JP4917178B2 - 電解質材料、リチウム二次電池用電解質、及び、それを用いたリチウム二次電池、並びに新規なリチウム塩 - Google Patents

電解質材料、リチウム二次電池用電解質、及び、それを用いたリチウム二次電池、並びに新規なリチウム塩 Download PDF

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Description

本発明は、新規な電解質材料に関し、更に詳しくは、導電率や耐酸化電位などの電解質材料としての性能に優れ、かつ電極保護膜形成能力を有し、リチウム二次電池用電解質に有用な電解質材料、リチウム二次電池用電解質及びそれを用いたリチウム二次電池に関するものであり、更に、新規なリチウム塩に関するものである。
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの情報電子機器において、リチウム二次電池の普及は著しく、より快適な携帯性を求め、電池の小型化、薄型化、軽量化、高性能化が急速に進んでいる。また、次世代の自動車として期待される電気自動車においても、リチウム二次電池の適用が検討されており、更なる高容量化、高出力化が必要となっている。
リチウム二次電池は、正極と負極の間に電解質を挟持して構成されるが、かかる電解質は、プロピレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、リチウム塩と電極保護膜形成剤などの添加剤を溶解して製造される。
リチウム塩としては、一般的に、LiPF6やLiBF4などが使用されているが、カウンターアニオンである-PF6-BF4などは耐酸化電位が低いため、正極活物質の電位領域を十分に活用できておらず、自動車用電池における高容量化や高出力化の妨げとなっている。例えば、正極活物質として、耐酸化電位が7V以上(vs Li/Li+)の高性能材料が開発されているが、カウンターアニオンの耐酸化電位が低いため、かかる正極活物質材料を使用できない。過充電状態においても電池の安全性を確保するためにも、耐酸化電位が6V以上(vs Li/Li+)、更には0.1Vでも耐酸化電位の高い電解質が望まれている。
また、電極保護膜形成剤としては、一般的に、ビニレンカーボネートなどが使用されているが、負極に保護膜を形成できるものの正極への保護機能は無く、やはり正極活物質の電位領域を十分に活かせていないのが現状である。更に、上述した電気自動車用電池においては安全性の確保が至上命題であり、ショートによる発火や暴発の危険性を回避するためにも、正極側に有効な電極保護膜形成材料が要望されている。
一方、発火や暴発を回避するため、電解液である有機溶媒の一部もしくは全量を難燃性かつ低揮発性のイオン液体に替える検討も行われているが、かかるイオン液体は粘度が有機溶媒より高いため、リチウム塩を溶解させて電解質とした場合に導電率に劣るという問題が有る。なお、ここで言うイオン液体とは、カチオンとアニオンを含む塩であり、室温付近以下の融点をもつ化合物のことである。
上述した電池の高性能化と安全性確保の点から、各種のリチウム塩、電極保護膜形成材料、及びイオン液体が提案されており、リチウム塩としては、例えば、リチウムカチオンと特定構造のアニオンよりなるイオン伝導性材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。電極保護膜形成材料としては、例えば、1,3−プロパンスルトンなどの化合物が提案されている(例えば、特許文献2〜6参照。)。また、イオン液体としては、例えば、特定の有機カチオンと、リチウムカチオンと、含窒素系有機アニオンとを含有する電解質が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
特開2004−6240号公報 特開2002−367675号公報 特開2002−373704号公報 特開2005−026091号公報 特開2007−134282号公報 特開2009−140641号公報 特開2004−303642号公報
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、耐酸化電位が4.5V(vs Li/Li+)まで安定なものの、自動車用電池に必要な耐酸化電位5V以上を満足できない。これは、かかるアニオンでは、電池の正極表面で酸化による分解反応が進行するためである。
また、上記特許文献2〜6の開示技術では、負極にSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成して還元側の使用電位を拡大するものの、正極に有効な保護膜は形成できない。
また、上記特許文献7の開示技術では、電解質を構成するアニオンとして、-N(SO2CF32-N(SO2252-N(SO2CF3)(SO249)等が用いられるが、かかるアニオンを用いた電解質では、導電率に劣るという問題がある。特に、自動車電池用電解質に必要な低温(例えば−20℃)での導電率を確保できていない。
更に、かかるアニオンでは、電池の正極表面で酸化による分解反応が進行するため、広い電位窓を有する正極材料と負極材料を用いても、その広い電位窓を有効に活用できない。
そこで、本発明ではこのような背景下において、導電率や耐酸化電位などの電気化学特性に優れ、かつ電極保護膜形成能力を有し、安全性に優れるリチウム二次電池用電解質に有用な電解質材料、更にはリチウム二次電池用電解質及びそれを用いたリチウム二次電池を提供すること、及び、かかる電解質材料に有用な新規なリチウム塩を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、リチウムカチオンとシアノ基及びフッ素原子を有するホスフェイト系アニオンよりなるリチウム塩を含有してなる電解質材料、また、リチウムカチオンと有機カチオン、更にシアノ基及びフッ素原子を有するホスフェイト系アニオンを含有してなる電解質材料が、電気化学特性や電極保護膜形成能に優れることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、成分(A1)及び(B)よりなるリチウム塩を含有してなる電解質材料に関するものである。
(A1)リチウムカチオン
(B)下記一般式(1)で示されるシアノフルオロホスフェイト系アニオン
[化1]
-P(CN)n6-n ・・・(1)
(ここで、nは1〜5の整数である。)
また、本発明は、成分(A1)、(A2)、及び(B)を含有してなる電解質材料に関するものである。
(A1)リチウムカチオン
(A2)有機カチオン
(B)上記一般式(1)で示されるシアノフルオロホスフェイト系アニオン
更に、本発明においては、前記電解質材料を含有してなるリチウム二次電池用電解質、更にはこれを、正極と負極との間に挟持してなるリチウム二次電池に関するものである。
また、本発明においては、前記電解質材料に有用な新規なリチウム塩に関するものである。
本発明の電解質材料は、高導電率や耐酸化電位などの電気化学特性に優れ、かつ電極保護膜形成能を有するため、安全性に優れるリチウム二次電池を得ることができる。
実施例1のリチウム塩のMS(−)を示すチャート図である。 実施例1のリチウム塩の31P−NMRを示すチャート図である。 実施例1のリチウム塩の19F−NMRを示すチャート図である。 実施例1のリチウム塩の7Li−NMRを示すチャート図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における電解質材料とは、電池の電解質を構成するリチウム塩、電極保護膜形成剤、電解液、各種添加剤、及びこれらの材料の機能を併せ持つ材料を意味する。
これらの機能の中でも、リチウムカチオン(A1)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるリチウム塩を含有する本発明の電解質材料の場合には、リチウムカチオンを含有するためリチウム塩としての機能、シアノフルオロホスフェイト系アニオンを含有するため正極保護膜形成剤としての機能を有することができ、また、従来配合されていたリチウム塩のカウンターアニオン(例えば、-PF6-BF4等)が系内に存在しないため、導電率や耐酸化電位の点で優れた機能を発揮することができる。
また、リチウムカチオン(A1)、有機カチオン(A2)及びシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)を含有する本発明の電解質材料の場合は、リチウムカチオンを含有するためリチウム塩としての機能、シアノフルオロホスフェイト系アニオンを含有するため正極保護膜形成剤としての機能を有することができ、更に、有機カチオンを含有するため、有機カチオンとシアノフルオロホスフェイト系アニオンよりなるイオン液体が生成し、液状で取り扱いやすく安全性の高い電解液としての機能を併せ持つことができる。
本発明の電解質材料は、リチウムカチオン(A1)と下記一般式(1)で示されるシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるリチウム塩を含有してなる電解質材料である。
[化2]
-P(CN)n6-n ・・・(1)
(ここで、nは1〜5の整数である。)
上記一般式(1)において、nは、好ましくは、電極保護膜形成能力の点から2〜4であり、特に好ましくは、電解質の導電率の点から3である。
本発明の電解質材料中のリチウム塩濃度は、0.1〜5モル/kgが好ましく、より好ましくは0.3〜3モル/kg、更に好ましくは0.5〜2モル/kgである。リチウム塩濃度が低すぎると、電解質におけるリチウム量が不足する傾向にあり、高すぎると、電解質の粘度上昇により導電率が低下する傾向にある。
本発明の電解質材料の特筆すべき効果は、電池の充放電を行った場合に、アニオンの微量の分解生成物が、正極材料表面に電気化学的に安定なSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、電極を保護すると同時に、電解質の更なる分解を抑止する点に有る。この効果により、本来正極活物質が有する広い電位領域の使用が可能になり、かつ電池の耐酸化電位を安定化させる。
本発明のアニオンがいかなる機構でSEIを形成するかは明らかでないが、アニオンのシアノ基、フッ素、及び/またはリンが電極表面と反応することにより安定なSEIを形成するものと推測される。なお、上述したビニレンカーボネートなどの電極保護膜形成剤は、一般的に、負極に保護膜を形成して還元電位を安定化させるが、本発明の電解質材料は、正極に保護膜を形成して耐酸化電位を安定化させることができる。当然のことながら、両者を併用することにより、広範囲な電位で安定に動作する電池を製造することができる。
一般的に、電解液にリチウム塩を溶解させると、得られる電解質は電解液より高粘度化する。その結果、必要以上にリチウム塩を溶解させると、リチウムカチオンの移動度が低下し、電解質の導電率や充放電速度が低下する。この現象は、比較的大量のリチウムカチオンを必要とする大容量電池や、高速充放電を必要とする電気自動車用電池には好ましくない。
しかし、本発明の電解質材料は、リチウムカチオン(A1)を含有するものの、電解液に溶解した場合、電解質の高粘度化を避け、高い導電率を発現し、かつ電池の高速充放電を可能にする。その効果は、一般式(1)におけるnが2〜4の場合に顕著であるが、かかる場合はアニオンに幾何異性体が存在するため、その混在が高粘度化を回避するためと推測される。特に、一般式(1)におけるnが3の場合は、該アニオンには幾何異性体(FacialとMeridional)が存在し、更に、両幾何異性体共に非対称の化学構造を有するため、その非対称性が電解質の高粘度化を回避するためと推察される。
また、本発明は、リチウムカチオン(A1)、有機カチオン(A2)及びシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)を含有してなる電解質材料も提供することができ、この場合には、有機カチオン(A2)を含むことにより、有機カチオン(A2)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるイオン液体が生成し、かかるイオン液体は難燃性であるため、電解質の安全性を向上することができる。
更に、かかる電解質材料は、有機カチオン(A2)の含有量を制御することにより、取り扱い性に優れる液状の電解質材料となる。前述したとおり、リチウム二次電池用電解質は、電解液にリチウム塩や電極保護膜形成剤を溶解させて製造されるが、かかる製造工程は、水分を極力排除したドライ雰囲気下、かつクリーンな環境で行われるため、多大な設備と労力を必要とする。一般的に、リチウム塩は固体であり、水分の除去は困難であるが、本発明の上記リチウムカチオン(A1)、有機カチオン(A2)及びシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)を含有してなる電解質材料は液状であるため、水分の除去も電解液への溶解も容易であり、電解質の製造工程を簡略化することができる。
本発明におけるリチウムカチオン(A1)のモル数a1と、有機カチオン(A2)のモル数a2は、下記式を満たすことが好ましい。
式(1−1) 0.1≦a1/(a1+a2)≦0.9
上記範囲の下限値未満では、リチウムカチオン量が不足する傾向にあり、上限値を超えると電解質の液状化が困難となる傾向にある。
式1−1において、より好ましくは、低粘度化の点で、
式(1−2) 0.2≦a1/(a1+a2)≦0.8
更に好ましくは、融点の点で、
式(1−3) 0.3≦a1/(a1+a2)≦0.7
特に好ましくは、電解質の安全性の点で、
式(1−4) 0.4≦a1/(a1+a2)≦0.6
である。
本発明の電解質材料の有機カチオン(A2)としては、例えば、イミダゾリウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、脂肪族四級アンモニウム系カチオン等の含窒素系有機カチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、トリメチルエチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、ヘキシルトリメチルホスホニウムカチオン、トリメチルオクチルホスホニウム、トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウム、トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウムなどのホスホニウムカチオン等の含燐系有機カチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジメチルプロピルスルホニウム、ジメチルヘキシルスルホニウム等の含硫黄系有機カチオン、オキソニウムカチオンなどが挙げられるが、それらの中でも、電気化学的な安定性の点で、含窒素系有機カチオンが好ましい。
含窒素系有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、脂肪族四級アンモニウム系カチオン等が挙げられる。
イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−シアノメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(3−シアノプロピル)−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−パーフルオロエチルイミダゾリウム、1−メチル−3−パーフルオロプロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−パーフルオロブチルイミダゾリウム、1−エチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−パーフルオロエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−パーフルオロプロピルイミダゾリウム、1−エチル−3−パーフルオロブチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウム、1−パーフルオロエチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−パーフルオロプロピル−3−プロピルイミダゾリウム、1−パーフルオロブチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−パーフルオロエチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−パーフルオロプロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−パーフルオロブチルイミダゾリウム、1,3−ビス(トリフルオロメチル)イミダゾリウム、1−パーフルオロエチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリム,1−パーフルオロプロピル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウム,1−パーフルオロブチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウム、1,3−ビス(パーフルオロエチル)イミダゾリウム、1−パーフルオロエチル−3−パーフルオロプロピルイミダゾリウム、1−パーフルオロブチル−3−パーフルオロエチルイミダゾリウム、1,3−ビス(パーフルオロプロピル)イミダゾリウム、1−パーフルオロブチル−3−パーフルオロプロピルイミダゾリウム、1,3−ビス(パーフルオロブチル)イミダゾリウム等の2置換イミダゾリウム系カチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,3,5−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、3−エチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、3−エチル−1,5−ジメチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−プロピルイミダゾリウム、1,5−ジメチル−3−プロピルイミダゾリム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ブチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,5−ジメチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウム、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、3−トリフルオロメチル−1,2ジメチルイミダゾリウム、3−パーフルオロエチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、3−パーフルオロプロピル−1,2−ジメチルイミダゾリム、3−パーフルオロブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ビス(トリフルオロメチル)−2−メチルイミダゾリウム、1−パーフルオロエチル−2−メチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリム、2−シアノ−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−シアノ−1−エチル−4−メチルイミダゾリウム、2−シアノ−1−プロピル−4−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2−シアノ−4−メチルイミダゾリウム等の3置換イミダゾリウム系カチオンなどを挙げることができる。
ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−オクチルピロリジニウム、N−デシル−N−メチルピロリジニウム、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウム、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウム、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムなどを挙げることができる。
ピペリジニウム系カチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−ブチル−N−メチルピペリジニウム、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウム、N−メチル−N−オクチルピペリジニウム、N−デシル−N−メチルピペリジニウム、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウム、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウム、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウム、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウム、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウム、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウム、N−エチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウム、N−エチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムなどを挙げることができる。
脂肪族四級アンモニウム系カチオンとしては、例えば、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウム、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウム、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウム、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウム、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウム、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウム、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムなどを挙げることができる。
上記の含窒素系有機カチオンの中でも、イオン伝導度の点から特にイミダゾリウム系カチオンが好ましく、更には、耐酸化電位の点から1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム等のジアルキルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のトリアルキルイミダゾリウムカチオンが好ましい。
かくして本発明の電解質材料が得られるが、本発明の電解質材料は、電解液に配合することにより、リチウムカチオンを含有し、かつ電極保護膜形成機能を有する電解質を形成する。
本発明で使用される電解液としては、有機溶媒、イオン液体など公知のものが使用できるが、リン酸エステルなどの液状化合物、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリマー、及び無機材料などの固体も使用することができる。
有機溶媒としては、例えば、カーボネート系溶媒(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)、アミド系溶媒(N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N−メチルピロジリノン等)、ラクトン系溶媒(γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン等)、アルコール系溶媒(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジグリセリン、ポリオキシアルキレングリコールシクロヘキサンジオール、キシレングリコール等)、エーテル系溶媒(メチラール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、アルコキシポリアルキレンエーテル等)、ニトリル系溶媒(ベンゾニトリル、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、燐酸類及び燐酸エステル溶媒(正燐酸、メタ燐酸、ピロ燐酸、ポリ燐酸、亜燐酸、トリメチルホスフェート等)、2−イミダゾリジノン類(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、ピロリドン類、スルホラン系溶媒(スルホラン、テトラメチレンスルホラン等)、フラン系溶媒(テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン等)、ジオキソラン、ジオキサン等が挙げられ、これらの単独あるいは2種以上の混合溶媒が使用できる。これらの中でもカーボネート系溶媒、エーテル系溶媒、フラン系溶媒、スルホラン系溶媒が、得られる電解質の導電率の点で好ましく、特にスルホラン系溶媒が電池の安全性の点でより好ましく用いられる。
イオン液体としては、例えば、アニオンとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、BF4 -、BF3CF3 -、BF325 -、PF6 -、NO3 -、CF3CO2 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-、(FSO22-、(CF3SO2)(FSO2)N-、(CN)2-、(CN)3-、(CF3SO23-、(C25SO22-、AlCl4 -、Al2Cl7 -などを含有するイオン液体が挙げられる。これに対応するカチオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムなどのアルキルイミダゾリウム系カチオンが挙げられ、イミダゾリウム系カチオン以外では、4級アンモニウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、4級ホスホニウム系カチオンなどを含有するイオン液体が挙げられる。これらのイオン液体は1種または2種以上併用して用いることができる。これらの中でもイミダゾリウム系カチオンよりなるイオン液体が、得られる電解質の導電率の点で好ましく用いられる。
本発明の電解質材料の含有量は、電解質全体を100重量%とした場合に、3〜90重量%が好ましく、より好ましくは、6〜80重量%、更に好ましくは、7〜75重量%、特に好ましくは、8〜70重量%である。電解質材料が少なすぎると、電解質中のリチウムカチオンの不足により導電率が低下する傾向にあり、多すぎると高粘度化により高速充放電が困難となる傾向にある。
かくして本発明の電解質材料を用いてなる本発明の電解質が得られるが、かかる電解質の耐酸化電位は、6V以上(vs Li/Li+)であることが好ましい。耐酸化電位のより好ましい範囲は6.5V以上、更に好ましくは6.8V以上、特に好ましくは7V以上である。耐酸化電位が小さすぎると、高容量、高出力が必要な自動車用電池への適用が困難となる傾向がある。
なお、ここでいう耐酸化電位は後述する手法で測定されるものであるが、電解質材料の微量の分解に伴い検出されるピークを無視するものとする。通常、該測定中に電極保護膜が形成される際には微小な電流ピークが観測されるが、このピークは本発明の趣旨を損なうものではなく、繰り返し測定を行い十分な電極保護膜が形成された後は消滅するものである。具体的には、電流密度1mA/cm2未満のピークは無視するものとする。
本発明の電解質は、導電率が25℃において5mS/cm以上であることが好ましく、より好ましくは7mS/cm以上、更に好ましくは9mS/cm以上、特に好ましくは10mS/cm以上である。なお、25℃での導電率の上限は通常、100mS/cmである。25℃における導電率が、小さすぎると電池の高速充放電が困難となる傾向がある。
更に、本発明においては、低温での導電率が重要であり、例えば、電解質の−20℃での導電率は、0.01mS/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mS/cm以上、更に好ましくは1mS/cm以上、特に好ましくは2mS/cm以上である。なお、−20℃での導電率の上限は通常、10mS/cmである。−20℃における導電率が小さすぎると、寒冷地での電池の動作が困難となる傾向がある。
なお、上記25℃および−20℃における導電率は、後述する手法で測定される。
次に、本発明の電解質材料の製造方法について説明する。
本発明の電解質材料は、リチウムカチオン(A1)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなる新規なリチウム塩を含有するものである。
まず、リチウムカチオン(A1)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなる新規なリチウム塩を製造する方法について説明する。
ここで、かかるリチウム塩の化学式は、+Li・-P(CN)n6-n(ここで、nは1〜5の整数)である。
以下に、リチウム塩の具体的な製造例を、n=3の場合を例にとって説明する。但し、これに限定されるものではない。
三塩化リン1モルに対して1〜10当量、好ましくは3〜8当量のシアノ化合物を加えて攪拌し、通常−30〜120℃、好ましくは20〜120℃、特に好ましくは30〜110℃で、通常数分〜数十時間、好ましくは10分〜50時間、特に好ましくは1〜24時間反応させて、トリシアノホスフィンを得ることができる。反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶媒、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの電解液が好ましく、特に、反応性の点からトルエン、キシレンが好ましい。シアノ化合物としては、例えば、シアン化水素、トリメチルシリルシアニド、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化銀、シアン化銅などが挙げられ、これらの中でもシアン化銀、シアン化銅が好ましい。
次いで、トリシアノホスフィンに対して、1〜2当量のハロゲンを加え、反応溶媒中で攪拌し、通常−196〜50℃、好ましくは−78〜40℃で、通常数分〜数時間、好ましくは10分〜2時間反応させて、ジハロトリシアノホスフィンが得られる。反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの電解液が好ましく、特に、ジクロロメタン、アセトニトリルが好ましい。用いるハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素があるが反応性の点から塩素が好ましい。ハロゲンの代わりに塩化スルフリルなどのハロゲン化剤を用いることも可能である。この場合は副生する二酸化硫黄をアルゴン置換で除去することにより、ジハロトリシアノホスフィンが得られる。
更に、ジハロトリシアノホスフィンを、ハロゲン化リチウムなどのリチオ化剤を用いてリチオ化することでリチウムトリハロトリシアノホスフェイトが得られる。より具体的には、ジハロトリシアノホスフィン1当量に対して1〜10当量のハロゲン化リチウムを加えて、通常−196〜100℃、好ましくは−78〜80℃、特に好ましくは−78〜60℃で、通常数分〜数十時間、好ましくは1〜24時間、特に好ましくは2〜8時間反応させることにより、リチウムトリハロトリシアノホスフェイトが得られる。
ハロゲン化リチウムとしては、例えば、LiF、LiCl、LiBr、LiIなどが挙げられ、これらの中でも、反応性の点でLiClが好ましく、この場合、リチウムトリクロロトリシアノホスフェイトが得られる。
リチウムトリハロトリシアノホスフェイトを、フッ素化剤を用いてフッ素化することによりトリフルオロトリシアノホスフェイトの塩が得られる。より具体的には、リチウムトリハロトリシアノホスフェイト1当量に対して3〜10当量のフッ素化剤を加えて、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは25〜60℃で、通常数分〜数十時間、好ましくは1〜24時間、特に好ましくは2〜8時間反応させることにより、トリフルオロトリシアノホスフェイトの塩が得られる。反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などが挙げられ、特に、溶解性の点からジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート(DMC)が好ましい。フッ素化剤としては、LiF、NaF、KF、AgF、LiBF4、NaBF4、KBF4、AgBF4などが挙げられ、これらの中でも反応性の点からAgBF4が好ましい。
フッ素化剤としてAgBF4を用いる場合は、トリフルオロトリシアノホスフェイトの銀塩が生成するため、再度、リチオ化剤を用いて銀イオンとリチウムイオンのカチオン交換を行うことにより、リチウムトリフルオロトリシアノホスフェイトが高純度に得られる。より具体的には、トリフルオロトリシアノホスフェイトの銀塩1当量に対して1〜10当量のリチオ化剤を加えて、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは25〜60℃で、通常数分〜数十時間、好ましくは0.5〜24時間、特に好ましくは0.5〜8時間反応させることにより、目的とするリチウムトリフルオロトリシアノホスフェイトが得られる。反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などが挙げられ、特に、溶解性の点からジメチルカーボネート(DMC)が好ましい。リチオ化剤としては、LiBr、LiCl、LiIなどが挙げられ、これらの中では銀イオンの除去率の点からLiIが好ましい。
得られたリチウムトリフルオロトリシアノホスフェイトは、不純物を除去するため、精製することが好ましい。精製の手法は、例えば、濾過、抽出、洗浄、カラムクロマトグラフ、再沈殿、吸着などの手法があげられる。これらの中でも、電気化学特性向上の点から、アセトニトリルやジメチルカーボネートによる抽出が好ましい。更に、得られたリチウムトリフルオロトリシアノホスフェイトは、電気化学特性向上の点から、真空乾燥することが好ましく、更に、乾燥雰囲気下で保管されることが好ましい。
かくして本発明のリチウム塩が得られることとなり、かかるリチウム塩は、電解質材料として非常に有用である。
また、本発明においては、リチウムカチオン(A1)、有機カチオン(A2)及びシアノフルオロホスフェイトアニオン(B)を含有してなる電解質材料も提供するものであり、かかる電解質材料を製造する方法について説明する。
かかる電解質材料は、例えば、有機カチオン(A2)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるイオン液体(I)のカチオン交換により得られる。すなわち、イオン液体(I)中の有機カチオン(A2)の一部をリチウムカチオン(A1)と交換することにより得られる。
まず、有機カチオン(A2)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるイオン液体(I)の製造方法を説明する。
有機カチオン(A2)としてアルキルイミダゾリウムカチオンを例にとり、かかるカチオンの塩素化物と、五塩化リンを反応させ、得られるヘキサクロロホスフェイト系アニオンをシアノ化、次いでフッ素化してシアノフルオロホスフェイト系アニオンとする。但し、本発明ではこれに限定されるものではなく、原料が異なっても以下の説明に準じて製造することができる。
カチオン源となるアルキルイミダゾリウムの塩素化物は、イミダゾールとクロロアルキルを当モル量で反応させ、4級アンモニウム塩化して得ることができる。
次いで、アルキルイミダゾリウムの塩素化物と、当モル量の五塩化リンを、反応溶媒中で攪拌し、通常室温〜100℃、好ましくは室温〜50℃で、通常数分〜数時間、好ましくは10分〜1時間反応させて、アルキルイミダゾリウムカチオンとヘキサクロロホスフェイト系アニオンを含む中間体を得る。反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒が好ましく、特に、脱水ジクロロメタン、脱水アセトニトリルが好ましい。
更に、反応系にシアノ化合物、例えば、アルキルイミダゾリウムカチオンとヘキサクロロホスフェイト系アニオンを含む中間体1モルに対して、1〜10当量のシアノ化合物を加えて攪拌し、通常−30〜100℃、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは10〜30℃で、通常数分〜数十時間、好ましくは10分〜50時間、特に好ましくは1〜24時間反応させて、目的とするシアノクロロホスフェイト系アニオンを有するイオン液体を得ることができる。反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。シアノ化合物としては、例えば、シアン化水素、トリメチルシリルシアニド、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化銀、シアン化銅などが挙げられ、これらの中でもシアン化銀、シアン化銅が好ましい。
得られたアルキルイミダゾリウムカチオンとシアノクロロホスフェイト系アニオンよりなるイオン液体は、生成するハロゲン化金属や不純物を除去するため、精製することが好ましい。精製の手法は、例えば、濾過、抽出、洗浄、カラムクロマトグラフ、再沈殿、吸着などの手法があげられる。これらの中でも、イオン液体の電気化学特性向上の点から、カラムクロマトグラフが好ましい。カラムとしては、アルミナ、シリカゲル、珪藻土、活性炭などが挙げられるが、特に、不純物イオンを効率的に除去できる点から、アルミナが好ましい。
かくしてアルキルイミダゾリウムのハロゲン化物と五塩化リンを原料として、アルキルイミダゾリウムカチオンとシアノクロロホスフェイトアニオンを有するイオン液体が得られる。シアノクロロホスフェイト系アニオンの一般式の-P(CN)n6-n(X=Cl)におけるnは、シアノ化合物の配合量、反応時間、精製条件などにより制御することができる。
次いで、シアノクロロホスフェイト系アニオンを有するイオン液体を、フッ素化剤を用いてフッ素化することによりシアノフルオロホスフェイト系アニオンを有するイオン液体が得られる。より具体的には、シアノクロロホスフェイト系アニオンを有するイオン液体1当量に対して1〜10当量のフッ素化剤を加えて、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは25〜60℃で、通常数分〜数十時間、好ましくは1〜24時間、特に好ましくは3〜8時間反応させることにより、目的とするシアノフルオロホスフェイト系アニオンを有するイオン液体が得られる。フッ素化剤としては、HF、LiF、NaF、KF、AgF、LiBF4、NaBF4、KBF4、AgBF4などが挙げられ、これらの中ではAgBF4とAgFが好ましい。
フッ素化剤として金属塩を用いる場合、副生する金属カチオンを除去するため、得られたイオン液体に金属カチオン捕集剤を加えて、後処理を行うことが好ましい。金属カチオン捕集剤としては、目的とするイオン液体のカチオンと、ハロゲンアニオンよりなる化合物が好ましい。例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとシアノフルオロホスフェイト系アニオンを有するイオン液体を製造する場合、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのハロゲン化物を用いる。ハロゲン化物としては塩化物が好ましい。かかる金属カチオン捕集剤は、使用したフッ素化剤1当量に対して0.1〜1当量が好ましく、特に好ましいのは0.3〜0.8当量である。後処理の条件としては、イオン液体に金属カチオン捕集剤を加えて、通常0〜50℃、好ましくは10〜40℃で、通常数分〜数時間、好ましくは10分〜1時間反応させた後、沈殿した金属ハロゲン化物をろ過により取り除き、ろ液を水洗し、乾燥することで純度の高いイオン液体を得ることができる。
得られたアルキルイミダゾリウムカチオンとシアノフルオロホスフェイト系アニオンよりなるイオン液体は、更なる不純物を除去するため、精製することが好ましい。精製の手法は、例えば、濾過、抽出、洗浄、カラムクロマトグラフ、再沈殿、吸着などの手法があげられる。これらの中でも、イオン液体の電気化学特性向上の点から、カラムクロマトグラフが好ましい。カラムとしては、アルミナ、シリカゲル、珪藻土、活性炭などが挙げられるが、特に、不純物イオンを効率的に除去できる点から、アルミナが好ましい。
かくして得られた有機カチオン(A2)及びシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるイオン液体(I)を用いて、本発明の電解質材料を製造する。本発明の電解質材料は、イオン交換樹脂を用いた既存のカチオン交換法により、有機カチオン(A2)の一部をリチウムカチオン(A1)に置換することにより得られるが、生産的な観点から、より好ましくは、例えば、かかるイオン液体(I)と、リチウムカチオン(A1)とカウンターアニオンよりなるリチウム塩(II)を反応させ、リチウム塩由来のカウンターアニオンを溶剤洗浄や分解などの手法により除去することで得られる。
イオン交換樹脂を用いたカチオン交換法としては、公知の手法であればよく、例えば、スチレン系などのイオン交換樹脂に水酸化リチウムの水溶液を作用させて、樹脂にリチウムカチオンを担時させた後、この樹脂にイオン液体(I)を作用させて、有機カチオン(A2)の一部をリチウムカチオン(A1)に置換する。
本発明の電解質材料は、より好ましくは、イオン液体(I)と、リチウムカチオン(A1)とカウンターアニオンよりなるリチウム塩(II)を反応させ、リチウム塩由来のカウンターアニオンを溶剤洗浄や分解などの手法により除去することで得られる。
リチウム塩(II)としては、例えば、LiBF4、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiPF6、LiOH、LiCO2H、LiCO2CH3、LiCO2CF3、LiSO2CH3、LiSO2CF3、LiCN、LiN(CN)2、LiC(CN)3、LiSCN、LiN(SO2CF32、LiN(SO2F)2等が挙げられる。これらの中では、イオン液体(I)に対する溶解度の点から、LiBF4、LiPF6、LiCO2H、LiCO2CH3、LiCO2CF3、LiSO2CH3、LiSO2CF3、LiN(SO2CF32が好ましく、さらに好ましくは、カウンターアニオンの水に対する溶解度からLiBF4、LiPF6、LiCO2H、LiCO2CH3、LiCO2CF3、LiSO2CH3、LiSO2CF3が好ましい。反応溶剤は特段必要としないが、反応溶剤を使用する場合は、例えば、カチオン交換の効率の点で、塩化メチレン、クロロホルム、トルエンが好ましく、溶剤洗浄の効率の点から、塩化メチレンが好ましい。
反応の具体的な手法としては、例えば、イオン液体(I)10〜90モル%とリチウム塩(II)90〜10モル%を、10〜60℃で、1分〜24時間攪拌することにより、リチウムカチオン、有機カチオン、カウンターアニオン、及びシアノフロオロホスフェイト系アニオンよりなる組成物を得る。配合比の好ましい範囲は、イオン液体(I)20〜80モル%とリチウム塩(II)80〜20モル%、更に好ましくは、イオン液体(I)30〜70モル%とリチウム塩(II)70〜30モル%である。リチウム塩の量が少ないと、電解質中のリチウムカチオンが不足する傾向にあり、リチウム二次電池としての性能が確保できない傾向があり、逆に、リチウム塩の量が多いと、電解質が高粘度化し導電率が低下する傾向がある。反応温度の好ましい範囲は、20〜50℃、より好ましくは、25〜40℃である。反応温度が低すぎると反応に時間がかかる傾向にあり、高すぎるとカウンターアニオンが分解しやすい傾向にある。反応時間の好ましい範囲は、30分〜12時間、より好ましくは、1〜6時間である。反応時間が短かすぎるとリチウム塩(II)のイオン液体(I)への溶解が不十分となり、カチオン交換が十分に進行しない傾向にあり、長すぎると生産性に劣る傾向にある。
溶剤洗浄の具体的な手法としては、アルコールやエーテルおよびこれらと水との混合溶剤などの洗浄溶剤を、上述した組成物100重量部に対して、10〜1000重量部を加え、0〜60℃で、1〜5時間攪拌し、カウンターアニオンが溶解した水層を除去した後、ろ過、次いで乾燥させ、目的とするリチウムカチオン(A1)、有機カチオン(A2)、及びシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)を含有してなる電解質材料を得る。洗浄溶剤の配合量は、組成物100重量部に対して、20〜700重量部が好ましく、より好ましくは、30〜500重量部である。洗浄溶剤が少ないと、カウンターアニオンの除去率が低下する傾向にあり、逆に、多すぎると生産性が低下する傾向にある。かかる溶剤洗浄は、2回以上繰り返しても良い。
電解質中のリチウムカチオン量、すなわちa1/(a1+a2)は、イオン液体の組成、リチウム塩の種類と量、洗浄溶剤の種類と量で制御することができる。
カウンターアニオンを分解により除去する具体的な手法としては、イオン液体(I)60〜99モル%と蟻酸リチウムなどのカルボン酸のリチウム塩(II)1〜40モル%を、通常、10〜60℃で、1分〜24時間攪拌し混ぜた後、水などのプロトン源を加え100〜500℃、より好ましくは200〜300℃で加熱することでアニオンを除去することができる。温度が低すぎると反応が進行しない傾向にあり、高すぎると有機カチオンが分解しやすい傾向にある。反応時間の好ましい範囲は、30分〜12時間、より好ましくは、1〜6時間である。時間が短すぎるとアニオンの分解が不十分となり、長すぎると有機カチオンを分解させる傾向にある。
また、前記のリチウムカチオン(A1)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるリチウム塩と、有機カチオン(A2)とシアノフルオロホスフェイトアニオン(B)よりなるイオン液体(I)を混合することでも本発明の電解質材料を得ることができるし、前記リチウム塩(II)のリチウムカチオン(A1)の一部を、有機カチオン(A2)に置換することでも本発明の電解質材料を得ることができる。
なお、有機カチオン(A2)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるイオン液体(I)のカチオン交換において、イオン液体中の有機カチオン(A2)の全部をリチウムカチオン(A1)と交換することにより、前記のリチウムカチオン(A1)とシアノフルオロホスフェイト系アニオン(B)よりなるリチウム塩を得ることもできる。
かくして本発明の電解質材料が得られるが、使用される電解質材料は1種のみでも2種以上併用してもよく、例えば、有機カチオンが異なるものや、一般式(1)においてnの異なるもの等を2種以上併用することが挙げられる。
本発明の電解質材料を用いて得られる電解質には、必要に応じて、本発明以外のリチウム塩及び/または電極保護膜形成剤を配合してもよい。
リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiBR4(Rはフェニル基又はアルキル基を表す)、LiBFm4-m(Rはフッ素原子を含んでもよいアルキル基、mは1〜3の整数)、LiPF6、LiSbF6、LiAsF6、LiCIO4、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)(SO2F)、LiN(CN)2、LiC(SO2CF33、LiSO3613、LiSO3817、LiAlCl4、リチウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等が挙げられる。中でも、本発明の電解質材料への溶解性の点で、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2F)2などのリチウム塩が好適に用いられる。
かかるリチウム塩の含有量としては、電解質100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜5重量部、特に好ましくは0.3〜3重量部である。かかる含有量が多すぎると、電解質の耐酸化電位が不足する傾向がある。
本発明以外の電極保護膜形成剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、1,3−プロパンスルトン、エチレンサルファイト、トリエチルボレート、ブチルメチルスルフォネートなどが挙げられる。この中でも、負極側に安定なSEIを形成する点から、ビニレンカーボネートが特に好ましい。
かかる電極保護膜形成剤の含有量としては、電解質全体を100重量部とした場合に、0.1〜5重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.3〜1重量部である。かかる含有量が多すぎると電解質の導電率が低下する傾向があり、少なすぎるとリチウム二次電池の電位窓の安定化効果が得られない傾向がある。
次に、本発明の電解質を用いて得られるリチウム二次電池について説明する。
本発明では、上記で得られる本発明の電解質を正極と負極との間に挟持してリチウム二次電池を製造する。
かかる正極については、複合正極であることが好ましい。複合正極とは、正極活物質に、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電助剤、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤、及び、必要に応じてイオン導電性ポリマーを混合した組成物を、アルミニウム箔などの導電性金属板に塗布したものである。
正極活物質としては、無機系活物質、有機系活物質、これらの複合体が例示できるが、無機系活物質あるいは無機系活物質と有機系活物質の複合体が、電池のエネルギー密度が大きくなる点から好ましい。
無機系活物質として、3V系ではLi0.3MnO2、Li4Mn512、V25、LiFePO4、LiMnO3等、4V系ではLiCoO2、LiMn24、LiNiO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、LiNi1/2Mn1/22、LiNi0.8Co0.22、LiMnPO4、Li2MnO3等、5V系ではLi2MnO3、LiNi0.5Mn1.52等の金属酸化物、TiS2、MoS2、FeS等の金属硫化物、これらの化合物とリチウムの複合酸化物が挙げられる。有機系活物質としてはポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等の導電性高分子、有機ジスルフィド化合物、カーボンジスルフィド、活性硫黄等が用いられる。
負極については、例えば、集電体に負極活物質を直接塗布した金属系負極、合金系の集電体にポリフッ化ビニリデンなどの結着材で導電性高分子、炭素体、酸化物などの活物質を塗布した負極等が挙げられる。
負極活物質としては、例えば、リチウム金属やシリコン金属、アルミニウム、鉛、スズ、シリコン、マグネシウム等の金属とリチウムとの合金、SnO2、TiO2などの金属酸化物、ポリピリジン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、あるいはこれらの誘導体よりなるカチオンドープ可能な導電性高分子、リチウムを吸蔵可能な炭素体などが挙げられるが、中でも特に、本発明の電解質を用いる場合は、エネルギー密度が高いリチウム金属とシリコン金属が好ましい。
本発明においては、かかるリチウム金属を用いる場合では、リチウム金属の厚みとしては1〜100μmが好ましく、更には3〜50μmが好ましく、特には5〜20μmが好ましい。リチウム金属としては薄いリチウム箔を使用することが経済的で好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、電解質を上記の正極及び負極の間に挟持させることにより製造されるが、短絡防止の点からセパレーターを使用することが好ましい。具体的には、セパレーターに電解質を含浸させ、正極と負極とで挟み込むことによりリチウム二次電池が得られる。
セパレーターとしては、リチウムイオンのイオン移動に対して低抵抗であるものが用いられ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物より選ばれる1種以上の材質からなる微多孔膜、有機若しくは無機の不織布又は織布が挙げられる。これらの中では、短絡防止や経済性の点で、ポリプロピレンやポリエチレンよりなる微多孔膜とガラス不織布が好ましい。
本発明のリチウム二次電池の形態としては、特に限定するものではないが、コイン、シート、円筒等、種々の形態の電池セルが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各特性の測定条件は以下の通りである。
(導電率)
測定用セルとして東亜DKK社製、CG−511B型セルを用いて、電解質に5時間浸漬後、電気化学測定システム「ソーラートロン1280Z」(英国ソーラートロン社製)を用い、常温(25℃)および低温(−20℃)下、交流インピーダンス法で測定した。交流振幅は5mV、周波数範囲は20k〜0.1Hzで測定した。
(耐酸化電位)
測定用セルとしてビーエーエス社製 V−4Cボルタンメトリー用セルを用い、電極はビーエーエス社製のものを用いた。作用極にはグラッシーカーボン(直径1mm)、対極は白金、参照電極にはリチウムを用いた。電位掃引速度は5mV/sec、温度は25℃で実施した。測定装置は電気化学測定システム「ソーラートロン1280Z」(英国ソーラートロン社製)を用いた。限界電流密度を±1mA/cm2とし、+1mA/cm2に到達する電位を耐酸化電位(V)とした。
(分析装置)
質量分析(MS)は日本電子社製「JMS-T100LP AccuTOF LC-plus」を用い、IRスペクトルはNicolet社製「Avatar360」を用い、NMRはVarian社製、「Unity−300」(溶媒:重アセトニトリル)を用いて測定した。
実施例1
〔電解質材料(1)(リチウム塩)の製造〕
アルゴン気流下、500mLの四口フラスコに、シアン化銀40.17g(0.30mol)と脱水キシレン150mLを加え、滴下漏斗にて三塩化リン8.74mL(0.10mol)を氷浴中で滴下した。その後、100℃に加熱し5時間攪拌した後、反応液をろ過し沈殿物を得た。得られた沈殿物に、脱水ジエチルエーテル150mLを加え、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで、白色固体のトリシアノホスフィンが10g得られた。得られたトリシアノホスフィンの分析結果を以下に示す。
31P−NMR −132.5ppm
IR 2190cm-1[CN]
次に、アルゴン気流下、100mL三口フラスコに脱水ジクロロメタン20mL中、塩化リチウム1.87g(0.028mol)を加え、−78℃に冷却したところに塩素ガスを1.2当量(0.034mol)吹き込んだ。さらに、アセトニトリル20mLに溶かしたトリシアノホスフィン3.05g(0.028mol)を滴下した。その後、徐々に室温に温度を上げ、2時間攪拌した。その後、反応溶液をろ過し、得られたろ液を濃縮することで、黄土色固体を得た。さらに、得られた固体に脱水アセトニトリルを加え、ろ過し、ろ液を濃縮することで薄黄色固体が6.081g得られた。得られた固体の分析結果は以下の通りであり、リチウムトリクロロトリシアノホスフェイトであることが確認された。
MS m/z=213.92696
IR 2200cm-1[CN]
31P−NMR −333.579ppm[s,P]
次に、アルゴン気流下、300mL三口フラスコにテトラフルオロホウ酸銀(AgBF4)を36.9g(0.190mol)と脱水ジクロロメタン100mLを加え、氷浴中で脱水アセトニトリル10mLを加え、溶解させた。そこに、脱水アセトニトリル25mLに溶かしたリチウムトリクロロトリシアノホスフェイト6.0g(0.0027mol)を滴下した。室温で2時間攪拌した後、反応溶液をろ過し、得られたろ液を濃縮した。さらに、超純水400mLで洗浄し、ろ過を行った後、得られた沈殿を真空乾燥することで黄土色固体3.77gが得られた。得られた固体の分析結果は以下の通りであり、トリフルオロトリシアノホスフェイトの銀塩であることが確認された。
MS(+) m/z=188.92361
MS(−) m/z=166.00182
IR 2200cm-1[CN]
31P−NMR −218.964ppm[q,Hz=740.8Hz,P]
19F−NMR −36.6605ppm[d,Hz=740.8Hz,F]
次に、300mL三口フラスコにジメチルカーボネート70mL中、トリフルオロトリシアノホスフェイトの銀塩11.6g(0.04mol)を加え、ジメチルカーボネート100mLに溶かしたヨウ化リチウム5.60g(0.04mol)を滴下した。室温で30分攪拌した後、反応溶液をマススペクトル(MS)で確認したところ、Agカチオンのピークは検出されなかった。反応溶液中でカチオン交換が行われAgIとして析出したと判断し、反応を停止した。反応溶液をろ過し、得られたろ液を濃縮した。さらに、脱水アセトニトリル100mLに溶解させ、濾過し、得られたろ液を濃縮した。これを100℃で2日間真空乾燥した後、灰白色固体が得られた。得られた固体の分析結果は以下の通りであり、リチウムトリフルオロトリシアノホスフェイト(リチウム塩)であることが確認された。なお、下記の分析結果のうち、リチウム塩のMS(−)のチャート図を図1に示し、31P−NMRのチャート図を図2に示し、19F−NMRのチャート図を図3に示し、7Li−NMRのチャート図を図4に示した。
MS(+) m/z=130.08301
MS(−) m/z=166.00182
IR 2200cm-1[CN]
31P−NMR −218.991ppm[q,Hz=740.1Hz,P]
19F−NMR −36.7635ppm[d,Hz=741.6Hz,F]
7Li−NMR −2.47ppm
〔電解質(1)の製造〕
得られた電解質材料(1)8.6g(0.05モル)を、電解液としてエチレンカーボネート(50体積%)/ジメチルカーボネート(50体積%)100gに溶解し、電解質(1)を得た。
得られた電解質の諸特性は表1に示されるとおりである。低温においても高い導電率と、高い耐酸化電位を有することより電気化学特性に優れていることが確認された。
また、得られた電解質(1)は、例えば、以下のようにして、リチウム二次電池を製造することが可能であり、リチウム二次電池用の電解質として有用である。
〔リチウム二次電池の製造〕
(1)正極の作製
LiCoO2粉末9.0g、ケチェンブラック0.5g、ポリフッ化ビニリデン0.5gを混合し、更に1−メチル−2−ピロリドン7.0gを添加して乳鉢でよく混合し、正極スラリーを得る。得られる正極スラリーをワイヤーバーを用いて厚さ20μmアルミニウム箔上に大気中で塗布し、100℃で15分間乾燥させた後、更に、減圧下130℃で1時間乾燥して、膜厚30μmの複合正極を作製した。
(2)電池の組立
上記の電解質(1)を、セパレーター(セルガード社製セルガード#2400、厚さ20μm)と複合正極に含浸させて、複合正極の上にセパレーター、負極としてのリチウム箔(厚さ500μm)の順で重ね、2032型コインセルに挿入し封缶し、リチウム二次電池を得た。
実施例2
〔電解質材料(2)の製造〕
実施例1で得られたリチウム塩(リチウムトリフルオロトリシアノホスフェイト)51.9g(0.3モル)に、イオン液体(I)として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・トリフルオロトリシアノホスフェイト83.2g(0.3モル)を加えて室温で1時間攪拌し、リチウムカチオン25モル%、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン25モル%、トリフルオロトリシアノホスフェイトアニオン50モル%よりなる液状の電解質材料(2)を得た。
〔電解質(2)の製造〕
得られた電解質材料(2)70g(内リチウムトリフルオロトリシアノホスフェイトが26.9g(0.16モル)を、電解液としてエチレンカーボネート(50体積%)/ジメチルカーボネート(50体積%)30gと混合し、電解質(2)を得た。
得られた電解質の諸特性は表1に示されるとおりである。低温においても高い導電率と、高い耐酸化電位を有することより電気化学特性に優れていることが確認された。
また、得られた電解質(2)は、実施例1で記載のリチウム二次電池の製造法に準じて、リチウム二次電池を製造することが可能であり、リチウム二次電池用の電解質として有用である。
実施例3
得られた電解質材料(1)17.3g(0.1モル)を、電解液としてエチレンカーボネート(50体積%)/ジメチルカーボネート(50体積%)100gに溶解し、電解質(3)を得た。得られた電解質は実施例1と同様に評価した。
比較例1
LiPF67.6g(0.05モル)をエチレンカーボネート(50体積%)/ジメチルカーボネート(50体積%)100gに溶解して電解質を調整し、実施例1と同様にして評価した。
結果は表1に示されるとおりである。
Figure 0004917178
上記の実施例及び比較例の評価結果から明らかなように、比較例の電解質に対して、実施例の電解質は、常温及び低温での導電率に優れるうえ、耐酸化電位に優れるものであり、このため、リチウム二次電池の電解質として非常に有効である。
本発明の電解質材料は、高導電率や高い耐酸化電位を有するなどの電解質としての性能に優れ、更に、安全性に優れたものであり、リチウム二次電池用の電解質として非常に有用である。また、他の二次電池、一次電池、キャパシタ、コンデンサー、アクチュエーター、エレクトロクロミック素子、各種センサー、色素増感太陽電池、燃料電池用の電解質としても有用であり、更に、帯電防止剤、重合開始剤、イオン交換膜用材料、イオンガラス用材料としても有用である。

Claims (11)

  1. 成分(A1)及び(B)よりなるリチウム塩を含有してなることを特徴とする電解質材料。
    (A1)リチウムカチオン
    (B)下記一般式(1)で示されるシアノフルオロホスフェイト系アニオン
    [化1]
    -P(CN)n6-n ・・・(1)
    (ここで、nは1〜5の整数である。)
  2. 成分(A1)、(A2)、及び(B)を含有してなることを特徴とする電解質材料。
    (A1)リチウムカチオン
    (A2)有機カチオン
    (B)下記一般式(1)で示されるシアノフルオロホスフェイト系アニオン
    [化2]
    -P(CN)n6-n ・・・(1)
    (ここで、nは1〜5の整数である。)
  3. リチウムカチオン(A1)のモル数a1と、有機カチオン(A2)のモル数a2が、下記式(1−1)を満たすことを特徴とする請求項2記載の電解質材料。
    式(1−1) 0.1≦a1/(a1+a2)≦0.9
  4. 有機カチオンが、含窒素系有機カチオンであることを特徴とする請求項2または3記載の電解質材料。
  5. 含窒素系有機カチオンが、イミダゾリウム系カチオンであることを特徴とする請求項記載の電解質材料。
  6. 一般式(1)におけるnが3であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の電解質材料。
  7. 電極保護膜形成剤として用いることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の電解質材料。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の電解質材料を含有してなることを特徴とするリチウム二次電池用電解質。
  9. 耐酸化電位が7V以上(vs Li/Li+)であることを特徴とする請求項8記載のリチウム二次電池用電解質。
  10. 請求項8または9記載のリチウム二次電池用電解質を、正極と負極との間に挟持してなることを特徴とするリチウム二次電池。
  11. 成分(A1)及び(B)よりなることを特徴とするリチウム塩。
    (A1)リチウムカチオン
    (B)下記一般式(1)で示されるシアノフルオロホスフェイト系アニオン
    [化3]
    -P(CN)n6-n ・・・(1)
    (ここで、nは1〜5の整数である。)
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