JP4915011B2 - 金属−セラミックス接合基板 - Google Patents

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Description

本発明は、金属−セラミックス接合基板に関し、特に、セラミックス基板に金属板が接合した金属−セラミックス接合基板に関する。
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電流を制御するために、パワーモジュールが使用されている。一般に、パワーモジュールでは、セラミックス基板の両面に銅板やアルミニウム板などの金属板が接合した金属−セラミックス接合基板が使用されている。この金属−セラミックス接合基板の一方の面には、銅板やアルミニウム板などの金属板、AlSiCなどの熱伝導に優れたセラミックス板、またはCu−Mo板を銅でクラッドした複合板などからなる放熱板(ベース板)が半田付けにより固定されており、他方の面には、半田付けなどにより半導体チップが固定されている。
近年、環境汚染の防止の観点から、従来のPb入り半田(鉛を含む半田)の代わりにPbフリー半田(実質的に鉛を含まない半田)が使用され始めており、金属−セラミックス接合基板においても半導体チップを固定するためにPbフリー半田が使用され始めている。
しかし、ベース板(放熱板)のように大きな板材を固定するためにPbフリー半田を使用すると、酸化や汚れなどの半田濡れを少しでも阻害する要因があると半田接合部にボイドが生じ易く、あるいは半田付け条件の適正範囲が狭いために少しでもその範囲がばらつくと半田接合部にボイドが生じ易く、半田接合部にボイドが生じないように固定することが困難であった。半田接合部にこのようなボイドが生じると、半導体チップの作動時の発熱や周囲の温度変化などの熱の影響によって、それぞれの構成要素の熱膨張差による応力が生じ、金属−セラミックス接合基板のセラミックス基板や半田などの最も弱いところにクラックが生じるという問題がある。そのため、従来では、Pbフリー半田でベース板(放熱板)を固定することが行われていなかった。これは、Pbフリー半田は、Pb入り半田よりも凝固後の硬さが硬く、クリープし難いので、半田の塑性変形によって半田付けやヒートサイクルなどの熱応力を緩和することができず、セラミックス基板や半田に大きな応力が生じてクラックに至ると考えられる。
一方、セラミックス基板に金属板が接合した金属−セラミックス接合基板において、回路用金属板の一部がセラミックス基板に接合しないようにすることにより、セラミックス基板のクラックを防止することができることが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開平7−94623号公報(段落番号0010−0012) 特開平9−157055号公報(段落番号0007−0014) 特開2003−318330号公報(段落番号0019−0024)
しかし、特許文献1〜3に提案された金属−セラミックス接合基板では、Pb入り半田を使用してベース板(放熱板)を固定した場合には、熱衝撃時のセラミックス基板のクラックの発生を防止することができるが、Pbフリー半田を使用してベース板(放熱板)を固定した場合には、ヒートサイクル後の半田のクラックの発生を防止することができなかった。そのため、金属−セラミックス接合基板の裏面に固定する銅やアルミニウムなどからなる金属ベース板を厚くしたり、みかけの熱膨張係数を増大したり、半田との熱膨張差を小さくすることを試みたが、これらの試みでは、熱衝撃時のセラミックス基板への応力が増大して、今度はセラミックス基板にクラックが発生するという問題が生じた。このように、特許文献1〜3に提案された金属−セラミックス接合基板にPbフリー半田を使用してベース板(放熱板)を固定すると、ヒートサイクル試験などの信頼性試験において、半田やセラミックス基板にクラックが発生するのを効果的に防止することができなかった。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、金属−セラミックス接合基板に放熱板を固定する場合にPbフリー半田を使用しても、半田やセラミックス基板にクラックが発生するのを効果的に防止することができる、金属−セラミックス接合基板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、セラミックス基板の一方の面に放熱板固定用金属板の一方の面が接合した金属−セラミックス接合基板において、放熱板固定用金属板としてビッカース硬さ40〜60の金属板を使用することによって、金属−セラミックス接合基板に放熱板を固定する場合にPbフリー半田を使用しても、半田やセラミックスにクラックが発生するのを効果的に防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による金属−セラミックス接合基板は、セラミックス基板の一方の面に放熱板固定用金属板の一方の面が接合した金属−セラミックス接合基板において、放熱板固定用金属板のビッカース硬さが40〜60であることを特徴とする。この金属−セラミックス接合基板において、放熱板固定用金属板が銅または銅合金からなり、放熱板固定用金属板の結晶粒径が0.2mm以下であり、放熱板固定用金属板の厚さが0.05mm以上であるのが好ましい。
上記の金属−セラミックス接合基板において、セラミックス基板の一方の面にろう材を介して放熱板固定用金属板の一方の面を接合し、この熱板固定用金属板の他方の面に、この放熱板固定用金属板より大きい平面形状の放熱板を半田によって固定することができる。この半田は、実質的に鉛を含まない半田でもよい。また、半田の露出面が放熱板固定用金属板の一方の面の周縁から放熱板の周縁部付近に向かって傾斜しているのが好ましく、半田の露出面と放熱板の固定面との間の角度が30〜70°であるのが好ましい。
上記の金属−セラミックス接合基板において、セラミックス基板の一方の面に放熱板固定用金属板の一方の面を接合するために塗布されるろう材の形状を、互いに離間した複数の線状または点状にすることにより、セラミックス基板の一方の面と放熱板固定用金属板の一方の面との間に非接合部が設けられているのが好ましい。あるいは、放熱板固定用金属板の一方の面の周縁部または周縁部付近に所定の幅の非接合部を設けてもよい。この場合、放熱板固定用金属板の一方の面の周縁の全周に沿って延びているのが好ましい。また、非接合部が、放熱板固定用金属板の一方の面の周縁から所定の距離だけ離間してもよい。この場合、所定の距離が0.1mm以上であるのが好ましい。また、所定の幅が0.1mm以上であるのが好ましく、0.25〜3.0mmであるのがさらに好ましい。
上記の金属−セラミックス接合基板において、セラミックス基板が窒化アルミニウム基板または窒化珪素基板であるのが好ましく、セラミックス基板の厚さが0.05〜1.5mmであるのが好ましい。さらに、セラミックス基板の他方の面にろう材を介して回路用金属板が接合され、このろう材が金属板の周縁から0.03mm以上はみ出ているのが好ましい。
また、本発明による半導体回路基板またはパワーモジュールは、上記の金属−セラミックス接合基板を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、金属−セラミックス接合基板に放熱板を固定する場合にPbフリー半田を使用しても、半田やセラミックス基板にクラックが発生するのを効果的に防止することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明による金属−セラミックス接合基板の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本発明による金属−セラミックス接合基板の第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、略矩形の平面形状のセラミックス基板10の一方の面(図中上面)には、ろう材12を介して、セラミックス基板10よりも小さい略矩形の平面形状の銅または銅合金からなる回路用金属板14の一方の面の略全面が接合されている。セラミックス基板10として、窒化アルミニウム、窒化珪素またはアルミナを主成分とするセラミックス基板を使用することができるが、熱伝導の点から窒化アルミニウムまたは窒化珪素を主成分とするセラミックス基板を使用するのが好ましく、さらに、強度および靭性の点から四窒化三珪素(Si)などの窒化珪素を主成分とするセラミックス基板を使用するのが好ましい。
セラミックス基板10の厚さは、0.05mm未満では、強度および絶縁性が低下し、1.5mmより厚いと熱伝導性が低下するので、0.05〜1.5mmであるのが好ましい。なお、熱衝撃時のセラミックス基板10への応力を低減するために、ろう材12が回路用金属板14の周縁からはみ出して、幅0.03mm以上のフィレット部を形成するのが好ましい。このフィレット部の幅が0.03mm未満であると、応力低減効果が不十分な場合がある。ただし、フィレットの幅があまりにも大きいと、回路設計に制限が多くなり過ぎて、有効に使用することができる面積が小さくなるので、フィレットの幅が3mm以下であるのが好ましい。
セラミックス基板10の他方の面(裏面、図中下面)には、ろう材16を介して、セラミックス基板10よりも小さい略矩形の平面形状を有する放熱板固定用金属板18の一方の面の略全面が接合されている。この放熱板固定用金属板18として、ビッカース硬さ40〜60の銅または銅合金からなる金属板を使用するのが好ましい。放熱板固定用金属板18の厚さは、好ましくは0.05〜1.5mm、さらに好ましくは0.05〜0.8mmである。0.05mmより薄いと大電流を流すことができなくなり、1.5mmを超えるとろう接時にセラミックス基板にクラックが発生し易くなる。
放熱板固定用金属板18として銅合金からなる金属板を使用すると、ろう接時に銅合金が再結晶化して結晶粒の粗大化するが、ビッカース硬さを40〜60に維持し、結晶粒径を0.2mm以下に調整するのが容易である。銅合金は、電気伝導性や熱伝導性に優れ、他の金属と比べて強度、半田付け性、耐食性などにも優れているが、接合後の銅合金のビッカース硬さが40より小さいと、強度および剛性が不足し、一方、ビッカース硬さが60を越えると、銅合金が硬くなり過ぎて、ヒートサイクル時のセラミックス基板10へのダメージが大きくなり、寿命が低下する。また、結晶粒径が0.2mmを超えると、ヒートサイクル時に結晶粒毎の熱膨張の相違を粒界が吸収しようとして、その直下のろう材16に破壊の起点が生じたり、放熱板22側のPbフリー半田20にクラックの起点が生じたりして、信頼性が低下する。
銅合金として、析出物や酸化物などが分散した組織を有する銅合金を使用するのが好ましく、
ろう材による接合時の温度、例えば、Agを主成分とするろう材を使用する場合には800℃以上の温度で析出物が再固溶しない銅合金を使用すれば、結晶粒の極端な粗大化や強度の低下を効果的に防止することができる。特に、結晶粒径を0.2mm以下、好ましくは0.15mm以下にするためには、ろう材による接合時の温度で結晶粒径を制御することができるように、銅合金中に存在する析出物が、接合時の温度で再固溶し難い大きさおよび組成を有するのが好ましく、10nm以上の大きさであるのが好ましい。この析出物は、Ni−Ti系、Ni−Si系、Cu−Zr系などの金属間化合物でもよいし、Fe−P系、Ni−B系、Cu−Oなどのりん化物、ほう化物、酸化物などでもよい。析出物が再固溶した場合でも、ろう接時の冷却過程で析出し、常温でできるだけ固溶しない組成の組み合わせや量である方が、電気伝導性や熱伝導性の点で有利である。
銅合金からなる金属板は、展伸された板材であることが望ましく、電気伝導性や熱伝導性の点から、0.01〜3重量%のFe、0.01〜5重量%のNi、0.01〜3重量%のCo、0.01〜3重量%のTi、0.01〜2重量%のMg、0.01〜2重量%のZr、0.01〜1重量%のCa、0.01〜3重量%のSi、0.01〜5重量%のMn、0.01〜3重量%のCd、0.01〜5重量%のAl、0.01〜3重量%のPb、0.01〜3重量%のBi、0.01〜1重量%のTe、0.01〜3重量%のY、0.01〜3重量%のLa、0.01〜3重量%のBe、0.01〜3重量%のCe、0.01〜5重量%のAu、0.01〜10重量%のAg、0.01〜15重量%のZn、0.01〜5重量%のSnの少なくとも1種以上含み、残部がCuと不可避不純物である銅合金からなるのが好ましい。
なお、セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として、純銅からなる金属板を使用してもよい。例えば、C1020無酸素銅からなる金属板を使用する場合には、ろう接時にろう材に含まれる元素がろう材から拡散して銅合金になる必要があるので、ろう材の成分や、ろう接の温度や時間を適宜に選定して、ろう接時にろう材に含まれる元素をろう材から銅板中に拡散させる必要がある。
すなわち、通常の銅板をろう材によってセラミックス基板に接合すると、ろう付け時の温度の影響によって銅板が著しく軟化し、ビッカース硬さが40を下回り、強度および剛性が低下する。そのため、セラミックス基板から銅回路パターンを浮かせたり、はみ出させる場合には、軟化した銅板の変形によってアセンブリ工程で歩留まりが低下する。具体的には、銅板をセラミックス基板にろう接するためにAg系ろう材を使用しているが、このろう接の際に800℃以上の温度に加熱されるため、接合後に銅板のビッカース硬さが30〜40程度まで軟化し、また、銅の結晶粒が粗大化して0.2mmを越える大きさになる。ビッカース硬さが低く、結晶粒が大きいと、Pbフリー半田20によって放熱板22を固定した場合に、ヒートサイクルによりPbフリー半田20またはセラミックス基板10にクラックが生じ易く、信頼性が低下する。一般に、ビッカース硬さが低い方が塑性変形し易く、また、銅合金よりも純銅の方がクリープし易く、ヒートサイクルに対して有利であると考えられるが、実際にはヒートサイクルに対する信頼性が不十分であり、信頼性は結晶粒径との相互作用によると考えられる。そのため、銅板を使用する場合には、ろう材の成分が銅板に拡散することを利用して合金化する必要があり、ろう材の組成や接合条件などの制約が多くなる。Ag系ろう材の成分を銅中に拡散させて合金化させる場合には、銅側の接合界面でCuとAgが合金化しているが、さらに粒界を中心としてAgやろう材の添加成分が拡散して合金化が進行する。表面や粒界に濃縮相が形成されるが、ろう材の接合部を除いた銅合金として分析した際に、上述した組成範囲の銅合金であることが好ましく、接合後の銅合金の硬さを40〜60にする必要がある。
また、放熱板固定用金属板18の放熱面(裏面、図中下面)の略全面には、Pbフリー半田20により、放熱板固定用金属板18より大きい略矩形の平面形状の放熱板(放熱用金属ベース板)22が固定されている。Pbフリー半田20の露出面は、放熱板固定用金属板18の周縁から放熱板22の周縁部付近に向かって傾斜しており、この露出面と放熱板22の接合面との間の角度θが30〜70°になるのが好ましく、50°以下になるのがさらに好ましい。この角度θが70°より大きいと、応力が大きくなり、半田クラックが発生し易くなる。なお、この角度は、半田付けした部位の断面を観察した際のおおよその角度であり、曲線の角度を厳密に捉えたものではない。
このように、セラミックス基板10の裏面に接合される放熱板固定用金属板18としてビッカース硬さ40〜60の銅または銅合金からなる金属板を使用することにより、さらに、Pbフリー半田20の露出面を放熱板固定用金属板18の周縁から放熱板22の周縁部付近に向かって傾斜させることにより、図中矢印AおよびBで示すようにヒートサイクルの冷却時の熱収縮による応力が加えられても、放熱板固定用金属板18の周縁部とPbフリー半田20の周縁部との接合部(図中点線で示す領域24)やPbフリー半田20の周縁部と放熱板22との接合部(図中点線で示す領域26)に集中する応力を分散させることができる。その結果、Pbフリー半田20にクラックが生じるのを防止することができるとともに、セラミックス基板10にクラックが生じるのを防止することができる。
[第2の実施の形態]
図2を参照して、本発明による金属−セラミックス接合基板の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態では、セラミックス基板10の裏面(図中下面)にろう材116を介して接合される略矩形の平面形状の放熱板固定用金属板118が、セラミックス基板10より大きくなっている。また、放熱板固定用金属板118は、セラミックス基板10の周縁から好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上はみ出すように配置されて、放熱板固定用金属板18の周縁部がセラミックス基板10に接合しないようにすることによって、放熱板固定用金属板18の周縁の全周に沿って所定の幅の非接合部が形成されている。その他の構成は、上述した第1の実施の形態と略同一である。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、セラミックス基板10の裏面に接合される放熱板固定用金属板18としてビッカース硬さ40〜60の銅または銅合金からなる金属板を使用することにより、さらに、Pbフリー半田120の露出面を放熱板固定用金属板118の周縁から放熱板22の周縁部付近に向かって傾斜させるだけでなく、放熱板固定用金属板18の周縁の全周に沿って延びる所定の幅の非接合部を設けてセラミックス基板10に拘束されない部分を形成することにより、図中矢印AおよびBで示すようにヒートサイクルの冷却時の熱収縮による応力が加えられても、放熱板固定用金属板118の非接合部で応力を緩和することができるとともに、Pbフリー半田20の周縁部全体(図中点線で示す領域124)に応力を分散させることができる。その結果、Pbフリー半田120にクラックが生じるのを防止することができるとともに、セラミックス基板10にクラックが生じるのを防止することができる。
[第3の実施の形態]
図3を参照して、本発明による金属−セラミックス接合基板の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態では、セラミックス基板10の裏面(図中下面)にろう材216を介して接合される略矩形の平面形状の放熱板固定用金属板218が、セラミックス基板10より小さくなっている。その他の構成は、上述した第2の実施の形態と略同一である。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、セラミックス基板10の裏面に接合される放熱板固定用金属板18としてビッカース硬さ40〜60の銅または銅合金からなる金属板を使用することにより、さらに、Pbフリー半田220の露出面と放熱板固定用金属板218の接合面との角度θが30〜70°になるように、露出面を放熱板固定用金属板218の周縁から放熱板22の周縁付近に向かって傾斜させるだけでなく、放熱板固定用金属板218の周縁の全周に沿って延びる所定の幅の非接合部、すなわち、ろう材216によってセラミックス基板10に接合されない部分を設けることにより、図中矢印AおよびBで示すようにヒートサイクルの冷却時の熱収縮による応力が加えられても、放熱板固定用金属板218の非接合部全体(図中点線で示す領域224)で応力を緩和することができる。その結果、Pbフリー半田220にクラックが生じるのを防止することができるとともに、セラミックス基板10にクラックが生じるのを防止することができる。
[第4の実施の形態]
図4および図5を参照して、本発明による金属−セラミックス接合基板の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図4および図5に示すように、本実施の形態では、第2および第3の実施の形態と異なり、セラミックス基板10の裏面(図4において下面)の周縁の全周に沿って所定の幅のろう材316を塗布するとともに、この周縁から所定の距離(ろう材316の幅)だけ離間して周縁の全周に沿って延びる所定の幅の非接合部を除いた部分にろう材317を塗布することにより、セラミックス基板10の裏面に接合する略矩形の平面形状の放熱板固定用金属板318の所定の幅の非接合部が、放熱板固定用金属板318の周縁から所定の距離だけ離間して放熱板固定用金属板318の周縁の全周に沿って延びている。その他の構成は、上述した第2および第3の実施の形態と略同一である。本実施の形態では、第1〜第3の実施の形態と同様に、ヒートサイクルの冷却時の熱収縮による応力が加えられても、放熱板固定用金属板318の周縁部付近の非接合部で応力を緩和することができる。その結果、Pbフリー半田320にクラックが生じるのを防止することができるとともに、セラミックス基板10にクラックが生じるのを防止することができる。
なお、上述した第2〜第4の実施の形態において放熱板固定用金属板118、218、318の周縁部または周縁部付近に設けた非接合部の所定の幅は、0.1mm以上であるのが好ましく、1.0〜3.0mmであるのがさらに好ましい。0.1mmより狭いと、応力を緩和するのに不十分であり、3.0mmより広いと、熱伝導性の低下などの問題が生じる。また、このような非接合部の代わりに、上述した第1〜第4の実施の形態において、放熱板固定用金属板118、218、318とセラミックス基板10との間の接合部を、互いに離間した複数の線状や点状の接合部などの様々な形状の接合部にしてもよい。このような形状の接合部にしても、セラミックス基板10への応力を低減させることができる。
以下、本発明による金属−セラミックス接合基板の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
図1において、セラミックス基板10として40mm×40mm×0.635mmの大きさの窒化アルミニウム基板を使用し、セラミックス基板10の上面に接合する回路用金属板14として厚さ0.3mmの無酸素銅板を使用し、セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.4mmの無酸素銅板を使用し、ろう材12および16の厚さを0.02mmとして、第1の実施の形態と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。なお、ろう材12および16として、Ag、Cu、Ti、Sn、FeおよびIn成分を含むろう材を使用し、接合時にろう材の成分を金属板14および18に拡散させて、接合後の金属板14および18のビッカース硬さが44になり且つ平均結晶粒径0.12mmになるように、ろう接の温度と時間を調整した。
このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、Pbフリー半田20を使用して、放熱板22としての69mm×69mm×4mmの大きさの銅板を固定した。なお、Pbフリー半田20として、Sn−Ag系のPbフリー半田や、Cu、Bi、SbまたはZnなどを添加した各種のPbフリー半田を使用した。
このようにして放熱板22を固定した金属−セラミックス接合基板について、20℃→−40℃×30分→20℃×10分→125℃×30分→20℃×10分を1サイクルとする繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、金属板14、18とろう材12、16を除去して窒化アルミニウム基板の表面を光学顕微鏡で観察したところ、窒化アルミニウム基板にクラックの発生はなかった。また、Pbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、いずれのPbフリー半田の場合もクラックの発生はなかった。
[実施例2]
セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.6mmのCu−0.12Zr−0.1Co−0.03P合金からなる銅合金板を使用した以外は実施例1と同様の方法により、第1の実施の形態と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。なお、ろう材12および16として、Ag、CuおよびTi成分を含むろう材を使用し、接合時にろう材の成分を金属板14および18に拡散させて、接合後の金属板14および18のビッカース硬さが46になり且つ平均結晶粒径0.14mmになるように調整した。
このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、実施例1と同様のPbフリー半田20を使用して実施例1と同様の放熱板22を固定し、実施例1と同様に繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、窒化アルミニウム基板の表面とPbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、窒化アルミニウム基板にクラックの発生はなく、半田クラックの発生もなかった。
[実施例3]
セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.25mmのCu−0.2Sn−0.2Cr合金からなる銅合金板を使用した以外は実施例1と同様の方法により、第1の実施の形態と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。なお、接合時にろう材の成分を金属板14および18に拡散させて、接合後の金属板14および18のビッカース硬さが42になり且つ平均結晶粒径0.14mmになるように調整した。
このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、実施例1と同様のPbフリー半田20を使用して実施例1と同様の放熱板22を固定し、実施例1と同様に繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、窒化アルミニウム基板の表面とPbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、窒化アルミニウム基板にクラックの発生はなく、半田クラックの発生もなかった。
[実施例4]
セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.15mmのCu−0.3Cr−0.1Ti−0.1Zr−0.1Ni合金からなる銅合金板を使用した以外は実施例3と同様の方法により、第1の実施の形態と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。なお、接合時にろう材の成分を金属板14および18に拡散させて、接合後の金属板14および18のビッカース硬さが45になり且つ平均結晶粒径0.09mmになるように調整した。
このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、実施例1と同様のPbフリー半田20を使用して実施例1と同様の放熱板22を固定し、実施例1と同様に繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、窒化アルミニウム基板の表面とPbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、窒化アルミニウム基板にクラックの発生はなく、半田クラックの発生もなかった。
[比較例1]
図5に示すように、セラミックス基板10として40mm×40mm×0.635mmの大きさの窒化アルミニウム基板を使用し、セラミックス基板10の上面に接合する回路用金属板14として厚さ0.3mmの銅板を使用し、セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.15mmの銅板を使用し、ろう材12および16の厚さを0.02mmとして、第1の実施の形態と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。なお、ろう材12および16として実施例1と同様のAg合金ろう材を使用したが、ろう材の成分の銅への拡散が不十分であり、ビッカース硬さが35、平均結晶粒径が0.22mmであった。
このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、実施例1と同様のPbフリー半田20を使用して実施例1と同様の放熱板22を固定し、実施例1と同様に繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、窒化アルミニウム基板の表面とPbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、窒化アルミニウム基板にクラックの発生はなかったが、半田クラックの発生が認められた。
[比較例2]
セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.4mmの銅板を使用した以外は比較例1と同様の方法により、比較例1と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、実施例1と同様のPbフリー半田20を使用して実施例1と同様の放熱板22を固定し、実施例1と同様に繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、窒化アルミニウム基板の表面とPbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、半田クラックの発生はなかったが、窒化アルミニウム基板にクラックの発生が認められた。
[比較例3]
セラミックス基板10の裏面に接合する放熱板固定用金属板18として厚さ0.6mmの銅板を使用した以外は比較例1と同様の方法により、比較例1と同様の金属−セラミックス接合基板を作製した。このようにして作製した金属−セラミックス接合基板に、実施例1と同様のPbフリー半田20を使用して実施例1と同様の放熱板22を固定し、実施例1と同様に繰り返しヒートサイクルを300回行った後に、窒化アルミニウム基板の表面とPbフリー半田20の表面を光学顕微鏡で観察したところ、半田クラックの発生はなかったが、窒化アルミニウム基板にクラックの発生が認められた。
本発明による金属−セラミックス接合基板の第1の実施の形態の概略側面図である。 本発明による金属−セラミックス接合基板の第2の実施の形態の概略側面図である。 本発明による金属−セラミックス接合基板の第3の実施の形態の概略側面図である。 本発明による金属−セラミックス接合基板の第4の実施の形態の概略側面図である。 本発明による金属−セラミックス接合基板の第4の実施の形態のセラミックス基板の裏面に塗布したろう材を概略的に示す平面図である。
符号の説明
10 セラミックス基板
12、16、116、216、316、317 ろう材
14 回路用金属板
18、118、218、318 放熱板固定用金属板
20、120、220,320 Pbフリー半田
22 放熱板

Claims (18)

  1. セラミックス基板の一方の面にろう材を介して銅または銅合金からなる放熱板固定用金属板の一方の面が接合し、この放熱板固定用金属板の他方の面に、放熱板固定用金属板より大きい平面形状の放熱板が半田によって固定された金属−セラミックス接合基板において、前記放熱板固定用金属板のビッカース硬さが40〜60、その結晶粒径が0.2mm以下であり、前記半田が実質的に鉛を含まない半田であることを特徴とする、金属−セラミックス接合基板。
  2. 前記放熱板固定用金属板の厚さが0.05mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の金属−セラミックス接合基板。
  3. 前記半田の露出面が前記放熱板固定用金属板の一方の面の周縁から前記放熱板の周縁部付近に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属−セラミックス接合基板。
  4. 前記半田の露出面と前記放熱板の固定面との間の角度が30〜70°であることを特徴とする、請求項に記載の金属−セラミックス接合基板。
  5. 前記セラミックス基板の一方の面に前記放熱板固定用金属板の一方の面を接合するために塗布される前記ろう材の形状を、互いに離間した複数の線状または点状にすることにより、前記セラミックス基板の一方の面と前記放熱板固定用金属板の一方の面との間に非接合部が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  6. 前記放熱板固定用金属板の一方の面の周縁部または周縁部付近に所定の幅の非接合部が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  7. 前記非接合部が、前記放熱板固定用金属板の一方の面の周縁の全周に沿って延びていることを特徴とする、請求項に記載の金属−セラミックス接合基板。
  8. 前記非接合部が、前記放熱板固定用金属板の一方の面の周縁から所定の距離だけ離間していることを特徴とする、請求項またはに記載の金属−セラミックス接合基板。
  9. 前記所定の距離が0.1mm以上であることを特徴とする、請求項に記載の金属−セラミックス接合基板。
  10. 前記所定の幅が0.1mm以上であることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  11. 前記所定の幅が0.25〜3.0mmであることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  12. 前記セラミックス基板が窒化アルミニウム基板または窒化珪素基板であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  13. 前記セラミックス基板の厚さが0.05〜1.5mmであることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  14. 前記セラミックス基板の他方の面にろう材を介して回路用金属板が接合されていることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  15. 前記セラミックス基板の他方の面に前記回路用金属板を接合するためのろう材が、前記回路用金属板の周縁から0.03mm以上はみ出ていることを特徴とする、請求項14に記載の金属−セラミックス接合基板。
  16. 前記銅合金が、Fe、Ni、Co、Ti、Mg、Zr、Ca、Si、Mn、Cd、Al、Pb、Bi、Te、Y、La、Be、Ce、Au、Ag、ZnおよびSnの少なくとも1種以上含み、残部がCuと不可避不純物である銅合金であることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  17. 前記ろう材が、Ag、CuおよびTi成分を含むろう材、またはAg、Cu、Ti、Sn、FeおよびIn成分を含むろう材であることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板。
  18. 請求項1乃至17のいずれかに記載の金属−セラミックス接合基板を用いた半導体回路基板またはパワーモジュール。
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