JP2012226208A - 偏光分離素子、及びそれを用いた偏光変換素子及び画像投射装置 - Google Patents

偏光分離素子、及びそれを用いた偏光変換素子及び画像投射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】入射角度特性を向上させる。
【解決手段】光入射側から順に媒質4と、互いに屈折率の異なる少なくとも2つの薄膜の層を有し、屈折率nHを有する薄膜7の光学厚みnH・dHの平均値をndHとし、屈折率nLを有する薄膜6の光学厚みnL・dLの平均値をndLとしたとき、下記条件式を満たすことを特徴とする偏光分離素子。38°<sin−1(sin(θc)*nH/nb)<52°、100nm<ndL<350nm、100nm<ndH/cos(θc)<200nmただし、θc=cos−1(√(nH2−nL2)/nH)
【選択図】図1

Description

本発明は偏光分離素子に関し、特に積層薄膜を有するものに関する。
偏光を用いて画像を表示する装置において、入射光を互いに直交する2つの偏光へと分離する偏光分離素子が用いられている。偏光分離素子としては、光源からの非偏光光を偏光方向が揃えられた光へと変換する偏光変換素子に用いる素子や、照明光を反射型液晶表示素子へ導くとともに、反射型液晶表示素子により反射された画像光となる偏光光と他の偏光光を分離する素子がある。このような偏光分離素子には、プリズムの接合面に薄膜を積層することにより、ブリュースター角の特性を用いてP偏光を透過しつつ、薄膜干渉によりS偏光を反射させる、いわゆるマクニール型の偏光分離素子がある。本願では、S偏光をS偏光光、P偏光をP偏光光の意味で使用している。
一方で特許文献1には、光の波長以下の微小なピッチで金属グリッドを形成することで、グリッドと垂直に振動する偏光を透過し、グリッドと平行に振動する偏光を反射する素子が開示されている。
特許文献2には、屈折率異方性を有するフィルムの異方性の方向を異ならせて積層させ、偏光方向に対する屈折率差を制御することにより、一方の偏光を透過し、他方の偏光を反射させる偏光分離素子が開示されている。
特表2003−519818号公報 特表2004−530165号公報
しかしながら、特許文献1に開示された素子はグリッドに金属材料を用いるため、偏光分離の際に金属材質による吸収が発生して光量を低下させてしまうという課題があった。
また特許文献2に開示された偏光分離素子は、実用可能な程度の性能を得るためにはフィルム層を100層以上積層する必要があり、膜の総数が多いため光吸収による光量低下が無視できないという課題があった。
そこで、上記課題を解決するために本発明の偏光分離素子は、
入射光のP偏光を透過し、S偏光を反射する偏光分離素子であって、
光入射側から順に、媒質と、互いに屈折率の異なる少なくとも2つの薄膜の層とを有し、
前記媒質の屈折率をnb、
前記薄膜のうち最も屈折率の高い薄膜の屈折率をnH、厚みをdHとしたとき、屈折率nHを有する薄膜の光学厚みnH・dHの平均値をndHとし、
前記薄膜のうち最も屈折率の低い薄膜の屈折率をnL、厚みをdLとしたとき、屈折率nLを有する薄膜の光学厚みnL・dLの平均値をndLとしたとき、下記条件式を満たすことを特徴とする偏光分離素子。
38°< sin−1(sin(θc)*nH/nb) <52°
100nm<ndL<350nm
100nm<ndH/cos(θc)<200nm
ただし、θc=cos−1 (√(nH−nL)/nH)であり、
前記平均値とは前記媒質と隣接する層を除く各層の薄膜の光学厚みの総和を膜層数で割った値とする。
本発明によれば、光量低下を小さくすることが可能な偏光分離素子を提供することができる。
本発明の偏光分離素子の概略構成図 計算モデルに使用した偏光分離素子の構成図 L層の厚みと偏光透過率の関係を示す図 L層の厚みの違いによる特性の違いを示す説明図 実施例1の偏光分離素子の分光透過率 比較例の偏光分離素子の分光透過率 実施例1の偏光分離素子における光入射角度と透過率の関係を示す図 比較例の偏光分離素子における光入射角度と透過率の関係を示す図 実施例1の青色帯域用の偏光分離素子の分光透過率 実施例1における赤色帯域用の偏光分離素子の分光透過率 実施例2の偏光変換素子の分光透過率 実施例3の偏光変換素子の分光透過率 実施例4の偏光変換素子の分光透過率 実施例4の偏光変換素子の透過率の入射角度依存性 実施例5の偏光変換素子の分光透過率 実施例6の偏光変換素子の分光透過率 実施例7の偏光変換素子の構成概略図 実施例8の画像投射装置の構成概略図 従来の偏光分離の説明図
以下に本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は本発明の偏光分離素子10と、偏光分離素子10が、可視光線である入射光12を分離する様子を示す斜視図である。偏光分離素子10は、基材(媒質)であるプリズム3とプリズム4の間に偏光分離膜5が挟まれている。偏光分離素子10にP偏光1(P偏光成分)、S偏光2(S偏光成分)を含んだ入射光12が入射すると、偏光分離膜5によってP偏光1は透過し、S偏光2は反射され、偏光分離が行われる。図1(b)は、偏光分離膜5の構成を抜き出し、拡大した図である。偏光分離膜5は、屈折率nLを有する低屈折率層(以下、L層6とする)と、屈折率nHを有する高屈折率層(以下、H層7とする)の薄膜が交互に積層されている。
まず、比較のためにブリュースター角を用いて偏光分離を行う偏光分離素子について図19を用いて簡単に説明する。図19はブリュースター角を用いた偏光分離を示す模式図である。まず、屈折率nbのプリズム3から屈折率nHを持つH層7に入射角度θiで入射した光線は、プリズム3とH層7の界面で屈折または反射する。このときの屈折角θHはスネルの法則から導く事が出来る。その後、入射光12は屈折率nL(nH>nL)を有するL層6に入射し、H層7とL層6の界面において、屈折角θLで屈折または反射角θHで反射する。ここでθH+θL=90[deg]となるθHの時にブリュースター角の条件を満たし、H層7とL層6の界面でのP偏光の反射は0となる。それに対して、S偏光の反射率は0にはならず、複数の界面での反射の繰り返しにより、ほぼ全てのS偏光は反射角θiで反射される。所定の入射角度θiに対して上記の条件を満たすように、プリズムの屈折率nb、及びH層7の屈折率nH、L層6の屈折率nLを適切に選択すれば、P偏光を透過しS偏光を反射する偏光分離素子が得られる。例えば、θi=45[deg]、nb=1.80、nH=2.40、nL=1.50とすると、上記の条件をほぼ満足する。
これに対して本発明の偏光分離素子は、ブリュースター角を用いず、界面で全反射する角度領域でのP偏光とS偏光の透過率の差を利用して偏光分離を行う。高屈折率層側(H層)から低屈折率層側(L層)へ入射する場合、入射角よりも屈折角の方が大きくなるため、ある角度(臨界角)以上で入射する光線に対しては、屈折角が90[deg]を超え、全ての入射光線が反射する全反射が起こる。
しかし、L層の厚みが極めて薄い場合には、全反射の領域であっても全ての光が反射せず、一部の光はL層を透過する現象が起こる。この透過する光の光量は、当然のことながらL層の厚みに大きく依存するが、それ以外に入射光の偏光状態にも大きく依存する。
図2に光の入射側から順に、プリズム3、高屈折率層(H層7)、低屈折率層(L層6)、高屈折率層(H層7)、プリズム4で構成された偏光分離素子を示す。
図3には、図2のH層7に対して45°で光が入射する場合の各偏光の透過率とL層の物理厚みの関係を示す。尚、図3の計算はH層の屈折率nH=2.4、H層の厚みdHは約60nm、プリズム3の屈折率nb=1.80、L層の屈折率nL=1.25としている。この場合、H層7に対して45°で入射する光線のL層6での屈折角は90°以上となり、全反射の条件を満足する。
また図4(a)、(b)、(c)には、図3においてL層6の物理厚みが互いに異なる(a)、(b)、(c)の領域での光線の振る舞いの違いを示した模式図を示す。図3(c)に示す通り、L層の物理厚みが充分厚い(820nm付近から1000nm付近)場合は、入射偏光に依らず全ての入射光が反射されるため入射光の透過率はほぼゼロとなる。一方で、図3(a)の領域、つまりL層の物理厚みが充分薄ければ、どちらの偏光も透過する。しかし、図3(b)の点線の範囲内(物理厚みがおよそ75nmから300nm付近の領域)においては、P偏光の透過率とS偏光の透過率との間に大きな差が生じていることがわかる。この特性を活かし、H層7とL層6を重ね合わせることによりP偏光、S偏光を偏光方向に応じて透過光、反射光に分離する事が出来る。
さらに、H層の光学厚みを使用波長に対し略λ/4として干渉を用いることで、P偏光の反射を抑え、更にP偏光の透過率を増大させることができる。このように、適切な屈折率の薄膜を適切な厚みで繰り返し積層することにより、ブリュースター角を用いることなくP偏光を透過し、S偏光を反射させる偏光分離素子を構成することができる。
上記の説明の通り、本発明の効果を得るためには、薄膜の材料(屈折率)や厚み、基材(媒質)の屈折率などを適切に選択する必要がある。本発明の偏光分離素子を実施するために、偏光分離素子を構成する要素の各々のパラメータは、下記条件式を満たすことが好ましい。
38°< sin−1(sin(θc)*nH/nb) <52°・・・(1)
100nm<ndL<350nm ・・・(2)
100nm<ndH/cos(θc)<200nm ・・・(3)
ただし、θc=cos−1 (√(nH−nL)/nH) ・・・(4)
式(1)は、さらに以下を満足すると、より好ましい。
42°< sin−1(sin(θc)*nH/nb) <48°・・・(1a)
式(2)は、さらに以下を満足すると、より好ましい。
110nm<ndL<290nm ・・・(2a)
式(3)は、さらに以下を満足すると、より好ましい。
120nm<ndH/cos(θc)<200nm ・・・(3a)
ここで、(4)式のθcはL層で全反射となる臨界角である。本発明の偏光分離素子においては、図1(a)のようにプリズム中で偏光分離膜に45[deg]付近で入射することを想定している。(1)式は、入射角度が45[deg]付近において、L層で全反射となる臨界角条件を満たすようにnH、nL、nbを選択する条件を与えるものである。ただし、厳密に45[deg]とする必要はなく、設計に応じて若干の変更が可能であり、およそ38[deg]から52[deg]の範囲となるようにすれば、本発明の効果を得ることができる。もし(1)式の値が下限値以下となる場合には、偏光分離素子としての作用は期待できない。また上限値以上となる場合は、従来のブリュースター角条件を用いた偏光分離が可能であるが、角度特性が敏感となり本発明の効果は得られないため好ましくない。
また(2)式は、L層の適切な厚みを規定する式であり、図3に示したように最も屈折率の低い屈折率nLを有するL層の光学厚みnL・dLのndLが、上記範囲となるように選択することで、本発明の効果を得ることができる。ただし、ここでの平均値とは、基材と隣接する層(最外層)を除いた各L層の光学厚みの総和を、基材と隣接する層を除いたL層の膜層数で割った値とする。基材に隣接する層を除く理由は、基材に隣接する層は反射防止効果との兼ね合いから本発明の効果を得るために必要な膜厚から大きくずれる可能性があるためである。
さらに(3)式は、H層の適切な厚みを規定する式である。ndHは最も屈折率の高い屈折率nHを有するH層の光学厚みnH・dHの平均値である。ここでの平均値とは、基材と隣接する層(最外層)を除いた各H層の光学厚みの総和を、基材と隣接する層を除いたH層の膜総数で割った値とする。ndH/cos(θc)はH層を伝搬する光の実効的な光路長を表し、この値が、使用波長帯域である400nmから800nmの範囲のある波長λに対して、およそλ/4となるようにすることで、P偏光の反射を抑え良好に偏光分離を行うことができる。ここで、使用波長帯域とは、偏光分離素子が偏光分離(P偏光を50%以上透過し、S偏光を50%以上反射する)を行う波長帯域を指す。(3)式の上限値あるいは下限値を外れると、偏光分離時にP偏光の透過率が低減するか、もしくはS偏光の反射率が低減してしまうため、偏光分離素子としての性能が低下してしまう。尚、式(1)から式(4)の各パラメータは、屈折率分散等により波長に依存するが、使用波長帯域内のある波長λで成り立っていれば良く、より好ましくは使用波長帯域の中心波長であるλ0について成り立っていれば良い。例えば、450nmから650nmの範囲で偏光分離素子として動作する場合、λ0=550nmとしたときに、上記の条件式を満足することがより好ましい。
ここまで本発明の効果を得るために必要な条件式を示してきたが、偏光分離素子が、上記条件式を満たす場合に、基材の材質を一般的なガラスと考えると、特にL層はかなり低屈折率である必要がある。基材の屈折率nbがおよそ1.5から2.0の範囲と考えると、本発明の偏光分離素子におけるL層の屈折率nLは1.30以下、かつH層の屈折率nHは2.0以上であることが好ましい。
また、L層は耐熱性や耐UVなどの信頼性の観点から、無機材料で構成されていることが好ましい。L層として好ましい材料としては、MgF、SiO、Alなどや、これらを1種類以上含む誘電体材料からなることが好ましい。H層として好ましい材料としては、TiO、ZrO、MgO、Ta、Nb、Alなどの金属酸化物を含む誘電体材料を用いることが好ましい。プリズム及び薄膜を無機誘電体で構成すると、吸収損失が抑えられるという効果を得ることができる。また、高い光強度の環境下に配置しても長期に亘って安定した性能を維持することができる。
本発明の偏光分離素子は、積層された薄膜を有する構造であり、様々な方法で作製可能である。例えば、真空蒸着やスパッタリングによる成膜が一般的である。L層はかなり低屈折率であることが好ましいと記載したが、L層に使用する材料の屈折率nLが1.30以上であっても、通常の蒸着法やスパッタリングであっても、斜め蒸着法などの低密度な膜を形成する成膜方法を用いる事で、低屈折率な膜が作成可能である。他にも、低密度な膜を成膜する方法としてはゾルゲル法などがあり、これらの方法またはその組合せによって所望の積層薄膜を製造することが可能である。尚、積層薄膜の製造方法についていくつか例を挙げたが、本発明の偏光分離素子はこれらの製造方法のみに限定されるものではない。
尚、図1においてプリズム3とプリズム4に多層膜が挟まれた偏光分離素子の概略構成図を示したが、プリズム3及びプリズム4の両方が必ずしも必要なわけではなく、入射光12が入射する側のみにある形態であっても、本発明の効果を得ることができる。
また図1(b)では、光入射側のプリズム3、P偏光1が透過する側のプリズム4に接する層は共にL層としているが、その片側のみをL層としてもよい。
(実施例1)
では、本発明の実施例1である偏光分離素子について説明する。実施例1では、赤緑青の3つの波長帯域の光に対応し、各波長帯域の3種類の設計例を説明する。まず表1に緑色帯域用で動作する偏光分離素子の設計値と条件式の値を示す。偏光分離素子の構成概略図は図1と同等のため省略する。H層7としてnH=2.39、L層6としてnL=1.25の薄膜を11層積層した構造を、nb=1.805の2つの直角プリズムの間に挟みこんだ構造とした。
このような屈折率を有する膜の材料として、H層はTiOまたはTiO、ZrOの混合層、L層は低密度なSiO層などがある。SiOの場合、空気とSiOの比率が44:56程度となるようにすると、およそnL=1.25の屈折率を有する層が得られる。尚、表1の接着層とは、偏光分離素子をもう一方の直角プリズムと接合するための層である。このような構成とすることで、入射光が偏光分離膜のどちらの界面から入射しても光学的な特性が保たれる。
図5(a)に実施例1のP偏光透過率、図5(b)にS偏光透過率を示す。TpがP偏光の透過率、TsはS偏光の透過率を表わし、図中の線種の違いは、偏光分離膜に対する光の入射角度の違いを表している。
ここで、比較例として従来のブリュースター角を用いた緑色帯域用の偏光分離素子の設計値と条件式(1)〜(3)の値を表2に示す。表1の実施例1は、各条件式(1)(2)(3)式を満足しているが、表2の比較例1は、入射角度がおよそ45[deg]でブリュースター角となるよう設計されているため、条件式(1)の値が54.5[deg]となり、(1)式を満足しない。
図6(a)、(b)に比較例1のP偏光、S偏光の分光透過率を示す。図5と図6を比較すると、特にP偏光の特性に大きな違いが出ている。比較例1では、ブリュースター角を用いるために、入射角度が45[deg]付近から外れると、P偏光の透過率が急激に低下する。それに対して、本発明の偏光分離素子では、入射角度が変化しても非常に高いP偏光透過率を有している。さらに、比較例1の半分以下の層数でそれを実現しているので、光量低下を小さくすることができる。
図7は、実施例1の偏光分離素子の入射角度と透過率の関係を示す図である。凡例のTp、TsはそれぞれP偏光透過率とS偏光透過率を表わしており、線種の違いは波長の違いを表している。比較例1についても同様の図を図8に示す。2つの図についてTpが高透過率(80%以上)かつTsが低透過率(20%以下)の角度領域(図中矢印で示す)を比較すると、図8に比べて図7の方は領域が広い。つまり、本発明の偏光分離素子は、従来型に比べて広い入射角度範囲で高い検光性能を得ることが可能である。また他の効果としては、少ない膜の層数で所望の偏光分離性能を出すことができる点が挙げられる。
表1に示す例は、緑色帯域用の偏光分離素子であったが、層の厚みを変えることによって青色帯域用、赤色帯域用に応用可能である。実施例1の青色帯域用の偏光分離素子の設計値と条件式(1)〜(3)の値を表3に示し,同様に赤色帯域用の例を表4に示す。どちらも各々の条件式を全て満足している。
図9(a)、(b)に、図7(a)、(b)と同じように、表3の青色帯域用の偏光分離素子の分光透過率を示し、図10(a)、(b)に表4の赤色帯域用の偏光分離素子の分光透過率を示す。図7、図9、図10の各図から明らかなように、波長帯域が変化しても、実施例1の各帯域用の偏光分離素子は、およそ100nm程度の波長帯域幅で、良好なP偏光透過率を示す。つまり、本発明の偏光変換素子は波長帯域に依らず、ブリュースター角を用いた従来の偏光分離素子に対してより良好な角度特性を有している。
(実施例2)
次に、表5に実施例2の偏光分離素子の設計値と、条件式(1)〜(3)の値を示す。尚、実施例2の偏光分離素子の設計波長は540nmであり、緑色帯域にて特に良好な性能を示す。実施例2の偏光分離素子は、基材となるプリズムの屈折率nbが1.6であり、それに合わせて低屈折率層の屈折率が1.25から1.176へと下がることにより、各条件式を満足し、実施例1と同じ層数で、ほぼ同等の性能を得る事ができる。L層が低密度SiO層である場合、空気とSiOの比率は、60:40程度とすることで低い屈折率を実現できる。
図11(a)、(b)に実施例2の偏光分離素子の分光透過率を示す。プリズムの屈折率が1.6に低下した場合においても、特にP偏光において、広い角度範囲で透過率の低下を抑え、良好な偏光分離特性を示す。
(実施例3)
次に、表6に実施例3の偏光分離素子の設計値と条件式(1)〜(3)の値を示す。尚、設計波長は540nmである。実施例3の偏光分離素子は、実施例2と同様に、基材となるプリズムの屈折率nbが1.6の場合であり、実施例2と同じ材料と層数で膜厚の異なる設計値の例を示している。条件式の値について実施例2と比較すると、実施例3はH層、L層の膜厚を変えることにより、条件式(2)は下限値寄り、(3)は上限値寄りとなっているが、各条件式は満足している。
図12(a)、(b)に、実施例3の偏光分離素子の分光透過率を示す。実施例3の偏光分離素子も、S偏光の反射はもちろんのことP偏光においても広い角度範囲でも透過率が低下せず良好な偏光分離特性となっていることが判る。このように、偏光分離素子を構成する要素が、条件式の範囲を満足すれば、その値が条件式の中心値からは多少外れていても、良好な偏光分離特性を示すことがわかる。
(実施例4)
次に、表7に実施例4の偏光分離素子の設計値と条件式(1)〜(3)の値を示す。実施例4の偏光分離素子は、屈折率nbが1.60の直角プリズムの間に、17層の積層薄膜を挟んだ構造となっている。これまでの実施例1から3に比べて層数を11層から17層に増加させることで、白色光のような、より広い波長帯域において、良好な偏光分離特性を示す偏光分離素子としている。尚、低屈折率層の屈折率nLは1.176、高屈折率層の屈折率nHは2.39となっており、表7に示す通り、実施例4の偏光分離素子は各条件式を満足している。
図13(a)、(b)に実施例4の偏光分離素子の分光透過率を示す。図13から、実施例4の偏光分離素子は、波長450nmから650nmの広い波長範囲において、良好な偏光分離特性を示している。また、図14に図7と同じように、実施例4の偏光分離素子の入射角度と透過率の関係を示す。図14から、入射角度が40度から50度の範囲において、450nmから650nmの波長に対して良好な偏光分離特性が得られていることがわかる。このように実施例4では、従来に比べ、広い帯域特性、広い角度特性を両立した偏光分離素子を得る事が出来る。
(実施例5)
次に、表8に実施例5の偏光分離素子の設計値と条件式(1)〜(3)の値を示す。実施例5の偏光分離素子は屈折率nbが1.80の直角プリズムの間に、積層薄膜を挟んだ構造となっており、実施例4に比べて高い屈折率を有するプリズムを有する偏光分離素子の例となっている。それに対応して、低屈折率層の屈折率nLが1.20、高屈折率層の屈折率nHが2.39となっており、実施例5の偏光分離素子は各条件式を満足している。
図15(a)、(b)に実施例5の偏光分離素子の分光透過率を示す。実施例5においても波長450nmから650nmの範囲で良好な偏光分離特性を示していることがわかる。
(実施例6)
次に、表9に実施例6の偏光分離素子の設計値と条件式(1)〜(3)の値を示す。実施例6の偏光分離素子は、屈折率nbが1.71の直角プリズムの間に3種類の異なる屈折率の積層薄膜を挟んだ構造となっている。低屈折率層(nL=1.176)と高屈折率層(nH=2.39)の間に屈折率nが1.62の層を適宜挿入することにより、角度依存性の向上や透過率、反射率のリップルを良好に抑えることができる。実施例6の偏光分離素子は各条件式を満足している。
図16(a)、(b)に実施例6の偏光分離素子の分光透過率を示す。実施例6のように3種類以上の膜材料で構成される場合においても、波長450nmから650nmの範囲で良好な偏光分離特性を示す。
(実施例7)
次に、本発明の実施例7の偏光変換素子について説明する。図17は、偏光変換素子20の構成概略図である。偏光変換素子は、入射する非偏光を偏光方向が揃った偏光へと変換する素子である。非偏光の入射光12(P偏光1とS偏光2が混ざった状態として表現している)は、偏光分離素子10aに入射すると、偏光分離膜5において、P偏光1は透過し、S偏光2は反射される。偏光分離膜5を透過したP偏光1は、さらに、出射側に設けられたλ/2位相差板11を透過する。λ/2位相差板11は、入射光の偏光方向を90[deg]回転させる機能を有するので、入射したP偏光1はS偏光2へと変換されて出射する。また、偏光分離膜5で反射されたS偏光は、偏光分離素子10bにて再度反射され、λ/2位相差板11を透過したS偏光と同一方向に出射される。
偏光変換素子20の光入射側から偏光分離素子10bへと入射する光は、遮光部13により反射され、不図示のランプユニットへ戻る。この結果、偏光変換素子20へ入射した非偏光の入射光12は、S偏光2へと揃えられて出射する。偏光変換素子は、光量損失が少なく、かつ出射される偏光の偏光度(本実施例の場合、出射光のうちS偏光とP偏光の比)が高い方が好ましい。
しかし、従来の偏光分離素子では、良好に偏光分離できる角度範囲が狭いため偏光度が低下しやすかった。また、広い波長帯域で使用する場合にはさらに偏光度が低下していた。そこで偏光分離素子10a、10bに、例えば、本発明の実施例4または実施例5の偏光分離素子を用いることにより、可視光のほぼ全域の広い波長帯域において良好に偏光が分離されるので、偏光度を高めることができる。さらに、他の効果として、広い入射角度に対して良好に偏光分離を行うことが可能となるので、入射光の平行度が低いような場合においても、偏光度の低下を抑えることができる。もちろん実施例1から実施例3の偏光分離素子を用いても、入射角度変化に対する依存が小さい偏光変換素子を提供することができる。尚、本実施例ではS偏光へと偏光を揃える偏光変換素子について説明したが、λ/2位相差板11の配置箇所や位相差をλ/2からλ/4変える等によって、P偏光や左右円偏光など、任意の偏光状態に揃えることが可能な偏光変換素子としてもよい。つまり、本発明は実施例の偏光変換素子の形態に限定されるものではない。
また、λ/2位相差板11は、使用される波長帯域の全域について略一定の位相差を有するものを使用することが好ましい。このような位相差板としては、延伸方向を制御したフィルムを積層したものがある。さらに、位相差板は無機材料で構成されることが好ましい。例えば、無機誘電体結晶を積層したものや、波長以下の微細な周期構造を、適切な周期と構造幅とすることで、使用される波長帯域の全域において、略一定の位相差を有する位相差板を作製することが可能である。
また入射角度による位相のズレや偏光軸のズレを補償するような位相補償板を偏光分離素子10a、10bの入射側または出射側に配置すると、出射偏光方向を入射角度によらず一定方向へ揃えることができるため、尚好ましい。
(実施例8)
次に、本発明の実施例8の画像表示素子(反射型液晶表示素子)を用いた画像投射装置について説明する。図18は画像投射装置100Aの構成概略図の一例である。画像投射装置100の光源21から照射される光束は、リフレクタによって反射され、略平行な光束となって偏光変換素子20に入射する。この図においては、白色平行光束42を緑色、青色、赤色の3原色の光に分解して図示しており、それぞれを緑色光12g、青色光12b、赤色光12rとして図示している。この緑色光、青色光、赤色光それぞれを、図上では便宜上、空間的に分離して記載しているが、これら3色の光は、この段階では空間的に分離されている訳ではない。以下、緑色はG,青色はB、赤色はRと略記する。
光源21から発せられる各色の光は、偏光変換素子20を透過することにより、偏光方向へ揃えられてG偏光2g、B偏光2b、R偏光2rとなり、ダイクロイックミラー24へ入射する。ダイクロイックミラー24は、G偏光2gのみ反射する特性を有し、G偏光2gは反射され、R偏光2r、B偏光2bは、ダイクロイックミラー24を透過するので、G偏光が色分離される。G偏光2gは、そのまま偏光分離素子10cに入射し、偏光分離膜5cを透過したのち、位相差板22gを透過して、G用の画像表示素子23gに入射する。R偏光2rとB偏光2bは、偏光板25を透過するので偏光度が向上した状態で、波長選択性位相差板26に入射する。波長選択性位相差板26は、B偏光2bのみ、その偏光方向を90°変換させる特性を有している。これによりR偏光2rの偏光状態は維持されたまま、B偏光2bの偏光方向のみが90°回転され、偏光分離素子10dに入射する。偏光分離素子10dの偏光分離膜5dにより、B偏光2bは反射され、位相差板22bを透過して、B用の画像表示素子23bに入射する。R偏光2rは、偏光分離膜5d、位相差板22rを透過して、R用の画像表示素子23rに入射する。
画像表示素子23b、23r、23gに入射した光は、画像信号に応じて、画素ごとにその偏光状態が変えられ、反射されることにより画像光となる。画像光とは、画像表示素子により偏光状態が変えられた光のうち、偏光分離素子10cあるいは10dによって投射レンズ30側に導かれる偏光光のことである。また、位相差板22g,22b,22rは偏光分離素子と画像表示素子によって生じる位相のズレを補正して、黒表示時にコントラストを低下させる要因となる漏れ光を低減する。
画像表示素子23bと23rにより反射されたB、Rの画像光は、再び位相差板22b、22rを透過し、偏光分離素子10dに再入射する。偏光分離膜5dを透過したBの画像光27bと、偏光分離膜5dにより反射されたR画像光27rは、偏光分離素子10dを出射して、合成プリズム28に入射する。画像表示素子23gにより反射されたGの画像光も、位相差板22gを透過した後に、偏光分離素子10cの偏光分離膜5cにより反射され、合成プリズム28に入射する。合成プリズム28のダイクロイック膜28aにより、G画像光は反射され、R、B画像光27b、27rはダイクロイック膜28aを透過することで、G、R、Bの光が合成される。合成プリズム28により、合成された画像光は、投射レンズ30(投射光学系)によりスクリーン(被投射面)に投射される。
尚、実施例8の画像投射装置においては、偏光分離素子10cに実施例1の偏光分離素子を用いており、偏光分離素子10dや偏光変換素子20に本発明の実施例4あるいは実施例5の偏光分離素子を用いているが、これに限られない。少なくともいずれか1つに対して用いられれば、本発明の効果を得ることができ、明るい投射画像を得ることができる。その他の効果として、本発明の偏光分離素子を用いることにより、コントラストの改善等の効果が得られる。
実施例8のように、反射型の画像表示素子を用いる場合には、画像表示素子からの画像光と非画像光の分離を偏光分離素子が担っている。そのため、偏光分離素子の特性は表示画像の品位に直接的に影響を与える。例えば、偏光分離特性が十分ではない場合、G光路において、画像表示素子により反射され、偏光分離膜5cを透過して光源側へ戻されるはずのP偏光が一部反射されてしまい、画像光ではないのに、投射レンズ側へ向かってしまうためコントラストが低下する。あるいは、ダイクロイックミラー24から偏光分離素子10bに入射して、偏光分離膜5cを透過することにより画像表示素子を照明するはずの光が、偏光分離膜5cにより反射されてしまうので、光量が低下して表示画像の輝度が下がってしまう。このように、特に明るさとコントラストの高さを要求される画像投射装置においては、偏光分離素子の特性により投射する映像の品位が大きく左右される。このような画像投射装置に、本発明の偏光分離素子を用いることにより、高輝度でありながらコントラストが高く、質の高い画像を表示する画像投射装置を提供する事が出来る。
尚、他の実施例として、透過型の画像表示装置(液晶表示素子)を用いた画像投射装置に、本発明の偏光変換素子を適用すれば、偏光度が向上する、あるいは、光量低下を小さくできるので、明るい投射画像を得ることができる。
尚、図18においては、ダイクロイックミラー24と波長選択性位相差板26を用いてG光路単体とR,B共通光路に分離した光学系としたが、波長選択性位相差板26の特性に応じてR光路単体とB,G共通光路や、R光路単体とB,G共通光路としても良い。また波長選択性位相差板26を用いずに、R、G、B光路を全て分離した光学系であっても良く、これら色分離合成系は本実施例の構成に限定されない。どのような色分離合成系の場合でも本発明の実施例1から実施例5の偏光分離素子を適宜用いる事により、上記説明と同等の効果が得られる。また、各画像表示素子の配置場所は適宜変更してもよい。
また、光源は白色光に限られず偏光光を出射するレーザー等であってもよい。また、実施例8においては投射レンズを含んだ画像投射装置について説明したが、投射レンズを含まない、画像投射装置本体100Bであっても本発明の効果を得ることができる。
1 S偏光
2 P偏光
3,4 基材
5,5c,5d 偏光分離面
6 低屈折率層
7 高屈折率層
10 偏光分離素子

Claims (7)

  1. 入射光のP偏光を透過し、S偏光を反射する偏光分離素子であって、
    光入射側から順に、媒質と、互いに屈折率の異なる少なくとも2つの薄膜の層とを有し、
    前記媒質の屈折率をnb、
    前記薄膜のうち最も屈折率の高い薄膜の屈折率をnH、厚みをdHとしたとき、屈折率nHを有する薄膜の光学厚みnH・dHの平均値をndHとし、
    前記薄膜のうち最も屈折率の低い薄膜の屈折率をnL、厚みをdLとしたとき、屈折率nLを有する薄膜の光学厚みnL・dLの平均値をndLとしたとき、下記条件式を満たすことを特徴とする偏光分離素子。
    38°< sin−1(sin(θc)*nH/nb) <52°
    100nm<ndL<350nm
    100nm<ndH/cos(θc)<200nm
    ただし、θc=cos−1 (√(nH−nL)/nH)であり、
    前記平均値とは前記媒質と隣接する層を除く各層の薄膜の光学厚みの総和を膜層数で割った値とする。
  2. 前記屈折率nLは1.30以下であることを特徴とする請求項1に記載の偏光分離素子。
  3. 前記媒質と前記薄膜は無機材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光分離素子。
  4. 屈折率がnLの層はSiO、MgF、Alのうち少なくとも1種類を含む材料からなることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の偏光分離素子。
  5. 請求項1乃至4いずれか1項に記載の偏光分離素子を有する偏光変換素子。
  6. 請求項1乃至4いずれか1項に記載の偏光分離素子あるいは請求項5に記載の偏光変換素子を有する画像投射装置本体。
  7. 画像を被投射面に投射する投射光学系と、
    請求項1乃至4いずれか1項に記載の偏光分離素子あるいは請求項5に記載の偏光変換素子を有する画像投射装置。
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