以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aを有し、筐体1aの上部には、排紙部31が設けられている。また、筐体1a内は、上から順に3つの空間A、B、Cに区分されている。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1、及び、搬送ユニット20が配置されている。空間B、Cはそれぞれ、筐体1aに対して着脱可能な給紙ユニット1b及びインクタンクユニット1cが配置される空間である。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
インクジェットプリンタ101の内部には、給紙ユニット1bから排紙部31に向けて、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている(図1中太矢印)。給紙ユニット1bは、複数枚の用紙Pを収納することが可能な給紙トレイ23と、給紙トレイ23に取り付けられた給紙ローラ25とを有している。給紙ローラ25は、給紙トレイ23に積層して収納された複数の用紙Pのうち、最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a、27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット20へと送られる。
搬送ユニット20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8と、テンションローラ10とを有している。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されることで搬送ベルト8にテンションを付加している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータMから2つのギアを介して駆動力が与えられることで、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。
搬送ベルト8の外周面8aにはシリコーン処理が施されており、粘着性を有している。用紙搬送経路上において搬送ベルト8を挟んでベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。外周面8aに押さえ付けられた用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されつつ、図1右方へと搬送される。
また、用紙搬送経路上において搬送ベルト8を挟んでベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送され、筐体1a上部の開口30から排紙部31へと排出される。
4つのインクジェットヘッド1は、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。また、4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向には互いに平行に配置されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向に延びる吐出領域が形成されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド1の下面は、インク滴が吐出される吐出面2aである。
搬送ベルト8のループ内には、4つのインクジェットヘッド1と対向して、プラテン19が配置されている。プラテン19の上面は、搬送ベルト8の上側ループの内周面と接触しており、搬送ベルト8の内周側からこれを支持している。これにより、搬送ベルト8の上側ループの外周面8aとインクジェットヘッド1の下面、即ち吐出面2aとが対向しつつ平行になり、且つ、画像形成に適した所定間隔の隙間が形成されている。当該隙間は、用紙搬送経路の一部を構成する。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのヘッド1のすぐ下方を通過する際に、各ヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
インクジェットヘッド1はそれぞれ、空間Cのインクタンクユニット1cに装着されたインクタンク49とチューブ(図示せず)を介して接続されている。4つのインクタンク49には、それぞれ対応するインクジェットヘッド1の吐出するインクが貯溜されている。本実施形態において、各インクタンク49に貯溜されているインクは、チキソ性を有している。チキソ性とは静止状態においては粘度が高く、攪拌されたときや流動状態においては瞬間的に粘度が低下する物性をいう。
次に、図2、図3を参照しつつインクジェットヘッド1について詳細に説明する。なお、図3においては、下筐体87が省略されている。
図2に示すように、インクジェットヘッド1は、リザーバユニット71と、流路ユニット9及びアクチュエータユニット21を含むヘッド本体2と、一端がアクチュエータユニット21に接続されていると共にドライバIC52が実装されたCOF(Chip On Film:平型柔軟基板)50と、COF50の他端が接続された制御基板54とを有している。さらに、インクジェットヘッド1は、リザーバユニット71及び流路ユニット9を包囲する箱体を形成する上筐体86及び下筐体87と、上筐体86の上方において制御基板54を包囲するヘッドカバー55とを有している。
リザーバユニット71は、ヘッド本体2の上面に固定されていると共にヘッド本体2にインクを供給する流路形成部材である。また、リザーバユニット71は、プレート91〜94の4枚のプレートが互いに位置合わせされて積層された積層体であり、その内部に、図示しないインク流入流路、インクリザーバ72、及び、10個のインク流出流路73が互いに連通するように形成されている。なお、図2においては、1つのインク流出流路73のみが表れている。インク流入流路は、インクタンク49からのインクが流入する流路である。インクリザーバ72は、インク流入流路から流入したインクを一時的に貯溜するインク溜である。インク流出流路73は、インクリザーバ72からのインクが流出する流路であって、流路ユニット9の上面に形成されたインク供給口105bに連通している。インクタンク49からのインクは、インク流入流路を介してインクリザーバ72に流入し、インク流出流路73を通過して、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
また、プレート94の下面には、凹部94aが形成されている。凹部94aは、流路ユニット9の上面との間で空隙90を形成している。空隙90には、流路ユニット9上の4つのアクチュエータユニット21が、流路ユニット9の長手方向に沿って等間隔で配列されている。また、積層体の側面には、リザーバユニット71の長手方向に沿って、空隙90の4つの開口90aが千鳥状に等間隔で形成されている。また、プレート94の下面は、凸部(凹部94a以外の部分)が流路ユニット9と接着されている。凸部内には、インク流出流路73が形成されている。
COF50は、その一方端部近傍がアクチュエータユニット21の上面に接続されている。COF50は、アクチュエータユニット21の上面から水平方向に延在して開口90aを通過した後、上方に向かって略直角に湾曲して折り曲げられ、上筐体86及び下筐体87の内壁面に形成された切欠き53を通過してリザーバユニット71の上方に引き出されている。また、COF50は、リザーバユニット71の上方において、図2中左方に延在した後に、上筐体86に形成されたスリット86aから上筐体86の上方に引き出されている。そして、上筐体86の上方において、COF50の他方端部がコネクタ54aを介して制御基板54に接続されている。COF50の途中部には、ドライバIC52が実装されている。ドライバIC52は、リザーバユニット71の上面に貼り付けられており、リザーバユニット71と熱的に結合されている。これにより、ドライバIC52から発生した熱が、リザーバユニット71に伝達してドライバIC52を冷却する一方で、リザーバユニット71内のインクを温めることによってインクの粘度が高くなるのを抑制している。
制御基板54は、上筐体86の上方に配置されており、COF50のドライバIC52を介してアクチュエータユニット21の駆動を制御する。ドライバIC52は、アクチュエータユニット21を駆動する駆動信号を生成するものである。
さらに、図3及び図4を参照しつつ、ヘッド本体2について説明する。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド本体2は、図3に示すように、流路ユニット9の上面9aに4つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット9も、ステンレス鋼からなる複数の金属製のプレートを互いに位置合わせした積層体である。図3及び図4に示すように、流路ユニット9は、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
流路ユニット9の上面9aには、リザーバユニット71のインク流出流路73(図2参照)に対応して、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図3に示すように、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105、マニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105a、さらに副マニホールド流路105aから分岐した多数の個別インク流路132が形成されている。流路ユニット9の下面には、図4に示すように、吐出面2aが形成されており、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。流路ユニット9の上面9a(アクチュエータユニット21の固定面)にも、菱形の平面形状を有する圧力室110が第1方向及びこれに交差する第2方向に関して、マトリクス状に多数配置されている。なお、吐出口108は、主走査方向に関して主走査方向解像度である600dpiの間隔で配列されている。
本実施形態では、流路ユニット9の長手方向に等間隔に並ぶ圧力室110の列が、幅方向に互いに平行に16列配列されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、後述のアクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側(下底側)から短辺側(上底側)に向かって次第に少なくなるように配置されている。吐出口108も、これに対応した配置がされている。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図3〜図4に示すように、リザーバユニット71からインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分配される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路に流れ込み、圧力室110を介して吐出口108に至る。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図5(a)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。また、最上層の圧電シート141の上面における圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。最上層の圧電シート141とその下側の圧電シート142との間にはシート全面に形成された共通電極134が介在している。個別電極135は、図5(b)に示すように、圧力室110と相似な略菱形の平面形状を有する。平面視で、個別電極135の大部分は、圧力室110の領域内にある。略菱形の個別電極135における鋭角部の一方は圧力室110の外に延出され、その先端には個別電極135と電気的に接続された個別バンプ136が設けられている。
共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135は、COF50を介してドライバIC52の各出力端子と電気的に接続されており、ドライバIC52からの駆動信号が選択的に供給されるようになっている。
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。圧電シート141はその厚み方向に分極されている。個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、圧電シート141における電界印加部分が圧電効果により歪む活性部として働く。つまり、アクチュエータユニット21には、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働き、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれている。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。つまり、アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シート141を活性部が含まれる層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シート142、143を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。図5(a)に示すように、圧電シート141〜143は圧力室110を区画するプレート122の上面に固定されているため、圧電シート141における電界印加部分とその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
なお、本実施形態においては、予め個別電極135に所定の電位V1を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135をグランド電位V0にした後、所定のタイミングで再び個別電極135に電位V1を付与するような駆動信号をドライバIC52から出力させる(図9参照)。この場合、個別電極135がグランド電位V0となるタイミングで圧電シート141〜143が元の状態に戻り、圧力室110の容積は初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、副マニホールド流路105aから個別インク流路132へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極135に所定の電位V1が付与されたタイミングで圧電シート141〜143において活性領域と対向する部分が圧力室110側に凸となるように変形し、圧力室110の容積低下によりインクの圧力が上昇し、吐出口108からインク滴が吐出される。
次に、図6を参照しつつ、制御装置16について説明する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。制御装置16は、制御基板54及びドライバIC52と一体となって、インクジェットプリンタ101全体を制御するものであり、図6に示すように、搬送制御部41と、画像データ記憶部42と、検出部43と、変換部44と、駆動信号生成部45とを有している。
搬送制御部41は、搬送方向に沿って用紙Pが搬送されるように搬送ユニット20の搬送モータMを制御する。
画像データ記憶部42は、用紙Pに印刷すべき画像に関する画像データを記憶する。画像データは、各インクジェットヘッド1に係る吐出口108のそれぞれに、画像を構成する各画像ドットを形成するためのインク滴の体積を印刷周期毎に割り当てたものである。なお、本実施形態においては、吐出口108から吐出されるインク滴は、4種類の体積(大滴、中滴、小滴、0)から選択されたいずれかが割り当てられている。印刷周期は、搬送方向の印刷解像度に対応した単位距離だけ用紙Pが搬送されるのに要する時間である。
検出部43は、画像データに基づき、用紙Pに印刷を行った場合に、インク滴を吐出しない印刷周期が所定数以上連続した後に、最初に現れるインク滴を吐出すべき印刷周期である検出周期を、各吐出口108について検出する。なお、所定数は、0.1秒に対応している。例えば、20kHzで駆動される場合には2000印刷周期であり、本実施形態においては用紙Pが85mm搬送される時間に相当する。この所定数はインクの種類や環境温度によって変化する。
変換部44は、検出部43が検出周期を検出したとき、当該検出周期及び次の印刷周期で構成される連続印刷周期群を画定し、画定した連続印刷周期群に係る全ての印刷周期においてインク滴の吐出が指示されるように、且つ、当該連続印刷周期群において吐出が指示されたインク滴の体積の合計が変換前よりも大きくなるように、画像データを変換する。後述するように、変換部44においては、検出周期の前に連続するインク滴が吐出されない印刷周期の数である不吐出周期数n、及び、検出周期の次の印刷周期におけるインク滴の吐出の有無によって、画像データの変換処理が異なる。
不吐出周期数nが大きくなるに伴って、乾燥やインクの静止により当該吐出口108内のインクの粘度が高くなる。吐出口108内のインクの粘度が高くなると、実際に吐出口108から吐出されるインク滴の体積が小さくなる。つまり、連続印刷周期群において吐出されるインク滴の体積が不足する。変換部44は、連続印刷周期群において吐出されるインク滴の体積が不足するのを補うため、不吐出周期数nが大きくなるに伴って、連続印刷周期群において吐出が指示されたインク滴の体積の合計が大きくなるように、画像データを変換する。
変換部44に係る画像データの変換処理について詳細に説明する。まず、変換部44が、検出周期の次の印刷周期にはインク滴が吐出されない画像データを変換する場合について説明する。この場合、変換部44は、不吐出周期数nが閾値i以下であれば、検出周期及び次の印刷周期において、検出周期に画像データにより指示されたインク滴と同じ体積のインク滴の吐出が指示されるように、画像データを変換し、不吐出周期数nが閾値iを超えていれば、検出周期において画像データにより指示されたインク滴より大きい体積のインク滴が吐出されるように、且つ、検出周期の次の印刷周期において検出周期で画像データにより指示されたインク滴と同じ体積のインク滴が吐出されるように、画像データを変換する。
具体例として、変換部44が、検出周期において吐出口108から小滴(5pl)のインク滴が吐出され、次の印刷周期においてはインク滴が吐出されない画像データを変換する場合について説明する。この場合、図7(a)に示すように、変換部44は、不吐出周期数nが閾値i以下であれば、連続印刷周期群に係る全ての印刷周期において、検出周期に吐出口108から吐出されるべきインク滴と同じ体積のインク滴の吐出が指示されるように、具体的には、検出周期及び次の印刷周期において、共に小滴のインク滴の吐出が指示されるように、画像データを変換する。
変換後の画像データによると、検出周期においては、吐出口108内のインクが増粘しているため、小滴のインク滴の吐出を指示しても、実際に吐出口108から吐出されるインク滴の体積は、小滴より少ない体積(例えば、約1pl)となるが、このインク滴の体積不足を補うために、次の印刷周期においても小滴のインク滴の吐出が指示される。このとき、検出周期において吐出口108内の増粘したインクの大半が吐出されているものの、吐出口108内に増粘したインクが僅かに残存しているため、実際には、小滴より若干小さい体積(例えば、約4pl)のインク滴が吐出口108から吐出されることになる。連続印刷周期群に着目すると、変換前の画像データに係る各印刷周期において吐出口108からの吐出が指示されるインク滴の体積の合計が5plであり、変換後の画像データに係る各印刷周期において吐出されるインク滴の体積の合計が約5plとなり、両者はほぼ一致する。
また、図7(b)に示すように、変換部44は、不吐出周期数nが閾値iを超えていれば、連続印刷周期群の各印刷周期のうち、最初に現れる印刷周期(検査周期)において吐出が指示されるインク滴の体積が最も大きくなるように、具体的には、検出周期において小滴より中滴(10pl)のインク滴の吐出が指示されるように、且つ、次の印刷周期においては吐出口108から小滴のインク滴の吐出が指示されるように、画像データを変換する。
変換後の画像データによると、検出周期においては、当該吐出口108内のインクが増粘しているため、中滴のインク滴(10pl)の吐出を指示しても、実際に吐出口108から吐出されるインク滴の体積は、中滴より少ない体積(例えば、約1pl)となる。なお、図7(b)の例では、図7(a)の例と比較して、不吐出期間が長くなっているため、吐出口108内のインクがより高い粘度に増粘している。そのため、図7(a)で説明したと同様に、画像データが予め指示した体積でインク滴の吐出ができず、不吐出周期数nに対応してさらに増粘している分だけ、図7(a)の場合に比べてインク滴が吐出し難くなっている。そして、このインク滴の体積不足を補うために、次の印刷周期において小滴のインク滴の吐出が指示される。このとき、検出周期において吐出口108内の増粘したインクの大半が吐出されているものの、当該吐出口108内に増粘したインクが僅かに残存しているため、小滴より若干小さい体積(例えば、約4pl)のインク滴が吐出口108から吐出される。連続印刷周期群に着目すると、変換前の画像データに係る各印刷周期において吐出口108から吐出が指示されるインク滴の体積の合計が5plであり、変換後の画像データに係る各印刷周期において吐出されるインク滴の体積の合計が約5plとなり、両者はほぼ一致する。
次に、変換部44が、検出周期及び次の印刷周期において吐出口108からインク滴が吐出される画像データを変換する場合について説明する。この場合、変換部44は、不吐出周期数nが閾値j未満であれば、検出周期の次の印刷周期において画像データにより指示されたインク滴より大きい体積のインク滴が吐出されるように、画像データを変換し、不吐出周期数nが閾値j以上且つ閾値k以下であれば、検出周期において画像データにより指示されたインク滴より大きい体積のインク滴が吐出されるように、画像データを変換し、不吐出周期数nが閾値kを超えていれば、検出周期及び次の印刷周期において画像データにより指示されたインク滴より大きい体積のインク滴が吐出されるように、画像データを変換する。
具体例として、変換部44が、検出周期及び次の印刷周期のそれぞれにおいて吐出口108から小滴(5pl)のインク滴が吐出される画像データを変換する場合について説明する。この場合、図8(a)に示すように、変換部44は、不吐出周期数nが閾値j未満であれば、連続印刷周期群の各印刷周期のうち、2番目に現れる印刷周期において指示されるインク滴の体積が最も大きくなるように、具体的には、検出周期では小滴のインク滴の吐出が、且つ、次の印刷周期では同じ吐出口108から中滴のインク滴の吐出が指示されるように、画像データを変換する。
変換後の画像データによると、検出周期においては、吐出口108内のインクが増粘しているため、実際に吐出口108から吐出されるインク滴の体積は、小滴より少ない体積となるが、このインク滴の体積不足を補うために、次の印刷周期において小滴に代えて中滴のインク滴の吐出が指示される。このとき、当該吐出口108内に増粘したインクが僅かに残存しているため、実際には、中滴より若干小さい体積(例えば、約9pl)のインク滴が吐出される。連続印刷周期群に着目すると、変換前の画像データに係る各印刷周期において吐出が指示されるインク滴の体積の合計が10plであり、変換後の画像データに係る各印刷周期において吐出されるインク滴の体積の合計が約10plとなり、両者はほぼ一致する。
また、図8(b)に示すように、変換部44は、不吐出周期数nが閾値j以上且つk以下であれば、連続印刷周期群の各印刷周期のうち、最初に現れる印刷周期(検出周期)において吐出が指示されるインク滴の体積が最も大きくなるように、具体的には、検出周期において吐出口108から中滴のインク滴が吐出されるように、且つ、次の印刷周期においては小滴のインク滴が吐出されるように、画像データを変換する。
変換後の画像データによると、検出周期においては、吐出口108内のインクが増粘しているため、実際に吐出口108から吐出されるインク滴の体積は、中滴少ない体積(例えば、約5pl)となる。そして、次の印刷周期において、吐出口108から小滴のインク滴の吐出が指示される。連続印刷周期群に着目すると、変換前の画像データに係る各印刷周期において吐出口108から吐出が指示されるインク滴の体積の合計が10plであり、変換後の画像データに係る各印刷周期において吐出されるインク滴の体積の合計が約10plとなり、両者はほぼ一致する。
さらに、図8(c)に示すように、変換部44は、不吐出周期数nが閾値kを超えていれば、連続印刷周期群の各印刷周期において、変換前の画像データに係る各印刷周期において吐出されるべきインク滴の体積よりも大きくなるように、具体的には、検出周期及び次の印刷周期において吐出口108から中滴のインク滴が吐出されるように、画像データを変換する。
変換後の画像データによると、検出周期においては、吐出口108内のインクが増粘しているため、実際に吐出口108から吐出されるインク滴の体積は、中滴より少ない体積(例えば、約3pl)となるが、このインク滴の体積不足を補うために、次の印刷周期においても中滴のインク滴の吐出が指示される。連続印刷周期群に着目すると、変換前の画像データに係る各印刷周期において吐出口108から吐出が指示されるインク滴の体積の合計が10plであり、変換後の画像データに係る各印刷周期において吐出されるインク滴の体積の合計が約13plとなり、両者はほぼ一致する。なお、上述した例で、吐出口108から実際に吐出されるインク滴の体積は一例であり、不吐出周期数nや環境温度などによって変化する。
図6に戻って、駆動信号生成部45は、画像データに基づいて、吐出口108から所望の体積を有するインク滴が吐出されるように、アクチュエータユニット21を変形させる駆動信号である吐出駆動信号を生成すると共に、生成した吐出駆動信号をアクチュエータユニット21に供給する。図9(a)に示すように、吐出駆動信号は、1印刷周期Tにおいて電位V1から所定時間グランド電位V0となる吐出パルスを含む信号である。また、吐出駆動信号は、印刷周期のはじめの時刻(時間=0)から所定の時間後に、吐出パルスが出現する構成となっている。このパルス幅は、圧力波が副マニホールド流路105aの出口から吐出口108に至る距離AL(Acoustic Length)長を伝播する時間t1と等しい。なお、図9(a)の波形は、小滴のインク滴を吐出するときの波形であり、1つの吐出パルスを有している。中滴のインク滴を吐出するときの波形は、2つの吐出パルスを有しており、大滴のインク滴を吐出するときの波形は、3つの吐出パルスを有している。
また、駆動信号生成部45は、検出部43が検出周期を検出したとき、図9(b)に示すように、連続印刷周期群の全ての印刷周期において、吐出パルスに先立って3つの不吐出パルスが現れる吐出駆動信号を生成すると共に、生成した吐出駆動信号をアクチュエータユニット21に供給する。不吐出パルスは、吐出口108からインク滴が吐出されない範囲でアクチュエータユニット21を駆動するパルスであり、パルス幅が時間t1の1/3以下となっている。また、この吐出駆動信号において、不吐出パルス同士の間隔、及び、不吐出パルスと吐出パルスとの間隔が全て時間t0となっている。このように、吐出パルスに先立って不吐出パルスがアクチュエータユニット21に供給されるため、吐出口108からインク滴が吐出される前に、吐出口108内のインクが攪拌され、当該インクの増粘が抑制される。特に、上述したように、当該インクがチキソ性を有しているため、不吐出パルスの数が少なくても攪拌されてインクの粘度が低下する。なお、1印刷周期に含まれる不吐出パルスの数は、1〜2であってもよいし、4以上であってもよい。
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、一定時間吐出口108からインク滴が吐出されないことによって吐出口108内のインクの粘度が高くなっても、吐出口108からインク滴を吐出する直前に不吐出パルスによって吐出口108内のインクが攪拌されるため、インクの粘度が低下し、インク吐出特性が低下するのを抑制することができる。さらに、吐出口108内のインクの粘度が高くなることによって吐出口108から吐出されるインク滴の体積が不足しても、次の印刷周期において、不足した体積が補われるように吐出口108からインク滴が吐出されるため、印刷品質が低下するのを抑制することができる。
また、駆動信号生成部45が、連続印刷周期群に係る全ての印刷周期において、不吐出パルスを含む吐出駆動信号を生成するため、吐出口108内のインクの粘度を確実に低下させることができる。
さらに、変換部44が、上述の不吐出周期数nが閾値iを超えているとき、及び、不吐出周期数nが閾値j以上且つk以下のときに、連続印刷周期群の各印刷周期において吐出口108からの吐出が指示されるインク滴のうち、最初に現れる印刷周期(検出周期)において吐出が指示されるインク滴の体積が最も大きくなるように、画像データを変換する。このため、最も粘度が高い検出周期において、吐出されたインク滴の体積が不足するのを抑制することができる。これにより、印刷品質が低下するのを抑制することができる。
加えて、変換部44は、連続印刷周期群において検出周期のみに吐出口108からインク滴の吐出を指示し且つ不吐出周期数nが閾値i以下となる画像データを、連続印刷周期群に係る全ての印刷周期において、吐出口108から同じ体積のインク滴の吐出が指示されるように、画像データを変換するため、変換処理を簡素化することができる。
また、連続印刷周期群に係る各印刷周期に関する吐出駆動信号においては、不吐出パルス同士の間隔、及び、不吐出パルスと吐出パルスとの間隔が全て時間t0となっているため、不吐出パルスによって吐出口108内のインクを効率よく攪拌することができると共に、攪拌による圧力室110内における圧力波を利用して効率よくインク液を吐出することができる。
さらに、不吐出パルスのパルス幅が、圧力波が副マニホールド流路105aの出口から吐出口108に至る距離AL長を伝播する時間t1の1/3以下となっているため、吐出口108からインクが漏れ出るのを抑制しつつ吐出口108内のインクを効率よく攪拌することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、変換部44において、不吐出周期数n、及び、吐出口108における検出周期の次の印刷周期におけるインク滴の吐出の有無によって、画像データの変換処理が異なる構成であるが、不吐出周期数n、及び、検出周期の次の印刷周期におけるインク滴の吐出の有無の少なくともいずれかによって、画像データの変換処理が異ならない構成であってもよい。例えば、変換部が、不吐出周期数n、及び、検出周期の次の印刷周期におけるインク滴の吐出の有無に係わらず、最初に現れる印刷周期(検査周期)又は2番目に現れる印刷周期において吐出が指示されるインク滴の体積が最も大きくなるように、画像データを変換してもよいし、連続印刷周期群の全ての印刷周期において吐出口108から同じ体積のインク滴の吐出が指示されるよう画像データを変換してもよい。
また、上述の実施形態においては、検出部43が、インク滴を吐出しない印刷周期が所定数以上連続した後に、最初に現れるインク滴を吐出すべき印刷周期を検出周期として検出する構成であるが、検出部が、インク滴を吐出しない印刷周期が所定数以上連続した後に、最初に現れるインク滴を吐出すべき印刷周期のうち、小滴のインク滴を吐出させる印刷周期のみを検出周期として検出する構成であってもよい。これによると、不吐出パルスを含む吐出駆動信号の数が少なくなるため、省電力化を図ることができる。
さらに、上述の実施形態においては、駆動信号生成部45が、連続印刷周期群に係る全ての印刷周期において、不吐出パルスを含む吐出駆動信号を生成する構成であるが、連続印刷周期群において最初に現れる印刷周期のみにおいて、不吐出パルスを含む吐出駆動信号を生成する構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、吐出駆動信号は、不吐出パルスを含む、含まないにかかわらず、印刷周期のはじめから所定時間経過後に吐出パルスが出現する構成となっているが、不吐出パルスを含む吐出駆動信号以外は印刷周期のはじめの時刻から吐出パルスが出現する構成としてもよい。
加えて、上述の実施形態においては、不吐出パルス同士の間隔、及び、不吐出パルスと吐出パルスとの間隔が全て時間t0となっている構成であるが、これらの間隔の少なくとも一部が時間t0以外の時間となっていてもよい。
また、上述の実施形態においては、3つの不吐出パルスのパルス幅が、時間t1の1/3以下となっている構成であるが、少なくともいずれか1つの不吐出パルスが任意のパルス幅を有していてもよい。
さらに、上述の実施形態においては、インクジェットヘッド1がチキソ性を有するインクを吐出する構成となっているが、インクジェットヘッド1がチキソ性を有さないインク滴を吐出する構成であってもよい。
加えて、上述の実施形態においては、連続印刷周期群が、検出周期及び検出周期の次の1つの印刷周期で構成されているが、連続印刷周期群が、検出周期を先頭とする3以上の印刷周期で構成されていてもよいし、検出周期が2番目以降に現れるように構成されていてもよい。
本発明は、インク以外の液体を吐出する記録装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。