JP4941675B2 - 板金インサート成形品の製造方法、および電子機器 - Google Patents

板金インサート成形品の製造方法、および電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、板金インサート成形品の製造方法、および電子機器に関し、特に、携帯機器などの電子機器で使用される板金インサート成形品の製造方法、およびその製造方法により製造された板金インサート成形品を備える電子機器に関する。
板金インサート成形品は、板金と樹脂とをインサート成形により一体に形成した製品であり、強度を保ちながら薄い構造体となることから、携帯電話などの携帯機器で使われる。たとえば特許文献1には、インサート成形によって板金の周囲を樹脂で囲んだ複合筐体を使用した携帯電話が示されている。
このようなインサート成形に関する技術として、たとえば特許文献2には、金属板の樹脂部に埋没される部分をあらかじめ断面略波形形状に形成し、波形形状部の縦壁部に連通穴を貫通形成することが示されている。波形形状部の頂部が外部に露出し、かつ樹脂層と面一状態となるようにインサート成形し、連通穴を通して金属板と樹脂層を相互に接続し、一体化している。
特許文献3には、金型において、熱媒体発生装置に接続され、金型内に導入した熱媒体によって、金型内に置かれたインサート部材を、樹脂の熱変形温度以上に加熱し、樹脂を射出成形する方法が示されている。
特許文献4には、略L字状のバスバーの一部を樹脂固定部に埋設し、他の部分を樹脂固定部の表面に沿うインサート成形品の製造方法が示されている。この製造方法では、インサート成形後に成形品の熱収縮によって表面に沿う部分のバスバー部分と樹脂固定部とが離間することを防止するため、あらかじめ熱収縮による固定部材の変形に対応してバスバーを余分に折り曲げておき、射出成形にあたって溶融樹脂により接続部を埋設部から離れる方向に向かって弾性変形させながら金型の内壁に押し付ける。
特開2007−189365号公報 特開2003−260720号公報 特開平11−105076号公報 特開平10−249882号公報
通常、樹脂の成形収縮率は、金属の熱膨張率に基づくインサート部材の収縮率より大きい。このため、金属板をインサート部材として、その金属板の周囲を樹脂部材が取り囲むように一体化成形する場合、インサート部材の収縮量より樹脂部材の収縮量が大きくなる。その結果、インサート部材がない場合に比較して、樹脂およびインサート部材のひずみが増大するため、樹脂にクラックが発生したり、成形品に反り変形が起こることが多い。
ここでいう成形収縮とは、成形加工において、材料樹脂の冷却固化過程または硬化過程で生じる、成形品の寸法収縮を意味する。成形収縮率とは、常温での金型寸法と、成形品の成形収縮が始まって一定期間経過後、すなわち収縮変化が収まった後に測定された成形品寸法とを比較したものであって、金型寸法から成形品寸法を減じた差を金型寸法で除した値、すなわち(金型寸法−成形品寸法)/金型寸法で表される。
金属板に波形形状を形成する方法では、樹脂と金属板は強固に接続されるが、金属と樹脂との収縮率差は解消されないため、反り変形やクラックの発生を低減することには繋がらない。金型内でインサート部材を加熱する方法は、金属の収縮量が増大し、樹脂の収縮量に近づくため、反り変形やクラックが防止されるとしている。しかし、金型にインサート部材を加熱する機構を作り込む必要があるため、金型が複雑化し、コスト増大を招く。
また、特許文献4のように樹脂に埋没される部分を変形した構造ではこれらのひずみやそりを防ぐことはできない。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、特にインサート部材となる金属板にわずかな改良を加えるだけで上記の問題を解消できる、板金インサート成形品の製造方法を提供するものである。
本発明に係る板金インサート成形品の製造方法は、金属板の周囲に沿って樹脂部材を一体化した板金インサート成形品を成形する方法であって、畝形状を形成する工程と、切り欠きを形成する工程と、金属板を金型に設置する工程と、金属板と樹脂とを一体化する工程とを備える。畝形状は、樹脂部材が設けられる金属板の第一端部から、第一端部と対向する金属板の第二端部に向かって、金属板を横断している。切り欠きは、畝形状の両端を金属板の第一端部および第二端部から離している。金属板と樹脂とは、樹脂を射出成形して、一体化されている。
本発明の板金インサート成形品の製造方法によると、樹脂部材が成形収縮するときに、金属板に形成された畝形状の畝幅が小さくなることによって、金属板の寸法がわずかに収縮する。この金属板の収縮によって、樹脂の成形収縮率と熱膨張率に基づく金属板の収縮率との差が小さくなる。したがって、樹脂のひずみを低減できるので、板金インサート成形品の反り変形や、樹脂部材へのクラック発生を抑制することができる。
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の板金インサート成形品の製造方法を示す流れ図である。図2〜図7は、図1に示す板金インサート成形品の製造方法の各工程を説明するための図である。図1〜図7に基づいて、実施の形態1の板金インサート成形品の製造方法を説明する。
まず工程(S1)において、インサート部材として用いられる板金としての、金属板を準備する。たとえばJIS(日本工業規格)SUS304製の薄い金属板を準備することができる。次に工程(S2)において、金属板に第一の畝形状を形成する。次に工程(S3)において、金属板に第二の畝形状を形成する。
畝形状について以下に説明する。図2は、インサート部材として用いられる金属板の斜視図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿う金属板の断面図である。図2および図3に示すように、金属板1には、畝形状2が形成されている。畝形状2は、たとえば金属板1の裏面1b側から表面1a側へプレス金型が押し付けられて金属板1を折り曲げるプレス加工によって、形成することができる。畝形状2が形成されている部分では、金属板1の裏面1bが窪み、表面1aが突起している。畝形状2の断面は、ベル形状とされている。
金属板1は、図2に示すように平面形状が略長方形状に形成されている。この長方形の一辺が延びる第一の方向に沿うように、金属板1の表面に第一の畝形状2aが形成されている。また、上記長方形の一辺と直交する他辺が延びる第二の方向に沿うように、金属板1の表面に第二の畝形状2bが形成されている。第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとは、直交するように形成されている。
畝形状2は、長方形状の金属板1の対向する2辺にほぼ跨るように形成されている。畝形状2は、金属板1の一方の端部である第一端部から、当該第一端部と対向する金属板1の他方の端部である第二端部に向かって延びており、金属板1を横断するように形成されている。図2に示す金属板1において、第一の畝形状2aは、長方形状の金属板1の上辺と下辺とを結ぶように延在している。第二の畝形状2bは、長方形状の金属板1の左辺と右辺とを結ぶように延在している。
ここで、図2に示すように金属板1の平面形状は略長方形状に形成されているが、畝形状2の両端には後述する切り欠き3が形成されているために、畝形状2の端部は厳密には上記長方形の辺まで達していない。ただし、畝形状2の端部は、金属板1の長方形の辺から長方形の内側へ向かって形成された切り欠き3の最深部に達している。切り欠き3の最深部を金属板1の端部と考えると、実施の形態1の畝形状2は金属板1の一方の端部から他方の端部にまで亘って形成されており、畝形状2は金属板1を横断して形成されているといえる。
また、金属板1の端部からわずかな距離を隔てる金属板1の内側にまで畝形状2の端部が達するように、畝形状2が形成されていても、後述する金属板1を容易に変形させられるという本発明の効果を得られる。つまり、畝形状2の端部が厳密に金属板1の端部にまで到達していなくても、金属板1を横断するように設けられている本発明の畝形状2に含まれるものとする。
図2に示すように、第一の畝形状2aは、金属板1の縦方向を長手方向として、2本形成されている。第二の畝形状2bは、金属板1の横方向を長手方向として、2本形成されている。畝形状2の本数はこれらに限られるものではなく、1本の畝形状2が形成されていてもよく、さらに多数の3本以上の畝形状2が形成されていてもよい。
図1に戻って、次に工程(S4)において、金属板1に切り欠き3を形成する。図2に示すように、切り欠き3は、畝形状2の両端が形成されている金属板1の端部に設けられている。切り欠き3の切り欠き幅が畝形状2の畝幅よりも大きくなるように、切り欠き3は形成されている。畝形状2の端部は、幅方向の全部において、切り欠き3に面している。そのため畝形状2は、金属板1の端部にない構造となっている。畝形状2の両端は、金属板1の第一端部および第二端部から離されている。
次に工程(S5)において、金属板1を貫通する貫通孔5を形成する。貫通孔5は、第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとの交差部に形成される。貫通孔5の径の寸法が、第一の畝形状2aの畝幅よりも大きく、かつ第二の畝形状2bの畝幅よりも大きくなるように、貫通孔5は形成されている。貫通孔5は、第一の畝形状2aの畝幅および第二の畝形状2bの畝幅よりも大径である。この貫通孔5によって、第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとは連続せず、相互に独立する構造となる。第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとはいずれも、複数個の畝部に分断され、それぞれの畝部は不連続となっている。
貫通孔5は、平面形状が円形である丸孔として形成することができる。また、貫通孔5のうちの特定の一の貫通孔を丸孔として形成して、当該一の貫通孔に隣接する他の貫通孔を、一の貫通孔の中心点と他の貫通孔の中心点とを結ぶ方向に長径を有する、長円形の孔としてもよい。たとえば一の貫通孔の横隣の貫通孔を横方向に長円形の孔とし、一の貫通孔の縦隣の貫通孔を縦方向に長円形の孔とし、一の貫通孔の斜め隣の貫通孔を当該斜め方向に長円形の孔として形成してもよい。
図1に戻って、次に工程(S6)において、折り曲げ部4を設ける。折り曲げ部4は、金属板1の端部が折り曲げられて形成されている。折り曲げ部4の延在方向は、金属板1において畝形状2および折り曲げ部4が形成されていない部分である平板形状の延在方向と、交差している。(S1)〜(S6)の工程によって、本実施の形態のインサート成形においてインサート部材として用いられ得る形状に加工された、図2に示す金属板1が得られる。
次に工程(S7)において、金属板1を、射出成形機に取り付けられた金型に設置する。図4は、金属板が金型に設置される状態を示す断面模式図である。図4に示すように、射出成形時の樹脂の通路として、金型20aにノズル22およびスプルー23が形成されており、金型20bにランナー24およびゲート部25が形成されている。
金属板1は、金型20bと金型20cとによって挟まれるように、金型の内部に設置される。金属板1に形成された貫通孔5に、金型に形成された位置決めピンを貫通させることにより、金属板1を位置決めしつつ金型に設置することができる。金型の内部に設置され型締めされた状態の金属板1では、畝形状2が押し広げられている。金属板1は、畝形状2を押し広げた状態で、金型に設置される。たとえば、型締め時に畝形状2の高さ方向の50%が押しつぶされるように、金属板1と金型とを設定することができる。
畝形状2が押し広げられることにより、金属板1は面方向にわずかに延びる。このとき貫通孔5が上述の通り長円形穴に形成されていれば、位置決めピンによって位置決めされた金属板1の伸びが妨げられないため好ましい。
次に工程(S8)において、樹脂材料29を金型に射出して、樹脂材料29の射出成形を行なう。図5は、金型に樹脂が射出される状態を示す断面模式図である。加熱溶融され流動性を向上された樹脂材料29は、シリンダ21から金型内部へ射出される。金型への溶融材料の注入は、スクリューまたはプランジャーの前進圧力によって行なうことができる。樹脂材料29は、ノズル22、スプルー23、ランナー24およびゲート部25を経由して、成形品部26に注入され、成形品部26の内部全体に充填される。
畝形状2が押し広げられている状態で、インサート部材としての金属板1の周囲に、樹脂材料29が射出される。金属板1の一部は、成形品部26に充填された樹脂材料29の内部に埋め込まれる。このようにインサート成形が行なわれて、金属板1と樹脂材料29とが一体化される。
次に工程(S9)において、樹脂材料29を冷却して固化させる。シリンダ21から金型内部に注入される樹脂は、金型20b,20cに形成された成形品部26に至り、冷却固化されて板金インサート成形品の樹脂部材となる。
次に工程(S10)において、樹脂材料29を金型温度近くにまで冷却した後、型開きし、金型から取り出して、板金インサート成形品10が得られる。図6は、板金インサート成形品の断面図である。図7は、板金インサート成形品の斜視図である。図6および図7に示す板金インサート成形品10では、金型に射出された溶融状態の樹脂材料29が硬化した樹脂部材6が、金属板1の周囲に沿って、金属板1と一体化されている。図7に示す板金インサート成形品10では、金属板1の周囲が樹脂部材6で囲まれて成形された形状となっている。
金属板1の縁部分に形成された折り曲げ部4は、板金インサート成形品10において樹脂部材6の内部にあって、樹脂部材6に埋没している。折り曲げ部4が形成された金属板1の周辺部において、樹脂部材6に金属板が保持されている。折り曲げ部4は、樹脂部材6に覆われている。また、金属板1の端部における樹脂部材6に埋め込まれる部分は、切り欠き3が形成されている金属板1の周辺部までに留まっている。つまり、金属板1に形成された畝形状2の端部は、樹脂部材6で覆われていない。
このようにして製造された実施の形態1の板金インサート成形品10において、金属板1に形成された畝形状2は、金属の特性により、たとえばスプリングのような、弾性部材としての効果を有している。つまり、畝形状2を形成したことにより、金属板1は、弾性部材により連結された複数の部分に分断された構造となる。
板金インサート成形品10を金型から取り出したとき、押し広げられていた畝形状2が元に近い形状にスプリングバックして戻るため、金属板1の寸法がわずかに収縮し、樹脂との収縮差を補償する。つまり、樹脂材料29の成形収縮率は金属板1の熱収縮率よりも大きいため、樹脂材料29が成形収縮により変化する寸法は金属板1が熱収縮により変化する寸法に対して大きい。しかし金属板1は、畝形状2のスプリングバックにより収縮するように寸法が変化する。金属板1には、熱収縮とスプリングバックの作用とによって、樹脂材料29が成形収縮する寸法変化量により近い量の、寸法変化が発生する。なおスプリングバックとは、離型により力が除かれたとき材料の弾性変形分が弾性的に元の形状に回復(弾性回復)しようとする現象をいう。
このように、金属板1は、インサート成形時に樹脂の成形収縮により金属板1および樹脂に生じる応力を緩和することができる。略平板形状の金属板1の平面形状に沿って生じる応力を緩和可能な応力緩和部としての畝形状2が、金属板1に設けられている。したがって、実施の形態1の樹脂部材6では、樹脂部材6と金属板1との寸法差に起因して発生する、ゆがみやねじれの量が小さくなる。その結果、板金インサート成形品10の反り変形や樹脂部材6へのクラック発生が抑制される。
略平板形状の金属板1の端部のみが樹脂部材6により覆われる場合には、金属板1と樹脂部材6との熱膨張率の違いによって、反り変形やクラックが特に発生しやすい。実施の形態1の板金インサート成形品10では、金属板1に弾性部材の効果を有する畝形状2を設けたことにより、金属板1の周囲のみが樹脂部材6に覆われる影響を低減できる。
また、実施の形態1では、互いに直交する第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとを形成したので、二次元的に応力の影響を低減できる。特に金属板1の平面形状の面積が大きい場合に効果が大きい。なお、平面的に金属と樹脂の収縮差を補償するためには、直交する二方向に畝形状2が形成されている金属板1がより好ましいが、畝形状2は必ずしも直交する必要はない。金属板1の表面が延在する平面上における交差する複数方向に沿う複数の畝形状2が形成されていれば、金属板1は二次元的に収縮することができるので、平面的に金属と樹脂との収縮差を補償することができる。
樹脂部材6に取り囲まれる金属板1が細長い形状であれば、樹脂の寸法変化のより大きい一方向である金属板1の長手方向のみに、畝形状2が形成されていてもよい。
また、樹脂部材6が金属板1を取り囲んでおらず、金属板1の周囲の一部のみに沿って樹脂部材6が金属板1と一体化されている場合、樹脂部材6に保持されている金属板1の端部と交差する方向に畝形状2が形成されていればよい。たとえば金属板1の略直線状の端部に沿って樹脂部材6が設けられる場合、当該直線と交差する(典型的には直交する)方向に長手方向を有する畝形状2を形成すればよい。このように畝形状2を形成することにより、金属と樹脂との収縮量差に起因して樹脂部材6に発生しうるひずみを抑制する効果を得ることができる。
また、実施の形態1では、縦横に交差する第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとの交差部に、交差部より大きな貫通孔5が形成され、それぞれの畝形状2が分離されている。したがって、縦方向の第一の畝形状2aと横方向の第二の畝形状2bとは、独立に動くことができ、別個に弾性部材としての効果を発揮できるようになる。そのため、二次元的な応力を緩和する効果がさらに大きい。また、第一の畝形状2aと第二の畝形状2bとの交差部の形状が複雑にならず、加えて、金属板1を金型へ設置するときの位置決め穴として貫通孔5を使用することもできる。
また、実施の形態1では、樹脂部材6に埋没する金属板の端部は折り曲げ部4となっている。そのため、金属板1と樹脂部材6との密着を強固にするとともに、板金インサート成形品10の剛性が向上する。
また、実施の形態1では、畝形状2の両端に切り欠き3が形成されている。この切り欠き3により、畝形状2が樹脂部材6の内部に埋め込まれず、畝形状2は樹脂部材6と独立した動きをすることができるので、畝形状2が弾性部材として機能しやすく、応力を緩和する効果が大きい。
インサート成形における加熱時の畝形状2の変形量は、冷却後に畝形状2がもとの(常温時の)形状にもどる程度の変形量にすると、成形後の応力の発生を抑制するという観点から望ましい。また、冷却後も完全にもとに戻らずに、もとの畝形状2よりも少し広がった状態で固定されてもよい。その場合、金属板1には常に周囲に引っ張られる応力がかかるので、平面を保つ効果が高くなる。
畝形状2は、金属板1に生じる応力を緩和可能な応力緩和部としての機能を有するものであればよい。つまり、畝形状2が形成されているために、金属板1は容易に平面形状が収縮する方向に変形可能とされていればよい。たとえば畝形状2において金属板1が相対的に薄肉化されていると、畝形状2がより変形しやすくなるため好ましい。樹脂の成形収縮に伴い金属板1に加えられる応力が、たとえば畝形状2の曲率を大きくし畝幅を小さくするように畝形状2を曲げる作用などにより、金属板1を容易に変形させることができる場合には、金属板1を金型に設置するとき畝形状2を押し広げなくても構わない。
また、樹脂部材6に埋没する金属板1の端部に切り欠き3を設けたので、楔効果により金属板1と樹脂部材6との密着を一層強固とすることができる。
上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、実施の形態1の板金インサート成形品10の製造方法の特徴的な構成を要約すれば、実施の形態1に従った板金インサート成形品10の製造方法は、金属板1の周囲に沿って樹脂部材6を一体化した板金インサート成形品10を成形する方法を実施するものである。
すなわち、実施の形態1の板金インサート成形品10の製造方法は、畝形状2を形成する工程と、切り欠き3を形成する工程と、金属板1を金型に設置する工程と、金属板1と樹脂材料29とを一体化する工程とを備える。畝形状2は、樹脂部材6が設けられる金属板1の第一端部としての、図1に示す略長方形状の金属板1の第一の辺から、当該一辺と対向する金属板1の略長方形状の第二の辺に向かって、金属板1を横断している。切り欠き3は、畝形状2の両端を金属板1の上記第一の辺および第二の辺から離している。金属板1と樹脂部材6とは、樹脂材料29を射出成形して、一体化されている。
このようにすれば、樹脂材料29が成形収縮するときに、金属板1に形成された畝形状2の畝幅が小さくなることによって、金属板1の寸法がわずかに収縮する。この金属板1の収縮によって、樹脂材料29の成形収縮率と熱膨張率に基づく金属板1の収縮率との差が小さくなる。したがって、樹脂部材6のひずみを低減できるので、板金インサート成形品10の反り変形や、樹脂部材6へのクラック発生を抑制することができる。
これまでの説明では、金属板1は主として平面形状を有する場合としたが、曲面の金属板1に対しても同様に畝形状2を形成することで、その曲面の変形や樹脂部のクラックを抑制する効果が得られる。
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2の金属板の断面図である。図8に示す金属板の断面は、図3の断面図と同様に、図2に示すIII−III線に沿う金属板の断面である。図8に示すように、金属板1の畝形状2は、断面形状が三角形状であるように形成されている。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3の金属板の断面図である。図9に示す金属板の断面は、図3の断面図と同様に、図2に示すIII−III線に沿う金属板の断面である。図9に示すように、金属板1の畝形状2は、断面形状が台形形状であるように形成されている。実施の形態3のその他の構成は、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
実施の形態1〜3に示すように、畝形状2は、金属板1をその平面形状が収縮する方向に容易に変形可能とするものであれば、どのような形状に設けられてもよい。
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4の金属板の平面形状の一部を示す模式図である。図10に示すように、実施の形態4の金属板1の端部には、金属板1をその厚み方向に貫通する孔が形成された、貫通孔部7が設けられている。
貫通孔部7が形成されている金属板1の端部は、板金インサート成形品10において、樹脂部材6の内部に少なくともその一部が埋没している部分である。このように、樹脂部材6の内部にある金属板1の一部に貫通孔部7が形成されているので、金属板1と樹脂部材6との密着がより強固となる。実施の形態4のその他の構成は、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
(実施の形態5)
図11は、実施の形態5の金属板の平面形状の一部を示す模式図である。図11に示すように、実施の形態5の金属板1の端部には、金属板1の端部をその厚み方向に貫通する切り欠きが形成された、切り欠き部8が設けられている。
切り欠き部8が形成されている金属板1の端部は、板金インサート成形品10において、樹脂部材6の内部に少なくともその一部が埋没している部分である。このように、樹脂部材6にの内部にある金属板1の一部に切り欠き部8が形成されているので、金属板1と樹脂部材6との密着がより強固となる。実施の形態5のその他の構成は、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
(実施の形態6)
実施の形態6では、上述した製造方法により製造された板金インサート成形品10を備える電子機器の一例としての、代表的な携帯機器である携帯電話の構造について説明する。図12は、携帯電話の外観を示す斜視図である。図12に示すように、携帯電話30は、たとえばキースイッチなどの入力部42を含む入力ユニット40と、入力部42で入力したデータに応じて表示を行なう表示部51を含む表示ユニット50とを備えている。この携帯電話30では、入力ユニット40と表示ユニット50とが連結されている。
図13は、図12に示す入力ユニットの構成を示す分解斜視図である。図14は、図12に示す入力ユニットの断面図である。入力ユニット40は、実施の形態1〜5で説明した、金属板1と樹脂部材6とを有する板金インサート成形品10を、筐体41として備える。筐体41には、入力部42、基板43および電池44が組み込まれている。また筐体41の背面側は、裏板45によって覆われている。なお、入力ユニット40の筐体41には、表示ユニット50を連結するとともに電気信号を送受する配線などの連結部を有するが、図では省略している。
筐体41は、実施の形態1で説明した製造方法と同様の方法により、金属板1の周囲に沿って樹脂部材6が一体化されて形成されている。金属板1において畝形状2が突起する側の表面1a(図3参照)側に、入力部42が設置される。また金属板1の裏面1b側には、基板43や電池44が設置される。
図14に示す入力ユニット40では、金属板1の畝形状2が入力部42に対向する面側に凸となるように筐体41を形成したが、基板43に対向する面側に凸となるように筐体41を形成してもよい。またたとえば、金属板1が複数の平行な畝形状2を有する場合、隣り合う畝形状2同士で、凸となる方向が表面1a側、裏面1b側で交互となるように、筐体41を形成してもよい。
以上説明した携帯電話30は、実施の形態1〜5の板金インサート成形品の製造方法で形成された板金インサート成形品10を筐体41として用いる。筐体41の金属板1には、インサート成形時に樹脂材料29の成形収縮により金属板1に生じる応力を緩和可能な応力緩和部としての、畝形状2が形成されている。したがって、入力ユニット40の筐体41の反り変形や樹脂部材6のクラックの発生が少ない携帯電話30が実現できる。
また、実施の形態6のように、畝形状2を形成した金属板1部分に入力部42を設けることにより、入力部42のキースイッチの入力操作時に大きな圧力がかかっても筐体41の変形を小さく抑え、また樹脂部材6と金属板1との接続部分の割れの発生を抑制することができる。
以下、この発明の実施例について説明する。実施の形態1〜5において説明した板金インサート成形品10を製造し、板金インサート成形品10の反り量を計測する実験を行なった。
板金インサート成形品10の製造条件は以下の通りとした。金属板1に形成した貫通孔5を、射出成形機に取り付けた金型に形成された位置決めピンに通し、金属板1を金型に設置した。型締め時に、金属板1の畝形状2が50%押しつぶされるようにした。このとき金属板1は面方向にわずかに伸びるが、実施の形態1で説明した長円形の貫通孔により、この伸びを妨げないようにした。射出成形は、ポリカーボネート樹脂を用い、樹脂温度300℃、金型温度100℃で通常の成形条件で行なった。
また比較例として、金属板に畝形状が形成されることを特定していない板金インサート成形品を作製した。図15は、比較例としての板金インサート成形品の斜視図である。図15に示すように、比較例の板金インサート成形品100は、平板形状の金属板101と、金属板101の周囲に沿って一体化された樹脂部材106とを備えている。
板金インサート成形品10の反り変形量は、板金インサート成形品10の長さ(図7に示す距離L)に対する板金インサート成形品10の高さ方向(図7に示す距離H)の変化の、最大値と最小値の差の比で評価した。実施例と比較例の板金インサート成形品の反り量を表1に示す。表1に示す実施例1〜5とは、それぞれ実施の形態1〜5で説明した板金インサート成形品10を示すものである。
Figure 0004941675
表1に示すように、実施例1〜5の板金インサート成形品10の反り量はいずれも、比較例の畝形状2を形成しない板金インサート成形品100の反り量に対して、大幅に小さくなっていた。また、実施例1〜5の板金インサート成形品10の外観検査を行なった結果、大きな変形やクラックの発生は見られなかった。このように、本発明によって、板金インサート成形品10の反り変形や、樹脂部材6へのクラック発生を抑制でき、良好な板金インサート成形品10を得ることができることが示された。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
実施の形態1の板金インサート成形品の製造方法を示す流れ図である。 インサート部材として用いられる金属板の斜視図である。 図2に示すIII−III線に沿う金属板の断面図である。 金属板が金型に設置される状態を示す断面模式図である。 金型に樹脂が射出される状態を示す断面模式図である。 板金インサート成形品の断面図である。 板金インサート成形品の斜視図である。 実施の形態2の金属板の断面図である。 実施の形態3の金属板の断面図である。 実施の形態4の金属板の平面形状の一部を示す模式図である。 実施の形態5の金属板の平面形状の一部を示す模式図である。 携帯電話の外観を示す斜視図である。 図12に示す入力ユニットの構成を示す分解斜視図である。 図12に示す入力ユニットの断面図である。 比較例としての板金インサート成形品の斜視図である。
符号の説明
1 金属板、1a 表面、1b 裏面、2 畝形状、2a 第一の畝形状、2b 第二の畝形状、3 切り欠き、4 折り曲げ部、5 貫通孔、6 樹脂部材、7 貫通孔部、8 切り欠き部、10 板金インサート成形品、20a,20b,20c 金型、21 シリンダ、22 ノズル、23 スプルー、24 ランナー、25 ゲート部、26 成形品部、29 樹脂材料、30 携帯電話、40 入力ユニット、41 筐体、42 入力部、43 基板、44 電池、45 裏板、50 表示ユニット、51 表示部。

Claims (8)

  1. 金属板の周囲に沿って樹脂部材を一体化した板金インサート成形品を成形する方法であって、
    前記樹脂部材が設けられる前記金属板の第一端部から、前記第一端部と対向する前記金属板の第二端部に向かって、前記金属板を横断する、畝形状を形成する工程と、
    前記畝形状の両端を前記金属板の前記第一端部および前記第二端部から離す、切り欠きを形成する工程と、
    前記金属板を金型に設置する工程と、
    樹脂を射出成形し、前記金属板と前記樹脂とを一体化する工程と、を備える、板金インサート成形品の製造方法。
  2. 前記金属板を金型に設置する工程では、前記畝形状を押し広げた状態で前記金属板を金型に設置する、請求項1に記載の板金インサート成形品の製造方法。
  3. 前記畝形状を形成する工程は、前記金属板の表面の第一の方向に沿う第一の畝形状を形成する工程と、前記第一の方向と交差する第二の方向に沿う第二の畝形状を形成する工程とを含む、請求項1または請求項2に記載の板金インサート成形品の製造方法。
  4. 前記第一の畝形状と前記第二の畝形状との交差部に、前記第一の畝形状の畝幅および前記第二の畝形状の畝幅よりも大径の、前記金属板を貫通する孔を形成する工程をさらに備える、請求項3に記載の板金インサート成形品の製造方法。
  5. 前記金属板の、板金インサート成形品において樹脂部材の内部にある部分に、折り曲げ部を設ける工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載の板金インサート成形品の製造方法。
  6. 前記金属板の、板金インサート成形品において樹脂部材の内部にある部分に、貫通穴部または切り欠き部を設ける工程をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の板金インサート成形品の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の板金インサート成形品の製造方法により製造された板金インサート成形品を備える、電子機器。
  8. 金属板の周囲に沿って樹脂部材を一体化した板金インサート成形品を備える電子機器であって、
    インサート成形時に前記樹脂部材の成形収縮により前記金属板に生じる応力を緩和可能な応力緩和部を前記金属板に設け
    前記応力緩和部は、前記樹脂部材が設けられる前記金属板の第一端部から、前記第一端部と対向する前記金属板の第二端部に向かって、前記金属板を横断する畝形状と、前記畝形状の両端を前記金属板の前記第一端部および前記第二端部から離す切り欠きと、を有する、電子機器。
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