JP4930412B2 - 伝動ベルトおよび伝動ベルトの組み付け方法 - Google Patents

伝動ベルトおよび伝動ベルトの組み付け方法 Download PDF

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Description

この発明は、板片状の多数のエレメントを互いに対面させて環状に配置し、それらのエレメントをリングに組み付けることにより無端環状に結束して構成した伝動ベルトおよびその組み付け方法に関するものである。
一般に、複数の回転部材同士の間で動力の伝達を行う場合に用いる変速機として、変速比を段階的に変化させることができる有段変速機と、変速比を連続してすなわち無段階に変化させることができる無段変速機とがあり、後者の無段変速機としてはベルト式無段変速機およびトロイダル式無段変速機などが知られている。このうち、ベルト式無段変速機は、駆動側プーリおよび従動側プーリの2組のプーリと、それらのプーリに巻き掛けられる伝動ベルトとを使用して変速比を無段階に変化させる変速機である。そのようなベルト式無段変速機に用いられる伝動ベルトとして、例えば、エレメントあるいはブロックなどと称される多数の板片をその板厚方向に互いに重ね合わせて環状に配列するとともに、それらの板片をリングあるいはバンドあるいはキャリアなどと称される環状の帯状体で環状に結束することにより、無端環状に形成されたベルトが知られている。
このような伝動ベルトが、駆動側および従動側の2組のプーリに巻き掛けられた状態で駆動側プーリが駆動されると、エレメントには、エレメントと駆動側プーリとの接触部分の摩擦力、および、駆動側プーリのトルクに応じて駆動側プーリからエレメントに対して加えられるエレメントの積層方向すなわちエレメントの厚さ方向の圧縮力が作用する。そして、駆動側プーリに接触しているエレメントに伝達された圧縮力は、プーリに巻き掛けられていないエレメントを経由して、従動側プーリに接触しているエレメントに伝達される。この従動側プーリに接触しているエレメントに圧縮力が伝達されると、そのエレメントと従動側プーリとの接触部分の摩擦力、および伝達された圧縮力に応じて従動側プーリを回転させようとするトルクが発生する。このようにして、駆動側プーリと従動側プーリとの間で、伝動ベルトを介して動力伝達が行われる。
上記のような伝動ベルトの一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている高負荷伝動ベルトは、センターベルトと耐側圧を補強するブロックとからなる伝動ベルトであって、具体的には、上端に係止部(抜け止め部)を有している2本のベルト側部(柱部)およびそれらを下端で連結する連結部材(本体(基体)部)により形成されたブロック(エレメント)と、そのエレメントの両抜け止め部の間に開口している嵌合溝(エレメントの凹部)に両抜け止め部によってエレメントから外れないように嵌め込まれている2列の無端キャリア(リング)とによって構成されている。そして、エレメントの2本の柱部の前後面には、それぞれ嵌合用凸部(ディンプル)と嵌合用凹部(ホール)とが設けられていて、前後のエレメント同士の間でそれらディンプルとホールとが嵌り合うことにより、エレメントがベルト走行中でも整列するようになっている。
特開2000−205342号公報
上記の特許文献1に記載されている伝動ベルトは、エレメントの左右両端の柱部にリングとエレメントとを係止する抜け止め部が形成されていて、両柱部上方の平面部分に、隣接するエレメント同士で互いに嵌合するディンプルおよびホールが形成されている。すなわちこれらディンプルおよびホールは、エレメントの両側に左右対称に2箇所設けられている。そして、両柱部の間に形成された凹部に2列のリングを嵌め込み、抜け止め部で係止されるように組み付けることにより、伝動ベルトが構成されている。
このような伝動ベルトにおいては、リングにエレメントを組み付ける場合、あるいはリングに組み付けられたエレメントをリングから外す場合に、2列に並列されているリングの一部を互いに重ね合わせた状態にする必要がある。すなわち2列のリングに対してエレメントを組み付けたり、外したりする場合には、それら2列のリングにねじりを加えて互いに重ね合わせることにより、2列のリングの幅をエレメントの両抜け止め部の間の開口幅よりも狭い状態にする必要がある。
2列のリングにねじりを加えて互いに重ね合わせた状態にするためには、隣接しているエレメント同士を、それぞれの対向面内で相対回転、すなわちローリングさせる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載されている伝動ベルトは、隣接するエレメント同士で互いに嵌合するディンプルとホールとがエレメントの左右両側に2箇所設けられているため、エレメント同士のローリング方向の動作が規制されてしまう。その結果、2列のリングを互いに重なり合わせた状態にすることが困難になり、伝動ベルトを組み付けることができなくなる可能性があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、エレメントと複数列のリングとを容易にかつ確実に組み付けることができる伝動ベルトおよびその組み付け方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、帯状のリングを幅方向で複数列に並列させて収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内壁面の開口部側に前記複数列のリングを係合させてその離脱を防止する左右の抜け止め部が形成された板片状の多数のエレメントを環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部と前記凹部内の前記両内壁面を繋ぐ底面との間に前記複数列のリングを嵌め込んで組み付けた伝動ベルトにおいて、少なくとも1列の前記リングは、幅方向での左右両側端部における径が大小に異なる傾斜リングにより構成され、前記複数列のリングは、少なくとも一列の前記傾斜リングの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分に、他の前記リングの側端部が重なり合って嵌り込んだ嵌合状態と、いずれの前記リングも重なり合わずに幅方向に並列した並列状態とを実現可能に構成されるとともに、前記嵌合状態での前記複数列のリングの全幅が前記開口部の開口幅よりも狭く、かつ前記並列状態での前記全幅が前記開口幅よりも広く構成され、前記底面を構成するとともに前記複数列のリングの内周面と接触してそれら複数列のリングが配置されるサドル面の少なくとも一部に、前記傾斜リングの内周面と接触してその傾斜リングが配置される傾斜面が形成されていることを特徴とする伝動ベルトである。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、互いに隣接する少なくとも2列の前記リングが前記傾斜リングにより構成されるとともに、前記傾斜リングの小径側の側端部の外径は大径側の側端部の内径よりも小さいことを特徴とする伝動ベルトである。
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記傾斜リングに隣接する少なくとも1列の前記リングの幅方向で前記傾斜リングと対向する側の側端部の外径は、前記傾斜リングの大径側の側端部の内径よりも小さいことを特徴とする伝動ベルトである。
そして、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記傾斜リングに隣接する少なくとも1列の前記リングの幅方向で前記傾斜リングと対向する側の側端部の内径は、前記傾斜リングの小径側の側端部の外径よりも大きいことを特徴とする伝動ベルトである。
一方、請求項5の発明は、帯状のリングを幅方向で複数列に並列させて収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内壁面の開口端側に前記複数列のリングを係合させてその離脱を防止する左右の抜け止め部が形成された板片状の多数のエレメントを環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部と前記凹部内の前記両内壁面を繋ぐ底面との間に前記複数列のリングを嵌め込んで組み付ける伝動ベルトの組み付け方法において、前記複数列のリングは、少なくとも1列の前記リングが幅方向での左右両側端部における径が大小に異なる傾斜リングにより構成され、前記エレメントは、前記底面を構成するとともに前記複数列のリングの内周面と接触してそれら複数列のリングが配置されるサドル面の少なくとも一部に前記傾斜リングの内周面と接触してその傾斜リングが配置される傾斜面が形成されていて、前記複数列のリングを、少なくとも1列の前記傾斜リングの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分に他の前記リングの側端部を重ね合わせて嵌め込んだ嵌合状態にし、その後、前記嵌合状態の前記複数列のリングを前記凹部内に挿入して前記サドル面上に配置し、その後、前記複数列のリングを、いずれの前記リングも重なり合わずに幅方向に並列させた並列状態にして、前記両抜け止め部と前記底面との間に嵌め込んで組み付けることを特徴とする伝動ベルトの組み付け方法である。
そして、請求項6の発明は、請求項5の発明において、互いに隣接する少なくとも2列の前記リングが前記傾斜リングにより構成されるとともに、該傾斜リングの小径側の側端部の外径は大径側の側端部の内径よりも小さいことを特徴とする伝動ベルトの組み付け方法である。
請求項1の発明によれば、エレメントの凹部に嵌め込んで係合させる複数列のリングのうちの少なくとも1列が、リングの側端部の径が幅方向での左右で異なっている傾斜リングにより構成される。言い換えると、複数列のリングのうちの少なくとも1列が、リングの外周面および内周面がそのリング径の中心軸線方向に対して傾斜している傾斜リングにより構成される。そして、その傾斜リングを含む複数のリングが配置されるエレメントのサドル面には、傾斜リングの内周面の傾斜に対応した傾斜面が形成される。そのため、複数列のリングをエレメントの凹部に挿入する際に、傾斜リングの左右の側端部のうちの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分に、それに隣接して対向する他のリングの側端部を嵌合させて、隣接するリングの互いに対向する側端部の一部を互いに重ね合わせた状態にすることができる。その結果、複数列のリングの幅を、複数列のリングが互いに重なり合うことなく幅方向に並列した状態での全幅よりも狭くすることができ、エレメントの凹部に複数列のリングを容易に嵌め込むことができる。そして、それら複数列のリングをエレメントの凹部に挿入した後に、それら複数列のリングを互いに重なり合うことなく並列させた状態にすることにより、それら複数列のリングを凹部内の抜け止め部と底面との間に容易に嵌め込むことができる。したがって、エレメントと複数列のリングとを容易に組み付けることができ、伝動ベルトの組み付け性を向上することができる。
また、請求項1の発明によれば、複数列のリングをエレメントの凹部に挿入する際に、傾斜リングの左右の側端部のうちの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分に、それに隣接して対向する他のリングの側端部を嵌合させて、隣接するリングの互いに対向する側端部の一部を互いに重ね合わせた嵌合状態にすることができる。したがって、複数列のリングを嵌合状態にすることにより、その嵌合状態での複数列のリングの幅が、凹部の左右の抜け止め部の互いに対向する先端部の間の距離である開口幅よりも狭くなり、それら嵌合状態の複数列のリングを容易に左右両抜け止め部の間の開口部を通過させて凹部に挿入することができる。そして、それら嵌合状態の複数列のリングをエレメントの凹部に挿入した後に、それら複数列のリングを、各リングが互いに重なり合うことなく幅方向に並列させた並列状態にすることにより、その並列状態での複数列のリングの幅がエレメントの凹部の開口幅よりも広くなり、それら複数列のリングを容易に凹部内の抜け止め部と底面との間に係合させた状態にすることができる。そのため、エレメントと複数列のリングとを容易に組み付けることができ、伝動ベルトの組み付け性を向上することができる。
また、請求項2の発明によれば、エレメントの凹部に嵌め込んで係合させる複数列のリングのうちの互いに隣接する少なくとも2列が、小径側の側端部の外径が大径側の側端部の内径よりも小さい傾斜リングにより構成される。そのため、それら互いに隣接する少なくとも2列の傾斜リングの大径側と小径側とを互いに当接させることにより、大径側の側端部の内周部分と小径側の側端部の外周部分とを嵌合させて、容易に嵌合状態を実現することができる。
また、請求項3の発明によれば、エレメントの凹部に嵌め込んで係合させる複数列のリングのうちの傾斜リングに隣接する少なくとも1列が、その幅方向における傾斜リングと対向する側の側端部の外径が傾斜リングの大径側の側端部の内径よりも小さいリングにより構成される。そのため、傾斜リングの大径側とその傾斜リングと隣接しているリングの側端部とを互いに当接させることにより、傾斜リングの大径側の側端部の内周部分とその傾斜リングに隣接するリングの側端部の外周部分とを嵌合させて、容易に嵌合状態を実現することができる。
そして、請求項4の発明によれば、エレメントの凹部に嵌め込んで係合させる複数列のリングのうちの傾斜リングに隣接する少なくとも1列が、その幅方向における傾斜リングと対向する側の側端部の内径が傾斜リングの小径側の側端部の外径よりも大きいリングにより構成される。そのため、傾斜リングの小径側とその傾斜リングと隣接しているリングの側端部とを互いに当接させることにより、傾斜リングの小径側の側端部の外周部分とその傾斜リングに隣接するリングの側端部の内周部分とを嵌合させて、容易に嵌合状態を実現することができる。
一方、請求項5の発明によれば、複数列のリングをエレメントの凹部に挿入する際に、それら複数のリングが、傾斜リングの左右の側端部のうちの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分にそれに隣接して対向する他のリングの側端部が嵌合させられて、隣接するリングの互いに対向する側端部の一部を互いに重ね合わせた嵌合状態にされる。複数列のリングを嵌合状態にすることにより、その嵌合状態での複数列のリングの幅が、凹部の左右の抜け止め部の互いに対向する先端部の間の距離である開口幅よりも狭くなり、それら嵌合状態の複数列のリングを容易に左右両抜け止め部の間の開口部を通過させて凹部に挿入することができる。そして、それら嵌合状態の複数列のリングをエレメントの凹部に挿入した後に、それら複数列のリングを、各リングが互いに重なり合うことなく幅方向に並列させた並列状態にすることにより、その並列状態での複数列のリングの幅がエレメントの凹部の開口幅よりも広くなり、それら複数列のリングを容易に凹部内の抜け止め部と底面との間に係合させた状態にすることができる。その結果、エレメントと複数列のリングとを容易に組み付けることができ、伝動ベルトの組み付け性を向上することができる。
そして、請求項6の発明によれば、エレメントの凹部に嵌め込んで係合させる複数列のリングのうちの互いに隣接する少なくとも2列が、小径側の側端部の外径が大径側の側端部の内径よりも小さい傾斜リングにより構成される。そのため、それら互いに隣接する少なくとも2列の傾斜リングの大径側と小径側とを互いに当接させることにより、大径側の側端部の内周部分と小径側の側端部の外周部分とを嵌合させて、容易に嵌合状態を実現することができ、その結果、エレメントと複数列のリングとを容易に組み付けることができる。
つぎに、この発明を図面を参照して具体的に説明する。初めに、この発明の実施例として、この発明に係る伝動ベルトの構成例を説明し、ついで、この発明に係る伝動ベルトの組み付け方法による組み付け例を、以下に順次説明する。
(第1実施例)
先ず、この発明の第1実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図1,図2に基づいて説明する。図1,図2において、伝動ベルトVは、ベルト式無段変速機の駆動側(入力軸)プーリと従動側(出力軸)プーリとに巻き掛けられて、それらのプーリの間で動力を伝達するベルトの例を示している。そして、この発明における多数のエレメントEは、例えば金属製の板片状の部材からなり、その幅方向(図1のx軸方向)における左右の側面1,2が、テーパ状の傾斜した面として形成された本体(基体)部3を有し、そのテーパ状に傾斜した両側面1,2が、ベルト式無段変速機の駆動側プーリあるいは従動側プーリであるプーリ4のベルト巻き掛け溝(V形溝)4aに摩擦接触してトルクを伝達するようになっている。
本体部3の幅方向(図1のx軸方向)における左右の両端部分に、本体部3の一部であって、エレメントEの上下方向(図1,図2のy軸方向)での上方に延びた左右の柱部5,6がそれぞれ形成されている。したがって、本体部3の図1,図2での上側のエッジ部分である上端面3aと、両柱部5,6の本体部3の幅方向における中央を向いた左右の内壁面5a,6aとによって、エレメントEの上側(図1のy軸方向での上側)すなわち伝動ベルトVの外周側に開口した凹部7が形成されている。言い換えると、左右の内壁面5a,6aと、それら左右両内壁面5a,6aを繋ぐとともに本体部3の図1,図2での上側のエッジ部分でもある底面3aとにより、凹部7が形成されている。
凹部7は、互いに密着して環状に配列されたエレメントEを環状に結束するための無端環状のリングRを、挿入して幅方向に2列に並列させて収容するための部分であり、したがって上端面3aが、リングRの内周面を接触させて載せるサドル面3aとなっている。言い換えると、上端面3aが、上記の凹部7の底面3aを構成するとともに、リングRの内周面と接触してそのリングRが配置されるサドル面3aとなっている。
なお、この発明におけるリングRは、例えば、金属製の環状の帯状体を径方向に複数層に重ねたいわゆる積層リングとなっていて、さらに、2列(もしくは2本もしくは2条)のリングRのうちの少なくとも1列が、リングRの外周面および内周面がそのリングRの直径の中心軸線方向に対して傾斜している傾斜リングとなっている。そして、それに対応して、エレメントEのサドル面3aに、傾斜リングの傾斜した内周面と接触する傾斜面が形成されている。それら傾斜リングにより構成されたリングR、および傾斜面が形成されたエレメントEのサドル面3aの詳細な構成に関しては後述する。
左右の柱部5,6の上端部分には、左右の先端面8a,9aがそれぞれ本体部3の幅方向における中央に向かって延びた左右の抜け止め部8,9が、それぞれ両柱部5,6と一体に形成されている。言い換えると、凹部7の開口端(凹部7における伝動ベルトVの外周側の端部)側の両内壁面5a,6aに、凹部7の幅方向(図1のx軸方向)における中心側に向けた抜け止め部8,9がそれぞれ形成されている。そのため、凹部7の開口幅Wが、凹部7の開口端側で対向する両先端面8a,9aの間の距離Wによって決定されている。そして、凹部7の底面3a(すなわちサドル面(上端面)3a)側では、両先端面8a,9a間の距離(開口幅)Wよりも広い内幅Wとなっている。
この伝動ベルトVを構成する多数のエレメントEは、環状に配列された状態で積層リングRによって結束され、その状態で駆動側および従動側のそれぞれのプーリ4に巻き掛けられる。したがってプーリ4に巻き掛けられた状態では、各エレメントEが、プーリ4の中心に対して扇状に拡がり、かつ互いに密着する必要があるため、各エレメントEの図1,図2での下側の部分(環状に配列した状態での中心側の部分)が薄肉に形成されている。
すなわち、本体部3の一方の面(例えば図2における左側の面)での、エレメントEの上下方向におけるサドル面3aより所定寸法下がった(オフセットされた)部分から下側の部分が削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。したがって、各エレメントEが扇形に拡がって接触する状態、言い換えると、各エレメントEがプーリ4に巻き掛かり円弧状に湾曲して配列されて伝動ベルトVが湾曲するベルト湾曲状態で、その板厚の変化する境界部分で接触する。この境界部分のエッジが、いわゆるロッキングエッジ10となっている。
エレメントEの本体部3の幅方向における中央部分には、各エレメントE同士の相対的な位置を決めるためのディンプル11とホール12とが形成されている。具体的には、本体部3の一方の面側(図2の例では、ロッキングエッジ10のある面側)に凸となる円錐台形のディンプル11が形成されている。そして、このディンプル11とは反対側の面に、隣接するエレメントEにおけるディンプル11を緩く嵌合(遊嵌)させる有底円筒状のホール12が形成されている。
したがって、これらのディンプル11とホール12とが嵌合することによって、エレメントE同士の図1での左右方向および上下方向の相対位置を決めることができ、例えばベルト式無段変速機が運転される場合に、伝動ベルトVのがたつきを防止して伝動ベルトVを安定して走行させることができる。
前述したように、この発明における伝動ベルトVは、エレメントEと複数列のリングRとを容易にかつ確実に組み付けて、その組み付け性を向上することを目的としていて、そのために、この発明におけるリングRは、2列のリングRのうちの少なくとも1列(この第1実施例では2列とも)が、幅方向(図1のx軸方向)での左右両側端部13a,13bにおけるそれぞれの径が大小に異なるように形成された傾斜リング13となっている。また、エレメントEの凹部7において、それら2列のリングR(すなわち傾斜リング13)を配置するサドル面3aが、それら2列の傾斜リング13の内周面と接触するように幅方向に対して傾斜した傾斜面14として形成されている。
すなわち、リングRは、図1,図3に示すように、そのリングRの外周面13oおよび内周面13iがそのリングRの直径の中心軸線CL方向に対してそれぞれ傾斜している2列の傾斜リング13により構成されている。具体的には、傾斜リング13は、リングの幅方向における一方(例えば図1,図3における左側)の側端部13aの内径Diに対して、他方(例えば図1,図3における右側)の側端部13bの内径Diが大きくなるように形成されている。ここでは、傾斜リング13の厚さがリングの全幅の間で一定である例を示しているので、言い換えると、傾斜リング13は、リングの幅方向における一方の側端部13aの外径Doに対して、他方の側端部13bの外径Do2が大きくなっている。
また、傾斜リング13は、小径側の側端部13aの外径Doが、大径側の側端部13bの内径Diよりも小さくなるように、すなわち、大径側の側端部13bの内径Diが、小径側の側端部13aの外径Doよりも大きくなるように形成されている。したがって、これら2列の傾斜リング13は、図1,図3に示すような、それらの側端部13a,13bがいずれも重なり合うことなく幅方向に並列した並列状態と、図4に示すように、それらの側端部13a,13bが互いに重なり合って嵌り込んだ、すなわち、大径側の側端部13bの内周部分に小径側の側端部13aが重なり合って嵌り込んだもしくは小径側の側端部13aの外周部分に大径側の側端部13bが重なり合って嵌り込んだ嵌合状態とを実現可能な構成となっている。
また、上記のような嵌合状態における2列の傾斜リング13すなわちリングRの全幅Lが、前述のエレメントEの凹部7の開口幅Wよりも狭くなるように、傾斜リング13単体の幅寸法や内周面13iおよび外周面13oの傾斜角度、あるいはエレメントEの各部の形状・寸法などが設定されて形成されている。
したがって、図4に示す状態のように、2列の傾斜リング13の側端部13aの外周部分と側端部13bの内周部分とをそれぞれ互いに重ね合わせて当接させて、すなわち対向する各側端部13a,13bの内外周部分を互いに重ね合わせるように嵌合させて、リングRを嵌合状態にすることにより、リングRの全幅Lを凹部7の開口幅Wよりも狭くして、その嵌合状態のリングRを、凹部7の開口部分の先端面8aと先端面9aとの間を容易に通過させて凹部7内に挿入することができる。
そして、エレメントEの凹部7内に挿入された嵌合状態のリングRを、対向する各側端部13a,13bの内外周部分をそれぞれ互いに重なり合わないように離隔させて、図3に示すような並列状態にした場合に、その並列状態における2列の傾斜リング13すなわちリングRの全幅Lが、前述のエレメントEの凹部7の開口幅Wよりも広く、かつ内幅Wよりも狭くなるように、傾斜リング13単体の幅寸法や内周面13iおよび外周面13oの傾斜角度、あるいはエレメントEの各部の形状・寸法などが設定されて形成されている。
したがって、図3に示す状態のように、2列の傾斜リング13をそれぞれ互いに重なり合わないように離隔して、リングRを並列状態にすることにより、リングRの全幅Lを凹部7の開口幅Wよりも広くして、その並列状態のリングRを、凹部7の左右の抜け止め部8,9と底面3aとの間に係合させることができる。
またこのとき、エレメントEの凹部7内に挿入され、並列状態にされた2列のリングRが配置されるサドル面3aは、並列状態の2列の傾斜リング13の内周面13iと接触するように、具体的にはほぼ面接触するように、幅方向に平行な平面に対して傾斜した傾斜面14が形成されている。すなわち、このエレメントEのサドル面3aは、2列の傾斜リング13の内周面13iに対応して、2山(もしくは2段)の傾斜面14が形成されている。
したがって、上記のように、リングRを一旦嵌合状態にして、エレメントEの凹部7内に挿入し、その後リングRを並列状態にするとともに、傾斜面14が形成されたサドル面3aに傾斜リング13の内周面13iが接触するように配置することにより、2列のリングRをエレメントEの凹部7に嵌め込んで係合した状態を保持すること、すなわち、エレメントEと2列のリングRとを組み付けて伝動ベルトVを構成することができる。
つぎに、この第1実施例で示す構成の伝動ベルトVの組み付け例を、図面に基づいて説明する。この発明による伝動ベルトVを組み付ける場合、先ず、所定の枚数のエレメントEと、リングRとして2列(もしくは2本,2条)の傾斜リング13が用意され(図5)、前述の図4に示すように、リングRすなわち2列の傾斜リング13が、その全幅Lが凹部7の開口幅Wよりも狭くなる嵌合状態にされる。すなわち、2列の傾斜リング13の対向する各側端部13a,13bの内外周部分が互いに重なり合うように嵌合させられて、その結果、リングRとしての幅LがエレメントEの凹部7の開口幅Wよりも狭くなる(図6)。
前述したように、リングRを嵌合状態にすることより、リングRの全幅LはエレメントEの開口幅Wよりも狭くなり、図6に示すように、エレメントEの凹部7に、リングRを容易に嵌め込むことができる。すなわち、例えば従来技術によるベルトのように、エレメントとリングとを組み付ける際に、2列のリングを互いに重ね合わせるためにエレメントをローリングさせたりすることなく、2列の傾斜リング13からなるリングRを、エレメントEの凹部7の開口幅Wの部分を容易に通過させて、エレメントEの凹部7内に容易に嵌め込むことができる。
上記のように嵌合状態にされたリングRとエレメントEとを組み付ける作業が順次繰り返し行われる。それらの組み付けの際には、上記のように2列のリングRを互いに重ね合わせるためにエレメントEをローリングさせる必要がないので、リングRの全周長に対して組み付けられるエレメントEの枚数が比較的少ない組み付け初期段階から、リングRの全周長に対して組み付けられたエレメントEの枚数が比較的多数となった組み付け最終段階まで、さらに組み付けを所望する最後の1枚のエレメントEとリングRとを組み付ける際にも、上記に示した内容と同様の作業を行うことによって、それらエレメントEとリングRとを容易に組み付けることができる。
そして、組み付けを所望する最後の1枚のエレメントEとリングRとが組み付けられると、すなわち、所望する全てのエレメントEの凹部7に全幅Lが凹部7の開口幅Wよりも狭くなる嵌合状態にされたリングRが嵌め込まれると、嵌合状態にされていたリングRが、各傾斜リング13を互いに離隔して並列させた並列状態にされる(図7)。
すなわち、図1,図3,図7に示す状態のように、2列の傾斜リング13の互いに重ね合わされて嵌合させられていた対向する各側端部13a,13bが、それぞれリングの幅方向で互いに離隔される。その結果、それら各傾斜リング13の他方のリングと対向しない側の側端部分が、それぞれ、エレメントEの抜け止め部8,9と底面3aとの間に係合される、もしくはリングRが凹部7から離脱しようとする際にエレメントEの抜け止め部8,9と底面3aとの間に係止する状態にされる。
このようにして、全てのエレメントEの凹部7にリングRが挿入され、リングRを構成する2列の傾斜リング13が並列状態にされると、それら各傾斜リング13の互いに対向しない側の側端部分が、エレメントEの両抜け止め部8,9にそれぞれ係合もしくは係止する。その結果、全てのエレメントEとリングRとの組み付け状態が維持されることになり、すなわち、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
そして、上記のようにして2列の傾斜リング13を並列状態にすること、すなわち各傾斜リング13を一旦離隔することにより、その後は、それら各傾斜リング13の幅方向で互いに対向する側の側端部13a,13b同士が互いに当接したり干渉し合ったりするので、ほぼリングRが嵌合状態に再び戻ることがない。そのため、伝動ベルトVの運転時においても、エレメントEとリングRとの組み付け状態が維持されて、伝動ベルトVによるトルクの伝達を確実に行うことができる。
(第2実施例)
図8,図9は、この発明の第2実施例における伝動ベルトVを構成するエレメントEおよびリングRの構成を示す図である。上記の第1実施例では、リングRが、2列の傾斜リング13によって構成された例を示しているのに対し、この第2実施例では、2列のリングRが、1列の傾斜リング13と、通常のリングすなわち幅方向での左右両側端部の径が等しいリングとによって構成された例を示している。したがって、これら2列のリングRおよびそのリングRが配置されるエレメントEのサドル面3a関連する部分以外の、前述の第1実施例と同じ構成の部分については、図8,図9に、図1ないし図7と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図8,図9において、この発明におけるリングRは、前述の傾斜リング13と、内周面および外周面が傾斜しない通常の積層リングであって幅方向での側端部21a,22aの径と側端部21b,22bの径とが互いに等しい平行リング21,22とから構成されている。図8に示すように、平行リング21は、傾斜リング13と対向する側(図8における左側)の側端部21aの外径が、傾斜リング13の大径側すなわち平行リング21と対向する側(図8における右側)の側端部13bの内径Diよりも小さくなるように形成されている。一方、図9に示すように、平行リング22は、傾斜リング13と対向する側(図9における右側)の側端部22bの内径が、傾斜リング13の小径側すなわち平行リング22と対向する側(図9における左側)の側端部13aの外径Doよりも大きくなるように形成されている。
したがって、これら傾斜リング13と平行リング21もしくは平行リング22とによる2列のリングRは、図8,図9,図10に示すような、それら2列のリングRの互いに対向する側端部13b,21aもしくは側端部13a,22bがいずれも重なり合うことなく幅方向に並列した並列状態と、図11に示すように、それらの側端部13b,21aもしくは側端部13a,22bが互いに重なり合って嵌り込んだ、すなわち、傾斜リング13の大径側の側端部13bの内周部分に平行リング21の側端部21aが重なり合って嵌り込んだ嵌合状態もしくは傾斜リング13の小径側の側端部13aの外周部分に平行リング22の側端部22bが重なり合って嵌り込んだ嵌合状態とを実現可能な構成となっている。
また、上記のような嵌合状態における傾斜リング13と平行リング21もしくは平行リング22との合計の幅、すなわちリングRの全幅が、前述のエレメントEの凹部7の開口幅Wよりも狭くなるように、傾斜リング13単体の幅寸法や内周面13iおよび外周面13oの傾斜角度、および平行リング21,22の内外周径、あるいはエレメントEの各部の形状・寸法などが設定されて形成されている。
したがって、図11に示す状態のように、傾斜リング13と平行リング21もしくは平行リング22とを、すなわちリングRを嵌合状態にすることにより、リングRの全幅を凹部7の開口幅Wよりも狭くして、その嵌合状態のリングRを、凹部7の開口部分の先端面8aと先端面9aとの間を容易に通過させて凹部7内に挿入することができる。
そして、エレメントEの凹部7内に挿入された嵌合状態のリングRを、すなわち傾斜リング13と平行リング21もしくは平行リング22とを、図8,図9,図10,図12に示すような並列状態にした場合に、その並列状態におけるリングRの全幅が、前述のエレメントEの凹部7の開口幅Wよりも広く、かつ内幅Wよりも狭くなるように、傾斜リング13単体の幅寸法や内周面13iおよび外周面13oの傾斜角度、および平行リング21,22の内外周径、あるいはエレメントEの各部の形状・寸法などが設定されて形成されている。
したがって、図8,図9,図10,図12に示す状態のように、傾斜リング13と平行リング21もしくは平行リング22とを、すなわちリングRを並列状態にすることにより、リングRの全幅を凹部7の開口幅Wよりも広くして、その並列状態のリングRを、凹部7の左右の抜け止め部8,9と底面3aとの間に係合させることができる。
またこのとき、エレメントEの凹部7内に挿入され、並列状態にされた2列のリングRが配置されるサドル面3aは、並列状態の2列のリングRのうち、一方の傾斜リング13の内周面13iと接触するように、具体的にはほぼ面接触するように、幅方向に平行な平面に対して傾斜した傾斜面14が形成されている。すなわち、このエレメントEのサドル面3aは、1列の傾斜リング13の内周面13iに対応して、1山の傾斜面14が形成されている。
したがって、上記のように、リングRを一旦嵌合状態にして、エレメントEの凹部7内に挿入し、その後リングRを並列状態にするとともに、傾斜面14が形成されたサドル面3aに傾斜リング13の内周面13iが接触するように配置することにより、2列のリングRをエレメントEの凹部7に嵌め込んで係合した状態を保持すること、すなわち、エレメントEと2列のリングRとを組み付けて伝動ベルトVを構成することができる。
つぎに、この第2実施例で示す構成の伝動ベルトVの組み付け例を、図面に基づいて説明する。この第2実施例で示す構成の伝動ベルトVも、前述の第1実施例で示した構成の伝動ベルトVと同様に組み付けることができる。すなわち、先ず、所定の枚数のエレメントEと、リングRとして1列(もしくは1本,1条)の傾斜リング13と、平行リング21(もしくは22)が用意され(図10)、それら傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)、すなわち2列のリングRが、その全幅が凹部7の開口幅Wよりも狭くなる嵌合状態にされる(図11)。
リングRを嵌合状態にすることより、リングRの全幅はエレメントEの開口幅Wよりも狭くなり、図11に示すように、エレメントEの凹部7に、リングRを容易に嵌め込むことができる。すなわち、例えば従来技術によるベルトのように、エレメントとリングとを組み付ける際に、2列のリングを互いに重ね合わせるためにエレメントをローリングさせたりすることなく、2列の傾斜リング13からなるリングRを、エレメントEの凹部7の開口幅Wの部分を容易に通過させて、エレメントEの凹部7内に容易に嵌め込むことができる。
上記のように嵌合状態にされたリングRとエレメントEとを組み付ける作業が順次繰り返し行われる。それらの組み付けの際には、上記のように2列のリングRを互いに重ね合わせるためにエレメントEをローリングさせる必要がないので、リングRの全周長に対して組み付けられるエレメントEの枚数が比較的少ない組み付け初期段階から、リングRの全周長に対して組み付けられたエレメントEの枚数が比較的多数となった組み付け最終段階まで、さらに組み付けを所望する最後の1枚のエレメントEとリングRとを組み付ける際にも、上記に示した内容と同様の作業を行うことによって、それらエレメントEとリングRとを容易に組み付けることができる。
そして、組み付けを所望する最後の1枚のエレメントEとリングRとが組み付けられると、すなわち、所望する全てのエレメントEの凹部7に全幅が凹部7の開口幅Wよりも狭くなる嵌合状態にされたリングRが嵌め込まれると、嵌合状態にされていたリングRが、各傾斜リング13を互いに離隔して並列させた並列状態にされる(図12)。
すなわち、図8,図9,図12に示す状態のように、傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)との互いに重ね合わされて嵌合させられていた対向部分が、それぞれリングの幅方向で互いに離隔される。その結果、それら傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)との他方のリングと対向しない側の側端部分が、それぞれ、エレメントEの抜け止め部8,9と底面3aとの間に係合される、もしくはリングRが凹部7から離脱しようとする際にエレメントEの抜け止め部8,9と底面3aとの間に係止する状態にされる。
このようにして、全てのエレメントEの凹部7にリングRが挿入され、リングRを構成する傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)とが並列状態にされると、それら傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)との互いに対向しない側の側端部分が、エレメントEの両抜け止め部8,9にそれぞれ係合もしくは係止する。その結果、全てのエレメントEとリングRとの組み付け状態が維持されることになり、すなわち、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
そして、上記のようにして2列の傾斜リング13を並列状態にすること、すなわち傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)とを一旦離隔することにより、その後は、それら傾斜リング13と平行リング21(もしくは22)との幅方向で互いに対向する部分同士が互いに当接したり干渉し合ったりするので、ほぼリングRが嵌合状態に再び戻ることがない。そのため、伝動ベルトVの運転時においても、エレメントEとリングRとの組み付け状態が維持されて、伝動ベルトVによるトルクの伝達を確実に行うことができる。
以上のように、この発明の伝動ベルトVによれば、2列のリングRをエレメントEの凹部7に挿入する際に、それら2列のリングRが、傾斜リング13の左右の側端部13a,13bのうちの大径側の側端部13bの内周部分もしくは小径側の側端部13aの外周部分にそれに隣接して対向する他のリングの側端部が嵌合させられて、隣接するリングの互いに対向する側端部の一部を互いに重ね合わせた嵌合状態にされる。2列のリングRを嵌合状態にすることにより、その嵌合状態での2列のリングの幅が、凹部7の左右の抜け止め部8,9の互いに対向する先端面8a,9aの間の距離である開口幅Wよりも狭くなり、それら嵌合状態の2列のリングRを容易に左右両抜け止め部8,9の間の開口部を通過させて凹部7に挿入することができる。
そして、それら嵌合状態の2列のリングRをエレメントEの凹部7に挿入した後に、それら2列のリングRを、各リングが互いに重なり合うことなく幅方向に並列させた並列状態にすることにより、その並列状態での2列のリングRの幅がエレメントEの凹部7の開口幅Wよりも広くなり、それら2列のリングRを容易に凹部7内の抜け止め部8,9と底面3aとの間に係合させた状態にすることができる。その結果、エレメントEと2列のリングRとを容易にかつ確実に組み付けることができ、したがって、伝動ベルトVの組み付け性を向上することができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されない。すなわち、上述した具体例では、エレメントEと共にこの発明の伝動ベルトVを構成するリングR(傾斜リング13、平行リング21,22)が、図面上では3層に積層されたリングにより構成された例を示しているが、この発明におけるリングR(傾斜リング13、平行リング21,22)は、3層以外の複数層もしくは単層のリングであってもよい。
また、上述した具体例では、リングRを2列に並列させた例を示しているが、この発明のリングRは、2列以外に、少なくとも1列の傾斜リングを含む、例えば3列や4列の複数列に並列させたリングであってもよい。
また、上述した具体例では、この発明の伝動ベルトVが、例えばベルト式無段変速機に使用されている例を示しているが、この発明の伝動ベルトVは、ベルト式無段変速機に限らず、伝動ベルトとVプーリとによって構成される他の巻き掛け伝動装置の伝動ベルトにも適用することができる。
この発明に係る伝動ベルトの第1実施例における構成を示す模式図であって、その伝動ベルトの正面図である。 この発明に係る伝動ベルトの第1実施例における構成を示す模式図であって、その伝動ベルトの一部側断面図である。 この発明に係る伝動ベルトの第1実施例におけるリングの並列状態を説明するための模式図である。 この発明に係る伝動ベルトの第1実施例におけるリングの嵌合状態を説明するための模式図である。 この発明に係る伝動ベルトの第1実施例における組み付け状態を説明するための模式図であって、2列のリングとエレメントを示す図である。 この発明に係る伝動ベルトの第1実施例における組み付け状態を説明するための模式図であって、嵌合状態のリングとエレメントを示す図である。 この発明に係る伝動ベルトの第1実施例における組み付け状態を説明するための模式図であって、並列状態のリングとエレメントを示す図である。 この発明に係る伝動ベルトの第2実施例における構成を示す模式図である。 この発明に係る伝動ベルトの第2実施例における他の構成を示す模式図である。 この発明に係る伝動ベルトの第2実施例における組み付け状態を説明するための模式図であって、2列のリングとエレメントを示す図である。 この発明に係る伝動ベルトの第2実施例における組み付け状態を説明するための模式図であって、嵌合状態のリングとエレメントを示す図である。 この発明に係る伝動ベルトの第2実施例における組み付け状態を説明するための模式図であって、並列状態のリングとエレメントを示す図である。
符号の説明
E…エレメント、 R…リング、 V…伝動ベルト、 3a…サドル面,底面、 5a,6a…内壁面、 7…凹部、 8,9…抜け止め部、 13…傾斜リング、 13a,13b,21a,21b,22a,22b…側端面、 14…傾斜面、 21,22…平行リング。

Claims (6)

  1. 帯状のリングを幅方向で複数列に並列させて収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内壁面の開口部側に前記複数列のリングを係合させてその離脱を防止する左右の抜け止め部が形成された板片状の多数のエレメントを環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部と前記凹部内の前記両内壁面を繋ぐ底面との間に前記複数列のリングを嵌め込んで組み付けた伝動ベルトにおいて、
    少なくとも1列の前記リングは、幅方向での左右両側端部における径が大小に異なる傾斜リングにより構成され
    前記複数列のリングは、少なくとも一列の前記傾斜リングの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分に、他の前記リングの側端部が重なり合って嵌り込んだ嵌合状態と、いずれの前記リングも重なり合わずに幅方向に並列した並列状態とを実現可能に構成されるとともに、前記嵌合状態での前記複数列のリングの全幅が前記開口部の開口幅よりも狭く、かつ前記並列状態での前記全幅が前記開口幅よりも広く構成され、
    記底面を構成するとともに前記複数列のリングの内周面と接触してそれら複数列のリングが配置されるサドル面の少なくとも一部に、前記傾斜リングの内周面と接触してその傾斜リングが配置される傾斜面が形成されている
    ことを特徴とする伝動ベルト。
  2. 互いに隣接する少なくとも2列の前記リグが前記傾斜リングにより構成されるとともに、
    記傾斜リングの小径側の側端部の外径は大径側の側端部の内径よも小さい
    ことを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
  3. 前記傾斜リングに隣接する少なくとも1列の前記リングの幅方向で前記傾斜リングと対向する側の側端部の外径は、前記傾斜リングの大径側の側端部の内径よりも小さい
    ことを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
  4. 前記傾斜リングに隣接する少なくとも1列の前記リングの幅方向で前記傾斜リングと対向する側の側端部の内径は、前記傾斜リングの小径側の側端部の外径よりも大きい
    ことを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
  5. 帯状のリングを幅方向で複数列に並列させて収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内壁面の開口端側に前記複数列のリングを係合させてその離脱を防止する左右の抜け止め部が形成された板片状の多数のエレメントを環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部と前記凹部内の前記両内壁面を繋ぐ底面との間に前記複数列のリングを嵌め込んで組み付ける伝動ベルトの組み付け方法において、
    前記複数列のリングは、少なくとも1列の前記リングが幅方向での左右両側端部における径が大小に異なる傾斜リングにより構成され、前記エレメントは、前記底面を構成するとともに前記複数列のリングの内周面と接触してそれら複数列のリングが配置されるサドル面の少なくとも一部に前記傾斜リングの内周面と接触してその傾斜リングが配置される傾斜面が形成されていて、
    前記複数列のリングを、少なくとも1列の前記傾斜リングの大径側の側端部の内周部分もしくは小径側の側端部の外周部分に他の前記リングの側端部を重ね合わせて嵌め込んだ嵌合状態にし、
    その後、前記嵌合状態の前記複数列のリングを前記凹部内に挿入して前記サドル面上に配置し、
    その後、前記複数列のリングを、いずれの前記リングも重なり合わずに幅方向に並列させた並列状態にして、前記両抜け止め部と前記底面との間に嵌め込んで組み付ける
    とを特徴とする伝動ベルトの組み付け方法
  6. 互いに隣接する少なくとも2列の前記リグが前記傾斜リングにより構成されるとともに、該傾斜リングの小径側の側端部の外径は大径側の側端部の内径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルトの組み付け方法。
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