車両(自動車)用変速装置としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、例えば多くの刊行物に記載され、且つ、一部で実施されて周知である。又、変速比の変動幅を大きくすべく、トロイダル型無段変速機と差動ユニット(例えば歯車式の差動ユニットである遊星歯車式変速機)とを組み合わせた無段変速装置も、例えば特許文献1〜4に記載される等により従来から広く知られている。このうちの特許文献1〜2には、トロイダル型無段変速機のみで動力を伝達するモード(低速モード)と、差動ユニットである遊星歯車式変速機により主動力を伝達し、上記トロイダル型無段変速機により変速比の調節を行う、所謂パワースプリット状態を実現するモード(高速モード)とを備えた無段変速装置が記載されている。又、上記特許文献3〜4には、入力軸を一方向に回転させたまま、出力軸の回転状態を、停止状態を挟んで正転、逆転に切り換えられる、所謂ギヤードニュートラル状態を実現できるモード(低速モード)を備えた無段変速装置が記載されている。
図12〜13は、特許文献3〜4に記載された、ギヤードニュートラル状態を実現できるモードを備えた無段変速装置を示している。このうちの図12は無段変速装置のブロック図を、図13は、この無段変速装置を制御する油圧回路を、それぞれ示している。エンジン1の出力は、ダンパ2を介して、入力軸3に入力される。この入力軸3に伝達された動力は、直接又はトロイダル型無段変速機4を介して、差動ユニットである遊星歯車式変速機5に伝達される。そして、この遊星歯車式変速機5の構成部材の差動成分が、クラッチ装置6、即ち、図13の低速用、高速用各クラッチ7、8を介して、出力軸9に取り出される。又、上記トロイダル型無段変速機4は、それぞれが第一、第二のディスクに相当する入力側、出力側各ディスク10、11と、複数個のパワーローラ12と、それぞれが支持部材に相当する複数個のトラニオン(図示省略)と、アクチュエータ13(図13)と、押圧装置14と、変速比制御ユニット15とを備える。
このうちの入力側、出力側各ディスク10、11は、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置されている。又、上記各パワーローラ12は、互いに対向する上記入力側、出力側各ディスク10、11の内側面同士の間に挟持されて、これら入力側、出力側各ディスク10、11同士の間で動力(力、トルク)を伝達する。又、上記各トラニオンは、上記各パワーローラ12を回転自在に支持している。又、上記アクチュエータ13は、油圧式のもので、上記各パワーローラ12を支持した上記各トラニオンを、それぞれの両端部に設けた枢軸の軸方向に変位させて、上記入力側ディスク10と出力側ディスク11との間の変速比を変える。又、上記押圧装置14は、油圧の導入に伴ってこの油圧に比例した押圧力を発生させる油圧式のものであり、上記入力側ディスク10と上記出力側ディスク11とを互いに近付く方向に押圧する。又、上記変速比制御ユニット15は、上記入力側ディスク10と出力側ディスク11との間の変速比を所望値にする為に、上記アクチュエータ13の変位方向及び変位量を制御する。
図示の例の場合、上記変速比制御ユニット15は、制御器(ECU)16と、この制御器16からの制御信号に基づいて切り換えられる、ステッピングモータ17と、ライン圧制御用電磁開閉弁18と、電磁弁19と、シフト用電磁弁20と、これら各部材17〜20により作動状態を切り換えられる制御弁装置21とにより構成している。尚、この制御弁装置21は、変速比制御弁22と、差圧シリンダ23と、補正用制御弁24a、24bと、高速クラッチ用、低速クラッチ用各切換弁25、26(図13)とを合わせたものである。このうちの変速比制御弁22は、上記アクチュエータ13への油圧の給排を制御するものである。又、上記差圧シリンダ23は、前記トロイダル型無段変速機4を通過する力(通過トルク)に応じて、このトロイダル型無段変速機4の変速比を補正すべく、上記変速比制御弁22の切換状態を調節する為のものである。又、上記補正用制御弁24a、24bは、上記差圧シリンダ23への圧油の給排を制御するものである。更に、上記高速クラッチ用、低速クラッチ用各切換弁25、26は、前記低速用、高速用各クラッチ7、8への圧油の導入状態を切り換えるものである。
又、前記ダンパ2部分から取り出した動力により駆動されるオイルポンプ27(図13の27a、27b)から吐出した圧油は、上記制御弁装置21や上記押圧装置14等に送り込まれる。即ち、油溜28(図13)から吸引されて上記オイルポンプ27a、27bにより吐出された圧油は、押圧力調整弁29、及び、低圧側調整弁30(図13)により、所定圧に調整自在としている。これら両調整弁29、30のうち、上記押圧装置14並びに手動油圧切換弁31側に送る油圧を調整する為の上記押圧力調整弁29は、例えば特許文献5等にも詳しく記載されている様に、リリーフ弁としての機能を備えたもので、第一〜第三のパイロット部32〜34を備える。このうちの第一、第二のパイロット部32、33は、前記トロイダル型無段変速機4を通過する力(通過トルク)の大きさに応じて、この押圧力調整弁29の開弁圧を調節する為のものである。この為に、前記パワーローラ12を支持する支持部材(トラニオン)を枢軸の軸方向に変位させる為のアクチュエータ13にピストン35を挟んで設けた、1対の油圧室36a、36b同士の間に存在する油圧の差(差圧)を、差圧取り出し弁37を介して、上記第一、第二のパイロット部32、33に導入している。
これに対して、第三のパイロット部34は、上記トロイダル型無段変速機4の変速比、このトロイダル型無段変速機4の内部に存在する潤滑油(トラクションオイル)の温度、駆動源であるエンジン1の回転速度等、上記通過トルク(に対応する差圧)以外の運転条件に応じて、上記押圧力調整弁29の開弁圧を調節する為のものである。即ち、この押圧力調整弁29の開弁圧を、上記通過トルク(に対応する差圧)の大きさに応じて調節される(第一、第二のパイロット部32、33により調節される)値から、この通過トルク(に対応する差圧)以外の運転条件に応じて、上記押圧装置14に発生させるべき最適な押圧力に対応する目標値に調節(減圧)する。この為に、前記制御器16からの指令により制御されるライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉(デューティー比制御)に基づき、上記第三のパイロット部34に所定圧の圧油を導入している。そして、上記第一〜第三のパイロット部32〜34に導入する油圧を適切に調節する事により{第一、第二のパイロット部32、33に通過トルク(差圧)の大きさに応じた油圧を導入すると共に、第三のパイロット部34に制御器16の指令に基づいて調節された油圧を導入する事により}、上記押圧力調整弁29の開弁圧、延いては、上記押圧装置14が発生する押圧力を、上記トロイダル型無段変速機4の運転状況に応じて、適正に規制している。
例えば、図14は、上記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開度(単位時間当たりの開いている時間の割合)と減圧量(押圧力調整弁29の開弁圧の低下量)との関係の1例を示している。上記制御器16は、この様な関係を基に、上記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉を調節(デューティー比制御)し、上記押圧力調整弁29の開弁圧、延いては上記押圧装置14に導入する油圧を上記目標値に調節する事により、この押圧装置14が発生する押圧力を適正に規制している。尚、図示の例の場合は、上記押圧力調整弁29と、差圧取り出し弁37と、制御器16と、ライン圧制御用電磁開閉弁18とが、特許請求の範囲に記載した油圧調整手段に相当する。
又、上記押圧力調整弁29により調整された圧油は、前記手動油圧切換弁31、並びに、減圧弁38、前記高速クラッチ用切換弁25又は低速クラッチ用切換弁26を介して、前記低速用クラッチ7又は高速用クラッチ8の油圧室内に送り込み自在としている。又、これら低速用、高速用各クラッチ7、8のうちの低速用クラッチ7は、減速比を大きくする{変速比無限大(ギヤードニュートラル状態)を含む}低速モードを実現する際に接続されると共に、減速比を小さくする高速モードを実現する際に接続を断たれる。これに対して、上記高速用クラッチ8は、上記低速モードを実現する際に接続を断たれると共に高速モードを実現する際に接続される。又、これら低速用、高速用各クラッチ7、8への圧油の給排状態は、前記シフト用電磁弁20の切り換えに応じて切り換えられる。
図15は、トロイダル型無段変速機4の変速比(増速比)と無段変速装置全体としての速度比(増速比)との関係の1例を示している。例えば、上記低速用クラッチ7が接続され、上記高速用クラッチ8の接続が断たれた低速モードでは、実線αで示す様に、トロイダル型無段変速機4の変速比を、GN状態を実現できる値(GN値)から減速する程、無段変速装置全体としての速度比を停止状態(速度比0の状態)から前進方向(+:正転方向)に増速させられる。又、同じくGN値から増速する程、同じく停止状態から後退方向(−:逆転方向)に増速させられる。一方、上記高速用クラッチ8が接続され、上記低速用クラッチ7の接続が断たれた高速モードでは、実線βで示す様に、上記トロイダル型無段変速機4の変速比を増速する程、上記無段変速装置全体としての速度比を(前進方向に)増速させられる。
尚、一般的には、「変速比」は減速比であり、「速度比」は増速比であり、「変速比」の逆数が「速度比」となる(「速度比」=1/「変速比」)。但し、本明細書並びに特許請求の範囲では、トロイダル型無段変速機に関する入力側と出力側との間の比に就いて「変速比」の言葉を用い、無段変速装置全体に関する入力側と出力側との間の比に就いて「速度比」の言葉を用いている。この理由は、トロイダル型無段変速機の比なのか、無段変速装置全体としての比なのかを明確にし易くする為である。従って、本明細書並びに特許請求の範囲では、「変速比」が減速比に、「速度比」が増速比に、必ずしも対応するものではない。
上述した様な無段変速装置を組み込んだ車両では、アクセルペダルの操作(アクセル開度)や車両の走行速度(車速)から得られる、その時点での車両の走行状態(運転状況)に基づいて、制御器16により、上記無段変速装置の最適な速度比(目標速度比)を求める。そして、この目標速度比を実現すべく、上記制御器16の制御信号に基づいてステッピングモータ17を駆動し、変速比制御弁22を切り換える事により、トロイダル型無段変速機4の変速比を、上記目標速度比に対応する目標変速比に調節する。又、これと共に、必要に応じて(無段変速装置の目標速度比に応じて)シフト用電磁弁20を切り換える事により、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の断接状態を切り換え、必要な走行モード(低速モード或いは高速モード)を選択する。これらにより、上記無段変速装置の速度比を、その時点での車両の走行状態に応じた最適な値(目標速度比)に調節する。
ところで、上述の様な、トロイダル型無段変速機4と遊星歯車式変速機5とをクラッチ装置6(7、8)を介して組み合わせて成り、低速モード(第一のモード)と高速モード(第二のモード)とを有する無段変速装置の場合、上述したギヤードニュートラル状態を実現できるものにしても、前記特許文献1〜2に記載された様なパワースプリット状態を実現できるものにしても、低速モードと高速モードとの間のモード切換時に、このモード切換を滑らかに行う事が、乗り心地性能(乗り心地の良さ)や耐久性を確保する面等から重要になる。この様なモード切換を滑らかに行う技術として、例えば特許文献6には、このモード切換時に、それまで接続されていなかったクラッチと、それまで接続されていたクラッチとを、同時に接続させる技術が記載されている。この様な技術を採用すれば、例えば加速中のモード切換時に、低速用、高速用両クラッチの接続が同時に断たれる事による、エンジンの回転速度の急上昇(吹け上がり)を防止できる。又、この急上昇後の高速用クラッチの接続に伴う変速ショック(トルク抜け感、押し出し感)も防止でき、運転者を初めとする乗員に違和感を与える事を防止できる。又、モード切換時に構成各部に加わる衝撃を緩和して、耐久性の確保も図れる。
又、前述の図12〜13に示した無段変速装置の場合は、押圧装置14の発生する押圧力を、トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)に応じて調節する為に、アクチュエータ13を構成する1対の油圧室36a、36b同士の間の油圧の差(差圧)に対応する油圧を、(差圧取り出し弁37を介して)押圧力調整弁29(の第一、第二のパイロット室32、33)に導入している。一方、この様な押圧力調整弁29に差圧を直接導入する構造に代えて、アクチュエータ13を構成する1対の油圧室36a、36bにそれぞれ設けた油圧センサ39a、39b(図12の39)により差圧を検出し、この差圧(乃至はこの差圧から求められる通過トルク)に基づいて、上記押圧装置14の発生する押圧力を調節する事も考えられる。この様な構成を採用した場合には、後述する実施の形態の1例を記載した図2に示す様に、アクチュエータ13を構成する各油圧室36a、36bと押圧力調整弁29とを連通する為の油圧回路{差圧取り出し弁37(図13)や油圧配管等}を省略できる。尚、この様な構成を採用した場合には、上記押圧力調整弁29と、上記制御器16と、上記ライン圧制御用電磁開閉弁18とが、特許請求の範囲に記載した油圧調整手段に相当する。
何れにしても、上述の様な構成を採用した場合、制御器16により、上記各油圧センサ39a、39bにより検出された差圧(通過トルク)と、上記トロイダル型無段変速機4の変速比と、必要に応じてこのトロイダル型無段変速機4内を循環する油温等の他の状態量とに応じて、上記押圧装置14の油圧室に導入すべき油圧の目標値を設定(算出)する。この場合に、上記変速比は、例えば入力側、出力側各ディスク10、11の回転速度を検出する為の入力側、出力側各回転速度センサ40、41により(両ディスク10、11の回転速度の比として)検出できる。又、上記油温は、例えば上記トロイダル型無段変速機4のケーシング内に設けた油温センサ42により検出できる。又、上記目標値は、例えば上記差圧(通過トルク)や変速比、油温等の値と、これらの値に対応する上記目標値との相関関係として、予め実験や計算により求めておき、上記制御器16のメモリにマップ(MAP)や計算式として記憶させておく。この様な制御器16は、これらマップや計算式を用いて、その時点での上記差圧(通過トルク)、変速比、油温等に対応する、上記目標値を設定する(算出する、求める)と共に、この目標値に調節すべく、ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉を調節(デューティー比制御)する。そして、この開閉調節に基づき、上記押圧力調整弁29の開弁圧、延いては上記押圧装置14の油圧室に導入する油圧を上記目標値に調節し、この押圧装置14が発生する押圧力を適正に規制する。
ところで、上述の様な油圧センサ39a、39bにより差圧を検出する構造にしても、前述の図12〜13に示した様な、この差圧に対応する油圧を(差圧取り出し弁37を介して)押圧力調整弁29に直接導入する構造にしても、この押圧力調整弁29により調整されたプライマリーライン50の圧油を、押圧装置14の他、手動油圧切換弁31、並びに、減圧弁38、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁25、26を介して、低速用、高速用各クラッチ7、8にも導入している。即ち、上記押圧力調整弁29により調整されたプライマリーライン50の圧油を、上記減圧弁38により所定圧(例えば図13の油圧回路では1.4[MPa])に減圧した状態で、上記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入する事により、これら低速用、高速用各クラッチ7、8の接続を行っている。この様な構造の場合、押圧装置14とクラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)との油圧源を共通にする事で、油圧システムの簡素化、小型化、油量低減による高効率化、コスト低減等を図れる。但し、この様な構造の場合、次の様な問題を生じる可能性がある。
先ず、後で詳しく説明する図9は、後述する実施の形態の1例の無段変速装置に対応する、この無段変速装置全体としての速度比と、最大トルク時に於ける、押圧装置14の油圧室51(図2、3、13参照)に導入すべき油圧に対応する必要ローディング圧、並びに、低速用、高速用各クラッチ7、8の油圧室52a、52b(図2、3、13参照)に導入すべき油圧に対応する必要クラッチ圧との関係の1例を示している。尚、上記必要ローディング圧は、上記押圧装置14が発生すべき押圧力に見合う油圧に対応する。又、上記必要クラッチ圧は、上記低速用、高速用各クラッチ7、8に発生させるべき締結圧に見合う油圧(低速用、高速用各クラッチ7、8で滑りを生じる事なく動力の伝達を行う為に必要な油圧)に対応する。又、このうちの必要クラッチ圧は、例えば非特許文献1に記載されている様に、下記の式(1)から求める事ができる。
この式(1)中、Tc はクラッチ装置の伝達トルク[Nm]に、nはクラッチ摩擦面(クラッチ板)の数に、μは摩擦係数に、Pc は作動油圧[Pa]に、Dpoはクラッチ装置を構成するピストンの外径[m]に、Dpiは同じくピストンの内径[m]に、Fr はピストンのリターンスプリングのセット荷重[N]に、Do はクラッチ摩擦面(クラッチ板)の外径[m]に、Di はクラッチ摩擦面(クラッチ板)の内径[m]に、それぞれ対応する。この様な式(1)の伝達トルクTc [Nm]と作動油圧Pc [Pa]との関係から、最大トルク時の伝達トルク[Nm]に対応する作動油圧[Pa]として、上記必要クラッチ圧を求める事ができる。
上述の様な図9に示した、必要ローディング圧と必要クラッチ圧との関係を有する構造の場合、必要クラッチ圧の最大値が1.6[MPa]程度(図9の点イ)になる。この様な構造の場合、減圧弁38を1.6[MPa]に設定すれば、上記必要ローディング圧に調節される前記プライマリーライン50の油圧が上記必要クラッチ圧の最大値(1.6[MPa])を超える場合でも、上記低速用、高速用各クラッチ7、8に必要以上の高い油圧が導入される(過大締結圧となる)事を防止して、耐久性の確保や装置の小型化等を図れる。一方、上記必要ローディング圧が1.6[MPa]よりも小さくなる場合は、この1.6[MPa]よりも小さい値に調節された上記プライマリーライン50の油圧が、上記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入される。そして、上記必要ローディング圧と上記必要クラッチ圧との関係によっては、例えば上記図9のKで示す速度比の範囲で、この必要ローディング圧が必要クラッチ圧よりも小さくなる。この様な場合に、上記必要ローディング圧に調節された上記プライマリーライン50の油圧を、上記低速用、高速用各クラッチ7、8にそのまま導入すると、これら各クラッチ7、8の油圧室52a、52bに十分な油圧(必要クラッチ圧)が導入されず、これら各クラッチ7、8の締結部分で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる可能性がある。
又、前述した何れの構造の場合も(差圧を油圧センサ39a、39bにより検出する構造にしても、差圧に対応する油圧を押圧力調整弁29に直接導入する構造にしても)、押圧装置14(延いては、接続すべき低速用、高速用各クラッチ7、8)に導入される油圧(プライマリーライン50の油圧)の調節を、その時点でのトロイダル型無段変速機を通過するトルク(通過トルク)に対応する差圧に基づいて行っている。但し、この様な構造で、前述した様なモード切換時に低速用、高速用両クラッチ7、8を同時に接続すると言った技術を採用した場合、そのままでは、上記モード切換の完了直後(完了した瞬間)に、上記押圧装置14から適切な押圧力を発生させられなくなる可能性がある。又、これと共に、上記モード切換中乃至はその直後に、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の締結部で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる可能性もある。
即ち、上記低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続された状態で、上記トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)、延いては、この通過トルクに対応する上記差圧は、その時点でエンジン1から出力される力(動力、トルク)に対応しなくなる(無関係になる)。この様に両クラッチ7、8が同時に接続された状態で、上記通過トルク、延いては、上記差圧は、その時点での、上記トロイダル型無段変速機4の変速比の微妙な変動に応じて変化する。例えば、このトロイダル型無段変速機4の変速比がモード切換ポイント{低速用クラッチ7を接続しても高速用クラッチ8を接続しても、無段変速装置全体としての速度比が同じになる値であり、例えば図15の点ロに対応する変速比(増速比で言えば、例えば0.46)}に完全に一致した状態で、上記低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続された場合には、上記トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)が0になり、上記差圧も0になる。
即ち、上記エンジン1から出力される力(動力、トルク)が上記トロイダル型無段変速機4を介する事なく遊星歯車式変速機5に伝達され(トロイダル型無段変速機4をトルクが通過しなくなり)、上記通過トルク、延いては、上記差圧も0になる。この場合には、上記エンジンン1から出力される力(動力、トルク)の大きさに拘わらず(大きくても、小さくても)、上記通過トルク、延いては、上記差圧が0となる。一方、上記モード切換ポイントから多少外れた状態で、上記低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続された場合には、上記トロイダル型無段変速機4の変速比が、上記モード切換ポイントに強制的に変速させられる(トルクシフトする)。そして、この様にモード切換ポイントに変速させられる力に基づき上記差圧は、例えばその時点でのトルクシフト量、トルクシフトの方向(増速、減速)等に応じて、大きくなったり、或は、小さくなったりする。即ち、この場合には、上記エンジン1から出力される力(動力、トルク)と関係なく、上記通過トルク、延いては、上記差圧が変化する。
何れにしても、上述の様に低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続された状態で上記差圧は、その時点でのトロイダル型無段変速機を通過するトルク(通過トルク)に対応はしても、上記エンジン1から出力されるトルクには対応しなくなる。この為、上述の様に両クラッチ7、8が同時に接続された状態で、上記押圧装置14が発生する押圧力(押圧装置14に導入される油圧の目標値)を、そのまま上記差圧に基づいて調節し続けると(差圧に基づいて目標値を設定し続けると)、モード切換完了直後(それまで接続されていた他方のクラッチの接続が断たれた直後)の押圧力(乃至は目標値)が、このモード切換完了後の走行モードで必要とされる値(必要値、必要ローディング圧)からずれる可能性がある。即ち、上記押圧力(乃至は目標値)が、モード切換完了直後(両方のクラッチが同時に接続された状態から他方のクラッチの接続が断たれた瞬間)の、上記エンジン1から出力され、上記トロイダル型無段変速機4に入力される、このトロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)の大きさに対応した、適切な値(必要値、必要ローディング圧)からずれてしまう可能性がある。
そして、この様なずれが大きい場合には、上記モード切換完了直後(モード切換が完了した瞬間)に、上記押圧装置14が発生する押圧力(押圧装置14に導入される油圧)が過大になったり、或は、過小になったりする可能性がある。例えば、モード切換の完了直後に、上記押圧装置14に導入される油圧、延いては、この押圧装置14が発生する押圧力が過大になった場合には、入力側、出力側各ディスク10、11の側面と各パワーローラ12の周面とのトラクション部(転がり接触部)の押し付け力が過度に大きくなり(過押し付けとなり)、伝達効率の低下や耐久性の低下に繋がる可能性がある。これとは逆に、上記押圧装置14に導入される油圧、延いては、上記押圧力が過小になった場合には、上記トラクション部(転がり接触部)の押し付け力が不足し、著しい場合には、このトラクション部(転がり接触部)でグロススリップと呼ばれる有害な滑りを生じ、伝達効率の低下や耐久性の低下に繋がる可能性がある。又、この様に押圧装置14に導入される油圧が過小になった場合には、前記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入される油圧も必要以上に低下(不足)する可能性がある。そして、この場合には、モード切換中乃至はその直後に、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の締結部で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる可能性がある。
尚、上述の様にモード切換完了直後に押圧力が必要値(必要ローディング圧)からずれる(乃至はずれ易くなる)と共に、低速用、高速用各クラッチ7、8の締結部で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる(乃至は生じ易くなる)原因として、上述の様なモード切換中に差圧がエンジン1から出力されるトルクと対応しなくなると言った原因の他、モード切換の前後でトロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)の方向が変化(反転)する事も、その1つとして挙げられる。即ち、この様な通過トルクの方向の変化(反転)、言い換えれば、この通過トルクが正の方向から負の方向に、又は、負の方向から正の方向に変化する事に伴い、モード切換中にこの通過トルクが、短い時間とは言え、0になる。そして、この通過トルクが0になる事に伴い、この通過トルクに対応する上記差圧も0になり、この差圧に基づいて設定される目標値、延いては、上記押圧装置14並びに低速用、高速用各クラッチ7、8に導入される油圧も、過度に小さく{例えば最も小さい値(例えば0)に}なる。
そして、この様にモード切換中に目標値、延いては、押圧装置14並びに低速用、高速用各クラッチ7、8に導入される油圧が過度に小さくなると、このモード切換中に低速用、高速用各クラッチ7、8の締結部で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる可能性がある。又、これと共に、このモード切換完了直後に、上記押圧装置14が発生する押圧力が、このモード切換完了直後に必要とされる値(必要値、必要ローディング圧)に達するまでに時間を要し、その分、このモード切換完了直後の押圧力が必要値(必要ローディング圧)からずれ易く(不足し易く)なる。しかも、この様に押圧装置14並びに低速用、高速用各クラッチ7、8に導入される油圧が過度に小さくなる事は、この油圧の変動(押圧装置14の押圧力や低速用、高速用各クラッチ7、8の締結圧の変動)に伴う変速比の変動(トルクシフト)に繋がる可能性もあり、この様なトルクシフトの防止を図る面からも好ましくない。
特開平10−196759号公報
特開平11−108147号公報
特開2004−225888号公報
特開2004−211836号公報
特開2004−76940号公報
特開平9−210191号公報
守本佳郎著、「無段変速機CVT入門」、株式会社グランプリ出版、2004年10月、P93〜P95
本発明の無段変速装置は、上述の様な事情に鑑みて、押圧装置に導入する圧油をクラッチ装置にも導入する事により、このクラッチ装置の接続を行う構造で、動力を伝達するトラクション部(転がり接触部)で適切な押し付け力を確保しつつ、接続すべき上記クラッチ装置の締結圧も確保できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の無段変速装置は、トロイダル型無段変速機とクラッチ装置とを備える。
このうちのトロイダル型無段変速機は、第一、第二のディスク(例えば入力側、出力側各ディスク)と、複数のパワーローラと、複数個の支持部材(例えばトラニオン)と、アクチュエータと、押圧装置とを備える。
このうちの第一、第二のディスクは、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置されている。
又、上記各パワーローラは、互いに対向する上記第一、第二のディスクの内側面同士の間に挟持されて、これら第一、第二のディスク同士の間で動力(力、トルク)を伝達する。
又、上記各支持部材は、上記各パワーローラを回転自在に支持する。
又、上記アクチュエータは、上記各支持部材を、それぞれの両端部に設けた枢軸の軸方向に変位させて、上記第一のディスクと上記第二のディスクとの間の変速比を変える。
又、上記押圧装置は、油圧の導入に伴ってこの油圧に比例した押圧力を発生させる油圧式のもので、上記第一のディスクと上記第二のディスクとを互いに近付く方向に押圧するものである。
そして、上記押圧装置に導入する油圧を調整する為の油圧調整手段は、この押圧装置の油圧室に導入する油圧を、その時点での運転状況を表す状態量に応じて設定(算出)される、この押圧装置に発生させるべき押圧力に対応する目標値に調節するものである。
又、上記クラッチ装置は、その接続を、上記油圧調節手段により上記目標値に調節された油圧の導入に基づいて行うものである。
尚、上記運転状況を表す状態量とは、例えば、「トロイダル型無段変速機を通過する力(通過トルク)」、「トロイダル型無段変速機と接続した駆動源(例えばエンジン、電動モータ等)から出力される力(出力トルク、エンジントルク)」、「トロイダル型無段変速機の変速比(第一のディスクと第二のディスクとの間の変速比)」、「トロイダル型無段変速機内を循環する潤滑油(トラクションオイル)の油温」等が挙げられる。尚、このうちの「通過トルク」は、例えば、前述の[背景技術]の欄でも説明した様に、アクチュエータ13を構成する1対の油圧室36a、36b(図13参照)同士の間の油圧の差(差圧)に基づいて求められる力(動力、トルク)に対応するものである。又、上記「出力トルク」は、例えば、後述する様に、アクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と駆動源(エンジン、電動モータ等)の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求められるもの、即ち、この駆動源から出力される(乃至は出力されると予測される)力(動力、トルク、出力トルク、エンジントルク)に対応するものである。
何れにしても、上記目標値の設定(算出)は、少なくとも「通過トルク」又は「出力トルク」を用いる事が好ましい。尚、この「少なくとも」とは、上記目標値の設定(算出)に当り、上記「通過トルク」又は「出力トルク」だけでなく、この「通過トルク」又は「出力トルク」の他、上記「変速比」や上記「油温」等の他の状態量を、上記「通過トルク」又は「出力トルク」と共に用いる事を排除しない事を意味する。又、これら「通過トルク」と「出力トルク」とは、後述する様に必要に応じて使い分ける(目標値が最も大きくなるものを用いる)事が好ましい。何れにしても、上記目標値の設定は、上記「通過トルク」又は「出力トルク」だけでなく、これら「通過トルク」又は「出力トルク」と上記「変速比」と(必要に応じて「油温」と)に基づいて行う事が、より好ましい。
特に、本発明の無段変速装置に於いては、上記油圧調整手段は、その時点での、上記押圧装置に導入すべき油圧に対応する上記目標値と、上記クラッチ装置の接続に必要な、このクラッチ装置に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値とを比較し、このうちの大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。
この為に、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記第一のディスクと第二のディスクとの間の変速比を変える前記アクチュエータを、油圧式のものとする。
又、上記油圧調整手段を、上記押圧装置に導入すべき油圧に対応する目標値を求める(算出する)為の第一、第二の機能と、上記クラッチ装置に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値を求める為の第三、第四の機能とを備えたものとする。
このうちの第一の機能は、少なくとも「トロイダル型無段変速機を通過する力(通過トルク)」に基づいて、(第一の)目標値を求める(算出する)ものである。即ち、この「通過トルク」に対応する、アクチュエータに設けた1対の油圧室同士の間の油圧の差(差圧)に基づいて、上記(第一の)目標値を求める(算出する)。
又、上記第二の機能は、「トロイダル型無段変速機と接続した駆動源(エンジン、電動モータ等)から出力される力(出力トルク、エンジントルク)」に基づいて、(第二の)目標値を求める(算出する)ものである。即ち、この「出力される力」に対応する、少なくとも上記トロイダル型無段変速機に接続した上記駆動源の出力を調節する為のアクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)とこの駆動源の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて、上記(第二の)目標値を求める(算出する)。
又、上記第三の機能は、少なくとも上記「通過される力」に対応する、上記アクチュエータの両油圧室同士の間の油圧の差(差圧)に基づいて、(第一の)クラッチ目標値を求める(算出する)ものである。
又、上記第四の機能は、少なくとも上記「出力される力」に対応する、上記アクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と上記駆動源の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて、(第二の)クラッチ目標値を求める(算出する)ものである。
そして、上記第一の機能に基づいて求められる(算出される)第一の目標値と、上記第二の機能に基づいて求められる(算出される)第二の目標値と、上記第三の機能に基づいて求められる(算出される)第一のクラッチ目標値と、上記第四の機能に基づいて求められる(算出される)第二のクラッチ目標値とを比較し、このうちの最も大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。
要するに、上記油圧調整手段は、上記押圧装置に導入すべき油圧に対応する目標値を、その時点での差圧に基づいて求める(算出する)第一の機能に加え、その時点でのアクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と駆動源の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求める(算出する)第二の機能を備えたものとしている。又、これと共に、上記油圧調整手段は、上記押圧装置に導入すべき油圧に対応する目標値を求める機能(第一、第二各機能)だけでなく、上記クラッチ装置に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値を求める機能(第三、第四各機能)も備えている。尚、このクラッチ目標値を求める機能に関しても、その時点での差圧に基づいて求める(算出する)第三の機能と、その時点でのアクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と駆動源の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求める(算出する)第四の機能とを備えている。
そして、これら第一〜第四の機能により求められる(算出される)第一、第二各目標値並びに第一、第二各クラッチ目標値のうち、最も大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。
又、上述の様な本発明の無段変速装置を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、トロイダル型無段変速機と差動ユニット(例えば歯車式の差動ユニットである遊星歯車式変速機)とをクラッチ装置を介して組み合わせて成るものとする。
又、このうちのクラッチ装置は、第一のクラッチ(例えば低速用クラッチ)と、第二のクラッチ(例えば高速用クラッチ)とを備えたものとする。
そして、このうちの第一のクラッチ(低速用クラッチ)は、減速比を大きくする第一のモード(例えば低速モード)を実現する際に接続されて同じく小さくする第二のモード(例えば高速モード)を実現する際に接続を断たれるものとする。
又、上記第二のクラッチ(高速用クラッチ)は、上記第二のモード(高速モード)を実現する際に接続されて上記第一のモード(低速モード)を実現する際に接続を断たれるものとする。
又、この様な請求項3に記載した無段変速装置の発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、上述の請求項2に記載した発明の様に、アクチュエータを油圧式のものとすると共に、油圧調整手段を第一〜第四の機能を備えたものとする。
そして、上記第一のモード(低速モード)又は上記第二のモード(高速モード)で運転中に、上記第一の機能に基づいて求められる(算出される)第一の目標値と、上記第二の機能に基づいて求められる(算出される)第二の目標値と、上記第三の機能に基づいて求められる(算出される)第一のクラッチ目標値と、上記第四の機能に基づいて求められる(算出される)第二のクラッチ目標値とを比較し、このうちの最も大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。
又、上述の様な請求項3〜4に記載した無段変速装置の発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、上記クラッチ装置を、上記第一のモード(低速モード)と上記第二のモード(高速モード)との間のモード切換時に、上記第一のクラッチ(低速用クラッチ)と上記第二のクラッチ(高速用クラッチ)とのうちの一方のクラッチでそれまで接続されていなかったクラッチを接続してから、同じく他方のクラッチでそれまで接続されていたクラッチの接続を断つ事により、これら両クラッチが同時に接続される時間を設定したものとする。
又、上記油圧調整手段を、少なくとも上記第二の機能と上記第四の機能を備えたものとする。即ち、少なくとも、前記アクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と前記駆動源の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて、上記押圧装置に導入すべき油圧に対応する(第二の)目標値を求める(算出する)第二の機能と、同じく、上記クラッチ装置に導入すべき油圧に対応する(第二の)クラッチ目標値を求める(算出する)第四の機能とを備えたものとする。
そして、上記第一のモード(低速モード)と上記第二のモード(高速モード)との間のモード切換時(モード切換中)、例えば、モード切換を行うべく、それまで接続されていなかった一方のクラッチの接続を開始してから、それまで接続されていた他方のクラッチの接続を断つまで(断ち始めるまで)の間(少なくとも第一、第二両クラッチが同時に接続されている間)、上記第二の機能に基づいて求められる(算出される)目標値(第二の目標値)と、上記第四の機能に基づいて求められる(算出される)クラッチ目標値(第二のクラッチ目標値)とを比較し、このうちの大きい値の目標値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。
又、この場合に、請求項6に記載した様に、上記第一のモード(低速モード)と第二のモード(高速モード)との間のモード切換時に(少なくとも第一、第二両クラッチが同時に接続されている間)、上記第二の機能に基づいて、現在の走行モードに対応する(第二の)目標値と、次に実現すべき走行モードに対応する(第二の)目標値とを、それぞれ求めると共に、上記第四の機能に基づいて、現在の走行モードに対応する(第二の)クラッチ目標値と、次に実現すべき走行モードに対応する(第二の)クラッチ目標値とを、それぞれ求め(算出し)、これら求めた(算出した)4つの値を比較し、このうちの最も大きい値の目標値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。
上述の様に構成する本発明の無段変速装置によれば、押圧装置に導入する油圧をクラッチ装置に導入する事により、このクラッチ装置の接続を行う構造で、動力を伝達するトラクション部(転がり接触部)で適切な押し付け力を確保しつつ、接続すべき上記クラッチ装置の締結圧も確保できる。
即ち、油圧調整手段は、その時点での、上記押圧装置に導入すべき油圧に対応する目標値と、上記クラッチ装置の接続に必要な、このクラッチ装置に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値とを比較し、このうちの大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。この為、必要ローディング圧が必要クラッチ圧よりも小さくなる場合でも、上記クラッチ装置の油圧室に十分な油圧(必要クラッチ圧)を導入でき、このクラッチ装置の締結部分で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる事を防止できる。
又、請求項2、4に記載した発明の場合には、アクチュエータに設けた1対の油圧室同士の間の油圧の差(差圧)に基づいて第一の目標値並びに第一のクラッチ目標値を求める(算出する)だけでなく、駆動源の出力を調節する為のアクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)とこの駆動源の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて第二の目標値並びに第二のクラッチ目標値も求める(算出する)。そして、この様に求めた(算出した)第一、第二の目標値並びに第一、第二のクラッチ目標値のうちで、最も大きい値を実目標値として設定し、この実目標値に油圧を調節する。この為、運転状況に拘わらず、即ち、例えば油圧応答遅れを生じ易い(差圧の変化が遅れて現れ易い)急加速時等の動力の急変動時は勿論、この様な急変動時以外の通常の運転時でも、上記実目標値を常に大きいものにでき(過小になる事を防止でき)、前記トラクション部(転がり接触部)で適切な押し付け力を確保しつつ、接続すべき上記クラッチ装置の締結圧も確保できる。
又、請求項5に記載した発明の場合には、モード切換中に、上記目標値並びに上記クラッチ目標値を、上記差圧に基づいて求める(算出する)事はしない。即ち、モード切換中は、上記アクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と上記駆動源の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求める(算出する)。この為、モード切換中にも(第一、第二両クラッチが同時に接続された状態でも)、上記押圧装置が発生する押圧力、並びに、上記クラッチ装置の締結圧を、その時点での上記駆動源から出力される力(動力、トルク)に対応した、適切な値に調節できる。しかも、モード切換時に、トロイダル型無段変速機を通過するトルク(通過トルク)の方向が反転する事(差圧が0になる事)に伴う、上記押圧力並びに締結圧の低下(不足)も防止できる。この為、この面からも、これら押圧力並びに締結圧を適切な値に調節できる他、これら押圧力並びに締結圧の不必要な変動を低減でき(押圧力並びに締結圧が大きく変動しなくなり)、これら押圧力並びに締結圧の変動に伴うトルクシフトの低減も図れる。
又、請求項6に記載した発明の場合には、モード切換中に、現在の走行モード、並びに、次に実現すべき走行モードに対応する目標値並びにクラッチ目標値を求め、このうちの最も大きい値の目標値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値に油圧を調節する。この為、モード切換の前後で必要ローディング圧並びに必要クラッチ圧が異なる場合でも、このモード切換の開始から完了直後に至るまで、上記押圧力並びに締結圧が不足する事を確実に防止できる。
図1〜11は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、動力を伝達するトラクション部(転がり接触部)で適切な押し付け力を付与しつつ、接続すべきクラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)の締結圧を確保する為に、押圧装置14並びにクラッチ装置6に導入する油圧を調節する部分(油圧調整手段)の構造、並びに、この油圧の調節の手順を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図12〜13に示した従来構造と同様であるから、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、本例の場合は、無段変速装置全体としての速度比(増速比)とトロイダル型無段変速機4の変速比(増速比)との関係を、例えば前述の図15に示す様に設定している。この様な設定は、例えば遊星歯車式変速機5等の減速比や伝達歯車の歯数比等を規制する事により行える。
又、本例の図2、3にそれぞれ示した油圧回路の構成は、差圧取り出し弁37(図3参照)が設けられているか否かの点で互いに異なる。即ち、図3の油圧回路の場合は、前述の図13に示した油圧回路の場合と同様の差圧取り出し弁37を設けているのに対して、図2の油圧回路の場合には、この様な差圧取り出し弁37を設けていない(省略している)。但し、図3の油圧回路の場合は、上記差圧取り出し弁37のパイロット室43を油溜28に通じさせると共に、この差圧取り出し弁37と押圧力調整弁29との間の油路44a、44bを盲栓で塞ぐ等、この差圧取り出し弁37が機能しない様に(差圧に対応する油圧が押圧力調整弁29に導入されない様に)している。即ち、この図3の油圧回路は、差圧取り出し弁37を省略した図2の油圧回路と実質的に同じものである。従って、以下の説明は、図2の構造と図3の構造とを区別せずに行う(以下の説明は、図2と図3との両方の構造に対応する)。
又、前述の図12〜13に示した従来構造の場合は、低速用、高速用各クラッチ7、8の接続状態の切り換え(低速モードと高速モードとの切り換え)を、1個のシフト用電磁弁20(図12〜13)により行うのに対して、本例の場合には、低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁45、46(2個の電磁弁45、46)により行う。この様な本例の場合、低速モードと高速モードとの間のモード切換を、次の様に行う。即ち、低速モード(低速用クラッチ7のみが接続された状態)で走行中、この低速モードから高速モードにモード切換を行う場合は、後述する図10に示す様に、先ず、それまで接続されていなかった高速用クラッチ8を接続(ON)すべく、制御器16から上記高速クラッチ用電磁弁46に、この高速用クラッチ8を接続する旨の指令(制御信号)を発する(高速クラッチ用電磁弁46を通電状態とする)。その後、それまで接続されていた低速用クラッチ7の接続を断つべく(OFFすべく)、上記制御器16から上記低速クラッチ用電磁弁45に、この低速用クラッチ7の接続を断つ旨の指令(制御信号)を発する(低速クラッチ用電磁弁45を通電状態とする)。
一方、高速モード(高速用クラッチ8のみが接続された状態)で走行中、この高速モードから低速モードにモード切換を行う場合は、後述する図11に示す様に、先ず、それまで接続されていなかった低速用クラッチ8を接続(ON)すべく、上記制御器16から上記低速クラッチ用電磁弁45に、この低速用クラッチ7を接続する旨の指令(制御信号)を発する(低速クラッチ用電磁弁45を非通電状態とする)。その後、それまで接続されていた高速用クラッチ8の接続を断つべく(OFFすべく)、上記制御器16から上記高速クラッチ用電磁弁46に、この高速用クラッチ8の接続を断つ旨の指令(制御信号)を発する(高速クラッチ用切換弁46を非通電状態とする)。
又、本例の場合は、前述の図12〜13に示した従来構造の様な、トロイダル型無段変速機4の変速比の補正を行う為の電磁弁19、並びに、差圧シリンダ23、補正用制御弁24a、24b、前後進切り換え弁47(図13参照)を設けていない(省略している)。更に、本例の場合は、同じく前述の図12〜13に示した従来構造の様な、押圧装置14に導入する油圧を調整する為の押圧力調整弁29に、アクチュエータ13を構成する1対の油圧室36a、36b同士の間の油圧の差(差圧)を直接導入すると言った構成は、採用していない。即ち、本例の場合は、上記各油圧室36a、36bに設けた1対の油圧センサ39a、39b(図1の39)により上記差圧を検出し、この検出された差圧に基づいて、上記押圧装置14の発生する押圧力を調節する様にしている。
この為に、本例の場合は、制御器16からの指令により制御されるライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉に基づいて所定圧に調整した圧油を、押圧力調整弁29の第二のパイロット部33に導入する様にしている。又、これと共に、上記制御器16に、上記差圧から求められる(推定される、算出される)、トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)の大きさと、このトロイダル型無段変速機4の変速比とに基づいて、上記押圧装置14に発生させるべき押圧力に対応する目標値を設定(算出)する機能(第一の機能)を持たせている。尚、上記トロイダル型無段変速機4の変速比は、入力側、出力側各回転速度センサ40、41により(入力側、出力側各ディスク10、11の回転速度の比として)検出できる他、各パワーローラ12を支持する支持部材(トラニオン)の傾斜角(枢軸を中心とする回転角)を計測する事により求める事もできる。
又、上記油圧の目標値は、例えばこの目標値と上記差圧(通過トルク)並びに上記変速比との相関関係として、予め実験や計算により求めておき、上記制御器16のメモリに、マップや計算式、線図として記憶させておく。尚、この様なマップや計算式、線図は、低速モードと高速モードとで共通するもの(例えば共通した計算式)を用いたり、低速モードに対応するもの(例えば低速モード用MAPや線図)と高速モードに対応するもの(例えば高速モード用MAPや線図)とでそれぞれ別々のものを用いたりする事もできる。何れにしても、上記制御器16は、この様なマップや計算式、線図等に基づいて、その時点での差圧(通過トルク)と変速比(傾転角)とに対応する、上記目標値を設定すると共に、この目標値に調節すべく、前記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉を調節(デューティー比制御)する。そして、この開閉調節に基づき、前記押圧力調整弁29の開弁圧、延いては上記押圧装置14の油圧室に導入する油圧を上記目標値に調節し、上記押圧装置14が発生する押圧力を適正に規制する。
但し、この様に差圧のみに基づいて目標値を設定するだけでは、モード切換時に、上記押圧装置14の発生する押圧力が過大になったり、或は、過小になったりする可能性がある。又、モード切換時以外(低速モード又は高速モードの状態)でも、急加速時(アクセルペダルを急に踏み込んだ際)等の動力の急変動時に、上記差圧を検出するセンサや切換弁等の応答遅れ等に伴い、上記押圧装置14の発生する押圧力が不足する可能性がある。そこで、本例の場合には、上記目標値を、上記差圧の他、上記トロイダル型無段変速機4と接続したエンジン1の出力を調節する為のアクセル装置の操作量(アクセル開度、アクセルペダルの踏み込み量)と、このエンジン1の駆動軸(クランク軸)の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求められる様にしている。
即ち、本例の油圧調節手段を構成する上記制御器16は、上記目標値を設定する為に必要な、入力側、出力側両ディスク10、11同士の間で伝達される力の大きさを、上記差圧に基づいて求める機能(第一の機能)だけでなく、上記アクセル装置の操作量(アクセル開度)とエンジン1の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求める機能(第二の機能)も備えている。そして、必要に応じて(例えば、モード切換時や急加速時等の動力の急変動時等に)、上記第二の機能に基づき、上記目標値を設定する様にしている。尚、上記アクセル装置の操作速度、操作量は、アクセルペダルの操作量(踏み込み量、踏み増し量、開放量)を検出する為のアクセルセンサ48により検出できる。又、上記エンジン1の回転速度は、例えばこのエンジン1の駆動軸(クランク軸)の回転速度を検出する為の図示しない回転速度センサ(或いはタコメータ用の信号)により検出できる(入力側回転速度センサ40を用いる事も可能である)。
何れにしても、上記制御器16は、上記アクセル装置の操作量(アクセル開度)とエンジン1の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて、このエンジン1から出力される(乃至は出力されると予測される)力(出力トルク、エンジントルク)の大きさを算出(推定)自在としている。この為に、上記制御器16のメモリに、車両に搭載されるエンジン1の特性、例えばアクセル開度[%]とエンジン回転速度[min-1 ]とに応じたエンジントルク[Nm]の特性を、例えばマップや計算式、線図として記憶させておく(プログラムしておく)。そして、上記制御器16は、上述の様なエンジン特性に基づき、その時点でのアクセル開度とエンジン回転速度とに対応する、上記エンジントルクを算出(推定)する。尚、上記エンジン1を制御する為のエンジンコントローラ49と上記制御器16との間で、例えばCAN(Controller Area Network )等を用いて通信ができる場合には、このエンジンコントローラ49からアクセル開度に応じたエンジントルクデータを入手する事もできる。但し、通信の際に時間的遅れを生じる可能性がある他、通信ができない(又は通信手段がない)車両の場合には、この様な手段を採用できない。この為、上述の様な、アクセル開度とエンジン回転速度とから、マップや計算式、線図等を用いてエンジントルクを算出(推定)する事が好ましい。
上述の様に出力トルク(エンジントルク)を求めたならば、上記制御器16により、この出力トルク(エンジントルク)と、前記トロイダル型無段変速機4の変速比とに基づいて、上記押圧装置14に発生させるべき押圧力に対応する目標値を設定(算出)する。尚、この様に出力トルク(エンジントルク)と変速比とに基づいて目標値を設定する場合にも、この目標値と上記出力トルク(エンジントルク)並びに上記変速比との相関関係を、上記制御器16のメモリに、MAPや計算式、線図として記憶させておき、この様なMAPや計算式、線図等を用いて設定(算出)する。尚、この様なマップや計算式、線図等は、低速モードと高速モードとで共通するもの(例えば共通した計算式)を用いたり、低速モードに対応するもの(例えば低速モード用MAPや線図)と高速モードに対応するもの(例えば高速モード用MAPや線図)とでそれぞれ別々のものを用いたりする事もできる。
又、例えば上記MAPや計算式、線図等で用いる上記エンジントルク(出力トルク)は、トロイダル型無段変速機4に入力されるトルク(入力トルク)に対応させて算出(作成)する事が好ましい。この場合に、上記エンジントルクから上記トロイダル型無段変速機4に入力されるトルクを算出するには、エンジン1とこのトロイダル型無段変速機4との間に設けられた部材(トルクが通過する歯車等)の効率を考慮する必要がある。この効率は、上記トロイダル型無段変速機4の変速比や走行モード(低速モード/高速モード)に応じて異なる為、厳密に算出する事は難しい。この為、上述の様なMAPや線図は、例えば実験により求める(実験値を用いて作成する)。尚、上記エンジン1と上記トロイダル型無段変速機4との間の効率を求める事が可能であれば、上述の様なMAPや線図等に代えて、この効率を用いた計算式を使用する事もできる。
上述の様な線図や計算式、MAP等を用いて、その時点での出力トルク(エンジントルク)と変速比とに対応する、上記目標値を設定したならば、上記制御器16は、この目標値に調節すべく、前記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉を調節(デューティー比制御)する。そして、この開閉調節に基づいて、前記押圧力調整弁29の開弁圧、延いては上記押圧装置14の油圧室に導入する油圧を調節し、上記押圧装置14が発生する押圧力を規制する。尚、必要に応じて、上記目標値、延いては、上記押圧装置14の油圧室に実際に導入される油圧、更には、上記ライン圧制御用電磁弁18の開閉量(制御Duty[%])を、その時点での油温{トロイダル型無段変速機4内を循環する潤滑油(トラクションオイル)の温度}に応じて補正する事が好ましい。この場合には、例えば、油温毎に求めた、上記目標値と上記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉量との関係を用いて、その時点の油温に応じた開閉量に調節(補正)する。この様に構成すれば、上記押圧装置14の油圧室に実際に導入される油圧を、その時点でのトラクション係数や各部品の温度特性(例えば弾性変形量や摩擦係数など)に応じた値(より最適な値)に規制できる。又、潤滑油の粘性変化に拘らず、目標とする油圧を導入できる。尚、前述した第一の機能(並びに後述する第二、第三の機能)に基づいて目標値(並びに後述するクラッチ目標値)を設定する場合にも、その時点での油温に対応した、上記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉量の調節(補正)を行う事ができる。
上述の様に、本例の場合は、押圧装置14に導入する油圧の調節を、第一の機能(差圧)の他、第二の機能{アクセル装置の操作量(アクセル開度)とエンジン1の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)と}に基づいて行える様にしている。但し、本例の場合、前述の図12〜13に示した構造と同様に、押圧力調整弁29により調圧されたプライマリーライン50の圧油を、減圧弁38、並びに、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁25、26を介して、低速用、高速用各クラッチ7、8に導入している。この様な構造の場合、前述した様に、必要ローディング圧と必要クラッチ圧との関係によっては、即ち、図9のKで示す速度比の範囲では、この必要ローディング圧が、必要クラッチ圧よりも小さくなる。この場合に、上記押圧装置14に導入する油圧、即ち、上記プライマリーライン50の油圧を、上記第一の機能乃至は第二の機能に基づいて必要ローディング圧に調節しても、このプライマリーライン50の圧油をそのまま上記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入した場合には、これら各クラッチ7、8の油圧室52a、52bに十分な油圧(必要クラッチ圧)が導入されず、これら各クラッチ7、8の締結部分で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる可能性がある。
そこで、本例の場合には、油圧調整手段を構成する前記制御器16に、その時点での、上記押圧装置14に導入すべき油圧に対応する目標値と、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の接続に必要な、この低速用、高速用各クラッチ7、8に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値とを比較し、このうちの大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する機能を持たせている。この為に、上記制御器16は、上述した第一、第二の機能の他、上記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値を、少なくとも前記差圧に基づいて求める第三の機能と、少なくとも前記アクセル装置の操作量(アクセル開度)と前記エンジン1の駆動軸の回転速度(エンジン回転速度)とに基づいて求める第四の機能とを備えている。
尚、このうちの第三の機能は、上記差圧に対応する通過トルクと、例えば前述の式(1)とに基づいて、上記クラッチ目標値を求めるものである。又、上記第四の機能は、上記操作量並びに回転速度に対応する出力トルクと、同じく例えば式(1)とを用いて、上記クラッチ目標値を求める機能である。又、この式(1)に代えて、例えば実験や計算により求めた、伝達トルク(通過トルク、出力トルク)と上記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入すべき油圧との関係を表すMAPや線図等を用いる事もできる。この場合には、低速モードと高速モードとで共通するものを用いる事ができる他、低速モードに対応するもの(例えば低速モード用MAPや線図)と高速モードに対応するもの(例えば高速モード用MAPや線図)とでそれぞれ別々のものを用いる事もできる。
前述の様な第一、第二の機能と、上述の様な第三、第四の機能とを備えた、本例の無段変速装置の場合には、低速モード、並びに、高速モードで運転中は、上記第一の機能に基づいて求められる第一の目標値と、上記第二の機能に基づいて求められる第二の目標値と、上記第三の機能に基づいて求められる第一のクラッチ目標値と、上記第四の機能に基づいて求められる第二のクラッチ目標値とを比較し、このうちの最も大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する。又、本例の場合は、前記制御器16に、上記低速モードと高速モードとの間のモード切換時、即ち、モード切換を行うべく、それまで接続されていなかった一方のクラッチ7(8)の接続を開始してから{一方のクラッチ7(8)を接続する為のクラッチ用切換弁45(46)に当該クラッチ7(8)を接続する旨の指令(制御信号)が制御器16から発せられてから}、それまで接続されていた他方のクラッチ8(7)の接続が断たれるまで{他方のクラッチ8(7)を接続する為のクラッチ用切換弁46(45)に当該クラッチ8(7)の接続を断つ旨の指令(制御信号)が制御器16から発せられるまで}の間、上記第二の目標値と上記第二のクラッチ目標値のみを比較し、このうちの大きい値の目標値を実際の目標値(実目標値)として設定し、この目標値(実目標値)に油圧を調節する機能も持たせている。
上述の様な制御器16が備える機能(ローディング圧制御)に就いて、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、このフローチャートに示した作業は、例えばシフトレバーが走行状態(D、L、Rレンジ)に操作されており、且つ、車両が走行中の場合に、繰り返し(自動的に)行われる。尚、シフトレバーが非走行状態(N、Pレンジ)に操作されており、且つ、車両が停止中の場合は行わない(シフトレバーがNレンジで惰性走行中は必要に応じて行う)。
先ず、上記制御器16は、ステップ1で、現在の走行モードが低速モードであるか否かを判定する。この判定は、例えば、その時点での、高速クラッチ用、低速クラッチ用各電磁弁45、46の切換状態(通電状態)や、低速用、高速用各クラッチ7、8の断接状態を判定する事により行う。このステップ1で、現在の走行モードが低速モードであると判定された場合には、ステップ2に進む。このステップ2では、現在低速モードから高速モードへのモード切換中か否かを判定する。この判定は、例えば、上記低速用クラッチ7を接続すべく、上記低速クラッチ用電磁弁45が、この低速用クラッチ7に圧油を導入する状態に切り換えられており、且つ、上記高速用クラッチ8を接続すべく、上記高速クラッチ用電磁弁46も、この高速用クラッチ8に圧油を導入する状態に切り換えられている(切り換える為の指令が発せられている)か否かを判定する事により行う。
この様なステップ2で、現在低速モードから高速モードへモード切換中でない、即ち、低速モードで運転中である(低速クラッチ用電磁弁45だけにクラッチを接続する旨の指令が発せられている)と判定された場合には、ステップ3に進む。このステップ3からステップ7では、その時点での、押圧装置14に導入すべき油圧に対応する目標値(必要ローディング圧XL )と、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の接続に必要な、この低速用、高速用各クラッチ7、8に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値(必要クラッチ圧YL )とを比較し、このうちの大きい値を実際の目標値(実目標値)として設定する。この為に、先ず、ステップ3で、上記押圧装置14に導入すべき油圧に対応する目標値(必要ローディング圧XL )を求める(算出する)。この算出は、図5に示す手順で行う。
先ず、この図5に示すステップ3−1で、第二の機能に基づいて第二の目標値AL の算出を行う。即ち、その時点での出力トルク(エンジン回転速度、アクセル開度)とトロイダル型無段変速機4の変速比とに基づいて、上記第二の目標値AL を算出する。このステップ3−1では、低速モードで運転中である為、例えば低速モード用MAPを用いて上記第二の目標値AL を算出する。この様にステップ3−1で、低速モード用MAPを用いて、その時点での出力トルクと変速比とに対応する、上記第二の目標値AL を算出したならば、続くステップ3−2で、第一の機能に基づいて第一の目標値BL の算出を行う。即ち、このステップ3−2では、その時点での通過トルク(差圧)とトロイダル型無段変速機4の変速比とに基づいて、上記第一の目標値BL を算出する。このステップ3−2でも、低速モードで運転中である為、例えば低速モード用MAPを用いて第一の目標値BL を算出する。
上述の様にステップ3−1で第二の機能に基づいて第二の目標値AL の算出を行うと共に、上記ステップ3−2で第一の機能に基づいて第一の目標値BL の算出を行ったならば、続くステップ3−3で、これら第一の目標値BL と第二の目標値AL とを比較する。具体的には、この第二の目標値AL が上記第一の目標値BL 以上(AL ≧BL )であるか否かを判定する。このステップ3−3で、上記第二の目標値AL が上記第一の目標値BL 以上(AL ≧BL )であると判定された場合には、ステップ3−4に進み、このうちの第二の目標値AL を必要ローディング圧XL に設定すると共に、終了する(図4のステップ4に進む)。一方、上記ステップ3−3で、この第二の目標値AL が上記第一の目標値BL 以上でない、即ち、この第二の目標値AL が上記第一の目標値BL よりも小さい(AL <BL )と判定された場合には、ステップ3−5に進み、このうちの第一の目標値BL を必要ローディング圧XL に設定すると共に、終了する(図4のステップ4に進む)。
上述の様にステップ3で必要ローディング圧XL を設定したならば、続くステップ4で、前記クラッチ装置6、即ち、前記低速用、高速用各クラッチ7、8に導入すべき油圧に対応するクラッチ目標値(必要クラッチ圧YL )を求める(算出する)。この算出は、図6に示す手順で行う。先ず、この図6に示すステップ4−1で、第四の機能に基づいて第二のクラッチ目標値CL の算出を行う。即ち、その時点での出力トルク(エンジン回転速度、アクセル開度)に基づいて、上記第二のクラッチ目標値CL を算出する。このステップ4−1では、低速モードで運転中である為、例えば低速モード用MAPを用いて上記第二のクラッチ目標値CL を算出する。この様にステップ4−1で、低速モード用MAPを用いて、その時点での出力トルクに対応する、上記第二のクラッチ目標値CL を算出したならば、続くステップ4−2で、第三の機能に基づいて第一のクラッチ目標値DL の算出を行う。即ち、このステップ4−2では、その時点での通過トルク(差圧)に基づいて、上記第一のクラッチ目標値DL を算出する。このステップ4−2でも、低速モードで運転中である為、例えば低速モード用MAPを用いて第一のクラッチ目標値DL を算出する。
上述の様にステップ4−1で第四の機能に基づいて第二のクラッチ目標値CL の算出を行うと共に、上記ステップ4−2で第三の機能に基づいて第一のクラッチ目標値DL の算出を行ったならば、続くステップ4−3で、これら第一のクラッチ目標値DL と第二のクラッチ目標値CL とを比較する。具体的には、この第二のクラッチ目標値CL が上記第一のクラッチ目標値DL 以上(CL ≧DL )であるか否かを判定する。このステップ4−3で、上記第二のクラッチ目標値CL が上記第一のクラッチ目標値DL 以上(CL ≧DL )であると判定された場合には、ステップ4−4に進み、このうちの第二のクラッチ目標値CL を必要クラッチ圧YL に設定すると共に、終了する(図4のステップ5に進む)。一方、上記ステップ4−3で、この第二のクラッチ目標値CL が上記第一のクラッチ目標値DL 以上でない、即ち、この第二のクラッチ目標値CL が上記第一のクラッチ目標値DL よりも小さい(CL <DL )と判定された場合には、ステップ4−5に進み、このうちの第一のクラッチ目標値DL を必要クラッチ圧YL に設定すると共に、終了する(図4のステップ5に進む)。
前述の様にステップ3で必要ローディング圧XL を設定すると共に、上述の様にステップ4で必要クラッチ圧YL を設定したならば、続くステップ5で、これら必要クラッチ圧YL と必要ローディング圧XL とを比較する。具体的には、この必要ローディング圧XL が上記必要クラッチ圧YL 以上(XL ≧YL )であるか否かを判定する。このステップ5で、上記必要ローディング圧XL が上記必要クラッチ圧YL 以上(XL ≧YL )であると判定された場合には、ステップ6に進み、このうちの必要ローディング圧XL を実際の目標値(実目標値)に設定する。一方、上記ステップ5で、上記必要ローディング圧XL が上記必要クラッチ圧YL 以上でない、即ち、この必要ローディング圧XL が上記必要クラッチ圧YL よりも小さい(XL <YL )と判定された場合には、ステップ7に進み、このうちの必要クラッチ圧YL を実際の目標値(実目標値)に設定する。そして、上述の様にステップ6又はステップ7で、実目標値(必要ローディング圧XL 又は必要クラッチ圧YL )を設定したならば、ステップ8に進み、この実目標値(必要ローディング圧XL 又は必要クラッチ圧YL )に油圧を調節すべく、前記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉を調節(デューティー比制御)する。
一方、前記ステップ2で、現在低速モードから高速モードへモード切換中である、即ち、前記低速クラッチ用電磁弁45だけでなく、前記高速クラッチ用電磁弁46にも、当該クラッチ(高速クラッチ8)を接続する旨の指令が発せられている(低速用、高速用両クラッチ7、8を同時に接続している、乃至は、その為の指令が発せられている)と判定された場合には、ステップ9に進む。このステップ9からステップ13は、その時点での、第二の機能に基づいて求められる第二の目標値AL 、AH と、第四の機能に基づいて求められる第二のクラッチ目標値CL 、CH とを比較し、このうちの最も大きい値の目標値を、実際の目標値(実目標値)として設定する。この為に、先ず、ステップ9、10で、現在の走行モードである低速モードに対応する、第二の目標値AL 並びに第二のクラッチ目標値CL を求める。即ち、上記ステップ9で、このうちの第二の目標値AL を求める為の低速モード用MAPを用いて、その時点での出力トルク(エンジン回転速度、アクセル開度)とトロイダル型無段変速機4の変速比とに対応する、上記第二の目標値AL を求める。又、続くステップ10で、上記第二のクラッチ目標値CL を求める為の低速モード用MAPを用いて、その時点での出力トルク(エンジン回転速度、アクセル開度)に対応する、上記第二のクラッチ目標値CL を求める。
次いで、ステップ11、12では、次に実現すべき走行モードである高速モードに対応する第二の目標値AH 並びに第二のクラッチ目標値CH を求める。即ち、上記ステップ11で、このうちの第二の目標値AH を求める為の高速モード用MAPを用いて、その時点での出力トルク(エンジン回転速度、アクセル開度)とトロイダル型無段変速機4の変速比とに対応する上記第二の目標値AH を求める。又、続くステップ12で、上記第二のクラッチ目標値CH を求める為の高速モード用MAPを用いて、その時点での出力トルク(エンジン回転速度、アクセル開度)に対応する、上記第二のクラッチ目標値CH を求める。そして、続くステップ13で、上記ステップ9〜12で求めた、第二の目標値AL 、AH 並びに第二のクラッチ目標値CL 、CH のうちから、最も大きい値の目標値を、実際の目標値(実目標値)として設定する。次いで、前記ステップ8に進み、この実目標値に油圧を調節すべく、前記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉を調節(デューティー比制御)する。
一方、前記ステップ1で、現在の走行モードが低速モードでない、即ち、現在の走行モードが高速モードであると判定された場合には、ステップ14に進む。このステップ14からステップ19までは、低速モードである点と高速モードである点とが異なる{低速(L)と高速(H)とが逆になる}以外、前述したステップ2〜7と同様である。又、上記ステップ14、並びに、続くステップ20からステップ24までは、上述のステップ2、9〜13と同様である。即ち、上記ステップ14〜19では、高速モードで運転中であるとの判定に基づき、ステップ15、16で、図7〜8に示す様に、第一の機能に基づいて第一の目標値BH を、第二の機能に基づいて第二の目標値AH を、第三の機能に基づいて第一のクラッチ目標値DH を、第四の機能に基づいて第二のクラッチ目標値CH を、それぞれ求める。そして、これら各目標値BH 、AH 、DH 、CH を比較し、これらのうちの最も大きい値を実際の目標値として設定する。又、上記ステップ14、20〜24では、高速モードから低速モードにモード切換を行っているとの判定に基づいて、第二の目標値AL 、AH 並びに第二のクラッチ目標値CL 、CH のうちから、最も大きい値の目標値を実際の目標値(実目標値)として設定する。そして、何れの場合も、前記ステップ8に進み、この様に設定された目標値(実目標値)に油圧を調節すべく、上記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉状態を調節(デューティー比制御)する。
上述の様に構成する本例の場合には、動力を伝達するトラクション部(転がり接触部)で適切な押し付け力を確保しつつ、接続すべきクラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)の締結圧も確保できる。
即ち、本例の場合は、運転中に、その時点での、押圧装置14に導入すべき油圧に対応する第一、第二の目標値AL 、BL (AH 、BH )と、クラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)に導入すべき油圧に対応する第一、第二クラッチ目標値CL 、DL (CH 、DH )とを比較し、このうちの最も大きい値を実目標値として設定し、この実目標値に油圧を調節する。この為、必要ローディング圧が必要クラッチ圧よりも小さくなる場合でも、上記クラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)の油圧室(52a、52b)に十分な油圧(必要クラッチ圧)を導入でき、このクラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)の締結部分で滑り(クラッチ板の滑り)を生じる事を防止できる。この点に就いて、以下に説明する。
図9は、前述した様に、本例の無段変速装置に対応する、この無段変速装置全体としての速度比と、最大トルク伝達時に於ける、押圧装置14の油圧室51に導入すべき油圧に対応する必要ローディング圧、並びに、低速用、高速用各クラッチ7、8の油圧室52a、52bに導入すべき油圧に対応する必要クラッチ圧との関係の1例を示している。この様な図9から明らかな様に、本例の無段変速装置の場合は、同図のKで示す速度比の範囲で、必要ローディング圧が必要クラッチ圧よりも小さくなる。但し、本例の場合には、前述した様に、第一、第二の目標値AL 、BL (AH 、BH )並びに第一、第二のクラッチ目標値CL 、DL (CH 、DH )のうちの最も大きい値を実目標値として設定し、この実目標値に油圧を調節する。この為、図10並びに図11の最下段(制御圧の線図)にそれぞれ実線で示す様に、実際に調節される油圧(実制御圧)が、破線で示す必要ローディング圧、並びに、鎖線で示す必要クラッチ圧を下回る事はない。この為、動力を伝達するトラクション部(転がり接触部)で適切な押し付け力を確保しつつ、接続すべきクラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)の締結圧も確保できる。尚、図10は、アクセルペダルを踏み込んだ加速中に、低速モードから高速モードへのモード切換を行った場合の、各部の状態量の変化を模式的に示している。又、図11は、アクセルペダルを開放した減速中に、高速モードから低速モードへのモード切換を行った場合の、各部の状態量の変化を模式的に示している。
又、本例の場合は、同じく前述した様に、モード切換中に、第二の目標値AL 、AH 並びに第二のクラッチ目標値CL 、CH のみを比較し、このうちの最も大きい値の目標値を実目標値として設定すると共に、この実目標値に油圧を調節する。即ち、モード切換中は、第一の目標値BL 、BH 並びに第一のクラッチ目標値DL 、DH を用いない{図10〜11で実線(実制御圧)を下回る必要ローディング圧並びに必要クラッチ圧を用いない}。この為、同じく図10〜11に示す様に、モード切換中にも(低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続された状態でも)、上記押圧装置14が発生する押圧力、並びに、上記クラッチ装置6(低速用、高速用各クラッチ7、8)の締結圧を、その時点でのエンジン1から出力される力(動力、トルク)に対応した、適切な値に調節できる。しかも、モード切換時に、トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)の方向が反転する事(差圧が0等、不定になる事)に伴う、上記押圧力並びに締結圧の低下(不足)も防止できる。この為、この面からも、これら押圧力並びに締結圧を適切な値に調節できる他、これら押圧力並びに締結圧の不必要な変動を低減でき(押圧力並びに締結圧が大きく変動しなくなり)、これら押圧力並びに締結圧の変動に伴うトルクシフトの低減も図れる。
更に、本例の場合には、モード切換中に、現在の走行モード、並びに、次に実現すべき走行モードに対応する目標値AL 、AH 並びにクラッチ目標値CL 、CH を求め、このうちの最も大きい値の目標値を実目標値として設定し、この実目標値に油圧を調節する。この為、同じく図10〜11に示す様に、モード切換の前後で必要ローディング圧並びに必要クラッチ圧が異なるにも拘わらず、このモード切換の開始から完了直後に至るまで、上記押圧力並びに締結圧が不足する事を確実に防止できる。