JP2000346717A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】 挟み込み防止装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する構成とすることで物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項2】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する対向部材を圧電センサに対向させる構成とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項3】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をメッシュ形状とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項4】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をコイルばね形状と物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項5】圧電センサを対向部材に沿って配設する構成とした請求項1〜4のいずれか1項に記載の挟み込み防止装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は物体の接触により出力を発生する圧電センサおよび圧電センサの荷重検出装置と、圧電センサを窓や扉やシャッターといった開閉部に配設して物体の挟み込みを検知して防止する挟み込み防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の圧電センサと圧電センサ荷重検出装置および挟み込み防止装置は、特開平10−76843号公報、特開平10−132669号公報に記載のように、ケーブル状あるいはフィルム状の圧電センサを窓や窓枠に配設して、圧電センサからの出力発生により物体の挟み込みを検出するものがあった。圧電センサは加えられた応力(ひずみ)に比例した電荷を発生するので、それを分極電流として取り出すことにより、物体の挟み込みによる接触を検知することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の圧電センサ荷重検出装置および挟み込み防止装置では以下のような課題を有していた。
【0004】
圧電センサは電気的にはコンデンサCに近いものであり、出力端に抵抗Rを並列に接続すれば、カットオフ周波数fc(=1/(2πCR))なるハイパスフィルターになる。一方、物体の接触による出力信号は、一般的には数十Hz以下の低周波信号であるため、ハイパスフィルターで処理してしまうと出力レベルが大幅にダウンしてしまうおそれがある。よって抵抗Rをできるだけ大きくしてカットオフ周波数fcを下げる必要があるが、1MΩ以上の高抵抗になると高価である上、ノイズ対策等取り扱いが難しくなる。このため、そこそこ実用的な高抵抗を採用しなければならず、出力レベルを多少犠牲にする場合も起こりうる。また圧電センサは、圧電材料や形状にもよるが、出力インピーダンスが非常に高い上、もともと出力電圧が小さいという傾向もある。よって、FETなどのインピーダンス変換回路で受けたあと、増幅回路で大幅にゲインを上げるなどの処理をしなければならない。
【0005】
結局のところ、従来の圧電センサならびに圧電センサ荷重検出装置ならびに挟み込み防止装置では圧電センサの出力が小さいという課題を有していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電センサと圧電センサ荷重検出装置は、上記課題を解決するために、物体から接触荷重を受ける面積を低減したものである。
【0007】
上記発明によれば、物体から接触荷重を受ける面積を低減しているので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0008】
また本発明の圧電センサ荷重検出装置は、物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したものである。
【0009】
上記発明によれば、物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減しているので、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0010】
また本発明の挟み込み防止装置は、物体から接触荷重を受ける面積を低減するか、または物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減した圧電センサならびに圧電センサ荷重検出装置により、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備えたものである。
【0011】
上記発明によれば、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減している場合は、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。よって圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる。一方、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減している場合は、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する構成とすることで物体から接触荷重を受ける面積を低減したものである。
【0013】
そして圧電センサ自身が物体から接触荷重を受ける面積を低減しているので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0014】
本発明の請求項2にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開 閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有したものである。
【0015】
そして圧電センサの凸部は物体と接触しやすく、凸部の周囲は物体と接触しにくくなる。逆に、圧電センサの凹部または孔部は物体と接触しにくく、凹部の周囲または孔部の周囲は物体と接触しやすくなる。よって圧電センサは物体と接触しやすい部位と接触しにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できる。
【0016】
本発明の請求項3にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をメッシュ形状とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置としたものである。
【0017】
本発明の請求項4にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をコイルばね形状とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置としたものである。
【0018】
そして対向部材をメッシュ形状やコイルばね形状とすれば、圧電センサとの対向面に容易に凸部または凹部または孔部を形成できるので、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできる。
【0019】
本発明の請求項5にかかる挟み込み防止装置は、圧電センサを請求項1〜4に記載の対向部材に沿って配設するものである。
【0020】
そして圧電センサを少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する対向部材に沿って配設すると、圧電センサ自身が少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有することになり、物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできる。
【0021】
本発明の挟み込み防止装置は、圧電センサならびに圧電センサ荷重検出装置により移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備えたものである。
【0022】
そして、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減している場合は、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。一方、荷重検出装置により圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減している場合は、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。よっていずれの場合も圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0024】
(実施例1)
図1に本発明の実施例1の挟み込み防止装置の外観図を示す。本実施例は開閉部として例えば車両用のパワーウィンドウに応用した場合を示している。図中、1は移動部材としての窓ガラス、2は窓ガラス1を昇降するためのクランク、3はクランク2を駆動する駆動手段で例えばパルス駆動の電動モータからなる。4は例えば駆動手段3に印加されるパルス信号をカウントして窓ガラス1の開閉位置を検出する開閉位置検出部である。5は例えばパルス信号を出力して駆動手段3を制御する制御手段である。6は当接部材としての窓枠で、窓ガラス1と窓枠6とで開閉部7を形成している。8は圧電センサで窓枠6に沿って配設されており、窓ガラス1と窓枠6との間に物体を挟み込んだ時に物体が圧電センサ8に接触すること、あるいは挟み込んだ振動が伝わることにより、挟み込みを検知するものである。
【0025】
図2は図1のA−A線位置での断面図である。図2は窓ガラス1の上昇により物体9が窓枠6に取付けられたウエザストリップ10との間に挟まれる様子を示しており、同時に窓枠6に取付けられた圧電センサ8にも接触している。圧電センサ8は物体9との接触荷重を受ける面として凸部11を形成しているため、凸部11が無い場合と比べると物体との接触面積が随分小さくなっている。これは凸部11は物体9と接触しやすいが、凸部11の周囲は物体9と接触しにくくなるためである。
【0026】
図3は、物体9が圧電センサ8に接触した時の様子を示す図で、図3(a)は従来の形状の圧電センサ8を用いた場合、図3(b)は本実施例の凸部11を有する圧電センサ8を用いた場合である。従来例と本実施例で、接触面の奥行き方向の長さXは等しいとして、接触面の左右方向の長さをそれぞれYo、Ya(=Y1+Y2+Y3+Y4+Y5)とおくと、物体9と圧電センサ8との接触面積はそれぞれSo=X×Yo、Sa=X×Yaとなり、接触面積の比はSo:Sa=Yo:Yaで表せる。図3(a)、図3(b)より明らかにYo>Yaなので、接触面積もSo>Saとなる。ここで圧電センサ8は圧電材12に一対の電極13a、13bを有する構成で、本実施例の図3(b)の場合は圧電材12と電極13bの形状により凸部11を形成して接触面積を低減している。
【0027】
本実施例では、物体9から接触荷重を受ける面(凸部11)が小さく、単位面積当たりにかかる荷重(即ち圧力)が大きくなり、荷重による変位が大きくなる。圧電センサ8は変位が大きいほどひずみが増え、発生する電荷が増え、分極電流が増加して、出力が大きくなるものであるから、本実施例の圧電センサ8の構成により、大きな出力を発生させることができる。
【0028】
本実施例の圧電センサ8は、ゴム弾性体の有機基材に圧電セラミックとしてチタン酸ジルコン酸鉛の焼結粉体を配合して分極処理した可撓性のある圧電材12の両面に、導電ゴムから成る一対の電極13a、13bを形成しており、圧電センサ8全体として可撓性を有している。本実施例のように、圧電材をゴム弾性体に圧電セラミックを混合して形成すれば、圧電セラミックは脱分極の耐熱性に優れているので、高温となる場所(たとえば直射日光にさらされる場所)に配設することができる。例えば窓枠やウエザストリップ(図2の10)の室外側とかサイドバイザー(日除け用のひさし)等、外界に暴露される場所に配設しても耐久性がよく、物体の接触を検出する際の信頼性が向上する。また、圧電材と電極のそれぞれにゴム弾性体を使用しているので加工性がよく任意の形状に対応可能である。
【0029】
なお、この実施例ではチタン酸ジルコン酸鉛の焼結粉体を使用したが、耐熱性が高いもので、かつ分極による結晶構造の配向性、即ち、圧力荷重に対して電圧を発生する性質(ピエゾ性)を有するものであれば、たとえばチタン酸鉛の焼結粉体を使用しても本実施例と同様の結果を得ることができる。
【0030】
なお、使用温度が低い場合は、特開平10−76843号公報、特開平10−132669号公報などに示される従来のポリフッ化ビニリデンフィルムを使用してもよい。
【0031】
なお、電極は導電ゴムに限られるものではなく、銅、アルミ等の金属箔や導電性塗料などでもよい。
【0032】
なお圧電センサ8を絶縁体で覆うことや、さらにその周囲をシールド材で覆ってもよい。
【0033】
図4は本実施例の配設前の圧電センサ8の構成図である。窓枠6の形状に沿わせて圧電センサ8を成型して配設している。接触検出手段14は、圧電センサ8の端部に一体に構成され、圧電材12が発生する出力を一対の電極から取り出して物体の接触を判定するために回路処理している。リード線15は、接触検出手段14と制御手段5の信号の授受を行なうものである。
【0034】
なお、図4では長手方向には凹凸の無い一定形状を示したが、もちろん長手方向にも凹凸を構成してもよい。
【0035】
図5は本実施例の圧電センサの出力特性図である。時間t0で窓ガラス1と窓枠6の間に物体(例えば運転手の指)を挟み込んだとすると、圧電センサは図5のような出力を発生する。
【0036】
図6は本実施例の回路処理を示すブロック図である。圧電センサ8からの出力信号に基づいて物体の接触を検出する接触検出手段14は、圧電センサ8からの出力信号のインピーダンスを変換するインピーダンス変換部16、インピーダンス変換部16からの出力信号を濾波する第1の濾波部17と第2の濾波部18、前記2つの濾波部からの出力信号に基づき物体の接触を判定する接触判定部19を有している。なお接触検出手段14は使用環境や設置場所等に応じて電気的ノイズから信号処理回路を遮蔽するため、金属ケース等で全体を電気的にシールドしてもよい。
【0037】
また図示しないが、圧電センサ8の先端部には電極13a、13b間の断線・短絡検出用の抵抗体が接続されている。
【0038】
図7は上記の断線・短絡検出のための回路図の一例を示したものである。図中、Psは圧電センサ8、r1は断線検出用の抵抗体で、上述のように一対の電極13a、13bの間(図中、p1とp2)に接続されている。r1は他の抵抗r2を介して電源Vdと接続されている。r3、r4は圧電センサ8からの信号導出用の抵抗、Q1はインピーダンス変換用のFETである。
【0039】
次に図に基づいて挟み込み防止装置としての動作、作用について説明する。
【0040】
図1において、例えば窓ガラス1が下方に有り開閉部7が開口されている状態で、車両内に設置されたパワーウィンドウの駆動スイッチを作動させ駆動手段3が作動して窓ガラス1が閉じられようとする最中に、人体の一部や鞄などのような物体が圧電センサ8に接触する場合を想定する。物体の接触により接触荷重が圧電センサ8の接触部位に加わり、変位が生じて圧電材12自身に歪が生じるので、圧電効果により歪に応じ図5のような電圧が発生する。発生する電圧レベルは接触時の変位の大きさと、圧電センサ8自体の感度、すなわち圧電材12の圧電定数などにより変化する。
【0041】
次に、圧電センサ8から発生した信号は接触検出手段14のインピーダンス変換部16で低インピーダンスに変換される。インピーダンス変換された信号は第1の濾波部17と第2の濾波部18で濾波される。図8に第1の濾波部17と第2の濾波部18の濾波特性を示す。図中、縦軸はパワーPw、横軸は周波数fである。同図において、物体の接触、特に人体の一部が接触する場合には主に低周波のf1を中心とする出力信号が圧電センサ8から出力される。そのため、第1の濾波部17の濾波特性をf1としている。また、本実施例のように車両のパワーウィンドウへの適用の場合には、主にエンジンや走行による振動等によるf2(>f1)を中心とする車両自体の振動がノイズ成分として圧電センサ8に重畳してくるため、第2の濾波部18ではこの成分を捉えるため、濾波特性をf2としている。次に、接触判定部19では上記2つの濾波部からの濾波信号に基づき物体の接触の判定を行う。
【0042】
図9はその判定基準を図示したものである。横軸は第2の濾波部18からの出力信号Vf2、縦軸は第1の濾波部17からの出力信号Vf1である。同図において、領域D1のようにVf1/Vf2の値が大きい場合は物体が接触したと判定し、領域D2のようにVf1/Vf2の値が小さい場合は接触なしと判定する。
【0043】
図10は上記の判定の手順を示した判定フロー図である。ステップ20でパワーウィンドウのSWがオンされると、ステップ21で駆動手段が作動し、ステップ22でVf1及びVf2が算出され、ステツプ23でVf1とVf2の比kが算出される。次にステップ24でkが予め定められた設定値k0と比較され、k>k0ならばステップ25で物体の接触ありと判定され、ステップ26で駆動手段が停止される。またステップ24でk>k0でないならばステップ27で接触なしと判定され、ステップ28で窓の閉め切りが検知されるまでステップ22以降の処理が継続される。窓の閉め切りの検知は、例えば窓の閉め切りの際に駆動手段のモータに印加される電流値がある一定値以上になることを検出して行う。ステップ26では駆動手段を逆転させて窓を下降するようにしても良い。
【0044】
上記では2つの濾波部を設けたが、濾波部は2つに限定するものではなく、挟み込みを検出するよう適用事例に応じて濾波部の特性や個数を最適化することも可能である。特に圧電センサ8の形状や配設方法により、物体が接触する場合の出力信号レベルが、車両の振動ノイズ等のレベルよりはるかに大きくなる場合は濾波部が一つでも良いし、場合によっては濾波部を用いなくてもよい。また、kの値は車両の振動特性等を考慮して事前に実験等により最適化すればよい。
【0045】
また、図7のように抵抗体r1を介して電極間に電圧を印加して出力VO1をモニタすることにより電極の断線を検出することができる。すなわち、図7において正常時のVO1は、電源電圧Vdに対して、r1、r2、r3の分圧値となる。圧電センサ8の電極が断線した場合に等価的に点p1または点p2がオープンとなるとすれば、VO1はr2、r3の分圧値となる。電極がショートすると等価的にはp1、p2がショートすることになるので、VO1は0になる。このようにVO1の値に基づいて圧電センサ8の電極の断線やショートといった異常を検出することができ、信頼性を向上することができる。
【0046】
以上の作用により、圧電センサの出力信号に基づき物体の接触を検出した時点で開閉部の開閉動作を停止することができる上、圧電センサは物体との接触により生じる歪を電気的な信号に変換して出力するので、雨や洗車等により圧電センサが濡れても誤検出がなく精度良く挟み込みを検知することができる。また圧電センサは感圧スイッチのような接点がないので、接触不良や短絡がなく耐久性のよい挟み込み防止装置を実現できる。
【0047】
また本実施例のように、圧電センサを窓枠側即ち当接部材に配設すれば、開閉に際して移動しないのでリード線の保持等が容易である。
【0048】
なお、圧電センサを窓ガラス側即ち移動部材側に配設してもよい。この場合は挟み込み時に間違いなく接触するため、検知ミスや検知遅れが起こりにくい効果がある。また同様に、自動車の場合は窓枠よりも窓の方が位置的に低く物体が挟み込まれる時には窓枠よりも窓ガラスに先に接触する場合が多いと考えられるので、窓ガラス側のみの接触で早めに検知することができて、挟み込まれる前に停止できる可能性が高く、より安全性が高い。
【0049】
また本実施例では、接触検出手段が圧電センサから出力される信号のうち物体の接触時に発生する特定周波数成分のみを検出するので、例えば開閉部の開閉動作による振動や外来振動など物体の接触以外の振動による圧電センサの出力信号と物体の接触による出力信号とを区別して物体の接触を検出することができ、検出精度が向上する。
【0050】
また開閉位置検出部から出力される開閉位置信号が予め定められた設定範囲にある場合にのみ物体が接触したかどうかの出力信号を有効とすれば、開閉位置が上記設定範囲を越えて正常に開閉部が閉め切られている場合には、圧電センサから信号が出て接触検出手段が物体の接触有りと検出しても、その検出信号を無視して不要な開放を防止することができる。
【0051】
また圧電センサがセンサ先端側の電極間にセンサの断線や短絡を検出するための抵抗体を備え、抵抗体を介して電極間に電圧を印加してモニタすることにより電極の断線や短絡を検出することができるので信頼性を向上することができる。
【0052】
なお上記実施例では圧電センサを1本配設したが、たとえば2本配設すれば以下のような効果が生じる。
【0053】
まず1本を挟み込みの検知用に開閉部に配設し、他の一本を車両の振動の検知用に配設すれば、両者の出力の差をとることで車両の振動による出力だけが相殺できて挟み込みの検知精度が向上する。
【0054】
また移動部材側と当接部材側のそれぞれに配設し、両者ともに挟み込みの出力を発生した場合のみ駆動手段の駆動を停止するようにすれば、挟み込み防止の精度が向上する。たとえば全開の状態から窓ガラスが上昇し始めた時に運転手の指が触れた程度では挟み込みには至らないので本来停止させる必要は無い(停止してしまうと再度スイッチを押さなければならない)。このような場合には停止させず、本当に挟み込まれた時のみ停止させることができる。
【0055】
(実施例2)
図11、図12は本発明の実施例2の圧電センサ8の構成を示す。図11は断面図を拡大したもので、図12は横から見た図である。本実施例の圧電センサ8は、内層電極13aと外層電極13bとの間に圧電材12を配設し、被覆材29で周囲を覆うことで同軸ケーブル状に構成されている。被覆材29は凹部30を有しており、凹部30は物体と接触しにくく、凹部30を除く部位でのみ物体と接触する構成である。よって物体から接触荷重を受ける面積を低減できるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0056】
本実施例によれば、圧電センサ8がケーブル状なので表面が曲面であり、より物体との接触荷重を受ける面積を低減できる可能性が有る。
【0057】
また本実施例の圧電センサ8は、外層電極13bが電気的なシールド層を兼ねることができる。
【0058】
なお図12では凹部30を円形状に示したが、これに限定されるものではなく、長手方向あるいは円周方向に連続的に溝のように形成してもよい。
【0059】
なお被覆材29がウエザストリップやサイドバイザーと一体化される構成としてもよい。この場合は部品点数、組立て工程を削減できる。
【0060】
また車体に限らずウエザストリップやサイドバイザーに被覆材29ごと装着してもよい。
【0061】
(実施例3)
図13に本発明の実施例3の圧電センサ8の構成を示す。本実施例の圧電センサ8は孔部31を有しており、孔部31は物体と接触しにくく、孔部31を除く部位でのみ物体と接触する構成である。よって物体から接触荷重を受ける面積を低減できるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0062】
(実施例4)
図14に本発明の実施例4の圧電センサ8の構成を示す。圧電センサ8はアコーデオン形状(あるいは蛇腹形状)に折り曲げられた構成で、物体が下方より上向きに移動して圧電センサ8と接触する場合、凹部30と凸部11が均等に配置された構成といえる。この場合、凸部11は物体と接触しやすく、凹部30は物体と接触しにくい。よって圧電センサ8が物体から接触荷重を受ける面積を低減できるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0063】
以上、実施例1から実施例4においては、圧電センサ自身の構成により、物体から接触荷重を受ける面積を低減する例を示したが、それぞれの実施例はその構成にのみ限定されるのではなく、互いに組み合わせたり、一部を置き換えたりしてもよい。
【0064】
なお挟み込み防止装置に関しては、物体が挟み込まれる時に接触可能な位置に圧電センサを装着すればよいので、移動部材か当接部材に装着してもよいし、それ以外の開閉部の近傍の部品(たとえばウエザストリップやサイドバイザーなど)に装着してもよい。
【0065】
(実施例5)
図15に本発明の実施例5の圧電センサの荷重検出装置を示す。本実施例は、圧電センサを配設する方法により、物体から接触荷重を受ける面積を低減する例である。圧電センサ8を対向部材としてのウエザストリップ32に配設したもので、ウエザストリップ32は圧電センサ8との対向面に孔部33を形成している。圧電センサ8の下方からやってきた物体がウエザストリップ32に接触した場合、孔部33に対向する位置の圧電センサ8は孔部33からは押されないので物体からの荷重を受けにくく、対向部材の孔部33の無い部位に対向する位置の圧電センサ8でのみ荷重を受けることになる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けやすい部位と受けにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できることになる。結局、孔部33により接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0066】
(実施例6)
図16に本発明の実施例6の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は対向部材に凸部を形成したもので、図16(a)は圧電センサ8と対向部材34を別々に構成した例、図16(b)は圧電センサ8を対向部材としてのウエザストリップ32内に装着した例で、いずれも圧電センサ8との対向面に凸部35を形成している。圧電センサ8の下方からやってきた物体が対向部材34またはウエザストリップ32に接触した場合、凸部35に対向した位置の圧電センサ8は凸部35に押されるために物体からの荷重を受けやすく、凸部35の周囲に対向した位置の圧電センサ8は物体からの荷重を受けにくくなる。よって圧電センサは物体からの荷重を受けやすい部位と受けにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できることになる。結局、凸部35により接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0067】
(実施例7)
図17に本発明の実施例7の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、車両のパワーウインドウ用の挟み込み防止装置に関する例で、移動部材としての窓ガラス36に可撓性のある圧電センサ8を配設した例である。窓ガラス36の先端には凹部37が形成されており、物体が圧電センサ8の上方から接触した場合、圧電センサ8が撓んで窓ガラス36の先端に接するまで押されていく。さらに引き続き荷重が加わったとき、窓ガラス36は圧電センサからみて物体とは反対側に配置された対向部材と考えられ、対向部材の凹部37に対向した位置の圧電センサ8は凹部37に妨げられないので下向きに変位しやすく、凹部37の周囲に対向した位置の圧電センサ8は変位しにくくなる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けた時に変位しやすい部位と変位しにくい部位を有することになるので、圧電センサ8内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0068】
なお本実施例では窓ガラス36が対向部材を兼ねているが、別部品で構成しても良い。
【0069】
(実施例8)
図18に本発明の実施例8の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、アコーデオン状の対向部材34を支持部材38に配設し、対向部材34に圧電センサ8を配設したもので、下方からやってきた物体が圧電センサ8に当たる構成である。対向部材34は圧電センサ8からみて物体とは反対側に配置されており、凸部35と凹部37を有している。この場合、凸部35に対向した位置の圧電センサ8は凸部35に妨げられるために物体からの荷重を受けても変位しにくく、凹部37に対向した位置の圧電センサ8は凹部37に妨げられないので物体からの荷重を受ければ変位しやすくなる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けた時に変位しやすい部位と変位しにくい部位を有することになるので、圧電センサ8内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0070】
(実施例9)
図19に本発明の実施例9の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、メッシュ39で圧電センサ8を覆っており、対向部材としてのメッシュ39は圧電センサ8からみて物体側に配置されている。下方からやってきた物体がメッシュ39に接触して、メッシュ39の凸部35を介して圧電センサ8に接触荷重を伝達する構成である。メッシュ39により圧電センサ8が物体から接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0071】
(実施例10)
図20に本発明の実施例10の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、コイルばね40を介して圧電センサ8を支持しており、対向部材としてのコイルばね40は圧電センサ8からみて物体とは反対側に配置されている。下方からやってきた物体が圧電センサ8に接触した場合、コイルばね40のコイル部分に対向した位置の圧電センサ8は荷重を受けても変位しにくく、空隙に対向した位置の圧電センサ8は変位しやすくなる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けた時に変位しやすい部位と変位しにくい部位を有することになるので、圧電センサ8内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0072】
(実施例11)
図21に本発明の実施例11の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、圧電センサ8を凸部35と凹部37を有する対向部材34に沿って配設しており、結果的に圧電センサ8自身が凹凸を有することになる。本実施例は、圧電センサ8が物体から接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0073】
なお対向部材は、物体に対して反対の面に凹凸を形成して圧電センサを沿わせることも考えられる。この場合は、支持部材に近い位置(対向部材の凸部上)の圧電センサは支持部材に妨げられて変位しにくいのに対して、支持部材から遠い位置(対向部材の凹部上)の圧電センサは支持部材に妨げられないので変位しやすい。よって変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0074】
(実施例12)
図22は本発明の実施例12の挟み込み防止装置の動作ブロック図である。図22では圧電センサ8の断面も示している。本実施例は、他の実施例の圧電センサ8を積層フィルム状にして以下の構成に置き換えたものである。電極13cと13d、13eと13fを備えた2つの圧電材12a、12bを積層して成形され、圧電センサ8を構成する一方の圧電材12bの電極13eと13fに特定周波数の電圧信号を印加して振動を発生させる信号印加部41を備え、接触検出手段14は、前記振動により他の圧電材12aの電極13cと13d間に発生する出力信号に基づき圧電センサ8に印加される圧力を演算する圧力演算部42と、圧力演算部42の出力信号に基づき物体の接触を判定する接触判定部43とを備えたところにある。接触検出手段14は、信号印加部41の発生周波数f3を中心周波数とする第1のバンドパスフィルタ44と、図8のf1を中心周波数とする第2のバンドパスフィルタ45を備えている。本実施例の圧電センサ8はフィルム状なので、積層しても厚みは薄いので、変位を大きくして、出力を大きくすることができる。
【0075】
なお、圧電センサ8の外側についてはPET等の保護層や電気的シールドのための金属フィルムで封止してもよい。
【0076】
次に動作、作用について説明する。
【0077】
一言で言えば、他の実施例では圧電センサの出力発生により挟み込みを検知していたのに対し、本実施例は圧電センサの出力の変化により挟み込みを検知するものである。
【0078】
圧電センサ8では信号印加部41で発生する周波数f3の電圧信号に応じて圧電材12bが振動する。そしてその振動に応じて圧電材12aでは圧電起電力が発生する。発生した出力信号は第1のバンドパスフィルタ44で濾波される。この時の信号印加部41の発振信号V3、第1のバンドパスフィルタ44の出力V4の信号波形は、それぞれ図23(a)、図23(b)のようになる。図23(a)、図23(b)で縦軸はV3とV4、横軸は時間tで、時刻t1で物体が圧電センサ8に接触して圧力Pr1が印加されたものとする。物体が接触していない状態(t<t1)では、V4の振幅はD40である。そして時刻t1で物体が接触し圧電センサ8に圧力Pr1が印加されると、V4の振幅はD41に変化する。ここで、V4の振幅D4と圧力Prとの間には図24に示すような関係があり、圧力Prが増加するとD4は減少する特性をもつ。この特性は発振周波数f3や圧電材12a、12bの形状等により変化するので、用途に応じて予め実験等により最適化すればよい。圧力演算部42では図24の関係に基づいてD41からPr1を算出する。そして接触判定部43ではPr1がある閾値Pr0以上ならば物体が接触したと判し、Pr1がPr0より小ならば物体の接触は無いと判定する。そして窓ガラスなどの移動部材の閉動作中に上記のようにして物体の接触が検出されると、閉動作を逆転し物体の挟み込みを防止するのである。本実施例では圧電センサをフィルム状に薄く構成して変形部位の曲率半径を小さくしたので、振幅D4が全体に大きくなり、Pr1の変化を見るのが容易となるので、判定の精度を上げることができる。
【0079】
上記作用により、例えば車両の走行時の振動が圧電センサ8に印加される場合は、実施例1のように圧電センサ8が振動や歪みを検出するタイプであると、走行振動による圧電センサ8の出力信号と物体の接触による圧電センサ8の出力信号との区別が困難となる場合があるが、本実施例の圧電センサ8は物体の接触圧に応じた信号を出力し、接触検出手段14の圧力演算部42により物体の接触圧を検出し、接触判定部43により接触を判定するので、上記のような走行振動が印加されても精度よく物体の接触を検出することができる。
【0080】
尚、接触判定部43ではPr1がある閾値Pr0以上ならば物体が接触したと判定するが、Pr1の変化率や変動パターンに基づき物体の接触を判定するようにしてもよい。
【0081】
また、図22に示すように接触検出手段14はf1を中心周波数とする第2のバンドパスフィルタ45を備えており、接触判定部43が第2のバンドパスフィルタ45と圧力演算部42の双方の出力信号に基づき物体の接触を検出する構成としてもよい。この構成による作用を以下に述べる。図23(c)は第2のバンドパスフィルタ45の出力V5の信号波形を示したものである。図中、縦軸はV5、横軸は時間tである。時刻t1で圧電センサに物体が接触すると、圧電材12aには圧電材12aによる周波数f3の振動と、物体の接触による歪みによりf3よりも低いf1近傍の振動が印加され、圧電材12aからはf3とf1の重畳した周波数成分をもつ信号が出力される。この出力信号に基づき、圧力演算部42では第1のバンドパスフィルタ44経由で上述したように圧力Prが算出され、第2のバンドパスフィルタ45の出力V5には例えば図23(c)のような周波数f1で振幅D5の信号が現れる。そして接触判定部43では、例えばD5がある閾値D50以上の場合は、圧電センサ8に車の走行振動のような外来振動が印加されたとして、上述のようにPrの値に基づき物体の接触を判定する。またD5がD50より小の場合は、D5の変化率や変動パターンとPrの値の少なくとも1つに基づき物体の接触を判定する。これにより、外来振動の有無を圧電センサ8の出力信号により判定し、外来振動の有無に応じて接触判定の閾値を切り替えて接触判定を行うので、圧電センサにより検出する振動のみあるいは圧力のみで物体の接触を検出する場合よりも検出精度が向上する。
【0082】
なお、自動車の挟み込み防止装置における圧電センサの配置に関しては、窓枠側の車体、ウエザストリップ、サイドバイザー等に配設したり一体化しても良いし、窓ガラス側に配設しても良い。ハードトップタイプの場合は窓枠の代わりに車両本体側に配設してもよい。
【0083】
なお、上述の実施例では車両用のパワーウインドウに圧電センサを用いた挟み込み防止装置について説明したが、窓に限らずドアやサンルーフなどの扉に使用してもよいし、シャッターに使用してもよい。基本的には移動部材の移動により当接部材との隙間が変化するもの、即ち何らかの物体を挟み込む可能性の有るものに応用できる。
【0084】
なお電車のドアや玄関の自動ドアなどの場合、2つの移動部材が対向しているように考えられるが、一方の移動部材から見た他方を当接部材と置くことで本発明に含まれるものである。
【0085】
なお、上記各実施例の構成はそれぞれが限定された構成ではなく、他の実施例で示された構成に一部置き換えたり、組み合わせたりすることが可能であり、目的に応じて最適な組み合わせを選べばよい。たとえば対向部材は圧電センサから見て物体側にあってもよいし、物体とは反対側にあっても良い。圧電センサを対向部材に配設してもよいし、別のものに配設してもよい。凸部、凹部、孔部はそれに限定するものではなく、お互いに入れ替えたり、それぞれを組み合わせることも容易に考えられる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1に係る挟み込み防止装置は、圧電センサ自身が物体から接触荷重を受ける面積を低減しているので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる効果がある。
【0087】
また、本発明の請求項2に係る挟み込み防止装置は、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有している。そして圧電センサの凸部は物体と接触しやすく、凸部の周囲は物体と接触しにくくなる。逆に、圧電センサの凹部または孔部は物体と接触しにくく、凹部の周囲または孔部の周囲は物体と接触しやすくなる。よって圧電センサは物体と接触しやすい部位と接触しにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できる。よって容易に圧電センサの出力を大きくできる効果がある。
【0088】
また、本発明の請求項3にかかる挟み込み防止装置は対向部材をメッシュ形状とし、本発明の請求項4にかかる挟み込み防止装置は対向部材をコイルばね形状としているので、圧電センサとの対向面に容易に凸部または凹部または孔部を形成できる。よって、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできるので、容易に圧電センサの出力を大きくできる効果がある。
【0089】
また、本発明の請求項5に係る挟み込み防止装置は、圧電センサを少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する対向部材に沿って配設するので、圧電センサ自身が少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有することになり、物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできる。よって容易に圧電センサの出力を大きくできる効果がある。
【0090】
さらに、本発明の挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備えたものである。
【0091】
そして、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減している場合は、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0092】
一方、荷重検出装置により圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減している場合は、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0093】
よっていずれの場合も圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における圧電センサ荷重検出装置および挟み込み防止装置の外観図
【図2】同装置のA−A線位置での断面図
【図3】(a)従来の圧電センサの配設構成を示す断面図
(b)本発明の実施例1における圧電センサの配設構成を示す外観図
【図4】同圧電センサの外観構成図
【図5】同圧電センサの特性図
【図6】同挟み込み防止装置のブロック図
【図7】同装置の断線検出用の回路図
【図8】同装置の第1の濾波部と第2の濾波部の濾波特性を示す特性図
【図9】同装置の開閉部への物体の接触を判定するための判定基準を示した特性図
【図10】同装置の動作を表すフローチャート
【図11】本発明の実施例2における圧電センサの断面図
【図12】同圧電センサの外観構成図
【図13】本発明の実施例3における圧電センサの構成図
【図14】本発明の実施例4における圧電センサの断面図
【図15】本発明の実施例5における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図16】(a)本発明の実施例6における圧電センサの配設構成を示す断面図
(b)他の実施例における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図17】本発明の実施例7における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図18】本発明の実施例8における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図19】本発明の実施例9における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図20】本発明の実施例10における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図21】本発明の実施例11における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図22】本発明の実施例12における挟み込み防止装置の動作ブロック図
【図23】(a)同装置の信号印加部の発振信号V3の波形特性図
(b)第1のバンドパスフィルタの出力V4の波形特性図
(c)第2のバンドパスフィルタの出力V5の出力波形を示した波形特性図
【図24】同装置の第1のバンドパスフィルタの出力V4の振幅D4と圧力Prとの関係を示した特性図
【符号の説明】
1 窓ガラス(移動部材)
5 制御手段
6 窓枠(当接部材)
7 開閉部
8 圧電センサ
9 物体
11 凸部(接触荷重を受ける面)
30、37 凹部
31、33 孔部
32 ウエザストリップ(対向部材)
34 対向部材
35 凸部
36 窓ガラス(移動部材、対向部材)
39 メッシュ(対向部材)
40 コイルばね(対向部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する構成とすることで物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項2】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する対向部材を圧電センサに対向させる構成とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項3】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をメッシュ形状とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項4】移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をコイルばね形状と物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置。
【請求項5】圧電センサを対向部材に沿って配設する構成とした請求項1〜4のいずれか1項に記載の挟み込み防止装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は物体の接触により出力を発生する圧電センサおよび圧電センサの荷重検出装置と、圧電センサを窓や扉やシャッターといった開閉部に配設して物体の挟み込みを検知して防止する挟み込み防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の圧電センサと圧電センサ荷重検出装置および挟み込み防止装置は、特開平10−76843号公報、特開平10−132669号公報に記載のように、ケーブル状あるいはフィルム状の圧電センサを窓や窓枠に配設して、圧電センサからの出力発生により物体の挟み込みを検出するものがあった。圧電センサは加えられた応力(ひずみ)に比例した電荷を発生するので、それを分極電流として取り出すことにより、物体の挟み込みによる接触を検知することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の圧電センサ荷重検出装置および挟み込み防止装置では以下のような課題を有していた。
【0004】
圧電センサは電気的にはコンデンサCに近いものであり、出力端に抵抗Rを並列に接続すれば、カットオフ周波数fc(=1/(2πCR))なるハイパスフィルターになる。一方、物体の接触による出力信号は、一般的には数十Hz以下の低周波信号であるため、ハイパスフィルターで処理してしまうと出力レベルが大幅にダウンしてしまうおそれがある。よって抵抗Rをできるだけ大きくしてカットオフ周波数fcを下げる必要があるが、1MΩ以上の高抵抗になると高価である上、ノイズ対策等取り扱いが難しくなる。このため、そこそこ実用的な高抵抗を採用しなければならず、出力レベルを多少犠牲にする場合も起こりうる。また圧電センサは、圧電材料や形状にもよるが、出力インピーダンスが非常に高い上、もともと出力電圧が小さいという傾向もある。よって、FETなどのインピーダンス変換回路で受けたあと、増幅回路で大幅にゲインを上げるなどの処理をしなければならない。
【0005】
結局のところ、従来の圧電センサならびに圧電センサ荷重検出装置ならびに挟み込み防止装置では圧電センサの出力が小さいという課題を有していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電センサと圧電センサ荷重検出装置は、上記課題を解決するために、物体から接触荷重を受ける面積を低減したものである。
【0007】
上記発明によれば、物体から接触荷重を受ける面積を低減しているので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0008】
また本発明の圧電センサ荷重検出装置は、物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したものである。
【0009】
上記発明によれば、物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減しているので、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0010】
また本発明の挟み込み防止装置は、物体から接触荷重を受ける面積を低減するか、または物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減した圧電センサならびに圧電センサ荷重検出装置により、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備えたものである。
【0011】
上記発明によれば、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減している場合は、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。よって圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる。一方、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減している場合は、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する構成とすることで物体から接触荷重を受ける面積を低減したものである。
【0013】
そして圧電センサ自身が物体から接触荷重を受ける面積を低減しているので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0014】
本発明の請求項2にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開 閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有したものである。
【0015】
そして圧電センサの凸部は物体と接触しやすく、凸部の周囲は物体と接触しにくくなる。逆に、圧電センサの凹部または孔部は物体と接触しにくく、凹部の周囲または孔部の周囲は物体と接触しやすくなる。よって圧電センサは物体と接触しやすい部位と接触しにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できる。
【0016】
本発明の請求項3にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をメッシュ形状とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置としたものである。
【0017】
本発明の請求項4にかかる挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記圧電センサの出力を大きくするべく、対向部材をコイルばね形状とし物体から接触荷重を受ける面積を低減した挟み込み防止装置としたものである。
【0018】
そして対向部材をメッシュ形状やコイルばね形状とすれば、圧電センサとの対向面に容易に凸部または凹部または孔部を形成できるので、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできる。
【0019】
本発明の請求項5にかかる挟み込み防止装置は、圧電センサを請求項1〜4に記載の対向部材に沿って配設するものである。
【0020】
そして圧電センサを少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する対向部材に沿って配設すると、圧電センサ自身が少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有することになり、物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできる。
【0021】
本発明の挟み込み防止装置は、圧電センサならびに圧電センサ荷重検出装置により移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備えたものである。
【0022】
そして、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減している場合は、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。一方、荷重検出装置により圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減している場合は、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。よっていずれの場合も圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0024】
(実施例1)
図1に本発明の実施例1の挟み込み防止装置の外観図を示す。本実施例は開閉部として例えば車両用のパワーウィンドウに応用した場合を示している。図中、1は移動部材としての窓ガラス、2は窓ガラス1を昇降するためのクランク、3はクランク2を駆動する駆動手段で例えばパルス駆動の電動モータからなる。4は例えば駆動手段3に印加されるパルス信号をカウントして窓ガラス1の開閉位置を検出する開閉位置検出部である。5は例えばパルス信号を出力して駆動手段3を制御する制御手段である。6は当接部材としての窓枠で、窓ガラス1と窓枠6とで開閉部7を形成している。8は圧電センサで窓枠6に沿って配設されており、窓ガラス1と窓枠6との間に物体を挟み込んだ時に物体が圧電センサ8に接触すること、あるいは挟み込んだ振動が伝わることにより、挟み込みを検知するものである。
【0025】
図2は図1のA−A線位置での断面図である。図2は窓ガラス1の上昇により物体9が窓枠6に取付けられたウエザストリップ10との間に挟まれる様子を示しており、同時に窓枠6に取付けられた圧電センサ8にも接触している。圧電センサ8は物体9との接触荷重を受ける面として凸部11を形成しているため、凸部11が無い場合と比べると物体との接触面積が随分小さくなっている。これは凸部11は物体9と接触しやすいが、凸部11の周囲は物体9と接触しにくくなるためである。
【0026】
図3は、物体9が圧電センサ8に接触した時の様子を示す図で、図3(a)は従来の形状の圧電センサ8を用いた場合、図3(b)は本実施例の凸部11を有する圧電センサ8を用いた場合である。従来例と本実施例で、接触面の奥行き方向の長さXは等しいとして、接触面の左右方向の長さをそれぞれYo、Ya(=Y1+Y2+Y3+Y4+Y5)とおくと、物体9と圧電センサ8との接触面積はそれぞれSo=X×Yo、Sa=X×Yaとなり、接触面積の比はSo:Sa=Yo:Yaで表せる。図3(a)、図3(b)より明らかにYo>Yaなので、接触面積もSo>Saとなる。ここで圧電センサ8は圧電材12に一対の電極13a、13bを有する構成で、本実施例の図3(b)の場合は圧電材12と電極13bの形状により凸部11を形成して接触面積を低減している。
【0027】
本実施例では、物体9から接触荷重を受ける面(凸部11)が小さく、単位面積当たりにかかる荷重(即ち圧力)が大きくなり、荷重による変位が大きくなる。圧電センサ8は変位が大きいほどひずみが増え、発生する電荷が増え、分極電流が増加して、出力が大きくなるものであるから、本実施例の圧電センサ8の構成により、大きな出力を発生させることができる。
【0028】
本実施例の圧電センサ8は、ゴム弾性体の有機基材に圧電セラミックとしてチタン酸ジルコン酸鉛の焼結粉体を配合して分極処理した可撓性のある圧電材12の両面に、導電ゴムから成る一対の電極13a、13bを形成しており、圧電センサ8全体として可撓性を有している。本実施例のように、圧電材をゴム弾性体に圧電セラミックを混合して形成すれば、圧電セラミックは脱分極の耐熱性に優れているので、高温となる場所(たとえば直射日光にさらされる場所)に配設することができる。例えば窓枠やウエザストリップ(図2の10)の室外側とかサイドバイザー(日除け用のひさし)等、外界に暴露される場所に配設しても耐久性がよく、物体の接触を検出する際の信頼性が向上する。また、圧電材と電極のそれぞれにゴム弾性体を使用しているので加工性がよく任意の形状に対応可能である。
【0029】
なお、この実施例ではチタン酸ジルコン酸鉛の焼結粉体を使用したが、耐熱性が高いもので、かつ分極による結晶構造の配向性、即ち、圧力荷重に対して電圧を発生する性質(ピエゾ性)を有するものであれば、たとえばチタン酸鉛の焼結粉体を使用しても本実施例と同様の結果を得ることができる。
【0030】
なお、使用温度が低い場合は、特開平10−76843号公報、特開平10−132669号公報などに示される従来のポリフッ化ビニリデンフィルムを使用してもよい。
【0031】
なお、電極は導電ゴムに限られるものではなく、銅、アルミ等の金属箔や導電性塗料などでもよい。
【0032】
なお圧電センサ8を絶縁体で覆うことや、さらにその周囲をシールド材で覆ってもよい。
【0033】
図4は本実施例の配設前の圧電センサ8の構成図である。窓枠6の形状に沿わせて圧電センサ8を成型して配設している。接触検出手段14は、圧電センサ8の端部に一体に構成され、圧電材12が発生する出力を一対の電極から取り出して物体の接触を判定するために回路処理している。リード線15は、接触検出手段14と制御手段5の信号の授受を行なうものである。
【0034】
なお、図4では長手方向には凹凸の無い一定形状を示したが、もちろん長手方向にも凹凸を構成してもよい。
【0035】
図5は本実施例の圧電センサの出力特性図である。時間t0で窓ガラス1と窓枠6の間に物体(例えば運転手の指)を挟み込んだとすると、圧電センサは図5のような出力を発生する。
【0036】
図6は本実施例の回路処理を示すブロック図である。圧電センサ8からの出力信号に基づいて物体の接触を検出する接触検出手段14は、圧電センサ8からの出力信号のインピーダンスを変換するインピーダンス変換部16、インピーダンス変換部16からの出力信号を濾波する第1の濾波部17と第2の濾波部18、前記2つの濾波部からの出力信号に基づき物体の接触を判定する接触判定部19を有している。なお接触検出手段14は使用環境や設置場所等に応じて電気的ノイズから信号処理回路を遮蔽するため、金属ケース等で全体を電気的にシールドしてもよい。
【0037】
また図示しないが、圧電センサ8の先端部には電極13a、13b間の断線・短絡検出用の抵抗体が接続されている。
【0038】
図7は上記の断線・短絡検出のための回路図の一例を示したものである。図中、Psは圧電センサ8、r1は断線検出用の抵抗体で、上述のように一対の電極13a、13bの間(図中、p1とp2)に接続されている。r1は他の抵抗r2を介して電源Vdと接続されている。r3、r4は圧電センサ8からの信号導出用の抵抗、Q1はインピーダンス変換用のFETである。
【0039】
次に図に基づいて挟み込み防止装置としての動作、作用について説明する。
【0040】
図1において、例えば窓ガラス1が下方に有り開閉部7が開口されている状態で、車両内に設置されたパワーウィンドウの駆動スイッチを作動させ駆動手段3が作動して窓ガラス1が閉じられようとする最中に、人体の一部や鞄などのような物体が圧電センサ8に接触する場合を想定する。物体の接触により接触荷重が圧電センサ8の接触部位に加わり、変位が生じて圧電材12自身に歪が生じるので、圧電効果により歪に応じ図5のような電圧が発生する。発生する電圧レベルは接触時の変位の大きさと、圧電センサ8自体の感度、すなわち圧電材12の圧電定数などにより変化する。
【0041】
次に、圧電センサ8から発生した信号は接触検出手段14のインピーダンス変換部16で低インピーダンスに変換される。インピーダンス変換された信号は第1の濾波部17と第2の濾波部18で濾波される。図8に第1の濾波部17と第2の濾波部18の濾波特性を示す。図中、縦軸はパワーPw、横軸は周波数fである。同図において、物体の接触、特に人体の一部が接触する場合には主に低周波のf1を中心とする出力信号が圧電センサ8から出力される。そのため、第1の濾波部17の濾波特性をf1としている。また、本実施例のように車両のパワーウィンドウへの適用の場合には、主にエンジンや走行による振動等によるf2(>f1)を中心とする車両自体の振動がノイズ成分として圧電センサ8に重畳してくるため、第2の濾波部18ではこの成分を捉えるため、濾波特性をf2としている。次に、接触判定部19では上記2つの濾波部からの濾波信号に基づき物体の接触の判定を行う。
【0042】
図9はその判定基準を図示したものである。横軸は第2の濾波部18からの出力信号Vf2、縦軸は第1の濾波部17からの出力信号Vf1である。同図において、領域D1のようにVf1/Vf2の値が大きい場合は物体が接触したと判定し、領域D2のようにVf1/Vf2の値が小さい場合は接触なしと判定する。
【0043】
図10は上記の判定の手順を示した判定フロー図である。ステップ20でパワーウィンドウのSWがオンされると、ステップ21で駆動手段が作動し、ステップ22でVf1及びVf2が算出され、ステツプ23でVf1とVf2の比kが算出される。次にステップ24でkが予め定められた設定値k0と比較され、k>k0ならばステップ25で物体の接触ありと判定され、ステップ26で駆動手段が停止される。またステップ24でk>k0でないならばステップ27で接触なしと判定され、ステップ28で窓の閉め切りが検知されるまでステップ22以降の処理が継続される。窓の閉め切りの検知は、例えば窓の閉め切りの際に駆動手段のモータに印加される電流値がある一定値以上になることを検出して行う。ステップ26では駆動手段を逆転させて窓を下降するようにしても良い。
【0044】
上記では2つの濾波部を設けたが、濾波部は2つに限定するものではなく、挟み込みを検出するよう適用事例に応じて濾波部の特性や個数を最適化することも可能である。特に圧電センサ8の形状や配設方法により、物体が接触する場合の出力信号レベルが、車両の振動ノイズ等のレベルよりはるかに大きくなる場合は濾波部が一つでも良いし、場合によっては濾波部を用いなくてもよい。また、kの値は車両の振動特性等を考慮して事前に実験等により最適化すればよい。
【0045】
また、図7のように抵抗体r1を介して電極間に電圧を印加して出力VO1をモニタすることにより電極の断線を検出することができる。すなわち、図7において正常時のVO1は、電源電圧Vdに対して、r1、r2、r3の分圧値となる。圧電センサ8の電極が断線した場合に等価的に点p1または点p2がオープンとなるとすれば、VO1はr2、r3の分圧値となる。電極がショートすると等価的にはp1、p2がショートすることになるので、VO1は0になる。このようにVO1の値に基づいて圧電センサ8の電極の断線やショートといった異常を検出することができ、信頼性を向上することができる。
【0046】
以上の作用により、圧電センサの出力信号に基づき物体の接触を検出した時点で開閉部の開閉動作を停止することができる上、圧電センサは物体との接触により生じる歪を電気的な信号に変換して出力するので、雨や洗車等により圧電センサが濡れても誤検出がなく精度良く挟み込みを検知することができる。また圧電センサは感圧スイッチのような接点がないので、接触不良や短絡がなく耐久性のよい挟み込み防止装置を実現できる。
【0047】
また本実施例のように、圧電センサを窓枠側即ち当接部材に配設すれば、開閉に際して移動しないのでリード線の保持等が容易である。
【0048】
なお、圧電センサを窓ガラス側即ち移動部材側に配設してもよい。この場合は挟み込み時に間違いなく接触するため、検知ミスや検知遅れが起こりにくい効果がある。また同様に、自動車の場合は窓枠よりも窓の方が位置的に低く物体が挟み込まれる時には窓枠よりも窓ガラスに先に接触する場合が多いと考えられるので、窓ガラス側のみの接触で早めに検知することができて、挟み込まれる前に停止できる可能性が高く、より安全性が高い。
【0049】
また本実施例では、接触検出手段が圧電センサから出力される信号のうち物体の接触時に発生する特定周波数成分のみを検出するので、例えば開閉部の開閉動作による振動や外来振動など物体の接触以外の振動による圧電センサの出力信号と物体の接触による出力信号とを区別して物体の接触を検出することができ、検出精度が向上する。
【0050】
また開閉位置検出部から出力される開閉位置信号が予め定められた設定範囲にある場合にのみ物体が接触したかどうかの出力信号を有効とすれば、開閉位置が上記設定範囲を越えて正常に開閉部が閉め切られている場合には、圧電センサから信号が出て接触検出手段が物体の接触有りと検出しても、その検出信号を無視して不要な開放を防止することができる。
【0051】
また圧電センサがセンサ先端側の電極間にセンサの断線や短絡を検出するための抵抗体を備え、抵抗体を介して電極間に電圧を印加してモニタすることにより電極の断線や短絡を検出することができるので信頼性を向上することができる。
【0052】
なお上記実施例では圧電センサを1本配設したが、たとえば2本配設すれば以下のような効果が生じる。
【0053】
まず1本を挟み込みの検知用に開閉部に配設し、他の一本を車両の振動の検知用に配設すれば、両者の出力の差をとることで車両の振動による出力だけが相殺できて挟み込みの検知精度が向上する。
【0054】
また移動部材側と当接部材側のそれぞれに配設し、両者ともに挟み込みの出力を発生した場合のみ駆動手段の駆動を停止するようにすれば、挟み込み防止の精度が向上する。たとえば全開の状態から窓ガラスが上昇し始めた時に運転手の指が触れた程度では挟み込みには至らないので本来停止させる必要は無い(停止してしまうと再度スイッチを押さなければならない)。このような場合には停止させず、本当に挟み込まれた時のみ停止させることができる。
【0055】
(実施例2)
図11、図12は本発明の実施例2の圧電センサ8の構成を示す。図11は断面図を拡大したもので、図12は横から見た図である。本実施例の圧電センサ8は、内層電極13aと外層電極13bとの間に圧電材12を配設し、被覆材29で周囲を覆うことで同軸ケーブル状に構成されている。被覆材29は凹部30を有しており、凹部30は物体と接触しにくく、凹部30を除く部位でのみ物体と接触する構成である。よって物体から接触荷重を受ける面積を低減できるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0056】
本実施例によれば、圧電センサ8がケーブル状なので表面が曲面であり、より物体との接触荷重を受ける面積を低減できる可能性が有る。
【0057】
また本実施例の圧電センサ8は、外層電極13bが電気的なシールド層を兼ねることができる。
【0058】
なお図12では凹部30を円形状に示したが、これに限定されるものではなく、長手方向あるいは円周方向に連続的に溝のように形成してもよい。
【0059】
なお被覆材29がウエザストリップやサイドバイザーと一体化される構成としてもよい。この場合は部品点数、組立て工程を削減できる。
【0060】
また車体に限らずウエザストリップやサイドバイザーに被覆材29ごと装着してもよい。
【0061】
(実施例3)
図13に本発明の実施例3の圧電センサ8の構成を示す。本実施例の圧電センサ8は孔部31を有しており、孔部31は物体と接触しにくく、孔部31を除く部位でのみ物体と接触する構成である。よって物体から接触荷重を受ける面積を低減できるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0062】
(実施例4)
図14に本発明の実施例4の圧電センサ8の構成を示す。圧電センサ8はアコーデオン形状(あるいは蛇腹形状)に折り曲げられた構成で、物体が下方より上向きに移動して圧電センサ8と接触する場合、凹部30と凸部11が均等に配置された構成といえる。この場合、凸部11は物体と接触しやすく、凹部30は物体と接触しにくい。よって圧電センサ8が物体から接触荷重を受ける面積を低減できるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0063】
以上、実施例1から実施例4においては、圧電センサ自身の構成により、物体から接触荷重を受ける面積を低減する例を示したが、それぞれの実施例はその構成にのみ限定されるのではなく、互いに組み合わせたり、一部を置き換えたりしてもよい。
【0064】
なお挟み込み防止装置に関しては、物体が挟み込まれる時に接触可能な位置に圧電センサを装着すればよいので、移動部材か当接部材に装着してもよいし、それ以外の開閉部の近傍の部品(たとえばウエザストリップやサイドバイザーなど)に装着してもよい。
【0065】
(実施例5)
図15に本発明の実施例5の圧電センサの荷重検出装置を示す。本実施例は、圧電センサを配設する方法により、物体から接触荷重を受ける面積を低減する例である。圧電センサ8を対向部材としてのウエザストリップ32に配設したもので、ウエザストリップ32は圧電センサ8との対向面に孔部33を形成している。圧電センサ8の下方からやってきた物体がウエザストリップ32に接触した場合、孔部33に対向する位置の圧電センサ8は孔部33からは押されないので物体からの荷重を受けにくく、対向部材の孔部33の無い部位に対向する位置の圧電センサ8でのみ荷重を受けることになる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けやすい部位と受けにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できることになる。結局、孔部33により接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0066】
(実施例6)
図16に本発明の実施例6の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は対向部材に凸部を形成したもので、図16(a)は圧電センサ8と対向部材34を別々に構成した例、図16(b)は圧電センサ8を対向部材としてのウエザストリップ32内に装着した例で、いずれも圧電センサ8との対向面に凸部35を形成している。圧電センサ8の下方からやってきた物体が対向部材34またはウエザストリップ32に接触した場合、凸部35に対向した位置の圧電センサ8は凸部35に押されるために物体からの荷重を受けやすく、凸部35の周囲に対向した位置の圧電センサ8は物体からの荷重を受けにくくなる。よって圧電センサは物体からの荷重を受けやすい部位と受けにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できることになる。結局、凸部35により接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0067】
(実施例7)
図17に本発明の実施例7の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、車両のパワーウインドウ用の挟み込み防止装置に関する例で、移動部材としての窓ガラス36に可撓性のある圧電センサ8を配設した例である。窓ガラス36の先端には凹部37が形成されており、物体が圧電センサ8の上方から接触した場合、圧電センサ8が撓んで窓ガラス36の先端に接するまで押されていく。さらに引き続き荷重が加わったとき、窓ガラス36は圧電センサからみて物体とは反対側に配置された対向部材と考えられ、対向部材の凹部37に対向した位置の圧電センサ8は凹部37に妨げられないので下向きに変位しやすく、凹部37の周囲に対向した位置の圧電センサ8は変位しにくくなる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けた時に変位しやすい部位と変位しにくい部位を有することになるので、圧電センサ8内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0068】
なお本実施例では窓ガラス36が対向部材を兼ねているが、別部品で構成しても良い。
【0069】
(実施例8)
図18に本発明の実施例8の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、アコーデオン状の対向部材34を支持部材38に配設し、対向部材34に圧電センサ8を配設したもので、下方からやってきた物体が圧電センサ8に当たる構成である。対向部材34は圧電センサ8からみて物体とは反対側に配置されており、凸部35と凹部37を有している。この場合、凸部35に対向した位置の圧電センサ8は凸部35に妨げられるために物体からの荷重を受けても変位しにくく、凹部37に対向した位置の圧電センサ8は凹部37に妨げられないので物体からの荷重を受ければ変位しやすくなる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けた時に変位しやすい部位と変位しにくい部位を有することになるので、圧電センサ8内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0070】
(実施例9)
図19に本発明の実施例9の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、メッシュ39で圧電センサ8を覆っており、対向部材としてのメッシュ39は圧電センサ8からみて物体側に配置されている。下方からやってきた物体がメッシュ39に接触して、メッシュ39の凸部35を介して圧電センサ8に接触荷重を伝達する構成である。メッシュ39により圧電センサ8が物体から接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0071】
(実施例10)
図20に本発明の実施例10の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、コイルばね40を介して圧電センサ8を支持しており、対向部材としてのコイルばね40は圧電センサ8からみて物体とは反対側に配置されている。下方からやってきた物体が圧電センサ8に接触した場合、コイルばね40のコイル部分に対向した位置の圧電センサ8は荷重を受けても変位しにくく、空隙に対向した位置の圧電センサ8は変位しやすくなる。よって圧電センサ8は物体からの荷重を受けた時に変位しやすい部位と変位しにくい部位を有することになるので、圧電センサ8内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0072】
(実施例11)
図21に本発明の実施例11の圧電センサ荷重検出装置を示す。本実施例は、圧電センサ8を凸部35と凹部37を有する対向部材34に沿って配設しており、結果的に圧電センサ8自身が凹凸を有することになる。本実施例は、圧電センサ8が物体から接触荷重を受ける面積を低減していることになるので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサ8の出力が大きくなる。
【0073】
なお対向部材は、物体に対して反対の面に凹凸を形成して圧電センサを沿わせることも考えられる。この場合は、支持部材に近い位置(対向部材の凸部上)の圧電センサは支持部材に妨げられて変位しにくいのに対して、支持部材から遠い位置(対向部材の凹部上)の圧電センサは支持部材に妨げられないので変位しやすい。よって変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0074】
(実施例12)
図22は本発明の実施例12の挟み込み防止装置の動作ブロック図である。図22では圧電センサ8の断面も示している。本実施例は、他の実施例の圧電センサ8を積層フィルム状にして以下の構成に置き換えたものである。電極13cと13d、13eと13fを備えた2つの圧電材12a、12bを積層して成形され、圧電センサ8を構成する一方の圧電材12bの電極13eと13fに特定周波数の電圧信号を印加して振動を発生させる信号印加部41を備え、接触検出手段14は、前記振動により他の圧電材12aの電極13cと13d間に発生する出力信号に基づき圧電センサ8に印加される圧力を演算する圧力演算部42と、圧力演算部42の出力信号に基づき物体の接触を判定する接触判定部43とを備えたところにある。接触検出手段14は、信号印加部41の発生周波数f3を中心周波数とする第1のバンドパスフィルタ44と、図8のf1を中心周波数とする第2のバンドパスフィルタ45を備えている。本実施例の圧電センサ8はフィルム状なので、積層しても厚みは薄いので、変位を大きくして、出力を大きくすることができる。
【0075】
なお、圧電センサ8の外側についてはPET等の保護層や電気的シールドのための金属フィルムで封止してもよい。
【0076】
次に動作、作用について説明する。
【0077】
一言で言えば、他の実施例では圧電センサの出力発生により挟み込みを検知していたのに対し、本実施例は圧電センサの出力の変化により挟み込みを検知するものである。
【0078】
圧電センサ8では信号印加部41で発生する周波数f3の電圧信号に応じて圧電材12bが振動する。そしてその振動に応じて圧電材12aでは圧電起電力が発生する。発生した出力信号は第1のバンドパスフィルタ44で濾波される。この時の信号印加部41の発振信号V3、第1のバンドパスフィルタ44の出力V4の信号波形は、それぞれ図23(a)、図23(b)のようになる。図23(a)、図23(b)で縦軸はV3とV4、横軸は時間tで、時刻t1で物体が圧電センサ8に接触して圧力Pr1が印加されたものとする。物体が接触していない状態(t<t1)では、V4の振幅はD40である。そして時刻t1で物体が接触し圧電センサ8に圧力Pr1が印加されると、V4の振幅はD41に変化する。ここで、V4の振幅D4と圧力Prとの間には図24に示すような関係があり、圧力Prが増加するとD4は減少する特性をもつ。この特性は発振周波数f3や圧電材12a、12bの形状等により変化するので、用途に応じて予め実験等により最適化すればよい。圧力演算部42では図24の関係に基づいてD41からPr1を算出する。そして接触判定部43ではPr1がある閾値Pr0以上ならば物体が接触したと判し、Pr1がPr0より小ならば物体の接触は無いと判定する。そして窓ガラスなどの移動部材の閉動作中に上記のようにして物体の接触が検出されると、閉動作を逆転し物体の挟み込みを防止するのである。本実施例では圧電センサをフィルム状に薄く構成して変形部位の曲率半径を小さくしたので、振幅D4が全体に大きくなり、Pr1の変化を見るのが容易となるので、判定の精度を上げることができる。
【0079】
上記作用により、例えば車両の走行時の振動が圧電センサ8に印加される場合は、実施例1のように圧電センサ8が振動や歪みを検出するタイプであると、走行振動による圧電センサ8の出力信号と物体の接触による圧電センサ8の出力信号との区別が困難となる場合があるが、本実施例の圧電センサ8は物体の接触圧に応じた信号を出力し、接触検出手段14の圧力演算部42により物体の接触圧を検出し、接触判定部43により接触を判定するので、上記のような走行振動が印加されても精度よく物体の接触を検出することができる。
【0080】
尚、接触判定部43ではPr1がある閾値Pr0以上ならば物体が接触したと判定するが、Pr1の変化率や変動パターンに基づき物体の接触を判定するようにしてもよい。
【0081】
また、図22に示すように接触検出手段14はf1を中心周波数とする第2のバンドパスフィルタ45を備えており、接触判定部43が第2のバンドパスフィルタ45と圧力演算部42の双方の出力信号に基づき物体の接触を検出する構成としてもよい。この構成による作用を以下に述べる。図23(c)は第2のバンドパスフィルタ45の出力V5の信号波形を示したものである。図中、縦軸はV5、横軸は時間tである。時刻t1で圧電センサに物体が接触すると、圧電材12aには圧電材12aによる周波数f3の振動と、物体の接触による歪みによりf3よりも低いf1近傍の振動が印加され、圧電材12aからはf3とf1の重畳した周波数成分をもつ信号が出力される。この出力信号に基づき、圧力演算部42では第1のバンドパスフィルタ44経由で上述したように圧力Prが算出され、第2のバンドパスフィルタ45の出力V5には例えば図23(c)のような周波数f1で振幅D5の信号が現れる。そして接触判定部43では、例えばD5がある閾値D50以上の場合は、圧電センサ8に車の走行振動のような外来振動が印加されたとして、上述のようにPrの値に基づき物体の接触を判定する。またD5がD50より小の場合は、D5の変化率や変動パターンとPrの値の少なくとも1つに基づき物体の接触を判定する。これにより、外来振動の有無を圧電センサ8の出力信号により判定し、外来振動の有無に応じて接触判定の閾値を切り替えて接触判定を行うので、圧電センサにより検出する振動のみあるいは圧力のみで物体の接触を検出する場合よりも検出精度が向上する。
【0082】
なお、自動車の挟み込み防止装置における圧電センサの配置に関しては、窓枠側の車体、ウエザストリップ、サイドバイザー等に配設したり一体化しても良いし、窓ガラス側に配設しても良い。ハードトップタイプの場合は窓枠の代わりに車両本体側に配設してもよい。
【0083】
なお、上述の実施例では車両用のパワーウインドウに圧電センサを用いた挟み込み防止装置について説明したが、窓に限らずドアやサンルーフなどの扉に使用してもよいし、シャッターに使用してもよい。基本的には移動部材の移動により当接部材との隙間が変化するもの、即ち何らかの物体を挟み込む可能性の有るものに応用できる。
【0084】
なお電車のドアや玄関の自動ドアなどの場合、2つの移動部材が対向しているように考えられるが、一方の移動部材から見た他方を当接部材と置くことで本発明に含まれるものである。
【0085】
なお、上記各実施例の構成はそれぞれが限定された構成ではなく、他の実施例で示された構成に一部置き換えたり、組み合わせたりすることが可能であり、目的に応じて最適な組み合わせを選べばよい。たとえば対向部材は圧電センサから見て物体側にあってもよいし、物体とは反対側にあっても良い。圧電センサを対向部材に配設してもよいし、別のものに配設してもよい。凸部、凹部、孔部はそれに限定するものではなく、お互いに入れ替えたり、それぞれを組み合わせることも容易に考えられる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1に係る挟み込み防止装置は、圧電センサ自身が物体から接触荷重を受ける面積を低減しているので、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる効果がある。
【0087】
また、本発明の請求項2に係る挟み込み防止装置は、物体から接触荷重を受ける面に少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有している。そして圧電センサの凸部は物体と接触しやすく、凸部の周囲は物体と接触しにくくなる。逆に、圧電センサの凹部または孔部は物体と接触しにくく、凹部の周囲または孔部の周囲は物体と接触しやすくなる。よって圧電センサは物体と接触しやすい部位と接触しにくい部位を有することになるので、物体から接触荷重を受ける面積を低減できる。よって容易に圧電センサの出力を大きくできる効果がある。
【0088】
また、本発明の請求項3にかかる挟み込み防止装置は対向部材をメッシュ形状とし、本発明の請求項4にかかる挟み込み防止装置は対向部材をコイルばね形状としているので、圧電センサとの対向面に容易に凸部または凹部または孔部を形成できる。よって、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできるので、容易に圧電センサの出力を大きくできる効果がある。
【0089】
また、本発明の請求項5に係る挟み込み防止装置は、圧電センサを少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有する対向部材に沿って配設するので、圧電センサ自身が少なくとも一つの凸部または凹部または孔部を有することになり、物体から接触荷重を受ける面積を低減したり、圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減したりできる。よって容易に圧電センサの出力を大きくできる効果がある。
【0090】
さらに、本発明の挟み込み防止装置は、移動部材と当接部材とで構成される開閉部に配設された圧電センサと、前記圧電センサの出力に基づき前記開閉部への物体の挟み込みを検知し、前記開閉部の開閉動作を制御する制御手段を備えたものである。
【0091】
そして、圧電センサが物体から接触荷重を受ける面積を低減している場合は、接触部位の単位面積当たりの荷重(圧力)が増加し、接触部位の変位量が増加し、ひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0092】
一方、荷重検出装置により圧電センサが物体から接触荷重を受けて変位する面積を低減している場合は、変位する部位と変位しない部位が生じるため圧電センサ内のひずみが増え、発生電荷が増え、分極電流が増加して、圧電センサの出力が大きくなる。
【0093】
よっていずれの場合も圧電センサの出力が大きくなるので、挟み込み検知の精度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における圧電センサ荷重検出装置および挟み込み防止装置の外観図
【図2】同装置のA−A線位置での断面図
【図3】(a)従来の圧電センサの配設構成を示す断面図
(b)本発明の実施例1における圧電センサの配設構成を示す外観図
【図4】同圧電センサの外観構成図
【図5】同圧電センサの特性図
【図6】同挟み込み防止装置のブロック図
【図7】同装置の断線検出用の回路図
【図8】同装置の第1の濾波部と第2の濾波部の濾波特性を示す特性図
【図9】同装置の開閉部への物体の接触を判定するための判定基準を示した特性図
【図10】同装置の動作を表すフローチャート
【図11】本発明の実施例2における圧電センサの断面図
【図12】同圧電センサの外観構成図
【図13】本発明の実施例3における圧電センサの構成図
【図14】本発明の実施例4における圧電センサの断面図
【図15】本発明の実施例5における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図16】(a)本発明の実施例6における圧電センサの配設構成を示す断面図
(b)他の実施例における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図17】本発明の実施例7における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図18】本発明の実施例8における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図19】本発明の実施例9における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図20】本発明の実施例10における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図21】本発明の実施例11における圧電センサの配設構成を示す断面図
【図22】本発明の実施例12における挟み込み防止装置の動作ブロック図
【図23】(a)同装置の信号印加部の発振信号V3の波形特性図
(b)第1のバンドパスフィルタの出力V4の波形特性図
(c)第2のバンドパスフィルタの出力V5の出力波形を示した波形特性図
【図24】同装置の第1のバンドパスフィルタの出力V4の振幅D4と圧力Prとの関係を示した特性図
【符号の説明】
1 窓ガラス(移動部材)
5 制御手段
6 窓枠(当接部材)
7 開閉部
8 圧電センサ
9 物体
11 凸部(接触荷重を受ける面)
30、37 凹部
31、33 孔部
32 ウエザストリップ(対向部材)
34 対向部材
35 凸部
36 窓ガラス(移動部材、対向部材)
39 メッシュ(対向部材)
40 コイルばね(対向部材)
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