCR反応液の組成を示した。
Figure 0004956193
PCRは、94℃で30秒、52℃で30秒、72℃で30秒のセットを55サイクル行い、オリゴヌクレオチドを伸長させて、遺伝子を合成した(1st PCR)。
次に、上記のように作製した合成遺伝子の増幅を行った(2nd PCR)。1st PCRのPCR溶液Bの反応産物1.3μlに、5μlのPwo 10×緩衝液、5μlのdNTP mix、0.5μlのPwo DNAポリメラーゼ、36.2μlの蒸留水および1μlの外側プライマーを添加した。外側プライマーとして、F01(配列番号4)およびR01(配列番号14)のプライマーを用いた。2nd PCRは、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で60秒のセットを23サイクル行い、遺伝子を増幅した。
2nd PCRの増幅産物を1.5%アガロースゲルで確認した。
(2)植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子組換えベクターの作製
上記(1)で得られた2nd PCRによる増幅産物である0.9kbのバンドをQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製した。ゲルから精製したDNA(5μl)を制限酵素BamHI(1μl)(オリゴヌクレオチドF01中に消化認識部位が含まれる)およびKpnI(1μl)(オリゴヌクレオチドR01中に消化認識部位が含まれる)で37℃、1時間消化した。その後、DNAを反応液からフェノール抽出・クロロホルム抽出・エタノール沈殿[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))]により精製した。精製したDNA(5μl)、予めBamHIおよびKpnIで消化しておいたベクターpUC19(タカラバイオ(株))(1μl)、蒸留水(4μl)およびsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作製し、この混合物を12時間、16℃でインキュベートすることで増幅産物とベクターを結合した。
(3)大腸菌JM109株のコンピテントセルの作製
大腸菌JM109株をLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、0.5% NaCl)1mlに接種し37℃、5時間好気的に前培養した。得られた前培養液0.4mlをSOB培地40ml(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、1mM MgSO、1mM MgCl)に加え、18℃で20時間培養した。当該培養物を遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液(20mM PIPES−KOH(pH6.0)、200mM KCl、10mM CaCl、40mM MnCl)を13ml加え、0℃で10分間放置した。その後、再度遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)し、上清を除いた。沈殿した大腸菌を冷TF溶液3.2mlに懸濁し、0.22mlのジメチルスルホキシドを加え0℃で10分間放置した。
(4)植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のクローニング
上記(3)で作製したコンピテントセル200μlを上記(2)で作製したライゲーション産物10μlに加え、0℃で30分放置した。続いて、当該コンピテントセルに42℃で30秒間ヒートショックを与え、0℃で2分間冷却した。その後、SOC培地(20mMグルコース、2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、1mM MgSO、1mM MgCl)1mlを添加し、37℃にて1時間振盪培養した。培養後の培養液を各200μlずつ、LB Amp寒天培地(アンピシリン100mg/L、1.5%寒天を含有するLB培地)にまき、37℃で一晩培養した。寒天培地上に生育した形質転換体コロニー複数個を1.5mlのLB Amp培地(アンピシリン100mg/Lを含有するLB培地)にて37℃で一晩培養した。得られた培養液を各々集菌後、Flexi Prep(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて組換えベクターを回収した。得られた組換えベクターの塩基配列をCEQ DTCS Quick Start Kitおよび蛍光シーケンサCEQ 2000XL DNA Analysis system(いずれもBECKMAN COULTER、米国)を用いて解析した。プライマーは、オリゴヌクレオチドF01〜F10およびR01〜R10を用いた。配列番号2で表されるGenBank accession number Z29091記載のキャッサバ(Manihot esculenta)由来ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の塩基配列と同一の配列を有する組換えベクターのひとつをpUMEと命名した。
植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現用ベクターの作製
(1)植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現用ベクター(pUC19ベース)の作製。
実施例1で得られた植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の塩基配列にSD配列を付加したDNA断片をpUC19のPstI−BamHI部位に挿入し、pUC19をベースとした植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターpUMESDを以下のようにして作製した。まず、ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする修飾DNAフラグメントをPCR法により得た。PCR用の反応混合物は、5μlのPwo 10×バッファー、5μlのdNTP mix、0.5μlのPwo DNAポリメラーゼ、36.2μlの蒸留水、1μlのセンスおよびアンチセンスプライマー、並びに鋳型としてpUMEを1μl添加したものを用いた。PCRは、95℃で2分の変性を行った後、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で2分を30サイクル行った後、72℃で10分行った。センスプライマーMES−1(配列番号24)は、その配列中にPstI認識部位、リボソーム結合部位、pUC19のlacZ遺伝子フレームのTAG終止コドン、ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドンを有する62ヌクレオチドのものである。また、アンチセンスプライマーMES−2(配列番号25)は、その配列中にBamHI部位を有する38ヌクレオチドのものである。
センスプライマー:
ccccaaactgcagtaaggaggaatagaaaatggtaactgcacattttgttctgattcatacc(配列番号24)
アンチセンスプライマー:tagtgcaattggatcctcacatgaaaatgtgag(配列番号25)
PCRにより得られた増幅PCR産物は、PstIおよびBamHIによって消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、その後QIAquick Gel Extraction Kitで精製した。この精製DNA断片(5μl)、予めPstIおよびBamHIによって消化しておいたpUC19(タカラバイオ(株)、日本)(5μl)、およびsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作った。該混合物を12時間、16℃でインキュベートすることでリンカーとベクターを結合した。実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行った。生育したコロニーより組換えベクターを回収した。植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む修飾DNAフラグメント(PstI−BamHI断片)がpUC19のlacプロモーターの下流に正しく挿入されたプラスミドを発現ベクターpUMESDと命名した。
(2)植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現用ベクター(pKK233−2ベース)の作製
実施例1で得られたキャッサバ(Manihot esculenta)由来野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のDNA断片をpKK233−2(Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)の誘導体であるpKK233−2(+Sse)のNcoI−Sse8387I部位に挿入し、pKK233−2をベースとした植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターpOXN103を以下のようにして作製した。まず、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードするDNA断片を、発現ベクターに容易に導入可能な制限酵素認識部位を両端に有する形となるよう、PCR法により増幅した。PCR用の反応混合物は、5μlのPwo 10×バッファー、5μlのdNTP mix、0.5μlのPwo DNAポリメラーゼ、36.2μlの蒸留水、1μlのセンスおよびアンチセンスプライマー、並びに鋳型としてプラスミドpUMEを1μl添加したものを用いた。PCRは、95℃で2分の変性を行った後、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で2分を30サイクル行った。センスプライマーOXYN−6(配列番号26)は、29ヌクレオチドからなり、その配列中にNcoI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を含む。また、アンチセンスプライマーOXYN−9(配列番号27)は、33ヌクレオチドからなり、その配列中にSse8387I認識部位を含む。
OXYN−6:ccaccatggtaactgcacattttgttctg(配列番号26)
OXYN−9:ggcctgcaggttaacttaataggagctaaaagc(配列番号27)
得られた増幅PCR産物は、Sse8387Iで消化後、NcoIによって部分消化した。アガロースゲル電気泳動で分離し、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ全長を含むバンド(約0.8kb)のゲルを切り出した。該ゲル中の増幅産物をQIAquick Gel Extraction Kitで精製した。
次いで、発現用ベクターpKK233−2(+Sse)を以下のように調製した。pKK233−2(Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)5μlをHindIII(1μl)で消化後、フェノール抽出・クロロホルム抽出・エタノール沈殿により精製した。次いで、DNA Blunting Kit(タカラバイオ(株))を用いて末端を平滑処理した。該処理液を再度フェノール抽出・クロロホルム抽出・エタノール沈殿により精製した。精製した発現ベクター(5μl)をShrimp Alkaline Phosphatase(タカラバイオ(株))を用いて脱リン酸化処理を行った。該処理液を再度エタノール沈殿により精製した。精製したベクターDNA(5μl)、アニーリング済みSse8387Iリン酸化リンカーpSse8387I(タカラバイオ(株))(5μl)およびsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作った。該混合物を12時間、16℃でインキュベートすることでリンカーとベクターを結合した。実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行った。生育したコロニーより組換えベクターを回収した。回収した組換えベクターに対してSse8387I消化反応を行い、直鎖状に消化されることが確認されたものをpKK283−2(+Sse)とした。pKK233−2(+Sse)を制限酵素NcoIとSse8387Iで消化後、フェノール抽出・クロロホルム抽出・エタノール沈殿により精製した。
上述の植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のDNA断片(5μl)と発現ベクターpKK233−2(+Sse)(5μl)を混合した。該混合液にsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)))(10μl)を添加してライゲーション混合物を作った。この混合物を12時間、16℃でインキュベートすることでリンカーとベクターを結合した。実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行い、生育コロニーより組換えベクターを回収した。植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のDNA断片が正しく発現ベクターに連結された組換えベクターを確認し、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現組換えベクターpOXN103と命名した。同時に、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体、JM109/pOXN103を得た。
大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の取得
(1)PCRによる大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の設計と作製
ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を新規に設計し、いくつかのコドンを大腸菌で良く用いられているコドンに変更した。具体的には、最終的に30種のオリゴヌクレオチドNo.1〜30(49ntが6種、50ntが21種、27ntが2種および48ntが1種)(配列番号28〜57)を設計および合成し、50nmolスケールで調製した。30種のオリゴヌクレオチドは、20nt重なるように設計した(図2)。
Figure 0004956193
Figure 0004956193
凍結乾燥されたオリゴヌクレオチドを蒸留水で再懸濁し、100pmol/μlとした。30種のオリゴヌクレオチド溶液のそれぞれから1μlずつ集めてミックスオリゴを作製した。この混合液をPCR−mix(Pwo 10×緩衝液、dNTP mix、Pwo DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)に下記表4の用量で加えた。
Figure 0004956193
PCRは、94℃で30秒、52℃で30秒、72℃で30秒のセットを56サイクル行い、オリゴヌクレオチドを伸長させて、遺伝子を合成した(1st PCR)。
次に、上記のように作製した合成遺伝子の増幅を行った(2nd PCR)。上記のAまたはBの反応産物1.3μlに、5μlのPwo 10×緩衝液、5μlのdNTP mix、0.5μlのPwo DNAポリメラーゼ、36.2μlの蒸留水および1μlの外側プライマーを添加した。外側プライマーとして、No.1(配列番号28)およびNo.30(配列番号57)のプライマーを用いた。2nd PCRは、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で60秒のセットを23サイクル行い、遺伝子を増幅した。
2nd PCRの増幅産物を1.5%アガロースゲルで解析した。続いて、この0.9kbのバンドをQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製した。ゲルから精製したDNA(5μl)、ベクターpT7 Blue(1μl)、蒸留水(4μl)およびsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)、日本))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作り、この混合物を12時間、16℃でインキュベートすることで増幅産物とベクターを結合した。実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行い、生育コロニーより組換えベクターを回収した。大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のDNA断片が正しく発現ベクターに連結された組換えベクターを確認した。
(2)DNA塩基配列解析
プラスミド自動分離装置(クラボウ、大阪、日本)をシークエンシング用の二本鎖DNAの調製に用いた。(1)で得られた形質転換体から精製したプラスミドDNAをEcoRIとXbaIで処理し、アガロースゲルで制限酵素消化されたDNAの大きさを解析した。0.9kbの大きさのDNAフラグメントを示したプラスミドNo.78を塩基配列決定のための鋳型DNAとして用いた。核酸配列解析をM13ForwardおよびReverse IRD800 Infrared Dye Labeled primer(アロカ(株))でジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法により行った。シークエンシング反応をThermo Sequence cycle Sequencing Kit(Amersham Bioscience(Uppsala,Sweden))で行い、反応混合物をDNAシークエンサー4000L(Li−cor、Licon、NE、USA)に流した。プラスミドNo.78の大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子配列は、目的の遺伝子配列と同一であることを確認した。
大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現用ベクターの作製
実施例3で得られた大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の塩基配列にSD配列を付加したDNA断片をpUC19のSphI−BamHI部位に挿入し、pUC19をベースとした大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターpUMESDsyを以下のようにして作製した。まず、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする修飾DNAフラグメントをPCR法により得た。PCR用の反応混合物は、5μlのPwo 10×バッファー、5μlのdNTP mix、0.5μlのPwo DNAポリメラーゼ、36.2μlの蒸留水、1μlのセンスおよびアンチセンスプライマー、並びに鋳型としてプラスミドNo.78を1μl添加したものを用いた。PCRは、95℃で2分の変性を行った後、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で2分を30サイクル行った。センスプライマー(配列番号58)は、その配列中にSphI認識部位、リボソーム結合部位、pUC19のlacZ遺伝子フレームのTAG終止コドン、ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドンを有する61ヌクレオチドのものである。また、アンチセンスプライマー(配列番号59)は、その配列中にBamHI部位を有する37ヌクレオチドのものである。
センスプライマー:
tgcaaagcatgctaaggaggaatagaaaatggtgaccgcgcattttgtgctgattcatacc(配列番号58)
アンチセンスプライマー:attttagtgcaattggatcctcacatgaaaatgtgag(配列番号59)
PCRにより得られた増幅PCR産物は、SphIおよびBamHIによって消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、その後QIAquick Gel Extraction Kitで精製した。この精製DNA断片(5μl)、予めSphIおよびBamHIによって消化しておいたpUC19(タカラバイオ(株)、日本)(5μl)、およびsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作った。該混合物を12時間、16℃でインキュベートすることでリンカーとベクターを結合した。実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行った。生育したコロニーより組換えベクターを回収した。大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む修飾DNAフラグメント(SphI−BamHI断片)がpUC19のlacプロモーターの下流に正しく挿入されたプラスミドを発現ベクターpUMESDsyと命名した。
第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター、および該ベクターを含むヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体の作製
(1)第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター、および該ベクターを含むヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体の作製(その1)
キャッサバ(Manihot esculenta)由来野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの第2番目のアミノ酸であるバリン(Val;V)が、アラニン(Ala;A)、アスパラギン酸(Asp;D)、グルタミン酸(Glu;E)、グリシン(Gly;G)、イソロイシン(Ile;I)、メチオニン(Met;M)、スレオニン(Thr;T)、アスパラギン(Asn;N)、リジン(Lys;K)、セリン(Ser;S)、フェニルアラニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)、システイン(Cys;C)およびトリプトファン(Trp;W)に置換されたヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を、PCRによる増幅を行う際に、上述の発現ベクターpKK233−2(+Sse)上のNcoI認識部位と連結可能な制限酵素認識部位(兼目的のアミノ酸をコードするコドン)をセンスプライマー中に導入することにより作製した。
PCR用の反応混合物は、5μlのPwo 10×バッファー、5μlのdNTP mix、0.5μlのPwo DNAポリメラーゼ、36.2μlの蒸留水、1μlのセンスおよびアンチセンスプライマー、並びに鋳型としてプラスミドpUMEを1μl添加したものを用いた。PCRは、95℃で2分の変性を行った後、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で2分を30サイクル行った。センスプライマーは、以下のものを用いた。
OXYN−32:agaccatggc tactgcacat tttgtt(配列番号60:26ヌクレオチドからなり、その配列中にNcoI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはGCTでアラニンをコードする)
OXYN−33:agaccatgga cactgcacat tttgtt(配列番号61:26ヌクレオチドからなり、その配列中にNcoI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはGACでアスパラギン酸をコードする)
OXYN−34:agaccatgga aactgcacat tttgtt(配列番号62:26ヌクレオチドからなり、その配列中にNcoI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはGAAでグルタミン酸をコードする)
OXYN−35:agaccatggg cactgcacat tttgtt(配列番号63:26ヌクレオチドからなり、その配列中にNcoI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはGGCでグリシンをコードする)
OXYN−10:atttccatca tgatcactgc acattttgtt ctg(配列番号64:33ヌクレオチドからなり、その配列中にBspHI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはATCでイソロイシンをコードする)
OXYN−36:agatcatgat gactgcacat tttgttc(配列番号65:27ヌクレオチドからなり、その配列中にBspHI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはATGでメチオニンをコードする)
OXYN−37:agatcatgac cactgcacat tttgtt(配列番号66:26ヌクレオチドからなり、その配列中にBspHI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはACCでスレオニンをコードする)
OXYN−38:agatcatgaa cactgcacat tttgttc(配列番号67:27ヌクレオチドからなり、その配列中にBspHI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはAACでアスパラギンをコードする)
OXYN−39:agatcatgaa aactgcacat tttgttc(配列番号68:27ヌクレオチドからなり、その配列中にBspHI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはAAAでリジンをコードする)
OXYN−40:agatcatgag cactgcacat tttgtt(配列番号69:26ヌクレオチドからなり、その配列中にBspHI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはAGCでセリンをコードする)
OXYN−41:agaacatgtt cactgcacat tttgttc(配列番号70:27ヌクレオチドからなり、その配列中にPciI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはTTCでフェニルアラニンをコードする)
OXYN−42:agaacatgta cactgcacat tttgttc(配列番号71:27ヌクレオチドからなり、その配列中にPciI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはTACでチロシンをコードする)
OXYN−43:agaacatgtg cactgcacat tttgttc(配列番号72:27ヌクレオチドからなり、その配列中にPciI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはTGCでシステインをコードする)
OXYN−44:agaacatgtg gactgcacat tttgttc(配列番号73:27ヌクレオチドからなり、その配列中にPciI認識部位およびヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のATG開始コドン以降を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはTGGでトリプトファンをコードする)
また、アンチセンスプライマーは、実施例2の(2)で用いたOXYN−09を用いた。
得られた増幅PCR産物は、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびグリシン置換体については制限酵素NcoIとSse8387Iによって、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、アスパラギン、リジンおよびセリン置換体については制限酵素BspHIとSse8387Iによって、フェニルアラニン、チロシン、システインおよびトリプトファン置換体については制限酵素PciIとSse8387Iによって、それそれ二重消化を行った。ただし、NcoI消化は部分消化を行った。アガロースゲル電気泳動で分離後、ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子全長を含むバンド(約0.8kb)をQIAquick Gel Extraction Kitで精製した。精製したヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子DNA断片(それぞれ5μl)と実施例2の(2)で作製した発現ベクターpKK233−2(+Sse)(5μl)をそれぞれ混合し、さらにsolution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ(株)))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作った。該混合物を12時間、16℃でインキュベートすることでリンカーとベクターを結合した。実施例1の(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行い、生育コロニーより組換えベクターを回収した。ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子DNA断片が正しく発現ベクターに連結された発現型組換えベクターを確認し、第2番目のアミノ酸が、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、アスパラギン、リジン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、システインおよびトリプトファンに置換されたヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子を含む組換えベクターをそれぞれ、pOXN103V2A、pOXN103V2D、pOXN103V2E、pOXN103V2G、pOXN103V2I、pOXN103V2M、pOXN103V2T、pOXN103V2N、pOXN103V2K、pOXN103V2S、pOXN103V2F、pOXN103V2Y、pOXN103V2CおよびpOXN103V2Wと命名した。同時に、各ヒドロキシニトリルリアーゼ形質転換体、JM109/pOXN103V2A、JM109/pOXN103V2D、JM109/pOXN103V2E、JM109/pOXN103V2G、JM109/pOXN103V2I、JM109/pOXN103V2M、JM109/pOXN103V2T、JM109/pOXN103V2N、JM109/pOXN103V2K、JM109/pOXN103V2S、JM109/pOXN103V2F、JM109/pOXN103V2Y、JM109/pOXN103V2CおよびJM109/pOXN103V2Wを得た。
(2)第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター、および該ベクターを含むヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体の作製(その2)
キャッサバ(Manihot esculenta)由来野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの第2番目のアミノ酸であるバリン(Val;V)が、アルギニン(Arg;R)、グルタミン(Gln;Q)、ヒスチジン(His;H)、ロイシン(Leu;L)およびプロリン(Pro;P)に置換されたヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子については、実施例2の(2)の方法で作製した野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターpOXN103を鋳型とし、QuikChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)による部位特異的変異導入法により作製した。変異導入用プライマーには以下を用いた。
アルギニン置換体
OXYN−45:aaacagacca tgcgtactgc acattttg(配列番号74:28ヌクレオチドからなるセンスプライマーであり、OXYN−46と相補的な配列を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはCGTでアルギニンをコードする)
OXYN−46:caaaatgtgc agtacgcatg gtctgttt(配列番号75:28ヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーであり、OXYN−45と相補的な配列を有する)
グルタミン置換体
OXYN−47:aaacagacca tgcagactgc acattttg(配列番号76:28ヌクレオチドからなるセンスプライマーであり、OXYN−48と相補的な配列を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはCAGでグルタミンをコードする)
OXYN−48:caaaatgtgc agtctgcatg gtctgttt(配列番号77:28ヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーであり、OXYN−47と相補的な配列を有する)
ヒスチジン置換体
OXYN−49:aaacagacca tgcacactgc acattttg(配列番号78:28ヌクレオチドからなるセンスプライマーであり、OXYN−50と相補的な配列を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはCACでヒスチジンをコードする)
OXYN−50:caaaatgtgc agtgtgcatg gtctgttt(配列番号79:28ヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーであり、OXYN−49と相補的な配列を有する)
ロイシン置換体
OXYN−51:aaacagacca tgctgactgc acattttg(配列番号80:28ヌクレオチドからなるセンスプライマーであり、OXYN−52と相補的な配列を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはCTGでロイシンをコードする)
OXYN−52:caaaatgtgc agtcagcatg gtctgttt(配列番号81:28ヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーであり、OXYN−51と相補的な配列を有する)
プロリン置換体
OXYN−53:aaacagacca tgccgactgc acattttg(配列番号82:28ヌクレオチドからなるセンスプライマーであり、OXYN−54と相補的な配列を有し、第2番目のアミノ酸に対応するコドンはCCGでプロリンをコードする)
OXYN−54:caaaatgtgc agtcggcatg gtctgttt(配列番号83:28ヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーであり、OXYN−53と相補的な配列を有する)
該キットプロトコールに従い、伸長反応およびDpnI処理後、大腸菌JM109株の形質転換を行い、生育コロニーよりプラスミドDNAを回収した。ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子DNA断片が正しく発現ベクターに連結されたプラスミドを確認し、第2番目のアミノ酸が、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、ロイシンおよびプロリンに置換されたヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子を含む発現ベクターをそれぞれ、pOXN103V2R、pOXN103V2Q、pOXN103V2H、pOXN103V2LおよびpOXN103V2Pと命名した。同時に、各ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体、JM109/pOXN103V2R、JM109/pOXN103V2Q、JM109/pOXN103V2H、JM109/pOXN103V2LおよびJM109/pOXN108V2Pを得た。
第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ形質転換体の発現量評価
(1)細胞抽出液の調製
実施例5の(1)および(2)で作製した第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ形質転換体のうち、pOXN103V2K、pOXN103V2N、pOXN103V2I、pOXN103V2R、pOXN103V2Q、pOXN103V2P、pOXN103V2T、pOXN103V2Y、pOXN103V2L、pOXN103V2M、pOXN103V2S、pOXN103V2E、pOXN103V2A、pOXN103V2G、pOXN103V2Dを、以下に示す培地(500ml容三角フラスコ中の100ml)で37℃で24時間培養した。
培地組成
ペプトン 10g/L
酵母エキス 5g/L
NaCl 10g/L
アンピシリン 50mg/L
IPTG 1mM(終濃度)
なお、コントロールとして実施例2の(2)で得られた野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター導入した形質転換体JM109/pOXN103も同様に培養した。
得られた培養液から遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により菌体を回収し、10mMリン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、10mlの同緩衝液に懸濁した。得られた菌体懸濁液の1mlを、超音波破砕機VP−15S(タイテック、日本)を用いて、出力コントロール4、DUTY CYCLE 40%、PULS、TIMER=Bモード10sの条件で氷冷しながら3分間破砕した。破砕した菌体懸濁液を細胞抽出液全画分として採取した。
(2)ポリアクリルアミドゲル電気泳動による発現量の解析
(1)で得られた細胞抽出液全画分を、それぞれ培養液時点での菌濃度換算でOD630=12.5となるよう、10mMリン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)で希釈した。希釈した各株由来の細胞抽出液全画分を等量のポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー(0.1M Tris−HCl(pH6.8)、4%w/v SDS、12%v/vβメルカプトエタノール、20%v/vグリセロール、微量ブロモフェノールブルー)と混合し、5分間煮沸し変性処理を行った。10%ポリアクリルアミドゲルを作製し、変性処理済みサンプルを1レーンあたり5μlずつアプライし、電気泳動分析を行った(図3)。ヒドロキシニトリルリアーゼは約30kDaのバンドとして観察された(図3中の矢印)。空ベクターのみのJM109/pKK233−2(+Sse)をバックグラウンドとし、ヒドロキシニトリルリアーゼに相当するバンドの濃度について、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体JM109/pOXN103のバンドと解析比較(解析ソフトImage−Pro Plus Ver4.5(株式会社プラネトロン製)を使用)したところ、表5のような相対値が得られた。第2番目のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換することで発現量が大きく向上する改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを得られることが示された。
第2番目のアミノ酸とホルミルメチオニンプロセッシングの関係やN末端則によれば、タンパク質の2番目のアミノ酸残基がバリンである場合とイソロイシンである場合を比較して、タンパク質の安定性に有意な差はないとされている。従って、上述の発現量向上効果は、該関係・法則により説明できるものではなく、まったく新しい原理に起因するものと考えられた。
Figure 0004956193
第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ形質転換体の活性評価
実施例5の(1)および(2)で作製した第2番目のアミノ酸が置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ形質転換体のうち、pOXN103V2K、pOXN103V2N、pOXN103V2I、pOXN103V2R、pOXN103V2Qを、培養温度30℃、培養時間24時間とした以外は実施例6の(1)と同様の方法で培養した。なお、コントロールとして実施例2の(2)で得られた野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ組換えベクターを導入した形質転換体JM109/pOXN103も同様に培養した。得られた培養液から、実施例6の(1)と同様の方法により細胞抽出液全画分として採取した後、遠心分離を行い(10,000×g、5分間、4℃)、得られた上清を細胞抽出液可溶性画分として採取した。得られた細胞抽出液可溶性画分を用い、特表平11−508775号公報記載の方法によりヒドロキシニトリルリアーゼ活性を測定した。すなわち、ラセミマンデロニトリルからベンズアルデヒドの生成を追跡することで活性を測定した。酵素溶液50μlを、50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)900μlと混合し、基質溶液100μl(37.5mMラセミマンデロニトリル/10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)を添加して活性測定を開始した。280nmでの吸光の増加(対照として酵素非含有基質溶液で測定)を5分間追跡した。1Uは上記条件下でラセミマンデロニトリルから1分間あたりベンズアルデヒド1μmolの変換を触媒する酵素量に相当する。また、バイオラッドプロテインアッセイ(バイオラッド)により、添付プロトコールに従ってタンパク質の定量を行った。その結果、細胞抽出液可溶性画分タンパク質mgあたりの比活性はそれぞれ、JM109/pOXN103V2K由来は22.7U/mgタンパク質、JM109/pOXN103V2N由来は8.1U/mgタンパク質、JM109/pOXN103V2I由来は5.5U/mgタンパク質、JM109/pOXN103V2R由来は7.8U/mgタンパク質、JM109/pOXN103V2Q由来は4.5U/mgタンパク質であった。一方、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターを導入した形質転換体JM109/pOXN103の細胞抽出液可溶性画分タンパク質mgあたりの比活性は、2.7U/mgタンパク質であった。第2番目のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換することで得られる改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの細胞抽出液タンパク質あたりの比活性は、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターを導入した形質転換体よりも大きく向上していることが確認された。
Error prone PCRによるランダム変異の導入とスクリーニング
(1)Error prone PCR(1回目)
実施例4で作製した大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクターpUMESDsyを鋳型としてError prone PCRを行った。
Error prone PCRの条件として、PCR反応液中のMgClとMnCl量を増やした組成で行った。PCR反応溶液の組成を表6に示す。
Figure 0004956193
上記プライマーの配列は以下のとおりである。
M13−reverse:aacagctatgaccatg (配列番号84)
M13−forward:gtaaaacgacggccagt (配列番号85)
PCRの反応条件は以下のとおりである(表7)。
Figure 0004956193
得られたPCR産物はGel Extraction System(VIOGENE社)でアガロースゲルから抽出した。
増幅したDNAおよびベクターpUC19をBamHIおよびSphI処理をし、電気泳動した。電気泳動後のゲルからそれぞれを抽出により回収し、増幅DNAとpUC19とをライゲーションした。続いて、ライゲーション液を用いて、大腸菌JM109をトランスフォーメーションして形質転換体を得た。変異体コロニーのマスタープレートを作製し、以下の実験に用いた。
(2)Error prone PCRにより得られた変異体のスクリーニング
(1)で得られた変異体の中から、活性上昇したものをスクリーニングした。活性測定は、変異体の培養菌体から調製した細胞抽出液可溶性画分における基質マンデロニトリルの分解活性を、ベンズアルデヒドの生成量を指標にして実施した。
(2−1)サンプル調製
96−wellプレートを用いてサンプルを調製した。0.8ml 96−well滅菌プレート(ABgene社)にLB(80μg/ml Ampおよび0.1mM IPTG含有)を150μlずつ分注し、変異体コロニーをマスタープレートから植菌した。このプレートをBioShaker(M−BR−024、TAITEC社)を用いて37℃、1,200rpmで12時間振とう培養した。培養後、培養液を遠心分離し(5,000rpm、10分、4℃、himac CR20、ローターR6S、日立社)、集菌した。上清を除き、新聞紙上で逆さにして培地をできる限り除去した後、得られた菌体を100μlの0.85%NaClにBioShakerを用いて懸濁した後、懸濁液を96−well U底プレート(Corning社)に移した。続いて、遠心分離(4,500rpm、10分、4℃、himac CR20、ローターR6S、日立社)により集菌し、上清を除き、新聞紙上で逆さにして水分を除去した。得られた菌体にLysozyme溶液(10mg/ml Lysozyme(卵白由来、生化学工業)、100mM KPB(pH7.0)、10mM EDTA)を5μl添加し、TUPLE MIXER(スピード7、IWAKI社)で懸濁した。37℃で1時間のインキュベートによりLysozyme処理を行い、大腸菌をプロトプラスト化させた。得られた大腸菌に−40℃および37℃で凍結融解処理を施し、100μlの低張液(10mM KPB(pH7.0)、5mM MgCl)を添加して溶菌させた。この溶液を遠心分離(4,500rpm、10分、4℃、himac CR20、ローターR6S、日立社)により、大腸菌のゲノムと細胞壁等を沈殿させ、上清を得て粗酵素液として以下の実験に用いた。
あるいは、変異体の形質転換体を培養し、培養菌体をリン酸緩衝液(pH7)で洗浄後、超音波で破砕し、細胞抽出液全画分とした。破砕液を遠心分離後、上清を採取し、細胞抽出液可溶性画分とした。沈殿物を、上清と当量のリン酸緩衝液(pH7)に懸濁し、細胞抽出液不溶性画分とした。
(2−2)活性測定
ヒドロキシニトリルリアーゼの基質であるマンデロニトリルの分解活性をベンズアルデヒドの生成量によって測定した。反応組成を表8に示す。
Figure 0004956193
活性測定の方法は、96−well UVプレート(greiner bio−one社)にNa−citrate bufferを添加し、25℃にした。次に粗酵素液を添加し、ピペッティングにより懸濁した。次にracemic mandelonitrileを添加し、ピペッティングおよび振とうした後、マイクロプレートリーダー(GENios、テカン・ジャパン社)を用いて、波長280nmにおける吸光値の増加を25℃で10分間測定した。解析にはLS−PLATEmanager 2001(Win)(和光純薬工業社)を用いた。
(2−3)スクリーニング結果
ポジティブコントロールpUMESDsyまたはPCRの鋳型とした検体、ネガティブコントロールとしてpUC19を用いてスクリーニングを行った。具体的には、得られた変異体約5,000コロニーからポジティブコントロールよりも高活性を示した11検体を選出した。この11検体をそれぞれ3mLスケールで培養し、ヒドロキシニトリルリアーゼを発現させた。そして、ベンズアルデヒドからの(S)−マンデロニトリルの生成を測定することによって合成活性を測定した。標準アッセイ溶液は、最終容量0.9ml中に300mMクエン酸緩衝液(pH4.0)、50mMベンズアルデヒドおよび100mMシアン化物溶液を含有する。100μlの酵素溶液を添加することによって反応を直ちに開始し、25℃で120分間インキュベートした。900μlの有機溶媒(ヘキサン:イソプロパノール=9:1)にサンプリングした反応液100μlを添加して反応を停止させ、遠心(15,000×g、10分、4℃)により得た上清をHPLCによりアッセイした。各成分の量は、CHIRALCEL OJ−Hカラム(ダイセル化学社製)を用いてヘキサン:イソプロパノール=90:10を移動相として流量1.0ml/分で流し、カラム温度は30℃に設定、254nmで測定し、それらの標準曲線を用いて算出した。標準的アッセイ条件下でベンズアルデヒドから、1分あたり1μmolのS−マンデロニトリルを生成する酵素の量を酵素活性の1単位を定義した。
測定の結果、ポジティブコントロールよりも著しく高活性であった検体を選出して、SDS−PAGEにより可溶性画分の収率確認を行い、さらにDNAシーケンス解析により変異の導入を確認した。
11検体中で最も高活性を示した検体はpUMESDsyの約10倍の合成活性(63.3U/ml)であり、SDS−PAGEを行った結果、発現したヒドロキシニトリルリアーゼのほとんどが可溶性画分に存在していた(表9および図4)。シーケンス解析により、His103→Leu103への1アミノ酸置換によることが確認された。得られた変異体プラスミドをpUMESDsy−H103Lとした。
(3)Error prone PCRによるランダム変異(2回目)
上記(2)で得られたpUMESDsy−H103Lを鋳型として、再度error prone PCRを行った。1回目のError prone PCRの鋳型に用いたpUMESDsy、得られた変異体クローンpUMESDsy−H103L、およびpUMESDsy−H103Lを鋳型に用いた2回目のError prone PCRで得られたランダム変異体クローン19−E8、36−E10のヒドロキシニトリルリアーゼ合成活性(U/ml)を表9に示す。
Figure 0004956193
pUMESDsy−H103Lを鋳型にしたError prone PCRの結果、クローン19−E8では更なる活性上昇(表9)と可溶性画分の収率増加(図4)が認められた。シーケンス解析の結果、クローン19−E8にはHis103(cat)→Leu(ctt)、Phe125(ttt)→Leu(ctt)、Thr146(acc)→Thr(aca)の変異(2アミノ酸置換、3塩基変異)が導入されていた。また、鋳型よりも活性上昇が認められなかったクローン36−E10には、His103(cat)→Leu(ctt)、Thr205(acc)→Ser(tcc)、Asp235(gat)→Gly(ggt)の変異(3アミノ酸置換、3塩基変異)が導入されていた。
野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子へのH103L置換
実施例2(1)で作製した植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む発現ベクターpUMESDに対して、第103番目のヒスチジン(His、H)がロイシン(Leu、L)となるように置換し、pUMESD−H103Lを構築した。この部位特異的変異導入はQuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて行った。
PCRの反応条件を表10に示す。
Figure 0004956193
上記プライマー(5’−primer)の配列は以下のとおりである。
OXYN−30:gctggtgttttcctgaattccttattgcc(配列番号86)
上記プライマー(3’−primer)の配列は以下のとおりである。
OXYN−31:ggcaataaggaattcaggaaaacaccagc(配列番号87)
OXYN−30(配列番号86)は、29ヌクレオチドからなるセンスプライマーであり、OXYN−31と相補的な配列を有し、第103番目のアミノ酸に対応するコドンはCTGでロイシンをコードする。また、OXYN−31(配列番号87)は、29ヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーであり、OXYN−30と相補的な配列を有する。
PCRの反応条件は以下のとおりである(表11)。
Figure 0004956193
pUMESDにH103L変異を導入するために、上記のプライマー(OXYN−30とOXYN−31)を使用してPCRによる部位特異的変異(1アミノ酸置換)を行った。PCRの反応液50μlにDpnIを1μl添加し、37度で1時間インキュベートした。この処理によって、鋳型DNAを消化し、変異の入ったプラスミドのみを得た。DpnI処理後のPCR反応液で、実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行った。生育したコロニーより組換えベクターを回収した。植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子にH103L変異が導入されているものをpUMESD−H103Lと命名した。
実施例8で得られたpUMESDsy−H103Lのヒドロキシニトリルリアーゼ活性と上記pUMESD−H103Lのヒドロキシニトリルリアーゼ活性(合成活性)を比較した。ヒドロキシニトリルリアーゼ合成活性の測定は実施例8の方法に準じて行った。培養は、培養開始と同時に最終濃度で0.1mMになるようにIPTGを添加し、37℃で12時間行い、菌体を回収した。
大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを有するプラスミドpUMESDsy、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼを有するプラスミドpUMESD、並びにこれらの2つのプラスミドを鋳型としてH103L置換をして得られたプラスミドpUMESDsy−H103LとpUMESD−H103Lの4検体におけるヒドロキシニトリルリアーゼ合成活性(U/ml)を表12に示す。その結果、大腸菌コドンの場合と同様に、植物コドンのヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のH103L置換体(pUMESD−H103L)では、酵素活性の上昇(表12)と可溶性画分の収率増加(図5)が認められた。
Figure 0004956193
大腸菌コドンおよび植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子のH103残基への全アミノ酸置換
(1)H103残基置換体の作製
第103番目のアミノ酸残基を20必須アミノ酸に変異させるランダムプライマーを大腸菌コドンおよび植物コドンの両野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子において設計し、変異体を作製した。PCRの反応条件を表13に示す。
Figure 0004956193
上記プライマー(5’−primer)の配列は以下のとおりである。
H103−20aa−F:ggcgggcgtttttnnsaacagcctgctgcc (配列番号88、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子増幅用)
ME−H103−20aa−F:gcagctggtgttttcnnsaattccttattgccagacaccg (配列番号89、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子増幅用)
上記プライマー(3’−primer)の配列は以下のとおりである。
H103−20aa−R:ggcagcaggctgttsnnaaaaacgcccgcc (配列番号90、大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子増幅用)
ME−H103−20aa−R:cggtgtctggcaataaggaattsnngaaaacaccagctgc (配列番号91、植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子増幅用)
上記プライマー配列中、nはa,t,gまたはcである。
PCRの反応条件は以下のとおりである(表14)。
Figure 0004956193
実施例9と同様の方法により、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いた部位特異的変異導入により、H103残基における20アミノ酸置換体の構築を次のように行った。pUMESDsyとpUMESDのH103残基に20アミノ酸置換を導入するために、プライマー(上記のH103−20aa−FとH103−20aa−Rの組合せ、およびME−H103−20aa−FとME−H103−20aa−Rの組合せ)を使用してPCRによる部位特異的変異(1アミノ酸置換)を行った。PCRの反応液50μlにDpnIを1μl添加し、37度で1時間インキュベートした。この処理によって、鋳型DNAを消化し、変異の入ったプラスミドのみを得た。DpnI処理後のPCR反応液で、大腸菌JM109をトランスフォーメーションした。コロニーを0.8mL 96−well滅菌プレート(Abgene社)にランダムに植菌し、IPTG誘導を行い、実施例8(2−1)に記載の方法に従って酵素液を調製した。続いて、実施例8(2−2)と同様、マイクロプレートリーダーにより、分解活性を測定した。96−well plateを用いた活性測定を行う際には、コントロールとして、鋳型であるpUMESDsyおよびpUMESDと、高活性変異体であるpUMESDsy−H103LおよびpUMESD−H103Lを用いた。解析にはLS−PLATEmanager2001(Win)(和光純薬工業社)を用いた。得られたコロニーからプラスミドを抽出精製後、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ABI社)を用いたDNAシーケンス解析により配列を確認した。
(2)結果
上述したランダムプライマーを用いた部位特異的変異によって、pUMESDsyとpUMESDのH103残基にランダムにアミノ酸置換を導入した。DNAシーケンス解析によってH103残基が20アミノ酸に置換した計40種類の変異体を取得することができた。各アミノ酸置換体における103残基のコドンを表15に示す。
Figure 0004956193
得られた変異体の形質転換体である、大腸菌JM109/pUMESDsy−H103−20aaおよび大腸菌JM109/pUMESD−H103−20aa(「−20aa」にはアミノ酸の一文字表記が入り、H103置換後のアミノ酸を表す。例えば、ロイシン置換体であれば、JM109/pUMESD−H103Lである。)をLB+Amp(80μg/ml)培地で37℃で培養し、培養開始と同時に最終濃度0.1mMのIPTGを添加した。37℃で12時間培養し、ヒドロキシニトリルリアーゼを大量発現させた。12時間後、培養液を2.4mlずつ集菌し、生理食塩水で洗浄した後、800μlの10mM KPB(pH7.0)に懸濁し、菌体反応により合成活性測定を行った。大腸菌コドンの結果を図6(A)に、植物コドンの結果を図6(B)にそれぞれ示す。H103Lのほか、H103A、H103V、H103I、H103M、H103S、H103T、H103C、H103W、H103Qにおいて野生型よりも高い活性が確認された。両コドンでの結果がほぼ一致していることから、H103変異の効果はコドンの種類によらないものであることが確認された。
第2番目と第103番目のアミノ酸が置換された複合改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現形質転換体の作製
実施例2(2)で作製したpOXN103、および実施例5(1)で作製したpOXN103V2Iをもとに、さらに103番目のアミノ酸であるヒスチジン(His;H)がロイシン(Leu;L)に置換された変異体を実施例9と同様の方法により、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて作製した。変異導入用プライマーには実施例9で用いたOXYN−30(配列番号86)およびOXYN−31(配列番号87)を用いた。
当該キットのプロトコールに従い、PCR反応およびDpnI処理後、大腸菌JM109株の形質転換を行い、生育コロニーよりプラスミドDNAを回収した。第103番目のアミノ酸がロイシンに置換されたヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子を含む発現ベクターを、pOXN103H103L(pOXN103にH103L変異導入)およびpOXN103V2I+H103L(pOXN103V2IにH103L変異導入)と命名した。
第2番目および第103番目のアミノ酸が置換された複合改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現組換え体の評価
(1)実験方法
(1−1)使用プラスミドおよび使用菌株
実施例2(2)で得られたpOXN103(植物コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター)、実施例5(1)で得られたpOXN103V2I(植物コドンV2Iヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター)、実施例11で得られたpOXN103H103L(植物コドンH103Lヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター)およびpOXN103V2I+H103L(植物コドンV2I+H103Lヒドロキシニトリルリアーゼ発現ベクター)により、実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109およびC600株の形質転換を行い、それぞれJM109/pOXN103、JM109/pOXN103V2I、JM109/pOXN103H103L、JM109/pOXN103V2I+H103L、C600/pOXN103V2IおよびC600/pOXN103V2I+H103Lを得た。
(1−2)培養条件
(1−2−1)フラスコ培養評価
形質転換体JM109/pOXN103、JM109/pOXN103V2I、JM109/pOXN103H103L、JM109/pOXN103V2I+H103LのコロニーをLBAmp培地(IPTG0または1mM含有)100ml(500mlフラスコ)で、30℃または37℃で振盪(210rpm)することにより、フラスコ培養を行った。
(1−2−2)ジャー培養評価
形質転換体C600/pOXN103V2I、C600/pOXN103V2I+H103Lのコロニーを、以下に示す培地(500ml容三角フラスコ中の100ml)で30℃で12時間前培養を行った。
前培養培地組成(pH7.2):
ポリペプトンN(20g/L)、酵母エキス(5g/L)、KHPO(1.5g/L)、アンピシリン(0.1g/L)
回転数は210rpmで行った。
得られた前培養液20mlを以下に示す本培養培地(3Lジャーファーメンター中の2L)に植菌し、37℃または25℃で20〜52時間本培養を行った。
本培養培地組成
ポリペプトンN 20g/L
酵母エキス 5g/L
KHPO 1.5g/L
MgSO・7HO 0.5g/L
MnSO・5HO 0.2g/L
ZnSO・7HO 0.02g/L
CaCl・2HO 0.02g/L
プルロニック L−61 0.5g/L
フルクトース 40g/L
アンピシリン 0.1g/L
回転数は750rpm、空気流量は2L/min、内圧は常圧、pHは6.8−7.2制御(3N NaOHと5N HSO使用)で行った。培養の途中、適時サンプリングを行い、菌濃度(OD630)の測定、およびヒドロキシニトリルリアーゼ分解活性測定を行った。
(1−3)サンプル調製
分解活性測定は以下のように行った。サンプリングした培養液から遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により菌体を回収し、得られた菌体を10mMリン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)またはリン酸緩衝液(pH7)で洗浄した後、10mlの同緩衝液に懸濁した。得られた菌体懸濁液の1mlを、超音波破砕機VP−15S(タイテック、日本)を用いて、出力コントロール4、DUTY CYCLE 40%、PULS、TIMER=Bモード10sの条件で氷冷しながら3分間破砕した。破砕した菌体懸濁液を細胞抽出液全画分として採取した。破砕液を遠心分離(10,000×g、5分間、4℃)し、得られた上清を細胞抽出液可溶性画分として採取した。沈殿物を、上清と等量のリン酸緩衝液(pH7)に懸濁し、細胞抽出液不溶性画分とした。
(1−4)活性測定
得られた細胞抽出液可溶性画分を用い、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を測定した。すなわち、基質であるラセミマンデロニトリルの分解活性(=ベンズアルデヒドの生成)を光学的に検出(波長280nm)して追跡することで活性を算出した。
酵素溶液50μlを、50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)900μlと混合し、基質溶液100μl(毎回新たに調製される37.5mMラセミマンデロニトリル/10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.5))を添加して活性測定を開始した。280nmでの吸光の増加(対照として酵素非含有基質溶液で測定)を5分間追跡した。1Uは上記条件下でラセミマンデロニトリルから1分間あたりベンズアルデヒド1μmolの変換を触媒する酵素量に相当する。
(1−5)SDS−PAGE
SDS−PAGEは、10%ポリアクリルアミドゲル(AA:Bis=38:2)、Tris−Glycin泳動用緩衝液を用いて行った。
(2)2番目および103番目のアミノ酸変異体導入組換え体のフラスコ培養評価
上記(1−1)で得られたJM109/pOXN103、JM109/pOXN103V2I、JM109/pOXN103H103L、JM109/pOXN103V2I+H103Lについて、30℃および37℃でフラスコ培養を行った。培養は、1mM(終濃度)のIPTGを添加した100mlのLB Amp培地(アンピシリン100mg/Lを含有するLB培地)を用い、回転数210rpmで行った。細胞抽出液各画分をOD12.5にあわせてSDS−PAGEで分析し、可溶性画分の分解活性測定を行った。結果を図7に示す。野生型(pOXN103)にH103L変異のみを導入した場合(pOXN103 H103L)、30℃での総タンパク質あたりの比活性は大きく変わらなかったが、37℃では約4倍に向上した(図7;1.15→4.12U/mg protein)。可溶性酵素割合の増加と同時に、発現量自体の向上も寄与していることが確認された。
さらに、103番目のアミノ酸変異H103Lと2番目のアミノ酸変異V2I(pOXN103V2I)とを組み合わせると(pOXN103V2I+H103L)、30℃での比活性は約2倍に(図7;4.18→8.17U/mg protein)、37℃では約10倍に比活性が向上した(図7;1.55→14.4U/mg protein)。
(3)2番目および103番目のアミノ酸変異体導入組換え体のジャー培養評価
pOXN103V2IおよびpOXN103V2I+H103Lによる大腸菌C600株形質転換体を用いて、3Lジャーファーメンターによる培養を行った。
培養結果を図8に示す。C600/pOXN103V2Iを37℃で培養すると、活性(比活性、液活性)をほとんど発現しないが、C600/pOXN103V2I+H103Lはその約10倍の活性(比活性、液活性)を示した。ここで、比活性(U/mgDC)は、菌体懸濁液1mlあたりの分解活性を測定し、菌体懸濁液の菌濃度OD630から算出(係数を0.4とした)した乾燥菌体mg重量濃度(mgDC/ml)で除することで算出した。さらに、培養液あたりの液活性(U/ml)は、比活性(U/mgDC)と培養液の菌濃度(mgDC/ml;菌濃度OD630から係数を0.4として算出)とを乗することにより求めた。C600/pOXN103V2Iを25℃で50時間以上培養した後に到達する活性(比活性、液活性)に、C600/pOXN103V2I+H103Lでは半分以下の培養20時間(37℃)で達成した。
また、フラスコレベルでの結果以上に、C600/pOXN103V2I+H103Lでは可溶性画分の割合が増加していることが認められた(図8;SDS−PAGE)。
本実施例から、第103番目のアミノ酸変異(H103L)を植物コドンヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子に導入した結果、大腸菌コドンの場合と同様、37℃培養における活性向上が確認された。そして、植物コドンV2I+H103L形質転換体について、3Lジャーファーメンターを用いて37℃にて培養を行ったところ、コントロール(植物コドンV2I)37℃培養の10倍以上の活性が得られ、第2番目のアミノ酸変異と第103番目のアミノ酸変異とを組み合わせることにより相乗的な活性向上効果をもたらすことが確認された。
H103残基におけるコドンの影響
同じアミノ酸をコードしているコドンの中には、高発現遺伝子で最も使用頻度の高いコドンと全ての遺伝子で最も使用頻度の高いコドンとがある。高発現遺伝子は、例えば、多くの大腸菌において発現量の高い遺伝子をいう。実施例4において作製したpUMESDsyは後者のコドンを用いて合成したものである。そこで、H103残基のコドンが、Hisに対応する2種類のコドン(catとcac)のそれぞれの株を取得し、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性と発現量を調べた。
(1)置換体の作製
第103番目HisをコードするコドンにおけるランダムプライマーをpUMESDsy上に設計し、変異体を作製した。PCRの反応条件を表16に示す。
Figure 0004956193
上記プライマー(5’−primer)の配列は以下のとおりである。
H103−20aa−F:ggcgggcgtttttnnsaacagcctgctgcc (配列番号88)
上記プライマー(3’−primer)の配列は以下のとおりである。
H103−20aa−R:ggcagcaggctgttsnnaaaaacgcccgcc (配列番号90)
両プライマー配列中、nは(a,t,gまたはc)、sは(gまたはc)である。
PCRの反応条件は以下のとおりである(表17)。
Figure 0004956193
上記反応条件により、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて部位特異的変異を導入した。PCR反応液にDpnIを1μl添加し、37℃で1時間処理した。DpnI処理後のPCR反応液で、大腸菌JM109をトランスフォーメーションした。コロニーからプラスミドを抽出し、精製した後、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ABI社)を用いたDNAシーケンス解析を行い、pUMESDsyのH103のコドンがcatのものとcacのものを取得した。滅菌試験管に3mlのLB+Amp(80μg/ml)を入れ、JM109/pUMESDsy(H103cac)とJM109/pUMESDsy(H103cat)のコロニーをそれぞれ懸濁し、37度で終夜振とう培養した(前培養)。続いて、滅菌試験管にLB+Amp(80μg/ml)+IPTG(0.1mM)を入れ、各前培養液を1%シードし、37℃で終夜振とう培養した(本培養)。12時間後、1.5mlの培養液を遠心分離(8,000rpm、10分、4℃、himac CF15D、日立社)により集菌し、得られた菌体を0.85%NaClで洗浄した。得られた菌体を500μlの10mM KPB(pH7.0)に懸濁し、菌体反応を行い、CHIRALCEL OJ−Hカラム(ダイセル化学社製)を用いたHPLC分析により活性を測定した。また、得られた菌体の一部を超音波破砕後、遠心分離(8,000rpm、10分、4℃、himac CF15D、日立社)した上清を可溶性画分として得た。さらに、この沈殿に8M Urea(in 10mM KPB(pH7.0))を菌体破砕した酵素液の10分の1量添加し、懸濁した後、遠心分離(7,000rpm、10分、4℃、himac CF15D、日立社)により得られた上清を不溶性画分として得た。可溶性画分を用いて活性測定を行い、可溶性および不溶性両画分を用いてタンパク質定量とSDS−PAGEを行った。
(2)異なるコドンによる影響
pUMESDsyのH103残基の塩基において、Hisに対応した二つのコドン(catとcac)に変換した。JM109/pUMESDsy−H103(cat)とJM109/pUMESDsy−H103(cac)とをLB+Amp(80μg/ml)で37℃で培養して、培養開始と同時に最終濃度0.1mMのIPTGを添加した。37℃で12時間培養し、ヒドロキシニトリルリアーゼを大量発現させた。12時間後、培養液を1.5mlずつ集菌し、生理食塩水で洗浄後、500μlの10mM KPB(pH7.0)に懸濁し、超音波による菌体破砕を行った。破砕液を低速遠心分離し、得られた上清を可溶性画分(soluble)として、活性測定とタンパク質定量に使用した。沈殿を8M Ureaに溶解後、低速遠心分離で得られた上清を不溶性画分(insoluble)としてタンパク質定量に使用した。定量した値から、それぞれ10μgのタンパク質をSDS−PAGEに用いた。
結果を表18と図9に示す。
Figure 0004956193
大腸菌高発現遺伝子で使用頻度の高いコドン(cac)と、大腸菌全ての遺伝子で使用頻度の高いコドン(cat)とをH103に用いた株において、その活性(表18)および発現量(図9)に顕著な差は認められなかった。従って、当該二つのコドン間においては活性と発現量に対して影響はほとんど無いと考えられた。
H103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの精製と諸性質の確認
(1)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼおよびH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの精製
実施例2の(1)で得られたJM109/pUMESDおよび実施例10の(2)で得られたJM109/pUMESD−H103Mを培養し、それぞれの菌体より野生型ヒドロキシニトリルリアーゼおよびH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの精製を行った。
(1−1)培養と集菌
滅菌試験管に3mlのLB+Amp(80μg/ml)を入れ、JM109/pUMESDおよびJM109/pUMESD−H103Mのコロニーを懸濁し、37度で終夜振とう培養した(前培養)。
得られた各前培養液を以下に示す培地に1%シードした。
培地組成
ペプトン 10g/L
酵母エキス 5g/L
NaCl 10g/L
アンピシリン 80mg/L
IPTG 0.1mM(終濃度)
ここで、培地液量は、JM109/pUMESDは計10L、JM109/pUMESD−H103Mは計2Lとした。37℃で12時間培養後(本培養)、培養液を遠心分離(6,000rpm、10min、4℃)により集菌した。得られた菌体は、0.7%NaClで懸濁洗浄後、再度遠心分離により集菌した。この洗浄操作を計2回行った後、菌体を、菌体湿重量の5倍量のsonication buffer(50mM sodium phosphate/citrate buffer(pH5.4)、1mM EDTA)に懸濁し、これを菌体懸濁液とした。
(1−2)菌体破砕
超音波破砕機(Insonator model 201M(9kHz、久保田商事))を用いて、菌体懸濁液の超音波破砕をおこなった。破砕時間は20min行い、破砕後は、遠心分離(15,000rpm、10min、4℃)により上清と沈殿に分離した。得られた沈殿をsonication bufferに懸濁し、再度超音波破砕を行った。再度、遠心分離(15,000rpm、10min、4℃)を行い、その上清(細胞抽出液)を得た。
(1−3)熱処理
(1−2)で得られた細胞抽出液を三角フラスコに移し、ウォーターバスを用いて、60℃、10minの熱処理に供した。熱処理後、氷水にて急冷し、遠心分離(12,000rpm、10min、4℃)により変性タンパクを除去し、粗酵素液を得た。
(1−4)硫安分画
(1−3)で得られた粗酵素液を45%硫安飽和させ、30min攪拌した。遠心分離(15,000rpm、20min、4℃)により得られた沈殿を0−45%画分とし、10mM KPB(pH7.0)に溶解した。続いて、上清を65%硫安飽和させ、30min攪拌した後、遠心分離(15,000rpm、20min、4℃)により得られた沈殿を45−65%画分とし、10mM KPB(pH7.0)に溶解した。さらに、上清を90%硫安飽和させ、30min攪拌した後、遠心分離(15,000rpm、20min、4℃)により得られた沈殿を65−90%画分とし、10mM KPB(pH7.0)に溶解した。溶解した各画分のタンパク液を10mM KPB(pH7.0)により透析した後、それぞれの画分の活性測定とタンパク定量を行った。活性測定は実施例8の(2−3)と同様に行い、タンパク定量はバイオラッドプロテインアッセイ(バイオラッド)を用い、添付プロトコールに従って行った。
(1−5)DEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
DEAE−Toyopearl resinをカラムに充填し、洗浄後、10mM KPB(pH7.0)で平衡化し、(1−4)で得られた透析後の酵素溶液をアプライした。10mM KPB(pH7.0)で洗浄後、直線的な濃度勾配の0〜0.5M NaCl in 10mM KPB(pH7.0)により溶出した。溶出後の活性画分を集め、10mM KPB(pH7.0)で透析後、次ステップに用いた。
(1−6)Butyl−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
(1−5)で得られた活性画分を30%硫安飽和にした後、予め30%硫安飽和10mM KPB(pH7.0)で平衡化しておいたButyl−Toyopearlカラムにアプライした。30%硫安飽和10mM KPB(pH7.p)で洗浄後、直線的な濃度勾配の30〜0%硫安飽和10mM KPB(pH7.0)で溶出した。溶出後の活性画分を集め、10mM KPB(pH7.0)で透析後、次ステップに用いた。
(1−7)Superdex 200 HR 10/30カラムクロマトグラフィー
Superdex 200 HR 10/30カラムを、脱気したmilliQ水で洗浄した後、0.2M NaCl in 10mM KPB(pH7.0)で平衡化し、(1−6)で得られた透析後の酵素溶液をアプライした。0.2M NaCl in 10mM KPB(pH7.0)で溶出を行い、溶出した活性画分を集め、10mM KPB(pH7.0)で透析後、次ステップに用いた。
(1−8)MonoQ HR 10/30
MonoQ HR 10/30を、脱気したmilliQ水で洗浄した後、1M NaCl in 10mM KPB(pH7.0)で平衡化し、10mM KPB(pH7.0)で洗浄した後、(1−7)で得られた透析後の酵素溶液をアプライした。直線的な濃度勾配の0〜1M NaCl in 10mM KPB(pH7.0)で溶出を行い、溶出した活性画分を集め、10mM KPB(pH7.0)で透析した。
(1−9)精製結果
H103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの精製結果を表19に示す。上記ステップにより最終的に9倍以上の純度にH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを精製することができた。
Figure 0004956193
精製した野生型ヒドロキシニトリルリアーゼおよびH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼのSDS−PAGE分析を行った。後述するように、両酵素についてタンパク質あたりの比活性を求め、1レーンあたり0.3Uをアプライし、SDS−PAGEを行った。結果を図10に示す。両酵素とも単一バンドにまで精製されていることが確認された。また、H103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼのバンドが野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのそれよりも薄く観察されたことから、H103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼに比して、酵素タンパク質あたりの比活性が向上していることが示唆された。実際に、両酵素の酵素タンパク質あたりの比活性を求めた結果、表20に示すように、H103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、酵素タンパク質あたりの比活性が、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼの約1.5倍にまで向上していることが確認された。
Figure 0004956193
(2)反応系におけるキレート剤および金属添加の活性への影響
実施例14の(1)で得られた野生型ヒドロキシニトリルリアーゼおよびH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ精製酵素を用い、マンデロニトリル合成反応系中に、終濃度1mMまたは10mMのキレート剤(EDTA)および各種金属(CoCl、NiSO、MgCl、CaCl、NaCl、KCl、LiCl)を添加し、合成活性への影響を調べた。表21に示す反応液組成によりマンデロニトリル合成反応を行い、実施例8の(2−3)と同様に活性測定を行った。
Figure 0004956193
結果を表22に示す。表22は、いずれの添加物も添加していない反応系での活性を100%とした際の相対活性を示し、各添加物の欄において、上段は1mM添加時、下段は10mM添加時の相対活性を示す。EDTAおよびNiSOを1mM添加した場合、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼおよびH103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼとも大きな活性低下は見られず、両酵素間での差も少なかった。一方、それ以外の金属(CoCl、MgCl、CaCl、NaCl、KCl、LiCl))を添加した場合、特に反応液中に10mM添加した場合に、比較的大きな活性低下が見られた。その活性低下率は金属によって異なったが、ここで、H103M改良型ヒドロキシニトリルリアーゼは、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼよりも活性低下率が低いことが確認された。すなわち、H103M変異により金属に対する影響を受け難くなっていることが確認された。
Figure 0004956193
リジン残基単置換変異を有する改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの作製と評価
(1)リジン残基への部位特異単置換変異導入
実施例4で作製した大腸菌コドン野生型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む発現ベクターpUMESDsyを鋳型として用い、第176番目、第199番目または第224番目のリジン残基がそれぞれ他のアミノ酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする大腸菌コドン改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を部位特異的変異導入により作製した。この部位特異的変異導入はQuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)を用い、第176番目、第199番目または第224番目のアミノ酸がランダムに変異するような変異導入プライマーを用いて行った。
PCRの反応条件を表23に示す。
Figure 0004956193
上記プライマーのうち5’−primerの配列は以下のとおりである。
第176番目変異体の場合
K176−F:ctggcgaaaatggtgatgcgcnnsggcagcctgtttcagaacgtgc (配列番号92)
第199番目変異体の場合
K199−F:cgaaaaaggctatggcagcattnnsaaagtgtatatttggaccgatcagg (配列番号98)
第224番目変異体の場合
K224−F:gcgctggcagattgcgaactatnnnccggataaagtgtatcagg (配列番号94)
上記プライマーのうち3’−primerの配列は以下のとおりである。
第176番目変異体の場合
K176−R:gcacgttctgaaacaggctgccsnngcgcatcaccattttcgccag (配列番号95)
第199番目変異体の場合
K199−R:cctgatcggtccaaatatacactttsnnaatgctgccatagccttttt (配列番号96)
第224番目変異体の場合
K224−R:cctgatacactttatccggnnnatagttcgcaatctgccagcgc (配列番号97)
上記プライマー配列中、nは(a,t,gまたはc)、sは(gまたはc)である。
PCRの反応条件は以下のとおりである(表24)。
Figure 0004956193
PCRの反応液50μlにDpnIを1μl添加し、37度で1時間インキュベートした。この処理によって、鋳型DNAを消化し、変異の入ったプラスミドのみを得た。DpnI処理後のPCR反応液で、実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行った。変異体コロニーのマスタープレートを作製し、以下の活性上昇スクリーニング実験に用いた。
(2)変異体のスクリーニング
(1)で得られた変異体の中から、活性上昇しなものをスクリーニングした。
(2−1)一次スクリーニング
96−wellプレートを用いてサンプルを調製した。0.8ml 96−well滅菌プレート(Abgene社)にLB(80μg/ml Ampおよび0.1mM IPTG含有)を150μlずつ分注し、変異体コロニーをマスタープレートから植菌した。このプレートをBioShaker(M−BR−024、TAITEC社)を用いて37℃、1,200rpmで12時間振とう培養した。培養後、培養液を遠心分離し(5,000rpm、10分、4℃、himac CR20、ローターR6S、日立社)、集菌した。上清を除き、新聞紙上で逆さにして培地をできる限り除去した後、得られた菌体を100μlの0.85%NaClにBioShakerを用いて懸濁した後、懸濁液を96−well U底プレート(Corning社)に移した。続いて、遠心分離(4,500rpm、10分、4℃、himac CR20、ローターR6S、日立社)により集菌し、上清を除き、新聞紙上で逆さにして水分を除去した。得られた菌体にLysozyme溶液(10mg/ml Lysozyme(卵白由来、生化学工業)、100mM KPB(pH7.0)、10mM EDTA)を添加し、TUPLE MIXER(スピード7、IWAKI社)で懸濁した。37℃で1時間のインキュベートによりLysozyme処理を行い、大腸菌をプロトプラスト化させた。得られた大腸菌に−40℃および37℃で凍結融解処理を施し、100μlの低張液(10mM KPB(pH7.0)、5mM MgCl)を添加して溶菌させた。この溶液を遠心分離(4,500rpm、10分、4℃、himac CR20、ローターR6S、日立社)により、大腸菌のゲノムと細胞壁等を沈殿させ、上清を得て粗酵素液として以下の活性測定に用いた。
ヒドロキシニトリルリアーゼの基質であるマンデロニトリルの分解活性をベンズアルデヒドの生成量によって測定した。反応組成を表25に示す。
Figure 0004956193
活性測定の方法は、96−well UVプレート(greiner bio−one社)にNa−citrate bufferを添加し、25℃にした。次に粗酵素液を添加し、ピペッティングにより懸濁した。次にracemic mandelonitrileを添加し、ピペッティングおよび振とうした後、マイクロプレートリーダー(GENios、テカン・ジャパン社)を用いて、波長280nmにおける吸光値の増加を25℃で10分間測定した。解析にはLS−PLATEmanager 2001(Win)(和光純薬工業社)を用いた。ポジティブコントロールpUMESDsy、ネガティブコントロールとしてpUC19を用いてスクリーニングを行った。第176番目変異体、第199番目変異体および第224番目変異体それぞれについて、それぞれ188検体よりポジティブコントロールよりも高活性を示す検体をK176番目変異体は12検体、K199番目変異体は2検体、K224番目変異体は11検体選出した。
(2−2)二次スクリーニング、
滅菌試験管に3mlのLB+Amp(80μg/ml)を入れ、一次スクリーニングにおいてポジティブコントロールよりも高活性を示した、12検体のK176番目変異体、2検体のK199番目変異体、11検体のK224番目変異体、ポジティブコントロールpUMESDsyおよびネガティブコントロールpUC19を植菌し、37度で終夜振とう培養した(前培養)。12時間後、1.5mlの培養液を遠心分離(8,000rpm、10分、4℃、himac CF15D、日立社)により集菌し、得られた菌体を0.85%NaClで洗浄した。500μlの10mM KPB(pH7.0)に懸濁し、菌体を破砕後、遠心分離(8,000rpm、10分、4℃、himac CF15D、日立社)した上清を可溶性画分として得た。得られた可溶性画分を用いて活性測定を行った。活性測定は、ベンズアルデヒドからの(S)−マンデロニトリルの生成をchiral−columnを用いたHPLCにより分析し、合成活性を測定した。反応の標準アッセイ溶液は、最終容量0.9ml中に300mMクエン酸緩衝液(pH4.0)、50mMベンズアルデヒドおよび100mMシアン化物溶液を含有する。100μlの酵素溶液を添加することによって反応を直ちに開始し、25℃で120分間インキュベートした。900μlの有機溶媒(ヘキサン:イソプロパノール=9:1)を添加して反応を停止させ、遠心(15,000×g、10分)により得た上清をHPLCによりアッセイした。各成分の量はCHIRALCEL OJ−Hカラム(ダイセル化学社製)を用いてヘキサン:イソプロパノール=90:10を移動相として流量1.0ml/分で流し254nmで測定し、それらの標準曲線を用いて算出した。標準的アッセイ条件下でベンズアルデヒドから、1分あたり1μmolのS−マンデロニトリルを生成する酵素の量を酵素活性の1単位を定義した。第176番目変異体、第199番目変異体および第224番目変異体それぞれについて、ポジティブコントロールよりも高活性を示す検体が確認された。これら高活性検体の可溶性画分を用いてタンパク質定量とSDS−PAGE(各サンプルタンパク質10μg)を行った。
(2−3)スクリーニング結果
活性測定の結果、第176番目変異体、第199番目変異体および第224番目変異体いずれにおいても、ポジティブコントロールよりも著しく高活性な検体が確認された。それら検体から組換えベクターを調製し、実施例1(4)と同様の方法により塩基配列を調べた結果、第176番目変異体では野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいてリジンをコードするコドンaaaがcccとなってプロリンをコードしていた(K176P)。同様に、第199番目変異体では野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいてリジンをコードするコドンaaaがcccとなってプロリンをコードしており(K199P)、第224番目変異体では野生型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいてリジンをコードするコドンaaaがcctとなってプロリンをコードしていた(K224P)。
K176P、K199PおよびK224Pの単置換変異体の可溶性画分タンパク質あたりの活性を表26に示す。K176PはポジティブコントロールpUMESDsyの2.9倍、K199PはポジティブコントロールpUMESDsyの2.3倍、K224PはポジティブコントロールpUMESDsyの3.3倍の活性を示した。また、SDS−PAGE解析の結果(図11)、K176P、K199PおよびK224Pいずれの単置換変異体も、可溶性画分中のヒドロキシニトリルリアーゼの量が増大していることが確認された。以上の結果から、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、リジン残基を他のアミノ酸、特にプロリンに置換することで、ヒドロキシニトリルリアーゼ発現量および活性を向上させることができることが確認された。
Figure 0004956193
リジン残基多重置換変異を有する改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの作製と評価
(1)リジン残基多重置換変異体の作製
実施例15で得られたリジン残基単置換変異体を元に、2箇所または3箇所のリジン残基が置換された多重置換変異体をコードする大腸菌コドン改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を作製した。まず、K224P変異体を含む発現ベクターpUMESDsy−K224Pを鋳型として用い、部位特異的変異導入により、第176番目と第224番目の2箇所のリジン残基がプロリンに置換された二重変異体(K176P×K224P)、および第199番目と第224番目の2箇所のリジン残基がプロリンに置換された二重変異体(K199P×K224P)を作製した。さらに、得られた二重変異体K176P×K224P変異体を含む発現ベクターpUMESDsy−K176P×K224Pを鋳型として用い、第176番目、第199番目および第224番目の3箇所のリジン残基すべてがプロリンに置換された三重変異体(K176P×K199×K224P)を作製した。実施例15の(1)と同様、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)を用いて行った。
PCRの反応条件を表27に示す。
Figure 0004956193
上記鋳型DNAは、K176P×K224P変異体作製およびK199P×K224P変異体作製の場合はpUMESDsy−K224Pであり、K176P×K199P×K224P変異体作製の場合はpUMESDsy−K176P×K224Pである。
上記プライマーのうち5’−primerの配列は以下のとおりである。
K176P×K224P変異体作製の場合
K176P−F:ctggcgaaaatggtgatgcgcccnggcagcctgtttcagaacgtgc (配列番号98)
K199P×K224P変異体およびK176P×K199P×K224P変異体作製の場合
K199P−F:cgaaaaaggctatggcagcattccnaaagtgtatatttggaccgatcagg (配列番号99)
上記プライマーのうち3’−primerの配列は以下のとおりである。
K176P×K224P変異体作製の場合
K176P−R:gcacgttctgaaacaggctgccngggcgcatcaccattttcgccag (配列番号100)
K199P×K224P変異体およびK176P×K199P×K224P変異体作製の場合
K199P−R:cctgatcggtccaaatatacactttnggaatgctgccatagccttttt (配列番号101)
上記プライマー配列中、nは(a,t,gまたはc)である。プロリンのコドンはcct,ccc,ccaまたはccgであり、上記変異導入プライマーでは、目的の変異箇所が必ずプロリンコドンのいずれかとなるよう設計した(5’−primerの場合はccn、3’−primerの場合はngg)。
PCRの反応条件は実施例15の(1)と同様である。
PCRの反応液50μlにDpnIを1μl添加し、37度で1時間インキュベートした。この処理によって、鋳型DNAを消化し、変異の入ったプラスミドのみを得た。DpnI処理後のPCR反応液で、実施例1(4)と同様の操作により、大腸菌JM109株の形質転換を行った。得られた形質転換体から組換えベクターを調製し、実施例1(3)と同様の方法により塩基配列の解析を行った結果、目的とする、第176番目と第224番目の2箇所のリジン残基がプロリンに置換された二重変異体(K176P×K224P)、第199番目と第224番目の2箇所のリジン残基がプロリンに置換された二重変異体(K199P×K224P)、第176番目、第199番目および第224番目の3箇所のリジン残基すべてがプロリンに置換された三重変異体(K176P×K199×K224P)が正しく作製されていることが確認された。
(2)リジン残基多重置換変異体の活性と発現量
実施例15(2−3)と同様の方法により、得られたリジン残基多重置換変異体(K176P×K224P、K199P×K224PおよびK176P×K199P×K224P)を培養し、可溶性画分を調製した後、活性測定、タンパク質定量およびSDS−PAGE(各サンプルタンパク質10μg)を行った。活性測定の結果を表26に示す。K176P×K224PはポジティブコントロールpUMESDsyの7.1倍、K199P×K224PはポジティブコントロールpUMESDsyの5.3倍、K176P×K199P×K224PはポジティブコントロールpUMESDsyの7.4倍の活性を示した。また、SDS−PAGE解析の結果(図11)、K176P×K224P、K199P×K224PおよびK176P×K199P×K224Pいずれの多重置換変異体も、上述の単置換変異体以上に可溶性画分中のヒドロキシニトリルリアーゼの量が増大していることが確認された。以上の結果から、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、複数のリジン残基を他のアミノ酸、特にプロリンに置換することで、細胞あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ発現量および活性を著しく向上させることができることが確認された。
第103番目のヒスチジン残基およびリジン残基が置換された複合改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの作製と評価
(1)第103番目のヒスチジン残基およびリジン残基が置換された複合変異体の作製
実施例15および16で得られたリジン残基単置換およびリジン残基多重置換変異体に、第103番目のヒスチジン残基がロイシンに置換されたH103L変異を導入した複合変異体の作製を行った。実施例15で得られたpUMESDsy−K176P、−K199P、−K224P(以上リジン1箇所置換)、および実施例16で得られた−K176P×K224P、−K199P×K224P(以上リジン2箇所置換)、K176P×K199P×K224P(リジン3箇所置換)を鋳型とし、実施例9と同様の方法により、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて作製した。変異導入用プライマーには実施例9で用いたOXYN−30(配列番号86)およびOXYN−31(配列番号87)を用いた。
当該キットのプロトコールに従い、PCR反応およびDpnI処理後、大腸菌JM109株の形質転換を行い、生育コロニーよりプラスミドDNAを回収した。1〜3箇所のリジン残基が置換されており、かつ、第103番目のアミノ酸がロイシンに置換されたヒドロキシニトリルリアーゼ、K176P+H103L、K199P+H103L、K224P+H103L(以上リジン1箇所置換+H103L変異)、K176P×K224P+H103L、K199P×K224P+H103L、(以上リジン2箇所置換+H103L変異)、K176P×K199P×K224P+H103Lを得た。
(2)第103番目のヒスチジン残基およびリジン残基が置換された複合変異体の評価
(1)で得られた形質転換体を3mlのLB培地で37℃で12hr培養し、培養開始と同時に最終濃度0.1mMのIPTGを添加した。12hr後、培養液を集菌し、生理食塩水で洗浄後、3分の1量の10mM KPB(pH7.0)に懸濁し、菌体反応により活性測定を行った。その値から培養液あたりの活性を算出した。結果を表28に示す。いずれの複合変異体も、野生型と比較して顕著な活性向上が確認された。
Figure 0004956193
改良型ヒドロキシニトリルリアーゼによるシアンヒドリンおよびヒドロキシカルボン酸の合成
(1)シアンヒドリンの合成
実施例12(3)で得られたC600/pOXN103V2Iジャー培養液40mlを遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)に供した後、上清35mlを除き、残った菌体と培養液を再懸濁した。得られた菌体懸濁液を、超音波破砕機VP−15S(タイテック、日本)を用いて、出力コントロール4、DUTY CYCLE 40%、PULS、TIMER=Bモード10sの条件で氷冷しながら3分間破砕を5回繰り返した。破砕液を再度遠心分離(10,000×g、5分間、4℃)し、得られた上清を改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ酵素溶液とした。実施例12(1−4)の方法により分解活性を算出したところ、該酵素溶液の活性は1171U/mlであった。酵素溶液3.7g(6450Uに相当)とt−ブチルメチルエーテル175.1gを混合し、反応系内を15−18℃に維持して充分攪拌しながら、HCN47.6gとベンズアルデヒド124.6gを約4時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、1時間、反応系内を15−18℃に維持して充分攪拌した。反応終了後、実施例8(2−3)と同様、HPLCにより反応溶液を分析した結果、マンデロニトリルの濃度は45重量%、その光学純度は98%eeのS体過剰であった。
(2)ヒドロキシカルボン酸の合成
30〜35℃で16時間攪拌しながら(1)で得られたマンデロニトリル溶液131gを35%塩酸147gに滴下した。この反応溶液はスラリーであった。16時間攪拌後の反応溶液をHPLCで分析したところ、マンデロニトリルは検出されず、マンデルアミドとマンデル酸が混在していた。16時間攪拌後の反応溶液の全量に、水320gを添加し、75℃で2時間攪拌し加水分解した。この反応溶液は均一であった。この反応溶液をHPLCで分析したところ、マンデロニトリル、およびマンデルアミドは検出されず、マンデル酸の濃度は21%、光学純度は98%eeのS体過剰であった。
本発明により、野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸を置換した改良型ヒドロキシニトリルリアーゼおよびその遺伝子が得られる。当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの遺伝子は、野生型の遺伝子に変異を導入したものだけでなく、宿主のコドン使用頻度に従い、使用頻度の高いコドンに変異させた宿主コドン型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子に変異を導入したものも含まれる。
さらに、本発明の遺伝子を宿主に形質導入して得られた形質転換体では、形質転換体あたりのヒドロキシニトリルリアーゼ活性を大幅に向上させることができるため、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを大量かつ効率良く製造することができる。さらには、効率よく光学活性シアンヒドリンおよび光学活性ヒドロキシカルボン酸を製造できる。
配列番号3〜101 合成DNA

Claims (10)

  1. 以下の(A)〜(G)から選択されるいずれかの改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
    (A)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、配列番号1または配列番号102に示されるアミノ酸配列の第2番目に該当するアミノ酸残基がリジン、アスパラギン、イソロイシン、アルギニン、およびグルタミンから選択されるいずれかのアミノ酸に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
    (B)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、配列番号1または配列番号102に示されるアミノ酸配列の第103番目に該当するヒスチジン残基がメチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニン、およびトリプトファンからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
    (C)野生型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、配列番号1に示されるアミノ酸配列では第176番目、第199番目、および第224番目に該当し、配列番号102に示されるアミノ酸配列では第175番目、第198番目および第223番目に該当する少なくとも1つのリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
    (D)上記(A)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼにおいて、さらに、第103番目に該当するヒスチジン残基がメチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、アラニン、およびトリプトファンからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
    (E)上記(A)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、さらに、配列番号1に示されるアミノ酸配列では第176番目、第199番目、および第224番目に該当し、配列番号102に示されるアミノ酸配列では第175番目、第198番目および第223番目に該当する少なくとも1つのリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
    (F)上記(B)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、さらに、配列番号1に示されるアミノ酸配列では第176番目、第199番目、および第224番目に該当し、配列番号102に示されるアミノ酸配列では第175番目、第198番目および第223番目に該当する少なくとも1つのリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
    (G)上記(D)の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、さらに、配列番号1に示されるアミノ酸配列では第176番目、第199番目、および第224番目に該当し、配列番号102に示されるアミノ酸配列では第175番目、第198番目および第223番目に該当する少なくとも1つのリジン残基がプロリンに置換された改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ
  2. 野生型ヒドロキシニトリルリアーゼがキャッサバまたはパラゴムノキ由来である請求項1記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  3. 請求項1または2に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする、改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子。
  4. 請求項3記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む組換えベクター。
  5. 請求項4記載の組換えベクターを宿主に導入してなる形質転換体。
  6. 請求項5記載の形質転換体を培養して得られる培養物。
  7. 請求項6記載の培養物から採取される改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  8. 請求項6記載の培養物から改良型ヒドロキシニトリルリアーゼを採取することを特徴とする改良型ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法。
  9. ケトン化合物またはアルデヒド化合物と、シアン化合物とを、請求項1、2、または7に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼで処理し、得られる処理物からシアンヒドリンを採取することを特徴とするシアンヒドリンの製造方法。
  10. ケトン化合物またはアルデヒド化合物と、シアン化合物とを、請求項1、2、または7に記載の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼで処理し、得られる処理物からシアンヒドリンを採取し、前記シアンヒドリンを加水分解することを特徴とするヒドロキシカルボン酸の製造方法。
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