JP4840347B2 - ベルト用エレメントおよび伝動ベルト - Google Patents

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Description

この発明は、無端環状のリングに組み付けて環状に結束されることによりベルトを構成するベルト用エレメントおよびそのエレメントを用いた伝動ベルトに関するものである。
一般に、複数の回転部材同士の間で動力の伝達を行う場合に用いる変速機として、変速比を段階的に変化させることができる有段変速機と、変速比を連続してすなわち無段階に変化させることができる無段変速機とがあり、後者の無段変速機としてはベルト式無段変速機およびトロイダル式無段変速機などが知られている。このうち、ベルト式無段変速機は、駆動側プーリおよび従動側プーリの2組のプーリと、それらのプーリに巻き掛けられる伝動ベルトとを使用して変速比を無段階に変化させる変速機である。そのようなベルト式無段変速機に用いられる伝動ベルトとして、例えば、エレメントあるいはブロックなどと称される多数の板片をその板厚方向に互いに重ね合わせて環状に配列するとともに、それらの板片をリングあるいはバンドあるいはキャリアなどと称される環状の帯状体で環状に結束することにより、無端環状に形成されたベルトが知られている。
そのようなベルトが、駆動側および従動側の2組のプーリに巻き掛けられた状態で駆動側プーリが駆動されると、エレメントには、エレメントと駆動側プーリとの接触部分の摩擦力、および、駆動側プーリのトルクに応じて駆動側プーリからエレメントに対して加えられるエレメントの積層方向、すなわちエレメントの厚さ方向の圧縮力が作用する。そして、駆動側プーリに接触しているエレメントに伝達された圧縮力は、プーリに巻き掛けられていないエレメントを経由して、従動側プーリに接触しているエレメントに伝達される。この従動側プーリに接触しているエレメントに圧縮力が伝達されると、そのエレメントと従動側プーリとの接触部分の摩擦力、および伝達された圧縮力に応じて従動側プーリを回転させようとするトルクが発生する。このようにして、駆動側プーリと従動側プーリとの間で、ベルトを介して動力伝達が行われる。
上記のようなベルトの一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている高負荷伝動ベルトは、センターベルトと耐側圧を補強するブロックとからなる伝動ベルトであって、具体的には、上端に係止部を有している2本のベルト側部およびそれらを下端で連結する連結部材により形成されたブロック(エレメント)と、そのエレメントの両係止部の間に開口している嵌合溝(エレメントの開口凹部)に両係止部によってエレメントから外れないように嵌め込まれている2本の無端キャリア(リング)とによって構成されている。そして、エレメントの2本のベルト側部の前後面には、それぞれ凸部と凹部とが設けられていて、前後のエレメント同士の間でそれら凸部と凹部とが嵌り合うことにより、エレメントがベルト走行中でも整列するようになっている。
特開2000−249195号公報
上記の特許文献1に記載されている伝動ベルトのエレメントは、その両端のベルト側部にリングとエレメントとを係止する係止部が形成されていて、両ベルト側部上方の平面部分に、隣接するエレメント同士で互いに嵌合する嵌合用の凹凸部が形成されている。すなわちこの嵌合用の凹凸部は、エレメントの両側に左右対称に2箇所設けられている。そして、両ベルト側部の間に形成された開口凹部に2列のリングを嵌め込み、係止部で係止されるように組み付けることにより、伝動ベルトを構成するようになっている。
このようなリングを収容する開口凹部が形成されたエレメントと2列のリングとを組み付けて伝動ベルトを構成する場合、あるいはリングに組み付けられたエレメントをリングから外す場合には、2列に並列されていたリングの一部を互いに重ね合わせた状態を実現させる必要がある。すなわち2列のリングに対してエレメントを組み付けたり、外したりする場合には、2列のリングにねじりを加えて互いに重ね合わせることにより、2列のリングの幅をエレメントの両係止部間の開口幅よりも狭い状態にする必要がある。
2列のリングにねじりを加えて互いに重ね合わせた状態にするためには、既にリングに組み付けられて互いに隣接しているエレメント同士を、それぞれの対向面内で相対回転、すなわちローリングさせる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載されている伝動ベルトを構成するエレメントは、隣接するエレメント同士で互いに嵌合する凹凸部がその左右両側に2箇所設けられているため、それらエレメント同士のローリング方向の動作が規制されてしまう。その結果、2列のリングを互いに重なり合わせた状態にすることが困難になり、伝動ベルトを組み付けることができなくなる可能性がある。
また、既にリングに組み付けられているエレメントの列をローリングさせ、2列のリングを互いに重なり合わせた状態にすることができた場合であっても、エレメントとリングとの組み付け完了直前の段階、すなわち最後の1枚もしくは数枚のエレメントをリングに組み付ける組み付けの最終段階では、互いに隣接するエレメントの列の間に最後の1枚のエレメントを挿入するための十分な隙間を設けることができず、その結果、全てのエレメントをリングに組み付けることが困難になる場合がある。
すなわち、エレメントとリングとの組み付けの最終段階では、エレメントとリングとを組み付けるために、上記のようにエレメントをローリングさせるとともに、図9に示すように、2列のリングr1,r2を部分的に内周側に湾曲させた状態にする必要がある。その場合、その内周側に湾曲させられる部分pに組み付けられているエレメントの列では、図10に示すように、隣接するエレメントe同士の頭部hが互いに当接し、その当接部分を基点側としてエレメントeの列が扇形状に拡がった状態になる。その結果、エレメントの列の周長方向における実質的な長さが長くなり、その分だけエレメント列の間に最後の1枚のエレメントを挿入するための隙間を設ける余裕が少なくなってしまう。
このように、リングを収容する開口凹部が形成されたエレメントであって、そのエレメントとリングとを組み付けることにより伝動ベルトを構成する従来のベルト用エレメントでは、リングとの組み付けを容易にして、伝動ベルトを構成する際の組み付け性を向上させるためには、未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、リングとの組み付け性が良好なベルト用エレメントおよびそのエレメントを用いた伝動ベルトを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、無端環状のリングを収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内側面の開口端側に前記リングを係合させてその離脱を防止する抜け止め部が形成された多数の板状のエレメントであって、前記開口端側が外周側となるように環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部の内周側に前記リングを嵌め込んで組み付けることによりベルトを構成するベルト用エレメントにおいて、前記ベルトを構成してプーリに巻き掛けられた状態で該プーリの中心に対して扇状に拡がる際に支点となるロッキングエッジが形成された部分よりも前記開口端側の上半部の板厚が薄く形成されていて、前記上半部の板厚方向での相対する前後の側面の少なくともいずれか一方に、前記開口端側ほど板厚が薄くなるように傾斜するとともに、前記ロッキングエッジが形成された部分を起点として前記傾斜が開始するテーパ面が形成されていることを特徴とするベルト用エレメントである。
また、請求項2の発明は、無端環状のリングを収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内側面の開口端側に前記リングを係合させてその離脱を防止する抜け止め部が形成された多数の板状のエレメントであって、前記開口端側が外周側となるように環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部の内周側に前記リングを嵌め込んで組み付けることによりベルトを構成するベルト用エレメントにおいて、前記ベルトを構成してプーリに巻き掛けられた状態で該プーリの中心に対して扇状に拡がる際に支点となるロッキングエッジが形成された部分よりも前記開口端側の上半部の板厚が薄く形成されていて、前記上半部の板厚方向での相対する前後の側面の少なくともいずれか一方に、前記開口端側ほど板厚が薄くなるように湾曲するとともに、前記ロッキングエッジが形成された部分を起点として前記湾曲が開始する湾曲面が形成されていることを特徴とするベルト用エレメントである。
そして、請求項3の発明は、請求項1または2の発明における少なくとも2枚以上の前記ベルト用エレメントと前記リングとを用いて環状に構成されていることを特徴とする伝動ベルトである。
したがって、請求項1の発明によれば、ベルト用エレメントのロッキングエッジよりも凹部の開口端側の部分、言い換えると、ベルト用エレメントが環状に配列された状態での外周側の部分である上半部の板厚が、ロッキングエッジが形成されている部分の板厚よりも薄くなるように形成される。すなわち、多数のベルト用エレメントとリングとが組み付けられた状態で、それら多数のベルト用エレメントおよびリングの一部をリングの内周側に撓ませた際に互いに隣り合うベルト用エレメント同士が当接する部分(すなわち上半部の先端部分)が、ロッキングエッジが形成されている部分よりも板厚が薄くなっている。その結果、上記のように多数のベルト用エレメントおよびリングの一部をリングの内周側に撓ませた場合に、リングに組み付けられているベルト用エレメントの列の間に、さらに他のベルト用エレメントを組み付けるための隙間を設けることが容易になる。そのため、リングに対してベルト用エレメントを最後の1枚まで容易に組み付けることができる。
また、ベルト用エレメントの上半部の前面もしくは後面あるいは前後両面に、開口端側すなわち外周側ほど板厚が薄くなる方向に傾斜するテーパ面が形成される。その結果、多数のベルト用エレメントとリングとが組み付けられた状態でそれら多数のベルト用エレメントおよびリングの一部をリングの内周側に撓ませた場合、隣接する他のベルト用エレメントに、外周側ほど薄肉になっている上半部のテーパ面が当接する。そのため、リングに組み付けられているベルト用エレメントの列の間に、さらに他のベルト用エレメントを組み付けるための隙間を容易に設けることができ、リングに対してベルト用エレメントを最後の1枚まで容易に組み付けることができる。
さらに、ベルト用エレメントの上半部のテーパ面が、ロッキングエッジが形成されている部分から開口端側すなわち外周側の先端へ向けて傾斜が開始するように、言い換えると、上半部の前面もしくは後面あるいは前後両面の全体が、開口端側すなわち外周側ほど板厚が薄くなる方向に傾斜するテーパ面として、ベルト用エレメントの上半部が形成される。そのため、リングに組み付けられているベルト用エレメントの列の間に、さらに他のベルト用エレメントを組み付けるための隙間を容易にかつ確実に設けることができる。
また、請求項2の発明によれば、ベルト用エレメントの上半部の前面もしくは後面あるいは前後両面に、開口端側すなわち外周側ほど板厚が薄くなる方向に湾曲する湾曲面が形成される。その結果、多数のベルト用エレメントとリングとが組み付けられた状態でそれら多数のベルト用エレメントおよびリングの一部をリングの内周側に撓ませた場合、隣接する他のベルト用エレメントに、外周側ほど薄肉になっている上半部の湾曲面が当接する。そのため、リングに組み付けられているベルト用エレメントの列の間に、さらに他のベルト用エレメントを組み付けるための隙間を容易に設けることができ、リングに対してベルト用エレメントを最後の1枚まで容易に組み付けることができる。
さらに、ベルト用エレメントの上半部の湾曲面が、ロッキングエッジが形成されている部分から開口端側すなわち外周側の先端へ向けて湾曲が開始するように、言い換えると、上半部の前面もしくは後面あるいは前後両面の全体が、開口端側すなわち外周側ほど板厚が薄くなる方向に湾曲する湾曲面として、ベルト用エレメントの上半部が形成される。そのため、リングに組み付けられているベルト用エレメントの列の間に、さらに他のベルト用エレメントを組み付けるための隙間を容易にかつ確実に設けることができる。
そして、請求項3の発明によれば、ロッキングエッジが形成されている部分の板厚よりも上半部の板厚が薄くなっているベルト用エレメントを少なくとも2枚以上用いて、そのベルト用エレメントとリングとを組み付けて伝動ベルトを構成することにより、伝動ベルトの組み付け性を向上させることができる。
(第1の構成例)
つぎに、この発明を図面を参照して具体的に説明する。初めに、この発明によるベルト用エレメントおよびそのベルト用エレメントを用いた伝動ベルトの第1の構成例を、図1ないし図4に基づいて説明する。図1ないし図4において、伝動ベルトVは、ベルト式無段変速機の駆動側(入力軸)プーリと従動側(出力軸)プーリとに巻き掛けられて、それらのプーリの間で動力を伝達するベルトの例を示している。そしてこの伝動ベルトVは、無端環状のリングRと、板状に成形された多数のベルト用エレメントEとから構成されている。
先ず、エレメントEは、例えば金属製の板片状の部材からなり、その幅方向(図1のx軸方向)における左右の側面1,2が、テーパ状の傾斜した面として形成された本体(基体)部3を有し、そのテーパ状に傾斜した両側面1,2が、ベルト式無段変速機の駆動側プーリあるいは従動側プーリであるプーリ4のベルト巻き掛け溝(V形溝)4aに摩擦接触してトルクを伝達するようになっている。
本体部3の幅方向(図1のx軸方向)における左右の両端部分に、本体部3の一部であって、エレメントEの上下方向(図1,図2のy軸方向)での上方に延びた左右の柱部5,6がそれぞれ形成されている。したがって、本体部3の図1,図2での上側のエッジ部分である上端面3aと、両柱部5,6の本体部3の幅方向における中央を向いた左右の内側面5a,6aとによって、エレメントEの上側(図1のy軸方向での上側)すなわち伝動ベルトVの外周側に開口した凹部7が形成されている。
凹部7は、互いに密着して環状に配列されたエレメントEを環状に結束するための無端環状のリングRを、挿入して収容するための部分であり、したがって上端面3aが、リングRの内周面を接触させて載せるサドル面3aとなっている。
左右の柱部5,6の上端部分には、左右の先端面8a,9aがそれぞれ本体部3の幅方向における中央に向かって延びた左右の抜け止め部8,9が、それぞれ両柱部5,6と一体に形成されている。言い換えると、凹部7の開口端(凹部7における伝動ベルトVの外周側の端部)側の両内側面5a,6aに、凹部7の幅方向(図1のx軸方向)における中心側に向けた抜け止め部8,9がそれぞれ形成されている。そのため、凹部7の開口幅が、凹部7の開口端側では、対向する両先端面8a,9aの間の距離Wによって規定されている。そして、凹部7の底部(すなわちサドル面(上端面))3a側では、両先端面8a,9a間の距離(開口幅)Wよりも広い開口幅Wとなっている。
ここで、このエレメントEと共に伝動ベルトVを構成するリングRは、例えば金属製の環状の帯状体を径方向に複数枚積層させて形成した、いわゆる積層リングであって、エレメントEにおける凹部7の内部で、2列に並列される2本の分割リング13と分割リング14とによって構成されている。これら各分割リング13,14は、例えば形状・寸法、材質、強度が等しい2本の金属製の積層リングにより形成されている。そして、リングRの幅寸法(図1のx軸方向の寸法)L、すなわち各分割リング13,14が並列した状態での合計の幅寸法Lが、エレメントEの凹部7の開口幅Wよりも長く、開口幅Wよりも短い範囲内の値となるように各部の形状・寸法が設定されて形成されている。
エレメントEは、環状に配列された状態で上記のような2列に分割されたリングRによって結束されることにより伝動ベルトVを構成し、その状態で駆動側および従動側のそれぞれのプーリ4に巻き掛けられる。したがってプーリ4に巻き掛けられた状態では、各エレメントEが、プーリ4の中心に対して扇状に拡がり、かつ互いに密着する必要があるため、各エレメントEの図1,図2での下側の部分(環状に配列した状態での中心側の部分)が薄肉に形成されている。
具体的には、本体部3の一方の面(例えば図2における左側の面)における所定の位置から下側の部分、この構成例ではサドル面3aから下側の部分が削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。したがって、各エレメントEが環状に配列されて扇形に拡がって接触する状態になると、その板厚の変化する境界部分で隣り合う他のエレメントEと接触する。言い換えると、上記のように板厚の変化する境界部分が、各エレメントEがリングRと共に伝動ベルトVを構成してプーリ4に巻き掛けられた状態でプーリ4の中心に対して扇状に拡がる際に支点となる。すなわち、この境界部分のエッジがいわゆるロッキングエッジ10となっている。
また、エレメントEの本体部3の幅方向における中央部分には、各エレメントEの相対的な位置を決めるためのディンプル11とホール12とが形成されている。具体的には、本体部3の一方の面側(図2の例では、ロッキングエッジ10のある面側)に凸となる円錐台形のディンプル11が形成されている。そして、このディンプル11とは反対側の面に、隣接するエレメントEにおけるディンプル11を緩く嵌合(遊嵌)させる有底円筒状のホール12が形成されている。
したがって、エレメントEが板厚方向に積層して配列された際に、隣接するエレメントEのそれぞれのディンプル11とホール12とが嵌合することによって、その状態におけるエレメントE同士の図1での左右方向および上下方向の相対位置を決めることができる。例えば、このエレメントEが用いられて構成された伝動ベルトVがプーリに巻き掛けられて運転される場合に、伝動ベルトVのがたつきを防止して伝動ベルトVを安定して走行させることができる。
また、本体部3の幅方向における中央部分であって、エレメントEの前後の両側面に、それぞれディンプル11およびそのディンプル11に遊嵌するホール12が形成され、それらディンプル11とホール12とによる嵌合部が1箇所だけ設けられていることにより、各エレメントEが環状に配列されて連結された際に互いに隣接するエレメントE同士を、それぞれの対向面の面内で相対回転させること、すなわち、互いに隣接するエレメントE同士の間でローリングさせることができる。
そして、この発明によるエレメントEは、エレメントEと2列のリングRとを組み付けて伝動ベルトVを構成する場合に、リンクRに組み付ける所期の枚数のエレメントEのうちの最後の1枚まで容易にその組み付けを行うことができるように、エレメントEのロッキングエッジ10よりも開口端側(図1,図2での上側)の部分が薄肉に形成されている。
すなわち、エレメントEのロッキングエッジ10よりも外周側(図1,図2での上側)の部分である上半部15の一方の側面15a(この例では図2における左側の面)におけるロッキングエッジ10より所定寸法上がった(オフセットされた)薄肉起点部16から外周側の部分が削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。言い換えると、エレメントEの上半部15の側面15aに、薄肉起点部16を起点として開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように傾斜するテーパ面17が形成されている。
したがって、このエレメントEの板厚は、ロッキングエッジ10が形成されている部分の板厚を板厚Tとすると、上半部15の開口端部すなわち最外周端部(図1,図2での上端部)の板厚が板厚Tよりも薄い板厚Tとなっている。
なお、上記のようにエレメントEの上半部15に形成されるテーパ面17は、図3に示すように、上半部15の他方の側面15b(図3における右側の面)に形成することができ(図3の(a)に示す構成)、また、上半部15の前後の両側面15a,15b(図3における左右両面)に形成することもできる(図3の(b)に示す構成)。
また、図4にこの第1の構成例における別形態を示す。この図4に示す構成例は、上半部15の薄肉起点部16が、ロッキングエッジ10が形成された部分と同じ位置に形成された場合の例である。すなわち、図4の(a)に示すように、エレメントEの上半部15の側面15aに、ロッキングエッジ10を起点として、言い換えると、エレメントEの高さ方向(図4のy軸方向)におけるロッキングエッジ10が形成されている部分と同じ位置に設けられた薄肉起点部16を起点として、開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように傾斜するテーパ面17が形成されている。
したがって、この場合の上半部15は、その一方の側面15a全体がテーパ面17となっている。またこの場合においても、上記の図3に示す第1の構成例の場合と同様に、エレメントEの上半部15に形成されるテーパ面17は、上半部15の他方の側面15b(図4における右側の面)に形成することができ(図4の(b)に示す構成)、また、上半部15の前後の両側面15a,15b(図4における左右両面)に形成することもできる(図4の(c)に示す構成)。
上記のように構成されたエレメントEと、2列に分割されたリングRとを組み付けることにより、伝動ベルトVが構成される。すなわち、環状に配列された状態の多数のエレメントEの凹部7に、具体的には凹部7の両抜け止め部8,9の内周側に、2列のリングRが嵌め込まれ、エレメントEとリングRとが組み付けられて、無端環状の伝動ベルトVが構成される。
この場合のエレメントEと2列のリングRとの組み付けを具体的に説明すると、先ず、図5に示すように、並列された各分割リング13,14の周長方向における所定の部分を、互いに重ね合わせてリングRの重ね合わせ状態を設定する。重ね合わせ状態を設定することにより、リングRでは、重ね合わせ状態(図5のA部で示す状態)と並列状態(図5のB部で示す状態)とが同時に設定される。リングRの重ね合わせ状態の部分では、リングRの幅がエレメントEの開口幅Wよりも狭くなるため、この重ね合わせ状態の部分から、1枚もしくは予め配列された所定枚数のエレメントEの凹部7に、リングRが嵌め込まれる。
続いて、凹部7にリングRの重ね合わせ状態の部分が嵌め込まれた1枚もしくは複数枚のエレメントEが、リングRの周長方向に、リングRの並列状態の部分まで移動させられる。リングRの並列状態の部分では、リングRの幅Lが、エレメントEの開口幅Wよりも狭く、かつエレメントEの開口幅Wよりも広くなるため、凹部7にリングRが嵌め込まれたエレメントEがリングRの並列状態の部分まで移動させられると、その並列状態の部分では、リングRが凹部7の両抜け止め部8,9により係止されて凹部7に係合される。すなわち、エレメントEとリングRとが組み付けられる。
そして、上記のような、所定枚数のエレメントEの凹部7に、リングRの重ね合わせ状態の部分を嵌め込み、その所定枚数のエレメントEをリングRの並列状態の部分まで移動させる作業が順次繰り返される。
上記のようなエレメントEとリングRとの組み付け作業において、それらエレメントEとリングRとの組み付け初期段階では、各分割リング13,14をそれぞれ自由に動作させることができ、比較的容易にリングRの重ね合わせ状態を設定することができる。これに対して、リングRと比較的多数のエレメントEとが組み付けられた段階、すなわち組み付け最終段階では、ディンプル11とホール12とが嵌合されて連結された各エレメントEの列により各分割リング13,14の動作が規制され、エレメントEをローリングさせて各分割リング13,14を重ね合わせることが次第に困難になってくる。
そのため、前述の図9,図10に示したリングr1,r2の例のように、2列のリング13,14を部分的に内周側に湾曲させた状態にすることによりリングRの重ね合わせ状態を設定する。ところがその場合は、前述したように、隣接するエレメントE同士の頭部すなわち上半部15の開口端部が互いに当接し、その当接部分を基点側としてエレメントeの列が扇形状に拡がった状態になる。その結果、エレメントEの列の周長方向における実質的な長さが長くなり、その分だけエレメントEの列の間に最後の1枚のエレメントEを挿入するための隙間を設ける余裕が少なくなってしまう。
そこで、この発明におけるエレメントEは、上記のように、ロッキングエッジ10が形成されている部分の板厚Tよりも上半部15の開口端側の板厚Tが薄くなるように形成されている。そのようにエレメントEの上半部15にテーパ面17が設けられて、上半部15の開口端側ほど板厚が薄くなるように形成されていることにより、既にリングRと組み付けられているエレメントEの列の間に、さらに別のエレメントEを組み付けるためのスペースを設けることが容易になる。そのため、エレメントEとリングRとの組み付け最終段階においても、その組み付けを容易に行うことができる。
(第2の構成例)
つぎに、この発明によるベルト用エレメントおよびそのベルト用エレメントを用いた伝動ベルトの第2の構成例を、図6,図7に基づいて説明する。上記の第1の構成例が、エレメントEの上半部15に、開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように傾斜するテーパ面17が設けられた構成であるのに対して、この第2の構成例では、エレメントEの上半部15に、開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように湾曲する湾曲面が設けられた例を示してある。したがって、その上半部15の湾曲面に関連する部分以外の、前述の図1ないし図4に示す第1の構成例と同じ構成の部分については、図6,図7に、図1ないし図4と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図6の(a)において、この第2の構成例におけるエレメントEは、前述の第1の構成例と同様、エレメントEのロッキングエッジ10よりも凹部7の開口端側(図6での上側)の部分が薄肉に形成されている。すなわち、エレメントEの上半部15の一方の側面15aにおけるロッキングエッジ10より所定寸法上がった(オフセットされた)薄肉起点部16から外周側の部分が丸みを帯びて削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。言い換えると、エレメントEの上半部15の側面15aに、薄肉起点部16を起点として開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように湾曲する湾曲面21が形成されている。
したがって、このエレメントEの板厚は、ロッキングエッジ10が形成されている部分の板厚を板厚Tとすると、上半部15の開口端部すなわち最外周端部(図6での上端部)に相当する部分の板厚が板厚Tよりも薄い板厚Tとなっている。
なお、上記のようにエレメントEの上半部15に形成される湾曲面21は、前述の第1の構成例の場合と同様、図6の(b),(c)に示すように、上半部15の他方の側面15bに形成することができ(図6の(b)に示す構成)、また、上半部15の前後の両側面15a,15bに形成することもできる(図6の(c)に示す構成)。
また、図7にこの第2の構成例における別形態を示す。この図7に示す構成例は、これも前述の第1の構成例の場合と同様、上半部15の薄肉起点部16が、ロッキングエッジ10が形成された部分と同じ位置に形成された場合の例である。すなわち、図7の(a)に示すように、エレメントEの上半部15の側面15aに、ロッキングエッジ10を起点として、言い換えると、エレメントEの高さ方向(図7のy軸方向)におけるロッキングエッジ10が形成されている部分と同じ位置に設けられた薄肉起点部16を起点として、開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように湾曲する湾曲面21が形成されている。
またこの場合においても、前述の第1の構成例の場合と同様に、エレメントEの上半部15に形成される湾曲面21は、上半部15の他方の側面15bに形成することができ(図7の(b)に示す構成)、また、上半部15の前後の両側面15a,15bに形成することもできる(図7の(c)に示す構成)。
そして、上記のように構成されたエレメントEと、2列に分割されたリングRとを組み付けることにより、伝動ベルトVが構成される。すなわち、環状に配列された状態の多数のエレメントEの凹部7に、具体的には凹部7の両抜け止め部8,9の内周側に、2列のリングRが嵌め込まれ、エレメントEとリングRとが組み付けられて、無端環状の伝動ベルトVが構成される。
このように、この第2の構成例においても、前述の第1の構成例の場合と同様に、エレメントEの上半部15に湾曲面21が設けられて、上半部15の開口端側ほど板厚が薄くなるように形成されていることにより、既にリングRと組み付けられているエレメントEの列の間に、さらに別のエレメントEを組み付けるためのスペースを設けることが容易になる。そのため、エレメントEとリングRとの組み付け最終段階においても、その組み付けを容易に行うことができる。
(第3の構成例)
つぎに、この発明によるベルト用エレメントおよびそのベルト用エレメントを用いた伝動ベルトの第3の構成例を、図8に基づいて説明する。上記の第1,第2の構成例が、エレメントEの上半部15に、開口端側すなわち外周側ほどエレメントEの板厚が薄くなるように傾斜もしくは湾曲する、テーパ面17もしくは湾曲面21が設けられた構成であるのに対して、この第3の構成例では、エレメントEの上半部15に、ロッキングエッジ10が形成されている部分よりも板厚が薄い薄肉部が設けられた例を示してある。したがって、その上半部15の薄肉部に関連する部分以外の、前述の図1ないし図4,図6,図7に示す第1,第2の構成例と同じ構成の部分については、図8に、図1ないし図4,図6,図7と同じ参照符号を付けて、その詳細な説明は省略する。
図8の(a)において、この第3の構成例におけるエレメントEは、エレメントEのロッキングエッジ10よりも凹部7の開口端側(図8での上側)の部分が薄肉に形成されている。すなわち、エレメントEの上半部15の一方の側面15aにおけるロッキングエッジ10より所定寸法上がった(オフセットされた)薄肉起点部16から外周側の部分が削り落とされて薄肉化されている。言い換えると、エレメントEの上半部15の側面15aにおける薄肉起点部16から開口端側すなわち外周側の部分が、ロッキングエッジ10が形成されている部分よりも板厚が薄くなるように形成された薄肉部31となっている。
したがって、このエレメントEの板厚は、ロッキングエッジ10が形成されている部分の板厚を板厚Tとすると、上半部15の開口端部すなわち最外周端部(図8での上端部)の板厚が板厚Tよりも薄い板厚Tとなっている。
なお、上記のようにエレメントEの上半部15に形成される薄肉部31は、前述の第1,第2の構成例の場合と同様、図8の(b),(c)に示すように、上半部15の他方の側面15bに形成することができ(図8の(b)に示す構成)、また、上半部15の前後の両側面15a,15bに形成することもできる(図8の(c)に示す構成)。
そして、上記のように構成されたエレメントEと、2列に分割されたリングRとを組み付けることにより、伝動ベルトVが構成される。すなわち、環状に配列された状態の多数のエレメントEの凹部7に、具体的には凹部7の両抜け止め部8,9の内周側に、2列のリングRが嵌め込まれ、エレメントEとリングRとが組み付けられて、無端環状の伝動ベルトVが構成される。
この第3の構成例においても、前述の第1,第2の構成例の場合と同様に、エレメントEの上半部15に薄肉部31が設けられて、上半部15の開口端側がロッキングエッジ10が形成されている部分よりも板厚が薄くなるように形成されていることにより、既にリングRと組み付けられているエレメントEの列の間に、さらに別のエレメントEを組み付けるためのスペースを設けることが容易になる。そのため、エレメントEとリングRとの組み付け最終段階においても、その組み付けを容易に行うことができる。
以上のように、この発明によるベルト用エレメントEおよびそのエレメントEを用いた伝動ベルトVによれば、ベルト用エレメントEのロッキングエッジ10よりも凹部7の開口端側の部分、言い換えると、ベルト用エレメントEが環状に配列された状態での外周側の部分である上半部15の板厚Tが、ロッキングエッジ10が形成されている部分の板厚Tよりも薄くなるように形成される。すなわち、多数のベルト用エレメントEとリングRとが組み付けられた状態で、それら多数のベルト用エレメントEおよびリングRの一部をリングRの内周側に撓ませた際に互いに隣り合うベルト用エレメントE同士が当接する部分、すなわち上半部15の先端部分が、ロッキングエッジ10が形成されている部分よりも板厚が薄くなっている。
その結果、上記のように多数のベルト用エレメントEおよびリングRの一部をリングRの内周側に撓ませた場合に、リングRに組み付けられているベルト用エレメントEの列の間に、さらに別のベルト用エレメントEを組み付けるための隙間を設けることが容易になる。そのため、リングRに対してベルト用エレメントEを最後の1枚まで容易に組み付けることができる。したがって、それらベルト用エレメントEとリングRとが組み付けられて構成される伝動ベルトVの組み付け性を向上させることができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されない。すなわち、上述した具体例では、ロッキングエッジ10が形成されている部分よりも開口端側が板厚が薄くなるように形成されたこの発明によるベルト用エレメントEと2列のリングRとにより伝動ベルトRを構成する例を示しているが、その場合に使用されるエレメントは、全数がこの発明によるベルト用エレメントEであってもよく、あるいは、この発明によるベルト用エレメントEと従来のベルト用エレメント(すなわち開口端側の板厚が薄くされていない構成のエレメント)とを併用することもできる。その場合、少なくとも2枚以上この発明によるベルト用エレメントEを用いて、それらこの発明によるベルト用エレメントEが配列されている間に設けた隙間に、最後の1枚のエレメントを組み付けるようにすることにより、上述したようなベルト用エレメントEとリングRとの良好な組み付け性を得ることができる。
また、この発明の伝動ベルトがベルト式無段変速機に使用されている例を示しているが、この発明の伝動ベルトは、ベルト式無段変速機に限らず、ベルトとプーリとによって構成される他の巻き掛け伝動装置の伝動ベルトにも適用することができる。
この発明に係るベルト用エレメントおよびそのベルト用エレメントを用いた伝動ベルトの第1の構成例を示す模式図であって、そのベルト用エレメントおよび伝動ベルトの正面図である。 この発明に係るベルト用エレメントおよびそのベルト用エレメントを用いた伝動ベルトの第1の構成例を示す模式図であって、そのベルト用エレメントの一部側断面図である。 この発明の第1の構成例におけるベルト用エレメントの他の構成を示す模式図である。 この発明の第1の構成例におけるベルト用エレメントの構成の別形態を示す模式図である。 この発明の伝動ベルトを構成するリングを重ね合わせた状態と並列させた状態とを説明するための模式図である。 この発明の第2の構成例におけるベルト用エレメントの構成を示す模式図である。 この発明の第2の構成例におけるベルト用エレメントの構成の別形態を示す模式図である。 この発明の第3の構成例におけるベルト用エレメントの構成を示す模式図である。 エレメントとリングとの組み付け状態を説明するための模式図である。 エレメントとリングとの組み付け状態を詳細に説明するための模式図である。
符号の説明
E…エレメント、 R…リング、 V…伝動ベルト、 3…本体部(基体部)、 4…プーリ、 5a,6a…内側面、 7…凹部、 8,9…抜け止め部、 10…ロッキングエッジ、 13,14…分割リング、 15…上半部、 16…薄肉起点部、 17…テーパ面、 21…湾曲面、 31…薄肉部。

Claims (3)

  1. 無端環状のリングを収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内側面の開口端側に前記リングを係合させてその離脱を防止する抜け止め部が形成された多数の板状のエレメントであって、前記開口端側が外周側となるように環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部の内周側に前記リングを嵌め込んで組み付けることによりベルトを構成するベルト用エレメントにおいて、
    前記ベルトを構成してプーリに巻き掛けられた状態で該プーリの中心に対して扇状に拡がる際に支点となるロッキングエッジが形成された部分よりも前記開口端側の上半部の板厚が薄く形成されていて、
    前記上半部の板厚方向での相対する前後の側面の少なくともいずれか一方に、前記開口端側ほど板厚が薄くなるように傾斜するとともに、前記ロッキングエッジが形成された部分を起点として前記傾斜が開始するテーパ面が形成されている
    とを特徴とするベルト用エレメント。
  2. 無端環状のリングを収容する凹部が形成されるとともに、その凹部における左右の内側面の開口端側に前記リングを係合させてその離脱を防止する抜け止め部が形成された多数の板状のエレメントであって、前記開口端側が外周側となるように環状に配列し、その環状に配列されたエレメントの列における前記両抜け止め部の内周側に前記リングを嵌め込んで組み付けることによりベルトを構成するベルト用エレメントにおいて、
    前記ベルトを構成してプーリに巻き掛けられた状態で該プーリの中心に対して扇状に拡がる際に支点となるロッキングエッジが形成された部分よりも前記開口端側の上半部の板厚が薄く形成されていて、
    記上半部の板厚方向での相対する前後の側面の少なくともいずれか一方に、前記開口端側ほど板厚が薄くなるように湾曲するとともに、前記ロッキングエッジが形成された部分を起点として前記湾曲が開始する湾曲面が形成されていることを特徴とするベルト用エレメント。
  3. 記リングと、請求項1または2に記載された少なくとも2枚以上の前記ベルト用エレメントとを用いて環状に構成されていることを特徴とする伝動ベルト。
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