JP4945909B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーンキープ機能を備えたステアバイワイヤ式の車両用操舵装置に関するものである。
近年、各種センサにより検出される車両状態量及び車両周囲の状況信号(車間距離や白線検知信号等)に基づいて、ステアリング操作によらず自動的に転舵輪の舵角(転舵角)を制御することにより、車両の自動操縦を可能とする車両用操舵装置が提案されている。そして、このようなものには、画像処理等により車両が走行中の走行車線を検出し、その検出された走行車線情報に基づき演算される目標転舵角に基づいて、車両が走行車線内を走行し続けるようにその転舵角を制御する所謂レーンキープ機能を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
ところで、こうしたレーンキープ機能の作動中は、総じて運転者の緊張感並びに注意力が自ら運転する時よりも低下する傾向にある。そのため、運転者の意図に反して車両が走行車線から逸脱した場合(若しくはその可能性がある場合)の対策が重要な課題の一つとなっている。具体的には、走行車線からの逸脱可能性の早期判定(例えば、特許文献2参照)や、意図に反する逸脱発生時の衝突リスク低減機能(例えば、特許文献3参照)等が挙げられる。そして、こうした対策を施すことで、レーンキープ機能の安全性を向上させることができ、これにより運転者の安心感を高めてその負担を効果的に軽減することができる。
特開平07−104850号公報 特開2003−337998号公報 特開2004−136787号公報
しかしながら、運転者の意図に反する走行車線からの逸脱は、こうしたレーンキープ機能の作動時に限ったことではない。例えば、運手者が自ら運転している場合であっても、エアコンやカーオーディオ等のスイッチを操作する際等、その一瞬の注意力低下に伴うステアリングの過誤操作(過誤入力)によってこのような走行車線からの逸脱が引き起こされる場合がある。そして、こうした過誤入力時には、その走行車線からの逸脱速度が速いため、上記のような逸脱可能性判定により警告を行ったとしても間に合わない可能性がある。そのため、従来より、こうした過誤入力に起因する走行車線からの逸脱を効果的に防止する方法が強く求められている。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、過誤入力に起因する走行車線逸脱を効果的に防止することができる車両用操舵装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングと、転舵輪の転舵角を変更するための転舵アクチュエータと、前記ステアリングに入力されるステアリング操作を検出するステアリング入力検出手段と、該検出されたステアリング操作に応じて前記転舵角を変更すべく前記転舵アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置であって、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものであるか否かを判定する過誤入力判定手段と、車両の走行車線を検出する走行車線検出手段と、運転者の車線変更意図を推定する推定手段と、非操縦系の操作部材に対する入力操作を検出する操作入力検出手段とを備え、前記過誤入力判定手段は、前記検出されたステアリング操作が車両を走行車線から逸脱させるものであり、且つ車線変更の意図がないと推定される場合に、該検出されたステアリング操作を過誤入力によるものであると判定し、前記推定手段は、前記操作部材に対する入力操作があり、且つブレーキ入力及び所定速度以上の操舵速度が検出されない場合に、前記車線変更の意図がないと推定し、前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、該ステアリング操作に基づく前記転舵角の変更を行わないこと、を要旨とする。
請求項に記載の発明は、前記非操縦系の操作部材は、カーオーディオ、カーエアコン、又はカーナビゲーションシステムの操作部材であること、を要旨とする。
請求項に記載の発明は、前記推定手段は、方向指示入力がある場合に、前記車線変更の意図があると推定すること、を要旨とする。
上記各構成によれば、わき見等により、運転者が車両を走行車線から逸脱させるような過誤入力をした場合であっても、その過誤によるステアリング操作によって車両が転舵することはない。従って、過誤入力に起因する走行車線からの逸脱を効果的に防止することができる。特に、ステアリング操作が過誤入力であるか否かの判定を精度よく行うことができ、走行車線逸脱の意図を精度良く推定することができる。その結果、過誤入力防止機能の精度を高めることができる。尚、この場合における「過誤入力」は、ステアリング操作により実際に操舵角が発生した場合のみならず、本来、操舵角が発生し又はその変更がなされるべきところであるにも関わらず、かかるステアリング操作がなされない場合をも含むものである。
請求項に記載の発明は、走行車線検出手段により検出される走行車線情報に基づいて、前記走行車線内の走行を維持するための目標転舵角を演算する自動操舵制御手段を備え、前記過誤入力判定手段は、前記検出されたステアリング操作に基づく前記転舵角の制御目標角と前記演算された目標転舵角との比較により、該検出されたステアリング操作が車両を走行車線から逸脱させるものであるか否かを判定すること、を要旨とする。
上記構成によれば、いち早く走行車線からの逸脱可能性を判定することができ、これにより過誤入力防止機能の精度を高めることができる。
請求項に記載の発明は、前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、前記演算された目標転舵角に基づいて前記転舵アクチュエータの作動を制御すること、を要旨とする。
上記構成によれば、より確実に走行車線からの逸脱を防止することができる。
請求項に記載の発明は、前記ステアリングに入力される操舵トルクに応じた操舵反力を付与すべく制御される反力アクチュエータを備え、前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、前記付与する操舵反力を前記過誤入力でない場合よりも大とすべく前記反力アクチュエータの作動を制御すること、を要旨とする。
請求項に記載の発明は、前記ステアリングの操舵角を変更可能な反力アクチュエータを備え、前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、前記ステアリングの操舵角を前記転舵角に応じた値とすべく前記反力アクチュエータの作動を制御すること、を要旨とする。
上記各構成によれば、操舵反力の増加によって運転者に過誤入力の発生を早期に認識させることができる。特に請求項の構成によれば、操舵角が転舵角に対応することによって、素早く通常制御に復帰することができるようになる。
請求項に記載の発明は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合に、該過誤入力がなされた旨を警告する警告手段を備えること、を要旨とする。
上記構成によれば、搭乗者に走行車線からの逸脱の可能性があったことを迅速に知らしめることができる。
本発明によれば、過誤入力に起因する走行車線逸脱を効果的に防止することが可能な車両用操舵装置を提供することができる。
以下、本発明をレーンキープ機能を備えたステアバイワイヤ式の車両用操舵装置(ステアリング装置)に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のステアリング装置1は、ステアリング(ハンドル)2を含む操舵機構3と転舵輪4の舵角を変更するための転舵機構5とが機械的に非連結、即ちステアリング2と転舵輪4とが機械的に分離された所謂ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。
操舵機構3は、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト6と、ステアリング操作に伴うステアリング2の舵角、即ち操舵角θsを検出するための操舵角検出手段としての操舵角センサ7とを備えている。そして、転舵機構5は、操舵角センサ7により検出される操舵角θsに基づいて、そのステアリング操作に応じた転舵輪4の舵角を発生させるための転舵アクチュエータ8を備えている。本実施形態では、転舵機構5は、タイロッド9及びナックルアーム10を介して左右の転舵輪4を連結する転舵軸12を有しており、転舵アクチュエータ8は、駆動源としてのモータ13と該モータ13の回転を転舵軸12の往復動に変換する変換機構14とを備えている。尚、本実施形態の転舵アクチュエータ8は、転舵軸12と同軸配置されたブラシレスモータを有し、変換機構14としてボール螺子機構を備えている。そして、この転舵アクチュエータ8により駆動された転舵軸12の往復動が転舵輪4に伝達されることにより、同転舵輪4の舵角、即ち転舵角θtが変更されるようになっている。
また、本実施形態では、操舵機構3は、ステアリング操作によってステアリング2に印加される操舵トルクτを検出するための操舵トルク検出手段としてのトルクセンサ16と、該検出された操舵トルクτ(及び後述する路面反力Fr)に応じた操舵反力をステアリング2に付与するための反力アクチュエータ17とを備えている。反力アクチュエータ17は、駆動源としてのモータ18と、該モータ18の回転を減速してステアリングシャフト6に伝達する減速機構19とを備えている。尚、本実施形態では、反力アクチュエータ17のモータ18には、転舵アクチュエータ8のモータ13と同様にブラシレスモータが採用されている。そして、反力アクチュエータ17は、減速機構19を介してモータ18の発生するモータトルクをステアリングシャフト6に伝達することによりステアリング2に操舵反力を付与するようになっている。
本実施形態では、転舵アクチュエータ8及び反力アクチュエータ17は、制御手段としての制御装置20によりその作動が制御されている。詳述すると、転舵アクチュエータ8のモータ13及び反力アクチュエータ17のモータ18は、制御装置20と接続されており、各モータ13,18は、制御装置20から供給される三相(U,V,W)の駆動電力に基づいて回転する。そして、制御装置20は、その駆動電力の供給を通じて各モータ13,18の回転を制御することにより、転舵アクチュエータ8及び反力アクチュエータ17の作動を制御する。
具体的には、制御装置20は、上記操舵角センサ7及びトルクセンサ16、並びに車速センサ21の出力信号に基づいて操舵角θs、操舵トルクτ及び車速Vを検出する。また、転舵軸12には、変位量センサ22が設けられており、制御装置20は、この変位量センサ22の出力信号に基づいて転舵輪4の転舵角θtを決定する同転舵軸12の軸方向の変位量Xを検出する。尚、本実施形態では、モータ13のモータ回転角θmsを検出する回転角センサにより上記変位量センサ22が構成されている。また、制御装置20は、電流センサ23a、23bにより、両アクチュエータの各モータ13,モータ18に供給される各実電流値Is,Irを検出し、及び回転角センサ24により反力アクチュエータ17のモータ18のモータ回転角θmrを検出する。そして、制御装置20は、その検出された操舵角θs、車速V及び変位量Xに基づいて、転舵輪4の転舵角θtを変更すべく転舵アクチュエータ8の作動を制御し、操舵トルクτ及び車速V(並びに推定された路面反力Fr)に基づいて、操舵反力を付与すべく反力アクチュエータ17の作動を制御する。
さらに詳述すると、制御装置20は、転舵アクチュエータ8を制御するための転舵ECU25と、反力アクチュエータ17を制御するための反力ECU26とを備えている。そして、これら転舵ECU25及び反力ECU26は、それぞ対応する各モータ13,18を制御するためのモータ制御信号を出力するマイコン27,28と、そのモータ制御信号に基づいて各モータ13,18に駆動電力を供給する駆動回路29,30とを備えている。
図2のフローチャートに示すように、転舵ECU25側のマイコン27は、先ず、上記各センサの出力信号に基づいて、各センサ値(操舵角θs、車速V及び変位量X)を検出する(ステップ101)。次に、マイコン27は、検出された操舵角θs及び車速Vに基づいて転舵角θtの制御目標角θt*である変位量指令値X*を演算し(ステップ102)、その演算により算出された変位量指令値X*及び検出された変位量Xに基づくフィードバック制御演算、即ち位置制御演算を実行する(ステップ103)。そして、この位置制御演算により算出された制御量εsに基づいてモータ駆動信号を生成し、そのモータ駆動信号を駆動回路29へと出力する(ステップ104)。そして、駆動回路29がそのモータ駆動信号に応じた駆動電力をモータ13に供給することにより、ステアリング操作に応じた値に転舵角θtを変更すべく転舵アクチュエータ8の作動が制御されるようになっている。
また、図3のフローチャートに示すように、反力ECU26側のマイコン28は、先ず、各センサ値(操舵トルクτ、車速V、変位量X、モータ回転角θmr,実電流値Ir(反力アクチュエータ側),実電流値Is(転舵アクチュエータ側))を検出する(ステップ201)。次に、マイコン28は、検出された変位量X及び転舵アクチュエータ8の各モータ13に供給される駆動電力の実電流値Isに基づいて、転舵輪4に作用する路面反力Frを推定し(ステップ202)、続いて、その推定された路面反力Fr及び上記検出された操舵トルクτに基づいて、操舵反力トルクの制御目標量である電流指令値Iq*を演算する(ステップ203)。そして、この電流指令値Iq*及び検出されたモータ18に供給される駆動電力の実電流値Ir、並びにモータ回転角θmrに基づいてフィードバック制御演算を実行し(ステップ204)、その演算により算出された制御量εrに基づくモータ制御信号を出力する(ステップ205)。そして、駆動回路30がそのモータ駆動信号に応じた駆動電力をモータ18へと供給し、その発生するモータトルクが減速機構19を介してステアリングシャフト6に伝達されることにより、操舵トルクτ、路面反力Fr及び車速Vに応じた操舵反力がステアリング2に付与されるようになっている。
(レーンキープ機能)
また、本実施形態のステアリング装置1は、車両31が現在走行中の走行車線32内を走行し続けるように、ステアリング操作によらず自動的にその転舵角を制御する所謂レーンキープ機能を備えている(図4参照)。
詳述すると、図1に示すように、ステアリング装置1は、車両31が走行中の走行車線32を検出し、その情報(走行車線情報)を出力する走行車線検出装置33と、該走行車線情報I_rrに基づいて、車両が走行車線32内の走行を維持するための目標転舵角θt_a*を演算する上位制御装置34とを備えている。本実施形態では、走行車線検出装置33は、走行路面36の画像を撮影するカメラ37と、車線ECU38とを備え、車線ECU38は、走行路面36の画像を処理することにより、走行車線32を規定するマーカ(白線)39を検出し、検出された車両31両側のマーカ39に関する情報を走行車線情報I_rrとして上位制御装置34に出力する。そして、上位制御装置34は、その走行車線情報I_rrに基づいて目標転舵角θt_a*を演算する。
また、本実施形態では、ステアリング装置1は、レーンキープ機能を「オン」、即ちレーンキープ制御を開始するための開始SW(開始スイッチ)40を備えており、上位制御装置34により演算された目標転舵角θt_a*は、この開始SW40の出力するオン/オフ信号S_krとともに制御装置20(転舵ECU25)に入力される。そして、転舵ECU25は、そのオン/オフ信号S_krが「ON」となった場合には、同転舵ECU25内部で演算された制御目標角θt*、即ちステアリング操作に基づく制御目標角θt*(図2参照ステップ102)に代えて、上位制御装置34から入力される目標転舵角θt_a*に基づき転舵アクチュエータ8の作動を制御する。そして、これにより、走行車線32内の走行を維持すべく自動的にその転舵角θtが制御されるようになっている。
尚、本実施形態では、転舵ECU25には、車両のブレーキ(図示略)が操作されたことを示すブレーキON信号S_bk、並びに方向指示器(図示略)が操作されたことを示す方向指示信号S_trが入力されるようになっている。そして、本実施形態では、運転者によるステアリング操作、ブレーキ操作、又は方向指示操作の何れかがなされた場合に、そのレーンキープ制御を終了するようになっている。
(過誤入力防止機能)
次に、本実施形態のステアリング装置における過誤入力防止機能について説明する。
本実施形態のステアリング装置1は、運転者の過誤によるステアリング操作、即ち過誤入力に起因する車両31の走行車線32からの逸脱を防止する過誤入力防止機能を有している。具体的には、制御装置20は、ステアリング2に入力されたステアリング操作が運転者の過誤によるものであるか否かを判定し、そのステアリング操作が過誤であると判定した場合には、そのステアリング操作に基づく転舵角θtの変更を実行しない。そして、上記レーンキープ制御を開始するとともに、搭乗者に対し、警告装置41を介して音響的・視覚的な手法により走行車線32からの逸脱の可能性があったことを警告する。
詳述すると、図5のフローチャートに示すように、制御装置20(転舵ECU25)は、先ず運転者によるステアリング操作が過誤入力であるか否かを判定する(ステップ301〜305)。本実施形態では、この過誤入力であるか否かの判定は、運転者によるステアリング操作が車両31を走行車線32から逸脱させるものであるか否かの判定(ステップ301)、及びその走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものであるか否かの推定(ステップ302〜304)により行われる。そして、運転者によるステアリング操作が車両31を走行車線32から逸脱させるものであり(ステップ301:YES)、且つ運転者に車線変更の意図がないと推定される場合に、そのステアリング操作が過誤入力であると判定する。
さらに詳述すると、本実施形態では、転舵ECU25は、同転舵ECU25内で演算された転舵角θtの制御目標角θt*、即ちステアリング操作に基づく制御目標角θt*(図2参照ステップ102)と上位制御装置34から入力される目標転舵角θt_a*とを比較する。そして、その差分(|θt*−θt_a*|)が所定の閾値αよりも大きい場合に、そのステアリング操作が走行車線32を逸脱させるものであると判定する(ステップ301)。
次に、上記ステップ301において、ステアリング操作が走行車線32を逸脱させるものであると判定した場合(|θt*−θt_a*|>α、ステップ301:YES)、転舵ECU25は、続いて走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものであるか否かの推定を実行する。尚、本実施形態では、転舵ECU25には、上記ブレーキON信号S_bk及び方向指示信号S_trとともに、車両の走行に直接関係のない非操縦系の操作部材(カーオーディオやカーエアコン、或いはカーナビゲーションシステムのスイッチ等)への操作入力の有無を示す操作入力信号S_nsが入力されるようになっている(図1参照)。そして、この車線変更意図の推定は、方向指示入力の有無、及び非操縦系の操作部材への操作入力による注意力の低下が発生していると推定されるか否かにより行われる。
具体的には、転舵ECU25は、先ず方向指示信号S_trが「ON」となっているか否か、即ち方向指示器が操作されたか否かを判定する(ステップ302)。そして、方向指示器が操作されたと判定した場合(S_tr=ON、ステップ302:YES)には、その走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものであると判定し、以下に示すステップ303〜ステップ309の処理を実行しない。
一方、上記ステップ302において、方向指示器の操作がなされていないと判定した場合(S_tr=OFF、ステップ302:NO)には、転舵ECU25は、続いて操作入力信号S_nsが「ON」となっているか否か、即ち非操縦系の操作部材への操作入力がなされたか否かを判定する(ステップ303)。そして、非操縦系の操作部材への操作入力がなされたと判定した場合(S_ns=ON、ステップ303:YES)には、続いてブレーキON信号S_bkが「ON」となっているか否か(ステップ304)、所定速度ω0以上の操舵速度ωsが検出されたか否か(ステップ305)を判定する。そして、ブレーキON信号S_bkが「OFF」であり(S_bk=OFF、ステップ304:NO)、且つ所定速度ω0以上の操舵速度ωsが検出されない場合(|ωs|<ω0、ステップ305:NO)である場合にその走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものではないと判定する。
即ち、本実施形態では、非操縦系の操作部材への操作入力がなされ(S_ns=ON、ステップ303:YES)、且つブレーキ入力及び所定速度ω0以上の操舵速度ωsが検出されない場合(S_bk=OFF、ステップ304:NO、及び|ωs|<ω0、ステップ305:NO)にその走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものではないと判定する。そして、非操縦系の操作部材への操作入力がない場合(S_ns=OFF、ステップ303:NO)、ブレーキ入力がある場合(S_bk=ON、ステップ304:YES)、又は所定速度ω0以上の操舵速度ωsが検出された場合(|ωs|≧ω0、ステップ305:NO)には、運転者の意図によるものであると判定し、以下に示すステップ306〜ステップ309の処理を実行しない。
次に、転舵ECU25は、上記ステップ301〜305の判定処理において、ステアリング操作が過誤入力であると判定した場合(最終的にステップ305:NO)、同転舵ECU25内において演算された制御目標角θt*を無効とする。即ちステアリング操作に応じた転舵角θtの変更を実行しない(ステップ306)。そして、上位制御装置34から入力される目標転舵角θt_a*に基づき転舵アクチュエータ8の作動を制御する。即ち、上記レーンキープ制御を「オン」とする(ステップ307)。
また、本実施形態では、制御装置20(反力ECU26)は、続いてステアリング2の操舵角θsを転舵角θtに対応させるべく同操舵角θsの位置制御を実行する。具体的には、転舵ECU25は、運転者によるステアリング操作が過誤入力である場合には、反力ECU26に過誤入力防止機構が作動したことを示す実行信号Seを出力する。そして、反力ECU26は、この実行信号Seが入力された場合には、操舵角θsを転舵角θtに対応する値とすべく反力アクチュエータ17の作動を制御する(ステップ308)。そして、制御装置20(転舵ECU25)は、警告装置41に警告信号Swを出力することにより、搭乗者に対して走行車線32からの逸脱の可能性があったことの警告出力を実行する(ステップ309)。
そして、上記ステップ301〜305の判定処理において、ステアリング操作が過誤入力ではないと判定した場合(ステップ301:NO、ステップ302:YES、ステップ303:NO、ステップ304:YES、又はステップ305:YES)には、同転舵ECU25内部で演算された制御目標角θt*に基づき転舵アクチュエータ8の作動を制御する(ステップ310)。
尚、本実施形態では、制御装置20により制御手段、ステアリング入力検出手段、過誤入力判定手段、推定手段、操作入力検出手段が構成される。そして、上位制御装置34により自動操舵制御手段が、走行車線検出装置33が構成される。
以上、本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)制御装置20(転舵ECU25)は、運転者によるステアリング操作が過誤入力であるか否かを判定する(ステップ301〜305)。具体的には、運転者によるステアリング操作が車両31を走行車線32から逸脱させるものであり(ステップ301:YES)、且つ運転者に車線変更の意図がないと推定される場合に、そのステアリング操作が過誤入力であると判定する。そして、そのステアリング操作が過誤入力であると判定した場合(最終的にステップ305:NO)、同転舵ECU25内において演算された制御目標角θt*を無効とし、ステアリング操作に応じた転舵角θtの変更を実行しない(ステップ306)。このような構成とすれば、わき見等により、運転者が車両31を走行車線32から逸脱させるような過誤入力をした場合であっても、その過誤によるステアリング操作によって車両が転舵することはない。従って、過誤入力に起因する走行車線32からの逸脱を効果的に防止することができる。
(2)転舵ECU25は、同転舵ECU25内で演算された転舵角θtの制御目標角θt*、即ちステアリング操作に基づく制御目標角θt*と上位制御装置34から入力される目標転舵角θt_a*とを比較し、その差分(|θt*−θt_a*|)が所定の閾値αよりも大きい場合に、そのステアリング操作が走行車線32を逸脱させるものであると判定する(ステップ301)。このような構成とすれば、いち早く走行車線32からの逸脱可能性を判定することができ、これにより過誤入力防止機能の精度を高めることができる。
(3)転舵ECU25は、非操縦系の操作部材への操作入力がなされ(S_ns=ON、ステップ303:YES)、且つブレーキ入力及び所定速度ω0以上の操舵速度ωsが検出されない場合(S_bk=OFF、ステップ304:NO、及び|ωs|<ω0、ステップ305:NO)にその走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものではないと判定する。このような構成とすれば、走行車線逸脱の意図を精度良く推定することができ、これにより過誤入力防止機能の精度を高めることができる。
(4)転舵ECU25は、そのステアリング操作が過誤入力であると判定した場合には、上位制御装置34から入力される目標転舵角θt_a*に基づき転舵アクチュエータ8の作動を制御する。即ち、上記レーンキープ制御を「オン」とする(ステップ307)。このような構成とすれば、より確実に走行車線32からの逸脱を防止することができる。
(5)制御装置20(反力ECU26)は、そのステアリング操作が過誤入力であると判定した場合には、ステアリング2の操舵角θsを転舵角θtに対応させるべく同操舵角θsの位置制御を実行する。このような構成とすれば、操舵反力の増加によって運転者に過誤入力の発生を早期に認識させることができるとともに、操舵角θsが転舵角θtに対応することによって、素早く通常制御に復帰することができるようになる。
(6)制御装置20(転舵ECU25)は、警告装置41に警告信号Swを出力することにより、搭乗者に対して走行車線32からの逸脱の可能性があったことの警告出力を実行する(ステップ309)。このような構成とすれば、搭乗者に走行車線32からの逸脱の可能性があったことを迅速に知らしめることができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、転舵ECU25と反力ECU26とを別々に設けたが、制御装置20に転舵ECU25及び反力ECU26の機能を一体的に持たせる構成としてもよい。
・本実施形態では、制御装置20により、過誤入力判定手段、推定手段、操作入力検出手段が構成されることとした。しかし、これに限らず、これら各手段は、例えば上位制御装置34等、その他の制御手段により構成されることとしてもよい。
・本実施形態では、運転者によるステアリング操作が過誤入力であるか否かは、そのステアリング操作が車両31を走行車線32から逸脱させるものであるか否かの判定(ステップ301)、及びその走行車線32からの逸脱が運転者の意図によるものであるか否かの推定(ステップ302〜305)により行われることとした。しかし、これに限らず、ステアリング操作が車両31を走行車線32から逸脱させるものでない場合について判定してもよく、例えば、そのステアリング操作が車両31を何らかの障害物に衝突させるものであるか否かの判定により行うこととしてもよい。
・本実施形態では、ステアリング操作に基づく制御目標角θt*と上位制御装置34から入力される目標転舵角θt_a*との比較により、そのステアリング操作が走行車線32を逸脱させるものであると判定することとしたが、この走行車線の逸脱判定は、ヨーレイト変化等、その他の方法により行うこととしてもよい。
・本実施形態では、特に言及しなかったが、制御目標角θt*と目標転舵角θt_a*との比較に用いる閾値αは、車速Vや走行車線情報I_rrにより特定される走行車線32の幅に応じて変更するとよい。即ち車速Vが高い又は走行車線32の幅が狭い場合には閾値αを小とすることで、過誤入力防止機能の精度をより高めることが可能になる。
・本実施形態では、車線変更意図の推定は、方向指示入力の有無、及び非操縦系の操作部材への操作入力による注意力の低下が発生していると推定されるか否かにより行われることとした。しかし、これに限らず、これらの何れか一方により行ってもよく、これら以外の方法により行ってもよい。
・本実施形態では、非操縦系の操作部材への操作入力による注意力低下の判定は、ブレーキ操作の有無、所定速度ω0以上の操作速度の有無により行うこととしたが、これに限らず、その他のパラメータに基づいて行うこととしてもよい。
・本実施形態では、ステアリング操作が過誤入力である場合、操舵角θsを転舵角θtに対応させるべく同操舵角θsの位置制御を実行することとしたが、ステアリング2に付与する操舵反力を通常よりも大とする構成としてもよい。
・また、上記過誤入力判定、並びに過誤入力時の操舵反力制御については、ステアバイワイヤ式のものに限らず、ステアリングと転舵輪が機械的に連結されたもの、例えば、反力アクチュエータを有する伝達比可変装置付きの車両用操舵装置に具体化してもよい。
・本実施形態では、ステアリング操作が過誤入力である場合、そのステアリング操作に基づく転舵角θtの変更を実行しないのみならず、併せてレーンキープ制御、操舵角θsを転舵角θtに対応させる位置制御、及び警告出力を実行することとした。しかし、これに限らず、レーンキープ制御、操舵角θsの位置制御、又は警告出力の少なくとも何れか一つは実行しなくともよく、またその他の車両制御を併せて実行することとしてもよい。
本実施形態のステアリング装置の概略構成図。 転舵ECUによる転舵アクチュエータの制御態様を示すフローチャート。 反力ECUによる反力アクチュエータの制御態様を示すフローチャート。 車両と走行車線との関係を示す説明図。 過誤入力防止制御の態様を示すフローチャート。
符号の説明
1…ステアリング装置、2…ステアリング(ハンドル)、3…操舵機構、4…転舵輪、5…転舵機構、6…ステアリングシャフト、7…操舵角センサ、8…転舵アクチュエータ、12…転舵軸、16…トルクセンサ、17…反力アクチュエータ、20…制御装置、21…車速センサ、22…変位量センサ、31…車両、32…走行車線、33…走行車線検出装置、34…上位制御装置、τ…操舵トルク、V…車速、θs…操舵角、ωs…操舵速度、θt…転舵角、θt*…制御目標角、θt_a*…目標転舵角、α…閾値、I_rr…走行車線情報、S_tr…方向指示信号、S_ns…操作入力信号、S_bk…ブレーキON信号、Sw…警告信号、Se…実行信号。

Claims (8)

  1. ステアリングと、転舵輪の転舵角を変更するための転舵アクチュエータと、前記ステアリングに入力されるステアリング操作を検出するステアリング入力検出手段と、該検出されたステアリング操作に応じて前記転舵角を変更すべく前記転舵アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置であって、
    前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものであるか否かを判定する過誤入力判定手段と、
    車両の走行車線を検出する走行車線検出手段と、
    運転者の車線変更意図を推定する推定手段と、
    非操縦系の操作部材に対する入力操作を検出する操作入力検出手段とを備え、
    前記過誤入力判定手段は、前記検出されたステアリング操作が車両を走行車線から逸脱させるものであり、且つ車線変更の意図がないと推定される場合に、該検出されたステアリング操作を過誤入力によるものであると判定し、
    前記推定手段は、前記操作部材に対する入力操作があり、且つブレーキ入力及び所定速度以上の操舵速度が検出されない場合に、前記車線変更の意図がないと推定し、
    前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、該ステアリング操作に基づく前記転舵角の変更を行わないこと、
    を特徴とする車両用操舵装置。
  2. 請求項1に記載の車両用操舵装置において、
    前記非操縦系の操作部材は、カーオーディオ、カーエアコン、又はカーナビゲーションシステムの操作部材であること、を特徴とする車両用操舵装置。
  3. 請求項1に記載の車両用操舵装置において、
    前記推定手段は、方向指示入力がある場合に、前記車線変更の意図があると推定すること、を特徴とする車両用操舵装置。
  4. 請求項1〜請求項のうちの何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
    前記走行車線検出手段により検出される走行車線情報に基づいて、前記走行車線内の走行を維持するための目標転舵角を演算する自動操舵制御手段を備え、
    前記過誤入力判定手段は、前記検出されたステアリング操作に基づく前記転舵角の制御目標角と前記演算された目標転舵角との比較により、該検出されたステアリング操作が車両を走行車線から逸脱させるものであるか否かを判定すること、を特徴とする車両用操舵装置。
  5. 請求項に記載の車両用操舵装置において、
    前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、前記演算された目標転舵角に基づいて前記転舵アクチュエータの作動を制御すること、を特徴とする車両用操舵装置。
  6. 請求項1〜請求項のうちの何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
    前記転舵輪と機械的に分離された前記ステアリングに入力される操舵トルクに応じた操舵反力を付与すべく制御される反力アクチュエータを備え、
    前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、前記付与する操舵反力を前記過誤入力でない場合よりも大とすべく前記反力アクチュエータの作動を制御すること、を特徴とする車両用操舵装置。
  7. 請求項1〜請求項のうちの何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
    前記ステアリングの操舵角を変更可能な反力アクチュエータを備え、
    前記制御手段は、前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合には、前記ステアリングの操舵角を前記転舵角に応じた値とすべく前記反力アクチュエータの作動を制御すること、を特徴とする車両用操舵装置。
  8. 請求項1〜請求項のうちの何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
    前記検出されたステアリング操作が過誤入力によるものである場合に、該過誤入力がなされた旨を警告する警告手段を備えること、を特徴とする車両用操舵装置。
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