JP4599905B2 - 無段変速装置 - Google Patents

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この発明は、車両(自動車)用自動変速装置として利用する、トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の改良に関し、低速モードと高速モードとの切換時に急な変速比の変動が生じる状態を防止できる構造を、低コストで実現するものである。
自動車用自動変速装置として、図27〜29に示す様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、入力軸1の両端部周囲に入力側ディスク2、2を、ボールスプライン3、3を介して支持している。従ってこれら両入力側ディスク2、2は、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持されている。又、上記入力軸1の中間部周囲に出力歯車4を、この入力軸1に対する相対回転を自在として支持している。そして、この出力歯車4の中心部に設けた円筒部の両端部に出力側ディスク5、5を、それぞれスプライン係合させている。従ってこれら両出力側ディスク5、5は、上記出力歯車4と共に、同期して回転する。
又、上記各入力側ディスク2、2と上記各出力側ディスク5、5との間に、それぞれ複数個ずつ(通常2〜3個ずつ)のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6は、それぞれトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。上記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図27、29の上下方向、図28の表裏方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた枢軸9、9を中心として揺動変位自在である。これら各トラニオン7、7を傾斜させる動作は、油圧式のアクチュエータ10、10により、これら各トラニオン7、7を上記枢軸9、9の軸方向に変位させる事で行なうが、総てのトラニオン7、7の傾斜角度は、油圧式及び機械式に互いに同期させる。
即ち、前記入力軸1と出力歯車4との間の変速比を変えるべく、上記各トラニオン7、7の傾斜角度を変える場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を、それぞれ逆方向(上記各ディスク2、5の回転方向に関して同方向)に、例えば、図29の右側のパワーローラ6を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ6を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ6、6の周面と上記各入力側ディスク2、2及び各出力側ディスク5、5の内側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する、接線方向の力の向きが変化(当接部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板11、11に枢支された枢軸9、9を中心として、互いに逆方向に揺動(傾斜)する。この結果、上記各パワーローラ6、6の周面と上記入力側、出力側各ディスク2、5の内側面との当接位置が変化し、上記入力軸1と出力歯車4との間の回転変速比が変化する。
上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ10、10の数に関係なく1個の制御弁12により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの制御弁12にフィードバックする様にしている。この制御弁12は、ステッピングモータ13により軸方向(図27の表裏方向、図29の左右方向)に変位させられるスリーブ14と、このスリーブ14の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール15とを有する。又、上記各トラニオン7、7と上記各アクチュエータ10、10のピストン16、16とを連結するロッド17、17のうち、何れか1個のトラニオン7に付属のロッド17の端部にプリセスカム18を固定しており、このプリセスカム18とリンク腕19とを介して、上記ロッド17の動き、即ち、軸方向の変位量と回転方向との変位量との合成値を上記スプール15に伝達する、フィードバック機構を構成している。又、上記各トラニオン7、7同士の間には同期ケーブル20を掛け渡して、油圧系の故障時にも、これら各トラニオン7、7の傾斜角度を、機械的に同期させられる様にしている。
変速状態を切り換える際には、上記ステッピングモータ13により上記スリーブ14を、得ようとする変速比に見合う所定位置にまで変位させて、上記制御弁12の所定方向の流路を開く。この結果、上記各アクチュエータ10、10に圧油が、所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ10、10が上記各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。即ち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、前記各枢軸9、9の軸方向に変位しつつ、これら各枢軸9、9を中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向及び揺動変位)が、上記ロッド17の端部に固定したプリセスカム18のカム面21とリンク腕19とを介して上記スプール15に伝達され、このスプール15を軸方向に変位させる。この結果、上記トラニオン7が所定量変位した状態で、上記制御弁12の流路が閉じられ、上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排が停止される。
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、エンジン等の動力源に繋がる駆動軸22により一方(図27、28の左方)の入力側ディスク2を、図示の様なローディングカム式の、或は油圧式の押圧装置23を介して回転駆動する。この結果、前記入力軸1の両端部に支持された1対の入力側ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ6、6を介して上記各出力側ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
上記入力軸1と出力歯車4との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を上記各枢軸9、9の軸方向に移動させ、これら各トラニオン7、7を図28に示す位置に揺動させる。そして、上記各パワーローラ6、6の周面をこの図28に示す様に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の中心寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の外周寄り部分とにそれぞれ転がり接触させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン7、7を図28と反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ6、6の周面を、この図28に示した状態とは逆に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の外周寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の中心寄り部分とに、それぞれ転がり接触する様に、上記各トラニオン7、7を傾斜させる。これら各トラニオン7、7の傾斜角度を中間にすれば、入力軸1と出力歯車4との間で、中間の変速比(速度比)を得られる。
更に、上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機を実際の自動車用の無段変速機に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、従来から各種提案されている。図30は、この様な従来から提案されている無段変速装置のうち、特許文献1に記載されたものを示している。この無段変速装置は、所謂ギヤード・ニュートラルと呼ばれ、入力軸を一方向に回転させたまま、出力軸の回転状態を、停止状態を挟んで正転、逆転に切り換えられるもので、トロイダル型無段変速機24と遊星歯車式変速機25とを組み合わせて成る。このうちのトロイダル型無段変速機24は、入力軸1と、1対の入力側ディスク2、2と、出力側ディスク5aと、複数のパワーローラ6、6とを備える。図示の例では、この出力側ディスク5aは、1対の出力側ディスクの外側面同士を突き合わせて一体とした如き構造を有する。
又、上記遊星歯車式変速機25は、上記入力軸1及び一方(図30の右方)の入力側ディスク2に結合固定されたキャリア26を備える。このキャリア26の径方向中間部に、その両端部にそれぞれ遊星歯車素子27a、27bを固設した第一の伝達軸28を、回転自在に支持している。又、上記キャリア26を挟んで上記入力軸1と反対側に、その両端部に太陽歯車29a、29bを固設した第二の伝達軸30を、上記入力軸1と同心に、回転自在に支持している。そして、上記各遊星歯車素子27a、27bと、上記出力側ディスク5aにその基端部(図30の左端部)を結合した中空回転軸31の先端部(図30の右端部)に固設した太陽歯車32又は上記第二の伝達軸30の一端部(図30の左端部)に固設した太陽歯車29aとを、それぞれ噛合させている。又、一方(図30の左方)の遊星歯車素子27aを、別の遊星歯車素子33を介して、上記キャリア26の周囲に回転自在に設けたリング歯車34に噛合させている。
一方、上記第二の伝達軸30の他端部(図30の右端部)に固設した太陽歯車29bの周囲に設けた第二のキャリア35に遊星歯車素子36a、36bを、回転自在に支持している。尚、この第二のキャリア35は、上記入力軸1及び第二の伝達軸30と同心に配置された、出力軸37の基端部(図30の左端部)に固設されている。又、上記各遊星歯車素子36a、36bは、互いに噛合すると共に、一方の遊星歯車素子36aが上記太陽歯車29bに、他方の遊星歯車素子36bが、上記第二のキャリア35の周囲に回転自在に設けた第二のリング歯車38に、それぞれ噛合している。又、上記リング歯車34と上記第二のキャリア35とを低速用クラッチ39により係脱自在とすると共に、上記第二のリング歯車38とハウジング等の固定の部分とを、高速用クラッチ40により係脱自在としている。
上述の様な、図30に示した無段変速装置の場合、上記低速用クラッチ39を接続すると共に上記高速用クラッチ40の接続を断った、所謂低速モード状態では、上記入力軸1の動力が上記リング歯車34を介して上記出力軸37に伝えられる。そして、前記トロイダル型無段変速機24の変速比を変える事により、無段変速装置全体としての変速比、即ち、上記入力軸1と上記出力軸37との間の変速比が変化する。この様な低速モード状態では、無段変速装置全体としての変速比は、無限大に変化する。即ち、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を調節する事により、上記入力軸1を一方向に回転させた状態のまま上記出力軸37の回転状態を、停止状態を挟んで、正転、逆転の変換自在となる。
尚、この様な低速モード状態での加速若しくは定速走行時に、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクは、上記入力軸1から、キャリア26及び第一の伝達軸28と太陽歯車32と中空回転軸31とを介して出力側ディスク5aに加わり、更にこの出力側ディスク5aから各パワーローラ6、6を介して各入力側ディスク2、2に加わる。即ち、この様な低速モード状態での加速若しくは定速走行時に上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクは、上記各入力側ディスク2、2が上記各パワーローラ6、6からトルクを受ける方向に循環する。
これに対して、上記低速用クラッチ39の接続を断ち、上記高速用クラッチ40を接続した、所謂高速モード状態では、上記入力軸1の動力が上記第一、第二の伝達軸28、30を介して上記出力軸37に伝えられる。そして、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を変える事により、無段変速装置全体としての変速比が変化する。この場合には、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を大きくする程、無段変速装置全体としての変速比が大きくなる。この様な高速モード状態での加速若しくは定速走行時に、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクは、上記各入力側ディスク2、2から上記各パワーローラ6、6を介して、上記出力側ディスク5aに伝わる。
又、特許文献2には、図31に示す様な無段変速装置が記載されている。この無段変速装置は、所謂パワー・スプリット型と呼ばれるもので、トロイダル型無段変速機24aと遊星歯車式変速機25aとを組み合わせて成る。そして、低速モード状態では、動力を上記トロイダル型無段変速機24aのみで伝達し、高速モード状態では動力を、主として上記遊星歯車式変速機25aにより伝達すると共に、この遊星歯車式変速機25aによる変速比を、上記トロイダル型無段変速機24aの変速比を変える事により調節する。
この為に、上記トロイダル型無段変速機24aの中心部を貫通し、両端部に1対の入力側ディスク2、2を支持した入力軸1の基端部(図31の右端部)と、上記遊星歯車式変速機25aを構成するリング歯車41とを、高速用クラッチ40aを介して結合している。又、駆動源であるエンジン42のクランクシャフト43の出力側端部(図31の右端部)と上記入力軸1の入力側端部(=基端部=図31の左端部)との間に、発進クラッチ44と油圧式の押圧装置23aとを、動力の伝達方向に関して互いに直列に設けている。この押圧装置23aは、シリンダ96内に上記基端側の入力側ディスク2を油密に、且つ回転力の伝達を自在に嵌装する事により構成している。
又、上記入力軸1の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸37aを、この入力軸1と同心に配置している。そして、この出力軸37aの周囲に上記遊星歯車式変速機25aを設けている。この遊星歯車式変速機25aを構成する太陽歯車45は、上記出力軸37aの入力側端部(図31の左端部)に固定している。従ってこの出力軸37aは、上記太陽歯車45の回転に伴って回転する。この太陽歯車45の周囲には上記リング歯車41を、上記太陽歯車45と同心に、且つ回転自在に支持している。そして、このリング歯車41の内周面と上記太陽歯車45の外周面との間に複数組の遊星歯車素子46a、46bを設けている。これら各組の遊星歯車素子46a、46bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車素子46aを上記リング歯車41に噛合させ、内径側に配置した遊星歯車素子46bを上記太陽歯車45に噛合させている。この様な各遊星歯車素子46a、46bは、キャリア47に回転自在に支持している。又、このキャリア47は、上記出力軸37aの中間部に、回転自在に支持している。
又、上記キャリア47と前記トロイダル型無段変速機24aを構成する1対の出力側ディスク5、5とを、第一の動力伝達機構48により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この第一の動力伝達機構48は、伝達軸49の両端部と、上記各出力側ディスク5、5又は上記キャリア47とを、チェン伝達機構又は歯車伝達機構により結合して成る。そして、上記各出力側ディスク5、5の回転に伴って上記キャリア47を、これら出力側ディスク5、5と反対方向に、上記チェン伝達機構及び歯車伝達機構の変速比に応じた速度で回転させる。一方、上記入力軸1と上記リング歯車41とは、この入力軸1と同心に配置された別の伝達軸50及び前記高速用クラッチ40aを介して、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。従って、上記伝達軸50は、上記高速用クラッチ40aの接続時に、上記入力軸1と同方向に同速で回転する。
又、上記キャリア47の外周縁部と上記リング歯車41の軸方向一端部(図31の右端部)との間に、低速用クラッチ39aを設けている。更に、上記リング歯車41と、無段変速装置のハウジング(図示省略)等、固定の部分との間に、後退用クラッチ51を設けている。
上述の様に構成する無段変速装置は、先ず、低速モード状態では、上記低速用クラッチ39aを接続すると共に、上記高速用クラッチ40a及び後退用クラッチ51の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチ44を接続し、前記入力軸1を回転させると、トロイダル型無段変速機24aのみが、この入力軸1から上記出力軸37aに動力を伝達する。この様な低速走行時には、それぞれ1対ずつの入力側ディスク2、2と出力側ディスク5、5との間の変速比を、前述の図27〜29に示したトロイダル型無段変速機単独の場合と同様にして調節する。又、上記低速モード状態での加速時若しくは定速走行時に、上記トロイダル型無段変速機24aを通過するトルクは、上記各入力側ディスク2、2から各パワーローラを介して、上記各出力側ディスク5、5に伝わる。
これに対して、高速モード状態では、上記高速用クラッチ40aを接続すると共に、上記低速用クラッチ39a及び後退用クラッチ51の接続を断つ。この状態で上記入力軸1を回転させると、この入力軸1から上記出力軸37aには、前記伝達軸50と前記遊星歯車式変速機25aとが、動力を伝達する。即ち、上記高速走行時に上記入力軸1が回転すると、この回転は上記高速用クラッチ40a及び伝達軸50を介してリング歯車41に伝わる。そして、このリング歯車41の回転が複数組の遊星歯車素子46a、46bを介して太陽歯車45に伝わり、この太陽歯車45を固定した上記出力軸37aを回転させる。この状態で、上記トロイダル型無段変速機24aの変速比を変える事により上記各遊星歯車素子46a、46bの公転速度を変化させれば、上記無段変速装置全体としての変速比を調節できる。
即ち、上記高速モード状態では、上記各遊星歯車素子46a、46bの公転速度が遅い程、上記太陽歯車45を固定した出力軸37aの回転速度が速くなる。従って、上記高速モード状態では、前記トロイダル型無段変速機24aの変速比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の変速比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機24aに、入力側ディスク2からではなく、出力側ディスク5からトルクが加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、前記高速用クラッチ40aを接続した状態では、前記エンジン42から前記入力軸1に伝達されたトルクは、前記伝達軸50を介して前記遊星歯車式変速機25aのリング歯車41に伝達される。従って、入力軸1の側から上記トロイダル型無段変速機24aを構成する各入力側ディスク2、2に伝達されるトルクは殆どなくなる。
一方、上記伝達軸50を介して上記リング歯車41に伝達されたトルクの一部は、上記各遊星歯車素子46a、46bから、キャリア47及び前記第一の動力伝達機構48を介して前記各出力側ディスク5、5に伝わる。この様に出力側ディスク5、5から上記トロイダル型無段変速機24aに加わるトルクは、無段変速装置全体の変速比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機24aの変速比を減速側に変化させる程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機24aに入力されるトルクを小さくして、無段変速装置全体としての伝達効率を向上させると共に、上記トロイダル型無段変速機24aの構成部品の耐久性向上を図れる。この様な高速モード状態での加速時若しくは定速走行時に、上記トロイダル型無段変速機24aを通過するトルクは、上記各出力側ディスク5、5から各パワーローラを介して上記各入力側ディスク2、2に伝わる。
更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸37aを逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ39a、40aの接続を断つと共に、前記後退用クラッチ51を接続する。この結果、上記リング歯車41が固定され、上記各遊星歯車素子46a、46bが、このリング歯車41並びに前記太陽歯車45と噛合しつつ、この太陽歯車45の周囲を公転する。そして、この太陽歯車45並びにこの太陽歯車45を固定した出力軸37aが、前述した低速走行時並びに上述した高速走行時とは逆方向に回転する。
トロイダル型無段変速機24、24aと遊星歯車式変速機25、25aとをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、低速モードと高速モードとを有する無段変速装置の場合、前述したギヤード・ニュートラル型にしても、上述したパワー・スプリット型にしても、低速モードと高速モードとの切換時に、上記トロイダル型無段変速機24、24aを通過するトルクの大きさ並びに方向が急激に変動する。ところで、このトロイダル型無段変速機24、24aは、通過するトルク(通過トルク)の大きさに応じて構成各部材が、このトルクの方向に応じた方向に、変位若しくは弾性変形する。そして、この変位若しくは弾性変形に応じて、上記トロイダル型無段変速機24、24aの変速比が変化する、所謂トルクシフトが発生する。
従って、何らの対策も施さない場合には、上記無段変速装置のモード切換時に、上記トルクシフトにより、無段変速装置全体としての変速比が急変動する。この様な変速比の急変動が発生すると、変速ショックが発生し、運転者を初めとする乗員に不快感を与える他、動力の伝達系部品の耐久性を損なう原因となる為、好ましくない。これに対して、モード切換時に於ける変速比の急変動を防止する技術が、特許文献3〜9に記載されて、従来から知られている。
このうちの特許文献3に記載された従来技術は、トロイダル型無段変速機を通過して遊星歯車式変速機に入力される動力の回転速度と、このトロイダル型無段変速機を通過せずにこの遊星歯車式変速機に入力される動力の回転速度とが一致した状態で、モード切換を行なうものである。又、特許文献4〜6に記載された従来技術は、モード切換時に、各クラッチの断接を、半クラッチ状態で切り換えるものである。又、特許文献7に記載された従来技術は、電磁クラッチによりモード切換を行なうものである。又、特許文献8に記載された従来技術は、低速用、高速用両クラッチへの圧油の給排を制御する為のスプール弁式の切換弁に、何れか一方のクラッチへ油圧を導入して他方のクラッチへの油圧の導入を停止するポジションに加えて、両方のクラッチに油圧を導入するポジションを設けている。更に、特許文献9に記載された従来技術の場合には、モード切換時に於けるトロイダル型無段変速機の変速比を、所定値未満に規制している。
モード切換時に於ける変速比の急変動を防止する従来技術のうち、上記特許文献3に記載されている様な、回転速度が一致した状態でモード切換を行なうものは、それだけではトルクシフトに基づく変速比の急変動を防止できない。又、特許文献4〜6に記載されている様な、モード切換時に、各クラッチの断接を半クラッチ状態で切り換えるものの場合には、微妙な制御が必要になり、装置全体が複雑化し、コストが上昇する他、故障の危険性も高くなる。又、特許文献7に記載されている様な、電磁クラッチによりモード切換を行なうものの場合には、それだけではトルクシフトに基づく変速比の急変動を防止できないだけでなく、故障の危険性も高くなる。
又、特許文献8に記載されている様に、1個の切換弁で何れか一方のクラッチを繋ぐ状態と両方のクラッチを繋ぐ状態とを選択する構造の場合、次の(1) 〜(3) の様な問題を生じる。
(1) モード切換時に低速用クラッチと高速用クラッチとを同時に締結すべく、これら両クラッチを繋ぐ為のクラッチ用油圧室内に同時に油圧を導入する構造である為、モード切換に要する時間が長くなり、運転者に違和感を与える原因となる。特に、特許文献8に記載された構造の場合、切換弁により上記両クラッチに同時に油圧を導入する様にしてはいるが、油圧導入路部分の抵抗やクラッチに付属のピストンのストロークの影響により、上記切換弁を切換後、或る程度の時間を経過しない限り、上記両クラッチが接続された事を保証できない。従って、これら両クラッチが同時に接続された状態を確保する為には、上記モード切換に要する時間が長くならざるを得ない。
(2) 同様の理由により、モード切換時に必要とする圧油の量が多くなり、この圧油を供給する為のポンプの仕事量が多くなって、無段変速装置全体としての効率が低下する。
(3) 何れかの状態を選択する為に、上記切換弁を構成するスプールの位置制御を正確に行なう必要がある。具体的には、モード切換時には、このスプールを軸方向一端から他端に向けて変位させる途中で、中央位置で一度停止させてから、再び同方向に移動させる必要がある。上記スプールにこの様な動きをさせる為の制御は面倒で、故障の危険性が高くなる。
更に、特許文献9に記載された従来技術の場合には、モード切換に伴うトルクシフトを防止するものではない。
特開2000−220719号公報 特開平11−63146号公報 特開平11−108147号公報 特開2001−50375号公報 特開2001−50380号公報 特開2001−235022号公報 特開2001−254804号公報 特開平9−210191号公報 特開平11−108148号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、運転者に違和感を与える事なく、低速モードと高速モードとの切換時に急な変速比の変動が生じる状態を確実に防止でき、しかも故障しにくい構造を、低コストで実現すべく発明したものである。
本発明の無段変速装置は何れも、従来から知られている無段変速装置と同様に、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成る。
そして、上記クラッチ装置は、減速比を大きくする低速モードを実現する際に接続されて同じく小さくする高速モードを実現する際に接続を断たれる低速用クラッチと、この高速モードを実現する際に接続されて上記低速モードを実現する際に接続を断たれる高速用クラッチと、これら各クラッチの断接状態を切り換える制御器とから成る。
又、この制御器は、上記各クラッチの断接を制御する事により、変速状態を上記低速モードと上記高速モードとのうちの何れかのモードにするものである。
特に、請求項1に記載した無段変速装置の場合には、上記制御器に、上記低速モードと上記高速モードとの切換時に、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとのうちの一方のクラッチでそれまで接続されていなかったクラッチの接続を開始するのに先立って、上記トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、上記一方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致(不快な変速ショックを生じない程度に、実質的に一致させる事を言い、具体的には、回転速度の差を、予め定めた一方の側から見て5%以内、好ましくは3%以内、より好ましくは1%以内に収める事を言う。以下同じ。)させてからこの一方のクラッチの接続を開始し、この一方のクラッチの動力伝達が開始されてから、それまで接続されていた他方のクラッチの接続を断つ作業を開始する機能を持たせている。そして、この様な機能を持たせる事により、上記一方のクラッチが動力伝達を始めてからこの他方のクラッチの接続が断ち切られる迄の間に、これら両クラッチにより同時に動力の伝達が行なわれる瞬間を設定している。
又、請求項7、24に記載した無段変速装置の場合は、前記低速用クラッチは低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものであり、前記高速用クラッチは高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものである。
又、請求項7に記載した無段変速装置の場合には、上記低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する低速クラッチ用スプールを備えた低速クラッチ用切換弁により制御される。
又、上記高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する高速クラッチ用スプールを備えた高速クラッチ用切換弁により制御される。
又、上記低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態と上記高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態とは、切換用パイロット室内への油圧導入により切換用弾性部材の弾力に抗して変位する切換用スプールを備えたシフト用切換弁により制御される。
又、上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態は、シフト用電動切換弁により制御されるものでる。
又、上記制御器は、上記低速モードと上記高速モードとの切換時に、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとのうちでそれまで接続されていた一方のクラッチの接続を断つべく、上記シフト用電動切換弁により上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態を切り換えて上記切換用スプールを変位させ、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室内への油圧導入状態を切り換えるのに先立って、上記トロイダル型無段変速機の変速比を調節する。
次いで、それまで接続されていなかった他方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致(不快な変速ショックを生じない程度に、実質的に一致させる事を言い、具体的には、回転速度の差を、予め定めた一方の側から見て5%以内、好ましくは3%以内、より好ましくは1%以内に収める事を言う。以下同じ。)させてから、上記シフト用電動切換弁により上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態を切り換えて上記切換用スプールを変位させ、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室内への油圧導入状態を切り換える。
そして、この切り換えに伴って油圧が導入されたパイロット室に対応する上記低速クラッチ用スプール又は上記高速クラッチ用スプールが変位する間、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとの両方のクラッチを接続する。
更に、請求項24に記載した無段変速装置の場合も、前記制御器は、前記低速モードと前記高速モードとの切換時に、前記低速用クラッチと前記高速用クラッチとのうちでそれまで接続されていた一方のクラッチの接続を断つのに先立って、前記トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、それまで接続されていなかった他方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致させる機能を有する。
特に、請求項24に記載した無段変速装置の場合には、上記他方のクラッチを接続してから、上記一方のクラッチの接続を断つ機能を上記制御器に持たせる。
この為に、上記低速用クラッチを、低速クラッチ側圧力導入路を通じての低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続され、低速クラッチ側圧力排出路を通じてのこの低速クラッチ用油圧室からの油圧排出により接続を断たれるものとする。
又、上記高速用クラッチを、高速クラッチ側圧力導入路を通じての高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続され、高速クラッチ側圧力排出路を通じてのこの高速クラッチ用油圧室からの油圧排出により接続を断たれるものとする。
更に、上記低速クラッチ側、高速クラッチ側各圧力導入路の抵抗に比べて、上記低速クラッチ側、高速クラッチ側各圧力排出路の抵抗を大きくする事により、上記低速用、高速用各クラッチが非接続状態から接続状態に迄切り換わるのに要する時間に比べて、これら各クラッチが接続状態から非接続状態に迄切り換わるのに要する時間を長くする。
上述の様に構成する本発明の無段変速装置によれば、何れも、低速モードと高速モードとの切換時に、低速用クラッチと高速用クラッチとの両方のクラッチが同時に動力の伝達を行なっている(接続されている)瞬間を、短時間とは言え造り出せる。この為、モード切換の際にトロイダル型無段変速機に発生するトルクシフトを緩和できる。即ち、上記両方のクラッチが動力の伝達を行なっている(接続された)状態では、上記トロイダル型無段変速機を通過するトルクがほぼゼロになる。そして、上記切換時には、それまでのモードから、一度上記両方のクラッチが動力の伝達を行なっている(接続された)状態になり、その後、新たなモードに移る。この為、異なるモード同士の間で移る場合に、一度上記トロイダル型無段変速機の変速比が、通過トルクの影響を受けない状態(中立状態)に戻る。トルクシフトは、上記それまでのモードと中立状態との間、この中立状態と新たなモードとの間で、2段階に分けて生じる。上記異なるモード同士の間で、いきなり大きなトルクシフトが生じる事はない。即ち、各モードと中立状態との間で、トルクの変動に基づいて各部の弾性変形量が変化し、トロイダル型無段変速機の変速比変動が生じる。同時に、トラクション部の滑り率も変化する。この結果、上記トロイダル型無段変速機のトルクシフトに基づく、無段変速装置全体としての変速比の変動が緩徐になり、運転者を初めとする乗員に与える違和感を緩和できる。又、駆動系に衝撃が加わる事を防止して、この駆動系の構成部品の耐久性向上を図れる。
この為本発明は、モード切換時に運転者に与える違和感を低減して、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて高い効率を得られる無段変速装置の実用化に寄与できる。
請求項1に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項2に記載した様に、一方のクラッチ(油圧式、電磁式、乾式摩擦クラッチ)の動力伝達が開始された事を、このクラッチを接続する為の駆動部材(油圧式であればピストン)の変位(ストローク)により検出する。この変位(ストローク)による検出は、この駆動部材(ピストン)若しくはこの駆動部材(ピストン)と共に変位する部分に設置した、ポテンショメータ等の変位計により行なう。
或は、請求項3に記載した様に、低速用クラッチを、低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものとすると共に、高速用クラッチを、高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものとする。そして、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとのうちの一方のクラッチの動力伝達が開始された事を、このクラッチを接続する際に油圧を導入するクラッチ用油圧室内の油圧により検出する。この油圧の検出は、スプール弁等、規程圧により部材を変位させる油圧部品により機械式に行なっても、或は圧力計により電気式に行なっても良い。
即ち、請求項4に記載した様に、クラッチ用油圧室内の油圧の検出を、圧力センサにより電気的に行なう。或は、請求項5に記載した様に、クラッチ用油圧室内の油圧の検出を機械的に行なうべく、このクラッチ用油圧室内への油圧の導入に伴って切り換わる切換弁を備える。この切換弁を構成するスプールは、クラッチ用油圧室内への油圧導入と共に変位するものとする。そして、このスプールの変位に基づき他方のクラッチのクラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させる。
この様に構成すれば、一方のクラッチの接続動作が開始された事を、簡単な構造で確実に検知して、低速モードと高速モードとの切換時に、低速用、高速用両クラッチが動力の伝達を行なっている(接続されている)瞬間を確実に造り出せて、モード切換の際にトロイダル型無段変速機に発生するトルクシフトを緩和できる。
又、上述の様な請求項5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した様に、上記低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する低速クラッチ用スプールを備えた低速クラッチ用切換弁により制御されるものとする。又、上記高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する高速クラッチ用スプールを備えた高速クラッチ用切換弁により制御されるものとする。又、上記低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態と上記高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態とは、切換用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する切換用スプールを備えたシフト用切換弁により制御されるものとする。又、上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態は、シフト用電動切換弁により制御されるものとする。更に、上記低速クラッチ用切換弁は、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って低速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるものとし、上記低速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧を、高速クラッチ用油圧室内に導入される油圧とする。又、上記高速クラッチ用切換弁を、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って高速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるものとし、上記高速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧を、低速クラッチ用油圧室内に導入される油圧とする。
この様に構成すれば、1個のシフト用電磁弁を切り換えるだけで、後は油圧式の切換弁の切り換え(スプール弁のパイロット室内への油圧導入に伴うスプールの変位)に基づき一方のクラッチの接続動作が開始された事を機械的に検知して、低速モードと高速モードとの切り換え時に、低速用、高速用両クラッチが動力の伝達を行なっている(接続されている)瞬間を確実に造りだせる。
請求項7に記載した発明を実施する場合に、例えば、請求項8に記載した様に、高速クラッチ用切換弁として、高速クラッチ用スプールを挟んで高速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に高速クラッチ用弾性部材を備え、上記高速クラッチ用スプールが、この高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記高速クラッチ用弾性部材の弾力に抗して変位するものを使用する。
又、低速クラッチ用切換弁として、低速クラッチ用スプールを挟んで低速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に低速クラッチ用弾性部材を備え、上記低速クラッチ用スプールが、この低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記低速クラッチ用弾性部材の弾力に抗して変位するものを使用する。
又、上述の様な請求項8に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項9に記載した様に、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁のうち、発進時に繋がれるべきではない(高速用)クラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁に組み込まれてクラッチ用スプールを弾性的に押圧するクラッチ用弾性部材の弾力を、走行状態で大きく、非走行状態で小さく設定する。
この為に好ましくは、請求項10に記載した様に、クラッチ用弾性部材をクラッチ用圧縮コイルばねとする。又、このクラッチ用圧縮コイルばねを、クラッチ用スプールと、このクラッチ用スプールを挟んでクラッチ用パイロット室と軸方向反対位置に設けたシリンダ部内に軸方向変位自在に設けられた押圧ピストンとの間に設ける。そして、この押圧ピストンは、走行状態が選択された場合に、上記シリンダ部内に導入される油圧により上記クラッチ用スプール側に変位して上記クラッチ用圧縮コイルばねの弾力を大きくする。これに対して、非走行状態が選択されて上記シリンダ部内の油圧が排除された場合に上記押圧ピストンは、上記クラッチ用スプールから離れる側に変位して上記クラッチ用圧縮コイルばねの弾力を小さくする。
この様に構成すれば、走行時に於ける低速モードと高速モードとの切換時に、低速用クラッチと高速用クラッチとの両方のクラッチが接続されている瞬間を確実に造り出すと共に、非走行状態から走行状態が選択された場合に、その状態で繋がれるべきでないクラッチが、短時間とは言え繋がれる事を防止できる。
又、上述の請求項9〜10に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項11に記載した様に、運転席に設置したシフトレバーにより走行モード(走行状態)と非走行モード(非走行状態)とに切り換えられる手動切換弁を備える。そして、低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、発進時に繋がれるベきではないクラッチだけでなく、発進時に繋がれるべきクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁に組み込まれてクラッチ用スプールを弾性的に押圧するクラッチ用弾性部材の弾力に就いても、上記手動切換弁が走行モードに切り換えられた状態で大きく、この手動切換弁が非走行モードに切り換えられた状態で小さくする。
この様に構成すれば、高速走行時に(好ましい事ではないが)、運転者が操作ミス或は惰性走行の為に非走行モード{ニュートラル(N)レンジ}を選択した後、高速走行状態のまま走行モード{ドライブ(D)レンジ}に戻した場合にも、その状態で繋がれるべきでないクラッチ(低速用クラッチ)が、短時間とは言え繋がれる事を防止できる。
この場合に好ましくは、制御器に車速を表す信号を入力し、この制御器は、非走行モードから走行モードに切り換えられた時点での車速に合わせて、低速用クラッチと高速用クラッチとのうちの一方のクラッチ、即ち、高速走行時(例えば、30km/h以上の場合)には高速用クラッチを、低速走行時(例えば、30km/h未満の場合)には低速用クラッチを接続する。他方のクラッチは、非接続状態のままとする。
又、前述の様な請求項7に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項12に示した様に、低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、少なくとも発進時に繋がれるベきではないクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁として、反力室を備えたものを使用する。この反力室は、このクラッチ用切換弁を構成するクラッチ用スプールを挟んで、このクラッチ用切換弁を構成するクラッチ用パイロット室と軸方向反対側に組み込まれる。そして、内部に導入された油圧に基づいて上記クラッチ用スプールをこのクラッチ用パイロット室側に押圧する上記反力室内の油圧を、走行状態で大きく、非走行状態で小さく設定する。
この場合に例えば、請求項13に記載した様に、加圧ポンプの吐出口に通じる部分から取り出されて、電動式の圧力調整弁により所定圧に調整された油圧を、上記反力室内に導入する。
或は、請求項14に記載した様に、加圧ポンプの吐出口から送り出されて減圧弁を通過して圧力低下した油圧を、電動式の圧力調整弁若しくは開閉弁を通じて、上記反力室内に導入する。
或は、請求項15に記載した様に、加圧ポンプの吐出口から送り出されて減圧弁を通過して圧力低下した油圧を、高速用クラッチと低速用クラッチとのうちで繋がれているクラッチに付属のクラッチ用油圧室内の油圧に基づいて切り換わる油圧式の弁を通じて、上記反力室内に導入する。
この様に構成する事によっても、前述の請求項9〜10に記載した発明の場合と同様に、走行時に於ける低速モードと高速モードとの切換時に、低速用クラッチと高速用クラッチとの両方のクラッチが接続されている瞬間を確実に造り出すと共に、非走行状態から走行状態が選択された場合に、その状態で繋がれるべきでないクラッチが、短時間とは言え繋がれる事を防止できる。
又、上述の請求項12〜15に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項16に記載した様に、運転席に設置したシフトレバーにより走行モード(走行状態)と非走行モード(非走行状態)とに切り換えられる手動切換弁を備える。そして、低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、発進時に繋がれるベきではないクラッチだけでなく、発進時に繋がれるべきクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁の反力室内の油圧に就いても、上記手動切換弁が走行モードに切り換えられた状態で大きく、この手動切換弁が非走行モードに切り換えられた状態で小さくする。
この様に構成すれば、前述した請求項11に記載した発明と同様に、高速走行時に、運転者が非走行モードを選択した後、高速走行状態のまま走行モードに戻した場合にも、その状態で繋がれるべきでないクラッチ(低速用クラッチ)が、短時間とは言え繋がれる事を防止できる。
この場合にも好ましくは、制御器に車速を表す信号を入力し、この制御器は、非走行モードから走行モードに切り換えられた時点での車速に合わせて、低速用クラッチと高速用クラッチとのうちの一方のクラッチを接続し、他方のクラッチは、非接続状態のままとする。
又、請求項7に記載した発明を実施する場合に、例えば、請求項17に記載した様に、高速クラッチ用切換弁として、高速クラッチ用スプールを挟んで高速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に高速クラッチ用反力室を備え、この高速クラッチ用スプールが、この高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記高速クラッチ用反力室内に導入された油圧に抗して変位するものを使用する。
又、低速クラッチ用切換弁として、低速クラッチ用スプールを挟んで低速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に低速クラッチ用反力室を備え、この低速クラッチ用スプールが、この低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記低速クラッチ用反力室内に導入された油圧に抗して変位するものを使用する。
又、上述の様な請求項17に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項18に記載した様に、上記高速クラッチ用スプールのうちで上記高速クラッチ用パイロット室側の受圧面積を上記高速クラッチ用反力室側の受圧面積よりも広くし、これら高速クラッチ用パイロット室と高速クラッチ用反力室とに同じ油圧を導入自在とする。
又、上記低速クラッチ用スプールのうちで上記低速クラッチ用パイロット室側の受圧面積を上記低速クラッチ用反力室側の受圧面積よりも広くし、これら低速クラッチ用パイロット室と低速クラッチ用反力室とに同じ油圧を導入自在とする。
この様に構成すれば、油圧変動に関係なく、高速クラッチ用切換弁と低速クラッチ用切換弁の切り換えを確実に行なえる。
上述の様な請求項18に記載した発明を実施する場合に、例えば、請求項19に記載した様に、上記高速クラッチ用パイロット室と、上記高速クラッチ用反力室と、上記低速クラッチ用パイロット室と、上記低速クラッチ用反力室とに導入される油圧を、高速クラッチ用、低速クラッチ用両油圧室内に導入される油圧とする。
又、好ましくは、請求項20に記載した様に、上記高速クラッチ用反力室側の受圧面積と上記高速クラッチ用パイロット室側の受圧面積との比、及び、上記低速クラッチ用反力室側の受圧面積と上記低速クラッチ用パイロット室側の受圧面積との比を、何れも0.4以上1未満とする。
又、好ましくは請求項21に記載した様に、上記高速クラッチ用スプールを上記高速クラッチ用パイロット室側に押圧する高速クラッチ用がたつき防止ばねを上記高速クラッチ用反力室内に設ける。又、上記低速クラッチ用スプールを上記低速クラッチ用パイロット室側に押圧する低速クラッチ用がたつき防止ばねを上記低速クラッチ用反力室内に設ける。
又、請求項7に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項22に記載した様に、低速クラッチ用切換弁を、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って低速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるものとし、上記低速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧を、高速クラッチ用油圧室内に導入される油圧とする。又、高速クラッチ用切換弁を、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って高速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるものとし、上記高速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧を、低速クラッチ用油圧室内に導入される油圧とする。
この様に構成すれば、1個のシフト用電動切換弁だけを切り換えれば、後は油圧式の弁の切換の遅延時間に基づき、上記両方のクラッチが接続されている時間を、短時間造り出せる。この為、制御が容易で故障しにくい構造を、低コストで実現できる。
又、上述の様な請求項22に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項23記載した様に、高速クラッチ用油圧室内に導入される油圧を低速クラッチ用パイロット室内に導入する第一の圧力導入路の途中に、圧油の通過に対して抵抗となり、上記高速クラッチ用油圧室内の圧力上昇に比べて上記低速クラッチ用パイロット室内の圧力上昇を遅らせる第一の抵抗手段を設ける。又、低速クラッチ用油圧室内に導入される油圧を高速クラッチ用パイロット室内に導入する第二の油圧導入路の途中に、圧油の通過に対して抵抗となり、上記低速クラッチ用油圧室内の圧力上昇に比べて上記高速クラッチ用パイロット室内の圧力上昇を遅らせる第二の抵抗手段を設ける。
この様に構成すれば、油圧式の弁の切換の遅延時間を確保して、低速用、高速用両クラッチが接続されている時間を確実に造り出せる。
又、前述の様な請求項24に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項25に記載した様に、低速クラッチ側油圧排出路の途中に、この低速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れに対して抵抗となる低速クラッチ側絞りを設ける。更に、高速クラッチ側油圧排出路の途中に、この高速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れに対して抵抗となる高速クラッチ側絞りを設ける。
この様に構成すれば、簡単な構造で、上記両クラッチが接続状態から非接続状態に切り換わるのに要する時間を長くし、これら両クラッチが接続されている時間を、短時間造り出せる。
又、上述の様な請求項25に記載した発明を実施する場合に、更に好ましくは、請求項26に記載した様に、上記低速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分と高速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分とを合流して単一の油圧排出路を構成する。そして、この単一の油圧排出路部分に設けた単一の絞りに、低速クラッチ側絞りとしての機能と高速クラッチ側絞りとしての機能とを合わせ持たせる。
この様に構成すれば、上記両クラッチが接続状態から非接続状態に切り換わるのに要する時間を長くして、これら両クラッチが接続されている時間を短時間造り出す為の構成を、より簡略化できる。
又、前述の様な請求項24に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項27に記載した様に、低速クラッチ用油圧室の近傍で低速クラッチ側圧力導入路と低速クラッチ側圧力排出路とが合流して単一の低速クラッチ側油圧路を構成している部分に、上記低速クラッチ用油圧室内への油圧導入時に開き、この低速クラッチ用油圧室内からの油圧排出時に閉じる低速クラッチ側逆止弁と、低速クラッチ側絞りとを、互いに並列に設ける。又、高速クラッチ用油圧室の近傍で高速クラッチ側圧力導入路と高速クラッチ側圧力排出路とが合流して単一の高速クラッチ側油圧路を構成している部分に、上記高速クラッチ用油圧室内への油圧導入時に開き、この高速クラッチ用油圧室内からの油圧排出時に閉じる高速クラッチ側逆止弁と、高速クラッチ側絞りとを、互いに並列に設ける。
この様に構成する事でも、簡単な構造で、上記両クラッチが接続状態から非接続状態に切り換わるのに要する時間を長くして、これら両クラッチが接続されている時間を、短時間造り出せる。
又、前述の様な請求項24に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項28に記載した様に、低速クラッチ側油圧排出路の途中に、この低速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れを所望時間遮断する、電磁弁等の低速クラッチ側電動弁を設ける。又、高速クラッチ側油圧排出路の途中に、この高速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れを所望時間遮断する、電磁弁等の高速クラッチ側電動弁を設ける。
この様に構成する事でも、簡単な構造で、上記両クラッチが接続状態から非接続状態に切り換わるのに要する時間を長くして、これら両クラッチが接続されている時間を、短時間造り出せる。
この様な請求項28に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項29に記載した様に、低速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分と高速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分とを合流して単一の油圧排出路を構成する。そして、この単一の油圧排出路部分に設けた、電磁弁等の単一の電動弁に、低速クラッチ側電動弁としての機能と高速クラッチ側電動弁としての機能とを合わせ持たせる。
この様に構成すれば、上記両クラッチが接続状態から非接続状態に切り換わるのに要する時間を長くして、これら両クラッチが接続されている時間を短時間造り出す為の構成を、より簡略化できる。
又、請求項28〜29に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項30に記載した様に、車両用変速機として使用し、電磁弁等の電動弁が油圧排出路を通過する圧油の流れを遮断する時間を、車両の運行状況に応じて調節する。
この場合に上記電動弁の開閉を制御する為に利用する車両の運行状況としては、車速、アクセル開度、加速度、減速度、トロイダル型無段変速機を通過するトルク等のうちから選択される1種又は2種以上が考えられる。
この様に、車両の運行状況に応じて上記電動弁が油圧排出路を通過する圧油の流れを遮断する時間を調節すれば、上記両クラッチの断接をよりきめ細かに行なって、変速時に生じる衝撃をより一層緩和できる。
更に好ましくは、請求項31に記載した様に、シフト用電動切換弁と並列に、手動によりこのシフト用電動切換弁と同じ機能を果たすシフト用手動切換弁を設けると共に、これらシフト用電動切換弁とシフト用手動切換弁との何れかを選択する選択用手動切換弁を設ける。
この様に構成すれば、上記シフト用電動切換弁の故障時に、手動により低速モードと高速モードとの変更を可能にして、自走により修理工場に持ち込む際に必要とされる、最低限の走行性能を確保する事もできる。
図1〜6は、請求項1、2、3、5、6、7、8、22、31に対応する、本発明の実施例1を示している。本実施例は、本発明をギヤード・ニュートラル型の無段変速装置に適用した場合に就いて示している。そして、モード切換時にトルクシフトに基づく変速比の急変動を抑える機能に加えて、入力軸を回転させたまま出力軸を停止させるべく、無段変速装置全体としての変速比を極端に大きくした場合に出力軸に加わるトルクを所望値に調整する制御を効果的に行なえる様にしている。尚、図1に示した無段変速装置は、前述の図29に示した従来から知られている無段変速装置と同様の機能を有するものであるが、遊星歯車式変速機25b部分の構造を工夫する事により、この遊星歯車式変速機25b部分の組立性を向上させている。
入力軸1及び1対の入力側ディスク2、2と共に回転するキャリア26aの両側面に、それぞれ1対ずつの遊星歯車素子52a、52b、53a、53bを、回転自在に支持している。そして、これら各遊星歯車素子52a、52b、53a、53bのうち、対となる遊星歯車素子52a、52b同士、53a、53b同士を互いに噛合させると共に、内径側の遊星歯車素子52a、53aを、出力側ディスク5aに結合した中空回転軸31a及び伝達軸54に固設した第一、第二の太陽歯車55、56に、外径側の遊星歯車素子52b、53bをリング歯車34aに、それぞれ噛合させている。尚、上記中空回転軸31a及び伝達軸54は、上記入力軸1と同心に、互いに独立した回転を自在として支持している。
一方、上記伝達軸54の他端部(図1の右端部)に固設した第三の太陽歯車57の周囲に設けた第二のキャリア58に遊星歯車素子59a、59bを、回転自在に支持している。尚、この第二のキャリア58は、上記入力軸1と同心に配置された出力軸37bの基端部(図1の左端部)に固設されている。又、上記各遊星歯車素子59a、59bは、互いに噛合すると共に、内径側の遊星歯車素子59aを上記第三の太陽歯車57に、外径側の遊星歯車素子59bを、上記第二のキャリア58の周囲に回転自在に設けた第二のリング歯車38aに、それぞれ噛合させている。又、上記リング歯車34aと上記第二のキャリア58とを低速用クラッチ39bにより係脱自在とすると共に、上記第二のリング歯車38aとハウジング等の固定の部分とを、高速用クラッチ40bにより係脱自在としている。
この様に構成する無段変速装置の場合、上記低速用クラッチ39bを接続し、上記高速用クラッチ40bの接続を断った状態では、上記入力軸1の動力が、上記リング歯車34aを介して上記出力軸37bに伝えられる。そして、トロイダル型無段変速機24の変速比を変える事により、無段変速装置全体としての変速比eCVT 、即ち、上記入力軸1と上記出力軸37bとの間の速度比が変化する。この際のトロイダル型無段変速機24の変速比eCVU と無段変速装置全体としての変速比eCVT との関係は、上記リング歯車34aの歯数m34と前記第一の太陽歯車55の歯数m55との比をi1 (=m34/m55)とした場合に、次の(1)式で表される。
CVT =(eCVU +i1 −1)/i1 --- (1)
そして、例えば上記歯数同士の比i1 が2である場合に、上記両変速比eCVU 、eCVT 同士の関係が、図2に線分αで示す様に変化する。
これに対して、上記低速用クラッチ39bの接続を断ち、上記高速用クラッチ40bを接続した状態では、上記入力軸1の動力が、前記各遊星歯車素子52a、52b、上記リング歯車34a、前記各遊星歯車素子53a、53b、前記伝達軸54、前記各遊星歯車素子59a、59b、上記第二のキャリア58を介して、上記出力軸37bに伝えられる。そして、上記トロイダル型無段変速機24の変速比eCVU を変える事により、無段変速装置全体としての変速比eCVT が変化する。この際のトロイダル型無段変速機24の変速比eCVU と無段変速装置全体としての変速比eCVT との関係は、下記の(2)式の様になる。尚、この(2)式中、i1 は上記リング歯車34aの歯数m34と上記第一の太陽歯車55の歯数m55との比(m34/m55)を、i2 は上記リング歯車34aの歯数m34と前記第二の太陽歯車56の歯数m56との比(m34/m56)を、i3 は前記第二のリング歯車38aの歯数m38と前記第三の太陽歯車57の歯数m57との比(m38/m57)を、それぞれ表している。
CVT ={1/(1−i3 )}・{1+(i2 /i1 )(eCVU −1)} --- (2)
そして、上記各比のうち、i1 が2、i2 が2.2、i3 が2.8である場合に、上記両変速比eCVU 、eCVT 同士の関係が、図2に線分βで示す様に変化する。
上述の様に構成し作用する無段変速装置の運転時に、上記図2に示した線分α、βの連続部では、前記低速用クラッチ39bと前記高速用クラッチ40bとの断接に基づき、低速モードと高速モードとの切換が行なわれる。そして、この切換に基づいて、前述した様に、トロイダル型無段変速機24を通過するトルクの方向及び大きさが変化する。そこで、図3に示す様な油圧回路により、上記モード切換の際に上記低速用クラッチ39bと上記高速用クラッチ40bとの双方のクラッチを、(半クラッチ状態ではなく)完全につないでいる時間を短時間だけ設定している。
この為に本実施例の場合には、上記低速用クラッチ39bとして、低速クラッチ用油圧室60内への油圧の導入により接続される、湿式多板式のものを使用している。又、上記高速用クラッチ40bとして、高速クラッチ用油圧室61内への油圧の導入により接続される、湿式多板式のものを使用している。そして、油溜62(無段変速装置の底部に設けたオイルパン)から吸引され、加圧ポンプ63から吐出され、手動切換弁64を通過してから減圧弁65により所定圧に調整された圧油に基づく油圧を、上記低速クラッチ用油圧室60と高速クラッチ用油圧室61との一方又は双方に導入する様にしている。
先ず、上記低速クラッチ用油圧室60内への油圧の導入状態は、低速クラッチ用切換弁66により切り換える。この低速クラッチ用切換弁66は、低速クラッチ用スプール67の軸方向変位に伴って、上記低速クラッチ用油圧室60を、上記油溜62と上記減圧弁65の吐出ポートとの何れかに通じさせるものである。そして、上記低速クラッチ用スプール67を軸方向に変位させる為に、この低速クラッチ用スプール67の軸方向一端(図3の右端)側に、低速クラッチ用弾性部材である低速クラッチ用圧縮コイルばね68を、軸方向他端(図3の左端)側に低速クラッチ用パイロット室69を、それぞれ設けている。
この様な低速クラッチ用切換弁66は、上記低速クラッチ用パイロット室69内への油圧の導入を停止(油溜62に開放)した状態では、上記低速クラッチ用スプール67が上記低速クラッチ用圧縮コイルばね68の弾力に基づいて図3に示した状態に変位し、上記低速クラッチ用油圧室60内に油圧を導入する。この状態で、前記低速用クラッチ39bは接続状態となる。これに対して、上記低速クラッチ用パイロット室69内に油圧を導入した状態では、上記低速クラッチ用スプール67が上記低速クラッチ用圧縮コイルばね68の弾力に抗して図3に示した状態とは逆側に変位し、上記低速クラッチ用油圧室60を上記油溜62に通じさせる。この状態で、上記低速用クラッチ39bは非接続状態となる。
又、前記高速クラッチ用油圧室61内への油圧の導入状態は、高速クラッチ用切換弁70により切り換える。この高速クラッチ用切換弁70は、高速クラッチ用スプール71の軸方向変位に伴って、上記高速クラッチ用油圧室61を、上記油溜62と上記減圧弁65の吐出ポートとの何れかに通じさせるものである。そして、上記高速クラッチ用スプール71を軸方向に変位させる為に、この高速クラッチ用スプール71の軸方向一端(図3の左端)側に、高速クラッチ用弾性部材である高速クラッチ用圧縮コイルばね72を、軸方向他端(図3の右端)側に高速クラッチ用パイロット室73を、それぞれ設けている。
この様な高速クラッチ用切換弁70は、上記高速クラッチ用パイロット室73内への油圧の導入を停止した状態では、上記高速クラッチ用スプール71が上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力に基づいて図3に示した状態とは逆側に変位し、上記高速クラッチ用油圧室61内に油圧を導入する。この状態で、前記高速用クラッチ40bは接続状態となる。これに対して、上記高速クラッチ用パイロット室73内に油圧を導入した状態では、上記高速クラッチ用スプール71が上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力に抗して図3に示した状態に変位し、上記高速クラッチ用油圧室61を上記油溜62に通じさせる。この状態で、上記高速用クラッチ40bは非接続状態となる。
又、前記低速クラッチ用切換弁66の低速クラッチ用パイロット室69と、上記高速クラッチ用切換弁70の高速クラッチ用パイロット室73とへの油圧の導入状態は、シフト用切換弁74により制御する様にしている。このシフト用切換弁74は、切換用スプール75の軸方向変位に伴って、上記低速クラッチ用パイロット室69と上記高速クラッチ用パイロット室73とのうちの何れか一方に油圧を導入すると同時に、他方を上記油溜62に通じさせる。上記切換用スプール75を軸方向に変位させる為に、この切換用スプール75の一端(図3の左端)側に切換用パイロット室76を、他端側に切換用弾性部材である切換用圧縮コイルばね77を、それぞれ設けている。この様なシフト用切換弁74は、上記切換用パイロット室76に圧油を導入すると、図3に示した状態に切り換わり、上記低速クラッチ用パイロット室69を上記油溜62に通じさせると同時に、上記高速クラッチ用パイロット室73に、上記低速クラッチ用切換弁66から前記低速クラッチ用油圧室60に送られる油圧を導入する。これに対して、上記切換用パイロット室76に圧油を導入しない(この切換用パイロット室76を上記油溜62に通じさせた)状態では、図3に示した状態とは逆側に切り換わり、上記高速クラッチ用パイロット室73を上記油溜62に通じさせると同時に、上記低速クラッチ用パイロット室69に、上記高速クラッチ用切換弁70から前記高速クラッチ用油圧室61に送られる油圧を導入する。
更に、上記切換用パイロット室76への油圧の導入状態は、シフト用電動切換弁である電磁切換弁78により制御している。この電磁切換弁78は、ソレノイドへの通電に基づいてスプールを変位させ、上記切換用パイロット室76を第二の加圧ポンプ79の吐出口に通じさせる状態と、上記油溜62に通じさせる状態とに切り換える。即ち、上記電磁切換弁78は、上記ソレノイドへの非通電時には上記スプールを、ばねの弾力に基づいて図3に示した状態に変位させ、上記第二の加圧ポンプ79の吐出口から吐出された圧油に基づく油圧を、上記切換用パイロット室76に導入する。これに対して、上記ソレノイドへの通電時には、上記スプールを上記ばねの弾力に抗して図3に示した状態とは逆側に変位させ、上記切換用パイロット室76を上記油溜62に通じさせる。
本実施例の場合、上述の様な油圧回路により、低速モードと高速モードとの切換時に、前記低速用クラッチ39bと前記高速用クラッチ40bとの両方のクラッチが接続されている瞬間を造り出し、モード切換の際にトロイダル型無段変速機24に発生するトルクシフトを緩和する様にしている。以下、低速モードから高速モードに移る際の動作を、図3に図4及び図5を加えて説明しつつ、上記トルクシフトを緩和できる理由に就いて説明する。
低速モード時には、図4の実線a、b及び図5の(B)の実線α及び破線βの左端部に示す様に、前記低速クラッチ用油圧室60内の油圧は高く、前記高速クラッチ用油圧室61内の油圧は低い。この状態では、前記低速クラッチ用切換弁66を構成する低速クラッチ用スプール67は、図4の実線cの左端部に示す様に図3の左側に、前記高速クラッチ用切換弁70を構成する高速クラッチ用スプール71は、図4の実線dの左端部に示す様に図3の左側に、それぞれ存在する。又、前記電磁切換弁78への通電は、図4の実線eの左端部に示す様に停止(OFF)しており、前記シフト用切換弁74を構成する切換用スプール75は、図4の実線fの左端部に示す様に、図3の右側に存在する。
無段変速装置を搭載した車両の走行速度が上昇すると、図示しない制御器が上記低速モードから高速モードに移るべき旨の判断を行ない、図4の実線eの中間部分に示す様に、上記電磁切換弁78への通電を開始する。この結果、この電磁切換弁78のスプールが変位して、上記シフト用切換弁74の切換用パイロット室76が上記油溜62に通じ、このシフト用切換弁74を構成する切換用スプール75が、上記実線fの中間部に示す様に、図3の右から左に変位する。尚、上記制御器は、上記電磁切換弁78への通電開始に先立ち、前記トロイダル型無段変速機24の変速比を調節して、前記第二のリング歯車38aの回転速度を略ゼロにする(停止させる)。
上記切換用スプール75が図3の右から左に変位する結果、前記高速クラッチ用切換弁70の高速クラッチ用パイロット室73が前記油溜62に解放され、高速クラッチ用スプール71が、高速用圧縮コイルばね72に押されて、図4の実線dの中間部分に示す様に、図3の右方に変位する。そして、上記高速クラッチ用切換弁70を介して前記高速クラッチ用油圧室61内に油圧を導入する。この高速クラッチ用油圧室61内の油圧は、前記高速用クラッチ40bを構成する複数枚のクラッチ板同士の間に存在する隙間を狭めつつ上昇するので、上記高速クラッチ用油圧室61内の油圧上昇には、図4の実線b及び図5の(B)の実線αの中間部に示す様に、或る程度時間を要する。そして、この高速クラッチ用油圧室61内と同じ油圧の導入に基づく、前記低速クラッチ用切換弁66の切り換わりが遅れる。
即ち、上記高速クラッチ用油圧室61内に油圧を導入し始めてからしばらくの間は、上記各クラッチ板同士の間の隙間を狭める為のピストンを変位させる為に油圧のエネルギが消費され、上記低速クラッチ用切換弁66の低速クラッチ用パイロット室69には、十分なエネルギが供給されない。この低速クラッチ用切換弁66を構成する、前記低速クラッチ用スプール67は、前記低速クラッチ用パイロット室69内の油圧が、前記低速クラッチ用圧縮コイルばね68の弾力に見合うよりも高くなってから、始めて図3の右方に変位し始める。従って、上記低速クラッチ用スプール67が図3の右方に変位するのは、図4の実線cの中間部分に示す様に、上記高速クラッチ用油圧室61内の油圧が十分に上昇してからになる。そして、前記低速クラッチ用油圧室60内の油圧は、図4の実線a及び図5の(B)の破線βの中間部分に示す様に、上記低速クラッチ用スプール67が図3の十分右方に変位してから低下し始め、上記低速クラッチ用油圧室60内の油圧が十分に低下した状態で、前記低速用クラッチ39bの接続が断たれる。
上記低速クラッチ用油圧室60内の油圧を表す図4の実線a及び図5の(B)の破線βが下降し始め、前記低速用クラッチ39bの接続が断たれ始める点Aと、上記高速クラッチ用油圧室61内の油圧を表す図4の実線b及び図5の(B)の実線αが上昇し切り、前記高速用クラッチ40bが接続され切った点Bとを比較すれば明らかな通り、本実施例の場合には、これら両クラッチ39b、40bが、短時間とは言え、同時に動力を伝達する(接続される)瞬間が存在する。即ち、これら両クラッチ39b、40bの断接は、時間Tを要して行なわれるが、その途中で時間tの間は、これら両クラッチ39b、40bが同時に動力の伝達を行なう(接続される)。この為、モード切換の際に前記トロイダル型無段変速機24に発生するトルクシフトを緩和できる。
即ち、上記両方のクラッチ39b、40bが同時に接続された状態では、入力軸1に入力された動力は、総て前記遊星歯車式変速機25bにより伝達される状態となり、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルク(通過トルク)は実質的にゼロになる。そして、それまでの低速モード時、出力側ディスク5aから入力側ディスク2、2にトルクが伝達される状態より、上記両方のクラッチ39b、40bが接続されて上記通過トルクが一度ゼロになってから、高速モードに移る。この高速モードでは、トルクの伝達方向が上記低速モード時とは逆転し、上記入力側ディスク2、2から出力側ディスク5aにトルクが伝達される。
この様に本実施例の場合には、上記低速モードから上記高速モードに移り、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクの方向が逆転する際に、このトロイダル型無段変速機24を通過するトルクを、一度ゼロに納めて短時間運転する。そしてこのトロイダル型無段変速機24の変速比が、通過トルクの影響を受けない状態(中立状態)に戻る。トルクシフトは、上記それまでの低速モードと中立状態との間、この中立状態と新たな高速モードとの間で、2段階に分けて生じる。即ち、各段階で、通過トルクの変動に伴う、上記トロイダル型無段変速機24の変速比変動が生じると共に、トラクション部の滑り率が変化する。上記低速モードと高速モードとの間で、いきなり大きなトルクシフトが生じる事はない。この結果、上記トロイダル型無段変速機24のトルクシフトに基づく、無段変速装置全体としての変速比の変動が緩徐になり、運転者を初めとする乗員に与える違和感を緩和できる。又、駆動系に衝撃が加わる事を防止して、この駆動系の構成部品の耐久性向上を図れる。高速モードから低速モードに移る際にも、各部の作動が逆になる以外、同様にして、上記トルクシフトの緩和を図れる。尚、この様に高速モードから低速モードに移る際に制御器は、上記トロイダル型無段変速機24の変速比調節に基づき、前記リング歯車34aの回転速度と前記第二のキャリア58の回転速度とを略一致させてから、前記電磁切換弁78への通電を停止する。
又、本実施例の場合には、次の(1) 〜(3) の様な効果も得られる。
(1) モード切換に要する時間を短くして、運転者に違和感を与える事を防止する事が可能となる。即ち、前述の特許文献8に記載された構造の場合には、モード切換時に高速用、低速用両クラッチのクラッチ用圧力室内に同時に油圧を導入し、これら両クラッチを同時に接続し切る事を意図している。又、本実施例の場合も、この様に両クラッチを同時に接続し切る時間を確保する事もできる。この様な場合、これら両クラッチのクラッチ用圧力室内の圧力が、図5の(B)の実線α及び破線βの様に変化し、モード切換の為に上記両クラッチの断接に要する時間Tが長くなる。これに対して本実施例の場合には、油圧配管の長さや内径、低速クラッチ用、高速クラッチ用各パイロット室69、73の受圧面積、低速クラッチ用、高速クラッチ用各圧縮コイルばね68、72の弾性係数等を調節する事により、図5の(A)に示す様に、前記低速用クラッチ39bの接続が断ち切られるまでの間に、この低速用クラッチ39b及び前記高速用クラッチ40bが同時に完全に接続されていなくても、これら両クラッチ39b、40bにより同時に動力の伝達が行なわれる瞬間t′を設定できる。この様な設定を行なえば、上記図5の(A)に示す様に、モード切換の為に上記両クラッチ39b、40bを断接させる為に要する時間T´を短くできる。
(2) 又、上述した様に、モード切換時に上記両クラッチ39b、40bを、必ずしも同時に且つ完全に接続させる必要がない為、モード切換時に必要とする圧油の量を少なく抑えて、この圧油を供給する為のポンプの仕事量を少なく抑え、無段変速装置全体としての効率の向上を図れる。
(3) 制御器が1個の電磁切換弁78だけを切り換えれば、後は、何れも油圧式の弁である、シフト用切換弁74、低速クラッチ用切換弁66、高速クラッチ用切換弁70の切換の遅延時間に基づき、上記両方のクラッチが接続されている時間を、短時間造り出せる。又、各弁のスプールを、変位の途中で停止させる必要はない。この為、制御が容易で故障しにくい構造を、低コストで実現できる。
尚、上記遅延時間に基づく、前記低速用クラッチ39bと前記高速用クラッチ40bとの両方が接続されている時間の長さは、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70に内蔵した、低速クラッチ用、高速クラッチ用両圧縮コイルばね68、72の弾力により調整できる。又、上記時間の長さは、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70と上記シフト用切換弁74との間(例えば、図3のイ、ロ)部分に絞りを設け、この絞りの開口度を適切に規制する事でも調節できる。
更に、図示は省略するが、上記電磁切換弁78と並列に、手動によりこの電磁切換弁と同じ機能を果たすシフト用手動切換弁を設ける事により、上記電磁切換弁78の故障時に、手動により低速モードと高速モードとの変更を可能にして、自走により修理工場に持ち込む際に必要とされる、最低限の走行性能を確保する事もできる。この場合には、上記シフト用手動切換弁を設けた並列管路と、上記電磁切換弁78を設けた主管路との分岐部に、これら並列管路と主管路とを手動式に切り換える、三方弁等の選択用手動切換弁を設ける。
又、図3に示した油圧回路は、上記低速モードの状態のうちで、無段変速装置の変速比が極大である(無限大に近い)場合に、前記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクを厳密に制御する為の機能と、前記各加圧ポンプ63、79の駆動に要する動力を低く抑える機能(何れも、特願2003−56681号に係る発明の機能)とを備えている。この様な機能のうち、上記トルクを厳密に制御する機能を備えさせる理由は、次の通りである。即ち、前記図1に示した無段変速装置は、前記図2の線分αから明らかな通り、前記入力軸1を回転させた状態のまま、前記出力軸37bを停止させる、所謂変速比無限大の状態を造り出せる。この様な無段変速装置の場合、変速比が無限大若しくはそれに近い状態、即ち、入力軸1を回転させた状態のまま上記出力軸37bを停止させたり、或は極く低速で回転させる状態では、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクが、駆動源であるエンジンから上記入力軸1に加えられるトルクよりも大きくなる。この為、車両の停止時又は微速運行時には、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクが過大(或は過小に)にならない様にする為、駆動源から上記入力軸1に入力されるトルクを適正に規制する必要がある。
又、上記微速運行時、出力軸37bを停止させる状態に近い状態、即ち、上記無段変速装置の変速比が非常に大きく、上記入力軸1の回転速度に比べて上記出力軸37bの回転速度が大幅に遅い状態では、この出力軸37bに加わるトルクが、上記無段変速装置の変速比の僅かな変動により、大幅に変動する。この為、円滑な運転操作を確保する為に、やはり駆動源から上記入力軸1に入力されるトルクを適正に規制する必要がある。
この為に図3に示した油圧回路では、駆動源から上記入力軸1に入力されるトルクを適正に規制する為に、図6に示す様な操作を行なえる様にしている。この操作では、先ず、上記駆動源であるエンジンの回転速度を、図6のw範囲内の点aに規制すべく、大まかに制御する。これと共に、この制御されたエンジンの回転速度に上記無段変速装置の入力軸1の回転速度を一致させる為に必要とされる、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を設定する。この設定作業は、前述の(1)式に基づいて行なう。即ち、低速モード時の状態で、上記入力軸1の回転速度を、必要とする出力軸37bの回転速度に対応した値とすべく、前記(1)式により、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を設定する。
又、上記トロイダル型無段変速機24に組み込んだトラニオン7、7を枢軸9、9の軸方向に変位させる為の油圧式のアクチュエータ10、10を構成する1対の油圧室80a、80b(図3、29参照)同士の間の圧力差を、図示しない油圧センサにより測定する。この油圧測定作業は、上記エンジンの回転速度を大まか(但し回転速度を一定に保つ状態)に制御し、これに対応して、上述の様に、(1)式により上記トロイダル型無段変速機24の変速比を設定した状態で行なう。そして、測定作業に基づいて求めた上記圧力差により、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU を算出する。即ち、上記圧力差は、上記トロイダル型無段変速機24の変速比が一定である限り、このトロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU に比例する為、上記圧力差により、このトルクTCVU を求める事ができる。
一方、上記トルクTCVU は、次の(3)式によっても求められる。
CVU =eCVU ・TIN/{eCVU +(i1 −1)ηCVU } --- (3)
この(3)式中、eCVU は上記トロイダル型無段変速機24の変速比を、TINは上記エンジンから前記入力軸1に入力されるトルクを、i1 は前記リング歯車34aの歯数m34と前記第一の太陽歯車55の歯数m55との比を、ηCVU は上記トロイダル型無段変速機24の効率を、それぞれ表している。
そこで、上記圧力差から求めた、実際にトロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU1と、上記(3)式から求めた、目標とする通過トルクTCVU2とに基づいて、この実際に通過するトルクTCVU1と目標値TCVU2との偏差△T(=TCVU1−TCVU2)を求める。そして、この偏差△Tを解消する(△T=0とする)方向に、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を調節する。
例えば、図6に示す様に、上記トロイダル型無段変速機24を実際に通過するトルクTCVU1(測定値)を目標値TCVU2に規制する領域で、前記エンジンが前記入力軸1を駆動するトルクTINが、この入力軸1の回転速度が高くなる程急激に低くなる方向に変化する場合に就いて考える。この様なエンジンの特性は、電子制御されたエンジンであれば、低速回転域でも容易に得られる。この様なエンジン特性を有する場合で、上記トルクの測定値TCVU1が同じく目標値TCVU2に比べて、各入力側ディスク2、2が各パワーローラ6、6(図28〜30参照)からトルクを受ける方向の偏差を有する場合には、上記入力軸1を駆動するトルクTINを小さくする為にエンジンの回転速度を増大すべく、無段変速装置全体としての変速比を減速側に変位させる。この為に、上記トロイダル型無段変速機24の変速比を、増速側に変える。
例えば、図6で、上記目標値TCVU2がa点に存在し、上記測定値TCVU1が同図のb点に存在する場合には、上記各入力側ディスク2、2が上記パワーローラ6、6からトルクを受ける方向の偏差を有する状態となる。そこで、上記トロイダル型無段変速機24の変速比eCVU を増速側に変更して、無段変速装置全体としての変速比eCVT を減速側に変更する。これに合わせてエンジンの回転速度を増速し、トルクを下げる。反対に、上記測定値TCVU1が同図のc点に存在する場合には、上記各入力側ディスク2、2が上記パワーローラ6、6にトルクを付加する方向の偏差を有する状態となる。この場合には、上述した場合とは逆に、上記トロイダル型無段変速機24の変速比eCVU を減速側に変更して、無段変速装置全体としての変速比eCVT を増速側に変更する。これに合わせて、エンジンの回転速度を減速してトルクを上昇させる。
以下、上記圧力差から求めた、実際にトロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU1が目標値TCVU2に一致するまで、上述した動作を繰り返し行なう。即ち、1回のトロイダル型無段変速機24の変速制御だけでは、このトロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU1を目標値TCVU2に一致させられない場合には、上述した動作を繰り返し行なう。この結果、上記エンジンが前記入力軸1を回転駆動するトルクTINを、このトロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU を目標値TCVU2に対し近付ける事ができる。尚、この様な動作は、無段変速装置の制御器に組み込んだマイクロコンピュータからの指令により、自動的に、且つ、短時間の間に行なわれる。
この様に上記トロイダル型無段変速機24を実際に通過するトルクTCVU1を、上記目標値TCVU2である図6に示す上記a点に規制する為の制御を2段階に分けて、先ず、エンジンの回転速度を大まかに、即ち、上記目標値TCVU2を得られるであろうと考えられる回転速度に制御した後、この回転速度に合わせてトロイダル型無段変速機24の変速比制御を行なう。この為、オーバシュート(及びそれに伴うハンチング)を生じさせる事なく、或は仮に生じたとしても実用上問題ない程度に低く抑えて、上記トロイダル型無段変速機24を実際に通過するトルクTCVU1を上記目標値TCVU2に規制できる。
前記図3に示した油圧回路は、前述した様な、モード変更時に発生するトルクシフトを緩和する機能の他、上述の様にして、トロイダル型無段変速機24を実際に通過するトルクTCVU1を目標値TCVU2に一致させる機能(トルク調整機能)、更には、前記各加圧ポンプ63、79を駆動する為の動力を低く抑える機能(動力低減機能)も備えている。この為に上記油圧回路では、トラニオン7を枢軸9、9(図29参照)の軸方向(図3、29の上下方向)に変位させる為の油圧式のアクチュエータ10を構成する1対の油圧室80a、80bに、変速比制御弁12を通じて、圧油を給排自在としている。この変速比制御弁12を構成するスリーブ14は、ステッピングモータ13により、ロッド81とリンク腕82とを介して軸方向に変位駆動自在としている。又、上記変速比制御弁12を構成するスプール15は、リンク腕19とプリセスカム18とロッド17とを介して上記トラニオン7と係合させ、このトラニオン7の軸方向(図29の上下方向)変位及び揺動変位に伴って、軸方向(図3、29の左右方向)に変位駆動自在としている。以上の構成は、従来から知られている、トロイダル型無段変速ユニットの変速比制御機構と、基本的に同じである。
特に本実施例の場合には、上記トルク調整機能を備えさせる為に、上記スリーブ14を、上記ステッピングモータ13により駆動するのに加えて、油圧式の差圧シリンダ83によっても駆動する様にしている。即ち、上記スリーブ14に基端部を結合した上記ロッド81の先端部を上記リンク腕82の中間部に枢支すると共に、このリンク腕82の両端部に形成した(図3の上下方向に長い)長孔に、上記ステッピングモータ13或は上記差圧シリンダ83により押し引きされるピンを係合させている。一方のピンが押し引きされる場合、他方のピンは支点として作用する。この様な構成により、上記スリーブ12を、上記ステッピングモータ13による他、上記差圧シリンダ83によっても軸方向に変位させられる様にしている。本実施例の場合、この差圧シリンダ83による上記スリーブ12の変位により、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU に応じて、このトロイダル型無段変速機24の変速比eCVU を微調節する様にしている。
この為に本実施例の場合には、上記差圧シリンダ83に設けた1対の油圧室84a、84b内に圧油を、ロード電磁弁85より制御される、第一、第二の差圧制御弁86、87により、前後進切換弁88を介して給排する様にしている。上記ロード電磁弁85は、ノーマルオープン型の電磁比例弁で、付加された電圧にほぼ比例した油圧を、下流側に存在する、上記第一、第二の差圧制御弁86、87に導入する機能を有する。又、ノーマルクローズ型の電磁弁89の開閉に基づき、加圧用圧力調整弁90の開弁圧を調節自在としている。更に、運転席に設けたシフトレバーにより操作される、前記手動切換弁64により、各部の連通状態を切り換えられる様にしている。
又、トラニオン7(図28、29参照)を変位させる為のアクチュエータ10に設けた1対の油圧室80a、80b内の油圧の差を、差圧取り出し弁91により取り出して、上記加圧用圧力調整弁90に導入する様にしている。この差圧取り出し弁91を構成するスプール92は、1対のパイロット室93a、93bに導入された、上記アクチュエータ10にピストン16を挟んで設けた1対の油圧室80a、80b内の圧力に応じて、軸方向に変位する。そして、何れのパイロット部93a(93b)に導入された油圧が他のパイロット部93b(93a)に導入された油圧よりも高いかにより、上記差圧取り出し弁91にそれぞれの端部を接続した圧力導入路94a(94b)と、上記スプール92の両端面に対向する部分に設けた反力室95a(95b)とに、油圧を導入する。
例えば、上記アクチュエータ10の一方の油圧室80a内の油圧が他方の油圧室80bよりも高くなる状態を考える。この状態では、上記パイロット部93aに導入される油圧が他のパイロット部93bに導入される油圧よりも高くなり、上記スプール92が図3の右方に移動し、上記差圧取り出し弁91が切り換わる。この結果、前記加圧ポンプ63から吐出された圧油が、一方(図3の右方)の圧力導入路94aを通じて、上記加圧用圧力調整弁90の第一のパイロット部に導入される。尚、これと共に上記圧油は、前記第一、第二の差圧制御弁86、87に導入され、上記前後進切換弁88を介して前記差圧シリンダ83を変位させて、前記変速比制御弁12のスリーブ14を微小変位させる。
これに対して、上記アクチュエータ10の他方の油圧室80b内の油圧が一方の油圧室80aよりも高くなると、上記他のパイロット部93bに導入される油圧が上記一方のパイロット部93aに導入される油圧よりも高くなり、上記スプール92が図3の左方に移動し、上記差圧取り出し弁91が上述した状態とは逆に切り換わる。この結果、上記加圧ポンプ63から吐出された圧油が、他方(図3の左方)の圧力導入路94bを通じて、上記加圧用圧力調整弁90の第二のパイロット部に導入される。又、これと共に上記圧油は、前記第一、第二の差圧制御弁86、87に導入され、上記前後進切換弁88を介して上記差圧シリンダ83を変位させる。
何れの場合でも、上記圧力導入路94a、94bに導入された圧油は、上記差圧取り出し弁91の反力室95a、95bにも導入されて、上記スプール92の軸方向端面を押圧する。従って、このスプール92を軸方向に変位させて、上記加圧ポンプ63に通じる管路と上記圧力導入路94a(94b)とを連通させようとする力は、上記差圧取り出し弁91に設けた1対のパイロット部内に導入された油圧の差|△P|に比例する。この結果、上記加圧用圧力調整弁90の第一、第二のパイロット部に導入される油圧は、上記アクチュエータ10の油圧室80a、80b内の油圧の差|△P|、即ち、トロイダル型無段変速機24(図1参照)を通過する動力に比例する。
又、前記動力低減機能を備えさせる為に設けた、上記加圧用圧力調整弁90の開弁圧は、上記第一、第二のパイロット部に導入される油圧が高くなる程高くなる。そして、機械式の押圧装置23(図27、28参照)に代えて設ける油圧式の押圧装置23a内に導入される油圧は、上記加圧用圧力調整弁90の開弁圧が高くなる程高くなる。従って、上記押圧装置23a内に導入される油圧、延てはこの押圧装置23aが発生する押圧力は、トロイダル型無段変速機24を通過する動力が大きくなる程大きくなる。そして、これと共に、上記加圧用圧力調整弁90から吐出される潤滑油の量が多くなり、トロイダル型無段変速機24の各部に送り込まれる潤滑油の量が多くなる。従って、潤滑油を吐出する為の加圧ポンプ63、79を駆動する動力を無駄に消費する事を防止して、無段変速装置全体としての効率の向上を図れる。
又、上述の様な油圧制御回路で、前記差圧シリンダ83による前記変速比制御弁12を構成するスプール15の変位量、延いては、前述した様な、トロイダル型無段変速機24の変速比の微調整は、前記ノーマルオープン型のロード電磁弁85への通電状態を制御する事により行なう。具体的には、制御用コンピュータが、アクセル開度、セレクトレバーの位置(手動切換弁64の切換位置)、ブレーキ状態等、各種車両状態に応じて、前記出力軸37bに伝達されるトルクの目標値を設定する。そして、この目標値が低い程、上記ロード電磁弁85への印加電圧を高くし、このロード電磁弁85の開度を小さく(開いている瞬間を少なく)して、前記第一、第二の差圧制御弁86、87に導入する油圧を低くする。この結果、これら第一、第二の差圧制御弁86、87を通じて上記差圧シリンダ83に導入される油圧が低くなり、上記差圧シリンダ83による、上記トロイダル型無段変速機24の変速比の補正量は小さくなる。この状態では、上記変速比制御弁12のスプール15がステッピングモータ13により変位させられない限り、上記出力軸37bに伝達されるトルクは(自動車を走行させるには不十分な程度に)低くなる。
逆に、目標値が高い程、上記ロード電磁弁85への印加電圧を低くし、このロード電磁弁85の開度を大きく(開いている瞬間を多く)して、上記第一、第二の差圧制御弁86、87に導入する油圧を高く(例えばライン圧である0.45MPaに)する。この結果、これら第一、第二の差圧制御弁86、87を通じて上記差圧シリンダ83に導入される油圧が高くなり、上記差圧シリンダ83による、上記トロイダル型無段変速機24の変速比の補正量は多くなる。この状態では、上記変速比制御弁12のスプール15がステッピングモータ13により変位させられなくても、上記出力軸37bに伝達されるトルクは、ブレーキペダルを踏んだり、或はパーキングブレーキを作動させていない限り、自動車を低速走行させるのに十分な程度に高くなる。
本実施例の場合、上記ロード電磁弁85として、ノーマルオープン型のものを使用している為、電気的制御回路の故障により上記ロード電磁弁85への通電が断たれる(印加電圧が0になる)と、上記差圧シリンダ83に導入される油圧が最大値になり、上記差圧シリンダ83による、上記トロイダル型無段変速機24の変速比の補正量は最大値になる。この結果、電気的な制御回路の故障時に、上記出力軸37bに伝達されるトルクを、自動車を低速走行させる事が可能な程度に大きくできる。そして、道路上で故障した自動車を、路肩等の安全な場所にまで移動させる事が可能になる。言い換えれば、上記電気的制御回路の故障時には、前記手動切換弁64を走行状態(L、D、R位置)に切り換えれば、自動車を低速走行させられる程度のトルクが、上記出力軸37bに加わる様になる。尚、この様な場合には、運転席前のダッシュボード上等に設けた警告灯や警告ブザー等により、運転者に故障の発生を知らせ、運転者が、退避の為の必要最小限以上の運転を行なわない様にする為の警告を発する事が好ましい。
尚、図7は、上述の様に構成し作用する無段変速装置の低速モード時に設ける、前記トロイダル型無段変速機24を通過するトルクTCVU と前記エンジンが上記入力軸1を回転駆動するトルクTINとの比(左側縦軸)と、無段変速装置全体としての変速比eCVT (横軸)と、上記トロイダル型無段変速機24の変速比eCVU (右側縦軸)との関係を示している。実線aが上記通過トルクTCVU と駆動トルク(エンジントルク)TINとの比と、無段変速装置全体としての変速比eCVT との関係を、破線bが上記両変速比eCVT 、eCVU 同士の関係を、それぞれ示している。本例の場合、上記無段変速装置全体としての変速比eCVT を所定範囲内に規制した状態で、上記トロイダル型無段変速機24を実際に通過するトルクTCVU1を上記実線a上の点で表される目標値(TCVU2)に規制すべく、上記トロイダル型無段変速機24の変速比eCVU を規制する。
図8は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例の場合にも、低速モードと高速モードとの切換時に制御器112が、低速用クラッチ39bと高速用クラッチ40bとのうちの一方のクラッチでそれまで接続されていなかったクラッチの接続を開始するのに先立って、トロイダル型無段変速機24(図1参照)の変速比を調節する。次いで、上記一方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致させてからこの一方のクラッチの接続を開始する。そして、この一方のクラッチの動力伝達が開始されてから、それまで接続されていた他方のクラッチの接続を断つ作業を開始する。そして、この様な機能を持たせる事により、上記一方のクラッチが動力伝達を始めてからこの他方のクラッチの接続が断ち切られる迄の間に、これら両クラッチ39b、40bにより同時に動力の伝達が行なわれる瞬間を設定している。
特に、本実施例の場合には、上記一方のクラッチの動力伝達が開始された事を、このクラッチを接続する際に油圧を導入するクラッチ用油圧室内の油圧により検出する。この為に本実施例の場合には、上記低速用クラッチ39bに付属の低速クラッチ用油圧室60内の油圧を圧力センサである圧力計113aにより、上記高速用クラッチ40bに付属の高速クラッチ用油圧室61内の油圧を圧力センサである圧力計113bにより、それぞれ電気的に検出自在としている。前述の実施例1で説明した図4の実線b及び図5の(A)、(B)の実線αから明らかな通り、それまで接続されていなかった一方のクラッチの動力伝達が開始された事は、当該クラッチに付属したクラッチ用油圧室内の油圧を観察する事により把握できる。そこで上記制御器112は、何れかの圧力計113a(又は113b)からの信号に基づいて、それまで接続されていなかった一方クラッチの動力伝達が開始されたと判断した場合に、それまで接続されていた他方のクラッチの接続を断つ様にする。
この結果、本実施例の場合も、前述した実施例1の場合と同様、図5の(A)に示す様に、上記両クラッチが同時に動力の伝達を行なう瞬間を確実に造り出して、モード切換の際にトロイダル型無段変速機に発生するトルクシフトを緩和できる。
尚、図示は省略するが、それまで接続されていなかった一方のクラッチの動力伝達が開始された事を検出するには、このクラッチを接続する為の駆動部材であるピストンのストローク(変位)を、このピストン若しくはこのピストンと共に変位する部分に設置した、ポテンショメータ等の変位計により検出する事によっても行なえる。
又、本実施例の場合は、低速用、高速用各クラッチ39b、40bの動力伝達が開始された事を、上述の様に圧力センサである圧力計113a、113bにより電気的に検出しているのに対し、前述の図1〜7に示した実施例1の構造の場合には、低速用、高速用各クラッチ39b、40bの動力伝達が開始された事を、これら各クラッチ39b、40bの低速クラッチ用、高速クラッチ用各油圧室60、61内への油圧の導入に伴って切り換わる、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66、70により機械的に検出している。より具体的には、前述の実施例1の構造の場合には、これら低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66、70を構成する低速クラッチ用、高速クラッチ用各圧縮コイルばね68、72の弾力を、低速用クラッチ39bと高速用クラッチ40bとのうちのそれまで接続されていなかった一方のクラッチ(例えば高速用クラッチ40b)が動力伝達を開始してから、それまで接続されていた他方のクラッチ(例えば低速用クラッチ39b)の接続を断たれる様に設定する事により、上記各切換弁66、70に一方のクラッチ40b(39b)が動力伝達を開始した事を検出するのと同等の機能を持たせている。即ち、上記低速用、高速用各クラッチ39b、40bを接続する為に必要な油圧は、これら各クラッチ39b、40bを非接続状態にする為のクラッチ用ばね(リターンスプリング)121a、121b(図3参照)の弾力の大きさにより定まる。言い換えれば、上記各クラッチ39b、40bのクラッチ用油圧室60、61内の油圧とこれら各クラッチ39b、40bを構成するビストンの受圧面積との積が、これら各クラッチ39b、40bのクラッチ用ばね121a、121bの弾力よりも大きくなった時点で、これら各クラッチ39b、40bの接続動作が開始され、動力が伝達され始める。この為、上記一方のクラッチ40b(39b)のピストンが動力伝達を始める位置まで変位するのに必要とする油圧以上の油圧で他方のクラッチ39b(40b)の接続が断たれる様に、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用各圧縮コイルばね68、72の弾力を設定すれば、上記一方のクラッチ40b(39b)の動力伝達が開始された事を(圧力センサを使用する事なく)上記切換弁70(66)により機械的に検出して、この切換弁70(66)により他方のクラッチ39b(40b)の接続を断つ事ができる。
又、後述する図15〜19に示す実施例5〜7の様に、低速クラッチ用、高速クラッチ用各反力室114、115に導入される油圧により、低速クラッチ用、高速クラッチ用各スプール67、71を開放方向に押圧する構造の場合は、これら各反力室114、115と低速クラッチ用、高速クラッチ用各パイロット室69、73との受圧面積の比の設定により、一方のクラッチ40b(39b)のピストンが動力伝達を始める位置まで変位するのに必要とする油圧以上の油圧で、他方のクラッチ39b(40b)の接続が断たれる様にする。この様に構成すれば、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66、70が反力室114、115を有する構造でも、これら各切換弁66、70により、上記一方のクラッチ40b(39b)の動力伝達が開始された事を(圧力センサを使用する事なく)機械的に検出して、これら各切換弁66、70より他方のクラッチ39b(40b)の接続を断つ事ができる。
図9は、請求項1、7、8、22、23に対応する、本発明の実施例3を示している。本実施例の場合には、第一の抵抗手段である第一の絞り97と、第二の抵抗手段である第二の絞り98とを設けて、低速、高速両クラッチ39b、40bのうち、それまで接続が断たれていた一方のクラッチが繋がれてから、それまで接続されていた他方のクラッチの接続が断たれるまでの時間を確実に得られる様にしている。
この為に、上記第一の絞り97を、高速クラッチ用油圧室61内に導入される油圧を、シフト用切換弁74を介して低速クラッチ用切換弁66に付属の低速クラッチ用パイロット室69内に導入する、第一の圧力導入路99の途中に設けている。上記第一の絞り97は、オリフィス、キャピラリチューブ等、圧油の流通に対し抵抗となる部材であれば、何れの構造のものも利用できる。この様な上記第一の絞り97は、上記高速用クラッチ40bに付属の高速クラッチ用油圧室61内に導入された油圧が、上記低速クラッチ用パイロット室69内に導入される事に対する抵抗となり、上記高速クラッチ用油圧室61内の圧力上昇に比べて上記低速クラッチ用パイロット室69内の圧力上昇を遅らせる。
従って、低速モードから高速モードへの切り換えに伴って上記高速クラッチ用油圧室61内に油圧を導入すると、この高速クラッチ用油圧室61内の油圧が迅速に立ち上がって、上記高速クラッチ40bが直ちに繋がれる。これに対して、上記低速クラッチ用パイロット室69内の油圧の立ち上がりは、上記第一の絞り97の存在に基づいて遅れ、上記低速クラッチ用切換弁66の切換が遅れる。この結果、上記低速クラッチ39bの低速クラッチ用油圧室60内の油圧の低下が遅れ、その間、この低速クラッチ39bと上記高速クラッチ40bとの両方が繋がれたままとなる。
又、前記第二の絞り98は、上記低速クラッチ用油圧室60内に導入される油圧を、上記シフト用切換弁74を介して高速クラッチ用切換弁70に付属の高速クラッチ用パイロット室73内に導入する、第二の圧力導入路100の途中に設けている。上記第二の絞り98は、上記第一の絞り97と同様の構造のもので、上記低速用クラッチ39bに付属の低速クラッチ用油圧室60内に導入された油圧が、上記高速クラッチ用パイロット室73内に導入される事に対する抵抗となり、上記低速クラッチ用油圧室60内の圧力上昇に比べて上記高速クラッチ用パイロット室73内の圧力上昇を遅らせる。
従って、高速モードから低速モードへの切り換えに伴って上記低速クラッチ用油圧室60内に油圧を導入すると、この低速クラッチ用油圧室60内の油圧が迅速に立ち上がって、上記低速クラッチ39bが直ちに繋がれる。これに対して、上記高速クラッチ用パイロット室73内の油圧の立ち上がりは、上記第二の絞り98の存在に基づいて遅れ、上記高速クラッチ用切換弁70の切り換えが遅れる。この結果、上記高速クラッチ40bの高速クラッチ用油圧室61内の油圧の低下が遅れ、その間、この高速クラッチ40bと上記低速クラッチ39bとの両方が繋がれたままとなる。
上述の様に本実施例の場合には、上記低速、高速両クラッチ39b、40bのうち、それまで接続が断たれていた一方のクラッチが繋がれてから、それまで接続されていた他方のクラッチの接続が断たれるまでの時間(前述の図4、5のAB間)を確実に得られる。即ち、油圧式の弁の切換の遅延時間を確保して、低速用、高速用両クラッチ39b、40bが接続されている時間を確実に造り出せる。
前記第一の絞り97及び上記第二の絞り98を設ける点以外の構成及び作用は、前述した実施例1と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。尚、上記第一、第二の絞り97、98は、第一、第二の圧力導入路99、100のうち、シフト用切換弁74と、低速クラッチ用、高速クラッチ用各パイロット室69、73との間に設けても良い。但し、この場合には、これら各パイロット室69、73内の油圧を排出する場合に開く逆止弁を、上記第一、第二の絞り97、98と並列に設ける事が好ましい。この理由は、モード切換時に上記各パイロット室69、73内の油圧を迅速に低下させて、上記低速、高速各クラッチ39b、40bが繋がれるまでに要する時間を短くする為である。これに対して、図9に示す様に、上記第一、第二の絞り97、98を、第一、第二の圧力導入路99、100のうち、シフト用切換弁74と、低速クラッチ用、高速クラッチ用各油圧室60、61との間に設ければ、逆止弁が不要になり、コスト低減並びに設置スペース確保の面からは有利である。
図10〜14は、請求項1、3、5、6、7、8、9、10、22に対応する、本発明の実施例4を示している。本実施例の場合には、車両を発進させる際に繋がれるベきではないクラッチである高速クラッチ40bに関する、高速クラッチ用切換弁70aに組み込まれて高速クラッチ用スプール71を弾性的に押圧する、高速クラッチ用弾性部材である高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を可変としている。具体的には、走行状態(走行モード)、即ち、運転席に設けられたシフトレバーにより切り換えられる手動切換弁64がL(ローレンジ)、D(ドライブレンジ)、R(リバースレンジ)の何れかに切り換えられている場合に上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を大きく、非走行状態(非走行モード)、即ち、上記手動切換弁64がN(ニュートラルレンジ)、P(パーキングレンジ)の何れかに切り換えられている場合に上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を小さく設定する様に構成している。
本実施例が、上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を上述の様に可変とした理由は、次の通りである。前述した通り、低速モードと高速モードとの切換時に急な変速比の変動が生じるのを防止する為には、低速用クラッチ39bと高速用クラッチ40bとが同時に繋がれる時間を、短時間造る事が効果がある。この様な目的で構成した、前述の図3に示した実施例1の構造の場合、上記両クラッチ39b、40bが繋がれる時間を確実に造り出す為には、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66、70に組み込んだ、低速クラッチ用、高速クラッチ用各圧縮コイルばね68、72の弾力を大きくする事が好ましい。
これら各圧縮コイルばね68、72の弾力が小さい場合には、油圧配管の構造等によっては、上記各切換弁66、70に組み込んだ低速クラッチ用、高速クラッチ用各スプール67、71が早期に変位し、それまで繋がれていたクラッチの油圧室内の圧力を短時間で排出して、上記両クラッチ39b、40bが繋がれる時間を得られない可能性がある。図13〜14は、この点に関連して、上記手動切換弁64を非走行状態から走行状態に切り換えた状態に就いて行なった実験の結果を示している。このうちの図13は高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力が大きい場合を、図14は同じく小さい場合を、それぞれ示している。又、図13〜14で、全線aは加圧ポンプ63(図3参照)の吐出口部分の油圧を、細線bは低速クラッチ用油圧室60内の油圧を、破線cは高速クラッチ用油圧室61内の油圧を、一点鎖線dは低速クラッチ39bの動き(アクチュエータのストローク)を、二点鎖線eは高速クラッチ40bの動きを、それぞれ示している。この様な図13〜14から明らかな通り、上記各圧縮コイルばね68、72の弾力が小さ過ぎると、上記両クラッチ39b、40bが同時に繋がれる時間を得られないが、上記各圧縮コイルばね68、72の弾力を大きくすれば、上記両クラッチ39b、40bが同時に繋がれる時間を得られる。
ところが、単に上記各圧縮コイルばね68、72の弾力を大きくした場合には、車両の発進時に衝撃が加わると言った、新たな問題を生じる。即ち、停止状態にあった車両を発進させる為に、前記手動切換弁64をN、P位置からL、D、R位置の何れかに切り換えた場合、上記各圧縮コイルばね68、72の弾力が大きいと、上記図13に示す様に、上記両クラッチ39b、40bが同時に繋がれる時間が、短時間とは言え発生する。一方、車両を発進させるべく、上記手動切換弁64をN、P位置からL、D、Rの何れかに切り換えた瞬間には、トロイダル型無段変速機24、24a(図1、30、31)の変速比は、発進の為に適切な変速比となっている。
例えば、図1、30に示したギヤード・ニュートラル型の無段変速装置の場合、上記トロイダル型無段変速機24の変速比は比較的増速側に存在し、図31に示したパワー・スプリット型の無段変速装置の場合、上記トロイダル型無段変速機24aの変速比は最も減速側に存在する。何れの無段変速機の場合も、発進時に於けるトロイダル型無段変速機24、24aの変速比は、上記両クラッチ39b、40bの断接を行なう、モード変更時の状態とは大きく異なる。この様な状態で上記両クラッチ39b、40bが、短時間とは言え同時に繋がれると、無段変速装置の構成各部に無理な力が加わり、運転者を初めとする乗員に不快感を与える様な衝撃が発生する他、構成各部材の耐久性を低下させる。
これに対して本実施例の場合には、上記高速用クラッチ40bに付属の高速クラッチ用油圧室61内への圧油の導入を制御する為の高速クラッチ用切換弁70aに組み込んだ高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を、上記モード変更が行なわれる走行状態でのみ大きくする。逆に言えば、発進時に繋がれるべきでない、上記高速用クラッチ40bに関する、上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を、非走行状態で小さくして、この非走行状態から発進の為の切換の際に、上記高速用クラッチ40bが繋がれない様にしている。上記低速用クラッチ39bに付属の低速クラッチ用油圧室60内への圧油の導入を制御する為の低速クラッチ用切換弁66に組み込んだ低速クラッチ用圧縮コイルばね68の弾力は、大きいままで良い為、特に調節機構は設けていない。
上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力を調節する為に本実施例の場合には、上記高速クラッチ用切換弁70aの端部で高速クラッチ用スプール71を挟んで高速クラッチ用パイロット室73と軸方向反対位置に、シリンダ部101を設け、このシリンダ部101内に押圧ピストン102を、軸方向(図10〜12の左右方向)の変位自在に設けている。上記シリンダ部101の軸方向長さは上記押圧ピストン102よりも少し長く、この押圧ピストン102は、この長さの差分だけ、軸方向に変位自在である。そして、この押圧ピストン102と上記高速クラッチ用スプール71との間に、上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72を配置している。更に、上記シリンダ部101内で上記高速クラッチ用スプール71と反対側部分には、前記手動切換弁64から、絞り103を介して、圧油を導入自在としている。
即ち、上記シリンダ部101内で上記高速クラッチ用スプール71と反対側部分には、上記手動切換弁64が走行状態(L、D、R位置)に切り換えられた状態で、圧油が導入される様にしている。これに対して、上記手動切換弁64が非走行状態(N、P位置)に切り換えられた状態では、上記シリンダ部101内で上記高速クラッチ用スプール71と反対側部分を、油溜62に解放する様にしている。尚、上記絞り103は、上記押圧ピストン102の変位を遅らせて、発進の為に上記手動切換弁64を非走行状態から走行状態に切り換える際に、上記高速用クラッチ40bが繋がれる事を確実に防止する為に設けている。
本実施例の場合、上記高速クラッチ用切換弁70aを上述の様に構成する為、非走行状態では上記押圧ピストン102が、図11に示す様に、上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72に押圧されて、上記シリンダ部101のうちで上記高速クラッチ用スプール71から遠い側(図11の左側)の端部に移動する。この状態では、上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力が小さくなり、上記手動切換弁64が非走行状態(N、P位置)から走行状態(L、D、R位置)に切り換えられた瞬間にも、前述の図14に示す様に、前記高速用クラッチ40bが、短時間でも繋がれる事はなくなる。
これに対して、走行状態では上記押圧ピストン102が、上記シリンダ部101内に導入される油圧により、図12に示す様に、上記シリンダ部101のうちで上記高速クラッチ用スプール71側(図12の右側)の端部に移動する。この状態では、上記高速クラッチ用圧縮コイルばね72の弾力が大きくなる。この結果、例えば高速モードから低速モードへの切り換え時に、上記両クラッチ39b、40bが同時に繋がれる時間を確実に得られる。前述した様に、前記低速クラッチ用切換弁66に組み込んだ低速クラッチ用圧縮コイルばね68の弾力は大きいので、低速モードから高速モードへの切り換え時にも、上記両クラッチ39b、40bが同時に繋がれる時間を確実に得られる。
図15は、請求項1、3、5、6、7、8、12、13、16、22に対応する、本発明の実施例5を示している。本実施例の場合には、低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70を構成する低速クラッチ用、高速クラッチ用両スプール67、71を、それぞれ低速クラッチ用、高速クラッチ用両圧縮コイルばね68、72の弾力に加えて、低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入した油圧によっても、閉鎖方向に押圧している。従って、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧、即ち、低圧クラッチ用油圧室60或は高圧クラッチ用油圧室61を油溜62に連通させる為に、それぞれ低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室69、73に導入する事が必要となる油圧は、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入した油圧に基づいて調節自在である。
本実施例の場合には、高圧側の加圧ポンプ63の吐出口部分の油圧を、電磁比例弁等の、圧力調整機能を備えた電動式の圧力調整弁116a、116bにより所定圧に調整された油圧を、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入する様にしている。尚、これら両反力室114、115内には、単一の圧力調整弁により調整した油圧を導入しても良い。これら両反力室114、115は、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両スプール67、71を挟んで、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室69、73と軸方向反対側に存在する為、上記両反力室114、115内に導入する油圧を高くする程、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧が高くなる。これら両切換弁66、70の開弁圧は、上記両反力室114、115内に導入する油圧や、上記両スプール67、71の軸方向両端部の受圧面積により、設計的に調整する。
本実施例の場合も、運転席に設置したシフトレバーにより走行モード(走行状態)と非走行モード(非走行状態)とに切り換えられる手動切換弁64(図3参照)を備える。そして、この手動切換弁64が非走行モード(非走行状態=Pレンジ或はNレンジ)に切り換えられている場合に、上記両反力室114、115内への圧油の導入を停止する。この状態では、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧が低くなる。そして、この状態から上記手動切換弁64を走行モード(走行状態=Dレンジ或はRレンジ)に切り換えても、前述の図14から明らかな通り、その時点での走行状態で必要とするクラッチのみが繋がれる。言い換えれば、その時点での走行状態で繋がれるべきでないクラッチまで繋がれる事はない。この為、低速モードと高速モードとの切り換えでなく、非走行状態から走行状態に切り換えられた瞬間に、低速用、高速用両クラッチ39b、40bが同時に接続される事を防止して、衝撃が発生して乗員に不快感を与えたり、或は構成各部の耐久性を損なう事を防止できる。
尚、本実施例の場合に、上記手動切換弁64を非走行状態とした場合に、上記高速クラッチ用切換弁70の開弁圧を低くするだけでなく、上記低速クラッチ用切換弁66の開弁圧も低くする理由は、高速走行時に(好ましい事ではないが)、運転者が操作ミス或は惰性走行の為に非走行モード{ニュートラル(N)レンジ}を選択する場合を考慮した為である。この様な場合、非走行モードを選択した後、高速走行状態のまま走行モード{ドライブ(D)レンジ}に戻した場合に、その状態で繋がれるべきでないクラッチ(低速用クラッチ39b)が、短時間とは言え繋がれると、上記衝撃が発生する。これに対して本実施例の場合には、上記手動切換弁64を非走行状態とした場合に、上記高速クラッチ用切換弁70の開弁圧を低くするだけでなく、上記低速クラッチ用切換弁66の開弁圧も低くする為、上記手動切換弁64を走行モードに戻した場合に上記低速用クラッチ39bが繋がれない様にして、上記衝撃が加わる事を防止できる。
尚、走行中に上記手動切換弁64を非走行状態とするのは、高速走行時に限らず、低速走行時である場合も考えられる。従って、上記手動切換弁64を非走行状態とした後、走行したままこの手動切換弁64を走行状態に戻した場合には、非走行モードから走行モードに切り換えられた時点での車速(やエンジンの回転速度)に合わせて、上記低速用クラッチ39bと上記高速用クラッチ40bとのうちの一方のクラッチを繋ぐ。この為に、これら両クラッチ39b、40bの断接を制御する為の制御器に車速(やエンジンの回転速度)を表す信号を入力する。そして、この制御器は、非走行モードから走行モードに切り換えに伴って、電磁切換弁78(図3参照)によりシフト用切換弁74を切り換え、高速走行時(例えば、30km/h以上の場合)には上記高速用クラッチ40bを、低速走行時(例えば、30km/h未満の場合)には上記低速用クラッチ39bを接続する。他方のクラッチは、非接続状態のままとする。何れのクラッチが接続される場合でも、上述の様に非走行モードに切り換えられている場合は低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧は低い為、必要とするクラッチのみが繋がれ、繋がれるべきでないクラッチは繋がれない(両クラッチ39b、40bが同時に繋がれる瞬間はない)。
図16は、請求項1、7、8、12、14、16、22に対応する、本発明の実施例6を示している。本実施例の場合には、高圧側の加圧ポンプ63から吐出され、減圧弁65を通過して圧力低下した油圧を、電磁弁117a、117bの解放に伴って、低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入している。これら両反力室114、115内に導入する油圧を、単一の電磁弁を通過したものとしても良い。又、この電磁弁は、圧力調整弁でも良いが、ON−OFFのみの切換を行なう開閉弁でも良い。その他の構成及び作用は、上述した実施例6と同様である。
図17〜19は、請求項1、3、5、6、7、8、12、15、16、22に対応する、本発明の実施例7を示している。本実施例の場合も、上述した実施例6と同様に、高圧側の加圧ポンプ63から吐出され、減圧弁65を通過して圧力低下した油圧を、低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70に設けた、低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入する様にしている。但し、本実施例の場合には、この導入を、純油圧式に行なう様に構成している。即ち、本実施例の場合には、運転席に設置されたシフトレバーにより、手動切換弁64(図3参照)が走行状態(走行モード)を選択されている場合に、低速用クラッチ39bと高速用クラッチ40bとのうちで繋がれているクラッチに付属のクラッチ用油圧室60、61内に油圧が存在する限り、減圧弁65により所定圧に調整された油圧を、油圧式に切り換わる油圧導入弁118を通じて、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入する様に構成している。
上記油圧導入弁118は、遠近動自在な1対のスプール119a、119bと1個の圧縮コイルばね120とを備える。
低速モード時、上記低速クラッチ用油圧室60内に油圧が存在し、上記高速クラッチ用両油圧室61内に油圧が存在しない場合に上記油圧導入弁118は、図17に示す様に、上記両スプール119a、119bが、互いに遠ざかる方向に変位する。この状態では、上記減圧弁65により所定圧に調整された油圧が、上記油圧導入弁118を通過して、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入される。従って、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧、即ち、低速クラッチ用油圧室60或は高速クラッチ用油圧室61を油溜62に連通させる為に、それぞれ低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室69、73に導入する事が必要となる油圧が高くなる。この結果、上記低速モードから高速モードへの切り換え時に、低速用クラッチ39bと高速用クラッチ40bとが同時に動力を伝達する瞬間を確実に実現できる。
又、高速モード時、上記高速クラッチ用両油圧室61内に油圧が存在し、上記低速クラッチ用油圧室60内に油圧が存在しない場合に上記油圧導入弁118は、図18に示す様に、上記両スプール119a、119bが突き合わされた状態のまま、上記圧縮コイルばね120に抗して変位する。この状態でも、上記減圧弁65により所定圧に調整された油圧が、上記油圧導入弁118を通過して、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115内に導入される。従って、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧、即ち、低速クラッチ用油圧室60或は高速クラッチ用油圧室61を油溜62に連通させる為に、それぞれ低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室69、73に導入する事が必要となる油圧が高くなる。この結果、上記高速モードから低速モードへの切り換え時に、低速用クラッチ39bと高速用クラッチ40bとが同時に動力を伝達する瞬間を確実に実現できる。
これに対して、前記手動切換弁64が非走行状態(非走行モード)を選択されており、低速クラッチ用、高速クラッチ用両油圧室60、61の何れにも油圧が存在しない場合に上記油圧導入弁118は、図19に示す様に、上記両スプール119a、119bが突き合わされた状態のまま、上記圧縮コイルばね120に基づいて(図19の右方に)変位する。この状態では、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室114、115が油溜62に通じ、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70の開弁圧が低くなる。この結果、非走行状態から走行状態に切り換えた場合に、その状態で繋がれるべきでないクラッチが、短時間とは言え繋がれる事を防止して、衝撃が発生する事を防止できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施例5、6と同様である。
次に、図20は、請求項24、25に対応する、本発明の実施例8を示している。本実施例の場合には、低速クラッチ用切換弁66と油溜62との間、並びに、高速クラッチ用切換弁70と油溜62との間に、それぞれ、オリフィス、絞り弁、キャピラリチューブ等の絞り103を設けている。本実施例の場合には、この様な構成により、シフト用切換弁74が切り換えられて、それまで接続されていたクラッチの接続が断たれる前に、それまで接続が断たれていたクラッチの接続が完了する様にしている。
例えば、上記シフト用切換弁74が図20に示した状態に切り換えられ、これに伴って上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両切換弁66、70が同図に示した状態に切り換えられた直後の状態に就いて説明する。この状態では、減圧弁65(図3参照)を通過した圧油が、特に抵抗を受ける事なく、上記低速クラッチ用切換弁66を通過しつつ、低速クラッチ用油圧室60内に送り込まれ、低速用クラッチ39bを極短時間後に接続する。一方、高圧クラッチ用油圧室61内の圧油は、上記高速クラッチ用切換弁70を通過し、上記絞り103による抵抗を受ける事で、上記油溜62に向け、緩徐に排出される。
従って、高速用クラッチ40bの接続が断たれるまでに要する時間は、上記低速用クラッチ39bが接続されるまでに要する時間に比べて長くなる。この結果、それまで接続されていた上記高速用クラッチ40bの接続が断たれる前に、それまで接続が断たれていた上記低速用クラッチ39bの接続が完了する。上記シフト用切換弁74が図20に示した状態とは逆に切り換えられた場合には、上記両クラッチ39b、40bの断接が逆になる以外、同様に作用して、それまで接続されていた上記低速用クラッチ39bの接続が断たれる前に、それまで接続が断たれていた上記高速用クラッチ40bの接続が完了する。この為、前述した実施例1〜7の場合と同様に、モード切換の際に発生するトルクシフトを緩和できる。又、本実施例の場合には、上記両クラッチ39b、40bを短時間同時に接続する為の構造を、簡単な絞りを追加する事で実現しているので、制御が容易で故障しにくい構造を、低コストで実現できる。その他の部分の構成及び作用は、前述の図1〜7に示した実施例1と同様であるから、重複する説明は省略する。
図21は、請求項24〜26に対応する、本発明の実施例9を示している。本実施例の場合には、低速クラッチ用切換弁66と油溜62とを結ぶ低速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分と、高速クラッチ用切換弁70と油溜62とを結ぶ高速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分とを合流して、単一の油圧排出路104を構成している。そして、この単一の油圧排出路104部分に、単一の絞り103を設けている。
この様な構成を有する本実施例の場合、シフト用切換弁74の切換に基づいて低速クラッチ用切換弁66又は高速クラッチ用切換弁70が、低速クラッチ用油圧室60又は高速クラッチ用油圧室61を油溜62に通じさせる状態に切り換えられると、当該油圧室内の圧油を、上記単一の絞り103を通じて上記油溜62に排出する。
この様な本実施例の場合、単一の絞り103により、上記両油圧室60、61内の油圧低下を緩徐に行なわせる事ができて、部品点数、組立工数の削減によりコスト低減と、設置スペースを少なくする事による小型・軽量化とを図れる。
図22は、請求項24、27に対応する、本発明の実施例10を示している。本実施例の場合、図20のF部或はG部の様に、低速クラッチ用油圧室60或は高速クラッチ用油圧室61の近傍で、これら各油圧室60、61内への圧油の給排を行なう油圧路部分の構造を工夫している。具体的には、これら各油圧室60、61内への圧油の送り込みを円滑に行なわせる代わりに、これら各油圧室60、61からの油圧の排出を緩徐に行なわせる様にしている。
例えば、上記低速クラッチ用油圧室60の近傍(図20のF部)で、低速クラッチ側圧力導入路(第二の圧力導入路100)と低速クラッチ側圧力排出路とが合流して単一の低速クラッチ側油圧路105を構成している部分に、上記低速クラッチ用油圧室60内への油圧導入時に開き、この低速クラッチ用油圧室60からの油圧排出時に閉じる低速クラッチ側逆止弁106と低速クラッチ側絞り107とを、互いに並列に設ける。又、上記高速クラッチ用油圧室60の近傍で高速クラッチ側圧力導入路(第一の圧力導入路99)と高速クラッチ側圧力排出路とが合流して単一の高速クラッチ側油圧路108(図13のG部)を構成している部分にも、上記高速クラッチ用油圧室61内への油圧導入時に開き、この高速クラッチ用油圧室61からの油圧排出時に閉じる高速クラッチ側逆止弁と、高速クラッチ側絞り(図示省略)を、互いに並列に設けている。
この様に構成する本実施例の場合も、簡単な構造で、低速用、高速用両クラッチ39b、40b(図20参照)が接続状態から非接続状態に切り換わるのに要する時間を長くして、これら両クラッチ39b、40bが接続されている時間を、短時間造り出せる。
前述の図20に示した実施例8、或は図21に示した実施例9で、絞り103に代えて、低速クラッチ側、高速クラッチ側、両油圧排出路を通過する圧油の流れを所望時間遮断する、電磁弁等の電動弁を設ける事もできる(請求項28、29、30)。モード切換時には、この電動弁を短時間(例えば0.5〜2秒程度)閉じたままにする事で、それまで接続されていたクラッチに関する油圧室内の油圧が低下するまでに要する時間を確保し、両クラッチが同時に接続されている時間を短時間造り出す。
この様な実施例11を実施する場合に、上記電動弁の開閉を、車両の運行状況、即ち、車速、アクセル開度、加速度、減速度、トロイダル型無段変速機を通過するトルク等のうちから選択される1種又は2種以上の要件に応じて制御する。この様な車両の運行状況に応じて上記電動弁が上記油圧排出路を通過する圧油の流れを遮断する時間を調節すれば、上記両クラッチの断接をよりきめ細かに行なって、変速時に生じる衝撃をより一層緩和できる。
図23〜25は、請求項1、3、5、6、7、17〜22に対応する、本発明の実施例12を示している。本実施例の場合には、前述の図1〜7に示した実施例1に対し、低速クラッチ用切換弁66a及び高速クラッチ用切換弁70bの構造を異ならせている。そして、これら各切換弁66a、70bの、低速クラッチ用、高速クラッチ用各パイロット室69a、73a内に導入する油圧の変動に拘らず、上記各切換弁66a、70bの切り換えが所望通りに行なわれる様にしている。
この為に本実施例の場合には、上記低速クラッチ用切換弁66aの両端部に、低速クラッチ用スプール67aを軸方向両側から挟む状態で、低速クラッチ用パイロット室69aと低速クラッチ用反力室109とを設けている。そして、減圧弁65から吐出された圧油を、この低速クラッチ用反力室109内に導入している。これに対して、上記低速クラッチ用パイロット室69a内には、上記減圧弁65から吐出され、シフト用切換弁74の切り換えに伴って、高速クラッチ用切換弁70bを通じ、高速用クラッチ40bの高速クラッチ用油圧室61内に供給される圧油の一部が送り込まれる様にしている。上記低速クラッチ用パイロット室69a側での上記低速クラッチ用スプール67aの受圧面積SL1と、上記低速クラッチ用反力室109側でのこの低速クラッチ用スプール67aの受圧面積SL2とを比較した場合には、上記低速クラッチ用パイロット室69a側での受圧面積の方が大きい(SL1>SL2)。具体的には、上記低速クラッチ用反力室109側での受圧面積SL2と上記低速クラッチ用パイロット室69a側での受圧面積SL1との比を、0.4倍以上1未満(0.4≦SL2/SL1<1)としている。又、上記低速クラッチ用反力室109内には、圧縮コイルばね等のがたつき防止ばね111を設けて、上記低速クラッチ用スプール67aを上記低速クラッチ用パイロット室69a側に向け、軽く押圧している。上記がたつき防止ばね111の弾力は、走行に伴う振動等に拘らず、上記低速クラッチ用スプール67aのがたつき防止を図れる程度の、小さな値とする。
上述の様な構成を有する低速クラッチ用切換弁66aの作用は、次の通りである。先ず、上記シフト用切換弁74が図23に示した様に、低速モード状態に切り換えられると、上記低速クラッチ用パイロット室69aが油溜62に通じ、上記低速クラッチ用反力室109にのみ油圧が導入される。この結果、上記低速クラッチ用スプール67aが、図23に示す様に左端にまで移動し、上記減圧弁65から吐出された圧油を、低速用クラッチ39bの低速クラッチ用油圧室60内に送り込む。これに対して、上記シフト用切換弁74が、図23に示した状態とは逆に、高速モード状態に切り換えられると、次述する高速クラッチ用切換弁70bの切り換えに伴って高速用クラッチ40bの高速クラッチ用油圧室61に圧油が供給される。そして、この圧油の一部が、上記シフト用切換弁74を通じて上記低速クラッチ用パイロット室69aに送り込まれる。
上述した様に、上記低速クラッチ用スプール67aの受圧面積は、この低速クラッチ用パイロット室69a側で大きく、上記低速クラッチ用反力室109側で小さい為、上記低速クラッチ用スプール67aは図23に示した状態とは逆に、右端にまで移動する。この結果、上記低速クラッチ用油圧室60が上記油溜62に通じ、上記低速用クラッチ39bの接続が断たれる。この際、低速用クラッチ39bの接続が断たれる瞬間が、上記高速用クラッチ40bが接続される瞬間よりも少し遅れる事は、前述した実施例1の場合と同様である。
又、高速クラッチ用切換弁70bの両端部に、高速クラッチ用スプール71aを軸方向両側から挟む状態で、高速クラッチ用パイロット室73aと高速クラッチ用反力室110とを設けている。そして、減圧弁65から吐出された圧油を、この高速クラッチ用反力室110内に導入している。これに対して、上記高速クラッチ用パイロット室73a内には、上記減圧弁65から吐出され、上記シフト用切換弁74の切り換えに伴って、低速クラッチ用切換弁66aを通じ、上記低速用クラッチ39bの低速クラッチ用油圧室60内に供給される圧油の一部が送り込まれる様にしている。上記高速クラッチ用パイロット室73a側での上記高速クラッチ用スプール71aの受圧面積SH1と、上記高速クラッチ用反力室110側でのこの高速クラッチ用スプール71aの受圧面積SH2とを比較した場合には、上記高速クラッチ用パイロット室73a側での受圧面積の方が大きい(SH1>SH2)。具体的には、上記高速クラッチ用反力室110側での受圧面積SH2と上記高速クラッチ用パイロット室73a側での受圧面積SH1との比を、0.4倍以上1未満(0.4≦SH2/SH1<1)としている。又、上記高速クラッチ用反力室110内にも、前記低速クラッチ用反力室109と同様に、圧縮コイルばね等のがたつき防止ばね111を設けている。
上述の様な構成を有する高速クラッチ用切換弁70bの作用は、次の通りである。先ず、上記シフト用切換弁74が図23に示した状態とは逆に、高速モード状態に切り換えられると、上記高速クラッチ用パイロット室73aが油溜62に通じ、上記高速クラッチ用反力室110にのみ油圧が導入される。この結果、上記高速クラッチ用スプール71aが、図23に示した状態とは逆に、右端にまで移動し、上記減圧弁65から吐出された圧油を、高速用クラッチ40bの高速クラッチ用油圧室61内に送り込む。これに対して、上記シフト用切換弁74が、図23に示した様に、低速モード状態に切り換えられると、上記低速クラッチ用切換弁66aの切り換えに伴って低速用クラッチ39bの低速クラッチ用油圧室60に圧油が供給される。そして、この圧油の一部が、上記シフト用切換弁74を通じて上記高速クラッチ用パイロット室73aに送り込まれる。
上述した様に、上記高速クラッチ用スプール71aの受圧面積は、この高速クラッチ用パイロット室73a側で大きく、上記高速クラッチ用反力室110側で小さい為、上記高速クラッチ用スプール71aは図23に示した様に、左端にまで移動する。この結果、上記高速クラッチ用油圧室61が上記油溜62に通じ、上記高速用クラッチ40bの接続が断たれる。この際、高速用クラッチ40bの接続が断たれる瞬間が、上記低速用クラッチ39bが接続される瞬間よりも少し遅れる事は、前述した実施例1の場合と同様である。
上述の様に構成する本実施例の場合、基本的な構成は前述した実施例1と同様である。異なる点は、この実施例1の場合、低速クラッチ用、高速クラッチ用、各切換弁66a、70bを構成する、低速クラッチ用、高速クラッチ用、各スプール67a、71aを押圧する力を、低速クラッチ用、高速クラッチ用、各圧縮コイルばね68、72(図3参照)により得ているのに対して、本実施例の場合には、低速クラッチ用、高速クラッチ用、各反力室109、110内に導入した油圧により得ている点である。この様な構成を採用する事により本実施例の場合には、油圧変動に関係なく、上記低速クラッチ用切換弁66aと上記高速クラッチ用切換弁70bとの切り換えを確実に行なえる様にしている。この点に就いて、図24〜25を参照しつつ説明する。
図24は、モード切換時に於ける、低速クラッチ用、高速クラッチ用、各油圧室60、61内の油圧の変化を示している。図24のうちの(A)は、理論曲線を、(B)は実際の測定結果を、それぞれ示している。モード切換時には、前記シフト用切換弁74の切換に伴ってそれまで上記油溜62に通じていた油圧室の油圧が、実線イで示す様に立ち上がり始め、この油圧が、それまで接続されていなかった何れか一方のクラッチの油圧室内に導入されると同時に、それまで接続されていた他方のクラッチを断接させる為のクラッチ用切換弁のパイロット室内に導入される。但し、このパイロット室内の油圧上昇は、上記それまで接続されていなかった何れか一方のクラッチを接続する為に、このクラッチの構成部材を変位させる間は停滞{実際の場合には図24の(B)のαに示す様に一時的に低下}する。
そして、上記それまで接続されていなかった何れか一方のクラッチの構成部材が変位し切って、上記パイロット室内に導入される油圧が更に上昇し、このパイロット室内に導入される油圧が、図24の(A)に破線ロで示した所定圧よりも大きくなると、上記クラッチ用スプールが変位し始める。この所定圧は、前記がたつき防止用ばね111の弾力を無視すれば、前記減圧弁65から吐出される圧油の圧力Pと、クラッチ用スプールのうちで反力室側の受圧面積とパイロット室側の受圧面積との比との積(P・SL2/SL1或はP・SH2/SH1)である。この様にして、上記それまで接続されていなかった何れか一方のクラッチに関するクラッチ用スプールが変位し、この何れか一方のクラッチが繋がれ始めると、上記それまで接続されていた他方のクラッチに関するクラッチ用油圧室が上記油溜62に通じさせられて、このそれまで接続されていた他方のクラッチに関するクラッチ用油圧室内の油圧が、図24の(A)に鎖線ハで示す様に低下し始め、上記他方のクラッチの接続が断たれる。尚、実際の場合にこの他方のクラッチに関するクラッチ用油圧室内の油圧は、図24の(B)に鎖線ハで示す様に、一時的に低下した後に上昇してから、再び低下し始める。この様に上記他方のクラッチに関するクラッチ用油圧室内の油圧が一時的に低下する理由は、上記一方のクラッチの構成部材を変位させる為に圧油が消費される為である。
何れにしても、図24の(A)(B)の実線イと鎖線ハとから明らかな通り、上記一方と他方とのクラッチの断接時には、これら両方のクラッチが接続されている瞬間が存在する。従って、前述の実施例1部分での説明から明らかな通り、モード切換時に変速ショック等が生じて運転者を含む乗員に不快感を与える事がない。又、何れのクラッチも接続されていない瞬間が存在しない為、無負荷状態となったエンジンの回転速度が急激に上昇する(吹き上がる)事もなくなる。尚、この様なエンジンの回転速度の急激な上昇は、その後何れかのクラッチが接続された瞬間に大きな衝撃を生じ、乗員に不快感を与える他、無段変速装置の構成各部材の耐久性を損なう原因となる。本実施例を含め、本発明によれば、この様な不都合を生じる事はない。
又、本実施例の場合には、何らかの原因で前記減圧弁65から吐出される圧油の油圧が変動しても、上記各クラッチの断接を確実に行なえる。即ち、この油圧の変動に拘らず、それまで接続されていなかったクラッチを接続してから、それまで接続されていたクラッチの接続を断つ事ができる。例えば、上記油圧が低下する結果、上記一方のクラッチに関する油圧室内に導入される油圧が、上記実線イから破線ニに示す様になった場合には、上記一方のクラッチに関するクラッチ用スプールが変位し始める所定圧も、図24の(A)の破線ロ位置から破線ホ位置にまで低下する。そして、上記両クラッチの断接を、油圧が低下しない場合と同様に行なえる。この点で本実施例の場合には、前記低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66、70が切り換えられる油圧が、低速クラッチ用、高速クラッチ用各圧縮コイルばね68、72(図3参照)の弾力に基づいて規制される、前述の実施例1の場合に比べて、信頼性を良好にできる。
この点に就いて、図25により説明する。この図25中の実線αは、それまで接続されていなかった一方のクラッチに関するクラッチ用油圧室部分の油圧を、同じく破線βはクラッチ用切換弁が切り換えられる油圧を、同じく鎖線γはそれまで接続されていた他方のクラッチに関するクラッチ用油圧室部分の油圧を、それぞれ示している。実施例1の構造の場合、図25の(A)に示す様に、クラッチ用切換弁が切り換えられる油圧と各クラッチ用油圧室部分に導入される油圧との関係が適切であれば問題はない。これに対して、上記各圧縮コイルばね68、72の弾力が低過ぎたり、上記各クラッチ用油圧室部分に導入される油圧が高過ぎる等、上記クラッチ用切換弁が切り換えられる油圧がこれら各クラッチ用油圧室部分に導入される油圧に比べて低過ぎる(クラッチ用切換弁の切り換えが簡単に行なわれ過ぎる)場合には、図25の(B)の様になる。この場合には、両方のクラッチの接続が同時に断たれる瞬間が存在する様になって、変速ショックが発生する。更に、上記各圧縮コイルばね68、72の弾力が高過ぎたり、上記各クラッチ用油圧室部分に導入される油圧が低過ぎる等、上記クラッチ用切換弁が切り換えられる油圧がこれら各クラッチ用油圧室部分に導入される油圧に比べて高過ぎる(クラッチ用切換弁が切り換わりにくい)場合には、図25の(C)の様になる。この場合には、モード切り換えの為の信号が出ても、低速用、高速用各クラッチ39b、40b(図3参照)が断接されなくなる。
前述した実施例1の場合には、この様な問題を生じない様に、前記減圧弁65の設定圧や、上記各圧縮コイルばね68、72の弾力を適切に規制する必要がある。又、長期間に亙る使用によっても、上記設定圧や弾力が変動しない様に、材質を含めて選定する必要がある。これに対して本実施例の場合には、この様な考慮を払わなくても、上記低速用、高速用各クラッチ39b、40bの断接を適切に行なわせる事ができる。
図26は、請求項1、3、5、6、7、8、12、14、16、17〜22に対応する、本発明の実施例13を示している。本実施例は、上述の図23〜25に示した実施例12に、前述の図16に示した実施例6を組み合わせた如き構造としている。即ち、本実施例の場合は、高圧側の加圧ポンプ63から吐出され、減圧弁65を通過した油圧を、電磁弁117a、117bの開放に伴って、低速クラッチ用、高速クラッチ用両反力室109、110内に導入する様にしている。この様な本実施例の場合は、モード切換時に、低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66a、70bの開放圧を上げるべく、上記各電磁弁117a、117bを開放する事により、上記各反力室109、110内に油圧を導入する。又、発進時には、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用各切換弁66a、70bの開放圧を下げるべく、上記各電磁弁117a、117bを閉鎖する事により、上記各反力室109、110内の油圧を排出する。この様な電磁弁117a、117bの制御は、車速に基づいて行なう他、トロイダル型無段変速機24、24a(図1等参照)の変速比に基づいて行なう事もできる。即ち、上記トロイダル型無段変速機24、24aの変速比は、発進時とモード切換時とで大きく異なる。この為、上記トロイダル型無段変速機24、24aの変速比に基づいて上記各電磁弁117a、117bの制御を行なう場合には、この変速比がモード切換を行なう値に近付いた場合に、上記各電磁弁117a、117bを開放して上記各反力室109、110内に圧油を導く様にすれば良い。この様に構成すれば、モード切換時に低速用、高速用両クラッチ39b、40bが同時に動力を伝達する時間を得る(一方のクラッチの接続が断たれる瞬間を他方のクラッチが接続される瞬間よりも少し遅らせる)事ができると共に、発進時には繋がれるべきでないクラッチが繋がれる事を防止できる。その他の構成及び作用は、上述した実施例12並びに前述した実施例6と同様である。
以上の説明では、本発明を、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせる事により、クラッチの切換なしで、後退から停止更には前進状態までを実現する、ギヤード・ニュートラル型と呼ばれる無段変速装置に適用した場合に就いて説明した。但し、本発明は、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせる事により、低速走行時にはトロイダル型無段変速機のみで動力を伝達し、高速走行時には遊星歯車式変速機により主動力を伝達すると共にトロイダル型無段変速機により変速比の調節を行なわせる、所謂パワー・スプリット型と呼ばれる無段変速装置に組み込んだ構造に適用する事もできる。又、自動車用の自動変速機としてだけでなく、各種産業用の変速機としても利用できる。更には、トロイダル型無段変速機も、図示の様なハーフトロイダル型のものに限らず、フルトロイダル型のものでも良い。
本発明の対象となる無段変速装置の1例を示す、半部略断面図。 無段変速装置(T/M)全体としての変速比と、この無段変速装置に組み込んだトロイダル型無段変速機(CVU)の変速比との関係を示す線図。 本発明の実施例1を示す、変速比制御の為の油圧回路図。 モード切換時に於ける各部の作動状態を示す線図。 モード切換時に於ける低速クラッチ用、高速クラッチ用両油圧室部分の油圧変化の2例を示す線図。 エンジンの回転速度とトルクとに応じて無段変速装置全体としての変速比を変える状態を説明する為の線図。 低速モード時にトロイダル型無段変速機を通過するトルク及び変速比と、無段変速装置全体としての変速比との関係を示す線図。 本発明の実施例2を示す、図3のA部にほぼ相当する油圧回路図。 本発明の実施例3を示す、図3のA部に相当する油圧回路図。 同実施例4を示す、図3のB部に相当する油圧回路図。 非走行状態を示す、図10のC部に相当する図。 走行状態を示す、図11と同様の図。 高速クラッチ用圧縮コイルばねの弾力を大きくした状態での、非走行状態から走行状態への切換時に於ける各部の動きを示す線図。 同じく弾力を小さくした状態での、非走行状態から走行状態への切換時に於ける各部の動きを示す線図。 本発明の実施例5を示す、図8と同様の図。 同実施例6を示す、図8と同様の図。 同実施例7を、低速モードの状態で示す、図8と同様の図。 高速モードの状態で示す、図17と同様の図。 非走行状態で示す、図17と同様の図。 本発明の実施例8を示す、図9と同様の図。 同実施例9を示す、図9と同様の図。 同実施例10を示す、図20のF部に相当する図。 同実施例12を示す、図3のA部に相当する油圧回路図。 クラッチ切換時の各部の圧力を示す線図。 実施例1の場合のクラッチの切換時の各部の圧力を示す線図。 本発明の実施例13を示す、図23と同様の図。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の1例を示す断面図。 図27のD−D断面図。 同E−E断面図。 従来から知られている無段変速装置の第1例を示す略断面図。 同第2例を示す略断面図。
符号の説明
1 入力軸
2 入力側ディスク
3 ボールスプライン
4 出力歯車
5、5a 出力側ディスク
6 パワーローラ
7 トラニオン
8 支持軸
9 枢軸
10 アクチュエータ
11 支持板
12 制御弁
13 ステッピングモータ
14 スリーブ
15 スプール
16 ピストン
17 ロッド
18 プリセスカム
19 リンク腕
20 同期ケーブル
21 カム面
22 駆動軸
23、23a 押圧装置
24、24a トロイダル型無段変速機
25、25a、25b 遊星歯車式変速機
26、26a キャリア
27a、27b 遊星歯車素子
28 第一の伝達軸
29a、29b 太陽歯車
30 第二の伝達軸
31、31a 中空回転軸
32 太陽歯車
33 遊星歯車素子
34、34a リング歯車
35 第二のキャリア
36a、36b 遊星歯車素子
37、37a、37b 出力軸
38、38a 第二のリング歯車
39、39a、39b 低速用クラッチ
40、40a、40b 高速用クラッチ
41 リング歯車
42 エンジン
43 クランクシャフト
44 発進クラッチ
45 太陽歯車
46a、46b 遊星歯車素子
47 キャリア
48 第一の動力伝達機構
49 伝達軸
50 伝達軸
51 後退用クラッチ
52a、52b 遊星歯車素子
53a、53b 遊星歯車素子
54 伝達軸
55 第一の太陽歯車
56 第二の太陽歯車
57 第三の太陽歯車
58 第二のキャリア
59a、59b 遊星歯車素子
60 低速クラッチ用油圧室
61 高速クラッチ用油圧室
62 油溜
63 加圧ポンプ
64 手動切換弁
65 減圧弁
66、66a 低速クラッチ用切換弁
67、67a 低速クラッチ用スプール
68 低速クラッチ用圧縮コイルばね
69、69a 低速クラッチ用パイロット室
70、70a、70b 高速クラッチ用切換弁
71、71a 高速クラッチ用スプール
72 高速クラッチ用圧縮コイルばね
73、73a 高速クラッチ用パイロット室
74 シフト用切換弁
75 切換用スプール
76 切換用パイロット室
77 切換用圧縮コイルばね
78 電磁切換弁
79 第二の加圧ポンプ
80a、80b 油圧室
81 ロッド
82 リンク腕
83 差圧シリンダ
84a、84b 油圧室
85 ロード電磁弁
86 第一の差圧制御弁
87 第二の差圧制御弁
88 前後進切換弁
89 電磁弁
90 加圧用圧力調整弁
91 差圧取り出し弁
92 スプール
93a、93b パイロット室
94a、94b 圧力導入路
95a、95b 反力室
96 シリンダ
97 第一の絞り
98 第二の絞り
99 第一の圧力導入路
100 第二の圧力導入路
101 シリンダ部
102 押圧ピストン
103 絞り
104 油圧排出路
105 低速クラッチ側油圧路
106 低速クラッチ側逆止弁
107 低速クラッチ側絞り
108 高速クラッチ側油圧路
109 低速クラッチ用反力室
110 高速クラッチ用反力室
111 がたつき防止ばね
112 制御器
113a、113b 圧力計
114 低速クラッチ用反力室
115 高速クラッチ用反力室
116a、116b 圧力調整弁
117a、117b 電磁弁
118 油圧導入弁
119a、119b スプール
120 圧縮コイルばね
121a、121b クラッチ用ばね

Claims (31)

  1. トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、このクラッチ装置は、減速比を大きくする低速モードを実現する際に接続されて同じく小さくする高速モードを実現する際に接続を断たれる低速用クラッチと、この高速モードを実現する際に接続されて上記低速モードを実現する際に接続を断たれる高速用クラッチと、これら各クラッチの断接状態を切り換える制御器とから成り、この制御器は、これら各クラッチの断接を制御する事により、変速状態を上記低速モードと上記高速モードとのうちの何れかのモードにするものである無段変速装置に於いて、上記制御器に、上記低速モードと上記高速モードとの切換時に、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとのうちの一方のクラッチでそれまで接続されていなかったクラッチの接続を開始するのに先立って、上記トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、上記一方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致させてからこの一方のクラッチの接続を開始し、この一方のクラッチの動力伝達が開始されてから、それまで接続されていた他方のクラッチの接続を断つ作業を開始する機能を持たせる事により、上記一方のクラッチが動力伝達を始めてからこの他方のクラッチの接続が断ち切られる迄の間に、これら両クラッチにより同時に動力の伝達が行なわれる瞬間を設定した事を特徴とする無段変速装置。
  2. 一方のクラッチの動力伝達が開始された事を、このクラッチを接続する為の駆動部材の変位により検出する、請求項1に記載した無段変速装置。
  3. 低速用クラッチは低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものであり、高速用クラッチは高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものであり、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチのうちの一方のクラッチの動力伝達が開始された事を、このクラッチを接続する際に油圧を導入するクラッチ用油圧室内の油圧により検出する、請求項1に記載した無段変速装置。
  4. クラッチ用油圧室内の油圧の検出を、圧力センサにより電気的に行なう、請求項3に記載した無段変速装置。
  5. クラッチ用油圧室内の油圧の検出を機械的に行なうべく、このクラッチ用油圧室内への油圧の導入に伴って切り換わる切換弁を備え、この切換弁を構成するスプールは、上記クラッチ用油圧室内への油圧導入と共に変位するものであり、このスプールの変位に基づき他方のクラッチのクラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させる、請求項3に記載した無段変速装置。
  6. 低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する低速クラッチ用スプールを備えた低速クラッチ用切換弁により制御されるものであり、高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する高速クラッチ用スプールを備えた高速クラッチ用切換弁により制御されるものであり、上記低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態と上記高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態とは、切換用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する切換用スプールを備えたシフト用切換弁により制御されるものであり、上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態は、シフト用電動切換弁により制御されるものであり、上記低速クラッチ用切換弁は、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って低速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるもので、この低速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧が、高速クラッチ用油圧室内に導入される油圧であり、上記高速クラッチ用切換弁は、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って高速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるもので、この高速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧が、低速クラッチ用油圧室内に導入される油圧である、請求項5に記載した無段変速装置。
  7. トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、このクラッチ装置は、減速比を大きくする低速モードを実現する際に接続されて同じく小さくする高速モードを実現する際に接続を断たれる低速用クラッチと、この高速モードを実現する際に接続されて上記低速モードを実現する際に接続を断たれる高速用クラッチと、これら各クラッチの断接状態を切り換える制御器とから成り、この制御器は、これら各クラッチの断接を制御する事により、変速状態を上記低速モードと上記高速モードとのうちの何れかのモードにするものである無段変速装置に於いて、上記低速用クラッチは低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものであり、上記高速用クラッチは高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続されるものであり、上記低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する低速クラッチ用スプールを備えた低速クラッチ用切換弁により制御されるものであり、上記高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入状態は、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って変位する高速クラッチ用スプールを備えた高速クラッチ用切換弁により制御されるものであり、上記低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態と上記高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入状態とは、切換用パイロット室内への油圧導入により切換用弾性部材の弾力に抗して変位する切換用スプールを備えたシフト用切換弁により制御されるものであり、上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態は、シフト用電動切換弁により制御されるものであり、上記制御器は、上記低速モードと上記高速モードとの切換時に、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとのうちでそれまで接続されていた一方のクラッチの接続を断つべく、上記シフト用電動切換弁により上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態を切り換えて上記切換用スプールを変位させ、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室内への油圧導入状態を切り換えるのに先立って、上記トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、それまで接続されていなかった他方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致させてから、上記シフト用電動切換弁により上記切換用パイロット室内への油圧の導入状態を切り換えて上記切換用スプールを変位させ、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用両パイロット室内への油圧導入状態を切り換え、この切り換えに伴って油圧が導入されたパイロット室に対応する上記低速クラッチ用スプール又は上記高速クラッチ用スプールが変位する間、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとの両方のクラッチを接続する機能を有する事を特徴とする無段変速装置。
  8. 高速クラッチ用切換弁が、高速クラッチ用スプールを挟んで高速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に高速クラッチ用弾性部材を備えており、上記高速クラッチ用スプールは、この高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記高速クラッチ用弾性部材の弾力に抗して変位するものであり、低速クラッチ用切換弁が、低速クラッチ用スプールを挟んで低速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に低速クラッチ用弾性部材を備えており、上記低速クラッチ用スプールは、この低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記低速クラッチ用弾性部材の弾力に抗して変位するものである、請求項6、7の何れかに記載した無段変速装置。
  9. 低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、少なくとも発進時に繋がれるベきではないクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁に組み込まれてクラッチ用スプールを弾性的に押圧するクラッチ用弾性部材の弾力を、走行状態で大きく、非走行状態で小さく設定する、請求項8に記載した無段変速装置。
  10. クラッチ用弾性部材がクラッチ用圧縮コイルばねであり、このクラッチ用圧縮コイルばねが、クラッチ用スプールと、このクラッチ用スプールを挟んでクラッチ用パイロット室と軸方向反対位置に設けたシリンダ部内に軸方向変位自在に設けられた押圧ピストンとの間に設けられており、この押圧ピストンは、走行状態が選択された場合に、上記シリンダ部内に導入される油圧により上記クラッチ用スプール側に変位して上記クラッチ用圧縮コイルばねの弾力を大きくし、非走行状態が選択されて上記シリンダ部内の油圧が排除された場合に、上記クラッチ用スプールから離れる側に変位して上記クラッチ用圧縮コイルばねの弾力を小さくする、請求項9に記載した無段変速装置。
  11. 運転席に設置したシフトレバーにより走行モードと非走行モードとに切り換えられる手動切換弁を備え、低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、発進時に繋がれるベきではないクラッチだけでなく、発進時に繋がれるべきクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁に組み込まれてクラッチ用スプールを弾性的に押圧するクラッチ用弾性部材の弾力に就いても、上記手動切換弁が走行モードに切り換えられた状態で大きく、この手動切換弁が非走行モードに切り換えられた状態で小さくする、請求項9〜10の何れかに記載した無段変速装置。
  12. 低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、少なくとも発進時に繋がれるベきではないクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁に、このクラッチ用切換弁を構成するクラッチ用スプールを挟んで、このクラッチ用切換弁を構成するクラッチ用パイロット室と軸方向反対側に反力室を備えており、内部に導入された油圧に基づいて上記クラッチ用スプールを上記クラッチ用パイロット室側に押圧する上記反力室内の油圧を、走行状態で大きく、非走行状態で小さく設定する、請求項6、7の何れかに記載した無段変速装置。
  13. 加圧ポンプの吐出口に通じる部分から取り出されて、電動式の圧力調整弁により所定圧に調整された油圧を反力室内に導入する、請求項12に記載した無段変速装置。
  14. 加圧ポンプの吐出口から送り出されて減圧弁を通過して圧力低下した油圧を、電動式の圧力調整弁若しくは開閉弁を通じて反力室内に導入する、請求項12に記載した無段変速装置。
  15. 加圧ポンプの吐出口から送り出されて減圧弁を通過して圧力低下した油圧を、高速用クラッチと低速用クラッチとのうちで繋がれているクラッチに付属のクラッチ用油圧室内の油圧に基づいて切り換わる油圧式の弁を通じて反力室内に導入する、請求項12に記載した無段変速装置。
  16. 運転席に設置したシフトレバーにより走行モードと非走行モードとに切り換えられる手動切換弁を備え、低速、高速各クラッチ用切換弁のうち、発進時に繋がれるベきではないクラッチだけでなく、発進時に繋がれるべきクラッチに付属のクラッチ用油圧室内に油圧を導入する際に開かれるクラッチ用切換弁の反力室内の油圧に就いても、上記手動切換弁が走行モードに切り換えられた状態で大きく、この手動切換弁が非走行モードに切り換えられた状態で小さくする、請求項12〜15の何れかに記載した無段変速装置。
  17. 高速クラッチ用切換弁が、高速クラッチ用スプールを挟んで高速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に高速クラッチ用反力室を備えており、上記高速クラッチ用スプールは、この高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記高速クラッチ用反力室内に導入された油圧に抗して変位するものであり、低速クラッチ用切換弁が、低速クラッチ用スプールを挟んで低速クラッチ用パイロット室と軸方向反対側に低速クラッチ用反力室を備えており、上記低速クラッチ用スプールは、この低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って上記低速クラッチ用反力室内に導入された油圧に抗して変位するものである、請求項6、7の何れかに記載した無段変速装置。
  18. 高速クラッチ用スプールのうちで高速クラッチ用パイロット室側の受圧面積が高速クラッチ用反力室側の受圧面積よりも広く、これら高速クラッチ用パイロット室と高速クラッチ用反力室とに同じ油圧を導入自在としており、低速クラッチ用スプールのうちで低速クラッチ用パイロット室側の受圧面積が低速クラッチ用反力室側の受圧面積よりも広く、これら低速クラッチ用パイロット室と低速クラッチ用反力室とに同じ油圧を導入自在としている、請求項17に記載した無段変速装置。
  19. 高速クラッチ用パイロット室と、高速クラッチ用反力室と、低速クラッチ用パイロット室と、低速クラッチ用反力室とに導入される油圧が、高速クラッチ用、低速クラッチ用両油圧室内に導入される油圧である、請求項18に記載した無段変速装置。
  20. 高速クラッチ用反力室側の受圧面積と高速クラッチ用パイロット室側の受圧面積との比、及び、低速クラッチ用反力室側の受圧面積と低速クラッチ用パイロット室側の受圧面積との比が、何れも0.4以上1未満である、請求項18〜19の何れかに記載した無段変速装置。
  21. 高速クラッチ用スプールを高速クラッチ用パイロット室側に押圧する高速クラッチ用がたつき防止ばねを高速クラッチ用反力室内に、低速クラッチ用スプールを低速クラッチ用パイロット室側に押圧する低速クラッチ用がたつき防止ばねを低速クラッチ用反力室内に、それぞれ設けている、請求項17〜20の何れかに記載した無段変速装置。
  22. 低速クラッチ用切換弁が、低速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って低速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるもので、この低速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧が、高速クラッチ用油圧室内に導入される油圧であり、高速クラッチ用切換弁が、高速クラッチ用パイロット室内への油圧導入に伴って高速クラッチ用油圧室に導入する油圧を低下させるもので、この高速クラッチ用パイロット室内に導入される油圧が、低速クラッチ用油圧室内に導入される油圧である、請求項7〜21の何れかに記載した無段変速装置。
  23. 高速クラッチ用油圧室内に導入される油圧を低速クラッチ用パイロット室内に導入する第一の圧力導入路の途中に、圧油の通過に対して抵抗となり、上記高速クラッチ用油圧室内の圧力上昇に比べて上記低速クラッチ用パイロット室内の圧力上昇を遅らせる第一の抵抗手段を、低速クラッチ用油圧室内に導入される油圧を高速クラッチ用パイロット室内に導入する第二の油圧導入路の途中に、圧油の通過に対して抵抗となり、上記低速クラッチ用油圧室内の圧力上昇に比べて上記高速クラッチ用パイロット室内の圧力上昇を遅らせる第二の抵抗手段を、それぞれ設けた、請求項22に記載した無段変速装置。
  24. トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、このクラッチ装置は、減速比を大きくする低速モードを実現する際に接続されて同じく小さくする高速モードを実現する際に接続を断たれる低速用クラッチと、この高速モードを実現する際に接続されて上記低速モードを実現する際に接続を断たれる高速用クラッチと、これら各クラッチの断接状態を切り換える制御器とから成り、この制御器は、これら各クラッチの断接を制御する事により、変速状態を上記低速モードと上記高速モードとのうちの何れかのモードにするものである無段変速装置に於いて、上記低速モードと上記高速モードとの切換時に、上記低速用クラッチと上記高速用クラッチとのうちでそれまで接続されていた一方のクラッチの接続を断つのに先立って、上記トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、それまで接続されていなかった他方のクラッチを介して接続される1対の部材同士の回転速度を略一致させ、この他方のクラッチを接続してから、上記一方のクラッチの接続を断つ機能を上記制御器に持たせるべく、上記低速用クラッチを、低速クラッチ側圧力導入路を通じての低速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続され、低速クラッチ側圧力排出路を通じてのこの低速クラッチ用油圧室からの油圧排出により接続を断たれるものとし、高速用クラッチを、高速クラッチ側圧力導入路を通じての高速クラッチ用油圧室内への油圧の導入により接続され、高速クラッチ側圧力排出路を通じてのこの高速クラッチ用油圧室からの油圧排出により接続を断たれるものとし、上記低速クラッチ側、高速クラッチ側各圧力導入路の抵抗に比べて、上記低速クラッチ側、高速クラッチ側各圧力排出路の抵抗を大きくする事により、上記低速用、高速用各クラッチが非接続状態から接続状態に迄切り換わるのに要する時間に比べて、これら各クラッチが接続状態から非接続状態に迄切り換わるのに要する時間を長くした事を特徴とする無段変速装置。
  25. 低速クラッチ側油圧排出路の途中に、この低速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れに対して抵抗となる低速クラッチ側絞りを設けると共に、高速クラッチ側油圧排出路の途中に、この高速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れに対して抵抗となる高速クラッチ側絞りを設けた、請求項24に記載した無段変速装置。
  26. 低速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分と高速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分とが合流して単一の油圧排出路を構成しており、この単一の油圧排出路部分に設けた単一の絞りに、低速クラッチ側絞りとしての機能と高速クラッチ側絞りとしての機能とを合わせ持たせた、請求項25に記載した無段変速装置。
  27. 低速クラッチ用油圧室の近傍で低速クラッチ側圧力導入路と低速クラッチ側圧力排出路とが合流して単一の低速クラッチ側油圧路を構成している部分に、低速クラッチ側絞りと、上記低速クラッチ用油圧室内への油圧導入時に開き、この低速クラッチ用油圧室内からの油圧排出時に閉じる低速クラッチ側逆止弁とを互いに並列に設けると共に、高速クラッチ用油圧室の近傍で高速クラッチ側圧力導入路と高速クラッチ側圧力排出路とが合流して単一の高速クラッチ側油圧路を構成している部分に、高速クラッチ側絞りと、上記高速クラッチ用油圧室内への油圧導入時に開き、この高速クラッチ用油圧室内からの油圧排出時に閉じる高速クラッチ側逆止弁とを互いに並列に設けた、請求項24に記載した無段変速装置。
  28. 低速クラッチ側油圧排出路の途中に、この低速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れを所望時間遮断する低速クラッチ側電動弁を設けると共に、高速クラッチ側油圧排出路の途中に、この高速クラッチ側油圧排出路を通過する圧油の流れを所望時間遮断する高速クラッチ側電動弁を設けた、請求項24に記載した無段変速装置。
  29. 低速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分と高速クラッチ側油圧排出路の下流寄り部分とが合流して単一の油圧排出路を構成しており、この単一の油圧排出路部分に設けた単一の電動弁に、低速クラッチ側電動弁としての機能と高速クラッチ側電動弁としての機能とを合わせ持たせた、請求項28に記載した無段変速装置。
  30. 車両用変速機として使用され、電動弁が油圧排出路を通過する圧油の流れを遮断する時間を、車両の運行状況に応じて調節する、請求項28〜29の何れかに記載した無段変速装置。
  31. シフト用電動切換弁と並列に、手動によりこのシフト用電動切換弁と同じ機能を果たすシフト用手動切換弁を設けると共に、これらシフト用電動切換弁とシフト用手動切換弁との何れかを選択する選択用手動切換弁を設けた、請求項6〜30の何れかに記載した無段変速装置。
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