以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成図である。プリンタ1は、固定された4つのインクジェットヘッド2を有するライン型のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド2は、図1紙面と直交する方向に細長い形状を有している。プリンタ1には、図中下方に給紙部114、図中上方に紙受け部116、図中央に搬送ユニット120がそれぞれ設けられている。プリンタ1は、給紙部114、紙受け部116、及び搬送ユニット120の動作を制御する制御部(controller)100を有する。制御部100は、ドライバIC80(図6参照)を介してインクジェットヘッド2の駆動を制御する。
給紙部114は、積層された矩形用紙Pを収容する用紙収容部115と、用紙収容部115において最も上にある用紙Pを1枚ずつ搬送ユニット120に向けて送り出す給紙ローラ145と、を有している。用紙収容部115には、用紙Pがその長辺と平行な方向に沿って送り出されるように収容されている。給紙部114と搬送ユニット120との間には、用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118a,118b及び119a,119bが配置されている。給紙部114から送り出された用紙Pは、その一方の短辺を先端として、送りローラ118a,118bによって図1中上方へ送られ、その後送りローラ119a,119bによって搬送ユニット120に向けて送られる。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と、搬送ベルト111が巻き掛けられた2つのベルトローラ136、137とを含む。搬送ベルト111の長さは、搬送ベルト111に所定の張力が発生するように調整されている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラ136、137に巻き掛けられることによって、ベルトローラ136、137の共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面を形成している。当該2つの平面のうちインクジェットヘッド2と対向する方が用紙Pの搬送面127となる。給紙部114から送り出された用紙Pは、搬送面127上において搬送されつつ、その上面にインクジェットヘッド2によって印刷が施された後、紙受け部116に到達する。紙受け部116では、印刷が施された用紙Pが重なり合うように載置される。
4つのインクジェットヘッド2は、用紙Pの搬送経路に沿って、即ち図1紙面における左右方向に沿って、互いに近接配置されている。各インクジェットヘッド2は、下端にヘッド本体13を有している。ヘッド本体13は、個別インク流路32(図4参照)が多数形成された流路ユニット4と、接着剤を介して流路ユニット4の上面に貼り合わされた4つのアクチュエータユニット21とを含む。個別インク流路32はそれぞれ、1のノズル8と、当該ノズル8に連通した1の圧力室10とを有する。アクチュエータユニット21は所望の圧力室10内のインクに圧力を与える。各アクチュエータユニット21には、これに後述の吐出パルス信号及び振動パルス信号を供給する図示しないFPC(Flexible Printed Circuit)が貼り合わされている。
各ヘッド本体13の底面、即ちインク吐出面13aには、微小径を有する多数のノズル8が設けられている(図3及び図4参照)。ノズル8から吐出されるインク色はマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのいずれかであって、4つのヘッド本体13から、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色から選択された互いに異なる色のインクが吐出される。
インク吐出面13aと搬送ベルト111の搬送面127との間には、僅かな隙間が形成されている。用紙Pは、当該隙間を通る搬送経路に沿って図1中右から左へと搬送される。当該隙間を用紙Pが順次通過する際、用紙Pの上面に向けてノズル8からインクが吐出されることで、用紙P上に画像データに基づくカラー画像が形成される。
ベルトローラ136は搬送モータ174と接続されている。搬送モータ174が制御部100の制御に基づいて駆動すると、駆動力がベルトローラ136に伝えられ、ベルトローラ136は図1中矢印A方向に回転する。そして搬送ベルト111が走行し、搬送ベルト111上に載置された用紙Pが搬送される。ベルトローラ137は、ベルトローラ136の回転に伴って搬送ベルト111から付与される回転力によって回転する従動ローラである。
ベルトローラ137の近傍にはニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、搬送ユニット120に供給された用紙Pを搬送面127に押し付けるよう、バネ(図示せず)によって下方に付勢されている。ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111と共に用紙Pを挟み込む。搬送ベルト111の外周面113には粘着性のシリコンゴムによる処理が施されており、用紙Pは搬送面127に確実に密着する。
搬送ユニット120の図1中左方には剥離プレート140が設けられている。剥離プレート140は、その右端が用紙Pと搬送ベルト111との間に入り込むことによって、用紙Pを搬送面127から剥離する。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、二対の送りローラ121a、121b及び122a、122bが配置されている。剥離プレート140によって剥離された用紙Pは、送りローラ121a,121bによって図1中上方へ送られ、さらに送りローラ122a,122bによって紙受け部116へ送られる。
ニップローラ138と最も上流にあるインクジェットヘッド2との間には、紙面センサ133が配置されている。紙面センサ133は、発光素子と受光素子とを含む光学センサであり、搬送経路上における用紙Pの先端を検出する。紙面センサ133から出力された検知信号は、制御部100に送られ、用紙Pの搬送に同期して画像形成を行うのに用いられる。
次に、ヘッド本体13の詳細について説明する。図2は、図1に示したヘッド本体13の平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。図2に示すように、アクチュエータユニット21はそれぞれ台形で、流路ユニット4の上面において千鳥状に2列に配列されている。より詳細には、各アクチュエータユニット21は、その平行対向辺、即ち上辺及び下辺が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット4の幅方向にオーバーラップしている。
流路ユニット4の上面における各アクチュエータユニット21の接着領域には、多数の圧力室10からなる圧力室群9が形成されている。流路ユニット4の下面、即ちインク吐出面13aにおける、上記接着領域に対応する領域には、多数のノズル8がマトリクス状に配列されている。ノズル8はそれぞれ対応する圧力室10に連通する。このようにインク吐出面13aにおけるアクチュエータユニット21と対向する領域は、多数のノズル8が形成されたインク吐出領域となっている。
流路ユニット4内には、マニホールド流路5及びその分岐流路である副マニホールド流路5aが形成されている。マニホールド流路5は、アクチュエータユニット21の斜辺に沿って延在し、複数の副マニホールド流路5bに分岐している。副マニホールド5aは1のマニホールド流路5の両側から分岐している。1のインク吐出領域には、流路ユニット4の長手方向に延在した4本の副マニホールド流路5aが対向している。流路ユニット4の上面には、アクチュエータユニット21を避けるように、マニホールド流路5と連通する開口部5bが設けられている。インクタンク(図示せず)から開口部5bを介してマニホールド流路5及び副マニホールド流路5aにインクが供給される。
圧力室群9を構成する圧力室10は、図3に示すように、配列方向A及び配列方向Bの2方向にマトリクス状に隣接配置されている。配列方向Aは、流路ユニット4の長手方向であって、略菱形である圧力室10の短い方の対角線と平行である。配列方向Bは、配列方向Aと鈍角θをなし、圧力室10の一斜辺と平行である。圧力室群9において、圧力室10の鋭角部は、隣接する2つの圧力室10の間に位置している。圧力室10は、配列方向Aに沿って37.5dpiに相当する距離ずつ離隔し、配列方向Bに沿って16個並べられている。圧力室10が配列方向Aに一定間隔で規則的に並んで圧力室列11を構成し、互いに平行に配置された16列の圧力室列11によって圧力室群9が構成されている。このような圧力室10の配置により、全体として解像度600dpiの画像形成が可能である。圧力室列11は、図3の紙面に垂直な方向から見て、副マニホールド流路5aとの相対位置に応じて、第1の圧力室列11a、第2の圧力室列11b、第3の圧力室列11c、及び第4の圧力室列11dに分けられる。第1〜第4の圧力室列11a〜11dは、アクチュエータユニット21の上辺から下辺に向けて、11c,11d,11a,11b,11c,11d,…,11bという順番で周期的に配置されている。
第1の圧力室列11aを構成する圧力室10a及び第2の圧力室列11bを構成する圧力室10bに連通するノズル8は、図3の紙面に垂直な方向から見て、配列方向Aと直交する方向に関して図3の紙面下側に偏在し、それぞれ対応する圧力室10の下端付近に位置している。第3の圧力室列11cを構成する圧力室10c及び第4の圧力室列11dを構成する圧力室10dに連通するノズル8は、配列方向Aと直交する方向に関して図3の紙面上側に偏在し、それぞれ対応する圧力室10の上端部付近に位置している。第1及び第4の圧力室列11a、11dを構成する圧力室10a、10dの半分以上の領域は、図3の紙面に垂直な方向から見て、副マニホールド流路5aと重なっている。第2及び第3の圧力室列11b、11cを構成する圧力室10b、10cのほぼ全領域は、図3の紙面に垂直な方向から見て、副マニホールド流路5aと重なっていない。つまり、副マニホールド流路5aは、隣接する2つの圧力室列11a,11dの作る幅を有効に使って形成されている。そのため、いずれの圧力室10a〜10dに連通するノズル8も副マニホールド流路5aと重ならないようにしつつ、副マニホールド流路5aの幅を可能な限り広くして各圧力室10a〜10dにインクを円滑に供給することが可能となっている。
各インク吐出領域において、ノズル8は、流路ユニット4の長手方向に延びる16列のノズル列18を形成している。ノズル列18は、それぞれ圧力室列11に対応して配置されており、副マニホールド流路5aとの位置関係によって、第1のノズル列18a、第2のノズル列18b、第3のノズル列18c、及び第4のノズル列18dに分けられる。第1〜第4のノズル列18a〜18dは、アクチュエータユニット21の上辺から下辺に向けて、18c,18d,18a,18c,18b,18d,・・・,18b,18d,18a,18bという順番で配置されている。配列の中央では、上述のように圧力室10の鋭角部が隣接する圧力室10に挟まれている関係上、圧力室列11b,11cに対応するノズル列18b,18cの順番が、圧力室列11の順番と入れ替わっている。平面視で、副マニホールド流路5aを挟んで、第3及び第4のノズル列18c,18dが上側、第1及び第2のノズル列18a,18bが下側に配置されている。1の副マニホールド流路5aを挟むノズル列18c,18d,18a,18bは当該副マニホールド流路5aを共有し、ノズル列18a〜18dに含まれるノズル8はそれぞれ圧力室10及び絞りであるアパーチャ12を介して当該副マニホールド流路5aと連通している(図4参照)。図3において、図面を分かり易くするために、アクチュエータユニット21を二点鎖線で描いているとともに、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室10、アパーチャ12、及びノズル8を実線で描いている。
ノズル8は、ノズル8を流路ユニット4の長手方向に延びた仮想線上にこの仮想線と直交する方向から射影した射影点が600dpiで等間隔に並ぶような位置に、形成されている。
次に、ヘッド本体13の断面構造について説明する。図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。図5は、アクチュエータユニット21の部分拡大平面図である。図4に示すように、流路ユニット4は、上から、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29、及びノズルプレート30が積層された積層構造を有している。プレート22〜30はいずれも金属からなる。
流路ユニット4内には、外部から供給されたインクがノズル8から吐出されるまでのインク流路が形成されている。インク流路としては、インクを一時的に貯溜するマニホールド流路5及び副マニホールド流路5a、副マニホールド流路5aの出口からノズル8に至る多数の個別インク流路32等が含まれる。各プレート22〜30にはインク流路の構成要素となる凹部や孔が形成されている。
キャビティプレート22には、圧力室10となるほぼ菱形の孔が多数形成されている。ベースプレート23には、各圧力室10とこれに対応するアパーチャ12とを連通させるための連通孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が形成されている。アパーチャプレート24には、各アパーチャ12となる孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が形成されている。サプライプレート25には、各アパーチャ12と副マニホールド流路5aとを連通させるための連通孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が形成されている。マニホールドプレート26、27、28には、副マニホールド流路5aとなる孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が形成されている。カバープレート29には、各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が形成されている。ノズルプレート30には、ノズル8となる孔が多数形成されている。これら9枚の金属プレートは、個別インク流路32が形成されるように、互いに位置合わせして積層されている。
図4に示すように、アクチュエータユニット21は、互いに積層された4枚の圧電シート41、42、43、44を有する。圧電シート41〜44はいずれも厚みが15μm程度で、アクチュエータユニット21の厚さは60μm程度となっている。いずれの圧電シート41〜44も、1の圧力室群9を構成する多数の圧力室10に跨っている。圧電シート41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
最上層の圧電シート41上には、厚みが1μm程度の個別電極35が形成されている。個別電極35は、図5に示すように、ほぼ菱形の平面形状を有しており、圧力室10に対向するように且つ平面視において大部分が圧力室10内に収まるように形成されている。したがって、最上層の圧電シート41上には、そのほぼ全域にわたって多数の個別電極35がマトリクス状に二次元配列されている。圧電シート41とその下側の圧電シート42との間には、シート全面に形成された厚み2μm程度の共通電極34が介在している。個別電極35及び共通電極34は共に例えばAg−Pd系などの金属材料からなる。図4に示すように、アクチュエータユニット21において個別電極35が配置されている部分が、圧力室10内のインクに圧力を付与する圧力発生部J、即ちアクチュエータに相当する。つまり、アクチュエータユニット21には、各圧力室10に対して個別のアクチュエータが作り込まれている。アクチュエータユニット21は、最上層である圧電シート41だけが外部電界により圧電歪を生じる活性部を含み、他の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプである。
図5に示すように、個別電極35における一方の鋭角部は圧力室10外にまで延出されており、当該延出部の先端近傍上にはランド36が形成されている。ランド36は、キャビティプレート22の隔壁22a(図4参照)、即ちキャビティプレート22において圧力室10が形成されていない部分であってアクチュエータユニット21と接着される部分上に、位置している。つまり、ランド36は、アクチュエータユニット21の厚み方向に関して圧力室10と重ならない位置に形成されている。ランド36は、FPC(図示せず)のコンタクトと電気的に接続されている。ランド36は、円形の外形形状を有し、厚みが15μm程度、径が約160μmである。ランド36は、例えばガラスフリットを含む金からなる。
共通電極34は、図示しない領域において接地されており、全ての圧力室10に対向する領域において等しくグランド電位に保たれている。個別電極35は、個別に電位の制御ができるように、個別電極35毎に独立した配線を含むFPC(図示せず)を介してドライバIC80(図6参照)に電気的に接続されている。圧電シート41上に、個別電極35の群を避けるように、表面電極が形成されている。表面電極は、スルーホールを介して共通電極34と電気的に接続され、FPCにおける個別電極35の配線とは別の配線と接続されている。
次に、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21における圧電シート41の分極方向はその厚み方向である。上述のように、アクチュエータユニット21は、圧力室10とは離れた上側の圧電シート41を活性部が存在する層とし且つ圧力室10に近い下側の3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプである。したがって、個別電極35を電界方向と分極方向とが同じとなる正電位とすると、圧電シート41中の電極34,35に挟まれた部分が、活性部として働き、圧電横効果によって分極方向と直角方向に縮む。その他の圧電シート42〜44は電界の影響を受けないため自発的には縮まない。これにより、圧電シート41とその下側の圧電シート42〜44との間で分極方向と垂直な方向への歪みに差が生じ、圧電シート41〜44全体が下側に凸となるように変形しようとする(ユニモルフ変形)。ここで、図4に示したように圧電シート41〜44の下面はキャビティプレート22の隔壁22a上に固定されているので、結果的に圧電シート41〜44において活性部に対応する部分が圧力室10に向けて凸になるように変形する。これにより、圧力室10の容積が低下し、圧力室10内のインクの圧力が上昇する。個別電極35を電界方向と分極方向とが逆になる負電位とすると、圧電シート41〜44において活性部に対応する部分は上側に凸となるように変形し、圧力室10内のインクの圧力が降下する。
予め個別電極35を正電位としておき、吐出要求がある毎に個別電極35を負電位にし、その後所定のタイミングで再び個別電極35を正電位とする。この場合、初期状態、即ち個別電極35が正電位の状態では、圧電シート41〜44において活性部に対応する部分が圧力室10に向けて凸となるよう変形している。そして個別電極35が負電位となるタイミングで、圧電シート41〜44が平坦な形状となり、圧力室10の容積が初期状態と比較して増加し、圧力室10内のインクの圧力が降下して、副マニホールド流路5bから個別インク流路32へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極35を正電位としたタイミングで、圧電シート41〜44において活性部に対応する部分が圧力室10に向けて凸となるように変形する。これにより圧力室10の容積が低下して、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、ノズル8からインクが吐出される。このような吐出方式は、一般的に“引き打ち”と称される。ノズル8からインクを吐出させるためには、正電位と負電位とが所定の電位差を有するようにしなければならない。
個別電極35には、矩形波の群からなる吐出パルス信号が供給される。当該信号に含まれる矩形波の幅と、インクを伝搬する圧力波が副マニホールド流路5aの出口からノズル8に至るまでの時間長さAL(Acoustic Length)とが等しい場合、強い圧力又は速い速度でインクが吐出される。本実施形態では、圧力発生部Jが個別インク流路32の中央付近に位置しており、個別電極35を負電位としてから正電位とするまでの時間、即ち矩形波の幅を、圧力室10で発生した負の圧力波が副マニホールド流路5a付近で正に反転反射して圧力室10に戻るまでの時間、即ちALに近い値としている。
階調は、ノズル8から吐出されるインク滴の数で調整されるインクの体積によって、表現される。用紙上の1ドットは、1個又は連続して吐出された複数個のインク滴によって形成される。複数個のインク滴を連続して吐出させる場合、インク滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとする。これにより、先に吐出されるインク滴のために付与された圧力の残余圧力波のピークと、後に吐出されるインク滴のために付与された圧力の圧力波のピークが一致する。そのため、上記2つの圧力波が重畳して増幅し、後に吐出されるインク滴の吐出速度が、先に吐出されたインク滴の吐出速度より早くなる。したがって、後に吐出されたインク滴は、先に吐出されたインク滴に追いついて空中で衝突し、先に吐出されたインク滴と一体となる。
ここで、アクチュエータユニット21の制御について、図6を参照しつつ説明する。制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)、並びに、プログラム実行時にデータを一時記憶するRAM(Random Access Memory:共に図示せず)等を含み、これらによって以下に説明する各部が構築されている。
制御部100は、印字制御部101と動作制御部102とを有している。動作制御部102は、紙面センサ133やPC(Personal Computer)135から送信された印字に係る画像データ及び動作データに基づいて、給紙ローラ145を駆動するモータ、送りローラ118a、118b、119a、119b、121a、121b、122a、122bを駆動するモータ、及び、搬送モータ174等の駆動を制御する。紙面センサ133は最も上流にあるインクジェットヘッド2と離隔しているため、紙面センサ133が用紙Pの先端を検知したとき、用紙Pはインクジェットヘッド2と対向していない。しかし、紙面センサ133とインクジェットヘッド2との位置関係は固定されており、即ちこれらの離隔距離が固定されている。したがって、印字制御部101は、紙面センサ133が用紙Pの先端を検知したときに制御部100に出力した検知信号に基づいて、紙面センサ133と最も上流にあるインクジェットヘッド2との離隔距離を考慮しつつ、用紙Pが最も上流にあるインクジェットヘッド2と対向し始める時点が印字開始時点となるよう制御を行う。つまり、印字制御部101は、動作制御部102によって用紙Pの搬送が制御されることによって用紙Pが最も上流にあるインクジェットヘッド2と対向し始めたときに、用紙Pに対して印字が開始されるように制御を行う。
印字制御部101は、画像データ記憶部103と、印字信号生成部104と、印字信号供給部107とを含む。画像データ記憶部103は、PC135から送信された印字に係る画像データを記憶している。印字信号生成部104は、吐出波形生成部105と、予備振動波形生成部106とを有している。
吐出波形生成部105は、第1波形生成部105a、第2波形生成部105b、第3波形生成部105c、及び第4波形生成部105dを含む。第1〜第4波形生成部105a〜105dは、それぞれ異なる階調を表現する吐出波形信号を生成可能である。また、第1〜第4波形生成部105a〜105dは、詳細は後述するが、それぞれが前出の第1〜第4のノズル列18a〜18dに接続する第1〜第4の圧力室列11a〜11dに対応して、生成した吐出波形信号を各アクチュエータ(個別電極35)に供給する。図7に示す4つのグラフは、それぞれ4つの波形生成部105a〜105dが生成する吐出波形信号の一例である。なお、後述するように、第1〜第4波形生成部105a〜105dが生成した各吐出波形信号は、印字信号供給部107中の遅延回路で、4つの副マニホールド流路5aごとに異なる時間だけ遅延させられることによって、互いに位相がずれた4つの信号となる。
図7に示すように、各吐出波形信号は、凹型矩形波の群であり、画像データに含まれる階調データに基づいて決定される4段階のインク吐出量(吐出なしを含む)から算出されるインク滴の数と、波形パターンの位相及び周期とで決定される。具体的には、波形パターンは、立ち下がりタイミング及び立ち上がりタイミングで決定されるAL(約7μsec)の幅を有した矩形波が、吐出されるインク滴の数(1〜3)に応じた数だけALの間隔で連続し、最後にALの半分の幅を有した矩形波が付加されたものである。最後の矩形波は、圧力室10に残留した圧力をキャンセルする。
第1〜第4波形生成部105a〜105dは、図7に示すように、互いに位相の異なる吐出波形信号を生成する。具体的には、第2波形生成部105bが生成する吐出波形信号の位相は、第1吐出波形生成部105aが生成する吐出波形信号の位相に対して、パルス幅であるALの半分、即ち約3.5μsec遅れている。第3波形生成部105cが生成する吐出波形信号の位相は、第2波形生成部105bが生成する吐出波形信号の位相に対して、ALの半分遅れている。第4波形生成部105dが生成する吐出波形信号の位相は、第3波形生成部105cが生成する吐出波形信号の位相に対して、ALの半分遅れている。図7の上から2つのグラフは吐出されるインク滴の数が3の場合、上から3番目のグラフは吐出されるインク滴の数が2の場合、一番下のグラフは吐出されるインク滴の数が1の場合の例をそれぞれ示している。ただし、波形生成部105a〜105dのいずれも、インク滴の数が1〜3の各場合の吐出波形信号を生成できる。
予備振動波形生成部106は、ノズル8からインクを吐出させずにノズル8内のインクを振動させ撹拌する予備振動波形信号として、第1予備振動波形信号及び第2予備振動波形信号を生成する。図8は、予備振動波形生成部106が生成する予備振動波形信号の基本波形を示している。図8に示すように、予備振動波形信号は、吐出波形信号と同様、凹型矩形波の群であり、波形パターンの位相及び周期によって決定される。基本波形は、1の印字周期内に微振動を発生する5個の微振動パルスを含む。印字周期とは、印字の解像度に対応する単位距離だけ用紙が搬送されるのに要する時間を意味する。各微振動パルスの幅は、1μsecであり、ALの幅より小さい。微振動パルスは、4μsecの間隔で、5つ連続する。例えば20kHzで駆動されている場合、1の印字周期が50μsecであり、当該印字周期のはじめから25μsecまでに5個の微振動パルスが連続し、残りの25μsecの間は休止状態、即ち正電位に保持された状態となる。第1予備振動波形信号は、図8に示す基本波形を50個連続させたものである。つまり、第1の予備振動波形信号によると、微振動が250回行われ、振動の持続期間は2.5msecである。第2予備振動波形信号は、図8に示す基本波形を30個連続させたものである。つまり、第2の予備振動波形信号によると、微振動が150回行われ、振動の持続期間は1.5msecである。圧電式のアクチュエータでは、電圧を印加してからアクチュエータが変形を完了するまでの過渡時間が生じる。本実施形態では、過渡時間が1μsecより長い。そのため、予備振動波形信号に含まれる微振動パルスの幅を1μsecとすることで、アクチュエータの変形量がインクの吐出に及ぶ前に電圧の極性が変わり、ノズル8からインクが吐出されることなく、ノズル8内のインクは振動するに留まる。
印字信号供給部107は、画像データに基づいて、各印字周期において、吐出なしの場合を除いて、各アクチュエータに図7に示す吐出波形信号のいずれかを割り当て、さらに、所定条件を満たしたアクチュエータに対して第1予備振動波形信号又は第2予備振動波形信号を割り当てる。印字信号供給部107は、アクチュエータ毎に予備振動波形信号を割り当てるか否かを判断する。印字信号供給部107は、割り当てに基づいてシリアルの印字信号を生成し、当該印字信号を各アクチュエータユニット21に対応したドライバIC80に供給する。
印字信号供給部107は、図9(a)に示すように、印字開始時点T0から最初の吐出波形信号が供給される時点T1までの時間S1が、所定時間Tw1より長く所定時間Tw1+Tw2より短ければ、時点T1から所定時間Tw1さかのぼった時点F1に第1予備振動波形信号を割り当てる。印字信号供給部107は、図9(b)に示すように、印字開始時点T0から最初の吐出波形信号が供給される時点T1´までの時間S1´が、所定時間Tw1+Tw2を超えれば、時点T1´から所定時間Tw1さかのぼった時点F1´に第1予備振動波形信号を割り当て、さらに、時点F1´から所定時間Tw2さかのぼった時点G1に第2予備振動波形信号を割り当てる。時間S1´が所定時間Tw1+Tw2を超えるのは、例えば用紙Pの後端のみに印字が行われる場合など、最も上流にあるインクジェットヘッド2と用紙Pとが対向し始めた印字開始時点T0から最初の吐出波形信号が供給される時点までの時間が比較的長い場合に生じる。図9(a)及び図9(b)においては、説明の便宜上、1のアクチュエータにおける時点T1,T1´、時間S1,S1´、時点F1,F1´及び時点G1を示しているが、残りのアクチュエータにおいても同様である。つまり、アクチュエータの数、即ちノズル8の数がn個の場合、時点Ti、時間Si、時点Fi、及び時点Giは、i=1〜nであって、それぞれ計n個ある。予備振動波形信号の割り当ては時間S1及び時間S1´においてのみ行われ、それ以外は吐出波形信号のみ割り当てられる。
所定時間Tw1は、5msec以上25msec以下が好ましい。所定時間Tw1が5msec未満の場合、予備振動波形信号によって圧力室10内に生じた圧力が残留して、後の吐出波形信号によるインク吐出に影響を及ぼすことがある。所定時間Tw1が25msecを超える場合、ノズル8内のインクを振動させ撹拌しても、インクが再び増粘し、後の吐出波形信号によるインク吐出に影響を及ぼすことがある。所定時間Tw2は、印字開始時点T0から時点T1´までの時間が比較的長く、第1予備振動波形信号だけではノズル8内のインクの増粘が解消されにくい場合に、先に第2予備振動波形信号を付与することで第1予備振動波形信号によってノズル8内のインクの増粘が解消されるような時間となっている。インクの特性や雰囲気の温度及び湿度によっては、第2予備振動波形信号による振動を複数回繰り返してよい。このとき、所定時間Tw2は上述の時間長さに比べて短く設定される。
印字信号供給部107は、第1〜第4波形生成部105a〜105dが生成した互いに位相がずれた吐出波形信号を、1つのアクチュエータユニット21の範囲内にある16列のノズル列18a〜18dに係る複数の個別電極35に供給する。より詳細には、印字信号供給部107は、第1波形生成部105aが生成した吐出波形信号を、第1のノズル列18aに対応する複数の個別電極35に供給し、第2波形生成部105bが生成した吐出波形信号を、第2のノズル列18bに対応する複数の個別電極35に供給し、第3波形生成部105cが生成した吐出波形信号を、第3のノズル列18cに対応する複数の個別電極35に供給し、第4波形生成部105dが生成した吐出波形信号を、第4のノズル列18dに対応する複数の個別電極35に供給する。
さらに、印字信号供給部107は、第1〜第4波形生成部105a〜105dが生成した吐出波形信号を、1つのアクチュエータユニット21の範囲内にある4つの副マニホールド流路5aごとに異なる時間だけ遅延させる。この遅延量の関係を描いたのが図10の4つのグラフである。すなわち、1つのアクチュエータユニット21に対向する4つの副マニホールド流路5aのうちで第1の副マニホールド流路5aに係る個別電極35に供給される吐出波形信号を基準とすると(図10中最も上のグラフ)、これに隣接した第2の副マニホールド流路5aに係る個別電極35に供給される吐出波形信号は、基準とした吐出波形信号に対して時間t(例えば1.25μ秒)だけ遅延させられる(図10中の上から2番目のグラフ)。そして、第3、第4の副マニホールド流路5aに係る個別電極35に供給される吐出波形信号は、基準とした吐出波形信号に対してそれぞれ時間2t、3tだけ遅延させられる(図10中の上から3、4番目のグラフ)。
結局、印字信号供給部107からは、1つのアクチュエータユニット21の範囲内にあるノズル列の数と同じ16の互いに異なるタイミングに位相ずれした吐出波形信号が出力される。すなわち、印字信号供給部107は、1つのアクチュエータユニット21の範囲内にある多数の個別電極35のうち同じノズル列に係る個別電極35に対して、同じ位相の吐出波形信号を供給しつつ、互いに異なるノズル列に係る個別電極35に対して、互いに位相の異なる吐出波形信号を供給する。上述した所定時間Tw1、Tw2は、実際にノズルからインクが吐出され始める時刻が吐出波形信号の波形差及び遅延時間差に起因してノズル列ごとに異なることを考慮して、ノズル列ごとに異なる値であってよい。
ドライバIC80は、シフトレジスタ、マルチプレクサ、及びドライブバッファ(共に図示せず)を含む。シフトレジスタは、印字信号供給部107から出力されたシリアルの印字信号をパラレル信号に変換し、各個別電極35に対して個別の信号を出力する。マルチプレクサは、シフトレジスタから出力された各信号に基づいて、インク吐出に係る複数種類の吐出波形信号及びインクの予備振動に係る2種類の予備振動波形信号の中から適切なものを選択し、選択した信号をドライブバッファに出力する。ドライブバッファは、マルチプレクサから出力されたデータに基づいて、それぞれ所定のレベルを有する吐出パルス信号及び振動パルス信号を生成し、FPCを介して、当該信号を各アクチュエータに対応する個別電極35に供給する。吐出パルス信号は吐出波形信号に基づいて形成され、振動パルス信号は予備振動波形信号に基づいて形成される。これにより、アクチュエータユニット21が駆動される。具体的には、吐出パルス信号に基づいて、用紙P上に所望の画像が形成される。振動パルス信号に基づいて、ノズル8内のインクが吐出しない程度に振動する。振動パルス信号は、最初のインク吐出に係る吐出パルス信号が個別電極35に供給される前に当該個別電極35に供給される。これにより、全てのノズル8内のインクは、吐出前に振動し、増粘が解消される。
次に、図11A〜図11Cを参照しつつ、吐出パルス信号を受信したアクチュエータの駆動について具体的に説明する。図11A〜図11Cは、アクチュエータユニット21のアクチュエータの駆動によりノズル8からインク滴が吐出される様子を経時的に示す。
図11Aは、個別電極35が正電位のときの状態を示す。アクチュエータ、即ち図4に示す圧力発生部Jの領域は、緊張状態にあり、圧力室10に向けて凸となるように変形している。このときの圧力室10の容積はV1であり、この状態をアクチュエータにおける第1の状態とする。
図11Bは、個別電極35が負電位のときの状態を示す。アクチュエータは、応力が解放され、ほぼ弛緩している。このときの圧力室10の容積V2は、図11Aに示す圧力室10の容積V1に比べて増大している。この状態をアクチュエータにおける第2の状態とする。このような圧力室10の容積の増大の結果、インクが副マニホールド流路5aから圧力室10に吸い込まれる。
図11Cは、個別電極35が再び正電位となったときの状態を示す。アクチュエータは、図11Aと同様に圧力室10に向けて凸となるように変形している。このときアクチュエータは第1の状態となっている。図11Bに示す第2の状態から図11Cに示す第1の状態に変化することで、圧力室10内のインクに圧力が加えられ、ノズル8からインク滴が吐出される。インク滴は用紙Pの上面に着弾し、ドットを形成する。
振動パルス信号を受信したアクチュエータは、図11A〜図11Cのように圧力室の容積がV1→V2→V1となるよう変形しようとするが、ノズル8からインクが吐出される程度には変形しない。これは、予備振動波形信号の矩形波の幅、即ち立ち下がりから立ち上がりまでの間隔が、インクがノズル8から吐出されないよう設定されているからである。ノズル8内のインクは、アクチュエータの変形に伴って生じる圧力波によって、振動し撹拌される。
以上に述べたように、本実施形態によると、振動パルス信号がアクチュエータに供給されると、ノズル8内のインクが振動して撹拌される。振動パルス信号は、用紙Pとインク吐出面13aとが対向している間、即ち時間Si(i=1〜n)中にアクチュエータに供給される(図9(a)及び図9(b)参照)。アクチュエータに振動パルス信号が供給されてから比較的短い間に吐出パルス信号が供給されるので、ノズル8内のインクの増粘が解消された状態でノズル8からインクを吐出することができ、インク吐出の安定化が実現される。
第1予備振動波形信号に基づく振動パルス信号が、最初のインク吐出に係る吐出パルス信号が供給される時点Ti(i=1〜n)から所定時間Tw1さかのぼった時点Fi(i=1〜n)に、アクチュエータのそれぞれに供給される(図9(a)及び図9(b)参照)。そのため、ノズル8毎における、ノズル8内のインクの増粘が解消された状態の差が小さくなる。したがって、インク吐出がより安定化する。さらに、複数のノズル8からのインク吐出のタイミングが異なる場合、ノズル8に対応するアクチュエータそれぞれに対する振動パルス信号の供給タイミングも互いに異なる。そのため、消費電力ピークが過大になるのを避けることができ、電力の小さい電源装置を使用することができる。
第2予備振動波形信号に基づく振動パルス信号が、時点Fi(i=1〜n)から所定時間Tw2さかのぼった時点Gi(i=1〜n)に、アクチュエータのそれぞれに供給される。これにより、ノズル8内のインクの増粘がより効果的に解消される。
第2予備振動波形信号に含まれる矩形波の数は、第1予備振動波形信号に含まれる矩形波の数より少ない。つまり、第2予備振動波形信号に基づく振動パルス信号による、圧力室10の容積を第1の状態から第2の状態を経て再び第1の状態に戻す繰り返し数は、第1予備振動波形信号に基づく振動パルス信号による繰り返し数よりも少ない。したがって、第1予備振動波形信号よりも第2予備振動波形信号の方が、消費電力が小さい。そのため、ノズル8内のインクの増粘の進行を省電力で抑制することができ、全消費電力も抑制される。
紙面センサ133からの検知信号に基づいて印字開始時点T0を決めているので、印字開始時点T0がより安定した時点となる。そのため、ノズル8内のインクの振動及びノズル8からのインク吐出のタイミングの精度が向上し、インクの吐出がより安定化する。
本実施の形態では、アクチュエータに供給される吐出パルス信号の位相が副マニホールド流路5a毎、より詳細には、ノズル列ごとに異なる。つまり、ノズル列ごとにアクチュエータの駆動タイミングが異なる。これにより、消費電力ピークが過大になるのを避けることができ、電力の小さい電源装置を使用することができる。さらに、圧力室10の容積変化に伴う流体的・構造的クロストークを抑制することができる。また、1つのノズル列に係るアクチュエータには同じ位相の吐出パルス信号が供給されるので、制御が容易となる。
さらに、1の副マニホールド流路5aに連通する第1〜第4のノズル列18a〜18d間において、対応するアクチュエータに供給される吐出波形信号の位相が異なる。したがって、2以上のノズル列に係る複数の個別インク流路32内に、当該副マニホールド流路5aから同時にインクが吸い込まれることがない。これにより、流体的・構造的クロストークが抑制される。また、アクチュエータに与えられる第1及び第2予備振動波形信号の位相も、ノズル列18a〜18d毎に異なる。これによっても、消費電力ピークが過大になるのを避けることができ、電力の小さい電源装置を使用することができる。
アクチュエータユニット21に含まれるアクチュエータは、圧電シート41〜44によって形成されている(図4参照)。これにより、高精度の制御が可能となる。さらに、アクチュエータは圧電式であるので、消費電力が低く、発熱もほとんどない。そのため、アクチュエータの駆動に伴ってインクの増粘を助長することもない。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更を上述の実施の形態に施すことが可能である。例えば、上述の実施形態では、正電位を20V、負電位を−5Vとしているが(図7参照)、これに限定されない。アクチュエータユニット21に所定の変形量が得られる限りは、アクチュエータユニット21の構成や制御方法に基づいて、正電位及び負電位を様々な値としてよい。例えば、正電位を20V、負電位に相当する電位を接地電位(0V)としてよい。
振動パルス信号の供給タイミングは、時点Fi(i=1,2,・・n)に限定されず、印字開始時点T0から最初の吐出パルス信号が供給される時点Ti(i=1,2,・・n)までのどの時点でもよい。
第1及び第2予備振動波形信号に含まれる矩形波の数は共に500個以下であればよい。
第1及び第2予備振動波形信号に含まれる矩形波の幅は、ノズル8からインクが吐出されず且つノズル8内のインクが振動する限りは、どのような幅であってもよい。
紙面センサ133を設けなくてよい。また、紙面センサ133に替わる検知手段を設けてもよい。
1の副マニホールド流路5aに連通するノズル列18a〜18d毎に、吐出パルス信号の位相を異ならせなくてもよい。これにより、第1〜第4波形生成部105a〜105dを1つの波形生成部にすることが可能となり、制御部100の構成が簡易になる。この場合でも、副マニホールド流路5a毎に吐出パルス信号の位相を異ならせることで、電源負荷の軽減と流体的・構造的クロストークの軽減とが実現される。逆に、副マニホールド流路5a毎に吐出パルス信号の位相を異ならせず、ノズル列18a〜18d毎に吐出パルス信号の位相を異ならせてよい。この場合でも、電源負荷の軽減と流体的・構造的クロストークの軽減とが実現される。
上述の実施形態では記録媒体として矩形の用紙Pを採用しているが、ロール紙であってもよい。この場合、給紙部114をロール紙に対応したものに変更する。例えば、ロール紙において、先端から、長手方向に連なった用紙Pの2〜3枚分離れた部分に、最初のインク吐出を行う場合、ロール紙の先端とインク吐出面とが対向し始めた印字開始時点T0から、最初の吐出パルス信号が供給される時点までの間に、振動パルス信号が供給される。したがって、記録媒体として長尺なロール紙を用いた場合でも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
上述の実施形態では、“引き打ち”を行うことによってインクを吐出しているが、“押し打ち”によってインクを吐出してもよい。この場合、予め個別電極35を負電位又はグランド電位としておき、吐出要求がある毎に個別電極35を正電位にする。個別電極35が正電位となるタイミングで、圧電シート41〜44において活性部に対応する部分が圧力室10に向けて凸となるように変形する。これにより圧力室10の容積が低下して、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、ノズル8からインクが吐出される。
上述したインクジェットプリンタ1はヘッド2が固定されたラインプリンタであるが、本発明はヘッドが往復移動するシリアルプリンタにも適用可能である。
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。