しかしながら、上記提案のアンテナ装置において、給電点の上下に形成されるループ(特許文献1に記載の2つのダイポール)は、給電点同士を接続する線分を中心として線対称に形成されていることから、例えば、UHF帯のテレビ放送信号を送/受信する広帯域アンテナとしては、充分機能を達成することができず、より広帯域化が望まれていた。
つまり、上記提案のアンテナ装置において、給電点の上下に形成されるループ(ダイポール)は、同一形状をしていることから、アンテナゲインを高めるためのスタックアンテナとしては良好に機能するものの、各ループ(ダイポール)の長さ(換言すれば共振周波数)は同じであるため、金属板で一つのダイポールアンテナを形成したアンテナ装置(特許文献1の図1、図8に記載のもの)と同様、UHF帯のテレビ放送の全周波数領域(470MHz〜770MHz)のうちの一部の周波数領域で指向特性が悪くなり、UHF帯のテレビ放送の全周波数領域で水平面無指向性が得られるように、指向特性を広帯域化することができなかったのである。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、スケルトンスロットアンテナを基本構成とする板状放射素子を湾曲させて小型化したアンテナ装置において、水平面無指向性アンテナとして使用可能な周波数範囲を拡大して、アンテナ装置の広帯域化を図り、延いては、このアンテナ装置を利用して、良好な広帯域特性が得られる水平偏波用水平面無指向性アンテナを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、金属板に長尺状の第1スリット及び第2スリットを所定の間隔を空けて並設することにより、第1スリット及び第2スリットでそれぞれ分離され、しかも、各スリットの両端で互いに連結された3つの導体部を形成すると共に、該3つの導体部のうち、前記各スリットに挟まれる中間導体部には、第1スリット及び第2スリットを各スリットの略中央で連結する第3スリットを形成してなる板状放射素子からなり、該板状放射素子を、前記第3スリットに略平行な中心軸周りに多角形若しくは円形に湾曲させ、前記第3スリットで分離された2つの中間導体部の対向端部に一対の給電点を形成してなるアンテナ装置であって、前記各給電点から前記各中間導体部を通って前記第1スリット及び第2スリットの周りにそれぞれ形成されるループの長さが、互いに異なり、前記放射素子の周囲には、前記放射素子を前記中心軸方向から見たとき前記放射素子の一部を所定の間隔を空けて給電点側から囲み、しかも、前記放射素子を前記中心軸とは直交する方向から見たとき前記2本のスリットよりも外側の導体部を囲むように、第1無給電素子が設けられていることを特徴とする。
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記放射素子の中心軸方向一端側には、前記放射素子を前記中心軸方向から見たとき、前記一対の給電点を結ぶ直線と略平行となり、しかも、前記中心軸を通るように、長尺状の第2無給電素子が設けられていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、金属板に長尺状の第1スリット及び第2スリットを所定の間隔を空けて並設することにより、第1スリット及び第2スリットでそれぞれ分離され、しかも、各スリットの両端で互いに連結された3つの導体部を形成すると共に、該3つの導体部のうち、前記各スリットに挟まれる中間導体部には、第1スリット及び第2スリットを各スリットの略中央で連結する第3スリットを形成してなる板状放射素子からなり、該板状放射素子を、前記第3スリットに略平行な中心軸周りに多角形若しくは円形に湾曲させ、前記第3スリットで分離された2つの中間導体部の対向端部に一対の給電点を形成してなるアンテナ装置であって、前記各給電点から前記各中間導体部を通って前記第1スリット及び第2スリットの周りにそれぞれ形成されるループの長さが、互いに異なり、前記放射素子の中心軸方向一端側には、前記放射素子を前記中心軸方向から見たとき、前記一対の給電点を結ぶ直線と略平行となり、しかも、前記中心軸を通るように、長尺状の第2無給電素子が設けられていることを特徴とする。
一方、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のアンテナ装置を用いて構成される水平偏波用水平面無指向性アンテナであって、該アンテナ装置の放射素子の中心軸が垂直方向となるよう、該アンテナ装置を支持する支持部材と、前記アンテナ装置の放射素子を構成する金属板の内側空間内に配置され、前記アンテナ装置の一対の給電点と同軸ケーブルとを接続する平衡不平衡変換回路と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のアンテナ装置を偶数個用いて構成される水平偏波用水平面無指向性アンテナであって、該偶数個のアンテナ装置を、それぞれ、放射素子の中心軸を一致させて垂直方向に配置する支持部材と、該支持部材により垂直方向に配列された偶数個のアンテナ装置のうち、上下2個のアンテナ装置を一組として、各アンテナ装置の給電点同士を接続する平衡線路と、前記アンテナ装置の放射素子を構成する金属板の内側空間内若しくは2つのアンテナ装置の間の空間内に配置され、前記平衡線路と同軸ケーブルとを接続する平衡不平衡変換回路と、を備えたことを特徴とする。
また次に、請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいて、前記支持部材は、筒状に形成されて前記アンテナ装置を収納可能な保護部材と、該保護部材の中心軸が垂直方向となるよう、前記保護部材をアンテナ支持用の構造体に固定する取付部材と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいて、前記アンテナ支持用の構造体は、支柱であり、前記取付部材は、前記保護部材の下端部と前記支柱の上端部とを連結する連結部材からなることを特徴とする。
また更に、請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項7の何れかに記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいて、前記アンテナ装置の上端部には避雷突針が突設されており、前記アンテナ装置の放射素子を構成する金属板の内側空間内には、前記避雷突針に接続された避雷導体が設けられていることを特徴とする。
請求項1〜請求項3に記載のアンテナ装置は、上述した従来のアンテナ装置と同様、金属板に第1〜第3スリットを形成することによって所謂スケルトンスロットアンテナとして構成された板状放射素子を基本構成としており、この板状放射素子を、第3スリットに略平行な中心軸周りに多角形若しくは円形に湾曲させることにより、小型化されている。
そして、本発明では、板状放射素子において、第3スリットで分離された2つの中間導体部の対向端部に形成される一対の給電点から各中間導体部を通って第1スリット及び第2スリットの周りにそれぞれ形成されるループの長さが、互いに異なるように設定されている。
このため、請求項1〜請求項3に記載のアンテナ装置によれば、給電点周りに形成される2つのループの共振周波数にずれが生じ、このずれによって、アンテナ装置全体で送/受信可能な周波数範囲を拡大することができる。そして、このように送/受信可能周波数範囲を拡大できることから、アンテナ装置を、放射素子の中心軸が垂直方向となるよう配置すれば、水平面無指向性を実現可能な周波数範囲も広くすることができる。
よって、本発明を、UHF帯のテレビ放送信号を送/受信するアンテナ装置に適用すれば、UHF帯のテレビ放送電波(水平偏波)を全周波数領域(470MHz〜770MHz)で良好に送/受信可能な、水平面無指向性の広帯域アンテナを実現できることになる。
また、本発明によれば、アンテナ装置を広帯域化するには、給電点周りに形成される2つのループの長さを個々に調整すればよく、そのためには、金属板に形成する第1スリット及び第2スリットの大きさや形状を変更するだけでよい。このため、本発明のアンテナ装置によれば、広帯域化のために特別な部品を別途設ける必要がなく、水平面無指向性の広帯域アンテナを低コストで実現できることになる。
また、請求項1及び請求項2に記載のアンテナ装置においては、放射素子の周囲に第1無給電素子が設けられており、この第1無給電素子は、放射素子を中心軸方向から見たとき、放射素子の一部を所定の間隔を空けて給電点側から囲み、しかも、前記放射素子を前記中心軸とは直交する方向から見たとき、前記2本のスリットよりも外側の導体部を囲むように配置されている。
このように配置された第1無給電素子は、放射素子に対する導波器として機能し、放射素子の中心軸方向から見たときの長さに対応した特定周波数領域の電波の放射特性を調整することができる。
このため、請求項1及び請求項2に記載のアンテナ装置によれば、放射素子の中心軸が垂直方向となるよう配置した際、放射素子単体では、アンテナ装置の使用周波数範囲内で水平面指向特性の偏差を小さくすることのできない周波数領域があったとしても、第1無給電素子によって、その周波数領域の水平面指向特性を改善することができる。
また、第1無給電素子は、中心軸方向の長さを調整することによって、放射素子を給電点に平衡不平衡変換器等を介してケーブルを接続したときの高周波信号の反射特性(換言すれば放射素子を給電点から見たインピーダンス)を調整することもできる。このため、請求項1及び請求項2に記載のアンテナ装置によれば、アンテナ装置のインピーダンスを第1無給電素子によって最適化することもできる。
次に、請求項2及び3に記載のアンテナ装置においては、放射素子の中心軸方向一端側に、放射素子を中心軸方向から見たとき、一対の給電点を結ぶ直線と略平行となり、しかも、中心軸を通るように、長尺状の第2無給電素子が設けられている。
この第2無給電素子は、放射素子の軸方向の電波を反射する反射器として機能し、その長さを反射したい電波の周波数に対応させれば、所望周波数帯の電波を反射させることができる。
このため、請求項2及び3に記載のアンテナ装置によれば、第2無給電素子によって、放射素子の中心軸が垂直方向となるよう配置した際の垂直面指向特性を最適化することができる。
次に、請求項4に記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいては、上述した本発明(請求項1〜3)のアンテナ装置が、支持部材を介して、放射素子の中心軸が垂直方向となるよう支持されており、アンテナ装置の放射素子を構成する金属板の内側空間内には、アンテナ装置の一対の給電点と同軸ケーブルとを接続する平衡不平衡変換回路が設けられている。
このため、請求項4に記載の発明によれば、広帯域にわたって良好な放射特性が得られ、小型化が容易な水平偏波用水平面無指向性アンテナを提供できる。また、給電点に接続される平衡不平衡変換回路や同軸ケーブルは、放射素子を構成する金属板の内側空間内に収納されることから、これら各部によって放射特性が悪化するのを防止できる。
また、請求項5に記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいては、上述した本発明(請求項1〜3)のアンテナ装置を偶数個備える。そして、この偶数個のアンテナ装置は、支持部材によって、それぞれ、中心軸を一致させて垂直方向に配置される。
また、このように垂直方向に配列された各アンテナ装置の給電点は、平衡線路を介して、上下2個のアンテナ装置が一組となるよう、隣接するアンテナ装置の給電点に接続される。そして、各組のアンテナ装置を接続する平衡線路には、平衡不平衡変換回路を介して同軸ケーブルが接続されている。
このため、請求項5に記載の発明によれば、請求項4と同様の効果が得られる他、偶数個のアンテナ装置の出力を合成することができるため、水平偏波用水平面無指向性アンテナの利得(アンテナゲイン)を高めることができる。
次に、請求項6に記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいては、支持部材が、筒状に形成されてアンテナ装置を収納可能な保護部材と、この保護部材を、保護部材の中心軸が垂直方向となるようにアンテナ支持用の構造体に固定する取付部材とから構成されている。このため、請求項6に記載の発明によれば、アンテナ装置を保護部材で保護することができると共に、アンテナ装置を保護部材と取付部材を介して容易に設置することができる。
ところで、本発明の水平偏波用水平面無指向性アンテナは、長尺状の保護部材を縦方向に配置することで、その軸周りに電波を放射するものであるため、アンテナ支持用の構造体の側壁に設置する場合には、放射特性を確保するために、腕木となる取付部材を使って、アンテナを側壁から離す必要がある。
そこで、本発明の水平偏波用水平面無指向性アンテナは、支柱となる構造体の先端に突設するようにすることが望ましく、そのためには、請求項7に記載のように、取付部材を、保護部材の下端部と支柱の上端部とを連結する連結部材にて構成するとよい。
つまり、このようにすれば、取付部材を構造が簡単にして、安価に実現できる。また、アンテナの支柱への取付けは、連結部材を支柱の先端に被せるようにすればよいので、アンテナの設置作業も簡単になり、しかも、アンテナの設置スペースを少なくすることができるので、アンテナを見栄えよくスマートに設置することができる。
次に、請求項8に記載の水平偏波用水平面無指向性アンテナにおいては、支持部材により支持されたアンテナ装置の上端部に避雷突針が突設されており、アンテナ装置の放射素子を構成する金属板の内面側空間内には、避雷突針に接続された避雷導体が設けられている。
このため、請求項8に記載の発明によれば、上述した本発明(請求項4〜7)の水平偏波用水平面無指向性アンテナの外形形状を大きくすることなく、また、すっきりとしたデザインを保ったまま、耐雷性に優れたアンテナを提供できる。つまり、避雷突針はアンテナの中心軸に沿うように上端部に取付けられており、避雷導体は、アンテナ装置の放射素子を構成する金属板の内側空間内に配線されるので、避雷導体がアンテナの特性に影響与えることもないし、アンテナの外観を悪くすることもない。
また、請求項8に記載のアンテナにおいては、高周波信号が流れる信号ラインと、落雷による大電流が流れるラインとが各々分離してアンテナ装置の内側空間内に配設されることから、信号ラインは高周波電流が流れるように構成すればよく、大電流を流す必要もないことから、信号ライン系の設計が簡単になる。また、その信号ライン系の構造も簡単でよいので、低コストで実現できる。
また特に、避雷突針及び避雷導体からなる避雷装置を、請求項7に記載のアンテナに設けた場合には、上述の効果に加えて、アンテナを支柱の先端部に固定した後に、アンテナの下方から突出している避雷導線を支柱等に対して接地処理すればよいので、更にアンテナの取付け及び接地処理を簡単に行うことができ、アンテナ設置時の作業性を向上することができる。
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明が適用された第1実施形態のアンテナ装置10の構成を表す斜視図であり、図2は、本実施形態のアンテナ装置10を構成する放射素子の構成及びその製造工程を表す説明図である。
本実施形態のアンテナ装置10は、UHF帯のテレビ放送電波である地上デジタル放送電波(水平偏波)を受信し、この放送電波が直接届かない地域(ビル影、山影の地域)に地上デジタル放送電波(水平偏波)を再送信するギャップフィラーシステムにおいて、地上デジタル放送電波をアンテナ周囲に再送信するのに用いられる水平面無指向性の広帯域アンテナを構成するためのものであり、図2(a)に示す板状の放射素子1を、図2(b)に示すように曲げ加工することにより作成されている。
まず、曲げ加工前の放射素子1は、図2(a)に示すように、矩形の金属板の板面に、第1スリットS1、第2スリットS2、第3スリットS3からなる3つのスリットを形成することにより構成されている。
すなわち、金属板は、高さH1×幅W1の縦長(H1>W1)の矩形形状であり、その板面に、金属板の短辺に平行で短辺よりも短い2本のスリットS1、S2(第1スリットS1、第2スリットS2)を、間隔H4を開けて形成することにより、上側、中間、下側の3つの導体部1a、1b、1cに分離されている。なお、各導体部1a、1b、1cはスリットS1、S2の両端に位置する導体部で連結されている。
また、中間導体部1bには、各スリットS1、S2の中心を結ぶように、金属板の長辺に平行な第3スリットS3が形成されており、この第3スロットS3により分離された左右の中間導体部1bの対向端部中央には、アンテナ装置10の給電部2となる給電点2a、2bが形成されている。
このため、この放射素子1には、給電点2a、2bから左右の中間導体部1bを通って上側導体部1a及び下側導体部1cに至る上下2つのループ(導電路)L1、L2が形成されることになり、放射素子1は、所謂スケルトンスロットアンテナとして機能することになる。
そして、本実施形態では、第1スリットS1及び第2スリットS2を異なる形状及び大きさにすることにより、上側ループL1と下側ループL2の経路長を互いに異なる長さに設定している。
具体的には、放射素子1を構成する金属板には、例えば、板厚が0.002λ以下、高さH1が約0.57λ、幅W1が約0.39λとなる、縦長で矩形の金属板が用いられる。そして、この金属板は、第1スリットS1の大きさ(高さH5×幅W2)が約0.015λ×0.36λ、第2スリットS2の大きさ(高さH6×幅W3)が約0.03λ×0.3λ、第1スリットS1と第2スリットS2の間隔(換言すれば中間導体部1bの幅)H4が約0.2λ、第3スリットS3の間隙W4が約0.008λとなるように、金型による打ち抜き形成等の手段によって、板状の放射素子1として形成されている。
なお、λは、使用周波数帯(本実施形態ではUHFのテレビ放送周波数帯)の下限周波数における波長を表しており、以下の説明においても同様である。
次に、このように形成された板状の放射素子1は、図2(b)に示すように、第3スリットS3(換言すれば金属板の両辺)に平行な中心軸M周りに、所定の半径Rで円形に曲げ加工される。この結果、本実施形態のアンテナ装置10の放射素子1は、図2(a)に示した板状の放射素子1を、所定の曲率で、間隙tを有する円弧状に湾曲させた、略筒状に形成されることになる。
なお、本実施形態では、直径Dが約0.14λ(半径Rは約0.07λ)の仮想の円筒の外周面に沿って湾曲させた形状になっている。このため、放射素子1の横方向の寸法は上述のごとく幅W1が0.39λであるから、間隙tは直径D=0.14λの円周(D×円周率π)からW1を差し引いたものとなる。
つまり、本実施形態では、間隙t=D×π―W1=0.14λ×3.14−0.38λ=0.06λとなるように放射素子1を略円形に湾曲させることによって、アンテナ装置10が構成されている。
次に、本実施形態のアンテナ装置10においては、放射素子1が平衡出力であるので、図1に示すように、給電部2が形成される中間導体部1bの内側空間には、給電点2a、2bと不平衡線である同軸ケーブル8の一方側とを接続するための平衡不平衡変換回路7が設けられており、この同軸ケーブル8の他方側先端部に設けられたケーブル接続端子9から給電できるようにされている。
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置10によれば、放射素子1を構成する金属板に形成された第1スリットS1と第2スリットS2とを異なる形状及び大きさにして、上側ループL1と下側ループL2の経路長を異なる長さに設定している。
このため、これら各ループL1、L2の経路長を一致させた従来のアンテナ装置に比べ、アンテナ装置10で送信可能な周波数範囲を拡大することができ、図1に示すように、アンテナ装置10を、放射素子1の中心軸Mが垂直方向となるよう配置すれば、UHF帯のテレビ放送の全周波数範囲内で水平面指向特性の偏差を小さくすることのできる広帯域無指向性アンテナを実現できることになる。
また、アンテナ装置10を広帯域化するには、金属板に形成する第1スリットS1と第2スリットS2の大きさや形状を適宜調整すればよく、広帯域化のために特別な部品を別途設ける必要がないため、本実施形態によれば、水平面無指向性の広帯域アンテナを低コストで実現できる。
なお、本実施形態では、放射素子1は円形に湾曲させるものとして説明したが、放射素子1を中心軸M周りに湾曲させて、アンテナ装置10の小型化を図るには、放射素子1を六角形のような多角形に湾曲させてもよい。
また、図1では、アンテナ装置10を使用する際には、放射素子1の第1スリットS1が上方に位置し、第2スリットS2が下方に位置するように、放射素子1を配置するものとして説明したが、アンテナ装置10は、上下を反転させて配置しても、上記と略同様の効果を得ることができる。なお、このことは、以下に説明する他の実施形態でも同様である。
(第2実施形態)
図3は第2実施形態のアンテナ装置15の構成を表す説明図であり、(a)はアンテナ装置15の斜視図、(b)はアンテナ装置15の側面図、(c)はアンテナ装置15を上方からみた平面図である。
本実施形態のアンテナ装置15は、第1実施形態のアンテナ装置10と同様に構成された放射素子1を備えており、第1実施形態のアンテナ装置10とは、放射素子1の周囲に2つの無給電素子(本発明の第1無給電素子)21、22を設けた点が異なる。
ここで、2つの無給電素子21、22のうち、一方の無給電素子21は、幅w1が約0.28λ、高さh1が約0.078λの矩形の金属板を、放射素子1の中心軸Mを中心とする半径r(但し、半径rは放射素子1の半径Rよりも大きい)の仮想の円筒の外周面に沿うように円弧状に湾曲させることにより構成されており、他方の無給電素子22は、幅w1が無給電素子21と同じで、高さh2が約0.156λの矩形の金属板を、無給電素子21と同じ半径rで円弧状に湾曲させることにより構成されている。
そして、無給電素子21は、放射素子1の上側導体部1aを給電部2側から囲むように、円弧の中心を放射素子1の中心軸Mに一致させて配置されており、無給電素子22は、放射素子1の下側導体部1cを給電部2側から囲むように、円弧の中心を放射素子1の中心軸Mに一致させて配置されている。
本実施形態において、無給電素子21、22は、放射素子1の各導体部1a、1cに対する導波器として機能し、放射素子1の中心軸方向から見たときの長さ(つまり幅w1)に対応した特定周波数領域の電波の放射特性を調整するために設けられている。
つまり、無給電素子21、22は、UHF帯のテレビ放送の全周波数範囲内で、水平面指向特性の偏差をより少なくなるように(つまり無指向性となるように)、アンテナ装置15の放射特性を調整するために設けられている。
このため、本実施形態のアンテナ装置15によれば、第1実施形態のアンテナ装置10において、水平面指向特性の偏差を小さくすることができない周波数領域があっても、その周波数領域での指向特性を改善して、UHF帯のテレビ放送電波を周囲に送信するのに適した水平面無指向性の広帯域アンテナを実現することができる。
また、無給電素子21、22は、高さh1、h2(換言すれば放射素子1の中心軸方向の長さ)を調整することによって、放射素子1のインピーダンス特性を調整することができる。このため、本実施形態のアンテナ装置15によれば、アンテナ装置15の指向特性だけでなく、アンテナの利得やVSWR(電圧定在波比)についても、容易に調整することができる。
なお、無給電素子21、22は、放射素子1とは間隔を開けて、放射素子1の周りに配置されるが、無給電素子21、22を実際に配置する際には、放射素子1の放射特性に影響を与えることのないよう、合成樹脂等からなる接合部材を介して、放射素子1と無給電素子21、22とを一体化するか、或いは、後述の実施形態で使用する筒状の保護部材3に無給電素子21、22の装着部を形成することで、無給電素子21、22を、放射素子1の周囲に配置するようにしてもよい。
(第3実施形態)
次に、図4は、第1実施形態のアンテナ装置10を2個使用して構成した第3実施形態の水平偏波用水平面無指向性アンテナ(以下、単に水平面無指向性アンテナという)20の構成を表す斜視図であり、図5は本実施形態において2個のアンテナ装置10を互いに接続する接続部材6と平衡不平衡変換回路7の配置状態を表す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態の水平面無指向性アンテナ20においては、中心軸が垂直方向となるように配置された筒状の保護部材3内に、2個のアンテナ装置10を収納することによって、2個のアンテナ装置10が、それぞれ、放射素子1の中心軸Mが保護部材3の中心軸と略同一軸線上となるように、所定の間隔d(本実施形態では間隔d:約0.23λ)を隔てて配列されている。
そして、図5に示すように2つのアンテナ装置10の給電点2a、2bは、それぞれ、同相となるように、接続部材6を構成する2本の平衡線路5によって接続されており、各平衡線路5の中間点は、平衡不平衡変換回路7を介して、同軸ケーブル8に接続されている。
また、保護部材3の下端には、下方に突設するようにケーブル接続端子9が設けられており、同軸ケーブル8は、下方のアンテナ装置10の内側空間を通って垂下され、その下方先端部がケーブル接続端子9に接続されている。なお、保護部材3は、高周波損失の小さな誘電体で形成されており、保護部材3の下端には、ケーブル接続端子9や引込線の接続部を雨などから保護するための保護筒14が突設されている。
また、保護部材3の下方外周面には、当該水平面無指向性アンテナ20を、アンテナ支持用のマスト(支柱)や壁面等の構造体12に着脱自在に取り付けるための取付部材13が設けられている。なお、この取付部材13は、保護部材3の外周面から略水平方向に突設された複数本(図では上下2本)の腕木(金属性)13aにて構成されている。
次に、上下一組のアンテナ装置10同士を接続する接続部材6について、図6を用いて説明する。
なお、図6は、接続部材6の要部を拡大した斜視図であり、(a)は接続部材6をアンテナ装置10の内側から見た分解斜視図であり、(b)は接続部材6をアンテナ装置10の外側から見た組み付け状態を表す斜視図である。
図6(a)に示すように、接続部材6は、金属の板体等からなる2本の平衡線路5を、誘電体からなる板体16に設けた構成となっている。この2本の平衡線路5の長さは、上側のアンテナ装置10の給電点2a、2bと下側のアンテナ装置10の給電点2a、2bとの間隔と略同寸法になっており、各平衡線路5の両端は、各アンテナ装置10の給電点2a、2bに向かって折り曲げられ、その先端には、各アンテナ装置10の給電点2a、2bを形成している切り欠きに挿通可能な爪部5a、5bが形成されている。
そして、接続部材6は、各アンテナ装置10の内側空間に配置され、各平衡線路5は、先端の爪部5a、5bが、各アンテナ装置10の内側から、給電点2a及び2bをそれぞれ形成している切り欠きに挿通されることにより、各アンテナ装置10の給電点2a、2b同士を接続する。
なお、このように各平衡線路5の爪部5a、5bが給電点2a、2bの切り欠きに挿通されると、図6(b)に示すように、各平衡線路5の爪部5a、5bが各アンテナ装置10の外側に突出するが、この突出部分は、半田付け等によって各アンテナ装置10(詳しくは放射素子1の中間導体1b)にしっかりと固定される。
以上説明したように、本実施形態の水平面無指向性アンテナ20は、第1実施形態のアンテナ装置10を筒状の保護部材3内に収納することにより、2個のアンテナ装置10を所定の間隔を空けて上下2段に配置し、各アンテナ装置10の給電点2a、2b同士を、2つの平衡線路5を介してそれぞれ接続して、この平衡線路5と同軸ケーブル8とを、平衡不平衡変換回路7を介して接続することにより構成されている。
このため、本実施形態の水平面無指向性アンテナ20によれば、広帯域にわたって良好な放射特性が得られ、小型化が容易な水平面無指向性アンテナを実現できるだけでなく、一つのアンテナ装置10を筒状の保護部材3に収納して、取付部材13を介して垂直方向に配置した場合に比べて、利得(アンテナゲイン)を向上することができる。
また、接続部材6、平衡不平衡変換回路7、同軸ケーブル8等は、全て、上下一組のアンテナ装置10の内側空間内に収納されることから、これら各部によって放射特性が悪化することはなく、所望の放射特性を確保することができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態のアンテナ装置10を用いて水平面無指向性アンテナ20を構成した場合について説明したが、無給電素子21、22を備えた第2実施形態のアンテナ装置15を用いて構成すれば、無給電素子21、22によって、上下に配置される各アンテナ装置15の指向特性やVSWRをより最適に調整できることから、水平面無指向性アンテナの指向特性及びVSWRをより良好に設定することができる。
また、本実施形態では、2つのアンテナ装置10を用いて水平面無指向性アンテナ20を構成した場合について説明したが、本実施形態のような上下一組のアンテナ装置10からなるアンテナを一つのアンテナブロック4として、複数(詳しくは2のn乗個、但し、nは正の整数)のアンテナブロック4を用意し、各アンテナブロック4を、所定間隔で垂直方向に配列することにより、水平面無指向性アンテナを構成してもよい。
例えば、図7は、2個のアンテナブロック4を用いて水平面無指向性アンテナを構成する場合の説明図であるが、この図に示すように、2個のアンテナブロック4を用いて水平面無指向性アンテナ20を構成する場合には、各アンテナブロック4を、その中心軸を一致させて上下に配置する。
また、各アンテナブロック4内でアンテナ装置10同士を接続している接続部材6(詳しくは2本の平衡線路5)の中点を各アンテナブロック4の給電点として、各アンテナブロック4の給電点同士を2本の平衡線路5からなる接続部材6で接続し、更に、その接続部材6(詳しくは2本の平衡線路5)の中点を4個のアンテナ装置10からなるアンテナブロックの給電点として、その給電点に平衡不平衡変換回路7を介して同軸ケーブル8を接続する。
そして、このように、複数のアンテナブロック4を用いて水平面無指向性アンテナを構成すれば、水平面無指向性アンテナの利得をより高めることができる。
また更に、本実施形態では、2つのアンテナ装置10の間隔dは、約0.23λであるものとして説明したが、この間隔dは、水平面無指向性アンテナ20全体の放射特性を劣化させることのない範囲内で適宜変更すればよい。そして、本願発明者らが実験等で間隔dの適正範囲を求めたところ、間隔dは、0.1λ〜0.4λの範囲内にて設定すればよいことがわかった。
(第4実施形態)
次に、図8は、第4実施形態の水平面無指向性アンテナ25の構成を表す斜視図である。
本実施形態の水平面無指向性アンテナ25は、第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20を基本構成としており、第3実施形態のものと異なる点は、取付部材の構造だけである。そこで、以下の説明では、取付部材についてのみ説明し、他の説明は省略する。
そして、本実施形態の水平面無指向性アンテナ25で使用される取付部材23は、アンテナ支持用の構造体12がアンテナマスト等の支柱12aである場合に、保護部材3(延いてはアンテナ装置10)の中心軸と支柱12aの中心軸とを一致させた状態で、支柱12aの先端に水平面無指向性アンテナ25を突設するためのものであり、保護部材3の下端及び支柱12aの先端にそれぞれ嵌合可能な筒状の連結部材にて構成されている。
このため、本実施形態の水平面無指向性アンテナ25によれば、上下一組のアンテナ装置10を、支柱12aの上方に配置することができ、各アンテナ装置10の放射特性が支柱12aによって乱されるのを防止できる。
また、各アンテナ装置10の放射特性がアンテナ支持用の構造体12によって乱されるのを防止するために、第3実施形態のように、腕木13aからなる取付部材13を使用する必要がないため、取付部材23を低コストで実現できると共に、アンテナの設置工事を極めて簡単に行うことができる。
また、本実施形態の水平面無指向性アンテナ25は、支柱12aの延長線上に配置されるので、設置スペースを少なくすることができ、また、設置後の見栄えもよいので、設置場所の美観を損なうこともない。
(第5実施形態)
図9は第5実施形態の水平面無指向性アンテナ30の外観を表す斜視図であり、図10は、その内部構成を表す斜視図である。
本実施形態の水平面無指向性アンテナ30は、第4実施形態の水平面無指向性アンテナ25を基本構成としており、第4実施形態のものと異なる点は、避雷突針18と避雷導体19とからなる避雷装置17を設けた点である。そこで、以下の説明では、避雷装置17についてのみ説明し、他の説明は省略する。
図9、図10に示すように、本実施形態の水平面無指向性アンテナ30においては、保護部材3の上端面に、上方に突出するように避雷突針18が固着されている。また、避雷突針18の下端部には、避雷導体19が接続されている。そして、避雷導体19は、アンテナブロック4の中心軸(換言すれば、上下一組のアンテナ装置10の中心軸)に沿うように、当該水平面無指向性アンテナ30の下端部に向かって引回され、下端部より周方向の一方向に向かって引き出されている。
このように構成された本実施形態の水平面無指向性アンテナ30によれば、第4実施形態の効果に加え、耐雷性に優れた水平面無指向性アンテナを提供できる。また、避雷導体19は、放射素子1を円状に形成することによって生じる各アンテナ装置10の内側空間を通って、当該水平面無指向性アンテナ30の下端部まで配線されていることから、避雷装置17を機能させるには、水平面無指向性アンテナ30を支柱12aに設置した後、避雷導線19の下端を、支柱12a等に対して接地処理するだけでよく、アンテナ設置時の接地処理を簡単に行うことができる。
なお、本実施形態では、第4実施形態の水平面無指向性アンテナ25に避雷装置17を設けた場合について説明したが、第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20に避雷装置17を設けるようにしてもよく、或いは、第1又は第2実施形態のアンテナ装置10、15単体で構成される水平面無指向性アンテナに避雷装置17を設けるようにしてもよい。
(第6実施形態)
図11は第6実施形態の水平面無指向性アンテナ35の構成を表す斜視図である。
本実施形態の水平面無指向性アンテナ35は、第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20を基本構成としており、第3実施形態のものと異なる点は、上方に位置するアンテナ装置10の上側導体部1aの上方に、第2無給電素子としての無給電素子24を設けた点である。そこで、以下の説明では、この無給電素子24についてのみ説明し、他の説明は省略する。
図11に示すように、無給電素子24は、例えば、λ/2以上の長さを有する金属線材をコ字状に折り曲げることにより、アンテナ装置10の径よりも僅かに大きい横導体線部24aと、横導体線部24aの両端側から下方に向かって折り曲げられた縦導体線部24bとから構成されている。
また、無給電素子24は、アンテナ装置10の上方から見たとき(換言すれば放射素子1の中心軸方向から見たとき)、横導体線部24aの中心がアンテナ装置10(換言すれば放射素子1)の中心軸Mと一致し、且つ、横導体線部24aの長手方向の軸線がアンテナ装置10の給電点2a、2bの配設方向に略平行になるように配置されている。
この無給電素子24は、反射器として機能し、アンテナ装置10に対する高さ位置、或いは、線の長さや太さ(或いは幅)等によって、アンテナ装置10(延いては水平面無指向性アンテナ35)の垂直面指向特性を調整するためのものである。
従って、本実施形態の水平面無指向性アンテナ35によれば、第4実施形態の水平面無指向性アンテナ20と同様の効果が得られる他、無給電素子24によって、垂直面指向特性を、ギャップフィラーシステムの再送信アンテナとして必要な指向特性に修正することができる。
なお、本実施形態では、第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20に無給電素子24を設けた場合について説明したが、第4実施形態或いは第5実施形態の水平面無指向性アンテナ25、30に無給電素子24を設けて、垂直面指向特性を調整できるようにしてもよく、或いは、第1又は第2実施形態のアンテナ装置10、15単体で構成される水平面無指向性アンテナに無給電素子24を設けて、垂直面指向特性を調整できるようにしてもよい。
(実験例1)
以上、本発明を適用したアンテナ装置10、15及び水平面無指向性アンテナ20、25、30、35について説明したが、本願発明者らは、本願発明の効果を確認するために、第2実施形態のアンテナ装置15を用いて第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20を構成したものを試料A、給電点2a、2bを挟んで上下に形成されるループL1、L2の経路長が一致するように第1スリットS1と第2スリットS2を同一寸法にした従来の放射素子1を使って第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20を構成したものを試料Bとして、各試料A、BのアンテナのVSWR、及び、水平面指向特性を測定した。
その測定結果を、図12〜図15に示す。
まず、図12は、各試料A、BのアンテナのVSWRを測定した測定結果を表しているが、この図から明らかなように、第2実施形態のアンテナ装置15を使用した試料Aの水平面無指向性アンテナによれば、従来のアンテナ装置を使用した試料Bの水平面無指向性アンテナに比べ、UHF帯のテレビ放送周波数領域全領域でVSWRを改善できることがわかった。
また、図13〜図15は、各試料A、Bのアンテナの水平面指向特性を測定した測定結果を表しており、図13は、UHF帯のテレビ放送の最低周波数である470MHzでの測定結果であり、図14は、UHF帯のテレビ放送の略中央の周波数である590MHzでの測定結果であり、図15は、UHF帯のテレビ放送の最大周波数よりも若干低い680MHzでの測定結果である。
そして、図13〜図15から明らかなように、第2実施形態のアンテナ装置15を使用した試料Aの水平面無指向性アンテナによれば、470MHz、590MHz、680MHzの全ての周波数で、水平面指向特性の偏差が、従来のアンテナ装置を使用した試料Bの水平面無指向性アンテナよりも小さくなっており、UHF帯のテレビ放送周波数領域全領域で、水平面無指向性アンテナの水平面指向性を、ギャップフィラーシステムの再送信アンテナに適した指向特性(無指向性)に改善できることがわかった。
(実験例2)
また次に、本願発明者らは、第2実施形態のアンテナ装置15に設けられている無給電素子21、22による指向特性の改善効果を確認するために、第1実施形態のアンテナ装置10を用いた第3実施形態の水平面無指向性アンテナ20を試料Cとして、この試料Cに無給電素子21、22を設けない場合(つまり、第3実施形態のアンテナ)と、この試料Cに無給電素子21、22を設けた場合とで、それぞれ、水平面指向特性を測定した。
その測定結果を、図16〜図18に示す。なお、図16は、470MHzでの測定結果であり、図14は、590MHzでの測定結果であり、図15は、680MHzでの測定結果である。
この図16〜図18から明らかなように、周波数が470MHz、590MHzの信号では、無給電素子21、22の有無によって水平面指向特性の偏差は殆ど変化しないものの、680MHzの信号では、無給電素子21、22を設けると、無給電素子21、22を設けていない場合に比べて、水平面指向特性の偏差を3.1dBから1.5dBへと、約1.6dB改善できることがわかった。
このため、本発明のアンテナ装置を用いて水平面無指向性アンテナを構成する場合、水平面指向特性をより改善する必要があるときには、放射素子1の周囲に、適宜、無給電素子21、22を設けるとよいことがわかる。
なお、この測定で使用した試料Cの水平面無指向性アンテナでは、無給電素子21、22を設けていない場合の水平面指向特性の偏差が、最大で3.1dB(図18参照)となっている。
しかし、従来品である試料Bの水平面無指向性アンテナでは、水平面指向特性の偏差が最大で7.6dB(図13参照)となっていることから、本発明を適用した試料Cの水平面無指向性アンテナによれば、無給電素子21、22を設けなくても、UHF帯のテレビ放送周波数領域全領域で水平面指向性を改善できていることがわかる。
以上、本発明の実施形態及び実験例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の態様をとることができる。
例えば、図11に示すように、本発明のアンテナ装置を用いて構成される水平面無指向性アンテナが設けられるアンテナ支持用の構造体12には、アンテナより送信される周波数帯の電波を吸収する電波吸収部材37を設けるようにしてもよい。
つまり、構造体12の側壁に、アンテナ35を省スペースでしかも簡単な構造の取付部材(即ち、突出寸法をできる限り短くして小型・軽量化した取付部材)13を使って、アンテナを設置した場合、構造体12が金属材で形成されていれば、アンテナの放射特性(特に水平面指向特性)に影響を与え、ギャップフィラーシステムの再送信アンテナとして、所望の特性が得られなくなってしまう。
しかし、図11に示すように、水平面無指向性アンテナ35とアンテナ支持用の構造体12との間に電波吸収部材37を設けるようにすれば、構造体12がアンテナの放射特性(特に水平面指向特性)に与える影響を小さくすることができる。
1…放射素子、S1…第1スリット、S2…第2スリット、S3…第3スリット、1a…上側導体部、1b…中間導体部、1c…下側導体部、2…給電部、2a,2b…給電点、3…保護部材、4…アンテナブロック、5…平衡線路、5a…爪部、6…接続部材、7…平衡不平衡変換回路、8…同軸ケーブル、9…ケーブル接続端子、10…アンテナ装置(第1実施形態)、12…構造体、12a…支柱、13…取付部材、14…保護筒、15…アンテナ装置(第2実施形態)、16…板体、17…避雷装置、18…避雷突針、19…避雷導体、20…水平面無指向性アンテナ(第3実施形態)、21…無給電素子、22…無給電素子、23…取付部材、24…無給電素子、25…水平面無指向性アンテナ(第4実施形態)、30…水平面無指向性アンテナ(第5実施形態)、35…水平面無指向性アンテナ(第6実施形態)、37…電波吸収部材。