以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る画像投影装置の概略の構成を示す断面図である。画像投影装置は、光源1と、第1レンズアレイ4と、第2レンズアレイ8と、ダイクイックミラー13、16と、表示素子である液晶パネル10〜12と、合成プリズムであるダイクロイックプリズム23と、投影レンズ24と、フィルタ31と、を備える。
光源1は、ランダム偏光の白色光を放射する放電ランプである。リフレクタ2は、光源1から出射される光を反射させて照明光学系7に導く反射板である。リフレクタ2は、回転放物面の反射面を有しており、リフレクタ2の焦点位置に光源1が配置されている。光源1からの光は、リフレクタ2にて反射されてIR−UVカットフィルター3を介して第1レンズアレイ4に入射する。IR−UVカットフィルター3は、リフレクタ2の開口部の近傍に配置され、光源1からの直接光及びリフレクタ2からの反射光から、RGB(赤、緑、青)の3色の光に対して不要となる波長域の光を除去するためのフィルタである。
オプティカルインテグレータを構成する第1レンズアレイ4は、二次元状に配列された複数の第1レンズ4aを有するレンズアレイであり、入射光を複数の光束に分割して出射する。複数の第1レンズ4aの各形状は同一である。
偏光ビームスプリッタ5は、直角三角柱状の透明ガラス等からなり、斜面である後面が第1レンズアレイ4の光軸に対して45度の角度をなすように配置され、第1レンズアレイ4により分割された複数の各光束を、偏光方向が互いに直交する第1の直線偏光の光束と第2の直線偏光の光束とに分離する。
具体的には、偏光ビームスプリッタ5の後面には、偏光分離面5aが形成されており、第1レンズアレイ4から入射する光のうち、第1の直線偏光は、偏光分離面5aで45度の入射角に対して直角に反射し、偏光ビームスプリッタ5から出射し、出射後、第2レンズアレイ8に入射する。偏光分離面5aから所定の厚みの間隔を隔てて全反射面5cが対向するように形成されており、第1レンズアレイ4から入射する光のうち、第1の直線偏光に対して直交する第2の直線偏光は、全反射面5cで45度の入射角に対して直角に反射し、偏光ビームスプリッタ5から出射し、出射後、第2レンズアレイ8に入射する。偏光分離面5aと全反射面5cとの間隔は、後述する第2レンズアレイ8の第2レンズ8aのピッチが第1レンズアレイ4の第1レンズ4aのピッチに対して1/2になるように設定される。
オプティカルインテグレータを構成する第2レンズアレイ8は、偏光ビームスプリッタ5により分離された第1及び第2の直線偏光の複数の光束が収束する近傍に二次元状に配列され、その複数の光束と同数の第2レンズ8aを有するレンズアレイである。
即ち、第2レンズアレイ8は、第1レンズアレイ4が有する複数の第1レンズ4aの数の2倍の個数のレンズを有し、図1の左右方向に隣接する各2個の第2レンズ8aは、第1レンズ4aの各1個に対応する。第2レンズアレイ8の射出面のうち第2の直線偏光の光束が出射する部分には、第2の直線偏光の光束を第1の直線偏光と同一の偏光方向に変換するための1/2波長板9が取り付けられている。これによって、2つの直線偏光を一つの偏光方向に揃えて第2レンズアレイ8から出射され、オプティカルインテグレータによって形成される小光源から発する光束が液晶パネル10〜12を効率良く照明することになる。
液晶パネル10は、透過型液晶パネルであり、RGBのうちのBの表示画像を形成する。液晶パネル11は、透過型液晶パネルであり、RGBのうちのGの表示画像を形成する。液晶パネル12は、透過型液晶パネルであり、RGBのうちのRの表示画像を形成する。液晶パネル10〜12は、第1レンズアレイ4の各レンズ4aと夫々光学的に共役の関係にあり、第1レンズアレイ4によって分割された夫々の光束が液晶パネル10〜12上で重ね合わされるため、液晶パネル10〜12は略均一な光量分布で照明される。
液晶パネル10〜12の各色に対応する色光にて照明するために、2つのダイクロイックミラー13、16が設けられる。
ダイクロイックミラー13は、R及びGの波長域の光を反射し、Bの波長域の光を透過させる。反射ミラー14は、分離されたBの波長域の光を液晶パネル10側に向けるためのものである。コンデンサレンズ15は、反射ミラー14で反射されたBの波長域の光を液晶パネル10に照射するためのものである。
ダイクロイックミラー16は、ダイクロイックミラー13を反射したR及びGの波長域の光のうち、Gの波長域の光を反射し、Rの波長域の光を透過させる。コンデンサ17は、ダイクロイックミラー16で分離されたGの波長域の光束を液晶パネル11に照射するためのものである。
ダイクロイックミラー16と液晶パネル12との間には、反射ミラー20、21が設けられる。反射ミラー20は光路を90度折り曲げ、反射ミラー21は光路をさらに90度折り曲げる。ダイクロイックミラー16と反射ミラー20の間にはレンズ18が設けられ、反射ミラー20、21間にはレンズ19が設けられる。
レンズ18、19は等倍のリレー光学系を構成する。液晶パネル10と第2レンズアレイ8との光軸上の距離は、液晶パネル11と第2レンズアレイ8との光軸上の距離に等しいが、液晶パネル12と第2レンズアレイ8との光軸上の距離は、液晶パネル10、11と第2レンズアレイ8との光軸上の距離より長く設定されている。このために、レンズ18、19は等倍のリレー光学系を構成し、オプティカルインテグレータからの照明光を液晶パネル12に中継している。コンデンサレンズ22は、レンズ18、19により導かれたRの波長域の光を液晶パネル12に照射するためのものである。
ダイクロイックプリズム23は、液晶パネル10〜12の各表示画像の光を合成するための画像合成光学系である。ダイクロイックプリズム23は、4個の直角プリズムを接合して構成される。接合面には、赤反射ダイクロイック面と青反射ダイクロイック面が形成される。赤反射ダイクロイック面はRの波長域の光を反射し、G及びBの波長域の光を透過する。一方、青反射ダイクロイック面はBの波長域の光を反射し、G及びRの波長域の光を透過する。液晶パネル11から出射されるGの表示画像光は、赤反射ダイクロイック面及び青反射ダイクロイック面を透過してダイクロイックプリズム23から出射する。また、液晶パネル10から出射されるBの表示画像光は青反射ダイクロイック面により反射してダイクロイックプリズム23から出射する。また、液晶パネル12から出射するRの表示画像光は赤反射ダイクロイック面により反射してダイクロイックプリズム23から出射する。このように、ダイクロイックプリズム23は液晶パネル10〜12から出射するRGBの表示画像光の光軸を一致させて出射する。
投影レンズ24は、ダイクロイックプリズム23により合成された表示画像をスクリーン(図略)上に拡大投影する。
上記の構成により、光源1から放射されたランダム偏光の光束は、リフレクタ2の反射面で反射した反射光とともに、IR−UVカットフィルター3によりRGBの三つの波長域にとって不要となる波長域が除去される。不要な波長域が除去された光は、第1レンズアレイ4により複数の光束に分割される。
第1レンズアレイ4により分割された複数の各光束は、偏光ビームスプリッタ5により、偏光方向が互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離される。即ち、第1レンズアレイ4から射出した光束は、偏光ビームスプリッタ5に入射し、その入射光のうち、第1の直線偏光は、偏光分離面5aで反射して偏光ビームスプリッタ5から出射する。また、偏光分離面5aを透過する第2の直線偏光は、全反射面5cで反射して偏光ビームスプリッタ5から出射する。
偏光ビームスプリッタ5から出射した第1及び第2の直線偏光成分の複数の光束は、それぞれ、第1レンズアレイ4の結像作用により第2レンズアレイ8の近傍で、第1レンズアレイ4により分割された複数の光束の数と同じ個数の小光源を形成する。ここで、第2レンズアレイ8上に形成される小光源のうち、第2の直線偏光が1/2の波長板9によって第1の直線偏光成分の偏光方向に変換され、全ての小光源の偏光方向が揃えられる。
偏光方向が揃えられた光束は、ダイクロイックミラー13、16によりRGBの3色の波長域に分離される。即ち、ダイクロイックミラー13で分離されたBの波長域の光は、反射ミラー14により反射されコンデンサレンズ15を透過した後に、液晶パネル10を照明する。RとGの波長域の光はダイクロイックミラー13を透過し、そのGの波長域の光は、ダイクロイックミラー16により反射され、コンデンサレンズ17を透過した後に液晶パネル11を照明する。Rの波長域の光は、ダイクロイックミラー16を透過し、2つの反射ミラー20、21、及び2つのレンズ18、19により構成されるリレー光学系によりに導かれた後、コンデンサレンズ22を透過し、液晶パネル12を照明する。
液晶パネル10〜12により形成された各表示画像光は、ダイクロイックプリズム23により合成される。即ち、液晶パネル10から出射したBの表示画像光は、ダイクロイックプリズム23に入射し青反射ダイクロイック面によって反射し、投影レンズ24に向けて射出する。液晶パネル12から出射したRの表示画像光は、ダイクロイックプリズム23に入射し赤反射ダイクロイック面によって反射し、投影レンズ24に向けて射出する。液晶パネル11から出射したGの表示画像光は、ダイクロイックプリズム23に入射しそのまま透過し投影レンズ24に向けて出射する。このようにして、液晶パネル10〜12の各表示画像は、光軸を一致させた状態で、投影レンズ24に向けて射出されることにより合成される。この合成された表示画像は、投影レンズ24によってスクリーン(図略)上に拡大投影される。
ここで、RGBの波長域の照明光によって各液晶パネル10〜12が照明されるが、Rの波長域によって照明される液晶パネル12は、レンズ18、19(リレー光学系)を介して照明されるために、GBの波長域によって照明される液晶パネル10、11に対して照度が低下している。特に、リレー光学系の倍率が等倍である場合には、リレー光学系によって周辺の光量がけられ(遮られ)、照明される液晶パネル12の周辺の照度が低下することになる。従って、液晶パネル12から出射されるRの波長域の照明光は、GBの波長域の照明光に対して周辺の光量が低下している。このために、例えば、白色の表示画像をスクリーン上に投影すると、スクリーンの中央部は白色であっても、スクリーンの周辺部では赤色の成分が少なくなり、シアン色傾向の白色となり、スクリーン上に色むらが発生する。
この色むらを解消するために、本実施形態では、ダイクロイックプリズム23の光出射面にフィルタ31を設けている。
フィルタ31は、スクリーンの中央部に対応するフィルタ31の中央の円形部にRGBの3色の色光を含む可視光の反射率を低下させる(反射防止)領域が形成され、その領域では、3色の色光を含む波長域が良好に透過する。その外側の輪帯部には、GBの波長域のみRの波長域より透過率を低減させる領域が形成され、その領域では、シアン色の色光の波長域を反射させる。このフィルタ31の構成により、スクリーンの輪帯状の周辺部において、GBの波長域の光が遮光されるために、シアン色の成分が減衰し、スクリーンの輪帯状の周辺部がその中央部の白色に近似するように補正される。これによって、Rの波長域における周辺光量の低下にともなう色むらが補正される。尚、Bの波長域における周辺光量の低下がある場合には、円形部の外側にGRの波長域の透過率を低減させる領域を形成するようにすればよい。
図2はフィルタの斜視図である。尚、図2では、フィルタ31と液晶パネル10〜12との間に配置されるダイクロイックプリズム23を説明の便宜上、省略している。フィルタ31は、3色の色光の反射を防止するための第1のコート部31aと、RGBの波長域のうちGBの波長域のみRの波長域よりも透過率を低減させる第2のコート部31bとから構成される。第1のコート部31aと第2のコート部31bとは隣接して形成され、その境界線31cは円形に形成される。尚、リレー光学系によって周辺の光量が偏ってけられる(遮られる)場合には、偏る方向に対応させて、境界線31cを楕円形に形成してもよい。
第1のコート部31aは、複数の光学膜を積層した反射防止膜からなり、投影レンズ24(図1参照)の光軸Axを中心とした円形の内部に形成される。一方、第2のコート部31bは、GBの波長域の透過率を低減させる多層の光学膜からなり、円形の外側に形成される。
フィルタ31は、液晶パネル10〜12から所定の距離だけ離間した光軸Ax上に配置される。フィルタ31は夫々の液晶パネル10〜12に対して同じ距離だけ離間しており、また、投影レンズ24の光軸Axは夫々の液晶パネル10〜12の中心に対応しているために、以降の説明では液晶パネル10を代表させて説明する。
液晶パネル10の中心から出射する表示光束(軸上光束)Hpは、フィルタ31の第1のコート部31a内を通過する。一方、液晶パネル10の周辺から出射する表示光束(軸外光束)Htは、その一部が第1のコート部31a内を通過するとともに、その残部が第2のコート部31bを通過する。ここで、図3は、フィルタ31と液晶パネル10との配置を示す図である。
図3に示すように、表示光束(軸上光束)Hpは、投影レンズ24の瞳24aに制限される、液晶パネル10の中心(光軸Ax)から出射する光束である。この表示光束Hpがフィルタ31の第1のコート部31aを通過するように、フィルタ31が配置される。さらに、表示光束(軸外光束)Htは、投影レンズ24の瞳24aに制限される、液晶パネル10の対角位置から出射する光束である。この表示光束Htがフィルタ31の第2のコート部31bとともに第1のコート部31aを通過するように、フィルタ31が配置される。
つまり、フィルタ31は下記の条件式(1)を満たす位置に配置されることになる。ここで、液晶パネル10からフィルタ31までの空気換算長をL(単位mm)、液晶パネル10の対角長をD(単位mm)、液晶パネル10の、投影レンズ24の瞳24aに入射する光軸上の光束(表示光束Hp)の軸上F.noをFで表したときに、
0.3<(L/F)/(L/F+D)<0.7 ・・・(1)
条件式(1)は、スクリーン上の色むらを補正するために、光軸Ax上におけるフィルタ31の位置を適切な範囲に規定するものである。尚、液晶パネル10の表示画像がフィルタ31の第1のコート部31aを通過してスクリーンに投影される領域を第1の領域とし、液晶パネル10の表示画像がフィルタ31の第2のコート部31bを通過してスクリーンに投影される領域を第2の領域とする。条件式(1)の下限を下回ると、フィルタ31が液晶パネル10に近くなりすぎ、第1の領域と第2の領域との境界がスクリーン上に投影されるおそれがあり、その境界近傍の色違いにともなう色むらがスクリーン上に現れるおそれがある。一方、条件式(1)の上限を上回ると、フィルタ31が液晶パネル10から遠くなりすぎ、スクリーン上において、液晶パネル10の周辺部の表示画像を液晶パネル10の中央部の表示画像に対応した色の画像に近似するように補正する効果が得られ難くなる。従って、分光特性等のコート特性を容易に管理することができ、製造が容易であるフィルタ31が得られ、このフィルタ31を条件式(1)の範囲に配置するという簡単な構成により、スクリーン上に投影した画像の色むらを抑えることができる。
フィルタ31は、下記の条件式(1A)を満たす位置に配置されることによって、スクリーン上に投影した画像の色むらを一層良好に抑えることができる。
0.4<(L/F)/(L/F+D)<0.65 ・・・(1A)
上記実施形態では、フィルタ31の円形の境界線31cは、フィルタ31が配置される光軸Ax上の位置における軸上F.noの光束径(軸上光束Hpの外径)より大きく形成される構成である。この構成によって、液晶パネル10の中央部の表示光束が第1のコート部31aを通過することになり、スクリーンの中央部における画像の明るさの減少を防ぐことができる。
図4は、フィルタ31の膜構成を示す断面図である。フィルタ31は、ガラスからなる基板31p(ダイクロイックプリズム23)の表面に第1のコート部31aと第2のコート部31bとを形成して構成される。
第1のコート部31aは、複数の光学膜を積層して形成され、基板31p側から順に、フッ化マグネシウムS1、酸化アルミニウムS2、チタン酸ランタンS3、フッ化マグネシウムS4の4層にて構成される。一方、第2のコート部31bは、フッ化マグネシウムS4の表面に、さらに低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して形成される。すなわち、第2のコート部31bは、前記第1のコート部31aを構成する膜S1〜S4の4層と、第1のコート部31a側から順に、フッ化マグネシウムS5、チタン酸ランタンS6、フッ化マグネシウムS7、チタン酸ランタンS8、フッ化マグネシウムS9、チタン酸ランタンS10、フッ化マグネシウムS11、チタン酸ランタンS12の8層とによる合計12層にて構成される。
第1のコート部31a及び第2のコート部31bは、スパッタ法、電子ビーム蒸着等によって形成される。例えば、スパッタ法によって形成する場合には、基板31p表面の全面に膜S1〜S4(第1のコート部31a)の4層をスパッタ法によって順次形成し、膜S4を形成した後、膜S4の表面に円形状のマスクをする。次に、膜S5〜S12(第2のコート部31b)の8層をスパッタ法によって順次形成する。これによって、円形部は、基板31p側から順にS1〜S4の4層の膜構成となり、輪帯部(円形部の周り)は、基板31p側から順にS1〜S12の12層の膜構成となる。
このように、第1のコート部31aの膜S1〜S4が、第2のコート部31bの膜S1〜S12の一部と同じ膜構成であることによって、第1のコート部31aと第2のコート部31bとを夫々マスクして第1及び第2のコート部31a、31bとを夫々形成する必要がなく、第2のコート部31bを形成するときのみマスクを施せばよい。このために、マスクの位置合わせの作業が1回省かれ、フィルタ31の製造作業が簡略化され、また、第1のコート部31aと第2のコート部31bとの位置精度が向上する。
第1及び第2のコート部31a、31bの具体的な構成を表1及び表2に示す。表1は第1のコート部31aの構成を示し、表2は第2のコート部31bの構成を示す。尚、各層S1〜S12は波長555nmにおける屈折率である。
第1のコート部31aの分光特性を図5に示し、第2のコート部31bの分光特性を図6に示す。図5、図6の横軸は夫々波長を示し、その縦軸は夫々反射率を示す。図5に示すように、第1のコート部31aは、RGBを含む可視の波長域で高い透過率特性を有する反射防止膜となっている。また、図6に示すように、第2のコート部31bはBの波長域を略10%反射させる特性を有するとともにGの波長域を略15%反射させる特性を有し、GBの波長域の透過率を低減させる効果を備える。
上記構成のフィルタ31を介してスクリーン上に画像を投影したときの、色むらを測定した。フィルタ31は、ダイクロイックプリズム23の光出射面に配置した。液晶パネル10からフィルタ31までの空気換算長をLは31mm、液晶パネル10の軸上F.no(F)は2.5、液晶パネル10の対角長Dは17.8mmであって、(L/F)/(L/F+D)は0.41である。GBの波長域には周辺光量の低下がなく、Rの波長域の周辺光量が低下している状態で、液晶パネル10〜12から各表示光束に基づいて白色画像をスクリーンに投影した場合に、画像投影装置に上記フィルタ31を設けていないときには、投影された白色画像のスクリーン上の色度は、スクリーンの中央部では、UCS色度で、(u´、v´)=(0.182、0.454)であり、スクリーンの周辺部では、(u´、v´)=(0.177、0.456)であった。一方、上記フィルタ31を介して投影された白色画像のスクリーン上の色度は、スクリーンの中央部では、(u´、v´)=(0.182、0.454)であり、スクリーンの周辺部では、(u´、v´)=(0.180、0.455)であり、周辺部の色度が白色側に近づき、良好に補正された。
図7は、フィルタ31の膜構成の変形例を示す断面図である。このフィルタ31は、投影レンズ24(図1参照)のダイクロイックプリズム23側に対向するレンズ面(ガラス基板31p相当)に形成される。フィルタ31は、ガラスからなる基板31p(レンズ面)の表面に第1のコート部31aと第2のコート部31bとを形成して構成される。
第1のコート部31aは、複数の光学膜を積層して形成され、基板31p側から順に、フッ化マグネシウムS5、酸化アルミニウムS6、チタン酸ランタンS7、フッ化マグネシウムS8の4層にて構成される。一方、第2のコート部31bは、基板31p側から順に、チタン酸ランタンS1、フッ化マグネシウムS2、チタン酸ランタンS3、フッ化マグネシウムS4の4層と、第1のコート部31aを構成する膜S5〜S8の4層とによる合計8層にて構成される。
第1のコート部31a及び第2のコート部31bは、スパッタ法、電子ビーム蒸着等によって形成される。例えば、スパッタ法によって形成する場合には、基板31pの表面に円形状のマスクをする。次に、膜S1〜S4の4層をスパッタ法によって順次形成する。これによって、膜S1〜S4が輪帯状に形成される。この4層を形成した後、基板31p上からマスクを取り外し、次に、膜S5〜S8の4層をスパッタ法によって順次形成する。これによって、円形部は、基板31p側から順にS5〜S8の4層の膜構成となり、輪帯部(円形部の周り)は、基板31p側から順にS1〜S8の8層の膜構成となる。
このように、第1のコート部31aの膜S5〜S8が、第2のコート部31bの膜S1〜S8の一部と同じ膜構成であることによって、第1のコート部31aと第2のコート部31bとを夫々マスクして第1及び第2のコート部31a、31bとを夫々形成する必要がなく、第2のコート部31bを形成するときのみマスクを施せばよい。このために、マスクの位置合わせの作業が1回省かれ、フィルタ31の製造作業が簡略化され、また、第1のコート部31aと第2のコート部31bとの位置精度が向上する。
第1及び第2のコート部31a、31bの具体的な構成を表3及び表4に示す。表3は第1のコート部31aの構成を示し、表4は第2のコート部31bの構成を示す。尚、各層S1〜S8は波長555nmにおける屈折率である。
第1のコート部31aの分光特性を図8に示し、第2のコート部31bの分光特性を図9に示す。図8、図9の横軸は夫々波長を示し、その縦軸は夫々反射率を示す。図8に示すように、第1のコート部31aは、RGBを含む可視の波長域で高い透過率特性を有する反射防止膜となっている。また、図9に示すように、第2のコート部31bはBの波長域を略10%反射させる特性を有するとともにGの波長域を略15%反射させる特性を有し、GBの波長域の透過率を低減させる効果を備える。
上記構成のフィルタ31を投影レンズ24の最終レンズ面に配置した。液晶パネル10からフィルタ31までの空気換算長をLは38mm、液晶パネル10の軸上F.no(F)は2.5、液晶パネル10の対角長Dは17.8mmであって、(L/F)/(L/F+D)は0.46である。GBの波長域には周辺光量の低下がなく、Rの波長域の周辺光量が低下している状態で、液晶パネル10〜12から各表示光束に基づいて白色画像をスクリーンに投影した場合に、上記フィルタ31を介して投影された白色画像のスクリーン上の色度は、スクリーンの中央部では白色の色度であり、スクリーンの周辺部では、色度が白色側に近づき、良好に補正された。
尚、フィルタ31は、平板ガラスを基板31pとして、その表面に第1のコート部31a及び第2のコート部31bを形成してもよい。
また、3色の色光の反射を防止するための第1のコート部31aをフィルタ31の輪帯部に形成し、Rの波長域のみGBの波長域よりも透過率を低減させる膜構成を第2のコート部31bとして、この第2のコート部31bをフィルタ31の円形部内に形成してもよい。このフィルタ31を介して白色画像をスクリーンに投影した場合には、スクリーンがシアン色側にシフトした状態で色むらが補正され、スクリーン全体の輝度分布が均一になる。
(第2実施形態)
図10、本発明の実施の別形態に係る画像投影装置の概略の構成を示す断面図であり、図11は、上記画像投影装置のDMDの平面図であり、図12は、上記画像投影装置のカラープリズムの断面図であり、図13は、上記画像投影装置のフィルタの平面図である。
図10に示すように、画像投影装置は、光源1と、ロッドインテグレータ52と、照明リレー系53と、TIRプリズム54と、合成プリズムであるカラープリズム63と、表示素子であるDMD44と、投影レンズ24と、フィルタ31と、を備える。
光源1は、ランダム偏光の白色光を放射する放電ランプである。リフレクタ2は、光源1から出射される光を反射させて照明光学系7に導く反射板である。リフレクタ2は、回転楕円面の反射面を有しており、リフレクタ2の一方の焦点位置に光源1が配置されている。光源1からの光は、リフレクタ2にて反射されてロッドインテグレータ52に入射する。
ロッドインテグレータ52は、光源1からの光の光量分布を均一化して出射するものである。ロッドインテグレータ52の断面形状は、DMD44の矩形の画像表示領域と略相似となっている。これにより、ロッドインテグレータ52は、DMD44の矩形の画像表示領域と略相似な照明光束を形成するインテグレータ光学系を構成している。尚、ロッドインテグレータ52の長辺方向は、TIRプリズム54の入射面に対して、実際は45度傾いたねじれの関係にあるが、図10では、説明の理解をしやすくするため、上記入射面と平行に示している。TIRプリズム54の入射面とは、光線束の中心光線がTIRプリズム54の面に入射するときに、その面に入射する中心光線と、入射点における面の法線とを含む平面である。
照明リレー系53の瞳面上には、ロッドインテグレータ52内での反射回数に応じた位置に複数の2次光源像が形成される。また、ロッドインテグレータ52の光出射面とDMD44の画像表示領域とは、照明リレー系53によって略共役となっている。
照明リレー系53は、ロッドインテグレータ52の光出射面の像をリレーしてDMD44に投影することにより、DMD44を均一に照明する光学系である。照明リレー系53によってロッドインテグレータ52からの光を集光することにより、上記光の利用効率を向上させることができる。
上記構成によれば、光源1からロッドインテグレータ52に入射する光は、そこでの内面反射を繰り返してミキシングされ、均一な光量分布となって光出射面から出射される。このロッドインテグレータ52での反射回数に応じて、照明リレー系53内に複数の2次光源像が形成されるが、これらを重畳させることにより、光量分布の均質な照明光を実現することができる。ロッドインテグレータ52から出射される光は、照明リレー系53、及びTIRプリズム54を介して、DMD44に導かれる。
TIRプリズム54は、DMD44への照明光を全反射させ、DMD44からの表示画像光(投影光)を透過させる全反射プリズム(臨界角プリズム)である。
TIRプリズム54は、エアギャップ層を介して2つのプリズム55、56を貼り合わせて構成されている。プリズム55は、第1光入射面55a、臨界面55b及び第1光出射面55cを有しており、プリズム56は、第2光入射面56a及び第2光出射面56bを有している。プリズム55の臨界面55bとプリズム56の第2光入射面56aとは、エアギャップ層を介して対向して配置されている。
照明リレー系53からの照明光は、TIRプリズム54のプリズム55の内部に第1光入射面55aから入射する。プリズム55の臨界面55bは、照明光が全反射するように配置されており、照明光は臨界面55bで反射されて、プリズム55の第1光出射面55cから出射され、カラープリズム63を介してDMD44を照明する。
図11に示すように、DMD44は、矩形の画像表示領域44aを有し、各画素を構成するミラー44bの回動軸44cが画像表示領域44aの長辺44a1及び短辺44a2と45度の角度をなしている。
DMD44の各ミラー44bは、照明光軸の方に12度傾いた状態で照明光を反射させることにより、DMD44の画像表示領域44aに垂直な方向に投影光としてのオン光を射出する。一方、各ミラー44bが逆方向に12度傾いた状態で照明光を反射させることにより、48度の射出角を持ってオフ光を射出する。オン光は、カラープリズム63、TIRプリズム54及び投影レンズ24を順に介してスクリーンに導かれるが、オフ光は、ミラー44bから大きな射出角で射出されるため、投影レンズ24には入射せず、スクリーンには到達しない。このように、各ミラー44bの傾きをON/OFFの2値で制御することにより、DMD44に画像を表示して、その表示画像をスクリーンに投影することができる。
図12に示すように、カラープリズム63は、TIRプリズム54(図10参照)とDMD44との間の光路中に配置される色分離合成手段である。本実施形態では、DMD4は、RGB(赤、緑、青)の3色の光に対応して設けられるDMD44R、44G、44Bからなっており、カラープリズム63は、TIRプリズム54からの光を上記3つの色光に分離して各DMD44R、44G、44Bに導くとともに、各DMD44R、44G、44Bからの反射光を同一光路に合成する。
カラープリズム63は、三角柱状の第1カラープリズム64及び第2カラープリズム65、略四角柱状の第3カラープリズム66が組み合わされている。第1カラープリズム64の、第2カラープリズム65と対向する面にダイクロイック面64Bが形成され、このダイクロイック面64BにてBの波長域の光を反射するとともにRGの波長域の光を透過する。なお、第1カラープリズム64と第2カラープリズム65との間にはエアギャップ層が設けられている。また、第2カラープリズム65の、第3カラープリズム66と対向する面にダイクロイック面65Rが形成され、このダイクロイック面65RにRの波長域の光を反射するとともにGの波長域の光を透過する。第2カラープリズム65と第3カラープリズム66との間にもエアギャップ層が設けられている。
第1カラープリズム64の光入出射面より入射した照明光は、ダイクロイック面64BでBの波長域の光が反射し、RGの波長域の光は透過する。ダイクロイック面64Bで反射したBの波長域の光は、第1カラープリズム64の側面で全反射して、第1カラープリズム64の光入出射面より出射してDMD44Bを照明する。一方、ダイクロイック面64Bを透過したRGの波長域の光のうち、Rの波長域の光は第2カラープリズム65のダイクロイック面65Rで反射し、Gの波長域の光は透過する。ダイクロイック面65Rで反射したRの波長域の光は、第2カラープリズム65の側面で全反射され、第2カラープリズム65の光入出射面より出射してDMD44Rを照明する。ダイクロイック面65Rを透過したGの波長域の光は、第3カラープリズム66の光入出射面より出射してDMD44Gを照明する。
各DMD44R、44G、44Bに入射した光は、そこで変調された後、表示画像光として出射される。DMD44Rで反射したBの表示画像光は、第1カラープリズム64の光入出射面に入射して、第1カラープリズム64の側面で全反射した後、さらにダイクロイック面64Bで反射する。また、DMD44Rで反射されたRの表示画像光は、第2カラープリズム65の光入出射面に入射して、第2カラープリズム65の側面で全反射した後、ダイクロイック面65Rで反射して、さらに、第1カラープリズム64のダイクロイック面64Bを透過する。一方、DMD44Gで反射したGの表示画像光は、第3カラープリズム66の光入出射面に入射して、ダイクロイック面65R及びダイクロイック面64Bを透過する。そして、これらRGBの各表示画像光は、同一光軸に合成され出射して、TIRプリズム54(図10参照)に入射する。合成された表示画像は投影レンズ24(図10参照)によってスクリーン(図略)上に拡大投影される。
ここで、DMD44から出射する表示画像光が必ずしもテレセントリックでないために、カラープリズム63のダイクロイック面64B、65Rに入射する光は、DMD44の表示領域に応じて入射角が異なる。即ち、DMD44の表示領域の中央部から出射する光は、ダイクロイック面64B、65Rに対して所定の角度で入射するが、DMD44の表示領域の一方の周辺部からから出射する光は、ダイクロイック面64B、65Rに対して所定の角度より大きい角度で入射し、一方、DMD44の表示領域の他方の周辺部からから出射する光は、ダイクロイック面64B、65Rに対して所定の角度より小さい角度で入射する。
このように、ダイクロイック面64B、65Rへの表示画像光の入射角度が異なると、その入射角度に応じて、ダイクロイック面64B、65Rを透過する波長と反射する波長が異なり、DMD44の表示領域の位置によって異なる色度で投影されることになり、スクリーン上で色むらが生じる。DMD44の表示領域面の法線とダイクロイック面64B、65Rの法線とが含まれる面に沿った方向、即ち、スクリーンの長辺及び短辺と45度の角度をなす方向に緩やかな色度の変化として出現する。例えば、白色の表示画像をスクリーン上に投影すると、スクリーン上の一方は白色であっても、スクリーン上の白色の部分から45度傾斜した方向にシアン色傾向の白色となり、スクリーン上に色むらが発生する。また、カラープリズム63から出射してDMD44を照明する照明光においても、ダイクロイック面64B、65Rへの入射角度の依存性によって、上記の色むらを発生させる要因となる。
上記の色むらを解消するために、本実施形態では、図13に示すフィルタ31を設けている。フィルタ31は、色むらが発生する方向に対して直角方向に略直線の境界線31fを設けて、その一方の領域には第1のコート部31dが形成され、その他方の領域には第2のコート部31eが形成される構成である。第1のコート部31dは、RGBの色光を含む波長域の反射を防止する多層膜が形成され、第2のコート部31eは、GBの波長域のみRの波長域よりも透過率を低減させる多層膜が形成される。第1のコート部31d及び第2のコート部31eは、第1実施形態の第1のコート部31a、第2のコート部31bと夫々同じ膜構成でもよい。
フィルタ31は、TIRプリズム54(図10参照)の第2光出射面56bに設けられる。また、フィルタ31は、TIRプリズム54(図10参照)の第1光入射面55aに設けてもよく、また、照明リレー系53の最もTIRプリズム54側にあるレンズ面に設けてもよく、さらに別途設けたガラス平板に設けてもよい。上記のように配置されるフィルタ31は、DMD44からフィルタ31までの空気換算長Lが85〜130mmにあり、DMD44の対角長Dは35mm、軸上F.no(F)は2.5であり、(L/F)/(L/F+D)は0.49〜0.6となり、色むらが良好に補正される。
また、DMD44の各画素の傾きや平面性の製造誤差が大きくなると、スクリーンの中央部とその周辺部で色むらが発生するおそれがあるが、その場合には、第1実施形態に示すように、第1のコート部31aをフィルタ31の中央の円形部に形成し、第2のコート部31bを輪帯部に形成するように構成すると、スクリーン上の色むらが補正される。つまり、第1のコート部31aと第2のコート部31bとを有するフィルタ31を用いることにより、DMD44に起因するスクリーン上での色むらを補正することができる。
なお、上記第2実施形態では、3つのDMDを用い、カラープリズム63により色分解・色合成する、いわゆる3板式の画像投影装置に、本発明を適用したが、これに限るものではない。例えば単一のDMDを用い、カラーホイールを照明光路中に配置することで時分割方式により色分解する、いわゆる単板式の画像投影装置に本発明を提供することも可能である。フィルタ31を条件式(1)を満たす位置に配置することにより、単板式であっても色むらを補正することができる。