JP4923533B2 - 光学多層膜、光学素子、反射ミラーおよびプロジェクタ - Google Patents
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Description
より詳細に説明すると、図36に示すように、プロジェクタ4’は、光源装置411を含む照明光学装置41と、光源装置411から射出された光束を3色の色光に分離する色分離光学装置42’と、色光毎に画像情報に応じて変調する光変調装置(液晶パネル441)と、光変調装置で変調された光を合成して光学像を形成する色合成光学素子(クロスダイクロイックプリズム444’)と、光学像を拡大投射する投射光学装置(投射レンズ45)とを備えている。
なお、符号414は、第2レンズアレイ413と重畳レンズ415との間に配置され、第2レンズアレイ413からの光を略1種類の偏光光に変換する偏光変換素子である。
分離された各色光は、フィールドレンズ418、入射側偏光板442を介して、各色光に応じて設置された液晶パネル441(441R,441G,441B)に入射される。
なお、赤色光は、入射側レンズ431と、リレーレンズ433と、反射ミラー432、434とを備えたリレー光学系43により、赤色光用の液晶パネル441(441R)まで導かれる。
クロスダイクロイックプリズム444’では、赤色光を反射するとともに、青色光及び緑色光を透過する光学多層膜と、青色光を反射するとともに、赤色光及び緑色光を透過する光学多層膜とが、4つの三角柱プリズムの界面に沿って略X字状に設けられており、これらの光学多層膜により3つの色光が合成される。
このようなクロスダイクロイックプリズム444’から射出されたカラー画像は、投射レンズ45によって拡大投射され、図示を略したスクリーン上で大画面画像を形成することとなる。
そこで、最も光量の多い緑色光(波長領域:約500〜560nm)をリレー光学系43に導入し、他の色光とのバランスを調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、緑色光の透過率が低く、青色光及び赤色光の透過率の高い光学多層膜の開発は進んでおらず、このような光学特性を有する光学多層膜の開発が強く望まれている。
このため、波長領域約560〜590nmの狭帯域の黄色光を確実に反射して、かつ、青色光、緑色光および赤色光を確実に透過させる光学多層膜を備えた反射ミラーが求められている。
したがって、光学多層膜は、当該膜厚の比率を調整することにより、緑色光あるいは黄色光を選択的に反射し、かつ、青色光および赤色光は確実に透過させるようになるので、例えばプロジェクタのクロスダイクロイックプリズムや反射ミラーに適用するなど、使用の目的に応じた光学多層膜が得られる。また、光学多層膜における当該比率を調整するだけで、光学多層膜における反射領域を任意に変更できるので、同一の光学多層膜製造装置にて様々な用途に応じた製品を製造できる。
また、本発明の光学多層膜は、光束入射側及び光束射出側の少なくとも何れか一方に整合層を備えているので、赤色光及び青色光の透過損失のうねり(リップル)を低減させることができる。
このように、3.0≦(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)≦30を維持しながら、繰り返し層の厚み幅の中心(繰り返し層における光束入射側と光束射出側からの中間地点)に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くすることで、赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を防止することができ、赤色光及び青色光の透過率を確実に高くすることができる。
赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を確実に防止するために、整合層の高屈折率層及び低屈折率層の数を増やす方法もあるが、この場合には、整合層を構成する膜の数が多くなり、光学多層膜の製造効率が低下する可能性がある。
本発明では、繰り返し層における高屈折率層の光学膜厚と、低屈折率層の光学膜厚を調整することで、赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を防止することができるので、整合層の膜の数を増加させる必要がなく、光学多層膜の製造効率の低下を防止することができる。
このように、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を3.0以上6.0以下とすることで、光学多層膜が反射する光の波長領域を500nm以上600nm以下とすることができ、広帯域の緑色光を確実に反射することができる。また、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を3.0以上6.0以下とすることで、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高い透過率で透過させることができる光学多層膜とすることができる。
なお、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を3.0未満とした場合には、反射する光の波長領域が広くなり、赤色光の透過率が低下する可能性がある。また、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を6.0を超えるものとした場合には、反射する光の波長領域が狭くなるため、緑色光を確実に反射することが困難となる。
したがって、例えば、このような本発明の光学多層膜をプロジェクタの色合成光学素子に使用した場合、最も光量の多い緑色光(波長領域:約500〜560nm)を選択的に反射でき、かつ、青色光(波長領域:約430〜500nm)や光量損失の大きな赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高効率で透過させることができる。
繰り返し層を構成する膜の数をそれぞれ8未満とした場合には、緑色光の透過率が上がってしまい、緑色光を確実に反射することができない可能性がある。
これに対し、本発明では、繰り返し層を構成する高屈折率層、低屈折率層の数をそれぞれ8以上としているため、このような問題が生じない。
高屈折率層にTa2O5を使用することで、青色光が高屈折率層に吸収されてしまうのを抑えることができる。
また、低屈折率層にSiO2を使用することで、低屈折率層のコストの低減を図ることができる。
このような本発明によれば、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を10以上30以下とすることで、光学多層膜が反射する光の波長領域を約560nm以上600nm以下とすることができ、狭帯域の黄色光を確実に反射することができる。また、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を10以上30以下とすることで、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)及び赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高い透過率で透過させることができる光学多層膜とすることができる。
なお、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を10未満とした場合には、反射領域が緑色光(波長領域:約500〜560nm)側にまで広がってしまい、逆に緑色光を必要量確保できなくなる可能性がある。一方、(繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を30を超えるものとした場合には、特定の波長の光における透過率が向上してしまって良好に反射することができず、また、赤色光及び青色光の透過損失のうねり(リップル)が大きくなってしまう可能性がある。
したがって、例えば、このような本発明の光学多層膜をプロジェクタの反射ミラーに使用した場合、狭帯域の黄色光(波長領域:約560〜600nm)を確実に反射でき、かつ、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高効率で透過させることができるので、緑色光および赤色光に黄色光が混入することを防止でき、色再現性と画像コントラストを高めることができる。
繰り返し層を構成する膜の数をそれぞれ15未満とした場合には、黄色光の透過率が上がってしまい、黄色光を確実に反射することができない可能性がある。
これに対し、本発明では、繰り返し層を構成する高屈折率層、低屈折率層の数をそれぞれ15以上としているため、このような問題が生じない。
このような本発明によれば、繰り返し層の各層数を必要最小限度に留めることができ、かつ、青色光(波長領域:約430〜500nm)の透過が阻害されることを防ぐことができる。
ここで、当該膜厚の合計が2.0(0.5λ)、4.0(1λ)、6.0(1.5λ)....であると、λでの反射率を高くできる。このうち、当該膜厚の合計が2.0(0.5λ)であると、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)の比率をより大きくする必要があり、1回の繰り返し層による反射率の増加が少なくなるため、繰り返し層の各層数を約2倍と大幅に増やさないと反射率を高めるのが困難となってしまう。さらに、繰り返し層の低屈折率層Lの光学膜厚が極端に薄くなり、均一な光学薄膜として成膜することが困難になる。また、当該膜厚の合計が6.0(1.5λ)であると、波長領域約560〜600nm(黄色光)の反射帯域(透過率が略0%となる帯域)と、この反射帯域よりも短波長側に隣接する反射帯域とが近づきすぎ、青色光(波長領域:約430〜500nm)の透過が阻害されるようになってしまう。一方、当該膜厚の合計を約4.0に設定すれば、繰り返し層の各層数を必要最小限度に留めることが可能で、かつ、青色光の透過が阻害されることを防ぐことができる。
このような本発明によれば、光学多層膜は、狭帯域の黄色光(波長領域:約560〜590nm)を反射できるとともに、赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高い透過率で透過させることができる。さらに、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)を任意の透過率で減光して透過させることができる。このため、1枚の光学多層膜で、黄色光を反射しかつ青色光、緑色光及び赤色光を透過させる反射ミラーとしての機能と、青色光および緑色光を任意の透過率で減光して透過させるND(Neutral Density)フィルタとしての機能との2つの機能を発現させることができる。そして、減光層の高屈折率層および低屈折率層のそれぞれの光学膜厚を適宜調整すれば、青色光および緑色光の透過率を任意に設定できるので、使用の目的に応じて簡易かつ好適に光量調整を実施できる。
このような本発明によれば、高屈折率層にNb2O5を使用することで、青色光が高屈折率層に吸収されてしまうのを抑えることができる。
また、低屈折率層にSiO2を使用することで、低屈折率層のコストの低減を図ることができる。
このような本発明によれば、上述した何れかの光学多層膜を有するため、緑色光を反射し、青色光及び赤色光を透過させることができる光学素子とすることができる。
色合成光学素子は、それぞれが略直交する2側面を有する4つの三角柱プリズムを備え、この各三角柱プリズムの前記2側面を互いに貼り合わせることで形成されるプリズム集合体と、前記プリズム集合体の相互に隣接する前記三角柱プリズム間に形成され、交差する一対の光学多層膜とを有し、前記一対の光学多層膜のうち、一方の光学多層膜が、緑色光を反射し、かつ赤色光及び青色光を透過する上述した前記光学多層膜であり、他方の光学多層膜が、赤色光又は青色光の何れか一方を反射し、かつ赤色光又は青色光の何れか他方、及び緑色光を透過する他の光学多層膜であることを特徴とする。
このような色合成光学素子は、上述した何れかの光学多層膜を有するため、緑色光を反射し、青色光及び赤色光を透過させることができ、緑色光、青色光、赤色光をバランスよく合成することができる。
このようなプロジェクタでは、上述した色合成光学素子を有するため、緑色光、青色光、赤色光をバランスよく合成することができ、カラーバランスの良い投射画像を形成することができる。
このような反射ミラーによれば、光学多層膜が、黄色光(波長領域:約560〜600nm)を反射し、かつ、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高効率で透過可能であるので、透過光における赤色光あるいは緑色光に、黄色光が混入してしまうことを防ぐことができる。このため、例えば、上記した反射ミラーをプロジェクタに適用した場合、光源装置からの光束より黄色光を除去することができるので、投射画像の色再現性とコントラストを高めることができる。
〔1.光学多層膜1の構成〕
図1には、本発明にかかる光学多層膜の模式図が示されている。また、図2には、光学多層膜における高屈折率層の光学膜厚と、低屈折率層の光学膜厚とが示されている。
なお、図2の横軸の数字は、第1層〜第28層までを示し、縦軸は、1/4λ(λ=430nm)を1と定義したときの光学膜厚を示す。
光学多層膜1は、広帯域の緑色光(波長領域:約500〜600nm)を反射するとともに、青色光(波長領域:約430〜500nm)、赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)を透過する膜である。
図1に示すように、この光学多層膜1は、高屈折率層Hと、低屈折率層Lとが交互に積層された膜である。この光学多層膜1の低屈折率層L及び高屈折率層Hの総数は、例えば、28層で、それぞれ14層である。
低屈折率層Lの材料としては、SiO2、MgF2等が例示でき、これらから屈折率の範囲は、1.38〜1.46である。
高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5、TiO2、ZrO2等が例示でき、これらから屈折率の範囲は、2.0〜2.5の範囲である。
なかでも、低屈折率層Lの材料としてSiO2を使用し、高屈折率層Hの材料としてTa2O5を使用することが好ましい。
このような光学多層膜1は、一対の整合層11と、一対の整合層11間に配置される繰
り返し層12とを備える。
整合層11は、光学多層膜1を透過する光束(赤色光及び青色光)の透過率の変動(リップル)を防止するために設けられる層である。
この整合層11は、光学多層膜1の光束入射側及び光束射出側にそれぞれ設けられた層であり、本実施形態では、2層の低屈折率層Lと、2層の高屈折率層Hが交互に積層されたものである。換言すると、光学多層膜1の第1層〜第4層で一方の整合層11が形成され、第25層〜第28層で他方の整合層11が形成されている。
第一の整合部111は、1層の高屈折率層Hと、1層の低屈折率層Lとを有する。図2に示すように、第一の整合部111における低屈折率層Lの光学膜厚と、高屈折率層Hの光学膜厚との関係は、1≦(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)≦2である。
また、1/4λ(λ=430nm)を1と定義したときに、低屈折率層Lの光学膜厚は、例えば、0.5以下であり、高屈折率層Hの光学膜厚は、例えば、0.7以下である。
第二の整合部112の高屈折率層Hの光学膜厚は、第一の整合部111の高屈折率層Hの光学膜厚と、後述する繰り返し層12の第二の整合部112に最も近い高屈折率層Hの光学膜厚との間の寸法であることが好ましい。
同様に、第二の整合部112の低屈折率層Lの光学膜厚は、第一の整合部111の低屈折率層Lの光学膜厚と、後述する繰り返し層12の第二の整合部112に最も近い低屈折率層Lの光学膜厚との間の寸法であることが好ましい。
本実施形態では、1/4λ(λ=430nm)を1と定義したときに、第二の整合部112における高屈折率層Hの光学膜厚は、例えば、4.0程度であり、低屈折率層Lの光学膜厚は、0.36程度である(図2参照)。
繰り返し層12は、一対の整合層11間に配置され、広帯域の緑色光(波長領域:約500〜600nm)を反射するとともに、青色光(波長領域:約430〜500nm)および赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)を略100%の透過率で透過させる層である。この繰り返し層12は、高屈折率層Hと低屈折率層Lとが交互に積層されたものであり、高屈折率層H及び低屈折率層Lは、それぞれ8層以上15層以下であることが好ましい。
本実施形態では、繰り返し層12は、光学多層膜1の第5層〜第24層で構成される層であり、繰り返し層12における高屈折率層H及び低屈折率層Lはそれぞれ10層である。
繰り返し層12では、高屈折率層Hの光学膜厚と、低屈折率層Lの光学膜厚とが異なっている。例えば、繰り返し層12における高屈折率層Hの光学膜厚は、5.1以上5.6以下であり、繰り返し層12における低屈折率層Lの光学膜厚は、0.4以上1.0以下である。
ここで、高屈折率層Hの材料として、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、4.0≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦5.0であることが好ましい。
また、高屈折率層Hの材料として、ZrO2を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、3.0≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦5.0であることが好ましい。
さらに、高屈折率層Hの材料として、TiO2を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、4.0≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦6.0であることが好ましい。
例えば、繰り返し層12のうち、整合層11の第二の整合部112に隣接する部分近傍では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が6.0程度であり、繰り返し層12の厚み幅の中心部分では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が5.0程度となっている。すなわち、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)の値が、整合層11の第二の整合部112に隣接する部分近傍から、繰り返し層12の厚み幅の中心部分に向かって徐々に減少しているのである。
図3では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が略100%となり、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。そして、青色光および赤色光の透過率の変動(リップル)が小さくなっている。
図4には、本発明にかかる光学多層膜の模式図が示されている。また、図5には、光学多層膜における高屈折率層の光学膜厚と、低屈折率層の光学膜厚とが示されている。なお、図5の横軸の数字は、第1層〜第44層までを示し、縦軸は、1/4λ(λ=430nm)を1と定義したときの光学膜厚を示す。
光学多層膜3は、例えばガラス板などの平板状の透明基板上に成膜され、狭帯域の黄色光(波長領域:約560〜600nm:波長幅:約30〜40nm)を反射するとともに、赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)を高い透過率で透過する。また、光学多層膜3は、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)を任意の透過率で減光して透過させることが可能となっている。
低屈折率層Lの材料としては、SiO2、MgF2等が例示でき、これらの屈折率の範囲は、1.38〜1.46である。
高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5、Ta2O5、TiO2、ZrO2等が例示でき、これらの屈折率の範囲は、2.0〜2.5の範囲である。
なかでも、低屈折率層Lの材料としてSiO2を使用し、高屈折率層Hの材料としてNb2O5を使用することが好ましい。
ここで、高屈折率層Hの材料として、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、15≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦25であることが好ましい。
そして、高屈折率層Hの材料として、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、13≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦23であることが好ましい。
また、高屈折率層Hの材料として、ZrO2を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、12≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦22であることが好ましい。
さらに、高屈折率層Hの材料として、TiO2を使用し、低屈折率層Lの材料として、SiO2を使用する場合には、17≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦27であることが好ましい。
例えば、図5の膜構成においては、繰り返し層32の厚み幅方向端部側、すなわち、第5層目の高屈折率層Hと第6層目の低屈折率層Lとでは、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が約26.5であり、繰り返し層32の厚み幅の中心部分、すなわち、第21層目の高屈折率層Hと第22層目の低屈折率層Lとでは、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が約15.3となっている。つまり、繰り返し層32では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)の値が、整合層31および減光層33に隣接する厚み幅方向の両端部側から中心部分に向かって二次関数的に減少しているのである。
ここで、当該膜厚の合計が2.0(0.5λ)、4.0(1λ)、6.0(1.5λ)....であると、λでの反射を高くできる。このうち、当該膜厚の合計が2.0(0.5λ)であると、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)の比率をより大きくする必要があり、1回の繰り返し層による反射率の増加が少なくなるため、繰り返し層32の各層数を約2倍と大幅に増やさないと反射率を高めるのが困難となってしまう。さらに、繰り返し層の低屈折率層Lの光学膜厚が極端に薄くなり、均一な光学薄膜として成膜することが困難になる。また、当該膜厚の合計が6.0(1.5λ)であると、波長領域約560〜600nm(黄色光)の反射帯域(透過率が略0%となる帯域)と、この反射帯域よりも短波長側に隣接する反射帯域とが近づきすぎ、青色光(波長領域:約430〜500nm)の透過が阻害されるようになってしまう。一方、当該膜厚の合計を約4.0に設定すれば、繰り返し層32の各層数を必要最小限度に留めることが可能で、かつ、青色光の透過が阻害されることがないので好ましい。
このような減光層33は、3層の低屈折率層Lと3層の高屈折率層Hとの光学膜厚を適宜調整することで、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率を任意の値に設定することが可能となる。例えば、追加する高屈折率層Hの光学膜厚を約1を越える厚さにすると(1/4λ(λ=430nm)を1と定義した場合)、青色光および緑色光の透過率を大きく下げることが可能である。
具体例として、図5に示す減光層33では、第39層目(高屈折率層H)の膜厚が1.18、第40層目(低屈折率層L)の膜厚が0.86、第41層目(高屈折率層H)の膜厚が0.27、第42層目(低屈折率層L)の膜厚が0.52、第43層目(高屈折率層H)の膜厚が0.12、第44層目(低屈折率層L)の膜厚が1.63となっている。この場合、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率が65〜75%となる。
また、図32に示す減光層では、第39層目(高屈折率層H)の膜厚が1.30、第40層目(低屈折率層L)の膜厚が0.79、第41層目(高屈折率層H)の膜厚が0.55、第42層目(低屈折率層L)の膜厚が0.68、第43層目(高屈折率層H)の膜厚が1.63、第44層目(低屈折率層L)の膜厚が1.21となっている。この場合、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率が45〜55%となる。
図6では、黄色光(波長領域:約560〜600nm)の透過率が略0%となっている。そして、赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が略100%となっている。また、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率は65〜75%となっている。さらに、青色光および赤色光の透過率の変動(リップル)が小さくなっている。
以上のような光学多層膜1は、プロジェクタ4のクロスダイクロイックプリズム444に使用される。
このプロジェクタ4は、図7に示すように、インテグレータ照明光学装置41、色分離光学装置42、リレー光学系43、光学装置44、投射レンズ45とを備える。
インテグレータ照明光学装置41は、光学装置44を構成する後述する液晶パネルの画像形成領域を略均一に照明するためのものである。このインテグレータ照明光学装置41は光源装置411と、第1レンズアレイ412と、第2レンズアレイ413と、偏光変換素子414と、重畳レンズ415と、反射ミラー419とを備える。
第1レンズアレイ412は、光軸方向から見て略矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。各小レンズは、光源装置411から射出される光束を、複数の部分光束に分割している。
第2レンズアレイ413は、第1レンズアレイ412と略同様な構成を有しており、小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ413は、重畳レンズ415とともに、第1レンズアレイ412の各小レンズの像を光学装置44の後述する液晶パネル上に結像させる機能を有している。
具体的に、偏光変換素子414によって略1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ415によって最終的に光学装置44の後述する液晶パネル上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネルを用いたプロジェクタでは、1種類の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源装置411からの光の略半分を利用できない。このため、偏光変換素子414を用いることで、光源装置411からの射出光を略1種類の偏光光に変換し、光学装置44での光の利用効率を高めている。
具体的には、反射ミラー419は、平板状のガラス基板(図示しない)と、この基板の光束入射側および光束射出側の少なくともいずれか一方の面上に積層形成された光学多層膜3とを備えて構成されており、光源装置411と第1レンズアレイ412との間に配置される。
これにより、反射ミラー419透過後の光束では、画像コントラストの低下の原因となる狭帯域の黄色光(波長領域:約560〜600nm)が除かれて、光量の多い緑色光(波長領域:約500〜560nm)や青色光(波長領域:約430〜500nm)が減光されると共に光量の少ない赤色光(波長領域:約640〜810nm)を最大限透過させることが可能となる。
なお、このような反射ミラー419は、入射光束に対して直交する状態で配置することが好ましい。これにより、波長領域約560〜600nm(波長幅約30〜40nm)の狭帯域の黄色光を確実に反射することが可能となる。仮に、反射ミラー419を、入射光束に対して直交しない状態で配置した場合、反射帯域が緑色光側にシフトしてしまい、赤色光に黄色光の一部が混入してしまうおそれがある。
リレー光学系43は、入射側レンズ431、リレーレンズ433、および反射ミラー432,434を備え、色分離光学装置42で分離された緑色光を光学装置44の後述する緑色光用の液晶パネルまで導く機能を有している。
液晶パネル441(441R,441G,441B)は、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像信号にしたがって、入射側偏光板442から射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
一対の光学多層膜1,2のうち、一方の光学多層膜1は、分割されて、一対の三角柱プリズム444A,444Bの一方の側面にそれぞれ形成されている。なお、光学多層膜1は、三角柱プリズム444A,444B側に光学多層膜1の第一層が位置するように形成されている。
他方の光学多層膜2も、分割されて、三角柱プリズム444Aの他方の側面及び三角柱プリズム444Dの一方の側面にそれぞれ形成されている。
他方の光学多層膜2は、赤色光を反射し、青色光及び緑色光を透過するものである。
これらの光学多層膜1,2の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等があげられる。
このようなクロスダイクロイックプリズム444から射出されたカラー画像は、投射レンズ45によって拡大投射され、図示を略したスクリーン上で大画面画像を形成することとなる。
従って、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(4-1)光学多層膜1の繰り返し層12では、高屈折率層Hと、低屈折率層Lとを交互に配置し、さらに、3.0≦(繰り返し層12内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層12内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦6.0としている。
このように、(繰り返し層12内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層12内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を3.0以上、6.0以下とすることで、光学多層膜1が反射する光の波長領域を500nm以上、600nm以下とすることができ、緑色光を確実に反射することができる。
また、(繰り返し層12内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層12内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を3.0以上、6.0以下とすることで、青色光及び赤色光を透過させることができる光学多層膜1とすることができる。
なお、(繰り返し層12内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層12内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を3.0未満とした場合には、反射する光の波長領域が広くなり、赤色光の透過率が低下する可能性がある。
また(繰り返し層12内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層12内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を、6.0を超えるものとした場合には、反射する光の波長領域が狭くなるため、緑色光を確実に反射することが困難となる。
繰り返し層12をこのような構成とすることで、赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)をより確実に防止することができ、赤色光及び青色光の透過率を確実に高くすることができる。
赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を確実に防止するために、整合層の高屈折率層及び低屈折率層の数を増やす方法もあるが、この場合には、整合層を構成する膜の数が多くなり、光学多層膜の製造効率が低下する可能性がある。
本実施形態では、繰り返し層12における高屈折率層Hの光学膜厚と、低屈折率層Lの光学膜厚を調整することで、赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を防止することができるので、整合層11の膜の数を増加させる必要がなく、光学多層膜1の製造効率の低下を防止することができる。
これに対し、本実施形態では、繰り返し層12を構成する高屈折率層H、低屈折率層Lの数をそれぞれ8層以上(例えば、10層)としているため、このような問題が生じることがなく、緑色光を確実に反射することができる。
さらに、低屈折率層LにSiO2を使用しており、SiO2は、比較的安価であるため、低屈折率層Lのコストの低減を図ることができる。
このように、(繰り返し層32内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層32内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を10以上30以下とすることで、光学多層膜3が反射する光の波長領域を約560nm以上600nm以下とすることができ、狭帯域の黄色光を確実に反射することができる。
また、(繰り返し層32内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層32内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を10以上30以下とすることで、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)及び赤色光(波長領域:約640〜810nm)を高い透過率で透過させることができる光学多層膜3とすることができる。
なお、(繰り返し層32内における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層32における低屈折率層の光学膜厚の総和)を10未満とした場合には、反射領域が緑色光(波長領域:約500〜560nm)側にまで広がってしまい、逆に緑色光を必要量確保できなくなる可能性がある。
一方、(繰り返し層32における高屈折率層の光学膜厚の総和)/(繰り返し層32内における低屈折率層の光学膜厚の総和)を30を超えるものとした場合には、特定の波長の光における透過率が向上してしまって良好に反射することができず、また、赤色光及び青色光の透過損失のうねり(リップル)が大きくなってしまう可能性がある。
繰り返し層32をこのような構成とすることで、赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)をより確実に防止することができ、赤色光及び青色光の透過率を確実に高くすることができる。
赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を確実に防止するために、整合層の高屈折率層及び低屈折率層の数を増やす方法もあるが、この場合には、整合層を構成する膜の数が多くなり、光学多層膜の製造効率が低下する可能性がある。
本実施形態では、繰り返し層32における高屈折率層Hの光学膜厚と、低屈折率層Lの光学膜厚を調整することで、赤色光及び青色光のリップル(透過率の変動)を防止することができるので、整合層31の膜の数を増加させる必要がなく、光学多層膜3の製造効率の低下を防止することができる。
これに対し、本発明では、繰り返し層32を構成する高屈折率層、低屈折率層の数をそれぞれ15以上としているため、このような問題が生じない。
これにより、繰り返し層32の各層数を必要最小限度に留めることができ、かつ、青色光(波長領域:約430〜500nm)の透過が阻害されることを防ぐことができる。
これにより、光学多層膜3は、狭帯域の黄色光(波長領域:約560〜600nm)を反射できるとともに、赤色光を高い透過率で透過させることができる。さらに、青色光および緑色光を任意の透過率で減光して透過させることができる。このため、1枚の光学多層膜3で、黄色光を反射しかつ青色光、緑色光及び赤色光を透過させる反射ミラーとしての機能と、青色光および緑色光を任意の透過率で減光して透過させるNDフィルタとしての機能との2つの機能を発現させることができる。そして、減光層33の高屈折率層Hおよび低屈折率層Lのそれぞれの光学膜厚を適宜調整すれば、青色光および緑色光の透過率を任意に設定できるので、使用の目的に応じて簡易かつ好適に光量調整を実施できる。
これにより、高屈折率層HにNb2O5を使用することで、青色光が高屈折率層Hに吸収されてしまうのを抑えることができる。
また、低屈折率層LにSiO2を使用することで、低屈折率層Lのコストの低減を図ることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、光学多層膜1をクロスダイクロイックプリズム444に使用したが、これに限らず、例えば、光学素子としてのダイクロイックミラーに使用してもよい。さらには、光学多層膜を他の光学素子に使用してもよい。
また、前記実施形態では、光学多層膜1を有するクロスダイクロイックプリズム444を、スクリーンを観察する方向から投射を行うフロントタイプのプロジェクタ4に搭載したが、これに限らず、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行うリアタイプのプロジェクタに搭載してもよい。
さらには、プロジェクタに限らず、他の光学機器にクロスダイクロイックプリズム444或いは、本発明の光学多層膜を有する光学素子を搭載してもよい。
また、前記実施形態では、光学多層膜3を備えた反射ミラー419を光源装置411と第1レンズアレイ412との間に配置するとしたが、これに限らない。すなわち、光学多層膜3を備えた反射ミラーは、色分離光学装置42にて分光される以前の光束、および、クロスダイクロイックプリズム444より合成された後の光束のうち少なくともいずれか一方に対して設置されればよく、例えば、クロスダイクロイックプリズム444と投射レンズ45との間に配置されてもよい。また、反射ミラー419自体を設けずに、第1レンズアレイ412や第2レンズアレイ413の小レンズ上に光学多層膜3を形成するなどとしてもよい。これらの場合でも、上記実施形態と同様に、光源装置411から黄色光を除去でき、スクリーン上に投影された色再現性と画像コントラストを高めることができる。
前記実施形態では、繰り返し層12において高屈折率層Hの光学膜厚は、繰り返し層12の厚み幅の中心に向かって薄くなり、低屈折率層Lの光学膜厚は、繰り返し層12の厚み幅の中心に向かって厚くなっているとし、繰り返し層12の整合層11の第二の整合部112に隣接する部分近傍では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が6.0程度であり、繰り返し層12の厚み幅の中心部分では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が5.0程度となっているとしたが、これに限られるものではない。繰り返し層12の整合層11の第二の整合部112に隣接する部分近傍では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が6.0程度であり、繰り返し層12の厚み幅の中心部分では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が4.0程度であってもよい。すなわち、繰り返し層12における高屈折率層Hの光学膜厚と、低屈折率層Lの光学膜厚との関係は、3.0≦(繰り返し層12内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層12内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦6.0であれば任意である。
前記実施形態では、繰り返し層32において高屈折率層Hの光学膜厚は、繰り返し層32の厚み幅の中心に向かって薄くなり、低屈折率層Lの光学膜厚は、繰り返し層32の厚み幅の中心に向かって厚くなっているとし、繰り返し層32の厚み幅方向端部側では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が約26.5であり、繰り返し層32の厚み幅の中心部分では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が約15.3となっているとしたが、これに限られるものではない。例えば、繰り返し層32の厚み幅方向端部側では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が30程度であり、繰り返し層32の厚み幅の中心部分では、(高屈折率層Hの光学膜厚)/(低屈折率層Lの光学膜厚)が10程度であってもよい。すなわち、繰り返し層32における高屈折率層Hの光学膜厚と、低屈折率層Lの光学膜厚との関係は、10≦(繰り返し層32内における高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(繰り返し層32内における低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦30であれば任意である。
このようにすることで、光学多層膜の構成が簡素化され、光学多層膜の製造にかかる手間を省くことができる。
また、減光層33は繰り返し層32の両面に対してそれぞれ設けられてもよい。この場合、一対の減光層にてそれぞれ青色光および緑色光の透過率の調整を行うことができるので、調整の幅が広がる。
さらに、整合層31および減光層33は繰り返し層32の同じ面側に設けられてもよい。例えば、光学多層膜は、繰り返し層32と、この繰り返し層32の両面に形成された一対の整合層31と、この整合層31上に形成された1つあるいは一対の減光層33とを備えた構成としてもよい。このような構成でも上記実施形態と同様に、光学多層膜はNDフィルタおよびノッチフィルタとして機能する。
まず、上記実施形態における光学多層膜1(図1参照)の繰り返し層12の効果を確認するために、以下の実験を行った。
(実施例1−1)
上記実施形態における光学多層膜1(図1参照)として使用可能な、繰り返し層と、一対の整合層とを有する光学多層膜を製造した。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ10層とした。また、繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を5に固定し、繰り返し層の両端(光束入射側、光束射出側)にそれぞれ整合層を配置した。
一対の整合層は、それぞれ第一の整合部および第二の整合部を有す。整合層のうち、第一の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有し、第二の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。光学多層膜の高屈折率層及び低屈折率層のはそれぞれ14層である。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が高く、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。
また、上記実施形態における光学多層膜1(図1参照)として使用可能な、繰り返し層と、整合層を有する光学多層膜を製造した。この光学多層膜の構成は表1のようである。
このような光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が高く、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。
また、実施例1の光学多層膜に比べ、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率の変動が非常に少なくなっている。
(7-1.繰り返し層における高屈折率層の光学膜厚と低屈折率層の光学膜厚の比に関して)
上記実施形態における光学多層膜1(図1参照)の繰り返し層12において、高屈折率層の光学膜厚と、低屈折率層の光学膜厚との比に関しての検討を行なった。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚及び低屈折率層の光学膜厚を1.85(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を1に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、反射する光束の波長領域が広すぎ、緑色光に加え、赤色光も反射していることが確認された。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚及び低屈折率層の光学膜厚を5(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を1に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、反射する波長の領域が狭すぎて、十分に緑色光を反射することができないことが確認された。
また、繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚及び低屈折率層の光学膜厚を5としているため、繰り返し層の厚み幅が非常に厚いものとなってしまった。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を4.3、低屈折率層の光学膜厚を2.15(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を2に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、反射する光束の波長領域が広すぎることが確認された。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を4.74、低屈折率層の光学膜厚を1.58(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を3に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が高く、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を4.92、低屈折率層の光学膜厚を1.23(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を4に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が高く、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を5、低屈折率層の光学膜厚を1(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を5に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が高く、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を5.1、低屈折率層の光学膜厚を0.85(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を6に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が高く、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%となっている。
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ10層である。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を5.25、低屈折率層の光学膜厚を0.75(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を7に固定した。なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、反射する波長の領域が狭すぎて、十分に緑色光を反射することができないことが確認された。
以上の参考例1-1から参考例1-8により、繰り返し層では、3.0≦(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)≦6.0とすることにより、青色光(波長領域:約430〜500nm)及び赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率を高くすることができるとともに、緑色光(波長領域:約500〜600nm)の透過率が略0%とすることができることを確認することができた。
(参考例2-1)
整合層を有さず、繰り返し層のみを有する光学多層膜を形成した。
繰り返し層中の高屈折率層の光学膜厚を5、低屈折率層の光学膜厚を1(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)とし、(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を5に固定した。
この光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ5層である。
なお、高屈折率層Hの材料としては、Ta2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
このような光学多層膜では、青色光及び赤色光を透過し、緑色光を反射している。緑色光の透過率は低くなっており、実用に適した光学多層膜となっているものの、緑色光を完全に反射することが困難となっている。
光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ8層とした点以外は参考例2-1と同じ条件とした。
図19にこのような光学多層膜の光束の透過率と、光束の波長領域との関係を示す。
このような光学多層膜では、青色光及び赤色光を透過し、緑色光を反射している。緑色光の透過率は略0%となっている。
光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ8層とした以外は参考例2-1と同じ条件とした。
図20にこのような光学多層膜の光束の透過率と、光束の波長領域との関係を示す。
このような光学多層膜では、青色光及び赤色光を透過し、緑色光を反射している。緑色光の透過率は略0%となっている。
光学多層膜の繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ15層とした以外は参考例2-1と同じ条件とした。
図21にこのような光学多層膜の光束の透過率と、光束の波長領域との関係を示す。
このような光学多層膜では、青色光及び赤色光を透過し、緑色光を反射している。緑色光の透過率は略0%となっている。
以上の参考例2-1〜参考例2-4により、繰り返し層の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ8層以上とすることで、緑色光の透過率を略0%とすることができることを確認することができた。
次に、上記実施形態における光学多層膜3(図4参照)の繰り返し層32の効果を確認するために、以下の実験を行った。
(実施例2−1)
上記実施形態における光学多層膜3として使用可能な、繰り返し層と、一対の整合層とを有する光学多層膜を製造した。図22には、実施例2−1としての光学多層膜における各層と、光学膜厚との関係を示す図を示した。
図22において、光学多層膜の高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ21層とした。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ17層とした。また、繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を18.7に固定し、繰り返し層の両端(光束入射側、光束射出側)にそれぞれ整合層を配置した。そして、繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くしている(変調あり)。さらに、互いに隣接する高屈折率層と低屈折率層との光学膜厚の総和を、1/4λ(λ=430nm)を1と定義して、約4となるようにしている。
一対の整合層は、それぞれ第一の整合部および第二の整合部を有する。整合層のうち、第一の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有し、第二の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
実施例2−1への光の透過実験は大気中において行い、入射光を光学多層膜に対して直交させた。
図23において、本実施例の光学多層膜では、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率が略100%となっている。そして、黄色光(波長領域:約560〜600nm)の透過率は略0%であり、波長幅は約40nmとなっている。また、青色光、緑色光および赤色光の透過率の変動(リップル)が非常に少なくなっている。
図24において、実線は当該角度が90度の場合(0度入射)を示し、太めの点線は当該角度が80度の場合(10度入射)を示し、細めの点線は当該角度が70度の場合(20度入射)を示す。当該角度が90度の場合、反射領域(透過率が略0%となる領域)は、約400〜425nmの短波長領域、および、約560〜600nmの波長領域(黄色光)にて観察される。そして、当該角度を傾斜していくにしたがって反射領域は低波長側へとシフトしていき、20度入射の場合には、反射領域は、約400〜420nmの短波長領域、および、約555〜580nmの波長領域(黄色光)にて観察される。しかしながら、そのシフト量は小さいものであるので、実施例2−1では、入射角度による光透過への影響は小さいことが分かった。
比較例2−1として、繰り返し層と、一対の整合層とを有する光学多層膜を製造した。図25には、比較例2−1としての光学多層膜における各層と、光学膜厚との関係を示す図を示した。なお、この比較例2−1は、上記実施例2−1とは、繰り返し層の厚み幅方向で高屈折率層および低屈折率層の光学膜厚が均一である(変調なし)点で大きく異なる。
図25において、この光学多層膜では、高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ21層とした。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ17層とした。繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を17に固定し、繰り返し層の両端(光束入射側、光束射出側)にそれぞれ整合層を配置した。繰り返し層の厚み幅方向では、高屈折率層の光学膜厚は一律に約3.75とし、低屈折率層の光学膜厚は一律に約0.25にした(変調なし)。これにより、互いに隣接する高屈折率層と低屈折率層との光学膜厚の総和が約4となっている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
一対の整合層は、それぞれ第一の整合部および第二の整合部を有する。整合層のうち、第一の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有し、第二の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
図26において、比較例2−1では、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率の変動(リップル)が顕著である。
比較例2−2として、繰り返し層と、一対の整合層とを有する光学多層膜を製造した。図27には、比較例2−2としての光学多層膜における各層と、光学膜厚との関係を示す図を示した。なお、この比較例2−2は、上記実施例2−1とは、繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)の値が1/20となっている点で大きく異なる。
図27において、この光学多層膜の高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ21層とした。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ17層とした。繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を1/20に固定し、繰り返し層の両端(光束入射側、光束射出側)にそれぞれ整合層を配置した。そして、繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くしている(変調あり)。さらに、互いに隣接する高屈折率層と低屈折率層との光学膜厚の総和を約4となるようにしている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
一対の整合層は、それぞれ第一の整合部および第二の整合部を有する。整合層のうち、第一の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有し、第二の整合部は高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
図28において、比較例2−2では、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640nm〜810nm)の透過率が略100%となっており、黄色光(波長領域:約560〜595nm)の透過率が略0%となっている。また、青色光、緑色光および赤色光の透過率の変動(リップル)が非常に少なくなっている。
図29において、実線は当該角度が90度の場合(0度入射)を示し、太めの点線は当該角度が80度の場合(10度入射)を示し、細めの点線は当該角度が70度の場合(20度入射)を示す。当該角度が90度の場合、反射領域(透過率が略0%となる領域)は、約400〜425nmの短波長領域、および、約560〜595nmの波長領域(黄色光)にて観察される。そして、当該角度を傾斜していくにしたがって反射領域は低波長側へと大きくシフトしていき、20度入射の場合には、反射領域は、約405nm以下の短波長領域、および、約540〜575nmの波長領域(黄色光)にて観察される。このように、比較例2−2では、実施例2−1と比較してシフト量が著しく大きく、入射角度が変化した場合の透過光の角度依存性において劣っていることが分かった。したがって、比較例2−2では、実施例2−1と略同等の反射・透過効果が得られるが、透過光の角度依存性が劣っているため反射ミラーとしては向かないことが分かった。
以上の実施例2−1および比較例2−1により、繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)が18.7であれば、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率が略100%となり、黄色光(波長領域:約560〜590nm)の透過率は略0%となることが分かった。また、繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くすることで、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率の変動(リップル)を小さく抑えることができることが分かった。
また、以上の実施例2−1および比較例2−2により、繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を18.7とすることで、入射角度が変化した場合の透過光の角度依存性に優れた光学多層膜が得られることが分かった。
次に、上記実施形態における光学多層膜3(図7参照)の減光層33の効果を確認するために、以下の実験を行った。
(実施例2−2)
上記実施形態における光学多層膜3(図7参照)として使用可能な、繰り返し層と、整合層と、減光層とを有する光学多層膜を製造した。図30には、実施例2−2としての光学多層膜における各層と、光学膜厚との関係を示す図を示した。
図30において、この光学多層膜の高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ22層とした。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ17層とした。繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を18.1に固定した。繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くしている(変調あり)。さらに、互いに隣接する高屈折率層と低屈折率層との光学膜厚の総和を、約4となるようにしている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
整合層は、繰り返し層の光束入射側に配置され、第一の整合部および第二の整合部を有す。整合層のうち、第一の整合部は、高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。整合層のうち第二の整合部は、高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。
減光層は、高屈折率層、低屈折率層を3層ずつ有す。43層目の高屈折率層では光学膜厚が約0.2となっており、44層目の低屈折率層では光学膜厚が約1.7となっている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
実施例2−2では、赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率が略100%となっている。青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率は65〜75%となっている。黄色光(波長領域:約560〜590nm)の透過率が略0%となっている。また、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率の変動(リップル)が小さいことが分かる。したがって、実施例2−2は、黄色光のみを反射する反射ミラーとして機能すると共に、青色光および緑色光を25〜35%減光するNDフィルタとしても機能することが分かった。
上記実施形態における光学多層膜3(図7参照)として使用可能な、繰り返し層と、整合層と、減光層とを有する光学多層膜を製造した。図32には、実施例2−3としての光学多層膜における各層と、光学膜厚との関係を示す図を示した。なお、実施例2−3は、実施例2−2とは、減光層における高屈折率層および低屈折率層の膜厚のみが異なるものである。
図32において、この光学多層膜の高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ22層とした。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ17層とした。繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を18.2に固定した。繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くしている(変調あり)。さらに、互いに隣接する高屈折率層と低屈折率層との光学膜厚の総和を、約4となるようにしている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
整合層は、繰り返し層の光束入射側に配置され、第一の整合部および第二の整合部を有す。整合層のうち、第一の整合部は、高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。整合層のうち第二の整合部は、高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。
減光層は、高屈折率層、低屈折率層を3層ずつ有す。43層目の高屈折率層では光学膜厚が約1.7となっており、44層目の低屈折率層では光学膜厚が約1.2となっている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
実施例2−3では、赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率が略100%となっている。青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率は45〜55%となっている。黄色光(波長領域:約560〜590nm)の透過率が略0%となっている。また、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率の変動(リップル)が小さいことが分かる。したがって、実施例2−3は、黄色光のみを反射する反射ミラーとして機能すると共に、青色光および緑色光を45〜55%減光するNDフィルタとしても機能することが分かった。
比較例2−3として、繰り返し層と、整合層と、減光層とを有する光学多層膜を製造した。図34には、比較例2−3としての光学多層膜における各層と、光学膜厚との関係を示す図を示した。なお、比較例2−3は、実施例2−2とは、繰り返し層の厚み幅方向で高屈折率層および低屈折率層の光学膜厚が均一である(変調なし)点で大きく異なる。
図34において、この光学多層膜の高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ22層とした。
繰り返し層中の高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ17層とした。繰り返し層中の(高屈折率層Hの光学膜厚の総和)/(低屈折率層Lの光学膜厚の総和)を16.7に固定した。繰り返し層の厚み幅方向では、高屈折率層の光学膜厚は一律に約3.75とし、低屈折率層の光学膜厚は一律に約0.25にした(変調なし)。これにより、互いに隣接する高屈折率層と低屈折率層との光学膜厚の総和が約4となっている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
整合層は、繰り返し層の光束入射側に配置され、第一の整合部および第二の整合部を有す。整合層のうち、第一の整合部は、高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。整合層のうち第二の整合部は、高屈折率層、低屈折率層を1層ずつ有する。
減光層は、高屈折率層、低屈折率層を3層ずつ有す。43層目の高屈折率層では光学膜厚が約0.2となっており、44層目の低屈折率層では光学膜厚が約1.7となっている(1/4λ(λ=430nm)を1と定義)。
また、光学多層膜の高屈折率層Hの材料としては、Nb2O5を使用し、低屈折率層Lの材料としては、SiO2を使用した。
比較例2−3では、赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率が略100%となっている。青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率は45〜55%となっている。黄色光(波長領域:約560〜590nm)の透過率が略0%となっている。
しかしながら、実施例2−3では、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率の変動(リップル)が著しく大きいことが分かる。
以上の実施例2−1および実施例2−2により、図30,32に示すようにして光学多層膜に減光層を設けることにより、赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率が略100%とし、青色光(波長領域:約430〜500nm)および緑色光(波長領域:約500〜560nm)の透過率を45〜75%に制御できることが分かった。これと共に、黄色光(波長領域:約560〜590nm)の透過率は略0%のまま維持できることが分かった。
また、以上の比較例2−3により、繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚を薄くするとともに、低屈折率層の光学膜厚を厚くすることで、青色光(波長領域:約430〜500nm)、緑色光(波長領域:約500〜560nm)および赤色光(波長領域:約640〜810nm)の透過率の変動(リップル)を小さく抑えることができることが分かった。
Claims (12)
- 屈折率の異なる高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された光学多層膜において、
前記光学多層膜は、互いに光学膜厚が異なる高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層さ
れた繰り返し層と、
前記繰り返し層の光束入射側又は光束射出側の少なくとも何れか一方に、赤色光及び青
色光の透過光束の透過損失のうねりを防止するために配置され、高屈折率層と低屈折率層
とがそれぞれ一層以上で交互に積層された整合層とを有し、
前記繰り返し層が、3.0≦(前記繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和
)/(前記繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)≦30であり、
前記繰り返し層の厚み幅の中心に向かって高屈折率層の光学膜厚が薄くなり、低屈折率
層の光学膜厚が厚くなることを特徴とする光学多層膜。 - 請求項1に記載の光学多層膜において、
前記繰り返し層が、3.0≦(前記繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和
)/(前記繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)≦6.0であることを特
徴とする光学多層膜。 - 請求項1又は2に記載の光学多層膜において、
前記繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層の数がそれぞれ8以上であることを
特徴とする光学多層膜。 - 請求項1から3の何れかに記載の光学多層膜において、
前記繰り返し層及び前記整合層を形成する前記高屈折率層は、Ta2O5を含有し、前
記低屈折率層は、SiO2を含有することを特徴とする光学多層膜。 - 請求項1に記載の光学多層膜において、
前記繰り返し層が、10≦(前記繰り返し層内における高屈折率層の光学膜厚の総和)
/(前記繰り返し層内における低屈折率層の光学膜厚の総和)≦30であることを特徴と
する光学多層膜。 - 請求項5に記載の光学多層膜において、
前記繰り返し層における高屈折率層及び低屈折率層の数がそれぞれ15以上であること
を特徴とする光学多層膜。 - 請求項5又は6に記載の光学多層膜において、
前記繰り返し層において、1/4λ(λ=430nm)を1と定義して、互いに隣接す
る高屈折率層の光学膜厚と、低屈折率層の光学膜厚との合計が3.8〜4.2に設定されることを特徴とする光学多層膜。 - 請求項5から7の何れかに記載の光学多層膜において、
前記高屈折率層はNb2O5を含有し、前記低屈折率層はSiO2を含有することを特
徴とする光学多層膜。 - 請求項1から4の何れかに記載の光学多層膜を備えたことを特徴とする光学素子。
- 入射される赤色光、青色光、緑色光の各色光を合成して一定方向に射出する色合成光学
素子において、
前記色合成光学素子は、それぞれが略直交する2側面を有する4つの三角柱プリズムを
備え、この各三角柱プリズムの前記2側面を互いに貼り合わせることで形成されるプリズ
ム集合体と、
前記プリズム集合体の相互に隣接する前記三角柱プリズム間に形成され、交差する一対
の光学多層膜と、を有し、
前記一対の光学多層膜のうち、一方の光学多層膜が、緑色光を反射し、かつ赤色光及び
青色光を透過する請求項1〜4の何れかに記載の前記光学多層膜であり、
他方の光学多層膜が、赤色光又は青色光の何れか一方を反射し、かつ赤色光又は青色光
の何れか他方、及び緑色光を透過する他の光学多層膜であることを特徴とする光学素子。 - 光源から射出された光束を色光毎に画像情報に応じて変調する複数の光変調装置と、
各光変調装置で変調された光束を合成する色合成光学素子と、
この色合成光学素子によって合成された色光を拡大投射して投射画像を形成する投射光
学装置と、を備えたプロジェクタであって、
前記色合成光学素子は、請求項10に記載の色合成光学素子であることを特徴とするプ
ロジェクタ。 - 平板状の透明基板と、
この透明基板上に設けられ、入射される光束より、黄色光を反射し、かつ、青色光、緑
色光及び赤色光を透過する請求項5〜8の何れかに記載の前記光学多層膜と、を備えたこ
とを特徴とする反射ミラー。
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