つぎに、この発明を図面を参照して具体的に説明する。初めに、この発明の実施例として、この発明に係る伝動ベルトの構成例を説明し、ついで、この発明に係る伝動ベルトの組み付け方法による組み付け例を、以下に順次説明する。
(第1実施例)
初めに、この発明の第1実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図1,図2に基づいて説明する。図1,図2において、伝動ベルトVは、ベルト式無段変速機の駆動側(入力軸)プーリと従動側(出力軸)プーリとに巻き掛けられて、それらのプーリの間で動力を伝達するベルトの例を示している。そして、この発明における多数のエレメントEは、例えば金属製の板片状の部材からなり、その幅方向(図1のx軸方向)における左右の側面1,2が、テーパ状の傾斜した面として形成された本体(基体)部3を有し、そのテーパ状に傾斜した両側面1,2が、ベルト式無段変速機の駆動側プーリあるいは従動側プーリであるプーリ4のベルト巻き掛け溝(V形溝)4aに摩擦接触してトルクを伝達するようになっている。
本体部3の幅方向(図1のx軸方向)における左右の両端部分に、本体部3の一部であって、エレメントEの上下方向(図1,図2のy軸方向)での上方に延びた左右の柱部5,6がそれぞれ形成されている。したがって、本体部3の図1,図2での上側のエッジ部分である上端面3aと、両柱部5,6の本体部3の幅方向における中央を向いた左右の内側面5a,6aとによって、エレメントEの上側(図1のy軸方向での上側)すなわち伝動ベルトVの外周側に開口した凹部7が形成されている。
凹部7は、互いに密着して環状に配列されたエレメントEを環状に結束するための無端環状のリングRを、挿入して収容するための部分であり、したがって上端面3aが、リングRの内周面を接触させて載せるサドル面3aとなっている。なお、この発明におけるリングRは、周長が等しくかつ形状が異なる2種類の分割リングにより構成されている。それら各分割リングの詳細な構成に関しては後述する。
左右の柱部5,6の上端部分には、左右の先端面8a,9aがそれぞれ本体部3の幅方向における中央に向かって延びた左右の抜け止め部8,9が、それぞれ両柱部5,6と一体に形成されている。言い換えると、凹部7の開口端(凹部7における伝動ベルトの外周側の端部)側の両内側面5a,6aに、凹部7の幅方向(図1のx軸方向)における中心側に向けた抜け止め部8,9がそれぞれ形成されている。そのため、凹部7の開口幅が、凹部7の開口端側では、対向する両先端面8a,9aの間の距離W1によって規定されている。そして、凹部7の底部7a(すなわちサドル面(上端面)3a)側では、両先端面8a,9a間の距離(開口幅)W1よりも広い開口幅W2となっている。
この伝動ベルトVを構成する多数のエレメントEは、環状に配列された状態でリングRによって結束され、その状態で駆動側および従動側のそれぞれのプーリ4に巻き掛けられる。したがってプーリ4に巻き掛けられた状態では、各エレメントEが、プーリ4の中心に対して扇状に拡がり、かつ互いに密着する必要があるため、各エレメントEの図1,図2での下側の部分(環状に配列した状態での中心側の部分)が薄肉に形成されている。
すなわち、本体部3の一方の面(例えば図2における左側の面)におけるサドル面3aより所定寸法下がった(オフセットされた)部分から下側の部分が削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。したがって、各エレメントEが扇形に拡がって接触する状態、言い換えると、各エレメントEがプーリ4に巻き掛かり円弧状に湾曲して配列されてベルトが湾曲するベルト湾曲状態で、その板厚の変化する境界部分で接触する。この境界部分のエッジが、いわゆるロッキングエッジ10となっている。
エレメントEの本体部3の幅方向における中央部分には、各エレメントEがプーリ4に巻き掛からず直線状に配列されるベルト直線状態において各エレメントEの相対的な位置を決めるためのディンプル11とホール12とが形成されている。具体的には、本体部3の一方の面側(図2の例では、ロッキングエッジ10のある面側)に凸となる円錐台形のディンプル11が形成されている。そして、このディンプル11とは反対側の面に、隣接するエレメントEにおけるディンプル11を緩く嵌合(遊嵌)させる有底円筒状のホール12が形成されている。
したがって、ベルト直線状態でこれらのディンプル11とホール12とが嵌合することによって、その状態におけるエレメントE同士の図1での左右方向および上下方向の相対位置を決めることができ、例えばベルト式無段変速機が運転される場合に、伝動ベルトVのがたつきを防止して伝動ベルトVを安定して走行させることができる。
上記に示すこの発明の伝動ベルトVのような、2列に分割されたリングRを並列させて収容する凹部7が設けられたエレメントEと2列のリングRとを組み付けて構成されるベルトにおいては、例えば前述の図12に示した従来構成のベルトのように、2列のリングr1,r2を互いに重ね合わせた状態にしてエレメントeの開口凹部に嵌め込む場合、それら2列のリングr1,r2の互いに重ね合わせられた部分のエッジ部同士で干渉が生じ、ベルトの組み付け性が低下してしまう場合があった。
また、図13に示すように、上記のようにして2列のリングr1,r2とエレメントeとを組み付ける際に、エッジ部同士の干渉が生じる(図13の(a)に示す状態)場合の各リングr1,r2の幅寸法l1に対して、それら各リングr1,r2の幅を短縮して幅寸法l1よりも短い幅寸法l2にすることにより、後からエレメントeの開口凹部にリングr2を嵌め込む際に、上記のようなエッジ部同士の干渉を回避することができる(図13の(b)に示す状態)。しかしながら、その場合は、各リングr1,r2の幅を短縮することによりリングr1,r2の断面積が減少し、その結果リングr1,r2の強度が低下することになる。したがって、各リングr1,r2の幅を短縮することには限界があり、上記のような構成の従来のベルトにおいては、ベルトの強度あるいは動力伝達容量を低下させずに組み付け性を向上させることが困難であった。
そこで、この発明による多数のエレメントEと2列に分割されているリングRとから構成される伝動ベルトVは、伝動ベルトVの強度や動力伝達容量を低下させることなくその組み付け性を向上させるために、リングRが互いに周長が等しくかつ形状が異なる2種類の分割リング13,14によって構成されている。すなわち、リングRは、例えば金属製の環状の帯状体を径方向に複数枚積層させて形成したいわゆる積層リングであって、凹部7の内部で2列に並列させられる2種類の第1分割リング13と第2分割リング14とによって構成されている。
各分割リング13,14は、互いに材質、強度、および周長(具体的には最内周面の周長)が等しい金属製の積層リングにより形成されている。また、リングRの幅寸法(図1のx軸方向の寸法)L1、すなわち各分割リング13,14が並列した状態での合計の幅寸法L1が、エレメントEの凹部7の開口幅W1よりも長く、開口幅W2よりも短い範囲内の値となるように各部の形状・寸法が設定されて形成されている。
具体的には、図3に示すように、各分割リング13,14は、リングRの周長方向に直角な平面による断面の形状がそれぞれ異なっている。すなわち、第1分割リング13は、最外周面13aにおける幅寸法L2が、リングRの幅寸法L1の半分(すなわち、L1/2)よりも短くなっていて、最内周面13bにおける幅寸法L3が、リングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも長く、すなわち幅寸法L2よりも長くなっている。したがって、第1分割リング13は、厚さ方向(図3のy方向)における内周側(図3の下側)よりも外周側(図3の上側)の方が幅が狭くなっている。
そして、それら最外周面13aの幅寸法L2および最内周面13bの幅寸法L3はいずれも第1分割リング13の側面13c(図3の左側の端面)を起点としている。言い換えると、最外周面13aおよび最内周面13bがいずれも側面13cに対して直角に接続するように形成されている。したがって、第1分割リング13が第2分割リング14と並列する際に第2分割リング14と対向する対向面13dは、最外周面13aから最内周面13bへ向かうにつれて幅が広くなる勾配面となっている。
一方、第2分割リング14は、最外周面14aにおける幅寸法L4が、リングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも長くなっていて、最内周面14bにおける幅寸法L5が、リングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも短く、すなわち幅寸法L4よりも短くなっている。したがって、第2分割リング14は、厚さ方向(図3のy方向)における内周側(図3の下側)よりも外周側(図3の上側)の方が幅が広くなっている。
そして、それら最外周面14aの幅寸法L4および最内周面14bの幅寸法L5はいずれも第2分割リング14の側面14c(図3の右側の端面)を起点としている。言い換えると、最外周面14aおよび最内周面14bがいずれも側面14cに対して直角に接続するように形成されている。したがって、第2分割リング14が第1分割リング13と並列する際に第1分割リング13と対向する対向面14dは、最外周面14aから最内周面14bへ向かうにつれて幅が短くなる勾配面となっている。
各分割リング13,14は、その厚さ、すなわち最外周面13a,14aと最内周面13b,14bとの間の距離が、いずれも厚さT1で等しくなるように形成されている。また、第1分割リング13の最外周面13aにおける幅寸法L2と第2分割リング14の最内周面14bにおける幅寸法L5とが等しくなるように形成され、同様に第1分割リング13の最内周面13bにおける幅寸法L3と第2分割リング14の最外周面14aにおける幅寸法L4とが等しくなるように形成されている。
そして、第1分割リング13の最外周面13aにおける幅寸法L2と第2分割リング14の最外周面14aにおける幅寸法L4との和、および第1分割リング13の最内周面13bにおける幅寸法L3と第2分割リング14の最内周面14bにおける幅寸法L5との和が、いずれもリングRの幅寸法L1となるように形成されている。
したがって、各分割リング13,14の各対向面13d,14dの勾配は、リングRの最内周面(すなわち各最内周面13b,14b)に対してその方向が逆向きで大きさが等しくなっている。そのため、それら各対向面13d,14dを当接させて第1分割リング13と第2分割リング14とを並列させることにより、幅寸法がL1で厚さがT1である矩形断面のリングRが構成される。
このように各分割リング13,14の各対向面13d,14dに、それぞれ角度の大きさが同じで互いに逆方向の勾配を持たせて、各分割リング13,14の形状をそれぞれ異ならせることにより、前述の図12に示したような従来の構成による互いに断面が矩形で形状・寸法が等しい2本の分割リングr1,r2を互いに重ね合わせる場合と比較して、リングRすなわち2列の分割リング13,14とエレメントEとを容易に組み付けることができる。
すなわち、上記のようにして第1分割リング13の最外周面13a側の幅を短くし、かつ第2分割リング14の最内周面14b側の幅を短くすることにより、図4に示すように、各分割リング13,14を容易に互いに重ね合わせた状態にすることができる(図4の(a))。具体的には、第1分割リング13の外周側に第2分割リング14を重ね合わせる場合、第2分割リング14を、第1分割リング13の厚さT1全体に重ねなくとも、第1分割リング13の対向面13d上に第2分割リング14を重ねることにより、それら各分割リング13,14を互いに重ね合わせた状態にして、リングRの幅をエレメントEの開口幅W1よりも狭くした状態を実現することができる。
そして、その互いに重ね合わせられた状態から外周側に重ねられた第2分割リング14を凹部7の抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込む際に、各対向面13d,14dと最外周面13a,最内周面14bとから形成されるエッジ部同士の干渉を回避もしくは抑制することができる(図4の(b))。
また、上記のように各分割リング13,14が形成されることにより、エレメントEの凹部7への2列の分割リング13,14の挿入が容易になる分、各分割リング13,14の幅を増大することができる。すなわち、各分割リング13,14が互いに重ね合わせられた状態にされてエレメントEの凹部7に嵌め込まれる際に、各分割リング13,14のエッジ部同士の干渉が回避されて、凹部7の抜け止め部9の内周側の部分へ第2分割リング14を嵌め込む際の余裕が増える分だけ、各分割リング13,14の幅を増大できる。そのため、例えば前述の図12に示したような従来の構成によるリングr1,r2と比較して、リングRの幅を延長すること、すなわちリングRの断面積を増大することができる。その結果、リングRの強度あるいは耐久性を向上させることができ、ひいては伝動ベルトVの耐久性や動力伝達容量を向上させることができる。
なお、前述したように、各分割リング13,14は、いずれもいわゆる積層リングであって、無端環状の帯状体(単リング)が径方向に複数枚積層させられて形成されている。したがって、図5に示すように、例えば第1分割リング13が、その最外周側から順に、リング幅が幅寸法La(すなわち幅寸法L2,L5)の単リング15a、リング幅が幅寸法Lbの単リング15b、リング幅が幅寸法Lcの単リング15c、リング幅が幅寸法Ldの単リング15d、リング幅が幅寸法Leの単リング15e、リング幅が幅寸法Lf(すなわち幅寸法L3,L4)の単リング15fの6層の単リングをそれぞれ径方向に積層させて形成する場合、第2分割リング14は、その最外周側から順に、リング幅が幅寸法Lf(すなわち幅寸法L3,L4)の単リング16a、リング幅が幅寸法Leの単リング16b、リング幅が幅寸法Ldの単リング16c、リング幅が幅寸法Lcの単リング16d、リング幅が幅寸法Lbの単リング16e、リング幅が幅寸法La(すなわち幅寸法L2,L5)の単リング16fの6層の単リングをそれぞれ径方向に積層させて形成すればよい。そうすることにより、各分割リング13,14を形成するために使用される単リングの種類を可及的に少なくすることができ、各分割リング13,14を効率良く生産することができる。
(組み付け例)
つぎに、この第1実施例における伝動ベルトVの組み付け例を、図面に基づいて説明する。この発明による伝動ベルトVを組み付ける場合、先ず、図6に示すように、並列された各分割リング13,14の周長方向における所定の部分を、互いに重ね合わせてリングRの重ね合わせ状態を設定する。重ね合わせ状態を設定することにより、リングRでは、重ね合わせ状態(図6のA部で示す状態)と並列状態(図6のB部で示す状態)とが同時に設定される。リングRの重ね合わせ状態の部分では、リングRの幅がエレメントEの開口幅W1よりも狭くなるため、この重ね合わせ状態の部分から、1枚もしくは予め配列された所定枚数のエレメントEの凹部7に、リングRが嵌め込まれる。
続いて、凹部7にリングRの重ね合わせ状態の部分が嵌め込まれた1枚もしくは複数枚のエレメントEが、リングRの周長方向に、リングRの並列状態の部分まで移動させられる。リングRの並列状態の部分では、リングRの幅L1が、エレメントEの開口幅W2よりも狭く、かつエレメントEの開口幅W1よりも広くなるため、凹部7にリングRが嵌め込まれたエレメントEがリングRの並列状態の部分まで移動させられると、その並列状態の部分では、リングRが凹部7の両抜け止め部8,9により係止されて凹部7に係合される。すなわち、エレメントEとリングRとが組み付けられる。
そして、上記のような、所定枚数のエレメントEの凹部7に、リングRの重ね合わせ状態の部分を嵌め込み、その所定枚数のエレメントEをリングRの並列状態の部分まで移動させる作業が順次繰り返される。
上記のようなエレメントEとリングRとの組み付け作業において、それらエレメントEとリングRとの組み付け初期段階では、各分割リング13,14をそれぞれ自由に動作させることができ、比較的容易にリングRの重ね合わせ状態を設定することができる。これに対して、リングRと比較的多数のエレメントEとが組み付けられた段階、すなわち組み付け最終段階では、ディンプル11とホール12とが嵌合されて連結された各エレメントEの列により各分割リング13,14の動作が規制され、言い換えると、エレメントEをローリングさせることが次第に困難になり、その結果、リングRの重ね合わせ状態を設定することが次第に困難になってくる。
例えば、前述の図12に示した従来の構成のように、2列の分割リングが互いに断面が矩形で形状・寸法が等しい2本の分割リングr1,r2である場合は、上記のような組み付け最終段階では、各分割リングを互いに重ね合わせ状態に設定することが難しくなるとともに、各分割リングr1,r2の互いに重ね合わせられた部分のエッジ部同士で干渉が生じ、ベルトの組み付け性が低下してしまう場合があった。
そこで、この発明による伝動ベルトVの組み付け方法では、エレメントEに組み付けるリングRとして、図3に示すような、重ね合わせ状態を設定する際に重ね合わせられる部分のエッジ部同士の干渉が回避できるように形成された2種類の分割リング13,14、すなわち第1分割リング13と第2分割リング14とから構成されたリングRを用いることにより、エレメントEとリングRとを容易に、かつ確実に組み付けることができるようになっている。
具体的には、図4に示すように、先ず、上述したリングRを重ね合わせ状態にする場合には、第1分割リング13の外周側に第2分割リング14が重ね合わせられる。すなわち、第1分割リング13の対向面13dの最外周面13a側の部分と、第2分割リング14の対向面14dの最内周面14b側の部分とが互いに当接するように、第1分割リング13と第2分割リング14とが重ね合わせられる。
この場合、各分割リング13,14が、前述したように、第1分割リング13がその内周側よりも外周側の方が幅が狭くなるように形成され、反対に第2分割リング14がその外周側よりも内周側の方が幅が狭くなるように形成されているため、前述の図12に示した従来の構成の分割リングr1,r2を重ね合わせ状態にする場合と比較して、それら各分割リング13,14を容易に重ね合わせ状態にすることができる。したがって、各分割リング13,14を互いに重ね合わせるためにエレメントEをローリングさせる場合のローリング量(すなわちローリングさせる角度)も、前述の図12に示した従来の構成と比較して少なくて済む。
そして、その重ね合わせ状態にされた各分割リング13,14のうち、初めに、重ね合わせ状態で内周側に位置している第1分割リング13の対向面13dと反対側の側面13c側の端部が、エレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側の部分に嵌め込まれる(図4の(a))。そしてその後、重ね合わせ状態で外周側に位置している第2分割リング14の対向面14dと反対側の側面14c側の端部が、エレメントEの凹部7における抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込まれる(図4の(b))。
この場合においても、第1分割リング13がその内周側よりも外周側の方が幅が狭くなるように形成され、反対に第2分割リング14がその外周側よりも内周側の方が幅が狭くなるように形成されていることから、第2分割リング14をエレメントEの凹部7における抜け止め部9側へ摺動させて、第2分割リング14の側面14c側の端部を抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込む際に、重ね合わせられた部分のエッジ部で干渉が生じて第2分割リング14を抜け止め部9の内周側部分へ挿入する際の障害となったり、あるいはエッジ部が干渉する相手側に損傷を与えたりしてしまう事態を回避することができる。
このようにして、最後のエレメントEとリングRとが組み付けられること、すなわち所望する全てのエレメントEとリングRとが組み付けられることにより、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
以上のように、この発明の第1実施例による伝動ベルトVおよびその組み付け方法によれば、互いに周長が等しくかつ形状が異なっている2本の分割リング13,14、具体的には、外周側ほど幅が狭くなるように形成されている第1分割リング13と、それとは反対に内周側ほど幅が狭くなるように形成されている第2分割リング14との2本の分割リング13,14が、エレメントEに組み付けられるリングRとして使用される。そして、それら形状が異なる2本の分割リング13,14をエレメントEの凹部7に嵌め込んで組み付ける場合に、その組み付けが容易になるように、2本の分割リング13,14が順序立ててエレメントEの凹部7における両抜け止め部8,9の内周側に嵌め込まれる。すなわち、先ず、第1分割リング13がエレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側に嵌め込まれ、その後、第2分割リング14がエレメントEの凹部7における抜け止め部9の内周側に嵌め込まれる。
そのため、2列の分割リング13,14を互いに重ね合わせた状態にした際に内周側に位置する第1分割リング13の最外周面13aと対向面13dとが接続するエッジ部と、互いに重ね合わせた状態にした際に外周側に位置する第2分割リング14の最内周面14bと対向面14dとが接続するエッジ部分との干渉を回避もしくは抑制することができる。その結果、2列の分割リング13,14からなるリングRとエレメントEとを容易にかつ確実に組み付けることができ、伝動ベルトVの組み付け性を向上させることができる。
(第2実施例)
つぎに、この発明の第2実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図7,図8に基づいて説明する。上記の第1実施例が、エレメントEに組み付けられる2列に分割されたリングRが、一方の分割リングと対向する対向面が外周側ほどリング幅が狭くなる勾配面として形成された第1分割リング13と、他方の分割リングと対向する対向面が外周側ほどリング幅が広くなる勾配面として形成された第2分割リング14とによって構成された例を示しているのに対して、この第2実施例では、相対的に幅が狭い外周側のリングとその外周側のリングよりも幅が広い内周側のリングとから形成された第1分割リングと、相対的に幅が広い外周側のリングとその外周側のリングよりも幅が狭い内周側のリングとから形成された第2分割リングとによってリングRが構成された例を示してある。したがって、これら2種類の分割リングに関連する部分以外の、前述の図1ないし図5に示す第1実施例と同じ構成の部分については、図7,図8に、図1ないし図5と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図7において、この第2実施例における伝動ベルトVは、エレメントEと、第1分割リング21および第2分割リング22からなるリングRとにより構成されている。リングRを構成する各分割リング21,22は、互いに材質、強度、および周長(具体的には最内周面の周長)が等しい金属製の積層リングにより形成されている。また、リングRの幅寸法L1、すなわち各分割リング21,22が並列した状態での合計の幅寸法L1が、エレメントEの凹部7の開口幅W1よりも長く、開口幅W2よりも短い範囲内の値となるように各部の形状・寸法が設定されて形成されている。
各分割リング21,22は、図8に示すように、リングRの周長方向に直角な平面による断面の形状がそれぞれ異なっている。すなわち、第1分割リング21は、相対的に幅が狭い第1外層リング21aと、その第1外層リング21aよりも幅が広い第1内層リング21bとによる2段構造になっている。一方、第2分割リング22は、相対的に幅が広い第2外層リング22aと、その第2外層リング22aよりも幅が狭い第2内層リング22bとによる2段構造になっている。
具体的には、第1外層リング21aは、それ自体が積層リングであって、厚さがリングRの厚さT1よりも薄い厚さT3で、幅がリングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも狭い幅寸法L6である矩形断面となるように形成されている。一方、第1内層リング21bは、それ自体が積層リングであって、厚さがリングRの厚さT1よりも薄い厚さT4で、幅がリングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも広い幅寸法L7である矩形断面となるように形成されている。
そして、それら第1外層リング21aおよび第1内層リング21bの一方(図8の左側)の側面21c,21d同士が同一平面上に位置するように、第1内層リング21bの外周側に第1外層リング21aが積層されて第1分割リング21が形成されている。したがって、上記の各側面21c,21dにより第1分割リング21の一方(図8の左側)の側面21eが形成されている。また第1分割リング21の他方(図8の右側)の側面であって、各分割リング21,22が並列する際に第2分割リング22と対向する対向面21fが、内周側から外周側へ向かって上る2段の階段状に形成されている。
一方、第2外層リング22aは、それ自体が積層リングであって、厚さがリングRの厚さT1よりも薄い厚さT3で、幅がリングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも広い幅寸法L8である矩形断面となるように形成されている。また、第2内層リング22bは、それ自体が積層リングであって、厚さがリングRの厚さT1よりも薄い厚さT4で、幅がリングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも狭い幅寸法L9である矩形断面となるように形成されている。
そして、それら第2外層リング22aおよび第2内層リング22bの一方(図8の右側)の側面22c,22d同士が同一平面上に位置するように、第2内層リング22bの外周側に第2外層リング22aが積層されて第2分割リング22が形成されている。したがって、上記の各側面22c,22dにより第2分割リング22の一方(図8の右側)の側面22eが形成されている。また第2分割リング22の他方(図8の左側)の側面であって、各分割リング21,22が並列する際に第1分割リング21と対向する対向面22fが、内周側から外周側へ向かって降りる2段の階段状に形成されている。
各分割リング21,22は、その厚さがいずれも厚さT1(すなわち、T3+T4)で等しくなっていて、また、第1外層リング21aの幅寸法L6と第2内層リング22bの幅寸法L9とが等しくなるように形成され、同様に第1外層リング21bの幅寸法L7と第2外層リング22aの幅寸法L8とが等しくなるように形成されている。そして、第1外層リング21aの幅寸法L6と第2外層リング22aの幅寸法L8との和、および第1内層リング21bの幅寸法L7と第2内層リング22bの幅寸法L9との和が、いずれもリングRの幅寸法L1となるように形成されている。
したがって、各分割リング21,22の各対向面21f,22fの凹凸形状は、各分割リング21,22が並列する状態で互いに点対称となっていて、第1分割リング21と第2分割リング22とを並列させる際に、それらの各対向面21f,22fが互いに嵌り合って当接する形状となっている。そのため、第1分割リング21と第2分割リング22とを並列させることにより、幅寸法がL1で厚さがT1である矩形断面のリングRが構成される。
このように各分割リング21,22が、それぞれ、各外層リング21a,22aと各内層リング21b,22bとによる2段構造となっていて、それらの各対向面21f,22fが、互いに嵌り合うことが可能な2段の階段状に形成されていることにより、前述の図12に示したような従来の構成による互いに断面が矩形で形状・寸法が等しい2本の分割リングr1,r2を互いに重ね合わせる場合と比較して、リングRすなわち2列の分割リング21,22とエレメントEとを容易に組み付けることができる。
すなわち、上記のようにして2段構造の第1分割リング21の上段側(すなわち外周側)の幅を短くし、かつ第2分割リング22の下段側(すなわち内周側)の幅を短くすることにより、各分割リング21,22を容易に互いに重ね合わせた状態にすることができる。具体的には、第1分割リング21の外周側に第2分割リング22を重ね合わせる場合、第2分割リング22を、第1分割リング21の厚さT1全体に重ねなくとも、第1分割リング21の第1内層リング21bの厚さT4分だけ重ねることにより、それら各分割リング21,22を互いに重ね合わせた状態にして、リングRの幅をエレメントEの開口幅W1よりも狭くした状態を実現することができる。
そして、上記のように各分割リング21,22を互いに重ね合わせた状態にすることが容易になることに伴って、その互いに重ね合わせた状態から外周側に重ねられた第2分割リング22を凹部7の抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込む際に、各対向面21f,22fのエッジ部同士、具体的には、対向面21fにおける第1外層リング21aの外周側のエッジ部と、対向面22fにおける第2内層リング22bの内周側のエッジ部との干渉を回避もしくは抑制することができる。
また、上記のように各分割リング21,22が形成されることにより、エレメントEの凹部7への2列の分割リング21,22の挿入が容易になる分、各分割リング21,22の幅を増大することができる。すなわち、各分割リング21,22が互いに重ね合わせられた状態にされてエレメントEの凹部7に嵌め込まれる際に、各分割リング21,22のエッジ部同士の干渉が回避されて、凹部7の抜け止め部9の内周側の部分へ第2分割リング22を嵌め込む際の余裕が増える分だけ、各分割リング21,22の幅を増大できる。そのため、例えば前述の図12に示したような従来の構成によるリングr1,r2と比較して、リングRの幅を延長すること、すなわちリングRの断面積を増大することができる。その結果、リングRの強度あるいは耐久性を向上させることができ、ひいては伝動ベルトVの耐久性や動力伝達容量を向上させることができる。
(組み付け例)
つぎに、この第2実施例における伝動ベルトVの組み付け例を説明する。この第2実施例における伝動ベルトVにおいても、前述した第1実施例における伝動ベルトVと同様の方法で組み付けを行うことができる。すなわち、この第2実施例における伝動ベルトVの組み付け方法では、エレメントEに組み付けるリングRとして、重ね合わせ状態を設定する際に重ね合わせられる部分のエッジ部同士の干渉が回避できるように形成された2種類の分割リング21,22、すなわち第1分割リング21と第2分割リング22とから構成されたリングRを用いることにより、エレメントEとリングRとを容易に、かつ確実に組み付けることができるようになっている。
具体的には、先ず、リングRを重ね合わせ状態にする場合には、第1分割リング21の外周側に第2分割リング22が重ね合わせられる。すなわち、第1分割リング21における第1内層リング21bの最外周面の対向面21f側の部分と、第2分割リング22における第2内層リング22bの最内周面の対向面22f側の部分とが互いに当接するように、第1分割リング21と第2分割リング22とが重ね合わせられる。
この場合、前述したように、第2分割リング22を第1分割リング21の厚さT1全体に重ねなくともよいため、すなわち第2分割リング22を第1分割リング21の第1内層リング21bの厚さT4分だけ重ねればよいため、前述の図12に示した従来の構成の分割リングr1,r2を重ね合わせ状態にする場合と比較して、それら各分割リング21,22を容易に重ね合わせ状態にすることができる。したがって、各分割リング21,22を互いに重ね合わせるためにエレメントEをローリングさせる場合のローリング量(すなわちローリングさせる角度)も、前述の図12に示した従来の構成と比較して少なくて済む。
そして、その重ね合わせ状態にされた各分割リング21,22のうち、初めに、重ね合わせ状態で内周側に位置している第1分割リング21の対向面21fと反対側の側面21e側の端部が、エレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側の部分に嵌め込まれる。そしてその後、重ね合わせ状態で外周側に位置している第2分割リング22の対向面22fと反対側の側面22e側の端部が、エレメントEの凹部7における抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込まれる。
この場合においても、第1分割リング21の対向面21fが、その内周側よりも外周側の方が幅が狭くなる階段状に形成され、反対に第2分割リング22の対向面22fが、その外周側よりも内周側の方が幅が狭くなる階段状に形成されていることから、第2分割リング22をエレメントEの凹部7における抜け止め部9側へ摺動させて、第2分割リング22の側面22e側の端部を抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込む際に、重ね合わせられた部分のエッジ部で干渉が生じて第2分割リング22を抜け止め部9の内周側部分へ挿入する際の障害となったり、あるいはエッジ部が干渉する相手側に損傷を与えたりしてしまう事態を回避することができる。
このようにして、最後のエレメントEとリングRとが組み付けられること、すなわち所望する全てのエレメントEとリングRとが組み付けられることにより、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
以上のように、この発明の第2実施例による伝動ベルトVおよびその組み付け方法によれば、2列に分割されるリングRが、内周側に位置して相対的に幅が広い第1内層リング21aと外周側に位置して第1内層リング21bよりも幅が狭い第1外層リング21aとの2段構造となっている第1分割リング21と、それとは反対に、内周側に位置して相対的に幅が狭い第2内層リング22bと外周側に位置して第2内層リング22bよりも幅が広い第2外層リング22aとの2段構造となっている第2分割リング22との2本の分割リング21,22から構成される。
そのため、それら2本の分割リング21,22をエレメントEの凹部7に嵌め込んで組み付ける際に、先に第1分割リング21をエレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側に嵌め込み、後から第2分割リング22をエレメントEの凹部7における抜け止め部9の内周側に嵌め込むことにより、2列の分割リング21,22を互いに重ね合わせた状態にした際に、第1分割リング21の外周面と対向面21fとが接続するエッジ部と、第2分割リング22の内周面と対向面22fとが接続するエッジ部との干渉を回避もしくは抑制することができる。その結果、2列の分割リング21,22からなるリングRとエレメントEとを容易にかつ確実に組み付けることができ、伝動ベルトVの組み付け性を向上させることができる。
(第3実施例)
つぎに、この発明の第3実施例における伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図9ないし図11に基づいて説明する。上記の第1,第2実施例が、エレメントEに組み付けられる2列に分割されたリングRが、それぞれ、厚さ方向における外周側が内周側よりも幅が狭くなるように形成された第1分割リングと、厚さ方向における内周側が外周側よりも幅が狭くなるように形成された第2分割リングとによって構成された例を示しているのに対して、この第3実施例では、相対的に幅が狭い幅狭分割リングと、その幅狭分割リングよりも幅が広い幅広分割リングとによってリングRが構成された例を示してある。したがって、これら2種類の分割リングに関連する部分以外の、前述の図1ないし図5,図7,図8に示す第1,第2実施例と同じ構成の部分については、図9ないし図11に、図1ないし図5,図7,図8と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図9において、この第2実施例における伝動ベルトVは、エレメントEと、幅狭分割リング31および幅広分割リング32からなるリングRとにより構成されている。このうちリングRを構成する各分割リング31,32は、互いに材質、強度、および周長(具体的には最内周面の周長)が等しい金属製の積層リングにより形成されている。また、リングRの幅寸法L1、すなわち各分割リング31,32が並列した状態での合計の幅寸法L1が、エレメントEの凹部7の開口幅W1よりも長く、開口幅W2よりも短い範囲内の値となるように各部の形状・寸法が設定されて形成されている。
各分割リング31,32は、互いに材質、強度、および周長(具体的には最内周面の周長)が等しい金属製の積層リングにより形成されている。また、リングRの幅寸法L1、すなわち各分割リング31,32が並列した状態での合計の幅寸法L1が、エレメントEの凹部7の開口幅W1よりも長く、開口幅W2よりも短い範囲内の値となるように各部の形状・寸法が設定されて形成されている。
具体的には、図10に示すように、各分割リング31,32は、リングRの周長方向に直角な平面による断面の形状がそれぞれ異なっている。すなわち、幅狭分割リング31は、厚さが厚さT1で、幅が相対的に狭い、具体的にはリングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも狭い幅寸法L10である矩形断面となるように形成されている。一方、幅広分割リング32は、厚さが厚さT1で、幅が相対的に広い、具体的にはリングRの幅寸法L1の半分(L1/2)よりも広い幅寸法L11である矩形断面となるように形成されている。
そして、幅狭分割リング31の幅寸法L10と幅広分割リング32の幅寸法L11との和が、リングRの幅寸法L1となるように形成されている。したがって、各分割リング31,32の各対向面31d,32dを当接させて幅狭分割リング31と幅広分割リング32とを並列させることにより、幅寸法がL1で厚さがT1である矩形断面のリングRが構成される。
ここで、幅広分割リング32の幅寸法L11が幅狭分割リング31の幅寸法L10の少なくとも1.5倍以上となるように、好ましくは、幅狭分割リング31の幅寸法L10がエレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側の係合部分の長さ(すなわち(W1−W2)/2)よりも長く、かつ幅広分割リング32の幅寸法L11が幅狭分割リング31の幅寸法L10の1.8倍から2.5倍程度の範囲内の長さとなるように、各幅寸法L10,L11が設定されて各分割リング31,32がそれぞれ形成されている。
このように各分割リング31,32の幅に適切な差を設けて、各分割リング31,32の形状をそれぞれ異ならせることにより、前述の図12に示したような従来の構成による互いに断面が矩形で形状・寸法が等しい2本の分割リングr1,r2を互いに重ね合わせる場合と比較して、リングRすなわち2列の分割リング31,32とエレメントEとを容易に組み付けることができる。
すなわち、上記のようにして幅狭分割リング31の幅を短くすることにより、図11に示すように、各分割リング31,32がエレメントEの凹部7の内部に挿入された状態で、各分割リング31,32を容易に互いに重ね合わせた状態にすることができる(図11の(a))。そして、その互いに重ね合わせた状態から外周側に重ねられた幅広分割リング32を凹部7の抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込む際に、幅狭分割リング31の対向面31dと最外周面31aとが接続するエッジ部と、幅広分割リング32の対向面32dと最内周面32bとが接続するエッジ部との干渉を回避もしくは抑制することができる(図11の(b))。
また、上記のように各分割リング31,32が互いの幅寸法L10,L11に差が設けられて形成されることにより、エレメントEの凹部7への2列の分割リング31,32の挿入が容易になる分、各分割リング31,32の幅を増大することができる。すなわち、各分割リング31,32が互いに重ね合わせられた状態にされてエレメントEの凹部7に嵌め込まれる際に、各分割リング31,32のエッジ部同士の干渉が回避されて、凹部7の抜け止め部9の内周側の部分へ幅広分割リング32を嵌め込む際の余裕が増える分だけ、各分割リング31,32の幅を増大できる。そのため、例えば前述の図12に示したような従来の構成によるリングr1,r2と比較して、リングRの幅を延長すること、すなわちリングRの断面積を増大することができる。その結果、リングRの強度あるいは耐久性を向上させることができ、ひいては伝動ベルトVの耐久性や動力伝達容量を向上させることができる。
(組み付け例)
つぎに、この第3実施例における伝動ベルトVの組み付け例を説明する。この第3実施例における伝動ベルトVにおいても、前述した第1,第2実施例における伝動ベルトVと同様の方法で組み付けを行うことができる。すなわち、この第3実施例における伝動ベルトVの組み付け方法では、エレメントEに組み付けるリングRとして、互いの幅寸法L10,L11に差が設けられて形成された2種類の分割リング31,32、すなわち幅狭分割リング31と幅広分割リング32とから構成されたリングRを用いることにより、エレメントEとリングRとを容易に、かつ確実に組み付けることができるようになっている。
具体的には、先ず、リングRを重ね合わせ状態にする場合には、幅狭分割リング31の外周側に幅広分割リング22が重ね合わせられる。すなわち、幅狭分割リング31の最外周面31aの対向面31d側の部分と、幅広分割リング32の最内周面32bの対向面32d側の部分とが互いに当接するように、幅狭分割リング31と幅広分割リング32とが重ね合わせられる。
この場合、各分割リング31,32が、前述したように、幅狭分割リング31が相対的に幅が狭くなるように形成されているため、前述の図12に示した従来の構成の分割リングr1,r2を重ね合わせ状態にする場合と比較して、それら各分割リング31,32を、各分割リング31,32がエレメントEの凹部7の内部に挿入された状態で容易に重ね合わせ状態にすることができる。したがって、各分割リング31,32を互いに重ね合わせるためにエレメントEをローリングさせる場合のローリング量(すなわちローリングさせる角度)も、前述の図12に示した従来の構成と比較して少なくて済む。
そして、その重ね合わせ状態にされた各分割リング31,32のうち、初めに、重ね合わせ状態で内周側に位置している幅狭分割リング31の対向面31dと反対側の側面31c側の端部が、エレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側の部分に嵌め込まれる(図11の(a))。そしてその後、重ね合わせ状態で外周側に位置している幅広分割リング32の対向面32dと反対側の側面32c側の端部が、エレメントEの凹部7における抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込まれる(図11の(b))。
この場合においても、幅狭分割リング31が相対的に幅が狭くなるように形成されていることから、幅広分割リング32をエレメントEの凹部7における抜け止め部9側へ摺動させて、幅広分割リング32の側面32c側の端部を抜け止め部9の内周側の部分に嵌め込む際に、重ね合わせられた部分のエッジ部で干渉が生じて幅広分割リング32を抜け止め部9の内周側部分へ挿入する際の障害となったり、あるいはエッジ部が干渉する相手側に損傷を与えたりしてしまう事態を回避することができる。
このようにして、最後のエレメントEとリングRとが組み付けられること、すなわち所望する全てのエレメントEとリングRとが組み付けられることにより、伝動ベルトVの組み付けが完了する。
以上のように、この発明の第3実施例による伝動ベルトVおよびその組み付け方法によれば、2列に分割されるリングRが、共に周長が等しくかつ断面が矩形であって、相対的に幅が狭い幅狭分割リング31と、その幅狭分割リング31よりも幅が広い幅広分割リング32との2本の分割リング31,32から構成される。したがって、それら2本の分割リング31,32をエレメントEの凹部7に嵌め込んで組み付ける際に、先に幅狭分割リング31をエレメントEの凹部7における抜け止め部8の内周側に嵌め込み、後から幅広分割リング32をエレメントEの凹部7における抜け止め部9の内周側に嵌め込むことにより、凹部7の抜け止め部9の内周側の空間により深く幅広分割リング32を挿入することができる。
したがって、後から嵌め込む幅広分割リング32をよりエレメントEに近づけた状態で、言い換えると、幅広分割リング32の幅方向とエレメントEの幅方向とのなす角度がより小さくなる状態で、幅広分割リング32を凹部7の抜け止め部9の内周側に嵌め込むことができる。そのため、各分割リング31,32を互いに重ね合わせた状態にしなくとも、もしくは僅かに重ね合わせるだけで、凹部7の両抜け止め部8,9の内周側に各分割リング31,32を嵌め込むことができ、各分割リング31,32の対向するエッジ部分同士の干渉を回避もしくは抑制することができる。その結果、2列の分割リング31,32からなるリングRとエレメントEとを容易にかつ確実に組み付けることができ、伝動ベルトVの組み付け性を向上させることができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されない。すなわち、第1実施例および第2実施例では、それぞれ、第1分割リング13,21の断面形状と第2分割リング14,22の断面形状とが点対称となっている、言い換えると、第1分割リング13,21の断面積と第2分割リング14,22の断面積とが等しくなっている例を示しているが、それら各第1分割リング13,21と各第2分割リング14,22とは、それぞれ、それらの断面形状が点対称でなくとも、あるいはそれらの断面積が等しくなくともよい。例えば、第3実施例で示した、互いの幅寸法(あるいは断面積)に差が設けられた幅狭分割リング31および幅広分割リング32において、それらが並列する際に互いに対向する各対向面31d,32dを、第1の各分割リング13,14における各対向面13d,14d、あるいは第2実施例の各分割リング21,22における各対向面21f,22fのように形成することも可能である。
また、この発明の伝動ベルトがベルト式無段変速機に使用されている例を示しているが、この発明の伝動ベルトは、ベルト式無段変速機に限らず、ベルトとプーリとによって構成される他の巻き掛け伝動装置の伝動ベルトにも適用することができる。
E…エレメント、 R…リング、 V…伝動ベルト、 3…本体部(基体部)、 4…プーリ、 5a,6a…内側面、 7…凹部、 8,9…抜け止め部、 10…ロッキングエッジ、 13,21…第1分割リング、 14,22…第2分割リング、 21a…第1外層リング、 21b…第1内層リング、 22a…第2外層リング、 22b…第2内層リング、 31…幅狭分割リング、 32…幅広分割リング。