以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、本発明が適用された波長変換部材を実施の形態1ないし7および15として例示して説明し、本発明が適用された発光装置を実施の形態8ないし10として例示して説明し、本発明が適用された画像表示装置を実施の形態11ないし14として例示して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における波長変換部材の概略斜視図である。図2は、本実施の形態における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図3は、本実施の形態における波長変換部材をXY平面に沿って切断した場合の模式断面図である。なお、図2に示す断面は、図1中に示すII−II線に沿った模式切断面である。また、図3に示す断面は、図2中に示すIII−III線に沿った模式切断面である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Aは、所定の厚みを有する略直方体形状の部材からなり、入射光の少なくとも一部を吸収して吸収した光とは異なる波長の光を出射する機能を有するものである。波長変換部材10Aは、その一方の主表面を入射面11として有しており、他方の主表面を出射面12として有している。
波長変換部材10Aの入射面11には、発光素子から出射される励起光100が照射される。入射面11に照射された励起光100は、波長変換部材10Aの内部に導入され、導入された光の一部の波長が波長変換部材10Aの内部において変換される。波長変換部材10Aの出射面12からは、上述した波長変換後の光を含む光が波長変換光200として外部に向けて出射される。
ここで、図1に示すように、互いに直交する並進3軸(X軸、Y軸およびZ軸)のうち、励起光100および波長変換光200の光軸をZ軸方向に規定すると、上述した入射面11および出射面12は、いずれもZ軸と直交するXY平面にて構成されることになる。
なお、図示する波長変換部材10Aは、偏平な平板状の外形を有しているが、波長変換部材の形状は、当該形状に限定されるものではなく、平板状以外の態様の直方体形状や円盤状の形状、円柱状の形状、多角柱状の形状等、どのような外形であってもよい。
図2および図3に示すように、波長変換部材10Aは、光透過性部材13と、半導体微粒子蛍光体14とを主として備えている。半導体微粒子蛍光体14は、波長変換部材10Aの内部に導入された励起光100を吸収してこれを波長変換することで異なる波長の光を発光するものであり、主として半導体微結晶粒子からなる部材である。当該半導体微粒子蛍光体14は、波長変換部材10Aの内部において分散して位置している。一方、光透過性部材13は、半導体微粒子蛍光体14を分散配置させた状態で封止するためのものであり、波長変換部材10Aに導入された励起光100および半導体微粒子蛍光体14から発せされる光を吸収しない部材からなる。
より詳細には、光透過性部材13としては、好ましくは、水分や酸素を透過しない材料にて構成されていることが好ましい。このように構成すれば、光透過性部材13によって波長変換部材10Aの内部への水分や酸素の進入が防止できるため、半導体微粒子蛍光体14が水分や酸素により影響を受けることを緩和することができ、半導体微粒子蛍光体14の耐久性を向上させることができる。
上述した条件を満たす光透過性部材13の材料としては、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂等の光透過性樹脂材料や、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、イットリア等の光透過性無機材料等が挙げられる。
図4は、図2および図3に示す半導体微粒子蛍光体の模式断面図である。本実施の形態における波長変換部材に具備される半導体微粒子蛍光体としては、公知の種々の構造のものが利用できるが、以下においては、特に好ましい構造の半導体微粒子蛍光体について、図4を参照して詳細に説明する。
図4(A)に示す半導体微粒子蛍光体20Aは、一般にコア構造と称される構造を有する半導体微粒子蛍光体である。図示するように、コア構造を有する半導体微粒子蛍光体20Aは、発光部であるコア部21を備えている。コア部21は、その粒子径が数nm程度の半導体微結晶粒子からなり、電子と正孔の再結合が生じて発光する部位である。
また、図示するように、半導体微粒子蛍光体20Aのコア部21の表面には、当該コア部21と結合する有機化合物22が設けられていてもよい。この有機化合物22として適宜の物質を選択すれば、半導体微結晶蛍光体を液体または固体へ分散させる際の分散性を調整することが可能になる。また、有機化合物22として適宜の物質を選択すれば、半導体微粒子蛍光体の内部への電子の閉じ込め機能、半導体微粒子蛍光体が外界から受ける悪影響からの保護機能、および半導体微粒子蛍光体同士の凝集抑制機能等を付加することもできる。
図4(B)に示す半導体微粒子蛍光体20Bは、一般にコア/シェル構造と称される構造を有する半導体微粒子蛍光体である。図示するように、コア/シェル構造を有する半導体微粒子蛍光体20Bは、発光部であるコア部21と、当該コア部21を覆うシェル部23とを備えている。ここで、コア部21は、その粒子径が数nm程度の半導体微結晶粒子からなり、電子と正孔の再結合が生じて発光する部位である。一方、シェル部23は、コア部21とは異なる材料で構成されたものであり、コア部21が外界から受ける悪影響を保護するための保護機能を有する部位である。ここで、シェル部23は、コア部21よりバンドギャップエネルギーが大きい材料にて構成されることが好ましい。そのように構成すれば、半導体微粒子蛍光体の内部への電子および正孔の閉じ込め機能が発揮されることになり、非発光遷移による電子および正孔の損失を低減することが可能となって発光効率が向上することになる。
また、図示するように、半導体微粒子蛍光体20Bは、シェル部23の表面に当該シェル部23と結合する有機化合物22を備えていてもよい。この有機化合物22として適宜の物質を選択すれば、半導体微粒子蛍光体を液体または固体へ分散させる際の分散性を調整することが可能になる。また、有機化合物22として適宜の物質を選択すれば、半導体微粒子蛍光体の内部への電子の閉じ込め機能、半導体微粒子蛍光体が外界から受ける悪影響からの保護機能、および半導体微粒子蛍光体同士の凝集抑制機能等を付加することもできる。
なお、その図示は省略するが、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14としては、上記コア構造およびコア/シェル構造を有する半導体微粒子蛍光体20A,20Bの他にも、マルチシェル構造を有する半導体微粒子蛍光体を利用することができる。このマルチシェル構造を有する半導体微粒子蛍光体の具体例としては、上記コア/シェル構造を有する半導体微粒子蛍光体20Bのシェル部23の外側にさらに他の材料かなるシェル部が設けられてなるコア/シェル/シェル構造や、中央部にシェル部が配置され、これを覆うようにコア部が設けられ、さらにコア部の外側を覆うようにシェル部が設けられてなるシェル/コア/シェル構造等を有する半導体微粒子蛍光体が挙げられる。
上記コア/シェル/シェル構造を有する半導体微粒子蛍光体を利用した場合には、外側に位置するシェル部が内側に位置するシェル部を保護することになるため、半導体微粒子蛍光体の耐久性が向上することになる。また、上記シェル/コア/シェル構造を有する半導体微粒子蛍光体を利用した場合には、コア部の内側および外側のいずれもがシェル部によって囲まれる構成であるため、上記コア/シェル構造よりもさら高い電子の閉じ込め効果を得ることができ、半導体微粒子蛍光体の発光効率が向上することになる。
上述した半導体微粒子蛍光体14としては、図2および図3に示す如くの球状の形状のものの他にも、柱状、立方体状、正四面体状等、種々の形状のものが利用でき、特にその形状が制限されるものではない。しかしながら、図示する如くの球状のものを利用すれば、体積に対する表面積の割合が他の形状に比して小さくなるため、表面における非発光遷移の確率が小さくなり、その結果、高い発光効率を有する半導体微粒子蛍光体とすることができる。
ここで、半導体微粒子蛍光体14に含まれるコア部の形状およびシェル部の形状についても、双方ともに任意の形状が採用できる。ただし、コア部を覆うシェル部の形状としては、コア部の表面のすべてを覆う形状であることが好ましい。これは、そのように構成すれば、コア部の表面に存在する欠陥がシェル部によって覆われることで失活するために、発光効率を高めることが可能になるためである。
なお、コア部を構成する半導体微結晶粒子は、コロイド粒子またはナノ粒子あるいは量子ドット等と称される場合がある。
本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14は、従来使用されていた希土類賦活蛍光体等の他の蛍光体に比べ、発光波長を任意に調整できる点に特徴がある。これは、半導体微結晶粒子の粒子径(直径)をボーア半径の2倍以下にまで小さくした場合に生じる、量子閉じ込め効果を利用できるためである。半導体微粒子蛍光体のコア部は、粒子径に応じた量子閉じ込め効果により、コア部のバンドギャップエネルギーが変化する。そのため、粒子径を調整してバンドギャップエネルギーを変化させることにより、発光波長を任意に調整することが可能になる。また、半導体微粒子蛍光体のコア部に混晶材料を用いれば、当該混晶材料の混晶比を調整することで発光波長を任意に調整することもできる。
また、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14としては、その用途に応じて如何なる発光波長のものを利用してもよいが、特に発光波長として可視光波長を含むものが好適に利用される。これは、発光波長が可視光波長領域にある半導体微粒子蛍光体を用いることにより、良好な特性を有する波長変換部材や発光装置、画像表示装置等を実現できるためである。なお、半導体微粒子蛍光体14の発光波長の具体例としては、青色発光蛍光体の場合に420〜480nm、緑色発光蛍光体の場合に500〜565nm、黄色発光蛍光体の場合に565〜585nm、赤色発光蛍光体の場合に595〜720nmの波長領域が例示される。
また、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14としては、その発光スペクトルの半値幅が制限されるものではないが、発光装置の製造の観点からは、半値幅は広いことが好ましい。これは、半導体微粒子蛍光体14の発光スペクトルの半値幅が広い場合には、少ない種類の半導体微粒子蛍光体のみで演色性の高い発光装置を製造できるためである。その場合、発光スペクトルの半値幅の具体例としては、40nm以上であることが好ましく、より好ましくは60nm以上であり、さらに好ましくは80nm以上である。一方、画像表示装置の製造の観点からは、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14の半値幅は、狭いことが好ましい。これは、半導体微粒子蛍光体14の発光スペクトルの半値幅が狭い場合には、色再現性の高い画像表示装置を製造できるためである。その場合、発光スペクトルの半値幅の具体例としては、80nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以下であり、さらに好ましくは40nm以下である。
また、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14としては、当該半導体微粒子蛍光体14に含まれるコア部のバンドギャップエネルギーが制限されるものではないが、より好ましくは、2.9eV以下のものが利用される。これは、半導体微粒子蛍光体のコア部のバンドギャップエネルギーが、2.9eVを超えた場合には、人間の視感度が大幅に低下してしまうため、波長変換部材や発光装置、画像表示装置等の光学特性が悪化するためである。
また、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14としては、その平均粒子径が制限されるものではないが、より好ましくは、コア部の平均粒子径がボーア半径の2倍以下のものが利用される。これは、上述したように、コア部の平均粒子径をボーア半径の2倍以下とすることにより、高い量子閉じ込め効果が得られるためであり、バンドギャップエネルギーを容易に調整することができるようになるためである。なお、コア部に使用される代表的な材料であるInP、InN、CdSeのボーア半径は、それぞれ8.3nm、7.0nm、4.9nmである。
ここで、半導体微粒子蛍光体のコア部の粒子径のばらつきは、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルに大きな影響を与える。具体的には、半導体微粒子蛍光体のコア部の粒子径のばらつきが大きい場合には、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅は大きくなり、逆に半導体微粒子蛍光体のコア部の粒子径のばらつきが小さい場合には、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅は小さくなる。したがって、その用途に応じて必要とされる半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅が得られるように、粒子径分布を調整することが好ましい。
なお、半導体微粒子蛍光体のコア部の平均粒子径および粒子径分布を調整する方法としては、従来公知の分級方法を用いることができ、このような分級方法としては、たとえば電気泳動法やサイズ選択沈殿法、光アシストエッチング法等を利用することができる。
また、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14としては、当該半導体微粒子蛍光体14に含まれるシェル部のバンドギャップエネルギーが制限されるものではないが、コア部のハンドギャップエネルギーよりも大きいことが好ましい。このように構成すれば、光吸収により発生した励起子をコア部に閉じ込める効果を高く得ることができ、効率よく半導体微粒子蛍光体が発光することになる。
本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14のコア部の材料としては、たとえばIV族半導体やIV−IV族半導体材料、III−V族化合物半導体材料、II−VI族化合物半導体材料、I−VIII族化合物半導体材料、IV−VI族化合物半導体材料等が例示される。また、コア部の材料としては、混在する結晶が1種の元素からなる単体半導体や2種の元素からなる2元化合物半導体、3種以上の元素からなる混晶半導体を利用することができる。ただし、波長変換部材や発光装置、画像表示装置の発光効率を高めるという観点からは、直接遷移型半導体材料から構成される半導体微粒子を用いてコア部が構成されていることが好ましい。
また、コア部を構成する半導体微粒子としては、上述したように可視光を発するものを利用することが好ましい。また、耐久性の観点からは、原子の結合力が強く化学的安定性が高いIII−V族化合物半導体材料を用いることが好ましい。また、半導体微粒子蛍光体14の発光スペクトルのピーク波長の調整を容易にするためには、上述したように混晶半導体材料を用いてコア部を構成することが好ましい。一方で、より製造を容易にするためには、4元以下の混晶からなる半導体微粒子蛍光体を用いてコア部を構成することが好ましい。
上述した半導体微粒子蛍光体14のコア部として用いることのできる2元化合物からなる半導体材料としては、たとえばInPやInN、InAs、GaAs、CdSe、CdTe、ZnSe、ZnTe、PbS、PbSe、PbTe、CuCl等を挙げることができる。ただし、人体への安全性や環境負荷の観点からは、コア部の材料としてInP、InNを用いることが好ましい。また、製造の容易さの観点からは、コア部の材料としてCdSe、CdTeを用いることが好ましい。
また、上述した半導体微粒子蛍光体14のコア部として用いることのできる3元混晶の半導体材料としては、たとえばInGaPやAlInP、InGaN、AlInN、ZnCdSe、ZnCdTe、PbSSe、PbSTe、PbSeTe等を挙げることができる。ここで、環境に調和した材料であるとともに外界の影響を受けにくい半導体微粒子蛍光体を製作するためには、InGaPまたはInGaNからなるIII−V族混晶半導体微粒子を用いてコア部を構成することが好ましい。
本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14のシェル部の材料としては、たとえばIV族半導体やIV−IV族半導体材料、III−V族化合物半導体材料、II−VI族化合物半導体材料、I−VIII族化合物半導体材料、IV−VI族化合物半導体材料等が例示される。また、シェル部の材料としては、混在する結晶が1種の元素からなる単体半導体や2種の元素からなる2元化合物半導体、3種以上の元素からなる混晶半導体を利用することができる。ただし、波長変換部材や発光装置、画像表示装置の発光効率を高めるという観点からは、シェル部の材料としてコア部の材料よりも高いバンドギャップエネルギーを有する半導体材料を使用することが好ましい。
また、シェル部を構成する半導体微粒子としては、上述したコア部の保護機能の観点から、原子の結合力が強く化学的安定性が高いIII−V族化合物半導体材料を用いることが好ましい。一方、より製造を容易にするためには、4元以下の混晶からなる半導体微粒子蛍光体を用いてシェル部を構成することが好ましい。
上述した半導体微粒子蛍光体14のシェル部として用いることのできる2元化合物からなる半導体材料としては、たとえばAlPやGaP、AlN、GaN、AlAs、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl等を挙げることができる。ただし、人体への安全性や環境負荷の観点からは、シェル部の材料としてAlP、GaP、AlN、GaN、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、SiCを用いることが好ましい。
また、上述した半導体微粒子蛍光体14のコア部として用いることのできる3元混晶の半導体材料としては、たとえばAlGaNやGaInN、ZnOS、ZnOSe、ZnOTe、ZnSSe、ZnSTe、ZnSeTe等を挙げることができる。ここで、環境に調和した材料であるとともに外界の影響を受けにくい半導体微粒子蛍光体を製作するためには、AlGaN、GaInN、ZnOS、ZnOTe、ZnSTeを用いてシェル部を構成することが好ましい。
また、本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14の表面に結合される有機化合物の材料としては、機能部であるアルキル基と上記コア部またはシェル部との結合部からなる有機化合物が好ましく、具体例としては、アミン化合物やホスフィン化合物、ホスフィンオキシド化合物、チオール化合物、脂肪酸等が例示される。
ここで、ホスフィン化合物の一例としては、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等が挙げられる。
また、ホスフィンオキシド化合物の一例としては、1−ジクロロホスフィノルヘプタン、1−ジクロロホスフィノルノナン、t−ブチルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ドデシルジメチルホスフィンオキシド、ジオクチルホスフィンオキシド、ジデシルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。
また、チオール化合物の一例としては、トリブチルサルファイド、トリヘキシルサルファイド、トリオクチルサルファイド、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオール、ジヘキシルサルファイド、ジヘプチルサルファイド、ジオクチルサルファイド、ジノニルサルファイド等が挙げられる。
また、アミン化合物の一例としては、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン等が挙げられる。
また、脂肪酸の一例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイル酸等が挙げられる。
本実施の形態における波長変換部材10Aに具備される半導体微粒子蛍光体14の製作方法としては、従来既知の各種の合成方法が利用でき、たとえば気相合成法や液相合成法、固相合成法、真空合成法等を利用することができる。ただし、大量生産に対応することができるという観点からは、液相合成法を利用することが好ましく、また液相合成法のなかでも高い発光効率の半導体微粒子蛍光体を合成できるという観点から、特にホットソープ法、逆ミセル法、ソルボサーマル法、ハイドロサーマル法、共沈法等の合成方法を利用することが好ましい。
なお、上述した光透過性部材を構成する材料を特定する方法としては、X線光電子分光法等を利用することができる。
また、上述した半導体微粒子蛍光体の構造を調べる方法としては、種々の方法が適用でき、好適には、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による直接観察が利用できる。
また、上述した半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルのピーク波長や半値幅を確かめる方法としては、フォトルミネッセンス測定、カソードルミネッセンス測定、エレクトロルミネッセンス測定等を実施して発光スペクトルを測定することにより、そのピーク波長や半値幅を算出する方法が例示される。
また、上述した半導体微粒子蛍光体の吸収特性を確かめる方法としては、種々の方法が適用でき、好適には、分光光度計による吸収スペクトルの測定が利用できる。
また、上述した半導体微粒子蛍光体のコア部のバンドギャップエネルギーを確かめる方法としては、コア部の材料と平均粒子径とを特定してこれらに基づいて計算で求める方法や、発光特性および吸収特性から特定する方法等が例示される。
また、上述した半導体微粒子蛍光体のコア部の平均粒子径を求める方法としては、動的散乱法(DLS)や、粉末X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装置により測定する方法や、透過型電子顕微鏡による直接観察を利用する方法が例示される。ここで、粉末X線回折装置を利用する場合には、得られた結晶の回折ピークの半値幅からScherrer式を用いて結晶の平均粒子径を求めることができる。また、透過型電子顕微鏡を利用する場合には、たとえば任意の20個の粒子径を測定して統計処理を行なうことにより、平均粒子径を算出することができる。
また、上述した半導体微粒子蛍光体のシェル部のバンドギャップエネルギーを確かめる方法としては、シェル部の材料を特定してこれに基づいて計算で求める方法や、発光特性および吸収特性から特定する方法等が例示される。
また、上述した半導体微粒子蛍光体のコア部および/またはシェル部を構成する材料を特定する方法としては、粉末X線回折法、電子線回折法、X線光電子分光法等が利用できる。
また、上述した半導体微粒子蛍光体を覆う有機化合物の材料を確かめる方法としては、赤外分光法(IR)や核磁気共鳴法(NMR)等を利用することができる。
図2および図3に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Aにあっては、半導体微粒子蛍光体14として2種の半導体微粒子蛍光体14a,14bが含まれている。半導体微粒子蛍光体14aは、吸収した励起光100を波長変換して長波長蛍光を発するものであり、半導体微粒子蛍光体14bは、吸収した励起光100を波長変換して短波長蛍光を発するものである。これら長波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14aおよび短波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14bは、いずれも光透過性部材13中に分散配置されている。
ここで、本実施の形態における波長変換部材10Aにあっては、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に特定の異方性がもたされている。すなわち、本実施の形態における波長変換部材10Aにあっては、当該波長変換部材10Aの内部において、単位長さ当たりに存在する半導体微粒子蛍光体14,14bの量が方向によって異ならしめられている。より詳細には、図2に示すように、波長変換部材10Aの入射面11と出射面12とを結ぶ方向である光の進行方向に平行な方向(すなわちZ軸方向)における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が、上記光の進行方向に直交する方向(すなわちXY平面内に含まれる方向)における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度よりも低くなっている。
具体的には、波長変換部材10Aが、Z軸方向に沿って3つの領域15a,15b,15cを有しており、このうちの入射面11側に位置する領域15aと出射面12側に位置する領域15cとに半導体微粒子蛍光体14a,14bがそれぞれ分散配置されており、これら領域15a,15cの間に位置する領域15bには、半導体微粒子蛍光体14a,14bが分散配置されていない。これにより、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度の異方性が実現されている。
以上のように構成することにより、本実施の形態における波長変換部材10Aにあっては、従来の波長変換部材に比較して半導体微粒子蛍光体による励起光の吸収率を高めつつ濃度消光の発生を抑制して高い発光効率を実現可能としている。
図5は、本実施の形態における波長変換部材において光が波長変換される様子を模式的に示す図である。また、図50は、従来例における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図であり、図51は、従来例における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図52は、従来例における波長変換部材において光が波長変換される様子を模式的に示す図である。なお、図51に示す断面は、図50中に示すLI−LI線に沿った模式切断面である。以下においては、これら図5および図50ないし図52を参照して、本実施の形態における波長変換部材と従来例における波長変換部材とを比較しつつ、本実施の形態における波長変換部材が従来例における波長変換部材よりも高い発光効率を有する理由について説明する。
図50および図51に示すように、従来例における波長変換部材10Xにあっては、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に上述した如くの特定の異方性はなく、波長変換部材10X中における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が、実質的に全体にわたって均一となっていた。
そのため、図52に示すように、波長変換部材10Xの入射面11に励起光100が照射されると、以下のような現象が生じる。すなわち、励起光100のうちの一部の光は、図中矢印101,201に示すように、半導体微粒子蛍光体14a,14bのいずれにも吸収されずに光透過性部材13をそのまま透過する。また、励起光100のうちの一部の光は、図中矢印102,202および図中矢印103,203に示すように、半導体微粒子蛍光体14a,14bのいずれかに吸収されて蛍光に波長変換されて光透過性部材13を通過する。また、励起光100のうちの一部の光は、図中矢印104,204および図中矢印105,205に示すように、一度半導体微粒子蛍光体14a,14bに吸収されて蛍光に波長変換された後に、再度別の半導体微粒子蛍光体14a,14bに吸収され、場合によっては再々度別の半導体微粒子蛍光体14a,14bに吸収されて光透過性部材13を通過する。そして、光透過性部材13を通過した上記光が、波長変換部材10Xの出射面12から出射されて混合されることにより、波長変換光200として外部に照射されることになる。
ここで、半導体微粒子蛍光体は、吸収した光をすべて波長変換して再び発するわけではなく、吸収した光の一部は損失となって失われる。そのため、上述した光の再吸収(すなわち、一度半導体微粒子蛍光体に吸収されて発せされた光が再度別の半導体微粒子蛍光体に吸収される現象)が多く起こった場合には、波長変換部材自体の発光効率が大幅に低下してしまうことになる。
一方で、波長変換部材を利用して効率的に励起光を波長変換光に変換させるためには、半導体微粒子蛍光体に吸収される割合を高めることが必要不可欠である。そのためには、光透過性部材中に分散配置される半導体微粒子蛍光体の濃度を増加させることが考えられるが、そのように構成すれば上述した光の再吸収が起こり易くなってしまう。したがって、上述した従来例における波長変換部材10Xにあっては、半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度を増加させても濃度消光が生じて発光効率が飽和し、発光効率のさらなる改善が行なえないこととなっていた。
これに対し、本実施の形態における波長変換部材10Aにあっては、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度の異方性を有しているため、波長変換部材10Aの入射面11に励起光100が照射された場合にも、上述した光の再吸収が生じる割合が低下することになる。すなわち、図5に示すように、図中矢印101,102に示すように、半導体微粒子蛍光体14a,14bのいずれにも吸収されずに光透過性部材13をそのまま透過する光や、図中矢印102,202および図中矢印103,203に示すように、半導体微粒子蛍光体14a,14bのいずれかに吸収されて蛍光に波長変換されて再吸収されずにそのまま光透過性部材13を通過する光が支配的となる。
ここで、光透過性部材13中に分散配置される半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度を増加させた場合にも、領域15a,15cにおいてXY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度を高めることにより、Z軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度が低くても、効率的に励起光100を波長変換光に変換させることができる。したがって、本実施の形態における波長変換部材10Aとすることにより、従来例における波長変換部材10Xよりも高い発光効率を得ることができる。
なお、上述した本実施の形態における波長変換部材10Aにおいても、含有する半導体微粒子蛍光体14の種類や数、濃度、波長変換部材10Aに入射される励起光100の種類等を適宜調整(半導体微粒子蛍光体14の濃度については、異方性をもたせることを十分に考慮して調整)することにより、波長変換部材10Aから出射される波長変換光200の光量やスペクトルを自在に調整することができる。
図6は、本発明の実施の形態1における波長変換部材の製造方法を示すフロー図であり、図53は、上述した従来例における波長変換部材の製造方法を示すフロー図である。次に、これら図6および図53を参照して、本実施の形態における波長変換部材の製造方法を、従来例における波長変換部材の製造方法と比較して説明する。
図53に示すように、従来例における波長変換部材10Xを製造するにあたっては、まず、ステップS1において、半導体微粒子蛍光体を製作する。半導体微粒子蛍光体の製作方法としては、上述した既知の合成方法(たとえば液相合成法等)が利用できる。
次に、ステップS2において、半導体微粒子蛍光体を液状樹脂に添加して分散させることにより、半導体微粒子蛍光体が液状樹脂中において分散した混合液を作製する。ここで、使用する樹脂としては、硬化後において光透過性を有するたとえばシリコーン樹脂等を用いる。
次に、ステップS3において、混合液を成形用の型等に流し込み、混合液中に含まれる液状樹脂を硬化させる。
以上により、図50および図51に示す如くの、半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が実質的に全体にわたって均一である、従来例における波長変換部材10Xの製造が完了する。
一方、図6に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Aを製造するにあたっては、まず、ステップS101において、半導体微粒子蛍光体を製作する。半導体微粒子蛍光体の製作方法としては、上述した既知の合成方法(たとえば液相合成法等)が利用できる。
次に、ステップS102において、半導体微粒子蛍光体を液状樹脂に添加して分散させることにより、半導体微粒子蛍光体が液状樹脂中において分散した混合液を作製し、作製した混合液を所定量ずつに取り分ける。ここで、使用する樹脂としては、硬化後において光透過性を有するたとえばシリコーン樹脂等を用いる。
次に、ステップS103において、取り分けた一方の混合液中に含まれる液状樹脂を硬化させる。これにより、図2に示す領域15aが形成されることになる。
次に、ステップS104において、上記硬化後の部材の主表面上に所定量の液状樹脂を塗布し、塗布した液状樹脂を硬化させる。これにより、図2に示す領域15bが形成されることになる。
次に、ステップS105において、上記硬化後の部材の主表面上に取り分けた他方の混合液を塗布し、塗布した他方の混合液中に含まれる液状樹脂を硬化させる。これにより、図2に示す領域15cが形成されることになる。
以上により、図1ないし図3に示す如くの、半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に特定の異方性を有する、本実施の形態における波長変換部材10Aの製造が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態における波長変換部材10Aの如くの構造およびその製造方法を採用することにより、従来に比して発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図8は、本実施の形態における波長変換部材の製造方法を示すフロー図である。次に、これら図7および図8を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造および製造方法について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図7に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Bにあっても、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に上記特定の異方性がもたされており、波長変換部材10BのZ軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が、XY平面内に含まれる方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度よりも低くなっている。
より具体的には、波長変換部材10Bが、Z軸方向に沿って濃度の異なる2つの領域15a,15dを有しており、このうちの入射面11側に位置する領域15aにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bが高濃度に分散配置されており、出射面12側に位置する領域15dにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bが低濃度に分散配置されている。これにより、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度の異方性が実現されている。
このような構造の波長変換部材10Bを製造するにあたっては、図8に示すように、まず、ステップS201において、半導体微粒子蛍光体14a,14bを製作する。半導体微粒子蛍光体の製作方法としては、上述した既知の合成方法(たとえば液相合成法等)が利用できる。
次に、ステップS202において、半導体微粒子蛍光体を液状樹脂に添加して分散させることにより、半導体微粒子蛍光体が液状樹脂中において高濃度に分散した高濃度混合液と、半導体微粒子蛍光体が液状樹脂中において低濃度に分散した低濃度混合液とをそれぞれ作製する。ここで、使用する樹脂としては、硬化後において光透過性を有するたとえばシリコーン樹脂等を用いる。
次に、ステップS203において、高濃度混合液中に含まれる液状樹脂を硬化させる。これにより、図7に示す領域15aが形成されることになる。
次に、ステップS204において、上記硬化後の部材の主表面上に低濃度混合液を塗布し、塗布した低濃度混合液中に含まれる液状樹脂を硬化させる。これにより、図7に示す領域15dが形成されることになる。
以上により、図7に示す如くの、半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に特定の異方性を有する、本実施の形態における波長変換部材10Bの製造が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態における波長変換部材10Bの如くの構造およびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1の場合と同様に、従来に比して発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。図10は、本実施の形態における波長変換部材をXY平面に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図11は、本実施の形態における波長変換部材の製造方法を示すフロー図である。なお、図10に示す断面は、図9中に示すX−X線に沿った模式切断面である。次に、これら図9ないし図10を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造および製造方法について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図9に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Cにあっても、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に上記特定の異方性がもたされており、波長変換部材10CのZ軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が、XY平面内に含まれる方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度よりも低くなっている。
より具体的には、波長変換部材10Cが、Z軸方向に沿って2つの領域16a,16bを有しており、このうちの入射面11側に位置する領域16aにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bが分散配置されており、出射面12側に位置する領域16bにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bが分散配置されていない。すなわち、半導体微粒子蛍光体14a,14bが、光透過性部材13の入射面11側に局在している。これにより、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度の異方性が実現されている。
ここで、本実施の形態における波長変換部材10Cにあっては、図10に示すように、半導体微粒子蛍光体14a,14bとしてほぼ同等の粒子径を有するものが用いられ、上記領域16aのXY平面内において半導体微粒子蛍光体14a,14bが六方格子状に規則的に配列されている。このように構成された波長変換部材10Cにあっては、半導体微粒子蛍光体14a,14bがXY面内方向において最密充填された状態にあるため、当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度を最大限にまで高めることが可能になる。したがって、Z軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度とXY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度との差を大きく異ならしめることが可能となり、光の再吸収を抑制しつつ発光効率を大幅に高めることが可能となる。
このような構造の波長変換部材10Cを製造するにあたっては、図11に示すように、まず、ステップS301において、半導体微粒子蛍光体14a,14bを製作する。半導体微粒子蛍光体の製作方法としては、上述した既知の合成方法(たとえば液相合成法等)が利用できる。
次に、ステップS302において、半導体微粒子蛍光体を揮発性溶剤に添加して分散させることにより、半導体微粒子蛍光体が揮発性溶剤中において分散した分散液を作製する。ここで、使用する揮発性溶剤としては、たとえばトルエン、ヘキサン、エタノール等に代表される有機溶剤等が使用可能である。
次に、ステップS303において、分散液中に含まれる半導体微粒子蛍光体を凝集および沈殿させ、その後、分散液中に含まれる揮発性溶剤を揮発させる。このステップS303における半導体微粒子蛍光体の凝集および沈殿過程においては、半導体微粒子蛍光体の自己組織化(自己配列とも称される)が起こる。
ここで、自己組織化とは、微粒子が安定化するために凝集する際に、自立的に秩序構造を形成することを意味する。より詳細には、微粒子が分散した系においては、微粒子の体積に対する表面積の割合が非常に大きいため、表面エネルギーが安定化するように、分散した微粒子の表面積が最も小さくなるように微粒子同士が凝集し、結果として規則的な微粒子の配列が生じるが、この現象を自己組織化と呼ぶ。この半導体微粒子蛍光体の自己組織化により、上述した如くの六方格子状等の半導体微粒子蛍光体の規則的な配列が実現されることになる。
次に、ステップS304において、沈殿および凝集させた半導体微粒子蛍光体(すなわち自己組織化した半導体微粒子蛍光体)を封止するように液状樹脂を塗布し、塗布した液状樹脂を硬化させる。ここで、使用する樹脂としては、硬化後において光透過性を有するたとえばシリコーン樹脂等を用いる。これにより、図7に示す領域16aおよび16bが形成されることになる。
以上により、図9に示す如くの、半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に特定の異方性を有する、本実施の形態における波長変換部材10Cの製造が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態における波長変換部材10Cの如くの構造およびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1の場合と同様に、従来に比して発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。特に、上述した半導体微粒子蛍光体の自己組織化作用を利用することにより、従来に比して大幅に発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。
なお、上述した波長変換部材10Cの領域16aにおける半導体微粒子蛍光体14a,14bの立体的な充填構造としては、六方最密充填構造や立方最密充填等の最密充填構造であってもよいし、これら以外の非最密充填構造であってもよい。また、立体的な充填構造を有さずに単一の層として半導体微粒子蛍光体14a,14bが配列されていてもよい。
また、上述した本実施の形態における波長変換部材10Cにあっては、半導体微粒子蛍光体14a,14bを光透過性部材13の入射面11側に局在させた場合を例示したが、当然に半導体微粒子蛍光体14a,14bを光透過性部材13の出射面12側に局在させることとしてもよい。
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。次に、この図12を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態3と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図12に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Dにあっても、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に上記特定の異方性がもたされており、波長変換部材10CのZ軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が、XY平面内に含まれる方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度よりも低くなっている。
より具体的には、波長変換部材10Dが、Z軸方向に沿って4つの領域17a,17b,17c,17dを有しており、このうちの入射面11側に位置する領域17aおよびZ軸方向の一方の中間位置にある領域17cにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bが分散配置されており、出射面12側に位置する領域17dおよびZ軸方向の他方の中間位置にある領域17bにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bが分散配置されていない。これにより、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度の異方性が実現されている。
ここで、本実施の形態における波長変換部材10Dにあっても、半導体微粒子蛍光体14a,14bとしてほぼ同等の粒子径を有するものが用いられ、上記領域17aのXY平面内および上記領域17cのXY平面内において半導体微粒子蛍光体14a,14bが六方格子状に規則的に配列されている。このように構成された波長変換部材10Dにあっても、Z軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度とXY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度との差を大きく異ならしめることが可能となり、光の再吸収を抑制しつつ発光効率を大幅に高めることが可能となる。なお、当該波長変換部材10Dの具体的な製造方法は、上記本発明の実施の形態3において説明した製造方法に準じるものであり、その説明は省略する。
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5における波長変換部材をXY平面に沿って切断した場合の模式断面図である。次に、この図13を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態3と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態における波長変換部材10Eにあっては、上述した本発明の実施の形態3における波長変換部材10Cと、領域17aに含まれるXY平面内における半導体微粒子蛍光体14a,14bの配列においてのみ相違する。図13に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Eにあっては、当該XY平面内における半導体微粒子蛍光体14a,14bが立方格子状に規則的に配列されている。ここで、半導体微粒子蛍光体14a,14bが六方格子状に配列されるか立方格子状に配列されるかは、主として半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子径によるところが大きく、自己組織化の際にこれらの粒子径に基づいて決定される。
このように構成された波長変換部材10Eにあっても、Z軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度とXY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの濃度との差を大きく異ならしめることが可能となり、光の再吸収を抑制しつつ発光効率を大幅に高めることが可能となる。なお、当該波長変換部材10Eの具体的な製造方法は、上記本発明の実施の形態3において説明した製造方法に準じるものであり、その説明は省略する。
なお、上述した波長変換部材10Eの領域17aにおける半導体微粒子蛍光体14a,14bの立体的な充填構造としては、最密充填構造であっても非最密充填構造であってもよい。また、図示する如く立体的な充填構造を有さずに単一の層として半導体微粒子蛍光体14a,14bが配列されていてもよい。
(実施の形態6)
図14は、本発明の実施の形態6における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。図15は、本実施の形態における波長変換部材をXY平面に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図16は、本実施の形態における波長変換部材の製造方法を示すフロー図である。なお、図15に示す断面は、図14中に示すXV−XV線に沿った模式切断面である。次に、これら図14ないし図15を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造および製造方法について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態3と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図14に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Fにあっても、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に上記特定の異方性がもたされており、波長変換部材10FのZ軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度が、XY平面内に含まれる方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度よりも低くなっている。
より具体的には、本実施の形態における波長変換部材10Fにあっては、半導体微粒子蛍光体14a,14bが種類毎に分離されてZ軸方向に層状に積層配置されている。すなわち、波長変換部材10Fが、Z軸方向に沿って3つの領域18a,18b,18cを有しており、このうちの入射面11側に位置する領域18aにおいて半導体微粒子蛍光体14aのみが分散配置されており、Z軸方向における中間位置にある領域18bにおいて半導体微粒子蛍光体14bのみが分散配置されており、出射面12側に位置する領域18cにおいて半導体微粒子蛍光体14a,14bのいずれもが分散配置されていない。したがって、図15に示すように、領域18a内には、半導体微粒子蛍光体14aの一種のみが分散配置されている。なお、その図示は省略するが、領域18b内には、もう一方の半導体微粒子蛍光体14bの一種のみが分散配置されている。これにより、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度の異方性が実現されている。
ここで、本実施の形態における波長変換部材10Fにあっては、高波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14aが光透過性部材13の入射面11側に層状に分散配置されており、低波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14bが、上記高波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14aよりも光透過性部材13の出射面12側に層状に分散配置されている。
このように、半導体微粒子蛍光体14のZ軸方向の配列を、各層(各領域)に含まれる半導体微粒子蛍光体14の発光波長が光透過性部材13の入射面11側から出射面12側に向かうにつれて小さくなるように構成されていることにより、光の再吸収が抑制されて波長変換部材の発光効率をより高めることが可能になる。
これは、一般に、半導体微粒子蛍光体は、発光波長より短波長の光を吸収する特性があるためである。たとえば、長波長で発光する赤色半導体微粒子蛍光体と短波長で発光する緑色半導体微粒子蛍光体が存在したと仮定すると、発光波長の短い緑色半導体微粒子蛍光体の蛍光は、赤色半導体微粒子蛍光体に吸収されるが、発光波長の長い赤色半導体微粒子蛍光体の蛍光は、緑色半導体微粒子蛍光体に吸収されず透過する。したがって、上記のように構成することにより、光の再吸収が抑制されることになる。
このような構造の波長変換部材10Fを製造するにあたっては、図16に示すように、まず、ステップS401において、発光波長の異なる2種類の半導体微粒子蛍光体を製作する。半導体微粒子蛍光体の製作方法としては、上述した既知の合成方法(たとえば液相合成法等)が利用できる。
次に、ステップS402において、半導体微粒子蛍光体を揮発性溶剤に添加して分散させることにより、一方の種類の半導体微粒子蛍光体が揮発性溶剤中において分散した分散液と、他方の種類の半導体微粒子蛍光体が揮発性溶剤中において分散した分散液とをそれぞれ作製する。ここで、使用する揮発性溶剤としては、たとえばトルエンに代表される有機溶剤等が使用可能である。
次に、ステップS403において、一方の分散液中に含まれる半導体微粒子蛍光体を凝集および沈殿させ、その後、当該一方の分散液中に含まれる揮発性溶剤を揮発させる。このステップS403における半導体微粒子蛍光体の凝集および沈殿過程においては、半導体微粒子蛍光体の自己組織化が起こる。
次に、ステップS404において、沈殿および凝集させた半導体微粒子蛍光体を封止するように液状樹脂を塗布し、塗布した液状樹脂を硬化させる。ここで、使用する樹脂としては、硬化後において光透過性を有するたとえばシリコーン樹脂等を用いる。これにより、図7に示す領域18aが形成されることになる。
次に、ステップS405において、上記硬化後の部材の主表面上に他方の分散液を塗布し、塗布した他方の分散液中に含まれる半導体微粒子蛍光体を凝集および沈殿させ、その後、当該他方の分散液中に含まれる揮発性溶剤を揮発させる。このステップS405における半導体微粒子蛍光体の凝集および沈殿過程においては、半導体微粒子蛍光体の自己組織化が起こる。
次に、ステップS406において、沈殿および凝集させた半導体微粒子蛍光体を封止するように液状樹脂を塗布し、塗布した液状樹脂を硬化させる。ここで、使用する樹脂としては、硬化後において光透過性を有するたとえばシリコーン樹脂等を用いる。これにより、図14に示す領域18b,18cが形成されることになる。
以上により、図14に示す如くの、半導体微粒子蛍光体14a,14bの分散濃度に特定の異方性を有する、本実施の形態における波長変換部材10Fの製造が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態における波長変換部材10Fの如くの構造およびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態3の場合と同様に、従来に比して大幅に発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。特に、上述の如くの半導体微粒子蛍光体の配列を採用することにより、従来に比して飛躍的に発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。
なお、上述した本実施の形態における波長変換部材10Fにあっては、2種類の半導体微粒子蛍光体を分離して層状に積層配置した場合を例示して説明を行なったが、3種類または4種類あるいはそれ以上の半導体微粒子蛍光体をそれぞれ分離して層状に積層配置することとしてもよい。その場合にも、半導体微粒子蛍光体のZ軸方向の配列を、各層に含まれる半導体微粒子蛍光体の発光波長が光透過性部材の入射面側から出射面側に向かうにつれて小さくなるように構成することが好ましい。
(実施の形態7)
図17は、本発明の実施の形態7における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。次に、この図17を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態6と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図17に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Gにあっても、光透過性部材13中に分散配置された半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eの分散濃度に上記特定の異方性がもたされており、波長変換部材10GのZ軸方向における半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eの分散濃度が、XY平面内に含まれる方向における半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eの分散濃度よりも低くなっている。
より具体的には、本実施の形態における波長変換部材10Gにあっては、半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eが種類毎に分離されてZ軸方向に層状に積層配置されている。すなわち、波長変換部材10Gが、Z軸方向に沿って4つの領域19a,19b,19c,19dを有しており、このうちの入射面11側に位置する領域19aにおいて半導体微粒子蛍光体14cのみが分散配置されており、Z軸方向における一方の中間位置にある領域19bにおいて半導体微粒子蛍光体14dのみが分散配置されており、Z軸方向における他方の中間位置にある領域19cにおいて半導体微粒子蛍光体14eのみが分散配置されており、出射面12側に位置する領域19dにおいて半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eのいずれもが分散配置されていない。これにより、上述した如くの半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eの分散濃度の異方性が実現されている。
ここで、本実施の形態における波長変換部材10Gにあっては、上述した3種類の半導体微粒子蛍光体14c,14d,14eがそれぞれ異なる粒子径を有しており、最も粒子径の大きい半導体微粒子蛍光体14cが光透過性部材13の入射面11側に層状に分散配置されており、上記半導体微粒子蛍光体14cよりも粒子径の小さい半導体微粒子蛍光体14dが、上記半導体微粒子蛍光体14cよりも光透過性部材13の出射面12側に層状に分散配置されており、上記半導体微粒子蛍光体14dよりも粒子径の小さい半導体微粒子蛍光体14eが、上記半導体微粒子蛍光体14dよりも光透過性部材13の出射面12側に層状に分散配置されている。
このように、半導体微粒子蛍光体14のZ軸方向の配列を、各層(各領域)に含まれる半導体微粒子蛍光体14の粒子径が光透過性部材13の入射面11側から出射面12側に向かうにつれて小さくなるように構成されていることにより、光の再吸収が抑制されて波長変換部材の発光効率をより高めることが可能になる。これは、一般に粒子径が大きい半導体微粒子蛍光体ほど発光波長が長くなるため、入射面11側に粒子径の大きい、すなわち発光波長の長い半導体微粒子蛍光体を配置することで光の再吸収が抑制されるためである。
以上において説明したように、本実施の形態における波長変換部材10Gの如くの構造およびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態6の場合と同様に、従来に比して大幅に発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。特に、上述の如くの半導体微粒子蛍光体の配列を採用することにより、従来に比して飛躍的に発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。なお、当該波長変換部材10Gの具体的な製造方法は、上記本発明の実施の形態6において説明した製造方法に準じるものであり、その説明は省略する。
なお、上述した本実施の形態における波長変換部材10Gにあっては、3種類の半導体微粒子蛍光体を分離して層状に積層配置した場合を例示して説明を行なったが、2種類または4種類あるいはそれ以上の半導体微粒子蛍光体をそれぞれ分離して層状に積層配置することとしてもよい。その場合にも、半導体微粒子蛍光体のZ軸方向の配列を、各層に含まれる半導体微粒子蛍光体の粒子径が光透過性部材の入射面側から出射面側に向かうにつれて小さくなるように構成することが好ましい。
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし7においては、半導体微粒子蛍光体が少なくとも2種類以上含有されてなる波長変換部材10A〜10Gを例示して説明を行なったが、当然に1種類のみの半導体微粒子蛍光体を含有する波長変換部材としてもよく、その場合にも本発明を適用することは可能である。
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし7においては、波長変換部材のZ軸方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度がXY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度よりも低くなるように構成したものを例示して説明を行なったが、自己組織化を利用して半導体微粒子蛍光体を規則的に配列させることで波長変換部材を製造する場合には、必ずしも上述した如くの半導体微粒子蛍光体の分散濃度の異方性を波長変換部材にもたせる必要はない。すなわち、その場合には、半導体微粒子蛍光体の分散濃度が波長変換部材の内部において全体にわたって実質的に均一となってしまうことになるが、その代わりにXY面内方向における波長変換部材の大きさをZ軸方向における波長変換部材の厚みよりも十分に大きくすることにより、蛍光の再吸収を防止可能な高発光効率の波長変換部材とすることができる。
ところで、波長変換部材の発光効率を評価する指標として、内部量子効率(IQE)と外部量子効率(EQE)とがある。内部量子効率(IQE)とは、波長変換部材が吸収した光量のうち、どの程度波長変換光を放出するかという変換の効率を示す指標である。ここで、当該内部量子効率(IQE)は、波長変換光の光量を吸収光の光量で割った値で表される。一方、外部量子効率(EQE)とは、波長変換部材に入射した光量のうち、どの程度波長変換光を放出するかという変換の効率を示す指標である。当該外部量子効率(EQE)は、内部量子効率(IQE)と入射光の吸収率の積で表される。
ここで、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gの内部量子効率(IQE)としては、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。また、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gの外部量子効率(EQE)としては、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。内部量子効率(IQE)および外部量子効率(EQE)の高い波長変換部材は、損失が少なく光を変換できる点において非常に優位である。なお、波長変換部材の内部量子効率(IQE)と外部量子効率(EQE)の測定方法としては、積分球を用いた全光束の測定が例示される。
また、波長変換部材の性能を評価する一つの指標として、吸収率がある。以上において説明した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gにおいては、当該吸収率として任意の値をとってよい。しかしながら、外部量子効率(EQE)を高める観点から、吸収率はより高いことが好ましい。なお、波長変換部材の吸収率の測定方法としては、分光光度計を用いた方法や積分球を用いた方法等が例示される。
(実施の形態8)
図18は、本発明の実施の形態8における発光装置の模式断面図である。次に、この図18を参照して、本実施の形態における発光装置の構造について説明する。
本実施の形態における発光装置は、発光素子としての半導体発光ダイオード素子(以下、単にLEDとも称する)と、上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gとを組み合わせた構造のものである。すなわち、本実施の形態における発光装置は、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材を備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図18に示す発光装置30においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図18に示すように、発光装置30は、LED31と、プリント配線板32と、枠体36と、封止樹脂層37と、波長変換部材10Aとを主として備えている。
プリント配線板32は、基体となる部材であり、その表裏面に達するように一対の電極33a,33bが設けられている。LED31は、表裏面に接続電極を有する半導体チップからなり、その裏面電極がプリント配線板32に設けられた一方の電極33aに導電層34を介して接合されることにより、プリント配線板32の主表面上に実装されている。ここで、導電層34としては、半田等のろう材や導電性の接着剤、導電ペースト等が利用できる。また、LED31の表面電極は、金属ワイヤ35を介してプリント配線板32に設けられた他方の電極33bに接続されている。
枠体36は、LED31を取り囲むようにプリント配線板32上に立設して設けられている。波長変換部材10Aは、枠体36の上部に固定されており、その入射面11がLED31と対峙している。プリント配線板32、枠体36および波長変換部材10Aによって規定される空間は、封止樹脂層37によって充填されており、当該封止樹脂層37によってLED31が封止されている。
ここで、本実施の形態における発光装置30に具備されるLED31は、上述したように、半導体発光ダイオード素子である。この半導体発光ダイオード素子は、電子と正孔が再結合する際に光を発する特性を利用した発光素子であり、半導体活性層とp型電極層とn型電極層とを備えており、半導体活性層がp型電極層およびn型電極層に挟み込まれた構造を有している。ここで、p型電極層は、上述した表面電極に電気的に接続されて外部回路に接続され、n型電極層は、上述した裏面電極に電気的に接続されて外部回路に接続される。
半導体発光ダイオード素子の半導体基板材料としては、従来既知の一般的な組成のものを用いることができるが、本実施の形態における発光装置30においては、LED31として、たとえばGaN系半導体発光素子、ZnSe系半導体発光素子、SiC系半導体発光素子等が好適に用いられる。特に、GaN系半導体発光素子は、発光効率が高く、また実用性の高い発光装置が実現可能であるという理由から特に好適に利用できる。
また、本実施の形態における発光装置30に具備されるLED31としては、420nm〜480nmの波長領域に発光スペクトルのピーク波長を有する半導体発光ダイオード素子が特に好適に利用されるが、350〜420nmの波長領域に発光スペクトルのピーク波長を有する半導体発光ダイオード素子が利用されてもよい。発光スペクトルのピーク波長が420〜480nmの波長領域にある半導体発光ダイオード素子は、当該半導体発光ダイオード素子の発光を、発光装置の発光の青色成分としてそのまま利用することができる。したがって、青色の蛍光体が不要となるため、蛍光体による波長変換損失がなくなるため発光装置の発光効率が向上し、また装置構成が簡略化するという特徴がある。また、発光スペクトルのピーク波長が350〜420nmの波長領域にある半導体発光ダイオード素子は、一般に420〜480nmの波長領域にある半導体発光ダイオード素子より発光効率が高いため、かかる半導体発光ダイオード素子を用いることにより、発光装置の発光効率を高めることができる。また、特に発光スペクトルのピーク波長が440〜460nmの波長領域にある半導体発光ダイオード素子は、後述する画像表示装置において使用される青色カラーフィルタとの波長整合性が高い利点があるため、当該用途に使用する発光装置とする場合には、画像表示装置の色再現性および発光効率の両立の観点から、特に好適に使用できる。
一方、本実施の形態における発光装置30に具備される波長変換部材としては、演色性の観点から、2種以上の半導体微粒子蛍光体を含んでいるものを利用することが好ましく、また発光効率の観点から、4種以下の半導体微粒子蛍光体を含んでいるものが好ましい。したがって、波長変換部材としては、半導体微粒子蛍光体を2種以上4種以下で含むものが特に好適に利用される。しかしながら、製造容易化の観点からは、より少ない種類の半導体微粒子蛍光体を含む波長変換部材とすることが好ましい。
より詳細には、半導体微粒子蛍光体が1種のみ含まれる場合には、可視光の波長範囲の一部のみしか再現できないことになるため、演色性が低下してしまう問題がある。しかしながら、その反面、半導体微粒子蛍光体間での蛍光の再吸収が生じないため、発光効率は大幅に向上する。また、半導体微粒子蛍光体が1種のみ含まれる場合には、半導体微粒子蛍光体の量の調整による色度調整が容易に行なえるため、製造が容易に行なえることになる。一方、半導体微粒子蛍光体が4種以上含まれる場合には、演色性は向上するものの、製造が困難になるといった問題や、蛍光の再吸収が生じ易くなって発光効率の低下が顕著になってしまうといった問題が生じる。
本実施の形態における発光装置30におけるLED31と波長変換部材の特に好ましい組み合わせとしては、青色LEDと1種類の蛍光体(たとえば黄色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用すれば、発光効率が高い発光装置を実現できる効果が得られる。
また、他の好ましい組み合わせとしては、青色LEDと2種類の蛍光体(たとえば緑色蛍光体と赤色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用すれば、演色性が高く発光効率が高い発光装置を実現できる効果が得られる。
また、さらに他の好ましい組み合わせとしては、紫外LEDと3種類の蛍光体(たとえば青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用すれば、発光効率の高い紫外LEDを用いることが出来るため、発光効率が高い発光装置を実現できる効果が得られる。
以上において説明した本実施の形態における発光装置30にあっては、LED31から出射された励起光が波長変換部材の入射面11から入射し、入射面11から入射した光の一部が光透過性部材13中を透過して出射面12から出射され、入射面11から入射した光の一部が半導体微粒子蛍光体14に吸収されて波長変換されて蛍光として発生されて出射面12から出射され、これら出射面12から出射された光が混合されて波長変換光として外部に照射される。このとき、上述した波長変換部材の分散濃度の異方性の作用により、出射面12から出射される波長変換光の発光効率を高めることができる。したがって、本実施の形態における発光装置30とすることにより、従来の発光装置に比較して高い発光効率を有する発光装置とすることができる。
なお、本実施の形態における発光装置30の出射光の発光スペクトルとしては、420nm〜480nmの青色波長の光、500nm〜550nmの緑色波長の光、および580nm〜650nmの赤色波長の光を含んでいることが好ましい。また、後述する画像表示装置に本実施の形態における発光装置30を適用する場合には、後述するカラーフィルタに整合する波長特性を有する出射光を出射可能に構成することにより、色再現性が高く発光効率の高い画像表示装置が実現可能になる。
(実施の形態9)
図19は、本発明の実施の形態9における発光装置の模式断面図である。次に、この図19を参照して、本実施の形態における発光装置の構造について説明する。
本実施の形態における発光装置は、発光素子としての半導体発光レーザダイオード素子(以下、単にLD(Laser Diode)とも称する)と、上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gとを組み合わせた構造のものである。すなわち、本実施の形態における発光装置は、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材を備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図19に示す発光装置40においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図19に示すように、発光装置40は、LD41と、ヒートシンク・ステム42と、ウィンド・キャップ47と、波長変換部材10Aとを主として備えている。
ヒートシンク・ステム42は、基体となる部材であり、その所定位置に一対の端子ピン43a,43bが設けられている。LD41は、表裏面に接続電極を有する半導体チップからなり、その裏面電極がヒートシンク・ステム42に設けられた一方の端子ピン43aにSiサブマウント48を介して接合されることにより、ヒートシンク・ステム42に実装されている。ここで、LD41とSiサブマウント48との接合には、半田等を用いたろう付けが好適に利用され、Siサブマウント48と端子ピン43aの接合には、銀ペースト等の導電ペーストが好適に利用される。また、LD41の表面電極は、金属ワイヤ45を介して、ヒートシンク・ステム42に設けられた他方の端子ピン43bに接続されている。
ウィンド・キャップ47は、レーザ光を外部に出射するためのガラス窓を有する箱状の部材からなり、LD41を覆うようにヒートシンク・ステム42に接合されている。波長変換部材10Aは、ウィンド・キャップ47から所定の距離だけ離間した位置に配置されており、その入射面11がLD41と対峙している。これにより波長変換部材10Aには、LD41から出射されたレーザ光が照射される。
ここで、本実施の形態における発光装置40に具備されるLD41は、上述したように、半導体発光レーザダイオード素子である。この半導体発光レーザダイオード素子は、電子と正孔が再結合する際に光を発する特性を利用した発光素子であり、半導体活性層、p型半導体層、n型半導体層、p型電極層およびn型電極層を備えており、半導体活性層がp型半導体層およびn型半導体層によって挟み込まれ、これらがさらにp型電極層およびn型電極層に挟み込まれた構造を有している。ここで、p型電極層は、上述した表面電極に電気的に接続されて外部回路に接続され、n型電極層は、上述した裏面電極に電気的に接続されて外部回路に接続される。
半導体発光レーザダイオード素子の半導体基板材料としては、従来既知の一般的な組成のものを用いることができるが、本実施の形態における発光装置40においては、LD41として、たとえばGaN系半導体発光素子、ZnSe系半導体発光素子、SiC系半導体発光素子等が好適に用いられる。特に、GaN系半導体発光素子は、発光効率が高く、また実用性の高い発光装置が実現可能であるという理由から特に好適に利用できる。
また、本実施の形態における発光装置40に具備されるLD41としては、420nm〜480nmの波長領域に発光スペクトルのピーク波長を有する半導体発光レーザダイオード素子が特に好適に利用されるが、350〜420nmの波長領域に発光スペクトルのピーク波長を有する半導体発光レーザダイオード素子が利用されてもよい。発光スペクトルのピーク波長が420〜480nmの波長領域にある半導体発光レーザダイオード素子は、当該半導体発光レーザダイオード素子の発光を、発光装置の発光の青色成分としてそのまま利用することができる。したがって、青色の蛍光体が不要となるため、蛍光体による波長変換損失がなくなるため発光装置の発光効率が向上し、また装置構成が簡略化するという特徴がある。また、発光スペクトルのピーク波長が350〜420nmの波長領域にある半導体発光レーザダイオード素子は、一般に420〜480nmの波長領域にある半導体発光レーザダイオード素子より発光効率が高いため、かかる半導体発光レーザダイオード素子を用いることにより、発光装置の発光効率を高めることができる。また、特に発光スペクトルのピーク波長が440〜460nmの波長領域にある半導体発光レーザダイオード素子は、後述する画像表示装置において使用される青色カラーフィルタとの波長整合性が高い利点があるため、当該用途に使用する発光装置とする場合には、画像表示装置の色再現性および発光効率の両立の観点から、特に好適に使用できる。
一方、本実施の形態における発光装置40に具備される波長変換部材としては、演色性の観点から、2種以上の半導体微粒子蛍光体を含んでいるものを利用することが好ましく、また発光効率の観点から、4種以下の半導体微粒子蛍光体を含んでいるものが好ましい。したがって、波長変換部材としては、半導体微粒子蛍光体を2種以上4種以下で含むものが特に好適に利用される。しかしながら、製造容易化の観点からは、より少ない種類の半導体微粒子蛍光体を含む波長変換部材とすることが好ましい。
より詳細には、半導体微粒子蛍光体が1種のみ含まれる場合には、可視光の波長範囲の一部のみしか再現できないことになるため、演色性が低下してしまう問題がある。しかしながら、その反面、半導体微粒子蛍光体間での蛍光の再吸収が生じないため、発光効率は大幅に向上する。また、半導体微粒子蛍光体が1種のみ含まれる場合には、半導体微粒子蛍光体の量の調整による色度調整が容易に行なえるため、製造が容易に行なえることになる。一方、半導体微粒子蛍光体が4種以上含まれる場合には、演色性は向上するものの、製造が困難になるといった問題や、蛍光の再吸収が生じ易くなって発光効率の低下が顕著になってしまうといった問題が生じる。
本実施の形態における発光装置40におけるLD41と波長変換部材の特に好ましい組み合わせとしては、青色LDと1種類の蛍光体(たとえば黄色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用すれば、発光効率が高い発光装置を実現できる効果が得られる。
また、他の好ましい組み合わせとしては、青色LDと2種類の蛍光体(たとえば緑色蛍光体と赤色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用すれば、演色性が高く発光効率が高い発光装置を実現できる効果が得られる。
また、さらに他の好ましい組み合わせとしては、紫外LDと3種類の蛍光体(たとえば青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用すれば、発光効率の高い紫外LDを用いることが出来るため、発光効率が高い発光装置を実現できる効果が得られる。
以上において説明した本実施の形態における発光装置40にあっては、LD41から出射された励起光が波長変換部材の入射面11から入射し、入射面11から入射した光の一部が光透過性部材13中を透過して出射面12から出射され、入射面11から入射した光の一部が半導体微粒子蛍光体14に吸収されて波長変換されて蛍光として発生されて出射面12から出射され、これら出射面12から出射された光が混合されて波長変換光として外部に照射される。このとき、上述した波長変換部材の分散濃度の異方性の作用により、出射面12から出射される波長変換光の発光効率を高めることができる。したがって、本実施の形態における発光装置40とすることにより、従来の発光装置に比較して高い発光効率を有する発光装置とすることができる。
なお、本実施の形態における発光装置40の出射光の発光スペクトルとしては、420nm〜480nmの青色波長の光、500nm〜550nmの緑色波長の光、および580nm〜650nmの赤色波長の光を含んでいることが好ましい。また、後述する画像表示装置に本実施の形態における発光装置40を適用する場合には、後述するカラーフィルタに整合する波長特性を有する出射光を出射可能に構成することにより、色再現性が高く発光効率の高い画像表示装置が実現可能になる。
(実施の形態10)
図20は、本発明の実施の形態10における発光装置の模式断面図である。次に、この図20を参照して、本実施の形態における発光装置の構造について説明する。
本実施の形態における発光装置は、発光素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単にEL(Electroluminescence)とも称する)と、上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gとを組み合わせた構造のものである。すなわち、本実施の形態における発光装置は、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材を備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図20に示す発光装置50においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図20に示すように、発光装置50は、EL51と、波長変換部材10Aとを主として備えている。
EL51は、基板51aと、基板51aの一方の主表面上に設けられた陽極部51bと、陽極部51b上に順次積層された正孔注入層51c、正孔輸送層51d、発光層51e、電子輸送層51f、電子注入層51g、陰極部51hとを備えている。一方、波長変換部材10Aは、上記基板51aの他方の主表面上に設けられており、その入射面11が基板51a側に対峙している。
ここで、本実施の形態における発光装置50に具備されるEL51は、上述したように、有機エレクトロルミネッセンス素子である。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、電圧印加時に発光層51eが正孔輸送層51dから正孔を受け取るとともに電子輸送層51fから電子を受け取ることにより、発光層51eにおいて正孔と電子の再結合が生じて発光することを利用した発光素子である。
発光層51eは、ホスト材料を含み、燐光発光材料からなるドーパントをさらに含むことが好ましい。ホスト材料としては、電荷輸送材料(電子輸送性材料および正孔輸送性材料を総称する)であることが好ましく、正孔輸送性材料と電子輸送性材料とを含むことがさらに好ましい。
ホスト材料の最低多重項励起状態のエネルギーレベルは、ドーパント材料の最低多重項励起状態のエネルギーレベルより大きいことが好ましい。なお、ホスト材料とドーパント材料とを共蒸着することにより、ドーパント材料がホスト材料にドープされた発光層を好適に形成することができる。
ホスト材料の具体例としては、例えば、ピレン骨格を有するもの、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するもの等が例示される。
発光層51eに含有される燐光発光材料は、一般に、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体であることが好ましい。燐光発光材料は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウムおよび白金が挙げられる。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウムおよびガドリニウムが特に好ましい。
上記条件を満たす燐光発光材料の具体例としては、FIrpic:ビス〔2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト〕ピコリナトイリジウム(III)、FIr6:ビス[2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C2′]テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート、Ir(ppy)3:トリスフェニルピリジナトイリジウム(III)などが例示される。
正孔注入層51cおよび正孔輸送層51dは、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層51cおよび正孔輸送層51dは、具体的には、正孔輸送性材料として、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
電子注入層51gおよび電子輸送層51fは、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層51gおよび電子輸送層51fは、具体的には、電子輸送性材料として、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体等を含有する層であることが好ましい。中でも分子内にヘテロ原子を1個以上有する芳香族ヘテロ環化合物を電子輸送性材料として含有する層であることが好ましい。芳香族ヘテロ環化合物とは、芳香族性を有するヘテロ化合物であり、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールあるいはこれらの縮合環が挙げられる。
陽極部51bは、通常、正孔注入層51cに正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造および大きさ等については特に制限はなく、有機エレクトロルミネッセンス素子の用途および目的等に応じて、既知の電極材料の中から適宜選択することができる。また、陽極部51bの材料は、透明な材料であることが好ましい。この場合、陽極部側から発光層51eの発光を損失なく取り出すことができる。
陽極部51bを構成する材料としては、たとえば金属、合金、金属酸化物、導電性化合物またはこれらの混合物が好適に利用でき、仕事関数が4.0eV以上の材料が特に好ましい。陽極部51bの材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で特に好ましいのは、導電性金属酸化物であり、生産性、高導電性および透明性等の観点からは、特にITOが好ましい。
また、陽極部51bの内部に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を作り込む構成としてもよい。この場合には、薄膜トランジスタを用いてON/OFF動作を制御できるため、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて画像表示装置を作製する場合に特に好適である。
陰極部51hは、通常、電子注入層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造および大きさ等については特に制限はなく、有機エレクトロルミネッセンス素子の用途および目的等に応じて、既知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極部51hを構成する材料としては、たとえば金属、合金、金属酸化物、導電性化合物またはこれらの混合物が好適に利用でき、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。陰極部51hの材料の具体例としては、アルカリ金属(たとえばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を併用することが好ましい。
基板51aは、有機エレクトロルミネッセンス素子の支持基体としての機能を有し、発光層51eから発せられる光を散乱または減衰させないものであることが好ましい。基板51aを構成する材料の具体例としては、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
また、本実施の形態における発光装置50に具備されるEL51としては、発光波長が520nm以下の有機エレクトロルミネッセンス素子が好適に利用される。これは、発光装置50において、緑色〜赤色発光の半導体微粒子蛍光体を効率よく励起することができるためである。また、本実施の形態における発光装置50に具備されるEL51としては、発光波長が420nm以上の有機エレクトロルミネッセンス素子が好適に利用される。有機エレクトロルミネッセンス素子の発光波長が上記範囲内にある場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光をそのまま利用することができ、装置構成が簡素化され、発光装置の製造が容易となる。また、特に発光スペクトルのピーク波長が440〜460nmの波長領域にある有機エレクトロルミネッセンス素子は、後述する画像表示装置において使用される青色カラーフィルタとの波長整合性が高い利点があるため、当該用途に使用する発光装置とする場合には、画像表示装置の色再現性および発光効率の両立の観点から、特に好適に使用できる。
一方、本実施の形態における発光装置50に具備される波長変換部材としては、演色性の観点から、2種以上の半導体微粒子蛍光体を含んでいるものを利用することが好ましく、また発光効率の観点から、4種以下の半導体微粒子蛍光体を含んでいるものが好ましい。したがって、波長変換部材としては、半導体微粒子蛍光体を2種以上4種以下で含むものが特に好適に利用される。しかしながら、製造容易化の観点からは、より少ない種類の半導体微粒子蛍光体を含む波長変換部材とすることが好ましい。
より詳細には、半導体微粒子蛍光体が1種のみ含まれる場合には、可視光の波長範囲の一部のみしか再現できないことになるため、演色性が低下してしまう問題がある。しかしながら、その反面、半導体微粒子蛍光体間での蛍光の再吸収が生じないため、発光効率は大幅に向上する。また、半導体微粒子蛍光体が1種のみ含まれる場合には、半導体微粒子蛍光体の量の調整による色度調整が容易に行なえるため、製造が容易に行なえることになる。一方、半導体微粒子蛍光体が4種以上含まれる場合には、演色性は向上するものの、製造が困難になるといった問題や、蛍光の再吸収が生じ易くなって発光効率の低下が顕著になってしまうといった問題が生じる。
本実施の形態における発光装置50におけるEL41と波長変換部材の特に好ましい組み合わせとしては、青色ELと1種類の蛍光体(たとえば黄色蛍光体)の組み合わせや、青色ELと2種類の蛍光体(たとえば緑色蛍光体と赤色蛍光体)の組み合わせが挙げられる。これらの組み合わせを採用すれば、面発光する発光装置を容易に実現できる効果が得られる。
以上において説明した本実施の形態における発光装置50にあっては、EL51から出射された励起光が波長変換部材の入射面11から入射し、入射面11から入射した光の一部が光透過性部材13中を透過して出射面12から出射され、入射面11から入射した光の一部が半導体微粒子蛍光体14に吸収されて波長変換されて蛍光として発生されて出射面12から出射され、これら出射面12から出射された光が混合されて波長変換光として外部に照射される。このとき、上述した波長変換部材の分散濃度の異方性の作用により、出射面12から出射される波長変換光の発光効率を高めることができる。したがって、本実施の形態における発光装置50とすることにより、従来の発光装置に比較して高い発光効率を有する発光装置とすることができる。
なお、本実施の形態における発光装置50の出射光の発光スペクトルとしては、420nm〜480nmの青色波長の光、500nm〜550nmの緑色波長の光、および580nm〜650nmの赤色波長の光を含んでいることが好ましい。また、後述する画像表示装置に本実施の形態における発光装置50を適用する場合には、後述するカラーフィルタに整合する波長特性を有する出射光を出射可能に構成することにより、色再現性が高く発光効率の高い画像表示装置が実現可能になる。
以上において説明した本発明の実施の形態8ないし10にあっては、半導体発光ダイオード素子と波長変換部材の組み合わせで構成された発光装置30、半導体発光レーザダイオード素子と波長変換部材の組み合わせで構成された発光装置40、および有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換部材の組み合わせで構成された発光装置50をそれぞれ例示して説明を行なったが、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gに組み合わせ可能な発光素子としては、この他にも無機エレクトロルミネッセンス素子やキセノンランプおよび蛍光灯等といった放電ランプが挙げられる。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを、半導体発光ダイオード素子または半導体発光レーザダイオード素子あるいは有機エレクトロルミネッセンス素子に組み合わせて発光装置を構成する場合にも、上述した本発明の実施の形態8ないし10において具体的に例示した構造以外の種々の構造を採用することができる。すなわち、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備する発光装置であれば、どのような構造のものであっても、従来に比して高い発光効率を有する発光装置とすることができる。
ところで、発光装置の色合いを評価する指標として、演色性指数がある。演色性指数とは、JIS(日本工業規格)で定められている基準光をもとに、発光装置の発光スペクトルがどの程度色ずれがあるかを定量的に評価した値である。物の見え方を平均的に評価するためには、平均演色性指数(Ra)が一般的に用いられる。ここで、平均演色性指数とは、いくつかの試験色での演色性指数の平均値である。なお、発光装置の演色性指数を求める方法としては、発光装置の発光スペクトルを測定する方法が例示される。
また、発光装置の明るさを評価する指標として、発光効率がある。発光効率とは、入力された電力量に対する出射光の光量の比で表される値であり、その単位はlm/Wである。発光効率が高い場合には、少ない電力で明るく照らすことが可能になるため、発光装置を製作するにあたっては、発光効率を可能な限り高めることが重要である。なお、発光装置の発光効率を測定する方法としては、全光束測定装置を用いる方法等が例示される。
(実施の形態11)
図21は、本発明の実施の形態11における画像表示装置の分解斜視図である。また、図22は、図21に示す光変換部の拡大分解斜視図である。また、図23は、図22に示すカラーフィルタの透過スペクトルを示すグラフであり、縦軸は透過率[%]を表わし、横軸は波長[nm]を表わしている。次に、これら図21ないし図30を参照して、本実施の形態における画像表示装置の構造について説明する。
本実施の形態における画像表示装置は、上述した本発明の実施の形態8および9のいずれかの発光装置30,40と、画像表示部とを組み合わせた構造のものである。したがって、本実施の形態における画像表示装置は、発光装置30,40において上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gを備えている。すなわち、本実施の形態における画像表示装置は、半導体発光ダイオード素子または半導体発光レーザダイオード素子のいずれかと、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材とを備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図21および図22に示す画像表示装置60においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図21に示すように、本実施の形態における画像表示装置60は、主として画像表示部62と照射部とを備えている。画像表示部62は、画像を表示可能な部位であり、図22に示す光変換部63をアレイ状に複数具備してなる。一方、照射部は、画像表示部62に後方から光を照射する部位であり、アレイ状に配置された光源としての複数の発光装置30,40と、これら発光装置30,40と画像表示部62との間に配置された導光板61とを具備している。なお、複数の発光装置30,40のそれぞれは、その画像表示部62側の主表面に波長変換部材10Aを有している。
導光板61は、アレイ状に配置された複数の発光装置30,40から出射され、画像表示部62に照射される光の面内明るさのムラを緩和する機能を有しており、この導光板61を発光装置30,40と画像表示部62の間に介在させることにより、画像表示部62に照射される光の面内強度が均一化し、表示される画像の明るさのムラが低減できる。当該導光板61としては、たとえば表面に凹凸を付したアクリル樹脂製の板状部材等が使用でき、上記凹凸によって光が拡散されることで、上述した光の面内強度の均一化が図られる。
画像表示部62に設けられた光変換部63は、光の入射を受けた場合に特定の波長のみを出射可能にする機能を有する部位であり、特に本実施の形態における画像表示装置60に設けられる光変換部63は、入射光のうちの特定の波長のみの光を透過する性質を有している。なお、この光変換部63の、入射光のうちの特定の波長のみの光を透過する機能は、当該光変換部63に具備される、後述するカラーフィルタによって発揮される。
図22に示すように、光変換部63は、下部偏光板64、下部透明導電膜65、配向膜66a、液晶層66、配向膜66b、上部透明導電膜67、カラーフィルタ68および上部偏光板69がこの順で積層されてなるものである。このうち、下部透明導電膜65には、下部電極65aおよびTFT65bがそれぞれ複数個(図示する例では3個)設けられており、上部透明導電膜67にも、上記下部電極65aに対応して上部電極67aが複数個設けられている。また、カラーフィルタ68は、上記下部電極65aおよび上記上部電極67aに対応して複数の領域に分割されており、当該領域にそれぞれ異なる波長領域の光を透過するフィルタ部68aが配置されてなる。上記構造の光変換部63は、液晶表示部とも称される。
ここで、カラーフィルタ68としては、たとえば図23に示す如くの透過スペクトルを有するものが特に好適に利用される。すなわち、カラーフィルタ68としては、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタおよび青色カラーフィルタの3つのフィルタ部68aを具備してなるものが好適に利用される。各フィルタ部68aは、たとえば染料や顔料等によって構成される。このようなカラーフィルタを使用すれば、自然界に存在する大半の色調を画像表示部62において再現することが可能になり、色再現性の優れた画像表示装置とすることができる。なお、カラーフィルタ68としては、上記図23に示す透過スペクトルを有する3色のカラーフィルタ以外にも、異なる透過スペクトルを有する3色のカラーフィルタや2色または4色あるいは5色以上のカラーフィルタ等、どのようなものを使用してもよい。
本実施の形態における画像表示装置60にあっては、発光装置30,40として白色光を出射するものが好適に利用され、発光装置30,40から出射された白色光は、導光板61を透過して画像表示部62の光変換部63に照射される。光変換部63においては、TFT65bがON/OFF動作することで液晶層66における液晶の配向が制御され、これによりカラーフィルタ68に含まれる各フィルタ部68aを経由する下部偏光板64から上部偏光板69への光の透過量が制御される。これにより、画像表示部62において画像が表示されることになる。
以上において説明した本実施の形態における画像表示装置60にあっては、発光装置30,40が上述した分散濃度の異方性を有する波長変換部材を有しているため、当該発光装置30,40から出射される波長変換光の発光効率が高められている。したがって、上記構成の画像表示装置60とすることにより、高い発光効率(画面輝度)と優れた色再現性を実現する画像表示装置とすることができる。
(実施の形態12)
図24は、本発明の実施の形態12における画像表示装置の分解斜視図である。また、図25は、図24に示す光変換部の拡大分解斜視図である。次に、これら図24および図25を参照して、本実施の形態における画像表示装置の構造について説明する。
本実施の形態における画像表示装置は、半導体発光ダイオード素子を発光素子として含む発光装置30′または半導体発光レーザダイオード素子を発光素子として含む発光装置40′と、上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gを含む画像表示部とを組み合わせた構造のものである。すなわち、本実施の形態における画像表示装置は、半導体発光ダイオード素子または半導体発光レーザダイオード素子のいずれかと、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材とを備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図24および図25に示す画像表示装置70においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図24に示すように、本実施の形態における画像表示装置70は、主として画像表示部72と照射部とを備えている。画像表示部72は、画像を表示可能な部位であり、図25に示す光変換部73をアレイ状に複数具備してなる。一方、照射部は、画像表示部72に後方から光を照射する部位であり、アレイ状に配置された光源としての複数の発光装置30′,40′と、これら発光装置30′,40′と画像表示部72との間に配置された導光板71とを具備している。なお、当該発光装置30′,40′は、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備した、上述した本発明の実施の形態8および9の如くの発光装置30,40であってもよいし、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備していない従来の発光装置であってもよい。
導光板71は、アレイ状に配置された複数の発光装置30′,40′から出射され、画像表示部72に照射される光の面内明るさのムラを緩和する機能を有しており、この導光板71を発光装置30′,40′と画像表示部72の間に介在させることにより、画像表示部72に照射される光の面内強度が均一化し、表示される画像の明るさのムラが低減できる。当該導光板71としては、たとえば表面に凹凸を付したアクリル樹脂製の板状部材等が使用でき、上記凹凸によって光が拡散されることで、上述した光の面内強度の均一化が図られる。
画像表示部72に設けられた光変換部73は、光の入射を受けた場合に特定の波長のみを出射可能にする機能を有する部位であり、特に本実施の形態における画像表示装置70に設けられる光変換部73は、入射光とは異なる波長の光を出射する性質を有している。なお、この光変換部73の、入射光とは異なる波長の光を出射する機能は、当該光変換部73に具備される波長変換部材10Aによって発揮される。
図24に示すように、光変換部73は、下部偏光板74、下部透明導電膜75、配向膜76a、液晶層76、配向膜76b、上部透明導電膜77、波長変換板78および上部偏光板79がこの順で積層されてなるものである。このうち、下部透明導電膜75には、下部電極75aおよびTFT75bがそれぞれ複数個(図示する例では3個)設けられており、上部透明導電膜77にも、上記下部電極75aに対応して上部電極77aが複数個設けられている。また、波長変換板78は、上記下部電極75aおよび上記上部電極77aに対応して複数の領域に分割されており、当該領域にそれぞれ異なる波長領域の光を出射する波長変換部材10Aが配置されてなる。上記構造の光変換部73は、液晶表示部とも称される。
ここで、波長変換板78としては、たとえば入射光を波長変換して青色光として出射する波長変換部材と、入射光を波長変換して緑色光として出射する波長変換部材と、入射光を波長変換して赤色光として出射する波長変換部材とを具備してなるものが好適に利用される。これら各波長変換部材は、当該波長変換部材に用いられる半導体微粒子蛍光体の種類や濃度等を適宜調節することで形成可能である。このような波長変換板78を使用すれば、自然界に存在する大半の色調を画像表示部72において再現することが可能になり、色再現性の優れた画像表示装置とすることができる。なお、波長変換板78としては、上記3色の光を出射するもの以外にも種々のものが利用可能である。
本実施の形態における画像表示装置70にあっては、発光装置30′,40′から出射された光が導光板71を透過して画像表示部72の光変換部73に照射される。光変換部73においては、TFT75bがON/OFF動作することで液晶層76における液晶の配向が制御され、これにより波長変換板78に含まれる各波長変換部材10Aを経由する下部偏光板74から上部偏光板79への光の透過量が制御される。これにより、画像表示部72において画像が表示されることになる。
以上において説明した本実施の形態における画像表示装置70にあっては、画像表示部72の光変換部73が上述した分散濃度の異方性を有する波長変換部材を有しているため、画像表示部72から出射される波長変換光の発光効率が高められている。したがって、上記構成の画像表示装置70とすることにより、高い発光効率(画面輝度)と優れた色再現性を実現する画像表示装置とすることができる。
(実施の形態13)
図26は、本発明の実施の形態13における画像表示装置の分解斜視図である。また、図27は、図26に示す光変換部の拡大分解斜視図である。次に、これら図26および図27を参照して、本実施の形態における画像表示装置の構造について説明する。
本実施の形態における画像表示装置は、上述した本発明の実施の形態10の発光装置50と、画像表示部とを組み合わせた構造のものである。したがって、本実施の形態における画像表示装置は、発光装置50において上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gを備えている。すなわち、本実施の形態における画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材とを備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図26および図27に示す画像表示装置80においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図26に示すように、本実施の形態における画像表示装置80は、主として画像表示部82と照射部とを備えている。画像表示部82は、画像を表示可能な部位であり、図27に示す光変換部83をアレイ状に複数具備してなる。一方、照射部は、画像表示部82に後方から光を照射する部位であり、アレイ状に配置された光源としての複数の発光装置50を具備している。なお、複数の発光装置50のそれぞれは、その画像表示部82側の主表面に波長変換部材10Aを有している。
画像表示部82に設けられた光変換部83は、光の入射を受けた場合に特定の波長のみを出射可能にする機能を有する部位であり、特に本実施の形態における画像表示装置80に設けられる光変換部83は、入射光のうちの特定の波長のみの光を透過する性質を有している。なお、この光変換部83の、入射光のうちの特定の波長のみの光を透過する機能は、当該光変換部83に具備される、後述するカラーフィルタによって発揮される。
図27に示すように、光変換部83は、カラーフィルタ88によって構成されている。カラーフィルタ88は、複数の領域に分割されており、当該領域にそれぞれ異なる波長領域の光を透過するフィルタ部88aが配置されてなる。
ここで、カラーフィルタ88としては、たとえば上述した図23に示す如くの透過スペクトルを有するものが特に好適に利用される。すなわち、カラーフィルタ88としては、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタおよび青色カラーフィルタの3つのフィルタ部88aを具備してなるものが好適に利用される。各フィルタ部88aは、たとえば染料や顔料等によって構成される。このようなカラーフィルタを使用すれば、自然界に存在する大半の色調を画像表示部82において再現することが可能になり、色再現性の優れた画像表示装置とすることができる。なお、カラーフィルタ88としては、上記図23に示す透過スペクトルを有する3色のカラーフィルタ以外にも、異なる透過スペクトルを有する3色のカラーフィルタや2色または4色あるいは5色以上のカラーフィルタ等、どのようなものを使用してもよい。
本実施の形態における画像表示装置80にあっては、発光装置50として白色光を出射するものが好適に利用され、発光装置50から出射された白色光は、画像表示部82の光変換部83に照射される。発光装置50の内部には、図示しないTFTが設けられており、当該TFTがON/OFF動作することでカラーフィルタ88に含まれる各フィルタ部88aを経由する光の透過量が制御される。これにより、画像表示部82において画像が表示されることになる。
以上において説明した本実施の形態における画像表示装置80にあっては、発光装置50が上述した分散濃度の異方性を有する波長変換部材を有しているため、当該発光装置50から出射される波長変換光の発光効率が高められている。したがって、上記構成の画像表示装置80とすることにより、高い発光効率(画面輝度)と優れた色再現性を実現する画像表示装置とすることができる。
なお、本実施の形態における画像表示装置80にあっては、導光板を配置しない構成を採用したが、これは導光板を配置せずとも画像表示部82の全面にわたって照射部の光を照射可能に構成できるためである。しかしながら、必要がある場合には、当然に導光板を設ける構成としてもよい。
(実施の形態14)
図28は、本発明の実施の形態14における画像表示装置の分解斜視図である。また、図29は、図28に示す光変換部の拡大分解斜視図である。次に、これら図28および図29を参照して、本実施の形態における画像表示装置の構造について説明する。
本実施の形態における画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子を発光素子として含む発光装置50′と、上述した本発明の実施の形態1ないし7のいずれかの波長変換部材10A〜10Gを含む画像表示部とを組み合わせた構造のものである。すなわち、本実施の形態における画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性を有する波長変換部材とを備えている。ここで、上記分散濃度の異方性については、説明が重複するので省略する。なお、図28および図29に示す画像表示装置90においては、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aを具備したものを例示している。
図28に示すように、本実施の形態における画像表示装置90は、主として画像表示部92と照射部とを備えている。画像表示部92は、画像を表示可能な部位であり、図29に示す光変換部93をアレイ状に複数具備してなる。一方、照射部は、画像表示部92に後方から光を照射する部位であり、アレイ状に配置された光源としての複数の発光装置50′を具備している。なお、当該発光装置50′は、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備した、上述した本発明の実施の形態10の如くの発光装置50であってもよいし、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備していない従来の発光装置であってもよい。
画像表示部92に設けられた光変換部93は、光の入射を受けた場合に特定の波長のみを出射可能にする機能を有する部位であり、特に本実施の形態における画像表示装置90に設けられる光変換部93は、入射光とは異なる波長の光を出射する性質を有している。なお、この光変換部93の、入射光とは異なる波長の光を出射する機能は、当該光変換部93に具備される波長変換部材10Aによって発揮される。
図29に示すように、光変換部93は、波長変換板98によって構成されている。波長変換板98は、複数の領域に分割されており、当該領域にそれぞれ異なる波長領域の光を出射する波長変換部材10Aが配置されてなる。
ここで、波長変換板98としては、たとえば入射光を波長変換して青色光として出射する波長変換部材と、入射光を波長変換して緑色光として出射する波長変換部材と、入射光を波長変換して赤色光として出射する波長変換部材とを具備してなるものが好適に利用される。これら各波長変換部材は、当該波長変換部材に用いられる半導体微粒子蛍光体の種類や濃度等を適宜調節することで形成可能である。このような波長変換板98を使用すれば、自然界に存在する大半の色調を画像表示部92において再現することが可能になり、色再現性の優れた画像表示装置とすることができる。なお、波長変換板98としては、上記3色の光を出射するもの以外にも種々のものが利用可能である。
本実施の形態における画像表示装置90にあっては、発光装置50′から出射された光が画像表示部92の光変換部93に照射される。発光装置50′の内部には、図示しないTFTが設けられており、当該TFTがON/OFF動作することで波長変換板98に含まれる各波長変換部材10Aを経由する光の透過量が制御される。これにより、画像表示部92において画像が表示されることになる。
以上において説明した本実施の形態における画像表示装置90にあっては、画像表示部92の光変換部93が上述した分散濃度の異方性を有する波長変換部材を有しているため、画像表示部92から出射される波長変換光の発光効率が高められている。したがって、上記構成の画像表示装置90とすることにより、高い発光効率(画面輝度)と優れた色再現性を実現する画像表示装置とすることができる。
なお、本実施の形態における画像表示装置90にあっては、導光板を配置しない構成を採用したが、これは導光板を配置せずとも画像表示部92の全面にわたって照射部の光を照射可能に構成できるためである。しかしながら、必要がある場合には、当然に導光板を設ける構成としてもよい。
以上において説明した本発明の実施の形態11ないし14にあっては、いわゆる液晶表示装置および有機EL表示装置を例示して説明を行なったが、他の画像表示装置に上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備させることも当然に可能である。また、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを、上述した液晶表示装置や有機EL表示装置に適用する場合にも、上述した本発明の実施の形態11ないし14において具体的に例示した構造以外の種々の構造を採用することができる。すなわち、上述した本発明の実施の形態1ないし7における波長変換部材10A〜10Gを具備する画像表示装置であれば、どのような構造のものであっても、従来に比して高い発光効率と優れた色再現性を有する画像表示装置とすることができる。
ところで、画像表示装置の性能を示す指標として、色再現性が挙げられる。色再現性とは、画像表示装置において表示可能な色域の大きさを示すものであり、NTSC比を用いて表わされる。NTSC比は、NTSC(National Television System Committee)が定めた赤、緑、青の各色のCIE1976色度図の色度座標(u′,v′)(赤(0.498,0.519)、緑(0.076,0.576)、青(0.152,0.196))を結んで得られる三角形の面積と、CIE1976色度図における色度座標(u′,v′)の赤、緑、青の各色の色度座標を結んで得られる三角形の面積との面積比率により表わされる指標である。
また、画像表示装置の性能を示す他の指標として、画面明るさが挙げられる。画面明るさとは、画像表示装置から発せられる光の強さを示すものである。ここで、画面明るさは、画像表示装置においてRGB画素をフルオープンして白色表示を行なった場合の画面輝度で表わされる指標である。
(実施の形態15)
図54は、本発明の実施の形態15における波長変換部材の概略斜視図である。図55は、本実施の形態における波長変換部材をXZ平面に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図56は、本実施の形態における波長変換部材の波長変換層をXY平面に沿って切断した場合の模式断面図である。なお、図55に示す断面は、図54中に示すLV−LV線に沿った模式断面図である。また、図56に示す断面は、図55中に示すLVI−LVI線に沿った模式断面図である。まず、これら図54ないし図56を参照して、本実施の形態における波長変換部材の構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図54に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Hは、所定の厚みを有する略直方体形状の部材からなり、入射光の少なくとも一部を吸収して吸収した光とは異なる波長の光を出射する機能を有するものである。波長変換部材10Hは、波長変換層1010、第1光透過性部材1001および第2光透過性部材1002の積層体によって構成されており、波長変換層1010は、第1光透過性部材1001および第2光透過性部材1002によって挟み込まれている。
波長変換層1010は、その一方の主表面を入射面1011として有しており、他方の主表面を出射面1012として有している。波長変換層1010の入射面1011は、上述した第1光透過性部材1001によって覆われており、波長変換層1010の出射面1012は、上述した第2光透過性部材1002によって覆われている。
ここで、第1光透過性部材1001および第2光透過性部材1002は、比較的脆弱な波長変換層1010を保護する目的で波長変換部材10Hに具備されるものであり、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂等の光透過性樹脂材料からなる基板や、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、イットリア等の光透過性無機材料からなる基板等にて構成される。代表的には、第1光透過性部材1001および第2光透過性部材1002としては、たとえばガラス基板にて構成される。なお、波長変換部材10Hの波長変換層1010が十分な機械的強度を有している場合には、これら第1光透過性部材1001および第2光透過性部材1002を特に設ける必要はない。
波長変換部材10Hの入射面1011には、発光素子から出射される励起光100が第1光透過性部材1001を介して照射される。入射面1011に照射された励起光100は、波長変換部材10Hの波長変換層1010の内部に導入され、導入された光の一部の波長が波長変換層1010の内部において変換される。波長変換部材10Hの出射面1012からは、上述した波長変換後の光を含む光が波長変換光200として第2光透過性部材1002を介して外部に向けて出射される。
ここで、図54に示すように、互いに直交する並進3軸(X軸、Y軸およびZ軸)のうち、励起光100および波長変換光200の光軸をZ軸方向に規定すると、上述した入射面1011および出射面1012は、いずれもZ軸と直交するXY平面にて構成されることになる。
なお、図示する波長変換部材10Hは、偏平な平板状の外形を有しているが、波長変換部材の形状は、当該形状に限定されるものではなく、平板状以外の態様の直方体形状や円盤状の形状、円柱状の形状、多角柱状の形状等、どのような外形であってもよい。
図55および図56に示すように、波長変換部材10Hの波長変換層1010は、半導体微粒子蛍光体14の凝集体によって構成されている。すなわち、本実施の形態における波長変換部材10Hは、上述した本発明の実施の形態1に示した如くの、これら半導体微粒子蛍光体14を封止する光透過性部材13を具備していない。半導体微粒子蛍光体14は、波長変換層1010の内部に導入された励起光100を吸収してこれを波長変換することで異なる波長の光を発光するものであり、主として半導体微結晶粒子からなる部材である。なお、半導体微粒子蛍光体14としては、上述した本発明の実施の形態1と同様のものが利用できる。
図55および図56に示すように、本実施の形態における波長変換部材10Hにあっては、半導体微粒子蛍光体14として2種の半導体微粒子蛍光体14a,14bが含まれている。半導体微粒子蛍光体14aは、吸収した励起光100を波長変換して長波長蛍光を発するものであり、半導体微粒子蛍光体14bは、吸収した励起光100を波長変換して短波長蛍光を発するものである。これら長波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14aおよび短波長蛍光を発する半導体微粒子蛍光体14bは、いずれも波長変換層1010を構成する凝集体に含まれている。
ここで、本実施の形態における波長変換部材10Hにあっては、波長変換層1010が半導体微粒子蛍光体14a,14bの凝集体のみによって構成されており、当該凝集体に含まれる半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数に特定の異方性がもたされている。すなわち、本実施の形態における波長変換部材10Hにあっては、波長変換層1010を構成する凝集体に含まれる半導体微粒子蛍光体14,14bの量が方向によって異ならしめられている。より詳細には、図55に示すように、波長変換部材10Hの入射面11と出射面12とを結ぶ方向である光の進行方向に平行な方向(すなわちZ軸方向)における半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数が、上記光の進行方向に直交する方向(すなわちXY平面内に含まれる方向)における半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数よりも少なくなっている。
本実施の形態における波長変換部材10Hにあっては、図56に示すように、半導体微粒子蛍光体14a,14bとしてほぼ同等の粒子径を有するものが用いられ、波長変換層1010のXY平面内において半導体微粒子蛍光体14a,14bが六方格子状に規則的に配列されるとともに、図55に示すように、Z軸方向に沿って半導体微粒子蛍光体14a,14bが複数積み重なるように構成されている。このように構成された波長変換部材10Hにあっては、半導体微粒子蛍光体14a,14bがXY面内方向において最密充填された状態にあるため、当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数を最大限にまで高めることが可能になるとともに、Z軸方向に沿った半導体微粒子蛍光体14a,14bの積み重ねられる量を任意に調節することができるため、その厚みを自由に設定することが可能になる。したがって、Z軸方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数とXY面内方向における半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数とを大きく異ならしめることが可能となり、光の再吸収を抑制しつつ発光効率を大幅に高めることが可能となる。なお、Z軸方向に沿って半導体微粒子蛍光体14a,14bを積み重ねずに、そのZ軸方向に沿った半導体微粒子蛍光体14a,14bの数を1個にすることも可能である。
以上の構成とすることにより、本実施の形態における波長変換部材10Hにあっても、従来の波長変換部材に比較して半導体微粒子蛍光体による励起光の吸収率を高めつつ濃度消光の発生を抑制して高い発光効率を実現することが可能になる。その詳細なメカニズムは、上述した本発明の実施の形態1において説明したメカニズムと同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
なお、上述した本実施の形態における波長変換部材10Hにおいても、含有する半導体微粒子蛍光体14の種類や数、濃度、波長変換部材10Hに入射される励起光100の種類等を適宜調整(半導体微粒子蛍光体14の数(粒子数)については、異方性をもたせることを十分に考慮して調整)することにより、波長変換部材10Hから出射される波長変換光200の光量やスペクトルを自在に調整することができる。
図57は、本実施の形態における波長変換部材の製造方法を示すフロー図である。次に、この図57を参照して、本実施の形態における波長変換部材の製造方法について説明する。
上述した構造の波長変換部材10Hを製造するにあたっては、図57に示すように、まず、ステップS501において、半導体微粒子蛍光体14a,14bを製作する。半導体微粒子蛍光体の製作方法としては、上述した既知の合成方法(たとえば液相合成法等)が利用できる。
次に、ステップS502において、半導体微粒子蛍光体を揮発性溶剤に添加して分散させることにより、半導体微粒子蛍光体が揮発性溶剤中において分散した分散液を作製する。ここで、使用する揮発性溶剤としては、たとえばトルエン、ヘキサン、エタノール等に代表される有機溶剤等が使用可能である。
次に、ステップS503において、分散液中に含まれる半導体微粒子蛍光体を凝集および沈殿させ、その後、分散液中に含まれる揮発性溶剤を揮発させることにより、半導体微粒子蛍光体の凝集体を製作する。このステップS503における半導体微粒子蛍光体の凝集および沈殿過程においては、半導体微粒子蛍光体の自己組織化が起こり、上述した如くの六方格子状等の半導体微粒子蛍光体の規則的な配列が実現されることになる。このとき、分散液中に含まれる半導体微粒子蛍光体の量を調節することにより、凝集体の厚みを所望のものに設定することも可能である。
その後、必要に応じて、ステップS503で得られた凝集体を挟み込むように、第1光透過性部材1001および第2光透過性部材1002を設ける。なお、予め第1光透過性部材1001の主面上において半導体微粒子蛍光体14a,14bを析出させることとしてもよい。
以上により、図55および図56に示す如くの、半導体微粒子蛍光体14a,14bの粒子数に特定の異方性を有する、本実施の形態における波長変換部材10Hの製造が完了する。
以上において説明したように、本実施の形態における波長変換部材10Hの如くの構造およびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1の場合と同様に、従来に比して発光効率の向上が図られた波長変換部材とすることができる。
なお、本実施の形態における波長変換部材10Hも、上述した本発明の実施の形態1における波長変換部材10Aと同様に、発光装置や画像表示装置に好適に組み込むことができる。その場合の発光装置や画像表示装置の具体的な構成は、上述した本発明の実施の形態8ないし14に準じるものであるため、その説明は省略するが、本実施の形態における波長変換部材10Hを具備した発光装置および画像表示装置とすることにより、上述した本発明の実施の形態8ないし14の場合と同様に、従来に比して高い発光効率を有する発光装置および従来に比して高い発光効率(画面輝度)と優れた色再現性を実現する画像表示装置とすることができる。
以下においては、本発明が適用された波長変換部材、発光装置および画像表示装置と、本発明が適用されていない波長変換部材、発光装置および画像表示装置とを実際に試作し、これらの評価を行った試験内容および試験結果について詳細に説明する。
ここで、以下に示す実施例A1〜A18は、本発明が適用された波長変換部材であり、比較例A1〜A10は、本発明が適用されていない波長変換部材である。また、以下に示す実施例B1〜B13は、本発明が適用された発光装置であり、比較例B1〜B8は、本発明が適用されていない発光装置である。また、以下に示す実施例C1〜C11は、本発明が適用された画像表示装置であり、比較例C1〜C10は、本発明が適用されていない画像表示装置である。
<InP/ZnS半導体微粒子蛍光体の合成方法>
実施例および比較例について説明するに先立ち、まずはこれら実施例および比較例において使用した半導体微粒子蛍光体の具体的な合成方法について説明する。実施例および比較例においては、半導体微粒子蛍光体として、主としてInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を使用した。
まず、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体のコア部となるInP微結晶粒子の合成方法について説明する。
まず、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内でトリオクチルホスフィン200mLとトリオクチルホスフィンオキシド17.3gとを秤量してから、これらを混合することにより10分間攪拌して混合溶媒Aを得た。
その後、グローブボックス内にある混合溶媒Aに、III族金属元素原料である三塩化インジウム2.2g(10.0mmol)と半導体微粒子のV族元素原料であるトリストリメチルシリルホスフィン2.5g(10.0mmol)とを加えて混合した後に、20℃で10分間攪拌することにより原料溶液Bを得た。
次に、原料溶液Bを窒素雰囲気の圧力容器中で攪拌しながら72時間加熱することにより、原料溶液Bに含まれる材料を合成させて合成溶液Cを得た。そして、合成反応終了後の合成溶液Cを室温まで自然放熱して冷却し、乾燥窒素雰囲気中で合成溶液Cを回収した。
この合成溶液Cに対して、貧溶媒の脱水メタノール200mLを加えることにより半導体微粒子蛍光体を析出させるという操作と、4000rpmで10分間遠心分離することにより半導体微粒子蛍光体を沈殿させるという操作と、脱水トルエンを加えることにより半導体微粒子蛍光体を再溶解させるという操作とをそれぞれ各10回ずつ繰り返すという分級工程を行なうことにより、特定の粒子径の半導体微粒子蛍光体を含む脱水トルエン溶液Dを得た。そして、脱水トルエン溶液Dから脱水トルエン溶媒を蒸発させることにより、固体粉末Eを回収した。
この固体粉末Eの回折ピークを粉末X線回折により観察したところ、InPの位置に回折ピークが見られたことから固体粉末EはInP結晶であることを確認した。ここで、当該観察には、株式会社リガク製の粉末X線回折測定装置Ultima IVを用いた。
さらに、固体粉末Eを透過型電子顕微鏡により直接観察し、20個の粒子径を測定して、それぞれの粒子径の値の平均値から平均粒子径を算出することで、InP結晶の平均粒子径を確認することが出来た。ここで、当該観察には、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡JEM−2100を用いた。
次に、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体のコア部となるInP微結晶粒子の表面を、シェル部となるZnSで被覆する合成方法について説明する。
まず、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内でInPコア部と、トリオクチルホスフィン200mLとトリオクチルホスフィンオキシド17.3gとを秤量してから、これらを混合することにより10分間攪拌して混合溶媒Fを得た。
その後、混合溶媒Fをフラスコ中で攪拌しながら、シェル成長温度に加熱した状態で、半導体微粒子シェル部のII族金属元素原料であるジエチル亜鉛1.2g(10.0mmol)と半導体微粒子シェル部のVI族元素原料であるトリオクチルホスフィンサルファイド4.0g(10.0mmol)とを個別に8時間かけて徐々に滴下することにより、合成溶液Gを得た。
この合成溶液Gに対して、コア部での処理と同様に分級工程を行なうことにより、特定の粒子径の半導体微粒子蛍光体を含む脱水トルエン溶液Hを得た。そして、脱水トルエン溶液Hから脱水トルエン溶媒を蒸発させることにより、固体粉末Iを回収した。
この固体粉末Iを透過型電子顕微鏡により直接観察することで、InPコア部の表面をZnSシェルが覆った構造をした、コア/シェル構造のInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を確認することができた。また、当該観察により、本合成方法で合成したInP/ZnS半導体微粒子蛍光体は、コア部の粒子径が2.1nm〜3.8nm、コア部の粒子径分布が6%〜40%であることを確認した。ここで、当該観察には、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡JEM−2100を用いた。
また、脱水トルエン溶液Hを測定することで、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体の光学特性を測定した。発光ピーク波長は、430nm〜720nmであり、発光半値幅は、35nm〜90nmであることを確認した。発光効率は、最大で70.9%に達した。ここで、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体の発光特性測定には、JOBIN YVON社製の蛍光分光光度計FluoroMax−4を使用し、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体の吸収スペクトル測定には、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100を用いた。
また、コア部の粒子径および粒子径分布ならびに光学特性は、合成条件や分級条件により変化することもあわせて確認を行なった。
<実施例A1〜A18および比較例A1〜A10>
図30は、実施例A1〜A18および比較例A1〜A10に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等をまとめた表である。図31は、実施例A1に係る波長変換部材の発光スペクトルを示すグラフである。図31においては、横軸に波長[nm]を表わし、縦軸に発光強度を示している。なお、図30に示す波長変換部材の内部量子効率(IQE)、吸収率および外部量子効率(EQE)の測定には、大塚電子株式会社製の発光測定システムMCPD−7000を使用した。
まず、実施例および比較例に係る波長変換部材の具体的な製造方法について説明する。なお、実施例に係る波長変換部材は、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する波長変換部材であり、比較例に係る波長変換部材は、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有しない波長変換部材である。また、実施例に係る波長変換部材においては、450nmの励起光を90%程度吸収し、各半導体微粒子蛍光体の発光が同程度の強度となるように、各種半導体微粒子蛍光体の量や光透過性部材の量を調整して製造した。
(実施例A1)
実施例A1では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.29mgをトルエン溶媒に分散させた。この分散液をスライドガラス上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。次に、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体5.38mgをトルエン溶媒に分散させ、この分散液をさらにスライドガラス上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。
次に、シリコーン樹脂A液を512.0mg、シリコーン樹脂B液を506.7mg秤量し、これらを混合した。混合後のシリコーン樹脂を上記スライドガラス上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させた。その後、スライドガラスを除去することにより、実施例A1に係る波長変換部材を得た。
実施例A1に係る波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図30に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が六方格子状に配列している(図15参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体が種類毎に層状に配列している(図14参照)ことが確認された。
また、実施例A1に係る波長変換部材を波長450nmの青色光で励起したところ、図31に示すような発光スペクトルが得られることが確認された。
また、図30に示すように、実施例A1に係る波長変換部材を波長450nmの青色光で励起した場合に、IQEが59.6%であり、EQEが53.8%であることが確認されるとともに、実施例A1に係る波長変換部材の波長450nmの青色光に対する吸収率が、90.3%であることが確認された。
(実施例A2〜A4)
実施例A2〜A4では、図30に示すように、上述した実施例A1の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A1との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量である。なお、当該実施例A2〜A4に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(実施例A5〜A8)
実施例A5〜A8では、図30に示すように、上述した実施例A1〜A4の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A1〜A4との相違点は、半導体微粒子蛍光体の積層順である。すなわち、実施例A5〜A8においては、先にInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体を含む分散液をスライドガラス上に塗布し、その後InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体を含む分散液をさらに上記スライドガラス上に塗布した。なお、当該実施例A5〜A8に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(実施例A9〜A11)
実施例A9では、図30に示すように、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該実施例A9に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
実施例A10では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該実施例A10に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
実施例A11では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該実施例A11に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(実施例A12〜A14)
実施例A12〜A14では、図30に示すように、上述した実施例A1の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A1との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量であり、実施例A12〜A14においては、上述した実施例A2〜A4よりも大幅にこれらの含有量を変化させることでこれら半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を変化させている。なお、当該実施例A12〜A14に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(実施例A15)
実施例A15では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図11に示す如くの製造方法に従って製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.29mgおよびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体5.40mgを混合し、その後これらをトルエン溶媒に分散させた。この分散液をスライドガラス上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。
次に、シリコーン樹脂A液を512.2mg、シリコーン樹脂B液を497.4mg秤量し、これらを混合した。混合後のシリコーン樹脂を上記スライドガラス上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させた。その後、スライドガラスを除去することにより、実施例A15に係る波長変換部材を得た。
実施例A15に係る波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図30に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が六方格子状に配列している(図10参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体が層状に配列している(図9参照)ことが確認された。
また、図30に示すように、実施例A15に係る波長変換部材を波長450nmの青色光で励起した場合に、IQEが49.0%であり、EQEが45.2%であることが確認されるとともに、実施例A12に係る波長変換部材の波長450nmの青色光に対する吸収率が、92.4%であることが確認された。
(実施例A16〜A18)
実施例A16〜A18では、図30に示すように、上述した実施例A15の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図11に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、実施例A15との相違点は、主としてInP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量である。なお、当該実施例A16〜A18に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(比較例A1)
比較例A1では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.29mgおよびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体5.48mgを混合した。次に、シリコーン樹脂A液を501.6mg、シリコーン樹脂B液を511.2mg秤量し、これらを混合した。
混合後のシリコーン樹脂に上記混合後の半導体微粒子蛍光体を混合して分散させ、これをスライドガラス上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させた。その後、スライドガラスを除去することにより、比較例A1に係る波長変換部材を得た。
比較例A1に係る波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図30に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体がランダムに分散している(図51参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体がランダムに分散している(図50参照)ことが確認された。
また、図30に示すように、比較例A1に係る波長変換部材を波長450nmの青色光で励起した場合に、IQEが33.5%であり、EQEが30.3%であることが確認されるとともに、比較例A1に係る波長変換部材の波長450nmの青色光に対する吸収率が、90.3%であることが確認された。
(比較例A2〜A4)
比較例A2〜A4では、図30に示すように、上述した比較例A1の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、比較例A1との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量である。なお、当該比較例A2〜A4に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(比較例A5〜A7)
比較例A5〜A7は、図30に示すように、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、比較例A1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該比較例A5に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
比較例A6では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、比較例A1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該比較例A6に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
比較例A7では、図30に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、比較例A1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該比較例A7に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
(比較例A8〜A10)
比較例A8〜A10では、図30に示すように、上述した比較例A1の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造した。ここで、比較例A1との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量であり、比較例A8〜A10においては、上述した比較例A2〜A4よりも大幅にこれらの含有量を変化させることでこれら半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を変化させている。なお、当該比較例A8〜A10に係る波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図30に示している。
[検討A1]
まず、波長変換部材の製造方法の違いが半導体微粒子蛍光体の分散状態に与える影響について検討する。当該検討には、実施例A1、実施例A15および比較例A1を参照する。
実施例A1、実施例A15および比較例A1においては、いずれも半導体微粒子蛍光体の含有量とシリコーン樹脂の含有量とがほぼ同等とされている。しかしながら、上述した製造方法の違いにより、波長変換部材中における半導体微粒子蛍光体の分散状態に図30に示す如くの違いが生じた。
図30に示すように、実施例A1および実施例A15においては、XY平面内において規則的に半導体微粒子蛍光体が配列しているのに対し、比較例A1においては、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が無秩序に位置している。これは、実施例A1および実施例A15においては、半導体微粒子蛍光体を揮発性溶剤に分散させた状態でスライドに塗布し、その後揮発性溶剤を揮発させたためであると考えられる。より詳細には、揮発性溶剤の揮発が進むと、揮発性溶剤がスライド上に厚さ数nm〜数十nm程度で覆う状態になると考えられ、このときに半導体微粒子蛍光体が自己組織化によって層状に規則的に配列するものと考えられる。また、実施例A1および実施例A15に係る波長変換部材が、いずれも図14および図9に示すように、半導体微粒子蛍光体が波長変換部材の片面側に局在していることも確認された。
また、ここでは、その詳細な説明は省略するが、別の製造方法を用いて波長変換部材を製造した場合に、半導体微粒子蛍光体が波長変換部材の中央あるいは全域に存在するものも作製できることを確認した。しかしながら、製造の容易化や大量生産の適合性から判断する限り、上述した実施例A1および実施例A15において採用した図16および図11の如くの製造方法が好適であると判断される。
また、実施例A1および実施例A15においては、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体がXY平面内において六方格子状に配列することが確認された。一方、赤色発光のCdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体(粒子径5.2nm)と緑色発光のCdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体(粒子径2.3nm)を用いて、実施例A1と同様の構造の波長変換部材を製造したところ、これらCdSe/Zns半導体微粒子蛍光体が正方格子状に配列する(図13参照)ことが確認された。これは、複数種類の半導体微粒子蛍光体を混合充填する場合に、半導体微粒子蛍光体の粒子径の違いが影響しているものと考えられる。すなわち、種類の異なる半導体微粒子蛍光体の粒子径の差が小さい場合には、六方格子状に配列したほうがより安定化するものと考えられる。
[検討A2]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが波長変換部材の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例A1、実施例A15および比較例A1を参照する。
実施例A1、実施例A15および比較例A1においては、いずれも半導体微粒子蛍光体の含有量とシリコーン樹脂の含有量とがほぼ同等とされている。しかしながら、実施例A1、実施例A15、比較例A1に係る波長変換部材の内部量子効率(IQE)は、図30に示すように、それぞれ59.6%、49.0%、33.5%であった。このように、実施例A1および実施例A15に係る波長変換部材では、いずれも比較例A1に係る波長変換部材よりも高い内部量子効率(IQE)が得られることが確認できた。
以上の結果は、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性をもたせることにより、波長変換部材の発光効率を向上させることができることを意味している。すなわち、XY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、蛍光の再吸収が抑制できて波長変換部材の発光効率が向上したものと判断される。
また、図30に示すように、実施例A1および実施例A15に係る波長変換部材にあっては、比較例A1に係る波長変換部材よりも励起光の吸収率が向上するとともに、外部量子効率(EQE)も向上している。これは、実施例A1および実施例A15に係る波長変換部材においては、比較例A1に係る波長変換部材よりも、XY平面内における半導体微粒子蛍光体の分散濃度が高まったためであると考えられる。
[検討A3]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態および濃度の違いが波長変換部材の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例A1〜A4、実施例A15〜A18および比較例A1〜A4を参照する。図32は、実施例A1〜A4、実施例A15〜A18および比較例A1〜A4における、半導体微粒子蛍光体の450nmの青色光に対する吸収率と波長変換部材の内部量子効率(IQE)との相関関係を示すグラフである。図32においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の450nmの青色光に対する吸収率[%]を表わし、縦軸に波長変換部材の内部量子効率(IQE)[%]を表わしている。
図32に示すように、半導体微粒子蛍光体の分散状態が異なる、実施例A1〜A4と、実施例A15〜A18と、比較例A1〜A4とを比較した場合に、いずれの場合においても、半導体微粒子蛍光体の励起光の吸収率が高くなるにつれて、波長変換部材の内部量子効率(IQE)が低下する傾向が見られる。これは、半導体微粒子蛍光体の吸収率を増加させるために半導体微粒子蛍光体の濃度を高めた場合に、濃度消光による蛍光の再吸収が増加して損失が大きくなったためであると考えられる。
しかしながら、図32に示すように、比較例A1〜A4よりも実施例A15〜A18の方が、半導体微粒子蛍光体の濃度の増加に対する内部量子効率(IQE)の低下率が小さくなっていることが確認できる。これは、XY平面内における半導体微粒子蛍光体の濃度が向上しているために、蛍光の再吸収が比較的抑制できた結果であると考えられる。
また、図32に示すように、実施例A15〜A18よりも実施例A1〜A4の方が、さらに半導体微粒子蛍光体の濃度の増加に対する内部量子効率(IQE)の低下率が小さくなっていることが確認できる。これは、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体をその種類毎に分離して層状に積層したために、蛍光の再吸収がさらに抑制できた結果であると考えられる。
以上の結果は、XY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くし、さらにZ軸方向においても半導体微粒子蛍光体を種類毎に分離して層状に積層することにより、蛍光の再吸収が抑制できて波長変換部材の発光効率が向上することを意味している。
[検討A4]
次に、半導体微粒子蛍光体を種類毎に発光波長および粒子径に基づいて層状に積層する場合に、その積層順の違いが波長変換部材の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例A1〜A4、実施例A5〜A8および比較例A1〜A4を参照する。図33は、実施例A1〜A4、実施例A5〜A8および比較例A1〜A4における、半導体微粒子蛍光体の450nmの青色光に対する吸収率と波長変換部材の内部量子効率(IQE)との相関関係を示すグラフである。図33においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の450nmの青色光に対する吸収率[%]を表わし、縦軸に波長変換部材の内部量子効率(IQE)[%]を表わしている。
図33に示すように、半導体微粒子蛍光体の分散状態または積層順が異なる、実施例A1〜A4と、実施例A5〜A8と、比較例A1〜A4とを比較した場合に、いずれの場合においても、半導体微粒子蛍光体の励起光の吸収率が高くなるにつれて、波長変換部材の内部量子効率(IQE)が低下する傾向が見られる。これは、半導体微粒子蛍光体の吸収率を増加させるために半導体微粒子蛍光体の濃度を高めた場合に、濃度消光による蛍光の再吸収が増加して損失が大きくなったためであると考えられる。
しかしながら、図33に示すように、比較例A1〜A4よりも実施例A5〜A8の方が、半導体微粒子蛍光体の濃度の増加に対する内部量子効率(IQE)の低下率が小さくなっていることが確認できる。これは、XY平面内における半導体微粒子蛍光体の濃度が向上しているために、蛍光の再吸収が比較的抑制できた結果であると考えられる。
また、図33に示すように、実施例A5〜A8よりも実施例A1〜A4の方が、さらに半導体微粒子蛍光体の濃度の増加に対する内部量子効率(IQE)の低下率が小さくなっていることが確認できる。これは、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体をその種類毎に分離して層状に積層し、かつ発光波長が長く粒子径の大きい種類の半導体微粒子蛍光体を波長変換部材の入射面側に配置したために、傾向の再吸収がさらに抑制できた結果であると考えられる。より詳細には、実施例A1〜A4においては、緑色半導体微粒子蛍光体を赤色半導体微粒子蛍光体よりも波長変換部材の出射面側に配置したために、緑色半導体微粒子蛍光体の発する蛍光を赤色半導体微粒子蛍光体が再吸収せずに光の損失が生じ難いのに対し、実施例A5〜A8においては、赤色半導体微粒子蛍光体を緑色半導体微粒子蛍光体よりも波長変換部材の出射面側に配置したために、赤色半導体微粒子蛍光体の発する蛍光を緑色半導体微粒子蛍光体が再吸収して光の損失が発生し易くなったためであると考えられる。
以上の結果は、XY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くし、さらにZ軸方向においても半導体微粒子蛍光体を種類毎に分離して発光波長および粒子径に基づいて層状に積層することにより、蛍光の再吸収が抑制できて波長変換部材の発光効率が向上することを意味している。
[検討A5]
次に、半導体微粒子蛍光体の種類の数の違いが波長変換部材の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例A1,A9〜A11および比較例A1,A5〜A7を参照する。図34は、実施例A1,A9〜A11および比較例A1,A5〜A7における、半導体微粒子蛍光体の種類の数と波長変換部材の内部量子効率(IQE)との相関関係を示すグラフである。図34においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の種類の数を表わし、縦軸に波長変換部材の内部量子効率(IQE)[%]を表わしている。
図34に示すように、半導体微粒子蛍光体の分散状態が異なる、実施例A1,A9〜A11と、比較例A1,A5〜A7とを比較した場合に、いずれの場合においても、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の種類の数が増加するにつれて、波長変換部材の内部量子効率(IQE)が低下する傾向が見られる。これは、半導体微粒子蛍光体の種類の数が増加するにつれて、蛍光の再吸収が生じる割合が増加するためと考えられ。したがって、当該観点からは、半導体微粒子蛍光体の種類の数としては、より少ないことが好ましいことが確認された。
[検討A6]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが波長変換部材の薄型化に与える影響について検討する。当該検討には、実施例A1,A12〜A14および比較例A1,A8〜A10を参照する。図35は、実施例A1,A12〜A14および比較例A1,A8〜A10における各種試作結果を示す表である。
図35に示すように、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する実施例A1,A12〜A14に係る波長変換部材にあっては、半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を30.4μmにまで薄型化した場合にも、波長450nmの励起光を90.3%の吸収率で吸収することが確認された。しかしながら、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有しない比較例A1,A8〜A10に係る波長変換部材にあっては、半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を最小で73.6μmにまでしか薄型化できなかった。
以上の結果は、XY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、励起光の吸収率を高く維持したまま波長変換部材を薄型化できることを意味している。
ここで、図35に示すように、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する波長変換部材とすることにより、励起光の進行方向に沿っての1μmあたりの吸光度を0.02以上(実施例A13においては、当該吸光度が0.024、実施例A14においては、当該吸光度が0.033)にまで高めることができる。この値は、波長変換部材の発光効率の向上と薄型化の両立を考慮した場合に、従来の波長変換部材に比して非常に優れた値であり、上述した本発明の実施の形態における波長変換部材の製造方法を採用した場合にはじめて実現できる値である。
また、図35に示すように、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する波長変換部材とすることにより、励起光の進行方向に沿っての厚みが0.5nm以上50μm以下(実施例A13においては、当該厚みが42.2μm、実施例A14においては、当該厚みが30.4μm)であり、かつ入射した励起光の90%以上を吸収(実施例A13においては、吸収率が90.4%、実施例A14においては、吸収率が90.3%)して波長変換する波長変換部材を実現することもできる。なお、上述した本発明の実施の形態における波長変換部材の製造方法を採用することにより、半導体微粒子蛍光体の粒子径から考慮して、理論的に波長変換部材の厚みを0.5nm程度にまで薄型化することが可能である。したがって、上記条件の波長変換部材とすることにより、波長変換部材の発光効率の向上と薄型化の両立を最大限得ることが可能になる。
なお、以上においては、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体としてInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を使用した場合の試験結果を実施例A1〜A18および比較例A1〜A10として例示して説明を行なったが、他の種類の半導体微粒子蛍光体を使用した場合にも、同様の傾向が見られることが実験的に確認されている。すなわち、種々の半導体微粒子蛍光体を用いて波長変換部材を試作して評価を行なった結果、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが波長変換部材の発光効率に与える影響が、上述したInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いて波長変換部材の場合と同様であることが本発明者によって確認されている。
図36は、上記種々の半導体微粒子蛍光体を用いて製造した波長変換部材における、半導体微粒子蛍光体の450nmの青色光を使用した場合の波長変換部材の内部量子効率(IQE)を示すグラフである。ここで、図36においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の種類を表わし、縦軸に波長変換部材の内部量子効率(IQE)[%]を表わしている。
図36に示すように、半導体微粒子蛍光体として、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いた場合のみならず、InP/ZnSe半導体微粒子蛍光体、InP/ZnS/SiO2半導体微粒子蛍光体、Ga0.5In0.5P/ZnS半導体微粒子蛍光体、InN/GaN半導体微粒子蛍光体、Ga0.4In0.6N/GaN半導体微粒子蛍光体、CdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体、ZnCdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いた場合にも、波長変換部材の発光効率が向上することが確認されている。
<実施例B1〜B13および比較例B1〜B8>
図37は、実施例B1〜B13および比較例B1〜B8に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等をまとめた表である。図38は、実施例B1に係る発光装置の発光スペクトルを示すグラフである。図38においては、横軸に波長[nm]を表わし、縦軸に発光強度を示している。なお、図37に示す発光装置の発光効率、演色性指数Ra、色温度Tcpおよび色度座標(u′,v′)の測定には、大塚電子株式会社製の発光測定システムMCPD−7000を使用した。
まず、実施例および比較例に係る発光装置に具備させた波長変換部材の具体的な製造方法について説明する。なお、実施例に係る発光装置は、波長変換部材として上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する波長変換部材を具備させたものであり、比較例に係る発光装置は、波長変換部材として上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有しない波長変換部材を具備させたものである。また、実施例に係る発光装置に具備させた波長変換部材においては、450nmの励起光を90%程度吸収し、各半導体微粒子蛍光体の発光が同程度の強度となるように、各種半導体微粒子蛍光体の量や光透過性部材の量を調整して製造した。
(実施例B1)
実施例B1では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体1.32mgをトルエン溶媒に分散させた。この分散液を上記青色LED上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。次に、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体5.76mgをトルエン溶媒に分散させ、この分散液をさらに上記青色LED上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。
次に、シリコーン樹脂A液を512.0mg、シリコーン樹脂B液を490.9mg秤量し、これらを混合した。混合後のシリコーン樹脂を上記青色LED上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させることにより、実施例B1に係る発光装置を得た。
実施例B1に係る発光装置に具備させた波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図37に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が六方格子状に配列している(図15参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体が種類毎に層状に配列している(図14参照)ことが確認された。
また、実施例B1に係る発光装置を発光させたところ、図38に示すような発光スペクトルが得られることが確認された。
また、図37に示すように、実施例B1に係る発光装置の発光効率が53.5lm/Wであり、演色性指数Raが70.0であり、色温度が4934Kであり、色度座標(u′,v′)が(0.203,0.500)であることが確認された。
(実施例B2)
実施例B2では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図11に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体1.13mgおよびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体7.70mgを混合し、その後これらをトルエン溶媒に分散させた。この分散液を上記青色LED上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。
次に、シリコーン樹脂A液を490.0mg、シリコーン樹脂B液を492.7mg秤量し、これらを混合した。混合後のシリコーン樹脂を上記青色LED上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させることにより、実施例B2に係る発光装置を得た。
実施例B2に係る発光装置に具備させた波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図37に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が六方格子状に配列している(図10参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体が層状に配列している(図9参照)ことが確認された。
また、図37に示すように、実施例B2に係る発光装置の発光効率が35.8lm/Wであり、演色性指数Raが68.8であり、色温度が4914Kであり、色度座標(u′,v′)が(0.210,0.490)であることが確認された。
(実施例B3)
実施例B3では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の積層順である。すなわち、実施例B3においては、先にInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体を含む分散液を青色LED上に塗布し、その後InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体を含む分散液をさらに上記青色LED上に塗布した。なお、当該実施例B3に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、光学特性等を図37に示している。
(実施例B4〜B6)
実施例B4では、図37に示すように、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該実施例B4に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
実施例B5では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該実施例B5に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
実施例B6では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS黄色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数である。なお、当該実施例B6に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
(実施例B7〜B9)
実施例B7〜B9では、図37に示すように、上述した実施例B1の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量であり、実施例B7〜B9においては、これらの含有量を大幅に変化させることでこれら半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を変化させている。なお、当該実施例B7〜B9に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
(実施例B10〜B13)
実施例B10では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該実施例B10に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
実施例B11では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LDとを組み合わせて図19に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該実施例B11に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
実施例B12では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LDとを組み合わせて図19に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該実施例B12に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
実施例B13では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が480nmであるFIrpic発光層を有する青色ELとを組み合わせて図20に示す如くの発光装置を製造した。ここで、実施例B1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該実施例B13に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
(比較例B1)
比較例B1では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.92mgおよびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体9.65mgを混合した。次に、シリコーン樹脂A液を508.5mg、シリコーン樹脂B液を497.1mg秤量し、これらを混合した。
混合後のシリコーン樹脂に上記混合後の半導体微粒子蛍光体を混合して分散させ、これを青色LED上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させることにより、比較例B1に係る発光装置を得た。
比較例A1に係る発光装置に具備させた波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図30に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体がランダムに分散している(図51参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体がランダムに分散している(図50参照)ことが確認された。
また、図37に示すように、比較例B1に係る発光装置の発光効率が27.1lm/Wであり、演色性指数Raが68.5であり、色温度が4974Kであり、色度座標(u′,v′)が(0.210,0.487)であることが確認された。
(比較例B2〜B4)
比較例B2〜B4では、図37に示すように、上述した比較例B1の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、比較例B1との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量であり、大幅にこれらの含有量を変化させることでこれら半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を変化させている。なお、当該比較例B2〜B4に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
(比較例B5〜B8)
比較例B5では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LEDとを組み合わせて図18に示す如くの発光装置を製造した。ここで、比較例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該比較例B5に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
比較例B6では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LDとを組み合わせて図19に示す如くの発光装置を製造した。ここで、比較例B1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該比較例B6に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
比較例B7では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LDとを組み合わせて図19に示す如くの発光装置を製造した。ここで、比較例B1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該比較例B7に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
比較例B8では、図37に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が480nmであるFIrpic発光層を有する青色ELとを組み合わせて図20に示す如くの発光装置を製造した。ここで、比較例B1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該比較例B8に係る発光装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該発光装置の光学特性等を図37に示している。
[検討B1]
まず、波長変換部材の製造方法の違いが半導体微粒子蛍光体の分散状態に与える影響について検討する。当該検討には、実施例B1、実施例B2および比較例B1を参照する。
実施例B1、実施例B2および比較例B1においては、いずれも半導体微粒子蛍光体の含有量とシリコーン樹脂の含有量とがほぼ同等とされている。しかしながら、上述した製造方法の違いにより、波長変換部材中における半導体微粒子蛍光体の分散状態に図37に示す如くの違いが生じた。
図37に示すように、実施例B1および実施例B2においては、XY平面内において規則的に半導体微粒子蛍光体が配列しているのに対し、比較例B1においては、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が無秩序に位置している。これは、実施例B1および実施例B2においては、半導体微粒子蛍光体を揮発性溶剤に分散させた状態で青色LEDに塗布し、その後揮発性溶剤を揮発させたためであると考えられる。より詳細には、揮発性溶剤の揮発が進むと、揮発性溶剤が青色LED上に厚さ数nm〜数十nm程度で覆う状態になると考えられ、このときに半導体微粒子蛍光体が自己組織化によって層状に規則的に配列するものと考えられる。
また、実施例B1および実施例B2に係る発光装置の波長変換部材が、いずれも図14および図9に示すように、半導体微粒子蛍光体が波長変換部材の片面側に局在していることも確認された。さらに、実施例B1および実施例B2においては、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体がXY平面内において六方格子状に配列することが確認された。
[検討B2]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが発光装置の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例B1、実施例B2および比較例B1を参照する。
実施例B1、実施例B2および比較例B1においては、いずれも半導体微粒子蛍光体の含有量とシリコーン樹脂の含有量とがほぼ同等とされている。しかしながら、実施例B1、実施例B2、比較例B1に係る発光装置の発光効率は、図37に示すように、それぞれ53.5lm/W、35.8lm/W、27.1lm/Wであった。このように、実施例B1および実施例B2に係る発光装置では、いずれも比較例B1に係る発光装置よりも高い発光効率が得られることが確認できた。
以上の結果は、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性をもたせることにより、発光装置の発光効率を向上させることができることを意味している。すなわち、XY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、蛍光の再吸収が抑制できて発光装置の発光効率が向上したものと判断される。
また、特にその詳細は示さないが、実施例B1および実施例B2に係る発光装置の波長変換部材にあっては、比較例B1に係る発光装置の波長変換部材よりも励起光の吸収率が向上するとともに、外部量子効率(EQE)も向上していることが確認された。これは、実施例B1および実施例B2に係る発光装置の波長変換部材においては、比較例B1に係る発光装置の波長変換部材よりも、XY平面内における半導体微粒子蛍光体の分散濃度が高まったためであると考えられる。
[検討B3]
次に、半導体微粒子蛍光体を種類毎に発光波長および粒子径に基づいて層状に積層する場合に、その積層順の違いが発光装置の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例B1、実施例B2および比較例B1を参照する。
図37に示すように、半導体微粒子蛍光体の分散状態または積層順が異なる、実施例B1と、実施例B3と、比較例B1とを比較した場合に、比較例B1よりも実施例B1および実施例B3の方が、発光装置の発光効率が高くなっていることが確認できる。これは、波長変換部材のXY平面内における半導体微粒子蛍光体の濃度が向上しているために、蛍光の再吸収が比較的抑制できた結果であると考えられる。
また、図37に示すように、実施例B3よりも実施例B1の方が、さらに発光装置の発光効率が高くなっていることが確認できる。これは、波長変換部材のZ軸方向に半導体微粒子蛍光体をその種類毎に分離して層状に積層し、かつ発光波長が長く粒子径の大きい種類の半導体微粒子蛍光体を波長変換部材の入射面側に配置したために、傾向の再吸収がさらに抑制できた結果であると考えられる。より詳細には、実施例B1においては、緑色半導体微粒子蛍光体を赤色半導体微粒子蛍光体よりも波長変換部材の出射面側に配置したために、緑色半導体微粒子蛍光体の発する蛍光を赤色半導体微粒子蛍光体が再吸収せずに光の損失が生じ難いのに対し、実施例B3においては、赤色半導体微粒子蛍光体を緑色半導体微粒子蛍光体よりも波長変換部材の出射面側に配置したために、赤色半導体微粒子蛍光体の発する蛍光を緑色半導体微粒子蛍光体が再吸収して光の損失が発生し易くなったためであると考えられる。
以上の結果は、波長変換部材のXY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くし、さらにZ軸方向においても半導体微粒子蛍光体を種類毎に分離して発光波長および粒子径に基づいて層状に積層することにより、蛍光の再吸収が抑制できて波長変換部材の発光効率が向上することを意味している。
[検討B4]
次に、半導体微粒子蛍光体の種類の数の違いが発光装置の発光効率および演色性指数に与える影響と、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅の違いが発光装置の演色性指数に与える影響とについて検討する。当該検討には、実施例B1,B4〜B6を参照する。図39は、実施例B1,B4〜B6における、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光装置の発光効率および演色性指数Raとの相関関係を示すグラフである。図39においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の種類の数を表わし、縦軸に発光装置の発光効率[lm/W]および演色性指数を表わしている。また、図40は、実施例B1,B4〜B6における、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅と発光装置の演色性指数との相関関係を示すグラフである。図40においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の半値幅[nm]を表わし、縦軸に発光装置の演色性指数を表わしている。
図39に示すように、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の種類の数が増加するにつれて、発光装置の発光効率が低下する傾向が見られる。これは、半導体微粒子蛍光体の種類の数が増加するにつれて、蛍光の再吸収が生じる割合が増加するためと考えられ、当該観点からは、半導体微粒子蛍光体の種類の数としては、より少ないことが好ましいことが確認された。
一方、図39に示すように、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の種類の数が増加するにつれて、発光装置の演色性指数Raが向上する傾向が見られる。これは、半導体微粒子蛍光体の種類の数が増加するにつれて、発光装置の発光スペクトルがより連続的なスペクトルに近づくためと考えられ、当該観点からは、半導体微粒子蛍光体の種類の数としては、より多いことが好ましいことが確認された。
以上の結果より、発光効率と演色性指数の両立が可能となる実用性の高い発光装置を実現するためには、発光装置に具備される波長変換部材として、半導体微粒子蛍光体の種類の数が2〜4種であるものを使用することが好ましいことが確認された。
また、図40に示すように、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の半値幅の広いものを使用した発光装置の方が、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の半値幅の狭いものを使用した発光装置に比べて、演色性指数が向上している傾向が見られた。したがって、発光装置に組み込まれる波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の半値幅としては、50nm以上とされることが好ましいことが確認された。
[検討B5]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが発光装置の波長変換部材の薄型化に与える影響について検討する。当該検討には、実施例B1,B7〜B9および比較例B1〜B4を参照する。図41は、実施例B1,B7〜B9および比較例B1〜B4における各種試作結果を示す表である。
図41に示すように、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する実施例B1,B7〜B9に係る発光装置にあっては、半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を30.5μmにまで薄型化した場合にも、白色光を出射可能な発光装置とすることが確認された。しかしながら、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有しない比較例B1〜B4に係る発光装置にあっては、白色光を出射可能な発光装置とするために、半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を最小で75.8μmにまでしか薄型化できなかった。
以上の結果は、波長変換部材のXY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、励起光の吸収率を高く維持したまま発光装置の波長変換部材を薄型化できることを意味しており、これにより全体として薄型化された発光装置とすることができることが理解される。
[検討B6]
次に、発光素子の種類の違いが発光装置の発光効率に与える影響について検討する。当該検討には、実施例B1,B10〜B13および比較例B1,B5〜B8を参照する。図42は、実施例B1,B10〜B13および比較例B1,B5〜B8における、発光素子の種類と発光効率との相関関係を示すグラフである。図42においては、横軸に発光素子の種類を表わし、縦軸に発光効率[lm/W]を表わしている。
図42に示すように、実施例B1、B10〜B13に係る発光装置は、それぞれ比較例B1、B5〜B8に係る発光装置よりもいずれも高い発光効率となることが確認された。すなわち、発光素子として、青色LED、青紫LED、青色LD、青紫色LDおよび青色ELのいずれを使用した場合にも、実施例に係る発光装置とすることで比較例に係る発光装置よりも発光効率に改善が見られることが確認された。
以上の結果は、波長変換部材のXY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、発光素子の種類の如何を問わず、蛍光の再吸収が抑制できて高い発光効率が実現できる発光装置とできることを意味している。
なお、以上においては、発光装置の波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体としてInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を使用した場合の試験結果を実施例B1〜B13および比較例B1〜B8として例示して説明を行なったが、他の種類の半導体微粒子蛍光体を使用した場合にも、同様の傾向が見られることが実験的に確認されている。すなわち、種々の半導体微粒子蛍光体を用いて波長変換部材を試作してこれを発光装置に組み込んで評価を行なった結果、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが発光装置の波長変換部材の発光効率に与える影響が、上述したInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いて波長変換部材を試作してこれを発光装置に組み込んだ場合と同様であることが本発明者によって確認されている。
図43は、上記種々の半導体微粒子蛍光体を用いて製造した波長変換部材を含む発光装置の発光効率を示すグラフである。ここで、図43においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の種類を表わし、縦軸に発光装置の発光効率[lm/W]を表わしている。
図43に示すように、半導体微粒子蛍光体として、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いた場合のみならず、InP/ZnSe半導体微粒子蛍光体、InP/ZnS/SiO2半導体微粒子蛍光体、Ga0.5In0.5P/ZnS半導体微粒子蛍光体、InN/GaN半導体微粒子蛍光体、Ga0.4In0.6N/GaN半導体微粒子蛍光体、CdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体、ZnCdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いた場合にも、発光装置の発光効率が向上することが確認されている。
<実施例C1〜C11および比較例C1〜C10>
図44は、実施例C1〜C11および比較例C1〜C10に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等をまとめた表である。図45は、実施例C1に係る画像表示装置に使用した発光装置の発光スペクトルを示すグラフである。図45においては、横軸に波長[nm]を表わし、縦軸に発光強度を示している。なお、図44に示す画像表示装置の画面輝度、NTSC比および白色表示した場合の色温度および色度座標(u′,v′)の測定には、大塚電子株式会社製の発光測定システムMCPD−7000を使用した。また、画面輝度については、比較例C1の画像表示装置の画面輝度を1(すなわち100%)とした場合の相対値を示している。
まず、実施例および比較例に係る画像表示装置に具備させた波長変換部材の具体的な製造方法について説明する。なお、実施例に係る画像表示装置は、波長変換部材として上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する波長変換部材を具備させたものであり、比較例に係る画像表示装置は、波長変換部材として上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有しない波長変換部材を具備させたものである。また、実施例に係る画像表示装置に具備させた波長変換部材においては、450nmの励起光を90%程度吸収し、各半導体微粒子蛍光体の発光が同程度の強度となるように、各種半導体微粒子蛍光体の量や光透過性部材の量を調整して製造した。
(実施例C1)
実施例C1では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.75mgをトルエン溶媒に分散させた。この分散液を上記青色LED上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。次に、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体4.12mgをトルエン溶媒に分散させ、この分散液をさらに上記青色LED上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。
次に、シリコーン樹脂A液を500.5mg、シリコーン樹脂B液を498.9mg秤量し、これらを混合した。混合後のシリコーン樹脂を上記青色LED上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させることにより、発光装置を得た。
次に、当該発光装置上に導光板と画像表示部を設け、これにより実施例C1に係る画像表示装置を得た。
実施例C1に係る画像表示装置に具備させた波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図44に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が六方格子状に配列している(図15参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体が種類毎に層状に配列している(図14参照)ことが確認された。
また、実施例C1で使用した発光装置を発光させたところ、図45に示すような発光スペクトルが得られることが確認された。
また、図44に示すように、実施例C1に係る画像表示装置の画面輝度が142.4%であり、NTSC比が108.2%であり、色温度が9921Kであり、色度座標(u′,v′)が(0.187,0.443)であることが確認された。
(実施例C2)
実施例C2では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図11に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.70mgおよびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体5.41mgを混合し、その後これらをトルエン溶媒に分散させた。この分散液を上記青色LED上に塗布し、トルエン溶媒を揮発させた。
次に、シリコーン樹脂A液を500.3mg、シリコーン樹脂B液を494.6mg秤量し、これらを混合した。混合後のシリコーン樹脂を上記青色LED上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させることにより、発光装置を得た。
次に、当該発光装置上に導光板と画像表示部を設け、これにより実施例C2に係る画像表示装置を得た。
実施例C2に係る画像表示装置に具備させた波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図44に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が六方格子状に配列している(図10参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体が層状に配列している(図9参照)ことが確認された。
また、図44に示すように、実施例C2に係る画像表示装置の画面輝度が112.0%であり、NTSC比が109.2%であり、色温度が10110Kであり、色度座標(u′,v′)が(0.189,0.440)であることが確認された。
(実施例C3〜C6)
実施例C3では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LEDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該実施例C3に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
実施例C4では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該実施例C4に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
実施例C5では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該実施例C5に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
実施例C6では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が480nmであるFIrpic発光層を有する青色ELとを組み合わせて図26に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該実施例C6に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(実施例C7)
実施例C7では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図24に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C1との相違点は、画像表示装置の構造であり、具体的には、実施例C7においては、波長変換部材を照射部に組み込まずに画像表示部に組み込んでいる。なお、当該実施例C7に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(実施例C8〜C10)
実施例C8〜C10では、図44に示すように、上述した実施例C7の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図24に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C7との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量であり、実施例C8〜C10においては、これらの含有量を大幅に変化させることでこれら半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を変化させている。なお、当該実施例C8〜C10に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(実施例C11)
実施例C11では、図44に示すように、上述した実施例C6の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が480nmであるFIrpic発光層を有する青色ELとを組み合わせて図28に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、実施例C6との相違点は、画像表示装置の構造であり、具体的には、実施例C11においては、波長変換部材を照射部に組み込まずに画像表示部に組み込んでいる。なお、当該実施例C11に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(比較例C1)
比較例C1では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。
まず、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体0.64mgおよびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体6.31mgを混合した。次に、シリコーン樹脂A液を488.3mg、シリコーン樹脂B液を498.2mg秤量し、これらを混合した。
混合後のシリコーン樹脂に上記混合後の半導体微粒子蛍光体を混合して分散させ、これを青色LED上に塗布し、80℃で1時間、150℃で5時間加熱硬化させることにより、発光装置を得た。
次に、当該発光装置上に導光板と画像表示部を設け、これにより比較例C1に係る画像表示装置を得た。
比較例C1に係る画像表示装置に具備させた波長変換部材をTEMで直接観察したところ、図44に示すように、XY平面内において半導体微粒子蛍光体がランダムに分散している(図51参照)とともに、Z軸方向に半導体微粒子蛍光体がランダムに分散している(図50参照)ことが確認された。
また、図44に示すように、比較例C1に係る画像表示装置の画面輝度が100.0%であり、NTSC比が107.2%であり、色温度が9907Kであり、色度座標(u′,v′)が(0.187,0.443)であることが確認された。
(比較例C2〜C5)
比較例C2では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LEDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該比較例C2に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
比較例C3では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該比較例C3に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
比較例C4では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS青色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が405nmであるInGaN半導体活性層を有する青紫色LDとを組み合わせて図21に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C1との相違点は、半導体微粒子蛍光体の種類の数と発光素子の種類である。なお、当該比較例C4に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
比較例C5では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図16に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が480nmであるFIrpic発光層を有する青色ELとを組み合わせて図26に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C1との相違点は、発光素子の種類である。なお、当該比較例C5に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(比較例C6)
比較例C6では、図44に示すように、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図24に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C1との相違点は、画像表示装置の構造であり、具体的には、比較例C6においては、波長変換部材を照射部に組み込まずに画像表示部に組み込んでいる。なお、当該比較例C6に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(比較例C7〜C9)
比較例C7〜C9では、図44に示すように、上述した比較例C6の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が450nmであるInGaN半導体活性層を有する青色LEDとを組み合わせて図24に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C6との相違点は、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体およびInP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体の含有量であり、比較例C7〜C9においては、これらの含有量を大幅に変化させることでこれら半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を変化させている。なお、当該比較例C7〜C9に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
(比較例C10)
比較例C10では、図44に示すように、上述した比較例C5の場合と同様に、InP/ZnS赤色半導体微粒子蛍光体と、InP/ZnS緑色半導体微粒子蛍光体と、シリコーン樹脂SCR−1015とから構成される波長変換部材を、上述した図53に示す如くの製造方法に従って製造するとともに、当該製造された波長変換部材と、発光スペクトルのピーク波長が480nmであるFIrpic発光層を有する青色ELとを組み合わせて図28に示す如くの画像表示装置を製造した。ここで、比較例C5との相違点は、画像表示装置の構造であり、具体的には、比較例C10においては、波長変換部材を照射部に組み込まずに画像表示部に組み込んでいる。なお、当該比較例C10に係る画像表示装置の波長変換部材の組成や製造方法、当該画像表示装置の光学特性等を図44に示している。
[検討C1]
まず、波長変換部材の製造方法の違いが半導体微粒子蛍光体の分散状態に与える影響について検討する。当該検討には、実施例C1、実施例C2および比較例C1を参照する。
実施例C1、実施例C2および比較例C1においては、いずれも半導体微粒子蛍光体の含有量とシリコーン樹脂の含有量とがほぼ同等とされている。しかしながら、上述した製造方法の違いにより、波長変換部材中における半導体微粒子蛍光体の分散状態に図44に示す如くの違いが生じた。
図44に示すように、実施例C1および実施例C2においては、XY平面内において規則的に半導体微粒子蛍光体が配列しているのに対し、比較例C1においては、XY平面内において半導体微粒子蛍光体が無秩序に位置している。これは、実施例C1および実施例C2においては、半導体微粒子蛍光体を揮発性溶剤に分散させた状態で青色LEDに塗布し、その後揮発性溶剤を揮発させたためであると考えられる。より詳細には、揮発性溶剤の揮発が進むと、揮発性溶剤が青色LED上に厚さ数nm〜数十nm程度で覆う状態になると考えられ、このときに半導体微粒子蛍光体が自己組織化によって層状に規則的に配列するものと考えられる。
また、実施例C1および実施例C2に係る画像表示装置の波長変換部材が、いずれも図14および図9に示すように、半導体微粒子蛍光体が波長変換部材の片面側に局在していることも確認された。さらに、実施例C1および実施例C2においては、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体がXY平面内において六方格子状に配列することが確認された。
[検討C2]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが画像表示装置の画面輝度に与える影響について検討する。当該検討には、実施例C1、実施例C2および比較例C1を参照する。
実施例C1、実施例C2および比較例C1においては、いずれも半導体微粒子蛍光体の含有量とシリコーン樹脂の含有量とがほぼ同等とされている。しかしながら、実施例C1、実施例C2、比較例C1に係る画像表示装置の画面輝度は、図44に示すように、それぞれ142.4%、112.0%、100.0%であった。このように、実施例C1および実施例C2に係る画像表示装置では、いずれも実施例C1に係る画像表示装置よりも高い画面輝度が得られることが確認できた。
以上の結果は、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に上述した如くの特定の異方性をもたせることにより、画像表示装置の画面輝度を向上させることができることを意味している。すなわち、XY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、蛍光の再吸収が抑制できて画像表示装置の画面輝度が向上したものと判断される。
また、特にその詳細は示さないが、実施例C1および実施例C2に係る画像表示装置の波長変換部材にあっては、比較例C1に係る画像表示装置の波長変換部材よりも励起光の吸収率が向上するとともに、外部量子効率(EQE)も向上していることが確認された。これは、実施例C1および実施例C2に係る画像表示装置の波長変換部材においては、比較例C1に係る画像表示装置の波長変換部材よりも、XY平面内における半導体微粒子蛍光体の分散濃度が高まったためであると考えられる。
[検討C3]
次に、発光素子の違いが画像表示装置の画面輝度に与える影響について検討する。当該検討には、実施例C1,C3〜C6および比較例C1〜C5を参照する。図46は、実施例C1,C3〜C6および比較例C1〜C5における、発光素子の種類と画面輝度との相関関係を示すグラフである。図46においては、横軸に発光素子の種類を表わし、縦軸に画面輝度[%]を表わしている。
図46に示すように、実施例C1、C3〜C6に係る画像表示装置は、それぞれ比較例C1〜C5に係る画像表示装置よりもいずれも高い画面輝度となることが確認された。すなわち、発光素子として、青色LED、青紫LED、青色LD、青紫色LDおよび青色ELのいずれを使用した場合にも、実施例に係る画像表示装置とすることで比較例に係る画像表示装置よりも画面輝度に改善が見られることが確認された。
以上の結果は、波長変換部材のXY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、発光素子の種類の如何を問わず、蛍光の再吸収が抑制できて高い画面輝度が実現できる画像表示装置とできることを意味している。
[検討C4]
次に、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが画像表示装置の波長変換部材の薄型化に与える影響について検討する。当該検討には、実施例C7〜C10および比較例C6〜C9を参照する。図47は、実施例C7〜C10および比較例C6〜C9における各種試作結果を示す表である。
図47に示すように、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有する実施例C7〜C10に係る画像表示装置にあっては、半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を33.8μmにまで薄型化した場合にも、白色光を出射可能な画像表示装置とすることが確認された。しかしながら、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性を有しない比較例C6〜C9に係る発光装置にあっては、白色光を出射可能な画像表示装置とするために、半導体微粒子蛍光体が分散する部分の波長変換部材の膜厚を最小で61.4μmにまでしか薄型化できなかった。
以上の結果は、波長変換部材のXY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、励起光の吸収率を高く維持したまま画像表示装置の波長変換部材を薄型化できることを意味しており、これにより全体として薄型化された画像表示装置とすることができることが理解される。
[検討C5]
次に、画像表示装置の構造の違いが画像表示装置の画面輝度に与える影響について検討する。当該検討には、実施例C1,C7,C6,C11および比較例C1,C6,C5,C10を参照する。このうち、実施例C1および比較例C1に係る画像表示装置は、上述した図21に示す構造の画像表示装置であり、波長変換部材を照射部に含んでいる。一方、実施例C7および比較例C6に係る画像表示装置は、上述した図24に示す構造の画像表示装置であり、波長変換部材を画像表示部に含んでいる。また、実施例C6および比較例C5に係る画像表示装置は、上述した図26に示す構造の画像表示装置であり、波長変換部材を照射部に含んでいる。一方、実施例C11および比較例C10に係る画像表示装置は、上述した図28に示す構造の画像表示装置であり、波長変換部材を画像表示部に含んでいる。
図44に示すように、実施例C1、C7,C6,C11に係る画像表示装置は、それぞれ比較例C1,C6,C5,C10に係る画像表示装置よりもいずれも高い画面輝度となることが確認された。すなわち、波長変換部材を照射部に含む構造および波長変換部材を画像表示部に含む構造のいずれを採用した場合にも、実施例に係る画像表示装置とすることで比較例に係る画像表示装置よりも画面輝度に改善が見られることが確認された。
以上の結果は、波長変換部材のXY平面内において半導体微粒子蛍光体を高密度に充填させて当該XY面内方向における半導体微粒子蛍光体の分散濃度を高めるとともに、Z軸方向の半導体微粒子蛍光体の濃度を低くすることにより、画像表示装置の構造の如何を問わず、蛍光の再吸収が抑制できて高い画面輝度が実現できる画像表示装置とできることを意味している。
なお、補足的な検討結果として、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅の違いが画像表示装置のNTSC比に与える影響について以下に述べる。図48は、半導体微粒子蛍光体の発光スペクトルの半値幅と画像表示装置のNTSC比との相関関係を示すグラフである。図48においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の半値幅[nm]を表わし、縦軸に発光装置のNTSC比[%]を表わしている。なお、当該試験条件等の詳細な説明はここでは省略する。
図48に示すように、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の半値幅の広いものを使用した画像表示装置の方が、波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の半値幅の狭いものを使用した画像表示装置に比べて、NTSC比が高くなる傾向が確認された。ここで、当該図48から理解されるように、半導体微粒子蛍光体の半値幅とNTSC比が線形の関係にあると仮定したならば、NTSC比を80%以上に保つためには、画像表示装置に組み込まれる波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体の半値幅として50nm以下とすることが好ましいと言える。
なお、以上においては、画像表示装置の波長変換部材に含まれる半導体微粒子蛍光体としてInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を使用した場合の試験結果を実施例C1〜C11および比較例C1〜C10として例示して説明を行なったが、他の種類の半導体微粒子蛍光体を使用した場合にも、同様の傾向が見られることが実験的に確認されている。すなわち、種々の半導体微粒子蛍光体を用いて波長変換部材を試作してこれを画像表示装置に組み込んで評価を行なった結果、半導体微粒子蛍光体の分散状態の違いが画像表示装置の波長変換部材の画面輝度に与える影響が、上述したInP/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いて波長変換部材を試作してこれを画像表示装置に組み込んだ場合と同様であることが本発明者によって確認されている。
図49は、上記種々の半導体微粒子蛍光体を用いて製造した波長変換部材を含む画像表示装置の画面輝度を示すグラフである。ここで、図49においては、横軸に半導体微粒子蛍光体の種類を表わし、縦軸に画像表示装置の画面輝度[%]を表わしている。
図49に示すように、半導体微粒子蛍光体として、InP/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いた場合のみならず、InP/ZnSe半導体微粒子蛍光体、InP/ZnS/SiO2半導体微粒子蛍光体、Ga0.5In0.5P/ZnS半導体微粒子蛍光体、InN/GaN半導体微粒子蛍光体、Ga0.4In0.6N/GaN半導体微粒子蛍光体、CdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体、ZnCdSe/ZnS半導体微粒子蛍光体を用いた場合にも、画像表示装置の画面輝度が向上することが確認されている。
以上において説明した試験結果より、本発明が適用された波長変換部材、発光装置および画像表示装置とすることにより、従来の波長変換部材、発光装置および画像表示装置に比較して高い発光効率を有する波長変換部材およびこれを備えた発光装置ならびに画像表示装置とすることができることが確認できた。
なお、以上においては、上述した本発明の実施の形態1ないし7に示した如くの、半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性をもたせた波長変換部材、これを備えた発光装置および画像表示装置を実際に試作して評価を行なった試験内容および試験結果のみを明示したが、本発明者は、上述した本発明の実施の形態15に示した如くの、波長変換層を半導体微粒子蛍光体の凝集体にて構成し、当該半導体微粒子蛍光体の粒子数に特定の異方性をもたせた波長変換部材、これを備えた発光装置および画像表示装置を実際に試作してその評価も行なった。当該評価に係る試験内容は、上述したものに準じており、当該評価に係る試験結果も、上述したものに準じたものとなったため、ここではその明示は省略するが、当該試験結果が上述したものに準じたものとなった理由は、波長変換層を半導体微粒子蛍光体の凝集体にて構成し、半導体微粒子蛍光体の粒子数に特定の異方性をもたせた波長変換部材、これを備えた発光装置および画像表示装置が、上述した半導体微粒子蛍光体の分散濃度に特定の異方性をもたせた波長変換部材、これを備えた発光装置および画像表示装置と比べた場合に、基本的に半導体微粒子蛍光体が光透光性部材によって封止されていない点においてのみ相違するものであるため、その光学特性が同等になったためと考察される。
なお、本発明を適用することが可能な発光装置および画像表示装置としては、従来使用されている小型電球の代替光源、表示用光源、液晶パネル用のバックライト光源、一般照明器具、装飾照明器具、発光表示装置、ディスプレイ、プロジェクタ等、様々な製品が想定される。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし15において説明した波長変換部材や発光装置、画像表示装置の特徴的な構成は、装置構成上、許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。
このように、今回開示した上記各実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。