以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明に係る記録装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部1cから排紙部31に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのヘッド1に対してインクが供給される。
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド1、搬送機構8、用紙センサ32、及び、制御装置100等が配置されている。ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有し、駆動信号に基づいて画像を形成する。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持され、プラテン5と所定の間隙を介して対向する。ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、制御基板等が積層された積層体である。上流側流路部材としてのリザーバユニットには、リザーバを含む上流側インク流路(ともに不図示)が形成されており、カートリッジ4からインクが供給される。リザーバは、インクを一時的に貯留する。
下流側流路部材としての流路ユニット11は、アクチュエータユニット19と共にヘッド本体3を構成し、リザーバユニットのインクが供給される。流路ユニット11の下面は、複数の吐出口108が形成された吐出面1aである。吐出口108からは、アクチュエータユニット19の駆動により、インクが吐出される。なお、ヘッド1は、後に詳述する。
制御基板は、制御装置100からの信号を調整する。出力信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにヘッド本体3のアクチュエータユニット19に出力される。アクチュエータユニット19は、駆動信号が供給されると、流路ユニット11内のインクに圧力を加える。
搬送機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部9a,9bと、プラテン5とを含んでいる。2つのガイド部9a,9bは、プラテン5を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部9aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有し、給紙部1cとプラテン5とを繋ぐ。そして、ガイド部9aは、画像形成用の用紙Pをプラテン5に向けて搬送する。搬送方向下流側のガイド部9bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有し、プラテン5と排紙部31とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部31に向けて搬送される。なお、プラテン5は、板状部材であって吐出面1aよりも一回り大きな平面サイズを有する。
用紙センサ32は、送りローラ対24の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、同期したヘッド1及び搬送機構8の駆動に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
空間Bには、給紙部1cが配置されている。給紙部1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち、給紙トレイ20が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ20には、複数の用紙Pが収納可能である。給紙ローラ21は、給紙トレイ20内で最も上方の用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対23〜25によって搬送される搬送方向D(図1中矢印D方向)と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が、筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、ヘッド1にチューブ及びポンプ(共に不図示)を介して接続されている。なお、ポンプは、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時や液体の初期導入時)に駆動される。これ以外は停止状態にあり、ポンプはヘッド1へのインク供給を妨げない。
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ各部の動作を制御して、プリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像記録動作を制御する。記録指令を受けると、制御装置100は、給紙部1c、及び、搬送機構8(送りローラ対22〜28)を駆動する。給紙トレイ20から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部9aによりガイドされプラテン5上に送られる。用紙Pは、ヘッド1の真下を副走査方向(用紙搬送方向D)に通過する際に、制御装置100の制御により、吐出面1aからインクが吐出され、所望の画像が形成される。なお、インクの吐出タイミングは、用紙センサ32からの検知信号に基づいて行われる。そして画像が形成された用紙Pは、下流側ガイド部9bによりガイドされて、筐体101aの上部から排紙部31に排出される。
次に、図2及び図3を参照し、ヘッド本体3の構成について説明する。なお、図3(a)では、アクチュエータユニット19の下側にあって破線で示すべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で示している。
ヘッド本体3は、図2に示すように、流路ユニット11の上面に4つのアクチュエータユニット19が固定された積層体である。上面には、圧力室110が開口している。アクチュエータユニット19は、この開口を封止し、圧力室110の側壁を構成している。
流路ユニット11は、図3(b)に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット11の内部には、インク流路が形成されている。インク流路は、上流側の共通インク流路と下流側の個別インク流路132とから構成される。共通インク流路は、マニホールド流路105及びこれから分岐した副マニホールド流路105aからなる。マニホールド流路105は、一端に上面のインク供給口105bを持つ。個別インク流路(個別液体流路)132は、副マニホールド流路105aの出口から、アパーチャ112及び圧力室110を経て、下面(吐出面1a)の吐出口108に至る。吐出口108は、吐出面1aにおいて、主走査方向に600dpiに相当する間隔で配列している。
流路ユニット11におけるインクの流れについて説明する。図2及び図3に示すように、リザーバユニットからインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る。
次に、アクチュエータユニット19について説明する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット19は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット19の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット19の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
図3(c)に示すように、アクチュエータユニット19は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスであり、3枚の圧電層141〜143から構成されている。最上層の圧電層141は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。圧電層142の上面には、共通電極134が全体的に形成されている。両電極134、135間に分極方向の電界が生じると、間の圧電層141(駆動活性部)が面方向に縮む。圧電層142、143は、自発的に変形しないので、圧電層141との間に歪み差が生じる。これにより、個別電極135と圧力室110とに挟まれた部分が、圧力室110に向かって突出(ユニモルフ変形)する。このとき圧力室110内のインクは加圧され、インク滴として吐出される。
このように、アクチュエータユニット19には、個別電極135毎にアクチュエータが作り込まれており、独立してインクに吐出エネルギーを付与できる。ここで、共通電極134は、常にグランド電位にある。個別電極135の先端部には、個別ランド136が形成されている。各個別ランド136は、FPCを介してドライバIC及び制御基板と接続されている。駆動信号は、個別ランド136から個別電極135に選択的に供給される。
本実施形態では、インクの吐出に際して、引き打ち法が採用されている。本実施形態においては、ドライバICから一又は複数の電圧パルス(吐出パルス)を含む吐出電圧パルス信号(駆動信号)を出力して、予め個別電極135にプラスの所定電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135にグランド電位を付与し、その後所定のタイミングにて再び所定電位を個別電極135に付与する。この場合、個別電極135がグランド電位になるタイミングで、圧力室110内に負の圧力波が発生する。負の圧力波は、圧力室110から個別インク流路132の両端に向かって伝搬し、副マニホールド流路105aの出口付近で正に反転して再び圧力室110に戻る。個別電極135に所定電位を付与するタイミングは、この反転した圧力波が圧力室110に戻った時点に相当する。つまり、圧力室110で生じた負圧によって、副マニホールド流路105aからインクが吸い出される。このインクが圧力室110に到達した時点で、個別電極135に所定電位を付与すると、圧力室110内のインクの圧力が上昇し、吐出口108からインク滴が吐出される。
インクを吐出するために個別電極135に付与される電圧パルス(吐出パルス)の幅は、吐出口108からインク滴が吐出されるように調整されている。例えば、個別電極135に付与される電圧パルス(吐出パルス)の幅は、インクを媒体とした圧力波が副マニホールド流路105aの出口から吐出口108まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)に設定されている。吐出電圧パルス信号に含まれる電圧パルスの幅をこのようにすることで、個別インク流路132の両端で反射して正圧となった圧力波と、個別電極135を所定電位にしたタイミングに発生した正圧の圧力波とが圧力室110内で重ね合わされるため、電圧パルスの高さを低くしつつインク滴を吐出口108から吐出させることができる。
吐出口108からインク滴を吐出させないようにアクチュエータユニット19を駆動するには、吐出電圧パルス信号に含まれる電圧パルスよりもパルス幅がALよりも基準値を超えて狭い複数の電圧パルスを含む振動電圧パルス信号を個別電極135に付与する。ここで、基準値は、吐出口108からインク滴が吐出されるように、圧電層141〜143を変形させるパルスの幅である。つまり、パルス幅がALよりも基準値を超えて狭い複数の電圧パルスを含む振動電圧パルス信号を個別電極135に付与すると、圧力室110内で発生する圧力波の振幅が、吐出に必要な閾値を超えて大きくならないために吐出口108からインク滴が吐出されず、インクメニスカスに微小な振動が発生する。このインクメニスカスの振動によって、吐出口108近傍のインクは撹拌されるので、乾燥に起因するインクの増粘が抑制される。そのため、インク吐出不良を抑制することができる。
次に、図4を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図4に示すように、制御装置100は、制御基板及びドライバICと一体となって、プリンタ101全体を制御するものであり、搬送制御部161と、画像データ記憶部162と、駆動信号生成部163とを有している。
搬送制御部161は、用紙Pが搬送方向に沿って所定の速度で搬送されるように、給紙部1c、及び、搬送機構8の各動作を制御する。
画像データ記憶部162は、外部装置から転送された画像データを記憶する。画像データは、各吐出口108について、ドットサイズ(ゼロ、小、中、大の4段階のいずれか)やドット形成位置等を複数の記録周期(単位周期)にわたって示すものである。なお、1記録周期は、ヘッド1と用紙Pとが用紙の搬送方向における記録の解像度に対応した単位距離だけ相対移動するのに要する時間である。本実施形態では、ドットサイズの大、中、小は、吐出総量15pl(ピコリットル)、10pl、5plのインクでそれぞれ形成される。
駆動信号生成部(駆動信号生成手段)163は、画像吐出データ生成部171、非画像吐出データ生成部172、振動データ生成部173、波形パターン記憶部174、及び、判定部175を有している。駆動振動生成部163は、これら各データ生成部171〜173で生成された各データに基づく、駆動信号(電圧パルス信号)を生成するとともに、当該駆動信号をヘッド1の各アクチュエータに選択的に供給する。こうして、用紙Pに所望の画像80(図7参照)の画素を構成する各画像ドット81の形成が可能となる。
画像吐出データ生成部171は、画像データ記憶部162に記憶された画像データに基づき、吐出データを生成する。吐出データ(画像液体吐出データ)は、波形パターン記憶部174に記憶された吐出パルス波形W1〜W3及び非吐出パルス波形W4のいずれかに対応する電圧パルス信号が、各個別電極135に所定のタイミングで供給されるように指示するデータである。これにより、画像データに基づく画像ドット81(図5参照)が用紙Pに形成される。なお、図5には、搬送される用紙Pに対して各吐出口108から吐出される画像ドット81及び非画像ドット82が示されている。
判定部175は、画像データ記憶部162に記憶された画像データに基づいて、連続して搬送方向に画像ドット81が形成されない記録周期(画像ドット不形成期間:図5参照)が所定数以上となるか否かを、吐出口108ごとに判定する。この所定数は、インクの増粘によって吐出口108の吐出性能が劣化する実態に応じてあらかじめ設定されている。画像ドット不形成期間は、図5に示すように、画像ドット81が形成された第1吐出時点(記録周期)から、次の画像ドット81が形成される第2吐出時点(記録周期)までの連続した記録周期で構成されている。判定部175は、カウント部176を有している。カウント部176は、各吐出口108について、画像ドット81及び非画像ドット82(図5参照)のいずれかを形成する記録周期の後から、次回、画像ドット81及び非画像ドット82のいずれかを形成する記録周期までの、記録周期をカウントする。判定部175は、カウント部176によるカウントに基づいて、画像データ記憶部162に記憶された画像データに基づいて、連続して搬送方向に画像ドット81が形成されない記録周期(画像ドット不形成期間:図5参照)が所定数以上となるか否かを、吐出口108ごとに判定する。
非画像吐出データ生成部172は、非画像ドット形成期間決定部181、乱数生成部182、及び、非画像ドット形成時点決定部183を有する。非画像ドット形成期間決定部181は、1回の予備吐出で画像データに基づかないドットである1つの非画像ドット82を形成する期間である非画像ドット形成期間を設定する(図5参照)。非画像ドット形成期間は、画像ドット81を形成する記録周期の後からの所定数の記録周期で構成されている。なお、ここでいう1回の予備吐出とは、1記録周期中に行われる予備吐出をいい、例えば、1記録周期中に複数滴のインクが連続して吐出口108から吐出されるものも含む。1回の予備吐出で、約3plのインク滴が吐出され、1つの非画像ドット82が用紙P上に形成される。また、予備吐出とは、画像ドット81を形成するためのインク吐出よりもインク量が少ないだけであり、同じインク吐出を行うものであり、後述の予備吐出パルス(すなわち、吐出パルス)によってインクを吐出する。
乱数生成部182は、非画像ドット形成期間内のいずれの時点で非画像ドット82を形成するかを示す乱数を生成する。非画像ドット形成時点決定部183は、乱数生成部182が生成した乱数に基づいて、非画像ドット形成期間内における非画像ドット82を形成するタイミングを決定する。非画像吐出データ生成部172は、非画像ドット形成時点決定部183が決定したタイミングで予備吐出を行う予備吐出データ(非画像吐出データ)を生成する。予備吐出データは、波形パターン記憶部174に記憶された予備吐出パルス波形W5に対応する電圧パルス信号が、各個別電極135に所定のタイミングで供給されるように指示するデータである。これにより、非画像ドット82(図5参照)が用紙Pに形成される。
振動データ生成部173は、吐出データ及び予備吐出データに基づいて、非画像ドット82を形成する記録周期とこれよりも前において連続する空白(画像ドット81及び非画像ドット82が形成されない空白)の記録周期が1以上の場合は、吐出口108近傍のインクを吐出させずに振動させる振動データを生成する。より具体的には、連続する空白の記録周期が1つだけの場合は、当該記録周期において、波形パターン記憶部174に記憶された第2振動パルス波形W7に対応する電圧パルス信号が、各個別電極135に所定のタイミングで供給されるように指示する振動データが生成される。連続する空白の記録周期が2以上ある場合は、非画像ドット82が形成される記録周期と隣接する記録周期では第2振動パルス波形W7に対応する電圧パルス信号が供給され、これ以外の記録周期では第1振動パルス波形W6に対応する電圧パルス信号が供給されるように指示する振動データが生成される。本実施形態においては、第2振動パルス波形W7に対応する電圧パルス信号が供給される記録周期と隣接する記録周期においてのみ、第1振動パルス波形W6に対応する電圧パルス信号が供給される。変形例として、第2振動パルス波形W7に対応する電圧パルス信号が供給される記録周期及び吐出パルス波形W1〜W3に対応する電圧パルス信号が供給される記録周期以外のすべて又は2以上の記録周期において、第1振動パルス波形W6に対応する電圧パルス信号が供給されてもよい。
波形パターン記憶部174は、7つの単位パルス波形を記憶している。本実施形態においては、吐出パルス波形W1,W2,W3と、非吐出パルス波形W4と、予備吐出パルス波形W5と、第1及び第2振動パルス波形W6,W7とが用意されている(図6参照)。吐出パルス波形W1〜W3は、吐出口108からインクを吐出させる吐出電圧パルス信号を生成するための単位パルス波形である。吐出パルス波形W1は、ドットサイズ小、すなわち、吐出総量5plのインク滴を吐出口108から吐出するための単位パルス波形である。吐出パルス波形W2は、ドットサイズ中、すなわち、吐出総量10plのインク滴を吐出口108から吐出するための単位パルス波形である。吐出パルス波形W3は、ドットサイズ大、すなわち、吐出総量15plのインク滴を吐出口108から吐出するための単位パルス波形である。非吐出パルス波形W4は、吐出口108からインクを吐出させず且つ吐出口108近傍のインクを振動させない非吐出電圧パルス信号を生成するための単位パルス波形である。予備吐出パルス波形W5は、視認されにくい程度の非画像ドット82を形成するために吐出口108からインクを吐出させる予備吐出電圧パルス信号を生成するための単位パルス波形である。第1及び第2振動パルス波形W6,W7は、吐出口108からインクを吐出させず且つ吐出口108近傍のインクを振動させる振動電圧パルス信号を生成するための単位パルス波形である。
これら7つの単位パルス波形は、いずれも同じ時間的な長さ(1記録周期)を有しており、1記録周期は50μsec(駆動周波数20kHz)である。駆動信号(吐出電圧パルス信号、非吐出電圧パルス信号、予備吐出電圧パルス信号及び振動電圧パルス信号)は、上述の7つの単位パルス波形をドライバICで増幅したもので、ローレベルがグランド電位に、ハイレベルが正の所定電位(例えば24V)となっている。
ここで、単位パルス波形について説明する。図6は、単位パルス波形の模式図である。図6に示すように、吐出パルス波形W1,W2,W3は、それぞれ1つ、2つ及び3つの吐出波形(ハイレベルからローレベルに遷移した後にハイレベルに戻る波形)を含んでいる。吐出波形は、ドライバICで増幅されることで、アクチュエータを駆動する吐出パルスとなる。吐出パルスの幅はいずれもALに等しい。したがって、吐出電圧パルス信号を個別電極135に付与すると、圧力室110内で発生する圧力波の振幅が吐出に必要な閾値を超えて大きくなり、当該吐出口108からはインクが吐出される。このとき、吐出パルスの1つが、吐出口108から吐出されるインク滴1つに対応している。1回のインク吐出で吐出されるインク量は一定である。また、吐出パルス波形W2,W3に係る吐出パルス間の距離は、ALに等しい。ここで、吐出電圧パルス信号が個別電極135に印加されると、対応する吐出口108からは吐出パルス波形W1〜W3の応じた数のインク滴が吐出され、用紙上にはいずれも1つの画像ドット81が形成されることになる。
非吐出パルス波形W4は、常にハイレベルを保っている。したがって、非吐出パルス波形W4に基づいて生成された非吐出電圧パルス信号を個別電極135に付与しても、当該吐出口108からはインクが吐出されず、インクメニスカスに微小な振動が発生することもない。
予備吐出パルス波形W5は、1つの予備吐出波形を含んでいる。予備吐出波形は、ドライバICで増幅されることで、アクチュエータを駆動する予備吐出パルスとなる。この予備吐出パルスの幅は、吐出パルスの幅よりも小さい。したがって、予備吐出電圧パルス信号を個別電極135に付与すると、圧力室110内で発生する圧力波の振幅が吐出に必要な閾値を超えて大きくなるものの、吐出パルス波形W1に係るインク吐出量よりも少ないインクが吐出される。これにより、非画像ドット82が形成される。
第1及び第2振動パルス波形W6,W7は、1記録周期において4つの振動波形を含む。これら振動波形は、ドライバICで増幅されることで、アクチュエータを駆動する振動パルスとなる。第1及び第2振動パルス波形W6,W7は、振動パルスの間隔が等間隔となるように構成されている。これら振動パルスの幅は、いずれもALの1/3以下であり、上述した基準値以下となっている。また、これら振動パルスの高さは、どれも同じである。したがって、第1及び第2振動パルス波形W6,W7に基づいて生成された第1及び第2振動電圧パルス信号のそれぞれを個別電極135に付与しても、吐出口108に形成されたインクメニスカスは振動するが、インクは吐出されない。また、第2振動パルス波形W7は、振動抑制波形をさらに含む。振動抑制波形は、ドライバICで増幅されることで、アクチュエータを駆動する振動抑制パルスとなる。この振動抑制パルスは、1記録周期において最後の振動パルスの後にある。第2振動パルス波形W7は、最後の振動パルスが圧力室110の容積を減少させるタイミング(時刻t2:図7参照)から個別インク流路132における固有振動周期Tの1/2Tとなるタイミングで、振動抑制パルスによる圧力室110の容積の減少が生じるように、最後の振動パルスと振動抑制パルスとの間隔が設定されている。なお、振動パルス及び振動抑制パルスのパルス幅及びパルス高さも同じである。
また、これら7つの単位パルス波形W1〜W7は、最初のパルス(吐出パルス、予備吐出パルス、振動パルス)の開始タイミングが、いずれにおいても記録周期の開始タイミングと同じになるように、構成されている。特に、第2振動パルス波形W7においては、振動パルスが、記録周期の前方に寄せられるため、最後の振動パルスから記録周期の終了までの部分に時間の余裕が生まれる。このため、第2振動パルス波形W7及び予備吐出パルス波形W5(又は吐出パルス波形W1〜W3)に係る電圧パルス信号が供給される連続周期において、最後の振動パルスと予備吐出パルス(吐出パルス)との間の時間が比較的長くなる。このため、振動パルスによる振動が予備吐出パルスに影響しにくくなって、予備吐出パルスによるインク吐出特性がより一層安定する。
変形例として、図11に示すように、記録周期の開始から最初の振動パルスまでの時間が、最後の振動パルスから記録周期の終了までの時間よりも短くなるような、第1振動パルス波形W6´及び第2振動パルス波形W7´であってもよい。これにおいても、上述のように、振動パルスが記録周期の前方に寄せられるため、後方部分(最後の振動パルスから記録周期の終了までの部分)に時間の余裕が生まれる。この結果、振動パルスによる振動が予備吐出パルス(吐出パルス)に影響しにくくなって、予備吐出パルスによるインク吐出特性がより安定する。
ここで、第2振動電圧パルス信号が個別電極135に供給されたときの、個別インク流路内に生じる圧力波の状況について、図7を参照しつつ以下に説明する。
個別電極135に第2振動電圧パルス信号の振動パルスが供給されると、図7に示すように、個別電極135には、時刻t1において、グランド電位が付与される。この振動パルスの立ち下がり部分では、正の所定電位Uが付与されることで圧力室110側に凸となる駆動活性部(個別電極135と圧力室110とに挟まれた部分)が一旦、元に戻る。これにより、圧力室110の減少していた容積が増加し、吐出口108から圧力室110に向かう力、すなわち、引き込み力が生じる。しかしながら、この引き込み力が生じる時間(振動パルスにおいてグランド電位に保持される時間:時刻t2−時刻t1)は、非常に短いため、当該引き込み力は小さい。このため、個別インク流路132内には、吐出口108近傍に振動を与えるほどの圧力波が生じない。一方、時刻t2には、所定電位Uが個別電極135に付与される。この振動パルスの立ち上がり部分では、駆動活性部が圧力室110側に凸となるため、圧力室110の容積が減少し、圧力室110から吐出口108に向かう力、すなわち、押し出し力が生じる。この押し出し力は、引き込み力に比べて大きな力となり、吐出口108近傍のインクに振動を与える。つまり、この押し出し力が生じるタイミングで、図7に示すような、圧力波S1が個別インク流路132内に生じる。
振動抑制パルスと振動パルスの波形は、同形状且つ同サイズであるため、個別電極135に振動抑制パルスが供給されると、振動パルスのときと同様に、振動抑制パルスの立ち上がりのタイミングで、個別インク流路132内に押し出し力による圧力波S2が生じる。つまり、時刻t3(振動抑制パルスの立ち下がり)のときは引き込み力が生じ、時刻t4(振動抑制パルスの立ち上がり)のときに押し出し力が生じる。この時刻t4は、最後の振動パルスの時刻t2(圧力室110の容積が減少するタイミング)から個別インク流路132における固有振動周期Tの1/2Tのタイミングに等しい。つまり、圧力波S2は、図7に示すように、圧力波S1と逆の圧力波となって、個別インク流路132内に生じる。このため、個別インク流路132の圧力波は、圧力波S1が生じてから1/2Tの時間が経過した時点から、圧力波S2によって打ち消された合成波S3となる。このため、当該流路内のインクの振動が効果的に打ち消される。
続いて、画像記録形成動作を実行した際に、判定部175、非画像吐出データ生成部172、及び、振動データ生成部173が実行する処理のより具体的なフローについて、図8及び図9を参照しつつ説明する。まず、判定部175のカウント部176は、判定のためのカウントをリセットする(F1)。次に、判定部175は、画像ドット81を形成すべき画像データが画像データ記憶部162にまだ残っているか否かを判定する(F2)。残っていないと判定した場合(F2、No)には、一連の処理が終了する。
画像データがまだあると判定部175が判定した場合(F2、Yes)には、吐出口108ごとに画像データを搬送方向に順に照会し、画像データが画像ドット81の形成を示しているか否かを判定する(F3)。そうでない場合(F3、No)には、カウント部176は、画像データを順に照会しながら、画像ドット81が不形成となる画素数(記録周期)をカウントする(F4)。そして、判定部175は、カウント数が所定数に達したか否かを判定する(F5:図8参照)。ここで、カウントが所定数となることは、画像ドット不形成期間の記録周期が所定数に達することに相当する。所定数に達していないと判定した場合(F5、No)、F2に戻る。
カウント数が所定数に到達したと判定部175が判定した場合(F5、Yes)、非画像ドット形成期間設定部181が、画像ドット不形成期間内に非画像ドット形成期間を設定する(F6)。非画像ドット形成期間は、第1吐出時点の後の記録周期からの所定数の記録周期に設定する。
次に、非画像ドット形成時点決定部183が、乱数生成部182が生成した乱数に従って、非画像ドット形成のタイミングを決定する(F7)。次に、非画像吐出データ生成部172が、そのタイミングで非画像ドット82を形成するように指示する予備吐出データを生成(F8)する。
次に、振動データ生成部173は、吐出データ及び予備吐出データに基づいて、非画像ドット82を形成する記録周期よりも前に空白の1以上の記録周期があるか否かを判定する(F9)。1以上の記録周期がないと判定した場合(F9、No)は、振動データを生成せずF11に進む。1以上の記録周期があると判定した場合(F9、Yes)は、振動データ生成部173が、上述したように振動データを生成する(F10)。具体的には、非画像ドット82を形成する記録周期よりも前の2つの記録周期において、第1及び第2振動パルス波形W6,W7に係る振動を順に生じさせるように指示する振動データを生成する。
そして、判定部175は、次に画像データの照会を開始する位置を、非画像ドット形成位置の直後の位置に更新する(F11)。これにより、例えば、振動及び予備吐出が実行された直後の時点から画像ドットが形成されない場合には、その時点から適切にカウントが再開される。そして、カウント部176は、カウントをリセットする(F1)と共に、F2からの処理を実行する。
変形例として、振動データ生成部173は、ステップF10において、非画像ドット82を形成する記録周期よりも前の1つの記録周期で、第2振動パルス波形W7に係る振動を生じさせるように指示する振動データを生成してもよい。別の変形例として、振動データ生成部173は、吐出データに基づいて、振動データを生成してもよい。つまり、画像ドット81を形成する記録周期とこれよりも前において連続する空白の記録周期が1以上の場合は、吐出口108近傍のインクを吐出させずに振動させる振動データを生成する。これにおいても、ステップF10と同様の効果(インク吐出量が安定する)を得ることができる。
以上の処理の流れを、図8の画像データ(吐出データ)に関して適用した場合について説明する。図8の例では、最も左のデータと左から18番目(以下、”左から”を省略し、単に”18番目”などと記載する)のデータが「3」であり、これは画像ドットの形成を示すデータである。それ以外のデータ「0」は、画像ドット81の不形成(空白領域)を示すデータである。判定部175は、最も左のデータから照会を開始する。最も左のデータは画像ドット形成を示すため、カウント部176は、カウントをリセットする(F3、Yes→F1)。2個目のデータからは画像ドット不形成を示す「0」であり、ここからは、カウント部176がカウントを加算し続ける(F2、Yes→F3、No→F4→F5、No→F2)。そして、15番目の「0」をカウントした時点で、カウントが所定数に到達する(F5、Yes)。ここで、2番目のデータから17番目のデータが画像ドット不形成期間を構成する記録周期に対応する。
そして、非画像ドット形成期間設定部181が、2番目のデータから15番目のデータに対応する期間を非画像ドット形成期間に設定する(F6)。さらに、非画像ドット形成時点決定部183が非画像ドット82の形成タイミングを、乱数により、2〜15番目のデータのうち10番目のデータに対応するタイミングに決定する(F7)。なお、非画像ドット形成時点決定部183が決定する非画像ドット82の形成タイミングは、非画像ドット形成期間内であれば、どこでもよい。そして、非画像吐出データ生成部172が予備吐出データを生成する(F8)。これにより、画像データの10番目のデータが、画像ドット81の不形成を示す「0」から、非画像ドット82の形成を示す「2」に変更される。このデータに相当するタイミングで、非画像ドット82を形成するために予備吐出が実行される。
振動データ生成部173は、8,9番目のデータを照会する。8,9番目のデータの少なくともいずれかが「3」である場合は振動データを生成しない(F9、No→F11)。8,9番目のデータが「0」の場合は、当該データに対応するタイミングで振動が生じるように、振動データを生成する(F9、Yes→F10)。これにより、画像データの8番目のデータが、画像ドットの不形成を示す「0」から、第1振動パルス波形に係る振動を示す「1a」に変更され、画像データの9番目のデータが、画像ドットの不形成を示す「0」から、第2振動パルス波形に係る振動を示す「1b」に変更される。このデータに相当するタイミングで、吐出口108近傍のインクの振動が実行される。こうして、吐出データ、予備吐出データ及び振動データに基づく駆動信号が生成され、ヘッド1に供給される。
次に、カウント部176は、カウントをリセットすると共に、「2」に変更した10番目のデータ直後の11番目のデータからカウントを再開する(F11,F1〜F5)。その後、データの照会は、カウントが所定数に至る前に18,19番目のデータに到達し、それぞれにおいて、カウントがリセットされる(F3、Yes→F1)。そして、20番目のデータから再び、カウント部176がカウントを開始する。
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタ101によると、非画像ドット82を形成する前に、第2振動パルス波形に係る振動が行われる。このため、吐出口108の乾燥が抑制されて、非画像ドット82を形成する際の予備吐出において、吐出不良が生じるのを抑制することが可能となる。そして、予備吐出パルス波形に係る予備吐出パルスが供給される直前に、振動抑制パルスが供給される。このため、予備吐出パルスの供給前に振動パルスが供給されていても、振動抑制パルスによって、振動パルスによる個別インク流路132内のインクの振動が素早く減衰する。この結果、振動パルスによる個別インク流路132内のインクの振動が予備吐出パルスによるインク吐出に影響しにくくなって、予備吐出パルスによるインク吐出特性が安定する。また、振動抑制パルスの立ち上がりタイミングが、最後の振動パルスの立ち上がりタイミングから個別インク流路132における固有振動周期Tの1/2Tのタイミングに等しい。このため、振動パルスで生じた振動(圧力波)が、振動抑制パルスによる振動(圧力波)で打ち消される。
変形例として、振動抑制パルスの立ち上がりタイミング(圧力室110の容積が減少するタイミング)が、最後の振動パルスの立ち上がりタイミングから個別インク流路132における固有振動周期Tの1/2Tを除く、1/3T以上2/3T以下の範囲にあるように、振動抑制パルスを設定してもよい。振動抑制パルスの立ち上がりタイミングが、固有振動周期Tの1/3Tと等しい場合は、図10に示すように、個別インク流路132内に圧力波S4(図中一点鎖線で示す)が生じる。これにより、個別インク流路132内には合成波S5(圧力波S1+圧力波S4:図中二点鎖線で示す)が生じる。また、振動抑制パルスの立ち上がりタイミングが、固有振動周期Tの2/3Tと等しい場合は、個別インク流路132内に圧力波S6(図中一点鎖線で示す)が生じる。これにより、個別インク流路132内には合成波S7(圧力波S1+圧力波S6:図中二点鎖線で示す)が生じる。これら合成波S5,S7は、合成前の圧力波S1,S4,S6よりも小さい圧力波となり、減衰している。このため、最後の振動パルスによって生じた振動が、振動抑制パルスによって効果的に小さくすることが可能となる。この結果、振動パルスによる個別インク流路132内のインクの振動が予備吐出パルスによるインク吐出に影響しにくくなって、予備吐出パルスによるインク吐出特性が安定する。なお、非画像ドット82は、吐出口108内の乾燥により増粘したインクを排出するためのドットであって画像に寄与しないドットであるため、インク量が少ないと吐出口108内のインクの乾燥抑制効果が低く、インク量が多いと視認されやすくなってしまう。振動パルスによって吐出口108のインクメニスカスを振動させることによって乾燥を抑制しつつ、振動抑制パルスによって振動パルスによる残留振動を抑制することにより、インク吐出特性が安定し、所望のインク量を吐出できる。
第2振動パルス波形は、複数の振動波形と、最後の振動波形の後にある振動抑制波形とを有している。これにより、1記録周期において、複数の振動パルスと、最後の振動パルスの後に振動抑制パルスを供給可能となる。このため、第2振動パルス波形に係る複数の振動パルスが供給されても、当該振動パルスによる振動を振動抑制パルスで効果的に小さくすることが可能となる。
プリンタ101によると、画像ドット81を形成しない記録周期が所定数以上の場合は、その間に非画像ドット82を形成するように予備吐出が行われる。つまり、画像データに基づいて吐出口108からインクを吐出してから、次のインクを吐出するまでの時間が長くても、予備吐出で乾燥によって増粘したインクを排出することができる。この結果、吐出口108の増粘を効果的に抑制することが可能となる。予備吐出が行われる直前に、第2振動パルス波形に係る複数の振動パルスが供給されても、最後の振動パルスの後には振動抑制パルスが供給される。このため、非画像ドット82を形成するために用紙Pに吐出されるインク量が安定する。このため、非画像ドット82を形成するインク量の増大を防ぐことが可能となって、非画像ドット82が目立たない。
また、非画像ドット82の形成位置は、上述のように乱数に従うため、複数の吐出口108に関して形成された非画像ドット82が、図5に示すように、搬送方向に関して分散する。例えば仮に、画像ドット81に対して一定の離隔距離で非画像ドット82が形成されたとすると、図5において、3つの画像ドット81が主走査方向に並んだ画像ドット群81gに対して形成される非画像ドットが、主走査方向に沿って一直線に並んでしまう。この場合、非画像ドットが目立ち、視認されるおそれが高くなる。一方、本実施形態によると、画像ドット群81gに対して形成される非画像ドット82が、非画像ドット群82gのように分散して配置される。このため、非画像ドット82が目立たない。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第2振動パルス波形が、1つの振動パルスと振動抑制パルスとを構成してもよい。振動抑制パルスは、振動パルスで生じたインクの振動を小さくすることが可能であれば、1記録周期において、振動抑制パルスの立ち上がりタイミングが、最後の振動パルスの立ち上がりタイミングから固有振動周期Tの1/3T以上2/3以下の範囲外にあってもよい。また、乱数生成部182を有していなくてもよい。この場合、非画像ドット形成時点決定部183が、画像ドット81に対して一定の離隔距離で非画像ドットが形成される位置に決定してもよい。
また、上述の実施形態においては、インク吐出に際して、引き打ち法が採用されているが、押し打ち法を採用してもよい。つまり、ドライバICから一又は複数の電圧パルス(吐出パルス)を含む吐出電圧パルス信号(駆動信号)を出力して、予め個別電極135にグランド電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135にプラスの所定電位を付与し、その後所定のタイミングにて再びグランド電位を個別電極135に付与する。この場合、個別電極135が所定電位になるタイミングで、圧力室110の容積が減少し圧力室110内に正の圧力波が発生する。これにより、圧力室110内のインクの圧力が上昇し、吐出口108からインク滴が吐出される。その後、個別電極135がグランド電位になるタイミングで、圧力室110の容積が元に戻り、圧力室110内に負の圧力波が発生する。これにより、副マニホールド流路105aから圧力室110にインクが吸い込まれ、インク吐出の待機状態となる。なお、この場合は、インクに振動を与える際も押し打ち法が採用される。このような押し打ち法を採用する場合においても、振動抑制パルスは、振動パルスで生じたインクの振動を小さくするように設定されておればよい。こうすることで、上述と同様な効果を得ることができる。より好ましくは、振動抑制パルスは、最後の振動パルスから個別インク流路における固有振動周期Tの1/3T以上2/3T以下の範囲において、生じるように設定されておればよい。こうすることで、上述と同様な効果を得ることができる。
上述の実施形態においては、予備吐出パルス波形W5の前に、第1、2振動パルス波形W6,W7を設定していたが、吐出パルス波形W1〜W3のいずれかの前に第1、2振動パルス波形W6,W7を設定してもよい。これにより、振動パルスによって吐出口108内のインクの乾燥を抑制することができる。また、最後の振動パルスによって生じた振動が、振動抑制パルスによって効果的に小さくすることが可能となる。この結果、振動パルスによる個別インク流路132内のインクの振動が予備吐出パルスによるインク吐出に影響しにくくなって、吐出パルスによるインク吐出特性が安定する。なお、画像ドット81は、画像に寄与するドットであるため、インク量が多くても少なくても画質の低下につながってしまう。振動パルスによって吐出口108のインクメニスカスを振動させることによって乾燥を抑制しつつ、振動抑制パルスによって振動パルスによる残留振動を抑制することにより、インク吐出特性が安定し、所望のインク量を吐出できる。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う記録装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。