JP4936041B2 - 挟み込み検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、開閉する装置に物体が挟まれたことを検出する挟み込み検出装置に関し、特に外力に応じた電圧を出力する圧電センサの出力に基づいて物体が挟まれたことを検出する挟み込み検出装置に関する。
建築物の自動ドアや、自動車や鉄道等の車両の電動スライドドアでは、モータ等によってドアをスライドさせて開閉する電動開閉装置が備えられている。このような電動開閉装置では、ドアを閉める閉扉動作中にドア枠とドアとの間に物体を挟み込むことがある。このため、この挟み込み状態を検出して閉扉動作を停止させたり、ドアを開ける開扉動作に変更させたりするような制御手段を備えた電動開閉装置の必要性は高い。
例えば下記に出典を示す特許文献1には、車両の電動スライドドアのドアパネルなどの移動体が物体を挟み込んだことを確実に検出できる自動開閉装置が提案されている。この文献に提案された自動開閉装置は、物体の挟み込みによって生じる押圧力を検出する感圧センサを備えている。この感圧センサは、弾性材からなる長尺のチューブの外皮部の内部に、このチューブの中心周りに漸次変位する十字孔を設け、この十字孔の中に互いに離間し且つ十字孔に沿って螺旋状に電極となる複数の導線を配置したものである。物体の挟み込みによって、この感圧センサに押圧力が加わると、外皮部が弾性変形して外皮部の内部の十字孔が潰される。そして、十字孔に配置した複数の導線の内の任意の何れか、又は全てが接触することによって導線間が導通することを検出し、挟み込みを検出するようにしている。
しかし、この感圧センサを例えばドア枠に沿って配置するような場合、センサ自身が受ける曲げや、取り付け時の圧力等によって、その取り付けの自由度が制限される場合がある。そこで、上記のような導体の接触を検出原理とした感圧センサではなく、圧電素子を用いた感圧センサを用いることでこの課題に対応することが考えられる。圧電素子は、外力が加わったことによって導線同士を物理的に接触させるのではなく、外力(応力)に応じて発生する電気分極を利用するものである。つまり、センサが曲げられて配設されていても安定状態において外力が印加されなければ検出信号は出力されない。従って、圧電素子を用いた感圧センサでは、取り付け方法に依らず様々な場所への配置が可能である。また、挟み込みの初期など、外力の弱い時から電圧を発生するので、早期の検出が可能である。下記に出典を示す特許文献2には、この圧電素子を用いた感圧センサを自動車のハッチバックドアに利用する技術が示されている。
特許第3300660号公報(第34〜35段落、第1〜3図) 特開2003−106048号公報(第5〜7、第17〜27段落、第4、5図)
上述したように、圧電センサは振動などによって生じる圧電素子の歪により電圧を生じる圧電効果を利用したセンサである。従って、挟み込み等の衝撃による振動に限らず、他の事象による振動によっても検出信号を出力する。例えば、圧電センサが車両のスライドドアに備えられた場合、スライド動作するドアパネルの振動や、走行中の車両の振動によっても検出信号を出力する。一般的には、この振動は、物体を挟み込んだ場合とは異なり、周波数は高く、振幅は小さい。その他の事象に起因する振動による検出信号も、多くの場合このように比較的明確な差異を有しているため、圧電センサの出力を所定の条件に基づいて信号処理することにより、目的とする事象である挟み込みを検出することができる。
しかし、全ての事象に起因する振動がそれぞれ明確な差異を有しているとは限らない。例えば、車両のスライドドアの場合、ドアレールの劣化によって、単純なスライド動作をしているときのノイズ性の振動が大きくなることも考えられる。また、湿度などにより滑りに差が出る場合もある。
さらに、圧電素子は一般的に周囲温度の変化による検出電圧の変動が大きい。従って、この挟み込み検出装置を建物の自動ドアに適用する場合には、季節による気温の変化や、一日の気温の変化、日照による周囲温度の変化等によって検出電圧の変動が考えられる。圧電素子を自動車のスライドドアの挟み込み検出に適用しようとする場合には、対応することが必要な周囲温度の幅がさらに大きく、周囲温度による検出電圧の変動は大きな問題である。
このように、自動ドアやスライドドアなど、開閉する装置の動作状態や、温度などの環境状態によって圧電センサの出力が影響を受ける。従って、圧電センサを利用した挟み込み検出センサを構成するには、これらの影響を抑制する必要がある。
本願発明は上記課題に鑑みてなされたもので、挟み込みとは異なる事象に影響される検出信号であっても、良好に挟み込みを検出することのできる挟み込み検出回路を提供することを目的とする。
この目的を達成するための本発明に係る挟み込み検出装置は、開閉する装置に備えられて前記開閉する装置に生じる外力に応じた電圧信号を出力する圧電センサ、前記電圧信号を増幅する増幅手段、及び増幅後の前記電圧信号の電圧値が所定のしきい値を超えてから再び当該しきい値以下となるまでの時間所定の基準時間を超える場合に前記開閉する装置に物体が挟み込まれたと判定する判定手段有する信号処理部と、前記開閉する装置の動作状態としての開閉動作の有無と、環境状態としての前記圧電センサの周辺温度との少なくとも一方を検出する状態検出部とを備えたものであって、下記の特徴を備える。
上記構成に、さらに、記信号処理部が、前記増幅手段の増幅率、前記判定手段の前記しきい値、前記基準時間の少なくとも一つを、前記状態検出部の検出結果に基づいて定める点を特徴とする。
この特徴構成によれば、当該開閉する装置の動作状態と環境状態としての前記圧電センサの周辺温度との少なくとも一方を検出する状態検出部を備えるので、圧電センサから電圧信号が出力されるが挟み込みとは異なる事象を捉えることができる。また、逆に、挟み込みの発生頻度が高いと予想される状態を正確に把握して、適切な判定を行うようにすることもできる。本特徴構成によれば、このようにして検出された動作状態や環境状態に基づいて、増幅率やしきい値、基準時間を設定する。従って、種々の事象や、状況に応じた適切な信号を得て、適切な判定を行うことが可能となる。
その結果、挟み込みとは異なる事象に影響される検出信号であっても、良好に挟み込みを検出することのできる挟み込み検出回路を提供することができる。
さらに、本発明の挟み込み検出装置は、前記状態検出部が、前記周辺温度を検出する温度検出手段を有し、前記信号処理部が、前記増幅率、前記しきい値、前記基準時間の少なくとも一つを、前記温度検出手段の検出結果に基づいて定めることを特徴とする。
圧電センサの圧電効果を有する物質、例えば水晶、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム等、の結晶は、一般的に圧電効果と共に焦電性をも示すものである。焦電性とは、結晶の温度が変化した場合に電気分極が現れる性質であり、圧電センサは温度依存性が高い。しかし、上記特徴構成に依れば、周辺温度に応じて増幅率、しきい値、基準時間の少なくとも一つを定める。つまり周辺温度の変化に追従させてこれらの基準値を変更するので、温度依存性を相殺して良好に温度補償を行い、この変動を抑制することができる。特に信号処理部が有する種々の回路に於ける温度依存性も考慮して温度補償を実施すれば、さらに温度依存性を抑制することができる。
さらに、本発明の挟み込み検出装置は、下記特徴を有する。前記状態検出部が、前記動作状態として、少なくとも前記開閉する装置が開閉何れの動作をしているかを検出する開閉動作検出手段を有する。そして、開動作が検出された場合には、前記信号処理部が、前記圧電センサから出力される前記電圧信号の大きさに基づいて挟み込みの非検出時のノイズレベルを算出し、開動作が行われた後に閉動作が検出された場合には前記ノイズレベルに基づいて前記しきい値を定める。
一般に引き戸(スライド)タイプのドアや、スイングタイプのドアでは、扉は、開扉動作と閉扉動作とで同じ経路を反対方向に移動する。スライドタイプのドアであれば、床部や天井部に設けられたレールによって移動が誘導される。スイングタイプでは蝶番などによって扉が揺動する。これらレールや蝶番は、経年劣化したり、温度や湿度などの環境条件によって摩擦係数などが変化したりする。このため、扉の移動に伴うノイズ性の振動成分は、動作条件や環境条件の影響を受ける。
上記特徴構成においては、扉が開扉動作あるいは閉扉動作しているかを開閉動作検出手段により検出する。そして、開扉動作中の電圧信号に基づいて、挟み込みに起因しない振動成分による電圧信号の大きさ、つまりノイズレベルを算出する。従って、閉扉の際に、このノイズレベルに基づいて種々の基準値を設定することができ、正確な挟み込み検出が可能となる。
また、前記開閉する装置が車両のスライドドアであり、前記圧電センサが前記スライドドアのドアパネルの開口端部に備えられたものであるとき、以下を特徴構成とする。
即ち、前記状態検出部が、前記動作状態として閉動作する前記ドアパネルが前記車両本体に設けられたドアレールの屈曲部を通過する位置にあることを検出するドア位置検出手段を有し、前記信号処理部が、前記ドアパネルが前記屈曲部を通過後に、前記増幅率を大きくする又は前記しきい値を低くすることを特徴とする。
閉扉動作において、ドアパネルがドアレールの屈曲部を通過する位置にある場合は、閉扉動作はほぼ最終局面にある。従って、この局面以降、ドアパネルとドア枠との間に、物体が挟み込まれる可能性が高い。従って、上記特徴構成のようにドア位置検出手段を有すれば、挟み込みの発生頻度が高いと予想される状態を正確に把握して、適切な判定を行うようにすることもできる。つまり、増幅率を大きくしたり、しきい値を低くしたりして感度を高めることができる。挟み込みとは異なる事象による影響を考慮して感度を低くしていた場合でも、閉まり際のみ、感度を上げて元の感度に戻すことも可能である。
その結果、挟み込みとは異なる事象に影響される検出信号であっても、良好に挟み込みを検出することのできる挟み込み検出回路を提供することができる。
また、前記開閉する装置が車両のスライドドアであるとき、以下を特徴とする。
即ち、前記状態検出部が、前記動作状態として前記車両の走行の有無を検出する走行状態検出手段を有し、前記信号処理部が、前記車両が走行している場合には、前記増幅率を小さくする又は前記しきい値を高くすることを特徴とする。
閉扉動作中に車両が発進した場合、走行による振動ノイズが発生する。上記特徴構成によれば、走行状態検出手段によって車両が走行状態であることを検出する。そして、車両が走行状態であれば、振動ノイズが多い状態であると判定して、増幅率を小さくしたり、しきい値を高く設定したりする。増幅率を小さくすることにより、振動ノイズを含む信号が増幅されてもしきい値に達することがなくなるので、振動ノイズの影響を抑制することができる。その結果、良好に挟み込みを検出することのできる挟み込み検出回路を提供することができる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る挟み込み検出装置の構成を模式的に示すブロック図である。図に示すように、本発明に係る挟み込み検出装置は、開閉する装置に生じる外力に応じた電圧信号を出力する圧電センサ1と、この電圧信号を信号処理する信号処理部4と、当該開閉する装置の動作状態や環境状態を検出する状態検出部5とを備えて構成される。
信号処理部4は、上記電圧信号を増幅する増幅手段2と、当該開閉する装置に物体が挟み込まれたと判定する判定手段3とを有する。判定手段3は、増幅後の電圧信号が所定のしきい値を通過する時間差が所定の基準時間を超える場合に物体が挟み込まれたと判定する。判定結果は、マイクロコンピュータ等の制御装置へ出力される。そして、前記信号処理部4は、増幅手段2の増幅率(後述する符号Av)、判定手段のしきい値(後述する符合TH)、基準時間(後述する符号RT)の少なくとも一つを、状態検出部5の検出結果に基づいて定める。
図2に示すように圧電センサ1は、圧電体13を2つの電極(符号11及び12)で挟んで構成される。加速度や振動などの機械的な外力により圧電体に生じる歪によって電荷を生じ、電極間に電圧信号を出力する。図2は、導線又は軸心に導電体を巻きつけた第一電極11と、チューブ状の第二電極12との間に、圧電体13を挟み込み、全体を被覆14で覆って同軸ケーブル状に構成した例を示している。
圧電センサ1は、同軸ケーブル状に構成されているので、径方向の全方向の検出が可能で、屈曲した部位への配設が行い易い。このため例えば、図3に示すように車両30のスライドドア20のドアパネル21の開口端部に良好に配設することができる。勿論ドア枠22の開口端部に沿って圧電センサ1を配設してもよい。以下、本例では、開閉する装置として車両の電動スライドドア装置を示し、これに圧電センサ1が備えられた場合を例として本発明を説明する。しかし、これに限らず適宜、建物の自動ドアや回転ドア、鉄道のドア等にも適用することができる。
圧電センサ1の出力は、微小電圧であるため、そのままではマイクロコンピュータ等の制御装置へ検出信号を出力することが困難である。従って、信号処理部4において、増幅などの信号処理を行い、さらに一次的な挟み込みの判定処理を行っている。図4は、このような信号処理部4の構成例を模式的に示す概略回路ブロック図である。
本実施形態において、増幅手段2は演算増幅器2aを用いた反転増幅回路で構成されている。図4に示す定電圧Eは、演算増幅器2aを片電源駆動(グラウンド−正電源)する場合の仮想グラウンドを定めるためのオフセット電圧を示している。本例では、増幅率Avは、抵抗Rs、Rfの値によって定められ、反転増幅のため以下のように負の値となる。
Av=−Rf/Rs
これら抵抗Rs、Rfはそれぞれ一つの抵抗器で構成される必要はなく、例えばラダー抵抗などを用いて、その接続を変更することによって、抵抗値を可変とすることができる。尚、増幅回路は、勿論非反転増幅器を用いて構成してもよい。
判定手段3は、増幅後の電圧信号が所定のしきい値を通過する時間差が所定の基準時間を超える場合に当該開閉する装置(例えばスライドドア20)に物体が挟み込まれたと判定する。図4に示す例においては、演算増幅器を利用した比較器3aと、タイマ3bとを用いて構成される。比較器3aは、増幅後の電圧信号が所定のしきい値THを通過する時刻を示すパルス波形を生成し、出力する。タイマ3bは、このパルス波形のパルス幅を時間差として検出する。そして、この時間差が基準時間RTを越える場合には、周期が長い、即ち周波数が低いと判定できるので、当該開閉する装置に物体が挟み込まれたと一次判定する。この判定結果は、さらにマイクロコンピュータ等の制御装置、スライドドア20の場合には、車両30の有するECU(electronic control unit;例えば図6、図10の符号5A)へ出力され、挟み込みが検出される。
しきい値THは、エミッタフォロワなどの定電圧回路により構成することができる。エミッタフォロワへの入力電圧は、一般的に抵抗分圧などによって得られる。この分圧のための抵抗値を増幅率と同様に可変にすれば、しきい値THを可変にすることができる。
タイマ3bの基準時間RTについても、デジタルタイマを用いる場合には、ラダー抵抗器を用いて、2進数のビット指定を行うことにより、直接時間を設定することができる。また、アナログタイマを用いる場合には、抵抗器とコンデンサとの時定数を増幅率と同様の方法で可変にすればよい。
ところで、圧電センサ1は上述したように圧電体を用いて、その圧電効果による電気分極を利用したセンサである。圧電効果を有する物質、例えば水晶、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウムなどの結晶は、一般的に圧電効果と共に焦電性をも示すものである。焦電性とは、結晶の温度が変化した場合に電気分極が現れる性質であり、従って、一般的に圧電センサは周囲温度の変化に対して、その出力が変動し易い。また、圧電センサ1が同軸ケーブル状に構成された場合、圧電体は樹脂等と圧電セラミックなどとを混合した圧電体層として形成される。そのため、この圧電体層の硬度が周囲温度によって変動することにより、圧電センサ1への外力の加わり方が異なることになる。即ち、周囲温度の変化に対して、圧電センサ1の出力が変動し易いことになる。
図5は、圧電センサの出力信号の環境温度による違いを示す波形図である。図5(a)は低温時、(b)は高温時の波形を模式的に示している。低温時には、電圧信号は大きくて鋭く、高温時にはその逆となる。つまり、低温時の振幅A1は高温時の振幅A2よりも大きく、低温時の時間差T1は高温時の時間差T2よりも短い。
そこで、状態検出部5は、本発明の環境状態として、圧電センサ1の周辺の温度を検出する温度検出手段を有して構成される。温度検出手段とは、例えば、サーミスタなどを用いた温度センサなどを利用することができる。そして、この温度センサの検出結果に基づいて、信号処理部4は、増幅率Av、しきい値TH、基準時間RTの少なくとも一つを定める。例えば、高温時に増幅率Avを上げたり、低温時にしきい値THを低くしたり、低温時に基準時間RTを短くしたりする。
図6は、図1の挟み込み検出装置の構成例を模式的に示すブロック図である。信号処理部4の判定結果は、スライドドア20を制御するスライドドアECU5Aへ出力される。スライドドアECU5Aは、ドアロックのためのソレノイド、スライドドア20の開閉のためのモータなど各種アクチュエータ6aを制御する。また、スライドドア20の位置を検出するポジションセンサ6bや、開閉速度を検出する速度センサ6cなどの各種センサからの情報を得て制御を行う。そして、スライドドアECU5Aは、信号処理部4から入力される判定結果に基づいて、最終的に挟み込みの有無を判定し、スライドドア20の制御、例えば開閉動作の停止や反転、乗員への挟み込み検出の報知などを行う。
スライドドアECU5Aは、信号処理部4から挟み込みの検出結果を受け取るだけでなく、信号処理部4へスライドドア20の動作状態を提供することができる。つまり、スライドドアECU5Aは、本発明の挟み込み検出装置の状態検出部5として、機能することができる。このとき、状態検出部5は、本発明の動作状態として、当該開閉する装置(スライドドア20)が開閉何れの動作をしているかを検出する開閉動作検出手段を有して構成されていることになる。
信号処理部4は、開動作が検出された場合には圧電センサ1から出力される電圧信号の大きさに基づいて挟み込みの非検出時のノイズレベルを算出する。そして、閉動作が検出された場合には検出されたノイズレベルに基づいてしきい値THを定める。例えば、ノイズレベルが高い場合には、しきい値THを高くする。開動作の場合に、ノイズレベルを検出することにより、スライドドア20が経年劣化などにより、ドアレール23との摩擦に変化が生じた場合であっても、これに適した信号処理を行うことができる。
また、状態検出部5であるスライドドアECU5Aは、ドア位置検出手段として、機能することもできる。ドア位置検出手段は、本発明の動作状態として、例えば、閉動作するドアパネル21がドアレール23の屈曲部23aを通過する位置にあることを検出する。そして、信号処理部4は、ドアパネル21が屈曲部23aを通過後に、増幅率Avを大きくする又はしきい値THを低くする。
閉動作時には、ドアパネル21が屈曲部23aを通過した後には、屈曲部23aの屈曲に沿って車両30の外側から内側方向に引き込む誘導動作を行う。さらにスライドドア20のロック装置がドアパネル21をロック位置まで引き込む、いわゆるクローザ動作を行う。従って、ドアパネル21が屈曲部23aを通過した後に物体が挟み込まれると、物体への衝撃が大きくなる。上記のように構成すれば、この場合に、挟み込み検出感度を高くすることができるので、物体が接触し、挟み込みの可能性が高いことを良好に検出することができる。
図7は、図1の挟み込み検出装置の別の構成例を模式的に示すブロック図である。状態検出部5として、加速度検出手段5Bが備えられている。ドアパネル21が一定方向へのスライド動作をしている場合には加速度は生じないが、屈曲部23aにおいて誘導される動作に移る際には移動方向が急激に変わり、加速度を生じる。加速度検出手段5Bは、この加速度を検出し、ドアパネル21が屈曲部23aを通過したことを検出する。そして、信号処理部4は、上記と同様、ドアパネル21が屈曲部23aを通過後に、増幅率Avを大きくする又はしきい値THを低くする。加速度の検出には、加速度センサ(Gセンサ)を利用することができる。
また、図7に示すように加速度検出手段5Bが圧電センサ1自身の出力を利用するものであってもよい。ドアパネル21が屈曲部23aにおいて誘導される動作に移る際には移動方向が急激に変わり、加速度を生じる。このときに検出される加速度の波形は、挟み込みによる衝撃の出力波形と良く似たものであるが、極性が逆となる。図8は、圧電センサの出力信号の動作状態による違いを示す波形図であり、(a)が挟み込み時、(b)が屈曲部23aの通過時のものである。このように、極性にある程度明確な差を有しているため、区別が可能である。つまり、加速度検出手段5Bは、増幅後の圧電センサ1の検出信号に基づいてドアパネル21が車両本体に設けられたドアレール23の屈曲部23aを通過する位置にあることを検出する。
図9は、図1の挟み込み検出装置のまた別の構成例を模式的に示すブロック図である。状態検出部5は、本発明の動作状態として、車両30の走行状態を検出する走行状態検出手段を有して構成される。走行状態検出手段は、例えば、車両30の走行制御ECU5Cである。走行制御ECU5Cは、回転センサ7などを有しており、少なくとも、車両30が停止しているか走行しているかを検出することができる。また、走行速度を検出することもできる。車両30が走行している場合には、振動が増加するため、圧電センサ1もこの振動を拾ってノイズ性の検出信号を出力する。信号処理部4は、車両30が走行している場合には、しきい値THを高くする。
例えば、スライドドア20を閉動作している最中に車両30を発進させたような場合(概ね時速5km以下)であっても、良好に挟み込みを検出することができる。
また、車両30は常に水平な状態とは限らず、例えば坂道や、道路の端など傾斜した路面上に位置する場合もある。路肩に片側の車輪を乗り上げて駐停車する場合もある。この場合、スライドドア20には、開閉に際して、水平時とは異なる力が加わるので、当然、圧電センサ1の出力もこの影響を受ける。車両30の傾きは、車両30に搭載された傾きセンサなどでによって検出され、走行制御ECU5Cに入力される。走行制御ECU5は、この傾き情報を信号処理部4に伝達する。信号処理部4は、この傾き情報(動作状態に相当する。)に基づいて、上述したように、増幅率Avや基準時間RTやしきい値THを変更する。
図10は、図1の挟み込み検出装置の構成例を模式的に示すブロック図である。図に示すように、本発明の挟み込み検出装置の状態検出部5は、前記動作状態として、スライドドア20とは別のドアの状態を検出するドア位置手段5Dを有する。本例では、別のドアとは、例えば、図3に示すように、スライドドア20に最も近いドアである助手席ドア40である。
助手席ドア40には、ドア位置検出手段5Dとして機能するカーテシスイッチやドアロックのハーフロックスイッチ、フルロックスイッチなどが備えられている。これら各種スイッチや他のセンサなどにより構成されるドア位置検出手段5Dにより、スライドドア20とは別のドア(助手席ドア40)の状態が検出される。
車両30が停止している場合、スライドドア20とは異なる他のドアの閉扉時の振動によって、当該スライドドア20のドアパネル21に備えられた圧電センサ1が反応することがある。特に、当該スライドドア20に最も近接するドアを強く閉めた場合には、圧電センサ1が非常に高い電圧を発生する。これは明らかにノイズ性の出力である。
他のドアの開閉状態が、当該スライドドア20を振動させるなど、スライドドア20の動作状態に影響を及ぼすため、他のドアの開閉状態をスライドドア20の動作状態としてドア位置検出手段5Dによって検出する。そして、この検出の結果に基づいて、信号処理部4は、増幅率Avや基準時間RTやしきい値THを変更する。例えば、助手席40が開いている場合には、しきい値THを高くしたり、基準時間RTを長くするなど、圧電センサ1からのノイズ性の出力に影響されないようにする。
以上、説明したように本発明によって、挟み込みとは異なる事象に影響される検出信号であっても、良好に挟み込みを検出することのできる挟み込み検出回路を提供することができる。
本発明に係る挟み込み検出装置の構成を模式的に示すブロック図 図1の圧電センサの構成例を示す模式図 車両のスライドドアに図2の圧電センサを配設する例を示す説明図 図1の信号処理部の構成例を模式的に示す概略回路ブロック図 圧電センサの出力信号の環境温度による違いを示す波形図 図1の挟み込み検出装置の構成例を模式的に示すブロック図 図1の挟み込み検出装置の構成例を模式的に示すブロック図 圧電センサの出力信号の動作状態による違いを示す波形図 図1の挟み込み検出装置の構成例を模式的に示すブロック図 図1の挟み込み検出装置の構成例を模式的に示すブロック図
符号の説明
1 :圧電センサ
2 :増幅手段
3 :判定手段
4 :信号処理部
5 :状態検出手段
5A:スライドドアECU(開閉動作検出手段)
5B:加速度検出手段
5C:走行制御ECU(走行状態検出手段)
Av:増幅率
TH:しきい値
RT:基準時間

Claims (5)

  1. 開閉する装置に備えられて前記開閉する装置に生じる外力に応じた電圧信号を出力する圧電センサ
    前記電圧信号を増幅する増幅手段、及び増幅後の前記電圧信号の電圧値が所定のしきい値を超えてから再び当該しきい値以下となるまでの時間所定の基準時間を超える場合に前記開閉する装置に物体が挟み込まれたと判定する判定手段有する信号処理部
    前記開閉する装置の動作状態としての開閉動作の有無と、環境状態としての前記圧電センサの周辺温度との少なくとも一方を検出する状態検出部を備え、
    前記信号処理部は、前記増幅手段の増幅率、前記判定手段の前記しきい値、前記基準時間の少なくとも一つを、前記状態検出部の検出結果に基づいて定める挟み込み検出装置。
  2. 前記状態検出部は、前記周辺温度を検出する温度検出手段を有し、
    前記信号処理部は、前記増幅率、前記しきい値、前記基準時間の少なくとも一つを、前記温度検出手段の検出結果に基づいて定める請求項1に記載の挟み込み検出装置。
  3. 前記状態検出部は、前記動作状態として、少なくとも前記開閉する装置が開閉何れの動作をしているかを検出する開閉動作検出手段を有し、
    前記信号処理部は、開動作が検出された場合には前記圧電センサから出力される前記電圧信号の大きさに基づいて挟み込みの非検出時のノイズレベルを算出し、開動作が行われた後に閉動作が検出された場合には前記ノイズレベルに基づいて前記しきい値を定める請求項1に記載の挟み込み検出装置。
  4. 前記開閉する装置は車両のスライドドアであり、前記圧電センサは前記スライドドアのドアパネルの開口端部に備えられたものであって、
    前記状態検出部は、前記動作状態として閉動作する前記ドアパネルが前記車両本体に設けられたドアレールの屈曲部を通過する位置にあることを検出するドア位置検出手段を有し、
    前記信号処理部は、前記ドアパネルが前記屈曲部を通過後に、前記増幅率を大きくする又は前記しきい値を低くする請求項1に記載の挟み込み検出装置。
  5. 前記開閉する装置は車両のスライドドアであり、
    前記状態検出部は、前記動作状態として前記車両の走行の有無を検出する走行状態検出手段を有し、
    前記信号処理部は、前記車両が走行している場合には、前記増幅率を小さくする又は前記しきい値を高くする請求項1に記載の挟み込み検出装置。
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