JP4920047B2 - 差圧センサ - Google Patents

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Description

本発明は、2つのチャンバ間に配置されたダイアフラムの変位量を検出して差圧信号を出力する差圧センサに関する。
2つのチャンバ間に配置されたダイアフラムの変位量を検出して差圧信号を出力する差圧センサが、例えば特許文献1及び2に開示されている。特許文献1に開示された差圧センサは、一端にてハウジングに固定され他端にてダイアフラムに接触する片持ち板バネを有し、チャンバ間の差圧に応じてその片持ち板バネとダイアフラムとの接触点の位置が変わり、その接触点の位置に応じたレベルをもった電気信号が差圧信号として出力される。上記片持ち板バネは、全体として、固定端からダイアフラムとの接点まで単一の方向へ伸び出た形状に形成されている。
特許文献2に開示された差圧センサでは、ダイアフラムにピストンが接触しており、このピストンはコイルバネによりダイアフラムの方へ弾性的に押されており、このピストンの位置に応じたレベルをもつ電気信号が差圧信号として出力される。コイルバネを常に真っ直ぐな形に維持するために、コイルバネは狭い筒の中に挿入されている。
特開昭61−230037号公報(例えば図2および図8) 実開平4−113044号公報
差圧センサから出力される差圧信号の差圧−出力信号特性には、差圧の検出精度の支障となるようなノイズ成分がある程度含まれる。特に、微小な差圧を高精度に検出しようとする用途では、このようなノイズ成分特性を非常に小さくすることが要求される。そのようなノイズ成分の一つはヒステリシス特性(差圧が上昇するときの出力信号レベルの変化カーブと、差圧が加工するときの出力信号レベルの変化カーブとの間の相違)である。ヒステリシス特性のようなノイズ成分の主たる原因として、ダイアフラムが動く時に発生する部品間の摺動摩擦やダイアフラムの不必要な変形が挙げ得る。
例えば、特許文献1に開示された差圧センサでは、ダイアフラムが動く時、片持ち板バネがその固定端を中心に回動し(傾き)、片持ち板バネのダイアフラムに対する相対的な位置が変化する(つまり、片持ち板バネとダイアフラムとの間に摺動が生じる)。それにより、片持ち板バネとダイアフラムとの間の摺動摩擦が生じる。これに加えて、上述した片持ち板バネの回動は、片持ち板バネのダイアフラムに対する相対的な角度を変化させ、片持ち板バネからダイアフラムに加わる反力の方向を変化させる。それにより、ダイアフラムはその移動方向と相対する方向とは異なる方向への反力を受けて、無用な変形を生じる。
特許文献2に開示された差圧センサでは、ダイアフラムが動く時、コイルバネが伸縮し、コイルバネはそれを終了した狭い筒の壁面に接触して両者間に摺動摩擦が生じる。
従って、本発明の目的は、差圧センサの出力信号特性に含まれるノイズ成分を低減することにある。
本発明のまた別の目的は、ダイアフラムが動く時の部品間の摺動摩擦を低減することにある。
本発明のさらに別の目的は、ダイアフラムが動く時のダイアフラムの無用な変形を低減することにある。
本発明の一つの側面に従えば、差圧センサは、第1のチャンバを画成する第1の壁と第2のチャンバを画成する第2の壁とを有するハウジングと、前記ハウジング内で前記第1と第2のチャンバ間に配置され、前記第1と第2のチャンバ間の差圧を受けて所定の移動軸に沿って移動可能な可動部をもつダイアフラムと、前記可動部に弾性的な反力を加える弾性反力部材と、前記可動部の前記移動軸に沿った位置に応じた電気信号を出力するトランスデューサとを備える。前記弾性反力部材は、前記可動部に接触し、前記可動部と一緒に移動可能な接触部と、前記接触部に接続された遊動端と、前記ハウジングに接続された固定端とをもつ板状又は線状のバネとを有する。前記バネは、前記遊動端と前記固定端の間で互いに直列接続された第1バネ部と第2バネ部を有し、前記第1バネ部は前記遊動端から前記第1と第2バネ部の相互接続点まで第1方向へ伸び、前記第2バネ部は前記相互接続点から前記固定端まで第2方向へ伸びる。前記第1方向と前記第2方向が、前記移動軸に直交する2次元座標平面上で互いに鈍角をなすように、前記第1バネ部と第2バネ部が配置される。
この差圧センサにおいては、上記弾性反力部材のバネを構成する上記第1と第2のバネ部が、上記のような方向関係で配置される。要するに、上記第1と第2のバネ部が、上記2次元座標平面上で概略的に逆方向になるように配置される。このような配置を採用したバネの構造を、本明細書では「バネのバランス構造」と呼ぶ。この「バネのバランス構造」弾性反力部材に採用することにより、ダイアフラムの可動部と弾性反力部材の接触部とが一緒に移動するときに、第1と第2のバネ部と互いに逆方向へ回動しようとして双方の回動が相互にある程度バランスし、それにより、接触部のダイアフラムに対する回動が抑制される。その結果、ダイアフラムの無用な変形が抑制され、ダイアフラムの変形に起因する差圧信号のノイズが低減され、差圧検出精度が向上する。
「バネのバランス構造」が採用されたバネの典型例は、C、U、VまたはJ字形状に形成された板状または線状のバネである。
好適な実施形態では、前記第2バネ部の長さが、前記第1バネ部の長さより長い。これにより、ダイアフラムのストローク長をより長くして差圧検出の分解能を向上させることが、より容易になる。
好適な実施形態では、前記弾性反力部材が、前記接触部に共通に接続された前記遊動端をそれぞれもつ複数の前記バネを有し、前記複数のバネ中の各一つのバネと別の少なくとも一つのバネの前記接触部からそれぞれ伸びる方向が、前記2次元座標平面上で互いに鈍角をなすように、前記複数のバネが配置される。
このような複数のバネの配置関係を、本明細書では、「複数のバネの組み合わせのバランス構造」と呼ぶ。この「複数のバネの組み合わせのバランス構造」を弾性反力部材に採用することにより、ダイアフラムの可動部と弾性反力部材の接触部とが一緒に移動するときに、複数のバネ部と互いに逆方向へ接触部を回動および横ずれさせようとして、それらの回動および横ずれが相互にある程度バランスし、それにより、接触部のダイアフラムに対する回動および横ずれが抑制される。その結果、ダイアフラムと弾性反力部材のとの間の無用な摺動が抑制され、その摺動の摩擦に起因する差圧信号のヒステリシス特性が低減され、差圧検出精度が向上する。
「複数のバネの組み合わせのバランス構造」の典型例は、前記複数のバネが、前記接触部について対称に配置されることである。
好適な実施形態では、前記弾性反力部材は、前記バネとは別の、前記接触部に接続された枝部を更に有し、前記トランスデューサは、前記枝部の位置に応じて前記電気信号を出力するようになっている。このような構成を採用することで、枝部のような、トランスデューサによる位置検出のために付加される部品が、弾性反力部材の弾性特性に実質的な影響を与えないので、検出精度に支障を与えない。変形例として、上記バネに上記枝部が設けられていてもよい。
好適な実施形態では、前記弾性反力部材は、前記第1または第2のチャンバ内に配置され、前記トランスデューサは、前記第1または第2のチャンバ内の前記枝部に取り付けられた移動子と、前記第1および第2のチャンバの外に配置され、前記第1または第2のチャンバ内の前記移動子の位置を、前記第1または第2の壁を介し非接触的に検出する検出素子とを有する。このような構成によれば、検出素子をチャンバの外に配置することができるので、検出素子に直接触れることが好ましくない例えば油や水のような流体がチャンバ内に導入される用途にも、この差圧センサを適用することが可能である。
本発明の第2の側面に従えば、差圧センサは、第1のチャンバを画成する第1の壁と第2のチャンバを画成する第2の壁とを有するハウジングと、前記ハウジング内で前記第1と第2のチャンバ間に配置され、前記第1と第2のチャンバ間の差圧を受けて所定の移動軸に沿って移動可能な可動部をもつダイアフラムと、前記可動部に弾性的な反力を加える弾性反力部材と、前記可動部の前記移動軸に沿った位置に応じた電気信号を出力するトランスデューサとを備える。前記弾性反力部材は、前記ダイアフラムの前記可動部に接触し、前記可動部と一緒に移動可能な接触部と、前記接触部に共通に接続された遊動端と、前記ハウジングに接続された固定端とをそれぞれもつ板状又は線状の複数のバネとを有する。前記複数のバネ中の各一つのバネと別の少なくとも一つのバネの前記接触部からそれぞれ伸びる方向が、前記移動軸に直交する2次元座標平面上で互いに鈍角をなすように、前記複数のバネが配置される。
この差圧センサでは、弾性反力部材に、上述した「複数のバネの組み合わせのバランス構造」が採用される。この「複数のバネの組み合わせのバランス構造」により、ダイアフラムと弾性反力部材のとの間の無用な摺動が抑制され、その摺動の摩擦に起因する差圧信号のヒステリシス特性が低減され、差圧検出精度が向上する。
本発明によれば、差圧センサの出力信号特性に含まれるノイズ成分が低減されて、その差圧検出精度が向上する。
以下、図面を参照して、本発明の好適な幾つかの実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる差圧センサの断面図である。図2は、この実施形態にかかる差圧センサに組み込まれた弾性反力部材の斜視図である。
図1に示すように、差圧センサ100は、剛性材料製のハウジング102を有し、ハウジング102は、第1のチャンバ104を画成する第1の壁106と、第2のチャンバ108を画成する第2の壁110とを有する。第1のチャンバ104は、そこに低圧の流体(例えば、油圧回路の低圧の作動油)が導入される低圧チャンバであり、これに対し、第2のチャンバ108は、そこに導入穴109から高圧の流体(例えば、油圧回路の高圧の作動油)が導入される高圧チャンバである。差圧センサ100の使い方の一例として、ハウジング102が直接的に供試体(例えば、油圧回路の或るオイルフィルタ)に取り付けられ、その供試体内の異なる圧力の流体(例えば、オイルフィルタ内のフィルタエレメントを通過する前の作動油と通過後の作動油)がチャンバ104、108にそれぞれ導入される。
低圧チャンバ104と高圧チャンバ108との間に、ほぼ円盤形のダイアフラム112が配置される。ダイアフラム112は、その中央部に可動部114を有し、可動部114は低圧チャンバ104と高圧チャンバ108との間の差圧を受けて図1中の水平方向へ移動可能である。ここで、説明の都合上、X-Y-Z直交座標系200を定義する。この座標系200に従えば、可動部114はX軸方向に移動可能である。
ダイアフラム112の材料は、典型的にはゴムのような可撓性と弾性に富む材料であるが、可動部114が移動可能なように作られていれば、金属のように可撓性の若干少ない材料であってもよい。ダイアフラム112が自立できること、すなわち、差圧センサ100が重力に対しする姿勢が変わっても、ダイアフラム112が重力の作用で変形しないこと、が望ましい。ダイアフラム112の可動部114は、その先頭部に磨耗に強い材料製のボール116を有し、ボール116は、可動部114の先頭部から低圧チャンバ104の方へ突出している。
低圧チャンバ104内に、ダイアフラム112の可動部114にその移動方向と逆方向へ弾性的な反力を加えるための弾性反力部材118が配置されている。図1と図2に示すように、弾性反力部材118は、接触部120とバネ122とを有する。バネ122は、その薄い厚みの方向へ概略C字形またはU字形に曲げられた細長い板バネであり、その一端(以下、遊動端という)122Aにて接触部120に接続され、その他端(以下、固定端という)122Bにてハウジング102に、例えばボルトによって、固定されている。なお、バネ122として、板バネの代わりに、線状のバネが用いられてもよい。バネ122は、接触部120がダイアフラム112の可動部114のボール116に常に接触し続けるように、可動部114へ向かう弾性的な反力を接触部120に加えている。
図2に示すように、弾性反力部材118は、更に、接触部120に接続された枝部124を、上述したバネ122とは別に有する。枝部124上には移動子126が固定されており、移動子126は、接触部120のX軸に沿った位置つまり変位量に応じた電気的な差圧信号を生成するためのトランスデューサの一部品である。図1に示すように、移動子126(永久磁石)は、低圧チャンバ104内で、第1の壁106のX軸に平行になった肉薄部106Aの近傍に配置される。可動部114と接触部120が一緒にX軸に沿って移動する時、移動子126は、第1の壁106の肉薄部106Aの内面に平行に移動する。低圧チャンバ104外であって第1の壁106の肉薄部106Aの近傍に、トランスデューサのもう一つの部品である非接触検出素子128が配置されている。非接触検出素子128は、枝部124上の移動子126(永久磁石)のX軸に沿った位置(換言すれば、ダイアフラム112の可動部114の位置)を、第1の壁106を介して非接触的に検出して、検出された位置に応じた電圧レベルをもつ電圧信号(差圧信号)を生成する。なお、変形例として、バネ122の或る箇所に、そこに移動子126が取り付けられた枝部が設けられていてもよい。
非接触検出素子128から出力された差圧信号は、配線130を通じて、差圧センサ100の外部へ出力される。この差圧信号のレベルは、チャンバ104,108間の差圧の大きさを示すことになる。
本実施形態では、上記トランスデューサとして、ホール効果を利用して磁界強度を電圧信号に変換するという非接触検出原理を用いたものが採用され、移動子126は、磁界を生成する永久磁石とし具現化され、非接触検出素子128はホールICとして具現化されている。非接触検出素子128としてのホールICは、移動子126としての永久磁石の形成する磁界の強度を感知し、その強度に応じた電圧レベルをもつ差圧信号としての電圧信号を出力する。上記トランスデューサとして、他の非接触検出原理を用いたものが採用されてもよい。
ホールICのような非接触検出素子128は、チャンバ104および108の外に配置される。そのため、チャンバ104および108に、圧力流体として、油圧回路の作動油や水圧回路の作動水のような液体を導入しても、その液体は非接触検出素子128に接触しないから、非接触検出素子128の電気回路に悪影響が出ない。従って、本実施形態にかかる差圧センサ100は、空気圧回路だけでなく、油圧回路や水圧回路のような液体圧回路での差圧検出に使用可能である。
次に、上述した弾性反力部材118の構造、特に、接触部120に接続されたバネ122の構造について、詳細に説明する。
弾性反力部材118のバネ122には、この明細書で「バランス構造」と言う構造が採用されている。すなわち、バネ122のバランス構造とは、ダイアフラム112の可動部114と弾性反力部材118の接触部120とがX軸に沿って移動することによりバネ122が変形する時、バネ122の或る部分の変形と別の部分の変形とが互いにバランス(相殺)することにより、接触部120の可動部114に対する相対的な回動(傾き)が抑制されるようになった構造をいう。このバランス構造について、以下、具体的に説明する。
図2に示すように、バネ122は、遊動端122Aと固定端122Bとの間に互いに直列接続された第1バネ部122Cと第2バネ部122Dを有する。第1バネ部122Cは、遊動端122Aから第1と第2のバネ部122C、122D間の相互接続点122Eまで、矢印202で示す方向(以下、第1方向という)へ伸びている。他方、第2バネ部122Dは、相互接続点122Eから固定端122Bまで、矢印204で示す方向(以下、第2方向という)へ伸びている。図3Aに示すように、第1方向202と第2方向204が、可動部114の移動軸(つまり、X軸)に直交する座標平面(つまり、Y-Z平面)上で、互いになす角度206は、180度(つまり、完全に逆方向)である。なお、第1方向202と第2方向204がY-Z平面上で互いになす角度206は、必ずしも180度である必要はなく、図3Bに示すように鈍角(つまり、概略的に逆方向)であってもよい。このように、バネ122のバランス構造は、第1バネ部122Cと第2バネ部122Dとが概略的に逆方向に配置されることで、具現化されている。
図4は、上述したバネ122のバランス構造の作用を説明するための、弾性反力部材118の簡略側面図である。
図4に示すように、ダイアフラム112から矢印208で示すようなX軸方向の押圧力が接触部120に加わった場合を想定する。この場合、バネ122は実線で示す形から、一点鎖線で示す形へと変形する。この場合、第2バネ部122Cは、固定端122Bから見て矢印210で示すような左回りへ回動する。同時に、第1バネ部122Dは、相互接続点122Eから見て矢印212で示すように右回りへ回動する。このように、第1バネ部122Cと第2バネ部122Dは互いに反対方向へ回動する。従って、接触部120では、第1バネ部122Cの回動と第2バネ部122Dの回動とが、(完全ではないかもしれないが或る程度は)バランスして、接触部120のダイアフラム112に対する相対的な回動(傾き)が非常に小さく抑制される。換言すれば、接触部120は殆ど回動せずにX軸方向へほぼ平行移動することができる。結果として、接触部120が殆ど回動せずにほぼ平行移動することにより、接触部120がダイアフラム112に加える反力の方向はほぼX軸方向に維持され、接触部120の回動又は傾きに起因するダイアフラム112の不必要な変形が防止される。その結果、トランスデューサから出力される差圧信号の差圧−信号レベル特性に含まれるダイアフラム112の変形に起因するノイズ成分が低減され、差圧検出の精度が改善される。
バネ122のバランス構造には種々の変形例が存在する。図5は、バネ122のバランス構造の1つの変形例を採用した弾性反力部材1182を示す。
図5に示された弾性反力部材1182では、バネ122はJ字形に形成されており、そこでは、第2バネ部122Dの長さが第1バネ部122Cの長さよりも長い。これに対し、図1および図2に示された弾性反力部材118では、バネ122はC字形またはU字形に形成されており、そこでは、第1バネ部122Cと第2バネ部122Dの長さがほぼ同じである。図5に示されたようなバネ122の形状としてのJ字形は、図1および図2に示されたC字形やU字形に比べて、同じ大きさの力が接触部120に加えられた時の接触部120のX軸方向への移動距離(ストローク長)がより長くなるように、バネ122を設計することを容易にする。接触部120ストローク長が長くなれば、差圧検出の分解能が向上する。
図6は、バネ122のバランス構造の別の変形例を採用した弾性反力部材1184を示す。
図6に示された弾性反力部材1184では、バネ122は全体としてV字形に形成され、そこでは、第1バネ122Cと第2バネ部122Dはいずれもほぼ真っ直ぐの形状を有する。これに対し、図1および図2に示された弾性反力部材118、または図5に示された弾性反力部材1182では、バネ122は全体としてC字形、U字形またはJ字形に形成され、そこでは、第1バネ部122Cと第2バネ部122Dはいずれもほぼ円弧状に湾曲している。バランス構造のバネ122は、その具体的な形状がC字形、U字形、J字形またはV字形のいずれであるかにかかわらず、図4を参照して説明したような、接触部120の回動を抑制する作用を奏することができる。
図7は、バネ122のバランス構造のまた別の変形例を採用した弾性反力部材1186の斜視図である。図8は、図7に示されたバランス構造の作用を説明する弾性反力部材1186の側面図である。
前述した弾性反力部材118,1182および1184のいずれにおいても、バネ122は、その薄い厚みの方向へ曲げられた(換言すれば、接触部120の移動軸(X軸)に直交する軸を中心とした回転方向へ曲げられた)板バネである。これに対し、図7に示された弾性反力部材1186では、バネ122は、厚みより広い幅の方向へ曲げられた(換言すれば、接触部120の移動軸(X軸)に平行な軸を中心とする回転方向へ曲げられた)板バネである。しかし、図7に示された弾性反力部材1186においても、第1バネ部122Cと第2バネ部122Dが概略的に逆方向に配置されている点は、前述した弾性反力部材118,1182および1184と同様である。ダイアフラム112(図示省略)から接触部120へ、矢印208で示すようなX軸方向の押圧力が加わることになる。
図8に示されるように、矢印208で示すような押圧力が接触部120に加わると、第2バネ部122Dが固定端122Bから見て矢印210に示すように右回りに回動し、同時に、第1バネ部122Cが相互接続点122Eから見て矢印212で示すように左回りに回動する。従って、(特に、押圧方向の移動距離が小さい時に)第1バネ部122Cと第2バネ部122Dの回動が、(完全ではないかもしれないが或る程度は)バランスし、接触部120のダイアフラム112(図示省略)に対する相対的な回動が抑制される。
以上のように、弾性反力部材で採用され得るバネのバランス構造の具体的な構成には様々なバリエーションがあり得る。また、弾性反力部材をハウジング内の何処に配置するかについても、異なるバリエーションがあり得る。例えば、図1に示された例では、弾性反力部材118が低圧チャンバ104内に配置される。変形例として、高圧チャンバ108内に弾性反力部材が配置されるという設計も採用し得る。
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる差圧センサの断面図である。図10は、図9のA-A線に沿ったこの差圧センサの断面図である。図11は、この差圧センサに組み込まれる弾性反力部材の斜視図である。
図9〜図11に示すように、第2の実施形態にかかる差圧センサ300の、図1および2に示した第1の実施形態にかかる差圧センサ100との相違点は、主に、弾性反力部材の構造にある。すなわち、第2の実施形態にかかる差圧センサ300に組み込まれた弾性反力部材302は、図11に端的に示されているように、構造、サイズおよび弾性特性において実質的に同じである2つのバネ306と308が、1つの接触部304に共通に接続された構造を有している。2つのバネ306と308は、接触部304の移動軸(X軸)に直交する座標平面(Y-Z平面)上で接触部308について対称になるように、配置されている。バネ306と308の各々は、図5に示されたようなJ字形に形成された板状または線状のバネである(或いは、図1および図2に示されたようなCまたはU字形、或いは、図6に示されたようなV字形のバネでもよい)。バネ306と308は、それぞれの遊動端306Aと308Aにて接触部304に共通に接続され、それぞれの固定端306Bと306Aにてハウジング102に、例えばボルトにより、固定される。接触部304には、更に、移動子126が取り付けられる枝部312が、2つのバネ306と308とは別に接続されている。なお、変形例として、バネ306または308の或る箇所に、そこに移動子126が取り付けられた枝部が設けられていてもよい。
図11に示された弾性反力部材302では、2種類の「バランス構造」が採用されている。第1の種類の「バランス構造」は、バネ306と308の各々に採用された、既に説明したような「バネのバランス構造」である。すなわち、バネ306では、第1と第2のバネ部306Cと306DがY-Z平面上で互いに概略的に逆方向になるように配置されている。バネ308でも、第1と第2のバネ部308Cと308DがY-Z平面上で互いに概略的に逆方向になるように配置されている。よって、バネ306と308の各々は単独で、図4を参照して既に説明したような作用を奏することができる。これに加えて、第2の種類の「バランス構造」として、「複数のバネの組み合わせのバランス構造」が採用されている。すなわち、「複数のバネの組み合わせのバランス構造」は、2つのバネ306と308がY-Z平面上で接触部308について対称に配置された構造として、具現化されている。このような2つのバネ306と308の対称配置は、換言すれば、2つのバネ306と308(特に、接触部304に接続された第2バネ部306Cと308C)の接触部304からそれぞれ伸び出る方向402と404がY-Z平面上でなす角度が、180度である、ということである。なお、2つのバネ306と308の方向402と404のY-Z平面上でなす角度は、必ずしも180度(つまり、完全に逆方向)である必要はなく、鈍角(つまり、概略的に逆方向)であればよい。
図12は、上述した複数のバネ(例えば、2つのバネ)の組み合わせのバランス構造の作用を説明するための弾性反力部材302の簡略側面図である。
図12に示すように、ダイアフラム112(図示省略)から矢印208で示すような押圧力が接触部304に加わった場合、2つのバネ306と308は、実線で示される形状から、一点鎖線で示される形状へ変形する。このとき、2つのバネ306と308の接触部304に接続された部分(第1バネ部)306Cと308Cが、固定端306Bと308Bから見て、矢印406と408に示すように互いに逆方向に回動しようとし、両方の回動が、(完全ではないかもしれないが或る程度は)バランス(相殺)して、接触部304のダイアフラム112に対する回動が抑制される。その結果、接触部304は、矢印410に示すように、実質的にX軸の方向へ平行移動する。
さらに、接触部304のダイアフラム112に対する回動が抑制されるだけでなく、接触部304のダイアフラム112に対する横ずれ(つまり、X軸と直交する方向への移動)も抑制される。すなわち、図4を参照して既に説明した「バネのバランス構造」だけでは、図4に矢印214で示されるような接触部120の若干の横ずれが発生するので、接触部120とダイアフラム112との間に若干の摺動摩擦が発生する。これに対し、図11に示されるように、「複数のバネの組み合わせのバランス構造」によれば、複数のバネ306と308がX軸と直交する互いに逆方向へ移動しようとするので、双方の移動が(完全ではないかもしれないが或る程度は)バランスして、接触部304の横ずれが抑制され、接触部120とダイアフラム112との間の摺動が抑制される。結果として、接触部120とダイアフラム112との間の摺動摩擦が抑制され、この摺動摩擦に起因する差圧信号のヒステリシス特性が非常に小さく抑制されて、差圧検出精度が向上する。
「複数のバネの組み合わせのバランス構造」にも多くのバリエーションがあり得る。図13は、複数のバネの組み合わせのバランス構造の一つの変形例を採用した弾性反力部材3022を示す。
図13に示されるように、2つのバネ306と308の各々は、図7に示されたように幅の方向にC、U、JまたはV字形に曲げられた板バネである。この2つのバネ306と308が、接触部304に共通に接続され、Y-Z平面上で互いに鈍角をなす方向に(例えば、接触部304について対称に)配置されている。
図14は、複数のバネの組み合わせのバランス構造の別の変形例を採用した弾性反力部材3024を示す。
図14に示された弾性反力部材3024では、2つのバネ306と308の各々には、既に説明したような「バネのバランス構造」は採用されていない。しかし、第1と第2のバネ部306Cと306Dは、接触部304に共通に接続され、Y-Z平面上で互いに鈍角をなす方向に(例えば、接触部304について対称に)配置されている。このように「バネのバランス構造」ではなく、「複数のバネの組み合わせのバランス構造」だけが採用されている場合でも、図12を参照して説明したような作用が得られる。
図15は、複数のバネの組み合わせのバランス構造のさらに別の変形例を採用した弾性反力部材3026を示す。
図15に示された弾性反力部材3026では、3つのバネ306、308および310が、接触部304に共通に接続され、Y-Z平面上で互いに鈍角をなす方向に(例えば、接触部304について対称に)配置されている。接触部304がX軸に沿って移動する時、3つのバネ306、308および310の間でそれぞれのバネの回動と横ずれがバランスして、接触部304が実質的にX軸に沿って平行移動することになる。
また別の変形例として、図示してないが、4つ以上のバネを組み合わせたバランス構造も採用可能である。すなわち、4つ以上のバネが、1つの接触部に共通に接続され、各1つのバネと別の少なくとも1つのバネとが、Y-Z平面上で互いに鈍角をなす方向に(例えば、接触部304について対称に)配置される。各バネには、バネのバランス構造が採用されてもよいし、採用されなくてもよい。
以上、本発明の幾つかの好適な実施形態を説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更することなしに、他の種々の形態で実施することが可能である。
本発明の第1の実施形態にかかる差圧センサの断面図。 第1の実施形態にかかる差圧センサに組み込まれている弾性反力部材の斜視図。 第1と第2のバネ部の概略的逆方向配置により具現化されたバネのバランス構造を説明する図。 バネのバランス構造の作用を説明するための、弾性反力部材の側面図。 バネのバランス構造の一つの変形例を採用した弾性反力部材の側面図。 バネのバランス構造の別の変形例を採用した弾性反力部材の側面図。 バネのバランス構造のまた別の変形例を採用した弾性反力部材の斜視図。 図6に示されたバランス構造の作用を説明する弾性反力部材1186の側面図。 本発明の第2の実施形態にかかる差圧センサの断面図。 図9のA-A線に沿った第2の実施形態にかかる差圧センサの断面図。 第2の実施形態にかかる差圧センサに組み込まれた弾性反力部材の斜視図。 複数のバネの組み合わせのバランス構造の作用を説明するための弾性反力部材簡略化された側面図。 複数のバネの組み合わせのバランス構造の一つの変形例を採用した弾性反力部材の斜視図。 複数のバネの組み合わせのバランス構造の別の変形例を採用した弾性反力部材の側面図。 複数のバネの組み合わせのバランス構造のまた別の変形例を採用した弾性反力部材の側面図。
符号の説明
100 差圧センサ
102 ハウジング
104 第1のチャンバ(低圧チャンバ)
106 第1の壁
106A 第1の壁の肉薄部
108 第2のチャンバ(高圧チャンバ)
110 第2の壁
112 ダイアフラム
114 ダイアフラムの可動部
118 弾性反力部材
118,1182,1184,1186 弾性反力部材
120 接触部
122 バネ
122A 遊動端
122B 固定端
122C 第1バネ部
122D 第2バネ部
122E 相互接続点
124 枝部
126 移動子
128 非接触検出素子
130 配線
200 参照番号
300 差圧センサ
302,3022,3024,3026 弾性反力部材
304 接触部
306,308,310 バネ
306A,308A 遊動端
306B,308B 固定端
306C,308C 第1バネ部
306D,308D 第2バネ部
312 枝部

Claims (3)

  1. 第1 のチャンバを画成する第1の壁と第2のチャンバを画成する第2の壁とを有するハウジングと
    前記ハウジング内で前記第1と第2のチャンバ間に配置され、前記第1と第2のチャンバ間の差圧を受けて所定の移動軸(X)に沿って移動可能な可動部をもつダイアフラムと
    前記可動部に弾性的な反力を加える弾性反力部材と
    前記可動部の前記移動軸に沿った位置に応じた電気信号を出力するトランスデューサと
    を備え、
    前記弾性反力部材が
    前記可動部に接触し、前記可動部と一緒に移動可能な接触部と
    前記接触部に接続された遊動端と、前記ハウジングに接続された固定端とをもつ板状又は線状のバネと
    を有し、
    前記バネは、J字形状に形成されており、前記遊動端から湾曲部まで第1方向へ伸び、さらに前記湾曲部から前記固定端まで第2方向へ伸びており
    前記第1方向と前記第2方向が、前記移動軸に直交する2次元座標平面(Y-Z)上で互いに鈍角をなすように配置され、
    前記固定端から前記湾曲部までの長さが、前記湾曲部から前記遊動端までの長さより長くなっており、
    前記弾性反力部材が、前記接触部に共通に接続された前記遊動端をそれぞれもつ複数の前記バネを有し、
    前記複数のバネ中の各一つのバネと別の少なくとも一つのバネの前記接触部からそれぞれ伸びる方向が、前記2次元座標平面上で互いに鈍角をなすように、前記複数のバネが配置された差圧センサ。
  2. 請求項記載の差圧センサにおいて、
    前記複数のバネが、前記接触部について対称に配置された差圧センサ。
  3. 請求項記載の差圧センサにおいて、
    前記第1のチャンバは低圧チャンバであり、前記第2のチャンバは高圧チャンバであり、
    前記弾性反力部材が、前記低圧チャンバ内に配置され、
    前記弾性反力部材が、前記バネとは別の、前記接触部に接続された枝部を更に有し、
    前記トランスデューサは
    前記枝部に取り付けられた移動子と
    前記低圧及び高圧チャンバの外に配置され、前記移動子の位置を、前記低圧チャンバの壁を介し非接触的に検出する検出素子と
    を有し、
    前記複数のバネの各々が、J 字形状に形成され、
    前記複数のバネの各々が、前記遊動端から湾曲部まで第1方向へ伸び、さらに前記湾曲部から前記固定端まで第2方向へ伸びており、前記固定端から前記湾曲部までの長さが、前記湾曲部から前記遊動端までの長さより長くなっており
    前記複数のバネが、前記接触部について対称に配置された差圧センサ。
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