つぎに、この発明を図面を参照して具体的に説明する。初めに、この発明の実施例として、この発明に係る伝動ベルトの構成例を説明し、ついで、この発明に係る伝動ベルトの組み付け方法による組み付け例を、以下に順次説明する。
(第1実施例)
初めに、この発明の第1実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図1,図2に基づいて説明する。図1,図2において、伝動ベルトVは、ベルト式無段変速機の駆動側(入力軸)プーリと従動側(出力軸)プーリとに巻き掛けられて、それらのプーリの間で動力を伝達するベルトの例を示している。そして、この発明における多数のエレメント1は、エレメント1と後述するリング9とを組み付ける際に、その組み付け初期段階、すなわち組み付け開始当初から組み付け完了直前までの段階で用いられる大多数の主エレメント1aと、組み付け最終段階すなわち組み付け完了直前の段階で用いられる1枚もしくは複数枚の調整エレメント1bとの、2種類のエレメント1により構成されている。先ず初めに、主エレメント1aの構成について説明し、調整エレメント1bの構成に関しては後述する。
主エレメント1aは、例えば金属製の板片状の部材からなり、その幅方向(図1のx軸方向)における左右の側面2,3が、テーパ状の傾斜した面として形成された本体(基体)部4を有し、そのテーパ状に傾斜した両側面2,3が、ベルト式無段変速機の駆動側プーリあるいは従動側プーリであるプーリ5のベルト巻き掛け溝(V形溝)5aに摩擦接触してトルクを伝達するようになっている。
本体部4の幅方向(図1のx軸方向)における左右の両端部分に、本体部4の一部であって、主エレメント1aの上下方向(図1,図2のy軸方向)での上方に延びた左右の柱部6,7がそれぞれ形成されている。したがって、本体部4の図1,図2での上側のエッジ部分である上端面4aと、両柱部6,7の本体部4の幅方向における中央を向いた左右の内側面6a,7aとによって、主エレメント1aの上側(図1のy軸方向での上側)すなわち伝動ベルトVの外周側に開口した凹部8が形成されている。
凹部8は、互いに密着して環状に配列された主エレメント1aを環状に結束するための無端環状のリング9を、挿入して収容するための部分であり、したがって上端面4aが、リング9の内周面を接触させて載せるサドル面4aとなっている。
そして、リング9は、例えば金属製の環状の帯状体を径方向に複数枚積層させて形成した、いわゆる積層リングであって、凹部8の内部で2列に並列される2本の分割リング9aと分割リング9bとによって構成されている。これら各分割リング9a,9bは、例えば形状・寸法、材質、強度が等しい2本の金属製の積層リングにより形成されている。そして、リング9の幅寸法(図1のx軸方向の寸法)L1が、後述する主エレメント1aの凹部8の開口幅W1よりも長く、開口幅W2よりも短い範囲内の値に設定されている。
左右の柱部6,7の上端部分には、左右の先端面10a,11aがそれぞれ本体部4の幅方向における中央に向かって延びた左右の抜け止め部10,11が、それぞれ両柱部6,7と一体に形成されている。言い換えると、凹部8の開口端(凹部8における伝動ベルトの外周側の端部)側の両内側面6a,7aに、凹部8の幅方向(図1のx軸方向)における中心側に向けた抜け止め部10,11がそれぞれ形成されている。そのため、凹部8の開口幅が、凹部8の開口端側では、対向する両先端面10a,11aの間の距離W1によって規定されている。そして、凹部8の底部8a(すなわちサドル面(上端面)4a)側では、両先端面10a,11a間の距離(開口幅)W1よりも広い開口幅W2となっている。
この伝動ベルトVを構成する多数のエレメント1は、環状に配列された状態でリング9によって結束され、その状態で駆動側および従動側のそれぞれのプーリ5に巻き掛けられる。したがってプーリ5に巻き掛けられた状態では、各エレメント1が、プーリ5の中心に対して扇状に拡がり、かつ互いに密着する必要があるため、各エレメント1の図1,図2での下側の部分(環状に配列した状態での中心側の部分)が薄肉に形成されている。
すなわち、本体部4の一方の面(例えば図2における左側の面)での、エレメント1の上下方向におけるサドル面4aの位置から下側の部分が削り落とされた状態で薄肉化されている。したがって、各エレメント1が扇形に拡がって接触する状態、言い換えると、各エレメント1がプーリ5に巻き掛かり円弧状に湾曲して配列されて伝動ベルトVが湾曲するベルト湾曲状態で、その板厚の変化する境界部分で接触する。この境界部分のエッジが、いわゆるロッキングエッジ12となっている。
この種のエレメント1のサドル面4aは、多数のエレメント1を結束しているリング9が接触しているので、伝動ベルトVがトルクを伝達している状態では、その接触圧が大きくなるのに対して、エレメント1が直線状に配列されている状態からプーリ5に巻き掛かって扇状に開く場合には、リング9とサドル面4aとの間に滑りによる摺動が生じ、それに伴って大きい摩擦力が生じる。このとき、エレメント1の上下方向における上記のサドル面4aとロッキングエッジ12との間の距離が長いと、リング9とサドル面4aとの間の摩擦力によるモーメントが大きくなり、リング9とサドル面4aとの間で一層滑りによる摺動が生じやすくなる。その結果、伝動ベルトVの運転時における摩擦損失が増大して伝動ベルトVの伝動効率が低下してしまうおそれがある。
そこで、上記のように、エレメント1の上下方向におけるサドル面4aの位置と同じ位置もしくはほぼ同じ位置に、すなわちエレメント1の上下方向におけるサドル面4aの位置からオフセットせずに、ロッキングエッジ12を形成することによって、リング9とサドル面4aとの間の摩擦力によるモーメントを可及的に小さくすることができ、その結果、伝動ベルトVの運転時における摩擦損失を低減して伝動ベルトVの伝動効率を向上することができる。
エレメント1の本体部4の幅方向における中央部分には、各エレメント1がプーリ5に巻き掛からず直線状に配列されるベルト直線状態において各エレメント1の相対的な位置を決めるためのディンプル13とホール14とが形成されている。具体的には、本体部4の一方の面側(図2の例では、ロッキングエッジ12のある面側)に凸となる円錐台形のディンプル13が形成されている。そして、このディンプル13とは反対側の面に、隣接するエレメント1におけるディンプル13を緩く嵌合(遊嵌)させる有底円筒状のホール14が形成されている。
したがって、ベルト直線状態でこれらのディンプル13とホール14とが嵌合することによって、その状態におけるエレメント1同士の図1での左右方向および上下方向の相対位置を決めることができ、例えばベルト式無段変速機が運転される場合に、伝動ベルトVのがたつきを防止して伝動ベルトVを安定して走行させることができる。
前述したように、この発明による伝動ベルトVは、多数のエレメント1と2列の分割リング9a,9bからなるリング9とを容易にかつ確実に組み付けることを目的として、エレメント1が、上述した構成の主エレメント1aと、つぎに示す構成の調整エレメント1bとの2種類のエレメント1によって構成されている。その調整エレメント1bの構成について以下に説明する。
図3,図4,図5に、調整エレメント1bの構成を示してある。この調整エレメント1bは、抜け止め部10,11が調整エレメント1bの本体部4とは別個に成形されていて、それら抜け止め部10,11が本体部4に後付けで固定されることにより、調整エレメント1bの本体部4(具体的には柱部6,7)に一体化される構成となっている。すなわち、それら後付けで本体部4に固定される抜け止め部10,11に関連する部分以外に関しては、上記の主エレメント1aと同様の構成となっている。したがって、調整エレメント1bにおける上記の主エレメント1aと同様の構成部分については、図3,図4,図5に、上記の主エレメント1aの構成の説明で用いた符号と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図3,図4,図5において、調整エレメント1bは、左右の柱部6,7を含む本体部4と、前述の先端面10a,11aが形成されていて左右の柱部6,7にそれぞれ後付けで固定されることにより左右の抜け止め部10,11を形成する左右の突起部材15,16とが、それぞれ別個に成形されている。
具体的には、図4に示すように、調整エレメント1bの両柱部6,7の内側面6a,7a側に、それぞれ、後述する各突起部材15,16に形成された係合凹部15a,16aと係合するための、本体部4の幅方向における中央に向かって凸となる係合凸部6b,7bが形成されている。
なお、上記の調整エレメント1bにおける凹部8の開口幅W3、言い換えると、係合凸部6bの先端(図3,図4での右端)と係合凸部7bの先端(図3,図4での左端)との間の距離W3は、前述のリング9の幅寸法L1よりもやや狭くなっている。すなわち、調整エレメント1bにおける凹部8の開口幅W3は、前述した主エレメント1aにおける凹部8の開口幅W1よりも広く、リング9の幅寸法L1よりも若干狭い範囲内の値に設定されている。
一方、図5に示すように、各突起部材15,16の先端面10a,11aの反対側に、それぞれ、上記の係合凸部6b,7bの形状に対応して、その係合凸部6b,7bと係合するための、突起部材15,16の中央部分に向かって凹となる係合凹部15a,16aが形成されている。そして、それら突起部材15と突起部材16とが、連結部材17により互いに連結されて一体となっている。
各突起部材15,16は、例えばエレメント1(すなわち主エレメント1aおよび調整エレメント1b)と同じ材質の部材であって、調整エレメント1bの凹部8にリング9が嵌め込まれた状態で調整エレメント1bの本体部4に固定されて抜け止め部10,11を形成する場合に、調整エレメント1bの凹部8からリング9が離脱してしまうことを防止できる所定の剛性および強度を有する部材によって構成されている。
連結部材17は、帯状の平板部材であって、所定の弾性もしくは可塑性を有する部材によって構成されている。そして、この連結部材17の長さ方向の両端に、上記の各突起部材15,16がそれぞれ一体に固定されている。より具体的には、この連結部材17は、図6に示すように、各突起部材15,16の係合凹部15a,16aを調整エレメント1bにおける本体部4の係合凸部6b,7bにそれぞれ係合させる際に変形させることができるとともに、図3に示すように、各突起部材15,16の係合凹部15a,16aを調整エレメント1bにおける本体部4の係合凸部6b,7bにそれぞれ係合させた後に、再び変形してそれら係合凹部15a,16aと係合凸部6b,7bとの係合状態、すなわち調整エレメント1bの本体部4に対する各突起部材15,16の係合状態を維持させることが可能な所定の弾性もしくは可塑性を有する部材によって構成されている。
そして、未だ各突起部材15,16が固定されていない調整エレメント1bの凹部8にリング9を収容した状態で、調整エレメント1bにおける本体部4の係合凸部6b,7bと各突起部材15,16の係合凹部15a,16aとをそれぞれ係合させて、本体部4に突起部材15,16を係合させることにより、調整エレメント1bにおける凹部8の抜け止め部10,11の内周側にリング9が収容された状態になる。そして、上記のように本体部4に突起部材15,16を係合させるのと同時に、係合凸部6b,7bと係合凹部15a,16aとをそれぞれ係合させるために変形させられていた連結部材17を、再度変形させて、具体的には初めの変形を行う前の元の状態に戻して、調整エレメント1bの本体部4に対する突起部材15,16の係合状態が維持される。すなわち、各突起部材15,16が本体部4に固定されて、抜け止め部10,11が形成される。したがって、調整エレメント1bにおける凹部8の両抜け止め部10,11の内周側にリング9が収容された状態でエレメント1とリング9とが組み付けられることにより、伝動ベルトVが構成される。
つぎに、この第1実施例における伝動ベルトVの組み付け例を、図面に基づいて説明する。先ず、図7に示すように、並列された分割リング9aおよび分割リング9bのリング周長方向における所定の部分を、互いに重ね合わせてリング9の重ね合わせ状態を設定する。重ね合わせ状態を設定することにより、リング9では、重ね合わせ状態(図7のA部で示す状態)と並列状態(図7のB部で示す状態)とが同時に設定される。リング9の重ね合わせ状態の部分では、リング9の幅が主エレメント1aの開口幅W1よりも狭くなるため、この重ね合わせ状態の部分から、1枚もしくは予め配列された所定枚数の主エレメント1aの凹部8に、リング9が嵌め込まれる。
続いて、凹部8にリング9の重ね合わせ状態の部分が嵌め込まれた1枚もしくは複数枚の主エレメント1aが、リング9の周長方向に、リング9の並列状態の部分まで移動させられる。リング9の並列状態の部分では、リング9の幅L1が、主エレメント1aの開口幅W2よりも狭く、かつ主エレメント1aの開口幅W1よりも広くなるため、凹部8にリング9が嵌め込まれた主エレメント1aがリング9の並列状態の部分まで移動させられると、その並列状態の部分では、リング9が凹部8の両突起部9により係止されて凹部8に係合される。すなわち、主エレメント1aとリング9とが組み付けられる。
そして、上記のような、所定枚数の主エレメント1aの凹部8に、リング9の重ね合わせ状態の部分を嵌め込み、その所定枚数の主エレメント1aをリング9の並列状態の部分まで移動させる作業が順次繰り返される。
上記のような主エレメント1aとリング9との組み付け作業において、それら主エレメント1aとリング9との組み付け初期段階では、分割リング9aと分割リング9bとを自由に動作させることができ、比較的容易にリング9の重ね合わせ状態を設定することができる。これに対して、リング9と比較的多数の主エレメント1aとが組み付けられた段階、すなわち組み付け最終段階では、ディンプル13とホール14とが嵌合されて連結された各主エレメント1aの列により、分割リング9aと分割リング9bとの動作が規制され、リング9の重ね合わせ状態を設定することが次第に困難になってくる。その結果、リング9に対して主エレメント1aを組み付けることが次第に困難になってくる。
そこで、この発明による伝動ベルトの組み付け方法では、リング9に組み付けるエレメント1として、上述したような主エレメント1aおよび調整エレメント1bの2種類を用意して、エレメント1とリング9との組み付け初期段階において主エレメント1aを用い、エレメント1とリング9との組み付け最終段階においては調整エレメント1bを用いることにより、組み付け初期段階から最終段階に至るまで、エレメント1とリング9とを容易に、かつ確実に組み付けることができるようになっている。
具体的には、エレメント1とリング9との組み付け最終段階、すなわち、上記のようにリング9に対して主エレメント1aを組み付けることが困難な段階になると、主エレメント1aに替えて調整エレメント1bを用いてエレメント1とリング9との組み付けが行われる。したがって、エレメント1とリング9との組み付け最終段階において、多数の主エレメント1aが組み付けられたリング9に対して、所望する全てのエレメント1の枚数に対する最後の1枚もしくは複数枚の調整エレメント1bが、リング9に組み付けられる。
前述したように、調整エレメント1bは、本体部4と抜け止め部10,11を形成するための突起部材15,16とが別個に成形されていて、調整エレメント1bとリング9とを組み付ける際には、調整エレメント1bの本体部4と抜け止め部10,11とは別体となって分割された状態になっている。したがって、エレメント1とリング9との組み付け最終段階において、未だ抜け止め部10,11が形成されていない状態の調整エレメント1bがリング9に組み付けられる。すなわち、調整エレメント1bの凹部8における抜け止め部10,11の内周側の空間に、リング9が嵌め込まれて凹部8にリング9を収容した状態にされる。
この場合、調整エレメント1bにおける凹部8の開口幅W3が、主エレメント1aにおける凹部8の開口幅W1よりも広く、リング9の幅寸法L1よりも若干狭い範囲内の値に設定されている。そのため、前述の主エレメント1aとリング9とを組み付ける場合と比較して、この調整エレメント1bとリング9とを組み付ける場合は、調整エレメント1bの凹部8にリング9を容易に嵌め込むことができる。すなわち、主エレメント1aとリング9とを組み付ける場合のようにリング9を重ね合わせ状態にしなくとも、例えば図8に示すように、並列状態のリング9に対して調整エレメント1bを若干傾けることにより、調整エレメント1bの凹部8に、並列状態のリング9を容易に嵌め込むことが可能である。
そして、調整エレメント1bの凹部8にリング9が嵌め込まれた状態で、調整エレメント1bの本体部4に左右の突起部材15,16が取り付けられる。具体的には、各突起部材15,16を互いに連結している連結部材17に外力が加えられて、前述の図6に示すように、連結部材17が湾曲するように変形させられる。
連結部材17が図6に示すように湾曲させられることにより、各突起部材15,16に設けられている係合凹部15a,16aを、調整エレメント1bにおける本体部4の係合凸部6b,7bにそれぞれ係合することが可能な状態になる。そして、その状態から各係合凹部15a,16aが、両係合凸部6b,7bにそれぞれ係合させられる。また併せて、上記のように湾曲した状態に変形させられていた連結部材17が、その変形前の状態に戻される。例えば、連結部材17が弾性部材により形成されている場合は、各突起部材15,16を調整エレメント1bの本体部4に係合させる際に連結部材17を変形させるために加えた外力を除去することにより、あるいは連結部材17が可塑性部材により形成されている場合には、連結部材17にさらに別の外力を加えて連結部材17を再度変形させることによって、当初の平板形状の状態に戻される。
このようにして、調整エレメント1bの本体部4に各突起部材15,16を係合させつつ、連結部材17を変形させて当初の平板形状の状態に戻すことにより、調整エレメント1bの本体部4に各突起部材15,16が係合して固定された状態にされる。すなわち、調整エレメント1bの凹部8に両抜け止め部10,11が形成され、それら両抜け止め部10,11の内周側に、並列状態のリング9が収容された状態にされる。すなわち、調整エレメント1bとリング9とが組み付けられる。
そして、最後の調整エレメント1bとリング9とが組み付けられること、すなわち所望する全てのエレメント1とリング9とが組み付けられることにより、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
以上のように、この発明の第1実施例による伝動ベルトVおよびその組み付け方法によれば、無端環状の2列の分割リング9a,9bからなるリング9により連結される多数のエレメント1のうちの少なくとも一つに、左右の抜け止め部10,11が、例えばエレメント1の本体部4と同等の剛性を有した左右の突起部材15,16と、それら各突起部材15,16を連結するとともに、各突起部材15,16をエレメント1の本体部4に係合させる際に変形してその係合を容易にし、かつ各突起部材15,16がエレメント1の本体部4に係合した後の係合状態を維持させる連結部材17とから形成される調整エレメント1bが用いられる。
そして、両抜け止め部10,11が形成されていない状態で調整エレメント1bの凹部8に並列状態のリング9が容易に嵌め込まれ、その後、連結部材17に外力が加えられて連結部材17が変形させられて、調整エレメント1bの本体部4に各突起部材15,16が容易に係合させられる。そしてその後、例えば連結部材17が弾性部材により形成されている場合は、連結部材17に加えた外力を除去することにより、あるいは連結部材17が可塑性部材により形成されている場合には、連結部材17にさらに別の外力を加えて調整エレメント1bの本体部4に対する各突起部材15,16の係合状態を保持する状態となるように連結部材17をさらに変形させることによって、各突起部材15,16が調整エレメント1bの本体部4に固定されて適切な剛性および強度を備えた左右の抜け止め部10,11が調整エレメント1bに形成される。
そのため、左右の抜け止め部10,11が形成されていない状態で、調整エレメント1bの凹部8に並列状態のリング9を容易に嵌め込むことができるとともに、調整エレメント1bの凹部8にリング9を嵌め込んだ後に、各突起部材15,16を調整エレメント1bの本体部4に容易に固定して左右の抜け止め部10,11を形成し、リング9を調整エレメント1bの両抜け止め部10,11の内周側に確実に嵌め込んだ状態にすることができる。その結果、エレメント1とリング9とを容易に、かつ確実に組み付けることができる。
(第2実施例)
つぎに、この発明の第2実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図9ないし図12に基づいて説明する。この第2実施例では、上記の第1実施例における連結部材17の内周側の中央部分にスペーサを取り付けて、そのスペーサの幅の分だけリング9の幅を狭くすることにより、エレメント1とリング9との組み付けを容易に行うことができるように構成した例を示している。したがって、前述の図1ないし図6に示す第1実施例と同じ構成の部分については、図9ないし図12に、図1ないし図6と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図9において、この第2実施例における伝動ベルトVは、前述の第1実施例における伝動ベルトVが主エレメント1aおよび調整エレメント1bからなるエレメント1と2列の分割リング9a,9bからなるリング9とにより構成されているのに対して、主エレメント1aおよび調整エレメント1cからなるエレメント1と、2列の分割リング9c,9dからなるリング9とにより構成されている。
この第2実施例における伝動ベルトVを構成する調整エレメント1cは、前述の第1実施例における調整エレメント1bと同様、左右の抜け止め部10,11が、本体部4(具体的には両柱部6,7)に両突起部材15,16が係合されることにより形成されるようになっている。そして、図10に示すように、それら両突起部材15,16が、前述の調整エレメント1bにおける連結部材17に対してスペーサ22が設けられた構成の連結部材21によって互いに連結されている。
すなわち、連結部材21は、前述の第1実施例における連結部材17と同様に、帯状の平板部材であって、所定の弾性もしくは可塑性を有する部材によって構成されている。そして、その両端に一体固定された各突起部材15,16の係合凹部15a,16aを調整エレメント1cにおける本体部4の係合凸部6b,7bにそれぞれ係合させる際に変形させることができるとともに、図9に示すように、各突起部材15,16の係合凹部15a,16aを調整エレメント1cにおける本体部4の係合凸部6b,7bにそれぞれ係合させた後に、再び変形してそれら係合凹部15a,16aと係合凸部6b,7bとの係合状態、すなわち調整エレメント1cの本体部4に対する各突起部材15,16の係合状態を維持させることが可能な帯板状の弾性部材もしくは可塑性部材によって構成されている。
そして、連結部材21の内周側(図9,図10での下側)の中央部分に、エレメント1の凹部8に並列して収容された2列の分割リング9c,9dを、凹部8の幅方向で互いに離隔させるスペーサ22が形成されている。このスペーサ22は、並列状態における2列の分割リング9c,9dの対向面同士の間にスペースを設けるためのものであり、2列の分割リング9c,9dで挟まれた状態で上記のスペースを形成することが可能な所定の剛性を有した部材によって構成されている。なお、このスペーサ22は、連結部材21と一体に成形されてもよく、あるいは連結部材21と別個に成形されて、溶接や接着などにより連結部材21に接合されて一体に固定されたものであってもよい。
したがって、この第2実施例における連結部材21が、この発明におけるスペーサ付き連結部材に相当していて、その連結部材21と各突起部材15,16とにより左右の抜け止め部10,11が形成されるこの第2実施例における調整エレメント1cが、この発明におけるスペーサ付き調整エレメントに相当している。
一方、この第2実施例における伝動ベルトVを構成するリング9は、2列の分割リング9c,9dにより構成されていて、それら各分割リング9c,9dの幅寸法L2が、前述の第1実施例におけるリング9の各分割リング9a,9bの幅寸法(すなわちL1/2)よりも狭くなる構成となっている。具体的には、図9に示すように、この第2実施例におけるリング9の幅寸法L3が、各分割リング9c,9dの幅寸法L2と、上記の連結部材21に設けられたスペーサ22の幅寸法Dとによって決定されるようになっている。
この場合の各分割リング9c,9dの幅寸法L2は、図11に示すように、それら各分割リング9c,9dが互いに当接して並列した状態における幅寸法L4(すなわちL2+L2)が調整エレメント1cにおける凹部8の開口幅W3よりも狭くなるように設定されている。したがって、各分割リング9c,9dによるリング9を、上記のように互いに当接した並列状態にすることにより、未だ抜け止め部10,11が形成されていない状態の調整エレメント1cの凹部8に、リング9を容易に嵌め込んで収容させることができる。
そして、未だ各突起部材15,16が固定されていない調整エレメント1cの凹部8に、上記のように互いに当接した並列状態のリング9を収容し、その後、各分割リング9c,9dを凹部8の幅方向で互いに離隔させてスペースを設けた状態(図12で示す状態)で、調整エレメント1cにおける本体部4の係合凸部6b,7bと各突起部材15,16の係合凹部15a,16aとをそれぞれ係合させて、本体部4に突起部材15,16を係合させることにより、調整エレメント1cにおける凹部8の抜け止め部10,11の内周側にリング9が収容された状態になる。
上記のようにして本体部4に突起部材15,16を係合させるのと同時に、係合凸部6b,7bと係合凹部15a,16aとをそれぞれ係合させるために変形させられていた連結部材21を元の状態に戻して、調整エレメント1cの本体部4に対する突起部材15,16の係合状態が維持される。すなわち、各突起部材15,16が本体部4に固定されて、抜け止め部10,11が形成される。したがって、調整エレメント1cにおける凹部8の両抜け止め部10,11の内周側にリング9が収容された状態でエレメント1とリング9とが組み付けられることにより、伝動ベルトVが構成される。
つぎに、この第2実施例における伝動ベルトVの組み付け例を説明する。前述の第1実施例では、リング9として2列の分割リング9a,9bが用いられ、エレメント1とリング9との組み付け最終段階で、左右の抜け止め部10,11が各突起部材15,16および連結部材17により形成される調整エレメント1bが用いられて組み付けが行われるのに対して、この第2実施例では、リング9として2列の分割リング9c,9dを用い、エレメント1とリング9との組み付け最終段階で、左右の抜け止め部10,11が各突起部材15,16およびスペーサ22が設けられた連結部材21により形成される調整エレメント1cを用いて組み付けを行う例を示している。したがって、エレメント1とリング9との組み付け初期段階においては、前述の第1実施例と同様に組み付けが行われるため、その部分の詳細な説明は省略する。
エレメント1とリング9との組み付け最終段階、すなわち、リング9に対して主エレメント1aを組み付けることが困難な段階になると、主エレメント1aに替えて調整エレメント1cを用いてエレメント1とリング9との組み付けが行われる。したがって、エレメント1とリング9との組み付け最終段階において、多数の主エレメント1aが組み付けられたリング9に対して、所望する全てのエレメント1の枚数に対する最後の1枚もしくは複数枚の調整エレメント1cが、リング9に組み付けられる。
前述したように、調整エレメント1cは、前述の第1実施例における調整エレメント1bと同様に、本体部4と抜け止め部10,11を形成するための突起部材15,16とが別個に成形されていて、調整エレメント1cとリング9とを組み付ける際には、調整エレメント1cの本体部4と抜け止め部10,11とは別体となって分割された状態になっている。したがって、エレメント1とリング9との組み付け最終段階において、未だ抜け止め部10,11が形成されていない状態の調整エレメント1cがリング9に組み付けられる。すなわち、調整エレメント1cの凹部8における抜け止め部10,11の内周側の空間に、並列状態のリング9が嵌め込まれて、凹部8にリング9を収容した状態にされる。
この場合、各分割リング9c,9dによる並列状態のリング9の幅寸法L4(=L2+L2)が、前述したように、調整エレメント1cにおける凹部8の開口幅W3よりも狭い値に設定されている。そのため、この調整エレメント1cとリング9とを組み付ける場合は、調整エレメント1cの凹部8にリング9を容易に嵌め込むことができる。すなわち、この分割リング9c,9dからなるリング9と調整エレメント1cとの組み付けにおいては、主エレメント1aとリング9とを組み付ける場合のようにリング9を重ね合わせ状態にしなくとも、また、前述の第1実施例におけるリング9と調整エレメント1bとの組み付けのように、並列状態のリング9に対して調整エレメント1bを傾ける動作を行わなくとも、調整エレメント1cの凹部8に、並列状態のリング9をより一層容易に嵌め込むことができる。
そして、調整エレメント1cの凹部8に並列状態のリング9が嵌め込まれると、図12に示すように、各分割リング9c,9dが、調整エレメント1cにおける凹部8の幅方向で互いに離隔させられる。すなわち、調整エレメント1cにおける凹部8内で2列の分割リング9c,9dが、調整エレメント1cの左右の側面2,3側にそれぞれ移動させられて、2列の分割リング9c,9dの対向面の間にスペースが設けられる。
そしてその後、その2列の分割リング9c,9dの間に設けられたスペースに、連結部材21に形成されたスペーサ22が嵌め込まれるとともに、調整エレメント1cの本体部4に各突起部材15,16が係合されて固定される。すなわち調整エレメント1cの凹部8にリング9を収容した状態で左右の抜け止め部10,11が形成される。なお、この場合の調整エレメント1cにおける本体部4に対する各突起部材15,16の係合は、前述の第1実施例での調整エレメント1bにおける本体部4に対して各突起部材15,16を係合する場合と同様に行われる。
上記のようにして、調整エレメント1cの本体部4に突起部材15,16が係合させられ、かつ各分割リング9c,9dの間に設けられたスペースに連結部材21のスペーサ22が嵌め込まれる。また併せて、各突起部材15,16を本体部4に係合させるために変形させられていた連結部材21が、当初の平板形状の状態に戻される。
このようにして、調整エレメント1cの本体部4に各突起部材15,16を係合させ、さらに各分割リング9c,9dの対向面の間のスペースにスペーサ22を嵌め込みつつ、連結部材21を変形させて当初の平板形状の状態に戻すことにより、調整エレメント1cの本体部4に各突起部材15,16が係合して固定された状態にされる。すなわち、調整エレメント1cの凹部8に両抜け止め部10,11が形成され、それら両抜け止め部10,11の内周側に、並列状態のリング9が収容された状態にされる。すなわち、調整エレメント1cとリング9とが組み付けられる。
そして、最後の調整エレメント1cとリング9とが組み付けられること、すなわち所望する全てのエレメント1とリング9とが組み付けられることにより、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
以上のように、この発明の第2実施例による伝動ベルトVおよびその組み付け方法によれば、2列の分割リング9c,9dによるリング9の幅を、連結部材21のスペーサ22の幅寸法Dだけ短縮することができる。例えば各分割リング9c,9dが並列した状態でのリング全体としての幅L4を、調整エレメント1cの凹部8の最小開口幅W3よりも狭くすることができる。そのため、調整エレメント1cの凹部8に2列の分割リング9c,9dを容易にかつ確実に嵌め込むことができる。その結果、エレメント1とリング9との組み付け性を向上させることができ、また、リング9からエレメント1が脱落してしまうことを確実に防止することができる。
(第3実施例)
つぎに、この発明の第3実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図13ないし図19に基づいて説明する。この第3実施例では、上記の第2実施例における連結部材21とスペーサ22とによるスペーサ付き連結部材に替えて、帯板状の弾性部材もしくは可塑性部材の中央部分をリングに向かって凸状に湾曲させた形状を有した部材により抜け止め部を構成した例を示している。したがって、前述の図1ないし図6に示す第1実施例と同じ構成の部分については、図13ないし図19に、図1ないし図6と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図13,図14,図15において、この第3実施例における伝動ベルトVは、前述の第2実施例における伝動ベルトVが主エレメント1aおよび調整エレメント1cからなるエレメント1と2列の分割リング9c,9dからなるリング9とにより構成されているのに対して、主エレメント1aおよび調整エレメント1dからなるエレメント1と、2列の分割リング9c,9dからなるリング9とにより構成されている。
この第3実施例における伝動ベルトVを構成する調整エレメント1dは、所定の弾性もしくは可塑性を有した帯板状の部材の中央部分をリング9に向かって凸状に湾曲させた形状を有する係止部材31が本体部4(具体的には両柱部6,7)に係合されることにより、凹部8に収容されたリング9の離脱を防止する抜け止め部31a,31bが形成されるようになっている。
すなわち、係止部材31は、図14に示すように、帯状の平板部材であって、所定の弾性もしくは可塑性を有する部材によって構成されている。さらに係止部材31は、調整エレメント1dの左右の柱部6,7に設けられた係合凹部6c,7cに係合された際に、調整エレメント1dの凹部8からのリング9の離脱を防止できる程度の所定の剛性を有している両端部31d,31eを備えている。そして、係止部材31は、両端部31d,31eを係合凹部6c,7cにそれぞれ係合させる際に変形、具体的には湾曲させることができるとともに、両端部31d,31eを係合凹部6c,7cにそれぞれ係合させた後に、再び変形してそれら係合凹部6c,7cと両端部31d,31eとの係合状態、すなわち調整エレメント1dの柱部6,7に対する係止部材31の係合状態を維持させることが可能な帯板状の弾性部材もしくは可塑性部材によって構成されている。
そして、係止部材31の内周側(図13,図14での下側)の中央部分に、エレメント1の凹部8に並列して収容された2列の分割リング9c,9dを、凹部8の幅方向で互いに離隔させるスペーサ部31cが形成されている。このスペーサ部31cは、並列状態における2列の分割リング9c,9dの対向面同士の間にスペースを設けるためのものであり、2列の分割リング9c,9dで挟まれた状態で上記のスペースを形成することが可能なように、係止部材31を形成する帯状の平板部材が、その内周側の中央部分がリング9に向かって凸状に湾曲させられることにより構成されている。
したがって、この第3実施例における係止部材31が、この発明における抜け止め部に相当し、その係止部材31に形成されているスペーサ部31cがこの発明におけるスペーサに相当していて、そのスペーサ部31cを備えた係止部材31により抜け止め部が形成されるこの第3実施例における調整エレメント1dが、この発明におけるスペーサ付き調整エレメントに相当している。
一方、この第3実施例における伝動ベルトVを構成するリング9は、前述の第2実施例における伝動ベルトVを構成するリング9と同様に、2列の分割リング9c,9dにより構成されていて、それら各分割リング9c,9dの幅寸法L2が、前述の第1実施例におけるリング9の各分割リング9a,9bの幅寸法(すなわちL1/2)よりも狭くなる構成となっている。具体的には、図13に示すように、この第3実施例におけるリング9の幅寸法L3が、各分割リング9c,9dの幅寸法L2と、上記の係止部材31に設けられたスペーサ部31cの幅寸法Dとによって決定されるようになっている。
この場合の各分割リング9c,9dの幅寸法L2は、図16に示すように、それら各分割リング9c,9dが互いに当接して並列した状態における幅寸法L4(すなわちL2+L2)が調整エレメント1dにおける凹部8の開口幅W3よりも狭くなるように設定されている。したがって、各分割リング9c,9dによるリング9を、上記のように互いに当接した並列状態にすることにより、未だ抜け止め部31a,31bが形成されていない状態の調整エレメント1dの凹部8に、リング9を容易に嵌め込んで収容させることができる。
そして、未だ係止部材31が固定されていない調整エレメント1dの凹部8に、上記のように互いに当接した並列状態のリング9を収容し、その後、各分割リング9c,9dを凹部8の幅方向で互いに離隔させてスペースを設けた状態(図17で示す状態)で、係止部材31を湾曲させた状態(図18で示す状態)にして、その係止部材31の両端部31d,31eを調整エレメント1dにおける係合凹部6c,7cにそれぞれ係合させることにより、調整エレメント1dにおける凹部8の抜け止め部31a,31bの内周側にリング9が収容された状態になる。
上記のようにして調整エレメント1dに係止部材31を係合させるのと同時に、両端部31d,31eを係合凹部6c,7cにそれぞれ係合させるために変形させられていた係止部材31を元の状態に戻して、調整エレメント1dの本体部4に対する係止部材31の係合状態が維持される。すなわち、係止部材31が本体部4に固定されて、抜け止め部31a,31bが形成される。したがって、調整エレメント1dにおける凹部8の抜け止め部31a,31bの内周側にリング9が収容された状態でエレメント1とリング9とが組み付けられることにより、伝動ベルトVが構成される。
つぎに、この第3実施例における伝動ベルトVの組み付け例を説明する。この第3実施例では、前述の第2実施例の場合と同様にリング9として2列の分割リング9c,9dを用い、エレメント1とリング9との組み付け最終段階で、抜け止め部31a,31bおよびスペーサ部31cが設けられた係止部材31が本体部4に固定されることにより形成される調整エレメント1dを用いて組み付けを行う例を示している。したがって、エレメント1とリング9との組み付け初期段階においては、前述の第1実施例と同様に組み付けが行われるため、その部分の詳細な説明は省略する。
エレメント1とリング9との組み付け最終段階、すなわち、リング9に対して主エレメント1aを組み付けることが困難な段階になると、主エレメント1aに替えて調整エレメント1dを用いてエレメント1とリング9との組み付けが行われる。したがって、エレメント1とリング9との組み付け最終段階において、多数の主エレメント1aが組み付けられたリング9に対して、所望する全てのエレメント1の枚数に対する最後の1枚もしくは複数枚の調整エレメント1dが、リング9に組み付けられる。
前述したように、調整エレメント1dは、本体部4と抜け止め部31a,31bとが別個に成形されていて、調整エレメント1dとリング9とを組み付ける際には、調整エレメント1dの本体部4と抜け止め部31a,31bとは別体となって分割された状態になっている。したがって、エレメント1とリング9との組み付け最終段階において、未だ抜け止め部31a,31bが形成されていない状態の調整エレメント1dがリング9に組み付けられる。すなわち、調整エレメント1dの凹部8に、並列状態のリング9が嵌め込まれて、凹部8にリング9を収容した状態にされる。
この場合、各分割リング9c,9dによる並列状態のリング9の幅寸法L4(=L2+L2)が、前述したように、調整エレメント1dにおける凹部8の開口幅W3よりも狭い値に設定されている。そのため、この調整エレメント1dとリング9とを組み付ける場合は、調整エレメント1dの凹部8にリング9を容易に嵌め込むことができる。すなわち、この分割リング9c,9dからなるリング9と調整エレメント1dとの組み付けにおいては、主エレメント1aとリング9とを組み付ける場合のようにリング9を重ね合わせ状態にしなくとも、また、前述の第1実施例におけるリング9と調整エレメント1bとの組み付けのように、並列状態のリング9に対して調整エレメント1bを傾ける動作を行わなくとも、調整エレメント1dの凹部8に、並列状態のリング9をより一層容易に嵌め込むことができる。
そして、調整エレメント1dの凹部8に並列状態のリング9が嵌め込まれると、図17に示すように、各分割リング9c,9dが、調整エレメント1dにおける凹部8の幅方向で互いに離隔させられる。すなわち、調整エレメント1dにおける凹部8内で2列の分割リング9c,9dが、調整エレメント1dの左右の側面2,3側にそれぞれ移動させられて、2列の分割リング9c,9dの対向面の間にスペースが設けられる。
そしてその後、図18に示す状態のように、係止部材31がその長さ方向で湾曲させられて、2列の分割リング9c,9dの間に設けられたスペースに、係止部材31に形成されたスペーサ部31cが嵌め込まれるとともに、調整エレメント1dの本体部4に係止部材31が係合されて固定される。すなわち調整エレメント1dの凹部8にリング9を収容した状態で抜け止め部31a,31bが形成される。
上記のようにして、調整エレメント1dの本体部4に係止部材31が係合させられ、かつ各分割リング9c,9dの間に設けられたスペースに係止部材31のスペーサ部31cが嵌め込まれる。また併せて、両端部31d,31eを本体部4の係合凹部6c,7cに係合させるために変形させられていた係止部材31が、当初の平板形状の状態に戻される。
このようにして、調整エレメント1dの本体部4に係止部材31を係合させ、さらに各分割リング9c,9dの対向面の間のスペースにスペーサ部31cを嵌め込みつつ、係止部材31を変形させて当初の平板形状の状態に戻すことにより、調整エレメント1dの本体部4に係止部材31が係合して固定された状態にされる。すなわち、調整エレメント1dの凹部8に抜け止め部31a,31bが形成され、それら抜け止め部31a,31bの内周側に、並列状態のリング9が収容された状態にされる。すなわち、調整エレメント1dとリング9とが組み付けられる。
そして、最後の調整エレメント1dとリング9とが組み付けられること、すなわち所望する全てのエレメント1とリング9とが組み付けられることにより、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
以上のように、この発明の第3実施例による伝動ベルトVおよびその組み付け方法によれば、2列の分割リング9c,9dによるリング9の幅を、係止部材31のスペーサ部31cの幅寸法Dだけ短縮することができる。例えば各分割リング9c,9dが並列した状態でのリング全体としての幅L4を、調整エレメント1cの凹部8の最小開口幅W3よりも狭くすることができる。そのため、調整エレメント1dの凹部8に2列の分割リング9c,9dを容易にかつ確実に嵌め込むことができる。その結果、エレメント1とリング9との組み付け性を向上させることができ、また、リング9からエレメント1が脱落してしまうことを確実に防止することができる。
また、前述したように、係止部材31は所定の弾性部材もしくは可塑性部材により形成されていて、したがってその係止部材31に形成されたスペーサ部31cも所定の弾性もしくは可塑性を有している。そのため、例えば伝動ベルトVがトルクを伝達する運転時に、リング9が蛇行するなどして2列の分割リング9c,9d同士が当接しようとする際に、それら各分割リング9c,9dの間に嵌合されているスペーサ部31cが緩衝材として機能し、リング9が損傷してしまうような事態を回避して、伝動ベルトVの耐久性の低下を防止することができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されない。すなわち、第1実施例では、2列のリング9a,9bからなるリング9に組み付けるエレメント1が、大多数の主エレメント1aと、1枚もしくは数枚の調整エレメント1bとにより構成される例を示しているが、エレメント1の大多数もしくは全数を、調整エレメント1bにより構成することもできる。その場合、エレメント1とリング9とを組み付ける際に、既に組み付けられたエレメント1の列をローリングさせてリング9を重ね会わせ状態にしなくともエレメント1とリング9とを容易に組み付けることができる。
また、第2,第3実施例では、2列のリング9c,9dからなるリング9に組み付けるエレメント1が、大多数の主エレメント1aと、組み付け最終段階において用いられる1枚もしくは数枚の調整エレメント1c,1dとにより構成される例を示しているが、伝動ベルトVの全周における等間隔の数箇所(好ましくは4箇所以上)で、すなわち組み付け最終段階以外の組み付け段階においても、この1枚もしくは数枚の調整エレメント1c,1dを用いて組み付けを行い伝動ベルトVを構成することもできる。
さらに、第3実施例で示した伝動ベルトVの構成は、例えば、図19に示すような構成とすることも可能である。すなわち、前述の第3実施例で調整エレメント1dの柱部6,7に形成された係合凹部6c,7cに両端部31d,31eをそれぞれ係合させることにより、調整エレメント1dに対して一体化させていた係止部材31を、図19に示すように、柱部6,7に設けた突起部6d,7dの内周側部分と各分割リング9c,9dの外周面との間の隙間6e,7eに、係止部材31の両端部31d,31eをそれぞれ係合させることにより、調整エレメント1dと係止部材31とを互いに一体化させる構成としてもよい。
そして、上述した具体例では、この発明の伝動ベルトがベルト式無段変速機に使用されている例を示しているが、この発明の伝動ベルトは、ベルト式無段変速機に限らず、ベルトとプーリとによって構成される他の巻き掛け伝動装置の伝動ベルトにも適用することができる。
1…エレメント、 1a…主エレメント、 1b…調整エレメント、 1c,1d…スペーサ付き調整エレメント、 4…本体部(基体部)、 5…プーリ、 6a,7a…内側面、 8…凹部、 9…リング、 9a,9b,9c,9d…分割リング、 10,11,31a,31b…抜け止め部、 12…ロッキングエッジ、 15,16…突起部材、 17…連結部材、 21…スペーサ付き連結部材、 22…スペーサ、 31…係止部材、 31c…スペーサ部、 31d,31e…両端部、 V…伝動ベルト。