JP4920151B2 - 電気掃除機用集塵袋 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気掃除機用集塵袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気掃除機用の使い捨て集塵袋において、集塵効率と圧力損失とのバランスを改善するために、内層と外層の2層からなるフィルター紙を用いることが提案されている(例えば実開平6−48556号公報)。しかしながら、かかる抄き合わせ紙を内袋(内層)に使用した場合、使用中に捕捉される水分によって内袋が濡れて破袋してしまい集塵袋としての機能を失ってしまうといった課題を有していた。すなわち、このようなフィルター紙は充分な湿潤強度を有していないといった欠点があった。また内袋や外袋の紙の強度を向上させるために目付や密度を増加させると、短時間の使用においても目づまりが発生し集塵袋の圧力損失が上昇してしまうという欠点があった。
また実用新案登録第3019283号には、内袋に乾式不織布を用いる方法も提案されているが、かかる乾式不織布では充分な強力や引裂き強度が得にくく、集塵袋の破損の原因になりやすい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、集塵効率と圧力損失のバランスに優れ、かつ使用中に捕捉される水分等によっても破袋しない充分な湿潤強度を有する内袋を備えた電気掃除機用集塵袋を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のスパンボンド不織布を内袋として用い、さらに外袋としてメルトブロー不織布とスパンボンド不織布が所定のエンボス面積となるようエンボス加工されて接着された積層不織布を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、内袋と外袋とを有する電気掃除機用集塵袋であって、内袋がスパンボンド不織布からなりかつ下記(1)〜(4)を満たし、外袋がメルトブロー不織布とその両面にスパンボンド不織布がエンボス加工によりエンボス面積が5〜25%となるように接着されて積層されてなる不織布からなりかつ下記(5)〜(6)を満たす電気掃除機用集塵袋である。
(1)目付が10〜30g/mであること、
(2)タテおよびヨコ方向における湿潤強度がそれぞれ10N/5cm以上であり、かつタテ方向における湿潤強度とヨコ方向における湿潤強度の比が1.4〜2.5であること、
(3)タテおよびヨコ方向における湿潤伸度がそれぞれ20%以上であること、
(4)通気度が50cc/cm・s以上であること、
(5)目付が30〜70g/mであること、
(6)通気度が5〜40cc/cm・sであること。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の掃除機用集塵袋は内袋と外袋とからなり、内袋にスパンボンド不織布を用いることが重要である。該スパンボンド不織布を構成する繊維としては、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の熱可塑性繊維が挙げられるが、中でも価格が安価であり、強度や製袋時のヒートシール性に優れるなどの理由からポリオレフィンが好ましく、中でも特にポリプロピレン単独繊維やポリプロピレン/ポリエチレンの複合繊維が好ましく用いられる。
【0007】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、かかる熱可塑性繊維に抗菌剤、防カビ剤等の薬剤を添加したり、不織布とした後に後加工処理することは何ら差し支えない。
【0008】
該スパンボンド不織布を構成する繊維の繊維径については、特に限定されないが、より優れた集塵性を確保するためには、平均繊維径を10〜35μmとすることが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。なお、本発明にいう平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で不織布を拡大撮影し、任意の100本の繊維径を測定した平均値をいう。
【0009】
また内袋に用いられるスパンボンド不織布の目付は10〜30g/mであり、好ましくは、12〜25g/mであり、さらに好ましくは、15〜20g/mである。目付が10g/m未満では集塵効率が悪くて外袋のゴミによる目づまりを早めてしまい集塵袋の寿命を著しく損なうと同時に、湿潤強度が不足して捕捉された水分による破袋を招く。一方、目付が30g/mを超えると、圧力損失が高くなりすぎてフィルター性能が低下する結果となる。また、該スパンボンド不織布の厚みは、通気性等の点から0.10〜0.30mmが好ましい。
【0010】
また、該スパンボンド不織布は、タテおよびヨコ方向における湿潤強度がそれぞれ10N/5cm以上であり、好ましくは15N/5cm以上である。湿潤強度が10N/5cm未満であると、湿ったものを吸い込んだ際に破袋の原因となる。また、該スパンボンド不織布のタテおよびヨコ方向における湿潤伸度はそれぞれ20%以上であり、好ましくは40%以上である。湿潤伸度が20%未満であると、金属片などを吸い込んだ際に破袋の原因となる。なお、本発明にいうタテ方向とは不織布のMD方向であり、ヨコ方向はCD方向を示すものである。
【0011】
また、該スパンボンド不織布の通気度は50/cm・s以上であり、好ましくは、100〜700cc/cm・sである。通気度が50cc/cm・s未満の場合は、内袋が早く目づまりを起こし、掃除機の使用時間に伴う圧力損失の増大が大きく好ましくない。一方、通気度が700cc/cm・sを超えると外袋に負荷がかかり圧力損失の上昇が早くなる場合がある。上記したように本発明の集塵袋の内袋を構成するスパンボンド不織布が上記した範囲の湿潤強度、湿潤伸度を有することにより、掃除機がゴミと水とを同時に吸い込んだ時などに起こる内袋の濡れによる破袋を防ぐことができる。さらに本発明においては、特定の目付、通気度を有するスパンボンド不織布を内袋として用いることで、集塵効率と圧力損失のバランスのとれた優れた掃除機用集塵袋が得られるのである。
【0012】
該スパンボンド不織布は、タテ方向における湿潤強度とヨコ方向における湿潤強度の比は、タテ/ヨコ=1.4〜2.5が必要であり、好ましくは1.7〜2.5である。タテ/ヨコ強度比が2.5を超えると該スパンボンド不織布が引き裂かれやすく、破袋の原因となる場合がある。一方、タテ/ヨコ強度比が1.4未満であると、該スパンボンド不織布を製造する際、コスト的に不利となる場合がある。
【0013】
該スパンボンド不織布の製法としては、公知の装置を用いて製造することができ、例えば押出機から各成分を溶融押出し紡糸用口金から繊維を紡糸し、紡糸された繊維をエアサッカー等の気流牽引型の装置で引き取り、気流とともに繊維をネットコンベアー等のウェブ捕集装置で捕集し、その後必要に応じて該ウェブを加熱空気、加熱ロール等の加熱装置を用い、融着等の処理をすることによって得ることができる。
【0014】
本発明に用いられる外袋としては、集塵効率と圧力損失のバランスに優れている点で、不織布、特に乾式不織布を用いることが必要で、中でも目付30〜70g/m、通気度5〜40cc/cm・sの範囲にあることが集塵効率と圧力損失のバランスをとる上で重要である。目付が30g/m未満の場合は、充分な捕集容量が得にくい場合がある。一方、目付が70g/mを超えると、圧力損失が高くなる場合がある。
【0015】
外袋に乾式不織布を用いる場合、該不織布の素材としては、特に限定はなく、種々の熱可塑性ポリマーを用いることができるが、中でも製袋時に必要となる内袋との接着性の観点から、外袋用素材と内袋用素材は同一素材を用いることが望ましく、特に両者の素材をポリプロピレンにすることは、両者を熱やホットメルト樹脂で強固にかつ経済的に接着できるので使用中の破袋を防ぐ意味で特に望ましいことである。また内袋、外袋すべての素材を脂肪族ポリエステルで代表される生分解性樹脂で構成することも、集塵袋の廃棄上の観点から有用である。中でも特に本発明においては、外袋を構成する不織布が、メルトブロー不織布とその両面にスパンボンド不織布が積層された積層不織布を用いることが、集塵効率の点で必須である
【0016】
本発明の外袋に該積層不織布を用いる場合、メルトブロー不織布の目付を5〜20g/mとすることが好ましい。目付が5g/m未満の場合は加工が困難となる場合があり、逆に目付が20g/mを超えると圧力損失が高くなる場合がある。かかるメルトブロー不織布は、所定の熱可塑性ポリマーを溶融温度以上に加熱しノズルより加圧押出することによって糸条を形成し、さらに加熱空気をポリマーノズル孔の周辺から噴出させて糸条を細化しながら金網上に捕集する一般的なメルトブローン技術により製造することができる。
【0017】
また、該メルトブロー不織布に積層するスパンボンド不織布の目付は、15〜30g/mが好ましい。目付が15g/m未満の場合は、ウエブに斑が生じ、性能が不均一となる場合があり、目付が30g/mを超えると圧力損失が高くなる場合がある。なお、該スパンボンド不織布はメルトブロー不織布の両面に積層することで優れた集塵効率メルトブロー不織布を保護する効果が得られる。かかる積層不織布を外袋に用いることで、緻密なメルトブローン不織布により優れた集塵性が得られ、かつ比較的ポーラスで乾、湿強力に優れたスパンボンド不織布により強度、耐久性に優れた掃除機用集塵袋が得られるのである。
【0018】
外袋用の積層不織布の製法としては、それぞれの不織布を積層し、柄ロール等を用いた熱エンボス加工にて接着させる方法、フラットなロールでカレンダー加工する方法等があるが、良好な集塵効率と低圧力損失を維持できる点からエンボス加工による接着が必要である。その時の処理温度は処理速度にも影響されるが100〜150℃が良好に接着できる点から好ましい。また、エンボス加工を施す際にはエンボス面積5〜25%であることが必要であり、7〜15%であることが好ましい。エンボス面積が5%未満の場合には充分な接着効果が得られない場合があり、エンボス面積が25%を超えると濾過面積の低下により圧力損失が上昇する場合がある。なお、外袋として該積層不織布を用いる場合は、スパンボンド不織布が最外層となるよう配置するのが好ましい。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例における各物性値は以下の方法により測定したものである。
1.圧力損失、捕集効率
JIS C9108−1992に示された吸引仕事率測定装置用いて測定を行った。電気掃除機として市販の電気掃除機(松下電器産業社製:MC−S62P)を用い、高速風速を適用して吸引を行って測定した。小麦粉30gを上記測定装置に投入した後における集塵袋の風上と風下との圧力差を圧力損失とした。
また捕集効率(%)は小麦粉30gを投入した後、以下のようにして求めた。
捕集効率(%)=[捕集前後の集塵袋の重量増加(g)/30(g)]×100
【0020】
2.湿潤強度
JIS L1906に準じて測定した。
【0021】
3.湿潤伸度
JIS L1906に準じて測定した。
【0022】
4.通気度
JIS L1096 A法(フラジール形法)に準じて測定した。
【0023】
実施例1
内袋として、ポリプロピレン樹脂(MFR=12g/10分、JIS K 6758準拠;230℃、2.16kg荷重)を原料とし、スパンボンド紡糸機を用いて平均繊維径21μm、目付17g/m、厚み0.17mmのポリプロピレンスパンボンド不織布を準備した。
また、平均繊維径3.5μm、目付が15g/mのポリプロピレンメルトブロー不織布の両面に、平均繊維径3.5μm、目付15g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布)を積層した目付45g/m、厚み0.34mmの積層不織布を準備した。該積層不織布をエンボス面積が7%の熱エンボス機によって125℃で熱接着し、外袋用の積層不織布を得た。
【0024】
得られた内袋用および外袋用の不織布を用いて、通常の方法により電気掃除機用集塵袋に加工した。外袋に直径5.2cmを有する空気導入口および堅紙からなる支持体をホットメルトによってとりつけ、本発明の電気掃除機用集塵袋を得た。製袋に必要な接着部分は熱圧着によって効率良く強固に一体化されていた。結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
芯成分がポリプロピレン、鞘成分がポリエチレンからなる3.3dtexの複合繊維からなり、目付が20g/m、厚み0.18mmであるスパンボンド不織布を内袋として準備した。また、目付15g/mのポリプロピレンメルトブローン不織布の両面に、目付20g/mのポリプロピレンスパンボンドを配置して熱プレスで一体化し、目付55g/m、厚み0.39mmの外袋用積層不織布を得た。
これらの不織布を用いて、実施例1と同様の方法で加工し電気掃除機用集塵袋を得た。(表1)
【0027】
比較例1
内袋として、パルプ64質量%、ポリエチレンテレフタレート短繊維30質量%およびポリビニルアルコールバインダー繊維6質量%からなる目付20g/m、厚み0.13mmの湿式紙を用いたこと以外は実施例1と同様にして、集塵袋を得た。(表1)
【0028】
比較例2
内袋として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がポリエチレンである複合短繊維(3.3dtex、51mmカット長)からなり、接着面積20%のエンボス処理を施した目付20g/m、厚み0.20mmの乾式不織布を用いたこと以外は、実施例3と同様にして集塵袋を得た。(表1)
【0029】
【表1】
Figure 0004920151
【0030】
本発明の掃除機用集塵袋は、圧力損失および捕集効率ともに優れたものであった。また、直径9cm、深さ2cmの灰皿にタバコの吸殻3本と水50ccを加え、上記実施例および比較例の集塵袋を備えた電気掃除機により吸引試験を行った。各集塵袋について10枚ずつ試験を行ったところ、実施例の集塵袋を用いた場合は破袋は見られなかった。一方、比較例1の集塵袋を用いた場合には、10袋のうち6袋について内袋の破袋が見られた。また比較例2の集塵袋については、10袋のうち2袋がのり付け部分の剥離に起因する破袋が見られた。
【0031】
【発明の効果】
本発明の電気掃除機用集塵袋は、内袋の湿潤強度が十分なため使用中に捕捉される水分による破袋の恐れがなく、また外袋とあいまって低い圧損、高い集塵効率及び大きな集塵容量を有するので、電気掃除機用集塵袋として極めて有用なものである。

Claims (2)

  1. 内袋と外袋とを有する電気掃除機用集塵袋であって、内袋がスパンボンド不織布からなりかつ下記(1)〜(4)を満たし、外袋がメルトブロー不織布とその両面にスパンボンド不織布がエンボス加工によりエンボス面積が5〜25%となるように接着されて積層されてなる不織布からなりかつ下記(5)〜(6)を満たす電気掃除機用集塵袋。
    (1)目付が10〜30g/mであること、
    (2)タテおよびヨコ方向における湿潤強度がそれぞれ10N/5cm以上であり、かつタテ方向における湿潤強度とヨコ方向における湿潤強度の比が1.4〜2.5であること、
    (3)タテおよびヨコ方向における湿潤伸度がそれぞれ20%以上であること、
    (4)通気度が50cc/cm・s以上であること、
    (5)目付が30〜70g/mであること、
    (6)通気度が5〜40cc/cm・sであること。
  2. 請求項1に記載の電気掃除機用集塵袋を備えてなる電気掃除機。
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