以下、本発明に係る光ファイバ用工具の最良の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図1は光ファイバ用工具を後端側から見た斜視図、図2は光ファイバ用工具を先端側から見た斜視図、図3は光ファイバ用工具の上面図、図4はベース本体を先端側から見た斜視図、図5は可動ユニット本体を先端側から見た斜視図、図6は操作側部の上断面図、図7はファイバホルダの分解斜視図及び組付け図、図8はファイバホルダ各部位の後面図及びA−A断面矢視図、図9は操作側部と係止棒部との当接を示す模式図、図10は光ファイバが突き合わされる際の作動を示す光ファイバ用工具の模式図、図11は光コネクタの分解斜視図、図12は光コネクタの断面図、図13はクランプ部付きフェルールを示す斜視図、図14は各素子の合わせ面を示す図、図15は光コネクタの平面図、図16は介挿部材ユニット付き光コネクタの分解斜視図、図17は介挿部材の一部断面図、図18は介挿部材が介挿された光コネクタの正面断面図及び横断面図、図19は介挿部材の先端形状の他の態様を示す図、である。
図1における符号1は、本発明に係る光ファイバ用工具を示している。この光ファイバ用工具1は、主に作業現場において、光ファイバの先端同士を突き合わせて互いの光ファイバを接続する際に用いられる。なお、この先端同士が突き合わされる光ファイバは、例えば、石英系の光ファイバで構成されたものとなっており、好ましくは、シングルモード光ファイバで構成されたものとなっている。
この光ファイバ用工具1は、一端側が光コネクタ50を設置可能とされた光コネクタ設置部11を有し、且つ反対側とされる他端側にスライド部12を有するベース本体10と、この光コネクタ設置部11に対して接近離反するようにベース本体10上をスライド移動する可動ユニット20とを具備して大略構成されている。なお、この光コネクタ設置部11に設置される光コネクタ50には、後において詳述するが、素子の割れ目を拡大させる介挿部材ユニット80が、予め取り付けられたものとなっている。
また、この可動ユニット20は、後において詳述するが、前記光コネクタ設置部11に対して接近離反するようにベース本体10(図4参照)上をスライド移動可能にされた可動ユニット本体21(図5参照)と、光コネクタ50に挿入される別の光ファイバを把持して前記可動ユニット本体21内にベース本体10のスライド移動方向で可動に配置されるファイバホルダ31(図7参照)と、この可動ユニット本体21を光コネクタ設置部11に対して接近するように付勢する付勢スプリング(本発明における第1のスプリング部材に相当)45と、可動ユニット本体21内に配設されたファイバホルダ31を弾性的に支持する受けスプリング(本発明における第2のスプリング部材に相当)49とを具備して大略構成される。なお、以下の説明において共通するが、このベース本体10等の各部材のうち、光コネクタ設置部11が設けられる側の一端側を先端側(別の光ファイバを挿入させる方向側であって、図中F方向側)と称し、光コネクタ設置部11が設けられる側とは反対側の他端側を後端側(ファイバホルダ31を離反させる方向側であって、図中B方向側)と称するが、以下においては、これらの方向側を単に先端側及び後端側と称する。
まず、光コネクタ設置部11に設置される光コネクタ50について、図11〜図15を参照しながら説明する。この光コネクタ50は、介挿部材ユニット60が取り付けられたものとなっており、その介挿部材ユニット60の介挿部材61が素子に介挿されている。なお、以下において説明する介挿部材ユニット60付き光コネクタ50の構成は、この光ファイバ用工具1に設置される介挿部材ユニット60付き光コネクタ50の一例に過ぎず、この例に限定されることなく、適宜に変更された構成であっても本発明の趣旨を逸脱することはない。また、光コネクタ50の素子に介挿される介挿部材ユニット60にあっても、同様に、適宜に変更された構成を採用することができる。また、介挿部材ユニット及び光コネクタを適宜に変更して構成した場合には、その設置される箇所となる光コネクタ設置部11も、これらの変更に対応して適宜に設計変更されることとなる。
図11〜図15に示す光コネクタ50は、所謂SC(Single fiber Coupling)2型光コネクタである。この光コネクタ50には、光ファイバ58が予め内装固定されている。この予め内装固定されている光ファイバは、本発明における内部光ファイバに相当し、以下において、フェルール側光ファイバ58と称する場合もある。また、このフェルール側光ファイバ(内部光ファイバ)58に対して、先端を突き合わさせて接続する別の光ファイバについては、以下においては、単に光ファイバ5と称する場合もある。
この光コネクタ50は、図11の分解斜視図、図12の断面図に示すように、その先端側に配置されたフェルール51と、このフェルール51の接合先端面51aに対向する後端側に配置されたクランプ部52と、フェルール51を収納するようにしてその外側にフェルール51の軸回りの回転を規制して装着されるスリーブ状のプラグフレーム53と、プラグフレーム53の後端(図12の右側)に係合して取付けられ前記クランプ部52を収容するストップリング54と、このストップリング54内に内装された付勢スプリング55とを備えている。なお、図11中、符号54a及び符号54bは、介挿部材ユニット60の介挿部材61(図16等参照)を差し込む差込口を示す。符号56は、ストップリング54の後端に装着されるブーツを示す。但し、ブーツ56は、光コネクタ50の後端側(図12の右側)からクランプ部52に光ファイバ5を挿入する際に、この光ファイバ5に予め通される場合もあるものであって、クランプ部52に光ファイバ5が挿入完了された後に、ストップリング54に装着される。
クランプ部52は、フェルール51のフランジ部51bから光コネクタ50の後端側へ向かって延びる延出部51cに複数の部材を組み付けた構成になっている。以下、クランプ部52が組み立てられているフェルール51を、「クランプ部付きフェルール57」と称して説明する場合がある。このクランプ部付きフェルール57のクランプ部52は、スリーブ状のストップリング54の軸方向に移動自在としてストップリング54に収納されている。付勢スプリング55は、ストップリング54の後端部に反力を取ってクランプ部52を光コネクタ50の先端側(図12の左側)に押圧することで、クランプ部付きフェルール57全体を光コネクタ50先端側に付勢するものである。この付勢スプリング55は、例えば、光コネクタ50を光コネクタアダプタ等に挿入して別の光コネクタと接続する時に、フェルール51に、接続の相手側の光コネクタとの間の突き合わせ力を与える機能を果たす。なお、クランプ部付きフェルール57は、フェルール51のフランジ部51bが、プラグフレーム53内に突設されているストッパ部53aに当接することで、ストップリング54に対する光コネクタ50先端側へのそれ以上の移動(ストップリング54に対する相対的な移動)が規制されている。
図13はクランプ部付きフェルール57を示す斜視図である。また、図14はクランプ部付きフェルール57のクランプ部52を構成する2つの蓋側素子561A、561B及びベース側素子(延出部51c)の合わせ面を示す図である。図12〜図14に示すように、クランプ部52は、フェルール51のフランジ部51bから延びる延出部51cと、この延出部51cの合わせ面524a上に配置された蓋側素子561A、561Bとを、断面C型のスリーブ状のバネ522(C型バネ)の内側に収容した構造になっている。延出部51cは、クランプ部52を構成する半割りの素子の一方(以下、素子51cと称する場合もある。)を構成するものである。また、二つの蓋側素子561A、561Bは、クランプ部52を構成する半割りの素子の他方(素子521)を構成するものである。なお、この半割りに構成された一方の素子51cと他方の素子521との境目が、これらの素子51c,521の半割り部526に相当する箇所となっている。また、これらの素子51c,521は、上述したように、クランプ部52のバネ弾性によって支持されており、このバネ522が本発明におけるクランプに相当する。
クランプ部52は、一対の半割り素子51a、521の間で、光ファイバ5をクランプする構造になっている。二つの蓋側素子561A、561Bは、一方(素子561A)が他方(素子561B)よりもフェルール51側に位置されるようにして、光コネクタ50の前後方向(図14の左右方向)に配列されている。バネ522は、該バネ522の軸方向中央部に形成されたスリット522aによって二分されている。前記スリット522aは、二つの蓋側素子561A、561Bの間の境界付近に位置合わせされている。そのため、このバネ522のスリット522aを介して軸方向両側に位置される各部分は、該バネ522の弾性が二つの蓋側素子561A、561Bに別個に作用する。また、一方の蓋側素子561Aと延出部51cの組、他方の蓋側素子561Bと延出部51cの組が、それぞれ独立したクランプ部としても機能し得る。なお、バネ522の形状としては、このような断面C型形状に限定されることなく、断面コ字型のもの等の各種の形状を採用することができる。
この光コネクタ50のうち、先端側に配置されるフェルール51には、フェルール側光ファイバ58が内装固定されている。なお、このフェルール側光ファイバ58は、裸光ファイバとなっている。このフェルール側光ファイバ58は、フェルール51後端から突出されている。このフェルール側光ファイバ58のフェルール後端から突出された部分である突出部58aは、クランプ部52の一対の素子51c,521の間に挿入されており、クランプ部52の一対の素子51c,521の一方又は両方の合わせ面(ここでは、素子51cの合わせ面524aのみ)に形成されている調心溝523に収納されて精密に位置決め調心可能とされている。なお、この調心溝523は、素子521の対向面と524cと対面したものとなっている。
また、クランプ部52には、該クランプ部52の後端部から一対の素子51c,521の間に挿入される光ファイバ5の先端を調心溝523に導く溝525a,525bが形成されている。なお、ここでは、一例として単心の光ファイバ心線が用いられている。上述した溝525a,525bは、調心溝523よりもクランプ部52の後端側にずれた位置にて、クランプ部52の一対の素子51c,521の一方又は両方の合わせ面に形成されている。この溝525a,525bは、クランプ部52の後端部に開口する開口部525cを有し、この開口部525cから、フェルール51に向かって延在するように形成されている。これらの溝525a,525bのフェルール51側の端部は、調心溝523と連通されている。図示の例の光コネクタ50にあっては、溝525a,525bは、素子51cの合わせ面524aと、素子561Bの合わせ面524bとの両方(図12、図14等参照)に形成されている。この溝525a,525bは、一対の素子51c,521の間で丁度対面する位置(素子51cと素子561Bの丁度対面する位置)に形成されている。
光ファイバ5(特に裸光ファイバ5a)の、クランプ部付きフェルール57への挿入について説明する。まず、バネ522の弾性に抗してクランプ部52の一対の素子51c,521間を押し広げておく(例えば、介挿部材ユニット60の介挿部材61を素子51c,521間に挿入した状態)。次いで、光ファイバ5の露出されている先端(裸光ファイバ5a)を、ストップリング54の後端部の開口部54cに挿入していく。そうすると、その先端は、光ファイバ5を開口部54cから、クランプ部52の後端部に開口する開口部525c(溝525a,525bの開口部)に、挿入される。この挿入時における光ファイバ5のフェルール51側への押し込みにより、光ファイバ5の先端は、クランプ部52の後端部の開口部525cから、溝525a,525bに押し込まれる。さらに、光ファイバ5の先端は、溝525a,525bから調心溝523に押し込むことによって、フェルール側光ファイバ58の先端と突き合わせて接続される。
つまり、フェルール側光ファイバ58は、調心溝523のフェルール51側の端部から長手方向中央部までの範囲に収納されているので、光ファイバ5先端の裸光ファイバ5aは、調心溝523に挿入されることで、調心溝523の調心精度によって精密に位置決め調心した状態で、フェルール側光ファイバ58(詳細には突出部38aの先端)に対して突き合わされる。なお、調心溝523内で光ファイバ5の先端(裸光ファイバ5a)がフェルール側光ファイバ58に突き当てられた際に、溝525a,525bのほぼ全長に亘って被覆部分が収納されるように、この裸光ファイバ5aの口出しされる長さは設定されている。
この光ファイバ5の先端(裸光ファイバ5a)とフェルール側光ファイバ58との突き合わせ状態(接続点6)を保ちながら、一対の素子51c,521間の押し広げを解除するように、素子51c,521間に介挿されている介挿部材61を素子51c,521間から引き抜く。そうすると、素子51c,521間は、バネ522の弾性によって閉じられる。これによって、一対の素子51c,521間において、フェルール側光ファイバ58と光ファイバ5とがクランプ固定され、光ファイバ5先端の裸光ファイバ5aとフェルール側光ファイバ58との突き合わせ状態が維持される。また、光ファイバ5の被覆部分は、溝525a,525b内にクランプ固定される。
なお、以上において用いられる光ファイバ5,58の心線材料としては、例えば、石英等が採用される。また、光コネクタ50の後端側からクランプ部52の素子間に挿入する光ファイバ(別の光ファイバ。一例として、単心の光ファイバ心線である上述の光ファイバ5)としては、単心で構成された光ファイバに限定されず、例えば、光ファイバ素線や、光ファイバコード等であってもよい。
次に、上述した光コネクタ50に取り付けられる介挿部材ユニット60について説明する。この介挿部材ユニット60は、介挿部材61を光コネクタ50の半割り部526に押し込むように割り込ませ、この半割り部526(素子51c,521間)の割れ目を拡大させ、調心溝523に裸光ファイバ5aを好ましく挿入するためのものである。なお、この介挿部材ユニット60が介挿されている光コネクタ50を、以下において介挿部材ユニット60付き光コネクタ50と表現する。
介挿部材ユニット60は、図16の斜視図及び図17の横断面図に示すように、光コネクタ50の外側に組み付けられるコネクタホルダ部62が周方向の一部に設けられたリング状の介挿部材駆動部63と、この介挿部材駆動部63に組み込まれ、介挿部材駆動部63の内側から外側に突出された部分に、前記光コネクタ50のクランプ部52の素子51c,521間に介挿される先端部61aを有する介挿部材61とを具備して構成されている。
前記介挿部材61の前記先端部61aとは反対の側の端部である基端部61bは、介挿部材駆動部63において該介挿部材駆動部63内側の内部空間Sを介して前記コネクタホルダ部62とは逆の側に位置する第1可動端部641に取り付けられている。介挿部材61の先端部61aは、介挿部材駆動部63において前記内部空間Sを介して前記第1可動端部641とは反対の側(前記コネクタホルダ部62の側)に位置する第2可動端部642に形成された介挿部材用窓68に貫通させて、介挿部材駆動部63の外側に突出された部分に設けられている。前記介挿部材61は、介挿部材駆動部63に複数本(ここでは2本)設けられている。各介挿部材61(61A、61B)の介挿部材駆動部63における設置位置は、リング状の介挿部材駆動部63の軸線方向にずらされている。
ここで、介挿部材駆動部63は、コネクタホルダ部62を含んで、全体が合成樹脂で一体成形された1部品になっている。但し、本発明においては、これに限定されず、例えば、介挿部材駆動部63に、これとは別体のコネクタホルダ部を組み付けたもの等、複数部品によって形成されたものであっても何ら問題はない。なお、図示される介挿部材ユニット60では、前記コネクタホルダ部62は、介挿部材駆動部63の一部となっている。すなわち、図16及び図17に示すように、このコネクタホルダ部62は、介挿部材駆動部63において第2可動端部642の一部となっている。また、コネクタ受け台62fによって二分された収容凹所62aの延在方向の両側の領域のうちの、一側の領域は、光コネクタ50のプラグフレーム53が嵌め込まれるハウジング嵌合溝62hとなっている。また、他側のお領域は、光コネクタ50におけるプラグフレーム53よりも後端側の部分を収容するコネクタ後端側配置溝62jとなっている。
この介挿部材ユニット60付き光コネクタ50において、介挿部材ユニット60は、収容凹所62aに光コネクタ50を収容し、さらに、介挿部材61をクランプ部52の素子51c,521間に割り込ませた状態とすることで、光コネクタ50に組み付けられて、介挿部材ユニット60付き光コネクタ50の一部を構成している。ここで、介挿部材ユニット60は、コネクタ受け台62fのコネクタ嵌合凹所62gをストップリング54に嵌め込み、ハウジング嵌合溝62hをプラグフレーム53に嵌め込むことで、光コネクタ50に離脱可能に組み付けられている。また、コネクタ受け台62fを、光コネクタ50のプラグフレーム53の後端面33b(図12参照。ストップリング54の周囲に存在するプラグフレーム53の後端面)に突き当てることで、光コネクタ50の軸方向(クランプ部52の中心軸線方向。調心溝523の調心軸線)における介挿部材ユニット60の組み付け位置の位置決めを実現できるようになっている。
この介挿部材ユニット60のハウジング嵌合溝62h内には、光コネクタ50のプラグフレーム53が当接されるハウジング受け台62iが、両側壁62b、62cから突設されている。このハウジング受け台62iには、プラグフレーム53の前記底壁62eと対面される側の側面が押し当てられる。収容凹所62a内に嵌め込まれる光コネクタ50は、コネクタ受け台62fとハウジング受け台62iとに当接されることで、介挿部材駆動部63の中心軸線に対して所望の姿勢で支持される。図示の介挿部材ユニット60では、収容凹所62aに嵌め込んだ光コネクタ50のクランプ部52の中心軸線(調心溝523の調心軸線)と、介挿部材駆動部63の中心軸線との向きが揃うようにしてある。
前述したように、図示の介挿部材ユニット60は、複数本の介挿部材61を具備している。なお、この介挿部材ユニット60の介挿部材61は、2つ(61A,61B)から構成されている。この各介挿部材61(61A,61B)は、コネクタホルダ部62の底壁62eに開口された介挿部材用窓68から、収容凹所62a内に突出された部分に、前記先端部61aを有している。この介挿部材ユニット60では、各介挿部材61(61A、61B)の先端部61aを、光コネクタ50の外側からストップリング54の差込口54a、54b(図18(a)及び図18(b)参照)を介して、一対の素子51c,521の間とされる半割り部526に割り込ませるものとなっている。このため、この光コネクタ50にあっては、一対の素子51c,521の間が、介挿部材61によって、バネ522の弾性に抗して若干押し開かれた状態になっている。また、ストップリング54の2つの差込口54a、54bは、2つの蓋側素子521に対応する2つのクランプ部に対応する位置に開口されている。介挿部材ユニット60の複数本(2本)の介挿部材61(61A、61B)は、ストップリング54の2つの差込口54a、54bを介して、素子51cと素子561Aとの間、素子51cと素子561Bとの間に、それぞれ挿入されている。
板状突起212の本体部211からの突出先端(介挿部材61の先端)は、光コネクタ50のクランプ部52の一対の素子51c,521の間に割り込まされる先端部61a(挿入先端)となっている。図示の介挿部材61では、前記先端部61a(挿入先端)は、板状突起212に比べて厚さを薄く形成された楔状になっている。図16及び図17に例示した先端部61aは、断面三角型状であるが鋭く尖った形状ではなく、素子を傷つけ難くすることを目的として、先端の頂点付近は湾曲した形状となっている。
楔状の先端部61aとしては、例えば、図19(a)及び図19(b)に例示するように、先端が鋭く尖った形状のもの(先端部61a1、61a2)であってもよい。また、先端部61aの形状は図示の例に限定されない。例えば、一対の素子51c,521の間からの引き抜きのみを考慮する場合は、介挿部材61としては、一対の素子51c,521の間に割り込ませることにより、一対の素子51c,521をバネ522の弾性に抗して若干押し開かれた状態に保持できれば良い。この点、介挿部材61の先端部61aは、例えば、単純な板状、ピン状等、他の形状であってもよい。つまり、上述した光コネクタ50のうち、一対の素子51c,521の間とされる半割り部526に割り込ませ、バネ522の弾性に抗して若干押し開くことができる楔のように、介挿部材61が設けられて構成されるものであれば、これに含まれるものとされる。このように構成された介挿部材ユニット60は、上述した光コネクタ50に予め取り付けられており、素子51c,521の半割り部526の割れ目を予め拡大させたものにしている。つまり、作業現場においては、この介挿部材ユニット60を引き抜くだけで、半割り部526の拡大された割れ目は縮小されて、これらの素子51c,521によって好適に裸光ファイバ5aを保持する。
以上説明した介挿部材ユニット60付き光コネクタ50は、本発明に係る光ファイバ用工具1の光コネクタ設置部11に設置される。この光コネクタ設置部11は、図1及び図2等に示すように、このベース本体10の先端側(一端側)に形成されている。また、その光コネクタ設置部11が形成された先端側とは反対側となる後端側(他端側)のベース本体10には、スライド部12が設けられている。可動ユニット20は、このスライド部12において、光コネクタ設置部11に対して接近離反するようにスライド移動する。
光コネクタ設置部11は、具体的には、図4に示すように、先端側から見た場合に上方が開口されるように略コの字状に形成された光コネクタ保持部13(13a,13b)が、このベース本体10の長さ方向(可動ユニット20のスライド移動方向)に2つ並べられて設けられている。この光コネクタ保持部13(13a,13b)には、前記光コネクタ50と係止する返り爪14(14a,14b)が設けられている。この返り爪14(14a,14b)は、上述した光コネクタ50の適宜箇所に引っ掛かって、この光コネクタ設置部11に光コネクタ50を係止固定させる。この光コネクタ設置部11は、光コネクタに50に取り付けられている、介挿部材ユニット60の操作の邪魔とならないように、幅が小さく形成されている。また、このベース本体10のうち、光コネクタ保持部13aの先端側に隣接する箇所には、先端側から見た場合に上方が開口されるように略コの字状に形成された光コネクタ先端収納凹部15が設けられている。この光コネクタ先端収納凹部15には前記光コネクタ50の先端が収納される。そして、光コネクタ50に別の光ファイバ5が挿入された場合には、この光コネクタ先端収納凹部15によって、光ファイバ5の挿入時の摩擦力による光コネクタ50の逃げを規制している。
さらに、この光コネクタ設置部11のうち、光コネクタ保持部13bの後端側に隣接する箇所には、この光コネクタ50内に挿入される光ファイバ5をガイドするガイド溝部16が設けられている。このガイド溝部16は、上方が開口された溝状に形成されており、その溝幅は光ファイバ5が隙間なく入り込むことができる外径(例えば、900μm)で形成されている。このガイド溝部16に光ファイバ5が挿通されることによって、光コネクタ設置部11に設置された光コネクタ50に光ファイバ5を好ましく案内する。なお、このガイド溝部16の溝幅は、設置される光フイバ5の外径によって適宜に設計変更することができる。
一方、スライド部12は、その上面の幅方向両側に、上方に突出する側壁部18(18A,18B)が設けられている。この側壁部18によって、このスライド部12は、後端側から見た場合に上方が開口された略凹状に構成されたものとなっている。これらの側壁部18(18A,18B)の互いに向き合う内面には、このベース本体10の中間部から後端部にかけて、このスライド部12の内方に向かって水平に突出して延びる突壁部18aが設けられている。この突壁部18aが設けられることによって、突壁部18aと凹状に構成されたスライド部12の内底面18cとの間には、ベース本体10の長さ方向に延びるユニットガイド溝18bが構成されたものとなっている。このユニットガイド溝18bには、可動ユニット本体21の下側外縁において、この可動ユニット21の幅外方向に突出して設けられたガイド凸部22aが、このユニットガイド溝18b内で摺動可能に嵌め込められる。
なお、このユニットガイド溝18bは、可動ユニット本体21に設けられたガイド凸部22aの幅長さと厚み幅に合わされて形成されている。このようにして、ユニットガイド溝18bは、嵌め込まれたガイド凸部22aによって、可動ユニット本体21の上方のずれ及び幅方向のずれを規制する。つまり、可動ユニット本体21は、光コネクタ設置部11に対して正しい姿勢を維持しながら、この光コネクタ設置部11に対して接近離反のスライド移動をすることができる。また、このスライド部16の先端側には、略鉤状に形成された留め具17が設けられている。この留め具17は、上方に延びた鉛直棒部と、その棒部の上端から後端部方向に水平に延びる水平棒部とから構成されており、先端方向にスライド移動してきた可動ユニット20の上方へ浮き上がりを規制するために設けられている。
以上のように、このベース本体10には、可動ユニット本体21を好ましくスライド移動させるための適宜の案内手段が設けられており、これによって、可動ユニット本体21は、ファイバホルダ31によって把持された別の光ファイバ5を、上述した光コネクタ設置部11に設けられたガイド溝部16に好ましく挿入する。なお、ベース本体10の後端部側には、上下移動可能な抜け止め部19が設けられている。この抜け止め部19は、可動ユニット本体21の裏面側に設けられた段部(不図示)に当接し、可動ユニット本体21がベース本体10からの抜け出てしまうことを規制している。
また、このベース本体10には、図1及び図2等に示すように、本発明における係止凸部が設けられている。すなわち、このベース本体10に設けられた側壁部18(18A,18B)のうち、片側の側壁部18Aにおいては、上方に棒状に延びた係止棒部29(本発明における係止凸部に相当)が設けられている。この係止棒部29は、可動ユニット本体21の操作側部24に設けられた当接面24cに当接することによって、この可動ユニット本体21をベース本体10に係止固定させる。なお、本発明の係止凸部は、図示の係止棒部29に限定されることなく、当接面24cに当接可能に構成されていれば何ら問題なく、適宜の形状を選択することができる。
次に、このベース本体10に形成されたスライド部12をスライド移動する可動ユニット20について説明する。可動ユニット20は、上述したように、可動ユニット本体21、ファイバホルダ31、付勢スプリング45、受けスプリング49とを備えてなるものである。可動ユニット本体21は、図5に示すように、前記ベース本体10のスライド部12の内底面18cに接するスライド底部22と、そのスライド底部22を囲うような壁状に突出し設けられる後側壁部23及び操作側部24とを具備して大略構成されている。
なお、可動ユニット本体21は、壁状の後側壁部23及び操作側部24がスライド底部22を囲うように設けられることによって略器状に構成されており、この略器状の内部にファイバホルダ31が設置される(このファイバホルダ31が設置される箇所を、以下においてホルダ収容凹部21aと称する)。また、このホルダ収容凹部21aの光コネクタ設置部11側(スライド底部22の先端側)においては、壁状に構成されるものは存在せず、開口された形状となっている。これによって、ホルダ収容凹部21aに設置されたファイバホルダ31に把持された光ファイバ5は、光コネクタ設置部11に向けて好ましく突き出される。
スライド底部22は、スライド移動方向に長く形成された略直方体形状で構成されており、その幅方向の外縁の下方においては、図5に示すように、幅方向の外方に突出し且つスライド底部22の長さ方向に延びるガイド凸部22aが設けられている。このガイド凸部22aは、摺動可能に、ベース本体10に設けられたユニットガイド溝18bに嵌め込まれる箇所となっている。このガイド凸部22aが、ユニットガイド溝18bに嵌め込まれて摺動することによって、ベース本体10のスライド部12を、可動ユニット本体21は好ましくスライド移動する。また、このスライド底部22の上面の後端部側においては、このスライド底部22のスライド移動方向に延びるスプリング用凹溝22bが設けられている。このスプリング用凹溝22bは、受けスプリング49を設置する箇所となっている。なお、このスライド底部22には、その先端側において、上下移動可能な抜け止め部25が設けられている。この抜け止め部25は、後に説明するファイバホルダ31の裏面側に設けられた段部(不図示)に当接し、ファイバホルダ31が可動ユニット本体21からの抜け出てしまうことを規制している。
このスライド底部22の後端側に設けられる後側壁部23は、図5等に示すように、上方から見て、先端側が開口された略コの字状で形成されている。言い換えれば、後側壁部23は、後端の縁部から上方に突出する後端縁壁部23aと、この後端縁壁部23aと接続され且つスライド底部22の後端側の側縁から上方に突出する後側壁部23bとから構成されている。この後側壁部23bは、図5等に示すように、スライド底部22の後端縁壁部23aから、このスライド底部22の長さの中間まで延びて形成されている。また、この後側壁部23bのホルダ収容凹部21a内の内側面においては、その中段において、このホルダ収容凹部21aの内方に突出すると共に後側壁部23bの長さ方向に延びるホルダレール23cが設けられている。このホルダレール23cの下部に、ファイバホルダ31の外縁に設けられた突出ガイド部32aが摺動可能に嵌め込まれる。つまり、可動ユニット本体21と同様に、ファイバホルダ31は、光コネクタ設置部11に対して正しい姿勢を維持しながら、可動ユニット本体21のスライド移動方向に、このホルダ収容凹部21a内で安定的に揺動することができる。
このように形成された後側壁部23のうち、後側壁部23bの先端側の端部においては、この端部と連結して、幅が拡大するように形成された操作側部24が設けられている。この操作側部24は、後側壁部23の先端側のみに連結されている。つまり、前記スライド底部22とは直接的に連結されておらず、後側壁部23の先端側のみにおいて連結され、この連結箇所のみで支持されている。この操作側部24は、下方が開口されていると共に先端側及び後端側も開口した開口部24a,24bを有し、この先端側及び後端側の開口部24a,24bは、互いに連通されている。
この操作側部24は、具体的には、ともに可動ユニット本体21のスライド移動方向に延びるように形成された、ホルダ収容凹部21aに面する内壁部26と、この内壁部と対向して設けられる外壁部27と、これらの内壁部26及び外壁部27の上端同士を連結する上壁部28とから構成されている。このように構成されることによって、この操作側部24の内部においては、後端部から先端部にかけて、或いは先端部から後端部にかけて、これらの開口部24a,24bを挿通して、係止棒部29が移動させることができるようになっている。
なお、図5に示すように、後端側の開口部24bにおいては、可動ユニット本体21のスライド移動方向に延びるような凹溝状に形成されている。また、外壁部27は、先端に向かうに従って外方に拡がるように形成されていると共に、その外側面においては、手で掴み易いように縦溝が複数形成されている。また、この外壁部27を手で掴んで内方に押圧した場合には、前記後側壁部23に連結されている箇所を支点にして、この外壁部27と共に、上壁部28及び内壁部26も内方に移動するようになっている。
内壁部26について具体的に説明すると、図6の水平方向断面図に示すように、後端側から中間にかけては均等の厚みで形成され、その中間から先端部にかけては、先端に向かうに従って外方に向かって勾配が設けられるように、厚みが拡大されて形成されている。言い換えれば、この内壁部26のうち、ホルダ収容凹部21a側の側面においては面一で形成され、この操作側部24の内部の側面においては先端に向かうに従って外方に向かってなだらかに突き出すように形成されている。この先端に向かうに従って外方に向かって勾配が設けられて形成された幅方向の側面を、以下において肉厚面24dと称する。このように内壁部26が形成されることによって、その先端側端部の端面においては、係止棒部29が当接可能な所望の当接面24cが形成される。つまり、この内壁部26が、本発明における当接壁部に相当し、この当接面24cに、上述した係止棒部29が当接する。なお、図6については、ベース本体10のうち、上述した係止棒部29のみが図示され、他のベース本体10に関する箇所についての図示は省略されている。
この当接面24cは、この可動ユニット本体20のスライド移動方向と直交する方向に延びてなるものとなっており、係止棒部29が安定的に当接させることができる。係止棒部29が当接面24cに当接している場合には、この可動ユニット本体20の先端側へのスライド移動を規制することとなって、可動ユニット本体20は、ベース本体10に係止固定される。なお、この場合に、操作側部24の外壁部27を手で掴んで、ホルダ収容凹部24aの内方に押圧した場合には、前記後側壁部23に連結されている箇所を支点にして、この外壁部27と一体に構成された内壁部26もホルダ収容凹部21aの内方に移動する。そして、この内壁部26がホルダ収容凹部24aの内方に移動するにしたがって、前記当接面24cも移動する。これによって、この当接面24cに当接されていた係止棒部29の当接は解除され(当接しない状態)、可動ユニット21のベース本体10への係止固定は解除される。なお、後において、可動ユニット20の係止固定について説明する。
次に、上述した可動ユニット本体21のホルダ収容凹部21a内に、揺動自在に配置されるファイバホルダ31について、図7及び図8を参照しながら説明する。このファイバホルダ31は、図7に示すように、ホルダベース体32(図7(b)参照)と、このホルダベース体32に載置された光ファイバ5を上から押さえるファイバ押さえ部材35(図7(a)参照)とを具備して大略構成される。
ホルダベース体32は、ホルダ収容凹部21aに合わされた略直方体形状で形成されており、主として、突出ガイド部32aと、ファイバ保持用凹溝等とが設けられている。すなわち、ホルダベース体32の下部の幅方向の外縁には、このホルダベース体32の揺動方向(可動ユニット本体21のスライド移動方向と同一方向)となる長さ方向に延び且つ幅外方向に突出して形成された突出ガイド部32aが設けられている。また、このホルダベース体32の裏面においては、受けスプリング49の一端を当接することができ、さらに、図8(a)の後面図に示すように、受けスプリング49を配設させるためのホルダ側のスプリング用凹溝32bが設けられている。後にも詳述するが、受けスプリング49は、このホルダ側のスプリング用凹溝32bと、上述したホルダ収容凹部21a内に設けられたスプリング用凹溝22bとによって好ましく収容保持され、このファイバホルダ31を弾性的に支持する。
また、このホルダベース体32の上面においては、図8(a)の後面図にも示すように、このホルダベース体32の揺動方向(可動ユニット本体21のスライド移動方向と同一方向)となる長手方向に延びて設けられるファイバ保持用凹溝33aが設けられている。このファイバ保持用凹溝33aの溝幅にあっては、この光ファイバ用工具1によって光コネクタ50に挿入される光ファイバ5の外径(例えば、900μm)に合わされた適宜の幅で形成されている。なお、この溝幅にあっては、この例示に限定されることなく、適宜の溝幅を選択することが可能である。
また、ホルダベース体32の上面のうち、先端側と後端側のそれぞれには、図8(a)の後面図にも示すように、この上面から上方に突出して設けられ光ファイバ5の設置を案内する案内段部33b,33cが設けられている。この案内段部33b,33cは、このファイバ保持用凹溝33aに光ファイバ5を設置し易いように、ファイバ保持用凹溝33aの形状を延長するように設けられている。言い換えれば、案内段部33b,33cは、上方に向かって前記ファイバ保持用凹溝33aを拡大するように形成されている。また、これら案内段部33b,33cの一側には、ファイバ押さえ部材35の回転を軸支するための軸支凸部34a,34bが設けられている。具体的には、ファイバホルダ31の揺動方向となる長さ方向の軸線上であって、案内段部33b,33c同士が互いに向き合う箇所に、互いに突出して設けられている。この軸支凸部34a,34bは、ファイバ押さえ部材35に設けられた軸支凹部38a,38bに嵌め込まれる箇所となっている。これによって、このファイバ押さえ部材35は、ファイバホルダ31の長さ方向を回転軸線として、回転可能に軸支される。
一方、ファイバ押さえ部材35は、図8(b)のA−A断面矢視図(図7(a)参照)にも示すように、水平方向に延びるように板状に形成され平板部35aと、この平板部35aの幅方向の一端側に設けられた取手部36aと、この取手部36aの下方に設けられホルダベース体32に係止する係止部36bとを具備して大略構成される。具体的には、平板部35aは、上下方向に貫かれた適宜の空間が設けられて形成されており、裏面側には、下方に突出するファイバ押さえ部35bが設けられている。具体的には、このファイバ押さえ部35bは、平板部35aの裏面側において、水平方向に延びた接面部35cを有するように水平に延びて形成されている。
このファイバ押さえ部35bは、上述したホルダベース体32に設けられたファイバ保持用凹溝33aに載置された光ファイバ5を、このファイバ保持用凹溝33aに押し付ける箇所となっている。また、この平板部35aの幅方向の一端側(ファイバホルダ先端を向いて右側、図7においては上方、図8(b)においては右方)には、この平板部35aの幅方向に突出する取手部36aが設けられている。この取手部36aには、鉛直下方向に延び且つ幅内方に向かって爪状に突出して形成された係止部36bが設けられている。この係止部36bは、上述したホルダベース体32の一部に係止する箇所となっている。
また、この平板部35aのうち、取手部36aが設けられる一端側とは反対側の他端側(ファイバホルダ先端を向いて左側、図7においては下方、図8(b)においては左方)には、上述したホルダベース体32に設けられた軸支凸部34a,34bを回転可能に嵌め込む軸支凹部38a,38bが、このファイバホルダ31の揺動方向(可動ユニット本体21のスライド移動方向と同一方向)を軸線方向として、互いの側端に設けられている。このように構成されたファイバ押さえ部材35は、図7(c)に示すように、軸支凹部38a,38bにホルダベース体32の軸支凸部34a,34bが嵌め込まれる。これによって、ファイバ押さえ部材35は、軸支凹部38a,38bを回転軸線として、ホルダベース体32に対して回転可能に取り付けられることとなる。なお、このファイバ押さえ部材35が閉じた状態となっている場合には、このファイバ押さえ部材35の係止部36bが、ホルダベース体32の図示されていない段部に係止する。
加えて、このファイバ押さえ部35bのうち、光ファイバ5と接する接面部35cと逆側となる箇所においては、適宜のクリアランスが設けられている。これによって、このファイバ押さえ部35bは、上下に弾性変形可能となり、光ファイバ5を押圧力が好ましくコントロールされる。これによって、ファイバホルダ31は、光ファイバ5を好ましく把持することができる。取手部の下方に設けられた係止部がホルダベース体32の一部に係止した場合に、このファイバ押さえ部35bによる光ファイバ5への押圧力は、このファイバ押さえ部35bの上下の弾性変形によって適宜なものに保たれる。
次に、可動ユニット本体21を光コネクタ設置部11に対して接近するように付勢する付勢スプリング45と、ファイバホルダ31を弾性的に支持する受けスプリング49とについて説明する。付勢スプリング45は、通常のコイルスプリングで構成されるものであって、一端がベース本体10に設けられた光コネクタ設置部11のうち、後端側の端部とされるガイド溝部16の下方(図4においては見えない箇所)に取り付けられ、他端が可動ユニット本体21のスライド底部22の先端側の端部(図5における符号X)に取り付けられる。
また、受けスプリング49は、付勢スプリング45と同様、通常のコイルスプリングで構成されるものであって、上述したホルダ側のスプリング用凹溝32bと、ホルダ収容凹部21a内に設けられたスプリング用凹溝22bとにおいて、収容される。したがって、この受けスプリング49は、一端が可動ユニット本体21の後端縁壁部23aのホルダ収容凹部21a内側(図5における符号Y1)に当接するように取り付けられ、他端がファイバホルダ31の後端側の端部(図8(a)における符号Y2)に当接するように取り付けられる。
この付勢スプリング45及び受けスプリング49にあっては、光ファイバ5の先端の光ファイバ58の先端に対する突き当て力が、0.15〜0.20Nとなるように、その付勢力及び弾性力が設定されている。なお、上述した付勢スプリング45の付勢力及び受けスプリング49の弾性力にあっては、挿入する光ファイバ5の様々な特性(例えば、単心、多心、或いは材料特性)によって、適宜に選択することができる。
以上のように構成された光ファイバ用工具1は、次のような作用を奏する。なお、図9の操作側部24の模式図と、図10の光ファイバ用工具1の模式図とを参照にしながら説明する。
まず、可動ユニット本体21を、ベース本体10のスライド部12の後端側にスライド移動させた場合には、図9(a)に示すように、この操作側部24の後端側の開口部24bから、係止棒部29が入り込んでゆく。さらに、可動ユニット本体21を後端側にスライド移動させた場合には、先端側の開口部24aに向かって、この操作側部24内を移動してゆくこととなる。そうすると、図9(b)に示すように、係止棒部29は内壁部26の肉厚面24dに当接し、さらに、可動ユニット本体21を後端側にスライド移動させた場合には、図示するように、この内壁部26を内方に移動させる。
そして、係止棒部29が、この操作側部24の先端側の開口部24aから抜き出た場合には、図9(c)に示すように、この内壁部26の当接面24cに当接することとなる。このようにして、係止棒部29が当接面24cに当接した場合には、この可動ユニット本体20の先端側へのスライド移動を、この係止棒部29の当接によって規制することとなり、可動ユニット本体20はベース本体10に係止固定される。一方、この可動ユニット本体20の、ベース本体10に対しての係止固定を解除する場合には、図9(d)に示すように、操作側部24の外壁部27を手で掴んで、ホルダ収容凹部24aの内方に押圧した場合には、前記後側壁部23に連結されている箇所を支点にして、この外壁部27と一体に構成された内壁部26もホルダ収容凹部21aの内方に移動する。そして、この内壁部26がホルダ収容凹部24aの内方に移動するにしたがって、前記当接面24cも移動する。これによって、この当接面24cに当接されていた係止棒部29の当接は解除され、これによって、可動ユニット21のベース本体10への係止固定は解除される。つまり、ベース本体10の先端側に配置される光コネクタ設置部11に向かって、この可動ユニット本体21をスライド移動させることができる。
そして、この可動ユニット20のベース本体10に対する係止固定を解除した場合には、可動ユニット20は、図10(a)に示すように、付勢スプリング45の収縮弾性力によって、光コネクタ設置部11に対して接近するように好ましくスライド移動する。そして、上述したように、光ファイバ5は、光コネクタ設置部11に設けられるガイド溝部16に案内されながら、光ファイバ5を、この光コネクタ設置部11に設置された光コネクタ50内に好ましく挿入する。
そうすると、図10(b)に示すように、光ファイバ5の先端は、光コネクタ50内におけるフェルール側光ファイバ58の先端に当接するように突き合わされる(接続点6)。このようになった場合には、光ファイバ5を把持するファイバホルダ31は、可動ユニット本体21内において後退するように揺動する。つまり、ファイバホルダ31を弾性支持する受けスプリング49が、この光ファイバ5の先端とフェルール側光ファイバ58の先端との突き合わせ力を過大なものにしまわないように収縮して、付勢スプリング45の収縮弾性力を緩衝させる。
具体的な長さで説明すると、図10(a)に示すように、光ファイバ5の先端がフェルール側光ファイバ58の先端に当接する前においては、付勢スプリング45の長さがD1であったのに比して、図10(b)に示すように、これらの光ファイバ5,58の先端同士が当接した場合においては、付勢スプリング45の長さはD2という短い長さとなっている。また、図10(a)に示すように、光ファイバ5の先端がフェルール側光ファイバ58の先端に当接する前においては、受けスプリング49の長さがD3であったのに比して、図10(b)に示すように、これらの光ファイバ5,58の先端同士が当接した場合においては、付勢スプリング45の長さはD4という短い長さとなっている。
以上のようにして、可動ユニット20をベース本体10の後端側に移動させて係止固定した場合には、光ファイバ5を、この可動ユニット20内に設けられたファイバホルダ31に好ましく設置することができる。そして、この可動ユニット20のベース本体10に対する係止固定を解除した場合には、可動ユニット20は、付勢スプリング45の収縮弾性力によって、光コネクタ設置部11に対して好ましくスライド移動され、ファイバホルダ31に設置された光ファイバ5を光コネクタ50に好ましく挿入させることができる。また、光ファイバ5の先端とフェルール側光ファイバ58の先端との突き合わせ力は、折れてしまうような過大なものにしまわないように、受けスプリング49によって適切に緩衝させる。
つまり、フェルール側光ファイバ58及び光ファイバ5の先端同士を突き合わせて互いのフェルール側光ファイバ58と光ファイバ5とを接続させることができ、さらに、これらの光ファイバ58,5の接続の際の光ファイバ58,5の先端同士が突き合わせる力が、過大になってしまったり若しくは過小となってしまったりせず、好適な突き合わせ力で互いの光ファイバ5,58を接続させることができる。
ここで、付勢スプリング45の付勢力及び受けスプリング49の弾性力にあっては、光ファイバ5の先端の光ファイバ58の先端に対する突き当て力が、0.15〜0.20Nとなるように、その付勢力及び弾性力が設定されているので、好適に、光ファイバ5の先端は光ファイバ58の先端に対して突き当てられる。つまり、突き当て力が0.15N以下となっていた場合に生じ易い、光コネクタ50内に挿入され難くなってしまう不具合や、突き当て力が0.20N以上となっていた場合に生じ易い、光ファイバ5を傷めてしまう不具合を解消することができる。
これによって、また、光ファイバ先端を傷める心配もなく、光ファイバ58,5の先端同士の接続ロスを軽減し、この光ファイバ58,5両者の接続間において反射してしまうことによっての光信号の減衰ロスも解消することができるように互いの光ファイバ58,5を接続させることができる。また、この光ファイバ用工具1にあっては、光ファイバ5をファイバホルダ31に把持させてからは、素早く且つ簡単に互いの光ファイバ58,5を接続させることができるので、現場作業において用いるのに特に有利なものとなっている。
なお、本発明に係る光ファイバ用工具は、上述したような実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜に選択して構成することができる。例えば、上述の実施の形態においては、操作側部を、先端に向うに従って外方に拡大されるように構成したが、この例に限定されることなく、適宜の形状を選択することができる。また、例えば、付勢スプリング45や受けスプリング49にあっては、上述した実施の形態のようなコイルスプリングに限定されず、スプリング機能を発揮することができる適宜の弾性部材で構成されるものであってよい。さらに言えば、上述の実施の形態の付勢スプリング45にあっては、可動ユニット本体21を引っ張るように構成されるものであったが、この可動ユニット本体21を押すように構成されるものであってもよいものとされる。
1…光ファイバ用工具、5…別の光ファイバ、10…ベース本体、11…光コネクタ設置部、20…可動ユニット、21…可動ユニット本体、24…解除操作部、26…当接壁部、29…係止凸部、31…ファイバホルダ、45…第1のスプリング部材、49…第2のスプリング部材、50…光コネクタ、61…介挿部材、51,521…半割りの素子、F…先端側、B…後端側