以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る圧力調理器である炊飯器を示す。この炊飯器は、被加熱物を収容する内鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体11と、該炊飯器本体11に回動可能に取り付けた蓋体22とからなる。
前記炊飯器本体11は、筒形状をなす胴体12と、該胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、胴体12の上端開口を覆うように取り付ける肩体14を有する外装体を備えている。肩体14には、正面側に蓋体22のロック部材31の係合爪部を係脱可能に係合する係合受部15が設けられている。また、肩体14には、その中央開口部の下側に筒状をなす内胴16が配設され、該内胴16の下端に非導電性材料からなる保護枠17が配設されている。
そして、保護枠17の下部外周面には、内鍋10を誘導加熱する第1の加熱手段である誘導加熱コイル18がフェライトコア19を介して配設されている。また、内胴16の外周部には、第2加熱手段である胴ヒータ20が配設されている。さらに、保護枠17には、内鍋10の温度を検出するための第1の温度検出手段である内鍋用温度センサ21が配設されている。本実施形態の誘導加熱コイル18および胴ヒータ20、特に誘導加熱コイル18は、後述する排気通路34をリリーフ弁42により内鍋10内を密閉した状態で動作されることにより、内鍋10内の水を沸騰させ、その蒸気により内鍋10内を大気圧より高い圧力に加圧する加圧手段の役割をなす。
前記蓋体22は、炊飯器本体11の肩体14に対して開閉可能に取り付けられ、炊飯器本体11の開口部を閉塞するものである。この蓋体22は、炊飯器本体11の外装体と共に外表面材を構成する上板23と、該上板23の底を閉塞する下板24とを備えている。そして、この蓋体22において、内鍋10との対向部である下板24の下面には、放熱板の役割をなす金属製のヒータカバー25が配設され、このヒータカバー25上に第3の加熱手段である蓋ヒータ26が配設されている。また、ヒータカバー25上には、内鍋10内の温度を検出する第2の温度検出手段である蓋体用温度センサ27が配設されている。そして、本実施形態の蓋体22には、ヒータカバー25において内鍋10と対向する下側に、内鍋10の上端開口をシールする内蓋38が着脱可能に配設されている。
また、この蓋体22には、上板23の前部に該蓋体22を開放操作するための操作部材28が配設されている。この操作部材28は、上板23の装着孔から外部に露出されるロック解除操作部29を備え、その内面に、ロック部材31を係合解除方向に回転させるための押圧部30を設けたものである。この操作部材28は、図示しないキックバネによって上向きに付勢されている。
さらに、蓋体22には、操作部材28の背部(内部)に位置するようにロック部材31が回動可能に取り付けられている。このロック部材31は、蓋体22を炊飯器本体11に対して閉塞した状態に維持するためのもので、下板24に対して回動可能に装着されている。このロック部材31には、肩体14の係合受部15に係脱可能に係合するL字形状の係止爪部32が設けられている。また、ロック部材31には、背面側上向きに傾斜して延び、操作部材28の押圧部30が当接する受部33が設けられている。そして、このロック部材31は、図示しない付勢手段であるキックバネによって図1に示す係合位置に付勢されている。
そして、蓋体22の内部には、下板24から上板23にかけて延びるダクト部材により構成され、内鍋10内と外部とを連通する排気通路34が設けられている。この排気通路34において、内鍋10と連通する入口側である下板24の開口部には、内鍋10の側より上板23の側に向けて膨出する膨出部35が設けられている。この膨出部35には、後述するリリーフ弁42の駆動手段であるソレノイド48のロッド49を進退可能に挿通する挿通口36が設けられている。なお、ヒータカバー25には、この膨出部35と対応する部分が開口され、その開口縁と膨出部35との間がパッキン37によりシールされている。
前記内蓋38は、金属製の内蓋本体39と、蓋パッキン40と、樹脂枠41とを備え、ヒータカバー25の下部に着脱可能に配設されるものである。そして、この内蓋38には、蓋体22に装着することにより下板24の膨出部35内に配置され、内鍋10内を大気圧より高い圧力に加圧可能な状態とするための密閉手段であるリリーフ弁42が一体的に配設されている。
前記内蓋本体39は、放熱板の役割をなすもので、膨出部35と対応する位置には内鍋10内と連通する開口部が設けられている。前記蓋パッキン40は、内鍋10の開口内周部に密着してシールするものである。前記樹脂枠41は、内蓋本体39の外周部に嵌め込むことによって、蓋パッキン40を内蓋本体39との間に離脱不可能に装着するものである。
前記リリーフ弁42は、台形筒状をなす台座部材43と、該台座部材43を覆うカバー45と、これらの内部に収容された球状部材47とを備えている。台座部材43は、内鍋10内が沸騰状態で、該内鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積の通気孔44を備えている。カバー45は、膨出部35の挿通口36に対応し、パッキン37を介してソレノイド48のロッド49を進退可能に挿通するとともに、内鍋10からの蒸気を流通させる開口部46を備えている。球状部材47は、台座部材43上を転動して通気孔44を閉塞することにより、内鍋10内の空気が外部に排気されるのを防止し、内鍋10内を大気圧より高い圧力に加圧可能とする。また、ロッド49に押圧されて排気通路34の閉塞を解除(開放)することにより、内鍋の内圧を大気圧に戻す(平衡)ものである。本実施形態では、この球状部材47は、内鍋10内の圧力が1.30atmより高い圧力まで昇圧すると、その圧力で通気孔44上から離反するように転動し、内鍋10内の蒸気を外部に排出可能な重量W1のものを使用している。
前記リリーフ弁42は、マイコン72により動作されるソレノイド48の駆動により動作される。具体的には、ソレノイド48は、電力が通電されるとロッド49をロック部材31の側に進出させることにより(進出位置)、球状部材47を自重で転動させて該球状部材47で通気孔44を閉塞する。一方、電力が遮断されると内蔵した付勢手段であるスプリング(図示せず)によってロッド49を後退させることにより(後退位置)、一端が膨出部35内に進入する方向に移動して球状部材47を通気孔44上から離反させ、該通気孔44を開放するものである。なお、膨出部35の挿通口36にはシール部材50が配設され、該シール部材50を介してロッド49で球状部材47が動作される。また、ロッド49には、内鍋10内を加圧可能な進出位置に移動した状態でロック部材31の受部33の下部に進入し、該ロック部材31の係合解除方向を阻止するスライド部材51が配設されている。
この蓋体22は、ロック部材31および操作部材28が蓋体22を炊飯器本体11に対して開放するための蓋体開放機構を構成する。また、ロッド49とスライド部材51とがソレノイド48により動作される移動部材を構成し、この移動部材が、前記操作部材28のロック解除操作部29の操作による前記ロック部材31の係合解除方向への移動を阻止するロック機構を構成する。そして、これら蓋体開放機構とロック機構とで、蓋体開閉機構を構成する。即ち、本実施形態の蓋体開閉機構は、操作部材28、ロック部材31、ロッド49およびスライド部材51により構成されている。
なお、密閉手段および蓋体開閉機構を構成する以上の構成部品、即ち、蓋体22に形成する膨出部35、蓋体22に配設するリリーフ弁42、および、スライド部材51などの構成は、従来の圧力炊飯器でも搭載されているものである。
そして、本実施形態では、前記リリーフ弁42の台座部材43に、ロッド49が進出した状態、かつ、内鍋10内が大気圧より高い所定圧力に昇圧した状態で、その圧力によってロッド49の端部と球状部材47との間に進入し、蓋体開閉機構の構成部材であるロッド49の後退位置への移動を阻止することにより、スライド部材51によるロック部材31のロック状態の解除を阻止するストッパ部材52が配設されている。このストッパ部材52の上端には、台座部材43の貫通孔43aの上縁に引っ掛かって係止する係止部53が外向きに突出するように設けられている。また、ストッパ部材52の下端にはフランジ部54が外向きに突出するように設けられ、このフランジ部54上にパッキン55が配設されている。そして、本実施形態のストッパ部材52には、上端部に前方であるロッド49の側に向けて下向きに傾斜する当接面部56が設けられている。この当接面部56は、ソレノイド48が非常通電状態で後退位置に移動した時に、内鍋10の内圧が下がってもロッド49(シール部材50)の摩擦力によりストッパ部材52が下向きに移動しない不都合が発生する可能性があるため、設けられている。なお、各図では、当接面部56は、ロッド49の進退方向(水平)に対する傾斜角度(なす角)αが、45度になるようにしている。また、このストッパ部材52は、軸方向を中心として台座部材43に対して回転不可能とするガイド部を設けることが好ましい。このガイド部は、例えば、ストッパ部材52の外周部および台座部材43の貫通孔43aのうち、一方に凸部を設け、他方に凹部を設ける構成が適用可能である。
次に、前記ストッパ部材52の当接面部56の傾斜角度αおよび自身の自重W2の設定について説明する。
図3に示すように、球状部材47は、前述のように、内鍋10内を昇圧する目標圧力(例えば1.25atm)より僅かに高い圧力(例えば1.30atm)になると、内鍋10内の蒸気による圧力で通気孔44上から押し退けられる重量W1のものを適用している。そこで、ソレノイド48は、非通電状態でロッド49を後退位置に移動させるスプリングの付勢力Fkが、重量W1の球状部材47を移動可能な最小限のものを適用する。
一方、ソレノイド48への非通電状態で、ロッド49の一端がストッパ部材52の当接面部56に当接すると、スプリングの付勢力Fkが、該当接面部56の傾斜により、当接面部56に平行な図中右上方向の分力と、当接面部56に対して鉛直な方向の分力に分解される。この際、ストッパ部材52が固定であり、ロッド49が自由に移動可能である場合には、ロッド49が当接面部56に平行な方向の分力に従って当接面部56に沿って上るように作用する。しかし、ストッパ部材52は垂直方向に移動可能で水平方向に移動不可能であり、また、ロッド49は水平方向に移動可能で垂直方向に移動不可能である。そのため、本実施形態では、当接面部56の傾斜により、該ストッパ部材52を下向きに移動させる力Fvが作用する。
そして、ソレノイド48のスプリングの付勢力Fkによってストッパ部材52を下向きに移動させる力Fvは、当接面部56の傾斜角度を調整(水平(0度)を含む)することにより、調整することが可能である。また、ストッパ部材52が下向きに移動する力としては、自身の自重W2による力Fgが更に加わる。一方、炊飯制御中において、球状部材47で通気孔44を閉塞した状態では、ストッパ部材52には内鍋10の内圧Pによる力Fpが加わる。
そして、本実施形態では、内鍋10の内圧Pが第1の設定圧力P1(例えば1.05atm)以上では、スライド部材51がロック部材31の受部33の移動領域内に位置している状態を維持し、蓋体22を開放不可能なロック状態に保持するために、Fp1≧Fv+Fg(Fp1:内圧Pによりストッパ部材52に加わる上向きの力)となるように、当接面部56の傾斜角度αおよび重量W2を設定している。勿論、シール部材50による摩擦抵抗および貫通孔43aの内径を考慮することは言うまでもない。
前記炊飯器において、肩体14の正面上部には、ユーザが炊飯条件を入力したり、該炊飯器の動作状態を表示するための操作パネル57が配設されている。この操作パネル57は、図4に示すように、中央に表示手段である液晶表示板58を備えている。この液晶表示板58の中段には、予約時刻や炊飯に要する残時間などを示す数値セグメント59が設けられている。そして、この数値セグメント59の上部には、無洗米の選択状態であるか否かを文字で示す無洗米セグメント60が設けられるとともに、その横に数値セグメント59の表示が炊飯に要する残時間(分)であることを文字で示すアトセグメント61が設けられている。また、数値セグメント59の下部には、2種の予約炊飯を「予約」、「1」および「2」という文字および数字で示す予約セグメント62が設けられている。さらに、この予約セグメント62の横には、内鍋10内を加圧しており内圧が予め設定した基準圧力より高いという圧力状態を文字で示す圧力表示部である圧力セグメント63が設けられている。さらにまた、この圧力セグメント63の横には、数値セグメント59の表示が炊飯に要する時間の単位を文字で示す分セグメント64が設けられている。そして、この液晶表示板58の周囲には、炊飯メニューの選択状態を示すために三角形状をなす複数の印セグメント65が設けられている。
また、操作パネル57には、液晶表示板58の周囲において、印セグメント65の横に位置するように、複数の炊飯メニューとして、白米の「ふつう」、「もちもち」および「しゃっきり」、そして、他の「熟成炊き」、「白米急速」、「炊きこみ」、「すしめし」、「おかゆ」、「おこわ」、「玄米」、「玄米活性」という文字表示66が設けられている。さらに、液晶表示板58の下側部には、2種の保温温度の選択状態を表示するために、「標準」および「高め」という文字で示す保温表示部67が設けられるとともに、それぞれに対応するLED68が設けられている。
さらに、操作パネル57は、入力手段である複数のスイッチ69a〜69hを備えている。液晶表示板の右側には、炊飯処理の実行スイッチである炊飯スイッチ69aと、予約炊飯の選択スイッチである予約スイッチ69bと、現在時刻や炊飯時刻などを変更するためのアップスイッチ69cおよびダウンスイッチ69dと、が設けられている。また、液晶表示板58の左側には、炊飯および保温制御や選択状態を解除(停止)するためのとりけしスイッチ69eと、炊飯メニューを選択するためのメニュースイッチ69fと、無洗米であるか否かを選択するための無洗米スイッチ69gと、保温制御の実行スイッチであるとともに保温制御のモードを選択するための保温選択スイッチ69hと、が設けられている。
このように構成した圧力炊飯器は、炊飯器本体11の正面側にホルダー70を介して制御基板71が配設され、該制御基板71に実装した制御手段であるマイコン72により、予め設定したプログラムに従って制御が実行される。具体的には、マイコン72には、不揮発性の記憶手段であるROM73が内蔵され、このROM73に、炊飯および保温制御を含む複数の実行プログラム、および、各実行プログラムで使用する設定データ(データテーブル)などが記憶されている。
次に、マイコン72による炊飯制御について具体的に説明する。
ユーザが炊飯スイッチ69aの操作を検出すると、マイコン72は、まず、誘導加熱コイル18に通電を開始し、内鍋10の温度が約50℃程度となるように温度調節して加熱する予熱工程を実行する。
そして、予め設定した時間が経過することにより予熱工程が終了すると、ソレノイド48への通電を開始してリリーフ弁42をオンすることにより内鍋10内を加圧可能な状態とした後、圧力セグメント63を点灯させる。
ついで、誘導加熱コイル18に対して100%(フルパワー)の電力で通電し、内鍋10内の飯米を含む水を沸騰させる昇温工程を実行する。また、この昇温工程と並行して、加熱中の内鍋10の温度の上昇勾配により、内鍋10内に収容された炊飯容量を判別する容量判別工程を実行する。
昇温工程が終了すると、蓋体用温度センサ27の入力値に基づいて誘導加熱コイル18を制御する沸騰維持工程を実行する。
予め設定した時間が経過することにより沸騰維持工程が終了すると、誘導加熱コイル18に対する通電量を上げる炊き上げ工程を実行する。
この炊き上げ工程で、検出温度に基づいて内鍋10内のドライアップを検出すると、ソレノイド48への通電を遮断して内鍋10内への圧力投入を解除するとともに、誘導加熱コイル18への通電は遮断する一方、胴ヒータ20および蓋ヒータ26に通電を開始するむらし工程を実行する。
また、むらし工程と並行して操作パネル57の圧力セグメント表示変更処理を実行する。この圧力セグメント表示変更処理は、ソレノイド48への通電を遮断した圧力投入解除時の温度から、内鍋10内が大気圧と平衡する圧力(対応する温度)に降下するまでの時間を設定し、その設定時間の経過後に圧力セグメント63の表示を消灯するものである。
予め設定した時間が経過することにより、表示変更処理を含むむらし工程が終了すると炊飯処理を終了し、続いて保温制御に移行する。
次に、炊飯制御中のソレノイド48に対する通電制御に伴うリリーフ弁42およびストッパ部材52の動作について具体的に説明する。
まず、予熱工程では、ソレノイド48に対して通電することなく、内鍋10内の圧力も上昇していないため、図5(A)に示すように、ストッパ部材52は下降状態であり、球状部材47は後退位置のロッド49により押圧されて通気孔44から離反した状態となっている。
そして、昇温工程に移行し、ソレノイド48への通電を開始すると、図5(B)に示すように、ロッド49がスプリングの付勢力Fkに抗して進出し、その進出位置を維持する。これにより、球状部材47は、自重により転動し、通気孔44上に位置することによって排気通路34を閉塞し、内鍋10内を大気圧より高い圧力に加圧可能な状態とする。また、この進出位置では、移動部材であるスライド部材51が前向きに進出し、ロック部材31の受部33の移動領域である下方に進入する。これにより、操作部材28のロック解除操作部29を押圧操作し、押圧部30で受部33を下向きに押圧しても、ロック部材31が回動することを阻止できる。その結果、ロック部材31の係合爪部と炊飯器本体11の係合受部15との係合を解除できない。
昇温工程の実行により内鍋10内の温度が上昇し、収容した水が沸騰することにより、密閉された内鍋10内の圧力が、大気圧より高く第1設定圧力P1より低い第2圧力P2まで昇圧すると、図5(C)に示すように、その圧力でストッパ部材52が膨出部35内に位置するカバー45内に上昇(進入)する。この状態では、ストッパ部材52がロッド49の一端と球状部材47の間に位置し、ロッド49の移動方向上にはストッパ部材52の傾斜した当接面部56が位置する。
この状態で、昇温工程が終了し、続いて沸騰維持工程および炊き上げ工程が終了する。そして、むらし工程に移行することによりソレノイド48への通電が遮断されると、図5(D)に示すように、ロッド49がスプリングの付勢力Fkによって後退方向に移動され、ロッド49の一端がシール部材50を介してストッパ部材52の当接面部56に当接する。この際、内鍋10内の圧力は、誘導加熱コイル18への通電の遮断により次第に降下するが、通気孔44が球状部材47によって閉塞された状態を維持しているため、その下降勾配は緩やかである。よって、ソレノイド48への通電を遮断した直後は、大気圧より高い第1設定圧力P1より更に高い圧力となっている。その結果、ストッパ部材52は、垂直下向きに作用する力Fvと自重W2による力Fgを加算した力より、高い圧力で上向きに押圧されるため、上昇した状態を維持する。これにより、ソレノイド48のロッド49は後退位置への移動が阻止され、図示のように、ロック部材31の係合解除方向への移動を阻止した状態を維持する。
一方、むらし工程では、内鍋10内の圧力が自然に降圧し、内鍋10内が第1設定圧力P1まで降圧すると、ストッパ部材52を垂直下向きに作用する力Fvと自重W2による力Fgを加算した力が上回ることにより、内鍋10の内圧Pに抗してストッパ部材52が下向きに移動される。この結果、ロッド49がスプリングの付勢力Fkによって後退位置まで移動可能な状態になり、図5(A)に示すように、球状部材47を押圧して通気孔44上から離反させる。これにより、スライド部材51がロック部材31の受部33の移動領域から離反し、蓋体22のロックを解除する。但し、内鍋10内の圧力が第2圧力P2より高い状態では、ストッパ部材52は、上端がロッド49の外周部に当接した状態をなす。
このように、本発明の圧力炊飯器は、内鍋10の内圧に連動させて内蓋38を移動させるのではなく、専用のストッパ部材52を内蓋38に設けているため、大気圧より高く内鍋10を加圧可能な最大圧力より低い低圧状態P2で、ストッパ部材52を確実に動作させることができる。そのため、ユーザによる蓋体22の開放を阻止する必要がある内鍋10内の圧力が大気圧より高い状態P1で、蓋体開閉機構の構成部材のロック解除動作を阻止することができる。
そして、この構成は、炊飯中に意図しない停電が発生した場合に特に有効である。即ち、通常の炊飯制御中に蓋体22を開放するユーザは殆どいない。しかし、何らかの理由で炊飯を停止するために、ユーザが電源コードを商用電源から引き抜いたり、停電により炊飯制御が停止した場合には、ユーザが蓋体22を開放して炊飯状態を確認する可能性がある。そして、炊飯制御を実行した場合には、前述のように、沸騰維持工程を実行していると、内鍋10内が大気圧より高い状態となっている可能性が高い。
しかし、本実施形態では、電力を消費することなく、内鍋10の内圧に連動して確実に動作可能なストッパ部材52を配設しているため、商用電源からの電力が遮断されることにより、ソレノイド48への通電が遮断された場合でも、前記と同様に作用をなす。よって、内鍋10の内圧が大気圧より高い設定圧力P1より高い状態では、確実に蓋体22を開放することを阻止することができる。
また、本実施形態では、ストッパ部材52を動作前の状態に戻す付勢部材を設けていないため、構造の簡素化を図り、コストダウンを図ることができる。さらに、内蓋38は、蓋体22に対して移動可能とする必要がないため、確実に内鍋10の上端開口をシールすることができる。しかも、ストッパ部材52は、内鍋10の内圧に連動するものであるため、不要な待機時間を含むことはなく、ユーザの安全を確保可能な圧力状態でのみ、開放可能となるうえ、内鍋10内の圧力の検出手段や制御プログラムを追加する必要もない。
そして、本発明のストッパ部材52は、従来から既存の膨出部35およびリリーフ弁42の構成に付加するものであるため、蓋体22の大幅な設計変更をすること必要がないうえ、排気漏れなどの問題が生じることもなく、簡単かつ確実に実施できる。
図6は第1実施形態の圧力炊飯器の変形例を示す。この第1実施形態の変形例では、ロッド49の進退方向に対して、ストッパ部材52と球状部材47とを平行に配設し、ロッド49には、ストッパ部材52と球状部材47とにそれぞれ当接するように略Y字形状をなすように一対の当接端部(球状部材の側は図示せず)を設けた点でのみ、第1実施形態と相違している。この変形例では、ロッド49の進退範囲を少なくすることができるため、小型化を図ることが可能になる。
図7および図8は第2実施形態の圧力炊飯器を示す。この第2実施形態では、ストッパ部材52を含むリリーフ弁42を、蓋体22のヒータカバー25に一体的に配設した点で、第1実施形態と相違している。そして、このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。また、第1実施形態のように、着脱可能な蓋体22に設けるものではないため、オネバを含む蒸気が付着するリリーフ弁42およびストッパ部材52を洗浄することが困難になるが、ユーザによる誤装着に伴う動作不良の発生を防止できる。
図9および図10は第3実施形態の圧力炊飯器を示す。この第3実施形態では、リリーフ弁42を、球状部材47の代わりにストッパ部材52の内部に内臓させた弁体77により構成した点で、第1実施形態と大きく相違している。
具体的には、第3実施形態のリリーフ弁42には、台座部材43に通気孔44を設けることなく、ストッパ部材52を昇降可能に挿通する貫通孔43aのみが設けられている。また、この台座部材43とカバー45との内部には球状部材47は配設されていない。
第3実施形態のストッパ部材52は、第1実施形態と同様に、上端に台座部材43の貫通孔43aの上縁に引っ掛かって係止する係止部53および、下端にパッキン55を配設するフランジ部54が形成されている。また、ストッパ部材52の上端部には、ロッド49の側に向けて下向きに傾斜する当接面部56が設けられている。そして、本実施形態のストッパ部材52には、上下端にかけて貫通するように通気孔44が設けられている。この通気孔44は、上部にスプリング74の一端を係止する段部75を備えている。また、通気孔44の入口部76は、別体のフランジ部54に設けられ、その内径は若干小さく形成されている。そして、通気孔44の内部には、スプリング74の付勢力で入口部76を閉塞する弁体77が配設されている。この弁体77は、内鍋10内の圧力が1.30atmより高い圧力まで昇圧すると、その圧力でスプリング74の付勢力に抗して上向きに移動し、入口部76を開放させるものである。
なお、本実施形態のストッパ部材52は、弁体77およびスプリング74を含めた総重量が第1実施形態と同様のW2となるように設定する。
このように構成した第3実施形態では、ユーザが炊飯スイッチ69aの操作を検出すると、第1実施形態と同様に、予熱工程を実行した後、ソレノイド48への通電を開始してスライド部材51によりロック部材31の回動を阻止し、蓋体22を開放不可能な状態にロックするとともに、圧力セグメント63を点灯させる。その後、昇温工程および容量判別工程を並行処理した後、沸騰維持工程および炊き上げ工程を経てむらし工程を実行する。そして、このむらし工程の際に、ソレノイド48への通電を遮断してロッド49を後退位置に移動させるとともに、圧力セグメント表示変更処理を実行する。また、むらし工程が終了すると、続いて保温制御に移行する。
次に、炊飯制御中のソレノイド48に対する通電制御に伴うリリーフ弁42およびストッパ部材52の動作について具体的に説明する。
まず、予熱工程では、ソレノイド48に対して通電することなく、内鍋10内の圧力も上昇していないため、図10(A)に示すように、ストッパ部材52は下降状態となっている。
そして、昇温工程に移行し、ソレノイド48への通電を開始すると、図10(B)に示すように、ロッド49がスプリングの付勢力Fkに抗して進出し、その進出位置を維持する。これにより、スライド部材51がロック部材31の受部33の移動領域である下方に進入し、炊飯器本体11に対して蓋体22を開放不可能なロック状態とする。
昇温工程の実行により内鍋10内の温度が上昇し、収容した水が沸騰すると、内鍋10内の圧力が大気圧より高く第1設定圧力P1より低い第2圧力P2まで昇圧する。これにより、図10(C)に示すように、その圧力でストッパ部材52が上昇する。この状態では、ストッパ部材52がロッド49の一端における後退方向上に位置する。
そして、むらし工程に移行することによりソレノイド48への通電が遮断されると、図10(D)に示すように、ロッド49がスプリングの付勢力Fkによって後退方向に移動され、ロッド49の一端がストッパ部材52の当接面部56に当接する。この際、内鍋10内の圧力が、第1設定圧力P1より高い圧力となっている状態では、第1実施形態と同様に、ロッド49が当接面部56に当接し、後退方向の移動を阻止した状態を維持する。そして、自然降圧により内鍋10内が第1設定圧力P1より低くなると、内鍋10の内圧に抗してストッパ部材52が下向きに移動し、蓋体22のロックが解除される。
このように、構成した第3実施形態の圧力炊飯器は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、この第3実施形態では、リリーフ弁42を構成する弁体77をストッパ部材52に内臓させ、球状部材47は用いていないため、従来から既存の膨出部35および台座部のスペースを大きくする必要はない。よって、第1実施形態と比較して更に簡単に実施することが可能である。また、この第3実施形態では、第1実施形態の変形例と同様に、ロッド49の進退範囲を少なくすることができるため、小型化を図ることが可能になる。
図11および図12は第4実施形態の圧力炊飯器を示す。この第4実施形態では、前記各実施形態ではストッパ部材52を蓋体22のリリーフ弁42を構成する膨出部35内に配設したのに対し、下板24を貫通させて蓋体開閉機構の構成部品であるスライド部材51の移動領域に進退可能に配設した点で、各実施形態と大きく相違している。
具体的には、この第4実施形態のリリーフ弁42は、球状部材47のみを転動可能に収容した従来の圧力炊飯器と同一構成のものである。そして、内鍋10の上端開口に対して平行に移動するスライド部材51には、前側の枠部に下面開口の係止穴78が設けられている。また、下板には、スライド部材51がロッド49の進出に連動して進出し、ロック部材31の受部33の移動領域下側に位置した状態で、係止穴78に一致する挿通穴79が設けられている。
そして、着脱可能な内蓋38には、蓋体22に装着した状態で前記挿通穴79に対して上下に対応する位置に、リリーフ弁42の台座部材43と同様の台座部材80が配設され、この台座部材80に各実施形態と同様のストッパ部材52が配設されている。
このように構成した第4実施形態は、予熱工程では、ソレノイド48に対して通電することなく、内鍋10内の圧力も上昇していないため、図12(A)に示すように、ストッパ部材52は下降状態となっている。
そして、昇温工程に移行し、ソレノイド48への通電を開始すると、図12(B)に示すように、ロッド49がスプリングの付勢力Fkに抗して進出し、その進出位置を維持する。これにより、球状部材47の押圧を解除し、該球状部材47で通気孔44を閉塞して内鍋10内を加圧可能な状態とする。また、スライド部材51がロック部材31の受部33の移動領域である下方に進入し、炊飯器本体に対して蓋体22を開放不可能なロック状態とする。
昇温工程の実行により内鍋10内の温度が上昇し、収容した水が沸騰すると、内鍋10内の圧力が大気圧より高く第1設定圧力P1より低い第2圧力P2まで昇圧する。これにより、図12(C)に示すように、その圧力でストッパ部材52が上昇する。その結果、ストッパ部材52の当接面部56がスライド部材51の係止穴78の内部に進入する。
そして、むらし工程に移行することによりソレノイド48への通電が遮断されると、図12(D)に示すように、ロッド49がスプリングの付勢力Fkによって後退方向に移動され、連動してスライド部材51も後退方向に移動される。これにより、スライド部材51の係止穴78の下端縁がストッパ部材52の当接面部56に当接する。この状態で、内鍋10内の圧力が、第1設定圧力P1より高い圧力となっている状態では、移動部材が当接面部56に当接し、後退方向の移動を阻止した状態を維持する。そして、自然降圧により内鍋10内が第1設定圧力P1より低くなると、内鍋10の内圧に抗してストッパ部材52が下向きに移動し、蓋体22のロックが解除される。
このように、構成した第4実施形態の圧力炊飯器は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、この第4実施形態では、第1実施形態のように、ストッパ部材52をロッド49と球状部材47との間に進入させるのではないため、ロッド49の進退範囲、即ち、膨出部35を少なくすることができ、小型化を図ることが可能になる。
なお、本発明の圧力調理器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、ストッパ部材52を係止させる蓋体開閉機構の構成部品として、第1実施形態から第3実施形態ではロッド49とし、第4実施形態ではスライド部材51としたが、ロック部材31または操作部材28としてもよい。なお、これらに係止させる場合には、蓋体22の内部に内蓋38内を臨むチューブを配設して、内蓋38の内圧と連動させる。
また、各実施形態では、ソレノイド48への通電を遮断した時の温度に基づいて内鍋10内が設定圧力P1より低くなる時間を推定し、その推定時間が経過すると圧力セグメント63を消灯するようにしたが、スライド部材51が後退位置に移動したことを検出するセンサを配設し、後退位置を検出すると、圧力セグメント63を消灯させるようにしてもよい。この場合、停電時用のバックアップ電池の消費電力を考慮して、センサはマイクロスイッチなどの低消費電力のものを使用することが好ましい。
さらに、各実施形態では、むらし工程に移行するソレノイド48への通電を遮断する構成としたが、むらし工程が終了し、保温制御に移行する際に、ソレノイド48への通電を遮断する構成としてもよい。
さらにまた、第3および第4実施形態では、ストッパ部材52を内蓋38に配設したが、第2実施形態のように、ヒータカバー25に配設してもよい。
また、ストッパ部材52を動作前の状態に戻す付勢部材を配設し、自重W2による力Fg、ソレノイド48のスプリングの付勢力による力Fvに加えて付勢部材の力を利用することも可能である。この場合には、ストッパ部材52の当接面部56を設けずに、ソレノイド48による力Fvを利用しない構成も可能である。
そして、本発明のように内鍋10の内圧に連動するストッパ部材52を内蓋38またはヒータカバー25に設ける機器は圧力炊飯器に限られず、所定の調理材料を調理する調理器にも同様に適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。